説明

改善された粘度指数上昇特性を有する潤滑油添加剤組成物

【課題】約0.8未満の、RL216基準オイルの40℃での絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】約30重量%未満の比較的低ノアク揮発度の基油と、粘度添加剤であって、少量の有効量の約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを含む粘度添加剤、とを含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも2種の粘度指数向上剤を含む添加剤組成物、特に、比較的低レベルのグループIIIおよび/またはグループIV基油を使用するときにクランクケースオイル性能仕様を満たすための改善された粘度指数特性を提供する潤滑油添加剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州のACEAエンジンオイル仕様は、PEUGEOT TU5と呼ばれる潤滑油エンジンテストに合格することを要求する。このPEUGEOT TU5テストは、一定の供給量のエンジンオイルが添加されている1.6リットル、4気筒のガソリンエンジンを基礎とする。このエンジンは、150℃に保持されたオイル温度で、満載状態で72時間運転される。テストの間、オイルの補給は許されない。72時間の期間にわたるエンジンオイル粘度の上昇が測定され、そのテストがACEA仕様に従うためには、粘度の上昇が禁止された制限より下でなくてはならない。この粘度制限は、基準オイルの粘度上昇に対する絶対的粘度上昇(mm/秒で測定される)によって設定される。
【0003】
そのオイルの何らかのオイルの化学的酸化がテスト中に起こるかも知れないが、PEUGEOT TU5テストを使用した場合の粘度上昇についての主な機構は、物理的な機構であると考えられている。熱いブローバイガスと潤滑油との間の接触が、オイル溜めのオイルにおける、熱が誘導する軽質の基油の気化および重質のオイル成分の濃縮を引き起こすかも知れない。酸化防止剤などの化学添加剤の使用は、一般的には、粘度上昇についての物理的機構であると考えられているものを制御するためには効果的ではない。
【0004】
比較的高いせん断安定性指数(shear stability index、SSI)のオレフィンコポリマー(OCP)粘度指数向上剤(VII)は、PEUGEOT TU5テスト中に経験する粘度上昇を制限するのに役立つ可能性があるが、しかしながら、効果的であるためには、その添加剤パッケージは、その添加剤パッケージの大部分がOCP VIIであることを必要とするかも知れない。その添加剤パッケージにおけるかかる量の高SSIのOCP VIIは、同様にACEAエンジンオイル仕様に見出されるBOSCH 30サイクルせん断テストも合格することができる潤滑油を提供するには不利であるかも知れない。高SSIのOCP VIIは、典型的には他の添加剤パッケージ成分と相溶性ではなく、添加剤濃縮物とは別にオイルにブレンドされなければならないかも知れない。かなりの量のOCP VIIを使用することの別の不都合は、このOCP成分によって、10W30 ACEA A3/B3オイルの3.5最小HTHS要件を満たすことが困難になる可能性があることである。
【0005】
PEUGEOT TU5テスト中に経験する粘度上昇を制限するために有用である可能性がある他の粘度指数向上剤は、水素化イソプレン−スチレンのトリブロックコポリマーである。しかしながら、かかるトリブロックコポリマーは、比較的高価な成分であり、利用可能性が限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ACEA欧州オイルシーケンステストに合格するために、比較的低SSIのOCP VIIが、より多量のより高価な基油(比較的低いノアク揮発度を有する、水素化分解されたグループIIIおよび/またはポリαオレフィン(PAO)グループIV基油など)とともに使用されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の点に関して、本開示の実施形態は、エンジンを潤滑するための潤滑油組成物、添加剤濃縮物、および方法を提供し得る。このクランクケース潤滑油は、30重量%未満の比較的低ノアク揮発度(Noack volatility)の基油および粘度添加剤を有する。この粘度添加剤は、少量の有効量の約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを有する。この少量の犠牲的粘度指数向上剤添加剤は、約0.8未満の、40℃でのRL216基準オイルの絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供するために有効である。
【0008】
別の実施形態では、本開示は潤滑油用の添加剤濃縮物を提供する。この添加剤濃縮物は、約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを含む。この粘度添加剤濃縮物を含有する完全に配合された潤滑油は、主要量の、約7.0〜約15重量%の範囲のノアク揮発度を有する基油を含む。この添加剤濃縮物は、約0.8未満の、40℃でのRL216基準オイルの絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供するために有効である。
【0009】
本開示のさらに別の実施形態は、エンジンを潤滑するための方法を提供する。この方法によれば、主要量の、約7.0〜約15重量%の範囲のノアク揮発度を有する基油と、その基油のための粘度添加剤とを含む潤滑油組成物が提供される。この粘度添加剤は、有効量の約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを有する。この粘度添加剤は、約0.8未満の、40℃でのRL216基準オイルの絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供するために有効である。
【0010】
本願明細書に記載される本開示の例示的な実施形態は、PEUGEOT TU5エンジンテストを実施するときのクランクケース潤滑油の絶対的粘度上昇を減少させるための手段としての、1種以上の従来の比較的低SSIの粘度指数向上剤と組合わせた、比較的低処理率の比較的高SSIの分散剤粘度指数向上剤添加剤の使用に関する。従って、本開示によって、主要量の比較的低揮発度の基油が最終配合物中に存在している必要なしに、比較的低コストの、それほどせん断安定性でない粘度指数向上剤を、潤滑油組成物のために大部分の粘度指数向上剤として使用することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
より詳細に後述するように、低処理率の比較的高いせん断安定性指数(SSI)のポリマー分散剤粘度指数向上剤(VII)を使用することは、PEUGEOT TU5エンジンテストに合格するグレードを提供するために、「犠牲的VII」として作用できると考えられる。この高SSIポリマー分散剤VIIは、オイルがTU5テストで経験する熱せん断条件下で極端に容易に分解すると考えられ、従ってテスト中のより低い絶対的粘度上昇を維持するための「犠牲的VII」と呼ばれる。ポリマー鎖のこの分解によって引き起こされる増粘能力の喪失は、テストの最初の12時間におけるそのオイルの粘度の低下として現れる。TU5についてのACEA粘度上昇配合が設定される具体的な方法の結果として、テストの最初の12時間における粘度のあらゆる減少は、絶対的粘度上昇の正味の減少をもたらす。
【0012】
このポリマー分散剤VIIは、オレフィンコポリマーVII、ポリアルキル(メタ)アクリレートVII、スチレン−マレイン酸エステルVII、水素化スチレンイソプレンポリマーVII、およびこれらの生成物の混合物から選択されてよい。少なくとも1種の分
散剤/酸化防止剤VIIもまた、本発明において使用するのに適切であり得る。ポリマー分散剤VIIは、不活性溶媒(典型的には、通常は入念に精製されている鉱油である、鉱油溶媒)中の溶液の形態で供給されてよい。入手したままの粘度指数向上剤溶液は、典型的には、約500〜約1500mm/秒の粘度および25℃で1未満の比重を有してよい。
