説明

改善した層間接着を有するポリウレタンコーティング

【課題】エージングしたコーティングの表面現象および取り込まれた水に基づく貧弱な接着を改善するエージングしたコーティングに対する新規のポリウレタントップコートの提供。
【解決手段】少なくとも1つの硬化可能なポリウレタン、およびコーティング組成物の全固形物重量の1重量パーセント〜10重量パーセントの範囲である少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含むエージングした表面を再仕上げするためのコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エージングした表面を再仕上げするための組成物に関し、そして少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む組成物を適用することによってエージングした表面を再仕上げする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用の間、表面は古くなり得る(エージングされ得る)。用語「エージングした表面」とは、本明細書中で使用される場合、表面の物理的特性および/または化学的特性が新品の表面の特性と比較して劣化された表面ををいう。表面のエージングは、例えば、機械的な摩擦、衝撃、水、溶媒、温度、照射、湿度、風化ならびに/または表面の物理的特性および化学的特性および/または審美的品質の低下を引き起こす他の機構による作用から生じ得る。「エージングした表面」はまた、初期に適用された状態から低下している表面を含み、この低下は、1つ以上のストレス状態への長期曝露から生じ得るエージングと比較して、ストレスへの短期間の(brief)曝露から生じる。例えば、表面は、摩擦、衝撃などの機械的手段、機械的手段および/または熱的手段によって誘発されるようなストレスへの曝露、過剰な温度への曝露、溶媒への曝露、照射への曝露などによって、損傷を受け得る。実際には、エージングした表面を再仕上げしてその表面の物理的品質、化学的品質および審美的品質を再生することは、有用であり得る。
【0003】
表面としては、例えば、コーティング、金属表面、またはポリマー表面が挙げられる。コーティングは、特定の意図される特性を達成するため、複数のコーティング層を備え得る。例えば、一次コーティングは、腐食耐性の増強のために金属表面に適用され得るか、または続いて適用される層の接着を増強するためにポリマー性表面に適用され得、一方、トップコートは、例えば溶媒耐性、耐候性、摩擦耐性、硬質性、および/または審美性のような特性を達成するために選択され得る。表面およびコーティング層への増強した接着特性を有するコーティングが開発されている。いくつかの場合、コーティングの主要な機能(例えばプライマーまたはタイコート)は、対向するコーティング層の間の接着を提供することであり得る。航空機および宇宙航空乗物はしばしば、最初にエポキシ樹脂またはポリウレタンを基にしたプライマーおよび硬化剤でコーティングされ、そして硬化可能なポリウレタントップコートでオーバーコーティングされる。このトップコートは水および有機溶媒(例えば、航空燃料および油圧油(hydraulic fluid))に耐性である。
【0004】
個々のコーティング層の間の接着および基材と基材上にコーティングされた層との間の接着は、そのコーティングの全体的な性能に寄与し得る。ある部分が最初にコーティングされる場合、このコーティングの品質はその表面にわたって同一または同様な物理的特性および化学的特性を示し得る。しかしながら、例えば、使用された表面、エージングした表面および/または損傷を受けた表面、そして特に航空機のような広大な表面に関して、コーティングされるべき表面および/または再仕上げされるべき表面は、均一でなくてもよい。
【0005】
航空機の表面のような巨大な表面が再仕上げされるべきである場合、トップコートは再塗装の前にストリッパーを使用して除去され得る。新しい金属表面を前処理して新規のプライマーコーティングを再適用しなければならないことを避けるため、再塗装の前にトップコートのみを除去することが有用であり得る。膨張可能で(swellable)、可はく性の(strippable)トップコート、および金属表面上をコーティングする硬化したプライマーを残したままトップコートを除去するためのプロセスは、特許文献1に記載される(これは本明細書中で参考として援用される)。硬化したプライマーコーティングを無処理のままにして金属基材表面に接着したまま、選択的にトップコートを除去または剥離させるための方法および組成物が開発されているが、硬化したプライマーコーティングは、最初に、この硬化したプライマーコーティングへのトップコートの適切な接着を容易にするため、新規トップコートの適用前に調製されなければならない。
【0006】
特定の適用において、エージングした表面(例えば、エージングしたコーティングであって、このエージングしたコーティングを最初に除去しない)にポリウレタントップコートを適用することは有用であり得る。しかしながら、エージングしたコーティングに対するポリウレタンコーティングの接着は、一般的に貧弱である。エージングしたコーティングの表面現象(例えば、チョーキングであり、表面の細孔の存在)および取り込まれた水は、エージングしたコーティングに対する新規のポリウレタントップコートの貧弱な接着をもたらし得る。
【0007】
エージングした表面に対するポリウレタントップコートの接着を促進および/または増強するため、このエージングした表面はポリウレタントップコートの適用前に機械的に擦過され得る。エージングした表面の機械的な擦過は、例えば、研磨によって行われ得る。広大な表面(例えば、航空機の表面)を研磨することは、費用がかさみ得、時間がかかり得、そして新規の適用されるトップコートの均一な接着を促進するために必要とされる程度に制御することが困難であり得る。さらに、機械的研磨のプロセスは、潜在的に有害および/または毒性の化学物質を含む粒子を放出し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,217,945号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、エージングした表面に対するポリウレタントップコートの接着を増強させるために機械的擦過に対する代替の方法を提供することは、有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
