説明

改善された芝草の品質

本発明は、植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを芝草に施用することにより芝草の品質を改善する方法に関し、及び、植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルを含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを芝草に施用することにより芝草の品質を改善する方法に関し、及び、植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高品質で健全な芝は、例えば芝生、ゴルフ場、スポーツをする場所及び道路に隣接する場所に必須である。したがって、芝草の品質を向上させる新規方法に対する要求が存在する。
【0003】
植物生長調節物質は通常、作物植物の生長及び発育を調節するために使用される。例えば植物生長調節物質は、作物(例えば菜種)の発育を遅らせて作物を所望の時期に開花させ、作物(例えば穀類)の高さを低くしてより倒伏を受けにくくし、窒素効率を上昇させ、作物(例えば果樹)の開花と着果を調節し、芝草生長速度を遅らせて刈り取り頻度を減少させるために使用される。
【0004】
いくつかの異なる分類の植物生長調節物質がある。既知の分類は、アゾール類(例えば、ウニコナゾール、及びパクロブトラゾール)、シクロヘキシルカルボキシレート類(例えば、トリネキサパック−エチル、及びプロヘキサジオン−カルシウム)、ピリミジニルカルビノール類(例えば、フルルプリミドール、及びアンシミドール)、4級アンモニウム類(例えば、クロルメコート−クロリド、及びメピコート−クロリド)、並びにスルホニル−アミノフェニル−アセトアミド類(例えば、メフルイジド)を含む。
【0005】
植物生長調節物質は種々の作用機序で作用する。例えば陽性荷電アンモニウムを有するオニウム型の植物生長遅延物質(例えば、クロルメコート−クロリド、及びメピコート−クロリド)は、生合成経路の早期のジベレリンの合成を阻止することにより機能する。窒素含有複素環を含む生長遅延物質(例えば、フルルプリミドール、パクロブトラゾール、及びウニコナゾールP)は、ジベレリン生合成の酸化工程を触媒するモノオキシゲナーゼの阻害剤として作用する。2−オキソグルタル酸の構造模倣物(例えば、アシルシクロヘキサンジオン類であるトリネキサパック−エチル、及びプロヘキサジオン−カルシウム)は、ジベレリン生合成の後期工程を妨害する。他の植物生長調節物質(例えば、メフルイジド)は、細胞分裂及び分化を阻害する。
【0006】
植物生長調節物質は、垂直の生長速度を遅らせ、刈り取り頻度を減少させるために、芝に使用される。
【0007】
ジャスモン酸は、草食性真菌侵入に対して防御するフィトアレキシンの産生を誘導し、且つ、スーパーオキシドジスムターゼやカタラーゼのような酵素的抗酸化活性を誘導するシグナル伝達化合物として作用する。ジャスモン酸はまた、低濃度で使用すると葉の総フェノール含量を上昇させ、したがってフリーラジカル緩衝能力を誘導し、苗条生長を低下させることにより、植物生長を調節すると考えられる。
【0008】
ジャスモン酸の種々の誘導体が知られている。例えばジャスモン酸のメチルエステル(ジャスモン酸メチル、MeJA)である(1R,2R)−3−オキソ−2−(2Z)−2−ペンテニル−シクロペンタン酢酸メチルは、以下の式を有する:
【0009】
【化1】

【発明の概要】
【0010】
植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを芝草に施用することにより、前記芝草の品質を改善する方法であって、前記芝草がベントグラスである、前記方法が提供される。
【0011】
本発明において、植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを芝草に施用することにより、前記芝草の緑色を向上させる方法であって、前記芝草がベントグラスである、前記方法がまた提供される。
【0012】
本発明において、植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを含む組成物が提供される。本発明において、ベントグラスの品質を改善するための組成物であって、植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを含む、前記組成物が提供される。好適には、ジャスモン酸はジャスモン酸メチルの形である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
芝草が盛んに生長する生長季節の早期に本発明の組成物が施用されるとき、芝草の品質及び/又は色の改善は特に顕著である。本発明の1つの実施形態において、植物生長調節物質及びジャスモン酸は春に施用される。
【0014】