【0013】
本開示に係る分散剤/防止剤(DI)パッケージにおいて比較的少量で使用することができる1種の適切な比較的高SSIのポリマー分散剤VIIは、ポリアルキル(メタ)アクリレートのコポリマーである。このコポリマーは、(A)約5〜約15重量%のC〜Cアルキルメタクリレート(複数種も可);(B)約75〜約85重量%のC10〜C15アルキル(メタ)アクリレート(複数種も可);(C)約2〜約8重量%のC16〜C20アルキル(メタ)アクリレート;および(D)約2〜約5重量%の窒素含有分散剤モノマーを含んでよい。
【0014】
本願明細書で使用する場合、C10〜C15アルキル(メタ)アクリレートは、1つの基あたり10〜15個の炭素原子の直鎖または分枝鎖のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルを意味し、例として、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ドデシルペンタデシルメタクリレート、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。C16〜C20アルキル(メタ)アクリレートは、1つの基あたり16〜20個の炭素原子の直鎖または分枝鎖のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルを意味し、例としては、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、パルミトレイル(palmitoleyl)(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エライジル(elaidyl)(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、リノレイル(メタ)アクリレート、エライドリノレイル(elaidolinoleyl)(メタ)アクリレート、リシノレイル(ricinoleyl)(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
アルキル基に10個以上の炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレートコモノマーは、一般に、工業品グレードの長鎖脂肪族アルコールを用いる標準的なエステル化手順によって調製され、これらの市販のアルコールは、アルキル基が様々な鎖長のものであるアルコールの混合物である。その結果、開示された実施形態の目的のために、アルキル(メタ)アクリレートは、明記された個々のアルキル(メタ)アクリレート生成物を包含するだけでなく、明記された特定のアルキル(メタ)アクリレートを主要量含むアルキル(メタ)アクリレートの混合物を包含することが意図されている。
【0016】
分散剤VIIを提供する上での使用に適切な窒素含有分散剤モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド;N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよびN,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;ならびにN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートおよびN,N−ジメチルアミノエチルチオメタクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0017】
本願明細書に記載されるポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、本質的に(A)、(B)、(C)、および(D)の反応生成物からなっていてよい。しかしながら、当業者は、少量レベルの、モノマー(A)、(B)および/または(C)と重合可能な他のモノマーが、それらが上記コポリマーを含有する完全に配合された流体の分散剤VII特性に悪影響を及ぼさない限り、存在してもよいことは理解するであろう。典型的には、
さらなるモノマーは、約5重量%未満の量で存在する。例えば、C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシもしくはアルコキシ含有アルキル(メタ)アクリレート、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニルなどの少量レベルのモノマーの添加は、これらのモノマーの存在がコポリマーの特性に悪影響を及ぼさない限り、含まれてよい。
【0018】
このポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、ラジカル重合およびアニオン重合を含めた種々の重合技術によって調製することができる。従来法のラジカル重合を、コポリマーを調製するために使用してよい。アクリルおよび/またはメタクリルモノマーの重合は、塊状重合、(通常は有機溶媒中での)溶液重合、乳化重合、懸濁重合および非水系分散技術を含めた種々の条件下で行ってよい。本発明で使用されるポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを作製するための例示的プロセスは、Liesenらに対する米国特許第6,323,164号に開示されている。この特許文献の開示を、参照によって本願明細書に援用する。
【0019】
本発明で使用するためのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、典型的には、ポリメチルメタクリレート標準を用いてゲル浸透クロマトグラフィによって測定された場合の、200,000〜500,000ダルトン、好ましくは約250,000〜約400,000ダルトンの相対的数平均分子量を有する。当業者は、本願明細書全体にわたって示される分子量は、それらが測定される方法に対して相対的であることを認識する。例えば、GPCによって測定した分子量と、他の方法によって測定した分子量とは、異なる値を有する可能性がある。重要なのは分子量それ自体ではなく、ポリマー添加剤の取扱い特性および性能(使用条件下でのせん断安定性、低温性能および増粘能力)である。一般に、せん断安定性は分子量に反比例する。良好なせん断安定性(低SSI値)を有するVII添加剤は、高温の処理された流体中で同じ目標増粘効果を得るために、典型的には、低いせん断安定性(高SSI値)を有する別の添加剤よりもより高い初期濃度で使用される。しかしながら、良好なせん断安定性を有する添加剤は、より高い使用濃度に起因して低温では許容できない増粘を起こすかも知れない。
【0020】
逆に、より低濃度の低せん断安定性VI向上性添加剤を含有する潤滑油は初期には高温での粘度目標を満足するかも知れないが、流体粘度は使用とともに顕著に低下し、潤滑油の有効性の喪失を引き起こすかも知れない。従って、特定のVI向上性添加剤の低いせん断安定性は、(そのより低い濃度に起因して)低温で満足できるものかも知れないが、それは、高温条件下では満足できないものであることが分かるであろう。従って、VI向上剤のポリマー組成、分子量およびせん断安定性は、高温性能および低温性能の両方の要件を満たすために、特性のバランスを達成するように選択されねばならない。
【0021】
本開示の目的のためには、比較的高SSIのポリマー分散剤VIIの数平均分子量は、約250,000〜約400,000ダルトンの範囲であってよい。典型的な潤滑油組成物は、その潤滑油組成物の総重量に対して、約0.5〜約3.0重量%の比較的高SSIのポリマー分散剤VIIを含有してよい。
【0022】
他の比較的高SSIのVIIを、TU5テストで「犠牲的VII」として使用してよい。従って、本開示に係る潤滑油組成物としては、低処理率の高SSIオレフィンコポリマー(OCP)VII、高SSI高エチレン(OCP)VII、高SSI分散剤OCP VII、高SSIスチレン−マレイン酸エステルVII、高SSIの水素化スチレン−イソプレンVIIなどを挙げることができる。しかしながら、使用することができるOCP VIIのうちの一部は、上記のポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーほどには上記DIパッケージに可溶性でないかも知れず、従って使用にはあまり望ましくない。
