改善された濾過挙動を有する精密濾過膜
精密濾過用の一体型の非対称平坦膜であって、前記膜は、少なくとも40質量%の疎水性の第一のスルホンポリマーと親水性の第二のポリマーとからなり、その膜壁にわたって細孔サイズ分布を有し、壁内部に分離層を有し、かつそこから出発して表面方向で細孔サイズが増大しており、その際、第二の表面が、少なくとも1μmの平均直径の細孔を有する膜。前記膜は、親水性の第二のポリマーを、0.1〜10質量%の濃度で含有する。分離層は、第一の表面に向かい合った領域に存在し、そして細孔サイズは、非対称領域に続き第二の表面の方向で最大値を通過する。疎水性の第一のスルホンポリマーと親水性の第二のポリマーとを溶剤系中に含む流延溶液から前記膜を製造するにあたり、成形温度にまで温度調節された流延溶液を、成形温度に対して高められた温度を有する支持体上に流延して被膜を得て、該被膜を雰囲気調節帯域に導き、凝結浴中で凝結を誘発して、膜構造を形成させ、その膜構造を支持体から、支持体速度に対して高められた速度によって剥離し、安定化し、抽出し、引き続き膜を乾燥させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホンポリマーの群からの被膜形成性の疎水性の第一のポリマーを基礎とする精密濾過用の一体型の非対称膜であって、前記膜が、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有する多孔質構造を有し、かつ膜壁の内側には、最少の細孔サイズを有する分離層を有し、前記分離層から第一の表面への方向に外側に向かって第一の非対称領域を有し、かつ第二の表面への方向に第二の非対称領域を有し、細孔サイズが、それらの表面に向かって増大している、一体型の非対称膜に関する。更に、本発明は、係る膜の製造方法に関する。
【0002】
ミクロ孔質のポリマー膜は、工業的用途、製薬的用途又は医学的用途の種々の範囲において精密濾過のために使用される。前記の用途において、膜分離プロセスは重要性が益々高まっている。それというのも、このプロセスは、分離されるべき物質が、熱負荷されない又は全く損傷されないという利点を提供するからである。精密濾過膜は、例えばサブミクロン範囲までの寸法を有する微細粒子又は微生物の除去を可能にするので、前記膜は、研究所で又は半導体産業に使用するための精製水の製造に適している。膜分離プロセスの多くの更なる用途は、飲料産業、生物工学又は廃水工学から知られている。
【0003】
その際に、高い程度の非対称性を有する膜であって1つの分離層と、該層に隣接した、その分離層と比較して粗大な細孔を有するミクロ孔質の支持構造とを有する膜を使用することが好ましい。その際、分離層中の細孔は、その膜の固有の分離特性を決定する。すなわち、分離層中の細孔の寸法によって、その膜により拘束される粒子もしくは分子の寸法が支配されている。前記用途において、係る膜はしばしば使用され、当該膜は、開放気泡側から流動に供されるため、ミクロ孔質の支持層は分離層用のプレフィルタとして機能する。それによって、その膜の汚泥負荷能力は高められる。膜を流過した液体は、まず、より大きい細孔へと入り、そして最後に分離層の小さい細孔へと入る。それにより、液体中に含まれている粒子は、それが分離層に至って、分離層を閉塞しうる前に、粗大孔質の支持層において拘束される。
【0004】
その際、例えばポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンなどのスルホンポリマーは、とりわけ、その高い化学的安定性、その温度安定性もしくは前記ポリマーから製造された膜の滅菌可能性のため、しばしば使用される膜材料である。しかしながら、前記ポリマーは疎水性ポリマーであって、その使用は、水性媒体の濾過に限定される。更に、疎水性材料からなる膜は、強力な非特異的な吸着力を有するため、その使用に際して、しばしば、濾過されるべき液体の有利には高分子成分によって当該膜の表面が覆われ、最終的には透過性の悪化が引き起こされる。
【0005】
US−A−5866059号は、精密濾過用のポリエーテルスルホン膜であって、前記膜が、顕著に非対称な構造を有し、その膜の第一の側面に比較的小さい細孔を有する被膜を有し、かつ前記側面から外側に向かって膜壁を通じて別の側の膜の第二の側面にまで細孔サイズが増大しており、その際、第二の側面での細孔は、第一の側面上の皮膜中の細孔よりも50〜10000倍だけ大きい、ポリエーテルスルホン膜を開示している。係る構造を有する膜は、一方で、最小の細孔を有する層、すなわち膜表面にある分離層に対して機械的損傷を受けやすい。他方で、前記膜は、特殊な非対称構造に基づき、あまり良くない機械的安定性しか有さない。
【0006】
US−A5866059号に従って製造される膜は疎水性であって、たかだか後処理によって親水性化できるにすぎない。それに対して、US−A−6045899号に開示される、スルホンポリマーを基礎とする一体型の非対称膜は、この膜の製造に際して、例えばポリビニルピロリドンのような親水性ポリマーをポリマー溶液に入れているので親水性の特性を有する。
【0007】
US−A−5906742号は、同様に、スルホンポリマーを基礎とする親水性の一体型の非対称ポリマー膜を開示している。これらの膜は、ミクロ孔質の被膜と、それに隣接した多孔質の支持構造とを有し、その際、前記多孔質の支持構造は、前記被膜に隣接した実質的に一定の細孔サイズを有する等方性領域を有し、更に、前記等方性領域に隣接した非対称領域を有し、その際、その等方性領域から外側に向かって細孔サイズが増大している。前記等方性領域は、壁部の約15〜25%にわたって延びており、その際、当該等方性領域中の細孔サイズは、ミクロ孔質被膜中の細孔サイズよりも幾らか大きい。前記の膜についても、分離層である被膜は、機械的損傷を受けやすい。小さい細孔サイズを有する比較的広い等方性領域に基づいて、前記の膜については、液体を流過させた場合に比較的高い圧力損失が予想される。
【0008】
分離層が機械的損傷を受けやすいことを回避するために、US−A−4933081号においては、ミクロ孔質のポリスルホン膜であってその分離層が膜壁内部に存在するものが開示されている。前記膜は、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有し、かつ一方の膜表面から好ましくは1〜30μmの間隔において最小の細孔サイズを有する層を有する。この最小の細孔サイズを有する層から外側に向かって、細孔サイズは、膜の両側の表面に向かって増大する。分離層と向かい合った表面の細孔の直径は、分離層の反対側の表面における細孔の直径よりも10〜100倍だけ小さく、従って、US−A−4933081号の膜は高い非対称性を有する。しかしながら、US−A−4933081号の膜は疎水性であって、親水性にするために更なる処理に供さねばならない。
【0009】
EP−A−361085号は、ポリエーテルスルホンからなる一体型の非対称膜を開示している。その実施例において、外側領域において約50〜100μm厚の微細孔質で外側に開放した構造を有し、膜の中央に向かうにつれ粗大孔質となる構造物に移行する中空糸膜が記載されている。内径側に向かって、その構造は再び密になる。前記膜の内表面は、開放気泡である。EP−A−361085号に開示される膜の膜間流動は、比較的少ない。
【0010】
本発明の課題は、スルホンポリマーを基礎とする、特に精密濾過用の膜であって、親水性の特性を有し、高い透過率を有し、かつ高い汚泥負荷能力を有し、そして機械的作用を受けにくい膜を提供することである。更に、本発明の課題は、係る膜の製造方法を提供することである。
【0011】
前記の本発明による課題は、芳香族スルホンポリマーの群からの被膜形成性の疎水性の第一のポリマーを基礎とする、特に精密濾過用の、平板の形態における、一体型の非対称膜であって、前記膜が、第一の多孔質表面及び第二の多孔質表面と、それらの表面の間に存在する壁内部を有し、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有する多孔質構造を有し、かつ前記壁内部において最小の細孔サイズを有する分離層を有し、この分離層から第一の表面への方向に外側に向かって第一の非対称領域を有し、かつ第二の表面への方向に第二の非対称領域を有し、細孔サイズが、それらの表面の方向で増大しており、かつ第二の表面が、少なくとも1μmの平均直径を有する細孔を有する、一体型の非対称膜において、前記膜の少なくとも40質量%までが被膜形成性の疎水性の第一のポリマーから成ることと、前記膜が、親水性の第二のポリマーを含み、その親水性の第二のポリマーの濃度が、膜の質量に対して0.1〜10質量%であることと、最小の細孔サイズを有する分離層が、一方の第一の表面に向かい合った膜壁の領域中に存在し、かつ細孔サイズが、第二の非対称領域に続き第二の表面への方向で最大値を通過することと、を特徴とする一体型の非対称膜によって解決される。
【0012】
本発明による膜における最小の細孔サイズを有する分離層は、膜壁の内側に存在するので、該分離層は、例えばハウジング中に嵌め込むために膜を加工する際に、特に例えば平坦膜のプリーツ加工に際して、又は使用中での浄化サイクルに際して、機械的な損傷に対して保護されている。好ましくは、最小の細孔サイズを有する分離層は、第一の表面から膜壁の壁厚の3〜30%の間隔に存在する。好適な走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によるもの以外に、内部にある分離層の存在は、簡単な染色技術によっても具体的に示すことができる。染色技術によって、膜断面にわたる種々の細孔サイズを、光学顕微鏡によって適した倍の拡大率で可視化させることができる。細孔のサイズに応じて、膜構造の様々な強さの染色が行われ、その際、構造が微細孔質であればあるほど、ますます染色は強くなる。
【0013】
本発明によれば、細孔サイズは、第二の非対称領域に続き第二の表面への方向で最大値を通過し、その際、その最大値は、第二の表面から、好ましくは膜壁の壁厚の3〜75%の間隔を有する。本発明による膜の好ましい一実施態様においては、細孔サイズの最大値は、第二の非対称領域に続く、実質的に等方性の領域に存在するか、あるいは前記の等方性領域の一部であり、その際、その等方性領域は、膜壁の15〜70%にわたって延びている。この場合に、本発明の範囲において、実質的に等方性の領域とは、実質的に一定の細孔サイズを有する膜壁の領域を表し、その際、走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡の写真をもとにして評価が行われる。等方性領域は、膜壁を通じて延びている、実質的に一定な平均直径を有する流路を有する領域としても見なすことができる。あらゆる膜の場合と同様に、本発明による膜の場合にも、事実上の細孔サイズは多少変動する。すなわち、細孔サイズ分布が視覚的に等方性に見えるときにも、膜は所定の細孔サイズ分布を有する。従って、本発明には、細孔サイズが最大で約15〜20%だけ変動する、実質的に等方性の領域の実施態様も含まれる。細孔サイズが更に高まらない等方性領域の好ましい存在によって、機械的安定性の改善と同時に、高い汚泥負荷能力の維持も達成される。
【0014】
最大値もしくは等方性領域に続き、本発明による膜の細孔サイズは、第二の表面への方向で低下する。その際、当該膜の高い透過率と高い汚泥負荷能力の達成のためには、高い開放気泡性を得ようとする努力がなされ、特に等方性領域が存在する場合には、第二の表面における大きな細孔直径を得ようとする努力がなされ、その際、前記表面中の細孔は、細孔サイズの最大値が存在する層中の細孔よりも小さい。本発明によれば、第二の表面における細孔の平均直径は、少なくとも1μmであり、好ましくは少なくとも2μmであり、特に好ましくは少なくとも5μmである。
【0015】
その際、本発明による膜の好ましい一実施態様においては、第二の表面における細孔の平均サイズと、第一の表面における細孔の平均サイズとの比率は、少なくとも5であり、特に好ましくは少なくとも10である。係る膜において、顕著な非対称性に基づき、第二の表面の高い開放性と組み合わさって、高い汚泥負荷能力が達成される。
【0016】
その特殊な構造に基づいて、本発明による膜は、高い安定性もしくは機械的強さと同時に、高い汚泥負荷能力を有し、その際、この安定性は、膜の気孔率が高い場合にも成される。係る強さは、非対称領域が膜壁の第二の表面にまで細孔サイズを高めつつ延びている同等の膜では達成されない。従って、本発明による膜は、同時に高い気孔率を有することができ、そのことは高い透過率にとって、従って高い膜間流動にとって、並びに高い汚泥負荷能力にとって好ましい。好ましくは、本発明による膜は、少なくとも75体積%の気孔率を有し、特に好ましくは、少なくとも80体積%の気孔率を有し、その際、その気孔率が80〜90体積%にあるときに、特に好ましいことが判明した。
【0017】
本発明の範囲において、汚泥負荷能力は、可溶性のインスタントコーヒー粉末の水溶液を基礎とする試験媒体を膜に流過させた場合の膜の閉塞挙動をもとに測定される。前記の試験媒体の膜を通じての経時的な膜間流動TMFPMの変化から、膜の閉塞挙動についての表現、従ってその汚泥負荷能力についての表現を導き出すことができる。その際に、試験媒体の経時的な膜間流動TMFPMが少ししか変化しない(そのことは、膜がたいして閉塞しないということに起因する)ときには、その膜は高い汚泥負荷能力を示す。本発明による膜は、有利には、水1リットル当たり0.04gの可溶性のインスタントコーヒー粉末の水溶液からなる試験媒体の膜間流動TMFPMの少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.65での保持を示し、その際、膜間流動TMFPMの保持は、10分の測定時間後のTMFPMと測定開始時のTMFPMとの比率として定義される。
【0018】
本発明による課題は、更に、本発明による膜の製造方法によって解決され、その際、前記方法は、以下の段階:
a. ポリマー成分と溶剤系とからなる均質な流延溶液を製造する段階、
その際、前記ポリマー成分は、溶液の質量に対して10〜25質量%の、芳香族スルホンポリマーの群からの疎水性の第一のポリマーと、溶液の質量に対して2〜20質量%の、親水性の第二のポリマーとを含み、そして前記溶剤系は、溶剤系の質量に対して5〜80質量%の、前記ポリマー成分用の溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜80質量%の、前記ポリマー成分用の潜伏性溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜70質量%の、前記ポリマー成分用の非溶剤とからなる、
b. 前記均質な流延溶液を、成形温度にまで温度調節する段階、
c. 温度調節可能であり、前記の流延溶液の成形温度より高く、かつ速度v1を有する支持体上に前記均質な流延溶液を流延して、被膜とする段階、
d. 前記支持体上に存在する被膜を、雰囲気調節された帯域に導く段階、
e. 前記支持体上に存在する被膜を凝結媒体中に導入して、被膜の凝結を誘発し、膜の構造を形成させる段階、
f. 前記膜構造を支持体から、速度v2で移動する剥離装置によって凝結媒体の内部で剥離する段階、
その際、前記速度v2は、支持体の速度v1よりも大きく、それによって膜構造は、延伸を受ける、
g. 前記膜構造を凝結媒体中で安定化させる段階、
h. こうして得られた膜を取り出して、引き続き該膜を乾燥させる段階
を含む。
【0019】
