説明

改善された生物学的活性を有する成長因子突然変異体

本発明は、改善された生物学的活性を示す、新規な生合成成長因子突然変異体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された生物学的活性を示す、新規な組換え生合成成長因子突然変異体に関する。前記の改善されたタンパク質活性は、天然に生じるシグナル伝達分子の形質転換成長因子βスーパーファミリーである、本来の成長因子タンパク質の特定のアミノ酸の置換によって実現される。本明細書において規定される組換えタンパク質は、様々な細胞、組織および器官の再生、成長促進ならびに分化に特に適している。本発明はまた、前記組換えタンパク質突然変異体をコードする核酸分子、その核酸分子を含む発現ベクターおよび宿主細胞、前記タンパク質突然変異体に対する抗体、医薬組成物ならびに成長因子突然変異体を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
形質転換成長因子β(TGF−β)スーパーファミリーのタンパク質は、TGF−β、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビンおよび成長/分化因子(GDF)を含む35以上のメンバーを包含する。TGF−βスーパーファミリータンパク質は細胞増殖および分化ならびに組織形成を促進し、幅広い医療方法および医療用途に対応する。これらの二量体分子は、I型およびII型セリン/スレオニン受容体キナーゼで構成される特異的な受容体複合体を介して作用する。続いて受容体キナーゼはSmadタンパク質を活性化し、それはその後、核にシグナルを伝達して標的遺伝子の発現を調節する。Smad非依存性シグナル伝達経路もまたこれらの受容体によって開始され、MAPキナーゼ経路の誘導を引き起こす。Smadは細胞表面受容体から核に直接的にシグナルを伝達できるユニークなシグナル伝達分子のファミリーであり、それらはDNA結合パートナーならびに転写コアクチベーターおよびコリプレッサーとの相互作用によって転写を調節する。
【0003】
このタンパク質ファミリーのメンバーは初めに大きな不均一な(heterogeneous)前駆体タンパク質として合成され、その後C末端から約110〜140アミノ酸の塩基性残基のクラスターでタンパク質分解的切断を受け、N末端プロドメインからC末端成熟タンパク質部分を遊離する。すべての成熟ポリペプチドは構造上関連しており、これらのタンパク質の特徴的な三次元「システインノット」モチーフに関与する6つまたは7つの特徴的な(canonical)システイン残基を含む保存された生物活性ドメインを有する。
【0004】
様々なスーパーファミリーメンバーは、それらのシステインノット(cystine-knot)モチーフの相同性/同一性の程度に基づき、異なるサブファミリーおよびグループにさらに分類できる。骨形成タンパク質および成長/分化因子(GDF)の重複するファミリーは、骨格系および他の組織において多様な役割を果たすことが知られている(総説についてはDucyおよびKarsenty 2000, Kidney Int. 57, 2207-2214などを参照されたい)。特に、ヒトGDF−5(そのタンパク質はまた、MP52、CDMP−1として、または時にBMP−14としても知られる)、GDF−6(CDMP−2、BMP−13)およびGDF−7(CDMP−3、BMP−12)は、それらの類似した生物学的特性および非常に高度のアミノ酸配列同一性のために、数人の著者らにより同一のグループに分類されている(Mikic 2004, Annals of Biomedical Engineering 32, 466-476; Wolfmanら1997, J. Clin. Invest. 100, 321-330などを参照されたい)。
【0005】
骨および軟骨のde novo形成におけるGDF−5/GDF−6/GDF−7サブグループの顕著な機能(Chengら2003, J. Bone & Joint Surg. Am. 85-A, 1544-1552; Settleら2003, Developm. Biol. 254, 116-130)に加えて、このサブグループのメンバーはまた腱および靭帯(Wolfmanら1997, J. Clin. Invest. 100, 321-330)、神経組織(Farkasら1997, Neurosci Lett. 236,120-122; Watakabeら2001, J. Neurochem. 76, 1455-1464)、歯周靭帯および歯(Senaら2003, J. Dent. Res. 82, 166-171; Morotomeら1998, Biochem. Biophys. Res. Commun. 244, 85-90)、ならびに他の組織の重要な誘導因子および調節因子でもあることが繰り返し実証されている。
【0006】
GDF−5、GDF−6およびGDF−7をはじめとする様々な天然のBMP/GDFの遺伝子ならびにタンパク質の構造が既に解明されている。GDF−5のいくつかの機能欠損突然変異体が同定され、それは、すなわち、手足の指の短縮(C型短指症)ならびに動物における短肢症(brachypodism)(Stormら1994, Nature 368, 639-643)およびヒトにおける遠位中間肢異形成症(acromesomelic displasias)(Thomasら1996, Nature Gen. 12, 315-317)のような他の骨格異常などを引き起こす。これらの突然変異体に関して、ヒトGDF−5の173位、204位、400位、438位、441位および498位での特異的なアミノ酸置換は、そのタンパク質機能を低下させるかまたは完全に失わせることが見出されている(Schwabeら2004, Amer. J. Med Genet. 124A, 356-363)。一方、改善された生物学的活性を有するGDF突然変異体は今までにごくわずかしか知られていない。希少な例はWO01/11041において開示され、通常は二量化に関与するシステイン残基を欠如した活性単量体GDF−5に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨、軟骨、および他の組織の誘導活性に関与する分子の検索は、成長/分化因子と呼ばれる一連の分子の発見をもたらした。それらの特有の組織誘導活性によって、これらのタンパク質は、単独または特定の担体および/もしくはマトリックス材料と併用して、損傷した組織の自然治癒過程を促進し補助する治療法研究ならびに再生手術への適用に成功している。それでもなお、このような目的のために、改善されより効果的な型のこれらのタンパク質を開発することが大いに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従って、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されるような改善された生物学的活性を示すGDF−5関連タンパク質に由来する新規な組換えタンパク質を提供することにより解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本明細書において頻繁に用いられるいくつかの用語は、以下のように定義され、例示される。すなわち、
「システインノットドメイン」という用語は、本明細書において用いられる場合、ヒトGDF−5などのTGF−βスーパーファミリータンパク質の成熟部分に存在し、システインノットとして知られる三次元タンパク質構造を形成する、周知の保存されたシステインに富むアミノ酸領域を意味する。このドメインにおいては、それぞれのシステイン残基の相互に対する位置が重要であり、生物学的活性を失わないためにはわずかの変化しか許されない。システインノットドメインのコンセンサス配列は当技術分野において公知である。本明細書の定義によれば、タンパク質のシステインノットドメインは、それぞれのタンパク質のシステインノットに関与する最初のシステイン残基から始まり、それぞれのタンパク質のシステインノット(cystine-knot)に関与する最後のシステイン残基の次の残基で終わる。例えば、ヒトGDF−5前駆体タンパク質(配列番号1)のシステインノットドメインはアミノ酸400−501を含む(図1も参照されたい)。
【0010】