本明細書における用語「ジャスモン酸」への言及は、ジャスモン酸の塩、エステル、又は誘導体への言及を含む。本発明の1つの実施形態において、ジャスモン酸のメチルエステルであるジャスモン酸メチルが使用される。
【0015】
1つの実施形態において、植物生長調節物質及びジャスモン酸は、組成物として芝草に施用される。
【0016】
本発明において任意の植物生長調節物質が使用される。市販されている植物生長調節物質の全リストは、Pesticide Manual(第14版、British Crop Protection Councilから出版)から得られる。1つの実施形態において、植物生長調節物質は、トリネキサパック−エチル、プロヘキサジオン−カルシウム、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、フルルプリミドール、メフルイジド、メピコート−クロリド、クロルメコート−クロリド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
好適には、植物生長調節物質はジベレリン生合成阻害剤である。好適には、植物生長調節物質は、クラスAジベレリン生合成阻害剤である。好適には、植物生長調節物質はクラスBジベレリン生合成阻害剤である。1つの実施形態において、植物生長調節物質は、トリネキサパック−エチル又はパクロブトラゾールである。さらなる実施形態において植物生長調節物質は、トリネキサパック−エチル、プロヘキサジオン−カルシウム、又はクロルメコート−クロリドである。1つの実施形態において、植物生長調節物質はトリネキサパック−エチルである。1つの実施形態において、植物生長調節物質はプロヘキサジオン−カルシウムである。1つの実施形態において、植物生長調節物質はクロルメコート−クロリドである。1つの実施形態において、植物生長調節物質はパクロブトラゾールである。1つの実施形態において、植物生長調節物質はフルルプリミドールである。
【0018】
好適には、ジャスモン酸はジャスモン酸メチルの形であり、植物生長調節物質はトリネキサパック−エチルである。あるいはジャスモン酸はジャスモン酸メチルの形であり、植物生長調節物質はパクロブトラゾールである。
【0019】
所望であれば本発明にしたがって、2種以上の植物生長調節物質を組み合わせて使用することができる。トリネキサパック−エチルとパクロブトラゾールとの混合物は、ジャスモン酸を用いる本発明の使用のために特に好適である。
【0020】
本明細書において用語「芝草の品質」は、芝草の視覚的品質と芝草の機能的品質の両方を含む。
【0021】
芝草の視覚的品質は、外観、例えば密度(単位面積当たりの地上の芽(aerial shoot)の数)、均一性(例えば、質感の均一性、例えば葉身の幅であり、これはオオウシノケグサのように細かいか、又はヒロハノウシノケグサのような粗いことがある)、又はなめらかさ(これはゴルフ場における競技のし易さに影響する)に関する。
【0022】
芝草の機能的品質は、例えば堅さ(圧縮に対する芝草の葉の抵抗性であり、芝の耐摩耗性に関連する)、弾力性(elasticity)(圧縮力が取り除かれた後に跳ね返る芝草の傾向)、反発力(resiliency)(その表面特性を変えずにショックを吸収する芝の能力)、ボール回転(ボールが芝表面に落下した後にボールが移動する平均距離)、収率(刈り取り後の刈り取られた草の測定値)、緑量(刈り取り後に残っている地上の芽の測定値)、発根(生長期の任意の時期に明白となる根の生長量)、及び回復能力(病原体、昆虫、通行などの損傷から回復する芝草の能力)に関する。
【0023】
芝草の色の改善は、草の緑色の向上に関する。
【0024】
芝草の品質の改善は、1又は2以上の上記の視覚的品質特性又は機能的品質特性に関し、或いはこれらの品質特性の任意の組み合わせに関する。
【0025】
本発明において「改善」は、同一条件下で、しかし本方法を施用しない場合に得られる、同一の芝草の品質と比較した時における、所定の芝草の品質特性の測定可能な又は検出可能な向上である。例えば、芝草の品質特性の改善は、より緑色であるか、又はより好ましい芝草の葉の色であり得る。
【0026】
本明細書において芝草という用語は、イネ科(Gramineae)由来の任意の草種を意味する。例えば草種は、アグロピロン(Agropyron)属、アグロスチス(Agrostis)属、アクソノプス(Axonopus)属、ブロムス(Bromus)属、ブクロエ(Buchloe)属、シノドン(Cynodon)属、エレモクロア(Eremochloa)属、フェスツカ(Festuca)属、ロリウム(Lolium)属、パスプルム(Paspulum)属、ペンニセツム(Pennisetum)属、フレウム(Phleum)属、ポア(Poa)属、ステノタフルム(Stenotaphrum)属、又はゾイシア(Zoysia)属に属し得る。芝草は1又は2以上の草種を含み得る。
【0027】
