説明

改善された特性を有するSPDフィルム及びこれを含むライトバルブ

【課題】ライトバルブの光調節ユニットとして好適に使用されるフィルムを提供する。
【解決手段】架橋ポリマーマトリックスに分散した液体ライトバルブ懸濁液の小滴を有する架橋ポリマーマトリックスを含むフィルムを提供する。ここで、ポリマーマトリックスは、架橋前において、少なくとも2Pa・秒(2000CPs)のブルックフィールド粘度を有するポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、改善されたSPDフィルムに関する。特に、このようなフィルムに使用され又は使用し得るマトリックスポリマーの改良、及びこのようなフィルムを含むライトバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ライトバルブは、光の調節として60年間以上知られている。ここで使用する場合、ライトバルブは、わずかな距離によって離間する2つの壁で形成されるセルであって、少なくとも1つの壁は透明であり、該壁が、その上に通常透明な電気的に伝導性のコーティングの形の電極を有するものとして言及され得る。セルは、光調節素子(light-modulating element)(ここで「賦活性(activatable)材料」と称する)を含み、これは、粒子の液体懸濁液又はプラスチックフィルムであって粒子の液体懸濁液の小滴がその中に分布されていてもよい。
液体懸濁液(時々ここで「液体ライトバルブ懸濁液」と称する)は、液体懸濁媒体中に懸濁されている小粒子を含む。適用される電界がない場合、液体懸濁液中の粒子は、ブラウン運動のためにランダム状態と考えられ、それゆえに、セル中を通過する光のビームが、反射され、透過され、又は吸収される。これは、セル構造、粒子の性質並びに濃度、及び光のエネルギー含量に依存する。ライトバルブは、従って、OFF状態において比較的暗い。しかしながら、電界が、液体ライトバルブ懸濁液を通してライトバルブに適用される場合、粒子は整列し、及び、多く懸濁液に対して、大部分の光は、セルを通過し得る。従って、ライトバルブは、ON状態において比較的透明である。ここで記載されているタイプのライトバルブは、さらに「懸濁粒子デバイス」又は「SPDs」として知られている。
【0003】
ライトバルブは、多用途における使用が提案され、例えば、英数字のディスプレイ及びテレビディスプレイ;ランプ、カメラ、オプティカルファイバ用及びディスプレイ用のフィルタ;及び窓、サンルーフ、サンバイザ、眼鏡、ゴーグル及びミラー等を含み、そこを通して通過、又は場合によりそこから反射する光の量を調節する。限定されることなく、窓の例は、商業ビル、温室及び住宅用の建築上の窓、自動車、ボート、列車、航空機及び宇宙船用の窓、覗き穴を有するドア用の窓、オーブン及び冷蔵庫のような仕切を有する器具用の窓を含む。
多くの用途に対し、液体懸濁液よりむしろプラスチック薄膜であることが、賦活性材料、即ち、光調節素子として好ましい。例えば、可変の光透過窓として使用されるライトバルブにおいて、液体懸濁液の小滴が分布されたプラスチック薄膜は、液体懸濁液のみより好ましい。なぜなら、静水圧効果、例えば液体懸濁液の高カラム(high column)につながる膨張(bulging)がフィルムの使用を通じて回避され得、かつ、可能性ある漏れのリスクも回避し得るからである。プラスチック薄膜を使用する他の利点は、プラスチック薄膜において、粒子は、一般的に、非常に小さい小滴中にのみ存在するので、フィルムが電圧で繰り返し活性化するときに目立って塊にならないことである。
【0004】
ここで使用される「ライトバルブフィルム」は、フィルム又はフィルムの一部に分布された粒子の液体懸濁液の小滴を有するフィルムを意味する。
エマルジョンを架橋することによって製造されるライトバルブフィルムは、既知である。米国特許番号第5,463,491、5,463,492及び5,728,251号、及び米国特許出願番号第08/941599号を参照のこと(これら全ては、本発明の譲受人に与えられる)。上記の特許及び特許出願及びここで若しくは他で言及した他のすべての特許及び文献は、ここで本出願に参考として組み込まれる。
【0005】
