説明

改善された流動性を示す組成物

【課題】改善された流動特性を発現する粉末組成物を提供する。
【解決手段】本開示の組成物は、一般に、粉末の形状のバルク固体材料と表面改質ナノ粒子とを含有する。粉末組成物の流動性を改善する方法、並びにかかる組成物を用いて作製された装置及び物品も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、実質的な自由流動性を発現する、粉末または粉末混合物の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バルク固体の処理、混合及び送達には、該固体を粉末形状で処理するときに、独特の難点が存在する。多くの場合、粉末状粒子の1以上の物理特性は、それ自体、組成物が意図される用途に対して重要であるか、あるいはこの用途に欠くことができない。微粒子の形状、微粒子の大きさ、及び微粒子の多孔性は、多くの場合、重要な物理特性または特徴を表す。使用中または保管中に粉末が遭遇する周囲の条件(湿度、温度、とりわけ剪断力)は、微粒子の1以上の特性に影響を及ぼす可能性があり、また多くの場合、影響を及ぼす。凝結、アグロメレーション、磨耗、及び凝集は、粉末での最も一般的な分解効果に相当し、それらの存在または進行は、多くの粉末組成物の有用性及び実現性を大きく制限する。
【0003】
乾燥したバルク固体の均質なブレンドを達成することは、医薬品、食品、プラスチック、及び電池の生産などの様々な産業界においてエンジニアらや作業者らが日常直面する問題である。容認できるブレンドが得られる場合でも、このブレンドを1つ以上の下流の設備を通じて維持する際に更なる難題が生じる。加工前及び加工中に混合不足または適度なブレンドを維持できないことによって、欠陥材料や低下した収率、追加された混合時間とエネルギー、低下した生産性、始動遅延及び不備、または仕様違いの製品に関連する費用を包含する付加的で不必要な費用につながる。原料及び製造過程材料、特に保管中(例えば、袋もしくはドラムの中)の材料の粉末のケーキングもまた、重大な問題を有することがある。粉末のケーキングと均質ブレンド及び混合物の達成不能とはどれも、バッチ均一性を低下させる可能性があり、それが他の欠点と合わさって、拡大された試験及びサンプリングを必要とすることがある。医薬用途では、バッチの不均一性は直ちに、投与の不均一性へと変わる。
【0004】
幾つかの流動性助剤が知られている。例えば、ヒュームドシリカは、流動特徴を改善するのに使用できる、1種の良く知られた粉末添加物である。ヒュームドシリカは、比較的安価である一方で、多くの場合は多種の粒子のアグロメレーションを回避するのには効果がない。流動性は、程度の問題でもあり、ほとんどではないにしても、多数のヒュームドシリカの使用によってアグロメレーションや凝結が幾らかもたらされる。幾つかの条件の厳しくない産業上の用途は、より条件の厳しい用途では許容されないアグロメレーション程度を許容することができる場合がある。粉末の正確な計量または混合を伴う用途は、しかしながら、より多くのことを要求する。比較的条件の厳しくない用途においても、粉末の流動を改善する能力は、より穏かな混合条件でまたは短縮された混合期間で、均質性の向上を提供することができる。加えて、向上した粉末流動性は、高価な成分、例えば、染料及び顔料を、特にこのような成分の量の使用要件がそれらと混合される粉末中での材料の分散性と相互に関係する場合に、より少量利用することを可能にする。
【0005】
粉末としての医薬品及び薬剤の調製または送達は、特に条件が厳しい。医薬用途は、様々な粒子または粉末特徴を注意深く考慮しなければならず、また医薬組成物は、多くの場合、患者へ送達するための無数の形状での最終処方への中間体工程として、粉末として調製される。医薬組成物は、経口胃腸吸収及び送達のために錠剤化またはカプセル封入することが可能である。それらはまた、気道への送達のために乾燥粉末吸入器に組み込むことも可能である。比較的低濃度(質量基準の)製薬上の活性成分を含有する組成物の均質なブレンドを達成する能力は、極めて困難である。
【0006】
医薬組成物または薬物組成物の乾燥粉末吸入は、粉末に対し、独特でかつ困難な物理特性プロファイルを必要とする。医薬組成物を粉末形状で肺に効率良くかつ有効に送達するために、次の2つの競合する基準の均衡を保たなければならない:
1.送達すべき薬物粒子は、これら粒子が肺深部に吸入及び浸透され得るように、十分に小さくなければならない。気道内での付着は、粒子の物理的または幾何学的な形状よりもむしろ粒子の空気力学的な大きさによって制御されるため、粒子の空気力学的直径(以下の式1)が主にこの挙動に影響を及ぼす。肺での付着は、空気力学的直径が5ミクロン未満の粒子では実質的に改善され、5ミクロンを超える有効空気力学的直径を有する粒子では実質的に低下する。
【0007】
【数1】

【0008】
ここでρは粒子密度であり、そして
χは、粒子の形状ファクターである。(完全に球形状の粒子の場合、χ=1.0、そして不規則な粒子の場合、χ≧1。)
2.薬物粒子はまた、乾燥粉末吸入器(「DPI」)装置によって十分に脱凝塊化される必要もある。複数の薬物粒子の大きなクラスターは、単一のまたは極めて小さな粒子クラスターほど効率良く肺深部に浸透しない。従来より、DPIには、微粒子粉末の脱凝塊化を保証するために複雑な機械システムが利用されてきており、その後でも、このようなシステムは、ほんの一部しか成功していない。粒径を小さくすることに対する要求に対向して、粉末の流動性と脱凝塊し易さは、残念ながら、粒径を増加させるにつれて改善される。有効粒子直径5ミクロン未満では、脱凝塊化効率は顕著な減退を示す。
【0009】
これらの対向する効果のバランスをとるために、近年の成果により、物理的に大きく(そしてそれ故に有効に脱凝塊化され)、その上、空気力学的に小さい(それ故に、より呼吸に適した)吸入用粉末が開発されている。このような粒子の中には、例えば、低密度であるが大きな相対粒径を有する中空の球形状の粒子がある。形状や物理的特徴が著しく不規則なものもある。浸透性と流動性との間である程度のバランスを取る一方で、このような粒子の粉末は、特に送達用の脂質/薬物マトリックスで処方された場合、非晶質状態になる傾向があり、また潜在的な安定性の欠点をもたらす。このようなマトリックスを形成するために必要な大量の賦形剤を吸入すると、問題が更に生じる。競合する効果の均衡を保つための別の方法は、小さな呼吸に適した薬物粒子をより大きな不活性粒子(例えば、ラクトース)上に吸着させることを包含しており、この不活性粒子は、粒子のためのキャリアとして作用してバルクに脱凝塊化作用を与えるが、キャリア粒子の表面から薬物を放出させるために付加的なエネルギーを必要とする。このような試みは、処方の実質的な量が製薬上の不活性成分から構成されるため、送達できる薬物の量を制限する。このような粉末を均質な様式で調製することと、最終送達媒体内で粉末ブレンドの正確な量を測定する能力には、更なる懸念が連想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
粉末処理及び加工技術は、現在、液体プロセスで利用されている随伴技術の開発ペースよりもかなり遅れており、現在の方法では有効に対処できない粉末の処理という極めて多くの実用上の問題が残っている。向上した流動性及び加工性を発現する粉末組成物が、条件の厳しい産業上及び製薬上の使用を包含する広範な用途で望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、改良された流動性と混合し易さを発現する粉末組成物を提供する。このような組成物は、粉末形状の少なくとも1つのバルク固体相と、表面改質ナノ粒子を含む少なくとも有効量の流動増強剤とを含む。前記組成物は、実質的な自由流動特徴と、流動増強剤を包含しない組成物と比べて実質的に向上した充填密度とを発現することが可能である。
【0012】
別の態様では、本発明は、実質的に粉末形状の少なくとも1種のバルク固体材料と表面改質ナノ粒子とを含む組成物を提供する。表面改質ナノ粒子は、表面改質ナノ粒子を実質的に含まないバルク固体材料と比べて、バルク固体材料の流動性または噴流性を改善するのに少なくとも十分な量で前記組成物中に存在する。
【0013】
