説明

改善された耐塩性および熱安定性のポリアミド組成物

約25〜約55モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NHCHArCHNH− (I)
の繰り返し単位
および約45〜約75モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NH(CHNH− (II)
の繰り返し単位から本質的になる、少なくとも1つの半芳香族コポリアミドであって、
mが8、10、および/または12であり、nが6、10および/または12であり、Arがメタ−置換ベンゼン環であり;そして前記ポリアミドが225℃以下の融点を有するコポリアミドと;3個以上のヒドロキシル基を有し、2000未満の数平均分子量(M)を有する0.1〜15重量パーセントの1つ以上の多価アルコールとを含むポリアミド組成物が開示される。このポリアミド組成物を含む成形品または押出品もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された耐塩性および熱安定性を有するポリアミド組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含む、ポリマー材料は、自動車車両においておよびその他の目的のために幅広く使用されている。それらは軽量であり、複雑な部品にするのが比較的容易であり、それ故多くの場合に金属の代わりに好ましい。しかし、幾つかのポリマーに関連する問題は、ストレス下の部品がストレス下におよび無機塩と接触しているときに促進腐食を受ける、塩分ストレス(誘発)腐食割れ(SSCC)である。これは、部品の亀裂および早期破損を多くの場合にもたらす。
【0003】
自動車のアンダーフード領域では多くの場合に150℃より高い温度に達するので、自動車分野において耐高温性構造物を所有したいという願望が現在存在する。プラスチック部品が、自動車のアンダー・ザ・フード用途においてまたは電気/エレクトロニクス用途においてなど、長期間そのような高温に曝されるとき、機械的特性は一般に、ポリマーの熱酸化のために低下する傾向がある。この現象は熱老化と呼ばれる。
【0004】
ポリアミド6,6、ポリアミド6、ポリアミド6,10およびポリアミド6,12などのポリアミドは、車両部品およびその他のタイプの部品にされ、それらの部品として使用されてきた。ポリアミド6,10および6,12はSSCCに対してより耐性があると報告されている(たとえば特公昭32−71325号公報)が、これらのポリアミドのすべては、たとえば、車両およびそれらの構成部品の様々な部分が塩、たとえば、より寒い気候において雪および氷を融かすために使用される塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムなどの塩に時々曝されるので、そのような用途においてSSCCを起こしやすい。水および道路用塩と接触したスチールおよび様々な鉄ベース合金から製造されたフィッティングおよびフレーム構成部品などの金属部品の腐食はまた、塩の形成につながり得る。これらの塩は、順繰りに、ポリアミド部品を攻撃し、それらにSSCCを起こしやすくし得る。このように、SSCCに対するより良好な耐性を持ったポリアミド組成物が望まれる。
【0005】
米国特許第4,076,664号明細書は、塩化亜鉛に対して有利な耐性を有する三元ポリアミド樹脂を開示している。
【0006】
欧州特許出願第0272503号明細書は、ポリ(m−キシリレンセバカミド)(PA MXD10)とPA MXD10のそれより約20〜30℃高い融点を有する結晶性ポリアミドとを含む成形用ポリアミド樹脂を開示している。
【0007】
米国特許出願公開第2005/0234180号明細書は、優れた耐融雪塩性を有する樹脂成形品であって、前記物品が1〜60重量%の芳香族ポリアミド樹脂を含む成形品を開示している。
【0008】
熱老化特性を改善しようとする試みにおいて、熱安定剤(酸化防止剤とも言われる)を熱可塑性ポリアミド樹脂に添加することが慣例であった。そのような熱安定剤の例としては、ヒンダードフェノール酸化防止剤、アミン酸化防止剤およびリンベースの酸化防止剤が挙げられる。ポリアミド組成物については、3つのタイプの熱安定剤が、高温への暴露時に組成物の機械的特性を保持するために通常使用されている。1つは、前述のようなリンベースの相乗剤と任意選択的に組み合わせられたフェノール系酸化防止剤の使用、リンベースの相乗剤と任意選択的に組み合わせられた芳香族アミンの使用であり、第3のものは、銅塩および誘導体の使用である。フェノール系酸化防止剤は、120℃の老化温度以下で熱可塑性組成物の機械的/物理的特性を向上させることが知られている。
【0009】
米国特許第5,965,652号明細書は、その場形成されるコロイド状銅を含有する熱的に安定なポリアミド成形組成物を開示している。しかし、開示された組成物は、140℃での熱老化について衝撃強度のみの保持を示す。
