説明

改善された耐引掻き性および表面損傷抵抗の低VOCコーティング組成物

著しく低減されたVOCおよび向上した耐引掻き性、耐腐食性、および表面損傷抵抗を有する、着色ベースコート上に塗布されるクリアコーティングとして特に有用な、硬化性コーティング組成物、およびその塗布方法が本発明にしたがって提供され、その硬化性組成物は、カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料と、カルバメート基と反応性の基を含む架橋性成分とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低減されたVOCおよび向上した耐引掻き性および表面損傷抵抗、ならびに酸腐食耐性を有する、コーティング組成物、特にカラーコートまたはベースコートとして使用されるシラン官能性カルバメート樹脂を含有するコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの地理学的領域において、酸性雨および他の大気汚染物質によって、自動車およびトラックに使用される仕上げ塗装に水滴跡および酸腐食が生じていた。仕上げ塗装を塗布し、硬化させた直後の期間には、はん点(spotting)および腐食に対する感受性が最も高い。自動車およびトラックの外装に現在使用されている、好んで選ばれる仕上げ塗装は、耐腐食性クリアコート/カラーコート仕上げ塗装であり、着色されたカラーコーティングまたはベースコーティング上にクリアコーティングを塗布して、カラーコートに対する保護を提供し、仕上げ塗装全体の外観、特にイメージの光沢および明瞭さを向上させる。
【0003】
いくつかの耐腐食性クリアコートの問題は、乏しい耐引掻き性および表面損傷抵抗である。これは特に、車両が組立て工場で完成し、続いて新たな自動車販売業者に引き渡されるまでの後硬化期間における場合である。かかる引掻きおよび表面損傷は、最近硬化された仕上げ塗装に、洗浄、拭い取り、または宝飾品との接触などの一般的な機械的力をかけることによって生じる。
【0004】
コーティング中のVOCまたは揮発性有機化合物含有率の低減は、OEM仕上げ塗装市場において一般的な指示であり、要求であった。供給メーカーおよびOEM取引先は、あらゆる機会にVOC含有率を低減するよう常に奨励されている。このように、新しい製品の提供においてはVOCを低減することが非常に重要視されている。
【0005】
多くの耐腐食性クリアコーティング組成物が記述されており、製品化されている。しかしながら、上記の特許で示される組成物のいずれも、著しくVOCが低減され、耐腐食性、表面損傷抵抗および耐引掻き性も向上した、自動車OEMクリアコーティング組成物に望まれる特性の必要な組み合わせを持っていない。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,235,858号明細書
【特許文献2】米国特許第5,162,426号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、環境腐食ならびに引掻きおよび表面損傷に対する耐性があると同時に、著しく低減されたVOC含有率を示す仕上げ塗装を形成するコーティング組成物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料と、カルバメート官能基と反応性の基を有する架橋性成分とを含有する硬化性コーティング組成物を提供する。
【0009】
本発明は、上記のコーティング組成物で基材をコーティングする方法も含む。特許請求される本発明は、上記の組成物によるコーティングをそれに付着させた基材をさらに含む。
【0010】
本発明の組成物は、着色モノコートまたはベースコートとして有用であり、着色ベースコート上にクリアコートを形成するのに特に有用である。かかるクリアトップコートは、水性もしくは有機溶剤系カラーコートまたは粉体カラーコートなど、様々なカラーコートの上に塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のコーティング組成物は、ベースコート−クリアコート複合コーティングにおいて、着色モノコート、またはクリアコートまたは着色カラーコートとして有用である。特に、本発明のコーティング組成物は、着色カラーコート上に塗布されるクリアコーティング組成物として最も有用である。ベースコート−クリアコート仕上げ塗装は従来から、自動車およびトラックの外装に使用されている。本発明のコーティング組成物は、向上した耐引掻き性および表面損傷抵抗、耐環境腐食性、ならびに低減された揮発性有機化合物含有率(VOC)を有する、クリア仕上げ塗装を形成する。
【0012】
本発明は、ヒドロキシル官能基をそれに組み込む従来のアプローチと対照的に、カルバメート官能性でもあるオリゴマーまたはポリマー材料中にシラン官能基を組み込むことによって、著しく低減された溶液粘度を有すると同時に、標準のモノマーまたはポリマーメラミン架橋剤での優れた架橋能力を有するオリゴマーまたはポリマー材料が得られるという発見に基づく。そして次に、かかる低減されたポリマー粘度によって、コーティング組成物の粘度が低減され、または逆に言えば、スプレー固形分(spray solid)が高くなり、揮発性有機化合物含有率(VOC)が低くなる。さらに、コーティング組成物中にカルバメート基が存在することによってさらに、表面損傷抵抗および耐引掻き性が改善される。このコーティングは、自動車用クリアコーティング組成物において特に有用である。
【0013】
