説明

改善されたHVI−PAOバイモーダル潤滑剤組成物

本発明は、メタロセン触媒高粘度指数ポリαオレフィン類(HVI−PAO)を含有する油組成物に関する。一実施形態においては、油配合物は、125cSt kv 100℃を超える粘度および100を超える粘度指数を有するメタロセン触媒HVI−PAOと、少なくとも2cSt kv 100℃であり60cSt kv 100℃未満である粘度を有する第2のベースストックであって、メタロセンHVI−PAOよりも少なくとも60cSt kv 100℃だけ低い第2のベースストックと、少なくとも2であり6未満である粘度を有するエステルであって、油配合物の10重量パーセントを超え30重量パーセント未満を構成するエステルとを含み、この油配合物は195を超える粘度指数を有する。バイモーダルブレンド中にメタロセン触媒HVI−PAO類を使用することによって、改善された剪断安定性、および剪断安定性に関する他の性質において利点が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度指数ポリαオレフィン類(HVI−PAO)を含有する潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
合成および部分合成の工業用油およびグリース配合物中で、種々の粘度グレードのポリαオレフィン類(PAO類)が有用となることが知られている。例えば、非特許文献1を参照されたい。従来の鉱油系製品と比較すると、これらのPAO系製品は、日常的な条件下および通常の交換計画において、優れた粘度特性、高温性能および低温性能、並びにエネルギー効率を有する。
【0003】
潤滑油の粘度−温度の関係は、個別の用途に応じて潤滑剤を選択する場合に考慮する必要がある重要な基準の1つである。粘度指数(VI)は、特定の温度範囲内での油の粘度の変化の割合を示す単位のない実験的な数である。温度とともに比較的大きな粘度変化を示す流体は、低粘度指数を有するといわれる。例えば低VI油は、高温において高VI油よりも速く薄くなる。通常、高VI油は高温で高い粘度を有し、それによって良好なまたはより厚い潤滑膜が得られ、接触する機械要素の保護が良好になるため、高VI油がより望ましい。別の面では、油の使用温度が低下する場合、高VI油の粘度は低VI油の粘度ほど上昇しない。このことは、低VI油の過度に高い粘度は作業機械の効率を低下させるため、好都合となる。従って高VI油は、高温および低温の両方での使用に好都合な性能を有する。VIはASTM法D 2270−93[1998]に準拠して求められる。VIは、ASTM法D445−01を使用して40℃および100℃において測定される動粘度と関連している。
【0004】
PAO類は、典型的には1−ヘキセンから1−オクタデセンの範囲、より典型的には1−オクテンから1−ドデセンの範囲であり、最も一般的で好ましい材料として1−デセンである線状α−オレフィン類の触媒オリゴマー化(低分子量生成物への重合)によって製造される炭化水素の種類の1つを構成している。これらの流体の例は、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されているが、特許文献3または特許文献4並びにこれらの中で引用されている特許に記載されるようなエチレンおよびプロピレンなどの低級オレフィン類のポリマー、特にエチレンとより高級なオレフィン類とのコポリマーも使用することができる。
【0005】
高粘度指数ポリαオレフィン(HVI−PAO)は、特許文献5、特許文献2、特許文献6、特許文献7および特許文献8に記載されるように、例えば、還元金属酸化物触媒(例えば、クロム)を使用したα−オレフィン類の重合によって調製される。これらのHVI−PAO類は、高粘度指数(VI)と、以下の特性:0.19未満の分岐比、300〜45,000の間の重量平均分子量、300〜18,000の間の数平均分子量、1〜5の間の分子量分布、および−15℃未満の流動点の1つ以上とを有することを特徴とする。炭素数で測定すると、これらの分子はC30〜C1300の範囲となる。100℃において測定されるHVI−PAOオリゴマー類の粘度は、3センチストークス(「cSt」)〜15,000cStの範囲となる。これらのHVI−PAO類は、商業生産されており、例えばエクソンモービル・ケミカル・カンパニー(ExxonMobil Chemical Co)のスペクトラシン・ウルトラ(SpectraSyn Ultra)(商標)流体などで市販されているため、ベースストックとして使用されている。
【0006】
これらのHVI−PAO類の別の好都合な性質は、より低分子量の不飽和オリゴマーは、典型的におよび好ましくは水素化されて、熱および酸化に対して安定な材料が生成されるが、潤滑剤として有用なより高分子量の不飽和HVI−PAOオリゴマーは、熱および酸化に対して十分に安定であるため水素化せずに使用され、場合により水素化して使用できることである。
【0007】
HVI−PAO材料は、内燃機関用の油を配合するために使用されている。例えば、特許文献9には、低粘度のベースストック中に溶解される異なる分子量の第1および第2のポリマーを含む高性能油が教示されている。第1のポリマーは、高粘弾性ポリマーであり、好ましくはHVI−PAOである。使用されるベースストックは一般に、100℃において10cSt未満の粘度を有する。HVI−PAOは、「通常は比較的少量で存在」し、例えば、最終製品の合計の0.1〜約25重量%で存在する。最終製品中には、スチレン、ブタジエン、およびイソプレンなどの不飽和モノマーのアニオン重合によって生成されるブロックコポリマーを通常は主成分とするポリマー増粘剤も含まれる。分散剤、清浄剤、摩耗防止剤、或いはフェノール系および/またはアミン系の酸化防止剤などの酸化防止剤を含有する「従来の」添加剤パッケージも加えられる。
【0008】
特許文献10、特許文献5、特許文献2、特許文献11、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献12、特許文献13;特許文献14、特許文献15、特許文献16および非特許文献2も参照されたい。
【0009】
工業用ギアオイルは、老化および酸化に対する優れた抵抗性、低い発泡傾向、良好な負荷容量、関与する材料(鉄および非鉄金属、シール、塗料)に対する中立性、高温および/または低温における適合性、並びに良好な粘度−温度挙動の要求に適合する必要があるが;対照的にギアグリースは:良好な付着性、少ない油分離、低い起動トルク、合成材料に対する適合性、およびノイズの軽減の実現が必要となる(非特許文献1を参照)。これまで、これらすべての要求を満たす汎用のギア潤滑剤は、本発明者らが知る限りでは、市販されていない。このため、潤滑剤の製造者は、それぞれの用途に対する個別の使用上の要求を満たす性質を有する異なる種類の配合物を開発することが必要となっている。
【0010】
産業界では、グループIVおよびグループVのベース流体を含む非常に高粘度指数(VI)の完成ギア潤滑剤が開発されいる。これらの次世代ギア潤滑剤の多くでは、クロム−シリカ触媒から誘導される150cStのPAOが使用されている。この非常に高粘度指数のグループIV基油は、非常に低粘度の基油成分(PAO 2および極性のグループVベースストック)と併用すると、従来技術の合成ギア潤滑剤に対して、独特の効率およびVIの優位性が示された。高VIおよび成分の幅広いバイモーダル粘度分布が、流体性能の優位性に大きく寄与していることが分かる。
【0011】
このバイモデル(bi−model)ベース流体系の改善の分野の1つは、高粘度グループIVベースストック−150cSt PAOが比較的剪断不安定であることである。150cStスーパーシン(SuperSyn)(商標)を使用する現在の配合物の選択肢では、完成流体中にこの成分が40〜50%使用される。既存のクロム−シリカ誘導スーパーシン(SuperSyn)ベースストック(cs−スーパーシン(SuperSyn))は分子量分布がいくぶん広いため、ある程度の剪断不安定性が従来の潤滑剤剪断試験(KRL20時間軸受剪断試験/CEC L−45−A−99)において観察される。この剪断不安定性によって、完成流体の永久粘性損失が全体的に生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,824,671号明細書
【特許文献2】米国特許第4,827,073号明細書
【特許文献3】米国特許第4,956,122号明細書
【特許文献4】米国特許第4,990,709号明細書
【特許文献5】米国特許第4,827,064号明細書
【特許文献6】米国特許第4,990,771号明細書
【特許文献7】米国特許第5,012,020号明細書
【特許文献8】米国特許第5,264,642号明細書
【特許文献9】国際公開第00/58423号パンフレット
【特許文献10】米国特許第4,180,575号明細書
【特許文献11】米国特許第4,912,272号明細書
【特許文献12】米国特許第6,087,307号明細書
【特許文献13】米国特許第6,180,575号明細書
【特許文献14】国際公開第03/09136号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2003071369A号パンフレット
【特許文献16】米国特許出願公開第2005/0059563号明細書
【特許文献17】米国特許第4,914,254号明細書
【特許文献18】米国特許第4,926,004号明細書
【特許文献19】米国特許第4,967,032号明細書
【特許文献20】米国特許第5,885,438号明細書
【特許文献21】米国特許第5,643,440号明細書
【特許文献22】米国特許第5,358,628号明細書
【特許文献23】米国特許第4,149,178号明細書
【特許文献24】米国特許第3,742,082号明細書
【特許文献25】米国特許第6,332,974号明細書
【特許文献26】米国特許第5,382,739号明細書
【特許文献27】国際出願第PCT/US2006/021399号明細書
【特許文献28】国際出願第PCT/US2006/021231号明細書
【特許文献29】米国特許第6,429,345号明細書
【特許文献30】米国特許第4,658,072号明細書
【特許文献31】米国特許第4,604,491号明細書
【特許文献32】米国特許第5,602,086号明細書
【特許文献33】米国特許第5,552,071号明細書
【特許文献34】米国特許第5,171,195号明細書
【特許文献35】米国特許第5,395,538号明細書
【特許文献36】米国特許第5,344,578号明細書
【特許文献37】米国特許第5,371,248号明細書
【特許文献38】欧州特許第815187号明細書
【特許文献39】米国特許第5,187,236号明細書
【特許文献40】米国特許第5,268,427号明細書
【特許文献41】米国特許第5,276,100号明細書
【特許文献42】米国特許第5,292,820号明細書
【特許文献43】米国特許第5,352,743号明細書
【特許文献44】米国特許第5,359,009号明細書
【特許文献45】米国特許第5,376,722号明細書
【特許文献46】米国特許第5,399,629号明細書
【特許文献47】米国特許第4,594,378号明細書
【特許文献48】米国特許第4,867,890号明細書
【特許文献49】米国特許第4,511,481号明細書
【特許文献50】米国特許第4,734,209号明細書
【特許文献51】米国特許第4,701,273号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ルドニック(Rudnick)ら,「合成潤滑剤および高性能機能性流体(Synthetic Lubricants and High−Performance Functional Fluids)」、第2版(2nd Ed.)、マーセル・デッカー・インコーポレイテッド(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク(N.Y.)(1999)の第22章および第23章
【非特許文献2】Lubrication Engineers、55/8、45(1999)
【非特許文献3】「合成潤滑剤および高性能機能性流体(Synthetic Lubricants and High Performance Functional Fluids)」、M.M ウー(Wu)、第7章、(L.R.ラドニック(Rudnick)およびR.L.シュブキン(Shubkin)[編))、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク(N.Y.)1999
【非特許文献4】ルドニック(Rudnick)ら、合成潤滑剤および高性能機能性流体(Synthetic Lubricants and High−Performance Functional Fluids)」、第2版(2nd Ed.)、マーセル・デッカー・インコーポレイテッド(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク(N.Y.)(1999)の第3章
