説明

改善された熱老化安定性および加水分解安定性を有するポリアミド成形材料

(A)50ミリモル/kg以上のアミノ末端基の数を有する少なくとも1のポリアミド20〜85質量%、(B)ガラス繊維14.9〜60質量%、(C)少なくとも1の熱安定化剤0.01〜2質量%、(D)少なくとも1の離型助剤0〜1.5質量%および(E)その他の添加剤0〜30質量%を含有し、その際、(A)〜(E)は合計して100質量%である、熱可塑性成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A)50ミリモル/kg以上のアミノ末端基の数を有する少なくとも1のポリアミド20〜85質量%、
(B)ガラス繊維14.9〜60質量%、
(C)少なくとも1の熱安定化剤0.01〜2質量%、
(D)少なくとも1の離型助剤0〜1.5質量%および
(E)その他の添加剤0〜30質量%
を含有し、その際、(A)〜(E)は合計して100質量%である、熱可塑性成形材料に関する。本発明はさらに、任意の種類の成形体を製造するための使用および本発明による成形材料から得られた成形体である。
【0002】
熱可塑性ポリマー、たとえばポリアミドはしばしばガラス繊維強化された成形材料の形で、使用の際に高温に曝されるか、かつ/または液体と接触する建築部材のための構造材料として使用される。このことによってポリマーは熱酸化により損傷を受けるか、かつ/または加水分解する場合がある。いずれのプロセスも、これらの材料の寿命に否定的な影響を与える。熱安定化剤の添加によって、確かに熱酸化による損傷の発生を抑制することができるが、しかしこれはこの措置によって持続的に防止することができるわけではないため、ポリアミドの特性は、熱の作用によって否定的な変化を被る。ポリアミドの特性の否定的な変化は、たとえば機械的な特性値の低下において明らかになる。ポリアミドの熱老化安定性および/または加水分解安定性の改善は非常に望まれている。というのも、このことによって液体と接触するか、かつ/または高温に曝される部材に関してより長期的な運転時間を達成することができるからである。
【0003】
従来技術には、熱可塑性ポリマー、特にポリアミドの熱安定性および/または加水分解安定性を高めるための種々の方法が記載されている。
【0004】
Kunststoff Handbuch(プラスチックハンドブック)、第3章、工業用熱可塑性樹脂、第4章、ポリアミド、第77〜84頁、1998年、Carl Hanser Verlag出版(ミュンヘン、ウィーン)から、ポリアミド中での種々の熱安定化剤の使用が公知である。安定化剤として、立体障害フェノールおよび第二級アミンから選択される化合物を使用することができる。
【0005】
WO97/08222は、ジカルボン酸とジアミン、アミノカルボン酸またはラクタムとの重合によってポリアミドを製造する方法に関し、この場合、酸もしくはアミンが過剰で存在しているため、ポリマー中のカルボン酸基対アミノ末端基の比率は、少なくとも2.0:1.0である。WO97/08222に記載されている方法により製造されるポリアミドは、改善された溶融粘度および流動性を特徴としている。
【0006】
EP0129974A2は、暖かい凍結防止剤に対して抵抗性の部材を開示しており、これは、ポリアミド66、ポリアミド6およびポリアミド610から選択されるポリアミド以外に、複数のエチレン性不飽和モノマーからなるコポリマーを0.1〜10質量%含有している。これらのコポリマーは、ポリマー主鎖に官能基を有しており、該官能基が、ポリアミドの末端基と反応することができる。官能基は有利には、カルボン酸基または無水カルボン酸基である。たとえばアクリル酸又は無水マレイン酸が使用されている。
【0007】
EP1424361A1は、熱可塑性重縮合物、強化材料、架橋性の添加剤およびその他のポリマー成分を含有する成形材料を開示している。この成形材料は引き続き熱可塑性の形状付与においてβ線、γ線、X線、UV線または電子線によって照射され、これにより少なくとも部分的に架橋する。少なくとも部分的な架橋によって、EP1424361A1に記載の熱可塑性成形材料は、加水分解に対する高い抵抗性を有している。
【0008】
JP3200868は、たとえばスチレンと無水マレイン酸とからなるコポリマー、ならびに変性ポリプロピレンから選択される、無極性の疎水性ブレンド成分を含有するポリアミドからなるポリマーブレンドを開示している。これらの無極性の疎水性ブレンド成分の存在によって加水分解抵抗性は明らかに高まる。
【0009】
従来技術からは、熱安定化剤の添加により、およびポリアミドの溶融粘度および流動性を特定の末端基の比率により、ポリアミドの熱安定性に対して肯定的に影響を与えることができることが公知である。さらに従来技術からは、ポリアミドの加水分解抵抗性を、ポリアミドに、スチレン、無水マレイン酸、変性ポリプロピレンまたはアクリル酸から選択されるモノマーを含有する、無極性の疎水性コポリマーを添加することによって高めることが公知である。これらによって生じる熱可塑性成形材料の極性の低下によって、加水分解安定性が向上される。熱可塑性成形材料の加水分解抵抗性を高めるために従来技術で提案されているもう1つの方法は、架橋性の添加剤を添加し、該添加剤を照射によって架橋させることである。
【0010】
欠点は、強化のためにガラス繊維を含有する熱可塑性成形材料の熱安定性を高めること、またはガラス繊維強化された熱可塑性成形材料の加水分解抵抗性を、疎水性のコモノマーもしくはコポリマーの使用によって高めることが、これまでうまくいっていないことである。
【0011】
従って本発明の課題は、改善された熱安定性および改善された加水分解抵抗性により優れた、ガラス繊維強化された熱可塑性成形材料を提供することである。これは特に疎水性コモノマーもしくはコポリマーを使用しなくても達成されるべきである。本発明のもう1つの課題は、本発明による熱可塑性成形材料から得られる、熱安定性および加水分解安定性の部材を提供することである。
【0012】
これに応じて、冒頭で定義した成形材料が判明した。有利な実施態様は従属請求項に記載されているとおりである。
【0013】
本発明による熱可塑性成形材料の個々の成分を以下に記載する。
【0014】
成分(A)
