説明

改善された製剤

キャニスタと絞り弁とを備え、HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子を含む懸濁エアゾール製剤を含有する定量噴霧式吸入器において、該製剤に湿潤剤を添加する工程を備えるキャニスタと絞り弁との表面への粒子堆積を減少させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴霧式吸入器に使用するための医薬懸濁エアゾール製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬エアゾール製剤は、一般に液化ガス噴射剤に懸濁または溶解した薬剤物質を含む。定量噴霧式吸入器は、一般に圧力下でエアゾール製剤を保管するキャニスタからなり、その一端を絞り弁で密封する。キャニスタおよび弁は、エアゾール製剤の正確に定めた用量を分注し得る絞り弁を作動するための手段と、エアゾール製剤の分注された用量を患者の口へ注ぐためのマウスピースとを備えるアクチュエータで保持される。
【0003】
定量噴霧式吸入器により放出される薬剤のそれぞれの用量は、行政当局により設定された用量誤差の極めて狭い公差で計量されるべきである。さらに、定量噴霧式吸入器は通常多重投与量の薬剤物質を含むので、投与時の正確さが一ヶ月以上に及ぶ吸入器寿命を通して保証されなければならない。
【0004】
定量噴霧式吸入器が懸濁エアゾール製剤、すなわち、薬剤物質の粒子を液化ガス噴射剤に懸濁したエアゾール製剤を含む場合、該粒子がキャニスタや絞り弁の内壁に堆積しやすいという問題がしばしば起こる。このことは、送達用量の許容できない誤差や送達用量の減少になり得る。薬剤物質を極めて低い濃度で用いる際には、堆積は特に問題である。作動毎に送達される薬剤物質の濃度が非常に低い場合、堆積に起因する用量のあらゆる損失が深刻な投薬問題になる。フマル酸ホルモテロール二水和物は特に、フルチカゾンプロピオン酸エステルと同様に効能の高い物質であり、したがって極めて低い濃度での使用が意図されている。
【0005】
従来技術は粒子堆積の問題に取り組んできた。特許文献1には、フッ化炭素のような特定の非粘着性ポリマーで被覆したキャニスタが開示され、また例えば特許文献2および3を参照。かかるポリマーを用いる欠点は、いくつかのエアゾール噴射剤への一部の成分の部分的溶解の危険性を含むことであり、またこの種の被覆物自身は、安全で安定した製品を保証するために安全性試験および製品製剤開発を受ける必要がある。これらポリマーおよび必要とされる試験は生産コストに算入される。
【0006】
特許文献4には、複数層のフッ素ポリマーをキャニスタへ加熱下で塗布する方法が開示されている。これは難儀でコスト的な問題だけでなく、キャニスタの製造に用いる特定の金属についての問題も発生している。キャニスタの形成用に最も一般的に使用される金属はアルミニウム合金である。ポリマー被覆は硬化するために熱処理を行わなければならず、金属が熱を当てることにより軟化し可鍛性を帯びるため、キャニスタの強度が損なわれる場合がある。
【0007】
ポリマー被覆材料それ自体はまた、特定のエアゾール製剤のいくつかの成分と不相溶性であり、浸出性化合物が製剤への方法を見つける可能性があるため汚染につながる。かかる浸出性化合物は薬剤物質の劣化をもたらし、また効能が低く健全性が低い製品になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第96−32099号
【特許文献2】国際公開第96−32150号
【特許文献3】米国特許第6596260号
【特許文献4】国際公開第0224552号
【発明の概要】
【0009】
懸濁エアゾール製剤の分野では、被覆キャニスタの使用に頼ることなく薬剤粒子の堆積を減少または排除する必要がある。
【0010】
驚くべきことに、出願人は、懸濁エアゾール製剤に用いた湿潤剤が薬剤粒子の堆積を低減し、また送達用量の均一性や送達用量の空気力学的粒度分布を改善するように作用し得ることを見出した。この効果は、単層または複数層の表面被覆を有しないキャニスタで観察される。
【0011】
本発明の一態様は、HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子を含む懸濁エアゾール製剤を有する定量噴霧式吸入器において、キャニスタ壁および絞り弁への粒子の堆積を減少させるための湿潤剤の使用を提供する。
【0012】
本発明の他の一態様は、HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子を含む懸濁エアゾール製剤を有する定量噴霧式吸入器において、キャニスタ壁および絞り弁への粒子の堆積を減少させる方法を提供するもので、該方法は湿潤剤を前記製剤に添加する工程を備える。
【0013】
湿潤剤は、アルコール類、より具体的にはエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタンジオールなどのジオールもしくはポリオール、またはそれらの混合物から選択することができる。特に好ましい実施形態において、湿潤剤はエタノール、特に無水エタノールである。
【0014】
当業者は、懸濁エアゾール製剤に用いた薬剤物質の濃度、噴射剤の種類およびまた他のあらゆる補助剤または賦形剤の種類を考慮して湿潤剤の使用量を最適化することができる。湿潤剤が薬剤物質の一方または両方の溶剤である場合、該湿潤剤は懸濁液中に保持すべき薬剤物質もしくは任意の賦形剤の可溶化または部分的可溶化を回避する分量で用いるべきである。
【0015】
湿潤剤は、液化噴射剤中に懸濁した薬剤物質の粒子の湿潤化を促進し、薬剤物質が部分的に溶解するのを防止すると考えられる。薬剤物質の部分的可溶化は、オストワルト熟成、粒子成長、また結局は製剤安定性の欠陥を生起する場合がある。これら効果に対する薬剤物質の微量の損失が、吸入器から噴射される服用量の誤差に関して過大な影響を有するため、部分的可溶化は、非常に低い濃度で薬剤物質を用いている製剤で特に有害になる。
【0016】
フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンのような効能の高い物質を低いまたは非常に低い濃度で用いる際、同時に可溶化を回避しつつ所望の効果を達成するのに十分な湿潤剤を提供するとき、調剤者が達成する必要のあるバランスは特に精密である。また、該バランスは、溶解度のような固有の物性をそれぞれ有する二つの薬剤物質の存在によりさらに複雑になる。
【0017】
湿潤剤は、懸濁エアゾール製剤の全重量に対して2重量%未満、より具体的には0.01〜1.99重量%、さらに具体的には0.01〜1.5重量%、さらに具体的には1.0〜1.5重量%の量で用いることができる。
【0018】