【0010】
英国特許第839,067号明細書は、銅塩と有機強塩基のハロゲン化物とを含むポリアミド組成物を開示している。
【0011】
欧州特許第1041109号明細書は、良好な流動性および機械的強度を有し、そして射出溶接技法に有用である、ポリアミド樹脂、150〜280℃の融点を有する多価アルコールを含むポリアミド組成物を開示している。
【0012】
米国特許出願公開第2010/0029819号明細書は、熱可塑性樹脂、3個以上のヒドロキシル基を有する1つ以上の多価アルコールを含む熱可塑性組成物を含む、高い熱安定性を有する熱可塑性物品を開示している。
【0013】
米国特許出願公開第2010/0271305号明細書は、ポリアミド樹脂、3個以上のヒドロキシル基を有する1つ以上の多価アルコール;第二級アリールアミンおよびヒンダードアミン光安定剤およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の共安定剤;および10〜60重量パーセントの1つ以上の強化剤を含む熱可塑性組成物を含む、高い熱安定性を有する熱可塑性物品を開示している。
【発明の概要】
【0014】
不幸にも、既存技術では、ポリアミド組成物をベースとする成形品は、長期高温暴露時にそれらの機械的特性の受け入れられない劣化に悩まされるか、それらは、部品が道路用塩に曝されることになる多くの自動車用途にとって必要な耐塩性特性を欠くかのどちらかである。改善された長期耐熱性および耐塩性を有する熱可塑性ポリアミド組成物が必要とされている。
【0015】
(a)25〜55モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NHCHArCHNH− (I)
の繰り返し単位
および45〜75モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NH(CHNH− (II)
の繰り返し単位から本質的になる少なくとも1つの半芳香族コポリアミドであって、
mが8、10、および/または12であり、nが6、10および/または12であり、Arがメタ−置換ベンゼン環であり;そして前記ポリアミドが225℃以下の融点を有するコポリアミドと;
(b)3個以上のヒドロキシル基を有し、2000未満の数平均分子量(M)を有する0.1〜15重量パーセントの1つ以上の多価アルコールと
を含むポリアミド組成物が開示される。
【0016】
上に開示されるポリアミド組成物を含む成形品および押出品もまた開示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書においては、ポリアミド組成物に含まれるすべての成分の述べられる重量パーセントは、ポリアミド組成物の総重量を基準としている。
【0018】
ポリアミド組成物において有用な半芳香族コポリアミドは、約225℃以下の融点を有する。本明細書において融点およびガラス転移は、第1加熱走査において10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定法(DSC)で測定される通りであり、ここで、融点は吸熱ピークの最高値で取られ、ガラス転移は、明らかな場合、エンタルピーの変化の中点と考えられる。
【0019】
本明細書において開示されるポリアミド組成物は、
(a)25〜55モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NHCHArCHNH− (I)
の繰り返し単位
および45〜75モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NH(CHNH− (II)
の繰り返し単位から本質的になる少なくとも1つの半芳香族コポリアミドであって、
mが8、10、および/または12であり、nが6、10および/または12であり、Arがメタ−置換ベンゼン環であり;そして前記ポリアミドが225℃以下の融点を有するコポリアミドを含む。
【0020】
用語「mが8、10、および/または12である」は、mが、8、10および12からなる群から選択される1つ以上の整数であることを意味する。用語「nが6、10および/または12である」は、nが、6、10および12からなる群から選択される1つ以上の整数であることを意味する。
【0021】
本明細書において用語「から本質的になる1つの半芳香族コポリアミド」は、コポリアミドが、式(I)および(II)に規定されるもの以外の繰り返し単位が存在してもよいが、本明細書に開示される耐塩性キャラクタリゼーションで測定されるように、それらが組成物の耐塩性特性に影響を及ぼさない程度にすぎないことを意味する。
【0022】