別の態様では、本発明は、実質的に改善された流動特徴を示す医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、1種以上の薬剤と有効量の少なくとも1種の表面改質ナノ粒子とを包含する、少なくとも1つの固体相を含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、実質的に改善された流動特徴を発現する医薬組成物を提供し、この場合、それらの流動性は少なくとも5%まで改善される。前記組成物は、1種以上の薬剤と有効量の少なくとも1種の生体適合性表面改質ナノ粒子とを包含する、少なくとも1つの固体相を含む。前記生体適合性粒子は、生分解可能もしくは生体吸収可能であってよく、または生物学的な曝露の選択経路もしくは方法に望ましい場合があるので、不活性であり、そのまま排出されてもよい。
【0015】
その他の態様では、本発明は、1種以上の固体相粉末を、有効量の少なくとも1種の表面改質ナノ粒子を含有する流動増強剤と混合またはブレンドすることを含む、固体組成物の混合方法及び乾式混合方法を提供する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、1種以上の粉末組成物と、有効量の少なくとも1種の表面改質ナノ粒子とを含む、実質的に自由流動性の粉末混合物を提供する。
【0017】
なおまた別の態様では、本発明は、実質的に自由流動性の粉末組成物の製造方法、このような組成物の使用方法、及びこのような組成物を組み込んだ装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の組成物は、表面改質ナノ粒子を含む流動増強物質を包含する。代表的な一実施形態では、表面改質ナノ粒子は、粉末形状のバルク固体材料と混合するか、それとブレンドするか、あるいはその中に分配された、個別の結合していない(すなわち、凝結していない)粒子である。いかなる特定の物理特徴の影響も受けず、またいずれかの単一の特徴に制限する意図でもないが、固体材料を粉末として識別するための1つの非限定的な方法は、それが比較的小さな個々の粒子かまたは個々の粒子の比較的小さな群から主に構成される場合である。一般に、このような粒子の平均寸法(一般に有効直径として測定されるもの)は、1,000ミクロン以下、より典型的には100ミクロン以下である。バルク固体粉末材料は、相対寸法によってナノ粒子と区別されてよく、ここで、バルク固体粉末材料は、ナノ粒子よりも大きな粒子を含む。用語「ナノ粒子」は、本明細書で使用するとき、(個々の文脈が特に他のものを暗示しているのでなければ)、一般には粒子、粒子の群、分子の小さな個々の群または緩く結合した群などの粒子状の分子、並びに具体的な幾何学形状が潜在的に変化するが、ナノ寸法(100ナノメートル未満)で測定され得る有効(もしくは平均)直径を有する粒子状の分子の群を指す。
【0019】
本発明で有用なナノ粒子は、それらが存在する範囲内のバルク粉末材料の流動性を向上及び/または維持する。流動性(自由流動性とも呼ばれる)は、一般に、例えば微細なオリフィスを通過するかのように個々の粒子または個々の粒子の群として着実に一貫して流れる自由流動性材料の能力を指す。本発明の組成物中でのナノ粒子の存在は更に、ガス状キャリアによる粒子の塊の材料流動化に起因する固体または粉末材料の液体様の流れ易さを指す噴流性(可浸流動性とも呼ばれる)をも高める。粉末の流動性または噴流性を特徴付ける幾つかの異なる方法があり得る。表面改質ナノ粒子は、本発明による粉末組成物中に存在する場合、ナノ粒子を実質的に含まない場合のバルク粉末組成物の流動性及び/または噴流性と比較して、粉末組成物の流動性及び/または噴流性の改善を提供する。実質的に含まないとは、バルク粉末組成物中のナノ粒子などの構成成分が本質的に欠如または存在することを指す。かかる改善は、実施例11〜20の次のことのうち少なくとも1つによって証明され得る:(1)粉末組成物のタップ密度の、好ましくは少なくとも1.25倍以上、好ましくは少なくとも2.0倍の増加;(2)粉末組成物の安息角の低下;(3)粉末組成物の流動性指数の増加;または(4)粉末組成物の噴流性指数の増加。更に、表面改質ナノ粒子の包含はより高いタップ密度をも可能にし、その場合、より高濃度の薬剤が、カプセル、ブリスター、またはリザーバ系DPI装置内に収容されてよい。例えば、このことは、装置の形状または大きさを変えるよりもむしろ、同じ大きさの装置の内部のDPI装置中により多くの投与量を付与する場合がある。しかしながら、その他の測定を用いて、改善された粉末流動性を証明することも可能であることが分かるであろう。粉末流動性の改善は、例えば、本発明で用いられるナノ粒子組成物を実質的に含まない組成物と比較した場合の、流動性と関連する現象や処理パラメータにおける相対的な改善と推論することができる。凝結、アグロメレーション、磨耗、凝集、凝離、固化、架橋の軽減、または均一ブレンドの達成能力の低下などの相対的な改善はいずれも、本明細書において定義するような流動性の改善を表すものと解されよう。
【0020】
1つの代表的な実施形態では、本発明で用いられる1種の部類の表面改質ナノ粒子は、コア材料と、該コア材料と異なるかまたはそれから改質された表面とから構成される。コア材料は、無機であっても有機であってもよく、本明細書において更に詳述するように、混合されるバルク固体材料と相溶し、かつ意図される用途に適するように選択される。一般に、コア材料の選択は、組成物のための具体的な性能要件と、意図される用途のための任意のより一般的な要件とに少なくとも部分的に支配される。例えば、固体組成物のための性能要件は、指定コア材料が、特定の安定性要件(処理溶媒もしくは混合溶媒中での不溶性)に加えて、特定の寸法特徴(大きさと形状)や、表面改質材料との相溶性を有することが必要である場合がある。その他の要件は、固体組成物の意図される使用または用途によって規定されてよい。このような要件は、例えば、高温などのより厳しい環境下での生体適合性または安定性を包含する場合がある。
【0021】
好適な無機ナノ粒子コア材料としては、リン酸カルシウム、ヒドロキシ−アパタイト、並びにジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、アルミナ、酸化鉄、ヴァナディア(vanadia)、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、及びそれらの組み合わせなどの金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。金、銀、または他の貴金属などの金属も、固体粒子として、または有機もしくは無機粒子上のコーティングとして利用可能である。
【0022】
好適な有機ナノ粒子コア材料としては、例えば、有機ポリマーナノ粒子、ラクトース、トレハロース、グルコース、もしくはスクロースなどの不溶性糖、並びに不溶性アミノ酸が挙げられる。別の実施形態では、別の分類の有機ポリマーナノ粒子としては、インディアナ州フィッシャーズ(Fishers)のバングス・ラボラトリーズ社(Bangs Laboratories, Inc.)から粉末または分散体として入手可能なものなどの、ポリスチレンを含むナノ粒子が挙げられる。このような有機ポリマーナノ粒子は、一般に、20nm〜60nm以下までの範囲の平均粒径を有する。
【0023】
選択されたナノ粒子コア材料は、単体で、または有機及び無機ナノ粒子材料の混合物やそれらの組み合わせを包含する1種以上の他のナノ粒子コア材料と組み合わせて使用してよいことが分かるであろう。このような組み合わせは、均一であっても、または別個の相であってもよく、これは分散可能であるか、または層状もしくはコア−シェル型構造のように局部的に特異的であることが可能である。選択されたナノ粒子コア材料の平均粒子直径は、無機または有機に関わらず、また用いられる形に関わらず、一般に100nm未満である。幾つかの実施形態では、例えば、50、40、30、20、15、10、または5nm以下の、幾つかの実施形態では、2nm〜20nmの、更に別の実施形態では、3nm〜10nmの、より小さな平均有効粒子直径を有するナノ粒子を利用してよい。選択されたナノ粒子またはナノ粒子の組み合わせ自体が凝結する場合、凝結した粒子の最大の好ましい断面寸法は、いずれかのこれらの規定された範囲内である。
【0024】