液体ライトバルブ懸濁液
1. 液体懸濁液媒体及び安定剤
液体ライトバルブ懸濁液は、公知技術のいかなる液体ライトバルブ懸濁液でもあってもよく、及び当業者にとって公知技術に従って処方されてもよい。ここで使用する「液体ライトバルブ懸濁液」の語は、複数の小粒子が分散された「液体懸濁媒体」を意味する。「液体懸濁媒体」は、1種以上の非水性で、電気的に抵抗性の液体を含み、好ましくは、粒子が凝集する傾向を減少し及び懸濁液中に分散させておくように作用する少なくとも一つのタイプのポリマー安定剤を溶解する。
本発明で有用な液体ライトバルブ懸濁液は、粒子を懸濁するためにライトバルブにおいて使用するための、以前に提案した、いかなる液体懸濁媒体を含んでもよい。ここで有用な、当該技術において既知の液体懸濁媒体は、限定されることはないが、米国特許番号第4,247,175及び4,407,565号明細書において開示されている液体懸濁媒体を含む。一般に、液体懸濁媒体又はそこに溶解されたポリマー安定化剤の一方または双方は、懸濁粒子を重力均衡に維持するために選択される。
【0006】
使用されるポリマー安定化剤は、粒子表面に結合するだけでなく、液体懸濁媒体の非水性液体に溶解される、単一のタイプの固体ポリマーであり得る。これとは別に、ポリマー安定化剤系として役立つ少なくとも2つの固体ポリマー安定化剤が存在してもよい。例えば、粒子は、実際、平坦な表面コーティングを粒子に提供するニトロセルロースのような第1タイプの固体ポリマー安定化剤と、第1タイプの固体ポリマー安定化剤に結合するか又は付随し、さらに液体懸濁媒体に溶解して、粒子に分散と立体的な保護を与える1種以上の付加的なタイプの固体ポリマー安定化剤とでコーティングされ得る。さらに、米国特許第5,463,492号明細書に記載されるように、特にSPDライトバルブフィルムにおいて、液体ポリマー安定化剤が適宜使用されてもよい。
【0007】
2.粒子
無機の及び有機粒子は、ライトバルブにおいて使用されてもよい。懸濁液及びこのような粒子は、電磁スペクトルの可視部の全部または一部において、光吸収性又は光反射型であり得る。
従来のSPDライトバルブは、一般的に使用されるコロイドサイズのポリハライド粒子を有する。ここで使用される「コロイド」の語は、粒子サイズについていえば、粒子が最大寸法が平均1μm(1ミクロン)以下であることを意味してもよい。好ましくは、ポリハライド又は他のタイプの粒子であってSPDライトバルブ懸濁液の用途に適用され又は意図されるものは、青色光の波長の半分より低い、即ち、2000オングストローム以下の最大寸法を有し、これは光散乱を極度に低める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,463,491号
【特許文献2】米国特許第5,463,492号
【特許文献3】米国特許第5,728,251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術のフィルム問題
先行技術架橋性SPDフィルムは、後述するが、フィルムが商業的に大量生産されるのを妨害する種々の問題を受けている。
米国特許番号第5,463,491及び5,463,492号明細書は、通常熱で硬化する架橋SPDフィルムを開示する。しかしながら、熱でそのようなフィルムを硬化するのに必要な時間の長さは、しばしば約1時間であるが、産業的フィルムコーティングプロセスには不都合に長い。比較すると、コートされたフィルムのUV硬化は、しばしば産業的に数秒で達成され、ウェブ保有コートフィルム(web carrying coated film)が高速で動くことができる。さらに、前述の2つの特許の場合、硬化したマトリックスポリマーにおいて比較的均一な小滴の分布を達成するために、別々の乳化剤を使用するか、又は、マトリックスポリマー上のペンダントエステル基を取り入れて、乳化剤(いわゆる「架橋性乳化剤」)として貢献することが一般的に必要だった。効果的であるが、架橋性乳化剤は、合成することが困難であり、及び、長い貯蔵寿命を有しなかった。フィルムの紫外コーティングは、確立された産業の技術である。
【0010】