半芳香族コポリアミドは、31〜55モルパーセントの式(I)の繰り返し単位および45〜69モルパーセントの式(II)の繰り返し単位から本質的になってもよい。
【0023】
半芳香族コポリアミドは、35〜55モルパーセントの式(I)の繰り返し単位および45〜65モルパーセントの式(II)の繰り返し単位から本質的になってもよい。
【0024】
好ましいコポリアミドは、mが、それぞれ、8または10に等しいものである。その他の好ましいコポリアミドは、nが、それぞれ、6または10に等しいものである。その他の好ましいポリアミドは、mが8に等しく、nが6に等しい;およびmが10に等しく、nが6に等しいものである。その他の好ましいポリアミドは、mが10に等しく、nが6等しい;およびmが10に等しく、nが10に等しいものである。
【0025】
半芳香族コポリアミドは、上に開示された指定モル比の脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、およびメタ−キシリレンジアミン(MXD)の混合物の重縮合から形成される。コポリアミドを製造するのに有用なジカルボン酸モノマーとしては、デカン二酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、およびテトラデカン二酸(C14)が挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、およびドデカメチレンジアミンが挙げられる。
【0026】
次のリストは、半芳香族コポリアミド(PA)中のモノマーおよび繰り返し単位を特定するために使用される省略形を例示する:
HMD ヘキサメチレンジアミン(または二酸との組み合わせで使用されるとき6)
AA アジピン酸
DMD デカメチレンジアミン
DDMD ドデカメチレンジアミン
DDA デカン二酸
DDDA ドデカン二酸
TDDA テトラデカン二酸
MXD メタ−キシリレンジアミン
MXD6 MXDとAAとから形成されるポリマー繰り返し単位
MXD10 MXDとDDAとから形成されるポリマー繰り返し単位
MXD12 MXDとDDDAとから形成されるポリマー繰り返し単位
610 HMDとDDAとから形成されるポリマー繰り返し単位
612 HMDとDDDAとから形成されるポリマー繰り返し単位
1010 DDとDDAとから形成されるポリマー繰り返し単位
1012 DMDとDDDAとから形成されるポリマー繰り返し単位
【0027】
コポリアミドは、たとえば、オートクレーブを用いる回分法かまたは連続法を用いるなどの、当業者に公知のあらゆる方法によって製造されてもよい。たとえば、Kohan,M.I.Ed.Nylon Plastics Handbook,Hanser:Munich,1995;pp.13−32を参照されたい。滑剤、消泡剤、およびエンドキャッピング剤などの添加剤が重合混合物に添加されてもよい。
【0028】
ポリアミド組成物は、上に開示されたような、約20〜99.9重量パーセントの少なくとも1つの半芳香族コポリアミドを含んでもよい。その他の実施形態は、40〜99.9重量パーセント、60〜99.9重量パーセント;および85〜99.9重量パーセントの少なくとも1つの半芳香族コポリアミドを含む。
【0029】
ポリアミド組成物は、3個以上のヒドロキシル基を有し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でポリマー材料について測定されるように2000未満の2000未満の数平均分子量(M)を有する0.1〜15重量パーセントの1つ以上の多価アルコールを含む。
【0030】
多価アルコールは、3個以上のヒドロキシル基を含有する脂肪族ヒドロキシル化合物、3個以上のヒドロキシル基を含有する脂肪族−脂環式化合物、3個以上のヒドロキシル基を含有する脂環式化合物、芳香族およびサッカリドから選択されてもよい。
【0031】
多価アルコール中の脂肪族鎖は、炭素原子のみならず、たとえば、窒素、酸素および硫黄原子から選択されてもよい1つ以上のヘテロ原子をも含むことができる。多価アルコール中に存在する脂環式環は、単環式または二環式もしくは多環式環システムの一部であることができ、炭素環または複素環であってもよい。多価アルコール中に存在する複素環は、単環式または二環式もしくは多環式環システムの一部であることができ、たとえば、窒素、酸素および硫黄原子から選択されてもよい1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。1つ以上の多価アルコールは、エーテル、カルボン酸、カルボン酸アミドまたはカルボン酸エステル基などの、1つ以上の置換基を含有してもよい。
【0032】