定量噴霧式吸入器を作動する際、懸濁薬剤物質を含む噴射剤が定量噴霧式吸入器の絞り弁から圧力下放出される。噴射剤は弁を離れると蒸発し、薬剤物質の粒子が患者の口腔へ極微小粉流として放出される。製剤が肺の奥深くへ吸入されて治療的効果を発揮するためには、エアゾール製剤の粒子は、約1〜10μm、好ましくは1〜6μmの平均空気力学的粒径(空気力学的質量中央径(MMAD)として測定)を有する極微小になる必要がある。このサイズに微小化された粒子は、当業界で既知の様々な方法、例えば機械研磨または噴霧乾燥により得ることができる。好ましい方法では、薬剤粒子のサイズ縮小は空気ジェット粉砕により行われる。
【0019】
上述した範囲のMMADを有する微小で吸入可能な粒子で送達され、また肺に浸透し蓄積し得ると考えられる薬剤物質の量は、微粒子用量(FPD)として既知であるか、または送達用量の一部、微粒子画分(FPF)として表現される。これらパラメータの両方は、カスケードインパクタまたは液体インピンジャを用いた送達用量の空力学的粒度分布の測定により算出することができる。これらは、方法および器具が薬局方に開示された常用の試験であり、例えば米国薬局方(USP)32第〈601〉章、または欧州薬局方(Ph.Eur.)第6版(2009)吸入剤のモノグラフ2.9.18を参照。
【0020】
薬剤粒子が肺の奥深くへ浸透し治療上の効果を発揮するために薬剤粒子の極微小という特性が望ましくかつ必須である一方、微粒子はその大きな表面積、それゆえ表面積に対する体積または質量の好ましくない割合のため、接着力を示し、粒子がキャニスタの表面および絞り弁表面に堆積するのをもたらす場合がある。
【0021】
本発明に係る湿潤剤の使用は、接着相互作用を最小にし、堆積量を低減して、許容送達用量の均一性と、高い微粒子用量および微粒子画分になる送達用量の空気力学的粒度分布を確実にする。
【0022】
キャニスタおよび弁の内側での粒子の堆積は、消耗した吸入器に残留する薬剤物質を分析することで求めることができる。
【0023】
送達用量の均一性および空気力学的粒度分布は、初期試験で測定される。本明細書で用いる初期試験とは、少なくとも2週間の初期平衡保管後における時間t=0で、かつ大気温度および湿度、例えば約17〜25℃および相対湿度29〜63%での充填キャニスタについての試験を指す。試験は、平衡状態のキャニスタが消耗するまで作動を繰り返し行い、送達用量、その誤差および空気力学的粒度分布を当業界で既知の手法により測定する。“初期”の製品を試験することは、製剤の重要な基準となる。製品がこの段階での送達用量の誤差または空気力学的粒度分布の許容レベルに適合しなければ、その後、製剤が加速保管の状態下で欠陥となる指標になる。なお、加速保管は、通常保管または使用時の状態、例えば25℃、相対湿度60%〜75%の条件、または好ましくは30℃、相対湿度約65%の条件で2年以上の状態下での製剤の性能を予測するものである。
【0024】
初期試験でキャニスタおよび弁に堆積した薬剤物質の量を分析することは、エアゾール製剤開発の重要な様相である。薬剤が患者の肺に届く前に、薬剤損失が製造および塗布の全域においてある程度観察される。通常、製造容器、パイプおよび充填ラインにおいていくらかの損失がある。さらに、保管期間中にキャニスタおよび封止システムにおいて一定量の堆積が観察されると予測し得る。またさらに、使用または作動の間、弁やアクチュエータに保留される薬剤の量がある。患者に送達すべき望ましい用量を達成するために、どのくらいの薬剤をキャニスタに充填すべき量を決定する際、上記の全てが考慮される。
【0025】
製造、充填、保管および塗布の間中に薬剤物質について多数の堆積場所が存在するため、製剤の製造および保管の全ての様相の期間中厳しい管理を確実にしなければならない。非常に重要な管理は、“初期”でのキャニスタおよび閉止システム(弁を含む)内の堆積した薬剤を分析することである。堆積がこの処理段階で多すぎる場合、その後製剤を正確な送達用量または微粒子画分で患者に送達されるだろう現実的可能性はない。
【0026】
薬剤物質の堆積の分析において、フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの両方について、堆積の程度がキャニスタの名目容量の約12%未満、より具体的には、堆積が名目容量の約4〜10%の範囲内とすべきことが重要である。“名目容量”とは、所定量のバルク懸濁製剤で充填すべきキャニスタの数で割ったバッチ製造容器に秤量された薬剤物質の量を意味する。
【0027】
したがって、本発明の他の形態は、本明細書に記載されるような懸濁エアゾール製剤を含む定量噴霧式吸入器で使用するキャニスタを提供するもので、温度約17〜約25℃で相対湿度約29〜63%で少なくとも2週間充填、保管後のキャニスタが、キャニスタに充填したフマル酸ホルモテロール二水和物の量に対し約12%以下、より具体的には約4〜10%の範囲内のフマル酸ホルモテロール二水和物の残留物を含む。
【0028】
本発明の他の形態は、本明細書において記載されている懸濁エアゾール製剤を含む定量噴霧式吸入器で使用するキャニスタを提供するもので、温度約17〜約25℃で相対湿度約29〜63%で少なくとも2週間充填、保管後のキャニスタが、キャニスタに充填したプロピオン酸フルチカゾンの量に対し約12%以下、より具体的には約4〜10%の範囲内のプロピオン酸フルチカゾンの残留物を含む。
【0029】
内面をフッ素ポリマーのような非粘着性物質で処理しないキャニスタを使用してこれら値が達成され得ることを考慮すると、堆積物の量は著しく低い。実際、本発明に使用するキャニスタは、標準的なアルミニウムまたはアルミニウム合金であり、薬剤エアゾール塗布に通常用いる円筒状の横断面からなる。上記の分析において、適当なキャニスタは、当業界で通常既知の弁である適当な絞り弁で圧着することにより密閉される。
【0030】
また、懸濁薬剤物質の粒子は、懸濁液または分散した乾燥粉末のいずれかでレーザー回析により測定した際にD10(体積分布の10%)が0.2〜2マイクロメートルの範囲、D50が1〜4マイクロメートルの範囲、またD90が2〜6マイクロメートルの範囲の粒度分布を有することが望ましい。
【0031】
本発明の別の形態は、HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子と、湿潤剤とを含む懸濁エアゾール製剤を提供するもので、該粒子は懸濁液または分散した乾燥粉末のいずれかでレーザー回析により測定した際にD10(体積分布の10%)が0.2〜2マイクロメートルの範囲、D50が1〜4マイクロメートルの範囲、またD90が2〜6マイクロメートルの範囲である粒度分布を有する。
【0032】
さらにより具体的には、フマル酸ホルモテロール二水和物についてはD10が約0.2〜1.8、D50が約1.0〜3.0、D90が約2.0〜6.0マイクロメートルであり、プロピオン酸フルチカゾンについてはD10が約0.2〜1.8、D50が約1.2〜3.5、D90が約2.0〜6.0マイクロメートルである。
【0033】