「GDF−5関連タンパク質」という用語は、本明細書において用いられる場合、ヒトGDF−5の102aaシステインノットドメイン(図1/配列番号1のアミノ酸400−501)に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有するシステインノットドメインを有し、ヒトGDF−5のアルギニン438(R438)、セリン439(S439)およびアスパラギン445(N445)の残基に相当する位置にアルギニン、セリンおよびアスパラギン残基を有する、任意の天然に生じるかまたは人工的に作製されたタンパク質を意味する。これらのタンパク質が上述の条件を満たす限り、脊椎動物または哺乳動物種に由来するGDF−5、GDF−6およびGDF−7タンパク質のグループに属するタンパク質、ならびにそれらの組換え変異型が含まれる。
【0011】
GDF−5関連タンパク質の非限定的な例は、図3および図4に示される、ヒトGDF−5(WO95/04819にMP52として、およびHottenら1994, Biochem. Biophys Res. Commun. 204, 646-652に開示される)、組換えヒトGDF−5/MP52(WO96/33215)、マウスGDF−5(US 5,801,014)、CDMP−1(WO96/14335)、HMWヒトMP52s(WO97/04095)、ウサギGDF−5(Sanyalら2000, Mol Biotechnol. 16, 203-210)、ヒトGDF−6/BMP−13(US 5,658,882)、ウシGDF−6(NCBI登録番号P55106)、マウスGDF−6(NCBI登録番号NP_038554)、GDF−6/CDMP−2(WO96/14335)、ヒトGDF−7/BMP−12(US 5,658,882)、マウスGDF−7(NCBI登録番号AAP97721)、GDF−7/CDMP−3(WO96/14335)、ニワトリGDF−5(NCBI登録番号NP_989669)、アフリカツメガエルGDF−5(NCBI登録番号AAT99303)、単量体GDF−5、6および7(WO01/11041およびWO99/61611)である。
【0012】
「RSN突然変異体」という用語は、本明細書において用いられる場合、本出願に記載されるとおりのヒトGDF−5とのアライメントの後、ヒトGDF−5(配列番号1)のアルギニン438(R438)に相当するアミノ酸がアルギニン(R)ではなく、および/またはヒトGDF−5のセリン439(S439)に相当するアミノ酸がセリン(S)ではなく、および/またはアスパラギン445(N445)に相当するアミノ酸がアスパラギン(N)ではない、GDF−5関連タンパク質に由来する組換えタンパク質を意味する。
【0013】
「改善された生物学的活性」という用語は、本明細書において用いられる場合、それぞれの非突然変異タンパク質の活性の少なくとも120%に達するRSN突然変異体の生物学的活性に関する。
【0014】
「生物学的活性」という用語は、GDF−5関連タンパク質の生物学的活性を意味する。例えば、この活性は下記の1つ以上のアッセイによって測定され得る。すなわち、
(a)骨形成および軟骨形成活性は、例えばTakuwaら(1989), Am.J. Physiol. 257, E797-E803)に記載されるように、in vitroでのアルカリホスファターゼアッセイ(ALP)によって測定することができ;
(b)神経栄養活性は、例えばKrieglsteinら1995 (J. Neuroscience Res. 42, 724-732)またはSullivanら1997 (Neuroscience Letters 233, 73-76)によって記載されるように、ドーパミン作動性ニューロンの生存率の上昇によって測定することができ;
(c)神経線維の伸長は、WO97/03188などに記載されるように、胎生期網膜から測定することができ;
(d)これらのタンパク質の血管新生能は、例えば、Yamashitaら1997 (Exp. Cell Research 235, 218-226)に記載されるように、in vivoでの角膜マイクロポケットモデルにおいて測定することができ;
(e)GDF−5関連タンパク質の筋芽細胞の最終分化への作用は、例えばInadaら1996 (Biochem Biophys Res Commun. 222, 317-322)によって記載され;
(f)腱および靭帯に関するかかるタンパク質の誘導能を測定するin vivoでの試験は、例えば、Wolfmanら1997, J. Clin. Invest. 100, 321-330において開示され;
(g)ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流に配置したSmad結合エレメントに基づくレポーター遺伝子アッセイを用いた、Smadの活性化によるシグナル伝達カスケードの測定は、例えば、Noheら,2002. J Biol Chem. 277, 5330-5338に既に記載されている。
【0015】
「変異型」という用語は、本明細書において用いられる場合、任意の下記のポリペプチドを意味する。すなわち、
(a)タンパク質の生物学的に活性な断片
(b)タンパク質の本来の配列に加えて付加的な配列を有するタンパク質構築物
(c)(a)および(b)の任意の組合せ
である。
【0016】
最もよく特徴付けられたメンバーとしてGDF−5を含むTGF−βスーパーファミリータンパク質のGDF−5/6/7グループは、脊椎動物/哺乳動物種の間で高度に保存されている(DucyおよびKarsenty 2000, Kidney Int. 57, 2207-2214)。これらのタンパク質中のいくつかの残基、すなわちヒトGDF−5のaa435〜447に相当する13アミノ酸(図2参照)は、すべてのグループメンバーに存在し、従って、一般にこのタンパク質の生物学的機能に重要であると考えられる。以前の研究では、この領域に存在するアミノ酸が置換された場合、タンパク質機能の喪失が確認された。例えば、438位に存在するアルギニン残基のシステインによる置換(突然変異R438C、Polinkovskyら1997, Nat Genet. 17, 18-19)およびロイシン441のプロリンによる置換(Fayaz-Ul Haqueら2002, Clin. Genet. 61, 454-458)はタンパク質機能を失わせる。
【0017】
現在、突然変異研究および他の実験によって、ヒトGDF−5のアルギニン438(R438)、セリン439(S439)およびアスパラギン445(N445)に相当するアミノ酸残基は、意外にも、タンパク質機能への悪影響なしにいくつかの特定のアミノ酸と置換され得ることが見いだされている。さらに、これらの置換はタンパク質の生物学的活性を顕著に増加させさえする。
【0018】
本発明のこの実施形態はさらに、図1、2および3によって説明される。図1は、381aaのプロドメイン(aa1〜27を含むaa1〜381、太字体)および120aaの成熟部分(aa382〜501)からなるヒトGDF−5前駆体タンパク質(Hottenら1994, Biochem. Biophys Res. Commun. 204, 646-652)を示す。成熟部分および特にシステインノットドメイン(aa400〜501、下線部)だけがタンパク質の生物学的機能にとって重要である。残基R438、S439およびN445(灰色の囲み)はこのシステインノットドメイン内に位置する。他のGDF−5関連タンパク質のシステインノットドメイン内の対応するアルギニン、セリンおよびアスパラギン残基は、図2および図3に示される(矢印で示される)。これらの図に示されていないタンパク質中の対応する残基は、ヒトGDF−5との配列アライメントによって容易に決定され得る。
【0019】
GDF−5関連タンパク質において、ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のアルギニン438(R438)に対応する位置のアルギニン残基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、メチオニン、アスパラギンより選択されるアミノ酸と置換される場合、結果として生じる組換えタンパク質は増加した生物学的活性を有することが見出された。
【0020】
好ましい実施形態では、R438の位置に対して選択されるアミノ酸はロイシンである。
【0021】
また、単独で、またはR438の置換とともに、ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のセリン439(S439)に対応する位置のセリン残基が、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ロイシンもしくはイソロイシンより選択されるアミノ酸と置換される場合、結果として生じる組換えタンパク質は増加した生物学的活性を有することも見出された。
