説明

改善された難燃性を有する硬化性組成物

本発明は、a)ポリエーテルおよびポリアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の有機ポリマー、ここで、該有機ポリマーは、少なくとも1個のC-C-アルコキシ基またはC-C-アシルオキシ基を有する定義された少なくとも1個の架橋性末端基を有する、b)少なくとも1個のビニル基、同様に、少なくとも1個のC-C-アルコキシ基またはC-C-アシルオキシ基を有する少なくとも1個の定義された架橋性末端基を有する少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)、およびc)赤リン、有機リン化合物、ポリリン酸アンモニウム、金属水酸化物、膨張性黒鉛、ホウ酸亜鉛およびメラミン塩から選択される少なくとも1種の難燃性添加剤を含む硬化性組成物、上記組成物の、特に難燃性の弾性コーティングを有する基材を提供するための接着剤、シーリングまたはコーティング材料としての使用、このようにして得られるコーティング、ならびに、少なくとも1種の有機ポリマーa)を含む硬化性組成物の難燃性を改善するための少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)b)の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン変性ポリエーテルまたはポリアクリル酸エステルおよび少なくとも1種の特定のポリ(ジアルキルシロキサン)の混合物に基づく、改善された難燃性を有する硬化性組成物に関する。本発明は、さらに、特に難燃性の弾性コーティングを有する基材を提供するための接着剤、シーラントまたはコーティング材料としての該組成物の使用、このような方法で得られるコーティング、ならびに、該シラン変性ポリエーテルまたはポリアクリル酸エステルに基づく硬化性組成物の燃焼挙動を改善するための特定のポリ(ジアルキルシロキサン)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一成分型および二成分型、湿分硬化性接着剤、シーラントおよびコーティング材料は、長きにわたり多くの工業用途で重要な役割を担ってきた。遊離のイソシアネート基を有するポリウレタン接着剤およびシーラント、ならびに、ポリ(ジメチルポリシロキサン)系の従来のシリコーン接着剤およびシーラントに加えて、いわゆるシラン変性接着剤およびシーラントの使用も最近普及している。ポリウレタン接着剤およびシーラントと比較して、シラン変性接着剤およびシーラントは、イソシアネート基、特に単量体イソシアネート基を含まないという利点を有する。さらに、それらは多くの基材に対してプライマーで表面処理する必要なく幅広い接着スペクトルを示すという特徴を有する。ジメチルポリシロキサン系の従来のシリコーン接着剤およびシーラントと比較して、シラン変性接着剤およびシーラントは、広い範囲の基材に対して顕著により良好な接着挙動を示す。加えて、従来のシリコーン接着剤およびシーラントは、シラン変性接着剤およびシーラントと比較して、重ね塗りすることができず、より染みつきやすい。したがって、シラン変性接着剤、シーラントおよびコーティング材料は、多くの用途に好適な系である。
【0003】
これに関して、接着剤、シーラントおよびコーティング材料において求められる要求は、多数かつ様々であり、用途によって異なる。もちろん、接着剤、シーラントおよびコーティング材料は、第一にその主目的、すなわち確実に接着し、シールし、または良好な接着および耐性のコーティングを形成することを満たさねばならない。しかしながら、他の要因、例えば、重ね塗りが可能であること、長期安定性であること、または例えば燃焼の際の熱的負荷下での挙動も大きな役割を果たす。燃焼の際の熱的負荷下での挙動は、接着剤、シーラントおよびコーティング材料が建築構造、自動車構造またはプラント建設において使用することを目的とする場合、特にプラントが、例えば大抵の場合に化学産業または石油精製産業において、可燃性物質またはさらに爆発性物質の処理または運搬に使用される場合、特に決定的に重要である。
【0004】
シラン変性ポリマー系の様々な接着剤、シーラントおよびコーティング材料が既に開発され、そのような用途でうまく使用されてきた。それらは、例えば管装置およびボイラー装置の弾性コーティングおよび接着、ならびに、それ自体が対応するプラントの建設において使用される絶縁材料のコーティングに使用される。一般に、その製品は、シラン変性ポリエーテル系またはポリアクリル酸エステル系である。難燃特性を得るために大量の難燃性添加剤を混合させる。特定分野において使用される材料の耐火性に対する要求が絶えず高まっている結果として、接着剤、シーラントおよびコーティング材料の燃焼挙動をさらに改善することが望まれる。
【0005】
欧州特許出願公開第0839853号には、建設業において使用するための、アミンオキシ官能性シロキサンまたはシランを有する標準的なシリコーンの反応性生物に基づくスプレー可能なシリコーンエマルジョンが提案されている。上記エマルジョンは、水、界面活性剤および特有のフィラーを追加的に含有する。これはジメチルポリシロキサンに基づく系であるために、シリコーン接着剤およびシーラントに関する上記に既に述べた欠点を示す。
【0006】
特に、多くの材料に対する接着が不十分である。
【0007】
アルコキシシラン末端化ポリマーを含有する速硬性一成分型混合物は、米国特許出願公開第2004/0204539号から既知である。これに関し、考慮されるポリマーは、有機骨格を有するもの、ならびに重合性骨格が全体的にまたは少なくとも部分的に有機シロキサンから形成されるものである。有機骨格を有するポリマーおよび有機シロキサン系のポリマーを含有する混合物の実質的な開示は見られないが、一般的に、異なる主鎖を有するポリマーの混合物を用いることができることは指摘されていた。記載された混合物は、明らかに迅速に硬化し、燃焼挙動については言及されていなかった。したがって、難燃性添加剤の添加も、多数の考えられる追加的補助剤を挙げる際についでに言及されるのみであった。
【0008】
国際公開第2007/048538号の主題は、硬化の際にメタノールをほとんど放出せず、許容できる硬化速度を示すα-エトキシシラン変性ポリマーである。考えられるポリマー基剤として、最も異なる多数の有機ポリマーに加えて、シリコーン樹脂も挙げられていた。ここでも、1つのポリマーが有機骨格を有し、第2のポリマーが有機シロキサン系であるポリマーの混合物について全く開示がなされていなかった。またしても、燃焼性能は示唆されていなかった。任意の添加剤の一覧おいてにのみ、種々の難燃剤の添加が挙げられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0839853号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0204539号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/048538号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、1成分型、2成分型または他成分型として製剤化することができ、良好な耐火性を示す、シラン変性有機ポリマー系の接着剤、シーラントおよびコーティング材料の基礎となる架橋性組成物を提供することであった。
【0011】
既知のシラン変性ポリマー系接着剤、シーラントおよびコーティング材料の利点、例えば、良好なはけ塗適性および良好な塗布性、多くの基材上での良好な接着、ならびに硬化させた製剤の高い弾力性、高い引っ張り強さ、良好な研磨性および耐候性は、もちろん維持されるべきである。その上、可能であれば、ハロゲン化物質またはアンチモン含有物質の使用を避けるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、特定のポリ(ジアルキルシロキサン)を、所定のシラン変性ポリエーテルまたはポリアクリル酸エステルに基づく硬化性組成物中で用いることにより、本発明の課題が達成されることが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明の主題は、
a)一般式(I):
【化1】