SPDフィルムを硬化させるために紫外線照射を使用する最初の試みにより(米国特許第5,463,491号明細書、Example 13を参照のこと)、懸濁液はマトリックス内でカプセルに入れられるが、商業上実行可能ではない。これは、小滴(カプセル)中の液体懸濁液は、青から赤への色の変化によって証明されるように激しく分解されるからである。さらに、フィルムを紫外線照射で硬化するのに必要な時間、10分は、商業上有用であるにはあまりに長かった。それに加えて、この例におけるマトリックスと懸濁液の屈折率のミスマッチは、望まれないくもりを引き起こした。
先行技術SPDフィルムは、一般的に少なくとも一つの合成困難なモノマーの使用を必要とする。このようなモノマーの例は、米国特許第5,463,492号明細書のExample 24において言及されている、1,4-ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼンである。このモノマーは、製造が困難なだけでなく、非常に高価である。
【0011】
紫外硬化性フィルムは、米国特許出願第08/941599号に記載されている。このようなフィルムは、実質的な変色なく速やかに硬化し得、及びマトリックス及び小滴の屈折率を整合し得るが、フィルムは、望ましくない欠陥を示す。例えば、以前のパラグラフにおいて言及した入手困難なモノマーが、この特許出願において使用されている(Example 1を参照)。さらに、架橋性乳化剤又は別々の乳化剤を、マトリックスにおける良好な小滴分布をもたらすために使用することが必要だった。さらに、上記特許出願の方法によって製造される紫外線架橋性シロキサンコポリマーの粘性は、一般的に非常に低かった。例えば、その特許出願のExample 1において、22.9℃でわずか0.423Pa・秒(423センチポアズ)の粘度を有するそのようなコポリマーを調製する方法が記載されている。
このような紫外線架橋性ポリマーに対して一定の貯蔵寿命を達成するために、エンドキャッピング(end-capping)が必要である。しかしながら、ブレンステッド酸触媒を使用した先行技術のポリマー合成は、ゲルを引き起こし、及び、エンドキャッピングを高温よりも室温で行って分子量を高く維持することが要求されるが、触媒自身が、ピーク分子量を10,000より低く制限した。わずか55〜65%の収率が、典型的だった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の説明
本発明は、先行技術の多数の欠陥を克服し、及び、本発明によって、適度に高粘度の紫外線架橋性ポリマーを同様の特性をもって繰り返し合成することができる。
1,4-ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼンの代わりに、シラノール末端ジフェニルジアルキルシロキサンのコポリマーを使用する。このような材料の例は、U.C.T.社(ロッキーヒル、コネティカット州)から購入されるシラノール末端ジフェニルジメチルシロキサンのコポリマーである。下の例において、このコポリマー(「コポジシラノール(copodisilanol)」と称する)は、使用前に180℃での減圧蒸留によって環状シロキサンを除去して精製しなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
シラノール末端ジフェニルジアルキルシロキサンのコポリマーに関し、アルキルは、同一又は異なってもよく、及び直鎖又は分岐のC1−C4アルキル、好ましくはC1−C3アルキル、最も好ましくはメチルであり得る。本発明において使用されるペンダントフェニルを有するシロキサンコポリマーの調製において、コモノマ−は、アルコキシ基が同一又は異なってもよく、及び直鎖又は分岐のC1−C4アルコキシ基であってもよい3-(メタ)アクリルオキシアルキルジアルコキシアルキルシロキサンであり得ると考察される。アルキルジアルコキシアルキルシロキサンについて先に定義されたようなアルキルがあってもよい。加えて、コモノマーは、ビニル含有又はフリーラジカル的に重合可能な基、又は他の基、例えば、カチオン的に重合可能な部分、例えばエポキシ又はビニルエーテルを有するアルキルジアルコキシシランであり得る。
【0014】