コーティング組成物は、少なくとも1つの硬化可能なポリウレタンおよび少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含み、このコーティング組成物は、同様の少なくとも1つの硬化可能なポリウレタンを含むが少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含まないコーティング組成物の接着と比較して、エージングした表面に対して増強された接着を提供する。
【0011】
エージングした表面を再仕上げする方法であって、エージングした表面を処理する工程、この処理されるエージングした表面に少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む硬化可能なポリウレタントップコートを適用する工程、およびこの硬化可能なポリウレタントップコートを硬化させる工程、を包含する。
【0012】
エージングした表面を再仕上げする方法であって、エージングした表面を処理する工程、この処理されたエージングした表面に対して少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含むタイコートを適用する工程、このタイコートを乾燥させる工程、このタイコートに硬化可能なポリウレタントップコートを適用する工程、および硬化可能なポリウレタントップコートを硬化させる工程、を包含する。
本願発明は、例えば以下の項目を含む。
(項目1)
コーティング組成物であって、
少なくとも1つの硬化可能なポリウレタン;および
少なくとも1つの塩素化ポリオレフィン
を含み、該コーティング組成物は、該同様の少なくとも1つの硬化可能なポリウレタンを含むが該少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含まないコーティング組成物の接着と比較して、エージングした表面に対して増強された接着を提供する、コーティング組成物。
(項目2)
前記コーティング組成物中の前記少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンの量が、該コーティング組成物の全固形物重量の1重量パーセント〜10重量パーセントの範囲である、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目3)
前記コーティング組成物中の前記少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンの量が、該コーティング組成物の全固形物重量の2.5重量パーセント〜5重量パーセントの範囲である、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目4)
前記少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンが、グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンを含む、項目1に記載のコーティング組成物。。
(項目5)
前記グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン中のグラフトアクリル成分の量が、該グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン全重量の10重量パーセント〜90重量パーセントの範囲である、項目4に記載のコーティング組成物。
(項目6)
前記グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン中のグラフトアクリル成分の量が、該グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン全重量の30重量パーセント〜60重量パーセントの範囲である、項目4に記載のコーティング組成物。
(項目7)
前記エージングした表面がエージングしたポリウレタンコーティングを含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目8)
前記エージングしたポリウレタンコーティングが、航空用乗物または航空宇宙乗物の表面に配置されている、項目7に記載のコーティング組成物。
(項目9)
前記エージングした表面が、エージングしたポリウレタン基材を含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目10)
前記エージングした表面が機械的に擦過されない、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目11)
エージングした表面を再仕上げする方法であって、
少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む硬化可能なポリウレタントップコートを該エージングした表面に適用する工程;および
該硬化可能なポリウレタントップコートを硬化させる工程
を包含し、該エージングした表面は、該硬化可能なポリウレタンコーティングの適用前に、機械的に擦過されない、方法。
(項目12)
前記硬化可能なポリウレタントップコート中の前記塩素化ポリオレフィンの量が、該硬化可能なポリウレタントップコートの全固形物重量の1重量パーセント〜10重量パーセントの範囲である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記硬化可能なポリウレタントップコート中の前記塩素化ポリオレフィンの量が、該硬化可能なポリウレタントップコートの全固形物重量の2.5重量パーセント〜5重量パーセントの範囲である、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記再仕上げしたエージング表面が、BSS 7225仕様に従う旋回アーム耐降雨浸食性試験に合格する、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンがグラフトアクリル塩素化ポリオレフィンを含む、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン中のグラフトアクリル成分の量が、該グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの全重量の10重量パーセント〜90重量パーセントの範囲である、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン中のグラフトアクリル成分の量が、該グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの全重量の30重量パーセント〜60重量パーセントの範囲である、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記エージングした表面が、前記ポリウレタントップコートの適用前に、溶媒でふかれる、項目11に記載の方法。
