説明

改善された脱泡性を有する異性化基油の金属加工流体組成物及びその調製

連続番号の炭素原子、及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン系炭素を有する異性化基油を含む金属加工流体が提供される。該金属加工流体は、ミスト形成低減、低い泡立ち度、及び優れた脱泡性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、低い泡立ち度及び優れた脱泡性を有する、改善されたミスト防止性を示す金属加工組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的金属切削作業、例えば、半導体産業によるシリコンウエハーの切削などは、切削工程を補助又は増進させるために機械加工流体又は金属加工流体を用いる。金属加工流体は、切削油、圧延油、絞り加工油、加圧成形油、鍛造油、アルミニウムディスク用研磨加工油、シリコンウエハー用研磨油及び冷却材として使用され得る。高速流体適用及び再循環に関係する高速機械加工作業において、泡及び空気の取り込みは望ましくない結果となることもある。泡立ちは、工作物−工具又は削片−工具の接触部分で冷却を低減させ、取り込み輸送及び制御問題を引き起こし得るので望ましくない。製品製造時又は流体の使用中に泡抑制剤(単数又は複数)の添加を含めて、泡立ちを無くす又は低減させるために様々な方法又は方策が行われてきた。ある種の泡抑制剤(単数又は複数)、例えば、シリコン系泡防止剤などの使用は、機械加工部分上に残留物を残し、その部分のその後の塗装を困難にさせ得る。さらに、一部の泡抑制剤(単数又は複数)は、金属加工流体の脱泡性を悪化させることもある。
【0003】
流体の脱泡性は、その使用性能、特に高速作業に対して重大でもあり得る。一部の場合に、脱泡性不良の流体を使用すると、空気取り込み問題及び機械部分のキャビテーションをもたらし得る。
【0004】
泡立ち及び脱泡の他に、金属加工流体に関連した別の一般的な使用中の問題は、霧又はミストの発生である。切削工程中に、少量の切削油が、ミストとして知られているミクロサイズの液滴として周囲空気中に逃げる傾向がある。付近の作業者は、そのミストに曝され、及び、保護呼吸装置を着用していない限り、一部のミストは作業者の肺中に吸引され得る。従来技術の金属切削流体は機械加工にとって必須であるが、それらは現在、作業者曝露に伴って起こり得る危険のために、精査を強めて調査されている。
【0005】
30万から1000万の範囲の粘度平均分子量を有する、少量の少なくとも1種のポリイソブテン、ポリ−n−ブテン及びそれらの混合物の使用を含めて、ミストの形成を低減させるために様々な添加剤が従来技術において試みられている。ラムザンガム、疎水性及び親水性モノマー、スチレン又はヒドロカルビル−置換スチレン疎水性モノマー及び親水性モノマーが、添加剤の中でもミスト形成を低減させるための使用として示唆されている。様々な添加剤の使用に関する従来技術の一部の金属切削流体は、それらの廃棄に伴う環境問題を引き起こす。今や、より安全でより環境的に優しい金属加工流体の必要性に関する全員一致が存在する。
【0006】
最近のリフォーミングプロセスは、新規なクラスの油、例えば、フィッシャー−トロプシュ基油(FTBO)を生成しており、ここで、油、留分、又は原料は、フィッシャー−トロプシュプロセスの一部の段階から生じるか、又はそこで製造される。フィッシャー−トロプシュプロセス用の原料油は、バイオマス、天然ガス、石炭、シェール油、石油、都市ゴミ、これらの誘導体、及びそれらの組合せを含む、広範で様々な炭化水素系資源によってもたらされ得る。フィッシャー−トロプシュプロセスから調製される粗生成物は、ディーゼル油、ナフサ、ワックス、及び他の液体石油又はスペシャリティー製品などの製品に精製され得る。多くの特許公開及び出願、即ち、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2006/0289337号、米国特許公開第2006/0201851号、米国特許公開第2006/0016721号、米国特許公開第2006/0016724号、米国特許公開第2006/0076267号、米国特許公開第2006/020185号、米国特許公開第2006/013210号、米国特許公開第2005/0241990号、米国特許公開第2005/0077208号、米国特許公開第2005/0139513号、米国特許公開第2005/0139514号、米国特許公開第2005/0133409号、米国特許公開第2005/0133407号、米国特許公開第2005/0261147号、米国特許公開第2005/0261146号、米国特許公開第2005/0261145号、米国特許公開第2004/0159582号、米国特許第7018525号、米国特許第7083713号、米国特許出願第11/400570号、同第11/535165号及び同第11/613936号において、異性化基油は、その原料がフィッシャー−トロプシュ合成から回収されるワックス状原料であるプロセスから製造される。このプロセスは、二重機能触媒又はパラフィンを選択的に異性化し得る触媒を用いる、完全又は部分的な水素化異性化脱ろう工程を含む。水素化異性化脱ろうは、水素化異性化条件下で、ワックス状原料を異性化ゾーンにおける水素異性化触媒と接触させることによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の組成物と比較して、低減されたミスト及び泡形成、並びに優れた脱泡性を有する改善された金属加工流体に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、連続番号の炭素原子、及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン系炭素を有する潤滑基油;並びに金属加工流体添加剤パッケージ;金属不活性化剤;腐食防止剤;抗菌剤;防食剤;極圧剤;減摩剤;防錆剤;ポリマー性物質;抗炎症剤;殺菌剤;防腐剤;酸化防止剤;エデト酸塩などのキレート剤;pH調整剤;耐磨耗剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される、0.10から10重量%の少なくとも1種の添加剤を含む金属加工流体が提供され、ここで、該金属加工流体は、ASTM D3427−03による、50℃で0.6分未満の脱泡性、及びASTM D892−03による、50mL未満のシーケンスII泡立ち度を有する。
【0009】
別の態様において、金属加工流体の泡形成性及び脱泡性を改善する方法であって、連続番号の炭素原子、及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン系炭素を有する潤滑基油を含む組成物;並びに金属加工流体添加剤パッケージ;金属不活性化剤;腐食防止剤;抗菌剤;防食剤;極圧剤;減摩剤;防錆剤;ポリマー性物質;抗炎症剤;殺菌剤;防腐剤;酸化防止剤;エデト酸塩などのキレート剤;pH調整剤;耐磨耗剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される、0.10から10重量%の少なくとも1種の添加剤をブレンドする段階を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エアロゾルミスト形成試験における例7〜例13のミスト蓄積率を例証するグラフである。
【図2】エアロゾルミスト形成試験における例7〜例13のミスト蓄積率を例証するグラフである。
【図3】エアロゾルミスト形成試験における例7〜例13のミスト蓄積率を例証するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の用語が、本明細書を通して使用され、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0012】
本明細書で用いられるように、「金属加工流体」という用語は、最終物体の形状、例えば、シリコンウエハー又は機械部品が、金属又はケイ素の漸進的な除去を伴って又は伴わずに得られる、産業上の金属切削、金属研削作業において、又は半導体産業において使用され得る組成物を指す、「金属加工組成物」、「金属除去流体」、「切削流体」、「機械加工流体」と同義的に用いることができる。他の機能の中でも金属加工流体は、冷却するため及び潤滑するために使用される。
【0013】
「フィッシャー−トロプシュ由来」は、製品、留分、又は原料が、フィッシャー−トロプシュプロセスによる一部の段階から生じるか、或いはそこで製造されることを意味する。本明細書で用いられるように、「フィッシャー−トロプシュ基油」は、「FT基油」、「FTBO」、「GTL基油」(GTL:gas−to−liquid)、又は「フィッシャー−トロプシュ由来基油」と同義的に用いることができる。