送達用量の均一性および送達用量の空気力学的粒度分布は、定量噴霧式吸入器由来の製剤の治療的効果を決定する重要なパラメータである。これらパラメータは、生体外で測定することができる。送達用量(“噴射用量”とも称する)は、実質的にアクチュエータマウスピースから放出され、患者による吸入が可能な薬剤物質の量である。送達用量は、作動に応じて絞り弁により吸入器から分散される実際の用量(計量用量とも称する)と異なる場合がある。これは、少量の計量用量が、定量噴霧式吸入器の弁機構およびアクチュエータ表面に堆積し得るためである。
【0034】
送達用量の均一性は、送達用量の誤差の尺度であり、バッチ間で用量の再現性または特定の定量噴霧式吸入器について吸入器寿命による作動間の変動性を試験するのに使用することができる。送達用量の多少の誤差は予期されるものであるが、製品が市場への販売認可を得るためであれば、行政当局により禁止された制限内に入らなければならない。
【0035】
空気力学的粒度分布は、吸入により肺の奥深くに届くために十分に小さい空気力学的径である送達用量中に含まれる薬剤物質の粒子の量、また微粒子用量および微粒子画分をこの尺度に由来することを調合者に知らせる。
【0036】
送達用量の誤差(送達用量の均一性)は、Dosage Unit Sampling Apparatus(DUSA)を用いて測定することができる。FPDは、カスケードインパクタまたは液体インピンジャ、例えばアンデルセンカスケードインパクタ(ACI)による粒径分布の測定により求めることができる。計測方法論および装置は、当業界で周知であり、また米国薬局方 第<601>章または欧州薬局方の吸入剤のモノグラフに記載されており、両文献をここに参照して援用する。USPは、Apparatus1をFPFの測定に使用し得ることを示唆する。USPはまた、送達用量の均一性をDUSAまたはその等価物を用いて測定し得ることを示唆する。しかしながら、送達用量および送達用量の均一性は、当業界で周知の漏斗法を用いて測定してもよい。
【0037】
漏斗法は、Drug Delivery to the Lungs、VIII、第116〜119頁に記載されており、ここに参照して援用する。要約すると、漏斗法は製剤を定量噴霧式吸入器から漏斗装置へ放出することからなり、この漏斗装置は基本的に標準的なブフナー漏斗からなる。放出された用量を漏斗内に設けたガラスシンターで補足し、洗い流すことができ、HPLC分析を用いて該用量を求める。漏斗法は標準的なUSP装置と同等の結果を付与し、DUSA装置の等価物であると通常考えられる。
【0038】
したがって、本発明の他の態様においては、HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子と、湿潤剤とを含む定量噴霧式吸入器における懸濁エアゾール製剤が提供され、該製剤は温度約17〜25℃で相対湿度約29〜63%で少なくとも2週間保管した際に吸入器寿命を通して約400〜500マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンおよび4〜20マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物の平均送達用量を有する。
【0039】
本発明のさらに別の態様においては、HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子と、湿潤剤とを含む定量噴霧式吸入器における懸濁エアゾール製剤が提供され、該製剤は温度約17〜25℃で相対湿度約29〜63%で少なくとも2週間保管した際に標識化投薬の30〜60%の平均微粒子画分を有する。
【0040】
本明細書に記載の好適な懸濁エアゾール製剤において、フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子は、懸濁液または分散した乾燥粉末のいずれかでレーザー回析により測定した際にD10(体積分布の10%)が0.2〜2マイクロメートルの範囲、D50が1〜4マイクロメートルの範囲、またD90が2〜6マイクロメートルの範囲の粒度分布を示す。
【0041】
さらにより具体的には、フマル酸ホルモテロール二水和物についてはD10が約0.2〜1.8、D50が約1.0〜3.0、D90が約2.0〜6.0マイクロメートルであり、プロピオン酸フルチカゾンについてはD10が約0.2〜1.8、D50が約1.2〜3.5、D90が約2.0〜6.0マイクロメートルである。
【0042】
本明細書に記載の好ましい懸濁エアゾール製剤において、湿潤剤はエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタンジオールなどのジオール類またはポリオール類、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0043】
本明細書に記載の好ましい懸濁エアゾール製剤において、湿潤剤は懸濁エアゾール製剤の全重量に対し2重量%未満、より具体的には0.01〜1.99重量%、さらに具体的には0.01〜1.5重量%、さらに具体的には1.0〜1.5重量%の量で用いる。
【0044】
本明細書に記載の好ましい懸濁エアゾール製剤において、フマル酸ホルモテロール二水和物は製剤の全重量に対し0.003〜0.04重量%、好ましくは0.004〜0.03重量%、より好ましくは0.005〜0.02重量%の量で用いる。好ましい実施形態において、フマル酸ホルモテロール二水和物は製剤の全重量に対し0.003〜0.008重量%の量で用いる。別の好ましい実施形態において、製剤の全重量に対し0.01〜0.04重量%の量で用いる。
【0045】
本明細書に記載の好ましい懸濁エアゾール製剤において、プロピオン酸フルチカゾンは製剤の全重量に対し0.01〜0.6重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%、また、より好ましくは0.03〜0.4重量%の量で用いる。
【0046】
フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンは、医師が患者を治療する方法に柔軟性を持つことができるようにするために、懸濁エアゾール製剤に異なる用量で用いることができる。フマル酸ホルモテロール二水和物の名目用量は、約5〜約20マイクログラムの範囲であり、プロピオン酸フルチカゾンの名目用量は、約50〜約500マイクログラムの範囲である。用語“名目用量”とは、実質的に定量噴霧式吸入器に含まれる薬剤物質についての目標用量である。本発明の定量噴霧式吸入器は、一般にキャニスタに装填される総名目用量に応じて一つの吸入器が数日間または数週間に亘って患者を治療し得るような複数の名目用量を含む。定量噴霧式吸入器からの計量された実際の用量および送達用量は、名目用量より若干低くなると想定されるが、厳しく規制された制限範囲内である。
【実施例】
【0047】
本発明に係る定量噴霧式吸入器における服用の例を表1に記載する。
【0048】
表1:Flutiformの異なる用量強度で展開したフマル酸ホルモテロール二水和物(FF)およびプロピオン酸フルチカゾン(FP)の濃度(%w/w)