本発明の他の重要な特徴は、カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料を効率的な一工程で製造することができることであり、その工程では、単官能性アルコールを含有する溶剤の還流プレミックスに、モノマー混合物を徐々に加える。米国特許公報(特許文献1)には、自動車用クリアコートにおいて有用なカルバメート官能性アクリルポリマーの製造が記述されている。しかしながら、そのポリマーは2工程で製造される。その第1工程は、主要なカルバメート官能性アクリルモノマーの製造を含む。第2工程では、カルバメートモノマーを他のコモノマーとラジカル共重合させ、カルバメート官能性アクリル樹脂が形成される。しかしながら、本発明は、カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料を製造するための、新規な、かつ極めてより効率的な一工程重合を提供する。
【0014】
本発明のクリアコート組成物は、塗膜形成バインダー約40〜80重量%、好ましくは55〜70重量%を含有し、それに対応して、通常バインダーのための溶媒であり、かつ35℃以上で揮発する揮発性有機液体担体約20〜60重量%、好ましくは30〜45重量%を含有する。このクリアコートは、分散液の形をとることもできる。クリアコート組成物の塗膜形成バインダーは、バインダーの重量を基準として、カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料(またはシラン官能性カルバメート樹脂)40〜85重量%を含有し、それに対応して、バインダーの重量を基準として、カルバメート官能基と反応性の基を有する架橋性成分15〜60重量%を含有する。
【0015】
好ましい実施形態において、シラン官能性カルバメート樹脂は、アルキルメタアクリレート、アルキルアクリレートであって、各々が、アルキル基中に炭素原子1〜12個を有するもの、または他の重合性非シラン含有モノマーからなる群から選択される重合モノマー約10〜85重量%、好ましくは40〜70重量%;モノエチレン性不飽和シランモノマー約10〜65重量%、好ましくは20〜40重量%;モノエチレン性不飽和イソシアネートモノマー約5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%;および前記モノエチレン性不飽和イソシアネートモノマー上のイソシアネート基と反応する、有効量の、好ましくは少なくともモル当量の単官能性アルコール;の重合生成物である。シラン官能性カルバメート樹脂は、標準としてポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際に、約500〜30,000、好ましくは約1,000〜20,000、さらに好ましくは3,000〜15,000の重量平均分子量を有する。
【0016】
オルガノシランポリマーを形成するのに使用することができる、適切なアルキルメタクリレートモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等である。適切なアルキルアクリレートモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソ−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、およびt−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなどの脂環式メタクリレートおよびアクリレートも使用することができる。ベンジルアクリレートおよびベンジルメタクリレートなどのアリールアクリレートおよびアリールメタクリレートも使用することができる。上記のモノマーの2つ以上の混合物もまた適している。
【0017】
アルキルアクリレートおよびメタクリレートの他に、硬さ;外観;表面損傷抵抗、耐腐食性および耐引掻き性等の所望の特性を達成するために、ポリマーの約20重量%までの他の重合性非シラン含有モノマーをアクリロシラン(acrylosilane)ポリマーにおいて使用することができる。かかる他のモノマーの例としては、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0018】
アクリロシランポリマーを形成するのに有用なシラン含有モノマーは、以下の構造式:
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R1は、H、CH3、またはCH3CH2のいずれかであり;R2は、CH3、CH3CH2、CH3O、またはCH3CH2Oのいずれかであり;R3およびR4は、CH3またはCH3CH2;であり;nは、0または1〜10の正の整数である)を有するアルコキシシランである。
【0021】
かかるアルコキシシランの一般的な例は、γ−アクリロキシプロピル−トリメトキシシランなどのアクリロキシアルキルシラン、およびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのメタクリロキシアルキルシランである。
【0022】
他の適切なアルコキシシランモノマーは、以下の構造式:
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、R2は、CH3、CH3CH2、CH3O、またはCH3CH2Oのいずれかであり;R3およびR4は、CH3またはCH3CH2;であり;nは、0または1〜10の正の整数である)を有する。
【0025】
かかるアルコキシシランの例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどのビニルアルコキシシランである。かかるアルコキシシランの他の例は、アリルトリメトキシシランおよびアリルトリエトキシシランなどのアリルアルコキシシランである。
【0026】
さらに、その他の有用なシラン含有モノマーは、アクリロキシシラン、メタクリロキシシランおよびビニルアセトキシシラン、例えばビニルメチルジアセトキシシラン、アクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、およびメタクリロキシプロピルトリアセトキシシランを含む、アシルオキシシランである。シラン含有モノマーの混合物も適している。
【0027】