(項目19)
前記エージングした表面が、エージングしたポリウレタンコーティングを含む、項目11に記載の方法。
(項目20)
前記エージングしたポリウレタン表面が、航空用乗物または航空宇宙用乗物の表面に配置される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記エージングした表面が、エージングしたポリウレタン基材を含む、項目11に記載の方法。
(項目22)
エージングした表面を再仕上げする方法であって、
少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含むタイコートを該エージングした表面に適用する工程;
該タイコートを乾燥させる工程;
硬化可能なポリウレタントップコートを該タイコートに適用する工程;および
該硬化可能なポリウレタントップコートを硬化させる工程
を包含する、方法。
(項目23)
前記タイコートが分散物から適用され、該分散物が、該分散物の全重量に基づいて1重量パーセント〜24重量パーセントの前記少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記タイコートが、分散物から適用され、該分散物が、5重量パーセント〜10重量パーセントの前記少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記タイコートの乾燥フィルムの厚さが、0.05ミル〜1ミルの範囲である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記タイコートの乾燥フィルムの厚さが、0.05ミル〜0.5ミルの範囲である、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記エージングした表面が、前記タイコートの適用前に機械的に擦過されない、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記タイコートが、前記ポリウレタントップコートと前記エージングした表面との間の該タイコートなしでの接着と比較して、該同様のポリウレタントップコートと該エージングした表面との間の増強された接着を提供する、項目22に記載の方法。
(項目29)
前記再仕上げした表面が、BSS 7225仕様に従う旋回アーム耐降雨浸食性試験に合格する、項目22に記載の方法。
(項目30)
前記硬化可能なポリウレタントップコートが、2成分ポリウレタンコーティング組成物から適用される、項目22に記載の方法。
(項目31)
前記少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンがグラフトアクリル塩素化ポリオレフィンを含む、項目22に記載の方法。
(項目32)
前記グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン中のグラフトアクリル成分の量が、該グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの全重量の10重量パーセント〜90重量パーセントの範囲である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン中のグラフトアクリル成分の量が、該グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの全重量の30重量パーセント〜60重量パーセントの範囲である、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記エージングした表面が、前記タイコートの適用前に溶媒でふかれる、項目22に記載の方法。
(項目35)
前記エージングした表面が、エージングしたポリウレタンコーティングを含む、項目22に記載の方法。
(項目36)
前記エージングしたポリウレタンコーティングが、航空用乗物または航空宇宙用乗物の表面に配置される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記エージングした表面が、エージングしたポリウレタン基材を含む、項目23に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
他に示されない限り、本明細書中および特許請求の範囲において使用される、成分の数量、反応条件などを表す全ての数は、用語「約」によって全ての例に修飾されるように理解されるべきである。従って反対に示さない限り、本明細書中に記載される多くのパラメータは概算であり、この概算は得られるべき所望される性質に依存して変動し得る。
【0014】
本出願において、単数形の使用は、他に特に述べられない限り、その複数も含む。本出願において、「または」の使用は、他に述べられない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「を含む(including)」および他の形態(例えば、「を含む(includes)」および「含まれる(included)」の使用は、限定することではない。
【0015】