代表的な実施形態では、別の分類の表面改質された有機ナノ粒子としては、バックミンスターフラーレン(フラーレン)、デンドリマー、その表面が化学修飾された4、6、または8本の手を有するポリエチレンオキシド(例えば、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)またはアラバマ州ハンツヴィル(Huntsville)のシェアウォーター社(Shearwater Corporation)から入手可能なもの)のような分枝状及び多分岐状の「星型」ポリマーが挙げられる。フラーレンの具体例としては、C60、C70、C82、及びC84が挙げられる。デンドリマーの具体例としては、例えば、同様にウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)からも入手可能な2次〜10次(G2〜G10)までのポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーが挙げられる。
【0025】
多くの場合、本発明で利用されるナノ粒子は、実質的に球形状であることが望ましい場合がある。ただし、別の用途では、もっと細長い形状が望ましい。10以下の縦横比が好ましいと考えられ、一般には3以下の縦横比がより好ましい。コア材料が実質的には、粒子の最終形態を決定するため、コア材料の選択における重大な影響は、最終粒子における所望の大きさと形状を得る能力であり得る。
【0026】
選択されたナノ粒子コア材料の表面は、一般に、幾つかの方法で化学的または物理的に改質される。コア表面の直接改質、並びにコア材料上の恒久的もしくは暫定的シェルの改質の両方が想定される。このような改質には、例えば、共有化学結合、水素結合、静電引力、ロンドン力、並びにナノ粒子がそれらの意図される有用性を達成するまでに要する時間中、親水性もしくは疎水性の相互作用が少なくとも維持されるのであれば、その親水性もしくは疎水性の相互作用も挙げることができる。ナノ粒子コア材料の表面は、1種以上の表面修飾基で改質されてよい。表面修飾基は、無数の表面改質剤から誘導されてよい。概略的に、表面改質剤は、次の一般式で表すことができる:
A−B(II)
式II中、A基はナノ粒子の表面と結合できる基または部分である。ナノ粒子及び/またはバルク粉末材料を溶媒中で処理する場合、B基は、ナノ粒子及びバルク粉末材料を処理するために用いられるどんな溶媒とも相溶化(する)基である。ナノ粒子及び/またはバルク粉末材料を溶媒中で処理しない場合、B基は、ナノ粒子の付加逆的なアグロメレーションを阻止することが可能な基または部分である。A及びB構成成分は、結合基が、所望の表面適合性をも付与できる場合には、同一であることが可能性である。前記相溶化基は、反応性であってよいが、バルク粉末相の構成成分とは一般には非反応性である。結合組成物は、2つ以上の構成成分から構成されても、または2段階以上で作製されてもよく、例えば、A組成物は、表面と反応するA’部分から構成され、その後、Bと反応し得るA”部分が後に続いてもよい。付加順序は重要ではなく、すなわち、A’A”B構成成分の反応は、コアとの結合前に全体としてまたは部分的に行うことが可能である。コーティングにおけるナノ粒子の更なる説明は、M.リンゼンビューラー(Linsenbuhler, M.)らの粉末技術(Powder Technology)、158、2003年、3〜20頁に見出すことができる。
【0027】
表面改質剤の多くの好適な分類は、当業者には既知であって、例えば、シラン、有機酸、有機塩基及びアルコール、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
別の実施形態では、表面改質剤にはシランが包含される。シランの例にはオルガノシラン、例えば、アルキルクロロシラン;アルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン;トリアルコキシアリールシラン;イソオクチルトリメトキシ−シラン;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート;例えば、3−(メタアクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロペニルトリメトキシシラン及び3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを包含するシラン官能性(メタ)アクリレート;例えば、ポリジメチルシロキサン包含するポリジアルキルシロキサン;例えば、置換及び非置換アリールシランを包含するアリールシラン;例えば置換及び非置換アルキルシランを包含するアルキルシラン(例えば、メトキシ及びヒドロキシ置換アルキルシランが挙げられる)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
シラン官能性(メタ)アクリレートを用いるシリカの表面改質方法は既知であり、また例えば、米国特許第4,491,508号(オルソン(Olson)ら)、米国特許第4,455,205号(オルソンら)、米国特許第4,478,876号(チャン(Chung));米国特許第4,486,504号(チャング)、及び米国特許第5,258,225号(カッサンベリス(Katsamberis))に記載されており、これら特許の記述内容を参照としてかかる目的のために本明細書に組み込む。表面改質されたシリカナノ粒子には、シラン表面改質剤で表面改質されたシリカナノ粒子が包含され、例えば、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。シリカナノ粒子は多数の表面改質剤で処理することが可能であり、例えば、アルコール、例えばアルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、及びこれらの組み合わせを包含するオルガノシラン、並びにオルガノチタネート及びそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
別の実施形態では、有機酸表面改質剤としては、例えば、炭素のオキシ酸(例えば、カルボン酸)、硫黄のオキシ酸、及びリンのオキシ酸、酸誘導化ポリ(エチレン)グリコール(PEG)、並びにこれらのうちいずれかの組み合わせが挙げられる。好適なリン含有酸としては、例えばオクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、モノポリエチレングリコールホスホネートを包含するホスホン酸、及びラウリルホスフェートもしくはステアリルホスフェートを包含するホスフェートが挙げられる。好適な硫黄含有酸としては、ドデシルスルフェート及びラウリルスルホネートを包含するスルフェート及びスルホン酸が挙げられる。任意のこのような酸は、酸または塩の形状のいずれかで使用され得る。
【0031】
非シラン表面改質剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)スクシネート、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)スクシネート、及びこのような剤のうち1種以上の組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、表面改質剤には、例えば、CHO(CHCHO)CHCOOH(以降、MEEAA)、化学構造CHOCHCHOCHCOOHを有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(以降、MEAA)、酸もしくは塩のいずれかの形態のモノ(ポリエチレングリコール)スクシネート、オクタン酸、ドデカン酸、ステリン酸、アクリル酸及びオレイン酸、またはこれらの酸性誘導体などのカルボン酸官能性が包含される。更なる実施形態では、表面改質された酸化鉄ナノ粒子としては、内因性脂肪酸(例えば、ステリン酸)または内因性化合物を用いた脂肪酸誘導体(例えば、乳酸ステロイル、またはサルコシングもしくはタウリン誘導体)で改質されたものが挙げられる。更なる表面改質ジルコニアナノ粒子は、粒子の表面上に吸着されたオレイン酸とアクリル酸の組み合わせを包含する。
【0032】
有機塩基表面改質剤としてはまた、アルキルアミン、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、及びモノポリエチレングリコールアミンを挙げることもできる。他の非シラン表面改質剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)スクシネート、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)スクリネート、及びこのような剤のうち1種以上の組み合わせが挙げられる。
