説明

改善された有効性を示す眼科用溶液

本発明は、pHが約6〜約8であり、約50〜約1000ppmの過酸化水素、約100ppm〜約2000ppmの少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物、及び約20〜100ppmの少なくとも1種の飽和ポリマー性クオタニウム塩を含む、眼科用組成物に関する。本発明の眼科用組成物は、フザリウムソラニに対して改善された抗真菌有効性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書にその全体を参考として組み込む米国特許仮出願第61/037894号の優先権を主張する。
(発明の分野)
【背景技術】
【0002】
多くの市販の眼科用溶液が存在する。溶液は、眼、及びコンタクトレンズ等の眼に存在するデバイスと接触する恐れのある種々の細菌及び真菌を殺菌すべきである。溶液は、溶液の使用期限中、汚染物質を含まない状態を保たなければならない。この要件を満たすために、溶液は防腐剤成分を含有する、又は1回に使用する用量が無菌でパッケージ化される。コンタクトレンズの洗浄及びケア用溶液、並びに店頭販売の点眼剤では、複数回用量の容器が一般的である。これらの溶液は、防腐剤の含有(点眼剤の場合)、及び組成物の殺菌(コンタクトレンズの洗浄及びケア用溶液の場合)を必要とする。
【0003】
過酸化水素は、眼科用溶液の殺菌剤又は防腐剤として用いられている。しかしながら、過酸化水素は安定ではなく、目を痛める程の濃度を含まなければならない、又は溶液は過酸化水素を安定化するための追加の成分を含有しなければならない。過酸化物の安定剤として有用であることが開示されている化合物としては、ホスホン酸塩、リン酸塩、及びスズ酸塩が挙げられ、具体例としては、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸のような、ホスホン酸の生理学的に適合性のある塩が挙げられる。エチレンジアミン四酢酸のような、アミノポリカルボン酸キレート剤も開示されている。
【0004】
ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(PTPPA)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、比較的低濃度で細胞傷害性であり、pHが低い。したがって、これらの安定剤は、少量しか含むことができず、中和剤を添加して、人間の目と適合性のある溶液を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、目に直接滴下される溶液の場合、又はレンズを目に入れる前にすすぎ落とす必要のないコンタクトレンズの洗浄及びケア用溶液の場合、過酸化水素安定剤を追加することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、pHが約6〜約8であり、約50〜約1500ppmの過酸化水素、約100ppm〜約2000ppmの少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物、及び約20〜100ppmの少なくとも1種の飽和ポリマー性クオタニウム塩を含む、眼科用組成物に関する。
【0007】
本発明は更に、表1に列挙する量の、表1に列挙する成分を含む眼科用溶液に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、低濃度の過酸化水素を含む新規眼科用溶液に関する。本発明は、更に、保管安定性である、少濃度の過酸化水素を含む眼科用溶液に関する。
【0009】
本明細書で使用するとき、保管安定性とは、約40℃未満の温度のような保管条件下で、溶液が30日間を超えても前記溶液中の過酸化水素の30%未満しか、いくつかの実施形態では、30日間で約25%未満しか失われないことを意味する。
【0010】
眼科用組成物は、目に直接滴下することができる、又は、目の中、若しくは上で用い、定置することができる任意の眼科用デバイスを浸漬、洗浄、すすぎ、保管又は処理するために用いることができる、任意の組成物である。眼科用組成物の例としては、眼科用デバイスの梱包用(packing)溶液、洗浄溶液、調整溶液、保管溶液、点眼剤、洗眼剤、並びに眼科用懸濁液、ゲル及び軟膏等が挙げられる。本発明の1つの実施形態では、眼科用組成物は、眼科用溶液である。
【0011】
眼科用デバイスとしては、目の上、又は眼瞼下若しくは涙点内等であるが、これらに限定されない、目の任意の部分に定置することができる任意のデバイスが挙げられる。眼科用デバイスの例としては、コンタクトレンズ、眼帯、眼科用挿入物、涙点用プラグ等が挙げられる。
【0012】
本発明の眼科用組成物は、約50〜約1000ppmの過酸化水素を含む。いくつかの実施形態では、過酸化水素は、約100〜約500ppm、他の実施形態では、約100〜約300ppmの濃度で存在する。
【0013】
あるいは、組成物は過酸化水素源を含んでもよい。好適な過酸化水素源は既知であり、水中で加水分解されたペルオキシ化合物が挙げられる。過酸化水素源の例としては、過ホウ酸ナトリウム及び過炭酸ナトリウム等の、アルカリ金属の過ホウ酸塩又は過炭酸塩が挙げられる。
【0014】