成分(A)として、本発明による熱可塑性成形材料は、少なくとも1のポリアミドを20〜85質量%、有利には40〜75質量%含有している。
【0015】
ポリアミドは、50ミリモル/kg以上、有利には60ミリモル/kg以上の第一級アミノ末端基の数を有する。本発明により使用することができるポリアミドの第一級アミノ末端基の数は、その製造の際に、モノマー中に存在するアミノ末端基対カルボン酸末端基の適切な比率によって調整することができる。この特定の数の第一級アミノ末端基の存在は、本発明による熱可塑性成形材料の熱安定性および/または加水分解安定性の向上に貢献する。
【0016】
アミノ末端基の測定はたとえば、指示薬の存在下にポリアミドの溶液を滴定することによって実施することができる。このために、ポリアミドをフェノールとメタノールとからなる混合物(たとえばフェノール75質量%およびメタノール25質量%)中で加熱下に溶解させる。混合はたとえば沸点での還流下に、ポリマーが溶解するまで維持することができる。冷却された溶液に適切な指示薬もしくは指示薬混合物(たとえばベンジルオレンジとメチレンブルーとからなるメタノール溶液)を添加し、かつメタノール含有過塩素酸溶液をグリコール中で、色が変化するまで滴定する。過塩素酸の消費量から、アミノ末端基の濃度が計算される。
【0017】
あるいは、たとえばWO92/26865の第11頁に記載されているように、指示薬を使用しなくてもエチレングリコール中の過塩素酸溶液を使用して電位差によって滴定を実施することもできる。
【0018】
カルボキシ末端基の測定は、たとえば同様に指示薬の使用下でポリアミドの溶液を滴定することによって行うことができる。このためにポリアミドをベンジルアルコール(フェニルメタノール)中で加熱下に、たとえば沸騰するまでの加熱下に溶解させ、その際、立ち上がり管を上部に設置し、かつ窒素ガスを導入する。まだ高温の溶液に適切な指示薬(たとえばクレゾールレッドのプロパノール溶液)を添加し、ただちに水酸化カリウムのアルコール溶液(メタノール、1−プロパノールおよび1−ヘキサノールからなる混合物中に溶解したKOH)を用いて色が変化するまで滴定する。KOHの消費量から、カルボキシ末端基の濃度が計算される。
【0019】
あるいは、たとえばWO02/26865の第11〜12頁に記載されているように、指示薬を使用しなくてもベンジルアルコール中のNaOH溶液を使用して電気伝導度によって滴定を実施することもできる。
【0020】
別の有利な実施態様では、ポリアミドは、30モル%以上、有利には40モル%以上、特に有利には50モル%以上の、ジアミンにより制御される鎖のモル割合を有している。ジアミンにより制御されているポリマー鎖が少なくとも30モル%存在することは、熱酸化による分解に対する安定性および加水分解抵抗性を著しく向上することに貢献する。有利な実施態様では、ジアミンを重合の開始時にモノマー混合物に添加する。別の有利な実施態様では、ジアミンをポリアミドの製造の際にあとからポリマー溶融液に添加する。
【0021】
もう1つの有利な実施態様では、ポリアミドは100〜250ml/g、有利には120〜200ml/g、特に有利には140〜170ml/gの粘度数を有する。本発明によるポリアミドの粘度数は同様に、熱可塑性成形材料の熱安定性および/または加水分解抵抗性を向上することに貢献する。粘度数VZは、ISO307に相応して、濃度c=5g/lの96%硫酸中の溶液を用いて測定される。
【0022】
適切なポリアミドは、たとえばUS特許文献2,071,250、2,071,251、2,130,523、2,130,948、2,241,322、2,312,966、2,512,606および3,393,210に記載されている。
【0023】
脂肪族、部分芳香族または芳香族のポリアミドを使用することもでき、その際、脂肪族ポリアミドが有利である。「脂肪族ポリアミド」の概念は、ポリアミドがもっぱら脂肪族のモノマーから構成されていることを意味する。「部分芳香族ポリアミド」の概念は、ポリアミドが、脂肪族のモノマー、ならびに芳香族のモノマーから構成されていることを意味する。「芳香族ポリアミド」の概念は、ポリアミドがもっぱら芳香族のモノマーから構成されていることを意味する。
【0024】
たとえば適切なポリアミドは、たとえば相応する量の4〜12個の炭素原子を有する飽和もしくは芳香族ジカルボン酸と、2〜14個の炭素原子を有する飽和もしくは芳香族ジアミンとの縮合により、またはアミノカルボン酸の縮合もしくは3〜12個の炭素原子を有する相応するラクタムの重付加により製造することができる。
【0025】
2以上の前記のモノマーを一緒に重縮合することによって製造されたポリアミド、たとえばアジピン酸、イソフタル酸またはテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンからなるコポリマー、またはカプロラクタム、テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンからなるコポリマーを使用することも可能である。このような部分芳香族のコポリアミドは、テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから誘導される単位を40〜90質量%含有している。使用される全ての芳香族ジカルボン酸のテレフタル酸のわずかな割合、有利には10質量%未満は、イソフタル酸またはその他の芳香族ジカルボン酸、有利にはその中でカルボキシル基がパラ位に存在するジカルボン酸により置換されていてもよい。
【0026】
モノマーとして、一般式(I)
【化1】

[式中、R1は、水素またはC1〜C4−アルキル基を表し、R2は、C1〜C4−アルキル基または水素を表し、かつR3は、C1〜C4−アルキル基または水素を表す]の環式ジアミンも考えられる。
【0027】
特に有利なジアミン(I)は、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−2,2−プロパンまたはビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−2,2−プロパンである。その他のジアミン(I)として、1,3−シクロヘキサンジアミンもしくは1,4−シクロヘキサンジアミンまたはイソホロンジアミンが挙げられる。