【0033】
表面改質用アルコール及びチオールを使用してもよく、これらには、例えば、脂肪族アルコール(例えば、オクタデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール及びフルフリルアルコール)、脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール)、及び芳香族アルコール(例えば、フェノール及びベンジルアルコール)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。チオール系化合物は、コアを金表面で改質する場合に特に好適である。
【0034】
表面改質ナノ粒子は、これらから形成された組成物が、組成物の所望の特性を妨げる程度の粒子のアグロメレーションまたは凝結を受けないように選択される。表面改質ナノ粒子は一般に、処理溶媒またはバルク材料の特徴により、得られる混合物またはブレンドが実質的に自由流動特性を発現するように、疎水性または親水性のいずれかであるように選択される。
【0035】
用いられるナノ粒子の表面改質を生じさせる好適な表面基は、それ故に、用いられる処理溶媒及びバルク材料の性質や得られる組み合わせの望ましい特性に基づいて選択することができる。処理溶媒が疎水性である場合、例えば、当業者は、疎水性溶媒と相溶性を有する表面改質粒子を達成する様々な疎水性表面基から選択することができ、処理溶媒が親水性である場合、当業者は様々な親水性表面基から選択することができ、該溶媒がヒドロフルオロカーボンまたはフルオロカーボンである場合、当業者は、様々な相溶性表面基から選択することができる、などである。バルク材料の性質及び所望の最終特性がまた、表面組成物の選択に影響を及ぼす可能性もある。ナノ粒子は、組み合わせて所望の特徴を有するナノ粒子を提供する、2つ以上の異なる表面基(例えば、親水性基と疎水性基の組み合わせ)を包含することができる。表面基は、一般に、統計的に平均化された、無秩序に表面改質された粒子を提供するように選択されてもよい。
【0036】
表面基は、粒子の表面上に、バルク材料との相溶性に必要な特性を有する表面改質ナノ粒子を提供するのに十分な量で存在する。代表的な実施形態では、表面基は、ナノ粒子の少なくとも実質的な部分の表面上に、単層を形成するのに十分な量で、また別の実施形態では、連続した単層を形成するのに十分な量で存在する。
【0037】
様々な方法が、ナノ粒子の表面を改質するのに利用できる。表面改質剤は、例えば、ナノ粒子に(例えば、粉末またはコロイド状分散体の形状で)加えてよく、また、表面改質剤をナノ粒子と反応させてもよい。当業者には、ナノ粒子を相溶化基と一緒に生じさせる複数の合成シーケンスが利用可能であって、このことが本発明の範疇であると想定されることが明白であろう。例えば、反応性基/結合剤は、ナノ粒子と反応した後で相溶化基と反応してよい。あるいは、反応性基/結合剤は、相溶化基と反応した後でナノ粒子と反応してもよい。その他の表面改質方法は、例えば、米国特許第2,801,185号(アイラ(Iler))及び米国特許第4,522,958号(ダス(Das)ら)に記載されており、これらの記述内容を本明細書に参照としてこのような目的のために組み込む。
【0038】
表面改質ナノ粒子またはそれらに対する前駆体は、コロイド状分散体の形状であってよい。幾つかのこのような分散体は、非改質シリカ出発材料、例えば、ナルコ(NALCO)1040、1050、1060、2326、2327及び2329コロイド状シリカという商品表記で、イリノイ州ナパービル(Naperville)のナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)から入手可能なナノサイズのコロイド状シリカとして市販されている。金属酸化物コロイド状分散体としては、その好適な例が米国特許第5,037,579号(マチェット(Matchett))(この記述内容を参照として本明細書に組み込む)に記載されているコロイド状酸化ジルコニウム、及びその例が米国特許第6,329,058号及び米国特許第6,432,526号(アーニー(Arney)ら)(これらの記述内容もまた、参照として本明細書に組み込む)に記載されているコロイド状酸化チタンが挙げられる。このような粒子はまた、上述のような更なる表面改質に好適な基質でもある。
【0039】
バルク粉末相(すなわち、バルク固体材料)は、望ましい度合いの流動性が要求される粒子のうちいずれか1種またはそれらの混合物を含有してよい。一般に、バルク相の微粒子粉末は、200マイクロメートル未満であるが、100nmを超える中央粒径を有する。場合によっては、バルク相の微粒子粉末は、寸法が100nm未満だが表面改質ナノ粒子よりも大きな中央粒径を有してよい。一実施形態では、バルク相の微粒子粉末は、0.5マイクロメートル〜200マイクロメートルまで、好ましくは1マイクロメートル〜200マイクロメートルまで、そしてより好ましくは1マイクロメートル〜100マイクロメートルまでの範囲の中央粒径を有する。バルク相の微粒子粉末は、無機、有機、またはこれらの任意の組み合わせであってよい。バルク相の粉末の例には、ポリマー;薬剤;顔料;研磨材;添加物;セラミック(例えば、ガラス、結晶性セラミック、ガラス−セラミック、及びこれらの組み合わせ)バブル;セラミック微小球;ケイ酸塩(例えば、タルク、粘土、絹雲母);カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カスミ石(コネチカット州ニューケーナン(New Canaan)のユニマイン社(Unimin Corp)の「マイネックス(MINEX)」)、長石、及びケイ灰石などの充填剤;微晶性セルロース(及び他の天然もしくは合成高分子)、リン酸二カルシウム、ラクトース一水和物、及び他の糖類などの賦形剤;剥離剤;化粧品成分;エアロゲル;食品;ガラス材料及びトナー材料が包含される。
【0040】
好適なセラミックバブル及びセラミック微小球は、米国特許第4,767,726号(マーシャル(Marshall))及び米国特許第5,883,029号(キャッスル(Castle))に例示されており、これらを参照として本明細書に組み込む。
【0041】
市販されているガラスバブルの例としては、3M社(3M Company)から取引表記「3M(商標)スコッチライト・ガラスバブル(3M(Trademark) SCOTCHLITE GLASS BUBBLES)」として販売されているもの(例えば、K1等級、K15等級、S15等級、S22等級、K20等級、K25等級、S32等級、K37等級、S38等級、K46等級、S60/10000等級、S60HS等級、A16/500等級、A20/1000等級、A20/1000等級、A20/1000等級、A20/1000等級、H50/10000EPX等級、及びH50/10000等級(酸洗浄したもの));ペンシルバニア州バレイ・フォージ(Valley Forge)のポター・インダストリーズ(Potter Industries)から取引表記「スフェリセル(SPHERICEL)」(例えば、110P8等級及び60P18等級)、「ラクシル(LUXSIL)」及び「Q−セル(Q-CEL)」(例えば、30等級、6014等級、6019等級、6028等級、6036等級、6042等級、6048等級、5019等級、5023等級、及び5028等級)として販売されているガラスバブル;ペンシルバニア州バーラ・シンウィド(Bala Cynwyd)のグレフコ・ミネラルズ(Grefco Minerals)から「ダイカパール(DICAPERL)」として販売されている中空ガラス微小球(例えば、HP−820等級、HP−720等級、HP−520等級、HP−220等級、HP−120等級、HP−900等級、HP−920等級、CS−10−400等級、CS−10−200等級、CS−10−125等級、CSM−10−300等級、及びCSM−10−150等級);並びにイリノイ州ホジキンス(Hodgkins)のシルブリコ社(Silbrico Corp.)から取引表記「シル−セル(SIL-CELL)」として販売されている中空のガラス粒子(例えば、SIL35/34等級、SIL−32等級、SIL−42等級、及びSIL−43等級)が挙げられる。
【0042】