流延溶液の製造のために使用される溶剤系は、膜形成性のスルホンポリマーに適合されている。有利には、その溶剤系には、極性非プロトン性溶剤、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンもしくはそれらの混合物又はプロトン性溶剤、例えばε−カプロラクタムが含まれる。更に、その溶剤系は、80質量%までの潜伏性溶剤を含有してよく、その際、本発明の範囲における潜伏性溶剤とは、スルホンポリマーを不十分にのみ又は高められた温度で初めて溶解するものを表す。溶剤としてε−カプロラクタムを使用する場合に、例えばγ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート又はポリアルキレングリコールを使用することができる。更に、その溶剤系は、膜形成性ポリマーについての非溶剤、例えば水、グリセリン、1000ダルトン未満の質量平均分子量を有する低分子ポリエチレングリコール又は低分子アルコール、例えばエタノールもしくはイソプロパノールを含有してよい。
【0020】
本発明による方法の実施と、本発明による膜の特徴付けられた構造の形成のためには、流延溶液の粘度が、10Pa s未満の値に調整されている場合が好ましく、特に前記粘度が、5Pa s未満の値に調整されている場合が好ましい。その際、前記粘度は、40℃で測定される。粘度の調整は、特に本発明による方法で使用される親水性の第二のポリマーの選択及び濃度によって行うことができる。
【0021】
流延溶液を流延して被膜とするのは、自体公知のように行われ、例えば幅広スリットノズル、流し込み型又はドクターブレードによって行うことができる。遅くとも成形工具中で、前記流延溶液は、成形温度にまで調整される。流延溶液の流延は、温度調節可能な支持体上で行われ、その際、ここでも通常の支持体を用いることができ、そこから後に凝結した膜を剥離することができる。例えば、被覆紙又は金属ベルトを使用することができる。有利には、前記の温度調節可能な支持体は、温度調節可能な加熱ドラム、すなわち流延ドラムであり、その上に被膜が流延される。
【0022】
本発明に必須なのは、支持体の温度が、流延溶液の成形温度より高いことである。これによって、流延された被膜の厚さにわたって流延溶液中に濃度勾配が生ずる。高められた支持体温度によって、流延された被膜は、支持体の範囲内でより低い粘度を有し、それにより後の凝結媒体との接触に際して、より粗大孔質の構造が形成する。有利には、支持体温度は、成形温度よりも、少なくとも15℃、特に好ましくは少なくとも20℃だけ高い。
【0023】
内在する分離層を有する非対称構造の作製のために、更に、支持体上に存在する被膜を、定義された温度と定義された相対空気湿度が調整されている雰囲気調節された帯域に導くことが必要である。有利には、雰囲気調節された帯域中の温度は、35〜55℃の範囲にあり、その相対空気湿度は、有利には40〜75%の範囲に調整される。雰囲気調節された帯域での被膜の滞留時間と、雰囲気調節された帯域において空気を流延された被膜に通す流動速度は、予備凝結が、非溶剤として作用する空気湿分の取り込みによって誘導され、そして膜壁内で最小の細孔サイズを有する分離層が得られるように見積もるべきである。雰囲気調節された帯域中の条件は、同時に、分離層中の細孔サイズにも影響を及ぼす。
【0024】
雰囲気調節された帯域を通した後に、支持体上に存在する被膜を凝結媒体中に導き、そして凝結を引き起こして、膜構造を形成させる。有利には、凝結媒体を、室温より高い温度に温度調節するが、特に40℃より高い温度が好ましい。本発明による方法の好ましい一実施態様において、凝結媒体は、水もしくは水浴である。
【0025】
凝結媒体中で、被膜を、まずこれが既に十分な安定性を有し、かつ支持体から、すなわち好ましくは流延ドラムから剥離できるようになるまで沈殿させて、膜構造を得る。流延ドラムからの剥離は、剥離装置によって、例えば剥離ドラムによって行われ、その際、本発明によれば、剥離速度v2は、支持体の速度v1よりも大きいため、前記膜構造は延伸を受ける。好ましくは、剥離装置の速度v2と支持体の速度v1との比率は、1.05:1〜1.2:1の範囲にある。これによって、生じた膜の支持体と向かい合った側面で高い表面多孔質が得られる。
【0026】
剥離装置に引き続き、後続の凝結ベルトにおいて、凝結を完全なものとし、そして膜を安定化させる。この凝結ベルトは、前記の第一の凝結浴よりも高い温度を有してよい。その温度は、浴から浴へと段階的に高めることができる。その際、凝結ベルトにおいて、同時に溶剤系の抽出が行われ、そして一般に膜構造から親水性の第二のポリマーの一部が抽出されるので、該凝結ベルトは、同時に洗浄ベルト又は抽出ベルトとしても機能する。前記凝結ベルトもしくは洗浄ベルトにおける凝結媒体もしくは洗浄媒体としては、好ましくは水が使用される。
【0027】
抽出後に、得られた膜を、例えばドラム乾燥機によって乾燥させ、乾燥された膜は次いで巻取られる。膜の抽出と乾燥の間に、同様に、例えば表面多孔質及び分離特性を規定通りに調整するために、僅かな延伸をすることが好ましい。
【0028】
本発明によれば、当該膜は、芳香族のスルホンポリマーの群からの疎水性の第一のポリマーを基礎とし、かつ更に親水性の第二のポリマーを含有する。芳香族のスルホンポリマーとしては、本発明の範囲においては、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリールエーテルスルホンもしくは前記のポリマーのコポリマーあるいは変性物又は前記ポリマーの混合物を互いに使用することができる。好ましい一実施態様においては、疎水性の第一のポリマーは、以下の式(I)及び(II)
【化1】
で示される繰り返し分子単位を有するポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンである。
【0029】
特に好ましくは、疎水性の第一のポリマーとしては、式(II)によるポリエーテルスルホンが使用される。それというのも、当該ポリマーは、例えばポリスルホンよりも低い疎水性を有するからである。
【0030】
親水性の第二のポリマーとしては、好ましくは、長鎖のポリマーが使用され、前記ポリマーは、疎水性の第一のポリマーと良好な適合性を有し、かつ自体親水性の繰り返しポリマー単位を有する。10000ダルトンより大きい平均分子量Mwを有する係る親水性ポリマーが好ましい。親水性の第二のポリマーとして使用されるポリマーは、同時に本発明による方法において、均質な紡糸液の粘度を高める、すなわち増粘剤として機能するという課題を有するため、このポリマーを、しばしば増粘剤とも呼称する。その他に、前記ポリマーは、膜構造の形成に際して、細孔形成剤又は成核剤としても作用する。親水性の第二のポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリソルビテート、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、カルボキシメチルセルロース又は前記ポリマーの変性物もしくはコポリマーであることが好ましい。特に、ポリビニルピロリドンが好ましい。更なる好ましい実施態様においては、種々の親水性ポリマーの混合物を使用することも可能であり、特に種々の分子量を有する親水性ポリマーの混合物、例えばポリマーの混合物であってそれらの分子量が5倍以上異なっているものを使用することも可能である。好ましくは、本発明による膜中の親水性の第二のポリマーの濃度は、膜の質量に対して0.5〜7質量%である。これらのポリマーは、場合により膜中でさらに化学的にもしくは物理的に変性させることができる。ここで、ポリビニルピロリドンは、後から、例えばエネルギー線による照射によって架橋させることで、水不溶性にすることができる。
【0031】
本発明による膜の表面特性の改質のために、膜の安定性、色、吸着能もしくは吸収能に影響を及ぼす添加剤を使用することができる。また、膜の電荷を制御する添加剤、例えば膜にアニオンもしくはカチオンの性質を付与する添加剤も可能である。好ましくは、本発明による膜は、更に、親水性の第二のポリマーとは異なり、かつ親水性に変性された芳香族スルホンポリマーである親水性の第三のポリマーを含有する。係るポリマーの存在によって、特に膜の透過率並びに吸着特性は好ましい影響を受け、そして当該膜は、永続的な親水性を有し、とりわけ、該膜は、何度も蒸気滅菌可能であり、そして例えば30回の滅菌サイクル後にも、その親水性特性は実質的に不変に保たれたままとなる。特に好ましい一実施態様においては、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーは、本発明による膜中に、膜の質量に対して1〜50質量%の濃度で存在し、その際、ポリマーの合計は100%である。そのために、本発明による好ましい膜の製造方法において、ポリマー成分は、更に、親水性の第二のポリマーとは異なり、かつ親水性に変性された芳香族スルホンポリマーである親水性の第三のポリマーを含む。好ましくは、流延溶液は、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーを、流延溶液の質量に対して0.2〜20質量%の濃度で、均質な溶解状態で含有する。
【0032】
親水性に変性された芳香族スルホンポリマーは、親水性の官能基がスルホンポリマーに共有結合されているものである。しかしながらまた、親水性セグメントが含まれているスルホンポリマーを基礎とするコポリマーであり、例えばスルホンポリマーとポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーとのコポリマーである。適合性の理由から、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、疎水性の第一の芳香族スルホンポリマーを基礎とする場合が特に好ましい。すなわち膜構造は、疎水性の第一の芳香族スルホンポリマーとこのポリマーの親水性変性物とからなる混合物を含有する。非常に良好な成果は、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、スルホン化されたスルホンポリマーであり、その際、このスルホン化されたスルホンポリマーが、好ましくは3〜10%のスルホン化度を有する場合に達成される。本発明による、ポリエーテルスルホンとスルホン化されたポリエーテルスルホンとの組合せを含有する膜は、水及びタンパク質についての特に高い透過率に並んで、例えばタンパク質の低い吸着傾向を示すので、僅かな膜汚れしか示さない。
【0033】
とりわけ、その特定の構造とその表面特性に基づき、本発明による膜は、高い透過率と、水についての高い膜間流動の点で優れている。本発明による膜は、好ましくは、少なくとも10000l/(m2・h・bar)の膜間流動TMFを有し、その際、膜間流動は、最大分離孔の直径dmaxに依存して、同時に、条件(III):
TMF ≧ 85000・dmax2 (III)
[式中、dmaxは、最大分離孔の直径(μm)であり、かつ分離層中の最大細孔の直径を示している]を満たし、それは、膜間流動が分離層中の細孔のサイズに依存することを反映している。本発明の好ましい一実施態様においては、膜間流動は、条件(IV)
TMF ≧ 105000・dmax2 (IV)
を満たす。
【0034】
最大分離孔の直径は、バブルポイント法(ASTM番号128−61及びF316−86)によって測定され、それには、例えばDE−A−3617724号に記載される方法が適している。その際、dmaxは、バブルポイントに属するガス室圧PBから、式(V)
dmax = σB/PB (V)
に従って得られる。
【0035】
この場合に、σBは定数であり、それは主に、測定に際して使用される湿らせる液体に依存している。水に関しては、σBは、25℃で2.07μm・barである。特に好ましい一実施態様においては、本発明による膜間流動は、少なくとも15000l/(m2・h・bar)である。
【0036】
驚くべきことに、本発明による膜は、タンパク質水溶液に卓越した透過率を示す。好ましくは、本発明の膜は、BSA(ウシ血清アルブミン)水溶液について、少なくとも750l/h・m2の濾過流量を示し、その際、濾過流量は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液の濾過開始の15分後に、膜間圧力0.4barで測定される。特に好ましくは、BSA水溶液の濾過流量は、少なくとも1000l/h・m2であり、優れた本発明による膜は、少なくとも2000l/h・m2のBSA水溶液の濾過流量を示す。
【0037】
タンパク質水溶液についての高い濾過流量以外にも、本発明による膜は、係るタンパク質溶液の濾過時間にわたっての濾過流量が、高い安定性を示す、すなわちその時間にわたって比較的少ない濾過流量の低下しか確認されないという点で優れている。好ましい膜は、少なくとも35%の濾過流量維持を示し、その際、前記濾過流量維持は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液を膜間圧力0.4barで濾過するに当たっての、120分後の濾過流量と5分後の濾過流量との比率として定義される。特に好ましくは、本発明による膜の濾過流量維持は、少なくとも45%であり、最高限度において少なくとも50%である。タンパク質溶液の濾過における係る好ましい流動特性を有する膜は、先行技術において見出すことができない。特に、前記のBSA溶液についての流動特性は、分離層中に比較的小さい細孔を有する本発明による膜に関しても、すなわち好ましくは0.2μmの公称細孔径を有する膜について既に確認されている。その際、公称細孔径は、特定の微生物に対する当該膜の拘束能について定義されている。ここで、例えば公称細孔径0.2μmを有する膜は、ブレブンディモナス・ディミヌータ属の細菌を拘束し、公称細孔径0.45μmを有する膜は、セラチア・マルセッセンスなどの属の細菌を拘束する。更なる慣用の公称細孔径サイズは、0.1μm、0.6μm、そして1.2μmである。公称細孔径サイズの試験もしくは調査は、例えばHIMA規格第3号第4巻(1982年)(医療産業製造者協会)において記載されている。
【0038】
本発明による平板形状の膜、すなわち本発明による平坦膜は、特に精密濾過に適している。係る膜は、一般に、0.01〜10μm、好ましくは、0.1〜5μm、特に好ましくは、0.2μm〜2μmの最大分離孔の直径を有する。好ましくは、本発明による平坦膜は、10〜300μm、特に好ましくは30〜150μmの厚さを有する。
【0039】
本発明を、以下の実施例及び図面をもとにより詳細に説明する。その際、本発明の範囲は、実施例によって制限されるものではない。
【0040】
図面は、以下のことを示す:
図1は、実施例1による膜の断面の600倍の拡大率での走査型電子顕微鏡(REM)写真を示す。
【0041】
図2は、実施例1による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0042】
図3は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0043】
図4は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0044】
図5は、実施例2による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0045】
図6は、実施例2による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0046】
図7は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0047】
図8は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0048】
図9は、実施例3による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0049】