上記量の過酸化水素を含む眼科用組成物は、約0.005重量%(50ppm)〜約0.15重量%(1500ppm)、いくつかの実施形態では約100〜約1000ppmの少なくとも1種の眼科的に適合性のある安定剤、例えば少なくとも1種のジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩、亜鉛塩、又は混合カルシウム/亜鉛塩を含むジエチレントリアミン五酢酸の少なくとも1種の塩を含むことにより安定化され得ることが見出されている。本明細書で使用するとき、カルシウム塩、亜鉛塩又は混合カルシウム/亜鉛塩という用語は、DTPAが少なくとも1つの特定のカチオンを含むことを意味する。よって、例えば、DTPAのカルシウム塩は、少なくとも1つのカルシウムイオンを含むDTPA塩を含む。例としては、DTPAの二カルシウム塩、DTPAの二カルシウム−三ナトリウム塩、DTPAの一亜鉛塩及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の塩は、更に、ナトリウム、マグネシウム、これらの組み合わせ等のような、任意の追加の眼科的に適合性のあるカチオンを含んでもよい。1つの実施形態では、DTPA塩はDTPA二カルシウムを含む。ジエチレントリアミン五酢酸塩の濃度は、約50〜約1000ppmである。
【0015】
DTPA塩は、別々に形成し、溶液に添加してもよく、ペンテト酸(ジエチレントリアミン五酢酸)及び所望のカチオンの水酸化物塩を化学量論的量で溶液に添加して、その場で所望のDTPA塩を形成してもよい。
【0016】
ジエチレントリアミン五酢酸二カルシウムは、過酸化水素含有眼科用溶液の安定化において、少なくともジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPPA)と同程度有効であり、いくつかの濃度ではそれよりも有効であることが見出されている。ジエチレントリアミン五酢酸二カルシウムはまた、DTPPAより細胞傷害性が低く、pHはより中性である。
【0017】
本発明の眼科用組成物はまた、約6〜8のpHを有し、いくつかの実施形態では約6.5〜約7.5のpHを有する。これにより、本発明の組成物を眼に直接滴下し、眼球環境に置かれる眼科用デバイス上で用いることが可能になる。
【0018】
眼科用組成物は、少なくとも1種の追加の過酸化物安定剤を更に含んでもよい。使用する濃度で細胞傷害性ではなく、他の眼科用組成物の成分と適合性である限り、任意の既知の過酸化物安定剤を用いてもよい。例えば、追加の過酸化物安定剤は、組成物中に含まれる任意の他の成分の機能を干渉すべきではなく、また任意の他の成分と反応すべきではない。好適な追加の過酸化物安定剤の例としては、ホスホン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、任意の前述の眼科的に適合性である水溶性塩、これらの混合物等が挙げられる。1つの実施形態では、追加の過酸化物安定剤は、DTPPA又は少なくとも1種のDTPPAの薬剤として許容される塩を含む。
【0019】
少なくとも1種の追加の過酸化物安定剤は、約1000ppm以下、いくつかの実施形態では約100〜約500ppmの濃度で存在してもよい。追加の過酸化物安定剤が、DTPPA又は少なくとも1種のDTPPAの薬剤として許容される塩を含むとき、それは約1000ppm以下、いくつかの実施形態では約100ppm〜約500ppmの濃度で存在する。
【0020】
本発明の眼科用組成物は、pH調整剤、張度調整剤、緩衝剤、活性剤、潤滑剤、殺菌剤、粘度調整剤、界面活性剤及びこれらの混合物等であるが、これらに限定されない追加の成分を更に含んでもよい。眼科用組成物が眼科用溶液であるとき、本発明の眼科用溶液中の全ての成分は水溶性であるべきである。本明細書で使用するとき、水溶性とは、成分が、単独で又は他の成分と組み合わせて、選択された濃度で、眼科用溶液の製造、滅菌及び保管に一般的な、温度及びpHレジメ(regime)にわたって、人間の目に見える沈殿又はゲル粒子を形成しないことを意味する。
【0021】
眼科用組成物のpHは、塩酸等であるが、これらに限定されない鉱酸、及び水酸化ナトリウムのような塩基のような、酸及び塩基を用いて調整してもよい。
【0022】
眼科用組成物の張度は、張度調整剤を含むことにより調整できる。いくつかの実施形態では、眼科用組成物は、正常な人間の涙と等張又はほぼ等張であることが望ましい。好適な張度調整剤は当該技術分野において既知であり、アルカリ金属ハロゲン化物、リン酸塩、リン酸水素及びホウ酸塩が挙げられる。張度調整剤の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0023】
眼科用組成物は、ジエチレントリアミン五酢酸塩と適合性である、少なくとも1種の緩衝剤を更に含んでもよい。好適な緩衝剤の例としては、ホウ酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、硫酸塩緩衝剤、これらの組み合わせ等が挙げられる。1つの実施形態では、緩衝剤はホウ酸塩緩衝剤を含む。別の実施形態では、緩衝剤はリン酸塩緩衝剤を含む。具体例としては、ホウ酸緩衝生理食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。
【0024】
眼科用組成物はまた、過酸化水素に加えて、少なくとも1種の殺菌剤を含んでもよい。殺菌剤は、使用濃度で目を痛める又は損傷を与えるべきではなく、他の組成物成分に対して不活性であるべきである。好適な殺菌成分としては、高分子ビグアニド、高分子四級アンモニウム化合物、亜塩素酸塩、ビスビグアニド、四級アンモニウム化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