【非特許文献5】D.A.ロー(Law)およびJ.R.ローホイス(Lohuis)、J.Y ブレオ(Breau)、A.J.ハーロー(Harlow)およびM.ロシェット(Rochette)による「工業用、自動車用、および航空用の合成潤滑剤の開発および性能優位性(Development and Performance Advantages of Industrial, Automotive and Aviation Synthetic Lubricants)」、Journal of Synthetic Lubrication、[1]p.6−33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
バイモデル(bi−model)潤滑剤配合物の剪断安定性を改善することが必要とされている。従って、本発明はその要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、高粘度指数ポリαオレフィン(HVI−PAO)を含む油配合物に関する。一実施形態においては、この油配合物は、125cSt kv 100℃を超える粘度および100を超える粘度指数を有するメタロセン触媒HVI−PAOと、少なくとも2cSt kv 100℃であり60cSt kv 100℃未満である粘度を有する第2のベースストックであって、メタロセンHVI−PAOよりも少なくとも60cSt kv 100℃だけ低い第2のベースストックと、少なくとも2であり6未満である粘度を有するエステルであって、油配合物の10重量パーセントを超え30重量パーセント未満を構成するエステルとを含み、この油配合物は195を超える粘度指数を有する。
【0016】
第2の実施形態においては、剪断安定性を改善する方法が開示される。この実施形態においては、この方法は、125cSt kv 100℃を超える粘度および195を超える粘度指数を有するメタロセンHVI−PAOと、少なくとも2cSt kv 100℃であり60cSt kv 100℃である粘度を有する第2のベースストックであって、メタロセンHVI−PAOよりも少なくとも60cSt kv 100℃だけ低い第2のベースストックと、少なくとも2であり6未満である粘度を有するエステルであって、油配合物の10重量パーセントを超え30重量パーセント未満を構成するエステルとを含む油配合物を得る工程と、その油配合物を使用して潤滑する工程とを含む。
【0017】
第3の実施形態においては、好都合な剪断安定性を有する油配合物をブレンドする方法が開示される。この方法は、100cSt kv 100℃を超える粘度および100を超える粘度指数を有するメタロセンHVI−PAOを得る工程と、少なくとも2cSt kv 100℃であり60cSt kv 100℃である粘度を有する第2のベースストックであって、メタロセンHVI−PAOよりも少なくとも60cSt kv 100℃だけ低い第2のベースストックを得る工程と、少なくとも2であり6未満である粘度を有するエステルであって、油配合物の10重量パーセントを超え30重量パーセント未満を構成するエステルを得る工程と;メタロセンHVI−PAOを第2のベースストックおよびエステルとブレンドして、好都合な剪断安定性を有する油配合物を配合する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】高粘度PAOの分子量分布を示すグラフである。
【図2】クロム触媒誘導PAO類と比較して、メタロセン触媒誘導PAO類を使用したギアオイル剪断配合物の動粘度の改善を示すグラフである。
【図3】エステル含有率を基準にしたノアック(Noack)揮発性減少を示すグラフである。
【図4】エステル含有率を基準にした酸化性能を示すグラフである。
【図5】エステル含有率を基準にしたブルックフィールド粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によると、高粘度指数PAO(HVI−PAO)を含む、工業用油およびグリースとして使用される配合物が提供される。本発明者らは、メタロセン触媒誘導PAO類を使用すると、驚くべきことに、バイモデル(bi−model)配合物中で剪断が起こることにより、永久粘度損失がなくらなないとしても大きく減少することを発見した。m−PAOの非常に狭い分子量分布によって、この高粘度ベースストックの剪断安定性がある程度向上しうるが、試験において高度な優位性は予想されなかったことが分かる。この性質を、m−PAOの他の剪断安定性で高粘度のスレートを利用できることと合わせると、配合者は、VIを更に改善し改善されたギア潤滑剤効率のために、バイモーダルブレンドの概念を広げることができる。更に、この発見は、メタロセン触媒を使用するmPAOの他の粘度の種類、好ましくは125cStを超え、より好ましくは150〜600cStの範囲に適用することができる。
【0020】
非常に高粘度で剪断安定性のベースストックを使用することで、剪断損失をほとんどまたは全く示さない非常に高いVIで、幅広いバイモーダルの配合物が得られる。現在の技術では、粘度を増加させるために高粘度オレフィンコポリマー(「OCP」)またはポリイソブチレン(「PIB」)粘度調整剤を使用する必要がある。これらの粘度調整剤は剪断に対して不安定であり、機械的剪断のために永久剪断粘性損失を示す。一実施形態においては、本発明では、これらの成分が不要となり、ある実施形態においては、あらゆる粘度調整剤が不要となり、好都合なギア効率が得られる。
【0021】
本発明において有用なHVI−PAO類は、好ましくは160以上、より好ましくは180以上、更により好ましくは195以上、更により好ましくは200以上、更により好ましくは250以上の高粘度指数(VI)を有することを特徴とする。本発明において有用なHVI−PAO類の特徴付けにとって重要ではないが、VIの上限は約350である。本発明において使用される場合、VIはASTM D2270に準拠して測定される。
【0022】
HVI−PAO類は、一般に、C30〜C1300炭化水素類、0.19未満の分岐比、300〜45,000の間の重量平均分子量、300〜18,000の間の数平均分子量、1〜5の間の分子量分布の1つ以上を更なる特徴とすることができる。
【0023】
特に好ましいHVI−PAO類は、5〜3000センチストークス(cSt)の範囲の100℃動粘度を有する流体である。本明細書において使用される場合、用語「動粘度」は、特に明記しない限り単純に粘度と記載され、ASTM D445に準拠して指定の温度、通常は100℃において測定される粘度である。温度に言及されていない場合は、100℃を意味するものとする。
【0024】
実施形態においては、100℃において測定されるHVI−PAOオリゴマー類の粘度は、3cSt〜15,000cSt、または3cSt〜5,000cSt、または3cSt〜1000cSt、または725cSt〜15,000cSt、または20cSt〜3000cStの範囲である。
【0025】
HVI−PAO類は、一実施形態においては、ASTM D97において測定される低い流動点、一般には−15℃未満であることを更なる特徴とすることができる。
【0026】
HVI−PAO類における用語「PAO」は、当技術分野において一般に受け入れられているものとして、1−デセンなどの1種類以上のαオレフィンのオリゴマー(低分子量ポリマー)を意味する。実施形態においては、本発明のHVI−PAO類は、C6〜C36の1−アルケン、より好ましくはC6〜C20、更により好ましくはC6〜C14から選択される1種類以上の1−アルケンのオリゴマーを含む炭化水素組成物として更に特徴付けることができる。供給材料の例は、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなど、またはそれらの混合物、例えば、1種類以上のC6〜C36の1−アルケン、または1種類以上のC6〜C20の1−アルケン、または1種類以上のC6〜C14のアルケン、或いは特定の1−アルケンの混合物、例えばC6およびC12の1−アルケンの混合物、C6およびC14の1−アルケンの混合物、C6およびC16の1−アルケンの混合物、C6およびC18の1−アルケンの混合物、C8およびC10の1−アルケンの混合物、C8およびC12の1−アルケンの混合物、C8、C10、およびC12の1−アルケンからなる群から選択される少なくとも2種類の1−アルケンを含む供給材料などであってよいが、特許文献3に記載されるようなエチレンとより高級なオレフィンとのコポリマーなどの、エチレンおよびプロピレンなどの低級オレフィンのオリゴマーを使用することもできる。
【0027】
本発明に有用なHVI−PAO流体の好ましい製造方法では、数種類のプロセス触媒から製造することができる。触媒の例は、オリゴマー化条件下でほぼ室温から250℃の温度における担持された固体還元VIB族金属(例えばクロム)触媒、またはメタロセン触媒である。多数の特許に、本発明に有用なHVI−PAOの調製が記載されており、例えば特許文献5、特許文献2、特許文献11、特許文献17、特許文献18、特許文献19および特許文献7に記載されている。本発明に有用なHVI−PAOの更なる調製方法は本明細書において説明する。
【0028】
本発明に有用なHVI−PAO類を調製するための好ましい実施形態においては、潤滑油製品は、重合反応から製造されるか、または出発物質から導入されている場合に、約600°F(約315℃)未満で沸騰するか、またはC20未満の炭素数を有するなどの低分子量組成物を除去するために通常は蒸留される。この蒸留工程によって、通常は完成流体の揮発性が改善される。ある特殊な用途、または反応混合物中に低沸点留が存在しない場合は、この蒸留は必要ではない。従って、好ましい実施形態においては、溶剤または出発物質を除去した後の反応生成物全体を、潤滑油ベースストックとして使用したり、更なる処理を行ったりすることができる。
【0029】
重合またはオリゴマー化方法から直接製造された潤滑油流体は、通常、不飽和二重結合を有し、即ちオレフィン系分子構造を有する。二重結合または不飽和またはオレフィン系成分の量は、臭素価(ASTM 1159)、臭素指数(ASTM D2710)、またはNMR、IRなどのそれ自体当業者に周知のその他の好適な分析方法などの数種類の方法によって測定することができる。二重結合の量またはオレフィン系組成物の量は、重合度、重合プロセス中に存在する水素の量、並びに重合プロセス中の終了工程に関与するその他の促進剤の量、またはプロセス中に存在するその他の物質の量の数種類の要因に依存する。通常、重合度が高いほど、重合プロセス中に存在する水素ガスの量が多いほど、または終了工程に関与する促進剤の量が多いほど、二重結合の量またはオレフィン系成分の量が減少する。
【0030】
流体の酸化安定性並びに光またはUV安定性は、通常、不飽和二重結合の量またはオレフィン系含有量が減少すると改善される。従って好ましい実施形態においては、ポリマーが高い不飽和度を有する場合、そのポリマーを更に水素処理することが必要となる。通常、ASTM D1159によって測定される臭素価が5未満である流体が、本発明の高品質ベースストック用途に好適となる。3未満または2未満の臭素価を有する流体が好ましい。最も好ましい範囲は、1未満または0.1未満である。
【0031】
実施形態においては、HVI−PAO類の製造における潤滑油製品は、不飽和を減少させるために水素処理される。これは、それ自体が文献において周知である方法によって行うことができる(例えば、特許文献2の実施例16)。あるHVI−PAO生成物においては、重合から直接製造された流体が、100℃において150cStを超える粘度を有するものなど、非常に低い不飽和度をすでに有する。それらは5未満、更には2未満の臭素価を有する。これらの場合、これらの直接生成物を水素処理せずに使用することができる。従って、HVI−PAO生成物の水素処理は、HVI−PAOを製造するために使用される方法および最終用途に依存して、場合により行われる。
【0032】
本発明は、潤滑剤ベースストックと、工業用潤滑剤用途およびグリースに有用となるそれ自体周知である添加剤とを含有する潤滑剤組成物も含む。
【0033】
工業用潤滑剤は、多種多様の製品を含んでいる。工業用潤滑剤の例は、ギア潤滑油、油圧油、圧縮機油、循環油、抄紙機油などである。
【0034】
用途に依存するが、工業用潤滑剤は、100℃において2cSt〜1650cStの広い粘度範囲を有することができ、これは自動車エンジンオイルの粘度規格よりもはるかに広い。ほとんどの工業用油では、粘度が重要な基準となる。一般の機械油は、ISO規格3448の粘度規格により分類される。
【0035】