シランポリマーの形成に、シラン官能性マクロモノマーも使用することができる。これらのマクロモノマーは、エポキシドまたはイソシアネートなどの反応性基を有するシラン含有化合物と、シランモノマーと共反応性の反応性基、一般にヒドロキシルもしくはエポキシド基を有するエチレン性不飽和非シラン含有モノマーとの反応生成物である。有用なマクロモノマーの一例は、アルキル基中に炭素原子1〜8個を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートなどのヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマーと、イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアナトアルキルアルコキシシランとの反応生成物である。
【0028】
以下の構造式:
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、R1は、HまたはCH3のいずれかであり;R2は、CH3、CH3CH2、CH3O、またはCH3CH2Oのいずれかであり;R3およびR4は、CH3またはCH3CH2;であり;R5は、炭素原子1〜8個を有するアルキレン基であり;nは、0または1〜10の正の整数である)を有するマクロモノマーは、かかるシラン官能性マクロモノマーの典型である。
【0031】
本発明のシラン官能性カルバメート樹脂は、モノエチレン性不飽和イソシアネートモノマーを用いて製造することができる。適切なモノエチレン性不飽和イソシアネートモノマーとしては、イソシアナトエチルメタクリレート、ジメチルメタ−イソプロペニルベンジルイソシアネート[メタ−TMI]等が挙げられる。上記のモノエチレン性不飽和イソシアネートモノマーの2つ以上の混合物も適している。特に有用なモノエチレン性不飽和イソシアネートモノマーは、その製品の入手のしやすさから、イソシアナトエチルメタクリレートである。
【0032】
本発明のシラン官能性カルバメート樹脂の重合中、単官能性アルコールがモノエチレン性不飽和イソシアネートモノマーと反応して、第2級カルバメート官能基が形成される。第2級カルバメートの一般的な構造は、以下の式:
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、Rは、シラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料であり、R1は、単官能性アルコールである)によって表される。適切な単官能性アルコールとしては、n−ブタノール、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、イソ−ブタノール等が挙げられる。上記のアルコールの2つ以上の混合物も適している。特に有用なアルコールは、溶液重合にその沸点が理想的であることから、n−ブタノールである。
【0035】
本発明のクリアコート組成物は、バインダーの重量を基準として、カルバメート官能基と反応性の基を有する架橋性成分を約15〜60重量%、好ましくは20〜40重量%含有する。かかる架橋性成分は、一部または完全にアルキル化された、従来のモノマーまたはポリマーアルキル化メラミンホルムアルデヒド架橋性樹脂であってもよい。好ましい実施形態において、その架橋性成分は、約1〜3の重合度を有するアルコキシル化モノマーメラミンホルムアルデヒド樹脂である。一般に、このメラミンホルムアルデヒド樹脂は、ブチル化基またはイソブチル化基約50%およびメチル化基50%を含有する。かかる架橋性樹脂は通常、数平均分子量約300〜600および重量平均分子量約500〜1500を有する。市販の適切なメラミン架橋性樹脂の他のいくつかの例としては、「サイメル(Cymel)」1168、「サイメル(Cymel)」1161、「サイメル(Cymel)」1158、「サイメル(Cymel)」303、「レジミン(Resimine)」4514、「レジミン(Resimine)」747または「レジミン(Resimine)」354が挙げられる。
【0036】
本発明のコーティング組成物はさらに、バインダーの重量を基準として、約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜3重量%、さらに好ましくは約0.7〜2重量%の有効量の触媒を含み、シランポリマーのシラン部分と、組成物それ自体および組成物の他の成分との架橋反応が触媒される。ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオキシド、ジブチルスズジオクテート、オクタン酸スズ、チタン酸アルミニウム、アルミニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物等の多種多様な触媒を使用することができる。ブロックされた、またはブロックされていないドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸が有効な触媒である。ブロックされた、またはブロックされていないフェニル酸ホスフェートなどのアルキル酸ホスフェートもまた用いることができる。上記の触媒の混合物もまた有用である。他の有用な触媒は当業者ならば容易に思いつくだろう。
【0037】
上述のシラン官能性カルバメート樹脂および架橋性成分に加えて、他の塗膜形成および/または架橋性溶液ポリマーを本出願の組成物のバインダー成分に含ませることができる。その例としては、従来から知られているアクリル樹脂、セルロース系材料、アミノプラスト、ウレタン、ポリエステル、エポキシドまたはその混合物が挙げられる。任意の好ましい塗膜形成ポリマーは、ポリオール、例えば、重合モノマーのアクリルポリオール溶液ポリマーである。かかるモノマーは、上記のアルキルアクリレートおよび/またはメタクリレートのいずれか、さらに、ヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートを含み得る。そのポリオールポリマーは、ヒドロキシル価約50〜200および重量平均分子量約1,000〜200,000、好ましくは約1,000〜20,000を有する。