本発明の好適な実施形態において、芝草はベントグラスである。しかし本発明は、すべての芝草(寒冷地型芝草及び暖地型芝草を含む)で実施され得る。
【0028】
寒冷地型芝草は、例えば:ブルーグラス類(Bluegrasses)(Poa L.)、例えばケンタッキー・ブルーグラス(Kentucky Bluegrass)(Poa pratensis L.)、ラフ・ブルーグラス(Rough Bluegrass)(Poa trivialis L.)、カナダ・ブルーグラス(Canada Bluegrass)(Poa compressa L.)、及びアニュアル・ブルーグラス(Annual Bluegrass)(Poa annua L.);ベントグラス類(Bentgrasses)(Agrostis L.)、例えばクリーピング・ベントグラス(Creeping Bentgrass)(Agrostis palustris Huds.)、コロニアル・ベントグラス(Colonial Bentgrass)(Agrostis tenius Sibth.)、ベルベット・ベントグラス(Velvet Bentgrass)(Agrostis canina L.)、及びレッドトップ(Redtop)(Agrostis alba L.):フェスク類(Fescues)(Festuca L.)、例えばクリーピング・レッド・フェスク(Creeping Red Fescue)(Festuca rubra L.)、チューイングス・フェスク(Chewings Fescue)(Festuca rubra var.commutata Gaud.)、シープ・フェスク(Sheep Fescue)(Festuca ovina L.)、ハード・フェスク(Hard Fescue)(Festuca longifolia)、トール・フェスク(Tall Fescue)(Festuca arundinacea Schreb.)、メドウ・フェスク(Meadow Fescue)(Festuca elatior L.):ライグラス類(Ryegrasses)(Lolium L.)、例えばペレニアルライグラス(Perennial Ryegrass)(Lolium perenne L.)、一年生(イタリアン)・ライグラス(Annual(Italian) Ryegrass)(Lolium multiflorum Lam.);ウィートグラス類(Wheatgrasses)(Agropyron Gaertn.)、例えばフェアウェイ・ウィートグラス(Fairway Wheatgrass)(Agropyron cristatum(L.) Gaertn.)、ウェスタン・ウィートグラス(Western Wheatgrass)(Agropyron smithii Rydb.);スムース・ブロム(Smooth Brome)(Bromus inermis Leyss.);並びにティモシー(Timothy)(Phleum L.)を含む。
【0029】
暖地型芝草は、例えば、バミューダグラス類(Bermudagrasses)(Cynodon L.C.Rich)、ゾイシアグラス類(Zoysiagrasses)(Zoysia Wild)、セント・オーガスチングラス(St. Augustinegrass)(Stenotaphrum secundatum(Walt.) Kuntze)、センチピードグラス(Centipedegrass)(Eremochloa ophiuroides(Munro.) Hack.)、カーペットグラス(Carpetgrass)(Axonopus Beauv.)、バヒアグラス(Bahiagrass)(Paspalum notatum Flugge.)、キクユグラス(Kikuyugrass)(Pennisetum clandestinum Hochst. ex Chiov.)、バッファローグラス(Buffalograss)(Buchloe dactyloides(Nutt.)Engelm.)、センチピードグラス(Centipedegrass)(Eremochloa spp.)及びシーショア・パスパラム(Seashore paspalum)(Paspalum vaginatum swartz)を含む。
【0030】
地面の目的の表面領域(例えば、ゴルフ場、スポーツ場、公園地域、又は家庭の芝生)上における高品質の健常な芝草を維持するために、本発明の組成物を、芝草の維持中で、芝草に1回、又は2回以上施用することができる。好ましくは本発明の組成物は、芝草の生長期に芝草に1回、又は2回以上施用され得る。
【0031】
本発明の植物生長調節物質及びジャスモン酸は、同時に又は任意の順序で連続して施用され得る。連続して投与されると、成分は任意の順序で適切な時間スケールで、例えば、最初の成分が投与されるときから最後の成分が投与されるときまでの期間が、1ヶ月以下、1週間以下、又は24時間以下で、投与される。好ましくは、当該成分は、数時間の時間スケール内で、例えば1時間以内で投与される。当該成分が同時に投与される場合、それらは別々に投与されるか、又はタンクミックスとして、若しくはあらかじめ製剤化された混合物として投与され得る。1つの実施形態において、本発明の混合物又は組成物は、植える前における種子処理で芝草に施用される。