1つの実施形態では、殺菌成分は、少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物を含む。好適な亜塩素酸塩化合物としては、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩及びこれらの混合物が挙げられる。亜塩素酸塩化合物の具体例としては、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム及びこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、亜塩素酸塩化合物は、亜塩素酸ナトリウムを含む。
【0026】
亜塩素酸塩化合物の好適な濃度としては、約100〜約2000ppm、いくつかの実施形態では、約100〜約1000ppm、他の実施形態では、約100〜約500ppm、他の実施形態では、約200〜約500ppmの濃度が挙げられる。
【0027】
好適な過酸化物/亜塩素酸塩殺菌剤の組み合わせは、米国特許第6,488,965号、同第6,592,907号、米国特許出願公開第20060127497号、同第2004/0037891号、同第2007/0104798号に開示されている。これらの特許、及び本明細書に開示されている全ての他の特許は、その全体を参考として本明細書に組み込む。
【0028】
本発明の眼科用組成物は更に、米国特許第5,300,296号及び同第5,380,303号に開示されている、ポリ[オキシエチレン(−ジメチルイミノ)エチレン−(ジメチルイミノ)エチレンジクロリド(CAS登録番号31512−74−0、本明細書では「ポリクオタニウム−42」と称する)等の、完全に飽和しているポリマー性クオタニウム塩からなる群から選択される、少なくとも1種の追加の殺菌化合物を含んでもよい。ポリマー性クオタニウム塩は、望ましくは、過酸化水素の存在下で確実に安定であるために、完全に飽和している。完全に飽和しているポリマー性クオタニウム塩は、約10〜約100ppm、いくつかの実施形態では約25〜約100ppmの量で溶液中に存在してもよい。ポリクオタニウム−42等の、少なくとも1種の完全に飽和しているポリマー性クオタニウム塩が、過酸化水素及び亜塩素酸水素とともに眼科用溶液中に含まれるとき、得られる溶液は、驚くべきことに、特にフザリウムソラニ(fusarium solani)に対する、改善された抗真菌特性を示すことが見出されている。
【0029】
1種又はそれ以上の潤滑剤を眼科用組成物に含んでもよい。潤滑剤としては、水溶性セルロース性化合物、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体、キトサン、水溶性ポリウレタンを含む水溶性有機ポリマー、ポリエチレングリコール、これらの組み合わせ等が挙げられる。好適な潤滑剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン(「PVP」)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセロール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、これらの混合物等が挙げられる。一般的に、潤滑剤は、100,000を超える分子量を有する。グリセロール、プロピレングリコール、及び1,3−プロパンジオールを潤滑剤として用いるとき、それらは100,000未満の分子量を有していてもよい。
【0030】
潤滑剤を用いるとき、それは約5重量%以下、いくつかの実施形態では約100ppm〜約2重量%の量含まれてもよい。
【0031】
1種又はそれ以上の活性剤を眼科用組成物に組み込んでもよい。選択された活性剤が過酸化物の存在下で不活性である限り、広範な治療剤を用いてもよい。好適な治療剤としては、目の前部及び後部を含む、眼球環境の任意の部分を治療する又は標的とするものが挙げられ、医薬品、ビタミン、栄養補助食品、これらの組み合わせ等が挙げられる。活性剤の好適な部類としては、抗ヒスタミン剤、抗生物質、緑内障の治療薬、炭酸脱水酵素阻害薬、抗ウイルス剤、抗炎症剤、非ステロイド抗炎症薬、抗真菌薬、麻酔薬、縮瞳剤、散瞳剤、免疫抑制剤、駆虫薬、抗原生動物薬、これらの組み合わせ等が挙げられる。活性剤が含まれるとき、それは所望の治療結果を得るのに十分な量(「治療的有効量」)含まれる。
【0032】
本発明の眼科用組成物はまた、1種又はそれ以上の界面活性剤、洗剤、又はこれらの混合物を含んでもよい。好適な例としては、BASFから市販されている、チロキサポール、ポロキソマー(ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(プロピレンオキシド)−b−ポリ(エチレンオキシド))型界面活性剤及び、ポロキサミン型界面活性剤(BASFから商品名Tetronicとして市販されている、一級ヒドロキシル基で終端する、エチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドに基づく、非イオン性、四官能性ブロックコポリマー)が挙げられる。具体例は、Pluronic F−147及びTetronic 1304である。チロキサポールは、非イオン性、低分子量界面活性剤であり、リン酸塩緩衝剤に完全に可溶性である。チロキサポールは、Pressure Chemical Companyから市販されている洗剤である。チロキサポールが含まれている実施形態では、それは約500〜約2000ppmの量含まれる。
【0033】
界面活性剤は、約5重量%以下、いくつかの実施形態では約2重量%以下の量を用いてもよい。
【0034】