【0038】
ポリオールにおいてヒドロキシ官能性を付与するために、ポリオールの約90重量%まで、好ましくは20〜50重量%がヒドロキシ官能性重合モノマーを含む。適切なモノマーとしては、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレート、例えば本明細書における上記のヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートおよびその混合物が挙げられる。
【0039】
約50重量%までの量で、他の重合性モノマーをポリオールポリマー中に含ませることができる。かかる重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メチロールアクリルアミド等、およびその混合物が挙げられる。
【0040】
本発明のコーティング組成物中に、上記の成分に加えて、架橋ポリマー微粒子が任意選択的に含まれる。
【0041】
コーティング組成物のこの成分は、有機(実質的に非水性)媒質中に分散された架橋ポリマーである。この成分は今まで、非水分散型(NAD)ポリマー、ミクロゲル、非水性ラテックス、またはポリマーコロイドとして記述されていた。一般に、分散されたポリマーは、粒子媒質界面での溶媒和ポリマーまたはオリゴマー層の付着によって達成される立体的安定化によって安定化される。
【0042】
本発明の組成物の分散ポリマーにおいて、立体障壁により覆われる分散相または粒子は、「巨大分子ポリマー」または「コア」と呼ばれるだろう。このコアに結合される、立体障壁を形成する安定剤は、「マクロモノマー鎖」または「アーム」と呼ばれるだろう。
【0043】
分散ポリマーは、シランコーティングに一般に付随するクラッキングの問題を解決し、組成物における全バインダーの約0〜60重量%、好ましくは約5〜30重量%、さらに好ましくは約10〜20重量%の様々な量で使用される。シラン化合物と、組成物の分散ポリマー成分との比は適切には、5:1〜1:2、好ましくは4:1〜1:1の範囲である。これらの比較的高い濃度の分散ポリマーを収容するためには、分散ポリマーのアーム上に反応性基を有することが望ましく、その反応性基によって、ポリマーはその系の連続相と相溶性となる。
【0044】
分散ポリマーは、重量平均分子量約50,000〜500,000を有する高分子量コアを、分散ポリマーの重量を基準として、好ましくは約10〜90重量%、さらに好ましくは50〜80重量%含有する。好ましい平均粒径は、0.05〜0.5ミクロンである。コアに結合されたアームは、分散ポリマーの約10〜90重量%、好ましくは20〜59重量%を占め、約1,000〜30,000、好ましくは1,000〜10,000の重量平均分子量を有する。
【0045】
分散ポリマーの巨大分子コアは一般に、重合されたエチレン性不飽和モノマーを含む。適切なモノマーとしては、スチレン、アルキルアクリレートまたはメタクリレート、エチレン性不飽和モノカルボン酸、および/またはシラン含有モノマーが挙げられる。メチルメタクリレートとしてのかかるモノマーは、高いTg(ガラス転移温度)に寄与するのに対して、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートとしてのかかるモノマーは、低いTgに寄与する。他の任意のモノマーは、ヒドロキシアルキルアクリレート、メタクリレートまたはアクリロニトリルである。コアにおけるヒドロキシとしてのかかる官能基は、シラン化合物中のシラン基と反応し、フィルムマトリックス中に更なる結合を形成することができる。架橋コアが望ましい場合には、アリルジアクリレートまたはアリルメタクリレートを使用することができる。代替方法として、グリシジルアクリレートまたはメタクリレートなどのエポキシ官能性モノマーを使用して、モノカルボン酸官能性コモノマーと反応させ、コアを架橋することができ;またはコアはシラン官能基を含有することができる。
【0046】
分散ポリマーの好ましい特徴は、オルガノシラン化合物と反応するように適用されたヒドロキシ基を含有するマクロモノマーアームの存在である。焼付けおよび硬化中に起こる多くのかつ複雑な反応のために、これらのヒドロキシ官能基の一部が、オルガノシラン化合物と反応することは、確実に知られていない。しかしながら、アームにおけるこれらの官能基のかなりの部分、好ましくはその大部分が、場合により、ほとんどオルガノシラン化合物からなり得る組成物の塗膜形成要素と反応し、架橋すると言える。
【0047】
分散ポリマーのアームは、巨大分子コアにしっかりと固定されるほうがよい。この理由から、アームは、共有結合によって固定されることが好ましい。固定(anchoring)は、それらが塗膜形成要素化合物と反応した後に、分散ポリマーにアームを保持するのに十分でなければならない。この理由から、グラフトポリマーの主鎖部分の吸着によって固定する従来の方法は不十分である。
【0048】
分散ポリマーのアームまたはマクロモノマーは、立体障壁を形成することによって、コアが凝集するのを防ぐ役割を果たす。通常、巨大分子コアとは異なりアームは、有機溶媒担体または組成物の媒質中で、少なくとも一時的に溶媒和することができると考えられる。それらは、塗膜形成シラン含有化合物のシラン基とポリマーとの反応に利用可能なヒドロキシ官能基を有する、鎖延長された構造をとり得る。かかるアームは、マクロモノマーの重量を基準として、重合エチレン性不飽和ヒドロキシ官能基含有モノマーを約3〜30重量%、好ましくは10〜20重量%、かかる架橋性官能基を含有しない、少なくとも1つの他の重合エチレン性不飽和モノマーを約70〜95重量%含む。かかるヒドロキシモノマーと、アーム上のシランまたはエポキシなどの他の少ない量の架橋性官能基との組み合わせも適している。
【0049】
