説明

改善された安定性、輝度および効率を備えた有機発光ダイオード(OLED)

有機発光ダイオード(OLED)(100)は、発光効率及び作動寿命を改善するために、アノード(104)と正孔輸送層(106)との間に配置された比較的薄いダイアモンド状カーボン(DLC)層(114)を含む。比較的薄いDLC層(114)は、正孔注入を抑制し、チャージフローのバランスをとり、効率を改善し、増加した作動寿命に寄与するアノード(104)の表面平滑性を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に有機発光ダイオード(OLED)に関し、特に、本OLEDに関して安定性、輝度および効率を改善するダイヤモンド状炭素の層を含むポリマーベースOLED(PLED)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)がだんだん重要になってきている。これは、少なくとも一部については、例えば、マルチカラー、自己発光フラットパネルディスプレイを含む種々の製品に使用されるOLEDに関する技術的な可能性に帰するものである。OLEDは、他の発光デバイスよりも種々の利点がある。これらのいくつかの俚諺は、広いレンジのカラー発光能力、比較的低い電圧(例えば、3Vより小)での作動可能能力、広視野角、および、高コントラストを含む。
【0003】
典型的なOLEDは、アノード、カソード、および、アノードとカソードとの間に配置された少なくとも2つの有機材料層を含む。多くのOLEDにおいてアノードは、Indium Tin Oxide(ITO)のような比較的高い仕事関数材料からなり、カソードは典型的には、カルシウム(Ca)のような比較的低い仕事関数材料からなる。典型的なOLEDにおける有機材料層は、正孔を輸送することができる能力を有する材料からなり、かくして典型的には、正孔輸送層と呼ばれる。別の有機材料層は典型的には、電子を輸送することができる能力を有する材料からなり、かくして、典型的には電子輸送層と呼ばれる。電子輸送層はまた、発光媒体(または発光層)としても機能する。別の実施形態では、正孔輸送層と電子輸送層との間に追加の発光層を配置することができる。別のケースでは、OLEDが適当にバイアスされたとき、アノードは正孔(正電荷キャリア)を正孔輸送層に注入し、カソードは電子を電子輸送層に注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ、反対の電荷電極に向かって移動する。電子とホールが同じ分子で局在化するとき、フレンケル励起子が形成され、可視光が発光される。
【0004】
OLEDは、携帯電話およびディジタルカメラようのディスプレィのようにいくつかの商業用用途に既に現れているが、デバイス安定性、色度、および、発光効率という相反する影響における種々の問題を解決する一定の挑戦が依然として続けられている。例えば、Indium Tin Oxide(ITO)のような所定の材料からなるアノードの表面粗さは、多くの現在のOLEDのダークスポット、品質低下、および、結果として生ずる故障の形成に寄与する。このように、アノード表面を修正することによりOLEDを改善するために著しい努力が払われている。試みられてきたアノード表面修正技術のいくつかの例は、化学処理、UVオゾン処理、酸素プラズマ処理、並びに、機械的研磨及びアニーリングを含む。これらの表面処理に加えて、アノード表面粗さに関する相反するインパクトについて、種々の他のアプローチが、試みられている。これらの他のアプローチは、アノード表面上のCuPc、LiF、プラチナ、SiO2、酸化金属、または、パリレンのような材料のそうを堆積することを含む。かかる処理及び修正が、ITOアノードからの正孔注入を効果的にし、OLEDの発光効率を改善するけれども、これらの処理及び修正は、OLEDの寿命を改善するのには十分ではない。
【0005】
かくして、高い発光効率および長い寿命のような適当なパフォーマンスを示すOLEDの必要性があり、その結果、OLEDは比較的高い要求で使用されうる。本発明は、少なくともこの必要性に沿う。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、改善された安定性、輝度、および効率を備えたOLEDを提供する。ある実施形態では、単なる例示として、有機発光ダイオードは、アノード、ダイアモンド状カーボン(DLC)層、有機正孔輸送層、有機発光層、およびカソードを有する。DLC層は、アノードの上に配置され、約10nmよりも薄い厚さを有する。有機正孔輸送層は、DLC層の上に配置され、有機発光層は、正孔輸送層の上に配置され、カソードは、有機発光層の上に配置される。
【0007】