3個以上のヒドロキシル基を含有する多価アルコールの例としては、限定なしに、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,3−ジ−(2’−ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン−1−オール、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリス−(ヒドロキシメチル)エタン、3−(2’−ヒドロキシエトキシ)−プロパン−1,2−ジオール、3−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−プロパン−1,2−ジオール、2−(2’−ヒドロキシエトキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、6−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシエトキシ)−メチル]−エタン、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシプロポキシ)−メチル]−プロパン、1,1,1−トリス−(4’−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス−(ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1,3−トリス−(ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、1,1,4−トリス−(ジヒドロキシフェニル)−ブタン、1,1,5−トリス−(ヒドロキシフェニル)−3−メチルペンタン、ジ−トリメチロプロパン(di−trimethylopropane)、トリメチロールプロパンエトキシレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレートなどの、トリオール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリペンタエリスリトールなどのポリオール;ならびにシクロデキストリン、D−マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、フラクトース、キシロース、アラビノース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−またはL−アラビトール、キシリトール、イジトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、ギリトール、エリスリトール、トレイトール、およびD−グロン−y−ラクトンなどのサッカリドが挙げられる。
【0033】
好ましい多価アルコールとしては、少なくとも1個の原子によって互いに分離されているそれぞれの炭素原子に結合している一対のヒドロキシル基を有するものが挙げられる。特に好ましい多価アルコールは、一対のヒドロキシル基がただ一つの炭素原子によって互いに分離されているそれぞれの炭素原子に結合しているものである。
【0034】
好ましくは、ポリアミド組成物に使用される多価アルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ジ−トリメチロールプロパン、D−マンニトール、D−ソルビトールおよびキシリトールである。より好ましくは、使用される多価アルコールは、ジペンタエリスリトールおよび/またはトリペンタエリスリトールである。最も好ましい多価アルコールはジペンタエリスリトールである。
【0035】
様々な実施形態においてポリアミド組成物中の前記多価アルコールの含有率は、0.25〜15重量パーセント、好ましくは0.25〜8重量パーセント、より好ましくは0.25〜5、および1〜4重量パーセントである。
【0036】
ポリアミド組成物は、ポリマー強靱化剤、可塑剤、および強化剤からなる群から選択される添加剤を含む添加剤を任意選択的に含んでもよい。
【0037】
ポリアミド組成物は、任意選択的に、反応性官能基および/またはカルボン酸の金属塩を含む0〜50重量パーセントのポリマー強靱化剤を含む。一実施形態においてポリアミド組成物は、エチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、および任意選択的に1つ以上の(メタ)アクリレートエステルのコポリマー;不飽和カルボン酸無水物でグラフト化されたエチレン/α−オレフィンまたはエチレン/α−オレフィン/ジエンコポリマー;エチレン、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、および任意選択的に1つ以上の(メタ)アクリレートエステルのコポリマー;ならびに相当するアイオノマーを形成するためにZn、Li、MgまたはMn化合物と反応させられたエチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーからなる群から選択される10〜35重量パーセントのポリマー強靱化剤を含む。