【0023】
本開示の潤滑油組成物および添加剤の別の重要な成分は、比較的低いSSIを有する少
なくとも1種の分散剤または非分散剤VIIである。比較的低いSSI VIIは、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィンおよび約26未満のSSIを有する多官能性粘度調整剤(viscosity improver)から選択されてよい。一実施形態では、分散剤VIIは、オレフィンコポリマーまたは官能化オレフィンコポリマーであってよい。このポリマーまたはコポリマー基質は、エチレンおよびプロピレンから調製されてもよいし、それはエチレンとC〜C23のα−オレフィンの範囲内にある少なくとも1種の高級オレフィンとから調製することもできる。
【0024】
本発明で使用するためのポリマーの非限定的な例としては、エチレンおよび少なくとも1種のC〜C23のα−オレフィンのコポリマーが挙げられる。一実施形態では、エチレンおよびプロピレンのコポリマーが使用されてよい。プロピレンの代わりの、コポリマーを形成するための、またはターポリマーを形成するためにエチレンおよびプロピレンと組み合わせて使用されるべき適切な他のα−オレフィンとしては、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、およびスチレン;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエンなどのα−,ω−ジオレフィン;4−メチルブテン−1、5−メチルペンテン−1、および6−メチルヘプテン−1などの分枝鎖α−オレフィン;ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
この粘度添加剤組成物は、75重量%までの比較的低SSI VII、例えば約1〜約60重量%、さらなる例として約10〜約50重量%の比較的低SSI VIIを含んでよい。
【0026】
上記の成分に加えて、完成したクランクケース潤滑油組成物についてのDIパッケージは、上記のコポリマーVIIに加えて他の添加剤、例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、磨耗防止剤および極圧剤、清浄剤、分散剤、あわ消し剤(antifoamant)、および流動点降下剤を含んでよい。トランスミッション液組成物とは異なり、本願明細書に記載される添加剤は、典型的には、シール膨潤剤(seal swell agent)を含まない。
【0027】
従って、典型的なクランクケース潤滑油配合物は、以下の成分を以下の表に列挙される量で含んでよい。
【0028】
【表1】

【0029】
本願明細書に記載される組成物および配合物での使用が企図される基油としては、天然油、合成油およびそれらの混合物が挙げられる。適切な基油としてはまた、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られるベースストック(basestock)、ならびに原油の芳香族化合物および極性成分を(溶媒抽出することではなく)水素化分解することによって生成されるベースストックも挙げられる。一般に、天然基油および合成基油はともに、各々、100℃で約2〜約20mm/秒の範囲の動粘性率を有するが、典型的な用途では、各オイルが100℃で約4〜約12mm/秒の範囲の粘度を有することが要求されるであろう。本開示の目的のために、この基油は、少量の比較的低ノアク揮発度の基油を含有してよい。「少量」とは、その基油が約7重量%未満のノアク揮発度を有する基油を30重量%未満だけ含有することを意味する。従って、その基油の主要量は、約7〜約15重量%の範囲のノアク揮発度を有してよい。
【0030】
(分散剤)
DIパッケージに含まれる分散剤としては、分散すべき粒子と会合することができる官能基を有する油溶性のポリマー状炭化水素骨格が挙げられるが、これに限定されない。代表的には、この分散剤は、たいていは架橋部分で上記ポリマー骨格に結合したアミン、アルコール、アミド、またはエステル極性部分を含む。分散剤は、例えば米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載されるようなマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載されるような無灰スクシンイミド分散剤;米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号および同第5,633,326号に記載されるようなアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号および同第5,627,259号に記載されるようなコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号および同第5,792,729号に記載されるようなポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択することができる。
【0031】
(清浄剤)
DIパッケージの1つの成分は、金属含有または灰形成(ash−forming)清浄剤であり、これらは沈着物を減少させるまたは除去する清浄剤としてかつ酸中和剤またはさび止めとして機能し、それによって磨耗および腐食を減少させエンジン寿命を延長させる。清浄剤は一般的に長い疎水性の尾を有する極性の頭部を含む。この極性の頭部が酸性有機化合物の金属塩を含む。この塩は、実質的に化学量論量の金属を含んでもよく、通常は正塩または中性塩として記述され、ASTM D−2896によって測定され得る場合に典型的には0〜80の総塩基数(TBN)を有し得る。過剰量の金属化合物(例えば酸化物または水酸化物)と二酸化炭素のような酸性ガスとを反応させることによって、多量の金属塩基を含めることが可能である。得られた過塩基性清浄剤は、中性清浄剤を金属塩基(例えばカーボネート)ミセルの外側の層として含む。そのような過塩基性清浄剤は、150以上のTBN、典型的には250〜450またはそれ以上のTBNを有し得る。
【0032】
用いられ得る清浄剤には、金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムの、油溶性で中性および過塩基性のスルホネート、フェナート、硫化フェナート、チオホスホネート、サリチレート、およびナフテネート、ならびに他の油溶性カルボキシレートが挙げられる。最も一般的に使用される金属は、カルシウムおよびマグネシウム(これらはともに、潤滑油中で使用される清浄剤中に存在してよい)、およびカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物である。特に従来の金属清浄剤は、20〜450のTBNを有する中性および過塩基性のカルシウムスルホネート、50〜450のTBNを有する中性および過塩基性のカルシウムフェナート、ならびに硫化フェナート、ならびに20〜450のTBNを有する中性および過塩基性マグネシウムサリチレートまたはカルシウムサリチレートである。清浄剤の組合せは、過塩基性であろうが、中性であろうが、その両方であろうが、使用してよい。
【0033】
潤滑油組成物の配合物において一般的に有用な清浄剤としてはまた、例えば、米国特許第6,153,565号、同第6,281,179号、同第6,429,178号および同第6,429,179号に記載されているような、例えばフェナート/サリチレート、スルホネート/フェナート、スルホネート/サリチレート、スルホネート/フェナート/サリチレートなどの混合界面活性剤系を用いて形成される「混成」清浄剤が挙げられる。
【0034】