[式中、
Aは、アミド基、カルバメート基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、カーボネート基、スルホネート基、スルフィネート基、酸素原子および窒素原子から選択される2価の連結基を表し、
Rは、炭化水素主鎖が任意にヘテロ原子で遮られてよい1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、
X、Y、Zは、互いに独立して、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、ここで、少なくとも1つの基はC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、
nは0または1である]
で示される少なくとも1個の末端基を有する、ポリエーテルおよびポリアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の有機ポリマー、
b)一般式(I'):
【化2】

[式中、
A'は、アミド基、カルバメート基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、カーボネート基、スルホネート基、スルフィネート基、酸素原子および窒素原子から選択される2価の連結基を表し、
R'は、直接結合または炭化水素主鎖が任意にヘテロ原子で遮られてよい1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、
X'、Y'、Z'は、互いに独立して、ビニル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、ここで、少なくとも1つの基はビニル基であり、少なくとも1つの基はC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、
n'は0または1である]
で示される少なくとも1個の末端基を有する、少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)、および
c)赤リン、有機リン化合物、ポリリン酸アンモニウム、金属水酸化物、膨張性黒鉛、ホウ酸亜鉛およびメラミン塩から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤
を含む硬化性組成物である。
【0014】
この種の組成物は、多種多様な基材に優れた接着特性を示し、硬化後のきわめて良好な延伸性により高弾性の接着結合およびコーティングを可能にし、特に優れた燃焼性能であるという特徴を有する。
【0015】
これに関し、優れた燃焼性能であるとは、硬化性組成物およびそれらから得られる硬化生成物が、難燃焼性であり、自己消火特性を有することを意味すると理解される。特に、これは、硬化性組成物およびそれらから得られる硬化生成物が、ポリ(ジアルキルシロキサン)b)を別の有機ポリマーa)で代替することによる本発明の組成物とは異なる硬化性組成物よりも、より高い温度または炎へのより長い暴露でのみ発火し、および/または、発火するまで炎に暴露した後で、続いて炎を取り除き、それらがよりすばやくそれ自身で鎮火することを意味すると理解される。
【0016】
燃焼性能の顕著な改善に加えて、未硬化混合物は貯蔵における安定性問題を全く有さないことも驚くべきことである。多くの典型的なシリコーンポリマーは、シラン変性ポリマーと相性が悪いことはよく知られており、これら成分の混合物は、カートリッジ中に、または他の貯蔵容器中に、別々にして/分離されていることが多い。シラン変性ポリマー系二成分配合型接着剤、シーラントおよびコーティング材料において使用されるような促進剤ペーストとの混和性は最適である。
【0017】
硬化性組成物は、物理的または化学的手段により硬化可能な物質または複数の物質の混合物を意味すると理解される。これに関して、これら物理的または化学的手段は、例えば熱、光またはまたは他の電磁放射の形態におけるエネルギーの供給から成るだけでなく、最も単純には空気中の水分と接触させることにより、水または別の反応性成分と接触させることによっても成り得る。
【0018】
ポリエーテルは、ポリマーの繰り返し単位がエーテル官能基C-O-Cを主鎖において含むポリマーを意味すると理解される。したがって、ポリエーテルは、エーテル側基を有するポリマー、例えばセルロースエーテル、デンプンエーテルおよびビニルエーテルポリマーを含まない。一般に、ポリアセタール、例えばポリオキシメチレン(POM)も同様にポリエーテルのうちに入らない。
【0019】
ポリアクリル酸エステルは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに基づくポリマーを意味すると理解され、したがって、繰り返し単位として構造部分-CH-CR(COOR)- [式中、RはHまたはメチルを表し、Rは直鎖状、分枝状、環状および/またはさらに機能的に置換されたアルキル基を表す]を有する。Rは、好ましくはHである。Rは、好ましくは任意に置換されたC-C10アルキル、特に好ましくは任意に置換されたC-Cアルキル、きわめて好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシルまたは2-ヒドロキシエチルを表す。
【0020】
本発明の硬化性組成物は、ポリエーテルおよびポリアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の有機ポリマーを含み、ここで、該有機ポリマーは一般式(I):
【化3】