【0014】
本明細書で用いられるように、「異性化基油」は、ワックス状原料の異性化によって製造される基油を指す。
【0015】
本明細書で用いられるように、「ワックス状原料」は、少なくとも40重量%のn−パラフィンを含む。一実施形態において、ワックス状原料は50重量%を超えるn−パラフィンを含む。別の実施形態において、75重量%を超えるn−パラフィンを含む。一実施形態において、ワックス状原料は、非常に低レベルの窒素及び硫黄、例えば、総合計の窒素と硫黄25ppm未満、又は他の実施形態において、20ppm未満も有する。ワックス状原料の例には、スラックワックス、脱油スラックワックス、精製フットオイル、ワックス状潤滑ラフィネート、n−パラフィンワックス、NAOワックス、化学工場プロセスで製造されるワックス、脱油石油由来ワックス、微結晶ワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、及びそれらの混合物が含まれる。一実施形態において、ワックス状原料は、50℃を超える流動点を有する。別の実施形態において、60℃を超える流動点を有する。
【0016】
「動粘度」は、ASTM D445−06で決定して、重力下の流体の流れに対する抵抗性のmm/sでの測定値である。
【0017】
「粘度指数」(VI)は、油の動粘度に対する温度変化の影響を示す経験的な、無単位の数である。油のVIが高いほど、温度とともに粘度を変化させるその傾向は低下する。粘度指数は、ASTM D2270−04に従って測定される。
【0018】
低温割れシミュレータ見かけ粘度(CCS VIS)は、低温及び高せん断下の潤滑基油の粘度特性を測定するためのミリパスカル秒、mPsでの測定値である。CCS VISは、ASTM D5293−04によって決定される。
【0019】
重量%による、基油の沸点範囲分布は、ASTM D 6352−04、「ガスクロマトグラフィーによる174から700℃の沸点範囲の石油蒸留物の沸点範囲分布(Boiling Range Distribution of Petroleum Distillation in Boiling Range from 174 to 700℃ by Gas Chromatography)」に従ってシミュレートされた蒸留(SIMDIS)によって決定される。
【0020】
「Noack揮発度」は、ASTM D5800−05、手順Bに従って測定された、60分間油を通して引かれる定常流の空気とともに、油が250℃で加熱されるとき、重量%で表された、失われた油の質量として定義される。
【0021】
ブルックフィールド粘度は、低温作業中の潤滑剤の内部流体−摩擦を決定するために用いられ、これはASTM D2983−04で測定することができる。
【0022】
「流動点」は、特定の注意深く制御された条件下で基油の試料が流れ始める温度の測定値であり、これはASTM D5950−02で記載されたとおりに決定することができる。
【0023】
「自動着火温度」は、流体が空気と接触している状態で自然発火する温度であり、これはASTM659−78に従って決定することができる。
【0024】
「Ln」は、底「e」をもつ自然対数を指す。
【0025】
「トラクション係数」は、摩擦力F及び垂直力Nの無次元比として表される、固有の潤滑剤特性の指標であり、ここで、摩擦は、スライド面間又は回転面間の移動に抵抗する又はそれを妨げる機械力である。トラクション係数は、平坦な46mm直径の磨かれた円盤(SAE AISI 52100スチール)に対して220の角度をなして磨かれた19mmの直径のボール(SAE AISI 52100スチール)で構成された、PCS Instruments,Ltd製MTMトラクション測定システムで測定することができる。このスチールのボール及び円盤は、1秒当たり3メートルの平均回転速度、40%の回転に対するスライドの比、及び20ニュートンの負荷で、独立して測定される。回転比は、ボール及び円盤の平均速度で除したボール及び円盤間のスライド速度の差、即ち、回転比=(速度1−速度2)/((速度1+速度2)−/2)として定義される。
【0026】
本明細書で用いられるように、「連続番号の炭素原子」は、基油が、中間にある炭素数の全ての数とともに、一連の炭素数にわたって炭化水素分子の分布を有することを意味する。例えば、基油は、中間にある全ての炭素数とともに、C22からC36又はC30からC60の範囲である炭化水素分子を有し得る。ワックス状原料も連続番号の炭素原子を有する結果として、基油の炭化水素分子は、連続番号の炭素原子によって互いに異なる。例えば、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応において、炭素原子供給源は、COであり、炭化水素分子は一度に1個の炭素原子で形成される。石油由来のワックス状原料は、連続番号の炭素原子を有する。ポリ−アルファ−オレフィン(「PAO」)に基づいた油と対照的に、異性化基油の分子は、より多くの直鎖構造を有し、短い分岐を有する比較的長い骨格を含む。PAOの古典的教科書の説明は、星形分子、特にトリデカンであり、これは中心点で結合している3個のデカン分子として示される。星形分子は理論的であるが、それにもかかわらず、PAO分子は、本明細書で開示された異性化基油を構成する炭化水素分子より少なく、かつ長い分岐を有する。
【0027】
「シクロパラフィン官能性を有する分子」は、単環式又は縮合多環式飽和炭化水素基であるか、又は、1個若しくは複数の置換基として、それらを含む任意の分子を意味する。
【0028】
「モノシクロパラフィン官能性を有する分子」は、3から7個の環炭素の単環式飽和炭化水素基である任意の分子、又は3から7個の環炭素の単一の単環式飽和炭化水素基で置換されている任意の分子を意味する。
【0029】
「マルチシクロパラフィン官能性を有する分子」は、2個以上の縮合環の縮合多環式飽和炭化水素環基である任意の分子、2個以上の縮合環の1個以上の縮合多環式飽和炭化水素環基で置換されている任意の分子、又は3から7個の環炭素の2個以上の単環式飽和炭化水素基で置換されている任意の分子を意味する。
【0030】
シクロパラフィン官能性を有する分子、モノシクロパラフィン官能性を有する分子、及びマルチシクロパラフィン官能性を有する分子は、重量パーセントとして報告され、並びに本明細書でさらに十分に記載される、フィールドイオン化質量分析(FIMS)、芳香族化合物のためのHPLC−UV、及びオレフィンのためのプロトンNMRの組合せによって決定される。
【0031】
オキシデーター(Oxidator)BNは、シミュレート化された利用における潤滑油の応答を測定する。高い値、即ち、1リットルの酸素を吸収するための長い時間は良好な安定性を示す。オキシデーターBNは、340°Fで1気圧の純酸素下で、Dornte型酸素吸収装置(R.W.Dornte「ホワイトオイルの酸化(Oxidation of white oil)」、Industrial and Engineering Chemistry、第28巻、26頁、1936年)によって測定することができ、100gの油によって1000mLのOを吸収する時間が報告される。オキシデーターBN試験において、0.8mLの触媒が100グラムの油当たり使用される。触媒は、使用されるクランクケースオイルの平均金属分析をシミュレートする、可溶性金属−ナフテネートの混合物である。添加剤パッケージは、100gの油当たり80ミリモルの亜鉛ビスポリプロピレンフェニルジチオホスフェートである。
【0032】
分子の特徴づけは、フィールドイオン化質量分析(FIMS)及びn−d−M分析(ASTM D3238−95)(2005年再承認)を含めて、当該技術分野で知られている方法によって行うことができる。FIMSにおいて、基油は、アルカン及び異なる数の不飽和を有する分子として特徴づけされる。異なる数の不飽和を有する分子は、シクロパラフィン、オレフィン、及び芳香族化合物を含み得る。芳香族化合物が相当な量で存在する場合、それらは4−不飽和として同定される。オレフィンが相当な量で存在する場合、それらは1−不飽和として同定される。FIMS分析からの1−不飽和、2−不飽和、3−不飽和、4−不飽和、5−不飽和、及び6−不飽和の総計からプロトンNMRによるオレフィン重量%を引き、及びHPLC−UVによる芳香族化合物重量%を引いたものは、シクロパラフィン官能性を有する分子の総重量パーセントである。芳香族化合物含量が測定されない場合、それは0.1重量%未満であるとみなされ、シクロパラフィン官能性を有する分子の総重量パーセントの計算に含まれない。シクロパラフィン官能性を有する分子の総重量パーセントは、モノシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセント及びマルチシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントの合計である。