清浄剤または他の添加剤を希釈剤中で潤滑油に、または添加剤濃縮物に加えることは珍しいことではなく、その結果、加えられた重量の一部のみが活性成分(A.I)に相当する。例えば、清浄剤は等重量の希釈剤と一緒に加えられてよい。この場合、この「添加剤」は50% A.I.清浄剤である。本願明細書で使用する場合、重量パーセント(重量%)との用語は、清浄剤または他の添加剤に対して用いられるときは、活性成分の重量を指す。清浄剤は、従来、大型車両用ディーゼルエンジンでの使用のために配合された潤滑油組成物の約0.5〜約5重量%、好ましくは約0.8〜約3.8重量%、最も好ましくは約1.2〜約3重量%を構成する。
【0035】
(リン含有化合物)
DI添加剤パッケージの1つの成分はZDDPのようなリン含有化合物であってよい。適切なZDDPは、特定量の1級および2級アルコールから調製することができる。例えば、これらのアルコールは、約100:0〜約0:100の1級アルコール:2級アルコールの比で組み合わせることができる。なおさらなる例として、これらのアルコールは、約60:40の1級アルコール:2級アルコールの比で組み合わせることができる。適切なZDDPの例は、(i)約50〜約100mol%の約C〜約C18の1級アルコール;(ii)約50mol%までの約C〜約C18の2級アルコール;(iii)リン含有成分;および(iv)亜鉛含有成分を組み合わせることにより得られる反応生成物を含むことができる。さらなる例として、この1級アルコールは、約C〜約C18のアルコールの混合物であってもよい。なおさらなる例として、この1級アルコールは、CおよびCのアルコールの混合物であってもよい。2級アルコールもまた、アルコールの混合物であってもよい。例として、この2級アルコールは、Cアルコールを含むことができる。このアルコールは分枝鎖、環状鎖または直鎖のいずれを含んでいてもよい。ZDDPは、約60mol%の1級アルコールおよび約40mol%の2級アルコールの組合せを含むことができる。代替として、ZDDPは100mol%の2級アルコールまたは100mol%の1級アルコールを含むことができる。
【0036】
上記リン含有化合物のリン含有成分は、任意の適切なリン含有成分を含むことができ、その例としては硫化リンが挙げられるが、これに限定されない。適切な硫化リンとしては、五硫化リン、または三硫化四リンを挙げることができる。
【0037】
亜鉛含有成分は、任意の適切な亜鉛含有成分を含むことができ、その例としては酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛(zinc propylate)、塩化亜鉛、プロピオン酸亜鉛または酢酸亜鉛が挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
この反応生成物は、得られる混合物、成分、または成分の混合物を含むことができる。この反応生成物は、未反応の反応物、化学結合した成分、生成物、または極性結合した成分を含んでいてもいなくてもよい。
【0039】
ZDDPまたは灰分含有リン化合物は、潤滑剤組成物中のリンが約0.03重量%〜約0.15重量%になるのに十分な量で存在することができる。
【0040】
加えて、または代わりに、灰分を含まないリン化合物が、リン含有化合物の混合物に含まれていてもよい。この灰分を含まないリン化合物は、リン酸の有機エステル、亜リン酸の有機エステル、またはそれらのアミン塩から選択することができる。例えば、灰分を含まないリン含有化合物としては、1種以上の亜リン酸ジヒドロカルビル、亜リン酸トリヒドロカルビル、リン酸モノヒドロカルビル、リン酸ジヒドロカルビル、リン酸トリヒドロカルビル、任意のその硫黄類似体、ならびにそれらのアミン塩を挙げることができる。さらなる例として、灰分を含まないリン含有化合物としては、リン酸モノヒドロカルビルおよびリン酸ジヒドロカルビルのアミン塩の少なくとも1種またはこれらの混合物(例えば、アミル酸リン酸塩は、モノアミル酸リン酸塩およびジアミル酸リン酸塩の混合物であってもよい)を挙げることができる。
【0041】
潤滑油配合物中のリン含有化合物の混合物は、その潤滑油配合物中に約300〜約1200重量ppmの全リンを提供するのに十分な量で存在することができる。さらなる例として、リン含有化合物の混合物は、その潤滑油配合物中に約500〜約800重量ppmの全リンを提供するのに十分な量で存在することができる。
【0042】
(酸化防止剤成分)
酸化防止剤または抗酸化剤は、ベースストックが使用中に劣化する傾向を低減する。この劣化は、スラッジ、金属表面に堆積するワニスのような堆積物のような酸化生成物によって、および完成した潤滑剤の粘度上昇によって明らかになり得る。このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、硫化ヒンダードフェノール、C〜C12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化アルキルフェノールまたは非硫化アルキルフェノールのいずれかの金属塩(例えば、カルシウムノニルフェノールスルフィド)、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リン硫化または硫化炭化水素、リン酸エステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載される油溶性銅化合物が挙げられる。
【0043】
炭化水素可溶性チタン化合物と組合せで使用することができる他の抗酸化剤としては、立体的に嵩高いフェノールおよびジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物、および無灰ジアルキルジチオカルバメートが挙げられる。立体的に嵩高いフェノールの非限定的な例としては、米国特許出願公開第2004/0266630号に記載される2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、2,6ジ−第3級ブチルメチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−ペンチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−ヘキシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−へプチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−オクチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−ノニル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−デシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−ウンデシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、4−ドデシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール、メチレン架橋した立体的に嵩高いフェノール(4,4−メチレンビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、4,4−メチレンビス(2−tert−アミル−o−クレゾール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6tert−ブチルフェノール、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)が挙げられるがこれらに限定されない)、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
ジアリールアミン抗酸化剤としては、以下の式を有するジアリールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【化1】

式中、R’およびR”は、各々独立に、6〜30個の炭素原子を有する置換または非置換のアリール基を示す。アリール基についての置換基の例示としては、1〜30個の炭素原子を有するアルキルなどの脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸またはエステル基、またはニトロ基が挙げられる。
