説明

改善されたOVD内蔵デバイス

【課題】ホログラフィック・オーバーレイを提供する。
【解決手段】本オーバーレイは、第1の面および第2の面を有するポリカーボネート基板と、ポリカーボネート基板の第1の面に成型された回折構造と、回折構造の少なくとも一部分上の反射増強コーティングとを含み、ポリカーボネート基板の第2の面は、熱および圧力の存在する状態で、接着剤なしで適合表面に融着することができるオーバーレイの実質的に平らな外面を形成する。場合によっては、オーバーレイは、金属コーティングに除去空隙を形成しかつ除去空隙の下のレーザ彫刻可能ポリカーボネートを炭化するように、レーザ彫刻される。本発明の他の態様によれば、ホログラムの金属コーティングは、ホログラムの透明部分を形成するように、レーザを使用して実質的に透明にされる。場合によっては、これは、カード、文書などのような物体にホログラムを付けた後で、ホログラムの可視性および連続性を保証するように下にある情報に位置合わせして行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィおよび回折格子の光学技術に関し、より詳細には、識別カードまたは取引カード、パスポートおよび他の物でのホログラムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ書類の偽造および改竄は、文明の最も古い問題の1つである。偽造防止対策の開発は、進行中の探求である。四半世紀前、金融カード業界は、銀行業界がカード自体の設計および製造のセキュリティを高める対策を取らざるを得ないような驚くべき速さで増大する偽造物詐欺損失に直面した。いくつかの対策が考えられたが、偽造物詐欺の成長を食い止めたのはホログラムの導入であり、ホログラムの導入後3年で偽造物詐欺を75%減少させた。
【0003】
今日、ホログラフィ技術の利用可能性の広い普及、ディジタル印刷技術、データ傍受技術、インタネット上でのカード製造知識の広がりによって、IDカード、クレジット・カードおよび書類を安全にする仕事が、従来にないほど困難になった。ホログラムを含む回折構造などの光学的可変デバイス(OVD)は、相変わらず有効な偽造防止デバイスである。本物であることは、低レベル(視覚)、中レベル(簡単なツール)および高レベル(科学捜査)で容易に確認することができる。
【0004】
慣例的には、ホログラフィック・フィルムまたはホイルは、注意を喚起する視覚効果および付加的なセキュリティを実現するために、例えばクレジット・カードに張り付けられる。しかし、そのようなホログラムは、本物のカードから剥がして偽造カードに移しかえることができる。
【0005】
この偽造技術と戦うために様々な方法、例えば、カード上のホログラフィ像と磁気記録間のオフセットを考慮することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,142,383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、取引カード、書類および他の品物から剥がしてこれらに再付着することが、不可能でないとしても、非常に困難な改善された光学的可変デバイスを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、改善された光学的特性を有する弾力的な取引カードまたはIDカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によればオーバーレイ(overlay)が提供され、本オーバーレイは、第1の面および第2の面を有するポリカーボネート基板と、ポリカーボネート基板の第1の面によって支持された成型回折構造と、回折構造の少なくとも一部分上の反射増強コーティングとを含み、ポリカーボネート基板の第2の面は、熱および圧力の存在する状態で接着剤なしで適合表面に融着することができるオーバーレイの実質的に平らな外面を形成する。
【0010】
本発明の一態様によれば、オーバーレイは、金属コーティングに除去空隙を形成しかつ除去空隙の下のレーザ彫刻可能ポリカーボネートを炭化するように、レーザ彫刻される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、オーバーレイは、間に接着剤の無い状態で物体に融着される。