【0028】
テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから誘導される単位以外に、部分芳香族コポリアミドは、ε−カプロラクタムから誘導される単位および/またはアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから誘導される単位を含有している。
【0029】
ε−カプロラクタムから誘導される単位の割合は、50質量%まで、有利には20〜50質量%まで、特に25〜40質量%までであってもよく、他方、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから誘導される単位の割合は、60質量%まで、有利には30〜60質量%、および特に35〜55質量%であってもよい。
【0030】
コポリアミドは、ε−カプロラクタムの単位を含有していても、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの単位を含有していてもよく、この場合、芳香族基を有していない単位の割合は、少なくとも10質量%であり、有利には少なくとも20質量%であることに留意すべきである。この場合、ε−カプロラクタムから、およびアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから誘導される単位の比率は、特に限定されていない。
【0031】
部分芳香族コポリアミドの製造は、たとえばEP−A−0129195およびEP−A−0129196に記載されている方法により行うことができる。
【0032】
その他の適切なコポリアミドは、実質的にテレフタル酸から誘導される単位30〜44モル%、有利には32〜40モル%、および特に32〜38モル%、イソフタル酸から誘導される単位6〜20モル%、有利には10〜18モル%、および特に12〜18モル%、ヘキサメチレンジアミンから誘導される単位43〜49.5モル%、有利には46〜48.5モル%、および特に46.3〜48.2モル%、6〜30個、有利には13〜29個および特に13〜17個の炭素原子を有する脂環式ジアミンから誘導される単位、有利には前記の一般式(I)の単位0.5〜7モル%、有利には1.5〜4モル%、および特に1.8〜3.7モル%、前記のモノマーとは異なる別のポリアミド形成モノマー0〜4モル%からなり、その際、これらの成分のモルパーセントは、合計して100モル%である。
【0033】
別のポリアミド形成モノマーとして、芳香族ジカルボン酸、たとえば置換されたテレフタル酸およびイソフタル酸、たとえば3−t−ブチルイソフタル酸、多環式ジカルボン酸、たとえば4,4′−および3,3′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−および3,3′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−および3,3′−ジフェニルスルホジカルボン酸、1,4−または2,6−ナフタリンジカルボン酸およびフェノキシテレフタル酸を使用することができる。
【0034】
別のポリアミド形成モノマーは、たとえば4〜16個の炭素原子を有するジカルボン酸および4〜16個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンならびに7〜12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸もしくは相応するラクタムから誘導されてもよい。これらのタイプの適切なモノマーとして、ここではスベリン酸、アゼライン酸またはセバシン酸が、脂肪族ジカルボン酸の代表例として、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミンまたはピペラジンがジアミンの代表例として、およびカプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ラウリンラクタムおよびα−アミノウンデカン酸が、ラクタムもしくはアミノカルボン酸の代表例としてあげられる。
【0035】
「から誘導することができる」または「から誘導される」とは、本発明の範囲では、前記のモノマー自体が、または前記のモノマーから同一もしくは異なった、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基を添加することにより生じるモノマーを使用することを意味している。
【0036】
これらのコポリアミドの融点は通常、290〜340℃、有利には292〜330℃の範囲であり、その際、これらの融点は、そのつど乾燥した状態で、通常100℃より高く、特に120℃より高い、高いガラス転移温度と結びついている。
【0037】
当然のことながら、これらのコポリアミドの混合物もまた使用することができ、その際、混合比は任意である。
【0038】
コポリアミドを製造するために適切な方法は、当業者に公知であり、EP−A−0702058も参照のこと。
【0039】
有利には本発明による熱可塑性成形材料中で、少なくとも1の線状の脂肪族ポリアミドを使用する。これらのポリアミドは、有利な実施態様では、200℃を越える融点を有する。
【0040】
特に有利には熱可塑性成形材料中で、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド(ナイロン66、ポリアミド66)、ポリアミドとポリアミド66を少なくとも80質量%の割合で含有する混合物、またはその構成成分が少なくとも80質量%までアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから誘導することができるコポリアミド、ポリヘキサメチレンアゼライン酸アミド(ナイロン69、ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド(ナイロン610、ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカン二酸アミド(ナイロン612、ポリアミド612)、ラクタムの開環から得られるポリアミド、たとえばポリカプロラクタム(ナイロン6、ポリアミド6)、ポリラウリン酸ラクタム、ポリ−11−アミノウンデカン酸およびジ(p−アミノシクロヘキシル)−メタンとドデカン二酸とからなるポリアミド、たとえば1,4−ジアミノブタンとアジピン酸とを高温で縮合させることにより得られるポリアミド(ナイロン46、ポリアミド46)およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリアミドを使用する。これらの構造のポリアミドのための製造法は、たとえばEP−A−0038094、EP−A−0038582およびEP−A−0039524に記載されている。