【0045】
アリール基は、好ましくは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチルであり、特にこのアリール基の一方または両方は、4〜30個の炭素原子、好ましくは4〜18個の炭素原子、最も好ましくは4〜9個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルで置換されている。一方または両方のアリール基は置換されている、例えばモノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、またはモノアルキル化ジフェニルアミンおよびジアルキル化ジフェニルアミンの混合物であることが好ましい。
【0046】
このジアリールアミンは、分子中に1個より多い窒素原子を含有する構造のものであってよい。従って、このジアリールアミンは、例えば2級窒素原子およびその窒素原子のうちの1つの上に2つのアリールを有する種々のジアミンの場合にように、少なくとも1個の窒素原子がそれに結合した2つのアリール基を有する、少なくとも2つの窒素原子を含有してよい。
【0047】
使用することができるジアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン;種々のアルキル化ジフェニルアミン;3−ヒドロキシジフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;モノブチルジフェニル−アミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデ
シルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン;モノオクチルフェニル−α−ナフチルアミン;フェニル−β−ナフチルアミン;モノへプチルジフェニルアミン;ジへプチル−ジフェニルアミン;p−配向スチレン化ジフェニルアミン;混合ブチルオクチルジ−フェニルアミン;ならびに混合オクチルスチリルジフェニルアミンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0048】
別のクラスのアミン抗酸化剤としては、以下の化学式を有するフェノチアジンまたはアルキル化フェノチアジンが挙げられる。
【化2】

式中、Rは直鎖または分枝鎖のC〜C24アルキル、アリール、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基であり、Rは水素または直鎖もしくは分枝鎖のC〜C24アルキル、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基である。アルキル化フェノチアジンは、モノテトラデシルフェノチアジン、ジテトラデシルフェノチアジン、モノデシルフェノチアジン、ジデシルフェノチアジン、モノノニルフェノチアジン、ジノニルフェノチアジン、モノオクチルフェノチアジン、ジオクチルフェノチアジン、モノブチルフェノチアジン、ジブチルフェノチアジン、モノスチリルフェノチアジン、ジスチリルフェノチアジン、ブチルオクチルフェノチアジン、およびスチリルオクチルフェノチアジンからなる群から選択されてよい。
【0049】
硫黄含有抗酸化剤としては、それらの生成において使用したオレフィンのタイプおよびその抗酸化剤の最終硫黄含有量によって特徴づけられる硫化オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち168〜351g/モルの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用することができるオレフィンの例としては、α−オレフィン、異性化α−オレフィン、分枝状オレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0050】
α−オレフィンとしては、任意のC〜C25のα−オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。α−オレフィンは、硫化反応の前または硫化反応の間に異性化されてもよい。内部二重結合および/または分枝を含むα−オレフィンの構造異性体および/または配座異性体もまた、使用してよい。例えば、イソブチレンはα−オレフィンである1−ブテンの分枝オレフィン対照物である。
【0051】
オレフィンの硫化反応において使用することができる硫黄源としては、元素状硫黄、二塩化二硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、およびこれらの混合物(硫化プロセスで一緒にまたは異なる段階で加えられる)が挙げられる。
【0052】
不飽和油は、その不飽和のために、硫化されてもよく、そして抗酸化剤として使用されてもよい。使用することができる油脂の例としては、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、グレープシードオイル、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ココナツオイル、菜種油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ種子油、獣脂、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0053】
完成した潤滑油に送達される硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の量は、その硫化オレフィンまたは脂肪油の硫黄含有量、および完成した潤滑油に送達されるべき硫黄の所望のレベルに基づく。例えば、20重量%の硫黄を含有する硫化された脂肪油またはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで完成した潤滑油に加えられるとき、完成した潤滑油に2000ppmの硫黄を送達する。10重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油またはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで完成した潤滑油に加えられるとき、完成した潤滑油に1000ppmの硫黄を送達する。200ppm〜2000ppmの間の硫黄を完成した潤滑油に送達するように、硫化されたオレフィンまたは硫化脂肪油を加えることが好ましい。上述のアミン、フェノチアジン、および硫黄含有抗酸化剤は、例えば、米国特許第6,599,865号に記載されている。
【0054】
抗酸化剤添加剤として使用することができる無灰ジアルキルジチオカルバメートとしては、上記添加剤パッケージ中に可溶または分散可能である化合物が挙げられる。また、上記無灰ジアルキルジチオカルバメートは、好ましくは250ダルトンを超える分子量を有する、最も好ましくは400ダルトンを超える分子量を有する低揮発性のものであることも好ましい。使用することができる無灰ジチオカルバメートの例としては、メチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジアルキルジチオカルバメート)、ヒドロキシアルキル置換ジアルキルジチオカルバメート、不飽和化合物から調製されるジチオカルバメート、ノルボルニレンから調製されるジチオカルバメート、およびエポキシドから調製されるジチオカルバメート(これらにおいて、このジアルキルジチオカルバメートのアルキル基は、好ましくは1〜16個の炭素を有することができる)が挙げられるが、これらに限定されない。使用することができるジアルキルジチオカルバメートの例は、以下の特許に開示されている:米国特許第5,693,598号、同第4,876,375号、同第4,927,552号、同第4,957,643号、同第4,885,365号、同第5,789,357号、同第5,686,397号、同第5,902,776号、同第2,786,866号、同第2,710,872号、同第2,384,577号、同第2,897,152号、同第3,407,222号、同第3,867,359号、および同第4,758,362号。
【0055】