【0012】
本発明のさらに他の態様によれば、ホログラム上の金属コーティングの1つまたは複数の領域は、ホログラムの1つまたは複数の透明部分を形成するにように、レーザを使用して実質的に透明にされる。一実施形態では、これは、カード、文書などのような物体にホログラムを付けた後で、ホログラムの可視性および連続性を保証するように、下にある情報に位置合わせして行われる。
【0013】
本発明の1つまたは複数の態様によれば、ホログラフィック・オーバーレイが提供され、本オーバーレイは、1つまたは複数の金属化ホログラフィック領域および1つまたは複数の透明ホログラフィック領域を含み、透明ホログラフィック領域は、下にある情報の可視性およびホログラム連続性を保証し、さらに、全ての前記領域は、人の肉眼で確認することができ、好ましくは、2mmを超える直径を有する。一実施形態では、透明ホログラフィック領域は、レーザで変えられた領域である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1AはPVC基板上にホット・スタンプ加工されたホログラムを示す一組の顕微鏡写真である。図1BはPC基板上にホット・スタンプ加工されたホログラムを示す一組の顕微鏡写真である。
【図2】オーバーレイを示す断面図である。
【図3A】金属層の付いたオーバーレイを示す断面図である。
【図3B】HRI層の付いたオーバーレイを示す断面図である。
【図3C】不連続金属層の付いたオーバーレイを示す断面図である。
【図3D】HRI層および不連続金属層の付いたオーバーレイを示す断面図である。
【図3E】不連続金属層およびHRI層の付いたオーバーレイを示す断面図である。
【図3F】高屈折率重合体の付いたオーバーレイを示す断面図である。
【図4】保護トップ・コートの付いたオーバーレイを示す断面図である。
【図5】レーザ彫刻されたカードを示す平面図である。
【図6】図5に示されたカードを示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に従ったカードを示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に従ったカードを示す断面図である。
【図9】図9Aは金属化ホログラムを含んだホログラフィック・オーバーレイを示す図である。図9Bは図9Aに示されたオーバーレイの付いたカードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下の詳細な説明から明らかになるが、この詳細な説明は、添付の図面を参照して進行するものであり、図面では、同じ数字は同じ要素を示している。
【0016】
ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テトラフタレート・グリコール(PETG)または他のプラスチック基板へのホログラムのホット・スタンプ加工は、OVDをIDカードまたは金融取引カードに付けるために使用される標準的な方法である。最近、特に高耐久性および環境に優しい性質のために、ポリカーボネート(PC)が高級識別(ID)カードおよび取引カード用の好みの材料になった。しかし、PC基板にホット・スタンプ加工されたホログラムは、すぐ後の封止、張付けおよびプレス仕上げ中に消失し、またひびが入る傾向があり、したがって、光学的品質が著しく悪くなることが発見された。
【0017】
例として、図1Aは、PVCカード上にホット・スタンプ加工され張り付けられたホログラムを示す。いくつかの軽欠陥にもかかわらず、ホログラムの品質はよい。対照的に、同じ技術を使用してPCカード上にホット・スタンプ加工または張付けされたホログラムは、図1Bに示されるように、かなり品質が劣っている。図1Aおよび1Bに示された顕微鏡写真は、顕微鏡の20X対物レンズを用いて撮られている。これらの顕微鏡写真は、転写によってPCに付けられた厚さ2ミクロンのホット・スタンプ・ホログラム・ベース層が力強い張付け(385〜400fで15〜25分間で250〜350PSI)および埋込みプロセスに耐えることができないことを示している。したがって、ホログラム構造は歪んでいる。
【0018】