本発明において有用なシラノール末端材料のうちの1つが、ジハロ、好ましくはジクロロ末端基含有オリゴマー、例えば、塩素末端ポリジメチルシロキサンであってもよいと考えられる。コポジシラノールの場合、コポリマーは、さらに好適な屈折率のアルキルフェニルホモポリマー(シラノール末端)であり得る。アルキルは、ここで以前に定義されている。
さらに、意外にも、本発明の方法は、比較的高粘性を製造することが可能になることにより、マトリックスポリマーの粘性が十分に高い、好ましくはブルックフィールド粘度(Brookfield-viscosity)で最小2Pa・秒(2000CPs)、より好ましくは6Pa・秒(6000CPs)の粘性及び最も好ましくは8〜15Pa・秒(8000-15000 CPs)の範囲の粘性である場合、先行技術の別々の乳化剤又は架橋性乳化剤に対するいずれの必要性も排除し得ることが発見された。これは、大きな簡略化及びコスト節減を表す。
【0015】
ブレンステッド酸触媒の使用は排除された。その代わりにルイス酸触媒を使用することによって、中和方法の排除と一緒に、より高粘性及び分子量が達成された。本反応(instant reaction)のような触媒反応に有用ないかなるルイス酸も、使用されてよい。
先行技術の紫外線架橋性コポリマーの貯蔵寿命は、平均、ゲル化が通常生じる前の数ヵ月であるのに対して、本発明の紫外線架橋性コポリマーの貯蔵寿命は、上限不明で1年を超えるまで改善される。
85%以上の収率が達成され、これは先行技術の方法によって達成されるよりも非常に高い。
一般に、本発明のマトリックスポリマーは、さらに、架橋性SPDフィルム用の先行技術のマトリックスポリマーよりも、クリアーかつ透明である。
【0016】
一般に、硬化させるために好適なエマルジョンを形成するため、米国特許第5,463,492号又は米国特許出願第08/941,599号(双方は、明確に本願明細書に引用したものとする)の方法は、以下の通りである。すなわち、本発明のマトリックスポリマーを、その液体懸濁媒体が液体懸濁ポリマーであってもよい非混合性液体懸濁液と勢いよく混合する。エマルジョンはその後、好適な基体上、例えばインジウムスズ酸化物("ITO")をコートしたガラス又はプラスチックのシート上に展開する。
暴露されたフィルム面が外被を形成するための硬化が終わっていない条件で、本発明のマトリックスポリマーを使用するSPDフィルムは十分粘着性であり、限定されることなくガラス及びプラスチック基体を含む多種多様な基体に対して良好な接着を示す。そして、このような基体では、フィルムと、透明な電気的に伝導性の材料、例えば(ITO)、酸化スズのコーティング、又は、フッ素ドープした酸化スズ又は誘電層でオーバーコートした電極のような低い熱放射率のコーティングの形の電極とが接触している。本発明のSPDフィルムは、さらに良好な密着(cohesion)を示す。
本発明の3つの異なる粘性のシロキサンコポリマーを合成するための方法を後述する。
【実施例】
【0017】
ペンダントフェニルを有するシロキサンコポリマーの合成
1.コポジシラノール31グラム(精製、RI 1.4715 @ 25℃)、PDMSジシラノール11.75g、3-アクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン4.00g、スズ 2-エチルヘキサノエート0.51gを、500mL三つ口丸底フラスコ中に秤量した。ヘパリン200mLを周囲温度でフラスコに加えた。フラスコの一つの口は、撹拌機シャフト用の引き込み口である。他の口を通して、温度計及び25mLディーンスターク(Dean-Stark)トラップ(D-S)を取り付けた。このD-Sを20mLの水位標まで水で満たした。フラスコの中身を10分間機械的撹拌で撹拌し、良好な混合物を得た。その後、フラスコの中身を加熱して、5時間還流した。還流温度は101℃である。その後、トリメチルエトキシシラン14mLをコンデンサーの上部を通して導入し、更に3時間続けて還流した。
エンドキャッピング反応の最後に、フラスコの中身を冷却し、1Lビーカーに移した。フラスコをさらにヘパリン50mLで洗浄し、洗液もビーカーに加えた。この撹拌した溶液に対して、エタノール166mL及びメタノール333mLを加えた。撹拌をさらに10分間続け、ビーカーの中身を2L分液ロートに移した。層分離は、少なくとも2時間行うと起こる。底層はポリマーを含み、これを減圧下、80℃での溶液のロータリーエバポレーションの後、回収した。このパラグラフにおける工程は、低分子量不純物及び多くの触媒を除去する。