工業用潤滑剤を配合するために使用されるベースストックの粘度は、工業機械用途の完成潤滑剤性能に重要な影響を与える。例えば、高速および軽荷重の滑り軸受は、低粘度の潤滑剤を使用することができる。このような低粘度流体によって形成された粘性膜は、流体潤滑を保証するのに十分である。しかし、より大きい荷重および低速の装置では、保護のためにより強く厚い潤滑膜を得るために、より高粘度の油が必要となる。市販の低粘度流体、例えば100SUS溶剤精製ベースストックまたは低粘度グループIVまたはグループVベースストックを、高粘度流体、例えば市販のブライトストック、スペクトラシン(SpectraSyn)(商標)100流体などの高粘度PAO、高粘度ポリイソブチレン、或いは増粘剤または粘度指数向上剤とを広い粘度範囲でブレンドする方法が多数存在する。高粘度ベースストックの品質は、完成潤滑剤の性質および性能にとって重要である。
【0036】
工業用潤滑剤配合物中に使用される潤滑油ベースストックは、少なくともある量の1つの粘度グレード、または数種類の粘度グレードの混合物のHVI−PAO流体を含む。合計のHVI−PAO組成物は、完成潤滑油の望ましい粘度グレード、HVI−PAOの最初の粘度グレード、または完成潤滑油中に存在する他の成分の粘度に依存して、1重量%〜99重量%の範囲とすることができる。好ましい実施形態においては、存在するHVI−PAOの量は、1〜90重量%、または15〜50重量%、または15〜45重量%、または50〜99重量%、または50〜90重量%、または55〜90重量%の範囲とすることができる。
【0037】
本発明のHVI−PAO類とブレンドすることができるベースストックとしては、周知の米国石油協会(American Petroleum Institute)(API)の分類のグループIからグループVのいずれかに入るベースストックが挙げられる。APIはグループIストックを溶剤精製鉱油として定義している。グループIストックは、最小量の飽和物および最高量の硫黄を含有し、一般に最も低い粘度指数を有する。グループIは、潤滑性能の最下層である。グループIIおよびIIIストックは、それぞれ高粘度指数および非常に高い粘度指数のベースストックである。グループIII油は、一般に、グループII油よりも含有する不飽和分および硫黄が少ない。特定の特性に関して、グループIIおよびグループIIIの両方の油は、熱安定性および酸化安定性の領域において、グループI油よりも性能が優れている。
【0038】
グループIVストックは、ポリαオレフィン類からなり、これは、線状αオレフィン(LAO)類、特にC5〜C14αオレフィン類から選択されるLAO類、好ましくは1−ヘキセンから1−テトラデセン、より好ましくは1−オクテンから1−ドデセン、およびそれらの混合物、1−デセンが好ましい材料であるLAO類の触媒オリゴマー化によって生成され、エチレンおよびプロピレンなどの低級オレフィン類のオリゴマー、エチレン/ブテン−1およびイソブチレン/ブテン−1のオリゴマー、並びに特許文献3およびその特許中で言及されている特許に記載されるようなエチレンと他のより高級なオレフィン類とのオリゴマーなどを使用することもできる。PAO類は、優れた揮発性、熱安定性、および流動点特性をグループI、II、およびIIIの基油に付与する。
【0039】
グループVは、グループIからIVに含まれない他の全てのベースストックを含んでいる。グループVベースストックは、エステル類を主成分とする、またはエステル類から誘導される潤滑剤の重要なグループを含んでいる。これは、アルキル化芳香族類、ポリアルキレングリコール(PAG)類なども含んでいる。
【0040】
HVI−PAOとブレンドするのに特に好ましいベースストックとしては、3cSt〜50cStの粘度範囲を有するAPIグループIベースストック、グループIIおよびIIIの水素処理されたベースストック(例えば、特許文献20、特許文献21および特許文献22参照)、特許文献23および特許文献24に記載されるようなグループIV PAO類、並びに内部オレフィン類の重合によって調製される流体(ポリ内部オレフィンまたはPIOとも呼ばれる)、或いは特許文献25に記載されるようにフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成方法の後に好適な水素異性化方法を行うことによって製造された潤滑油が挙げられる。
【0041】
メタロセンベースストック
一実施形態においては、本発明に使用されるメタロセン触媒PAO(またはmPAO)は、メタロセン触媒系によって、少なくとも2種類以上のα−オレフィンから製造されたコポリマー、または1種類のα−オレフィン供給材料から製造されたホモポリマーであってよい。
【0042】
このコポリマーmPAO組成物は、C3〜C30の範囲の少なくとも2種類のα−オレフィンから製造され、これらのモノマーはポリマー中に不規則に分布している。平均炭素数が少なくとも4.1であることが好ましい。好都合には、エチレンおよびプロピレンが供給材料中に存在する場合、それらは個別に50重量%未満、または好ましくは合計で50重量%未満の量で存在する。本発明のコポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのポリマー、または適切なタクティシティのあらゆる他の形態であってよい。これらのコポリマーは、優れたVI、流動点、および低温粘度特性などの有用な潤滑剤特性を、それら自体が有するか、或いは他の潤滑剤または他のポリマーとのブレンド流体として有する。更に、これらのコポリマーは、狭い分子量分布および優れた潤滑特性を有する。
【0043】
一実施形態においては、mPAOは、C3〜C30線状α−オレフィンから選択される少なくとも2種類および最大26種類の異なる線状α−オレフィンを含む混合供給材料のLAOから製造される。好ましい一実施形態においては、混合供給材料のLAOは、アルミニウム触媒またはメタロセン触媒を使用するエチレン成長法によって得られる。成長オレフィンは、主としてC6〜C18−LAOを含む。SHOP法などの他の方法から得られるLAOを使用することもできる。
【0044】
このホモポリマーmPAO組成物は、C3〜C30の範囲、好ましくはC3〜C16、最も好ましくはC3〜C14またはC3〜C12から選択される1種類のα−オレフィンから製造される。本発明のホモポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのポリマー、またはこれらのタクティシティのあらゆる組み合わせ、または適切なタクティシティの他の形態であってよい。多くの場合、タクティシティは、選択される重合触媒および重合反応条件によって、或いは選択される水素化条件によって注意深く調整することができる。これらのホモポリマーは、優れたVI、流動点、および低温粘度特性などの有用な潤滑剤特性を、それら自体が有するか、或いは他の潤滑剤または他のポリマーとのブレンド流体として有する。更に、これらのホモポリマーは、狭い分子量分布および優れた潤滑特性を有する。
【0045】
別の一実施形態においては、α−オレフィンは、従来のLAO製造設備または精油所から得られるあらゆる成分から選択することができる。これを単独で使用してホモポリマーを製造することもできるし、精油所または化学プラントから得られる別のLAO、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどとともに、或いは専用の製造設備で製造された1−ヘキセンまたは1−オクテンとともに使用することもできる。別の一実施形態においては、α−オレフィンは、フィッシャー−トロプシュ合成から生成されたα−オレフィンから選択することができる(特許文献26に報告されるように)。例えば、C3〜C16−α−オレフィン、より好ましくは線状α−オレフィンがホモポリマーの製造に好適である。C4およびC14−LAO;C6およびC16−LAO;C8、C10、C12−LAO;またはC8およびC14−LAO;C6、C10、C14−LAO;C4およびC12−LAOなどの他の組み合わせが、コポリマーの製造に好適となる。
【0046】
活性メタロセン触媒は、単純なメタロセン類、置換メタロセン類、または架橋メタロセン触媒であってよく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)または非配位陰イオン、例えばN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボラートまたは他の同等の非配位陰イオンと、場合により共活性化剤、典型的にはトリアルキルアルミニウム化合物とによって活性化または促進される。
【0047】
本発明によると、C3〜C30のLAOから選択されるLAOの混合物またはC3〜C16LAOから選択される1種類のLAOを含む供給材料を、活性化メタロセン触媒とオリゴマー化条件下で接触させることで、潤滑剤成分中または機能性流体としての使用に適した液体生成物が得られる。本発明は、C3〜C30の範囲の少なくとも2種類α−オレフィンから製造され、モノマーがポリマー中に不規則に分布したコポリマー組成物にも関する。語句「少なくとも2種類のα−オレフィン」は、「少なくとも2種類の異なるα−オレフィン」を意味するものと理解されたい(同様に、「少なくとも3種類のα−オレフィン」は、「少なくとも3種類の異なるα−オレフィン」を意味する、などとなる)。
【0048】
好ましい実施形態においては、前記供給材料中の前記少なくとも2種類のα−オレフィンの平均炭素数(本明細書において後に定義する)は少なくとも4.1である。別の好ましい一実施形態においては、前記供給材料中のエチレンおよびプロピレンの量が、個別に50重量%未満であり、または好ましくは合計で50重量%未満である。更により好ましい一実施形態は、上記好ましい実施形態の両方を有する供給材料、即ち、平均炭素数が少なくとも4.1であり、エチレンおよびプロピレンの量が個別に50重量%未満である供給材料を含む。
【0049】
実施形態において、得られる生成物は、少なくとも2種類のα−オレフィンを含む実質的に不規則な液体コポリマーである。「実質的に不規則」は、当業者が生成物をランダムコポリマーと見なすことを意味する。一部は好ましい、またはより好ましい、不規則性の別の特性決定が本明細書において提供される。同様に、用語「液体」は、当業者によって理解されるであろうが、この用語のより好ましい特性決定が本明細書において提供される。特定の数のα−オレフィン(少なくとも2種類の異なるα−オレフィン)を「含む」として生成物が記載される場合、本開示を把握している当業者に理解されるように、前記特定の数のα−オレフィンモノマーが組み込まれた重合(またはオリゴマー化)生成物を説明している。言い換えると、これは、前記特定の数のα−オレフィンモノマーを重合またはオリゴマー化することによって得られる生成物である。
【0050】
この改善された方法は、メタロセン化合物(以下の式1)を、非配位陰イオン(NCA)(以下の式2)などの活性化剤、および場合によりトリアルキルアルミニウムなどの共活性化剤とともに、またはメチルアルミノキサン(MAO)(以下の式3)とともに含む触媒系が使用される。
【化1】

【0051】
用語「触媒系」は、メタロセン/活性化剤の組などのように、触媒前駆体/活性化剤の組を意味するものと本明細書において定義される。「触媒系」が、活性化前のこのような組の説明に使用される場合、これは、活性化されていない触媒(プレ触媒)を、活性化剤、および場合により共活性化剤(トリアルキルアルミニウム化合物など)と合わせたものを意味する。活性化後のこのような組を説明するために使用される場合、これは活性化した触媒と活性化剤またはその他の電荷バランス部分とを意味する。更に、この活性化した「触媒系」は、共活性化剤および/またはその他の電荷バランス部分を場合により含むことができる。場合により、多くに場合、トリアルキルアルミニウム化合物などの共活性化剤は、不純物捕捉剤としても使用される。
【0052】
メタロセンは、前述の式1による1種類以上の化合物から選択される。式1中、Mは、第4族遷移金属、好ましくはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、およびチタン(Ti)から選択され、L1およびL2は独立して、シクロペンタジエニル(「Cp」)、インデニル、およびフルオレニルから選択され、これらは置換されている場合も非置換の場合もあり、部分的に水素化されていてもよく、Aは、多くの非架橋メタロセン類の用に原子でなくてもよく、Aは存在する場合には、場合により、架橋性基であり、好ましい実施形態においては、ジアルキルシリル、ジアルキルメチル、ジフェニルシリル、またはジフェニルメチル、エチレニル(−CH2−CH2−)、アルキルエチレニル(−CR2−CR2−)(アルキルは独立して、C1〜C16アルキル基であってよい)、またはフェニル基、トリル基、キシリル基などから選択され、2つのX基のXaおよびXbのそれぞれは独立して、ハロゲン化物、OR(Rは、アルキル基、好ましくはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基から選択される)、水素、C1〜C16アルキルまたはアリール基、ハロアルキルなどから選択される。通常、比較的より高度に置換されたメタロセン類によって、より高い触媒生産性および幅広い生成物粘度範囲が得られ、従って多くの場合より好ましい。