【表1】

【0049】
表1において、用語“Flutiform”とは、Skyepharma社により臨床開発された製剤を指す。また“mcg”とは、“マイクログラム”の省略形である。
【0050】
Flutiform製品は、表1に示すように複数の用量強度で開発中である。例えば、Flutiform製品25/5は、作動毎に25mcgのプロピオン酸フルチカゾンおよび5mcgのフマル酸ホルモテロール二水和物を分注する製剤を表す。必要な送達用量を与えるために吸入器を二回作動させ、それゆえFlutiform 25/5は実際50mcgのプロピオン酸フルチカゾンおよび10mcgのフマル酸ホルモテロール二水和物の用量を分注する。
【0051】
上述した成分に加えて、本発明の懸濁エアロゾル製剤は、製剤の製造、安定化、管理易化に役立つことができるか、または任意他の方法で有用若しくは望ましいと判断される他の賦形剤を含むことができる。
【0052】
必要に応じて界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、オレイン酸、レシチン、トリオレイン酸ソルビタン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレン/エチレンジアミンブロック共重合体、エトキシ化ヒマシ油等が挙げられ、ここで界面活性剤の割合は、存在させる場合、製剤の全重量に対し好ましくは約0.0001〜1重量%、特に約0.001〜0.1重量%とすることができる。
【0053】
さらに、必要に応じて、本発明に係るエアゾール製剤はクエン酸、アスコルビン酸、ナトリウムEDTA、ビタミンE、N−アセチルシステインなどのような緩衝物質または安定化剤を含有することができる。一般に、かかる物質は、存在させる場合、製剤の全重量に対し約1重量%以下、例えば約0.0001〜1重量%の量で使用する。
【0054】
本発明に係る製剤は、担体を含有することができる。クロモグリク酸ナトリウム(DSCGとも称する)のようなネドクロミルまたはクロモグリク酸の塩は、共に治療上の活性物質であるが、その準治療レベルでの水分捕捉剤としての使用が文献に記載されている。
【0055】
ネドクロミルまたはクロモグリク酸の塩、特にDSCGは、製剤の全重量に対し0.01〜0.1重量%、好ましくは0.016〜0.09重量%、より好ましくは0.02〜0.08重量%、より好ましくは0.025〜0.07重量%、より好ましくは0.03〜0.05重量%、さらにより好ましくは0.03〜0.04重量%の量で用いることができる。
【0056】
DSCGは、吸入経路での投与に使用されて、臨床上で安全が実証されている。定量噴霧式吸入器に入り得る水分子に対する最大吸収能力を与えるために、エアジェット粉砕で粒径を減少させることによってDSCGの比表面積を増加させることが好ましい。好適な水分捕捉剤は、懸濁液または分散した乾燥粉末のいずれかでレーザー回析装置により測定した場合、D10が約0.2〜2マイクロメートルの範囲、D50が約1〜4マイクロメートルの範囲およびD90が約2〜6マイクロメートルの範囲を有することが好ましい。より具体的には、D10が1マイクロメートル以下、D50が3マイクロメートル以下、D90が5マイクロメートル以下である。
【0057】
DSCGがエアゾール製剤の安定化、特に競合的吸水による加水分解に対する安定化を助けるように作用すると考えられる。DSCGは、含水量に関して非化学量論的で、相対湿度の変化に応じて即座に水を吸収または放出する単結晶形態として存在する。DSCG結晶は、結晶格子の崩壊なしに可逆的吸水の程度が自在であり、1モル当たり9分子、つまり約24%w/wまでの水を吸収することができる。X線回折による結晶構造分析は、格子内にほんの少しの寸法変化で可変の水分子数(大気相対湿度に依存)を可逆的に提供し得るチャンネルの存在が明らかなった。大きな吸水能にかかわらず、DSCGは潮解性(例えば、硫酸ナトリウムのように)でなく、相対湿度10〜90%の範囲で固体である。
【0058】
DSCGが製剤を安定化するように作用すると考えられる。特に、噴射剤相内に存在する競合的に結合自由(すなわち溶解分子)な水により微粒子画分(FPF)に対し有益な効果があると考えられる。これは、懸濁粒子の凝集化(すなわち液体および/または結晶架橋の形成)および安定性に対する粒子成長(すなわちオスワルト熟成)を防止することにより微粒子画分を安定化するのに役立つ。製剤は内部水の存在に対し優れた耐性を有するので、これは保管および使用期間中により健全性のある製品にすることができる。例えば、総内部水600ppmまで耐性がある。さらに、製品が患者に渡ると、これによりさらに長い“試用期間”が可能になる。
【0059】
酸化および加水分解条件に対して感受性があるため、フマル酸ホルモテロール二水和物のような気管支拡張薬β2−刺激薬を用いる際、水分捕捉特性は特に重要である。かかる製剤は通常水分に敏感で、周囲の空気からの水分の侵入に感受性があるため、加水分解はストレス条件下(例えば40℃/相対湿度75%)でフマル酸ホルモテロール二水和物の劣化に影響する主要な識別された要因の一つである。
【0060】
温度変化および/または水分の浸入により保管期間中に発生し得る懸濁エアゾール製剤のわずかな濃度変化または物理的安定性の変化は、送達用量および微粒子用量の著しい減少または誤差につながる。
【0061】
DSCGはまた、本発明のエアゾール製剤に使用した際懸濁易化剤として作用する。DSCGそれ自体は、粒子で不均一な羊毛状微片の形成を促進、可能にする粒子からなり、またこのことは、より良好な懸濁液をクリームまたは沈殿への傾向が低く生成すると考えられる。これは同様に、本発明の製剤の安定性および健全性における改善につながる。
【0062】
従って、DSCGは、本発明のエアゾール製剤の寿命を通じて健全性と安定性を保証するのに有利な賦形剤である。さらに、前述を省みると、湿潤剤およびDSCGをここに参照した分量で含有するエアゾール製剤は、湿潤剤が初期試験において良好な用量の均一性を確実にし、DSCGがこのパラメータおよび他のパラメータにおける性能が容器の寿命を通じて安定で健全であることを確保するため、特に好ましい製剤である。
【0063】
したがって、本発明のさらに他の態様においては、本明細書に記載した懸濁エアゾール製剤において、上述に参照した量で製剤の寿命を通して用量の均一性を付与する湿潤剤およびDSCGの使用を提供する。
【0064】
本発明に有用な懸濁エアゾール製剤の特に好ましい用量強度の例を以下の表に開示する。
【0065】
表2:製剤の用量強度の例の組成(%w/w)
【表2】

【0066】
本明細書に記載した懸濁液アゾール製剤を定量噴霧式吸入器に装填し、吸入器寿命を通じて薬剤物質の一貫性のある用量を送達することができる。本発明の製剤は、以下に記載のような送達用量の均一性に関する薬局方、例として米国および欧州薬局方の要件を満たす。より具体的には、本発明の製剤がUSP26−NF21第601章“用量の均一性”に提示されるような要件を満たす。