【0038】
本明細書において用語「(メタ)アクリル」および「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸およびメタクリル酸ならびに、それぞれ、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルを包含する。
【0039】
ポリアミド組成物は、少なくとも1つの可塑剤を任意選択的に含んでもよい。可塑剤は好ましくはコポリアミドと混和性であろう。好適な可塑剤の例としては、スルホンアミド、好ましくはベンゼンスルホンアミド類およびトルエンスルホンアミド類などの芳香族スルホンアミドが挙げられる。好適なスルホンアミドの例としては、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドなどの、N−アルキルベンゼンスルホンアミドおよびトルエンスルホンアミドが挙げられる。N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、およびN−エチル−p−トルエンスルホンアミドが好ましい。
【0040】
可塑剤は、ポリマーを可塑剤および、任意選択的に、その他の原料と溶融ブレンドすることによって、または重合中に組成物中に組み入れられてもよい。可塑剤が重合中に組み入れられる場合、コポリアミドモノマーが重合サイクルを開始する前に1つ以上の可塑剤とブレンドされ、このブレンドが重合反応器に導入される。あるいは、可塑剤は、重合サイクル中に反応器に添加することができる。
【0041】
使用されるとき、可塑剤は、約1〜約20重量パーセントで、またはより好ましくは約6〜約18重量パーセントで、またはその上より好ましくは約8〜約15重量パーセントで組成物中に存在するであろう。
【0042】
ポリアミド組成物は、0〜約60重量パーセント、好ましくは約10〜60重量パーセント、15〜50重量パーセントの1つ以上の強化剤を任意選択的に含んでもよい。強化剤はあらゆる充填剤であってもよいが、炭酸カルシウム、円形および非円形横断面のガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボンファイバー、タルク、雲母、ウォラストナイト、カ焼粘土、カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、アルミニウム炭酸ナトリウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される。ガラス繊維、ガラスフレーク、タルク、および雲母が好ましい強化剤である。
【0043】
ポリアミド組成物は、熱安定剤、酸化安定剤、および/または光安定剤;着色剤;滑剤;離型剤などの追加の添加剤を任意選択的に含んでもよい。そのような添加剤は、結果として生じる材料の所望の特性に応じて添加することができ、これらの量対所望の特性のコントロールは当業者の知識内である。
【0044】
ポリアミド組成物は、第二級アリールアミンおよびヒンダードアミン光安定剤(HALS)、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、熱重量分析(TGA)によって測定されるような、少なくとも250℃の10%減量温度を有する0.1〜3重量パーセントの1つ以上の共安定剤を任意選択的に含んでもよい。本発明の目的のためには、TGA減量は、0.8mL/秒の適切な流量の、空気パージ流れ中、10℃/分の加熱速度を用いて、ASTM D 3850−94に従って測定される。共安定剤は、少なくとも270℃、より好ましくは290℃、320℃、および340℃、最も好ましくは少なくとも350℃の、TGAによって測定されるような、10%減量温度を好ましくは有する。
【0045】
第二級アリールアミンとHALSとの混合物が使用されてもよい。好ましい実施形態は、少なくとも2つの共安定剤、第二級アリールアミンから選択される少なくとも1つと;上に開示されるような、HALSの群から選択される少なくとも1つとを含み、ここで、共安定剤の混合物の全重量パーセントは、少なくとも0.5重量パーセント、好ましくは少なくとも0.9重量パーセントである。
【0046】
一実施形態においてポリアミド組成物は、原子吸光分析で測定されるように25ppm未満の銅を含む。
【0047】