特定の表面(例えば、航空機の表面)を仕上げそして再仕上げするために使用されるコーティングが硬度を示し、水および溶媒への耐性を示し、適用するのに容易であり、そして高密度の光沢を有するフィルムを生じことは、有用であり得る。ヒドロキシル官能性ポリマー(例えば、ポリエステルまたはアクリルポリマー)およびポリイソシアネートを含むコーティング組成物は、これらの適用のために使用され得る。二成分ポリウレタンコーティング組成物は、一方の成分に有機ポリイソシアネート(時折、本明細書中で「イソシアネート成分」と称される)を含み得、そして別の成分にヒドロキシル含有ポリマー(例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、またはヒドロキシル含有アクリルポリマー)を含み得る。この成分は、時折、本明細書中で「ポリオール成分」と称される。これら二成分は、適用の直前まで分けて保存される。適用後、ポリイソシアネートおよびポリマー性ポリオールは反応して硬化したポリウレタンコーティングを形成する。ヒドロキシル官能性ポリマーとポリイソシアネートとの間の反応は室温で生じ得、そして触媒は反応を加速するために添加され得る。他の構成物(例えば、色素、溶媒、触媒、添加物など)がこれらの二成分のうちのいずれかに配合され得る。二成分ポリウレタンコーティングおよび接着剤は、公知であり(例えば、米国特許第4,341,689号を参照のこと)、そして市販される。市販の二成分ポリウレタンコーティング組成物の例は、DESOTHANE CA2000(PRC−DeSoto International,Inc.,Burbank,CA)である。
【0016】
また、一成分吸湿硬化性ポリウレタン組成物を使用して、高品質のコーティングを作製し得る。吸湿硬化性ポリウレタンポリマーは、化学量論上過剰な有機ポリイソシアネートとポリマー性ポリオール(例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、またはヒドロキシル含有アクリルポリマー)とを反応させてポリイソシアネートポリマーを形成することによって調製され得る。このポリイソシアネートポリマーは、溶媒、色素、添加物等と配合されて、コーティング組成物を形成し得る。市販の吸湿硬化性ポリウレタンコーティングの例は、DESMODUR Eポリイソシアネート(Bayer Corporation,Pittsburgh,PA)である。
【0017】
二成分ポリウレタンコーティング組成物および一成分ポリウレタンコーティング組成物は、水ベースの調合物または有機溶媒ベースの調合物のいずれかとして提供され得る。特定の実施形態において、この有機溶媒は脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素(例えば、トルエンまたはキシレン)、アルコール(例えば、ブタノールまたはイソプロパノール)、エステル(例えば、酢酸ブチルまたは酢酸エチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルイソブチルケトンまたはメチルエチルケトン)、エーテル、エーテルアルコールもしくはエーテルエステル、または前述のもののいずれかの混合物であり得る。ポリウレタンコーティング組成物は、単独の型のポリウレタンポリマーを含み得るか、または異なる型のポリウレタンポリマーの混合物を含み得る。
【0018】
エージングした表面に対して増強した接着性を有する硬化可能なポリウレタンコーティングを提供するため、少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンが水ベースまたは溶媒ベースの硬化可能なポリウレタンコーティング組成物に添加され得る。特定の実施形態において、この硬化可能なポリウレタンコーティング組成物における塩化物ポリオレフィンの量は、1重量%〜10重量%に及び得、特定の実施形態において、2.5重量%〜5重量%に及び得る。この割合は、組成物を構成する樹脂固形物の総重量に基づく。
【0019】
任意の塩素化ポリオレフィンは、ポリウレタンコーティング組成物(例えば、グラフト塩素化ポリオレフィン、非グラフト塩素化ポリオレフィン、改変された塩素化ポリオレフィン、改変されていない塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリブテン、塩素化ポリエチレン、およびそれらの混合物)中に含まれ得る。塩素化ポリオレフィンポリマーは、ポリスチレン標準物質を用いてゲル透過クロマトグラフィーによって決定される場合、5,000ダルトン〜200,000ダルトンの範囲、および特定の実施形態において10,000ダルトン〜40,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し得る。特定の実施形態において、塩素化ポリオレフィンポリマーは、クロロスルホン化オレフィンポリマーまたは塩素化ポリオレフィンポリマーと塩素化オレフィンポリマーとの混合物であり得、クロロスルホン化は、グラフトポリオレフィンまたは非グラフトポリオレフィンと、クロロスルホン化剤とを反応させることによって達成され得る。
【0020】
塩素化のための非グラフトオレフィンポリマーは、2個〜8個の炭素原子を有するα−モノオレフィンのホモポリマー、またはエチレンと少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(例えば、3個〜10個の炭素原子を有するα−モノオレフィン、3個〜20個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸、および3個〜20個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸または不飽和ジカルボン酸の1個〜12個の炭素原子を有するアルキルエステル、ならびに2個〜18個の炭素原子を有する飽和カルボン酸のビニルエステル)とのコポリマーであり得る。
【0021】
グラフトコポリマーベースの樹脂は、α−オレフィンポリマーとグラフト剤との反応生成物であり得る。1つのα−オレフィンモノマーのα−オレフィンホモポリマー、または2個〜8個の炭素原子を有する2つのα−オレフィンモノマーのコポリマーとしては、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されないホモポリマー、ならびにエチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/1−ブテンコポリマー、エチレン/4−メチル−1−ペンテンコポリマー、エチレン/1−ヘキセンコポリマー、エチレン/1−ブテン/1−オクテンコポリマー、エチレン/1−デセンコポリマー、エチレン/4−エチル−1−ヘキセンコポリマー、およびエチレン/4−エチル−1−オクテンコポリマーのようなコポリマーが挙げられる。塩素化グラフトポリプロピレンは、グラフト改変されたポリプロピレンホモポリマーまたはプロピレン/α−オレフィンコポリマーの溶液の塩素化によって調製され得る。グラフト重合は、塩素化に不活性である溶媒中のフリーラジカル触媒の存在下で達成され得る。フルオロベンゼン、クロロフルオロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルムなどは、有用な溶媒である。特定の実施形態において、グラフトポリプロピレンは、α,β−不飽和無水物でグラフトされている基礎樹脂であり得、酸改変塩素化ポリオレフィンおよび/または無水物改変塩素化ポリオレフィンを形成し得る。グラフト剤の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0022】