市販のセラミック微小球の例としては、スフェアワン社(SphereOne, Inc.)から取引表記「エクステンドスフェアズ(EXTENDOSPHERES)」として販売されているセラミック中空微小球(例えば、SG等級、CG等級、TG等級、SF−10等級、SF−12等級、SF−14等級、SLG等級、SL−90等級、SL−150等級、及びXOL−200等級);及び3M社(3M Company)から取引表記「3M(商標)セラミック微小球(3M(Trademark) Ceramic Microspheres)」として販売されているセラミック微小球(例えば、G−200等級、G−400等級、G−600等級、G−800等級、G−850等級、W−210等級、W−410等級、及びW−610等級)が挙げられる。
【0043】
表面改質ナノ粒子は、本発明で利用されるバルク固体材料(1種以上のバルク材料の混合物を含んでよい)の中に、バルク材料の凝結、アグロメレーション、または凝集の低度を軽減するかまたは最小限にすることによってバルク材料の流動性または噴流性を増強するのに有効な量で存在する。この目的を達成するのに有効な表面改質ナノ粒子の量は、とりわけ、バルク材料の組成、選択されたナノ粒子、他の補助剤または賦形剤の有無、並びにバルク材料が利用される用途の特定の需要及び要件に左右される。例えば、ナノ粒子表面の性質、粒子の形状及び粒径はそれぞれ、組成物の所望の特性に影響を及ぼす場合あり、ナノ粒子の選択や用いられるナノ粒子の量もしくは濃度に影響を及ぼす場合がある。混合された組成物のすくなければ0.001質量%のナノ粒子の存在によって流動性の向上が達成され得る。一般に、ナノ粒子は、10質量%以下の量で存在し、幾つかの実施形態では、5質量%以下、1質量%以下、または0.1質量%以下の量で存在する。幾つかの実施形態では、表面改質ナノ粒子の量は、組成物の0.001〜20質量%、0.001〜10質量%、0.001〜1質量%、0.001〜0.01質量%、または0.01〜1質量%である。多くの用途では、選択されたナノ粒子が実質的に球形状であることが好ましい場合がある。選択されたナノ粒子の毒性及び生体適合性は、医薬用途において特に有意義かつ重要である。構成成分組成物(component compositions)のこのような選択及び最適化は、特定の使用または用途において組成物に必要な物理特性に精通している当業者の範疇であることが分かるであろう。
【0044】
1つの代表的な実施形態では、表面改質ナノ粒子は互いに不可逆的に結合していない。「〜と結合する(associate with)」または「〜と結合している(associating with)」という用語は、例えば、共有結合、水素結合、静電引力、ロンドン力、及び疎水性相互作用を包含する。
【0045】
本発明の一応用は、医薬組成物の混合及び/または送達を増強するための使用を伴う。薬剤には、抗アレルギー剤、鎮痛剤、気管支拡張薬、抗ヒスタミン剤、治療用タンパク質及びペプチド、鎮咳剤、狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、利尿薬、ホルモン、または例えば、血管収縮性アミン、酵素、アルカロイドもしくはステロイド、及びこれらのいずれか1種以上の組み合わせなどのサルファ剤が包含される。有名な部類としては、β刺激薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬、抗ロイコトリエン、メディエーター放出抑制剤、5−リポキシオキシゲナーゼ阻害剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤が挙げられる。薬剤の具体例としては、次のものが挙げられる:イソプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、グルカゴン、アドレノクロム、トリプシン、エピネフリン、エフェドリン、ナルコチン、コデイン、アトロピン、ヘパリン、モルヒネ、ジヒドロモルヒノン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、スコポラミン、メタピリレン、シアノコバラミン、テルブタリン、リミテロール、サルブタモール、イソプレナリン、フェノテロール、臭化オキシトロピウム、レプロテロール、ブデソニド、フルニソリド、シクレソニド、ホルモテロール、プロピオン酸フルチカゾン、サルメタロール、プロカテロール、イプラトロピウン(ipratropiurn)、トリアムシノロンアセトニド、チプレダン、フロ酸モメタゾン、コルヒチン、ピルブテロール、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、オルシプレナリン、フェンタニル、ジアモルヒネ、及びジリチアゼム。その他には、ネオマイシン、セファロスポリン、ストレプトマイシン、ペニシリン、プロカインペニシリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン及びヒドロキシテトラサイクリンなどの抗生物質;コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、及びプレドニゾロンなどの副腎皮質刺激ホルモン及び副腎皮質ホルモン;クロモリンナトリウムなどの抗アレルギー性化合物;インシュリン、ペンタミジン、カルシトニン、アミロライド、インターフェロン、LHRH類似体、IDNAアーゼ、ヘパリンなどのネドクロミルタンパク質及びペプチド分子がある。
【0046】
特定の用途に適切であれば、薬剤は、当該技術分野で既知の遊離塩基または1種以上の塩のいずれかとして利用されてよい。遊離塩基または塩の選択は、特定の処方における薬剤の生物学的な影響並びに化学的及び物理的安定性(例えば、その溶媒和傾向、複数の多形体、脆砕性など)に左右される。本発明における薬剤の塩には次のものがある:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩化水素化物、エデト酸塩、エジシレート、エストレート、エシレート、フマル酸塩、フルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムケート、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩二リン酸塩(phosphatediphosphate)、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、及びトリエチオジド。
【0047】
薬剤の陽イオン性塩も使用してよい。好適な陽イオン性塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)、並びに当該技術分野において既知の、製薬上容認できるアンモニウム塩及びアミンの塩(例えば、グリシン、エチレンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オクタデシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1−アミノ−2−プロパノール−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール及び1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2イソプロピルアミノエタノール)が挙げられる。
【0048】
製薬目的のために、薬剤粉末の粒径は、一般に、直径100マイクロメートル以下である。その他の実施形態では、粒径は、直径25マイクロメートル未満である。望ましくは、超微粒子状固体粉末の粒径は、生理学的な理由から、直径25マイクロメートル未満でなければならず、またその他の実施形態では、直径10マイクロメートル未満、そして別の実施形態では、5マイクロメートル未満でなければならない。
【0049】
製剤処方は、しばしば、1種以上の薬剤と、最終製品が製造される前に中間体材料(単離されたものまたは製造過程のもの)として使用される1種以上の賦形剤とのブレンドから成る。好適な賦形剤は、医薬賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)(ロー(Rowe)ら、APhA出版(APhA Publications)、2003年)に列挙されており、微晶性セルロース、リン酸二カルシウム、ラクトース一水和物、マンノース、ソルビトール、炭酸カルシウム、デンプン、及びステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸亜鉛が例示されている。表面改質ナノ粒子は、これら賦形剤/薬剤ブレンドの調製時に、混合時間の短縮、処理中の摩擦軽減、及びブレンドの均質性の改善を包含する多くの潜在的な利益をもたらす場合がある。