別の実施形態では、有機発光ダイオードは、基板と、アノードと、正四面体アモルファスカーボン(ta−C)層と、有機正孔輸送層と、有機発光層と、カソードとを有する。アノードは、基板の上に配置され、ta−C層はアノードの上に配置され、有機正孔輸送層はta−C層の上に配置され、有機発光層は正孔輸送層の上に配置され、カソードは有機発光層の上に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本件発明の以下の詳細な説明は、単に例示的なものであり、本発明を制限するものではない。更に、先に述べた本発明の背景または本発明の以下の詳細な説明に示したいかなる理論にも拘束されない。
【0009】
図1を参照すると、本発明の実施形態による有機発光ダイオード(OLED)の簡略化した断面図が示されている。OLED100は、基板102を有し、その上に配置された異なる複数の材料のそうを有する。包含されたこれらの層は、アノード104,有機正孔輸送層106,有機発光層108,および、カソード110である。基板102は、ガラスから形成されるのが好ましいが、クオーツ、セラミック、透明プラスチック、合成樹脂、または、他のいかなる可撓性の透明なプラスチック基板のような、他の光学的に透明または実質的に透明な材料から形成されてもよい。変形実施形態では、基板106は、例えば、可撓性スンレススチールホイルのような固いまたは可撓性のいずれかの不透明な材料から形成されても良い。後者のケースでは、頂部の発光OLEDアーキテクチャは、透明なカソードを介して放出された光を引き出すのに使用される。
【0010】
アノード104は、基板102の上に直接配置され、適切な電圧に接続されたとき正孔供給するように機能する。記載された実施形態では、アノード104は、約60nmの暑さを備えたIndium Tin Oxide(ITO)からなる。しなしながら、アノード104は、現在しされておりまたは将来開発される他の種々の陽極材料のいずれからなってもよい。アノード104に関して用いられ得る他の材料は、例えば、種々の金属がドープされた酸化錫、酸化亜鉛(ZnO)、種々の金属がドープされたZnO、金、銀、パラジウム、シリコン、伝導性カーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールのようなπ−共役ポリマー、または、光学的に透明、又は、OLED100によって発光された光が見えるように少なくとも十分に透明な他の種々の伝導性陽極材料を含む。アノード104に関して使用される特定の材料の厚さは、所定の特性を達成するために変化しうることは明らかである。
【0011】
名前が暗示するように、有機正孔輸送層(HTL)106は、アノード104によって供給された正孔を転送することができる能力がある有機材料である。記載された実施形態では、有機正孔輸送層106は、約20nmの厚さを備えたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)であり、また、現在知られておりまたは将来開発されうる他の如何なる有機材料であっても良く、所望の特性を達成するのに他の層の厚さが使用されても良い。例えば、正孔輸送層106は、種々の他の水溶性ポリマー材料から形成されても良い。
【0012】
名前が暗示するように、有機発光層(EL)108は、エレクトロルミネセンス発光を生成するように機能する。しかし、この機能に加え、有機発光層はまた、電子を輸送することができる電子輸送層としても機能する。記載された実施形態では、有機発光層108は、約90nmの厚さを備えたpoly(p-phenylen vynelene)(PPV)からなる。しかしながら、有機発光層108は、電子輸送及び電子発光特性を示す現在知られておりまたは将来開発される種々の如何なる有機材料であっても良く、発光層108の厚さは、所定の特性を達成するために変化して良い。現在知られている適切な材料の例では、polyfluorene(PFO)シリーズの材料を含む。更に、別の実施形態では図2に示したように、OLED200は、別々の有機電子輸送層202と別々の有機発光層204とを含み得る。
かかる実施形態では、有機発光層204は、有機正孔輸送層106と有機電子輸送層202との間に配置される。
【0013】
カソード110は、有機発光層108内に電子を注入するのに用いられ、比較的低い仕事関数を備えた材料からなるのが好ましい。記載された実施形態では、カソード110は、約5nmの厚さを備えたカルシウム(Ca)を有する。これは単なる例示であり、現在知られておりまたは将来開発される他の適当な材料を含み、他の適当なカソードの厚さも利用することができる。他の適当な材料の例として、インジウム、アルミニウム、バリウムおよび、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、又は、Mg:Ag,Li:Al,Mg:Al,Ca:Ag、Ca:Al、Ba:Ag、および、Ba:Alのような他の合金材料などを含むがこれらに限定されるものではない。特定の材料及び厚さは、所定の特性を達成するのに変化しうる。
【0014】