[式中、A、R、X、Y、Zおよびnは上記に述べた意味を有する]
で示される少なくとも1個の末端基を有する。これら有機ポリマーを、以下において、成分a)または有機ポリマーa)としても示す。
【0021】
これに関して、2価の連結単位Aは、ポリマー骨格と末端基のR基とを連結する2価の化学基を意味すると理解される。2価の連結基Aを、例えばアルコキシシラン末端化ポリエーテルおよび/またはアシルオキシシラン末端化ポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルポリマーの製造中に、例えばヒドロキシル基官能化ポリエーテルとイソシアネートシランとの反応を用いてウレタン基(カルバメート基)として、形成させることができる。これに関して、2価の連結基は、得られる基本ポリマー骨格の構造特性と区別できても、あるいはできなくてもいずれでもよい。区別できない構造特性は、例えばその構造特性がポリマー骨格の繰り返し単位が連結する点と同一である場合に生じる。
【0022】
式(I)において、nは0または1を表し、すなわち2価の連結基Aがポリマー骨格を基Rに結びつけるか(n=1)、または、ポリマー骨格が基Rに直接に結合または連結する(n=0)。
【0023】
R基は、任意に炭化水素主鎖においてヘテロ原子を含有する、2価のC−C12炭化水素基である。ヘテロ原子として、例えば酸素(O)または窒素(N)を含み得る。炭化水素基は、例えば直鎖状または分枝状あるいは環状、置換または非置換アルキレン基であり得る。炭化水素基は飽和または不飽和であり得る。
【0024】
X、YおよびZは、互いに独立して、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基である。ここで、X、Y、Z基の少なくとも1つは加水分解性基であるべきであり、これはC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基を意味する。加水分解性基として、アルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基を選択することが好ましい。これらは、アルコキシ基含有組成物の硬化に際し、粘膜を刺激する物質を放出しないため有利である。放出された量において、形成されたアルコールは無害であり、蒸発する。したがって、この種の組成物は、ドゥ・イット・ユアセルフ分野に特に適当である。しかしながら、加水分解性基として、アシルオキシ基、例えばアセトキシ基-O-CO-CHを用いることもできる。
【0025】
X、Y、Z基の1つがアルキル基であり、残りの2つの基が、それぞれ、アルコキシ基を表すか、あるいは、3つのX、Y、Z基の全てが、それぞれ、アルコキシ基を表すことが好ましい。概して、ジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基を含むポリマーは、迅速な硬化、高い架橋度およびそれによる良好な最終強度を可能とする高反応性の結合サイトを有する。ジアルコキシシリル基の特別な利点は、硬化後に、対応する組成物が、トリアルコキシシリル基を含む系よりも、弾性、軟性、および可撓性であることである。そのため、それらは特にシーラントとしての用途に適当である。その上、硬化の際に、それらはさらにより少ないアルコールを切り離すため、放出されるアルコールの量を減らすべき際に特に興味深い。一方で、トリアルコキシシリル基を有するとより高い架橋度を達成することができ、硬化後により高硬化のより強固な化合物が望まれる場合に特に有利である。その上、トリアルコキシシリル基はより反応性であるため、架橋がより速く、したがって、場合により必要な触媒の量がより少なく、「常温流れ」に対しての利点(力および場合により温度の影響下での対応する接着剤の寸法安定性)を示す。
【0026】
X、YおよびZは、互いに独立して、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基であることが特に好ましい。X、YおよびZは、互いに独立して、特に好ましくはメチル基またはメトキシ基である。メトキシ基およびエトキシ基は、低立体障害を有する比較的小さい加水分解性基であり、きわめて反応性であるため、低濃度の触媒でさえ迅速に硬化することができる。そのため、それらは迅速な硬化が望まれる系、例えば高い初期接着を示すべきである接着剤の系において特に興味深い。酸素原子上のアルキル基の種類によって、アルコキシシリル基を含有する化合物は、化学反応において異なる反応性を有する。これに関して、アルコキシ基の中でもメトキシ基は最も高い反応性を示す。特に早い硬化が望まれる際、そのようなシリル基に頼ることもできる。メトキシ基と比べると、より高級の脂肪族基(例えばエトキシ基)は、末端アルコキシシリル基のより低い反応性をすでにもたらし、架橋速度を段階的に高めるために有利に使用することができる。
【0027】
両方の基の組合せは、興味深い設計可能性を開拓する。所望の用途に対して、専らメトキシ基を有するシリル基は反応性が高すぎて、エトキシ基を有するシリル基は不活発すぎることが見出された場合に、例えばメトキシおよびエトキシを、それぞれ同一のアルコキシシリル基のXおよびYに対して選択するならば、最終的なシリル基の所望の反応性を特に精密に調整することができる。
【0028】
メトキシ基およびエトキシ基の他に、本質的により低い反応性を有するより大きな基を加水分解性基として用いることは当然できる。そのため、これは、アルコキシ基の設計の結果として硬化速度の低下を意図する際に特に興味深い。
【0029】
しかしながら、本発明の硬化性組成物は、一般式(I)[式中、X、YおよびZは、それぞれ互いに独立して、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシを表し、ただしX基、Y基およびZ基の少なくとも2つはメトキシまたはエトキシを表す]で示される少なくとも1個の末端基を有する少なくとも1種の有機ポリマーa)を含むことが好ましい。X、YおよびZはメトキシを表す一般式(I)で示される少なくとも1個の末端基を有する有機ポリマーa)は特に好ましい。
【0030】
Rが1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基であることが好ましい。組成物の硬化速度は、ポリマー骨格とシリル基との間の連結基を形成する炭化水素基の長さにも影響され得る。特に、Rは、メチレン基、エチレン基または1,3-プロピレン基である。メチレン基および1,3-プロピレン基を用いることが特に好ましい。ポリマー骨格への連結基としてメチレン基を有するアルコキシシラン末端化化合物(いわゆるα-シラン)は、末端シリル基の特に高い反応性を示す。このため、より短い硬化時間がもたらされ、その結果、そのようなポリマーに基づく製剤の非常に迅速な硬化がもたらされる。
【0031】
一般に、連結炭化水素鎖の長さの増大は、ポリマーの反応性の低下をもたらす。特に、γ-シラン(それらは非分枝状プロピレン基を連結として含む)は、必要な反応性(許容可能な硬化時間)と、遅延した硬化(開放時間、うまく接着した後での修正の可能性)とのバランスの良い関係を示す。α-アルコキシシラン末端化ビルディングブロックおよびγ-アルコキシシラン末端化ビルディングブロックを意図的に組み合わせるとことにより、系の硬化速度に所望するように影響を及ぼすことができる。
【0032】
したがって、本発明の硬化性組成物は、一般式(I)[式中、Rはメチレン基または1,3-プロピレン基を表す]で示される少なくとも1個の末端基を有する少なくとも1種の有機ポリマーa)を含むことが好ましい。
【0033】
Aは、本発明において、アミド基、カルバメート基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、カーボネート基、スルホネート基またはスルフィネート基または酸素原子または窒素原子である。連結単位Aを、シリル-末端化ポリマーの製造中において、-R-SiXYZ配列を有する反応性化合物で骨格ポリマーを処理して、形成させることができる。A基は、基礎ポリマー骨格において得られる構造特徴と区別できても、区別できなくても、どちらでもよい。例えばポリマー骨格の繰り返し単位の連結点と同一である場合、区別できない構造特徴が生じる。この場合、nは値0に相当するだろう。連結基Aがポリマー骨格中の連結基と区別できる場合、したがって、nは値1に相当する。
【0034】
カルバメート(ウレタン)基および尿素基は特に好ましい連結基である。プレポリマーの特定の官能基を別の官能基を有する有機シランで処理することにより、それらを得ることができる。カルバメート基は、例えばポリマー骨格が末端ヒドロキシル基を含み、イソシアナトシランを追加の成分として添加する場合、または、反対に末端イソシアネート基を有するポリマーを末端ヒドロキシル基を含むアルコキシシラン(ヒドロキシ官能性アルコキシシラン)で処理する場合のいずれかで生じ得る。同じ方法で、(シラン上またはポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステル上のいずれかに)末端第1級または第2級アミノ基を添加し、そして、それが個々の反応相手中に存在する末端イソシアネート基と反応する際に、尿素基を得ることができる。これは、末端イソシアネート基を有するポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルとアミノシランとを反応させるか、または、末端アミノ基を有するポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルとイソシアネートシランとを反応させるかのいずれかを意味する。
【0035】
カルバメート基および尿素基は、水素結合を形成することができるため、ポリマー鎖の引っ張り強さおよび全体としての架橋ポリマーの引っ張り強さを高めるのに有利である。
【0036】
骨格としてポリエーテルを含むポリマーは、末端基においてのみならずポリマー骨格においても、柔軟かつ弾性の構造を有する。このようにして、優れた弾性特性を有する組成物を製造することができる。
【0037】
これに関して、ポリエーテルはそれらの骨格において柔軟なだけでなく、同時に耐性がある。したがって、それらは例えば水および細菌によって浸食も分解もされない。本発明に関して、ポリエチレンオキシドおよび/またはポリプロピレンオキシドに基づくポリエーテルが入手可能性の理由から成分a)において特に好ましく用いられる。
【0038】
本発明の組成物におけるそれらの使用に関して、骨格としてポリアクリル酸エステルを含むポリマーは、組成物の燃焼性能に特に有利な効果を及ぼす。対応するポリアクリル酸C−Cエステルが好ましく、アクリル酸メチルエステルおよびアクリル酸ブチルエステルを重合することにより得られるポリアクリル酸エステルが特に好ましい。
【0039】
したがって、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびエチレングリコール-プロピレングリコールコポリマーから選択されるポリエーテル、または、ポリアクリル酸C−Cエステルを、本発明の硬化性組成物における有機ポリマーa)として用いることが好ましい。発明の硬化性組成物は、一般式(I)で示される少なくとも1個の末端基を有するポリプロピレングリコールを有機ポリマーa)として含むことが特に好ましい。
【0040】
有機ポリマーa)は、一般式(I)で示される少なくとも2個の末端基を有することが好ましい。したがって、ポリマー鎖は、それぞれ少なくとも2個の連結サイトを含み、そこで、ポリマーは大気中湿度の存在下での加水分解性基の開裂を通して縮合を引き起こすことができる。この方法において、良好な強度を有する接着結合が得られるような、均質かつ迅速な架橋性が達成される。その上、加水分解性基の量および構造(例えばジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基、メトキシ基またはより長い置換基等の使用)によって、特に最終架橋組成物の弾力性、柔軟性および耐熱性に影響し得るような、達成されるネットワークの物理的形状を長鎖系(熱可塑性物質)、比較的ゆるい架橋3次元ネットワーク(エラストマー)または高架橋系(熱硬化性物質)へと導くことが可能になる。
【0041】
成分a)は、4000〜100000g/mol、好ましくは8000〜50000g/mol、特に好ましくは10000〜30000g/mol、特に15000〜25000g/molの分子量Mを有する、少なくとも1種のアルコキシシラン末端化ポリエーテルおよび/またはアシルオキシシラン末端化ポリエーテルを含むことが好ましい。分子量Mは、ポリマーの数平均分子量を意味すると理解される。本発明に関して、数平均分子量Mおよび重量平均分子量Mは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。この種の方法は当業者に既知である。上記に示した分子量は、対応する組成物が粘度(処理のしやすさ)、強度および弾力性の間で、バランスのよい関係を有するので、特に有利である。この組合せは、12000〜20000g/mol、特に14000〜18000g/molの分子量範囲(M)において、非常に有利に著しい。
【0042】
本発明に関して、成分a)は、M/Mの比が1.5未満である少なくとも1種のポリエーテルを含むことが好ましい。多分散性とも称されるM/Mの比は、モル質量分布を意味し、そのため、多分散ポリマーにおける個々の鎖の異なる重合度を意味する。多分散性は、多くの重合物および重縮合物について約2の値を有する。1の値は厳密な単分散性を意味する。本発明に関して好ましい1.5未満の多分散性は、比較的狭い分子量分布を示し、したがって、分子量に関連する性質(例えば粘度)の特有の発展を示唆する。
【0043】
成分a)において好ましく用いられるポリエーテルは、ポリマー鎖末端における二重結合の数が少ないという特徴をさらに有することが好ましい。このいわゆる末端不飽和は、低分子量ジオールとアルキレンオキシドとの重合において望ましくない副反応を引き起こす。結果として、1つの鎖末端でしかシリル化することができず、したがって、1つの鎖末端でのみ架橋するモノヒドロキシポリエーテルが一定分量存在する。これはポリエーテルおよびそれから製造した組成物の官能性に不利な作用を有する。少ない数の末端二重結合を有するポリエーテルは、例えばいわゆる複金属シアン化物触媒(DMC触媒)によって製造することができる。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、一般式(Ι'):
【化4】