適切な無灰ジチオカルバメートの例は、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジブチルジチオカルバメート)、ジブチル−N,N−ジブチル−(ジチオカルバミル)スクシネート、2−ヒドロキシプロピルジブチルジチオカルバメート、ブチル(ジブチルジチオカルバミル)アセテート、およびS−カルボメトキシ−エチル−N,N−ジブチルジチオカルバメートである。最も好ましい無灰ジチオカルバメートはメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)である。
【0056】
摩擦調整剤として使用する有機モリブデン含有化合物も、抗酸化剤としての機能を示すことがある。米国特許第6,797,677号は、完成した潤滑剤配合物で使用するための有機モリブデン化合物、アルキルフェノチアジン(phenothizine)およびアルキルジフェニルアミンの組合せを記載している。適切なモリブデン含有摩擦調整剤の例は、以下の摩擦調整剤の節で説明する。
【0057】
(摩擦調整剤成分)
所望の場合、摩擦調整剤として使用することができる硫黄もリンも含まない有機モリブデン化合物は、硫黄もリンも含まないモリブデン源をアミノおよび/またはアルコール基を含有する有機化合物と反応させることにより調製することができる。硫黄もリンも含まないモリブデン源の例としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムが挙げられる。アミノ基は、モノアミン、
ジアミン、またはポリアミンであってよい。アルコール基は、一置換アルコール、ジオールまたはビス−アルコール、またはポリアルコールであってよい。例として、ジアミンと脂肪油との反応は、硫黄もリンも含まないモリブデン源と反応することができるアミノ基およびアルコール基の両方を含有する生成物を生成する。
【0058】
硫黄もリンも含まない有機モリブデン化合物の例としては、以下の特許に記載される化合物が挙げられる:米国特許第4,259,195号、同第4,261,843号、同第4,164,473号、同第4,266,945号、同第4,889,647号、同第5,137,647号、同第4,692,256号、同第5,412,130号、同第6,509,303号、同第6,528,463号。
【0059】
米国特許第4,889,647号に記載されるようにして脂肪油、ジエタノールアミン、およびモリブデン源を反応させることにより調製されるモリブデン化合物は、以下の構造(式中、Rは、脂肪族アルキル鎖である)で図示されることがあるが、これらの物質の正確な化学組成は、十分には知られておらず、実際は、いくつかの有機モリブデン化合物の多成分混合物であるかも知れない。
【化3】

【0060】
硫黄含有有機モリブデン化合物が使用されてよく、それは種々の方法によって調製することができる。1つの方法は、硫黄もリンも含まないモリブデン源をアミノ基および1種以上の硫黄源と反応させることを含む。硫黄源としては、例えば、二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウムおよび元素状硫黄を挙げることができるが、これらに限定されない。あるいは、この硫黄含有モリブデン化合物は、硫黄含有モリブデン源をアミノ基またはチウラム基と、そして必要に応じて第2の硫黄源と反応させることによって調製することができる。硫黄もリンも含まないモリブデン源の例としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびハロゲン化モリブデンが挙げられる。このアミノ基は、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンであってよい。例として、三酸化モリブデンと2級アミンおよび二硫化炭素との反応により、モリブデンジチオカルバメートが生成する。あるいは、(NHMo13*n(HO)(式中、nは0〜2の間で変わる)とテトラアルキルチウラムジスルフィドとの反応により、三核硫黄含有モリブデンジチオカルバメートが生成する。
【0061】
硫黄含有有機モリブデン化合物の例としては、以下の特許に記載される化合物が挙げられる:米国特許第3,509,051号、同第3,356,702号、同第4,098,705号、同第4,178,258号、同第4,263,152号、同第4,265,773号、同第4,272,387号、同第4,285,822号、同第4,369,119号、同第4,395,343号、同第4,283,295号、同第4,362,633号、同第4,402,840号、同第4,466,901号、同第4,765,918号、同第4,966,719号、同第4,978,464号、同第4,990,271号、同第4,995,996号、同第6,232,276号、同第6,103,674号、および同第6,117,826号。
【0062】
グリセリドも単独で、または他の摩擦調整剤と組み合わせて使用することができる。適切なグリセリドとしては、以下の式のグリセリドが挙げられる。
【化4】

式中、各Rは、独立にHおよびC(O)R’からなる群から選択され、R’は3〜23個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル基であってよい。使用することができるグリセリドの例としては、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノミリステート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールモノステアレート、ならびにココナツ酸、牛脂脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸から誘導されるモノグリセリドが挙げられる。典型的な市販のモノグリセリドは、実質的な量の対応するジグリセリドおよびトリグリセリドを含有する。これらの物質は、モリブデン化合物の生成にとって有害ではなく、実際はより活性であるかも知れない。モノグリセリド対ジグリセリドの任意の比が使用できるが、しかしながら、利用できる部位の30〜70%が遊離のヒドロキシル基を含む(すなわち、上記の式によって表されるそのグリセリドの全R基の30〜70%が水素である)ことが好ましい。好ましいグリセリドは、一般にオレイン酸、およびグリセロールから誘導されるモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの混合物である、グリセロールモノオレートである。
【0063】
(他の添加剤)
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、アニオン性アルキルスルホン酸からなる群から選択されるさび止め剤を使用することができる。
【0064】
少量の解乳化成分を使用することができる。好ましい解乳化成分は、欧州特許第330,522号に記載されている。このような解乳化成分は、ビスエポキシドと多価アルコールとを反応させることによって得られる付加体とアルキレンオキシドとを反応させることによって得ることができる。解乳化剤は、活性成分の0.1質量%を超えないレベルで使用すべきである。0.001〜0.05質量%の活性成分の処理率が好都合である。
【0065】
流動点降下剤は、別名では潤滑油流動性向上剤(lube oil flow improver)としても公知であり、その流体が流れるかまたはそれを注ぐことができる最低温度を下げる。このような添加剤は周知である。流体の低温流動性を改善するこれらの添加剤の代表的なものは、C〜C18ジアルキルフマレート/酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキルメタクリレートなどである。
【0066】
泡制御は、ポリシロキサンタイプのあわ消し剤、例えばシリコーン油またはポリジメチルシロキサンが挙げられる多くの化合物によって実現することができる。
【0067】
以下の非限定的実施例および比較データは、適切なエンジンテスト性能結果を達成するための添加剤の有効性を例証する目的で提供される。
【実施例】
【0068】