【0050】
別の使用において、医薬吸入粉末処方は、薬剤と、任意の賦形剤と、表面改質ナノ粒子とから成る。薬剤粒子は、それらが患者の肺に吸入され得るように、大きさが10マイクロメートル未満であることが望ましい場合がある。任意の賦形剤は、ラクトース一水和物などの糖から成ってよく、また実質的に10μmより大きな粒径を有してもよい。表面改質ナノ粒子は、それらが薬剤及び/または任意の賦形剤粒子の表面上に配置されるような方法で構成されてよい。一実施形態では、表面改質ナノ粒子は、患者が処方を吸入するときに、大きな賦形剤粒子や大きな賦形剤粒子の表面上のナノ粒子が患者の口や喉に溜まったとしても、呼吸に適した薬剤粒子の実質的な分量が患者の肺に付着するように、大きな賦形剤粒子の表面上に主に含有されていてよい。この方法で、患者の肺に達するナノ粒子の量を最小限にすることができる。
【0051】
別の実施形態では、乾燥粉末吸入器は、投与前に保管装置内に保管された粉末を有してよい。この保管装置は、リザーバ、カプセル、ブリスター、または陥凹テープを含んでよい。代表的な実施形態では、処方で使用される薬物粉末は、微紛化結晶性粉末であるが、スプレー乾燥などのプロセスからの非晶質粉末であってもよい。加えて、薬物は、薬物とある種の賦形剤とのマトリックスである粒子の中に含有されてもよい。DPIは、複数回投与装置であっても、または単回投与装置であってもよい。
【0052】
本発明の更なる実施形態は、乾燥粉末吸入器の薬物送達の流量感度を低下させる方法である。DPIからの送達は、多くの場合、吸入器からの流量に大きく依存する。本発明の粉末処方を乾燥粉末吸入器、特に受動的乾燥粉末吸入器の中で使用すると、DPIからの薬物送達の流量感度が低下する。代表的な実施形態では、上記のDPIは、高い呼吸流量を達成することができない患者(すなわち、喘息患者、高齢者、及び幼児)への送達に使用され得る。
【0053】
更なる実施形態では、医薬粉末処方は、鼻の薬物送達に利用されてもよい。
【0054】
本発明の組成物は、粉末材料の流動特性の向上または改善が望まれるいかなる用途にも有用であることが分かる。本発明の組成物及び方法の幾つかの具体的な用途としては、医薬品用途以外のものを包含し、次のものが挙げられる:
(a)正確な測定及び/または向上した均質性が求められる粉末の秤量、計量及び混合において;
(b)粉末形状でのバルク材料の輸送または保管の補助として挙げられる、粉末の「タップ密度」(単位質量当たりの減少した体積)の増加が望まれる任意の用途において;
(c)固体インクジェットインクまたは印刷インク及びトナーの調製において;
(d)塗料顔料の調製、処理、及び混合において;
(e)電池アノードにおいてグラファイト密度を高めるため;
(f)粉末の混合またはブレンドに要するエネルギー量を軽減するため;
(g)受動的乾燥粉末吸入器を準備するため(ここで、該吸入器は、患者の吸気性気流に依存して、粉末をエアロゾル化及び/または脱凝塊する);
(h)1種以上の製薬上の活性物質を有する乾燥粉末吸入器(DPI)装置を準備するため。DPI装置は、マウスピースと粉末収容システムを備える。バルク固体材料(1種以上の製薬上の活性成分を包含するもの)とナノ粒子とを含む本発明の組成物は、この粉末収容システム内に配置され得る;
(i)カプセル内に充填されるかまたは錠剤に形成される医薬組成物の精度及び/または均質性を高めるため;及び
(j)米国特許第6,051,252号(ライボヴィッツ(Liebowitz)ら)に記載されているような、急速溶解性錠剤に使用するための高いタップ密度の粉末を調製するため(該特許を参照として本明細書に組み込む)。
【0055】
本発明の組成物は、一般に、バルク粉末材料と表面改質ナノ粒子を、任意の好適な従来の混合またはブレンドプロセスを用いて混合することによって調製される。一実施形態では、以下の実施例に例示するように、表面改質ナノ粒子は有機溶媒中の分散液として調製され、この分散液にバルク粉末材料を添加する。使用され得る典型的な溶媒としては、例えば、トルエン、イソプロパノール、ヘプタン、ヘキサン、及びオクタンが挙げられる。
【0056】
前記開示内容の別の実施形態では、表面改質ナノ粒子とバルク粉末材料を、粉末としてブレンド(例えば、乾式ブレンド)する。
【0057】
本発明の理解を助けるために、以下の実施例を提供するが、これは、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。別段の指定がない限り、部及び百分率は全て、質量基準である。
【実施例】
【0058】
別段の注記のない限り、試薬及び溶媒は全て、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)から得たか、または入手可能である。
【0059】
イソオクチルトリメトキシシラン(「イソオクチル」)基、メチルトリメトキシシラン(「メチル」)基、またはオクタデシルトリメトキシシラン(「オクタデシル」)基で修飾された表面改質シリカナノ粒子は、米国特許第6,586,483号に記載の方法を用いて調製し、この特許をこのような目的のために参照として本明細書に組み込む。ナルコ(NALCO)2326コロイダルシリカは、5nm寸法の粒子のためのコアとして使用し、ナルコ2327は、20nm寸法の粒子のためのコアとして使用した。
【0060】
実施例1〜9及び比較例1〜3
乾燥粉末(実施例1〜9それぞれにおいて500g)をナノ粒子のトルエン懸濁液と混合して、ナノ粒子の乾燥質量百分率が0.01、0.1、0.5または1.0である混合物を提供した。表面改質ナノ粒子の1質量%トルエン分散液の測定されたアリコートを、追加のトルエンと混合して、各粉末との所望の混合物をそれぞれ調製するのに十分な質量の表面改質ナノ粒子を含有する分散液500gを作製した。各混合物は、シルバーストーン・モデルL4R(Silverson Model L4R)(マサチューセッツ州イースト・ロングメドー(East Longmeadow)のシルバーストーン・マシーンズ社(Silverson Machines, Inc.)製)ホモジナイザーを用いて30分間、十分に混合した。各混合物を次に、強制空気オーブンにおいて150℃で一晩乾燥させた。各混合物の組成を表1に示す。各比較例では、表面改質ナノ粒子を前記粉末と混合せずに、前記粉末をトルエンと混合して、上述と同様にして混合及び乾燥させた。表1中の各比較例において、「−−−」は「無し」、すなわち、表面改質ナノ粒子を前記粉末と混合しなかったことを示す。実施例10では、硫酸アルブテロール粉末をイソプロパノールに加えて、1質量%分散液を作製した。この分散液を、表面改質ナノ粒子の1質量%イソプロパノール分散液と混合した。この混合物をスプレー乾燥させて、乾燥粉末を供給した。
【0061】
【表1】

【0062】
粉末混合物は、モデルPT−N粉末特性評価試験機(ニュージャージー州サミット(Summit)のホソカワ・マイクロン・パウダー・システムズ(Hosokawa Micron Powder Systems)から入手したもの)を利用し、ASTM D6393−99に記載の標準試験法(「カール率によるバルク固体の特性評価のための標準試験法(Standard Test Method for Bulk Solids Characterization by Carr Indices)」)を用いて特性評価を行った。カール率は、カール(Carr)著、化学工学 第72巻、163〜168頁(1965年)に記載の方法から算出(derived after)した。データを表2及び3に示す。安息角、落下角、スパチュラ角、及び差角は、単位・度で報告する。嵩密度は、単位・立方センチメートル当たりのグラム数で報告する。圧縮性、凝集性、及び分散性は、百分率として報告する。表2中、「CE」は比較例を指す。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
実施例20及び比較例7