【0033】
分子量は、ASTM D2503−92(2002年再承認)によって決定される。この方法は、蒸気圧(VPO)の熱電測定を用いる。試料容量が不十分である状況では、ASTM D2502−04の代替方法を用いることができ;これが用いられた場合、それは示される。
【0034】
密度は、ASTM D4052−96(2002年再承認)によって決定される。試料は、振動試料管の中に導入され、その管の質量の変化によって引き起こされる振動周波数の変化が、校正データと関連して用いられ、試料の密度を決定する。
【0035】
オレフィン重量パーセントは、本明細書で特定されたステップに従ってプロトン−NMRによって決定することができる。ほとんどの試験において、オレフィンは従来のオレフィン、即ち、アルファ、ビニリデン、シス、トランス、及びトリ置換などの、二重結合炭素に結合した水素を有する従来のオレフィン型の分散混合物であり、1から2.5のアリル対オレフィンの検出可能な積分比を有する。この比が3を超える場合、それは、比較的高いパーセントのトリ又はテトラ置換オレフィンが存在していることを示し、したがって、分析技術分野で知られている他の仮定をして、試料中の二重結合の数を計算することができる。このステップは以下のとおりである:A)ジューテロクロロホルム中5〜10%の試験炭化水素の溶液を調製する、B)少なくとも12ppmのスペクトル幅のノーマルプロトンスペクトルを得て、化学シフト(ppm)軸を正確に参照し、この装置は受信機/ADCに過負荷をかけないでシグナルを得るために十分な利得範囲を有し、例えば、30度パルスをかける場合、この装置は65,000の最小シグナルデジタル化ダイナミックレンジを有する。一実施形態において、この装置は少なくとも260,000のダイナミックレンジを有する。C)以下の間の積分強度を測定する:6.0〜4.5ppm(オレフィン);2.2〜1.9ppm(アリル);及び1.9〜0.5ppm(飽和)。D)ASTM D2503−92(2002年、再承認)によって決定した試験物質の分子量を用いて、以下を計算する:1.飽和炭化水素の平均分子式;2.オレフィンの平均分子式;3.総積分強度(=全ての積分強度の合計);4.試料水素当たり積分強度(総積分/式中水素の数);5.オレフィン水素の数(=オレフィン積分/水素1個当たり積分);6.二重結合の数(オレフィン水素×オレフィン式中水素/2);及び7.プロトンNMRによるオレフィン重量%=100×二重結合の数×典型的なオレフィン分子中の水素の数÷典型的な試験物質分子中の水素の数。この試験において、プロトンNMR計算手順、D、によるオレフィン重量%は、オレフィンパーセントの結果が低い、15重量%未満の場合に特に良好に使える。
【0036】
一実施形態における芳香族化合物重量パーセントは、HPLC−UVによって測定することができる。一実施形態において、この試験は、HP CHem−stationに接続したHP1050Diode−Array UV−Vis検出器と結合したHewlett Packard 1050 Series Quaternary Gradient High Performance Liquid Chromatography(HPLC)システムを用いて行われる。高度に飽和した基油中の個々の芳香族クラスの同定は、UVスペクトルパターン及び溶出時間に基づいて行うことができる。この分析に使用されるアミノカラムは、芳香族分子を主としてそれらの環数(又は二重結合数)に基づいて識別する。したがって、単環芳香族含有分子が最初に、その後に多環式芳香族により、分子当たりの二重結合数の増加する順に溶出する。同様の二重結合特性を有する芳香族化合物について、その環上にアルキル置換のみ有するものは、ナフテン置換を有するものよりも早く溶出する。UV吸収スペクトルからの様々な基油芳香族炭化水素の明確な同定は、環系上のアルキル及びナフテン置換の量に依存する程度に、それらのピーク電子遷移が、純モデル化合物類似体に対して全て赤色シフトしていることを理解することによって達成し得る。溶出芳香族化合物の定量は、その芳香族化合物に対する適当な保持時間枠にわたってそれぞれの一般クラスの化合物に対して最適化された波長から作成されたクロマトグラムを積分することによって行うことができる。それぞれの芳香族化合物のクラスに対する保持時間枠限界は、異なる時間で溶出する化合物の個々の吸収スペクトルを手作業で評価し、それらをモデル化合物吸収スペクトルに対するそれらの定量的類似性に基づいて適当な芳香族化合物のクラスに割り当てることによって決定することができる。
【0037】
HPLC−UV検定。一実施形態において、HPLC−UVは、極めて低水準でも芳香族化合物のクラスを同定するために使用することができ、例えば、多環芳香族化合物は典型的には、単環芳香族化合物よりも約10から200倍強く吸収する。アルキル置換は、吸収に20%影響する。272nmで1−環及び2−環芳香族化合物を同時溶出させるための積分限界は、垂直落下法によって行うことができる。それぞれの一般芳香族化合物クラスに対する応答要因に依存する波長は、置換芳香族化合物類似体に対する最も近いスペクトル吸収に基づいて、純モデル化合物の混合物からベールの法則プロットを作図することによって最初に決定することができる。芳香族化合物の重量パーセント濃度は、それぞれの芳香族化合物のクラスに対する平均分子量が、基油試料全体に対する平均分子量とほぼ等しいと仮定することによって計算することができる。
【0038】
NMR分析。一実施形態において、精製モノ芳香族標準において少なくとも1個の芳香族官能基を有する分子全ての重量パーセントは、長期間炭素13NMR分析によって確認することができる。NMRの結果は、高度に飽和した基油中の芳香族化合物の95〜99%が単環芳香族化合物であることを知ることにより、芳香族炭素%から芳香族分子%(HPLC−UV及びD2007と一致すべきものである)に変換することができる。少なくとも1個の芳香族官能基を有する分子全ての低いレベルをNMRによって正確に測定する別の試験では、標準D5292−99(2004年、再承認)法を修正して、10〜12mmのNaloracプローブを用いる400〜500MHzNMR上での15時間連続運転により500:1の最小炭素感度(ASTM標準実務E386による)を得ることができる。Acron PC積分ソフトウェアを用いて、ベースラインの形を定め、連続して積分することができる。
【0039】
分岐の程度は、炭化水素におけるアルキル分岐の数を指す。分岐及び分岐位置は、以下の9つのステップの過程に従って炭素−13(13C)NMRを用いて決定することができる:1)DEPTパルスシーケンスを用いてCH分岐中心及びCH分岐終端点を確認する(Doddrell,D.T.;D.T.Pegg;M.R.Bendall、Journal of Magnetic Resonace 1982年、48、323頁以降)、2)APTパルスシーケンスを用いて、複数分岐を開始する炭素(第四級炭素)の不存在を確認する(Patt,S.L.;J.N.Shoolery、Journal of Magnetic Resonance 1982年、46、535頁以降)、3)当該技術分野で知られている表化及び計算された値を用いて、特定の分岐位置及び長さに対して種々の分岐炭素共鳴を割り当てる(Lindeman,L.P.、Journal of Qualitative Analytical Chemistry 43、1971年1245頁以降;Netzel,D.A.ら、Fuel、60、1981年、307頁以降)、4)単一炭素の強度に対してメチル/アルキル基の特定炭素の積分強度を比較することによって異なる炭素位置での相対的分岐密度を推定する(これは、総積分/混合物中分子当たり炭素の数に等しい)。末端及び分岐のメチルの両方が同じ共鳴位置で現れる2−メチル分岐に関して、分岐密度を推定する前に強度は2で除す。4−メチル分岐断片が計算及び表化される場合、4+メチルへのその寄与は二重計算を避けるために引かれる、5)平均炭素数を計算する。平均炭素数は、試料の分子量を14(CHの式量)で除すことによって決定される。