特定の実施形態において、塩素化ポリオレフィンとしては、グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンが挙げられ得る。特定の実施形態において、グラフトアクリル成分は、グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの全重量の10重量%〜90重量%の範囲であり得る。特定の実施形態において、グラフトアクリル成分は、グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの全重量の30重量%〜60重量%を構成し得る。
【0023】
改変された塩素化ポリオレフィンとしては、酸性基または無水物の基で改変された塩素化ポリオレフィンが挙げられる。改変された塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素化ポリオレフィン樹脂上の不飽和ポリカルボン酸およびその対応する酸無水物から選択される1種以上の化合物をグラフトすることによって(例えば、フリーラジカルグラフトすることによって)調製されて、酸および/または無水物で改変された塩素化ポリオレフィン樹脂を形成し得る。改変された塩素化ポリオレフィンの例は、米国特許第4,997,882号(第1欄、26行〜第4欄、63行);同第5,319,032号(第1欄、53行〜第2欄、68行);および同第5,397,602号(第1欄、53行〜第2欄、68行)(これらの全ては本明細書中に参考として援用される)に記載されている。塩素化ポリオレフィンは、ポリオレフィン(すなわち、非塩素化ポリオレフィン)の重量に基づいて、10重量%〜40重量%の範囲、そして特定の実施形態において、10重量%〜30重量%の範囲の塩素含有量を有し得る。改変された塩素化ポリオレフィンの例としては、ポリオレフィンの全重量に基づいて、10重量%〜30重量%の範囲の塩素含有量を有する改変された塩素化ポリオレフィンを含み、アミンで少なくとも部分的に中和されて、50〜100の範囲の酸性価によって特徴付けられる、改変された塩素化ポリオレフィンが挙げられる。さらに、改変された塩素化ポリオレフィンの例としては、水、合体溶媒、およびフリーラジカルインヒビターの存在下で、塩素化ポリオレフィンと少なくとも7個の炭素原子を有する炭化水素酸とを加熱することによって得られる少なくとも部分的に中和された改変された塩素化ポリオレフィンの20重量%〜100重量%の範囲の分散された樹脂の相を含む、水溶性分散物が挙げられる。このような改変された塩素化ポリオレフィンは、水と有機共溶媒との中の分散物の20重量%〜100重量%の範囲の量で存在し得る。
【0024】
特定の実施形態において、接着を増強させる硬化可能なポリウレタンコーティングを調製するために使用され得る塩素化ポリオレフィンが、市販されている。これらの材料は、他の化学プロセスの副産物であり得るポリオレフィンの原料の混合物を含み得る。従って、市販の材料のポリオレフィン骨格の精密な組成物は、バッチ毎に変動し得る。本明細書中に開示される組成物および方法で使用するための塩素化ポリオレフィンは、市販の調合物(例えば、Eastman Kodak(Kingsport,TN)から入手可能な塩素化ポリオレフィン343−1、343−3、および515−2)から選択され得る。特定の実施形態において、塩素化ポリオレフィン樹脂は、溶液として得られ得る。例えば、特定の実施形態において、塩素化ポリオレフィンは、キシレン(例えば、RC−63−3885(PRC−DeSoto International,Inc.))中にグラフトアクリル塩素化ポリオレフィン(40重量%のグラフトアクリル成分、および60重量%の塩素化ポリオレフィン成分)の24重量%の溶液を含み得る。
【0025】
塩素化ポリオレフィンは、ポリウレタンコーティング組成物に添加され得る水溶性または溶媒ベースの分散物として提供され得る。水溶性ベースのコーティング組成物に関して、ポリウレタンコーティング組成物は、塩素化ポリオレフィンの水溶性分散物、または塩素化ポリオレフィンと水溶性ポリウレタンコーティング組成物との混合物を混合することによって調製され得る。塩素化ポリオレフィンの水溶性分散物の例は、米国特許第5,319,032号および同第5,397,602号に開示されている。特定の実施形態において、塩素化ポリオレフィンまたは塩素化ポリオレフィンの混合物は、有機溶媒中で懸濁され、続いてポリウレタンの水溶性分散物と混合され得る。ポリウレタンは、当該分野で公知の任意の技術によって水中で分散され得る。溶媒ベースのコーティング組成物に関して、そのコーティング組成物は、塩素化ポリオレフィン、または塩素化ポリオレフィンと溶媒ベースのポリウレタンコーティング組成物との混合物を混合することによって調製され得る。
【0026】
2成分ポリウレタンコーティング組成物において、少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンは、イソシアネート成分、ポリオール成分、またはイソシアネート成分およびポリオール成分の両方のいずれかに添加され得る。特定の実施形態において、少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンは、ポリオール成分に添加され得る。
【0027】