コアに結合されたマクロモノマーアームは、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレートであって、各々が、アルキル基中に炭素原子1〜12個を有するもの、ならびに固定および/または架橋のためのグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートまたはエチレン性不飽和モノカルボン酸の重合モノマーを含有することができる。一般に有用なヒドロキシ含有モノマーは、ヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートである。
【0050】
ヒドロキシ官能基を有する分散ポリマーに対する好ましい組成物は、ヒドロキシエチルアクリレート約25重量%、メタクリル酸約4重量%、メチルメタクリレート約46.5%、メチルアクリレート約18重量%、グリシジルメタクリレート約1.5重量%、スチレン約5重量%からなるコアを含む。コアに結合されたマクロモノマーは、プレポリマー97.3重量%、グリシジルメタクリレート約2.7重量%を含有し、後者は固定および/または架橋のためである。
【0051】
好ましいプレポリマーは、ブチルメタクリレート約28重量%、エチルメタクリレート約15重量%、ブチルアクリレート約30重量%、ヒドロキシエチルアクリレート約10重量%、アクリル酸約2重量%、およびスチレン約15重量%を含有する。
【0052】
分散ポリマーは、粒子のための立体的安定剤の存在下にて、有機溶媒中でのモノマーのよく知られている分散重合によって製造することができる。この手順は、不活性溶媒中でモノマーを重合する手順の一つとして記述されており、不活性溶媒中でモノマーは可溶性であるが、得られたポリマーは、溶解された両性安定剤の存在下にて可溶性ではない。
【0053】
本明細書において使用される適切な分散ポリマーは、参照により本明細書に援用される、米国特許公報(特許文献2)にも開示されている。
【0054】
従来の溶媒および希釈剤を本発明の組成物において担体として用いて、噴霧適性、流れ、および均展性を補助することができる。一般的な担体としては、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、VM&P(登録商標)ナフサ、ミネラルスピリット、ヘプタンおよび他の脂肪族、脂環式、芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ケトン等が挙げられる。それらは、コーティング組成物1ガロン当たり0〜約4ポンド(またはそれ以上)の量で使用することができる。それらは、組成物1ガロン当たり約3.5ポンドを超えない量で使用されることが好ましい。他の有用な担体は、当業者には容易に理解されよう。
【0055】
本発明のコーティング組成物により製造されるクリア仕上げ塗装の耐候性を改善するために、紫外線安定剤または紫外線安定剤の組み合わせをバインダーの重量を基準として約0.1〜5重量%の量で添加することができる。かかる安定剤としては、紫外線吸収剤、遮蔽剤(screener)、失活剤、およびヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。バインダーの重量を基準として約0.1〜5重量%の量で酸化防止剤を添加してもよい。一般的な紫外線安定剤としては、ベンゾフェノン、トリアゾール、トリアジン、ベンゾエート、ヒンダードアミンおよびその混合物が挙げられる。
【0056】
この組成物は、レジフロー(Resiflow)S(アクリルターポリマー溶液)、BYK 320および325(シリコーン添加剤)などの流れ調整剤;ミクロゲル(アクリルミクロゲル)、酢酸酪酸セルロース、およびヒュームドシリカなどのレオロジー制御剤;テトラシリケート、トリメチルオルトホルメート、トリエチルオルトホルメートなどの水捕捉剤;も含有することができる。
【0057】
本発明のコーティング組成物を着色カラーコート(ベースコート)上にクリアコート(トップコート)として使用して、ベースコート/クリアコート仕上げ塗装を提供する場合に、少量の顔料をクリアコートに添加して、黄変などの仕上げ塗装における望ましくない色を解消することができる。
【0058】
本発明の組成物は、濃く着色して、ベースコートとしても使用することができる。コーティング組成物をベースコートとして使用する場合、添加できる一般的な顔料としては、以下の:様々な色の二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、カーボンブラック、充填剤顔料、例えばタルク、白土、バリタ、カーボネート、シリケート、および多種多様な有機着色顔料、例えばキナクリドン、銅フタロシアニン、ペリレン、アゾ顔料、インダンスロンブルー、カルバゾール、例えばカルバゾールバイオレット、イソインドリノン、チオインジゴレッド、ベンズイミダゾリノン、金属フレーク顔料、例えばアルミニウムフレーク等が挙げられる。
【0059】
高速混合、サンド粉砕(sand−grinding)、ボールミル粉砕、磨砕機粉砕(attritor−grinding)または二本ロール練りなどの従来の技術によって、コーティング組成物に使用される上記のポリマーのいずれかで、または他の相溶性のポリマーもしくは分散剤で練り顔料または顔料分散液を最初に形成することによって、コーティング組成物中に顔料を導入することができる。次いで、コーティング組成物において使用される他の成分と、練り顔料をブレンドする。
【0060】
コーティング組成物は、吹付け、静電塗り、浸漬、はけ塗り、流し塗り等の従来の技術によって塗布することができる。好ましい技術は、吹付けおよび静電塗りである。塗布後、組成物は通常、100〜150℃で約15〜30分間ベーキングされ、厚さ約0.1〜3.0ミルのコーティングが形成される。組成物をクリアコートとして使用する場合、クリアコートを適用する前の短い時間、乾燥させて不粘着性にし、硬化させるか、または好ましくは、フラッシュ乾燥させることができるカラーコート上にそれが塗布される。「ウェット・オン・ウェット塗布」によって溶剤含有ベースコート上にクリアトップコートを塗布することが慣例である。つまり、ベースコートを完全に乾燥させることなく、トップコートがベースコートに塗布される。次いで、コーティングされた基材を所定の時間加熱して、ベースおよびクリアコートを同時に硬化させる。水性ベースコート上への塗布には通常、クリアコートの塗布前に、ベースコートをある期間、乾燥させる必要がある。