6)分子当たりの分岐の数は、ステップ4で見いだされた分岐の合計である、7)100個の炭素原子当たりのアルキル分岐の数は、分子当たり分岐の数(ステップ6)×100/平均炭素数から計算する、8)H NMR分析によって分岐指数(BI)を推定する、これは、液体炭化水素組成物においてNMRで推定されたとおりの総水素の中のメチル水素(化学シフト範囲0.6〜1.05ppm)のパーセントとして提示される、9)13C NMRによって分岐近接(BP)を推定する、これは反復メチレン炭素のパーセントとして与えられる−これは、液体炭化水素組成物においてNMRで推定されたとおりの総炭素の中で末端基又は分岐(29.9ppmでのNMRシグナルで表された)から炭素4個以上離れている。この測定は、任意のフーリエ変換NMR分光計、例えば、7.0T以上大きい磁石を有するものを用いて行うことができる。質量分析法による確認後、芳香族炭素が不在であることをUV又はNMRにより調査し、13C NMR試験のためのスペクトル幅を、TMS(テトラメチルシラン)に対して0〜80ppmの飽和炭素領域に限定することができる。クロロホルム−dl中25〜50重量%の溶液は、30°パルスで、次いで1.3秒(sec)捕捉時間で励起された。非均一強度データを最小化するために、広帯域プロトン逆ゲート型デカップリングが、励起パルスの前の6秒遅延中、及び捕捉中に使用される。試料は、緩和剤として0.03から0.05M Cr(acac)(トリス(アセチルアセトナト)−クロム(III)でドープし、十分な強度の観察を確実にする。DEPT及びAPTシーケンスは、Varian又はBruker操作マニュアルに記載された少量の偏差を伴う文献の記載に従って行うことができる。DEPTは、交差分極による無歪感度増大法(Distortionless Enhancement by Polarization Transfer)である。DEPT45シーケンスは、プロトンに結合している炭素全てにシグナルを与える。DEPT90はCH炭素のみを示す。DEPT135は、CH、及び上のCH、及び相の180度外(下)のCHを示す。APTは、当該技術分野で知られている、結合プロトン試験である。それは全ての炭素が見られることを可能とするが、CH及びCHが上である場合、第四級及びCHは下である。試料の分岐特性は、全体の試料がイソ−パラフィン系であるという計算における仮定を用いて、13C NMRによって決定することができる。不飽和の含量は、フィールドイオン化質量分析(FIMS)を用いて測定され得る。
【0040】
一実施形態において、金属加工流体は、基油のマトリックス中に、任意選択の添加剤も含めて、多くの成分を含む。
【0041】
基油マトリックス成分。一実施形態において、マトリックスを形成する基油又はそのブレンドは、製品それ自体、その留分、又は原料がフィッシャー−トロプシュプロセス由来のワックス状原料(「フィッシャー−トロプシュ由来基油」)の異性化による一部の段階から生じるか、又はそこで製造される、少なくとも1種の異性化基油を含む。別の実施形態において、基油は、少なくとも1種の、実質的にパラフィン系ワックス原料(「ワックス状原料」)から製造された異性化基油を含む。第3の実施形態において、基油は少なくとも1種の異性化基油から主としてなる。
【0042】
フィッシャー−トロプシュ由来基油は、例えば、米国特許第6080301号、同第6090989号、及び同第6165949号、並びに米国特許公開第2004/0079678A1号、同第2005/0133409号、同第2006/0289337号を含む、多くの特許刊行物に開示されている。フィッシャー−トロプシュプロセスは、触媒化学反応であり、ここで、一酸化炭素及び水素は、軽い反応生成物及びワックス状反応生成物(両者は実質的にパラフィン系である)を含む様々な形態の液体炭化水素に変換される。
【0043】
一実施形態において、異性化基油は、連続番号の炭素原子を有し、及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン系炭素を有する。さらに別の実施形態において、ワックス状原料から製造される異性化基油は、100℃で1.5から3.5mm/sの動粘度を有する。
【0044】
一実施形態において、異性化基油は、基油が以下を有するのに十分な条件で水素化異性化脱ろうが行われるプロセスによって製造される:a)0.03未満の、少なくとも1種の芳香族官能性を有する分子全ての重量パーセント;b)10を超える、少なくとも1種のシクロパラフィン官能性を有する分子全ての重量パーセント;c)20を超える、モノシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセント対マルチシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントの比;d)28×Ln(100℃での動粘度)+80を超える粘度指数。
【0045】
別の実施形態において、異性化基油は、貴金属水素化成分を含む形状選択的中間気孔寸法モレキュラーシーブを使用して、及び600から750°F(315〜399℃)の条件下で、高度パラフィン系ワックスが水素化異性化されるプロセスから製造される。このプロセスにおいて、水素化異性化の条件は、ワックス状原料中の700°F(371℃)を超えて沸騰する化合物の700°F(371℃)未満で沸騰する化合物への変換が10重量%から50重量%で維持されるように制御される。得られた異性化基油は、100℃で1.0から3.5mm/sの動粘度及び50重量%未満のNoack揮発度を有する。基油は、3重量%を超える、シクロパラフィン官能性を有する分子及び0.30重量パーセント未満の芳香族化合物を含む。
【0046】
一実施形態において、異性化基油は、次の式で計算された量より少ないNoack揮発度を有する:1000×(100℃での動粘度)−2.7。別の実施形態において、異性化基油は、次の式で計算された量より少ないNoack揮発度を有する:900×(100℃での動粘度)−2.8。第3の実施形態において、異性化基油は、100℃で1.808mm/sを超える動粘度、及び次の式で計算された量より少ないNoack揮発度を有する:1.286+20(kv100)−1.5+551.8e−kv100(ここで、kv100は100℃での動粘度である)。第4の実施形態において、異性化基油は、100℃で4.0mm/s未満の動粘度、及び0から100のNoack揮発度重量%を有する。第5の実施形態において、異性化基油は、1.5から4.0mm/sの動粘度、及び次の式で計算されたNoack揮発度より少ないNoack揮発度を有する:160−40(100℃での動粘度)。
【0047】
一実施形態において、異性化基油は、100℃で2.4から3.8mm/sの範囲の動粘度、及び次の式で定義された量より少ないNoack揮発度を有する:900×(100℃での動粘度)−2.8−15)。2.4から3.8mm/sの範囲の動粘度に対して、式:900×(100℃での動粘度)−2.8−15)は、式:160−40(100℃での動粘度)より低いNoack揮発度を与える。
【0048】
一実施形態において、異性化基油は、基油が100℃で3.6から4.2mm/sの動粘度、130を超える粘度指数、12未満のNoack揮発度重量%、−9℃未満の流動点を有する条件下で高度パラフィン系ワックスが水素化異性化されるプロセスから製造される。
【0049】
一実施形態において、異性化基油は、式:AIT(℃)=1.6×(40℃での動粘度、mm/s)+300で定義されたAITを超える自動着火温度(AIT)を有する。第2の実施形態において、基油は、329℃を超えるAIT、及び28×Ln(100℃での動粘度、mm/s)+100を超える粘度指数を有する。
【0050】
一実施形態において、異性化基油は、比較的低いトラクション係数を有し、特に、そのトラクション係数は式:トラクション係数=0.009×Ln(mm/sでの動粘度)−0.001(ここで、式中の動粘度は、トラクション係数測定中の動粘度であり、2から50mm/sである)で計算された量未満である。一実施形態において、15mm/sの動粘度及び40%の回転に対するスライドの比で測定した場合、異性化基油は0.023未満(又は0.021未満)のトラクション係数を有する。別の実施形態において、15mm/sの動粘度及び40パーセントの回転に対するスライドの比で測定した場合、異性化基油は150を超える粘度指数、及び0.015未満のトラクション係数を有する。
【0051】
一部の実施形態において、低いトラクション係数を有する異性化基油は、比較的高い動粘度及び比較的高い沸点も示す。一実施形態において、基油は、0.015未満のトラクション係数、及び565℃(1050°F)を超える50重量%沸点を有する。別の実施形態において、該基油は、0.011未満のトラクション係数、及びASTM D6352−04による、582℃(1080°F)を超える50重量%沸点を有する。