図1及び2に更に示されているように、OLED100は、カソード110条に排斥された保護層112を更に含む。保護層112は、種々のタイプの材料からなりうる。記載された実施形態では、保護層112は、銀(Ag)からなり、約200nmの厚さを有する。保護層112として他の適当な材料を使用することができ、例えば、アルミニウム(Al)、高い伝導度及び反射率を備えた合金材料(Mg:Ag,Mg:Al,Ca:Ag)を含んでも良いが、これらに限定されるものではない。保護層112の厚さは200nmに限定されず、所定の特性を達成するのに変化しうる。種々の他の実施形態では、OLED100,200は、全体として保護層112なしで実装されうる。
【0015】
上述したOLED100,200を構成する各コンポーネントに加え、OLED100,200は、ダイアモンド状炭素(DLC)114の比較的薄い層を更に有する。DLC114は、アノード104と正孔輸送層106との間の基板上に配置される。種々のタイプのDLCが知られているけれども、用いられるDLCの特定の好ましいタイプは、正四面体アモルファスカーボン(ta−C)である。一般的に知られているように、正四面体アモルファスカーボンは、比較的高い割合(例えば、>80%)のsp結合を有する。この比較的高いspにより、ta−Cは比較的高い堅さ、化学的不活性背、および、高い電気抵抗を示す。ta−C層114は、以下により詳細に示すように堆積されたとき、固有の電子的、機械的および光学的特性を示し、比較的スムースであり、可視光領域から赤外光領域のレンジの周波数を備えた光に対して実質的に透明である。
【0016】
上述の記載から、図1に示された好ましいOLED100は、一般的にアノード/DLC/HTL/EL/カソードという構成を有する。更に上述したように、これらの材料層の各々の特定の材料および厚さは変化して良いが、しかし、調査及び比較目的のために用いられる特定のOLED構成は、ITO(60nm)/ta−C/PEDOT(20nm)/PPV(90nm)/Ca(5nm)/Ag(200nm)である。この特定の構成を使用することにより、異なるta−C層114の厚さを各々備えた5つのOLED100が作られ、そしてテストされ、そして、ta−C層114を備えず同じ方法を用いて作られたOLEDと比較する。これらの各々のOLEDが作られる特定の方法をまず最初に記載し、次いで、そのテストの結果を詳細に示す。
【0017】
60nm厚さの層のITO104で被覆され、50Ω/平方センチメートルのシート抵抗を備えたガラス基板102を最初に用意する。次いで、ITO被覆された基板を、好ましくは、超音波バス内でアセトン、エタノールのような有機溶媒を使用して洗浄する。次いで、洗浄されたITO被覆基板を、好ましくは脱イオン水でリンスし、次いで、好ましくは窒素のような不活性ガスを使用して乾燥させる。その後、ITO被覆された基板をプレチャンバ内でアルゴン−プラズマクリーニングさせる。
【0018】
いったんITO被覆基板を洗浄すると、次いで、ta−C層114をITO104の上に堆積させる。好ましくは、ta−C層114は、フィルタ型カソード真空アーク(FCVA)蒸着装置を使用して、室温で堆積させる。一般的に知られているように、FCVA蒸着装置は、種々のマクロ粒子および中立的な原子を含む、プラズマビームを放射するようにカソーディックアークスポットを使用する。かくして、FCVA蒸着装置は、好ましくないマクロ粒子および中立的な原子を除去するために磁気フィルタリング技術を採用する。特に、FVCA装置は、好ましくないマクロ粒子および中立的な原子をフィルタリングする横方向に作用する磁界を生成し、その結果、良好に確定したエネルギ範囲内のインだけがITO被覆基板に到達する。
【0019】
上で言及したように、5つの異なる厚さのta−C層114は、5つの異なるITO被覆基板上に堆積される。ta−C層の厚さは、6.0nm,3.0nm,1.0nm,0.5nmおよび0.3nmである。所望の層の厚さに対する堆積に続き、各ta−C層114の表面形態および粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)技術を使用して判断される。AFM画像は、1μm×1μmの領域の上で得られる。比較のために、AFM画像はまた、ta−C堆積なしのITO被覆基板に関して5μm×5μmの領域の上でも得られる。これらの例の各々の表面粗さデータを表1にまとめた。

表1
ta−C厚さ(nm) ピーク間粗さ(nm) RMS粗さ(nm) 平均粗さ(nm)
6.0 14.565 1.644 1.260
3.0 10.993 1.313 1.043
1.0 6.685 0.722 0.536
0.5 8.911 0.978 0.724
0.3 19.101 1.542 1.139
0.0 26.858 1.873 1.68