特定の実施形態において、塩素化ポリオレフィンを含むポリウレタンコーティング組成物は、溶媒、色素、および樹脂を形成するフィルムを含有する有機コーティング組成物において使用するための一般に公知の他の添加物をさらに含み得る。これらの添加物の一般的な分類としては、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、殺ウドンコ病菌剤(mildewcide)および殺真菌剤、界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、触媒、および種々の流動制御剤が挙げられる。これらの最適な溶媒、色素、および/または添加物は、コーティング組成物の全固形物重量に基づいて約40重量%までで存在し得る。
【0028】
少なくとも1つの硬化可能なポリウレタンおよび少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含むコーティング組成物は、エージングした表面を再仕上げするためにトップコートとして使用され得る。表面は、例えば、コーティング、金属性基材、ポリマー基材、およびそれらの組み合わせを含み得る。コーティングは、エージングしたコーティング、または重なっているコーティングをはがすことによって露出されたコーティングを含み得、そしてプライマーコーティングおよびトップコート(例えば、ポリウレタントップコート)を含み得る。特定の実施形態において、表面は、航空用乗物または航空宇宙用乗物の表面、あるいは航空用乗物または航空宇宙乗物の表面に配置されたコーティングであり得る。特定の実施形態において、表面は、ポリウレタン基材であり得る。
【0029】
特定の実施形態において、少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む硬化可能なポリウレタンコーティング組成物は、最初に、エージングした表面を機械的に擦過せずにエージングした表面に適用され得る。少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む硬化可能なポリウレタンコーティングの適用前に、再仕上げされるべき表面が処理され得る。微粒子および表面フィルムを取り除き得る任意の処理方法が、使用され得る。例えば、特定の実施形態において、揮発性溶媒(例えば、エタノール、メタノールナフサ、ミネラルスピリット、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンまたは他の適切な溶媒)を保持し得る不織布を用いて、表面は溶媒ふき取らされる。特定の実施形態において、市販の洗浄溶媒(例えば、DESOCLEAN 120(PRC−DeSoto International,Inc.))が、使用され得る。
【0030】
コーティングされるエージングした表面が処理された後、本明細書中に開示されるような少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む硬化可能なポリウレタントップコートが、任意の適切な乾燥フィルム厚さに、この処理表面に適用され得る。特定の実施形態において、トップコートの乾燥フィルム厚さは0.25ミル〜5ミルの範囲、特定の実施形態において、0.5ミル〜4ミルの範囲、そして特定の実施形態において、0.5ミル〜2ミルの範囲であり得る。
【0031】
少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む硬化可能なポリウレタントップコートは、任意の適切な方法によって表面に適用され得、少なくとも部分的に、特定の調合物に依存し得る。例えば、トップコートは、ブラッシング、噴霧、浸漬、ローリング、フローイング(flowing)などによって表面に適用され得る。噴霧方法としては、圧縮エアスプレーおよび静電スプレーが挙げられ、手動および自動の方法が挙げられる。
【0032】
一旦、塩素化ポリオレフィンまたは塩素化ポリオレフィンの混合物を含む硬化可能なポリウレタントップコートが表面に適用されると、加熱する工程を含むか、含まずにフィルム形成が達成され得る。トップコートが硬化するために必要な時間は、少なくとも部分的に、周囲湿度、エアーフロー、溶媒蒸気圧および温度に依存し得る。特定の実施形態において、トップコートの硬化時間は、1分間〜7日間の範囲であり得る。
【0033】
少なくとも1つのポリウレタンおよび少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含むコーティング組成物の接着は、本明細書中に記載および開示されるような任意の適切な方法によって決定され得る。
【0034】
特定の実施形態において、少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む組成物は、タイコートとして使用され、基礎をなす表面とトップコートとの間の増強した接着を提供し得る。本明細書中で使用される場合、タイコートとは、基礎をなす表面(例えば、エージングしたコーティング)と、重なっているトップコートとの間の接着を促進または増強するために意図される中間のコーティングをいう。タイコートとして使用される場合、少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む組成物は、水溶性溶媒または非水溶性溶媒中に分散され得る。塩素化ポリオレフィン組成物は、任意の適切な塩素化ポリオレフィン(例えば、本明細書中に開示される任意の塩素化ポリオレフィンが挙げられる)を含み得る。特定の実施形態において、溶媒は、揮発性非プロトン性有機溶媒(例えば、キシレン、トルエン、ジイソブチルアセテート、イソブチルアセテート、メトキシプロパノールアセテートなど、およびそれらの混合物)であり得る。特定の実施形態において、タイコート組成物を含む塩素化ポリオレフィンは、少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンの1重量%〜24重量%を含み得、そして特定の実施形態において、分散物の全重量(固体および溶媒の含有量)に基づいて5重量%〜10重量%の少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含み得る。特定の実施形態において、タイコート分散物を含む塩素化ポリオレフィンの1つより多いコーティングが、表面に適用され得る。特定の実施形態において、1つより多いタイコート層は、塩素化ポリオレフィンの同じまたは異なる重量%を有する組成物から適用され得、そして/または他のタイコート層として異なる塩素化ポリオレフィンを含み得る。先に適用したタイコートは、その後に適用されるコーティング(さらなるタイコートおよび/またはトップコートが挙げられる)の適用前に乾燥され得る。