【0032】
本発明の方法が、芝草への共製剤化(coformulated)組成物の施用に関する時、当該組成物は植物生長調節物質とジャスモン酸の両方を含む。当該化合物は全ての他の成分と均一に混合され、圧縮され、抽出され、造粒されて固体製剤を形成する。あるいは、植物生長調節物質及びジャスモン酸は共に混合され、あらかじめ形成された固体製剤の表面にコーティングとして、又は顆粒中に吸収される溶媒で施用される。あるいは、植物生長調節物質は他の製剤成分と混合されて固体製剤を形成し、後でジャスモン酸が前記固体製剤の表面に施用されるか、又はその逆でもよい。
【0033】
本発明の方法が、一方が植物生長調節物質を含み他方がジャスモン酸を含む、2つの組成物の、芝草への別々の施用(同時か又は連続的かのいずれか)に関する時、いずれかの組成物又は両方の組成物が固体製剤であり得る。
【0034】
本発明の化合物は、修飾しない形態で使用され得るが、一般的には製剤助剤、例えば担体、溶剤、及び界面活性物質を使用して組成物に製剤化される。製剤は様々な物理形態で、例えば散粉剤(dusting powder)、ゲル、水和剤(wettable powder)、顆粒水和剤(water dispersible granule)、水分散性錠剤(water-dispersible tablet)、発泡性圧縮錠剤(effervescent compressed tablet)、乳剤(emulsifiable concentrate)、マイクロ乳剤(microemulsifiable concentrate)、水中油滴型エマルション、油性フロアブル剤(oil flowable)、水性分散液(aquaous dispersion)、油性分散液(oil dispersion)、サスポエマルション、カプセル懸濁液(capsule suspension)、乳化性粒剤(emulsifiable granule)、可溶性液(soluble liquid)、(担体として、水又は水混和性有機溶媒を用いた)水溶性濃縮物(water-soluble concentrate)、又は含浸ポリマーフィルムであり得る。かかる製剤は、直接使用されるか、又は使用前に希釈するかのいずれかであり得る。希釈化製剤は、例えば水、液体肥料、微量栄養素、生物有機体、油、又は溶媒を用いて調製され得る。
【0035】
塗布可能な(spreadable)製剤(例えば顆粒)はまた、芝生への施用、特にゴルフ場のフェアウェイ、噴霧が困難な地域への施用のために、又は他の専門の芝生市場のために使用される。
【0036】
微粉化した固体、顆粒、溶液、分散液又はエマルションの形態の組成物を得るために、製剤は、例えば、植物生長調節物質及びジャスモン酸(以後、「活性成分」と呼ぶ)を製剤助剤と混合することにより調製され得る。活性成分はまた、他の助剤、例えば微粉化した固体、鉱油、植物油、修飾植物油、有機溶媒、水、界面活性物質又はそれらの組み合わせを用いて製剤化することもできる。
【0037】
顆粒製剤は、様々な手段(例えば手)で分布させることができる。所望の量の顆粒組成物のより効果的で均一な分布のために、ロータリースプレッダー、シェーカー缶、又はドロップスプレッダーを使用することができる。広い領域の芝草を処理するために、顆粒はトラクター又は同様の装置に設置した機械的スプレッダーを使用して分散され得る。
【0038】
顆粒は、例えば遊離の水分と接触すると迅速に崩壊することにより、活性成分の迅速な放出を与えるように製剤化される。あるいは顆粒は、1個以上の活性成分の、ゆっくりとした放出、制御放出、又は遅延放出を提供して、芝の品質の長期改善を提供し、且つ繰り返し施用の必要性を最少にするために製剤化され得る。
【0039】
本発明における使用のための顆粒製剤は、押し出し物と比較的粗い粒子との両方を含む。活性成分に加えて、一般に顆粒は、賦形剤(担体とも呼ぶ)、界面活性剤(この用語は、分散剤及び湿潤剤を含む)、及び補助剤、例えば結合剤、安定剤、及び緩衝剤を含むことができる。賦形剤は不活性でもよく、又は生物学的機能を果たしてもよい(例えば肥料として作用する)。賦形剤ならびに他の成分は、好ましくは、顆粒調製中に、又は長期保存中に、又は野外における使用中に、活性物質を分解すべきではない。当業者は、これらの基準を満たすために、適切な顆粒成分を容易に選択することができる。
【0040】