【0053】
別の一実施形態においては、本発明において生成されるいずれのポリα−オレフィンも、好ましくはASTM D 1159によって測定される臭素価が1.8以下であり、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下である。
【0054】
別の一実施形態においては、本発明によって生成されるいずれのポリα−オレフィンも水素化され、ASTM D 1159によって測定される臭素価が1.8以下となり、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下となる。
【0055】
別の一実施形態においては、本発明によって生成されるいずれのポリα−オレフィンも、すべての規則的な1,2−結合に加えて、次式で表されるモノマー単位を有することができる。
【化2】

式中、j、k、およびmは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22であり、nは、プロトンNMRにより測定し場合、1〜350(好ましくは1〜300、好ましくは5〜50)の整数である。
【0056】
別の一実施形態においては、本発明によって生成されるいずれのポリα−オレフィンも、好ましくはMw(重量平均分子量)が100,000g/mol以下、好ましくは100〜80,000g/molの間、好ましくは250〜60,000g/molの間、好ましくは280〜50,000g/molの間、好ましくは336〜40,000g/molの間である。
【0057】
別の一実施形態においては、本発明によって生成されるいずれのポリα−オレフィンも、好ましくはMn(数平均分子量)が50,000g/モル以下、好ましくは200〜40,000g/モルの間、好ましくは250〜30,000g/モルの間、好ましくは500〜20,000g/モルの間である。
【0058】
別の一実施形態においては、本発明によって生成されるいずれのポリα−オレフィンも、好ましくは分子量分布(MWD=Mw/Mn)が1を超え5未満であり、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2.5未満である。mPAOのMWDは、常に流体粘度の関数となる。或いは、本発明によって生成されるいずれのポリα−オレフィンも、流体の粘度に依存して、好ましくはMw/Mnが1〜2.5の間であり、或いは1〜3.5の間である。
【0059】
Mw、Mn、およびMzは、GPC方法によって、中から低分子量ポリマー用のカラムを使用し、テトラヒドロフランを溶剤として使用し、ポリスチレンを較正標準物質として使用し、べき乗式により流体粘度と関連させることによって測定される。
【0060】
本発明の好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のいずれのPAOも、0℃未満の流動点(ASTM D 97により測定される)を有することができ、好ましくは−10℃未満、好ましくは−20℃未満、好ましくは−25℃未満、好ましくは−30℃未満、好ましくは−35℃未満、好ましくは−50°未満、好ましくは−10〜−80℃の間、好ましくは−15℃〜−70℃の間の流動点を有することができる。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態においては、本明細書に記載のいずれのPAOも、動粘度(40℃においてASTM D 445により測定)が約4〜約50,000cStとなるこができ、好ましくは40℃において約5cSt〜約30,000cStとなることができ、或いは40℃において約4〜約100,000cSt、好ましくは約6cSt〜約50,000cSt、好ましくは約10cSt〜約30,000cStとなることができる。
【0062】
別の一実施形態においては、本明細書に記載のいずれのポリα−オレフィンも、ASTM D445によって測定される100℃における動粘度が約1.5〜約5,000cSt、好ましくは約2〜約3,000cSt、好ましくは約3cSt〜約1,000cSt、より好ましくは約4cSt〜約1,000cSt、更により好ましくは約8cSt〜約500cStとなることができる。一実施形態においては、PAO類は、好ましくは100℃における粘度が2〜500cStの範囲内となり、別の一実施形態においては100℃において2〜3000cStの範囲内となり、別の一実施形態においては3.2〜300cStの範囲内となる。或いは、ポリα−オレフィンは200cSt未満のKV100を有する。
【0063】
別の一実施形態においては、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも、100℃において3〜10cStの動粘度を有し、150℃以上、好ましくは200℃以上の引火点(ASTM D 56により測定される)を有することができる。
【0064】
別の一実施形態においては、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも、2.5以下の誘電率(1kHzで23℃においてASTM D 924により測定される)を有することができる。
【0065】
別の一実施形態においては、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも、0.75〜0.96g/cm、好ましくは0.80〜0.94g/cmの比重を有することができる。
【0066】
別の一実施形態においては、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも、粘度指数(VI)が100以上、好ましくは120以上、好ましくは130以上、または120〜450、または100〜400、または120〜380、または100〜300、または140〜380、または180〜306、または252〜306となることができ、或いは粘度指数は少なくとも約165、または少なくとも約187、または少なくとも約200、または少なくとも約252である。1−デセンまたは1−デセンと同等の供給材料から製造された多くのより低粘度の流体(KV100℃が3〜10cSt)の場合、好ましいVI範囲は100〜180である。粘度指数はASTM法D 2270−93[1998]に準拠して求められる。
【0067】
本明細書に記載の流体に関して報告されるすべての動粘度は、特に明記しない限り、100℃において測定される。次に、測定された動粘度に液体の密度を乗じることによって絶対粘度を求めることができる。動粘度の単位はm/sであり、通常はcSt即ちセンチストークスに変換される(1cSt=10−6m/sまたは1cSt=1mm/sec)。
【0068】
一実施形態は、高度の線状分岐と、ポリマー鎖の末端部分におけるある独特の頭−頭結合を有する非常に規則的な構造とを特徴とする独特の化学組成を有する、新規種類のポリ−α−オレフィン類である。本発明のポリα−オレフィン類は、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれの場合も、アイソタクチック、シンジオタクチック、またはアタクチックのポリマーであってよいし、タクティシティの組み合わせを有することもできる。新規なポリ−α−オレフィン類は、それら自体を使用する場合、または他の流体とブレンドして使用する場合に、独特の潤滑特性を有する。
【0069】
別の一実施形態は、ポリマーの末端部分における高いパーセント値の独特の頭−頭結合と、水素化前の生成物と比較して程度が減少したタクティシティとを特徴とする独特の組成を有する、新規種類の水素化ポリ−α−オレフィン類である。これらの新規ポリ−α−オレフィン類は、それら自体を使用する場合、または他の流体とブレンドして使用する場合に、独特の潤滑特性を有する。
【0070】
これらのポリマーを製造するためのこの改善された方法では、メタロセン触媒とともに、1種類以上の活性化剤(アルモキサンまたは非配位陰イオンなど)および場合によりトリアルキルアルミニウム化合物などの共活性化剤が使用される。メタロセン触媒は、架橋または非架橋で、置換または非置換のシクロペンタジエニル、インデニル、またはフルオレニル化合物であってよい。触媒の好ましい種類の1つは、高い触媒生産性およびより高い粘度が得られる、高度に置換されたメタロセン類である。別の好ましい種類のメタロセン類は、架橋し置換されたシクロペンタジエン類である。別の好ましい種類のメタロセン類は、架橋し置換されたインデン類またはフルオレン類である。本明細書に記載の方法の一態様は、過酸化物類、酸素、硫黄、窒素含有有機化合物、およびまたはアセチレン系化合物などの触媒毒を除去するために、供給材料のオレフィン類を処理することをも含む。この処理によって、触媒生産性が、典型的には5倍を超え、好ましくは10倍を超えて増加すると考えられる。
【0071】
好ましい一実施形態は、ポリα−オレフィンの製造方法であって:
1)3〜30個の炭素原子を有する少なくとも1種類のα−オレフィンモノマーを、メタロセン化合物および活性化剤と、重合条件下で接触させる工程であって、反応器の全圧(好ましくは150psi(1034kPa)以下、好ましくは100psi(690kPa)以下、好ましくは50psi(345kPa)以下、好ましくは25psi(173kPa)以下、好ましくは10psi(69kPa)以下を基準にして、水素が存在する場合、200psi(1379kPa)以下の分圧で存在し(または水素が、30,000重量ppm以下で反応器中に存在する場合、好ましくは1,000ppm以下、好ましくは750ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは250ppm以下、好ましくは100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、好ましくは5ppm以下で存在し)、触媒/活性化剤/共活性化剤溶液、モノマー、並びに反応中に存在するあらゆる希釈剤または溶剤の全体積を基準にして、3〜30個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーが10体積%以上で存在する工程と;
2)ポリα−オレフィンを得て、場合によりPAOを水素化して、少なくとも50モル%のC3〜C30α−オレフィンモノマーを含むPAOを得る工程であって、ポリα−オレフィンが、100℃において5000cSt以下の動粘度を有し、ポリα−オレフィンが式:
【化3】

(式中、j、k、およびmは、それぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22であり、nは1〜350の整数であり、および)
で表される単位をZモル%以上含む工程とを含む、方法である。
【0072】
別の一実施形態は、ポリα−オレフィンの製造方法であって:
1)または3〜30個の炭素原子を有する1種類または少なくとも1種類のα−オレフィンモノマーを含む供給流を、メタロセン触媒化合物、並びに非配位陰イオン活性化剤またはアルキルアルモキサン活性化剤、および場合によりアルキル−アルミニウム化合物と、重合条件下で接触させる工程であって、触媒/活性化剤/共活性化剤溶液、モノマー、並びに反応器中に存在するあらゆる希釈剤または溶剤の全体積を基準にして、3〜30個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーが10体積%以上で存在し、α−オレフィン、希釈剤、または溶剤の供給流が300ppm未満のヘテロ原子含有化合物を含む工程と;少なくとも50モル%のC5〜C24α−オレフィンモノマーを含むポリα−オレフィンを得る工程であって、ポリα−オレフィンが100℃において5000cSt以下の動粘度を有する工程とを含む、方法である。好ましくは、水素が存在する場合、反応器中に、30,000重量ppm以下、好ましくは1,000ppm以下、好ましくは750ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは250ppm以下、好ましくは100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、好ましくは5ppm以下で存在する。
【0073】
別の一実施形態は、ポリα−オレフィンの製造方法であって:
1)3〜30個の炭素原子を有する少なくとも1種類のα−オレフィンモノマーを含む供給流を、メタロセン触媒化合物、並びに非配位陰イオン活性化剤またはアルキルアルモキサン活性化剤、および場合によりアルキル−アルミニウム化合物と、重合条件下で接触させる工程であって、触媒/活性化剤/共活性化剤溶液、モノマー、並びに反応器中に存在するあらゆる希釈剤または溶剤の全重量を基準にして、3〜30個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーが10体積%以上で存在し、α−オレフィン、希釈剤、または溶剤の供給流が300ppm未満のヘテロ原子含有化合物を含む工程と;少なくとも50モル%のC5〜C24α−オレフィンモノマーを含むポリα−オレフィンを得る工程であって、ポリα−オレフィンが100℃において5000cSt以下の動粘度を有する工程とを含む;或いは、本明細書に記載のこの方法において、水素が存在する場合、反応器中に1000重量ppm以下、好ましくは750ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは250ppm以下、好ましくは100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、好ましくは5ppm以下で存在する。
2)潤滑油画分ポリマーを単離し、次に、この潤滑油画分を水素と、典型的な水素化条件下で水素化触媒とともに接触させて、1.8未満の臭素価を有する流体を得る工程、或いは、潤滑油画分ポリマーを単離し、次に、この潤滑油画分を水素と、より過酷な条件下で水素化触媒とともに接触させて、1.8未満の臭素価を有し、非水素化ポリマーよりもmm成分のモル%が少ない流体を得る工程を含む。この方法の水素圧は、通常50psi〜3000psi、好ましくは200〜2000psi、好ましくは500〜1500psiの範囲内である。
【0074】
分子量分布(MWD)
分子量分布は粘度の関数となる。粘度が高いほど、分子量分布が大きくなる。図1は、Kv100℃における粘度の関数としての分子量分布を示すグラフである。丸は従来技術のPAOを示している。正方形および上部の三角形は、新規メタロセン触媒PAO類を示している。線1は、高粘度メタロセン触媒PAOの分子量分布の好ましい下限の範囲を示している。線3は、高粘度メタロセン触媒PAOの分子量分布の好ましい上限の範囲を示している。従って、線1および3を境界とする領域は、新規メタロセン触媒PAOの好ましい分子量分布領域を示している。線2は、1−デセンから製造したメタロセンPAOの実際の実験サンプルの望ましい典型的なMWDを示している。線5は、従来技術のPAOの分子量分布を示している。
【0075】
式1は、線5、即ち従来技術のPAO平均分子量分布のいアルゴリズムを示している。一方、式2、3、および4は、それぞれ線1、3、および2を示している。
式1 MWD=0.2223+1.0232×log(cStの単位での100℃におけるKv)
式2 MWD=0.41667+0.725×log(cStの単位での100℃におけるKv)
式3 MWD=0.8+0.3×log(cStの単位での100℃におけるKv)
式4 MWD=0.66017+0.44922×log(cStの単位での100℃におけるKv)
【0076】
少なくとも1つの実施形態においては、分子量分布は、式1よりも少なくとも10パーセント小さい。好ましい一実施形態においては、分子量分布は式2より小さく、最も好ましい一実施形態においては、分子量分布は式2より小さく、式4よりも大きい。
【0077】
表1は、メタロセン触媒PAO(「mPAO」)と現在の従来技術の高粘度PAO(cHVI−PAO)との間の差を示す表である。表1中の実施例1〜8は、メタロセン触媒を使用して異なる供給オレフィンから調製した。メタロセン触媒系、生成物、方法、および供給材料は、特許文献27および特許文献28に記載されている。表1中のmPAO類サンプルは、C10、C6,12、C6〜C18、C6,10,14−LAO類から製造した。実施例1〜7のサンプルはすべて非常に狭い分子量分布(MWD)を有する。図1に示されるようにmPAOのMWDは流体粘度に依存する。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例1〜7のサンプルについて円錐ころ軸受(「TRB」)を行うと、これらは、20時間の剪断後または延長された100時間の剪断後(TRB)に、非常に少ない粘性損失を示す。一般に、剪断安定性は流体粘度の関数となる。より低粘度の流体は、10%未満の最小粘性損失を有する。実施例7のように流体粘度が1000cStを超える場合、流体の損失は約19%の粘度となる。実施例8は、MWDが5.5のメタロセンPAOである。このメタロセンPAOは、29%の大きな粘性損失を示している。
【0080】
実施例9、10、および11は比較例である。高粘度PAOは、特許文献5および特許文献2に記載の方法により製造される。これらは広いMWDを有し、従ってTRB試験における剪断安定性が低い。
【0081】
実施形態において、前述のグループIからVのベースストックの1種類以上を、本発明のHVI−PAOと、1%〜99重量%の量でブレンドすることができ、実施形態においては、1〜90重量%、または50〜99重量%、または55〜90重量%、または1〜50重量%、または1〜45重量%、または5〜50重量%、または5〜45重量%の量でブレンドすることができる。多くの場合、これらの他のベースストックの1つまたは複数は、HVI−PAOとブレンドすることで最適化された粘度特性および性能を得られるように選択される。更に、好ましい実施形態は、本発明のブレンド成分として使用できるベースストックの粘度指数に関し、ある場合では、この粘度指数は好ましくは80以上、より好ましくは100以上、および更により好ましくは120以上である。更に、ある特定の場合には、これらのベースストックの粘度指数は、好ましくは130以上、より好ましくは135以上、更により好ましくは140以上となりうる。
【0082】
前述のこれらの流体に加えて、好ましい一実施形態においては、前述の流体とは異なるものから選択され、好ましくはより高い極性を有する第2の種類の流体も配合物に加えられる。流体の極性は、ASTM D611法によって測定されるアニリン点などによって、当業者により決定することができる。通常、高い極性を有する流体は、低いアニリン点を有する。低い極性を有する流体は高いアニリン点を有する。大部分の極性流体は100℃未満のアニリン点を有する。好ましい実施形態においては、このような流体はAPIグループVベースストックから選択される。これらのグループV流体の例としては、アルキルベンゼン類(特許文献29、特許文献30に記載されるものなど)、およびアルキルナフタレン類(例えば、特許文献31および特許文献32)が挙げられる。別のアルキル化芳香族類が、非特許文献3に記載されている。
【0083】
一実施形態においては、ビソム(visom 4)および/またはGTLなどの低粘度高VIのグループIII基油を、低粘度PAOモーダル成分の代わりに使用し、別のエステル組成物を使用すると、驚くべき性能が得られる。これらの配合物は、完全合成ベースストックから離れており、これらは好都合なギアエネルギー効率性能を示す。
【0084】
同様に、この種類に含まれかつ非常に望ましい潤滑特性を有するものは、アルキル化芳香族化合物、例えば、アルキル化酸化ジフェニル類、アルキル化硫化ジフェニル類、およびアルキル化ジフェニルメタン類などのアルキル化ジフェニル化合物、およびアルキル化フェノキサシン(phenoxathin)類、並びにアルキルチオフェン類、アルキルベンゾフラン類、および硫黄含有芳香族のエーテル類である。この種類の潤滑剤ブレンド成分は、例えば特許文献33、特許文献34、特許文献35、特許文献36、特許文献37および特許文献38に記載されている。
【0085】
ブレンド成分としての使用に適した他のグループV流体としては、ポリアルキレングリコール(PAG)類、部分的または完全にエーテルまたはエステルでエンドキャップされたPAG類が挙げられる。エステルベースストックは、本発明による配合物中の共ベースストックとして使用することもできる。これらのエステル類は、例えば、一酸、二酸、三酸と、一価、二価、または多価アルコールを有するアルコール類との脱水によって調製することができる。好ましい酸としては、C5〜C30一塩基酸類、より好ましくは2−エチルヘキサン酸、イソヘプチル酸、イソペンチル酸、およびカプリン酸、並びに二塩基酸類、より好ましくはアジピン酸、フマル酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、およびテレフタル酸が挙げられる。アルコール類は、あらゆる好適な一価アルコール類またはポリオール類であってよい。好ましい例は、2−エチルヘキサノール、イソトリデカノール類、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびジペンタエリスリトールである。これらのアルコール類の調製、性質、および使用は、非特許文献4にまとめられている。
【0086】
ベースストックの第2の成分が使用される場合、これは、典型的には、全組成物の約1重量%から約50重量%以下の量で使用され、ある実施形態においては約1重量%から約20重量%以下の量で使用される。このことは、配合物の最大75%が類似の成分で構成される自動車ギア用途と対照的である。アルキルナフタレン類は、好ましくは約5〜約25重量%、好ましくは約10〜約25重量%の量で使用される。アルキルベンゼン類およびその他のアルキル芳香族類を同じ量で使用することができるが、ある潤滑剤配合物中のアルキルナフタレン類は、ある用途では酸化性能に優れていることが分かった。PAGまたはエステル類は、通常、約1重量%から約40重量%以下の量、ある実施形態においては20重量%以下、別の実施形態においては10重量%未満、更には5重量%の量で使用される。
【0087】
本発明者らは、これらの第2のグループVベースストックを使用することで、通常、完成潤滑剤製品の粘度、溶解性、シール膨潤性、透明性、潤動性、酸化安定性などの完成潤滑剤製品の性質の1種類または数種類が改善されることを発見した。
【0088】
最終製品の粘度グレードは、異なる粘度ベースストック成分の好適なブレンドによって調整される。多くの従来の工業用潤滑剤配合物においては、粘度を増加させるために増粘剤が使用される。本発明の特定の利点の1つは、増粘剤が必須ではなく、好ましい実施形態においては増粘剤が全く使用されないことである。複数の異なる粘度グレードのHVI−PAO流体を最も好適に使用することで、有意な性能の利点を有する幅広い最終粘度グレードが実現される。通常、異なる粘度の種々のベースストック成分(第1の炭化水素ベースストック、第2のベースストック、およびあらゆる追加のベースストック成分)を種々の量で互いに好適にブレンドすることによって、完成潤滑剤の他の成分(後述するものなど)とのブレンドに適した粘度を有するベースストックブレンドを得ることができる。このことは、過度の実験を行うことなく、本開示を把握している当業者によって決定することができる。最終製品の粘度グレードは、好ましくはISO 2〜ISO 1000の範囲内であり、工業用ギア潤滑剤用途の場合には更に高く、例えば、最高約ISO 46,000である。より低い粘度グレード、典型的にはISO 2〜ISO 100の場合、混合したベースストックの粘度は、完成製品の粘度よりもわずかに高く、典型的にはISO 2〜約ISO 220であるが、最高ISO 46,000のより高粘度のグレードにおいては、多くの場合は添加剤によってベースストックブレンドの粘度をわずかに低い値に低下させる。ISO 680グレードの潤滑剤の場合、例えば、ベースストックブレンドは、添加剤の性質および含有率に依存して、約780〜800cSt(40℃において)となりうる。
【0089】
従来の配合物においては、最終製品の粘度は、ポリマー増粘剤を、特に、例えばISO 680〜ISO 46,000のより高粘度の製品中に使用することによって所望のグレードにすることができる。使用可能な典型的な増粘剤としては、ポリイソブチレン類、並びにエチレン−プロピレンポリマー類、ポリメタクリレート類、並びに種々のジエンブロックポリマー類およびコポリマー類、ポリオレフィン類、およびポリアルキルスチレン類が挙げられる。これらの増粘剤は、一般に粘度指数向上剤(VII)または粘度指数調整剤(VIM)として使用され、そのため、これらの種類の多くでは、従来温度−粘度の関係に対して有用な効果が得られている。本発明による配合物中に場合により使用されるが、このような成分は、商業市場の要求、装置製造者の仕様に従ってブレンドして、最終的な所望の粘度グレードの製品を製造することができる。典型的な市販の粘度指数向上剤は、ポリイソブチレン類、重合および共重合したメタクリル酸アルキル類、並びに窒素含有化合物と反応させたスチレン無水マレイン酸インターポリマーの混合エステル類である。
【0090】