【0067】
したがって、本発明の他の態様は、上述したような懸濁エアゾール製剤を提供するもので、該製剤を温度25℃相対湿度60%、より具体的には温度40℃相対湿度75%で1ヶ月までの期間、より具体的には3ヶ月までの期間、さらに具体的には6ヶ月までの期間保管した場合、定量噴霧式吸入器より分注される製剤が目標平均用量の±15%以下の誤差(さらに目標の±25%の外側でかつ目標の±30%の外側を除く1値以下)を有するフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの両方の投薬を送達する。
【0068】
本発明の別の態様においては、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)またはアレルギー性鼻炎を治療する方法が提供され、フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンを含む懸濁エアゾール製剤を必要とする患者に投与する工程を備える。
【0069】
薬剤物質としてフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンを含む懸濁エアゾール製剤は、喘息およびCOPDの症状の制御用の治療として意図されている。このため、かかる製剤をコントローラ薬物と称することができる。適切に制御された患者は、喘息またはCOPDの症状の治療のために他のいかなる治療も要求するべきでない。しかしながら、懸濁エアゾール製剤の受入服用間に患者が症状の増悪を経験する可能性があり、この場合患者は短時間作用性β2−刺激薬の投薬を受け得る。かかるβ2−刺激薬の例としては、アルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、フェノテロール、レバルブテロール、レプロテロールおよびピルブテロールが挙げられる。
【0070】
本発明の別の態様においては、フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンと、アルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、フェノテロール、レバルブテロール、レプロテロールおよびピルブテロールからなる群より選択した短時間作用性β2−刺激薬とを含む懸濁エアゾール製剤を、必要とする患者に投与する工程を備える喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療する方法を提供する。
【0071】
フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンを含む懸濁エアゾール製剤を含むコントローラ薬物を受けているか、または受けることを示されている患者は、別のコントローラ薬物を受けるか、または薬物を全く受けない。典型的なコントローラ薬物は、吸入コルチコステロイドである。典型的な吸入コルチコステロイドとしては、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾンおよびトリアムシノロンアセトニドが挙げられる。患者が受けているこれらの物質の投与量は、用いる特定のステロイドに依存する。
【0072】
ジプロピオン酸ベクロメタゾンの低用量の製品には80〜240マイクログラム、中用量の製品には240超から約480マイクログラム、高用量の製品には480マイクログラム超が計量される。
【0073】
ブデソニドの低用量の製品には180〜600マイクログラム、中用量の製品には600超から約1200マイクログラム、高用量の製品には1200マイクログラム超が計量される。
【0074】
シクレソニドの低用量の製品には80〜160マイクログラム、中用量の製品には160超から320マイクログラム、高用量の製品には320超から1280マイクログラムまでが計量される。
【0075】
フルニソリドの低用量の製品には500〜1000マイクログラム、中用量の製品には1000超から2000マイクログラム、高用量の製品には2000マイクログラム超が計量される。他に、フルニソリドの低用量の製品には320マイクログラム、中用量の製品には320超から約640マイクログラム、高用量の製品には640マイクログラム超が計量される。
【0076】
プロピオン酸フルチカゾンの低用量の製品には100〜300マイクログラム、中用量の製品には300超から500マイクログラム、高用量の製品には500マイクログラム超が計量される。他に、低用量の製品には88〜264マイクログラム、中用量の製品には260超から約440マイクログラム、高用量の製品には440マイクログラム超が計量される。
【0077】
フロ酸モメタゾンの低用量の製品には200マイクログラム、中用量の製品には400マイクログラム、高用量の製品には400マイクログラム超が計量される。
【0078】
トリアムシノロンアセトニドの低用量の製品には300〜750マイクログラム、中用量の製品には750超から1500マイクログラム、高用量の製品には1500マイクログラム超が計量される。
【0079】
吸入コルチコステロイドを受けていないか、または低から中用量の吸入コルチコステロイドを受けている患者において、本発明の他の形態では、10マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物および50〜100マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンのBID投与を含む懸濁エアゾール製剤を有する定量噴霧式吸入器を前記患者に与える工程を備える喘息またはCOPDの治療方法を提供する。
【0080】
中から高い用量の吸入コルチコステロイドを受けている患者において、本発明のさらに他の形態では、10マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物および250〜500マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンのBID投与を含む懸濁エアゾール製剤を有する定量噴霧式吸入器を前記患者に与える工程を備える喘息またはCOPDの治療方法を提供する。
【0081】
本発明は、特に吸入コルチコステロイドを受けているが、適切に制御されていない患者を治療する方法に関し、また吸入コルチコステロイドを受けることを示されている患者を治療する方法にも関する。
【0082】
したがって、本発明の別の態様では、低、中または高い用量での吸入コルイコスレロイドを受けているが、適切に制御されていない患者、または吸入コルイコスレロイドを受けることを示されている患者において、フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンを含む懸濁エアゾール製剤を有する定量噴霧式吸入器を前記患者に与える工程を備える喘息またはCOPDの治療方法を提供する。