いくつかの界面活性剤はまた、殺菌剤増強剤として作用してもよい。本出願の溶液用の殺菌剤増強剤としては、C5〜20ポリオール、例えば1,2−オクタンジオール(カプリリルグリコール)、グリセロールモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート(TWEEN 80)、これらの組み合わせ等が挙げられる。殺菌剤増強剤は、約50〜約2000ppmの量存在してもよい。
【0035】
更に、眼科用組成物は、1種又はそれ以上の粘度調整剤又は増粘剤を含んでもよい。好適な粘度調整剤は当該技術分野において既知であり、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、グアーガム、これらの組み合わせ等が挙げられる。粘度調整剤は、所望の粘度を実現するのに必要な量で用いてもよい。
【0036】
本明細書で使用される濃度において、全ての成分は、緩衝溶液に可溶性であり、他の溶液成分と適合性であり、眼球の痛み又は損傷を引き起こさないことが理解されよう。
【0037】
本発明による眼科用溶液の例を表1及び2に開示する。
【表1】

【表2】

【0038】
本発明の眼科用溶液は、選択された成分を水と混合することにより形成できる。他の眼科用組成物は、選択された成分を好適なキャリアと混合することにより形成できる。
【0039】
本発明を説明するために以下の実施例を記載する。これらの実施例は本発明を限定するものではない。これらの実施例は本発明を実施する方法を提案することのみを目的としたものである。コンタクトレンズ及び他の専門分野の当業者であれば、本発明を実施する他の方法を見出すことが可能である。しかしながら、それらの方法は本発明の範囲内に含まれるものと見なされる。
【実施例】
【0040】
実施例1〜3、並びに比較例1及び2
以下の表3に示す塩基溶液を以下のように作製した。HPMCを約100mLの脱イオン水に計り入れ、穏やかに加熱して、材料全てを溶解させた。HPMC溶液を冷却し、更に〜500mLの脱イオン水を添加した。
【0041】
NaCl、ホウ酸、及びポロキサマーを、表3に列挙する量で溶液に添加した。Dequest 2060(CAS 15827−60−8、Fluka Sigma Aldrich製)、DTPAの二カルシウム塩(ISP Columbus)、又は2種の混合物を、表4に列挙する量で添加した。全ての成分が完全に溶解するまで、溶液を十分に混合した。溶液を、pHが7.2〜7.4になるまで、NaOH溶液(0.1N)で滴定した。
【0042】
脱イオン水を添加して、合計をおよそ950mLにした。pHを検査し、必要に応じて7.2〜7.4に修正した。表3に列挙する量の亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素を添加し、十分に混合した。pHを再検査し、必要に応じてNaOH溶液で中和した。脱イオン水を添加して、合計1000gにした。溶液を不透明なポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの容器に保管した。
【表3】

【0043】
以下の表4に示すような量の、DTPPA、DTPA又は両方を含有する溶液の100gのアリコートを、不透明なプラスチックの容器に入れ、ラベルを付けた。
【0044】
各容器から5mLのサンプルを取り出し、Talanta,vol.66,issue 1,pg 86〜91,March 31,2005に開示されている方法に従って、メタバナジン酸比色分析法を用いて過酸化水素を分析した。これは、以下の表4の4列目に報告する、基準(t=0)の過酸化水素濃度である。各容器を計量し、基準の重量を記録した。容器を40℃で保管した。表4に示した各間隔で、各容器を計量し、上記過酸化水素測定のために5mLのサンプルを取り出した。結果を表4に示す。そのサンプルの元の過酸化水素濃度から、表4に示す時点で測定された各溶液中の過酸化水素濃度を減じることにより、Δppmの値を算出した。表4に示す時点で測定された各溶液中の過酸化水素の濃度を、そのサンプルの元の過酸化水素濃度で除することにより、Δ%を算出した。
【0045】
実施例4〜9及び比較例3〜4
安定剤の添加後であるが、亜塩素酸塩を添加する前に、5ppmの硫酸鉄又は硫酸銅のいずれかを添加したことを除き、実施例1〜3及び比較例1を繰り返した。実施例1〜3のように過酸化物の安定性を評価し、結果を以下の表5(銅)及び6(鉄)に示す。
【表4】

【表5】

【表6】

【0046】
上記の表4のデータは、DTPAの二カルシウム塩で安定化された過酸化物溶液が、安定化されていない溶液又はDTPPAで安定化された溶液よりも失う過酸化物が少ないことを示す。本発明の安定化された溶液は、40℃で約30日を超えて25%未満、場合によっては約20%未満の過酸化物しか失わない。表5及び6のデータは、DTPAの二カルシウム塩で安定化された過酸化物溶液が、安定化されていない溶液よりも、失われる過酸化物が実質的に少ないことを示す。評価の過程中の蒸発により、約0.4g超が失われる溶液は存在しなかった。
【0047】
(実施例10〜11)
以下の表7に示すようにDTPAの二カルシウム塩濃度を変化させ、DTPA塩の添加後にpHを調整しなかったことを除き、実施例2を繰り返した。以下の表7に列挙した間隔で、サンプルを取り出し、実施例2に記載のように試験した。
【表7】

【0048】
(実施例12〜17)
以下の表8に示す塩基溶液を以下のように作製した。PVP及びポロキサマーを約100mLの脱イオン水に計り入れ、穏やかに加熱して、材料全てを溶解させた。PVP溶液を冷却し、更に〜500mLの脱イオン水を添加した。