通常、数平均分子量または重量平均分子量が10,000〜15,000のポリイソブテン類は商業的に重要な種類のVI向上剤であり、一般に、それらの分子構造によって大きな粘度増加が得られる。通常、ブタジエンまたはイソプレンなどの1,3−ジエン類単独、またはスチレンと共重合させたかのいずれかであるコポリマーであるジエンポリマー類も商業的に重要な種類の1つであり、この種類の典型的なものはシェリビス(Shelivis)(商標)などの名称で販売されている。統計的ポリマーは、通常ブタジエンおよびスチレンから製造されるが、ブロックコポリマーは、通常、ブタジエン/イソプレンおよびイソプレン/スチレンの組み合わせから誘導される。これらのポリマーは、通常、残留ジエン不飽和を除去し安定性を改善するために水素化が行われる。数平均分子量または重量平均分子量が通常15,000〜25,000であるポリメタクリレート類は、別の商業的に重要な種類の増粘剤であり、アクリロイド(Acryloid)(商標)などの名称で広く市販されている。
【0091】
ポリマー増粘剤の種類の1つは、スチレン、ブタジエン、およびイソプレンなどの不飽和モノマーのアニオン重合によって製造されるブロックコポリマーである。この種類のコポリマーは、例えば、特許文献39、特許文献40、特許文献41、特許文献42、特許文献43、特許文献44、特許文献45および特許文献46に記載されている。ブロックコポリマーは線状または星型コポリマーであってもよく、本発明の目的では線状ブロックポリマーが好ましい。好ましいポリマーは、イソプレン−ブタジエンおよびイソプレン−スチレンアニオン性ジブロックおよびトリブロックコポリマーである。特に好ましい高分子量ポリマー成分は、シェリビス(Shelivis)(商標)40、シェリビス(Shelivis)(商標)50およびシェリビス(Shelivis)(商標)90の名称でインフェニウム・ケミカル・カンパニー(Infenium Chemical Company)より販売されているものであり、これらの線状アニオン性コポリマーである。これらの中で、シェリビス(Shelivis)(商標)50はアニオン性ジブロックコポリマーであり、シェリビス(Shelivis)(商標)200、シェリビス(Shelivis)(商標)260、およびシェリビス(Shelivis)(商標)300は星型コポリマーである。
【0092】
ある増粘剤は、特許文献47に記載されるように二重の機能のため分散剤−粘度指数調整剤として分類することができる。特許文献47に開示されている分散剤−粘度指数調整剤は、カルボン酸含有インターポリマーの窒素含有エステルと、アクリル酸エステル単独または組み合わせでの油溶性アクリレート重合生成物とである。市販の分散剤−粘度指数調整剤は、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)よりアクリロイド(Acryloid)(商標)1263および1265、ローム−GMBHO(Rohm−GMBHO)(商標)登録商標によるビスコプレックス(Viscoplex)(商標)5151および5089、並びにルーブリゾール(Lubrizol)(商標)3702および3715の商品名で販売されている。
【0093】
酸化防止剤は、場合により使用されるが、本発明による配合物の酸化安定性を改善するために使用することができる。多種多様な市販の材料が好適となる。本発明の組成物中に使用することができる最も一般的な種類の酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アルキル芳香族スルフィド類、ホスフィット類およびホスホン酸エステル類などのリン化合物、並びにジチオホスフェート類などの硫黄−リン化合物、並びにジアルキルジチオカルバメート類、例えばメチレンビス(ジ−n−ブチル)ジチオカルバメートなどの他の種類である。これらは種類ごとに個別に使用することもできるし、互いに組み合わせて使用することもできる。フェノール類またはアミン類の異なる種類の混合物が特に好ましい。
【0094】
酸化防止性能を改善するために本発明による組成物に場合により加えられる好ましい硫黄化合物としては、硫化ジベンジルなどのジアルキルスルフィド類、ポリスルフィド類、ジアリールスルフィド類、変性チオール類、メルカプトベンゾイミダゾール類、チオフェン誘導体、キサントゲネート類、およびチオグリコール類が挙げられる。
【0095】
本発明の潤滑剤中に使用することができるフェノール系酸化防止剤は、好適には無灰(金属非含有)フェノール化合物、或いはある種のフェノール化合物の中性または塩基性の金属塩であってよい。潤滑剤流体中に混入されるフェノール化合物の量は、フェノール化合物が加えられることによる個別の有用性に依存して広範囲で変動させることができる。一般に、約0.1〜約10重量%のフェノール化合物が配合物中に含まれる。より多くの場合、この量は約0.1〜約5%、または約1重量%〜約2重量%である。特に明記しない限り、本明細書において使用されるパーセント値は全組成物を基準としている。
【0096】
好ましいフェノール化合物は、立体障害のヒドロキシル基を有するヒンダードフェノール類であり、このようなものとしては、ヒドロキシル基が互いにo位またはp位にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、C6アルキル基で置換されたヒンダードフェノール類、およびこれらのヒンダードフェノール類のアルキレン結合誘導体が挙げられる。この種類のフェノール系材料の例は、2−t−ブチル4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;および2−メチル−6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノールである。オルト結合フェノール類の例としては:2,2’−ビス(6t−ブチル−4−ヘプチルフェノール);2,2’−ビス(6−t−ブチル−4−オクチルフェノール);および2,2’−ビス(6−t−ブチル4−ドデシルフェノール)が挙げられる。硫黄含有フェノール類を使用することで大きな利点が得られる場合もある。硫黄は、フェノール系酸化防止剤分子中の芳香族または脂肪族のいずれの硫黄としても存在することができる。
【0097】
非フェノール系酸化防止剤、特に芳香族アミン酸化防止剤は、それ自体、またはフェノール系との併用のいずれかで使用することもできる。非フェノール系酸化防止剤の典型的な例としては、式RNの芳香族モノアミン類などのアルキル化および非アルキル化芳香族アミンが挙げられ、式中、Rは、脂肪族基、芳香族基、または置換芳香族基であり、Rは、芳香族または置換芳香族基であり、Rは、H、アルキル、アリール、またはRS(O)xRであり、Rは、アルキレン基、アルケニレン基、またはアラルキレン基であり、Rは、高級アルキル基、或いはアルケニル基、アリール基、またはアルカリール基であり、xは、0、1、または2である。脂肪族基Rは、1〜約20個の炭素原子を含有することができ、好ましくは6〜12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましくは、RおよびRの両方が芳香族基または置換芳香族基であり、芳香族基はナフチルなどの縮合環芳香族基であってよい。芳香族基RおよびRは、Sなどの別の基にともに結合することができる。
【0098】
典型的な芳香族アミン類酸化防止剤は、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基またはアリール置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが挙げられる。アリール基の例としては、スチレン化基または置換スチレン化基が挙げられる。一般に、脂肪族基は14個を超える炭素原子を含有しない。本発明の組成物中に有用なアミン酸化防止剤の一般的な種類としては、ジフェニルアミン類、フェニルナフチルアミン類、フェノチアジン類、イミドジベンジル類、およびジフェニルフェニレンジアミン類が挙げられる。2種類以上の芳香族アミンの混合物も有用となる。ポリマーアミン酸化防止剤を使用することもできる。本発明に有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例としては:p,p’−ジオクチイジフェニルアミン(p,p’−dioctyidiphenylamine);オクチルフェニル−β−ナフチルアミン;t−オクチルフェニル−α−ナフチルアミン;フェニル−αナフチルアミン;フェニル−β−ナフチルアミン;p−オクチルフェニル−α−ナフチルアミン;4−オクチルフェニル−1−オクチル−β−ナフチルアミンが挙げられる。
【0099】
使用可能なジアルキルジチオホスフェート塩の典型的なものは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート類、特に亜鉛ジオクチルおよび亜鉛ジベンジルジチオホスフェートである。これらの塩は、摩耗防止剤として使用されることが多いが、これらは、特に油溶性銅塩とともに共酸化防止剤として使用される場合に、酸化防止機能も有することが示されている。亜鉛ジアルキルジチオホスフェート類などのリンおよび亜鉛化合物と併用される酸化防止剤としてこの方法で使用することができる銅塩としては、ステアリン・アド(stearic add)、パルミチン酸、およびオレイン酸などのカルボキシル・アド(carboxylic add)類の銅塩、銅フェノール塩類、スルホン酸銅類、アセチルアセトン銅類、数平均分子量または重量平均分子量が通常200〜500であるナフテン酸類のナフテン酸銅類、並びに亜鉛が銅に置換されたジチオオカルバミン酸銅類および銅ジアルキルジチオホスフェート類が挙げられる。この種類の銅塩およびそれらの酸化防止剤としての使用は特許文献48に記載されている。
【0100】
通常、酸化防止剤の総量は全組成物の10重量%を超えず、通常は更に少なく、5重量%未満である。通常、0.5〜2重量%の酸化防止剤が好適であるが、特定の用途では希望するならより多くを使用することができる。
【0101】
防止剤パッケージ
摩耗防止および防錆/防食特性の望ましいバランスを得るために、防止剤パッケージが使用される。このパッケージの成分の1つは、置換ベンゾトリアゾールアミンホスフェート付加物であり、別のものは三置換ホスフェート、特にクレジルジフェニルホスフェートなどのトリアリールホスフェートであり、市販されている周知の材料である。この成分は、通常、組成物の最大5重量%の少量で存在する。通常、全組成物の3%未満、例えば0.5〜2重量%が、所望の摩耗防止性能を得るために適切となる。
【0102】
摩耗防止/防錆パッケージの第2の成分は、ベンゾトリアゾール付加物、または耐摩耗性および抗酸化も得られるアミンホスフェート付加物を有する置換ベンゾトリアゾールである。この種類の特定の多機能付加物(芳香族アミン類を有する)が特許文献49に記載されており、この文献には、これらの付加物の説明とともにそれらを調製できる方法が記載されている。簡潔に述べると、これらの付加物は、置換ベンゾトリアゾール、即ち、置換基Rが水素または低級アルキルC〜C、好ましくはCHであるアルキル置換ベンゾトリアゾールを含む。好ましいトリアゾールはトリルトリアゾール(TTZ)である。便宜上、この成分を本明細書においてはTTZと記載するが、特許文献49に記載されるように他のベンゾトリアゾール類を使用することもできる。
【0103】
付加物のアミン成分は、特許文献49に記載される式の芳香族アミンリン酸塩、即ち、アミンリン酸塩のトリアゾール付加物であってよい。或いは、主成分は、脂肪族アミン塩、例えば、有機酸ホスフェートとジアルキルアミンなどのアルキルアミンとの塩であってよい。アルキルアミンホスフェート付加物は、芳香族アミン付加物と同じ方法で製造することができる。この種類の好ましい塩は、長鎖(C11〜C14)アルキルアミンのモノ−/ジ−ヘキシル酸リン酸塩であり、この方法で、本発明の組成物中に使用するための、TTZとの付加物を製造することができる。付加物は1:3〜3:1(モル)の範囲とすることができ、好ましい付加物は、TTZおよび長鎖アルキ/有機酸リン酸塩を75:25の(重量)比で有する。
【0104】
TTZアミンリン酸塩付加物は、典型的には約5重量%未満の比較的少量で使用され、摩耗防止および防錆特性の良好なバランスを得るためにトリヒドロカルビルホスフェート成分、例えばクレジルジフェニルホスフェート成分と併用される場合、通常約0.1〜1重量%、例えば約0.25重量%が適切となる。通常CDPおよびTTZ付加物は、2:1〜5:1の重量比で使用される。
【0105】