本明細書においてポリアミド組成物は、すべてのポリマー原料が十分に混合され、そしてすべての非ポリマー原料がポリマーマトリックス中に十分に分散されている、溶融ブレンディングによる混合物である。あらゆる溶融ブレンディング法が、本発明のポリマー原料と非ポリマー原料とを混合するために用いられてもよい。たとえば、ポリマー原料および非ポリマー原料は、単軸スクリュー押出機もしくは二軸スクリュー押出機、かき混ぜ機、単軸もしくは二軸スクリュー混練機、またはBanburyミキサーなどの溶融ミキサーへ供給されてもよく、添加工程は、すべての原料の同時添加またはバッチでの順次添加であってもよい。ポリマー原料および非ポリマー原料がバッチで順次加えられるとき、ポリマー原料および/または非ポリマー原料の一部が先ず加えられ、次に、十分に混合された組成物が得られるまで、その後加えられる残りのポリマー原料および非ポリマー原料と溶融混合される。強化充填剤が長い物理的形状(たとえば、長いガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形が強化組成物を調製するために用いられてもよい。
【0048】
別の態様においては、本発明は、本発明のポリアミド組成物を造形することによる物品の製造方法に関する。物品の例は、フィルムまたは積層体、自動車部品もしくはエンジン部品または電気/エレクトロニクス部品である。「造形」とは、たとえば押出、射出成形、熱成形、圧縮成形またはブロー成形などの、あらゆる造形技法を意味する。好ましくは、物品は、射出成形またはブロー成形によって造形される。
【0049】
本明細書において開示される熱可塑性成形品または押出品は、次の要件の1つ以上を満たす多くの車両構成部品において用途がある可能性がある:耐衝撃性要件;(たとえば、従来の金属を上回る)著しい減量;耐高温性;耐油環境性;冷却液および道路用塩などの化学剤への耐性;ならびによりコンパクトなおよび総合的設計を可能にする防音。具体的な熱可塑性成形品または押出品は、給気冷却器(CAC);シリンダーヘッドカバー(CHC);オイルパン;サーモスタットおよびヒーターハウジングおよび冷却液ポンプを含む、エンジン冷却システム;マフラーと触媒コンバーター用のハウジングとを含む排気システム;吸気マニホールド(AIM);ならびにタイミングチェーンベルト前面カバーからなる群から選択される。本明細書において開示されるその他の熱可塑性成形品または押出品は、液体およびガスを輸送するためのパイプ、パイプのための内部内張、燃料ライン、空気ブレーキ管、冷却液パイプ、エアダクト、気送管、油圧ハウジング(hydraulic houses)、ケーブルカバー、ケーブルタイ、連結装置、キャニスター、およびプッシュプルケーブルからなる群から選択される。
【実施例】
【0050】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。以下の実施例は例示目的のためにすぎず、本発明をそれに限定するために用いられないことが理解されるべきである。
【0051】
方法
融点
本明細書において融点は、第1加熱走査において10℃/分の走査速度にてDSCで測定される通りであり、ここで、融点は吸熱ピークの最高値で取られる。
【0052】
固有粘度
固有粘度(IV)は、25℃でm−クレゾール中のコポリアミドの0.5%溶液に関して測定した。
【0053】
配合方法
すべての実施例および比較例は、約300rpmのスクリュー速度、15.0kg/時の押出量および約260℃の手動により測定される溶融温度を用いて約250℃バレル設定で動作する25mm二軸スクリュー押出機(CoperionによるZSK 25)で表にリストされる原料を溶融ブレンドすることによって調製した。表に示される原料量は、熱可塑性組成物の総重量に基づく重量パーセント単位で示す。
【0054】
配合混合物をレースまたはストランドの形態で押し出し、水浴中で冷却し、切り刻んで顆粒にし、水分取込みを防ぐために密封アルミニウム内張袋に入れた。冷却および切断条件は、材料が0.20重量%の水分レベルより下に保たれることを確保するために調節した。
【0055】
物理的特性測定
ポリアミド組成物を射出成形して試験片にした。引張および曲げ特性は、それぞれ、ASTM D638およびASTM D790試験手順により測定した。引張強度およびヤング率は、50mm/分(2インチ/分)のクロスヘッド速度でASTM D638−02a試験手順によって115mm(4.5インチ)長さのおよび3.2mm(0.13インチ)厚さのタイプIV引張試験片を使用して測定した。曲げ弾性率は、50mm(2インチ)スパン、5mm(0.2インチ)負荷および支持体突出部半径ならびに1.3mm/分(0.05インチ/分)クロスヘッド速度でASTM D790試験手順によって3.2mm(0.13インチ)厚さの試験片を使用して測定した。
【0056】
エアオーブン老化(AOA)
試験検体を再循環エアオーブン中で熱老化させた。様々な熱老化時間で、試験検体をオーブンから取り出し、室温まで放冷し、いつでも試験できる状態になるまでアルミニウム内張袋中へ密封した。5つの検体から得られた平均値を表に示す。
【0057】
引張強度(TS)および破断点伸び(EL)の保持率は、100%であると考えられる検体非熱老化対照検体の値と比べた500時間および1000時間熱老化後の引張強度および破断点伸びの百分率に相当する。