【0049】
NaCl及びホウ酸を、表8に列挙する量で溶液に添加した。DTPAの二カルシウム塩(ISP Columbus)を表9に列挙する量で添加した。全ての成分が完全に溶解するまで、溶液を十分に混合した。溶液を、pHが7.2〜7.4になるまで、NaOH溶液(0.1N)で滴定した。
【0050】
脱イオン水を添加して、合計をおよそ950mLにした。pHを検査し、必要に応じて7.2〜7.4に修正した。表8に列挙する量の亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素を添加し、十分に混合した。pHを再検査し、必要に応じてNaOH溶液で中和した。脱イオン水を添加して、合計1000gにした。溶液を不透明なポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの容器に保管した。
【表8】

【0051】
実施例12〜17及び比較例5及び6のコンタクトレンズ殺菌溶液を、ISO 14729に記載されているスタンドアロン手順を用いて抗微生物有効性について試験した。各溶液を、5種の異なる生物に曝露した。用いた細菌は、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、及び霊菌であった。用いた真菌は、カンジタアルビカンス及びフザリウムソラニであった。試験生物は、ISO 14729に記載されているように代表的なATCC菌株から培養した。
【0052】
試験コンタクトレンズ殺菌溶液の10ミリリットルのアリコートを、滅菌ホウケイ酸塩硝子又はポリプロピレンねじ口試験管内に入れた。この溶液に、有機土中の代表的な試験生物の懸濁液の0.01〜0.1ミリリットルのアリコートを添加した。試験生物のこの初期接種材料は、試験溶液で希釈したとき、1×10〜1×10CFU/mLであった。溶液のアリコートは、試験コンタクトレンズ殺菌溶液の最低推奨殺菌時間(MRDT)の25%、50%、75%、及び100%で取り出した。各アリコートの残りの殺菌活性を中和し、溶液を微生物計数のためにプレーティングした。追加的に最低推奨殺菌時間の400%の時点で各真菌について試験した。各生物のlog減少を、初期接種材料から残りの生存生物を減じることにより、試験した各時点に対して算出した。微生物減少の第1の判断基準は、最低推奨殺菌時間内で、細菌では3.0log(99.9%)、真菌では1.0log(90.0%)である。
【0053】
結果を以下の表9に示す。
【表9】

PQ−42−ポリクオタニウム−42
PA−緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)
SA−黄色ブドウ球菌(staph aureus)
SM−霊菌(serratia marcescens)
CA−カンジタアルビカンス(candida albicans)
FS−フザリウムソラニ(fusarium solani)
【0054】
比較例5〜8
過酸化水素及び亜塩素酸水素を添加しなかった、又はポリクオタニウム−42を添加しなかったことを除き、実施例12及び13を繰り返した。表10は、比較例、並びに実施例12及び13で用いられた、亜塩素酸ナトリウム、過酸化物、及びポリクオタニウム−42の濃度を示す。細菌及び真菌に対する活性を、実施例12〜13に記載されているように測定し、結果を実施例12及び13の結果とともに、表10に列挙する。
【表10】

PQ−42−ポリクオタニウム−42
PA−緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)
SA−黄色ブドウ球菌(staph aureus)
SM−霊菌(serratia marcescens)
CA−カンジダアルビカンス(candida albicans)
FS−フザリウムソラニ(fusarium solani)
【0055】
過酸化水素/亜塩素酸水素とポリクオタニウム−42を両方含有する実施例12及び13と、比較例5(ポリクオタニウム−42を含有しない)及び比較例6(過酸化水素/亜塩素酸水素を含有しない)とを比較すると、フザリウムソラニに関して抗真菌活性が驚くほど増加することが分かる。過酸化物/亜塩素酸塩殺菌剤は、フザリウムソラニの減少を示さず、50ppmのポリクオタニウム−42は0.7log減少を示す。しかし、過酸化物/亜塩素酸塩殺菌剤及び50ppmのポリクオタニウム−42の組み合わせは、フザリウムソラニにおいて1.4log減少を示し、これは眼科用溶液の有効性に必要な1を超えるlog減少である。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) pHが約6〜約8であり、約50〜約1000ppmの過酸化水素、約100ppm〜約2000ppmの少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物、及び約10〜100ppmの少なくとも1種の飽和ポリマー性クオタニウム塩を含む、眼科用組成物。
(2) 前記過酸化水素が、約100〜約500ppmの濃度で存在する、実施態様1に記載の組成物。
(3) 前記過酸化水素が、約100〜約300ppmの濃度で存在する、実施態様1に記載の組成物。
(4) 前記pHが約6.5〜約7.5である、実施態様1に記載の組成物。
(5) 少なくとも1種の安定剤を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(6) 前記少なくとも1種の安定剤が、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩、及びジエチレントリアミン五酢酸の混合カルシウム/亜鉛塩からなる群から選択される、ジエチレントリアミン五酢酸塩からなる群から選択される、実施態様5に記載の組成物。