以下の実施例では、11.2〜11.5重量%のDIパッケージ、および示されたVIIを特定の基油に加え、その配合物の特徴を測定した。これらの配合物をPEUGEOT
TU5エンジンテストでテストした。15W50基油は、一般に、TU5テストに最も合格しにくい粘度グレードのオイルとされている。実施例1、実施例3、および実施例4
についての基油は、20重量%のグループIII基油および約60重量%のグループII基油を含んでいた。実施例2および実施例6についての基油は、30重量%のグループIII基油および約50重量%のグループII基油を含んでいた。実施例5は、40重量%のグループIII基油および約40重量%のグループII基油を含んでいた。結果を以下の表に提示する。
【0069】
【表2−1】

【0070】
【表2−2】

【0071】
実施例1、実施例4、および実施例5はすべて、20〜40重量%の高揮発度のグループIII基油、すなわち、約15重量%を超えるノアク揮発度を有する基油を使用した場合でさえも、90mm/秒を超える40℃での絶対的粘度上昇と、0.8を超える基準オイルの40℃での粘度上昇に対するテストオイルの40℃での粘度上昇の比とを有した。従って、実施例1、実施例4および実施例5のオイルおよび添加剤は、ACEA A3仕様の要件を満たすことができなかった。実施例4のオイルおよび添加剤もまた、ACEA A2要件を満たすことができなかった。
【0072】
実施例2では、30重量%の、約8重量%のノアク揮発度を有するグループIII基油を含有する基油を従来のオレフィンコポリマーVIIとともに使用した。比較的高い量のグループIII基油に起因するこの潤滑油組成物の低いノアク揮発度は、40℃での絶対的粘度上昇を50.4mm/秒と、そして40℃での基準オイルの粘度上昇に対する40℃でのテストオイルの粘度上昇の比を0.8未満とした。表2に示すように、実施例2の配合物はまた、ACEA A3仕様制限も達成することができた。
【0073】
実施例3では、20重量%の、15重量%を超えるノアク揮発度を有するグループIII基油を上記潤滑油組成物で使用した。この添加剤は、従来のOCP VIIに加えて、1.5重量%の高SSI分散剤VIIを含んでいた。実施例3は、58.1mm/秒の40℃での絶対的粘度上昇と、0.8未満の40℃での基準オイルの粘度上昇に対する40℃でのテストオイルの粘度上昇の比を有した。従って、実施例3の基油中の添加剤は、この潤滑油組成物をACEA A3仕様制限を満たすかまたは超えることを可能にした。従って、この従来のOCP VIIと1.5重量%の高SSI分散剤VIIを組合わせると、潤滑油組成物が、高いレベルの15重量%未満のノアク揮発度を有する比較的高価なグループIII基油に頼ることなく、ACEA A3 PEUGEOT TU5試験(pass)に合格できるようになると考えられる。
【0074】
実施例6は、15重量%の、16重量%のノアク揮発度を有するグループIII基油、15重量%の、8重量%のノアク揮発度を有するグループIII基油、および50重量%のグループII基油を有していた。実施例6はまた、従来のOCP VIIに加えて、1.5重量%の高SSI分散剤VIIも含んでいた。実施例6における40℃での絶対的粘度上昇は、56.0mm/秒であり、40℃での基準オイルに対する40℃でのテストオイルの粘度上昇の比は0.8未満であった。従って、実施例6の基油混合物中の添加剤もまた、ACEA A3およびA2要件に合格した。
【0075】
開示した添加剤組成物は、潤滑組成物にトップ処理剤(top treat)として添加してよい。トップ処理剤は、本願明細書で使用する場合、部分的にまたは完全に配合し
た(完成した)潤滑流体に加えてもよい流体組成物である。トップ処理剤は、いつでも加えてよい。例えば、トップ処理剤は、製造業者によって、例えば、工場での充填物(factory fill)として加えられてもよいし、エンドユーザーによって、例えば、点検時充填物(service fill)として加えられてもよいし、またはトップ処理剤の特性を流体に賦与したいと望む任意の他の関係者によって加えられてもよい。
【0076】
本願明細書に記載される潤滑組成物は、火花点火式内燃機関および圧縮点火式内燃機関、2サイクルエンジン、航空ピストン式(aviation piston)エンジン、船舶用ディーゼル機関および低負荷(low−load)用ディーゼル機関などのためのクランクケース潤滑油を含めた種々の用途で有効であり得る。
【0077】
最新の潤滑油などの潤滑油組成物は、予め形成された添加剤パッケージを精製基油原料または合成基油原料と組合せることによって作製され得る。潤滑油組成物はまた、種々の異なる潤滑油添加剤パッケージを含んでもよい。潤滑油添加剤は、液体の形で取り扱い測ることが容易になり得るため、通常は固体であるそれらの添加剤を少量の基油原料に溶解させることができる。
【0078】
本願明細書および添付の特許請求の範囲の目的のために、特記されない限り、量、割合(%)または比率を表すすべての数字、ならびに本願明細書および特許請求の範囲で使用する他の数値は、すべての場合で、用語「約」で修飾されていると理解されるものとする。従って、反対の意味で示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも記載された有効桁の数字を考慮して、そして通常の四捨五入技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0079】
本願明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1種の(a)」、「1種の(an)」および「その(the)」は、明示的にかつ明確に1つの指示対象に限定される場合でない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されたい。従って、例えば、「1種の抗酸化剤」というときは2種以上の異なる酸化防止剤を含む。本願明細書で使用する場合、用語「含む」およびその文法的活用形は、非限定的であることが意図されており、従って、ある列挙において1つの項目を記載することは、列挙された項目を置き換えることができるかまたはそれらに加えることができる他の類似の項目を排除することではない。
【0080】
特定の実施形態が記載されたが、現在は予見されない、または予見し得ない代替的態様、変更態様、バリエーション、改良された態様、および実質的な均等物は、出願人らまたは他の当業者に生じ得る。従って、提出された、そして補正され得る添付の特許請求の範囲は、すべてのかかる代替的態様、変更態様、バリエーション、改良された態様、および実質的な均等物を包含することが意図されている。
【0081】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
【0082】
1.潤滑油組成物であって、約30重量%未満の比較的低ノアク揮発度の基油と、粘度添加剤であって、少量の有効量の約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを含む粘度添加剤、とを含み、前記少量の犠牲的粘度指数向上剤添加剤は、約0.8未満の、RL216基準オイルの40℃での絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供するために有効である、潤滑油組成物。
【0083】
2.過塩基性清浄剤、酸化防止剤、分散剤、極圧剤、磨耗防止剤、あわ消し剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含む、上記1に記載の潤滑油組成物。
【0084】
3.前記約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤が、エチレンおよび約3〜約23個の炭素原子を有するオレフィンから誘導されるオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、上記1または上記2に記載の潤滑油組成物。
【0085】
4.前記粘度添加剤が、前記潤滑油組成物の総重量に対して約0.5〜約3.0重量%の前記犠牲的粘度指数向上剤と、約5〜約15重量%の前記オレフィンコポリマー粘度指数向上剤とを含む、上記3に記載の潤滑油組成物。