顆粒製剤の典型的な担体は、肥料、砂、石灰石、酸性白土、アタパルジャイト粘土、ベントナイト粘土、モンモリロナイト粘土、バーミキュライト、パーライト、炭酸カルシウム、レンガ、軽石、葉ろう石、カオリン、ドロマイト、石膏、木粉、粉砕したトウモロコシの穂軸、粉砕した落花生殻、糖、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシア、雲母、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、氷晶石、石膏、チョーク、ゼオライト、方解石、珪藻土、硫酸カルシウム、及び殺害虫剤を吸収するか若しくは被覆した、他の有機物質若しくは無機物質を含む。
【0041】
粒状基質材料は、上記の典型的な担体の1つでもよく、及び/又は、肥料材料、例えば尿素/ホルムアルデヒド肥料、尿素、カリウム化合物(例えば、硫酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、酸化カリウム、メタリン酸カリウム)、アンモニウム化合物(例えば硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニム)、リン化合物(例えばリン酸)、イオウ、同様の植物栄養物質、及び微量栄養素、並びにそれらの混合物若しくは組み合わせであり得る。本発明の化合物は、顆粒全体に均一に分布させるか、噴霧含浸させるか、又は顆粒が形成された後若しくは顆粒の表面に被覆された後に、顆粒基質上に吸収させてもよい。
【0042】
草に栄養を与え、且つ生長を刺激する芝草管理において、一般的に窒素系肥料が日常的に使用される。特に、本発明の有効な組成物は、平均粒子サイズが約0.5mm〜2.5mm、特に1mm〜2mmの顆粒組成物である。これらの組成物は好ましくは乾燥製品として施用される。
【0043】
顆粒の成分を凝集させるために結合剤が使用され得る。結合剤が存在する時、結合剤は、顆粒組成物の最大約20重量%(乾燥重量ベース)、さらに好ましくは約2〜約20重量%の量で使用され得る。結合剤は顆粒基質中に成分を結合させ、取扱時において粒子サイズを維持する。適切な結合剤の例は、醸造濃縮ソリュブル(soluble)、リグノスルホン酸塩、炭酸ナトリウムリグニン、サトウキビ糖蜜、テンサイシロップ、テンサイ糖蜜、脱糖テンサイ糖蜜、ホエー、デンプン、サトウキビ糖蜜などを有する大豆sソリュブル、加水分解したコラーゲン、アミノ酸溶液、セルロース誘導体、又はセルロース系ポリマー結合剤を含む。例えば醸造濃縮ソリュブルと同等の性質を有する他の水溶性結合剤も使用され得る。
【0044】
顆粒の性質を変更したい場合において、追加の補助剤、例えば界面活性剤、分散剤、崩壊剤、湿潤剤などが添加され得る。
【0045】
界面活性剤、例えば重質芳香族ナフサ、ケロセン、及び他の石油画分、又は植物油;並びに/又は展着剤、例えばデキストリン、糊、又は合成樹脂を含む追加の成分がまた、製剤中に存在し得る。
【0046】
また本発明の化合物は、場合により、1又は2以上の追加の殺害虫剤、例えば殺昆虫剤、殺線虫剤、殺真菌剤、若しくは除草剤、又は追加の植物生長調節物質を含んでよい。これは、昆虫及び線虫、真菌疾患、及び雑草の防除を通じて芝草品質をさらに向上させ得る。本発明の製剤への殺害虫剤の共製剤化は、品質を向上させ有害生物を防除するために1回のみの施用しか必要ではないため、芝草に製品を施用するために費やされる作業者の時間を少なくするという追加の利点がある。
【0047】
本発明の組成物は、約0.001〜約99重量%の活性成分を含んでよい。好適には、組成物は、約0.001〜約50重量%の活性成分を含む。より好適には、組成物は、約0.001〜約10重量%の活性成分を含む。より好適には、組成物は、約0.001〜約1重量%の活性成分を含む。製剤が使用前に希釈を必要とする濃縮物の形である場合、これは希釈無しで即時使用される組成物より多量の活性成分を含有し得る。
【0048】
本発明の化合物の施用率は広範囲に変動し、土壌の性質、施用方法、防除されるべき標的の昆虫害虫、気象条件、並びに施用法及び施用時期により支配される他の因子に依存する。本発明の化合物は一般に、0.001〜4kg/ha、特に0.005〜1kg/ha、特に0.01〜0.5kg/haの割合で施用される。好ましくはトリネキサパック−エチルは約50〜約100g ai/haで施用され、ジャスモン酸は約100〜約700g ai/haの割合で施用される。トリネキサパック−エチルの特に好適な割合は96 g ai/haである。ジャスモン酸の特に好適な割合は672 g ai/haである。
【0049】
本発明において、植物生長調節物質、及びジャスモン酸又はその塩若しくはエステルで処理された芝草の種子であって、前記芝草がベントグラスである、前記種子が提供される。
【0050】
本発明において、植物生長調節物質、及びジャスモン酸又はその塩若しくはエステルを含む組成物の、上記した芝草の品質を改善するための及び/又は芝草の緑色を向上させるための使用であって、前記芝草がベントグラスである、前記使用がまた、提供される。
【0051】