(7) 前記ジエチレントリアミン五酢酸が、約50〜約1500ppmの濃度で存在する、実施態様6に記載の組成物。
(8) 水を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(9) キレート剤を含み、前記キレート剤が、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸を含む、実施態様5に記載の組成物。
(10) 前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約100〜約1000ppmの濃度で存在する、実施態様9に記載の組成物。
【0057】
(11) 前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約100ppm〜約500ppmの濃度で存在する、実施態様9に記載の組成物。
(12) 少なくとも2種のキレート剤を含む、実施態様5に記載の組成物。
(13) 張度調整剤、緩衝剤、活性剤、潤滑剤、殺菌剤、界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(14) ホウ酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、硫酸塩緩衝剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される緩衝剤を更に含む、実施態様13に記載の組成物。
(15) 前記緩衝剤が、ホウ酸塩緩衝剤又はリン酸塩緩衝剤を含む、実施態様14に記載の組成物。
(16) 前記少なくとも1種の飽和ポリマー性クオタニウム塩が、ポリ[オキシエチレン(−ジメチルイミノ)エチレン−(ジメチルイミノ)エチレンジクロリドを含む、実施態様1に記載の組成物。
(17) 前記少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物が、約100ppm〜約1000ppmの量で存在する、実施態様1に記載の組成物。
(18) 前記亜塩素酸塩化合物が、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩(water soluble alkali metal chlorites)、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩(water soluble alkaline metal chlorites)及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様17に記載の組成物。
(19) 前記亜塩素酸塩化合物が、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様17に記載の組成物。
(20) 前記亜塩素酸塩化合物が亜塩素酸ナトリウムを含む、実施態様17に記載の組成物。
【0058】
(21) 前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約500ppmの量で存在する、実施態様17に記載の組成物。
(22) 前記亜塩素酸塩化合物が、約200〜約500ppmの量で存在する、実施態様20に記載の組成物。
(23) 前記ジエチレントリアミン五酢酸が、約100〜約1,000ppmの量で存在する、実施態様7に記載の組成物。
(24) 約0.1〜約1重量%の、少なくとも1種の潤滑剤を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(25) 前記組成物が眼科用溶液である、実施態様1に記載の組成物。
(26) 前記潤滑剤がポリビニルピロリドンを含む、実施態様24に記載の組成物。
(27) 少なくとも1種の殺菌剤増強剤を更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(28) 前記少なくとも1種の殺菌剤増強剤が、C5〜20ポリオールからなる群から選択される、実施態様27に記載の組成物。
(29) 前記少なくとも1種の殺菌剤増強剤が、約50ppm〜約2000ppmの量で存在し、1,2−オクタンジオール、グリセロールモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート(TWEEN 80)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様27に記載の組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが約6〜約8であり、約50〜約1000ppmの過酸化水素、約100ppm〜約2000ppmの少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物、及び約10〜100ppmの少なくとも1種の飽和ポリマー性クオタニウム塩を含む、眼科用組成物。
【請求項2】