【0086】
5.前記基油が約7.0〜約15重量%の範囲のノアク揮発度を有し、前記基油が、30重量%未満の、グループIII基油、グループIV基油、およびこれらの混合物からなる群から選択される基油を含む、上記1から上記4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【0087】
6.前記犠牲的粘度指数向上剤が、ブチルメタクリレート;ラウリルメタクリレート;セチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから誘導される、せん断安定性のある分散剤ポリアルキル(メタ)アクリレート粘度指数向上剤を含む、上記1から上記5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【0088】
7.前記ポリメタクリレート粘度指数向上剤が、約250,000〜約400,000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、上記6に記載の潤滑油組成物。

【0089】
8.エンジンクランクケースであって、上記1から上記7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物を含み、前記潤滑油組成物が約90mm/秒未満の40℃での絶対的粘度上昇を提供することを特徴とする、エンジンクランクケース。
【0090】
9.潤滑油用の粘度添加剤濃縮物であって、少量の約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを含み、前記粘度添加剤濃縮物を含有する完全に配合された潤滑油は、主要量の、約7.0〜約15重量%の範囲のノアク揮発度を有する基油を含み、かつ前記添加剤濃縮物は約0.8未満の、RL216基準オイルの40℃での絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供するために有効であることを特徴とする、添加剤濃縮物。
【0091】
10.上記9に記載の添加剤濃縮物を含み、かつ過塩基性清浄剤、酸化防止剤、分散剤、極圧剤、磨耗防止剤、あわ消し剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含む、潤滑油添加剤。
【0092】
11.前記約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤が、エチレンおよび約3〜約23個の炭素原子を有するオレフィンから誘導されるオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、上記9または上記10に記載の添加剤濃縮物。
【0093】
12.前記添加剤濃縮物の総重量に対して約2.5〜約15重量%の犠牲的粘度指数向上剤と、約25〜約75重量%のオレフィンコポリマー粘度指数向上剤とを含む、上記11に記載の添加剤濃縮物。
【0094】
13.前記犠牲的粘度指数向上剤が、ブチルメタクリレート;ラウリルメタクリレート;セチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから誘導される、せん断安定性のある分散剤ポリアルキル(メタ)アクリレート粘度指数向上剤を含む、上記9から上記12のいずれか1項に記載の添加剤濃縮物。
【0095】
14.前記ポリメタクリレート粘度指数向上剤が、約250,000〜約400,000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、上記13に記載の添加剤濃縮物。
【0096】
15.エンジンを潤滑するための方法であって、上記1から上記7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物をエンジンクランクケースに提供するステップと、前記エンジンを運転するステップとを含む、方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であって、約30重量%未満の比較的低ノアク揮発度の基油と、粘度添加剤であって、少量の有効量の約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを含む粘度添加剤、とを含み、前記少量の犠牲的粘度指数向上剤添加剤は、約0.8未満の、RL216基準オイルの40℃での絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供するために有効である、潤滑油組成物。
【請求項2】
過塩基性清浄剤、酸化防止剤、分散剤、極圧剤、磨耗防止剤、あわ消し剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤が、エチレンおよび約3〜約23個の炭素原子を有するオレフィンから誘導されるオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、請求項1または請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記粘度添加剤が、前記潤滑油組成物の総重量に対して約0.5〜約3.0重量%の前記犠牲的粘度指数向上剤と、約5〜約15重量%の前記オレフィンコポリマー粘度指数向上剤とを含む、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記犠牲的粘度指数向上剤が、ブチルメタクリレート;ラウリルメタクリレート;セチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから誘導される、せん断安定性のある分散剤ポリアルキル(メタ)アクリレート粘度指数向上剤を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
潤滑油用の粘度添加剤濃縮物であって、少量の約45を超えるせん断安定性指数(SSI)を有する犠牲的ポリマー粘度指数向上剤と、主要量の約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤とを含み、前記粘度添加剤濃縮物を含有する完全に配合された潤滑油は、主要量の、約7.0〜約15重量%の範囲のノアク揮発度を有する基油を含み、かつ前記添加剤濃縮物は約0.8未満の、RL216基準オイルの40℃での絶対的粘度上昇に対する40℃での絶対的粘度上昇の比を有する潤滑油組成物を提供するために有効であることを特徴とする、添加剤濃縮物。
【請求項7】
前記約26未満のSSIを有する粘度指数向上剤が、エチレンおよび約3〜約23個の炭素原子を有するオレフィンから誘導されるオレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、請求項6に記載の添加剤濃縮物。
【請求項8】
前記添加剤濃縮物の総重量に対して約2.5〜約15重量%の犠牲的粘度指数向上剤と、約25〜約75重量%のオレフィンコポリマー粘度指数向上剤とを含む、請求項7に記載の添加剤濃縮物。
【請求項9】
前記犠牲的粘度指数向上剤が、ブチルメタクリレート;ラウリルメタクリレート;セチルメタクリレート、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから誘導される、せん断安定性のある分散剤ポリアルキル(メタ)アクリレート粘度指数向上剤を含む、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の添加剤濃縮物。
【請求項10】
前記ポリメタクリレート粘度指数向上剤が、約250,000〜約400,000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、請求項9に記載の添加剤濃縮物。

【公開番号】特開2010−43250(P2010−43250A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165737(P2009−165737)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】