本発明の組成物は、芝草の存在場所(locus)を本発明の組成物で処理することにより、芝草に施用され得る。例えば本発明の組成物は、芝草の種子が土壌に蒔かれるか又は配置される前又は後に、土壌へ施用され得る。或いは本発明の組成物は、芝草の種子が芝草の生長用の基材中に配置される前又は後に、当該基材へ施用され得る。或いは本発明の組成物は、基材上で生長した芝草が、当該基材と共に土壌の上部に配置される前に、土壌へ施用され得る。又は本発明の組成物は、芝草の種子が植えられる前に、当該種子へ施用され得る。
【0052】
以下の例は本発明をさらに例示する。本発明は、好ましい実施形態及びその実施例に関して説明されているが、本発明の範囲はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。当業者には明らかなように、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく上記発明に改変及び適応を行うことができ、そして本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定義され限定される。
【実施例】
【0053】
実施例1
ジャスモン酸メチル(SL製剤として、Fischerから購入)、トリネキサパック−エチル(Primo MAXX(登録商標)の形で)、又はその両方(タンクミックスとして)を含む組成物を、種々の比率でベントグラス(Agrostis palustris)品種であるクレンショー(Crenshaw)に対する効果について試験した。すべての処理は助剤NIS(0.25%v/v)を含有した。芝草への損傷パーセント及び芝草の品質(1〜9の標準スケジュールで)の評価は、処理後の種々の時点で行った。
【0054】
【表1】

【0055】
当該結果は、トリネキサパック−エチル及びジャスモン酸の混合物を施用したとき、芝草品質の向上が観察されたことを示す。当該効果は2回目の処理後に特に顕著であり、芝草の品質が改善されて、最初の処理後少なくとも56日間持続した。
【0056】
【表2】

【0057】
当該結果は、トリネキサパック−エチル及びジャスモン酸の混合物を施用したとき、芝草の緑色の向上が観察されたことを示す。
【0058】
【表3】

【0059】
当該結果は、トリネキサパック−エチル及びジャスモン酸の混合物を施用したとき、トリネキサパック−エチル単独を施用した場合と比較して、芝草の損傷につき有意差が存在するとは思われないことを示す。
【0060】
実施例2
ジャスモン酸メチル(Aldrichから購入)、トリネキサパック−エチル(Primo MAXX(登録商標)120ECの形で)、又はその両方(タンクミックスとして)を含む組成物を、種々の比率でベントグラス(Agrostis palustris)品種であるA1に対する効果について試験した。緑色の評価は、2回目の処理後5日目と12日目に行った。結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
当該結果は、トリネキサパック−エチル及びジャスモン酸の混合物を施用した時、特に各化合物を高率で施用した時、色の改善が観察されたことを示す。
【0063】
実施例3
ジャスモン酸メチル(SL製剤として、Fischerから購入)、トリネキサパック−エチル(Primo MAXX(登録商標)の形で)、パクロブトラゾール(Trimmit(登録商標)の形で)、又はこれらの製品のタンクミックスを含む組成物を、種々の比率でクリーピング・ベントグラス(Agrostis palustris)品種であるペントリオ(PennTrio)に対する効果について試験した。表5は、なされた処理のリストを示す。芝草の品質(0〜10のスケールで)及び芝草の色の評価は、処理後の種々の時点で行った。結果を表6及び7に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
薄く影を付けたセルは、施用可能なPGRのみの処理と比較して芝の品質の数値的改善を示す。濃く影を付けたセルは、施用可能なPGRのみの処理と比較して芝の品質の統計的有意な改善を示す。
【0067】
当該結果は、ジャスモン酸メチルと組み合わせたトリネキサパック−エチル及び/又はパクロブトラゾールの施用は、PGR単独の施用より、クリーピング・ベントグラス品種であるペントリノ(PennTrio)の良好な芝品質をもたらすことを示す。
【0068】
【表7】

【0069】
薄く影を付けたセルは、施用可能なPGRのみの処理と比較して芝の品質の数値的改善を示す。濃く影を付けたセルは、施用可能なPGRのみの処理と比較して芝の品質の統計的有意な改善を示す。
【0070】
当該結果は、ジャスモン酸メチルと組み合わせたトリネキサパック−エチル及び/又はパクロブトラゾールの施用は、PGR単独の施用より、クリーピング・ベントグラス品種であるペントリノ(PennTrio)の良好な芝草の色をもたらすことを示す。
【0071】
実施例4
実施例3に記載したものと同じ方法で同じ処理リストを使用して、クリーピング・ベントグラス品種であるL−93に対して試験を行った。結果を表8及び9に示す。