これは、主に、PVCカード張付けプロセスの方がより低い温度および圧力を必要とし、したがってホログラムの歪みがより小さくなることによっている。それにもかかわらず、PCの方が、環境、セキュリティ、および寿命の要求条件に好ましい基板であるので、本発明は、ホログラムの消滅を無くし像品質の損傷を少なくしかつPCのような選ばれた基板に対して直接成形方法を使用することによって、ホット・スタンプまたは転写ホイルの使用を必要としない解決策を提供する。
【0019】
本発明によれば、回折構造、例えばホログラムまたは非ホログラフィック光学的可変デバイスが、従来の成型プロセスを使用して重合体膜基板上に直接形成される。好ましくは、重合体膜は、ポリカーボネート基板である。ポリエチレン・テレフタレート(PET)のような他の材料が使用されてもよい。代わりに、中間層、例えば印刷された印(しるし)が、基板と、成型ホログラムの間に存在してもよい。
【0020】
成型ステップ中に、PCに申し分なく結合するが極端な温度の下で熱歪みを受けない高分子量脂肪族ポリウレタン・ベース重合体またはイソプロピル・アクリレートおよびベンゾ・フォノン・ベース光イニシエータなどの液体樹脂が、サブマスタの表面レリーフ・パターンとプラスチック基板の間に閉じ込められ、同時に樹脂は化学線放射または他の硬化技術によって硬化される。サブマスタと基板が分離されたとき、成型表面レリーフ・パターンが、プラスチック基板に付いたままになっている。
【0021】
UV硬化を用いたホログラフィ像の直接成型は、高温および高圧力の下で変形しない高い完全性をもった丈夫なホログラフィ像を可能にする。この方法によって作られた成型回折構造は、加熱張付け封止または張付けプロセスによって歪まず、変形せず、さらに劣化しない膜キャリヤにより申し分なく付着する。本発明は、IDカード、金融カード、高価値書類、または部分シースルーOVDをレーザ彫刻識別子と組み合わせるラベルに非常に適した非常に安全なOVDデバイスを製作する。
【0022】
ホログラムを形成する代わりの余り好ましくない方法はエンボス加工技術であり、この技術では、表面レリーフ・パターンを薄いプラスチック膜の表面に転写するのに十分な熱と圧力の下で、サブマスタがこの膜に押し付けられる。従来のエンボス・ホログラム・ベースは熱順応性材料であるので、エンボス加工ホログラムは、成型ホログラムよりも望ましくない。したがって、その像は、圧力だけを加えることによって形成される。その結果として、PCカード製造に必要とされる力強い張付けまたは埋込みプロセスで、像は歪みを受けやすい。
【0023】
図2を参照して、OVD/ホログラム200は、重合体基板100、好ましくは透明基板、より好ましくはポリカーボネート基板の上に直接形成される。参照して本明細書に組み込まれるMallikの米国特許第5,142,383号に記載されるような成型プロセスは、最も忠実な複製、すなわち、重合体キャリヤに分離不可能に結合した架橋結合多官能基重合体を実現する。キャリヤ基板100上に直接OVDを形成することで、業界標準のホット・スタンプ加工プロセスが無くなる。このホット・スタンプ加工プロセスは、時間のかかるプロセスであり、製造のボトルネックになることが非常に多い。ホット・スタンプ加工プロセスが無くなるという見込みは、カード製造業者のとって非常に魅力的である。
【0024】
有利なことには、ポリカーボネート基板に直接成型された本発明のホログラムは、ポリカーボネートに対する優れた結合を有し、光学的に劣化することなく、過酷な張付け、埋込みまたはカレンダ加工プロセスに耐えることができる。
【0025】
次に、反射増強コーティングが回折構造の上に塗布される。一実施形態では、反射増強コーティングは、図3に示された金属コーティング300である。アルミニウムは、反射コーティング300に最も一般に使用される材料である。クロム、金、または銀などの他の金属も同様に使用されてもよい。他の実施形態では、反射増強コーティングは、ZnS、TiO2、ZrO2などの高反射率(HRI)材料310を含む(図3B)。さらに他の実施形態では、金属コーティング300とHRIコーティング310の両方が回折構造の表面に存在している。他の実施形態は、誘電体コーティング、有機/無機反射顔料、金属フレークおよびカラー・シフティング・スタックを使用することを含む。蒸着が最も一般に使用される方法である。しかし、反射増強コーティングは、スパッタリング、印刷などによって塗布されてもよい。