【0058】
耐塩性キャラクタリゼーション
耐応力亀裂性用についての方法は、石鹸、油、洗剤などの表面活性剤の存在下にエチレンプラスチックの環境応力亀裂の測定方法を提供するASTM D1693に基づく。この手順を、次の通り塩溶液に対するコポリアミドの耐塩応力亀裂性を測定するために改良した。
【0059】
50mm×12mm×3.2mmの大きさがある長方形の試験片を試験のために使用した。制御切れ目を、標準手順により各成形試験片の面に切り込み、試験片を、切れ目が外側を向く状態でU字形に曲げ、標準手順により真ちゅう検体ホルダー中へ置いた。少なくとも5つの試験片を各コポリマーについて使用した。ホルダーを大きな試験管の中へ置いた。
【0060】
使用される試験流体は、無水塩化亜鉛を50:50の重量比で水に溶解させることによって調製された50重量パーセントの塩化亜鉛溶液であった。検体ホルダーを含有する試験管を、少なくとも12mmの流体が最上部試験片の上方にあるように試験片を完全に浸漬する新たに調製した塩溶液で満たした。試験管を、50℃に維持される循環エアオーブン中に直立して置いた。試験片を亀裂の成長について定期的に検査した。
【0061】
原材料
PA612/MXD12(70/30モル比)は、次の手順に従って製造した:
10Lのオートクレーブに、ドデカン二酸(2548g)、メタ−キシリレンジアミンジアミン(458g)、78重量%のヘキサメチレンジアミン(HMD)を含有する水溶液(1168g)、1重量パーセントの次亜リン酸ナトリウムを含有する水溶液(70g)、1重量パーセントのCarbowax 8000を含有する水溶液(10g)、および水(2330g)を装入した。オートクレーブかき混ぜ機を5rpmに設定し、内容物を、10分間10psiでの窒素でパージした。かき混ぜ機を次に50rpmに設定し、圧力調整バルブを1.72MPa(250psi)に設定し、オートクレーブを加熱した。圧力を1.72MPaに上昇するに任せ、その時点で圧力を1.72MPaに維持するために水蒸気をガス抜きした。内容物の温度を240℃に上昇するに任せた。圧力を次に約45分にわたって0psigに下げた。この時間中に、内容物の温度は260℃に上昇した。オートクレーブ圧力を、真空を適用することによって5psiaに下げ、そこに20分間保持した。オートクレーブを次に65psia窒素で加圧し、融解ポリマーを押し出してストランドにし、冷水で急冷し、切断してペレットにした。
【0062】
得られたコポリアミドは、1.30dl/gの固有粘度(IV)を有した。このポリマーは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるように、195℃の融点を有した。
【0063】
PA MXD6は、Mitsubishi Gas Chemical America Inc.655 Third Avenue,24th Floor,New York,NY 10017から入手可能な、ナイロンMXD6 Grade S6001である。
【0064】
Cu熱安定剤は、1.0部のステアレートワックスバインダー中の7部のヨウ化カリウムと1部のヨウ化銅との混合物を意味する。
【0065】
Naugard(登録商標)445ヒンダードアミンは、Uniroyal Chemical Company,Middlebury,Connから商業的に入手可能な4,4’ジ(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを意味する。
【0066】
Akrochem 383SWPは、Akrochem Corp.,Akron,OH 44304から入手可能な4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)ヒンダードビスフェノールを意味する。
【0067】
Irgafos(登録商標)168ホスファイトプロセス安定剤は、Ciba Specialty Chemicalsによって供給されるトリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートを意味する。
【0068】
C−Blackは、本件特許出願人によって提供されるZYTFE3800ブラックコンセントレートを意味する。
【0069】
DPEは、Di−Penta 93としてPerstorp Specialty Chemicals AB,Perstorp,Sweden製であったジペンタエリスリトールを意味する。
【0070】
実施例1および比較例C1〜C4
表1にリストされる組成物を溶融ブレンドし、成形してISO試験片にした。試料を1000時間までの期間エアオーブン老化にかけた。
【0071】
その他の試料は、168時間までの塩化亜鉛浸漬ストレス試験にかけた。物理的試験結果を表1にリストする。