図10は、実施例3による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0050】
図11は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0051】
図12は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0052】
実施例においては、膜を特徴付けるために以下の方法を使用した:
気孔率の算出:
調査されるべき膜の約15cm2のサンプル4つを秤量し、約50mlの水中で16時間にわたり貯蔵する。引き続き、それらのサンプルを水から取り出し、過剰の水を吸い取り紙で除去する。こうして前処理されたサンプルを、秤量して湿質量を出し、次いでそれを50℃で16時間乾燥させる。冷却した後に、乾燥されたサンプルの質量(乾質量)を出す。
【0053】
気孔率は、サンプルの乾燥質量の平均値に対する、吸水量(湿質量から乾質量を引く)の平均値から、水及び膜構造を構成するポリマー(疎水性の第一のポリマー)の密度を用いて算出される。
【0054】
膜間流動(水透過率):
試験されるべき膜から15cmの直径を有するディスク形状の膜サンプルを抜き出し、そして好適なサンプルホルダにその周辺で液密に、43.20cm2の自由測定面が得られるように張り付ける。サンプルホルダは、水が圧力下に流過できるハウジング中に存在する。張り付けられた膜サンプルに、次いで、膜の分離層が存在する側から、25℃に温度調節された完全脱塩水を0.4〜1.0barの規定の圧力下で流過させる。60秒の測定時間の間に膜サンプルを流過した水量を、重量分析法もしくは容積分析法によって測定する。
【0055】
膜間流動TMFは、式(VI)
【数1】
に従って算出する。前記式中、
VW = 測定時間の間に膜サンプルを流過した水量[ml]
Δt = 測定時間[分]
AM = 膜サンプルの流過面積(43.20cm2)
Δp = 測定の間に設定された圧力[bar]
【0056】
汚泥負荷能力の算出
汚泥負荷能力は、可溶性のインスタントコーヒー粉末を基礎とする試験媒体を膜に流過させた場合の膜の閉塞挙動をもとに算出される。
【0057】
試験媒体として、200mgの可溶性のインスタントコーヒー粉末を5lの完全脱塩水中に溶かした溶液を、撹拌機を備えた圧力容器中に装入し、そして撹拌機によって測定の間中均質に保つ。調査されるべき膜から抜き出された直径50mmを有する膜サンプルを、フィルタホルダ中に、分離層と反対側、すなわち流し込む側である開放気泡側が、試験の間に試験媒体によって流し込まれるように張り付ける。効果的なフィルタ表面積は、9.6cm2である。0.4barの一定圧力で、圧力容器からの試験媒体を、10分間の期間にわたって膜に流通させる。流過した試験溶液の容積を、経時的に記録し、試験溶液の膜間流動TMFPMの測定されたデータから、水についての膜間流動と同様に経時的に算出する。膜間流動TMFPMの経時的な変化から、すなわち10分の測定時間後のTMFPMと測定開始時のTMFPMとの比率から、膜の閉塞挙動についての、ひいてはその汚泥負荷能力についての表現が導き出される。その際に、試験媒体の経時的な膜間流動TMFPMが少ししか変化しない(そのことは、膜がたいして閉塞しないということに起因する)ときには、その膜は高い汚泥負荷能力を示す。
【0058】
ウシ血清アルブミン水溶液(BSA溶液)の濾過流量の算出
BSA水溶液の濾過流量は、再循環供給流を有するクロスフロー研究用装置で測定する。調査されるべき膜のうち、それぞれ約5.3cm2のサンプル2つを並行して調査する。それらの膜サンプルを、まず、リン酸緩衝溶液(pH5、67mM)中で平衡化させ、次いで試験セル中に導入する。次いで、リン酸緩衝溶液について、その流量を、0.4barで60分間の間で、あるいは安定した値が得られるまで測定する。次に、供給流用の貯蔵容器にBSA溶液(2g/l、リン酸緩衝液中、pH5)を充填し、それらの膜サンプルを通じた濾過流量JMF[l/(h・m2)]を、0.4barで連続的に120分の間で測定する。
【0059】
実施例1:
加熱可能な槽中で、75質量%のγ−ブチロラクトン及び25質量%のε−カプロラクタムからなる40℃に温度調節された混合物55.31kgを装入し、そして撹拌しつつ、5%のスルホン化度を有するスルホン化されたポリエーテルスルホン(SPES)1.05kgを1時間以内で溶解させた。引き続き、ポリエーテルスルホン(PES、型Ultrason E6020、BASF社製)13.95kgを撹拌しつつまぶして、4時間の間で溶解させる。次いで、ポリビニルピロリドン(PVP、型K30、ISP社製)11.25kgを微分散状態に撹拌導入して、均質化させる。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、95℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ8時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を80℃に冷却した後に、18.44kgのポリエチレングリコールPEG200をゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その膜溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。得られた均質な溶液は、40℃で粘度3.6Pa sを有していた。
【0060】
完成した流延溶液を、40℃に温度調節された流し込み型によって、62℃に温度調節された金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さを有する被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、44℃及び48%の相対空気湿度にしてから、それを62℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。膜構造の形成のための11秒間の滞留時間の後に、その被膜を、流延ドラム速度に対して9%だけ高められた速度を有する剥離ドラムによって流延ドラムから剥離し、それによって該被膜もしくは膜構造を延伸して、表面細孔を開放させた。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約5%の更なる速度増加を行った。
【0061】
こうして製造された膜は、永続的に親水性であり、自発的に水湿潤可能であり、かつバブルポイント法によって測定された最大分離孔径は、0.48μmであり、公称細孔径は、0.2μmであった。前記膜は、約27000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、かつ83容積%の気孔率を有する。濾過開始の15分後でのBSA水溶液についての濾過流量は、約7400l/h・m2まで測定された。5分後のBSA溶液についての濾過流量と120分後のBSA溶液についての濾過流量は、8200l/h・m2であり、あるいは4500l/h・m2であるので、濾過流量維持55%が得られた。前記の膜は、高い汚泥負荷能力を有していた。その試験において、前記の膜は、使用される試験媒体について経時的に比較的一定のTMFPMを示し、10分後には、TMFPMは、20%だけしか低下しなかった。
【0062】
前記膜は、その断面をつうじ、内在する分離層を有した構造を有する。すなわち最小細孔サイズを有する層は、膜壁内部に、製造に際して空気に向かい合った膜側から約10μmの間隔にあった(図1、図2)。図1に示されるREM写真によれば、細孔サイズは、最小細孔サイズを有する層から外側にドラム側までで非対称領域内でまず増大し、次に壁厚の約1/4の領域にわたり、実質的に等方性領域内でほぼ不変に保たれている。次に隣接する膜表面の直前で、細孔サイズは、ドラム表面までで低下している。ドラム側も(図3)、膜の空気側も(図4)、開放気泡構造を有している。膜のドラム側における細孔の平均細孔サイズは、明らかに5μmより大きい。
【0063】
実施例2:
実施例1でのように行ったが、その際、雰囲気調節領域において、温度44℃及び相対空気湿度62%に調整した。
【0064】
こうして得られた膜は、バブルポイント法によって測定された最大分離孔径0.65μmと公称細孔径0.45μmを有していた。前記膜は、約54000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、そしてBSA溶液に対する高い透過性を示すのと同時に、経時的な透過性の低下は僅かであった。前記の膜は、同様に、高い汚泥負荷能力を有していた。前記の膜は、その試験において経時的に、相対的に一定な膜間流動TMFPMを示した;10分後に、TMFPMは、出発値の約75%にまでしか低下しなかった。
【0065】
前記の膜は、同様に、その断面を通じて、内在する分離層を有した本発明による構造を有していた(図5)。最小細孔サイズを有する層から外側に、細孔サイズは、膜の製造に際して流延ドラムに向かい合っていた膜の側にまで、すなわちドラム側までで、非対称領域中でまず増大し、そして次いで壁厚の約1/3の領域にわたって実質的に不変のままであった。次に隣接する膜表面の直前で、細孔サイズは、その表面までで低下していた。最小細孔サイズを有する層、すなわち分離層は、膜壁内部で、境界表面から、すなわち膜の空気側から約10〜15μmの間隔に見出された(図6)。膜のドラム側(図7)及び空気側(図8)は、顕著な開放気泡性の構造を有している。
【0066】
実施例3:
実施例1と同様に行った。実施例1との相違点として、流延ドラムと凝結浴を、70℃の温度に調整した。雰囲気調節された帯域において、温度44℃及び相対空気湿度69%に保った。凝結浴中の剥離ドラムは、流延ドラム速度に対して10%だけ高められた速度を有していた。
【0067】
こうして得られた膜は、バブルポイント法によって測定された最大分離孔径0.87μmと公称細孔径0.60μmを有していた。前記膜は、約102000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、そしてBSA溶液に対する高い透過性を示すのと同時に、経時的な透過性の低下は僅かであった。前記の膜は、高い汚泥負荷能力を有していた。その試験において、前記の膜は、使用される試験媒体について経時的に比較的一定のTMFPMを示した;TMFPMは、1時間後にも高い水準であった。
【0068】
前記膜の構造は、図9〜図12に示されるREM写真から明らかである。それによれば、前記膜は、同様に、その断面にわたって、内在する分離層を有する本発明による一体型の非対称細孔構造を示している(図9)。前記の膜についても、細孔サイズは、分離層から外側にドラム側までまず増大し、次いでほぼ壁中央部から実質的に一定に保たれ、そして引き続き膜のドラム側までで低下している。最小細孔サイズを有する層、すなわち分離層は、膜壁内部で、境界表面から、すなわち膜の空気側から約15μmの間隔に見出された(図10)。そのドラム側(図11)は、その表面中に大きな細孔を有する開放気泡性であった。該膜の空気側(図12)は、同様に、均一形状の細孔サイズを有する開放気泡構造を示した。
【0069】
実施例4:
加熱可能な槽中で、75質量%のγ−ブチロラクトン及び25質量%のε−カプロラクタムからなる40℃に温度調節された混合物55.31kgを装入し、そして撹拌しつつ、ポリエーテルスルホン(PES、型Ultrason E6020、BASF社製)15kgをまぶし、そして4時間の間で溶解させた。次いで、ポリビニルピロリドン(PVP、型K30、ISP社製)11.25kgを微分散状態に撹拌導入して、均質化させる。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、95℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ8時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を80℃に冷却した後に、18.44kgのポリエチレングリコールPEG200をゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その流延溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。
【0070】
完成した流延溶液を、30℃に温度調節された流し込み型によって、66℃に温度調節された金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さの被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、42℃及び51%の相対空気湿度にしてから、それを66℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。膜構造の形成後に、その被膜を、流延ドラム速度に対して6%だけ高められた速度を有する剥離ドラムによって流延ドラムから剥離し、それによって該被膜もしくは膜構造を延伸して、表面細孔を開放させた。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって約60〜80℃で行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約9%の更なる速度増加を行った。
【0071】
こうして得られた膜のバブルポイント法によって測定された最大分離孔は、0.47μmのサイズを有していた。公称細孔径は、0.20μmであった。前記膜は、約27400l/(m2・h・bar)の膜間流動を有していた。
【0072】
前記膜は、REM写真によれば、壁中に内在する分離層を有した非対称細孔構造を示している。分離層から外側に、その構造は、膜の製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)まで、顕著な粗大孔質の構造へと移行している。その表面の直近において、細孔構造は、再び幾らか濃密になっており、それによって表面層の良好な機械的安定性と、その下にある粗大孔質の層の機械的安定性が保証されている。もう一方の表面(空気側)にまで、その構造は同様に粗大孔質であるが、ドラム側までよりも明らかに僅かな程度である。
【0073】
実施例5:
加熱可能な槽中に、46.45kgのγ−ブチロラクトン及び15.49kgのε−カプロラクタムからなる40℃に温度調節された混合物を装入し、その中に撹拌しつつ、まず、5%のスルホン化度を有するスルホン化されたポリエーテルスルホン(SPES)1.05kgと、引き続きポリエーテルスルホン(PES、型Ultrason E6020、BASF社製)13.95kgを、撹拌しつつまぶして、4時間の間で溶解させた。次いで、高分子のPVP型K90(ISP社製)3.5kgを微分散状態に撹拌導入して、均質化させた。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、95℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ8時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を80℃に冷却した後に、19.56kgのポリエチレングリコールPEG200を非常にゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その流延溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。
【0074】