【0022】
好ましい実施形態では、S439の位置に対して選択されるアミノ酸はアスパラギン酸である。
【0023】
さらに、単独で、またはR438およびS439のいずれかもしくは両方の置換とともに、ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のアスパラギン445(N445)に対応する位置のアスパラギン残基が、セリンおよびスレオニンより選択されるアミノ酸と置換され、結果として生じる組換えタンパク質は増加した生物学的活性を有することが見出された。
【0024】
好ましい実施形態では、N445の位置に対して選択されるアミノ酸はスレオニンである。
【0025】
R438および/またはS439および/またはN445相当物が上記に指定されたアミノ酸と置換される、GDF−5関連タンパク質のこれらの(アルギニン/セリン/スレオニン)RSN突然変異体は、それぞれの非突然変異タンパク質の活性を大きく上回る生物学的活性を示す。
【0026】
一例として、図5は、hGDF−5 RSN突然変異体R438Lのin vitroでのアルカリホスファターゼ誘導活性を示す。突然変異タンパク質は、このアッセイにおいて野生型タンパク質(rh−GDF−5)の活性の145.6%(75nMで)〜177.4%(35nMで)の生物学的活性を示す(2回の実験の平均値)。1種類のタンパク質濃度および1回の実験で突然変異体について測定された最低の活性は、野生型タンパク質の活性の120%であった。
【0027】
従って、それぞれの非突然変異タンパク質の活性の少なくとも120%に達する改善された生物学的活性を示すRSN突然変異体が、本発明に包含される。それぞれの非突然変異タンパク質の生物学的活性の少なくとも130%、より好ましくは少なくとも135%、より好ましくは少なくとも140%、より好ましくは少なくとも150%、より好ましくは少なくとも160%、より好ましくは少なくとも170%、より好ましくは少なくとも180%、より好ましくは少なくとも200%の改善された生物学的活性を有するGDF−5関連RSN突然変異体が、特に好ましい。
【0028】
骨、軟骨および歯周靭帯などの結合組織の誘導の分野におけるGDF−5関連タンパク質およびそのRSN突然変異体の生物学的活性は、確立された実験系を用いて容易に測定され得る。最も有用で好ましいのは、アルカリホスファターゼ(ALP)アッセイ(Takuwaら1989, Am. J. Physiol. 257, E797-E803)として知られる一般的なin vitro試験であり、それは実施例2/図5に示される。GDF−5関連タンパク質は、WO95/04819に記載されるのと同様にROB−C26骨前駆細胞(Yamaguchiら1991, Calcif. Tissue Int. 49, 221-225)、胚ATDC5細胞(Riken Gene Bank, ROB 0565)、マウス間質MCHT−1/26細胞、およびNakamuraら2003, J. Periodontal Res. 38,597-605に示されるような歯周靭帯(HPDL)細胞などにおいてアルカリホスファターゼ活性を増加させることが実証されている。
【0029】
本明細書において定義されるGDF−5関連タンパク質は、ヒトGDF−5の102aaシステインノットドメインに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有するシステインノットドメインを含む。この制限値は、GDF−5/6/7グループメンバーのタンパク質ならびにその変異型を他のGDFおよびBMPなどの別のタンパク質と区別するためによく適している。ヒトGDF−5、ヒトGDF−6およびヒトGDF−7の102aaシステインノットドメインの比較(図2)は、これらのタンパク質間で高度のアミノ酸同一性を示す。ヒトGDF−6は87(85%)、ヒトGDF−7は83(81%)の、ヒトGDF−5のシステインノットドメインと同一の残基を共有する。今までに同定されている他の脊椎動物および哺乳動物種由来のGDF−5/6/7分子のそれぞれのドメインもまた、ヒトGDF−5と比較した場合、少なくとも75%(79%〜99%)の非常に高い同一性パーセンテージを示す(図4)。対照的に、GDF−5/6/7サブグループに属さないGDFおよびBMPは、60%以下のはるかに低い同一性の値を示す。
【0030】
関連アミノ酸配列間における対応するアミノ酸位置の決定ならびにそれらの間の同一性パーセンテージの計算は、周知のアライメントアルゴリズムおよび場合によりこれらのアルゴリズムを用いたコンピュータープログラムを用いて実行することができる。本特許出願におけるアミノ酸同一性は、初期設定パラメータを用いたフリーウェアのプログラムClustalX(Version 1.81)による配列のアライメント、およびその後の同一残基の手計算によって計算された。(遅くて正確な)ペアワイズアライメントのための初期設定は、gap openingパラメータ:10.00;gap extensionパラメータ:0.10;Protein weightマトリックス:Gonnet 250である。ClustalXプログラムは、Thompson,J.D., Gibson,T.J., Plewniak,F., Jeanmougin,F.およびHiggins,D.G. (1997) The ClustalX windows interface: flexible strategies for multiple sequence alignment aided by quality analysis tools. Nucleic Acids Research 24:4876-4882において詳細に記載されている。
【0031】
ClustalXはClustalW多重配列アライメントプログラムに対するウィンドウズインターフェースであり、すなわち、ftp-igbmc.u-strasbg.fr、ftp.embl-heidelberg.de、ftp.ebi.ac.ukからの匿名ftpから、または下記のウェブページ:http://www-igbmc.u-strasbg.fr/BioInfo/からのダウンロードなどによって、様々な供給源から入手可能である。ClustalWプログラムおよびアルゴリズムはまた、Thompson, J.D., Higgins, D.G.およびGibson, T.J. (1994) CLUSTALW: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, positions-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Research 22:4673-4680において詳細に記載されている。
【0032】
本発明に従ったGDF−5関連タンパク質のRSN突然変異体は通常、GDF−5、GDF−6およびGDF−7などのGDF−5関連タンパク質も有効であるすべての適応症に適用可能である。GDF−5関連タンパク質は、骨および軟骨(Chengら2003, J. Bone & Joint Surg. Am. 85-A, 1544-1552; Settleら2003, Developm. Biol. 254, 116-130)、腱および靭帯などの結合組織(Wolfmanら1997, J. Clin. Invest. 100, 321-330)、神経組織(Farkasら1997, Neurosci Lett. 236,120-122; Watakabeら2001, J. Neurochem. 76, 1455-1464)、幹細胞(Shimaokaら2003, J. Biomed. Materials Res. Part A 68A, 168-176; Baiら2004, Biochem. Biophys. Res. Commun. 325, 453-460)ならびに歯周靭帯および歯(Senaら2003, J. Dent. Res. 82, 166-171; Morotomeら1998, Biochem. Biophys. Res. Commun. 244, 85-90)などの重要な誘導因子および調節因子/分化因子であることが実証されている。
【0033】
好ましい実施形態では、RSN突然変異体は、以下の一般アミノ酸配列:
(a)