[式中、A'、R'、X'、Y'、Z'およびn'は上記に述べた意味を有する]
で示される少なくとも1個の末端基を有する少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)をさらに含む。これらポリ(ジアルキルシロキサン)は、以下において、成分b)またはポリ(ジアルキルシロキサン)b)としても示す。
【0045】
2価の連結単位A'に関して、2価の連結単位Aに関する上記の記載が同様にあてはまる。しかしながら、上記に特に好ましい連結単位として述べたカルバメート基および尿素基の他に、加えて、酸素原子が連結単位A'として特に好ましい。式I'中の連結単位A'は、酸素原子を表すことがきわめて好ましい。
【0046】
R'は、直接結合または任意に炭化水素の主鎖中にヘテロ原子を含む2価のC−C12炭化水素基を表す。例えば酸素(O)、窒素(N)または硫黄(S)をヘテロ原子として含むことができる。炭化水素基は、例えば直鎖状、分枝状または環状、置換または非置換アルキレン基である。炭化水素基は飽和または不飽和であってよい。R'は、直接結合またはC−C炭化水素基を表すことが好ましい。R'は、特に直接結合、メチレン基、エチレン基または1,3-プロピレン基である。R'は、特に好ましくは、直接結合、メチレン基または1,3-プロピレン基を表し、きわめて好ましくは直接結合を表す。
【0047】
したがって、一般式(Ι')[式中、A'は−O−を表し、R'は直接結合を表す]で示される少なくとも1個の末端基を有するポリ(ジアルキルシロキサン)は、成分b)として好ましい。
【0048】
式(Ι')中のX’、Y’、Z'は、互いに独立して、ビニル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基を表し、ここで、少なくとも1つの基はビニル基であり、少なくとも1つの基はC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基である。
【0049】
この置換パターンは、特にポリ(ジアルキルシロキサン)b)と有機ポリマーa)との相溶性をもたらし、そのため、両方のポリマーを含む組成物の貯蔵中に安定性の問題が生じない。
【0050】
基X’、Y'およびZ'の1つは好ましくはビニル基を表し、残りの2つの基は、それぞれ、C-Cアルコキシ基を表す。
【0051】
これに関して、好ましいC-C基はメトキシ基およびエトキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0052】
したがって、好ましい成分b)は、一般式(Ι')[式中、X'はビニルを表し、Y'およびZ'は、互いに独立して、メトキシまたはエトキシを表す]で示される少なくとも1個の末端基を有するポリ(ジアルキルシロキサン)である。
【0053】
本発明の硬化性組成物は、特に好ましくは一般式(Ι')[式中、A'は−O−を表し、R’は直接結合を表し、n'は1を表し、X'はビニルを表し、Y'およびZ'は、互いに独立して、メトキシまたはエトキシ、特にメトキシを表す]で示される少なくとも1個の末端基を有する少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)を含む。
【0054】
ポリ(ジアルキルシロキサン)b)のポリマー骨格のアルキル基は、例えば直鎖状または分枝状または環状C−C20アルキルであり得る。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピルおよびシクロヘキシルである。メチルが特に好ましい。したがって、ポリ(ジアルキルシロキサン)b)は、ポリ(ジメチルシロキサン)であることが好ましい。
【0055】
成分b)としてきわめて好ましいポリ(ジアルキルシロキサン)は、一般式(II):
【化5】