【0083】
懸濁エアゾール製剤は、患者が上述のように低、中または高い吸入コルイコスレロイドを受けているか否かに応じて10〜20マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物および50〜100マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンBIDの用量、または10マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物および250〜500マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンBIDの用量を含む。
【0084】
時間の経過とともに悪化する喘息またはCOPDの場合には、懸濁エアゾール製剤に用いるフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの用量を増加するか、または追加のコントローラ薬物を患者の治療に追加してもよい。追加の治療は、ロイコトリエン修飾因子または徐放性キサンチン製剤が含まれる。
【0085】
本発明の方法において、フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンを含む懸濁エアゾール製剤は上述したものが好ましい。
【0086】
上記治療に用いるために記載した懸濁エアゾール製剤は、BID、すなわち喘息およびCOPDの症状を抑制する治療の一環として定期的に一日二回投与するとして意図されている。医師は、このような治療を受けている患者の状態を評価し、必要に応じて用量を調整する。
【0087】
それぞれの用量投薬は、定量噴霧式吸入器の一回の作動で送達されるか、または該用量を二回以上の作動で投与してもよい。それぞれの用量を定量噴霧式吸入器の二回の作動で送達するのが好ましい。
【0088】
以下に本発明の説明に供する一連の実施例がある。
【0089】
実施例1
下記の表3に示した組成物を調製した。
表3:医薬製剤の組成
【表3】

【0090】
微粒子化活性物質の適切な量を秤量し、バッチ容器の中に移した。微粒子化クロモグリク酸ナトリウム(DSCG)の適切な量を添加し、容器を閉めた。1.43%のアルコールを含有するHFA227(apaflurane)の噴射剤混合物を別の容器で作製し、バッチ容器の中に移した。固形物を液化噴射剤中に2900rpmのローターステイターホモゲナイザーを30分間使用することにより分散させた。均質なバルク懸濁液を4℃に冷却し、容器とPamasolエアゾール充填機P2001との間で再循環した。
【0091】
14mlの最大完全容積を有する医薬エアゾールキャニスタに、PamasolP2005クリンプ機を使用して50mcl絞り弁を圧着した。11g懸濁液のアリコートをP2001充填機により圧着されたキャニスタに充填した。各充填キャニスタの重量を検査し、全ての充填キャニスタに約50〜60℃で熱ストレス試験を施し、試験用アクチュエータと組み立てる前に一ヶ月間保管した。
【0092】
実施例2
表2に示したFlutiform50/5組成物を、比較製品からエタノールが除去されなければ50/5製剤と同じである比較製品に対して試験した。
【0093】
これら組成物で充填したMDIキャニスタを、キャニスタ内の両方の薬剤の分析、吸入器寿命を通して最終名目用量までの用量の均一性、アンデルセンカスケードインパクタによるエアゾール薬物の空力学的粒度分布およびキャニスタと弁との内面上の薬剤堆積(CCS)について試験した。
【0094】
結果を表4に示す。
【0095】
表4:用量の均一性に対するエタノールの効果および空気力学的粒度分布(APSD)。初期結果
【表4】

【0096】
本実験の目的は、用量の均一性および粒度分布のような重要なパラメータに対する湿潤剤、ここでは無水エタノールの効果を試験することである。結果は、エタノールなしの製剤について17〜25℃および相対湿度29〜63%の大気条件で少なくとも二週間保管した後の初期結果t=0において、平均用量および微粒子用量が減少したことを示す。さらに、消耗した容器内の残留物質の分析により、エタノールを含有しない製剤については容器閉止システムの内面への堆積が明白に増加したことが明らかになった。
【0097】
初期時に製品の試験を行うことは製剤について重要な基準となる。製品がこの段階で用量の均一性および空気力学的粒度分布のような重要なパラメータに欠けるならば、該製品が促進保管条件下で安定であることはほとんどないだろう。
【0098】
実施例3
以下のバッチを実施例1に記載した処理を用いて作製した。
【表5】

【0099】
表6および7に記載の結果に示されるように、12ヶ月まで安定性の検討を行った結果より、両方の製剤の良好な製品品質および健全性が示された。
【0100】
表6:フルチカゾン/ホルモテロール製剤Flutiform 250/10の12ヶ月までの25 ℃/60 %RH および40 ℃/75 %RHでのACI結果のまとめ。それぞれの結果は、6回の測定の平均である(3つのキャニスタの開始時と終了時)。
【表6】

【0101】
表7:フルチカゾン/ホルモテロール製剤Flutiform 250/5の12ヶ月までの25 ℃/60 %RH および40℃/75 %RHでのACI結果のまとめ。それぞれの結果は、6回の測定の平均である(3つのキャニスタの開始時と終了時)。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャニスタと絞り弁とを備え、HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子を含む懸濁エアゾール製剤を含有する定量噴霧式吸入器において、前記キャニスタと絞り弁との表面への粒子の堆積を減少させる方法であって、該製剤に湿潤剤を添加する工程を備える方法。
【請求項2】
前記湿潤剤がエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタンジオールなどのジオール類またはポリオール類、およびそれらの混合物からなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿潤剤がエタノールである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記湿潤剤を懸濁エアゾール製剤の全重量に対し2重量%未満の量で用いる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記湿潤剤を懸濁エアゾール製剤の全重量に対し0.01〜1.99重量%の量で用いる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記湿潤剤を懸濁エアゾール製剤の全重量に対し1.0〜1.5重量%の量で用いる請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