【0052】
一部の実施形態において、低いトラクション係数を有する異性化基油は、23.4未満又はそれに等しい分岐指数、22.0を超える又はそれに等しい分岐近接、及び9から30のフリーカーボン指数(Free Carbon Index)を含む、NMRによる固有の分岐特性も示す。一実施形態において、該基油は、少なくとも4重量%のナフテン系炭素を有し、別の実施形態において、ASTM D3238−95(2005年再承認)によるn−d−M分析で少なくとも5重量%のナフテン系炭素を有する。
【0053】
一実施形態において、異性化基油は、中間油異性体がパラフィン系炭化水素成分を含み、ここで、分岐の程度は、100炭素当たり7未満のアルキル分岐であり、及び該基油が、分岐の程度が100炭素当たり8未満のアルキル分岐であり、該アルキル分岐の20重量%未満が2位にあるパラフィン系炭化水素成分を含む、プロセスで製造される。一実施形態において、FT基油は、−8℃未満の流動点;100℃で少なくとも3.2mm/sの動粘度;及び式=22×Ln(100℃での動粘度)+132で計算された粘度指数を超える粘度指数を有する。
【0054】
一実施形態において、該基油は、10重量%を超え、かつ70重量%未満のシクロパラフィン官能性を有する総分子、及び15を超える、モノシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセント対マルチシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントの比を含む。
【0055】
一実施形態において、異性化基油は、600から1100の平均分子量、及び100炭素原子当たり6.5から10のアルキル分岐の、分子中平均分岐度を有する。別の実施形態において、異性化基油は、約8から約25mm/sの動粘度、及び100炭素原子当たり6.5から10のアルキル分岐の、分子中平均分岐度を有する。
【0056】
一実施形態において、異性化基油は、該基油が10を超えるシクロパラフィン官能性を有する分子の総重量パーセント、及び15を超える、モノシクロパラフィン官能性を有する分子の重量パーセント対マルチシクロパラフィン官能性を有する分子の重量パーセントの比を有するように、高度パラフィン系ワックスが712.4から3562リットルH/リットル油の水素対原料比で水素化異性化されるプロセスから得られる。別の実施形態において、該基油は、式:28×Ln(100℃での動粘度)+95で定義される量を超える粘度指数を有する。第3の実施形態において、該基油は、0.30未満の芳香族化合物重量パーセント;10を超えるシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセント;20を超える、モノシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセント対マルチシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントの比;及び28×Ln(100℃での動粘度)+110を超える粘度指数を含む。第4の実施形態において、該基油は、100℃で6mm/sを超える動粘度をさらに有する。第5の実施形態において、該基油は、0.05未満の芳香族化合物重量パーセント及び28×Ln(100℃での動粘度)+95を超える粘度指数を有する。第6の実施形態において、該基油は、0.30未満の芳香族化合物重量パーセント、3×100℃での動粘度(mm/s)を超える、シクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセント、及び15を超える、モノシクロパラフィン官能性を有する分子対マルチシクロパラフィン官能性を有する分子の比を有する。
【0057】
一実施形態において、異性化基油は、n−d−Mで測定して2から10%のナフテン系炭素を含む。一実施形態において、該基油は、100℃で1.5〜3.0mm/sの動粘度、及び2〜3%のナフテン系炭素を有する。別の実施形態において、100℃で1.8〜3.5mm/sの動粘度及び2.5〜4%のナフテン系炭素を有する。第3の実施形態において、100℃で3〜6mm/sの動粘度及び2.7〜5%のナフテン系炭素を有する。第4の実施形態において、100℃で10〜30mm/sの動粘度及び5.2%を超えるナフテン系炭素を有する。
【0058】
一実施形態において、異性化基油は、475を超える平均分子量;140を超える粘度指数、及び10未満のオレフィン重量パーセントを有する。金属加工流体中に取り込まれる場合、該基油は混合物の脱泡性及び低い泡立ち特性を改善する。
【0059】
一実施形態において、異性化基油は、100℃で2mm/sから6mm/sの動粘度;40℃で7mm/sから20mm/sの動粘度;−35℃で2300mPa.s未満のCCS粘度;−20から−40℃の範囲の流動点;300〜500の分子量;0.800から0.820の範囲の密度;93〜97%の範囲のパラフィン炭素;3〜7%の範囲のナフテン系炭素;30から60時間のオキシデーターBN;及びASTM D5800−05手順Bで測定して8から20の重量%のNoack揮発度を有するFT基油である。
【0060】
ミスト防止性能のための別の実施形態において、異性化基油は、100℃で2mm/sから3mm/sの動粘度;40℃で7mm/sから25mm/sの動粘度;120〜150の粘度指数;−20から−50℃の範囲の流動点;300〜500の分子量;0.800から0.820の範囲の密度;92〜97%の範囲のパラフィン系炭素;3〜7%の範囲のナフテン系炭素;30から60時間のオキシデーターBN;及びASTM D5800−05手順Bで測定して8から60の重量%のNoack揮発度を有する「軽質」範囲粘度のFT基油である。別の実施形態において、異性化基油は、100℃で5mm/sから7mm/sの動粘度;40℃で25mm/sから50mm/sの動粘度;140〜160の粘度指数;−15から−25℃の範囲の流動点;450〜550の分子量;0.820から0.830の範囲の密度;90〜95%の範囲のパラフィン系炭素を有する「中質」範囲粘度のFT基油である。第3の実施形態において、該基油は、「軽質」及び「中質」範囲粘度のFT基油の混合物を含む。
【0061】
一実施形態において、金属加工流体は、少なくとも1種の上記異性化基油を用いる。別の実施形態において、該組成物は、少なくともフィッシャー−トロプシュ基油から主としてなる。さらに別の実施形態において、金属加工流体は、基油マトリックスとして少なくとも1種の異性化基油、並びに場合によって、5から95重量%の少なくとも別の種類の油、例えば、APT交換ガイドラインで定義されたとおりのグループI、II、III、IV、V、及びVIの潤滑基油から選択される潤滑基油、並びにそれらの混合物を用いる。第4の実施形態において、金属加工流体は、異性化基油及び5から20重量%の少なくとも別の種類の油を用いる。例には、従来使用される鉱油、合成炭化水素油若しくは合成エステル油、又は用途に依存するそれらの混合物が含まれる。鉱物潤滑油ベース原料は、パラフィン、ナフテン及び混合ベース原油由来の任意の従来どおり精製されたベース原料であり得る。使用され得る合成潤滑油には、グリコールのエステル及び複合エステルが含まれる。使用され得る他の合成油には、合成炭化水素、例えば、ポリアルファオレフィン;アルキルベンゼン(例えば、テトラプロピレンによるベンゼンのアルキル化由来のアルキレート残油、又はエチレン及びプロピレンのコポリマー);シリコーン油(例えば、エチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサンなど)、ポリグリコール油(例えば、ブチルアルコールをプロピレンオキシドで縮合させることによって得られるもの)などが含まれる。他の好適な合成油には、ポリフェニルエーテル(例えば、3から7つのエーテル結合及び4から8個のフェニル基を有するもの)が含まれる。他の好適な合成油には、ポリイソブテン、及びアルキル化ナフタレンなどのアルキル化芳香族化合物が含まれる。
【0062】
追加の成分:一実施形態における金属加工流体は、従来技術の組成物と比較して、ミスト形成低減、より低い泡立ち度、及び良好な脱泡性を有するとして特徴づけられる。用途、例えば、ストレートオイル(ニートオイル)又は可溶性オイルに依存して、金属加工流体は、0.10から40重量%の範囲の量でその組成物の特性を改善するために当該技術分野で知られている利用可能な添加剤を含み得る。これらの添加剤には、金属不活性化剤;腐食防止剤;抗菌剤;防食剤;乳化剤;カプラー;極圧剤;耐摩擦材;防錆剤;ポリマー性物質;抗炎症剤;殺菌剤;防腐剤;酸化防止剤;キレート剤(エデト酸塩など);pH調整剤;耐磨耗剤(活性硫黄耐磨耗添加剤パッケージなどを含む);少なくとも1種の前述の添加剤を含む金属加工流体添加剤パッケージが含まれる。