【0026】
反射増強コーティングは、必ずしも回折構造全体を覆わない。図3Cは、OVD上に1つまたは複数の金属領域301および1つまたは複数の金属の無い領域302を含むパターン形成された金属コーティングを示す。
【0027】
領域301および302に連続した金属コーティングを形成し、次に領域301の連続金属コーティングの上にレジスト材料を印刷し、レジスト・コーティングで保護されていない金属を洗い落とすことによって、パターン形成された金属コーティングが形成されてもよい。パターン形成された金属コーティングを形成する他のやり方は、金属が領域301だけに堆積されるように、金属化ステップの前に領域302に除去可能な材料またはよく滑る材料を印刷することである。さらに、マスキング技術または金属フレークの印刷が使用されてもよい。
【0028】
図3Dおよび3Eは、金属化領域301の形をした金属コーティングとHRI層310の組合せを示す。図3Dでは、パターン形成された金属コーティング301が、HRI層310の上に堆積されている。図3Eでは、逆に、パターン形成された金属コーティング301の上にHRI層310が堆積されている。
【0029】
反射増強コーティングは、図3Fに示されるように、高屈折率重合体110のコーティングであってもよい。
【0030】
一実施形態では、反射増強コーティングは、アルミニウム層などの反射層と、スペーサ層、例えばMgFの層と、クロム層などの吸収層とを含む層状構造で形成されたカラー・シフティング・コーティングである。代わりに、この層状構造は、高屈折率材料と低屈折率材料を交互にすることによって形成され、これらの材料では、基本的に、少なくとも0.1の屈折率差が必要である。反射増強コーティングは、カラー・シフティング・フレークを含むインクで形成されてもよい。
【0031】
場合によっては、保護コーティングが反射増強コーティングの上に配置されることがある。図4は、図3Cに示された構造で支持された保護コーティング600を示す。同様に、保護コーティング600は、図3A〜3Fに示されたどの構造に追加されてもよい。
【0032】
本発明によれば、図1〜4を参照して先に説明されたオーバーレイなどのホログラフィック・オーバーレイは、熱と圧力が存在する状態でどんな接着剤もなしで適合(comforming)表面に融着されるように、設計されている。融着は、高温条件下で部分的に溶解して部品を互いに接合するために使用される技術である。本発明の特有の態様は、OVDを含むポリカーボネートがPCまたはTeslinなどの他の基板に融着すること(接着剤の無い結合)を可能にし、一方で、成型ホログラムがこのプロセス中に歪まないことである。
【0033】
IDまたは取引カードの平らな表面に融着するために、ポリカーボネート基板の第2の面、すなわち基板のホログラムを支持する第1の面と反対側の面は、実質的に平らな外面であり、換言すれば、カードの表面のバンプは高さが125ミクロンを超えず、好ましくは、不具合を無くするために50ミクロンを超えない。
【0034】
PC間の融着結合は、両方の表面を溶解し、圧力をかけて分子レベルで噛み合せることによって生成される。例として、オーバーレイの裏側PC面は、390Fで275PSIの圧力を20分間にわたって加えて、PCベースのカードに融着される。融着プロセスに接着剤は必要でない。
【0035】
場合によっては、ポリカーボネート基板の裏面は、適合表面への融着を改善するように処理される。
【0036】
好ましくは、オーバーレイが融着される表面は、PC表面である。しかし、他の材料も適している。Teslin(登録商標)は、ポリオレフィンをベースにした、きわめて微孔質な構造化合成紙である。Teslinは、可撓性であり、容易に印刷することができる。PVCは、軟質で溶解可能である。PVCは、張付け中にPCに結合することができる。PETおよびPETGならびにPET/PC混合物は、PC、特に、共重合体非晶質特性をもつPETGに適合可能な材料である。ポリスチレンは、非常に熱成形に適している。また、オーバーレイは、特殊なコーティングで覆われた紙表面または合成紙表面にも結合することができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、オーバーレイが融着される表面には、インクまたは金属または同様なものをコーティングされた領域がある。結合力を減少させないために、この中間的なコーティングは、オーバーレイが結合される範囲の少部分を覆うことが望ましい。そのようなコーティングの例は、クレジット・カードまたはセキュリティ文書の写真または印刷された文字および図である。