実施例20では、硫酸アルブテロールと実施例10の表面改質ナノ粒子との混合物を、ターブヘイラー(TURBUHALER)乾燥粉末吸入器装置(英国ロンドン(London)のアストラ・ファーマシューティカルズ(Astra Pharmaceuticals)製の「DPI」装置)のリザーバに入れた。比較例7では、別のターブヘイラー(TURBUHALER)乾燥粉末吸入器装置のリザーバに硫酸アルブテロール粉末を充填した。次に、乾燥粉末吸入器装置からの各乾燥粉末の送達特性を、USPスロート(米国薬局方(United States Pharmacopeia)、USP24 <601>エアロゾル、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器(Aerosols, Metered Dose Inhalers, and Dry Powder Inhalers)、図4)を備えたモデル160マープル・ミラー衝突板(Model 160 Marple Miller Impactor)(「MMI」)及び体積流量毎分60リットルを用いて評価した。好適なカプラーをUSP導入ポートに貼付して、DPI装置と導入ポートの間に気密シールを提供した。全ての試験においても、MMIのステージカップは界面活性剤でコーティングして、粒子の飛散と再飛散を予防した。各試験において、DPIからの5回の投与は、15秒おきに1回作動させて、各作動毎にDPIを所定の位置で5秒間保持した。最後の作動後、DPIは、所定の位置で5秒間保持してから取り外した。真空源は、その後、電源を切る前に更に15秒間放置した。
【0066】
MMI試験装置の各構成要素に溜まった薬物の量は、この構成要素を測定された容積の適当な溶媒で洗い流し、洗い流された物質をHPLC分析に付して硫酸アルブテロール濃度を求めることにより決定した。HPLC分析から戻されたデータを分析して、送達された投与量当たりに溜まった薬物の平均量を求めた。得られた質量値を次に、試験アセンブリの個々の構成要素それぞれに溜まった、送達された投与量の画分に正規化した。
【0067】
個々の構成要素の値を用いて、装置毎にスロート付着量、呼吸域の塊、及び呼吸画分を算出した。スロート付着は、USPスロート内に付着する送達された投与量全体の百分率として定義される。呼吸域の塊は、空気力学的直径4.7マイクロメートルの呼吸限界よりも小さいと判断される合計送達投与量の百分率と定義される。呼吸画分は、スロートの入口に到達しかつ呼吸限界よりも少ない送達投与量の百分率と定義される。MMIを用いる場合、呼吸域の塊はカップ2、3、4の内部、及びフィルター上に溜まる。スロート内並びにカップ0及び1内に溜まった塊は、呼吸に適さないと考えられる。
【0068】
実施例20では、前記装置は1作動当たり199マイクログラムの粉末を送達し、硫酸アルブテロール粒子の54%が、4.7ミクロン未満の空気力学的直径を有すると判断された。比較例7では、前記装置は1作動当たり68マイクログラムを送達し、硫酸アルブテロール粒子の50%が、4.7ミクロン未満の空気力学的直径を有すると判断された。
【0069】
実施例21〜23
0.005g/mLの濃度を有する表面改質ナノ粒子のストック分散液(5nm寸法、イソオクチル/メチルで表面改質されたもの)は、表面改質ナノ粒子(1.0g)を200mLメスフラスコに加えて、残りの容積をヘプタンを満たすことによって調製された。フラスコ内に攪拌子を入れて、ナノ粒子が視覚的外観に基づいて完全に分散するまで混合物を攪拌プレート上で攪拌した。薬物粉末(アルブテロールベース、フルニソリドのヘミ水和物、酢酸ピルブテロールをそれぞれ5.0g)とストックナノ粒子分散液(10mL)を丸底フラスコ(1.0L)に加えた。次に、このフラスコにヘプタンを加えて、全容積を約200mLとした。フラスコをゴム栓で密封し、混合物を約3〜5分間音波処理と手で揺すり、及びフラスコの側面に付着する凝結した材料が見えなくなるまで、脱凝塊した。その後、フラスコをロータリーエバポレーターに配置して溶媒を除去した。ロータリーエバポレーターは公称温度50℃に設定し、真空下で作動させた。溶媒を全て除去した後、残った粉末はフラスコの側面で固まった。フラスコをその後、45℃の真空オーブンに約1時間入れて、いかなる残留溶媒をも更に除去した。堅い剛毛のブラシを用いて、固まった粉末をフラスコの壁面から取り出した後、粉末を400メッシュ篩から押し出して、凝結した材料をバラバラに砕いた。篩い分けした材料を、次に回収して、後で用いるために容器に入れた。改質された薬物粉末組成物は、公称濃度1.0%の表面改質ナノ粒子を有していた。
【0070】
エアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置からの改質されたアルブテロールベース粉末の送達は、モデル3306衝突板インレット(Model 3306 Impactor Inlet)(ミネソタ州ショアヴューのTSI社製)に連結されたモデル3321空気力学粒子選別機スペクトロメータ−(Model 3321 Aerodynamic Particle Sizer Spectrometer)(商標)(APS、ミネソタ州ショアヴュー(Shoreview)のTSI社(TSI Inc.)製)を用いて評価した。3306衝突板はUSPインレットを用いて、28.3Lpmの空気流速度で作動させた。USPインレットは、粒子の飛散を最小限にするために、エチレンオキサイド/プロピレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤((ニュージャージー州フローラム・パーク(Florham Park)のバスフ社(BASF Co.)から入手可能なプルロニック(Pluronic)(登録商標)L−10)の薄層でコーティングした。
【0071】
市販のエアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置(シャーリング・プラウ社(Schering Plough Co.)から入手可能な、フォラジル(Foradil)(登録商標)エアロライザー(登録商標)製品からのもの)を用いて、シオノギ・クォーリ−V(Shionogi Quali-V)(登録商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしても既知のヒプロメロース)カプセル(スペイン国マドリッド(Madrid)のシオノギ・クォーリカプス(Shionogi Qualicaps))から前記粉末を放出させた。空のカプセルを収容したエアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置をUSPインレットに連結して、モデル3306衝突板インレットでのAPSエアゾール圧力低下を、製造者の補正指示によって水0.8cm(0.3インチ)に調節した。その後、エアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置をカプラーから取り外したが、カプラーはUSPインレットに取り付けたままにした。エアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置が存在しない場合も水0.8cm(0.3インチ)のAPSエアゾール圧力低下を維持するために、(エアロライザー(登録商標)が挿入されている)カプラーの開口部を部分的に制限した。
【0072】
APSサンプリング時間を10秒に設定した。粉末約5mgをカプセルに充填して、エアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置に入れた。このカプセルは、エアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置の穿孔機構を用いて試験直前に穿刺した。続いて、APSサンプリングを、所定の位置に前記装置を取り付けずに開始した。5秒間のサンプリングの後、カプラー制限を取り除き、カプセルを装填したエアロライザー(Aerolizer)(登録商標)DPI装置を、DPIから薬物を放出させるためにカプラーの開口部に速やかに挿入した。表4に示すように、試料からの粉末の合計濃度をAPSで測定した。空気力学的直径約4.7ミクロン未満の粉末の濃度がAPS測定から求められた。これは、患者の肺深部に達する可能性のある粒子の代表である。以下の結果は、粉末種毎に3回ずつ測定した平均である。結果は、1.0%表面改質ナノ粒子を含有する改質された薬物粉末組成物、並びに非改質薬物粉末を用いた比較例(「CE」)について示している。
【0073】
【表4】