記HFA噴射剤がHFA227である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フマル酸ホルモテロール二水和物を0.003〜0.04重量%の量で用いる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プロピオン酸フルチカゾンを0.01〜0.6重量%の量で用いる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記懸濁エアゾール製剤が、ネドクロミルおよびクロモグリク酸からなる群より選択した塩を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記塩がクロモグリク酸ナトリウム(DSCG)である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記クロモグリク酸ナトリウムを製剤の全重量に対し0.01〜0.1重量%の量で用いる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
HFA噴射剤中に懸濁したフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの粒子と、湿潤剤とを含み、前記粒子が懸濁液または分散した乾燥粉末のいずれかでレーザー回析により測定した際にD10(体積分布の10%)が0.2〜2マイクロメートルの範囲、D50が1〜4マイクロメートルの範囲、またD90が2〜6マイクロメートルの範囲である粒度分布を有することを特徴とする懸濁エアゾール製剤。
【請求項14】
前記湿潤剤がエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタンジオールなどのジオール類またはポリオール類、およびそれらの混合物からなる群より選択される請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項15】
前記湿潤剤がエタノールである請求項14に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項16】
前記湿潤剤を懸濁エアゾール製剤の全重量に対し2重量%未満の量で用いる請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項17】
前記湿潤剤を懸濁エアゾール製剤の全重量に対し0.01〜1.99重量%の量で用いる請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項18】
前記湿潤剤を懸濁エアゾール製剤の全重量に対し1.0〜1.5重量%の量で用いる請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項19】
前記HFA噴射剤がHFA227である請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項20】
前記フマル酸ホルモテロール二水和物を0.003〜0.04重量%の量で用いる請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項21】
前記プロピオン酸フルチカゾンを0.01〜0.6重量%の量で用いる請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項22】
前記懸濁エアゾール製剤が、ネドクロミルおよびクロモグリク酸からなる群より選択した塩を含む請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項23】
前記塩がクロモグリク酸ナトリウム(DSCG)である請求項22に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項24】
前記クロモグリク酸ナトリウムを製剤の全重量に対し0.01〜0.1重量%の量で用いる請求項23に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項25】
懸濁エアゾール製剤を温度25℃および相対湿度60%、より具体的には温度40℃および相対湿度75%で1ヶ月までの期間、より具体的には3ヶ月までの期間、さらに具体的には6ヶ月までの期間保管した際に目標平均送達用量の+/−15%以下の誤差(さらに目標物の+/−25%を超えかつ目標物の+/−30%を超えないとこで1値以下)を有するフマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンの両方の用量を、定量噴霧式吸入器より分注した際に送達する請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項26】
懸濁エアゾール製剤が、定量噴霧式吸入器内に温度17〜25℃および相対湿度29〜63%で少なくとも2週間保管した際に、空気力学的粒度分布の生体外表記として標識化用量の30〜60%の平均微粒子画分を有する請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項27】
定量噴霧式吸入器内に含有され、全ての百分率が組成物全重量に基づき0.035%のプロピオン酸フルチカゾン、0.007%のフマル酸ホルモテロール、0.034%のクロモグリク酸ナトリウム、1.4%のエタノールおよび100%になるまで適量のHFA227を含み、一日二回投与(BID)でプロピオン酸フルチカゾンの名目用量が50マイクログラム、またフマル酸ホルモテロールの名目用量が10マイクログラムである請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項28】
定量噴霧式吸入器内に含有され、全ての百分率が組成物全重量に基づき0.071%のプロピオン酸フルチカゾン、0.007%のフマル酸ホルモテロール、0.034%のクロモグリク酸ナトリウム、1.4%のエタノールおよび100%になるまで適量のHFA227を含み、一日二回投与(BID)でプロピオン酸フルチカゾンの名目用量が100マイクログラム、またフマル酸ホルモテロールの名目用量が10マイクログラムである請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項29】
定量噴霧式吸入器内に含有され、全ての百分率が組成物全重量に基づき0.178%のプロピオン酸フルチカゾン、0.007%のフマル酸ホルモテロール、0.034%のクロモグリク酸ナトリウム、1.4%のエタノールおよび100%になるまで適量のHFA227を含み、一日二回投与(BID)でプロピオン酸フルチカゾンの名目用量が250マイクログラム、フマル酸ホルモテロールの名目用量が10マイクログラムである請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項30】