完成した流延溶液を、30℃に温度調節された流し込み型を用いて、66℃に温度調節され、かつ3.0m/分の速度で動く金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さを有する被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、41℃及び47%の相対空気湿度にしてから、それを66℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。膜構造の形成後に、その被膜を、流延ドラム速度に対して6%だけ高められた速度を有する剥離ドラムによって流延ドラムから剥離し、それによって該被膜もしくは膜構造を延伸して、表面細孔を開放させた。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって約60〜80℃で行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約9%の更なる速度増加を行った。
【0075】
こうして得られた膜のバブルポイント法によって測定された最大分離孔は、0.55μmのサイズを有していた。前記膜は、約45000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、そしてBSA溶液に対して高い透過性を示した。
【0076】
実施例6:
加熱可能な槽中に、22.645kgのN−メチルピロリドン(NMP)を40℃で装入し、そして撹拌しつつ、まずポリエーテルスルホン(PES)(型Ultrason E6020、BASF社製)7.50kgと、次いで高分子のPVP型K90(ISP社製)2.063kgを、微分散状態に撹拌導入して、均質化させた。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、90℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ6時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を60℃に冷却した後に、1.618kgの水と16.175kgのポリエチレングリコールPEG200とからなる混合物を非常にゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その流延溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。
【0077】
完成した流延溶液を、40℃に温度調節された流し込み型を用いて6.0m/分の完成速度において、60℃に温度調節された金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さを有する被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、43℃及び57%の相対空気湿度にしてから、それを60℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって約60〜80℃で行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約25%の更なる速度増加を行った。
【0078】
こうして得られた膜のバブルポイント法によって測定された最大分離孔は、0.56μmのサイズを有していた。その膜間流動は、約36000l/(m2・h・bar)であった。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、実施例1による膜の断面の600倍の拡大率での走査型電子顕微鏡(REM)写真を示す。
【図2】図2は、実施例1による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図3】図3は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図4】図4は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図5】図5は、実施例2による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図6】図6は、実施例2による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図7】図7は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図8】図8は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図9】図9は、実施例3による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図10】図10は、実施例3による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図11】図11は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図12】図12は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホンポリマーの群からの被膜形成性の疎水性の第一のポリマーを基礎とする精密濾過用の一体型の非対称膜であって、前記膜が、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有する多孔質構造を有し、かつ膜壁の内側には、最少の細孔サイズを有する分離層を有し、前記分離層から第一の表面への方向に外側に向かって第一の非対称領域を有し、かつ第二の表面への方向に第二の非対称領域を有し、細孔サイズが、それらの表面に向かって増大している、一体型の非対称膜に関する。更に、本発明は、係る膜の製造方法に関する。
【0002】
ミクロ孔質のポリマー膜は、工業的用途、製薬的用途又は医学的用途の種々の範囲において精密濾過のために使用される。前記の用途において、膜分離プロセスは重要性が益々高まっている。それというのも、このプロセスは、分離されるべき物質が、熱負荷されない又は全く損傷されないという利点を提供するからである。精密濾過膜は、例えばサブミクロン範囲までの寸法を有する微細粒子又は微生物の除去を可能にするので、前記膜は、研究所で又は半導体産業に使用するための精製水の製造に適している。膜分離プロセスの多くの更なる用途は、飲料産業、生物工学又は廃水工学から知られている。
【0003】
その際に、高い程度の非対称性を有する膜であって1つの分離層と、該層に隣接した、その分離層と比較して粗大な細孔を有するミクロ孔質の支持構造とを有する膜を使用することが好ましい。その際、分離層中の細孔は、その膜の固有の分離特性を決定する。すなわち、分離層中の細孔の寸法によって、その膜により拘束される粒子もしくは分子の寸法が支配されている。前記用途において、係る膜はしばしば使用され、当該膜は、開放気泡側から流動に供されるため、ミクロ孔質の支持層は分離層用のプレフィルタとして機能する。それによって、その膜の汚泥負荷能力は高められる。膜を流過した液体は、まず、より大きい細孔へと入り、そして最後に分離層の小さい細孔へと入る。それにより、液体中に含まれている粒子は、それが分離層に至って、分離層を閉塞しうる前に、粗大孔質の支持層において拘束される。
【0004】
その際、例えばポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンなどのスルホンポリマーは、とりわけ、その高い化学的安定性、その温度安定性もしくは前記ポリマーから製造された膜の滅菌可能性のため、しばしば使用される膜材料である。しかしながら、前記ポリマーは疎水性ポリマーであって、その使用は、水性媒体の濾過に限定される。更に、疎水性材料からなる膜は、強力な非特異的な吸着力を有するため、その使用に際して、しばしば、濾過されるべき液体の有利には高分子成分によって当該膜の表面が覆われ、最終的には透過性の悪化が引き起こされる。
【0005】
US−A−5866059号は、精密濾過用のポリエーテルスルホン膜であって、前記膜が、顕著に非対称な構造を有し、その膜の第一の側面に比較的小さい細孔を有する被膜を有し、かつ前記側面から外側に向かって膜壁を通じて別の側の膜の第二の側面にまで細孔サイズが増大しており、その際、第二の側面での細孔は、第一の側面上の皮膜中の細孔よりも50〜10000倍だけ大きい、ポリエーテルスルホン膜を開示している。係る構造を有する膜は、一方で、最小の細孔を有する層、すなわち膜表面にある分離層に対して機械的損傷を受けやすい。他方で、前記膜は、特殊な非対称構造に基づき、あまり良くない機械的安定性しか有さない。
【0006】
US−A5866059号に従って製造される膜は疎水性であって、たかだか後処理によって親水性化できるにすぎない。それに対して、US−A−6045899号に開示される、スルホンポリマーを基礎とする一体型の非対称膜は、この膜の製造に際して、例えばポリビニルピロリドンのような親水性ポリマーをポリマー溶液に入れているので親水性の特性を有する。
【0007】
US−A−5906742号は、同様に、スルホンポリマーを基礎とする親水性の一体型の非対称ポリマー膜を開示している。これらの膜は、ミクロ孔質の被膜と、それに隣接した多孔質の支持構造とを有し、その際、前記多孔質の支持構造は、前記被膜に隣接した実質的に一定の細孔サイズを有する等方性領域を有し、更に、前記等方性領域に隣接した非対称領域を有し、その際、その等方性領域から外側に向かって細孔サイズが増大している。前記等方性領域は、壁部の約15〜25%にわたって延びており、その際、当該等方性領域中の細孔サイズは、ミクロ孔質被膜中の細孔サイズよりも幾らか大きい。前記の膜についても、分離層である被膜は、機械的損傷を受けやすい。小さい細孔サイズを有する比較的広い等方性領域に基づいて、前記の膜については、液体を流過させた場合に比較的高い圧力損失が予想される。
【0008】
分離層が機械的損傷を受けやすいことを回避するために、US−A−4933081号においては、ミクロ孔質のポリスルホン膜であってその分離層が膜壁内部に存在するものが開示されている。前記膜は、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有し、かつ一方の膜表面から好ましくは1〜30μmの間隔において最小の細孔サイズを有する層を有する。この最小の細孔サイズを有する層から外側に向かって、細孔サイズは、膜の両側の表面に向かって増大する。分離層と向かい合った表面の細孔の直径は、分離層の反対側の表面における細孔の直径よりも10〜100倍だけ小さく、従って、US−A−4933081号の膜は高い非対称性を有する。しかしながら、US−A−4933081号の膜は疎水性であって、親水性にするために更なる処理に供さねばならない。
【0009】
EP−A−361085号は、ポリエーテルスルホンからなる一体型の非対称膜を開示している。その実施例において、外側領域において約50〜100μm厚の微細孔質で外側に開放した構造を有し、膜の中央に向かうにつれ粗大孔質となる構造物に移行する中空糸膜が記載されている。内径側に向かって、その構造は再び密になる。前記膜の内表面は、開放気泡である。EP−A−361085号に開示される膜の膜間流動は、比較的少ない。
【0010】
本発明の課題は、スルホンポリマーを基礎とする、特に精密濾過用の膜であって、親水性の特性を有し、高い透過率を有し、かつ高い汚泥負荷能力を有し、そして機械的作用を受けにくい膜を提供することである。更に、本発明の課題は、係る膜の製造方法を提供することである。
【0011】
前記の本発明による課題は、芳香族スルホンポリマーの群からの被膜形成性の疎水性の第一のポリマーを基礎とする、特に精密濾過用の、平板の形態における、一体型の非対称膜であって、前記膜が、第一の多孔質表面及び第二の多孔質表面と、それらの表面の間に存在する壁内部を有し、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有する多孔質構造を有し、かつ前記壁内部において最小の細孔サイズを有する分離層を有し、この分離層から第一の表面への方向に外側に向かって第一の非対称領域を有し、かつ第二の表面への方向に第二の非対称領域を有し、細孔サイズが、それらの表面の方向で増大しており、かつ第二の表面が、少なくとも1μmの平均直径を有する細孔を有する、一体型の非対称膜において、前記膜の少なくとも40質量%までが被膜形成性の疎水性の第一のポリマーから成ることと、前記膜が、親水性の第二のポリマーを含み、その親水性の第二のポリマーの濃度が、膜の質量に対して0.1〜10質量%であることと、最小の細孔サイズを有する分離層が、一方の第一の表面に向かい合った膜壁の領域中に存在し、かつ細孔サイズが、第二の非対称領域に続き第二の表面への方向で最大値を通過することと、を特徴とする一体型の非対称膜によって解決される。
【0012】
本発明による膜における最小の細孔サイズを有する分離層は、膜壁の内側に存在するので、該分離層は、例えばハウジング中に嵌め込むために膜を加工する際に、特に例えば平坦膜のプリーツ加工に際して、又は使用中での浄化サイクルに際して、機械的な損傷に対して保護されている。好ましくは、最小の細孔サイズを有する分離層は、第一の表面から膜壁の壁厚の3〜30%の間隔に存在する。好適な走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によるもの以外に、内部にある分離層の存在は、簡単な染色技術によっても具体的に示すことができる。染色技術によって、膜断面にわたる種々の細孔サイズを、光学顕微鏡によって適した倍の拡大率で可視化させることができる。細孔のサイズに応じて、膜構造の様々な強さの染色が行われ、その際、構造が微細孔質であればあるほど、ますます染色は強くなる。
【0013】
本発明によれば、細孔サイズは、第二の非対称領域に続き第二の表面への方向で最大値を通過し、その際、その最大値は、第二の表面から、好ましくは膜壁の壁厚の3〜75%の間隔を有する。本発明による膜の好ましい一実施態様においては、細孔サイズの最大値は、第二の非対称領域に続く、実質的に等方性の領域に存在するか、あるいは前記の等方性領域の一部であり、その際、その等方性領域は、膜壁の15〜70%にわたって延びている。この場合に、本発明の範囲において、実質的に等方性の領域とは、実質的に一定の細孔サイズを有する膜壁の領域を表し、その際、走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡の写真をもとにして評価が行われる。等方性領域は、膜壁を通じて延びている、実質的に一定な平均直径を有する流路を有する領域としても見なすことができる。あらゆる膜の場合と同様に、本発明による膜の場合にも、事実上の細孔サイズは多少変動する。すなわち、細孔サイズ分布が視覚的に等方性に見えるときにも、膜は所定の細孔サイズ分布を有する。従って、本発明には、細孔サイズが最大で約15〜20%だけ変動する、実質的に等方性の領域の実施態様も含まれる。細孔サイズが更に高まらない等方性領域の好ましい存在によって、機械的安定性の改善と同時に、高い汚泥負荷能力の維持も達成される。
【0014】
最大値もしくは等方性領域に続き、本発明による膜の細孔サイズは、第二の表面への方向で低下する。その際、当該膜の高い透過率と高い汚泥負荷能力の達成のためには、高い開放気泡性を得ようとする努力がなされ、特に等方性領域が存在する場合には、第二の表面における大きな細孔直径を得ようとする努力がなされ、その際、前記表面中の細孔は、細孔サイズの最大値が存在する層中の細孔よりも小さい。本発明によれば、第二の表面における細孔の平均直径は、少なくとも1μmであり、好ましくは少なくとも2μmであり、特に好ましくは少なくとも5μmである。