【0041】
ポリカプロラクタム(ナイロン6、ポリアミド6)もまた、6−アミノ−ヘキサン酸の重縮合反応により得ることができる。
【0042】
本発明による熱可塑性成形材料中で、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド(ナイロン66、ポリアミド66)、ポリアミドとポリアミド66少なくとも80質量%の割合を有する混合物、またはその構成成分が少なくとも80質量%まで、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとから誘導されているコポリアミド、ポリカプロラクタム(ナイロン6、ポリアミド6)またはこれらの混合物からなる群から選択されるポリアミドは、とりわけ有利である。
【0043】
成分(B)
本発明による熱可塑性成形材料は、成分(B)として、ガラス繊維を14.9〜60質量%、有利には20〜49質量%含有している。
【0044】
本発明による熱可塑性成形材料中で、当業者に公知の、かつ熱可塑性成形材料中での使用のために適切な全てのガラス繊維が存在していてよい。これらのガラス繊維は当業者に公知の方法により製造することができ、かつ場合により、表面処理されていてもよい。ガラス繊維はマトリックス材料とのより良好な相容性のために、たとえばDE10117715に記載されているようなサイズ剤を備えていてもよい。
【0045】
有利な実施態様では、5〜15μm、有利には7〜13μm、特に有利には9〜11μmの直径を有するガラス繊維を使用する。
【0046】
ガラス繊維の混合は、カットガラス繊維の形でも、エンドレスヤーン(ロービング)の形でも行うことができる。使用可能なガラス繊維の長さは、通常、混合前にカットガラス繊維として、熱可塑性成形材料中で一般に4〜5mmである。ガラス繊維を、たとえば同時押出によりその他の成分と共に加工した後で、ガラス繊維は通常、100〜400μm、好ましくは200〜350μmの平均長さで存在している。
【0047】
成分(C)
成分Cとして、本発明による熱可塑性成形材料は、0.01〜2質量%、有利には0.05〜1.5質量%、特に有利には0.1〜1.5質量%の少なくとも1の熱安定化剤を含有している。
【0048】
有利な実施態様では、熱安定化剤は、
一価もしくは二価の銅の化合物、たとえば一価もしくは二価の銅と、無機酸もしくは有機酸、または一価もしくは二価のフェノールとの塩、一価もしくは二価の銅の酸化物、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアニドもしくはホスフィンとの錯化合物、有利にはハロゲン化水素酸、シアン化水素酸の銅(I)塩もしくは銅(II)塩、または脂肪族カルボン酸の銅塩。特に有利であるのは、一価の銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCNおよびCu2O、ならびに二価の銅化合物CuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)である。銅化合物を使用する限りにおいて、銅の量は、成分A)〜E)の合計に対して、有利には0.005〜0.5質量%、特に0.005〜0.3質量%、および特に有利には0.01〜0.2質量%である、
銅化合物は、市販されているか、もしくはその製造は当業者に公知である。銅化合物はそのままで使用してもよいし、または濃縮物の形で使用してもよい。この場合、濃縮物とは、銅塩を高濃度で含有しているポリマー、有利には成分(A)と同様の化学的性質を有するポリマーであると理解すべきである。濃縮物の使用は、慣用の方法であり、かつ特にしばしば、極少量の使用物質を供給すべき場合に適用される。有利には銅化合物をその他の金属ハロゲン化物、特にアルカリ金属ハロゲン化物、たとえばNaI、KI、NaBr、KBrと組み合わせて使用し、その際、銅に対する金属ハロゲン化物のモル比は、0.5〜20、有利には1〜10、および特に有利には2〜5である、
第二級芳香族アミンをベースとする安定化剤、その際、これらの安定化剤は、有利には0.2〜2質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%である、
立体障害フェノールをベースとする安定化剤、その際、これらの安定化剤は、有利には0.05〜1.5質量%、好ましくは0.1〜1質量%の量で存在する、および
前記の安定化剤の混合物
からなる群から選択されている。
【0049】
本発明により使用することができる第二級芳香族アミンをベースとする安定化剤の特に有利な例は、フェニレンジアミンとアセトンとからなる付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノールとからなる付加物、Naugard4455(II)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(III)、N−フェニル−N′−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミン(IV)またはこれらの2種以上の混合物である。
【0050】
【化2】

【0051】