【0063】
異なる実施形態において、異性化基油を含む基油マトリックス及びミスト防止剤/泡立ち防止剤以外の少なくとも1種の添加剤から主としてなる金属加工流体に対して、従来技術におけるいずれのミスト防止添加剤(ミスト抑制剤又はミスト防止剤)又は泡立ち防止材を添加する必要性がない。しかし、他の実施形態において及び最終使用用途に依存して、少量のミスト防止剤などの添加剤を、一実施形態において容量で0.05から5.0%、及び他の実施形態において1重量%未満の範囲の量で場合によって添加してもよい。非限定的な例には、ラムザンガム、疎水性及び親水性モノマー、スチレン又はヒドロカルビル−置換スチレン疎水性モノマー及び親水性モノマー、約30万から400万を超える分子量(粘度平均分子量)の範囲の油可溶性有機ポリマー(イソブチレン、スチレン、アルキルメタクリレート、エチレン、プロピレン、n−ブチレンビニルアセテートなど)が含まれる。一実施形態において、分子量範囲100万から300万のポリメチルメタクリレート又はポリ(エチレン、プロピレン、ブチレン又はイソブチレン)が使用される。
【0064】
一部の実施形態において及びある種の用途に対して、少量の従来技術の泡立ち防止剤を0.05から15.0重量%の範囲の量で本組成物に添加することもできる。非限定的な例には、ポリジメチルシロキサン(しばしば、トリメチルシリル末端)、アルキルポリメタクリレート、ポリメチルシロキサン、長鎖アシル基及び/又はその塩を有するN−アシルアミノ酸、(アルキルアルキレンオキシド及び/又はアシルアルキルオキシドと同時に使用される)長鎖アルキル基及び/又はそれらの塩を有するN−アルキルアミノ酸、アセチレンジオール及びエトキシル化アセチレンジオール、シリコーン、疎水性材料(例えば、シリカ)、脂肪アミド、脂肪酸、脂肪酸エステル、並びに/或いは、有機ポリマー、変性シロキサン、ポリグリコール、エステル化又は変性ポリグリコール、ポリアクリレート、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、脂肪アルコールエステル、オキソ−アルコール、フルオロ界面活性剤、ワックス(エチレンビスステレアミドワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレンビスステレアミドワックス、及びパラフィン系ワックスなど)、ウレウムが含まれる。泡立ち抑制剤は、適切な分散剤及び乳化剤と使用され得る。追加の活性泡立ち抑制剤は、Henry T.Kerner(Noyes Data Corporation、1976年)、125〜162頁による「泡立ち抑制剤(Foam Control Agents)」に記載されている。
【0065】
様々な実施形態において、金属加工流体は、過塩基性スルホン酸塩、硫化オレフィン、塩素化パラフィン及びオレフィン、硫化エステルオレフィン、アミン末端ポリグリコール、及びジオクチルリン酸ナトリム塩を含む減摩剤をさらに含む。さらに他の実施形態において、該組成物は、カルボン酸/ホウ酸ジアミン塩、カルボン酸アミン塩、アルカノールアミン、ホウ酸アルカノールアミンなどを含む腐食防止剤をさらに含む。
【0066】
様々な実施形態において、金属加工流体は、0.01から0.5容量%(最終油の容量に基づいて)の量で油可溶性金属不活性化剤をさらに含む。非限定的な例には、トリアゾール又はチアジアゾール、特にアリールトリアゾール(ベンゾトリアゾール及びトリルトリアゾールなど)、このようなトリアゾールのアルキル誘導体、及びベンゾチアジアゾール(R(C)NS、ここで、RはH又はCからC10アルキルである)が含まれる。好適な材料は、Irgamet及びReometの商標の下でCiba Geigyから、又はVanlubeの商標の下でVanderbilt Chemical Corporationから入手できる。
【0067】
一実施形態において、該組成物が切削流体及び機械潤滑油の二重の目的に働く場合などでは、少量の0.01から1.0重量%の範囲の少なくとも1種の酸化防止剤が使用され得る。非限定的な例には、アミン若しくはフェノールタイプ、又はそれらの混合物の酸化防止剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ビス−2,6−ジ−t−ブチルフェノール誘導体、硫黄含有ヒンダードフェノール、及び硫黄含有ヒンダードビスフェノールが含まれる。
【0068】
一部の実施形態において、金属加工流体は、0.1から20重量%の少なくとも1種の極圧剤をさらに含む。極圧剤の非限定的な例には、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸モリブデンオキシスルフィド、チオカルバミン酸モリブデンオキシスルフィド、モリブデンアミン化合物、硫化油及び脂肪、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、チオカルバミン酸塩、チオテルペン、チオジプロピオン酸ジアルキルなどが含まれる。
【0069】
上記添加剤に加えて、様々な他の従来の添加剤を、それらが金属加工流体の作用を阻害しない程度に添加することができる。例には、脂肪酸及びそれらの塩;多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリセロールなど);界面活性剤(アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など);及び界面活性などの分散剤中に分散された窒化ホウ素が含まれる。
【0070】
製造方法:金属加工流体組成物を配合する際に使用される任意選択の添加剤は、個々に又は様々な下位の組合せで、基油マトリックス中にブレンドすることができる。一実施形態において、添加剤濃縮物(即ち、添加剤プラス希釈剤、例えば、炭化水素溶媒など)を用いて、成分の全てが同時にブレンドされる。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態である場合、成分の組合せによって与えられる相互の相溶性を利用する。
【0071】
別の実施形態において、金属加工流体は、ストレートオイル切削流体としての使用のために、均一になるまで、適当な温度、例えば、約60℃で基油オイルマトリックスを任意選択の添加剤及び/又は添加剤パッケージ(単数又は複数)と混合することによって調製される。さらに別の実施形態において、乳化剤を金属加工流体に添加して、水中油型エマルジョンを形成してもよい。
【0072】
特性:一実施形態において、金属加工流体組成物は、ミスト形成低減、低い泡立ち度及び優れた脱泡性を有すると特徴づけられる。金属加工流体の泡立ち度は、ASTM D892−95泡試験を用いて測定することができる。一実施形態において、金属加工流体は、ASTM D892−06法下で評価した場合、50mL未満のシーケンスII泡立ち度泡高さを示す。さらに別の実施形態において、金属加工流体は、40mL未満のシーケンスII泡高さを示す。第3の実施形態において、30mL未満のシーケンスII泡高さを有する。第5の実施形態において、シーケンスII泡高さは20mL未満である。第6の実施形態において、全く測定することができない(0mL)。
【0073】
一実施形態において、金属加工流体は、ASTM D892−03による、100mL未満のシーケンスI泡立ち度を示す。別の実施形態において、該流体は、50mL未満のシーケンスI泡立ち度を有する。第3の実施形態において、30mL未満のシーケンスI泡立ち度を有する。
【0074】
一実施形態において、金属加工流体は、ASTM D1401−02による、30に等しいかそれ未満の54℃で3mLエマルジョンになる分の数値を有する。さらに別の実施形態において、該流体は、ASTM D1401−02による、60に等しいかそれ未満の82℃で3mLエマルジョンになる分の数値を有する。
【0075】
脱泡性は、石油の気泡分離時間のためのASTM D3427(2003年)法を用いて測定することができ、捕捉したガスを分離する流体の能力を測定する。一実施形態において、金属加工流体は、ASTM D3427(2003年)に従って測定して、50℃で0.60分未満の脱泡時間を有する。第2の実施形態において、1/2分未満の脱泡時間を有する。
【0076】