【0035】
少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含むタイコートを表面へ適用する前に、表面は、粒子および表面フィルムを除去し得る任意の方法により処理され得る。例えば、特定の実施形態において、表面は、揮発性溶媒(例えば、エタノール、メタノールナフサ、ミネラルスピリット、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンまたは他の適切な溶媒)を保持する不織布(lint free fabric)を使用して溶媒でふかれる。特定の実施形態において、市販の洗浄溶媒(例えば、DESOCLEAN 120(PRC−DeSoto International,Inc.))が使用され得る。エージングした表面へのタイコートの適用前または適用後に、表面を機械的に擦過する必要はない。塩素化ポリオレフィンを含むタイコートは、溶媒および塩素化ポリオレフィンを含むタイコート分散物の重量パーセントに少なくとも部分的に依存する任意の適切な方法により適用され得る。例えば、塩素化ポリオレフィンを含むタイコートは、はけ塗り、吹きつけ、浸漬、ローリングおよびフローイングなどにより適用され得る。吹きつけ方法としては、圧縮空気スプレーおよび静電気スプレーが挙げられ、これらは手動方法および自動化方法を含む。
【0036】
特定の実施形態において、基材に適用される塩素化ポリオレフィンを含むタイコートを構成するタイコートの乾燥フィルムの厚さは、0.05ミル〜1ミルの範囲であり得、そして特定の実施形態においては、0.05ミル〜0.5ミルの範囲であり得る。
【0037】
塩素化ポリオレフィンタイコートの表面への適用に続いて、タイコートは乾燥され得る。タイコートは、溶媒キャリアがエバポレートするのに十分な時間の間かつタイコートが適切な接着特徴を生じるのに十分な時間の間、乾燥され得る。特定のタイコートを乾燥させる時間は、適用される溶媒の量、タイコートの厚さ、溶媒の蒸気圧、温度および湿度ならびに表面での気流に、少なくとも部分的に依存し得る。タイコートの上に適用されるトップコートが乾燥接着試験に合格した場合に、タイコートは適切な接着特徴を生じる。例えば、トップコートが室温で1時間硬化された後、タイコートの上に適用されるトップコートがBSS 7225仕様にしたがう平行45度罫書き試験に合格する場合、タイコートは適切な接着を生じる。特定の実施形態において、タイコートは、5分間〜24時間の範囲の時間、乾燥され得、適切な接着特徴は一般的に2時間未満のうちに認識され得る。
【0038】
塩素化ポリオレフィンを含むタイコートが乾燥し、適切な接着特徴を生じた後、1つ以上の硬化可能なポリウレタントップコート(例えば、本明細書に開示される任意のものが挙げられる)がタイコートに適用され得る。硬化可能なポリウレタントップコートは、タイコートが適切な接着を生じた後に適用され得、このことはタイコートの適用から5分後〜24時間後であり得る。特定の実施形態において、硬化可能なポリウレタントップコートは、タイコートが適用されてから48時間後以内にタイコートに適用され得る。
【0039】
特定の実施形態において、ポリウレタントップコートは、任意の適切な硬化可能なポリウレタントップコート(本明細書に開示される塩素化ポリオレフィンを含むポリウレタントップコートが挙げられる)を含み得る。硬化可能なポリウレタントップコートは、本明細書に開示される任意の適切なコーティング方法を使用してタイコートに適用され得る。1つ以上のポリウレタントップコートの各々は、任意の適切な乾燥フィルムの厚さに適用され得る。例えば、特定の実施形態において、ポリウレタントップコートの乾燥フィルムの厚さは、0.25ミル〜5ミルの範囲であり得、特定の実施形態において0.5ミル〜4ミルの範囲であり得、そして特定の実施形態において0.5ミル〜2ミルの範囲であり得る。硬化可能なポリウレタントップコートは、推奨される手順(周囲温度で、が挙げられる)にしたがって硬化され得る。
【0040】
ポリウレタントップコートと塩素化ポリオレフィンタイコートとの接着は、任意の適切な方法により決定され得る。例えば、接着は、BSS 7225(ボーイング仕様書支持標準(Boeing Specification Support Standard))にしたがう乾式接着(dry adhesion)試験、7日間湿式接着(wet adhesion)試験および/または36日間湿式接着試験を使用して決定され得る。旋回アーム耐降雨浸食性試験(Whirling Arm Rain Erosion Resistance Test)が、コーティングの接着特徴も評価するために使用され得る。以下の試験方法が、本明細書に記載される。
【実施例】
【0041】
特定の実施形態は、以下の実施例を参照することによってさらに規定され得、この実施例はエージングした表面を再仕上げする方法および少なくとも1つの塩素化ポリオレフィンを含む組成物を詳細に記載する。材料および方法の両方に対する多くの改変がこれらの実施形態から逸脱することなく実施され得ることが当業者に明らかである。
【0042】
(接着試験)
乾式接着試験法、湿式接着試験法および旋回アーム雨耐浸食性試験法を使用して、本明細書に開示される中間層とトップコートとの接着を評価した。
【0043】
BSS 7225(ボーイング仕様支持標準)に記載される手順を使用して、本明細書に開示されるポリウレタンコーティングの接着を評価した。乾式接着試験(I型)試験において、標本をスタイラス針により罫書いた(例えば、1インチ離れた2つの平行な罫書きを作製し、1本の罫書きをこの平行な罫書きと45±5度の角度で交差させた(BSS
7225、平行プラス45度の罫書き−クラス3))。ゴム系接着剤またはアクリル系接着剤(ASTM D 330、方法Aにしたがって試験した場合に60oz/インチ幅の最小剥離強度を有する)を有する1インチ幅のマスキングテープを、平行な罫書きに対し直角に、罫書いた試験標本の表面に押し付け、そして平行な罫書きの間の領域中の45度の罫書きを覆った。単回の急激な動作により、このテープを試験標本から垂直に引っ張った。それから試験領域とテープとを、あらゆる除去されたコーティングについて調べた。接着試験に合格したコーティングは、BSS 7225においてそれぞれ分類10および分類9により示されたように、罫書きにまたがったコーティングの損失が全く無いか、またはほんのわずかな損失を示した。分類10は罫書きに沿って塗料の損失が全く無いことに対応し、分類9は罫書きにまたがる塗料の損失がほんのわずかであることに対応する。BSS 7225に規定される分類8〜分類1に対応する結果については、接着失敗を示した。