【0038】
英数字パターン、顔面像、指紋像、バーコード、またはロゴなどの個人化データを物体に実現する他のやり方は、金属コーティング300または301に除去空隙を作るレーザ彫刻によっている。
【0039】
好ましくは、オーバーレイおよび/またはオーバーレイが融着される物体は、レーザ彫刻可能なポリカーボネートを含むので、レーザ彫刻でPC材料の炭化によって目に見える黒色または暗色マーキングが生成されるようになる。Bayer ID6−2およびSabic HP92は、IDカード業界において好ましいレーザ彫刻可能ポリカーボネートの例であり、また、利用可能になる他のレーザ彫刻可能ポリカーボネートがある。
【0040】
オーバーレイの基板100は、レーザ彫刻可能ポリカーボネートから形成されてもよく、またはそのような材料の層を備えてもよい。オーバーレイが融着される物体は、また、オーバーレイと同時に彫刻されるように、レーザ彫刻可能ポリカーボネートを含んでもよい。
【0041】
いったんレーザ除去によって金属301が除去されると、その構造に逆に反射層を再堆積させることはできない。また、レーザ符号化も、永久的で不可逆性である。レーザ波長、パワー、パルス・エネルギー/周波数および材料中の焦点位置に依存して、レーザ彫刻は、隆起特徴を残す材料溶解、またはプラスチック基板に影響がないかもしれない表面の割れ、または裸眼には見えない隠れた影響、または追加のセキュリティの形体として触感を与える隆起形体を引き起こすことがある。現象の様々な組合せのメリットは、洗練された複合物でセキュリティの多くの選択肢を提供する。
【0042】
図5は、IDカードの前面を示し、図6〜8は、本発明の異なる実施形態に従った図5に示されたカードの断面を示す。
【0043】
図5は、OVD/ホログラム・パターン20、レーザ彫刻個人データ30およびレーザ彫刻肖像40を含むIDカードを示す。金属化パターン270が、OVD20の上に複数の金属点301で形成されている。金属点301の間の領域302は、シースルー特性を備える。レーザ彫刻領域305は、透明ホログラフィ像を実現する。OVD連続性は、レーザ彫刻領域とレーザ彫刻されない領域の間で保たれている。肖像領域でのOVDの連続性によって、写真置換が極端に困難になり、セキュリティの向上が実現される。
【0044】
図6は、一実施形態に従った図5に示されたカードの断面図である。レーザ彫刻領域では、金属が除去されて、金属の無い点305が形成されている。金属除去にもかかわらず、それぞれ1.5と1の値であるOVD重合体層と空気の屈折率の差のために、回折像280は目に見える。
【0045】
OVD構造は外の方を向き、保護コーティング600で封止されており、この保護コーティング600は、重合体OVD層に堅く結合され、広い範囲の薬品に耐え、さらにISOの要求に合格している。レーザ・ビーム60が彫刻可能層130に彫り込み、個別の金属領域301を除去し、これによって、除去空隙305ではOVD重合体層200が空気440と直接接触するようになる。個人データおよび肖像が位置付けされる重合体層65の中で、PC材料の炭化65および暗色化効果が起こる。OVDを含むオーバーレイは、印刷されたコア140に融着されている。化学的および機械的耐性を高めてカード寿命を改善するように、随意のハードコートの付いたPC層150が、カードの外側表面にある。
【0046】
図7は、図6に示されたカードに追加されたHRI層310を示す。IDカードは、回折構造の上にHRI反射層310だけでなく不連続な金属領域301も含む。この組合せは、レーザ彫刻後にカード全体にわたってOVD/ホログラフィ効果が非常によく見える状態であることを保証する。除去は、点領域305から金属を除去し、その結果、OVDの可視性が減少する。HRI層310は、レーザによって除去されないので残っている。HRI回折290によって、レーザ彫刻領域40全体にわたってホログラムが見えるようになる。彫刻されない領域25の視覚効果は高められる。一般的なレーザ波長1064nmは、レーザ彫刻プロセス中に、HRI層を除去することなしにHRI層を透過する。HRI層と結合されたアルミニウムの存在/欠如のこの組合せは、シミュレートするのが極端に困難であるはずである。この組合せは、非常に安全なレーザ彫刻識別文書をもたらす。留意されるべきことであるが、金属領域とHRI領域の組合せは、図のまさにこの層状構造または向きに限定されない。