[式中、
A'は−O−を表し、
R'は直接結合を表し、
X’はビニルを表し、
Y'およびZ'は、互いに独立して、メトキシまたはエトキシ、特にメトキシを表し、
n'は1を表し、
n”は0を表し、
m'は、2〜5000、好ましくは5〜2500、より好ましくは10〜1000、きわめて好ましくは50〜500の整数を表す]
を有する。
【0056】
本発明の硬化性組成物は、成分c)として、赤リン、有機リン化合物、ポリリン酸アンモニウム、金属水酸化物、膨張性黒鉛、ホウ酸亜鉛およびメラミン塩から選択される少なくとも1種の難燃性添加剤を含む。これら難燃性添加剤は、以下において、成分c)または難燃性添加剤c)としても示す。
【0057】
好ましい有機リン化合物は、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートおよびハロゲン化リン酸エステルであり、ここで、ハロゲン化リン酸エステル自体の中で、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロイソプロピル)ホスフェートおよびトリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェートが好ましい。好ましい金属水酸化物は、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムであり、好ましくはメラミン塩メラミンオルトホスフェート、ジメラミンオルトホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェートおよびメラミンボレートである。
【0058】
酸化アンチモンを場合により相乗剤として添加する。これは、特にハロゲン化リン酸エステルを難燃性添加剤として使用する場合である。
【0059】
特定の場合において、使用する接着剤、シーラントおよびコーティング剤が、ハロゲンを含まずアンチモン含有化合物を含まないと有利である。したがって、特定の態様において、本発明の硬化性組成物はハロゲンを含まず、アンチモン含有化合物を含まない。この場合、難燃性添加剤も、当然に、ハロゲンを含まずアンチモンを含まない化合物からのみ選択される。これに関して、ハロゲン化合物およびアンチモン含有化合物を含まないとは、硬化性組成物中のハロゲン含有化合物およびアンチモン含有化合物の総量が、硬化性組成物の総重量に対して、最大10ppm、好ましくは最大1ppmであることを意味すると理解される。
【0060】
本発明の硬化性組成物は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、膨張性黒鉛およびホウ酸亜鉛から選択される少なくとも1種の難燃性添加剤を含むことが好ましい。水酸化アルミニウムを難燃性添加剤として含むことが特に好ましい。
【0061】
本発明の硬化性組成物において、有機ポリマーa)の総量:ポリ(ジアルキルシロキサン)b)の総量の重量比は、好ましくは5:1〜1:5、好ましくは3:1〜1:3、特に好ましくは2:1〜1:2である。硬化性組成物が複数の有機ポリマーa)および/または複数のポリ(ジアルキルシロキサン)b)を含む場合、総量は、成分の全ての例の量の合計、すなわち全ての有機ポリマーa)の量の合計および全てのポリ(ジアルキルシロキサン)b)の量の合計を当然意味すると理解される。
【0062】
難燃性添加剤c)の総量は、それぞれ硬化性組成物の総重量に対して、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%であることが好ましい。同様に、上記総量は成分(この場合成分c))の全ての例の量の合計を意味すると理解される。
【0063】
通常、本発明の組成物自体は、接着剤、シーラントまたはコーティング材料として既に適当である。しかしながら、上記に述べた成分a)、b)およびc)に加えて、例えば改善された弾性、改善されたレジリエンスおよび低い残留粘着性を付与するさらなる助剤および添加剤を含有することもできる。これら助剤および添加剤としては、接着促進剤、可塑剤およびフィラーが挙げられる。その上、硬化触媒、例えばシラン変性ポリマー系硬化性組成物に通常使用される有機錫化合物を供することができる。さらに、組成物は、例えば安定剤、酸化防止剤、反応性希釈剤、乾燥剤、UV安定剤、耐劣化剤、レオロジー助剤、有色顔料または顔料ペースト、防かび剤、難燃剤および/または任意に限定された範囲内の溶媒を、追加の添加剤として含むことができる。
【0064】
本発明の組成物を、1成分型湿分硬化性接着剤、シーラントまたはコーティング組成物として構成することができる。これは、端封または非常に狭い接着化合物およびシーラントコンパウンドを形成するための用途に必要とされ、このために成分を混合する必要はなく、硬化は端区域からまたは大気中からの水蒸気の拡散によって、十分に迅速な硬化でもたらされる。しかしながら、特に非孔質基材、広い面を接着結合またはコーティングするために、当業者は、組成物の十分な硬化を確実にするために、2成分型態様または多成分型態様の形態を好む。したがって、本発明の組成物は、2成分または多成分形態でもあり得る。
【0065】
本発明の硬化性組成物の2成分型の態様において、本発明に規定された原料a)、b)およびc)を含む硬化性組成物が成分を混合した際にのみ得られるように、原料a)、b)およびc)の1つを他の2つの原料と別の異なる成分中に入れることができる。しかしながら、第1成分(成分A)は、既に原料a)、b)およびc)を含み、したがって既に1成分型の本発明の硬化性組成物であって、第2成分(成分B)が促進剤成分である態様が好ましい。促進剤成分は、硬化成分とも称される。これに関し、少なくとも水および増粘剤を含む成分Bが好ましい。成分Bは、水を1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%含むことが好ましく、ここで、上記の量は成分Bの総量を参照する。ここで水は、無機増粘剤に吸収されているか、または有機増粘剤中に溶解または膨潤されていることが好ましい。さらに、成分Bは、オリゴマー、好ましくはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとのコポリマー含むことができる。種々のポリオキシアルキレンの混合物を使用することもできる。ポリオキシアルキレンの分子量は、1000〜20000、好ましくは2000〜12000g/molであることが好ましい。
【0066】
水溶性または水膨潤性ポリマーまたは無機増粘剤は、好ましい態様において、好ましい増粘剤である。有機天然増粘剤の例は、寒天、カラギーン、トラガカント(traganth)、アラビアゴム、アルギン酸塩、ペクチン、多糖類、グアー豆、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼインである。有機全合成増粘剤または有機部分合成増粘剤の例は、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、例えばチロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミンである。水に対する無機増粘剤または吸収剤の例は、ポリケイ酸、高分散性の熱分解性親水性ケイ酸、粘土鉱物、例えばモンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、アルミニウムケイ酸塩、滑石、石英鉱物、水酸化マグネシウムなどである。
【0067】
迅速かつ完全な硬化を確保するために、使用前に成分Aを成分Bと1:1〜200:1重量部の割合で混合するように成分を設計することが好ましい。
【0068】
2成分型または多成分型の態様において、成分Aならびに成分Bのいずれもが、上記に述べたさらなる通常の助剤および添加剤を含むことができる。
【0069】
したがって、1種以上の可塑剤を含むことができる。可塑剤は、組成物の粘度を低下させ、そのため加工性を容易にし、さらに、組成物の柔軟性および伸び挙動を改善する物質を意味すると理解される。
【0070】