【0044】
BSS 7225、湿式接着浸漬法(III型)に記載される手順を使用して、中間層とトップコートとの湿式接着を評価した。試験標本を、7日間または36日間のいずれか蒸留水に浸漬した。指定した時間の終わりに、試験標本を水から取り出し、ふき取って乾かし、乾式接着試験について記載されるように、コーティングの接着を評価した。
【0045】
また、旋回アーム耐降雨浸食性試験を使用して、中間層とトップコートとの接着を評価した。3インチ×6インチ×0.032インチの寸法の湾曲したホイルの形状のアルミニウム2024−T3試験パネルを、MIL−C−5541クラス1Aにしたがうクロム酸塩転換(conversion)コーティングにより事前に処理した。その後、試験パネルを溶媒でふき、乾かしてから、コーティングを適用した。コーティングを適用し、乾かした後、試験パネルを試験前16時間〜24時間、25℃で水に浸漬した。水から取り出して1時間以内に、試験パネルを旋回アーム設備に固定した。それから、標本を時速385マイル、毎時3〜4インチの散水(1mm〜4mmの滴サイズにより特徴付けられる)に30分間曝した。試験パネルの先端から0.25インチより大きな任意のコーティングが剥離した場合に、失敗と示した。
【0046】
(実施例1)
(グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンを含むポリウレタントップコートのエージングしたポリウレタンコーティングへの接着)
RC−63−3885グラフトアクリル塩素化ポリオレフィン分散物(PRC−DeSoto International,Inc.)を、ポリウレタン/塩素化ポリオレフィン組成物の固形分の全重量に基づいて、2.5重量パーセント〜5重量パーセントの範囲の量でCA 8000ポリウレタントップコート(PRC−DeSoto International)に添加した。RC−63−3885は、キシレン中に分散させた24重量パーセントのグラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの溶液である。アルミニウム合金2024 T−3試験パネルをまずCA 8000でコーティングした。ポリウレタンコーティングをエージングするために、試験パネルを、周囲温度(25℃)で少なくとも7日間硬化させるか、または68℃での14日間の加速したエージングレジメンに曝した。次に、硬化したコーティングをメチルエチルケトンまたはDESOCLEAN 120でのふき取りを使用して洗浄(clean)した。RC−63−3885塩素化ポリオレフィン分散物とCA 8000ポリウレタンとを含むトップコートを、エージングしたポリウレタンコーティング上に噴霧コーティングした。
【0047】
110℃(230°F)の温度で4時間または24時間のいずれかの間で焼き付けた試験パネル上で実行した試験の結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

110℃(230°F)の温度で4時間または24時間のいずれかの間で焼き付けた試験パネル上で実行した試験の結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

(実施例2)
(ポリウレタントップコートと塩素化ポリオレフィンを含むタイコートとのエージングしたポリウレタンコーティングへの接着)
グラフトアクリル塩素化ポリオレフィンの24重量%キシレン溶液を含むRC−63−3885塩素化ポリオレフィン分散物を、D866(PRC−DeSoto International,Inc.)により希釈し、5重量%〜24重量%の塩素化ポリオレフィンを有するタイコート組成物を得た。D866は、SOLVESSO 100(35体積%)、キシレン(xylem)(10体積%)、酢酸イソブチル(22体積%)および酢酸ブチル(35体積%)の溶媒混合物である。アルミニウム2024−T3試験パネルをまずCA 8000ポリウレタンコーティングでコーティングし、そして120°Fで6時間または24℃(75°F)で7日間硬化させた。ポリウレタンコーティングを、24℃(75°F)で最低30日間硬化させ、コーティングをエージングさせた。次にエージングしたポリウレタンコーティングを、メチルエチルケトン(MEK)溶媒でのふき取りを使用して処理した。5重量%〜24重量%の塩素化ポリオレフィンを含むタイコート組成物を、処理かつエージングしたポリウレタンコーティング上に噴霧コーティングした。タイコートの乾燥フィルムの厚さは0.05ミル〜0.5ミルの範囲であった。それから、タイコートを、20分間〜48時間の範囲の時間、25℃で乾燥させた。乾燥後、CA 8000ポリウレタントップコートを、塩素化ポリオレフィンタイコート上に適用し、0.5ミル〜4ミルの乾燥フィルムの厚さを有するトップコートを得た。
【0050】
乾式接着試験、湿式接着試験および旋回アーム雨耐浸食性試験を、本明細書に記載されるように実行した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

本開示の他の実施形態は、本明細書の考察および本開示の実施から当業者に明らかである。明細書および実施例は例示としてのみ見なされるべきであり、本開示の真の範囲および本質は上記の特許請求の範囲により示されるべきであることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2011−17008(P2011−17008A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183513(P2010−183513)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【分割の表示】特願2007−519299(P2007−519299)の分割
【原出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(502328466)ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド (29)
【Fターム(参考)】