【0061】
本発明のコーティング組成物は、当業者であれば思いつくであろうように、二液系が可能であるが、通常一液系として配合される。一液系は、長期の貯蔵寿命を有することが見出されている。
【0062】
自動車またはトラックの車体の場合には、薄鋼板が使用されるか、またはプラスチックまたは複合材を使用することができる。鋼が使用される場合、リン酸亜鉛またはリン酸亜鉛などの無機錆止め化合物で最初に処理し、次いで電着によって、プライマーコーティングを塗布する。通常、これらの電着プライマーは、ポリイソシアネートで架橋されたエポキシ変性樹脂であり、陰極電着法によって塗布される。任意選択的に、電着されたプライマーの上に、通常吹付けによってプライマーサーフェーサーを塗布して、より良い外観および/またはプライマーへのベースコートの向上した付着性が得ることができる。次いで、着色ベースコートまたはカラーコートが塗布される。一般的なカラーコートは、アルミニウムフレークまたはパールフレーク顔料などの金属フレーク顔料を含み得る顔料と、ポリウレタン、アクリロウレタン、ポリエステルポリマー、アクリルポリマーまたはシランポリマーであることができる塗膜形成バインダーと、を含み、アミノプラストなどの架橋剤、一般にメラミンホルムアルデヒド架橋剤またはポリイソシアネートを含有する。ベースコートは、溶剤性または水性であることができ、分散液または溶液の形をとることができる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例により、本発明を説明する。すべての部およびパーセンテージは、別段の指定がない限り、重量に基づく。本明細書に開示されるすべての分子量は、ポリスチレン標準を使用したGPCによって測定される。
【0064】
以下のポリマーを製造し、実施例1、2および3、比較例4で使用した。
【0065】
(カルバメート官能性アクリロシランポリマーAの製造)
トラップおよび還流冷却器、撹拌機、熱電対、およびマントルヒーターを備えた窒素ブランケットフラスコに以下の成分を装入することによって、カルバメート官能性アクリロシラン樹脂を製造した。
【0066】
【表1】

【0067】
割り当て分Iを反応フラスコ中に装入し、攪拌および窒素ブランケット下にて還流温度に加熱した。割り当て分IIを予備混合し、4時間にわたって割り当て分Iに添加した。割り当て分IIIを予備混合し、続いて30分にわたって添加した。次いで、溶液を還流で2時間保持した。次いで得られたポリマー溶液を室温に冷却した。
【0068】
得られたポリマー溶液は、固形分67.5%および25℃で測定された158センチポイズの粘度を有し、重量平均分子量3,426を有する。
【0069】
(カルバメート官能性アクリロシランポリマーBの製造)
トラップおよび還流冷却器、および混合機を備えた窒素ブランケットフラスコに以下の成分を装入することによって、カルバメート官能性アクリロシラン樹脂を製造した。
【0070】
【表2】

【0071】
割り当て分Iを反応フラスコ中に装入し、攪拌および窒素ブランケット下にて還流温度に加熱した。割り当て分IIを予備混合し、4時間にわたって割り当て分Iに添加した。割り当て分IIIを予備混合し、続いて30分にわたって添加した。次いで、溶液を還流で2時間保持した。次いで得られたポリマー溶液を室温に冷却した。
【0072】
得られたポリマー溶液は、固形分67.5%および25℃で測定された160センチポイズの粘度を有し、重量平均分子量3829を有する。
【0073】
(カルバメート官能性アクリロシランポリマーCの製造)
上記のように装備された窒素ブランケットフラスコに以下の成分を装入することによって、カルバメート官能性アクリロシラン樹脂を製造した。
【0074】
【表3】

【0075】
割り当て分Iを反応フラスコ中に装入し、攪拌および窒素ブランケット下にて還流温度に加熱した。割り当て分IIを予備混合し、4時間にわたって割り当て分Iに添加した。割り当て分IIIを予備混合し、続いて30分にわたって添加した。次いで、溶液を還流で2時間保持した。次いで得られたポリマー溶液を室温に冷却した。
【0076】
得られたポリマー溶液は、固形分67.5%および25℃で測定された348センチポイズの粘度を有し、重量平均分子量4114を有する。
【0077】
(アクリロシランポリマーの製造)
上記のように装備された窒素ブランケットフラスコに以下の成分を装入することによって、ヒドロキシ官能性アクリロシラン樹脂を製造した。
【0078】
【表4】

【0079】
割り当て分Iを反応フラスコ中に装入し、攪拌および窒素ブランケット下にて還流温度に加熱した。割り当て分IIを予備混合し、4時間にわたって割り当て分Iに添加した。次いで、溶液を還流で2時間保持した。次いで得られたポリマー溶液を室温に冷却した。
【0080】
得られたポリマー溶液は、固形分67.5%および25℃で測定された2741センチポイズの粘度を有し、重量平均分子量7350を有する。
【0081】
アクリルミクロゲル樹脂の製造
上記のように装備された窒素ブランケットフラスコに以下の成分を装入することによって、アクリルミクロゲル樹脂を製造した。
【0082】
【表5】

【0083】
割り当て分Iを反応容器に装入し、その還流温度に加熱し、1時間保持した。割り当て分IIおよび割り当て分IIIを別々に予備混合し、次いで得られた反応混合物をその還流温度で維持しながら混合される反応容器に180分間にわたり同時に添加する。続いて、その樹脂溶液を還流温度で25分間維持し、次いで溶媒246.300重量部を除去する。次いで、還流温度より少なくとも3℃低い温度にその樹脂を冷却し、次いで割り当て分IVを添加する。
【0084】