または
(b)

または
(c)

または
(d)

または
(e)

または
(f)

または
(g)

[式中、すべてのXは任意のアミノ酸を表し、Zはアラニン(A)、アスパラギン(N)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)またはバリン(V)を表し、Zはアスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ロイシン(L)またはイソロイシン(I)を表し、Zはセリン(S)またはスレオニン(T)を表す]
のうち1つに一致する配列を含む。
【0034】
より好ましい実施形態では、RSN突然変異体は、上記の一般アミノ酸配列のうち1つに一致する配列を含み、
式中、
はアスパラギン(N)またはセリン(S)を表し、
はアルギニン(R)またはリジン(K)を表し、
はアラニン(A)、グルタミン(Q)、プロリン(P)またはセリン(S)を表し、
はアスパラギン(N)またはアスパラギン酸(D)を表し、
はアルギニン(R)またはリジン(K)を表し、
はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
はロイシン(L)またはメチオニン(M)を表し、
はイソロイシン(I)またはバリン(V)を表し、
はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
10はヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)またはチロシン(Y)を表し、
11はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
12はロイシン(L)、メチオニン(M)またはバリン(V)を表し、
13はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
14はイソロイシン(I)またはロイシン(L)を表し、
15はイソロイシン(I)またはバリン(V)を表し、
16はロイシン(L)またはメチオニン(M)を表し、
17はアラニン(A)、アスパラギン(N)またはアスパラギン酸(D)を表し、
18はアルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)またはセリン(S)を表し、
19はアラニン(A)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
20はアラニン(A)、メチオニン(M)またはスレオニン(T)を表し、
21はアラニン(A)またはプロリン(P)を表し、
22はセリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
23はアラニン(A)、セリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
24はアルギニン(R)またはリジン(K)を表し、
25はセリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
26はフェニルアラニン(F)またはチロシン(Y)を表し、
27はイソロイシン(I)またはスレオニン(T)を表し、
28はアラニン(A)またはセリン(S)を表し、
29はアラニン(A)またはグリシン(G)を表し、
30はアスパラギン(N)またはリジン(K)を表し、
31はグルタミン酸(E)またはグルタミン(Q)を表し、
32はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
33はアラニン(A)、グルタミン(Q)、セリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
はアラニン(A)、アスパラギン(N)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)またはバリン(V)を表し、
はアスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ロイシン(L)またはイソロイシン(I)を表し、
はセリン(S)またはスレオニン(T)を表す。
【0035】
これらの一般配列は、図3の脊椎動物GDF−5、GDF−6およびGDF−7のシステインノットドメインの比較から作成された。すべてのアライメントされたタンパク質において同一でない位置は、一般配列ではXで示される。本発明に従って突然変異される位置は、Zで示される。
【0036】
別の好ましい実施形態では、本発明のRSN突然変異タンパク質は、脊椎動物GDF−5もしくは組換えGDF−5タンパク質またはその変異型のRSN突然変異体である。最も好ましいのは、哺乳動物GDF−5タンパク質またはその変異型のRSN突然変異体である。脊椎動物および哺乳動物GDF−5タンパク質の例は、ヒトGDF−5(WO95/04819にMP52として、およびHottenら1994, Biochem. Biophys Res. Commun. 204, 646-652にヒトGDF−5として開示されている)、組換えヒトGDF−5/MP52(WO96/33215)、組換え単量体GDF−5(WO01/11041およびWO99/61611)、HMWヒトMP52s(WO97/04095)、CDMP−1(WO96/14335)、マウス(Mus musculus)GDF−5(US 5,801,014)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)GDF−5(Sanyalら2000, Mol Biotechnol. 16, 203-210)、ニワトリ(Gallus gallus)GDF−5(NCBI登録番号NP_989669)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)GDF−5(NCBI登録番号AAT99303)である。
【0037】
前述の遺伝子/タンパク質の対立遺伝子型のRSN突然変異体、ならびに、置換、付加および欠失などのさらなる突然変異を有する脊椎動物タンパク質、哺乳動物タンパク質および組換えタンパク質またはそれらの変異型のRSN突然変異体もまた、これらのさらなる突然変異がタンパク質活性に本質的な影響を与えない限り、これらの実施形態に含まれる。
【0038】
一般的に、脊椎動物GDF−5もしくは哺乳動物GDF−5もしくは組換えGDF−5タンパク質またはそれらの変異型のRSN突然変異体は、既述のすべてのGDF−5の活性を示すことが予想され、上述の組換えおよび野生型GDF−5がうまく利用されているあらゆる場所に適用され得る。例えば、GDF−5は、骨および軟骨形成ならびに結合組織形成(例えばWO95/04819、Hottenら1996, Growth Factors 13, 65-74; Stormら1994, Nature 368, 639-643; Changら1994, J. Biol. Chem. 269, 28227-28234を参照)ならびに結合組織付着の形成(EP 0 831 884)の非常に効果的な促進因子であると考えられる。これに関連して、GDF−5は、骨格要素間の関節への適用に有用である(例えばStormおよびKingsley 1996, Development 122, 3969-3979を参照されたい)。結合組織についての一例は、腱および靭帯である(Wolfmanら1997, J. Clin. Invest. 100, 321-330; AspenbergおよびForslund 1999, Acta Orthop Scand 70, 51-54;WO95/16035)。そのタンパク質は、半月板修復および脊椎/椎間板修復(Walshら2004, Spine 29, 156-63)ならびに脊椎固定への適用(Spiroら2000, Biochem Soc Trans. 28, 362-368)に有用である。GDF−5は、象牙質または歯周靭帯の再生などの歯(歯および歯周)への適用において有利に利用され得る(例えばWO95/04819;WO93/16099;Morotomeら1998, Biochem Biophys Res Comm 244, 85-90を参照されたい)。
【0039】
GDF−5はまた、あらゆる種類の創傷修復においても有用である。それは、ニューロン系における組織増殖および例えばドーパミン作動性ニューロンの生存を促進するためにも有用である。これに関連して、GDF−5は、例えばパーキンソン病およびおそらくはまたアルツハイマー病またはハンチントン舞踏病の組織のような神経変性疾患の治療のために使用され得る(例えばWO97/03188;Krieglsteinら、(1995) J. Neurosci Res. 42, 724-732; Sullivanら、(1997) Neurosci Lett 233, 73-76; Sullivanら(1998), Eur. J. Neurosci 10, 3681-3688を参照されたい)。GDF−5は、既に損傷を受けた組織において神経機能を維持または保持することを可能にする。従って、GDF−5は、広く適用可能な神経栄養因子であると考えられる。
【0040】
それはまた、目、特に網膜、角膜および視神経の疾患(例えばWO97/03188;Youら(1999), Invest Opthalmol Vis Sci 40, 296-311を参照)、毛髪成長および皮膚関連疾患の治療および診断(WO02/076494;Battagliaら2002, Trans. Orthop. Res. Soc. 27, 584)、ならびに血管新生の誘導(Yamashitaら1997, Exp. Cell Res. 235, 218-26)のためにも有用である。
【0041】