【0015】
その際、本発明による膜の好ましい一実施態様においては、第二の表面における細孔の平均サイズと、第一の表面における細孔の平均サイズとの比率は、少なくとも5であり、特に好ましくは少なくとも10である。係る膜において、顕著な非対称性に基づき、第二の表面の高い開放性と組み合わさって、高い汚泥負荷能力が達成される。
【0016】
その特殊な構造に基づいて、本発明による膜は、高い安定性もしくは機械的強さと同時に、高い汚泥負荷能力を有し、その際、この安定性は、膜の気孔率が高い場合にも成される。係る強さは、非対称領域が膜壁の第二の表面にまで細孔サイズを高めつつ延びている同等の膜では達成されない。従って、本発明による膜は、同時に高い気孔率を有することができ、そのことは高い透過率にとって、従って高い膜間流動にとって、並びに高い汚泥負荷能力にとって好ましい。好ましくは、本発明による膜は、少なくとも75体積%の気孔率を有し、特に好ましくは、少なくとも80体積%の気孔率を有し、その際、その気孔率が80〜90体積%にあるときに、特に好ましいことが判明した。
【0017】
本発明の範囲において、汚泥負荷能力は、可溶性のインスタントコーヒー粉末の水溶液を基礎とする試験媒体を膜に流過させた場合の膜の閉塞挙動をもとに測定される。前記の試験媒体の膜を通じての経時的な膜間流動TMFPMの変化から、膜の閉塞挙動についての表現、従ってその汚泥負荷能力についての表現を導き出すことができる。その際に、試験媒体の経時的な膜間流動TMFPMが少ししか変化しない(そのことは、膜がたいして閉塞しないということに起因する)ときには、その膜は高い汚泥負荷能力を示す。本発明による膜は、有利には、水1リットル当たり0.04gの可溶性のインスタントコーヒー粉末の水溶液からなる試験媒体の膜間流動TMFPMの少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.65での保持を示し、その際、膜間流動TMFPMの保持は、10分の測定時間後のTMFPMと測定開始時のTMFPMとの比率として定義される。
【0018】
本発明による課題は、更に、本発明による膜の製造方法によって解決され、その際、前記方法は、以下の段階:
a. ポリマー成分と溶剤系とからなる均質な流延溶液を製造する段階、
その際、前記ポリマー成分は、溶液の質量に対して10〜25質量%の、芳香族スルホンポリマーの群からの疎水性の第一のポリマーと、溶液の質量に対して2〜20質量%の、親水性の第二のポリマーとを含み、そして前記溶剤系は、溶剤系の質量に対して5〜80質量%の、前記ポリマー成分用の溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜80質量%の、前記ポリマー成分用の潜伏性溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜70質量%の、前記ポリマー成分用の非溶剤とからなる、
b. 前記均質な流延溶液を、成形温度にまで温度調節する段階、
c. 温度調節可能であり、前記の流延溶液の成形温度より高く、かつ速度v1を有する支持体上に前記均質な流延溶液を流延して、被膜とする段階、
d. 前記支持体上に存在する被膜を、雰囲気調節された帯域に導く段階、
e. 前記支持体上に存在する被膜を凝結媒体中に導入して、被膜の凝結を誘発し、膜の構造を形成させる段階、
f. 前記膜構造を支持体から、速度v2で移動する剥離装置によって凝結媒体の内部で剥離する段階、
その際、前記速度v2は、支持体の速度v1よりも大きく、それによって膜構造は、延伸を受ける、
g. 前記膜構造を凝結媒体中で安定化させる段階、
h. こうして得られた膜を取り出して、引き続き該膜を乾燥させる段階
を含む。
【0019】
流延溶液の製造のために使用される溶剤系は、膜形成性のスルホンポリマーに適合されている。有利には、その溶剤系には、極性非プロトン性溶剤、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンもしくはそれらの混合物又はプロトン性溶剤、例えばε−カプロラクタムが含まれる。更に、その溶剤系は、80質量%までの潜伏性溶剤を含有してよく、その際、本発明の範囲における潜伏性溶剤とは、スルホンポリマーを不十分にのみ又は高められた温度で初めて溶解するものを表す。溶剤としてε−カプロラクタムを使用する場合に、例えばγ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート又はポリアルキレングリコールを使用することができる。更に、その溶剤系は、膜形成性ポリマーについての非溶剤、例えば水、グリセリン、1000ダルトン未満の質量平均分子量を有する低分子ポリエチレングリコール又は低分子アルコール、例えばエタノールもしくはイソプロパノールを含有してよい。
【0020】
本発明による方法の実施と、本発明による膜の特徴付けられた構造の形成のためには、流延溶液の粘度が、10Pa s未満の値に調整されている場合が好ましく、特に前記粘度が、5Pa s未満の値に調整されている場合が好ましい。その際、前記粘度は、40℃で測定される。粘度の調整は、特に本発明による方法で使用される親水性の第二のポリマーの選択及び濃度によって行うことができる。
【0021】
流延溶液を流延して被膜とするのは、自体公知のように行われ、例えば幅広スリットノズル、流し込み型又はドクターブレードによって行うことができる。遅くとも成形工具中で、前記流延溶液は、成形温度にまで調整される。流延溶液の流延は、温度調節可能な支持体上で行われ、その際、ここでも通常の支持体を用いることができ、そこから後に凝結した膜を剥離することができる。例えば、被覆紙又は金属ベルトを使用することができる。有利には、前記の温度調節可能な支持体は、温度調節可能な加熱ドラム、すなわち流延ドラムであり、その上に被膜が流延される。
【0022】
本発明に必須なのは、支持体の温度が、流延溶液の成形温度より高いことである。これによって、流延された被膜の厚さにわたって流延溶液中に濃度勾配が生ずる。高められた支持体温度によって、流延された被膜は、支持体の範囲内でより低い粘度を有し、それにより後の凝結媒体との接触に際して、より粗大孔質の構造が形成する。有利には、支持体温度は、成形温度よりも、少なくとも15℃、特に好ましくは少なくとも20℃だけ高い。
【0023】
内在する分離層を有する非対称構造の作製のために、更に、支持体上に存在する被膜を、定義された温度と定義された相対空気湿度が調整されている雰囲気調節された帯域に導くことが必要である。有利には、雰囲気調節された帯域中の温度は、35〜55℃の範囲にあり、その相対空気湿度は、有利には40〜75%の範囲に調整される。雰囲気調節された帯域での被膜の滞留時間と、雰囲気調節された帯域において空気を流延された被膜に通す流動速度は、予備凝結が、非溶剤として作用する空気湿分の取り込みによって誘導され、そして膜壁内で最小の細孔サイズを有する分離層が得られるように見積もるべきである。雰囲気調節された帯域中の条件は、同時に、分離層中の細孔サイズにも影響を及ぼす。
【0024】
雰囲気調節された帯域を通した後に、支持体上に存在する被膜を凝結媒体中に導き、そして凝結を引き起こして、膜構造を形成させる。有利には、凝結媒体を、室温より高い温度に温度調節するが、特に40℃より高い温度が好ましい。本発明による方法の好ましい一実施態様において、凝結媒体は、水もしくは水浴である。
【0025】
凝結媒体中で、被膜を、まずこれが既に十分な安定性を有し、かつ支持体から、すなわち好ましくは流延ドラムから剥離できるようになるまで沈殿させて、膜構造を得る。流延ドラムからの剥離は、剥離装置によって、例えば剥離ドラムによって行われ、その際、本発明によれば、剥離速度v2は、支持体の速度v1よりも大きいため、前記膜構造は延伸を受ける。好ましくは、剥離装置の速度v2と支持体の速度v1との比率は、1.05:1〜1.2:1の範囲にある。これによって、生じた膜の支持体と向かい合った側面で高い表面多孔質が得られる。
【0026】
剥離装置に引き続き、後続の凝結ベルトにおいて、凝結を完全なものとし、そして膜を安定化させる。この凝結ベルトは、前記の第一の凝結浴よりも高い温度を有してよい。その温度は、浴から浴へと段階的に高めることができる。その際、凝結ベルトにおいて、同時に溶剤系の抽出が行われ、そして一般に膜構造から親水性の第二のポリマーの一部が抽出されるので、該凝結ベルトは、同時に洗浄ベルト又は抽出ベルトとしても機能する。前記凝結ベルトもしくは洗浄ベルトにおける凝結媒体もしくは洗浄媒体としては、好ましくは水が使用される。
【0027】
抽出後に、得られた膜を、例えばドラム乾燥機によって乾燥させ、乾燥された膜は次いで巻取られる。膜の抽出と乾燥の間に、同様に、例えば表面多孔質及び分離特性を規定通りに調整するために、僅かな延伸をすることが好ましい。
【0028】
本発明によれば、当該膜は、芳香族のスルホンポリマーの群からの疎水性の第一のポリマーを基礎とし、かつ更に親水性の第二のポリマーを含有する。芳香族のスルホンポリマーとしては、本発明の範囲においては、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリールエーテルスルホンもしくは前記のポリマーのコポリマーあるいは変性物又は前記ポリマーの混合物を互いに使用することができる。好ましい一実施態様においては、疎水性の第一のポリマーは、以下の式(I)及び(II)
【化1】
で示される繰り返し分子単位を有するポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンである。
【0029】
特に好ましくは、疎水性の第一のポリマーとしては、式(II)によるポリエーテルスルホンが使用される。それというのも、当該ポリマーは、例えばポリスルホンよりも低い疎水性を有するからである。
【0030】
親水性の第二のポリマーとしては、好ましくは、長鎖のポリマーが使用され、前記ポリマーは、疎水性の第一のポリマーと良好な適合性を有し、かつ自体親水性の繰り返しポリマー単位を有する。10000ダルトンより大きい平均分子量Mwを有する係る親水性ポリマーが好ましい。親水性の第二のポリマーとして使用されるポリマーは、同時に本発明による方法において、均質な紡糸液の粘度を高める、すなわち増粘剤として機能するという課題を有するため、このポリマーを、しばしば増粘剤とも呼称する。その他に、前記ポリマーは、膜構造の形成に際して、細孔形成剤又は成核剤としても作用する。親水性の第二のポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリソルビテート、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、カルボキシメチルセルロース又は前記ポリマーの変性物もしくはコポリマーであることが好ましい。特に、ポリビニルピロリドンが好ましい。更なる好ましい実施態様においては、種々の親水性ポリマーの混合物を使用することも可能であり、特に種々の分子量を有する親水性ポリマーの混合物、例えばポリマーの混合物であってそれらの分子量が5倍以上異なっているものを使用することも可能である。好ましくは、本発明による膜中の親水性の第二のポリマーの濃度は、膜の質量に対して0.5〜7質量%である。これらのポリマーは、場合により膜中でさらに化学的にもしくは物理的に変性させることができる。ここで、ポリビニルピロリドンは、後から、例えばエネルギー線による照射によって架橋させることで、水不溶性にすることができる。
【0031】
本発明による膜の表面特性の改質のために、膜の安定性、色、吸着能もしくは吸収能に影響を及ぼす添加剤を使用することができる。また、膜の電荷を制御する添加剤、例えば膜にアニオンもしくはカチオンの性質を付与する添加剤も可能である。好ましくは、本発明による膜は、更に、親水性の第二のポリマーとは異なり、かつ親水性に変性された芳香族スルホンポリマーである親水性の第三のポリマーを含有する。係るポリマーの存在によって、特に膜の透過率並びに吸着特性は好ましい影響を受け、そして当該膜は、永続的な親水性を有し、とりわけ、該膜は、何度も蒸気滅菌可能であり、そして例えば30回の滅菌サイクル後にも、その親水性特性は実質的に不変に保たれたままとなる。特に好ましい一実施態様においては、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーは、本発明による膜中に、膜の質量に対して1〜50質量%の濃度で存在し、その際、ポリマーの合計は100%である。そのために、本発明による好ましい膜の製造方法において、ポリマー成分は、更に、親水性の第二のポリマーとは異なり、かつ親水性に変性された芳香族スルホンポリマーである親水性の第三のポリマーを含む。好ましくは、流延溶液は、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーを、流延溶液の質量に対して0.2〜20質量%の濃度で、均質な溶解状態で含有する。
【0032】
親水性に変性された芳香族スルホンポリマーは、親水性の官能基がスルホンポリマーに共有結合されているものである。しかしながらまた、親水性セグメントが含まれているスルホンポリマーを基礎とするコポリマーであり、例えばスルホンポリマーとポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーとのコポリマーである。適合性の理由から、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、疎水性の第一の芳香族スルホンポリマーを基礎とする場合が特に好ましい。すなわち膜構造は、疎水性の第一の芳香族スルホンポリマーとこのポリマーの親水性変性物とからなる混合物を含有する。非常に良好な成果は、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、スルホン化されたスルホンポリマーであり、その際、このスルホン化されたスルホンポリマーが、好ましくは3〜10%のスルホン化度を有する場合に達成される。本発明による、ポリエーテルスルホンとスルホン化されたポリエーテルスルホンとの組合せを含有する膜は、水及びタンパク質についての特に高い透過率に並んで、例えばタンパク質の低い吸着傾向を示すので、僅かな膜汚れしか示さない。
【0033】
とりわけ、その特定の構造とその表面特性に基づき、本発明による膜は、高い透過率と、水についての高い膜間流動の点で優れている。本発明による膜は、好ましくは、少なくとも10000l/(m2・h・bar)の膜間流動TMFを有し、その際、膜間流動は、最大分離孔の直径dmaxに依存して、同時に、条件(III):
TMF ≧ 85000・dmax2 (III)
[式中、dmaxは、最大分離孔の直径(μm)であり、かつ分離層中の最大細孔の直径を示している]を満たし、それは、膜間流動が分離層中の細孔のサイズに依存することを反映している。本発明の好ましい一実施態様においては、膜間流動は、条件(IV)
TMF ≧ 105000・dmax2 (IV)
を満たす。
【0034】
最大分離孔の直径は、バブルポイント法(ASTM番号128−61及びF316−86)によって測定され、それには、例えばDE−A−3617724号に記載される方法が適している。その際、dmaxは、バブルポイントに属するガス室圧PBから、式(V)
dmax = σB/PB (V)
に従って得られる。
【0035】
この場合に、σBは定数であり、それは主に、測定に際して使用される湿らせる液体に依存している。水に関しては、σBは、25℃で2.07μm・barである。特に好ましい一実施態様においては、本発明による膜間流動は、少なくとも15000l/(m2・h・bar)である。