一実施形態において、金属加工流体は、ミスト形成低減特性を示し、及び該流体にエアロゾル制御又は粒子制御を与え、例えば、従来技術の基油グループIを含む金属加工流体と比較して5から50%ミスト低減を有する。ミスト低減実験は、Maranoら、Journal of the Society of Tribologists and Lubrication Engineers、1995年10月、25〜35頁による「金属切削流体におけるミスト抑制剤としてのポリマー添加剤(Polymer Additives as Mist Suppresants in Metal Cutting Fluids)」に記載されたとおりのエアロゾル(ミスト)形成試験に同様に従って測定することができる。一実施形態において、ミスト防止添加剤の添加が全くない金属加工流体は、エアロゾルミスト形成試験の最初の30秒(開始後)において300mg/mm未満の平均ミスト蓄積率を有する。別の実施形態において、ミスト添加剤を全く含まない金属加工流体は、エアロゾルミスト形成試験の最初の30秒において250mg/mm未満の平均ミスト蓄積率を有する。第3の実施形態において、平均ミスト蓄積率は、該試験の最初の30秒において200mg/mm未満である。第4の実施形態において、平均ミスト蓄積率は、該試験の最初の60秒において150mg/mm未満である。
【0077】
一実施形態において、金属加工流体組成物は、容易に生物分解性であり、その基油は、30から95%の範囲のOECD301Dを有する。一実施形態において、金属加工流体は、40℃で10〜14mm/sの動粘度、及び≧60%のOECD301D生物分解性を有する。第2の実施形態において、該組成物は、40℃で10mm/s未満の動粘度、及び≧80%のOECD301D生物分解性を有する。第3の実施形態において、該組成物は、40℃で8mm/s未満の動粘度、及び≧90%のOECD301D生物分解性を有する。第5の実施形態において、金属加工流体は、ODCE301Dに従って測定して少なくとも30%の生物分解性を有する。
【0078】
金属加工流体は、極圧利用に対して適切又は不適切として特徴づけることができる。極圧に対して適切であると考えられる流体は、スライディング金属表面が極圧条件下で固着することを防止するものである。金属表面の固着は、対抗する表面の粗さ間の摩擦に起因する。表面の粗さは、金属加工作業から生じる金属表面の顕微鏡的突起である。流体の極圧特性を測定する1つの手法は、スライディング表面の固着無しに潤滑剤によって持続させ得るスライディング表面間の負荷力を測定することである。このような手法は、Falex負荷試験として記載され、これは流体潤滑剤用のASTM標準試験である(ASTM D−3233(2003年))。一実施形態において、金属加工流体は、10未満の歯(teeth)のFalex基準磨耗を有すると特徴づけられる。別の実施形態において、約4,500ポンド力を超えるFalex基準負荷を有すると特徴づけられる。
【0079】
一実施形態において、金属加工流体は、ASTM D4172−94(2004年)e1による四球磨耗試験において測定して、優れた潤滑特性、特に、スライディング接触における潤滑表面を有すると特徴づけられる。一実施形態において、金属加工流体は、約0.07mm未満の四球磨耗痕直径を有する。
【0080】
一部の用途において、及び低動粘度を有する異性化基油の使用に関して、金属加工流体は、良好なポンプ循環のための滑らかな液体の流れを有すると特徴づけられる。さらに、金属加工流体は、摩擦熱が工具と工作物の間で発生することを防ぐことができる、良好な特性を有し、その結果、有効な工具寿命を増加させることができる。
【0081】
用途:一実施形態において、金属加工流体は、半導体、プラント装置、及び自動車部品などの生産に使用され、ここで、最終物体(例えば、シリコンウエハー又は機械部品)の形状は、金属又はケイ素の漸進的除去を伴って、又はそれを伴わずに得られる。作業の非限定的な例には、切削、ドリルあけ、穴あけ、ホーニング、ブローチ削り、研削、成形、スタンピング、鋳造、鍛造、圧延、せん孔、(貨幣)鋳造、引き抜き、プレス成形、バリ取り、粉砕、溝切り、ネジ立て、面取り、ブローチ削り、リーミング、ホーニング、ラッピング、歪み矯正、及び引き抜きが含まれる。
【0082】
金属工作作業の一実施形態において、金属加工流体は、工具と工作物の間の接触部分に適用される。該流体は、流体中に接触部分を含浸させる、接触部分の中に流体をスプレーする、流体で接触部分をあふれさせる、接触部分に流体の流れをポンプ注入する、潤滑流体で工具若しくは工作物を定期的に湿らす、又は工具と工作物の間の接触部分中に潤滑剤を常時又は間欠的に適用する任意の手段を含む、様々な方法によって適用され得る。
【実施例】
【0083】
特に断らない限り、本組成物は、実施例/表に示された量でその成分を混合することによって調製する。実施例に使用した成分を以下に記載する。
【0084】
EP剤は、市販の硫化重合エステル、10%不活性硫黄極圧剤である。
【0085】
HYNAP(商標)N100HTS水素処理化、ナフテン油(グループV)は、San Joaquin Refining Oil,Inc.、Bakersfield、CAが提供している。
【0086】
Ashland(商標)100SNグループI油は、Ashland Inc.が提供している。
【0087】
Chevron(商標)100Rグループ2油、Chevron(商標)100Rグループ3油、及びChevron Synfluid 4 cSt PAO油は全て、Chevron Corporation、San Ramon、CAが提供している。
【0088】
添加剤2は、硫化植物性脂肪酸エステルである。脱泡剤は、アクリレートオリゴマー消泡/脱泡剤である。添加剤CASは、市販の、カーボネート化アルキルベンゼンスルホネートを含む過塩基性化カルシウムスルホネートPEP金属工作添加剤である。添加剤SOは硫化オレフィンである。
【0089】
40℃で3.39mm/秒の粘度を有するシール油(MSO)、並びにベース原料油SN100(0.864の密度及び40℃で20.6mm/秒の粘度)、SN150及びSN600(APIグループI)は、多くの供給元から市販されている。
【0090】
GTLフィッシャー−トロプシュ由来基油GST0449、FTBO L、FTBO XL、FTBO XXL、及びFTBO Mは、Chevron Corp.が提供している。実施例で使用されるフィッシャー−トロプシュ由来基油の特性を、表3に示す。
【0091】
ミスト防止剤1は、メタクリレートコポリマーである。ミスト防止剤2は、市販の高分子量油可溶性ポリマー粘着付与剤である。
【0092】
(例1〜例6)
表1に記載したとおりの成分を有するいくつかの金属加工流体組成物を配合し、それらの特性を様々な標準試験法を用いて測定した:石油及び合成流体の水分離性に対してASTM D1401−02;石油の脱泡性に対してASTM D3427(2003年)標準試験法;並びにASTM D892−95泡安定性シーケンス試験。表に示されるように、異性化基油を取り込んでいる実施例は、低い泡立ち度(泡高さ無し)及び従来技術の油より良くはないとしても匹敵できる脱泡性を示す(1分の試験再現性の観点で)。
表1
【表1】

【0093】
(例7〜例13)
表2に記載したとおりの成分を有するいくつかの金属加工流体組成物を配合し、それらの特性を測定/記録した。例11〜例13は、それぞれ0.25重量%のミスト防止剤を添加した組成物を比較している(高分子量油可溶性ポリマー粘着付与剤)。
【0094】
試料を、Maranoら、Journal of the Society of Tribologists and Lubrication Engineer、1995年10月、25〜35頁による「金属切削流体におけるミスト抑制剤としてのポリマー添加剤(Polymer Additive as Mist Suppressants in Metal Cutting Fluids)」に記載されたものと同様のエアロゾル(ミスト)形成実験にかけた。試験において大筋で、金属加工流体(100mL試料中)を最大0.0084リットル/分の一定流量でシリンジポンプにより管(例えば、ID0.0011m)を通して同軸アトマイザーの先端に供給した。圧縮空気を、最大35リットル/分の流量で外管と内管(それぞれ、ID0.0021m及びOD0.0013m)の間の環を通して供給した。アトマイザーで発生させたミストを四角形断面又はチャンバー(例えば、12インチ×12インチ×18インチチャンバー)の長く幅広のプレキシグラスダクトに送った。時間の関数として発生させたミストの量(5分の間にわたるmg/mmとして)をデータロガー(datalogger)で捕捉し、記録した。これらの実験において、携帯の実時間エアロゾルモニターDataRAM(登録商標)[MIE Instruments Inc.、Bedford Mass.]をデータロガーとして使用して、発生したミスト濃度を連続的に定量した。DataRAMは、試料採取空間を通過する粒子の集団によって散乱された光の量を感知することにより空中の粒子濃度を測定するために使用されるネフェロモニター(nephelometric monitor)である。