一方には、骨損傷および/もしくは軟骨損傷に関連した疾患、または骨疾患および/もしくは軟骨疾患の罹患、または軟骨形成および/もしくは骨形成が望まれるか、もしくは脊椎固定のための広範な状態の予防あるいは治療があり、他方には、神経成長、組織再生、血管新生、潰瘍、熱傷、傷害もしくは皮膚移植をはじめとする創傷治癒の促進または誘導のため、前駆細胞または骨髄細胞の増殖の誘導のため、器官もしくは組織移植用の組織または細胞の処理もしくは保存の目的での増殖または分化の状態の維持のため、胃腸内壁の無損傷状態のため、受胎能力、避妊もしくは妊娠についての障害の治療のための、腱および/もしくは靭帯をはじめとする結合組織、歯科インプラントをはじめとする歯周組織または歯組織、CNS組織および神経病理学的状態をはじめとする神経組織、感覚系の組織、肝臓、膵臓、心臓、血管、腎臓、子宮および甲状腺組織、皮膚、粘膜、内皮、上皮に関連した組織の損傷または疾患の予防あるいは治療がある。
【0042】
目のような感覚器官に関する疾患もまた、本発明の医薬組成物の好ましい適応症に含まれる。神経疾患としてはまた、パーキンソン病およびアルツハイマー病が例として言及され得る。
【0043】
実施例3および図6は、組換えヒトGDF−5(WO96/33215)および組換えヒトGDF−5(rhGDF−5)のRSN突然変異体R438L(アルギニンはロイシンで置換されている)を用いたアルカリホスファターゼアッセイの結果を記載する。組換えヒトGDF−5は、100%の生物学的活性を有する標準/対照として使用した。突然変異タンパク質は、このアッセイにおいて野生型タンパク質(rh−GDF−5)の活性の145.6%(75nMで)〜177.4%(35nMで)の生物学的活性を示す(2回の実験の平均値)。1種類のタンパク質濃度および1回の実験で突然変異体について測定された最低の活性は、野生型タンパク質の活性の120%であった。従って、好ましい実施形態では、本発明に包含される改善された生物学的活性を有するRSN突然変異体は、in vitroでのALPアッセイによって測定した場合、ヒトGDF−5または組換えヒトGDF−5(WO96/33215)の活性の少なくとも120%の生物学的活性を有する。それぞれの非突然変異タンパク質の生物学的活性の少なくとも130%、より好ましくは少なくとも135%、より好ましくは少なくとも140%、より好ましくは少なくとも150%、より好ましくは少なくとも160%、より好ましくは少なくとも170%、より好ましくは少なくとも180%、より好ましくは少なくとも200%の改善された生物学的活性を有するGDF−5関連RSN突然変異体が、特に好ましい。
【0044】
本発明のRSN突然変異体は、さまざまな原核生物発現系および真核生物発現系において、特に原核生物での発現およびそれに続く既知の方法に従った再生/リフォールディングによって、容易に生成することができる(WO96/33215などを参照されたい)。
【0045】
本発明のさらなる対象は、本発明のRSN突然変異体をコードする核酸である。その核酸は、ヒトGDF−5のR438およびS439に相当する一方または両方の残基の、本出願において指定されたアミノ酸の1つとの置換が達成されるような配列を有する。これらのアミノ酸をコードする塩基トリプレットおよび遺伝コードの縮重は一般的に知られている。本発明のタンパク質が適切な系における発現によってこの核酸から得られるかぎり、その核酸は、DNA配列および/またはRNA配列であり得る。
【0046】
発現ベクターは本発明のさらなる対象であり、そこでは核酸が適切なベクター系に挿入され、そのベクター系はタンパク質の望ましい発現に応じて選択される。ベクター系は真核生物ベクター系であり得るが、原核生物ベクター系が好ましく、それによりタンパク質は特に容易で純粋な方法で産生され得る。適切な発現ベクターは、WO96/33215などに示されている。発現ベクターはまた、遺伝子治療法などに使用できるウイルスベクターであり得る。
【0047】
宿主細胞もまた本発明の対象である。宿主細胞は、それらが本発明の核酸または発現ベクターを含み、本発明のRSN突然変異体の発現のために、核酸および発現ベクターにそれぞれ存在する情報を使用できることを特徴とする。適切な宿主細胞は、好ましくは原核細胞、特に大腸菌菌株である。特に有用な宿主菌株は、例えばWO96/33215に示されるような大腸菌W3110の子孫である。好ましい実施形態では、宿主細胞(好ましくはヒト由来)はまた、それを必要とする患者への移植に有用でありうる。
【0048】
本発明の別の対象は、RSN突然変異体に対する抗体である。本発明のこれらの抗体は、特許を受けようとする組換えRSN突然変異体に特異的である。好ましくは、それらは、本明細書に記載される1つ以上のアミノ酸置換を含むGDF−5関連タンパク質のシステインノット領域に特異的である。好ましくは、その抗体は、アミノ酸400−495、好ましくは420−450、より好ましくは425−440、より好ましくはアミノ酸438−445に渡る、本発明のGDF関連タンパク質に由来する組換えタンパク質の領域に特異的である。本発明のこれらの抗体は、公知の方法によって抗体を作製するための免疫原として、上述のような本発明のタンパク質のそれらの断片を用いることによって作製され得る。抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得、それらは任意のアイソタイプであり得る。また、FabフラグメントまたはFabフラグメントなどの抗体フラグメントも包含される。抗体はまた、ヒト化抗体またはキメラ抗体などでもあり得る。
【0049】
本出願のさらなる対象は、本発明に従った、GDF−5関連タンパク質の少なくとも1つのRSN突然変異体もしくは核酸もしくはベクターもしくは宿主細胞を含有する医薬組成物および/または診断用組成物である。一般的に、GDF−5関連タンパク質に関して既に発表されているすべての医薬組成物が適切である。発現ベクターまたは宿主細胞は、医薬組成物および/または診断用組成物中の有効成分として有利であると考えられる。本発明のタンパク質の他のタンパク質との組合せもまた、好ましい医薬組成物において使用され得る。神経への適用のために特に好ましいのは、GDNFなどのような他のTGF−βスーパーファミリータンパク質との組合せである(WO97/03188を参照されたい)。軟骨および/または骨に関する適用のためには、一般的にBMPとの、またはBMP−9(例えばWO96/39170を参照)などの軟骨維持誘導タンパク質との組合せが有用である。NGF、BDNF、EGF、PDGF、NT−3、NT−4、NT−5、コーディン(chordin)および/またはヘッジホッグ(hedgehog)タンパク質などのような他のタンパク質との組合せもまた可能である(WO97/03188などを参照されたい)。当然、本発明はまた、例えば製薬上許容される補助剤および担体物質などのさらなる物質を含有する医薬組成物をも包含する。製剤は酸化防止剤、保存料、着色剤、着香剤および乳化剤、懸濁化剤、溶媒、増量剤、充てん剤、バッファー、送達ビヒクル、賦形剤および/または製薬用補助剤を含みうる。例えば、適切な担体またはビヒクルは、注射用の水、生理食塩水、または血清アルブミンなどの適切な担体タンパク質と混合された生理食塩水でありうる。本発明の組成物の調製のために好ましい酸化防止剤はアスコルビン酸である。
【0050】
当技術分野において既知の(好ましくは低アレルギー性でpH調整された)化粧品組成物は特に好ましく、化粧水、パック、ローション、乳液(skin milks)または乳液(milky lotions)を含む。前記調製物は、活性化合物のほかに、このような調製物に通常用いられる成分を含有する。このような成分の例は、油、脂肪、ワックス、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、酸化防止剤、粘度安定剤、キレート剤、バッファー、保存料、香料、染料、低級アルカノールなどである。必要に応じて、例えば抗炎症薬、抗菌剤、抗真菌剤、殺菌剤、ビタミン、日焼け防止剤、抗生物質、または他のにきび抑制剤などの、さらなる成分が組成物に加えられうる。
【0051】
医薬組成物の溶媒もしくは希釈剤は水性または非水性のいずれかであり、pH、浸透圧、粘度、透明度、規模、無菌状態、安定性、溶解速度もしくは製剤のにおいを改善および/または維持することができる他の製薬上許容される賦形剤を含有しうる。同様に、他の成分は、製薬上有効な物質の放出速度を調節および/または維持するために、本発明の医薬組成物に含まれうる。このような調節成分は、非経口投与用に単位投与剤形または複数回投与剤形のいずれかに投与量を処方するために、当技術分野において通常使用される物質である。本発明に従って調製される最終的に製剤化された医薬組成物および/または診断用組成物は、溶液、懸濁液、ゲル、乳液、固体または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末の形で滅菌バイアル中に保存されうる。これらの製剤は、即時使用できる剤形または、例えば凍結乾燥粉末の場合、投与前に再調製を必要とする剤形のいずれかで保存されうる。上記および別の適切な製剤処方は当技術分野において知られており、例えば、Gus Remington's Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Publishing Co., Eastern, Pa., 1990, 1435-1712)に記載される。このような処方は、製薬上有効な成分の物理的状態、安定性、in vivoでの放出速度およびin vivoでのクリアランス速度に影響を及ぼしうる。他の効果的な投与形態は、非経口の徐放製剤すなわち遅延製剤、吸入ミスト、または経口活性型製剤を包含する。例えば、徐放製剤は、高分子化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸など)もしくはリポソームの粒子状調製物と結合した、またはそれに取り込まれたタンパク質を含みうる。本発明の医薬組成物はまた、例えば注入または注射による非経口投与のために製剤化されてもよく、また徐放製剤または持続循環製剤をも含みうる。このような非経口投与される治療用組成物は一般的に、発熱物質を含まない、製薬上許容される担体および/または希釈剤中に製薬上有効な成分を含有する非経口的に許容される水溶液の形態である。
【0052】