【0072】
結果は、実施例1が150℃での1000時間のAOA後に引張強度の120%保持率を維持することを示すが;比較例C−1およびC−2が、同じ条件下に、それぞれ、引張強度の60および55%保持率を示す。これは、実施例1が従来の熱安定剤組み合わせを有するものと比べてAOA性能の著しいそして予想外の改善を見せることを示す。
【0073】
比較例C−4は、従来のMXD6ホモポリマーを含む比較例C−3のそれより塩化亜鉛浸漬安定性の著しい改善を示す。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)25〜55モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NHCHArCHNH− (I)
の繰り返し単位、および
45〜75モルパーセントの式
−C(O)(CHC(O)NH(CHNH− (II)
の繰り返し単位
から本質的になる少なくとも1つの半芳香族コポリアミドであって、
mが8、10、および/または12であり、nが6、10および/または12であり、Arがメタ−置換ベンゼン環であり;および前記ポリアミドが225℃以下の融点を有するコポリアミドと;
(b)3個以上のヒドロキシル基を有し、2000未満の数平均分子量(M)を有する0.1〜15重量パーセントの1種または複数種の多価アルコールと
を含むポリアミド組成物。
【請求項2】
前記半芳香族コポリアミドが10に等しいmを有する請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記半芳香族コポリアミドが8に等しいmを有する請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記半芳香族コポリアミドが6に等しいnを有する請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記半芳香族コポリアミドが10に等しいnを有する請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記多価アルコールが、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ジ−トリメチロプロパン(di−trimethylopropane)、D−マンニトール、D−ソルビトールおよびキシリトールからなる群から選択される請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
エチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、および任意選択的に1種または複数種の(メタ)アクリレートエステルのコポリマー;不飽和カルボン酸無水物でグラフト化された、エチレン/α−オレフィンコポリマーまたはエチレン/α−オレフィン/ジエンコポリマー;エチレン、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、および任意選択的に1種または複数種の(メタ)アクリレートエステルのコポリマー;ならびに相当するアイオノマーを形成するためにZn、Li、MgまたはMn化合物と反応させられたエチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーからなる群から選択される10〜35重量パーセントのポリマー強靱化剤をさらに含む請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
炭酸カルシウム、円形および非円形断面のガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボンファイバー、タルク、雲母、ウォラストナイト、カ焼粘土、カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸アルミニウムナトリウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数種の強化剤をさらに含む、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のポリアミド組成物を含む成形品または押出品。

【公表番号】特表2013−518174(P2013−518174A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551321(P2012−551321)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022925
【国際公開番号】WO2011/094542
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】