立体障害フェノールをベースとする、本発明により使用することができる安定化剤の有利な例は、N,N′−ヘキサメチレン−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオンアミド(V)、ビス−(3,3−ビス−(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)−ブタン酸)−グリコールエステル(VI)、2,1′−チオエチルビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(VII)、4,4′−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(VIII)、トリエチレングリコール−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオネート(IX)またはこれらの2種以上の混合物である。
【0052】
【化3】

【0053】
【化4】

【0054】
成分(D)
本発明による熱可塑性成形材料は、離型剤を0〜1.5質量%、有利には0.05〜1.5質量%、特に有利には0.1〜1質量%含有していてもよい。
【0055】
離型剤は、製造された製品の離型性、つまり型からの成形部材のはく離を容易にするために成形材料に添加される。
【0056】
有利な実施態様では、離型剤は、脂肪酸およびこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩もしくは亜鉛塩、アルキレンジアミンと脂肪酸とからなるジアミドからなる群から選択されている。特に有利には、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキルエステル、およびステアリン酸アルキルアミド、ならびにペンタエリトリットと長鎖の脂肪酸とのエステル、たとえばステアリン、ステアリン酸カルシウム、またはステアリン酸亜鉛からなる群から選択される離型剤を使用する。
【0057】
成分(E)
本発明による熱可塑性成形材料は、その他の添加剤を0〜30質量%、有利には0〜20質量%含有していてよい。
【0058】
添加剤として、ポリアミドまたはコポリアミドを含有する熱可塑性成形材料のために当業者に公知の全ての添加剤を使用することができる。これらは有利には、顔料、鉱物質充填剤、耐衝撃性改善剤、難燃剤、成核剤、次亜リン酸ナトリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されている。
【0059】
熱可塑性樹脂を着色するための顔料は一般に公知であり、たとえばR.GaechterおよびH.Mueller著の、Taschenbuch der Kunststoffadditive、Carl Hanser−Verlag、1983年、第494〜510頁を参照されたい。
【0060】
顔料の第一の有利な群として、白色顔料、たとえば酸化亜鉛、鉛白(2PbCO3Pb(OH)2)、リトポン、アンチモン白および二酸化チタンが挙げられる。二酸化チタンの両方の最も慣用されている結晶変態(ルチル型およびアナターゼ型)のうち、特にルチル型が、本発明による成形材料を白色に着色するために使用される。
【0061】
本発明により使用することができる黒色の着色顔料は、酸化鉄黒(Fe34)、スピネル黒(Cu(Cr、Fe)24)、マンガン黒(二酸化マンガン、二酸化ケイ素および酸化鉄からなる混合物)、コバルト黒およびアンチモン黒、ならびに特に有利にはカーボンブラックであり、これは多くの場合、ファーネスブラックまたはガスブラックの形で使用される。
【0062】
当然のことながら、特定の色調を調整するために、無機着色顔料、たとえば酸化クロムグリーンまたは有機着色顔料、たとえばアゾ顔料およびフタロシアニンを本発明により使用することができる。このような顔料は一般に市販されており慣用されている。
【0063】
さらに、前記の顔料もしくは着色剤を混合物として、たとえばカーボンブラックと銅フタロシアニンとを組み合わせて使用することが有利な場合がある。というのも、一般に、熱可塑性プラスチック中での着色剤の分散が容易になるからである。
【0064】
粒子状の充填剤として、ガラス球、ガラスフレーク、非晶質シリカ、炭酸塩、たとえば炭酸カルシウム(白亜)、石英粉末、雲母、種々のケイ酸塩、たとえば粘土、白雲母、黒雲母、スゾイド(Suzoit)、スズマレタイト、タルク、亜塩素酸塩、フロゴファイト(Phlogophit)、長石、ケイ酸カルシウム、たとえばウォラストナイトまたはケイ酸アルミニウム、たとえばカオリン、特にか焼されたカオリンが適切である。
【0065】
粒子状の充填剤として、タルク、カオリン、たとえばか焼されたカオリンまたはウォラストナイトまたは前記の充填剤からなる混合物が特に有利である。
【0066】
耐衝撃性改善剤のための例は、官能基を有していてもよいゴムである。2種類以上の異なった耐衝撃性改善ゴムからなる混合物を使用することもできる。
【0067】
成形材料の靱性を高めるために含有されているゴムは一般に、−10℃より低い、有利には−30℃より低いガラス転移温度を有するエラストマー割合を含有しており、かつ少なくとも1の、ポリアミドと反応することができる官能基を有している。適切な官能基はたとえば、カルボン酸基、無水カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ウレタン基またはオキサゾリン基であり、有利であるのは無水カルボン酸基である。
【0068】
有利な官能化後のゴムには、以下の成分から構成されている官能化されたポリオフィンゴムが挙げられる:
1.2〜8個の炭素原子を有する少なくとも1のα−オレフィン40〜99質量%、
2.ジエン0〜50質量%、
3.アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1〜C12−アルキルエステル、またはこのようなエステルの混合物0〜45質量%、
4.エチレン性不飽和C2〜C20−モノカルボン酸またはジカルボン酸、またはこれらの酸の官能性誘導体0〜40質量%、
5.エポキシ基を有するモノマー0〜40質量%、および
6.その他のラジカル重合可能なモノマー0〜5質量%、
その際、成分3)〜5)の合計は、成分1)〜6)に対して、少なくとも1〜45質量%である。
【0069】
適切なα−オレフィンのための例として、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、1−ペンチレン、1−ヘキシレン、1−ヘプチレン、1−オクチレン、2−メチルプロピレン、3−メチル−1−ブチレンおよび3−エチル−1−ブチレンを挙げることができるが、その際、エチレンおよびプロピレンが有利である。