【0018】
収率は、85.5%だった。このポリマーは、ブルックフィールド粘度3.54Pa・秒(3540CPs)、及びRI値1.4526だった(液体ポリマーを流下膜式蒸留装置に通して揮発性液体を除去する前)。この実験の繰り返しは、収率84.15%、ブルックフィールド粘度3.53Pa・秒(3530CPs)、RI値1.4527との結果だった。2つのポリマーサンプルを混合し、真空下キシレン還流で流下膜式蒸留ユニットに通した。得られたポリマーは、RI値1.4531、ブルックフィールド粘度4.55Pa・秒(4550CPs)、及び約12,700のピーク分子量だった。
分子量の値は、ポリジメチルシロキサン校正に基づき、及びピーク分子量は、数平均分子量である。屈折率及び粘度の測定は25℃で行った。
【0019】
2.コポジシラノール31グラム(精製、RI 1.4715 @ 25℃)、PDMSジシラノール11.75g、3-アクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン4.00g、スズ 2-エチルヘキサノエート0.6gを、500mL三つ口丸底フラスコ中に秤量した。ヘパリン200mLを周囲温度でフラスコに加えた。フラスコの一つの口は、撹拌機シャフト用の引き込み口である。他の口を通して、温度計及び25mLディーンスタークトラップ(D-S)を取り付けた。このD-Sトラップを20mLの水位標まで水で満たした。フラスコの中身を10分間機械的撹拌で撹拌し、良好な混合物を得た。その後、フラスコの中身を加熱して、5時間還流した。還流温度は101℃である。その後、トリメチルエトキシシラン14mLをコンデンサーの上部を通して導入し、更に3時間続けて還流した。
エンドキャッピング反応の最後に、フラスコの中身を冷却し、1Lビーカーに移した。フラスコをさらにヘパリン50mLで洗浄し、洗液もビーカーに加えた。この撹拌した溶液に対して、エタノール166mL及びメタノール333mLを加えた。撹拌をさらに10分間続け、ビーカーの中身を2L分液ロートに移した。層分離は、少なくとも2時間行うと起こる。底層はポリマーを含み、これを減圧下、80℃での溶液のロータリーエバポレーションの後、回収した。このパラグラフにおける工程は、低分子量不純物及び多くの触媒を除去する。
【0020】
収率は、87.7%、ブルックフィールド粘度6.68Pa・秒(6680CPs)、及びRI値1.4526だった(液体ポリマーを流下膜式蒸留装置に通して揮発性液体を除去する前)。この実験の繰り返しでは、収率89.9%、ブルックフィールド粘度5.76Pa・秒(5760CPs)、RI値1.4526との結果だった。2つのポリマーを混合し、真空下キシレン還流で流下膜式蒸留ユニットに通した。得られたポリマーは、RI値1.4534、ブルックフィールド粘度8.63Pa・秒(8630CPs)、及び約16,600のピーク分子量だった。
分子量の値は、ポリジメチルシロキサン校正に基づき、及び数平均分子量は、ピーク分子量として使用した。屈折率及び粘度の測定は25℃で行った。
【0021】
3.コポジシラノール31グラム(精製、RI 1.4715 @ 25℃)、PDMSジシラノール11.75g、3-アクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン4.00g、スズ 2-エチルヘキサノエート0.75gを、500mL三つ口丸底フラスコ中に秤量した。ヘパリン200mLを周囲温度でフラスコに加えた。フラスコの一つの口は、撹拌機シャフト用の引き込み口である。他の口を通して、温度計及び25mLディーンスタークトラップ(D-S)を取り付けた。このD-Sトラップを20mLの水位標まで水で満たした。フラスコの中身を10分間機械的撹拌で撹拌し、良好な混合物を得た。その後、フラスコの中身を加熱して、5時間還流した。還流温度は101℃である。その後、トリメチルエトキシシラン14mLをコンデンサーの上部を通して導入し、更に3時間続けて還流した。