【0072】
【表8】

【0073】
影を付けたセルは、施用可能なPGRのみの処理と比較して芝の品質の数値的改善を示す。
【0074】
当該結果は、ジャスモン酸メチルと組み合わせたトリネキサパック−エチル及び/又はパクロブトラゾールの施用は、PGR単独の施用より、クリーピング・ベントグラス品種であるL−93の良好な芝品質をもたらすことを示す。
【0075】
【表9】

【0076】
影を付けたセルは、施用可能なPGRのみの処理と比較して芝の品質の数値的改善を示す。
【0077】
当該結果は、ジャスモン酸メチルと組み合わせたトリネキサパック−エチル及び/又はパクロブトラゾールの施用は、PGR単独の施用より、クリーピング・ベントグラス品種であるL−93の両方の良好な芝草の色をもたらすことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを芝草に施用することにより、前記芝草の品質を改善する方法であって、前記芝草がベントグラスである、前記方法。
【請求項2】
植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを芝草に施用することにより、前記芝草の緑色を向上させる方法であって、前記芝草がベントグラスである、前記方法。
【請求項3】
前記植物生長調節物質及びジャスモン酸が同時に施用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
植物生長調節物質及びジャスモン酸が、前記芝草に別々に任意の順序で施用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
芝草の種子が植えられる前に、前記植物生長調節物質及びジャスモン酸が、前記芝草の種子に施用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記植物生長調節物質及びジャスモン酸が、組成物として施用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
ジャスモン酸がジャスモン酸メチルの形で施用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記植物生長調節物質が、トリネキサパック−エチル、プロヘキサジオン−カルシウム、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、メピコート−クロリド、クロルメコート−クロリド、フルルプリミドール、メフルイジド、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記植物生長調節物質がトリネキサパック−エチル又はパクロブトラゾールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記芝草がクリーピング・ベントグラスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルとを含む組成物。
【請求項12】
ジャスモン酸がジャスモン酸メチルの形である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記植物生長調節物質が、トリネキサパック−エチル、プロヘキサジオン−カルシウム、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、メピコート−クロリド、クロルメコート−クロリド、フルルプリミドール、メフルイジド、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記植物生長調節物質がトリネキサパック−エチル又はパクロブトラゾールである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
芝草の品質を改善するための、及び/又は芝草の緑色を向上させるための請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、前記芝草がベントグラスである、前記使用。
【請求項16】
植物生長調節物質と、ジャスモン酸又はその塩若しくはエステルで処理された芝草の種子であって、前記芝草がベントグラスである、前記芝草の種子。

【公表番号】特表2012−510961(P2012−510961A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538891(P2011−538891)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008549
【国際公開番号】WO2010/063446
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】