【0070】
適切なジエンモノマーとして、たとえば4〜8個の炭素原子を有する共役ジエン、たとえばイソプレンおよびブタジエン、5〜25個の炭素原子を有する非共役ジエン、たとえばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環式ジエン、たとえばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、およびジシクロペンタジエン、ならびにアルケニルノルボルネン、たとえば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネンおよびトリシクロジエン、たとえば3−メチルトリシクロ−(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエン、またはこれらの混合物が挙げられる。有利であるのは、ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデン−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。
【0071】
ジエン含有率は、オレフィンポリマーの全質量に対して、有利には0.5〜50質量%、特に2〜20質量%、および特に有利には3〜15質量%である。適切なエステルの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートおよびデシルアクリレートであるか、もしくはメタクリル酸の相応するエステルである。これらの中から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートもしくは−メタクリレートが特に有利である。
【0072】
エステルの代わりに、またはエステルに加えて、オレフィンポリマー中に、エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の酸官能性および/または潜在的な酸官能性のモノマーが含有されていてもよい。
【0073】
エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のための例は、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸の第三級アルキルエステル、特にt−ブチルアクリレートおよびジカルボン酸、たとえばマレイン酸およびフマル酸であるか、またはこれらの酸の誘導体ならびにそのモノエステルである。
【0074】
潜在的に酸官能性のモノマーとは、重合条件下で、もしくはオレフィンポリマーを混合する際に成形材料中で遊離の酸基を形成する化合物であると理解すべきである。このための例として、2〜20個の炭素原子を有するジカルボン酸の無水物、特に無水マレイン酸、および前記の酸の第三級C1〜C12−アルキルエステル、特にt−ブチルアクリレートおよびt−ブチルメタクリレートがあげられる。
【0075】
その他のモノマーとして、たとえばビニルエステルおよびビニルエーテルが考えられる。
【0076】
特に有利であるのは、50〜98.9質量%、特に60〜94.85質量%のエチレンと、1〜50質量%、特に5〜40質量%のアクリル酸もしくはメタクリル酸のエステル、0.1〜20.0質量%、特に0.15〜15質量%のグリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレート、アクリル酸および/または無水マレイン酸からなるオレフィンポリマーである。
【0077】
特に適切な官能化されたゴムは、エチレン−メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレートポリマー、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートポリマー、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルアクリレートポリマーおよびエチレン−メチルメタクリレート−グリシジルアクリレートポリマーである。
【0078】
前記のポリマーの製造は、自体公知の方法により、有利には高圧および高温下でのランダム共重合により行うことができる。
【0079】
このコポリマーのメルトインデックスは、一般に、1〜80g/10分の範囲である(190℃および負荷2.16kgで測定)。
【0080】
前記のゴムの別の群として、コアシェルタイプのグラフトゴムがあげられる。これは、エマルション中で製造されたグラフトゴムであり、少なくとも1の硬質成分と、1の軟質成分とからなる。硬質成分とは通常、少なくとも25℃のガラス転移温度を有するポリマーであると理解され、軟質成分とは、最大で0℃のガラス転移温度を有するポリマーであると理解される。これらの生成物は、1のコアと、少なくとも1のシェルとからなる構造を有し、その際、この構造は、モノマー添加の順序によって生じる。軟質成分は、一般にブタジエン、イソプレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートまたはシロキサン、および場合により更なるコモノマーから誘導される。適切なシロキサンコアは、たとえば環式オリゴマーオクタメチルテトラシロキサンまたはテトラビニルテトラメチルテトラシロキサンとから出発して製造することができる。これらはたとえばγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランを用いて、カチオン性の開環重合によって、有利にはスルホン酸の存在下に、軟質のシロキサンコアへと反応することができる。該シロキサンは、たとえば加水分解可能な基、たとえばハロゲンまたはアルコキシ基を有するシラン、たとえばテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランの存在下に、重合反応を実施することによって架橋することもできる。適切なコモノマーとして、ここではたとえばスチレン、アクリロニトリルおよび1より多くの重合可能な二重結合を有する架橋性の、もしくはグラフト活性なモノマー、たとえばジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジアクリレートまたはトリアリル(イソ)シアヌレートがあげられる。硬質成分は、一般にスチレン、α−メチルスチレン、およびこれらの共重合体から誘導され、その際、ここではコモノマーとして、有利にはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびメチルメタクリレートがあげられる。
【0081】
有利なコアシェルグラフトゴムは、軟質コアと、硬質シェル、または硬質コア、第一の軟質シェルおよび少なくとも1の別の硬質シェルを有する。官能基、たとえばカルボニル基、カルボン酸基、酸無水物基、酸アミド基、酸イミド基、カルボン酸エステル基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキサゾリン基、ウレタン基、尿素基、ラクタム基またはハロゲンベンジル基の導入は、この場合、有利には適切に官能化されたモノマーを最後のシェルの重合の際に添加することによって行われる。適切な官能化されたモノマーは、たとえばマレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のモノエステルまたはジエステル、t−ブチル−(メタ)アクリレート、アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートおよびビニルオキサゾリンである。官能基を有するモノマーの割合は、コアシェルグラフトゴムの全質量に対して、一般に0.1〜25質量%、有利には0.25〜15質量%である。硬質成分に対する軟質成分の質量比は、一般に1:9〜9:1、有利には3:7〜8:2である。
【0082】
このようなゴムは自体公知であり、かつたとえばEP−A−0208187に記載されている。官能化のためのオキサジン基の導入はたとえばEP−A−0791606の記載に従って行うことができる。
【0083】
適切な耐衝撃性改善剤のもう1つの群は、熱可塑性ポリエステルエラストマーである。この場合、ポリエステルエラストマーとは、通常はポリ(アルキレン)エーテルグリコールである長鎖のセグメントと、低分子ジオールおよびカルボン酸から誘導される短鎖のセグメントを有するセグメント化されたコポリエーテルエステルであると理解される。このような生成物は自体公知であり、かつ文献において、たとえばUS3,651,014に記載されている。相応する製品は名称Hytrel TM(Du Pont)、Arnitel TM(Akzo)およびPelprene TM(Toyobo Co.Ltd.)で得られる。
【0084】
当然のことながら、種々のゴムの混合物を使用することもできる。
【0085】
難燃剤のための1例は、たとえば元素のリンである。通常、元素のリンは、たとえばポリウレタンまたはアミノプラスト樹脂またはジアルキルフタレート、たとえばジオクチルフタレートにより、粘性の液体を形成するか、または被覆されていてもよい。さらに、たとえばポリアミド、エラストマーまたはポリオレフィン中の赤色リンの濃縮物は適切である。特に有利であるのは、元素のリンと、1,2,3,4,7,8,9,10,13,13,14,14,−ドデカクロロ−1,4,4a,5,6,6a,7,10,10a,11,12,12a−ドデカヒドロ−1,4,7,10−ジメタノジベンゼ(a,e)−シクロオクタン(Dechlorane(登録商標)TM Plus、Occidental Chemical Corp.)および場合により相乗剤、たとえば三酸化アンチモン、リン化合物、たとえば有機ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、ホスフィンまたはホスファイトが同様に有利である。例として、トリフェニルホスフィンオキシドおよびトリフェニルホスフェートがあげられる。これらは単独で、またはヘキサブロモベンゼンと、または塩素化されたビフェニルと、および選択的に酸化アンチモンと混合して使用することができる。
【0086】
適切なホスフェートの例は以下のものである:
フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルエチル水素ホスフェート、フェニル−ビス−(3,5,5′−トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニルメチル水素ホスフェート、ジ(ドデシル)−p−トリルホスフェート、トリ−クレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、ジフェニル水素ホスフェートおよびメラミンポリホスフェート。最も有利なホスフェートは、トリフェニルホスフェートである。さらにトリフェニルホスフェートとヘキサブロモベンゼンおよび三酸化アンチモンの組み合わせが有利である。
【0087】
難燃剤として、リン−窒素結合を有する化合物、たとえばニトリル塩化リン、リン酸エステルアミド、リン酸エステルアミン、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドまたはテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリドも適切である。これらの難燃剤は大部分、市販されている。
【0088】
別の適切な難燃剤は、水酸化マグネシウムであり、これは場合によりシラン化合物により被覆されており、または窒素化合物、たとえばシアヌル酸メラミンである。
【0089】
別のハロゲン含有難燃剤は、テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼンおよびヘキサブロモベンゼンならびにハロゲン化ポリスチレンおよびポリフェニレンエーテルである。
【0090】
DE−A−1946924に記載されているハロゲン化フタルイミドもまた使用することができる。これらの中でも特にN,N′−エチレンビステトラブロモフタルイミドが重要である。
【0091】
成核剤として、フェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、ナイロン22ならびに有利にはタルクを使用することができる。
【0092】