エンドキャッピング反応の最後に、フラスコの中身を冷却し、1Lビーカーに移した。フラスコをさらにヘパリン50mLで洗浄し、洗液もビーカーに加えた。この撹拌した溶液に対して、エタノール166mL及びメタノール333mLを加えた。撹拌をさらに10分間続け、ビーカーの中身を2L分液ロートに移した。層分離は、少なくとも2時間行うと起こる。底層はポリマーを含み、これを減圧下、80℃での溶液のロータリーエバポレーションの後、回収した。このパラグラフにおける工程は、低分子量不純物及び多くの触媒を除去する。
【0022】
収率は、90.7%、ブルックフィールド粘度11.82Pa・秒(11820CPs)、及びRI値1.4529だった(液体ポリマーを流下膜式蒸留装置に通して揮発性液体を除去する前)。この実験の繰り返しでは、収率89.7%、ブルックフィールド粘度13.48Pa・秒(13,480CPs)、RI値1.4528との結果だった。2つのポリマーを混合し、真空下キシレン還流で流下膜式蒸留ユニットに通した。得られたポリマーは、RI値1.4535、ブルックフィールド粘度20.57Pa・秒(20570CPs)、及び約26,300のピーク分子量だった。
分子量の値は、ポリジメチルシロキサン校正に基づき、及び数平均分子量は、ピーク分子量で使用したことを注記する。屈折率及び粘度の測定は25℃で行った。
【0023】
本発明の液体ライトバルブ懸濁液によりなる粒子及び他の材料、例えば、限定されることなく、ポリマー及び液体懸濁媒体は、相互に全て相溶性であり、相互に分解しない。さらに、本発明のSPDフィルムは、紫外線照射又は電子ビームにより、それほど分解することなく容易に硬化し得る。
【0024】
さらに、本発明は、好ましくは以下に関する。
[1]ライトバルブの光調節ユニットとして好適に使用されるフィルムであって、架橋ポリマーマトリックスに分布した液体ライトバルブ懸濁液の小滴を有する該架橋ポリマーマトリックスを含み、前記フィルムが、架橋によって実質的に損傷を受けず、及び前記ポリマーマトリックスが、架橋前に、少なくとも2Pa・秒のブルックフィールド粘度を有することを特徴とするフィルム。
[2]前記ポリマーマトリックスが、少なくとも6Pa・秒のブルックフィールド粘度を有する、[1]に記載のフィルム。
[3]前記ポリマーマトリックスが、約8〜15Pa・秒のブルックフィールド粘度を有する、[2]に記載のフィルム。
[4]前記ポリマーマトリックスが、シラノール末端ジフェニルジアルキルシロキサンのコポリマーを有する、[1]に記載のフィルム。
[5]前記ポリマーが、ビニル含有又はフリーラジカル的若しくはカチオン的に重合可能な基を有する3-(メタ)アクリルオキシアルキルジアルコキシアルキルシロキサン又はアルキルジアルコキシシロキサンであるコモノマーを含む、[1]に記載のフィルム。
[6]前記ポリマーが、少なくとも一つのコポジシラノールから由来する、[1]に記載のフィルム。
[7]ジシラノールの一つが、ジハロ末端基を含有するオリゴマーである、[6]に記載のフィルム。
[8]ジシラノールが、好適な屈折率のジフェニルジアルキルシロキサン又はアルキルフェニルシラノール末端ホモポリマーである、[6]に記載のフィルム。
[9]対向したセル壁を有するライトバルブであって、[1]〜[8]のいずれか1に記載のフィルムが該ライトバルブの光調節ユニットとして前記セル壁の間にあることを特徴とするライトバルブ。
[10]ライトバルブの光調節ユニットとして好適に使用されるフィルムであって、架橋ポリマーマトリックスに分布した液体ライトバルブ懸濁液の小滴を有するフィルムの形態の該架橋ポリマーマトリックスを含み、前記液体ライトバルブ懸濁液が、液体懸濁媒体中に懸濁された粒子を含み、前記フィルムが、[1]〜[8]のいずれか1に記載のフィルムであることを特徴とするフィルム。
[11]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、該マトリックスポリマーが、[1]に記載のポリマーを有する、SPDフィルム。
[12]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、該マトリックスポリマーが、[2]に記載のポリマーを有する、SPDフィルム。