アクリルNAD樹脂の製造
上記のように装備された窒素ブランケットフラスコに以下の成分を装入することによって、アクリルNAD樹脂を製造した。
【0085】
【表6】

【0086】
割り当て分Iを反応容器に装入し、その還流温度に加熱する。次いで、割り当て分IIIおよびIVを反応器中に供給し始める前に、割り当て分IIを反応容器に5分以内に加える。割り当て分IIIおよび割り当て分IVを別々に予備混合し、210分間にわたって還流温度にて反応容器中に同時に供給する。還流温度を維持しながら、割り当て分Vを予備混合し、60分間にわたって添加する。次いで、反応溶液を還流温度で60分間維持する。次いで、反応器に真空をかけ、溶媒236.84重量部を除去する。
【0087】
得られたNAD樹脂は、固形分60重量%、重量平均分子量約100,000〜200,000のコア、重量平均分子量約10,000〜15,000のコアに結合されたアームを有する。
【0088】
(アクリルポリオール樹脂の製造)
上記のように装備された窒素ブランケットフラスコに以下の成分を装入することによって、アクリルポリオール樹脂を製造した。
【0089】
【表7】

【0090】
割り当て分Iを反応器中に装入し、還流温度に加熱する。割り当て分IIおよびIIIを別々に予備混合し、反応器に同時に添加し、反応混合物を還流温度で180分間にわたって維持する。次いで、その溶液を還流温度で60分間維持する。
【0091】
得られたアクリルポリオール樹脂は、固形分70重量%であり、重量平均分子量約6,000を有する。
【0092】
(シリカ分散液の製造)
分散剤ポリマーを最初に調製し、次いで粉砕法によってシリカを分散させることによって、シリカ分散液を製造した。以下の実施例で使用される場合にシリカ分散液をこの手順で製造した。
【0093】
【表8】

【0094】
割り当て分Iを反応容器に装入し、その還流温度に加熱した。割り当て分IIと同時に開始されるが、415分間にわたって添加される割り当て分IIIと同時に割り当て分IIを400分間にわたって添加し、得られた反応混合物をその還流温度で維持した。次いで、割り当て分IVを反応器に添加し、その反応混合物を還流で40分間維持した。加熱を取り除き、次いで割り当て分Vを添加して、そのバッチを薄めた。得られたアクリル分散剤樹脂は、固形分70.0重量%であった。
【0095】
【表9】

【0096】
25ガロンのミルに対して270ポンドのレベルで、ジルコニア媒体が予め装入された水平な媒体ミルに割り当て分VIを装入する。ミルの温度を100〜120°Fで維持する。次いで、割り当て分VIIを低速で添加し、続いて高速で20分間粉砕する。次いで、分散液を10ミクロンのフィルターを通して濾過し、最終生成物を得た。
【0097】
(実施例1〜3および比較例4のクリアコートの製造)
所定の順序で以下の成分を共にブレンドすることによって、クリアコート組成物を製造した。
【0098】
【表10】

【0099】
電着プライマーで電着されたリン酸処理鋼板を従来の黒色溶剤性ベースコーティング組成物で個々に吹付けし、コーティングして、厚さ約0.5〜1.0ミルのベースコートを形成した。ベースコートにそれぞれ、フラッシュ(flash)を5分間施した。次いで、上記の配合されたクリアコート塗料をベースコートそれぞれの上に「ウェット・オン・ウェット」で塗布し、厚さ約1.5〜2.5ミルのクリアコート層を形成した。次いで、その板を約265°Fで30分間焼付けることによって完全に硬化させた。
【0100】
得られた本発明のクリアコート(実施例1〜3)は滑らかであり、本質的にクレーターはなく、優れた外観を有し、従来のアクリロシラン樹脂から製造された対照クリアコートと比較して、高いスプレー固形分および低いVOCを有した(対照例4参照)。
【0101】
(試験手順)
以下の手順を用いて、コーティングされた試験パネルを試験した。
【0102】
温度勾配片上でコーティングされたパネルを10%硫酸に15分間さらすことによって、腐食を試験した。勾配片上の温度が上昇するにしたがって、腐食損傷が増大した。「良好な」耐腐食性の対照、従来のアクリロシラン樹脂ベースのクリアコート組成物に対して、その性能を評価した。
【0103】
フォルトレススターチ(Faultless Starch)/ボン・アミ(Bon Ami Company)社により供給されているボン・アミ(Bon Ami)(登録商標)クレンザーでコーティングされたフェルトパッドでコーティングに傷を付けることによって、クロックメーターによる乾燥表面損傷抵抗を測定した。ダイエー(Daiei)(登録商標)磨耗試験機を使用して、表面損傷を調べた。その試験では、重量700グラムのサイクル15回を用いた。試験後および試験前にパネルの傷が付いた領域の20°光沢を測定することによって、クロッカー・ウェット・アンド・ドライ(Crocker Wet and Dry)表面損傷抵抗(%)を記録した。
【0104】
(試験結果)
コーティングされた試験パネルの以下の特性を測定し、対照例4に対してその結果を表1に示す。
【0105】
【表11】

【0106】
上記の結果から、従来のアクリロシラン樹脂から製造された対照クリアコートと比較して、優れた耐引掻き性、耐腐食性および表面損傷抵抗を有することも示されている(対照例4参照)。
【0107】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の組成物の成分を修正、変更、追加または置換できることは、当業者には明らかであるだろう。本発明は、特許請求の範囲によって定義されるが、本明細書に記載の例示的な実施形態により制限されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料と;
(b)成分(a)のカルバメート基と反応性の基を含む架橋性成分と
を含むことを特徴とする硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