【0074】
実施例24〜26及び比較例CE11
表面改質ナノ粒子をガラスバブル(3Mカンパニー(3M Company)から取引表記「S60HSガラスバブル(S60HS Glass Bubbles)」として入手可能なもの)に加えて、表5に挙げる質量%を達成した。比較例CE11では、ガラスバブル(3Mカンパニー(3M Company)から取引表記「S60HSガラスバブル(S60HS Glass Bubbles)」として入手可能なもの)のみを用いた。実施例24〜26及び比較例CE11について得られた物理特性を表6に示す。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
実施例27及び28並びに比較例CE12
表面改質ナノ粒子をセラミック微小球(3Mカンパニー(3M Company)から取引表記「3M(商標)セラミック微小球W−410(3M(Trademark)Ceramic Microspheres W-410)」として入手可能なもの)に加えて、表7に挙げた質量%を達成した。比較例CE12では、セラミック微小球(3Mカンパニー(3M Company)から取引表記「3M(商標)セラミック微小球W−410(3M(Trademark)Ceramic Microspheres W-410)」として入手可能なもの)のみを用いた。実施例27及び28並びに比較例CE12について得られた物理特性を表8に示す。
【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
本発明のさまざまな修正及び変更が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであり、また、本発明は、本明細書に記載された例示的な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に粉末の形状の少なくとも1種のバルク固体材料と、表面改質ナノ粒子とを含む組成物であって、該表面改質ナノ粒子が、該バルク固体材料の流動性または噴流性を、表面改質ナノ粒子を実質的に含まないバルク固体材料に比べて改善するのに少なくとも十分な量で該組成物中に存在する、組成物。
【請求項2】
前記表面改質ナノ粒子が、前記バルク固体材料の表面に実質的に結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記バルク固体材料が、1種以上の製薬上の活性成分を含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末が、成形された粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記バルク固体材料が、中央粒径200マイクロメートル未満の粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子の平均粒径が、100nm未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子の平均粒径が、50nm未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子の平均粒径が、20nm未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ナノ粒子の平均粒径が、10nm未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
表面改質ナノ粒子の量が、前記組成物全体の0.001〜20質量%である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
表面改質ナノ粒子の量が、前記組成物全体の0.001〜10質量%である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
表面改質ナノ粒子の量が、前記組成物全体の0.001〜1質量%である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
表面改質ナノ粒子の量が、前記組成物全体の0.001〜0.01質量%である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記噴流性が、少なくとも5%改善される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記表面改質ナノ粒子がコアを含み、該コアが、シリカ、リン酸カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニアおよびアルミナ化合物から成る群より選択される無機物質を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記表面改質ナノ粒子がコアを含み、該コアが有機物質を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記表面改質ナノ粒子が、表面改質された有機ナノ粒子を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
実質的に粉末の形状の少なくとも1種のバルク固体材料と、表面改質ナノ粒子との混合物を含む組成物であって、該表面改質ナノ粒子が、該組成物に実質的な自由流動性を付与するのに少なくとも十分な量で該混合物中に存在する、組成物。
【請求項19】
実質的に粉末の形状の少なくとも1種のバルク固体材料と表面改質ナノ粒子との混合物を含む組成物であって、該バルク固体材料が製薬上の活性成分である、組成物。
【請求項20】
実質的に粉末の形状の粒子と表面改質ナノ粒子との混合物を含む組成物であって、前記バルク固体材料がポリマーである、組成物。
【請求項21】
実質的に粉末の形状の少なくとも1種のバルク固体材料と表面改質ナノ粒子との混合物を含む組成物であって、前記バルク固体材料がガラスである、組成物。
【請求項22】
実質的に粉末の形状の少なくとも1種のバルク固体材料と表面改質ナノ粒子との混合物を含む組成物であって、前記バルク固体材料がセラミックバブルである、組成物。
【請求項23】
実質的に粉末の形状の少なくとも1種のバルク固体材料と表面改質ナノ粒子との混合物を含む組成物であって、前記バルク固体材料がセラミック微小球である、組成物。
【請求項24】
バルク固体材料と表面改質ナノ粒子とを液体中で混合した後、該液体を除去することを含む、流動性粉末組成物の製造方法。
【請求項25】
前記バルク固体材料が、前記液体に実質的に不溶性である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記表面改質ナノ粒子が、前記液体に分散可能である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記液体が、スプレー乾燥、回転蒸発、バルク蒸発、または凍結乾燥によって除去される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
製薬上の活性成分及び表面改質ナノ粒子を含む治療量の乾燥粉末組成物を投与することによる、哺乳動物の肺への薬剤送達方法。
【請求項29】
前記薬剤の投与が、乾燥粉末吸入器を用いて達成される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
マウスピースと、粉末収容システムと、実質的に粉末の形状の少なくとも1種のバルク固体材料及び表面改質ナノ粒子の混合物を含む粉末組成物とを備える乾燥粉末吸入装置であって、該バルク固体材料が少なくとも1種の製薬上の活性成分を含む、乾燥粉末吸入装置。
【請求項31】
前記製薬上の活性成分が、ステロイド、β刺激薬、気管支拡張薬、および抗炎症製剤から成る群より選択される、請求項30に記載の乾燥粉末吸入装置。

【公開番号】特開2013−100352(P2013−100352A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−27433(P2013−27433)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2008−525187(P2008−525187)の分割
【原出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】