医薬組成物は、骨または軟骨の再生を目的とする場合などでは、マトリックス材料を含みうる。それは、生体適合性マトリックス材料中および/もしくはマトリックス材料上で用いられる場合、タンパク質、核酸、発現ベクターまたは宿主細胞にとって有利である。マトリックス材料は、本明細書において用いられる場合、細胞の動員、付着、増殖および分化の足場として、ならびに/またはRSN突然変異体の潜在的な送達装置および貯蔵装置として機能する担体またはマトリックスを意味する。固体のマトリックスに対して、担体は、明確な表面や特定の形状を持たない、アルキルセルロース、プルロニック、ゼラチン、ポリエチレングリコール、デキストリン、植物油、糖類および他の液体および粘性物質などの無定形物質からなる。
【0053】
マトリックス材料と併用したGDF−5関連タンパク質またはBMPなどの類似のモルフォゲンの使用は、例えばWO98/21972などに広く公開され記載されている。これらのマトリックス材料は、本発明のRSN突然変異体にも同様に適している。マトリックス材料は、例えば外科的に患者に移植することができ、そこでタンパク質またはタンパク質をコードするDNAはマトリックス材料から徐々に放出され、その後、長期間にわたって有効であり得る。すべての種類のマトリックス材料は、それらが生体適合性であり、目的とする領域または使用の適応症のために選択されるかぎり、本発明に基づき有用である。マトリックス材料は、天然物質、修飾された天然物質ならびに合成物質であり得る。形態形成タンパク質のためのすべての既知のマトリックスが含まれる。天然物質の例は、例えば、自己、異種(heterologous)もしくは異種(xenologous)の骨材料、コラーゲン、例えばI型およびIII型コラーゲン、またはチタンなどの金属である。また、細胞外マトリックスの他の成分も使用され得る。細胞外マトリックスは、例えばI、II、V、IX、X、XI、XIII型などの様々なコラーゲン、さらなるプロテオグリカンおよびグリコサミノグリカン(例えばコンドロイチン硫酸、バイグリカン、デコリンおよび/もしくはヒアルロン酸など)、または非コラーゲン性タンパク質(例えばオステオポンチン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、軟骨基質タンパク質および象牙質リンタンパク質など)を含む。記載されたすべての天然物質はまた、人工的に修飾された形でも使用されうる。修飾された天然物質の例は、脱灰骨、熱灰化(thermoashed)骨鉱物、焼結骨もしくは化学的に架橋されたヒアルロン酸(ヒドロゲル)、または金属アロイである。合成物質の例は、ポリグリコール酸、ポリラクチドおよびポリラクチド誘導体(例えばポリ乳酸、ポリ(ラクチド―コ―グリコリド)、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールもしくはグリコリドL−ラクチドコポリマーなど)、さらにポリリン酸、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーのようなポリマー、またはリン酸カルシウムを含有する物質(β−リン酸三カルシウム(Ca(PO)、α−リン酸三カルシウムおよびハイドロキシアパタイトなど)である。上述の群の1つに属する他の有用なマトリックス材料のさらなる例は、Ca(OH)、サンゴ、天然の骨鉱物、キチン、非脱灰骨片、セラミック骨片、セラミック象牙質、放射線照射された海綿状骨粉、焼石膏、生体活性ガラス、アパタイト−ウォラストナイト含有ガラスセラミックである。また、上述の担体および/またはマトリックスの組合せも、例えばハイドロキシアパタイトとコラーゲンとの組合せ(例えば以前はOrquest, Inc., CA, USA [現在はDePuy Acromed, MA, USA]から入手可能なHealos)、ポリグリコール酸とポリ乳酸もしくはポリラクチド誘導体との組合せ、またはサンゴ−コラーゲン複合体のようなマトリックス材料を形成し得る。有用な担体およびマトリックスの非限定的なリストについては、さらにKirker-Head 2000, Advanced Drug Delivery 43, 65-92などを参照されたい。
【0054】
以下の非限定的な実施例は、図面および配列表(sequence protocols)とともに、本発明のさらなる説明を目的とする。
【0055】
配列番号1は、ヒトGDF−5前駆体のDNAおよびタンパク質配列を示す。改善された生物学的活性を有する好ましいヒトGDF−5タンパク質突然変異体では、438位のアルギニン残基および/または439位のセリン残基および/または445位のアスパラギン残基が他のアミノ酸に置換される。
【実施例】
【0056】
実施例1
RSN突然変異体の作製、発現および精製
ヒトGDF−5、ヒトGDF−6およびヒトGDF−7タンパク質の成熟部分をコードするDNAを、ヒトROB−C26骨幹細胞(Yamaguchi et al. 1991, Calcif. Tissue Int. 49, 221-225)からRT−PCR法によって単離し、その後原核生物のプラスミドベクターにライゲーションした。GDF−5、6および7の成熟部分において機能的に重要なアミノ酸残基を特定するために、部位指定突然変異導入によってこれらの配列に様々な単一突然変異を導入した。個々の突然変異はすべて、Stratageneから入手したPfuTurbo(商標)DNAポリメラーゼおよびDPN Iエンドヌクレアーゼを含むQuickChange(商標)部位指定突然変異導入キットを用い、製造業者の取扱説明書に従って作製した。
【0057】
そのプラスミドで形質転換され、IPTGで誘導された細菌株W3110BPを用いて、タンパク質を封入体内に発現させた。ホモジナイズバッファー(25mM Tris HCl pH7.3、10mM EDTA NaOH pH8、8M 尿素)および洗浄バッファー(1M 尿素、20mM Tris HCl pH8.3、10mM EDTA NaOH pH8.0)を用い、標準的な方法に従ってこれらの封入体を単離した。さらなる精製は、逆相カラムAquapore Octyl(Applied Biosys、(CV=7.8mL)100×10、20μ、No 186470)で、104分間に(流速:3mL/分)100%の溶出液A(0.1%TFA、HPLC HO)から100%の溶出液B(0.1%TFA、90%CHN、HPLC HO)への勾配を用いて行った。ウェスタンブロット管理の後、突然変異タンパク質を含有する画分を回収し、凍結乾燥した。
【0058】
突然変異タンパク質を溶解バッファー(6M グアニジンHCl、50mM Tris、150mM NaCl、3mM DTT、pH=8.0)に溶解し、タンパク質濃度を正確に2.6mg/mLに調整し、pHを8〜9に調整した。室温で2時間のインキュベーション後、穏やかに撹拌しながらリフォールディングバッファー(1M NaCl、50mM Tris、5mM EDTA、1mM GSSG、2mM GSH、33mM Chaps、pH=9.5)を添加し、0.16mg/mLの最終濃度にした。
【0059】
その溶液をその後48時間22℃でインキュベートし、18%HClを添加してpHを3〜4に変化させることによりリフォールディングを停止した。遠心分離後、同一条件下で2回目のRP−HPLCを行うことによって、リフォールディングしていない単量体を二量体型から分離した。二量体化したタンパク質を含有する画分を回収し、凍結乾燥し、−70℃で保存した。
【0060】
実施例2
ALPアッセイによるin vitroでのRSN突然変異体の生物学的活性の測定
1×10細胞のATDC−5細胞を、96ウェルプレートの細胞培養液(α−MEM、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、10%FCS)中で一晩、37℃、5%CO、HO飽和でインキュベートした。翌日、指定されたリガンド濃度を用いて、細胞をGDF−5関連タンパク質およびその突然変異体で72時間刺激した。その後、細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した。100μLのアルカリ溶解バッファー1(0.1M グリシン、pH9.6、1%NP−40、1mM MgCl、1mM ZnCl)中で、室温で1時間、細胞溶解を行った。その後、100μLのアルカリ溶解バッファー2を添加した(0.1M グリシン、pH9.6、1mM MgCl、1mM ZnCl+2mg/mL PNPP)。そのプレートを37℃、5%CO、HO飽和でインキュベートした。その後、100μLの30g/L NaOHによってALP反応を停止し、最後に、自動マイクロプレートリーダーを用いて、ブランク値の差し引きを考慮した405nmでの光学密度を測定した。
【0061】
一例として、hGDF−5突然変異体R438Lについての結果(2回の独立した実験の平均値)を図5に示す。4つの異なるタンパク質濃度(10nM、35nM、50nM、75nM)が、このアッセイにおいて使用された。突然変異タンパク質は、このアッセイ系において、野生型タンパク質(rh−GDF−5)の活性の145.6%(75nMで2168.5/1489)〜177.4%(35nMで2061.5/1162)の平均生物学的活性を示す。
【0062】
実施例3
ラットモデルの皮下での異所性骨形成
本研究では、GDF−5突然変異体R438Lを、異所性骨形成能についてラット皮下移植モデルにおいてwtGDF−5およびBMP−2と比較した。54匹の4〜5週齢の非近交系オスSprague Dawleyラットを無作為に9群に分けた(1群あたりn=6)。各動物に1つの試験物質および反対側の対照を移植した。外科処置の前に以下のように移植材料を調製した。すなわち、rhBMP−2(R&D Systems)、rhGDF−5(Biopharm GmbH, Heidelberg, Germany)またはrhGDF−5 R438L(Biopharm GmbH, Heidelberg, Germany)を5×5×5mmのI型コラーゲンスポンジ(Helistat, Integra LifeSciences Corp)上で凍結乾燥させた。各動物において、Helistatを単独で反対側の対照として用いた。移植片は移植前に解凍した。
【0063】
下記の試験物質およびモルフォゲン量が評価された。すなわち、
【表1】