可塑剤を、脂肪酸エステル、ジカルボン酸エステル、OH基を有する脂肪酸のエステルまたはエポキシ化脂肪酸のエステル、脂肪、グリコール酸エステル、フタル酸エステル、安息香酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、トリメリット酸エステル、エポキシ化可塑剤、ポリエーテル可塑剤、ポリスチレン、炭化水素可塑剤および塩化パラフィン、ならびにそれらの2以上の混合物から選択することが好ましい。これら可塑剤の1つまたは特別の組合せの賢明な選択によって、本発明の組成物のさらに有利な特性、例えばポリマーのゲル化挙動、低温弾力性または低温耐性、あるいは帯電防止性を実現することができる。
【0071】
フタル酸エステル群の適当な例は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソウンデシル、フタル酸ジイソノニルまたはフタル酸ブチルベンジルであり、アジペート群の適当な例は、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソデシル、さらにコハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチルまたはオレイン酸ブチルである。ポリエーテル可塑剤の中で、末端基終端ポリエチレングリコール、例えばポリエチレン-またはポリプロピレングリコールジ−C1−4アルキルエーテル、特にジエチレングリコールまたはジプロピレングリコールのジメチルエーテルまたはジエチルエーテル、ならびにそれらの2以上の混合物を用いることも好ましい。同様に適当な例示可塑剤は、アビエチン酸エステル、酪酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、チオ酪酸エステル、クエン酸エステル、ニトロセルロース系エステルおよびポリ酢酸ビニル、ならびにそれらの2以上の混合物である。例えば、アジピン酸モノオクチルエステルと2-エチルヘキサノールとの非対称エステル(Edenol DOA、Cognis Deutschland GmbH、デュッセルドルフ)も適当である。さらに、単官能性、直鎖状または分枝状C4-16アルコールの純エーテルまたは混合エーテル、あるいは、そのようなアルコールの異なるエーテルの2種以上の混合物、例えばジオクチルエーテル(Cetiol OE(Cognis、デュッセルドルフ)として入手可能)も、可塑剤として適当である。トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、(2-エチルヘキシル)-ジフェニルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェートおよびトリス(2-ブトキシエチル)ホスフェートは、リン酸エステルの群から選択される適当なエステルの例である。それらの可塑剤としての機能に加えて、有機リン酸エステルは、本発明の組成物において成分c)および可塑剤として同時に作用するような、難燃性をも有する。
【0072】
同様に、本発明に関して適当な可塑剤は、例えばOH末端基を有するジオールを単官能性イソシアネートで処理することにより製造可能なジウレタンでもあり、実質的に全ての遊離OH基が反応するように化学量論量を選択する。場合により、例えば蒸留によって、過剰のイソシアネートを反応混合物から続いて除去することができる。ジウレタンを製造するためのさらなる方法は、一価アルコールをジイソシアネートで処理することであり、ここで、可能な全てのNCO基が反応する。
【0073】
特定の用途に対して本発明の組成物の粘度が高すぎる場合、反応性希釈剤を使用することにより硬化化合物中で脱混合現象(例えば可塑剤移行)を引き起こすことなく、粘度を容易かつ簡便に低下させることもできる。反応性希釈剤は、塗布後に例えば水分または大気中酸素と反応する少なくとも1個の官能基を有することが好ましい。これらの基の例は、シリル基である。反応性希釈剤として、本発明の組成物と混和性であり、本発明の組成物の粘度を低下させ、結合剤と反応性の少なくとも1個の基を有する全ての化合物を、単独でまたは複数の化合物の組合せとして使用することができる。
【0074】
本発明の組成物の粘度を、反応性希釈剤に加えて、または、反応性希釈剤の代わりに、溶媒をさらに添加することにより低下させることもできる。適当な溶媒は、脂肪族または芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、エステルアルコール、ケトアルコール、ケトエステルおよびエーテルエステルである。
【0075】
さらに、本発明の硬化性組成物は追加の成分として少なくとも1種の触媒(シラン縮合触媒あるいは硬化触媒または架橋触媒)を含有することができる。本発明の組成物の硬化速度を制御するために適当な架橋触媒の例は、有機金属化合物、例えば鉄化合物または錫化合物、特に鉄の1,3-ジカルボニル化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトネートまたは2価または4価の錫の1,3-ジカルボニル化合物、例えばジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジアルキル錫(IV)ジカルボキシレート(例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエートまたはジブチル錫ジアセテート)または対応するジアルコキシレート、例えばジブチル錫ジメトキシドである。有機錫化合物は、特によく試みられ、試験され、入手しやすい、優れた活性を有する触媒である。
【0076】
別の硬化触媒として、ハロゲン化ホウ素、例えば三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素または混合ハロゲン化ホウ素を用いることができる。三フッ化ホウ素錯体、例えば三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートは、気体状のホウ素トリハライドよりも扱いやすく、特に好ましい。
【0077】
さらに、アミン、窒素複素環およびグアニジン誘導体は、通常、触媒作用に適当である。この群から選択される特に好ましい触媒は、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)である。
【0078】
さらに、チタン、アルミニウムおよびジルコニウム化合物または前記に述べた群の1種以上から選択される1以上の触媒の混合物を、触媒として用いることが有利である。一方で、かくして錫化合物の添加を避けることもでき、他方で、弱付着性有機表面、例えばアクリレートへの良好な接着を達成することができる。チタン、アルミニウムおよびジルコニウム触媒の中で、チタン触媒を用いることが最も良好な硬化結果をもたらすため好ましい。
【0079】
さらに、本発明の組成物は、1種以上の接着促進剤を含むことができる。接着促進剤は、表面における接着剤層の接着特性を改善する物質を意味すると理解される。当業者に既知の従来の接着促進剤(粘着性付与剤)を、単独でまたは複数の化合物の組合せとして用いることができる。適当な例は、樹脂、テルペンオリゴマー、クマロン/インデン樹脂、脂肪族、石油化学樹脂および変性フェノール性樹脂である。本発明に関して、炭化水素樹脂、例えばテルペン、主にα-またはβ-ピネン、ジペンテンまたはリモネンを重合することにより得られるものが適当である。通常、これらのモノマーは、フリーデルクラフツ触媒で開始することにより、カチオン的に重合される。テルペンおよび他のモノマー(例えばスチレン、α-メチルスチレン、イソプレンなど)のコポリマーも、テルペン樹脂の中の1つである。上記樹脂は、例えば感圧接着剤およびコーティング材料用の接着促進剤として使用される。テルペンにフェノールを酸触媒付加することにより製造されるテルペン-フェノール樹脂またはコロホニウムも適当である。テルペン-フェノール樹脂は、たいていの有機溶媒および油中に溶解し、他の樹脂、ワックスおよびゴムと混和性である。本発明に関して、コロホニウム樹脂およびそれらの誘導体、例えばそれらのエステルまたはアルコールも、上記に示した意味において、接着促進剤として同様に適当である。シラン接着促進剤、特にアミノシランも、非常に適当である。
【0080】
本発明の硬化性組成物の特別の態様において、組成物は一般式(III):
【化6】