【0047】
脱金属化をHRIと一緒に組み合わせることは、ホログラムの顕在的な外観を良くするだけでなく、レーザ彫刻が識別文書の個人化に使用されるとき、顕在的および潜在的な特有の利点をもたらす。
【0048】
ホログラムは、識別書類の個人化データを保護するためにしばしば使用される。HRIホログラムは、世界中の多くの会社によって製作され得るために、本質的に高度に安全でない。脱金属化ホログラムを製作することができる会社の方が少ないので、脱金属化ホログラムが、はるかに安全であると考えられる。しかし、脱金属化ホログラムが、レーザ彫刻で個人化にされた識別文書と共に使用されるとき、この個人化プロセスは、残っているアルミニウムを除去し、それによって、可視ホログラフィ効果が破壊される。
【0049】
一実施形態では、ホログラフィ・エンボス加工が上述のように適用されたポリカーボネートの層は、次に、金属化され、さらに脱金属化される。脱金属化プロセスに続いて、基板全体にHRI層がコーティングされる。代わりに、HRI層は、レーザ彫刻個人化を対象とした領域などの選ばれた領域だけに塗布することもできる。他のセキュリティ印刷が上基板に行われてもよく、次に、この上基板は、カードまたは紙文書などの識別文書を形成するための他の材料層と組み合わされる。この他の材料層は、ホログラフィックOVDを含む上層と接合される前に、例えばIDカード印刷機を使用して付けられるセキュリティ印刷、またはいくつかの個人化要素を備えていてもよい。次に、この文書は、レーザ彫刻装置を使用して個人化される。
【0050】
レーザ彫刻装置によって書かれた暗さをもったピクセル領域では、脱金属化プロセスで残ったアルミニウムが除去されるが、HRI層は影響を受けない。暗いピクセルを書くようにレーザが使用されなかった個人化文書の白領域には、脱金属化プロセスの後で本来の場所に残っていたアルミニウムがある。その結果として、見る人は、レーザ彫刻個人化の完成の後で顔面像などの個人化データの上に残っている、脱金属化効果とHRI効果の組合せによって実現された強力なホログラフィ効果を見る。詳細な科学捜査分析は、レーザ彫刻装置によって暗く書かれた領域にアルミニウムの無いことを示すが、レーザ彫刻装置によって暗く書かれなかった領域に残っているアルミニウム要素も示す。HRI層と結合されたアルミニウムの存在/欠如のこの組合せは、シミュレートするのが極端に困難であり、非常に安全なレーザ彫刻識別文書をもたらす。
【0051】
同時に、個人化プロセスの後でAlの一部が目に見えかつ科学捜査で検出できる状態であるようにしてセキュリティを高めながら、レーザ彫刻の後でホログラフィ効果が非常によく目に見える状態であるようにするために脱金属化とHRIまたは他のコーティングを組み合わせる。
【0052】
本発明は、OVDおよびそれの符号化個人データの交替、除去、再使用、および取替えを極端に困難にする。安全文書を改竄しようとするどんな試みも、容易に検出できる。
【0053】
本発明の一態様によれば、ホログラム上の金属コーティングは、レーザを使用して実質的に透明にされる。下にある情報が、目に見え、かつ、レーザ彫刻された領域とされない領域の間に視覚的連続性を実現する透明なホログラムによって、依然として覆われているようにするために、好ましくは、金属コーティングは、カード、文書などのような物体にホログラムを付けた後で行われる。この方法は、図7および8に示された実施形態で説明される。
【0054】
一実施形態では、回折表面上には、回折構造の屈折率に近い屈折率を有する屈折率整合材料と接触した金属コーティングがある。好ましくは、これらの屈折率の差は、回折効果を目に見えなくするようにするために、0.1未満である。レーザ彫刻で金属コーティングの部分を「見えなく」し、それによって、明るい金属化ホログラムを除去プロセスの材料変化で微妙な透明ホログラムに変える。空気と重合体の界面には、0.5の屈折率差がある。この変化によって、個別金属領域が目に見えるようになり、周囲の屈折率整合領域が見えないようになる。