【0064】
それぞれのラットの腹胸部に2つの皮下ポケットを作製した。一方のポケットを9つの処理群のうちの1つで満たし、他方のポケットをHelistatのみで満たした。外科処置の21日後、すべてのラットを安楽死させ、胸部の単純X線写真を撮影した。移植片を摘出し、肉眼的観察に基づいて評価し(0:非常に柔らかい〜3:硬い)、半分に切断した。それぞれの移植片の半分を試験管に入れてアルカリホスファターゼ解析のために−80℃で冷凍し、他の半分を組織学的解析のために10%中性緩衝ホルマリン中で固定した。すべてのサンプルについて組織形態計測による解析を行った。簡潔には、骨量、線維化および炎症を、存在する組織パーセンテージに基づいて0〜4で評価した(0:0%;1:25%以下;2:25%〜50%;3:50%〜75%および4:75%〜100%)。
【0065】
結果:すべての動物はよく処置に耐え、21日の術後期間を完了した。肉眼的観察では、1μgまたは2μg rhBMP−2を含有する移植片に硬いと評価されたものはなかった。しかし、7.5μg rhBMP−2を含有する移植片6つのうち5つは硬かった。wt rhGDF−5群では、7.5μgおよび15μg群において1群あたり1サンプルのみが硬かった。しかし、75μg群では6サンプルすべてが硬かった。rhGDF−5 R438L群では、7.5μg群において6サンプルのうち5サンプルが硬いと評価された。15μgおよび75μg群では6サンプルすべてが硬いと評価された。X線写真の評価は、75μg/移植片でrhGDF−5 R438Lを移植された動物においてのみ可視的な石灰化を示した(図6)。組織形態計測による解析は、rhGDF−5 R438Lに対して、wt rhGDF−5の75μg用量の移植片および7.5μg rhBMP−2と同様に、最も高い骨スコアを示した(図7および図8参照)。加えて、in vivoでのアルカリホスファターゼ活性は、5つの群、すなわち、rhGDF−5 R438L(評価されたすべての用量)、75μg rhGDF−5、および7.5μg rhBMP−2を含有する移植片において主に観察された。
【0066】
実施例4
微量培養物におけるGDF−5突然変異タンパク質の機能解析
GDF5突然変異の機能的結果を解析するために、ニワトリ微量培養物を、WTおよび突然変異Gdf5を発現するRCASウイルスに感染させた。細胞分化および軟骨マトリックス産生は、アルカリホスファターゼ(ALP)およびアルシアンブルーの測定によって決定された。微量培養物の細胞外マトリックスへのアルシアンブルー取り込みは、プロテオグリカンに富む軟骨マトリックスの産生を反映する。簡潔には、ニワトリGdf5のコード配列をpSLAX−13にクローニングし、ヒト突然変異に相当する突然変異R438LおよびL441Pを作製するための鋳型として用いた。Quickchangeキット(Stratagene)を用い製造業者の推奨に従って、in vitroでの突然変異導入を行った。RCASベクターへのクローニングは、以前に記載されたように行った(Hughes, S.H., Greenhouse, J.J., Petropoulos, C.J.およびSutrave, P. 1987. Adaptor plasmids simplify the insertion of foreign DNA into helper-independent retroviral vectors. J Virol 61:3004-3012)。RCAS−NogはA. Vortkampからの分与であった。微量培養は、わずかな修正を伴うが、以前に記載されたように行った(Lehmann, K., Seemann, P., Stricker, S., Sammar, M., Meyer, B., Suring, K., Majewski, F., Tinschert, S., Grzeschik, K.H., Muller, D.,ら2003. Mutations in bone morphogenetic protein receptor 1B cause brachydactyly type A2. Proc Natl Acad Sci U S A 100:12277-12282)。簡潔には、受精鶏卵をTierzucht Lohmann(Cuxhaven, Germany)から入手し、加湿した孵卵器において37.5℃で約4.5日間インキュベートした。外胚葉を摘出し、HH23/24期の肢芽から、0.1%Ia型コラゲナーゼおよび0.1%トリプシンを用いた消化によって細胞を単離した。微量培養物を10μL滴あたり2×10細胞の密度で播種した。感染は、1μLの濃縮ウイルス上清、WT−chGdf5、R438L−chGdf5をコードするcDNAを含有するRCASBP−AおよびWT chNogをコードするcDNAを含有するRCASBP−Bを用いて行った。培地(DMEM−F12、2%ニワトリ血清、4mM L−グルタミン、ペニシリン(1000U/mL)およびストレプトマイシン(100μg/mL))は2日毎に交換した。
【0067】
予想されたとおり、WT GDF5発現ウイルスによる微量細胞の感染は、アルシアンブルーおよびALP染色の増加によって示される軟骨産生の誘導を引き起こす(図9)。rhGDF R438LのようなGDF突然変異体による感染は、アルシアンブルーおよびALPの強い誘導を引き起こす。骨形成タンパク質アンタゴニストであるノギン(noggin)による感染培養物の処理は、WTならびに突然変異体構築物における軟骨形成を完全に阻害する。
【0068】
実施例5
関節発達の間の発現解析およびin vivoでのGDF−5の過剰発現
RCASレトロウイルス系を用いて、ニワトリ胚における野生型GDF−5ならびにGDF−5突然変異体の過剰発現を行った。濃縮ウイルス上清の生成およびHH10期のニワトリ胚の肢領域への注入は、以前に記載されたように行った(Stricker, S., Fundele, R., Vortkamp, A.およびMundlos, S. 2002. Role of Runx genes in chondrocyte differentiation. Dev Biol 245:95-108)。微量培養用と同一のウイルス調製物を用いた。HH32〜35期の胚を摘出し、アルシアンブルーで染色して軟骨を可視化した。記載されたとおりのジゴキシゲニン標識リボプローブを用いることによって(Stricker, S., Fundele, R., Vortkamp, A.およびMundlos, S. 2002. Role of Runx genes in chondrocyte differentiation. Dev Biol 245:95-108)、パラフィン包埋したマウスの肢(E13.5およびE14.5期)の7μm切片におけるin situハイブリダイゼーションを行った。野生型GDF5および特にGDF−5突然変異体に感染した肢では、感染した肢におけるHH32期での骨格要素の肥大および関節の癒着が示された(例えば図10のGDF−5 R438Lを参照されたい)。感染していない肢を比較のために示す。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】配列番号1のヒトGDF−5前駆体タンパク質のさらなる特徴を示す。すなわち、 aa001〜381 プレプロドメイン(太字体) aa382〜501 成熟タンパク質部分 aa400〜501 システインノットドメイン(下線) aa438〜439 アルギニン438およびセリン439残基(灰色の囲み) aa445 アスパラギン445残基(灰色の囲み)である。
【図2】ヒトGDF−5(配列番号1)、ヒトGDF−6(米国特許第5,658,882号からの配列2)およびヒトGDF−7(米国特許5,658,882号からの配列26)の102aaシステインノットドメインの比較を示す。3つの分子すべてにおいて同一のアミノ酸残基は、黒背景で強調表示される。ヒトGDF−5のR438、S439残基ならびにヒトGDF−6およびGDF−7の対応する残基は囲まれ、矢印で示される。
【図3】Homo属(ヒト属)、さらにCercopithecus属(オナガザル属)、Macaca属(マカク属)、Bos属(ウシ属)、Mus属(ハツカネズミ属)、Gallus属(野鶏属)、Danio属(コイ科ダニオ属)およびXenopus属(ツメガエル属)由来の脊椎動物GDF−5、6および7配列の102aaシステインノットドメインの比較を示し、それらの配列は図面に示された登録番号に基づいて「Entrez」NCBIタンパク質データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/)で入手可能である。ヒトGDF−5のR438およびS439残基ならびに他のタンパク質の対応する残基は、矢印で示される。
【図4】ヒトGDF−5のシステインノットドメインに対する、既知のBMPおよびGDFのシステインノットドメインの配列同一性の表を示す。
【図5】(実施例2に記載される)組換えヒトGDF−5(rh−GDF−5)およびhGDF−5 RSN突然変異体R438Lによるアルカリホスファターゼアッセイ(ALP)の結果を示す。
【図6】実施例3に記載される、ラットモデルの皮下での異所性骨形成を示す。可視的な石灰化(矢印)は、75μg/移植片のrhGDF−5突然変異体R438Lで満たされた皮下ポケットでのみ検出された。
【図7】実施例3に記載される骨量スコアを示す。
【図8】実施例3に従って75μg/移植片のrhGDF−5突然変異体R438Lによって誘導される、新規な骨形成の組織学的な例を示す。
【図9】微量細胞の野生型および突然変異GDF−5発現ウイルスによる感染後の、軟骨生成の誘導を示す(実施例4を参照されたい)。軟骨生成は、アルシアンブルーおよびALP染色の増加によって示される。(A)ニワトリの微量培養物を、細胞外マトリックスの産生については4日後にアッセイし、ALP活性については7日後にアッセイした。細胞を、野生型または突然変異体の配列を有するウイルスに感染させ、BMPアンタゴニストであるノギン(Noggin)に共感染させた、もしくは共感染させなかった。ノギン(Nog)による共感染は、発現されるGdf5変異型に関係なく軟骨形成を完全に抑制する。(B)4日目に測定された、プロテオグリカンに富む軟骨マトリックスの産生を反映する、微量培養物の細胞外マトリックス内へのアルシアンブルーの取り込み。(C)7日目の微量培養物のALP活性。
【図10】実施例5に従ったニワトリ胚での野生型GDF−5ならびにGDF−5突然変異体R438Lの過剰発現を示す。アルシアンブルー染色は軟骨を可視化するために使用された。感染していない肢を比較のために示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトGDF−5の102aaのシステインノットドメイン(図1/配列番号1のアミノ酸400−501)に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有するシステインノットドメインを含む組換えタンパク質であって、
(a)ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のアルギニン438(R438)に対応する位置にあるアミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニンもしくはアスパラギンであり、かつ/または
(b)ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のセリン439(S439)に対応する位置にあるアミノ酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ロイシンもしくはイソロイシンであり、かつ/または
(c)ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のアスパラギン445(N445)に対応する位置にあるアミノ酸が、セリンもしくはスレオニンである、上記タンパク質。
【請求項2】
以下のアミノ酸一般式:
(a)