前記組成物が、塗膜形成バインダー約40〜80重量%、前記バインダーのための揮発性液体担体約20〜60重量%を含み;前記バインダーが、
(a)I)アルキルメタクリレート、アルキルアクリレートであって、各々が、アルキル基中に炭素原子1〜12個を有するもの、脂環式アルキルメタクリレート、脂環式アルキルアクリレート、スチレンまたはこれらのモノマーのいずれかの混合物からなる群から選択される重合モノマー約10〜85重量%;
II)モノエチレン性不飽和シランモノマー約10〜65重量%;
III)モノエチレン性不飽和イソシアネートモノマー約5〜25重量%;および
IV)前記モノエチレン性不飽和イソシアネートモノマー上のイソシアネート基と反応する、有効量の単官能性アルコール
を含む混合物から製造される、カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料であり、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した際に、重量平均分子500〜30,000を有する、カルバメート基を含むシラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料を、バインダー固体の重量を基準として約40〜85重量%と、
(b)成分(a)のカルバメート基と反応性の複数の基を含む架橋性成分を、バインダー固体の重量を基準として約15〜60重量%と、
(c)ポリマー微粒子分散液を、バインダーの重量を基準として約10〜30重量%と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性コーティング組成物。
【請求項3】
前記シランモノマーが、γ−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、γ−トリメトキシシリルプロピルアクリレート、およびγ−ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレートからなる群から選択され;前記イソシアネートモノマーが、イソシアナトエチルメタクリレートおよびイソシアナトエチルアクリレートからなる群から選択され;かつ前記メラミン成分が、モノマーヘキサメトキシメチロールメラミンであることを特徴とする請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
カルバメート基を含む前記シラン官能性オリゴマーまたはポリマー材料が、スチレン約5〜30重量%、イソ−ブチルメタクリレート20〜30重量%、n−ブチルアクリレート2〜10重量%、γメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20〜40重量%、イソシアナトエチルメタクリレート10〜35重量%の量でモノマーと、前記イソシアナトエチルメタクリレートと反応する、少なくとも化学量論的に当量のn−ブチルアルコールとを含むことを特徴とする請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記メラミン成分が、ポリマーメラミンであることを特徴とする請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
有効量のブロック化スルホン酸触媒、アリールまたはアルキル酸ホスフェート触媒、有機スズ触媒、またはその組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
バインダーの重量を基準として、紫外線吸収剤および任意選択的にヒンダードアミン光安定剤約0.1〜10重量%を含有することを特徴とする請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記シランモノマーが、ビニルアルコキシシランであり;前記イソシアネートモノマーが、イソシアナトエチルメタクリレートおよびイソシアナトエチルアクリレートからなる群から選択され;前記メラミン成分が、モノマーヘキサメトキシメチロールメラミンであることを特徴とする請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記シランモノマーが、ビニルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
有効量のブロック化スルホン酸触媒、アリールまたはアルキル酸ホスフェート触媒、有機スズ触媒、またはその組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
バインダーの重量を基準として、紫外線吸収剤および任意選択的にヒンダードアミン光安定剤約0.1〜10重量%を含有することを特徴とする請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
請求項2に記載の乾燥かつ硬化させた組成物でコーティングされた基材。
【請求項13】
請求項2に記載の乾燥かつ硬化させた組成物でコーティングされた、自動車またはトラックの外部車体。
【請求項14】
(a)基材に着色ベースコーティングの層を塗布し、その上にベースコートを形成する工程と;
(b)前記ベースコート上に、請求項2に記載の組成物で構成されるクリアコート層を塗布する工程と;
(c)前記ベースコートおよびクリアコートを硬化させて、前記基材上にトップコートを形成する工程と
を含むことを特徴とする、基材をコーティングする方法。

【公表番号】特表2006−520839(P2006−520839A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507384(P2006−507384)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/008488
【国際公開番号】WO2004/083178
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】