更なる防錆剤を使用することもできる。市販されておりかつこの目的に有用となる金属不活性化剤としては、例えば、N,N−二置換アミノメチル−1,2,4−トリアゾール類、およびN,N−二置換アミノメチル−ベンゾトリアゾール類が挙げられる。N,N−二置換アミノメチル−1,2,4−トリアゾール類は、周知の方法、即ち特許文献50に記載されるように、1,2,4−トリアゾールをホルムアルデヒドおよびアミンと反応させることによって調製することができる。N,N−二置換アミノメチル−ベンゾトリアゾールも同様に、特許文献51に記載されるように、ベンゾトリアゾールをホルムアルデヒドおよびアミンと反応させることができる。好ましくは、金属不活性化剤は、1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−1,2,4−トリアゾールまたは1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−4−メチルベンゾトリアゾール(トリルトリアゾール:ホルムアルデヒド:ジ−2−エチルヘキシルアミンの付加物(1:1:1m))であり、これらは市販されている。更に防錆性を付与するために使用することができるその他の防錆剤としては、これも市販されているドデシレンコハク酸の高級アルキル置換アミド類などのスクシンイムド(succinimde)誘導体類、テトラプロペニルコハク酸モノエステル類(市販されている)などのドデセニルコハク酸の高級アルキル置換アミド類、イミダゾリンコハク酸無水物誘導体類、例えばテトラプロペニルコハク酸無水物のイミダゾリン誘導体類が挙げられる。通常、これらの更なる防錆剤は、2重量%未満の比較的少量で使用されるが、特定の用途、例えば抄紙機油では、必要であれば最大約5重量%の量を使用することができる。
【0106】
本発明の油は、個別の使用条件により他の従来の添加剤を含むこともでき、例えば分散剤、清浄剤、摩擦調整剤、トラクション向上剤、解乳化剤、消泡剤、発色団(染料)、曇り防止剤を用途により含むことができ、これらすべては市販の材料を使用して従来方法によりブレンドすることができる。
【0107】
前述したように、本発明の潤滑油は、優れた性質および性能特性を有する。良好な性質の例としては、優れた粘度特性、高いVI、低い流動点、優れた低温粘度、熱酸化安定性などが挙げられる。これらの性質は多くの規格または特殊な試験によって測定することができる。通常、動粘度はASTM D445により測定した。VIはASTM D2270によって計算することができる。潤滑剤の流動点は、ASTM D97法によって測定することができる。潤滑剤の曇り点はASTM D2500法によって測定することができる。セーボルトユニバーサル動粘性計数(Saybolt Universal Viscosity)は、ASTM D2161法によって測定することができる。多くのギアオイル、トランスミッションオイル、工業用潤滑剤、およびエンジンオイルの低温低剪断速度粘度は、ASTM D2983法によりブルックフィールド粘度計によって測定することができる。或いは、低温における粘度範囲が必要な場合、スキャニングブルックフィールド粘度をASTM D5133法により求めることができる。高温高剪断速度における粘度は、D4624、D5481、またはD4741法により測定することができる。
【0108】
良好な耐摩耗特性は、FZGスカッフィング試験(DIN 51534)において、少なくとも8、より通常では9〜13の範囲、更にはそれを超える値を不合格段階の値とする性能によって示される。FZG試験は、通常の歯車の組で生じる鋼対鋼の接触の性能を示しており;この試験において性能が良好であれば、良好な平歯車性能性能が基体できることを示している。大きいFZG試験値は、典型的にはより高い粘度グレードの油で実現され、例えば ISO 100以上であれば、FZG値が12以上、更には13以上となり、対照的にISO 100未満のグレードでは9〜12の値となる。13以上(A/16.6/90)または12以上(A/8.3/140)の値は、300以上のISOグレードで実現することができる。
【0109】
摩耗防止性能は0.35mm以下の最大摩耗痕径の四球(ASTM D 4172)摩耗試験値(鋼対鋼、1時間、180rpm、54℃、20Kg/cm)によっても示すことができ、0.30mm以下の値を容易に達成できる。120以上、典型的には150以上の四球EPウェルド(EP Weld)値を達成できる。0.07mm(摩耗痕径)のASTM四球鋼対真鍮値が典型的である。
【0110】
防錆性能は、人工海水を使用したASTM D 665Bに合格することによって示される。24時間、121℃における銅板腐食試験(Copper Strip Corrosion)(ASTM D130)では、典型的には最高で2A、通常1Bまたは2Aとなる。
【0111】
優れた温度酸化性能が、低粘度変化、低酸価変化、並びに低腐食またはスラッジ堆積物などの多数の性能基準によって示される。1回の試験でこれら全ての重要な基準を評価するための触媒酸化試験が開発されている。この触媒酸化においては、50mlの油を、鉄、銅、およびアルミニウムの触媒、並びにある重量の鉛腐食試験片とともにガラス管中に入れる。得られたセルおよびその内容物を、163℃に維持した浴中に入れ、10リットル/時の乾燥空気をサンプル中に40時間バブリングする。セルを浴から取り出し、触媒組立体をセルから取り出す。油について、スラッジの存在および中和価の変化(ASTM D 664)を調べ、100℃における動粘度(ASTM D 445)を測定する。鉛試験片を洗浄し、秤量して、重量減を求める。5mg KOH(デルタ・タン(DELTA TAN)、163℃、120時間)以下の試験値が本発明の組成物に特徴的であり、3mg KOH未満または更に低い値、典型的には0mg KOH未満の値を得ることもできる。触媒酸化試験における粘度増加は、典型的には15%以下であり、8〜10%まで低くなる場合もある。
【0112】
良好な耐酸化性は、少なくとも8,000時間、通常少なくとも10,000時間のTOST値(ASTM D943)、およびTOSTスラッジ(1,000時間)が1重量%以下、通常は0.5重量%以下が達成されることによっても示される。酸化安定性は、ASTM D2272などの別の方法によって測定することもできる。
【0113】
本発明に記載の油の優れた剪断安定性は、多くの剪断安定性試験によって測定することもできる。例としてはカート・オーバーン(Kurt Orbahn)ディーゼルインジェクター試験(ASTM 3945)またはASTM D5275法が挙げられる。剪断安定性野別の試験の1つは、円錐ころ軸受剪断試験(CEC L−45−T/C法)である。これは音波剪断安定性試験(ASTM D2603法)によって測定することもできる。剪断安定性は、多くの工業用油用途において重要である。高い剪断安定性は、高剪断において油の粘度が低下しないことを意味する。このような剪断安定性油は、より厳しい使用条件下においてより良好な保護を付与することができる。本発明に記載の油組成物は、工業用油用途において優れた剪断安定性を有する。
【0114】
潤滑油の発泡傾向は、歯車装置、高容量圧送、循環給油およびはねかけ給油などのシステムにおいて重大な問題となる。潤滑剤油中に気泡が発生すると、不十分な潤滑、キャビテーション、および潤滑剤のオーバーフロー損失が生じて、機械の故障が生じることがある。従って、潤滑油の発泡性の制御が重要となる。これは、工業用潤滑剤の場合に特に重要である。潤滑剤の発泡傾向を測定するために多くの方法が開発されている。例えば、ミックスマスター(Mixmaster)発泡法では、550グラムの試験油を高耐久性ミックスマスター(Mixmater)ブレンダーの容器に投入する。次にブレンダーのビーターを750rpmで5分間回転させる。ビーターを停止して油から取り出し、20秒間油を容器中に戻す。次に全発泡体積をmlの単位で測定する。これが、0分の時間における発泡体積となる。次に5分後、10分後、20分後、30分後、40分後などに発泡体積を測定して、発泡体積が消失する速さを調べる。通常、5分間の撹拌終了時の発泡がより少ない場合、および/または撹拌停止後の泡の消失がより速い場合に、試験油が良好な発泡特性を有することになる。HVI−PAOを使用して配合した潤滑剤は、通常、優れた発泡特性を示す。更に、HVI−PAOを主成分とする老化または汚染された潤滑剤も、従来の配合物よりもはるかに優れた発泡特性を有する。別の発泡試験としては、ASTM D892法−潤滑油の発泡特性(Foam Characteristics of Lubricating Oils)が挙げられる。
【0115】
エネルギー効率は、現在の機械装置においてより重要となってきている。装置製造者は、装置のエネルギー効率の改善、電力消費の減少、摩擦損失の減少などの方法を探し求めている。例えば、冷蔵庫の製造者、消費者、および政府機関は、冷蔵装置の圧縮機のエネルギー効率を要求している。政府は自動車のエネルギー効率を最小限にすることを要求している。歯車工は、より少ないエネルギー消費、より低い使用温度などを有するより効率的な歯車を要求している。潤滑剤は、機械システムのエネルギー効率に多くの方法で影響を与えうる。例えば、特定の保護レベルのより低粘度の潤滑剤は、粘性抵抗がより低くなるため、エネルギー損失が少なくなり、効率が高くなる。より低い摩擦係数を有する潤滑剤は、通常、より良好なエネルギー効率を有する。過度に発泡する潤滑剤は、体積効率が低下する。例えば、ピストンの下り行程において、泡状層が圧縮される。この圧縮によって、エネルギーが吸収され、従って有用な仕事に利用可能なエネルギーが減少する。本発明において開示される潤滑剤は、これらのエネルギー効率に優れた性質の多くを有する。
【0116】
工業用油のエネルギー効率は、使用条件下で最適な試験が行われる。このような比較は、並行比較を使用することによって有意義に行うことができる。このような結果の例は、論文(非特許文献5)に報告されている。
【0117】
用途
本発明の潤滑油またはグリースは、ころがり要素軸受(例えば、玉軸受)、歯車、循環潤滑システム、水力学、ガスを圧縮するための圧縮機(往復式、回転式、およびターボ型空気圧縮機、ガスタービン、またはその他のプロセスガス圧縮機など)または液体を圧縮するための圧縮機(冷蔵庫の圧縮機など)、真空ポンプ、または金属加工機械の潤滑、並びにオンオフサイクル中に電気アークを発生する電気スイッチの潤滑、または電気コネクタなどの電気的用途に使用することができる。
【0118】
本発明において開示される潤滑剤またはグリース成分は、以下の特性の1つ以上が望ましい工業機械における用途に最も適している:広い温度範囲、安定で信頼性のある運転、優れた保護、長い運転時間、エネルギー効率。本発明の油は、優れた高温および低温粘度、流動性、優れた発泡特性、剪断安定性、および改善された摩耗防止特性、熱および酸価安定性、低摩擦、低トラクションなどの性能特性のバランスが優れていることを特徴とする。これらは、ギアオイル、軸受油、循環油、圧縮機油、油圧油、タービン油、あらゆる種類の機械のグリース、並びにその他の用途、例えば、湿式クラッチシステム、ブロワ軸受、風力タービンギアボックス、微粉炭機駆動部、冷却塔ギアボックス、キルン駆動部、抄紙機駆動部、および回転スクリュー圧縮機において有用性を見出すことができる。
【実施例】
【0119】
実験
以下の実施例は、本発明の説明、並びに他の方法およびそれらより製造された製品との比較を意味する。多数の修正および変形が可能であり、添付の特許請求の範囲の範囲内において、本発明は、本明細書において具体的に開示される以外の方法で実施することができることを理解されたい。
【0120】
I.非メタロセン触媒によるHVI−PAO類
以下の表2に示されるHVI−PAO類の調製は、特許文献5に記載されている。この方法において、100℃の粘度が5〜3000cStである流体が高収率で調製された。製品配合物に使用したこれらの流体の3つの代表例を以下の表1にまとめている。
【0121】
【表2】

【0122】
II.メタロセン触媒によるHVI−PAO
サンプル4。500mlフラスコに、トルエン(20グラム)、1,3−ジメチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(0.01グラム)、およびトルエン溶液中10%MAO(20.1グラム)を不活性雰囲気で投入する。反応温度を20〜25℃に維持しながら、添加漏斗から1−デセン(100グラム)をゆっくり触媒混合物に加える。反応混合物を16時間撹拌する。3mlの水および塩基性アルミナを使用して触媒をクエンチする。固形分を濾過する。140℃/<1ミリトールにおいて液体を蒸留して、C20およびより軽質の成分を全て除去して、潤滑油を得る。潤滑油の収率は92重量%である。この潤滑油は以下の性質を有する:100℃粘度=312cSt、40℃粘度=3259cSt、およびVI=250。この潤滑油を、標準的で典型的な水素化条件で更に水素化して、最終生成物を得た。
【0123】
サンプル5。ジメチルシリルビス[シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリドを触媒として使用したことを除けばサンプル4と同様の方法で、このサンプルを調製した。この潤滑油生成物は以下の性質を有する:100℃粘度=8.96cSt、40℃粘度=49.32cStおよびVI=164。標準条件下での水素化後の潤滑油は、工業用潤滑油配合物中に使用することができる。