【0095】
試料の全てに対して、ほとんどのミストは、試験の始めに発生した。噴霧した後、ミストは容器の底部に落ちる傾向があり、したがって、収集したミストの量で落下を示した。
【0096】
エアロゾル(ミスト)形成実験の測定値は、時間の関数として図1〜図3にプロットした。結果は、一般に、フィッシャー−トロプシュ由来基油を含む金属加工流体は、従来技術の基油よりも著しく少ないミスト形成をもたらし、ミスト形成の低減は、エアロゾルミスト形成試験の最初の30秒に、少なくとも10%(一部の実施例において)から最高75%以上であった。異性化基油を有する例10は、鉱物クループI基油及びさらに2重量%のミスト防止添加剤を有する例9と比べて、良好(ミスト形成低減を伴って)に機能した。図3において、強力な(及び高価な)ミスト防止添加剤として高分子量油可溶性ポリマー粘着付与剤を添加した全ての実施例(例11〜例13)は、匹敵する性能を示す。
表2
【表2】


表3
【表3−1】


【表3−2】

【0097】
特に断らない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、量、パーセント又は比率を表す数字の全て、及び本明細書及び特許請求の範囲で用いられる他の数値を表す全ての数字は、「約」という用語で全ての場合に修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明で得られるべく求められる所望の特性に依存して変わり得る近似である。本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるように、単数形「a」、「an」、及び「the」には、1つの指示対象に明示的に及び明白に限定されない限り、複数の指示対象が含まれることが留意される。本明細書で用いられるように、「含む(include)」という用語及びその文法的な変形は、非限定的であることが意図され、したがって、一覧における項目の列挙は、置換され得るか又はその一覧項目に追加され得る他の同様の項目を除外しない。
【0098】
この書面による説明は、ベストモードを含めて、本発明を開示するために、及びまた、任意の当業者が本発明を製造及び使用することができるために実施例を用いる。特許される範囲は特許請求の範囲において定義され、当業者に想起される他の実施例も含み得る。このような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文字どおりの用語と異なる構造要素を有するか、又はそれらが特許請求の範囲の文字どおりの用語と実質的でない相違を有する均等な構造要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続番号の炭素原子、及びn−d−Mによる10重量%未満のナフテン系炭素を有する潤滑基油;並びに
金属加工流体添加剤パッケージ;金属不活性剤;腐食防止剤;抗菌剤;防食剤;極圧剤;減摩剤;防錆剤;ポリマー性物質;抗炎症剤;殺菌剤;防腐剤;酸化防止剤;エデト酸塩などのキレート剤;pH調整剤;耐磨耗剤;及びそれらの混合物からなる群から選択される、0.10から10重量%の少なくとも1種の添加剤
を含む金属加工流体であって、
前記金属加工流体が、ASTM D3427−03による、50℃で0.6分未満の脱泡性、及びASTM D892−03による、50mL未満のシーケンスII泡立ち度を有する、金属加工流体。
【請求項2】
50℃における脱泡性が0.5分未満である、請求項1に記載の金属加工流体。
【請求項3】
ASTM D892−03による、シーケンスII泡立ち度が40mL未満である、請求項1又は2に記載の金属加工流体。
【請求項4】
ASTM D892−03による、シーケンスIIの泡立ち度が20mL未満である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項5】
前記金属加工流体が、OECD301Dに従って測定して、少なくとも30%の生物分解性を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項6】
前記金属加工流体が、ASTM D892−03による、50mL未満のシーケンスI泡立ち度をさらに有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項7】
前記金属加工流体が、ASTM D1401−02による、54℃で30未満の3mLエマルジョンになる分の数値を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項8】
前記潤滑基油が、ワックス状原料から製造されたフィッシャー−トロプシュ由来基油である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項9】
前記フィッシャー−トロプシュ由来基油が、100℃で2mm/sから6mm/sの動粘度;40℃で7mm/sから20mm/sの動粘度;−35℃で2300mPa.s未満のCCS粘度;−20から−40℃の範囲の流動点;300〜500の分子量;0.800から0.820の範囲の密度;93〜97%の範囲のパラフィン系炭素;3〜7%の範囲のナフテン系炭素;30から60時間のオキシデーターBN;及びASTM D5800−05手順Bにより測定して8から20の重量%のNoack揮発度を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項10】
前記潤滑基油が、異性化基油、並びに5から20重量%の少なくとも1種の鉱油、合成炭化水素油又は合成エステル油及びそれらの混合物を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項11】
前記潤滑基油が、600から1100の平均分子量、及び100個の炭素原子当たり6.5から10個のアルキル分岐で分子中平均分岐度を有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項12】
前記潤滑基油が、0から100のNoack揮発度重量%、1.6×(40℃での動粘度、mm/s)+300で規定された量を超える自動着火温度(AIT)を有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項13】
前記潤滑基油が、28×Ln(100℃での動粘度、mm/s)+300を超える粘度指数を有する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項14】
前記潤滑基油が、15を超える、マルチシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントに対するモノシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントの比、及び15を超える、マルチシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントに対するモノシクロパラフィン官能性を有する分子重量パーセントの比を有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の金属加工流体。
【請求項15】
前記潤滑基油が、10重量%を超え、70重量%未満の、シクロパラフィン官能性を有する総分子、並びに15mm/sの動粘度及び40%の回転に対するスライドの比で測定した場合0.023未満のトラクション係数を有する、請求項1から14までのいずれか一項に記載の金属加工流体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535276(P2010−535276A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520056(P2010−520056)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/070080
【国際公開番号】WO2009/017963
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】