前記過酸化水素が、約100〜約500ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記過酸化水素が、約100〜約300ppmの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記pHが約6.5〜約7.5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の安定剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の安定剤が、ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸の亜鉛塩、及びジエチレントリアミン五酢酸の混合カルシウム/亜鉛塩からなる群から選択される、ジエチレントリアミン五酢酸塩からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ジエチレントリアミン五酢酸が、約50〜約1500ppmの濃度で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
水を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
キレート剤を含み、前記キレート剤が、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約100〜約1000ppmの濃度で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が、約100ppm〜約500ppmの濃度で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも2種のキレート剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
張度調整剤、緩衝剤、活性剤、潤滑剤、殺菌剤、界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ホウ酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、硫酸塩緩衝剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される緩衝剤を更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記緩衝剤が、ホウ酸塩緩衝剤又はリン酸塩緩衝剤を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の飽和ポリマー性クオタニウム塩が、ポリ[オキシエチレン(−ジメチルイミノ)エチレン−(ジメチルイミノ)エチレンジクロリドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の亜塩素酸塩化合物が、約100ppm〜約1000ppmの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記亜塩素酸塩化合物が、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩、水溶性アルカリ金属亜塩素酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記亜塩素酸塩化合物が、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記亜塩素酸塩化合物が亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記亜塩素酸塩化合物が、約100〜約500ppmの量で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記亜塩素酸塩化合物が、約200〜約500ppmの量で存在する、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記ジエチレントリアミン五酢酸が、約100〜約1,000ppmの量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項24】
約0.1〜約1重量%の、少なくとも1種の潤滑剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が眼科用溶液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記潤滑剤がポリビニルピロリドンを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1種の殺菌剤増強剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記少なくとも1種の殺菌剤増強剤が、C5〜20ポリオールからなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1種の殺菌剤増強剤が、約50ppm〜約2000ppmの量で存在し、1,2−オクタンジオール、グリセロールモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート(TWEEN 80)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−515394(P2011−515394A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500772(P2011−500772)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/001496
【国際公開番号】WO2009/117057
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】