【0036】
驚くべきことに、本発明による膜は、タンパク質水溶液に卓越した透過率を示す。好ましくは、本発明の膜は、BSA(ウシ血清アルブミン)水溶液について、少なくとも750l/h・m2の濾過流量を示し、その際、濾過流量は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液の濾過開始の15分後に、膜間圧力0.4barで測定される。特に好ましくは、BSA水溶液の濾過流量は、少なくとも1000l/h・m2であり、優れた本発明による膜は、少なくとも2000l/h・m2のBSA水溶液の濾過流量を示す。
【0037】
タンパク質水溶液についての高い濾過流量以外にも、本発明による膜は、係るタンパク質溶液の濾過時間にわたっての濾過流量が、高い安定性を示す、すなわちその時間にわたって比較的少ない濾過流量の低下しか確認されないという点で優れている。好ましい膜は、少なくとも35%の濾過流量維持を示し、その際、前記濾過流量維持は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液を膜間圧力0.4barで濾過するに当たっての、120分後の濾過流量と5分後の濾過流量との比率として定義される。特に好ましくは、本発明による膜の濾過流量維持は、少なくとも45%であり、最高限度において少なくとも50%である。タンパク質溶液の濾過における係る好ましい流動特性を有する膜は、先行技術において見出すことができない。特に、前記のBSA溶液についての流動特性は、分離層中に比較的小さい細孔を有する本発明による膜に関しても、すなわち好ましくは0.2μmの公称細孔径を有する膜について既に確認されている。その際、公称細孔径は、特定の微生物に対する当該膜の拘束能について定義されている。ここで、例えば公称細孔径0.2μmを有する膜は、ブレブンディモナス・ディミヌータ属の細菌を拘束し、公称細孔径0.45μmを有する膜は、セラチア・マルセッセンスなどの属の細菌を拘束する。更なる慣用の公称細孔径サイズは、0.1μm、0.6μm、そして1.2μmである。公称細孔径サイズの試験もしくは調査は、例えばHIMA規格第3号第4巻(1982年)(医療産業製造者協会)において記載されている。
【0038】
本発明による平板形状の膜、すなわち本発明による平坦膜は、特に精密濾過に適している。係る膜は、一般に、0.01〜10μm、好ましくは、0.1〜5μm、特に好ましくは、0.2μm〜2μmの最大分離孔の直径を有する。好ましくは、本発明による平坦膜は、10〜300μm、特に好ましくは30〜150μmの厚さを有する。
【0039】
本発明を、以下の実施例及び図面をもとにより詳細に説明する。その際、本発明の範囲は、実施例によって制限されるものではない。
【0040】
図面は、以下のことを示す:
図1は、実施例1による膜の断面の600倍の拡大率での走査型電子顕微鏡(REM)写真を示す。
【0041】
図2は、実施例1による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0042】
図3は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0043】
図4は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0044】
図5は、実施例2による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0045】
図6は、実施例2による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0046】
図7は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0047】
図8は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0048】
図9は、実施例3による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0049】
図10は、実施例3による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0050】
図11は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0051】
図12は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【0052】
実施例においては、膜を特徴付けるために以下の方法を使用した:
気孔率の算出:
調査されるべき膜の約15cm2のサンプル4つを秤量し、約50mlの水中で16時間にわたり貯蔵する。引き続き、それらのサンプルを水から取り出し、過剰の水を吸い取り紙で除去する。こうして前処理されたサンプルを、秤量して湿質量を出し、次いでそれを50℃で16時間乾燥させる。冷却した後に、乾燥されたサンプルの質量(乾質量)を出す。
【0053】
気孔率は、サンプルの乾燥質量の平均値に対する、吸水量(湿質量から乾質量を引く)の平均値から、水及び膜構造を構成するポリマー(疎水性の第一のポリマー)の密度を用いて算出される。
【0054】
膜間流動(水透過率):
試験されるべき膜から15cmの直径を有するディスク形状の膜サンプルを抜き出し、そして好適なサンプルホルダにその周辺で液密に、43.20cm2の自由測定面が得られるように張り付ける。サンプルホルダは、水が圧力下に流過できるハウジング中に存在する。張り付けられた膜サンプルに、次いで、膜の分離層が存在する側から、25℃に温度調節された完全脱塩水を0.4〜1.0barの規定の圧力下で流過させる。60秒の測定時間の間に膜サンプルを流過した水量を、重量分析法もしくは容積分析法によって測定する。
【0055】
膜間流動TMFは、式(VI)
【数1】
に従って算出する。前記式中、
VW = 測定時間の間に膜サンプルを流過した水量[ml]
Δt = 測定時間[分]
AM = 膜サンプルの流過面積(43.20cm2)
Δp = 測定の間に設定された圧力[bar]
【0056】
汚泥負荷能力の算出
汚泥負荷能力は、可溶性のインスタントコーヒー粉末を基礎とする試験媒体を膜に流過させた場合の膜の閉塞挙動をもとに算出される。
【0057】
試験媒体として、200mgの可溶性のインスタントコーヒー粉末を5lの完全脱塩水中に溶かした溶液を、撹拌機を備えた圧力容器中に装入し、そして撹拌機によって測定の間中均質に保つ。調査されるべき膜から抜き出された直径50mmを有する膜サンプルを、フィルタホルダ中に、分離層と反対側、すなわち流し込む側である開放気泡側が、試験の間に試験媒体によって流し込まれるように張り付ける。効果的なフィルタ表面積は、9.6cm2である。0.4barの一定圧力で、圧力容器からの試験媒体を、10分間の期間にわたって膜に流通させる。流過した試験溶液の容積を、経時的に記録し、試験溶液の膜間流動TMFPMの測定されたデータから、水についての膜間流動と同様に経時的に算出する。膜間流動TMFPMの経時的な変化から、すなわち10分の測定時間後のTMFPMと測定開始時のTMFPMとの比率から、膜の閉塞挙動についての、ひいてはその汚泥負荷能力についての表現が導き出される。その際に、試験媒体の経時的な膜間流動TMFPMが少ししか変化しない(そのことは、膜がたいして閉塞しないということに起因する)ときには、その膜は高い汚泥負荷能力を示す。
【0058】
ウシ血清アルブミン水溶液(BSA溶液)の濾過流量の算出
BSA水溶液の濾過流量は、再循環供給流を有するクロスフロー研究用装置で測定する。調査されるべき膜のうち、それぞれ約5.3cm2のサンプル2つを並行して調査する。それらの膜サンプルを、まず、リン酸緩衝溶液(pH5、67mM)中で平衡化させ、次いで試験セル中に導入する。次いで、リン酸緩衝溶液について、その流量を、0.4barで60分間の間で、あるいは安定した値が得られるまで測定する。次に、供給流用の貯蔵容器にBSA溶液(2g/l、リン酸緩衝液中、pH5)を充填し、それらの膜サンプルを通じた濾過流量JMF[l/(h・m2)]を、0.4barで連続的に120分の間で測定する。
【0059】
実施例1:
加熱可能な槽中で、75質量%のγ−ブチロラクトン及び25質量%のε−カプロラクタムからなる40℃に温度調節された混合物55.31kgを装入し、そして撹拌しつつ、5%のスルホン化度を有するスルホン化されたポリエーテルスルホン(SPES)1.05kgを1時間以内で溶解させた。引き続き、ポリエーテルスルホン(PES、型Ultrason E6020、BASF社製)13.95kgを撹拌しつつまぶして、4時間の間で溶解させる。次いで、ポリビニルピロリドン(PVP、型K30、ISP社製)11.25kgを微分散状態に撹拌導入して、均質化させる。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、95℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ8時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を80℃に冷却した後に、18.44kgのポリエチレングリコールPEG200をゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その膜溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。得られた均質な溶液は、40℃で粘度3.6Pa sを有していた。
【0060】
完成した流延溶液を、40℃に温度調節された流し込み型によって、62℃に温度調節された金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さを有する被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、44℃及び48%の相対空気湿度にしてから、それを62℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。膜構造の形成のための11秒間の滞留時間の後に、その被膜を、流延ドラム速度に対して9%だけ高められた速度を有する剥離ドラムによって流延ドラムから剥離し、それによって該被膜もしくは膜構造を延伸して、表面細孔を開放させた。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約5%の更なる速度増加を行った。
【0061】
こうして製造された膜は、永続的に親水性であり、自発的に水湿潤可能であり、かつバブルポイント法によって測定された最大分離孔径は、0.48μmであり、公称細孔径は、0.2μmであった。前記膜は、約27000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、かつ83容積%の気孔率を有する。濾過開始の15分後でのBSA水溶液についての濾過流量は、約7400l/h・m2まで測定された。5分後のBSA溶液についての濾過流量と120分後のBSA溶液についての濾過流量は、8200l/h・m2であり、あるいは4500l/h・m2であるので、濾過流量維持55%が得られた。前記の膜は、高い汚泥負荷能力を有していた。その試験において、前記の膜は、使用される試験媒体について経時的に比較的一定のTMFPMを示し、10分後には、TMFPMは、20%だけしか低下しなかった。
【0062】
前記膜は、その断面をつうじ、内在する分離層を有した構造を有する。すなわち最小細孔サイズを有する層は、膜壁内部に、製造に際して空気に向かい合った膜側から約10μmの間隔にあった(図1、図2)。図1に示されるREM写真によれば、細孔サイズは、最小細孔サイズを有する層から外側にドラム側までで非対称領域内でまず増大し、次に壁厚の約1/4の領域にわたり、実質的に等方性領域内でほぼ不変に保たれている。次に隣接する膜表面の直前で、細孔サイズは、ドラム表面までで低下している。ドラム側も(図3)、膜の空気側も(図4)、開放気泡構造を有している。膜のドラム側における細孔の平均細孔サイズは、明らかに5μmより大きい。
【0063】
実施例2:
実施例1でのように行ったが、その際、雰囲気調節領域において、温度44℃及び相対空気湿度62%に調整した。
【0064】
こうして得られた膜は、バブルポイント法によって測定された最大分離孔径0.65μmと公称細孔径0.45μmを有していた。前記膜は、約54000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、そしてBSA溶液に対する高い透過性を示すのと同時に、経時的な透過性の低下は僅かであった。前記の膜は、同様に、高い汚泥負荷能力を有していた。前記の膜は、その試験において経時的に、相対的に一定な膜間流動TMFPMを示した;10分後に、TMFPMは、出発値の約75%にまでしか低下しなかった。
【0065】
前記の膜は、同様に、その断面を通じて、内在する分離層を有した本発明による構造を有していた(図5)。最小細孔サイズを有する層から外側に、細孔サイズは、膜の製造に際して流延ドラムに向かい合っていた膜の側にまで、すなわちドラム側までで、非対称領域中でまず増大し、そして次いで壁厚の約1/3の領域にわたって実質的に不変のままであった。次に隣接する膜表面の直前で、細孔サイズは、その表面までで低下していた。最小細孔サイズを有する層、すなわち分離層は、膜壁内部で、境界表面から、すなわち膜の空気側から約10〜15μmの間隔に見出された(図6)。膜のドラム側(図7)及び空気側(図8)は、顕著な開放気泡性の構造を有している。
【0066】
実施例3:
実施例1と同様に行った。実施例1との相違点として、流延ドラムと凝結浴を、70℃の温度に調整した。雰囲気調節された帯域において、温度44℃及び相対空気湿度69%に保った。凝結浴中の剥離ドラムは、流延ドラム速度に対して10%だけ高められた速度を有していた。
【0067】
こうして得られた膜は、バブルポイント法によって測定された最大分離孔径0.87μmと公称細孔径0.60μmを有していた。前記膜は、約102000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、そしてBSA溶液に対する高い透過性を示すのと同時に、経時的な透過性の低下は僅かであった。前記の膜は、高い汚泥負荷能力を有していた。その試験において、前記の膜は、使用される試験媒体について経時的に比較的一定のTMFPMを示した;TMFPMは、1時間後にも高い水準であった。
【0068】
前記膜の構造は、図9〜図12に示されるREM写真から明らかである。それによれば、前記膜は、同様に、その断面にわたって、内在する分離層を有する本発明による一体型の非対称細孔構造を示している(図9)。前記の膜についても、細孔サイズは、分離層から外側にドラム側までまず増大し、次いでほぼ壁中央部から実質的に一定に保たれ、そして引き続き膜のドラム側までで低下している。最小細孔サイズを有する層、すなわち分離層は、膜壁内部で、境界表面から、すなわち膜の空気側から約15μmの間隔に見出された(図10)。そのドラム側(図11)は、その表面中に大きな細孔を有する開放気泡性であった。該膜の空気側(図12)は、同様に、均一形状の細孔サイズを有する開放気泡構造を示した。
【0069】
実施例4:
加熱可能な槽中で、75質量%のγ−ブチロラクトン及び25質量%のε−カプロラクタムからなる40℃に温度調節された混合物55.31kgを装入し、そして撹拌しつつ、ポリエーテルスルホン(PES、型Ultrason E6020、BASF社製)15kgをまぶし、そして4時間の間で溶解させた。次いで、ポリビニルピロリドン(PVP、型K30、ISP社製)11.25kgを微分散状態に撹拌導入して、均質化させる。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、95℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ8時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を80℃に冷却した後に、18.44kgのポリエチレングリコールPEG200をゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その流延溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。
【0070】
完成した流延溶液を、30℃に温度調節された流し込み型によって、66℃に温度調節された金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さの被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、42℃及び51%の相対空気湿度にしてから、それを66℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。膜構造の形成後に、その被膜を、流延ドラム速度に対して6%だけ高められた速度を有する剥離ドラムによって流延ドラムから剥離し、それによって該被膜もしくは膜構造を延伸して、表面細孔を開放させた。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって約60〜80℃で行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約9%の更なる速度増加を行った。
【0071】
こうして得られた膜のバブルポイント法によって測定された最大分離孔は、0.47μmのサイズを有していた。公称細孔径は、0.20μmであった。前記膜は、約27400l/(m2・h・bar)の膜間流動を有していた。
【0072】
前記膜は、REM写真によれば、壁中に内在する分離層を有した非対称細孔構造を示している。分離層から外側に、その構造は、膜の製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)まで、顕著な粗大孔質の構造へと移行している。その表面の直近において、細孔構造は、再び幾らか濃密になっており、それによって表面層の良好な機械的安定性と、その下にある粗大孔質の層の機械的安定性が保証されている。もう一方の表面(空気側)にまで、その構造は同様に粗大孔質であるが、ドラム側までよりも明らかに僅かな程度である。
【0073】
実施例5:
加熱可能な槽中に、46.45kgのγ−ブチロラクトン及び15.49kgのε−カプロラクタムからなる40℃に温度調節された混合物を装入し、その中に撹拌しつつ、まず、5%のスルホン化度を有するスルホン化されたポリエーテルスルホン(SPES)1.05kgと、引き続きポリエーテルスルホン(PES、型Ultrason E6020、BASF社製)13.95kgを、撹拌しつつまぶして、4時間の間で溶解させた。次いで、高分子のPVP型K90(ISP社製)3.5kgを微分散状態に撹拌導入して、均質化させた。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、95℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ8時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を80℃に冷却した後に、19.56kgのポリエチレングリコールPEG200を非常にゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その流延溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。
【0074】
完成した流延溶液を、30℃に温度調節された流し込み型を用いて、66℃に温度調節され、かつ3.0m/分の速度で動く金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さを有する被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、41℃及び47%の相対空気湿度にしてから、それを66℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。膜構造の形成後に、その被膜を、流延ドラム速度に対して6%だけ高められた速度を有する剥離ドラムによって流延ドラムから剥離し、それによって該被膜もしくは膜構造を延伸して、表面細孔を開放させた。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって約60〜80℃で行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約9%の更なる速度増加を行った。
【0075】
こうして得られた膜のバブルポイント法によって測定された最大分離孔は、0.55μmのサイズを有していた。前記膜は、約45000l/(m2・h・bar)の膜間流動を有し、そしてBSA溶液に対して高い透過性を示した。
【0076】
実施例6:
加熱可能な槽中に、22.645kgのN−メチルピロリドン(NMP)を40℃で装入し、そして撹拌しつつ、まずポリエーテルスルホン(PES)(型Ultrason E6020、BASF社製)7.50kgと、次いで高分子のPVP型K90(ISP社製)2.063kgを、微分散状態に撹拌導入して、均質化させた。真空を印加し、窒素を流すことによって、酸素を前記槽から十分に除去する。その後に、前記槽を、90℃に加熱し、そして激しく撹拌しつつ6時間の間で均質な溶液を製造した。該溶液を60℃に冷却した後に、1.618kgの水と16.175kgのポリエチレングリコールPEG200とからなる混合物を非常にゆっくりと添加し、激しく撹拌し、そして3時間にわたり均質化させる。次いで、その流延溶液を、40℃に冷却し、そして真空により脱ガスした。
【0077】
完成した流延溶液を、40℃に温度調節された流し込み型を用いて6.0m/分の完成速度において、60℃に温度調節された金属製の流延ドラム上に流延して、約160μmの厚さを有する被膜を得た。流延ドラム上に存在する被膜を、雰囲気調節領域に導通させ、約11秒の間、43℃及び57%の相対空気湿度にしてから、それを60℃に温度調節された水を有する凝結浴中に導入した。後続の複数の水浴において、その膜を、段階的に90℃に高められた温度において水中で固定化し、溶剤を大部分のPVPと一緒に抽出した。膜の乾燥は、ドラム乾燥機によって約60〜80℃で行った。洗浄領域及び乾燥領域の範囲内で、約25%の更なる速度増加を行った。
【0078】
こうして得られた膜のバブルポイント法によって測定された最大分離孔は、0.56μmのサイズを有していた。その膜間流動は、約36000l/(m2・h・bar)であった。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、実施例1による膜の断面の600倍の拡大率での走査型電子顕微鏡(REM)写真を示す。
【図2】図2は、実施例1による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図3】図3は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図4】図4は、実施例1による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図5】図5は、実施例2による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図6】図6は、実施例2による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図7】図7は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図8】図8は、実施例2による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図9】図9は、実施例3による膜の断面の600倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図10】図10は、実施例3による膜の断面の、製造に際して流延ドラムに向かい合った膜側(ドラム側)の最小細孔サイズを有する層を有する範囲における2700倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図11】図11は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムに向かい合った表面(ドラム側)の500倍の拡大率でのREM写真を示す。
【図12】図12は、実施例3による膜の、製造に際して流延ドラムと反対側の表面(空気側)の2000倍の拡大率でのREM写真を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族スルホンポリマーの群からの被膜形成性の疎水性の第一のポリマーを基礎とする、特に精密濾過用の、平板の形態における、一体型の非対称膜であって、前記膜が、第一の多孔質表面及び第二の多孔質表面と、それらの表面の間に存在する壁内部を有し、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有する多孔質構造を有し、かつ前記壁内部において最小の細孔サイズを有する分離層を有し、この分離層から第一の表面への方向に外側に向かって第一の非対称領域を有し、かつ第二の表面への方向に第二の非対称領域を有し、細孔サイズが、それらの表面の方向に増大しており、かつ第二の表面が、少なくとも1μmの平均直径を有する細孔を有する、一体型の非対称膜において、前記膜の少なくとも40質量%までが被膜形成性の疎水性の第一のポリマーから成ることと、前記膜が、親水性の第二のポリマーを含み、その親水性の第二のポリマーの濃度が、膜の質量に対して0.1〜10質量%であることと、最小の細孔サイズを有する分離層が、一方の第一の表面に向かい合った膜壁の領域中に存在し、かつ細孔サイズが、第二の非対称領域に続き第二の表面への方向で最大値を通過することと、を特徴とする一体型の非対称膜。
【請求項2】
請求項1に記載の膜であって、細孔サイズの最大値が、第二の非対称領域に続く、細孔サイズが実質的に一定である実質的に等方性の領域に存在し、その際、その等方性領域が、膜壁の15〜70%にわたって延びていることを特徴とする膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の膜であって、芳香族スルホンポリマーが、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンであることを特徴とする膜。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の膜であって、親水性の第二のポリマーが、10000ダルトンより大きい平均分子量Mwを有することを特徴とする膜。
【請求項5】
請求項4に記載の膜であって、第二の親水性のポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリソルビテート、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリレート又は前記のポリマーの変性物もしくはコポリマーであることを特徴とする膜。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の膜であって、更に、親水性の第二のポリマーとは異なる親水性の第三のポリマーを含有し、その際、該親水性の第三のポリマーが、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーであることを特徴とする膜。
【請求項7】
請求項6に記載の膜であって、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、膜の質量に対して1〜50質量%の濃度で存在することを特徴とする膜。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の膜であって、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、疎水性の第一の芳香族スルホンポリマーを基礎とすることを特徴とする膜。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか1項に記載の膜であって、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、スルホン化されたスルホンポリマーであることを特徴とする膜。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の膜であって、第一の表面中の細孔の平均サイズと、第二の表面中の細孔の平均サイズとの比率が、少なくとも5であることを特徴とする膜。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、少なくとも10000l/(m2・h・bar)の膜間流動TMFを有し、かつ膜間流動が、同時に以下の条件:
TMF ≧ 85000・dmax2
[式中、dmaxは、バブルポイント法によって測定された最大分離孔の直径である]を満たすことを特徴とする膜。
【請求項12】
請求項11に記載の膜であって、膜間流動TMFが、少なくとも15000l/(m2・h・bar)であることを特徴とする膜。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、少なくとも75容積%の気孔率を有することを特徴とする膜。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、BSA水溶液について、少なくとも750l/h・m2の濾過流量(その際、その濾過流量は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液の濾過開始の15分後に、0.4barの膜間圧力で測定される)を有することを特徴とする膜。
【請求項15】
請求項14に記載の膜であって、濾過流量が、少なくとも1000l/h・m2であることを特徴とする膜。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、少なくとも35%の濾過流量維持(その際、前記濾過流量維持は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液を膜間圧力0.4barで濾過するに当たっての、120分後の濾過流量と5分後の濾過流量との比率として定義される)を示すことを特徴とする膜。
【請求項17】
請求項16に記載の膜であって、濾過流量維持が、少なくとも45%であることを特徴とする膜。
【請求項18】
請求項14から17までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、公称細孔径0.2μmを有することを特徴とする膜。
【請求項19】
請求項1に記載の膜の製造方法において、以下の段階:
a. ポリマー成分と溶剤系とからなる均質な流延溶液を製造する段階、