所望の厚さに対するta−C層114の堆積に続いて、PEDOT層106およびPPV層108を、ITO被覆基板の各々の上に堆積させる。特定の好ましい実施形態によれば、20nm厚のPEDOT層106および90nm厚のPPV層108が、在来のスピンコータを使用して各ta−C層114の上にそれぞれスピンコートされる。その後、5nm厚のCa(99.5%)カソードおよび200nm厚の銀(99.99%)保護層112を、2.0×10−6トールの圧力でEdwards Auto 306システムを使用して、シャドウマスクを介して熱蒸着を介して各PPV層108の上に堆積させる。
【0020】
上述の方法を使用して作られた6つのOLED100は、約2×2mmの発光領域を各々有する。各OLED100は、作動電圧の関数としてその電流密度、輝度、および、電流効率を判断し、一定電流で作動時間の関数としてその輝度減衰を判断するようにテストされる。これらのテストの各々の結果を、図3乃至6にグラフで示し、以下により詳細に記載する。
【0021】
まず、図3に関して、OLEDの各々に関するしきい値電圧は、実質的に均等であり、0.3nmの厚さのta−C層を備えたOLEDだけが、標準OLED(即ち、ta−C層を有しないOLED)よりも高い電流密度のOLEDであることがわかる。このことは、0.3nm厚のta−C層を備えたOLEDに関する増加した電流注入は、トンネリングのためではないことを示す。むしろ、極薄ta−C層(例えば、≦0.3nmの厚さ)が連続しないので、0.3nm厚のta−C層OLEDによって示された増加した電流密度は、ITO層上のta−Cのアイランドの間に形成されたナノ構造界面のためであると考えられる。さらに、これらのナノ構造界面は、均一なta−C/ITO界面よりも高い電流密度を注入すると考えられる。かくして、連続で、均一なta−C/ITO界面であり、0.5nmまたはそれより厚い厚さのta−C層を備えたOLEDは、標準OLEDのものよりも低い電流密度を有する。
【0022】
上記の記載および図3のグラフから、極薄ta−C層(例えば、≦0.3nm)は、アノード102からの正孔注入を増大させるのに対して、いくぶん厚いta−C層(例えば、≧0.5nm)は、アノード102からの正孔注入を抑制する。それにもかかわらず、図4では、0.5nm厚の厚いta−C層を備えたOLEDは、0.3nm厚のta−C層を備えたOLEDよりも実質的に高い輝度を有するように見える。更に、図3は、0.5nmおよび1.0nm厚のta−C層を備えたOLEDに関する電流対電圧特性が実質的に等しいことを示しているけれども、図4は、0.5nm厚のta−C OLEDの発光が著しく高いことを示す。図4にまた示されているように、ta−C層の厚さが1.0nmより上に増大したとき、OLEDの発光は減少する。これは、ta−C層の厚さが増加するので、アノード104からの正孔注入は更に抑制され、光学的透明性が更に減少する。
【0023】
次に図5を参照すると、0.3nm,0.5nmおよび1.0nmのta−C層の厚さを備えたOLEDの各々が、標準的なOLEDのものよりも高い電流効率を有するのが分かり、0.5nm厚のta−C層を備えたOLEDは、最も高い電流効率を示す。特に、標準のOLEDの電流効率は、5.0Vで1.1cd/Aであり、0.5nm厚のta−C層を備えたデバイスの電流効率は5.0Vで2.7cd/Aであり、それは標準的なOLEDのものの約2.5倍である。図3及び4を再度参照すると、効率の改善は、アノード104からの正孔注入を抑制する0.5nm厚のta−C層によるものであり、それにより、OLEDにおいて正孔と電子のバランスをとっている。
【0024】
ta−C層を備えたOLEDによって示される最も著しい改善は、デバイス安定性である。これは、図6に最も明確に現れており、それは、約105cd/mの初期発光に関して、一定電流で作動時間の関数として発光減衰をグラフで示したものである。図6に示したように、標準的なOLEDは、約1.4×10秒の間作動した後、完全に壊れる。しかしながら、0.5nm厚のta−C層を備えたOLEDは、約2×10秒の間作動した後、著しい発光減衰は生じないことを示し、1.0nm厚のta−C層を備えたOLEDは、約1.3×10秒間作動した後、初期発光の約10%減衰し、3.0nm厚のta−C層を備えたOLEDは、1.6×10秒間作動した後、初期発光の約18%減衰する。
【0025】
標準的なOLEDの相対的に早い発光減衰は、少なくとも一部は、露出したITO層102の表面粗さによるものである(表1参照)。ITO層104の表面上の比較的シャープなスパイクが、不均一な電場と、不均一な正孔注入を導く。特に、電場は、スパイクの領域においてより大きくなり、それにより局在的に高い電流密度が生じ、その結果、局所的にオーバーヒートが生じ、ダークスポットが形成される。ダークスポットは、全体のOLED発光領域が消費されるまで、数およびサイズの上で増え続け、最終的に発光が観察されなくなる。逆に、ta−C層を備えたOLEDは、相対的に平滑な表面を有し、その結果、より均一な電界と電流密度を有する。更に、ta−C層は、ITOアノード104から有機層106,108に対する酸素汚染を防止し、ITOアノード104からの正孔注入を低減させ、両者はOLEDの寿命を増加させる。