本発明は、本発明による成形材料の製造方法にも関し、この場合、成分(A)、(B)、(C)および場合により(D)および(E)を、相応する量で、有利には押出により混合する。この方法では、異なった大きさ(スクリュー直径)の市販の二軸スクリュー押出機を使用することができる。温度は、押出の際に200〜400℃、有利には250〜350℃、特に有利には250〜320℃である。
【0093】
本発明は、本発明による熱可塑性成形材料から得られる成形体にも関する。
【0094】
これらは有利には暖房設備のため、屋外での適用のため、照明技術、電気部門および電子部門、または自動車分野、たとえば自動車のラジエーター、エンジンカバー、加熱装置の外装、カバー、ランプホルダー、吸気マニホルド、シリンダーヘッドカバー、冷却水用タンク、バルブ、ポンプケーシング、導管および吸気冷却器(のキャップ)のための部材である。
【0095】
本発明による熱可塑性成形材料は、熱の作用および加水分解に対する高い安定性により優れている。本発明による熱可塑性成形材料から、熱および液体の作用に対する高い安定性が重要である箇所または状況で使用される部材を製造することができる。これらの部材は、熱および/または加水分解による損傷を受ける傾向がほとんどなく、従って部材の破損の危険を限定することができる。さらに本発明による部材は、従来は、ポリマーの使用が不可能であり、従って高価な重い金属または金属合金を使用しなくてはならなかった高温下で使用することもできる。
【0096】
実施例 以下の成分を使用した:
A1)PA66:VZ=149ml/g、AEG=46ミリモル/kg、CEG=65ミリモル/kg(アジピン酸により制御)
A2)PA66:VZ=150ml/g、AEG=84ミリモル/kg、CEG=19ミリモル/kg(HMDにより制御)
A3)PA6:VZ=150ml/g、AEG=36ミリモル/kg、CEG=51ミリモル/kg(プロピオン酸により制御)
A4)PA6:VZ=150ml/g、AEG=84ミリモル/kg、CEG=19ミリモル/kg(HMDにより制御)
B)PAのためのカットガラス繊維、直径10μm、
C)熱安定化剤:Cu/KI混合物(モル比1/4)、
D)離型剤:ステアリン酸カルシウム。
【0097】
成形部材の組成
【表1】

【0098】
VZ:c=96%の硫酸中5g/l、ISO307による。
【0099】
AEGおよびCEGは、滴定(第3/4頁を参照)により測定した。
【0100】
ジアミンにより制御される鎖のモル百分率は、
A1:17%、
A2:66%、
A3:0%(ジアミンは存在しない)、
A4:63%
であり、かつA1およびA2に関して、ならびにA4に関して以下のとおりに計算された:
A1およびA2について:
ジアミン制御される鎖のモルパーセント(XAA):
【数1】

【0101】
A4について:
【数2】

【0102】
成形材料は、ZSK40を用いて、30kg/h(150rpm)の処理量および約280℃の平坦な温度プロファイルで製造した。
【0103】
Glysantin G48/水(1/1)中、130℃(V1、B1)または120℃(V2、B2)でオートクレーブ中での貯蔵による加水分解の前および後に測定した機械的特性値:
【表2】

【0104】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)50ミリモル/kg以上のアミノ末端基の数を有する少なくとも1のポリアミド20〜85質量%、
(B)ガラス繊維14.9〜60質量%、
(C)少なくとも1の熱安定化剤0.01〜2質量%、
(D)少なくとも1の離型助剤0〜1.5質量%および
(E)その他の添加剤0〜30質量%
を含有し、その際、(A)〜(E)は合計して100質量%である、熱可塑性成形材料。
【請求項2】
線状の脂肪族ポリアミド(A)が使用されることを特徴とする、請求項1記載の成形材料。
【請求項3】
ポリアミド(A)が、60ミリモル/kg以上の第一級アミノ末端基を有する、請求項1または2記載の成形材料。
【請求項4】
ポリアミド(A)が、ジアミンにより制御される鎖のモル割合を30モル%以上有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項5】
ポリアミド(A)が、100〜250ml/gの粘度数を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項6】
ガラス繊維が、5〜15μmの直径を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項7】
熱安定化剤(C)が、一価もしくは二価の銅の化合物、第二級芳香族アミンをベースとする安定化剤、立体障害フェノールをベースとする安定化剤、またはこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項8】
ポリアミド(A)が、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド(ナイロン66、ポリアミド66)、ポリアミド66を少なくとも80質量%の割合で含有するポリアミドの混合物、構成成分の少なくとも80質量%までがアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンから誘導されているコポリアミド、ポリカプロラクタム(ナイロン6、ポリアミド6)、またはこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項9】
繊維、シート、成形体を製造するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料から得られる任意の種類の成形体。

【公表番号】特表2010−501653(P2010−501653A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525004(P2009−525004)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058165
【国際公開番号】WO2008/022910
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】