[式中、
およびRは、互いに独立して、水素またはC-Cアルキル基であり、
は、任意にヘテロ原子を含有する2価のC-C12炭化水素基であり、
、Y、Zは、互いに独立して、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、ここで、少なくとも1つの基はC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基である]
で示されるシランを接着促進剤として含む。
【0081】
これらの種類の化合物は、本発明の硬化性組成物の結合性ポリマー成分に対しても、また、幅広い範囲の極性ならびに無極性表面に対しても高い親和性を本来有し、したがって、接着剤組成物と接着結合させる個々の基材との間に特に安定な接着の形成を与える。基Rは、例えば直鎖状または分枝状または環状、置換または非置換アルケニル基であり得る。そこに、場合により窒素(N)または酸素(O)がヘテロ原子として含まれている。例えばX、Yおよび/またはZがアシルオキシ基である場合、したがって、これはアセトキシ基-OCO-CHであり得る。
【0082】
本発明の組成物に適当なフィラーの例は、白亜、粉末化白亜、沈降性および/または焼成シリカ、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土、アルミナ、クレー、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、マイカ、ガラス粉末および他の粉砕鉱物物質である。さらに、有機フィラー、特にカーボンブラック、グラファイト、木質繊維、木質粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、木質削屑、切りわら、もみ殻、他の短繊維および粉砕したクルミ殻を添加することもできる。さらに、短繊維、例えばガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維、あるいはポリエチレン繊維も添加することができる。アルミニウム粉末もフィラーとして適当である。鉱物外装またはプラスチック外装を有する中空球もフィラーとして適当である。これらは中空ガラスマイクロスフェアであってよく、例えばGlass Bubbles(登録商標)の商品名で市販されている。
【0083】
プラスチック系中空球、例えばExpancel(登録商標)またはDualite(登録商標)は、例えば欧州特許第0520425号に記載されている。これらは、無機物質または有機物質からなり、それぞれ1mm以下、好ましくは500μm以下の直径を有する。製剤にチキソトロピー性を付与するフィラーは、いくつかの用途において好ましい。このようなフィラーは、レオロジー補助剤としても記載されており、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アミドまたはPVCなどの膨潤性プラスチックである。適当な計量装置(例えばチューブ)から製剤を容易に押し出すために、このような製剤は3000〜15000、好ましくは4000〜8000mPas、あるいは5000〜6000mPasの粘度を示す。
【0084】
フィラーは、組成物の総重量に対して1〜80重量%の量で添加することが好ましい。単一のフィラーまたは複数のフィラーの組合せを使用することができる。
【0085】
さらに、本発明の組成物は1以上の酸化防止剤を含むことができる。本発明の組成物における酸化防止剤の割合は、組成物の総重量に対して、約7重量%以下、特に約5重量%以下が好ましい。さらに、本発明の組成物は、UV安定剤を含むことができる。本発明の組成物におけるUV安定剤の割合は、約2重量%以下、特に約1重量%以下であることが好ましい。UV安定剤として、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)が特に適当である。シリル基を有し、架橋または硬化の際に最終生成物中に組み込まれる、1種以上のUV安定剤を添加することもできる。これには、製品Lowilite 75 および Lowilite 77(Great Lakes、USA)が特に適当である。さらに、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾエート、シアノアクリレート、アクリレートおよび/または立体障害フェノールを添加することもできる。
【0086】
貯蔵期間がさらに長くなるように、本発明の組成物を水分浸透に対してさらに安定化させることがよい場合もある。この種の貯蔵期間の改善は、例えば乾燥剤を添加することにより達成できる。適当な乾燥剤は、水と反応し、組成物中に存在する反応性基に対して不活性な基を与え、それによってその分子量にできる限り小さな変化をもたらす、全ての化合物である。
【0087】
有利に添加される乾燥剤は、例えば、3-ビニルプロピルトリエトキシシランなどのビニルシラン、メチル-O,O',O”-ブタン-2-オン-トリオキシモシランまたはO,O',O”,O”’-ブタン-2-オンテトラオキシモシラン(CAS No. 022984-54-9 および 034206-40-1)のようなオキシモシラン、または、ビス(N-メチルベンズアミド)メチルエトキシシラン(CAS No. 16230-35-6)のようなベンズアミドシラン、または、カルバマトメチルトリメトキシシランのようなカルバマトシランなどである。しかしながら、メチル、エチルまたはビニルトリメトキシシラン、テトラメチルまたはテトラメチルエチルエトキシシランを使用することもできる。ここで、性能および費用に関して、ビニルトリメトキシシランおよびテトラエトキシシランが特に好ましい。上記に述べた反応性希釈剤は、それらの分子量(M)が約5000g/mol未満であり、侵入した水分に対する反応性が本発明のシリル基含有ポリマーの反応性基の反応性と少なくとも同程度である、好ましくは本発明のシリル基含有ポリマーの反応性基の反応性よりも高い末端基をそれらが有する限り、乾燥剤としても適当である。最後に、アルキルオルトホルメートまたはアルキルオルトアセテートを乾燥剤として用いることができ、例えばメチルまたはエチルオルトホルメート、メチルまたはエチルオルトアセテートである。本発明の組成物は、通常、約0.01〜約10重量%の乾燥剤を含む。
【0088】
本発明の硬化性組成物の粘度は、1000000mPas未満(ブルックフィールド粘度計、RVDVII +タイプ、スピンドル no.7、10rpm、23℃で測定)であることが好ましい。本発明の組成物の粘度は、特に好ましくは500000mPas未満である。本発明の組成物の粘度は、特に250000mPas未満である。これらの粘度は、組成物の良好な加工性を可能にする。
【0089】
本発明のさらなる主題は、接着剤、シーラントまたはコーティング材料としての、特に、プラスチック、金属、ガラス、セラミック、木材、木材系材料、紙、紙材料、ゴムおよび繊維製品を接着結合するための接着剤としての、特に衛生区域または台所区域において注入するための建設業におけるシーラントとしての、あるいは、広い表面積の基材をコーティングするためのコーティング材料としての、本発明の硬化性組成物の使用である。
【0090】
本発明の硬化性組成物は、難燃性の弾性コーティングを有する基材を提供するための使用を見出すことが好ましい。本発明の硬化性組成物は非常に幅広い接着スペクトルを有するために、最も異なる材質の基材をコートすることができる。基材は、例えばFoamglas(登録商標)の名称で市販されているような発泡ガラスであることが好ましい。
【0091】
本発明のさらなる主題は、本発明の硬化性組成物をコート可能な基材(特に発泡ガラス)上に付着させて、組成物を硬化することにより製造されたコーティングである。
【0092】
最後に、本発明の主題は、少なくとも1種の有機ポリマーa)、および好ましくは追加的に少なくとも1種の難燃性添加剤c)を含む硬化性組成物の燃焼性能を改善するための、少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)b)の使用でもある。ポリ(ジアルキルシロキサン)b)、有機ポリマーa)および難燃性添加剤c)ならびにそれらの好ましい展開に関して、本発明の硬化性組成物の記載において上記に述べた記述が対応して当てはまる。
【0093】
本発明において、基本的に、本明細書において挙げた全ての特徴、特に、好ましいおよび/または特別であるとして述べた、態様、許容差、原料ならびに本発明の組成物および本発明の使用の他の特徴を、全ての考えられる組合せにおいて、互いに排他的な組合せでなく、実現することができ、ここで、好ましいおよび/または特別であるとして述べた特徴の組合せも同様に、好ましいおよび/または特別であると考えられる。
【0094】
以下において、例示的態様を用いて本発明をより詳細に説明するが、ここで、例の選択は、本発明の主題の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0095】
特記しない限り、全ての部およびパーセントは重量を参照する。
【0096】
〔実施例1および実施例2〕
表1に記載された原料を、湿気除外下で、高速ミキサーで共に混合した。得られた本発明の硬化性組成物は、1成分型接着剤、シーラントおよびコーティング材料として使用することができる。しかしながら、それらを、本発明の2成分型硬化性組成物の成分Aとして用いることもできる。2成分型硬化性組成物の場合において、塗布の前に、それを硬化成分Bと混合する。適当な硬化成分Bを実施例3に示す。
【表1】