【0055】
図8は、OVDを含むオーバーレイがひっくり返されて、接着層180によってカード基板に付着されたカードを示すが、以下で説明される効果は、この場合には層130、140および150から形成されたカード基板に対する回折構造200の向きに依存しない。接着剤180は、回折構造200の屈折率整合材料である。接着剤180と回折構造200は、領域301および、初期には、領域306の金属層で分離されているが、領域306は後でレーザにより変化される。除去は、金属と隣接材料の間に化学的反応を引き起こし、またしばしば僅かな色変化を引き起こす。一般に、レーザ変化領域は透明で、屈折率差を有するので、レーザ変化ホログラムは透明で、かつ目に見える。
【0056】
好ましくは、カードは、カードの少なくとも一部分にレーザ彫刻可能層を備えている。レーザ彫刻可能層は、図2〜7に関連して上で述べられたようなPC層のどれであってもよい。
【0057】
レーザ・ビーム60がカードに彫刻するとき、ビームは個別金属領域306を変化させ、界面440を作る。図8に示されたカードの右半分では、金属領域301は、反射増強コーティングとして作用し、明るい金属化ホログラムを実現する。カードの左側に対してレーザ・ビームを適用した後で、明るい金属化ホログラムの代わりに、レーザ60によって変えられた容易に分からない透明ホログラムが見える。レーザで変えられた領域306によって反射特性が高められた透明ホログラムは、図3Bに示されたものなどのHRIコーティング・ホログラムと同様な視覚効果を実現する。HRI層の無いとき、図8に示されたカードの左側は、HRIコーティング・ホログラムの外観を有している。しかし、HRI層は、図2〜7に関連して説明されたやり方で、図8のホログラムの反射増強コーティングの中に含まれてもよい。同様に、図2〜7に関連して上で説明された全ての特徴は、図8に示された実施形態に含まれてもよい。
【0058】
レーザ彫刻で作られた透明回折構造は、視覚に訴え追加のセキュリティの形体を実現する肖像40と位置合わせされる。個人データおよび肖像が位置付けされた重合体層の中で、例えば、主OVD層100、中間層130、または外側オーバーレイ150で、PC材料の炭化65および暗色化効果が起こる。
【0059】
図9Aおよび9Bを参照して、ホログラフィック・オーバーレイ900は、金属化領域901〜903を含む金属化ホログラム900を備える。オーバーレイ900を図9Bに示されたカードに付けた後で、領域902は、たまたま顔面像を隠した。したがって、領域902は、領域904に透明ホログラムを実現するために、上で説明されたようにレーザで変化された。透明ホログラム904は、実際の物体ではっきり目に見え、領域901、904および903で形成されるホログラフィック・パターンに連続性を与える。
【0060】
図9Aおよび9Bに示された実施形態では、透明ホログラフィック領域904は、ホログラムの可視性および連続性を保証するように、下にある情報と位置合わせして作られる。レーザ彫刻ステップの後で、ホログラフィック・オーバーレイ900は、金属化ホログラフィック領域901および903および透明ホログラフィック領域904を含み、透明ホログラフィック領域904は、下にある像の可視性と、領域901、904および903によって形成されるホログラフィック・パターンの連続性とを保証し、これらの領域901、904および903は、人の肉眼で確認することができ、好ましくは、2mmを超える直径をもつ。
【0061】
本発明によれば、本発明の一実施形態で説明された特徴は、他の実施形態に組み込まれることがある。
【符号の説明】
【0062】
20 OVD/ホログラム・パターン
25 彫刻されない領域
30 レーザ彫刻個人データ
40 レーザ彫刻肖像
60 レーザ
65 個人データおよび肖像のある重合体層(炭化)
100 重合体基板(主OVD層)
130 中間層
140 印刷されたコア
150 外側オーバーレイ
180 接着層
200 OVD/ホログラム
270 金属化パターン
280 回折像
290 HRI回折
300 金属コーティング
301 金属領域
302 金属の無い領域