その際、前記ポリマー成分は、溶液の質量に対して10〜25質量%の、芳香族スルホンポリマーの群からの疎水性の第一のポリマーと、溶液の質量に対して2〜20質量%の、親水性の第二のポリマーとを含み、そして前記溶剤系は、溶剤系の質量に対して5〜80質量%の、前記ポリマー成分用の溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜80質量%の、前記ポリマー成分用の潜伏性溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜70質量%の、前記ポリマー成分用の非溶剤とからなる、
b. 前記均質な流延溶液を、成形温度にまで温度調節する段階、
c. 温度調節可能であり、前記の流延溶液の成形温度より高い温度を有し、かつ速度v1を有する支持体上に前記均質な流延溶液を流延して、被膜とする段階、
d. 前記支持体上に存在する被膜を、雰囲気調節された帯域に導く段階、
e. 前記支持体上に存在する被膜を凝結媒体中に導入して、被膜の凝結を誘発し、膜の構造を形成させる段階、
f. 前記膜構造を支持体から、速度v2で移動する剥離装置によって凝結媒体の内部で剥離する段階、
その際、前記速度v2は、支持体の速度v1よりも大きく、それによって膜構造は、延伸を受ける、
g. 前記膜構造を凝結媒体中で安定化させる段階、
h. こうして得られた膜を取り出して、引き続き該膜を乾燥させる段階
を含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、芳香族スルホンポリマーが、ポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、親水性の第二のポリマーが、10000ダルトンより高い平均分子量Mwを有することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、第二の親水性のポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリソルビテート、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリレート又は前記のポリマーの変性物もしくはコポリマーを使用することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項19から22までのいずれか1項に記載の方法において、均質な流延溶液の粘度を、40℃で測定された粘度10Pa s未満に調整することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項19から23までのいずれか1項に記載の方法において、流延溶液が、更に、流延溶液の質量に対して0.2〜20質量%の、親水性の第二のポリマーとは異なる親水性の第三のポリマーを含有し、その際、その親水性の第三のポリマーが、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、スルホン化されたスルホンポリマーであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項19から25までのいずれか1項に記載の方法において、剥離装置の速度v2と、支持体の速度v1との比率が、1.05:1〜1.2:1の範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項19から26までのいずれか1項に記載の方法において、溶剤として、極性非プロトン性溶剤もしくはプロトン性溶剤を使用することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項19から27までのいずれか1項に記載の方法において、支持体の温度が、成形温度よりも少なくとも15℃だけ高いことを特徴とする方法。
【請求項1】
芳香族スルホンポリマーの群からの被膜形成性の疎水性の第一のポリマーを基礎とする、特に精密濾過用の、平板の形態における、一体型の非対称膜であって、前記膜が、第一の多孔質表面及び第二の多孔質表面と、それらの表面の間に存在する壁内部を有し、膜壁を通じて細孔サイズ分布を有する多孔質構造を有し、かつ前記壁内部において最小の細孔サイズを有する分離層を有し、この分離層から第一の表面への方向に外側に向かって第一の非対称領域を有し、かつ第二の表面への方向に第二の非対称領域を有し、細孔サイズが、それらの表面の方向に増大しており、かつ第二の表面が、少なくとも1μmの平均直径を有する細孔を有する、一体型の非対称膜において、前記膜の少なくとも40質量%までが被膜形成性の疎水性の第一のポリマーから成ることと、前記膜が、親水性の第二のポリマーを含み、その親水性の第二のポリマーの濃度が、膜の質量に対して0.1〜10質量%であることと、最小の細孔サイズを有する分離層が、一方の第一の表面に向かい合った膜壁の領域中に存在し、かつ細孔サイズが、第二の非対称領域に続き第二の表面への方向で最大値を通過することと、を特徴とする一体型の非対称膜。
【請求項2】
請求項1に記載の膜であって、細孔サイズの最大値が、第二の非対称領域に続く、細孔サイズが実質的に一定である実質的に等方性の領域に存在し、その際、その等方性領域が、膜壁の15〜70%にわたって延びていることを特徴とする膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の膜であって、芳香族スルホンポリマーが、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンであることを特徴とする膜。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の膜であって、親水性の第二のポリマーが、10000ダルトンより大きい平均分子量Mwを有することを特徴とする膜。
【請求項5】
請求項4に記載の膜であって、第二の親水性のポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリソルビテート、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリレート又は前記のポリマーの変性物もしくはコポリマーであることを特徴とする膜。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の膜であって、更に、親水性の第二のポリマーとは異なる親水性の第三のポリマーを含有し、その際、該親水性の第三のポリマーが、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーであることを特徴とする膜。
【請求項7】
請求項6に記載の膜であって、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、膜の質量に対して1〜50質量%の濃度で存在することを特徴とする膜。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の膜であって、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、疎水性の第一の芳香族スルホンポリマーを基礎とすることを特徴とする膜。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか1項に記載の膜であって、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、スルホン化されたスルホンポリマーであることを特徴とする膜。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の膜であって、第一の表面中の細孔の平均サイズと、第二の表面中の細孔の平均サイズとの比率が、少なくとも5であることを特徴とする膜。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、少なくとも10000l/(m2・h・bar)の膜間流動TMFを有し、かつ膜間流動が、同時に以下の条件:
TMF ≧ 85000・dmax2
[式中、dmaxは、バブルポイント法によって測定された最大分離孔の直径である]を満たすことを特徴とする膜。
【請求項12】
請求項11に記載の膜であって、膜間流動TMFが、少なくとも15000l/(m2・h・bar)であることを特徴とする膜。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、少なくとも75容積%の気孔率を有することを特徴とする膜。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、BSA水溶液について、少なくとも750l/h・m2の濾過流量(その際、その濾過流量は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液の濾過開始の15分後に、0.4barの膜間圧力で測定される)を有することを特徴とする膜。
【請求項15】
請求項14に記載の膜であって、濾過流量が、少なくとも1000l/h・m2であることを特徴とする膜。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、少なくとも35%の濾過流量維持(その際、前記濾過流量維持は、2g/lのBSA濃度とpH値5を有するBSA水溶液を膜間圧力0.4barで濾過するに当たっての、120分後の濾過流量と5分後の濾過流量との比率として定義される)を示すことを特徴とする膜。
【請求項17】
請求項16に記載の膜であって、濾過流量維持が、少なくとも45%であることを特徴とする膜。
【請求項18】
請求項14から17までのいずれか1項に記載の膜であって、前記膜が、公称細孔径0.2μmを有することを特徴とする膜。
【請求項19】
請求項1に記載の膜の製造方法において、以下の段階:
a. ポリマー成分と溶剤系とからなる均質な流延溶液を製造する段階、
その際、前記ポリマー成分は、溶液の質量に対して10〜25質量%の、芳香族スルホンポリマーの群からの疎水性の第一のポリマーと、溶液の質量に対して2〜20質量%の、親水性の第二のポリマーとを含み、そして前記溶剤系は、溶剤系の質量に対して5〜80質量%の、前記ポリマー成分用の溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜80質量%の、前記ポリマー成分用の潜伏性溶剤と、溶剤系の質量に対して0〜70質量%の、前記ポリマー成分用の非溶剤とからなる、
b. 前記均質な流延溶液を、成形温度にまで温度調節する段階、
c. 温度調節可能であり、前記の流延溶液の成形温度より高い温度を有し、かつ速度v1を有する支持体上に前記均質な流延溶液を流延して、被膜とする段階、
d. 前記支持体上に存在する被膜を、雰囲気調節された帯域に導く段階、
e. 前記支持体上に存在する被膜を凝結媒体中に導入して、被膜の凝結を誘発し、膜の構造を形成させる段階、
f. 前記膜構造を支持体から、速度v2で移動する剥離装置によって凝結媒体の内部で剥離する段階、
その際、前記速度v2は、支持体の速度v1よりも大きく、それによって膜構造は、延伸を受ける、
g. 前記膜構造を凝結媒体中で安定化させる段階、
h. こうして得られた膜を取り出して、引き続き該膜を乾燥させる段階
を含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、芳香族スルホンポリマーが、ポリスルホンもしくはポリエーテルスルホンであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、親水性の第二のポリマーが、10000ダルトンより高い平均分子量Mwを有することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、第二の親水性のポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコールモノエステル、ポリソルビテート、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリレート又は前記のポリマーの変性物もしくはコポリマーを使用することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項19から22までのいずれか1項に記載の方法において、均質な流延溶液の粘度を、40℃で測定された粘度10Pa s未満に調整することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項19から23までのいずれか1項に記載の方法において、流延溶液が、更に、流延溶液の質量に対して0.2〜20質量%の、親水性の第二のポリマーとは異なる親水性の第三のポリマーを含有し、その際、その親水性の第三のポリマーが、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、親水性に変性された芳香族スルホンポリマーが、スルホン化されたスルホンポリマーであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項19から25までのいずれか1項に記載の方法において、剥離装置の速度v2と、支持体の速度v1との比率が、1.05:1〜1.2:1の範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項19から26までのいずれか1項に記載の方法において、溶剤として、極性非プロトン性溶剤もしくはプロトン性溶剤を使用することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項19から27までのいずれか1項に記載の方法において、支持体の温度が、成形温度よりも少なくとも15℃だけ高いことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−542022(P2008−542022A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515119(P2008−515119)
【出願日】平成18年6月3日(2006.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005346
【国際公開番号】WO2006/131290
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(300083158)メムブラーナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (14)
【氏名又は名称原語表記】Membrana GmbH
【住所又は居所原語表記】Oehder Strasse 28, D−42201 Wuppertal, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月3日(2006.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005346
【国際公開番号】WO2006/131290
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(300083158)メムブラーナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (14)
【氏名又は名称原語表記】Membrana GmbH
【住所又は居所原語表記】Oehder Strasse 28, D−42201 Wuppertal, Germany
【Fターム(参考)】
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