定量噴霧式吸入器内に含有され、全ての百分率が組成物全重量に基づき0.357%のプロピオン酸フルチカゾン、0.007%のフマル酸ホルモテロール、0.034%のクロモグリク酸ナトリウム、1.4%のエタノールおよび100%になるまで適量のHFA227を含み、一日二回投与(BID)でプロピオン酸フルチカゾンの名目用量が500マイクログラム、またフマル酸ホルモテロールの名目用量が10マイクログラムである請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項31】
定量噴霧式吸入器内に含有され、全ての百分率が組成物全重量に基づき0.357%のプロピオン酸フルチカゾン、0.014%のフマル酸ホルモテロール、0.068%のクロモグリク酸ナトリウム、1.4%のエタノールおよび100%になるまで適量のHFA227を含み、一日二回投与でプロピオン酸フルチカゾンの名目用量が500マイクログラム、またフマル酸ホルモテロールの名目用量が20マイクログラムである請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項32】
定量噴霧式吸入器内に含有され、全ての百分率が組成物全重量に基づき0.357%のプロピオン酸フルチカゾン、0.014%のフマル酸ホルモテロール、0.034%のクロモグリク酸ナトリウム、1.4%のエタノールおよび100%になるまで適量のHFA227を含み、一日二回投与でプロピオン酸フルチカゾンの名目用量が500マイクログラム、またフマル酸ホルモテロールの名目用量が20マイクログラムである請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤。
【請求項33】
請求項13に記載の懸濁エアゾール製剤を必要とする患者に投与することを備える喘息、アレルギー性鼻炎または慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療する方法。
【請求項34】
前記懸濁エアゾール製剤をBID投与する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記懸濁エアゾール製剤を投与量当たり二回の作動で送達する請求項33に記載の方法。
【請求項36】
短時間作用性β2−刺激薬を同時に、順次にまたは別途に投与する工程を備える請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記短時間作用性β2−刺激薬がアルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、フェノテロール、レバルブテロール、レプロテロールおよびピルブテロールからなる群より選択される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンと、アルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、フェノテロール、レバルブテロール、レプロテロールおよびピルブテロールからなる群より選択した短時間作用性β2−刺激薬とを含む懸濁エアゾール製剤を必要とする患者に投与する工程を備える喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療する方法。
【請求項39】
吸入コルチコステロイドを受けていないかまたは低から中用量の吸入コルチコステロイドを受けている患者に、10マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物および100マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンBIDの名目用量を含む懸濁エアゾール製剤を含有する定量噴霧式吸入器を提供する工程を備える請求項38に記載の方法。
【請求項40】
中から高い用量の吸入コルチコステロイドを受けている患者、または中から高い用量の吸入コルイコスレロイドを受けることを示されている患者に、10マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物および250〜500マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンBIDの名目用量を含む懸濁エアゾール製剤を含有する定量噴霧式吸入器を提供する工程を備える請求項38に記載の方法。
【請求項41】
低、中または高い用量での吸入コルイコスレロイドを受けているが、吸入コルイコスレロイドによる適切に抑制されていない患者、または吸入コルイコスレロイドを受けることを示されている患者に、フマル酸ホルモテロール二水和物およびプロピオン酸フルチカゾンを含む懸濁エアゾール製剤を含有する定量噴霧式吸入器を提供する工程を備える請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記定量噴霧式吸入器が、10マイクログラムのフマル酸ホルモテロール二水和物および250〜500マイクログラムのプロピオン酸フルチカゾンBIDの名目用量を含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記懸濁エアゾール製剤が請求項13に記載されたようなものである請求項38に記載の方法。
【請求項44】
上記請求項に記載された懸濁エアゾール製剤を含む定量噴霧式吸入器用のキャニスタにおいて、充填し、温度約17〜約25℃および相対湿度約29〜63%で少なくとも2週間保管した後のキャニスタが、該キャニスタに充填したフマル酸ホルモテロール二水和物の量に対し約12%以下、より具体的には約4〜10%の範囲のフマル酸ホルモテロール二水和物の残留物を含有することを特徴とするキャニスタ。
【請求項45】
上記請求項に記載された懸濁エアゾール製剤を含む定量噴霧式吸入器用のキャニスタにおいて、充填し、温度約17〜約25℃および相対湿度約29〜63%で少なくとも2週間保管した後のキャニスタが、該キャニスタに充填したプロピオン酸フルチカゾンの量に対し約12%以下、より具体的には約4〜10%の範囲内のプロピオン酸フルチカゾンの残留物を含有することを特徴とするキャニスタ。
【請求項46】
前記懸濁エアゾール製剤が請求項13〜32のいずれか一項に記載のものである請求項44または45に記載のキャニスタ。

【公表番号】特表2013−507429(P2013−507429A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533648(P2012−533648)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065569
【国際公開番号】WO2011/045429
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(500322826)ヤゴテック アーゲー (16)
【Fターム(参考)】