305 レーザ彫刻領域(金属の無い点)
306 レーザ変化領域
310 高反射率(HRI)層
440 空気
600 保護コーティング
900 オーバーレイ
901 オーバーレイ
902 金属化領域
903 オーバーレイ
904 透明ホログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有するポリカーボネート基板と、
前記ポリカーボネート基板の前記第1の面によって支持された成型回折構造と、
前記回折構造の少なくとも一部分上の反射増強コーティングと、を備えるオーバーレイであって、前記ポリカーボネート基板の前記第2の面が、熱および圧力の存在する状態で接着剤なしで適合表面に融着することができる前記オーバーレイの実質的に平らな外面を形成する、オーバーレイ。
【請求項2】
前記反射増強コーティングが、金属コーティングを備える、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項3】
前記金属コーティングが、1つまたは複数の金属領域および1つまたは複数の金属の無い領域を備えるパターン形成されたコーティングである、請求項2に記載のオーバーレイ。
【請求項4】
前記反射増強コーティングが、HRI層を備える、請求項2に記載のオーバーレイ。
【請求項5】
前記基板が、レーザ彫刻可能ポリカーボネートを備える、請求項2に記載のオーバーレイ。
【請求項6】
前記金属コーティングに除去空隙を形成し、かつ前記除去空隙の下の前記レーザ彫刻可能ポリカーボネートを炭化するように、前記オーバーレイがレーザ彫刻される、請求項5に記載のオーバーレイ。
【請求項7】
前記除去空隙またはこれに近接する領域が、英数字パターン、顔面像、指紋像、バーコード、およびロゴの少なくとも一部分を形成する、請求項6に記載のオーバーレイ。
【請求項8】
前記反射増強コーティングが、HRI層または部分HRI層を備える、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項9】
前記ポリカーボネート基板が、レーザ彫刻可能ポリカーボネートを備える、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項10】
前記反射増強コーティング上に保護層をさらに備える、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項11】
前記ポリカーボネート基板の前記第2の面が、前記適合表面への融着を改善するように処理されている、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項12】
前記反射増強コーティングが、カラー・シフティング・コーティングである、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項13】
前記回折構造が、成型ホログラムである、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項14】
前記オーバーレイが、間に接着剤の無い状態で物体に融着され、前記物体の前記適合表面が、ポリカーボネート表面、Teslin(登録商標)表面、PVC表面、PET表面、PETG表面、ポリスチレン表面、コーティングされた紙表面、または合成紙表面から成るグループから選ばれたものである、請求項1に記載のオーバーレイ。
【請求項15】
前記物体が、レーザ彫刻可能ポリカーボネートを備える、請求項14に記載のオーバーレイ。
【請求項16】
前記オーバーレイおよび前記物体が、前記物体の前記レーザ彫刻可能ポリカーボネートを選択的に炭化するようにレーザ彫刻される、請求項15に記載のオーバーレイ。
【請求項17】
前記物体が、識別文書または取引カードである、請求項14に記載のオーバーレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−248571(P2009−248571A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−93296(P2009−93296)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】