【0097】
〔実施例3〕
硬化成分Bを、表2に記載された原料を混合することにより製造した。
【表2】

【0098】
〔実施例4〜5〕
実施例1または2の組成物10部を、それぞれ実施例3の硬化成分B1部と高速ミキサーで混合し、得られた混合物(実施例4または5)を、種々の基材に対する接着挙動、硬化挙動の重要なパラメーター、硬化生成物の機械的特性および燃焼性能に関して試験した。結果を以下の表に示す。
【表3】

【0099】
この結果は、本発明の組成物が試験した全ての基材に対して、標準条件下で、確実に接着することを示す。非常に好ましくない環境条件下において貯蔵した後でさえ、多くの基材に対する接着性は優れている。これらの条件下において、問題があることが知られているほんのわずかな基材でのみ、接着問題が見られ、ここで、本発明の組成物のこれら基材に対する接着性を、可塑剤の選択および量によって、好ましい影響を与えることもできる。
【0100】
実施例4および5の本発明の組成物の引張特性を、以下の表4にまとめる。このために、上記に述べた混合物を製造し、2mmの層厚を有する平らなプラックに加工した。7日間の貯蔵後(23℃、50%相対湿度)、試験片(S2試験片)を打ち抜き、引張データ(10、25、50および100%伸びでのE-モジュラス、破断点伸びおよび極限引張り強さ)を、DIN EN 27389 および DIN EN 28339に従い、測定した。
【表4】

【0101】
燃焼性能について、実施例4および5の本発明の組成物を、2mmの層厚で、V2Aプラック(20cm×10cm×3mm)にコートした。コーティングを、23℃および50%相対湿度で、7日間で硬化させた。比較として、対応する試験片を市販されているコーティング材料(Terostat 939 FR)を用いて製造した。得られた試験片を、トーチランプ(T>1100℃)で、90°の角度で、60秒、火炎処理した。60秒後、トーチランプを取り除き、続いて、試験片の燃焼性能を観察した。結果を表5に示す。
【表5】

【0102】
本発明の組成物は、市販されているコーティング材料よりも顕著に良好な燃焼性能を示した。トーチランプを取り除いた後、初めのうちは全ての試験片が黄色い炎を伴って燃え続けた。ところが、本発明の組成物に基づく試験片はしばらくして自消し、しかしながら、比較用試験片は1分より長い間燃え続けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式(I):
【化1】

[式中、
Aは、アミド基、カルバメート基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、カーボネート基、スルホネート基、スルフィネート基、酸素原子および窒素原子から選択される2価の連結基を表し、
Rは、炭化水素主鎖が任意にヘテロ原子で遮られてよい1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、
X、Y、Zは、互いに独立して、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基を表し、ここで、少なくとも1つの基はC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、
nは0または1である]
で示される少なくとも1個の末端基を有する、ポリエーテルおよびポリアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の有機ポリマー、
b)一般式(Ι'):
【化2】

[式中、
A'は、アミド基、カルバメート基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、カーボネート基、スルホネート基、スルフィネート基、酸素原子および窒素原子から選択される2価の連結基を表し、
R'は、直接結合または炭化水素主鎖が任意にヘテロ原子で遮られてよい1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、
X'、Y'、Z'は、互いに独立して、ビニル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、ここで、少なくとも1つの基はビニル基であり、少なくとも1つの基はC-CアルコキシまたはC-Cアシルオキシ基であり、
n'は0または1である]
で示される少なくとも1個の末端基を有する、少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)、および
c)赤リン、有機リン化合物、ポリリン酸アンモニウム、金属水酸化物、膨張性黒鉛、ホウ酸亜鉛およびメラミン塩から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤
を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
有機ポリマーは、Rがメチレン基または1,3-プロピレン基を表す一般式(I)で示される少なくとも1個の末端基を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
有機ポリマーは、X、YおよびZが、それぞれ互いに独立して、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシを表し、ただし、X基、Y基およびZ基の少なくとも2つはメトキシまたはエトキシを表す、一般式(I)で示される少なくとも1個の末端基を有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
有機ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびエチレングリコール-プロピレングリコールコポリマーから選択されるポリエーテル、またはポリアクリル酸C-Cアルキルエステルである、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
ポリ(ジアルキルシロキサン)はポリ(ジメチルシロキサン)である、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
ポリ(ジアルキルシロキサン)は、A'が−O−を表し、R'が直接結合を表す一般式(Ι')で示される少なくとも1個の末端基を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
ポリ(ジアルキルシロキサン)は、X'がビニルを表し、Y'およびZ'が、互いに独立して、メトキシまたはエトキシを表す、一般式(I')で示される少なくとも1個の末端基を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
難燃性添加剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、膨張性黒鉛およびホウ酸亜鉛から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
難燃性添加剤は水酸化アルミニウムである、請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
有機ポリマーa)の総量:ポリ(ジアルキルシロキサン)b)の総量の重量比は、5:1〜1:5、好ましくは3:1〜1:3、特に好ましくは2:1〜1:2である、請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
難燃性添加剤c)の総量は、それぞれ硬化性組成物の総重量に対して、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%、特に好ましくは少なくとも50重量%である、請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性組成物の、接着剤、シーラントまたはコーティング材料としての使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性組成物の、難燃性の弾性コーティングを有する基材を提供するための使用。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性組成物を、コートさせる基材上に被覆し、該組成物を硬化させることによって製造されたコーティング。
【請求項15】
一般式(I'):
【化3】

[式中、
A'は、アミド基、カルバメート基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、カーボネート基、スルホネート基、スルフィネート基、酸素原子および窒素原子から選択される2価の連結基を表し、
R'は、直接結合または炭化水素主鎖が任意にヘテロ原子で遮られてよい1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、
X'、Y'、Z'は、互いに独立して、ビニル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、ここで、少なくとも1つの基はビニル基であり、少なくとも1つの基はC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、
n'は0または1である]
で示される少なくとも1個の末端基を有する少なくとも1種のポリ(ジアルキルシロキサン)の、ポリエーテルおよびポリアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の有機ポリマーを含有する硬化性組成物の燃焼性能を改善するための使用であって、ここで、該有機ポリマーは一般式(I):
【化4】

[式中、
Aは、アミド基、カルバメート基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、カーボネート基、スルホネート基、スルフィネート基、酸素原子および窒素原子から選択される2価の連結基を表し、
Rは、炭化水素主鎖が任意にヘテロ原子で遮られてよい1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、
X、Y、Zは、互いに独立して、C-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基を表し、ここで、少なくとも1つの基はC-Cアルコキシ基またはC-Cアシルオキシ基であり、
nは0または1である]
で示される少なくとも1個の末端基を有する、使用。

【公表番号】特表2013−518950(P2013−518950A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551573(P2012−551573)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050942
【国際公開番号】WO2011/095408
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】