【0026】
ここで記載したOLEDデバイス100、200は、発光効率および作動寿命を改善させるために、アノード104と正孔輸送層106との間に配置された比較的薄いDLC層114を含む。この比較的薄いDLC層114は、正孔注入を抑制し、それによりチャージフローのバランスをとり、効率を改善し、作動寿命の増加に寄与するアノード104の表面平滑性を向上させる。
【0027】
少なくとも一つの例示的な実施形態を記載してきたが、膨大な数の変形実施形態が存在することは明らかである。例示的な実施形態は単に具体例であり、本発明はその範囲、構成に限定されるものではない。むしろ前述の詳細な説明は、当業者に対して本願発明の実施形態を実装するのに便利なロードマップを提供するものである。添付の特許請求の範囲にかかる本願発明の範囲を逸脱することなく種々の変形をすることが可能であることも理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態による有機発光ダイオード(OLED)の簡略化した断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態によるOLEDの簡略化した断面図である。
【図3】図1に示したものと同様に構成された種々のOLEDについての電流密度対電圧特性を示したグラフである。
【図4】図1に示したものと同様に構成された種々のOLEDについての輝度対電圧特性を示したグラフである。
【図5】図1に示したものと同様に構成された種々のOLEDについての電流効率対電圧特性を示したグラフである。
【図6】図1に示したものと同様に構成された種々のOLEDについての正規化された輝度対時間特性を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード(104)と、
前記アノード(104)の上に配置され、約10nmよりも薄い厚さを備えたダイアモンド状カーボン(DLC)層(114)と、
前記DLC層(114)の上に配置された有機正孔輸送層(106)と、
前記正孔輸送層(106)の上に配置された有機発光層(108)と、
前記有機発光層(108)の上に配置されたカソード(110)と
を有することを特徴とする有機発光ダイオード(OLED)(100)。
【請求項2】
前記アノード(104)が、Indium Tin Oxide(ITO)からなることを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。
【請求項3】
前記アノード(104)が、Indium Tin Oxide(ITO)、金属がドープされた酸化亜鉛(ZnO)のグループから選択された材料からなることを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。
【請求項4】
前記有機正孔輸送層(106)が、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を有することを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。
【請求項5】
前記有機正孔輸送層(106)が、水溶性ポリマーを有することを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。
【請求項6】
前記有機発光層(108)が、poly(p-phenylen vynelene)(PPV)を有することを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。
【請求項7】
前記カソード(110)が、カルシウムからなることを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。
【請求項8】
前記DLC層(114)の厚さが、約1.0nmよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。
【請求項9】
前記DLC層(114)の厚さが、約0.5nmであることを特徴とする請求項1に記載のOLED(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−524853(P2008−524853A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546886(P2007−546886)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045370
【国際公開番号】WO2006/065965
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】