[13]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、該マトリックスポリマーが、[3]に記載のポリマーを有する、SPDフィルム。
[14]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、該マトリックスポリマーが、[4]に記載のポリマーを有する、SPDフィルム。
[15]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、該マトリックスポリマーが、[5]に記載のポリマーを有する、SPDフィルム。
[16]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、該マトリックスポリマーが、[6]に記載のポリマーを有する、SPDフィルム。
[17]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、ジシラノールの一つが、[7]に記載のオリゴマーである、SPDフィルム。
[18]マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成され、ジシラノールの一つが、[8]の記載に従う、SPDフィルム。
[19][1]〜[8]のいずれか1に記載のフィルムが、ライトバルブの光調節ユニットとしてセル壁の間にある、マトリックスポリマー及びコロイド粒子の液体懸濁液を含むエマルジョンを硬化することによって形成されるSPDフィルム。
[20]フィルムが紫外線照射又は電子ビームによって硬化される、[12]〜[20]のいずれか1に記載のSPDフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトバルブの光調節ユニットとして使用されるフィルムであって、前記フィルムが、架橋ポリマーマトリックスに分布した液体ライトバルブ懸濁液の小滴を有する架橋ポリマーマトリックスを含み、前記マトリックスポリマーが、少なくとも2Pa・秒のブルックフィールド粘度を有することを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記マトリックスポリマーが、シラノール末端ジフェニルジアルキルシロキサン又はシラノール末端アルキルフェニルホモポリマーと、ビニル含有基、又はフリーラジカル的或いはカチオン的に重合可能な基を有するアルキルジアルコキシシランのコモノマーとの反応物を含み、前記マトリックスポリマーの末端の基がトリアルキル末端である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記マトリックスポリマーが、ジハロ末端ジフェニルジアルキルシロキサン又はジハロ末端アルキルフェニルホモポリマーと、ビニル含有基、又はフリーラジカル的或いはカチオン的に重合可能な基を有するアルキルジアルコキシシランのコモノマーとの反応物を含み、前記マトリックスポリマーの末端の基がトリアルキル末端である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記マトリックスポリマーが、1.4526〜1.4535の屈折率である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記コモノマーが、3−アクリルオキシプロピルジメトキシメチルシランである、請求項2〜3のいずれか1項に記載のフィルム。

【公開番号】特開2012−238010(P2012−238010A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156639(P2012−156639)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2001−586506(P2001−586506)の分割
【原出願日】平成13年5月23日(2001.5.23)
【出願人】(591215041)リサーチ フロンティアーズ インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】