または
(b)

または
(c)

または
(d)

または
(e)

または
(f)

または
(g)

[式中、X〜X33はいずれかのアミノ酸を表し、Zはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、メチオニンまたはアスパラギンを表し、Zはアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ロイシンまたはイソロイシンを表し、かつZはセリンまたはスレオニンを表す]
のうち1つに一致する配列を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
式中、
はアスパラギン(N)またはセリン(S)を表し、
はアルギニン(R)またはリジン(K)を表し、
はアラニン(A)、グルタミン(Q)、プロリン(P)またはセリン(S)を表し、
はアスパラギン(N)またはアスパラギン酸(D)を表し、
はアルギニン(R)またはリジン(K)を表し、
はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
はロイシン(L)またはメチオニン(M)を表し、
はイソロイシン(I)またはバリン(V)を表し、
はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
10はヒスチジン(H)、フェニルアラニンン(F)またはチロシン(Y)を表し、
11はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
12はロイシン(L)、メチオニン(M)またはバリン(V)を表し、
13はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
14はイソロイシン(I)またはロイシン(L)を表し、
15はイソロイシン(I)またはバリン(V)を表し、
16はロイシン(L)またはメチオニン(M)を表し、
17はアラニン(A)、アスパラギン(N)またはアスパラギン酸(D)を表し、
18はアルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)またはセリン(S)を表し、
19はアラニン(A)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
20はアラニン(A)、メチオニン(M)またはスレオニン(T)を表し、
21はアラニン(A)またはプロリン(P)を表し、
22はセリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
23はアラニン(A)、セリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
24はアルギニン(R)またはリジン(K)を表し、
25はセリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
26はフェニルアラニン(F)またはチロシン(Y)を表し、
27はイソロイシン(I)またはスレオニン(T)を表し、
28はアラニン(A)またはセリン(S)を表し、
29はアラニン(A)またはグリシン(G)を表し、
30はアスパラギン(N)またはリジン(K)を表し、
31はグルタミン酸(E)またはグルタミン(Q)を表し、
32はアスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)を表し、
33はアラニン(A)、グルタミン(Q)、セリン(S)またはスレオニン(T)を表し、
はアラニン(A)、アスパラギン(N)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、またはバリン(V)を表し、
はアスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ロイシン(L)またはイソロイシン(I)を表し、
はセリン(S)またはスレオニン(T)を表す、
請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
GDF−5関連タンパク質が、脊椎動物GDF−5タンパク質またはその変異体もしくは対立遺伝子型である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
GDF−5関連タンパク質が、ヒトGDF−5(配列番号1)またはその変異体である、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項8】
請求項6に記載の核酸または請求項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、および/または請求項6に記載の核酸、および/または請求項7に記載の発現ベクター、および/または請求項8に記載の宿主細胞を含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
製薬上許容される添加剤および/または担体物質をさらに含んでなる、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
タンパク質および/または核酸および/またはベクターおよび/または宿主細胞が、生体適合性マトリックス材料中に含まれているか、あるいは生体適合性マトリックス材料上にある、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
GDF−5関連タンパク質の適応があると考えられる疾患の予防または治療のための、請求項9〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
骨損傷、軟骨損傷、結合組織損傷、結合組織接着部損傷、腱損傷、靭帯損傷、脊椎/椎間板損傷、半月板損傷、歯組織損傷、象牙質損傷、歯周靭帯損傷、血管損傷、皮膚損傷、毛髪損傷もしくは神経組織損傷に関連した傷害または疾患の予防もしくは治療のための、請求項12に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組換えタンパク質の生成方法であって、
(a)ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のアルギニン438(R438)に対応する位置にあるアミノ酸を、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニンもしくはアスパラギンで置き換えるステップ、および/または
(b)ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のセリン439(S439)に対応する位置にあるアミノ酸を、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ロイシンもしくはイソロイシンで置き換えるステップ、および/または
(c)ヒト野生型GDF−5(配列番号1)のアスパラギン445(N445)に対応する位置にあるアミノ酸を、セリンもしくはスレオニンで置き換えるステップ
により、GDF−5関連タンパク質から誘導されるタンパク質を遺伝子組換えにより調製することを含む、上記方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質に対して特異的な抗体。
【請求項16】
骨損傷および/もしくは軟骨損傷に関連した疾患または骨疾患および/もしくは軟骨疾患の罹患の診断、予防および/または治療のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項17】
軟骨形成および/もしくは骨形成および/もしくは脊椎固定の促進のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項18】
以下の組織の損傷または疾患:腱および/もしくは靭帯をはじめとする結合組織を伴う組織の損傷または疾患、歯科インプラントをはじめとする歯周組織もしくは歯組織の損傷または疾患、CNS組織および神経病理学的状態をはじめとする神経組織の損傷または疾患、感覚器官の組織の損傷または疾患、肝臓の損傷または疾患、膵臓の損傷または疾患、心臓の損傷または疾患、血管の損傷または疾患、腎臓の損傷または疾患、子宮および甲状腺組織の損傷または疾患、皮膚、粘膜、内皮、上皮の損傷または疾患の、診断、予防および/または治療のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項19】
神経成長、組織再生、血管新生、潰瘍、熱傷、傷害および/もしくは皮膚移植をはじめとする創傷治癒の誘導のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項20】
前駆細胞および/または骨髄細胞の増殖の誘導のための、治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項21】
器官もしくは組織移植用の組織または細胞の処理もしくは保存の目的での、増殖または分化の状態の維持のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項22】
胃腸内壁の無損傷状態のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項23】
受胎能力、避妊および/または妊娠についての障害の治療のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項24】
骨格要素に対する関節に関する適用、および/または半月板修復および/もしくは脊椎/椎間板修復のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項25】
パーキンソン病、アルツハイマー病およびハンチントン病などの神経変性疾患の予防および/または治療のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。
【請求項26】
毛髪成長の促進のための治療用および/もしくは診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の発現ベクターおよび/または請求項8に記載の宿主細胞の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−538073(P2008−538073A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557437(P2007−557437)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001966
【国際公開番号】WO2006/094722
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.ウィンドウズ
【出願人】(302056217)バイオファーム・ゲゼルシャフト・ツア・バイオテクノロジシェン・エントヴィックルング・フォン・ファーマカ・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【出願人】(507010625)シャリテ−ウニヴェルジテイト−メディツィン ベルリン (2)
【出願人】(507010636)フライエ ウニヴェルジテイト ベルリン (3)
【Fターム(参考)】