【0124】
【表3】

【0125】
m−スーパーシン(m−SuperSyn)の剪断暗転性を評価するために、KRL軸受剪断試験(CEC L−45−A−99)を使用して測定を行った。この工業的試験は、試験潤滑剤の存在下で、60℃で20時間の円錐ころ軸受試験を使用する。100℃における動粘度測定は、候補となる流体に対して、20時間の試験の前および直後に行われる。動粘度の差は、試験流体が受けた永久剪断の指標となる。この差は%粘性損失として報告される。典型的な完成ギア潤滑剤は、この試験後に流体粘度が最大で5%低下する。m−スーパーシン(m−SuperSyn)の改善された剪断安定性を示すために、候補となる2つの流体に対してこの試験を行った。更に、改善された剪断安定性を更に示すために、この試験を3倍の長さ(60時間)で行った。
【0126】
試験流体は、150cStスーパーシン(SuperSyn)成分の製造に使用した触媒(クロム−シリカ誘導対メタロセン誘導)を除けば組成は同一であった。表4は、配合物1および2で示される2つの流体の基本的な配合を示している。
【0127】
【表4】

【0128】
表5は、配合物1対配合物2の剪断安定特性を示している。cPAOを有する配合物1と比較すると、mPAOを有する配合物2は好都合な剪断安定特性を有する。
【0129】
【表5】

【0130】
図2は、メタロセン触媒PAOを有する配合物の剪断試験特性の、クロム−シリカ触媒PAO配合物との比較を示している。試験全体を通して、メタロセン触媒PAO11は、クロム−シリカ触媒PAO 12よりも好都合な剪断安定性を明らかに有する。
【0131】
図1に示される剪断安定性のこの予期せぬ利点は、試験の過酷さが大きく増加する通常の3倍の試験時間まで安定な粘度特性によって示されている。m−スーパーシン(m−SuperSyn)を使用してギア潤滑剤のこの予期せぬ結果に基づくと、更に多くの利点が存在すると予想される。このような利点としては:負荷のかかった歯車および軸受の接触と類似した剪断条件下での膜厚さの増加;ギア潤滑剤の剪断後の揮発性の向上(例えば低粘度剪断成分の混入の減少);剪断が軽減されることにより、基油の剪断が発生することによるフリーラジカル成分の減少が挙げられる。従って、このため完成ギア潤滑剤中の酸化防止剤(AO)の消費が減少し、潤滑剤老化過程中に典型的な他のフリーラジカル過程により多くのAOを使用することができ;従来のポリマー増粘剤を使用しなくても完成流体の粘度が維持され;粘度外字されるために歯車部品の寿命が改善される(保守点検の回数が減少する)。
【0132】
III.HVI PAOを有するエステルの利点
一実施形態においては、配合の空いている部分に、高VIのグループIII基油例えば、150cSt〜600cStの高VIのPAOのグレードのビソム(Visom)4と、ヘプタン酸イソノニルエステルまたはセバシン酸ジオクチルエステルのいずれかの2種類の異なるエステル組成物が使用される。この実施形態においては、非常に高VI(200+)の基油の組み合わせを製造することができる。ビソム(visom)4エステル類のこれらの組み合わせは、PAOを低粘度成分として使用する組成物のより低コストの代替物となりうる。
【0133】
表6は、種々の配合物を示している。配合物A、B、C、およびDはベースストックの組み合わせである。配合物E、F、およびGは、3つの異なる好ましい本発明の実施形態を示す完全に配合された潤滑剤である。配合物HおよびIは、比較のためセバシン酸ジオクチルを使用せずに完全に配合した潤滑剤を示している。
【0134】
【表6】

【0135】
以下の表7は、表5の全ての配合物の性質を示している。表7に示されるように、本発明の配合物E、F、およびGでは改善された性質が得られる。このような性質としては、ブルックフィールド粘度 ノアック(Noack)揮発性減少、および引火点が挙げられる。は、3つの異なる本発明の実施形態を示す改善に配合された潤滑剤である。配合物HおよびIは、比較のために完全に配合した本発明の実施形態を示している。
【0136】
【表7】

【0137】
好ましい一実施形態において、本発明者らは、本発明のブレンド中にセバシン酸ジオクチルエステルを使用することによる予期せぬ相乗効果を発見した。特に、本発明者らは、セバシン酸ジオクチルエステルの好適な処理範囲が、好ましくは完成配合物の10重量パーセントを超え、より好ましくは10重量パーセントを超え30重量パーセント未満、最も好ましくは少なくとも15重量パーセントで25重量パーセント未満であることを発見した。更により好ましくはこのエステルは、3cSt kv 100℃を超え6cSt kv 100℃未満の粘度を有する。
【0138】
図3は、表6および7中の配合物A、B、C、およびDからのエステル含有率を基準にしたノアック(Noack)揮発性減少を示すグラフである。この図から分かるように、ノアック(Noack)揮発性は、エステル含有率が増加すると改善される(31)。
【0139】
図4は、表6および7中の配合物E、F、およびGからのエステル含有率を基準にした酸化性能を示すグラフである。この図から分かるように、好都合な酸化は10重量パーセント〜30重量パーセントの間のエステルであり、20重量パーセントが好ましい(41)。
【0140】
図5は、エステル含有率を基準にしたブルックフィールド粘度を示すグラフであり、表6および7中の配合物EをHおよびIと比較している。この図から分かるように、好都合な酸化は10重量パーセント〜30重量パーセントの間のエステルであり、20重量パーセントが好ましい(51)。
【0141】
以上の実施例によって、HVI−PAOが、従来の潤滑油組成物よりも性能の利点を有して多くの工業用油およびグリースに広く使用可能であることが示された。
【0142】
本明細書において使用される商品名は、(商標)の記号または(登録商標)の記号によって示されており、これらの名称が、特定の商標権によって保護されることができ、例えば、これらが種々の法域において登録商標となりうることを示している。
【0143】
本明細書に引用されるすべての特許および特許出願、試験手順(ASTM法、UL法など)、およびその他の文献は、そのような開示が本発明と一致せず、このような援用が許容されるすべての法域に関する程度において、参照により全体が援用される。
【0144】
数値の下限および数値の上限が本明細書に記載される場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が意図されている。本発明の例示的実施形態を詳細に説明してきたが、当業者によって、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない種々の他の修正が明らかとなるであろうし、容易に実施可能であることを理解されたい。従って、本明細書に添付の特許請求の範囲が本明細書に記載の実施例および説明に限定されることは意図しておらず、特許請求の範囲は、本発明が関係する当業者によって同等であるとして処理されうるすべての特徴を含めて、本発明に属する特許性のある新規性のすべての特徴を含むものとして解釈される。
【0145】
多数の実施形態および特定の実施例を参照しながら、以上に本発明を説明してきた。以上の詳細な説明を考慮すれば、当業者に多くの変形が提案されるであろう。このようなすべての明らかな変形は、添付の特許請求の範囲の意図する完全な範囲内となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油配合物であって:
a)125cSt kv 100℃を超える粘度および100を超える粘度指数を有するメタロセン触媒HVI−PAO;
b)少なくとも2cSt kv 100℃であり60cSt kv 100℃未満である粘度を有する第2のベースストックであって、前記メタロセン触媒HVI−PAOよりも少なくとも60cSt kv 100℃だけ低粘度である第2のベースストック;および
c)少なくとも2cSt kv 100℃であり6cSt kv 100℃未満である粘度を有するセバシン酸ジオクチルエステルであって、前記油配合物の10重量パーセントを超え30重量パーセント未満を構成するセバシン酸ジオクチルエステル
を含み;
d)195を超える粘度指数を有する
ことを特徴とする油配合物。
【請求項2】
前記メタロセン触媒HVI−PAOが150cSt kv 100℃を超える粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項3】
極性のグループVベースストックを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項4】
前記第2のベースストックがPAOであることを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項5】
前記第2のベースストックがグループIIIベースストックであることを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項6】
前記第2のベースストックがGTLベースストックであることを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項7】
自動車用ギアオイルとして使用されることを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項8】
オレフィンコポリマー類(「OCP」)を含有せず、ポリイソブチレン(「PIB」)粘度調整剤を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項9】
粘度調整剤を有さないことを特徴とする請求項1に記載の油配合物。
【請求項10】
前記メタロセン触媒HVI−PAOが、ASTM D2270により測定して160を超える粘度指数(VI)、並びに、
0.19未満の分岐比、
300〜45,000の間の重量平均分子量、
300〜18,000の間の数平均分子量、
1〜5の間の分子量分布、
−15℃未満の流動点、
3未満の臭素価、
C30〜C1300の範囲の炭素数、および
ASTM D445により測定し100℃において測定して3cSt〜15,000cStの範囲の動粘度
の少なくとも1つによって特徴付けられることを特徴とする請求項1に記載の工業用油またはグリース配合物。
【請求項11】
剪断安定性を改善する方法であって、
油配合物を得る工程であって、前記油配合物は、
125cSt kv 100℃を超える粘度および195を超える粘度指数を有するメタロセンHVI−PAO、
少なくとも2cSt kv 100℃であり60cSt kv 100℃未満である粘度を有する第2のベースストックであって、前記メタロセンHVI−PAOよりも少なくとも60cSt kv 100℃だけ低粘度である第2のベースストック、および
少なくとも2cSt KV 100℃であり6cSt KV 100℃未満である粘度を有するセバシン酸ジオクチルエステルであって、前記油配合物の10重量パーセントを超え30重量パーセント未満を構成するセバシン酸ジオクチルエステル
を含む工程、および
前記油配合物を使用して潤滑する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
好都合な剪断安定性を有する油配合物をブレンドする方法であって、
a)125cSt kv 100℃を超える粘度および195を超える粘度指数を有するメタロセンHVI−PAOを得る工程;
b)少なくとも2cSt kv 100℃であり60cSt kv 100℃未満である粘度を有する第2のベースストックであって、前記メタロセンHVI−PAOよりも少なくとも60cSt kv 100℃だけ低粘度である第2のベースストックを得る工程;
c)少なくとも2cSt kv 100℃であり6cSt kv 100℃である粘度を有するセバシン酸ジオクチルエステルであって、前記油配合物の10重量パーセントを超え30重量パーセント未満を構成するセバシン酸ジオクチルエステルを得る工程;および
d)前記メタロセンHVI−PAOを、前記第2のベースストックおよびセバシン酸ジオクチルエステルとブレンドして、好都合な剪断安定性を有する油配合物を配合する工程
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504679(P2012−504679A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530060(P2011−530060)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/005448
【国際公開番号】WO2010/039266
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】