説明

改善した耐疵性および耐引掻き性を提供する塗料組成物および該組成物の使用方法

【課題】他のコーティング性能および外観特性を維持しながらも、優れた耐引掻き性および耐疵性を有する塗料を提供する。
【解決手段】塗膜形成樹脂と、大きな耐疵性および/または耐引掻き性を塗料に与えるのに十分な硬度を有し、平均粒径が0.1〜50ミクロンの該樹脂中に分散した複数の粒子とを含有する組成物から形成される塗料、および上記粒子を含む粉体塗料を調製するための方法。ここで、上記樹脂の屈折率と上記粒子の屈折率との差異は、1〜1.5の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2001年12月5日提出の米国特許出願第10/007,149号の一部継続出願であり、2000年12月8日提出の米国仮特許出願第60/254,143号の優先権の利益を主張している。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、塗料組成物およびその使用方法に関し、この塗料組成物は、改善された耐疵性および/または耐引掻き性を提供する。より具体的には、この改善された耐性は、塗膜形成樹脂に粒子を加えることにより達成される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
粉体塗料は、本質的に揮発性有機含有量(VOC)が少なく、適用プロセスおよび硬化プロセスの間の排気を著しく減少させるため、近年益々一般的になってきている。しかしながら、依然として液体塗料が多くの系において使用されている。例えば、自動車(エラストマー自動車部品、家庭用品および床張り材を含む)のコーティングは、しばしば、液体塗料を使用してなされている。
【0004】
上塗り剤(例えば、自動車への適用のためのカラープラスクリア(color−plus−clear)コーティング系中の透明なクリアコート)および/または他の保護塗料および装飾用塗料(例えば、家庭用品用のもの)は、組み立てプロセス中に生ずる疵を被りやすく、環境および最終製品の通常の使用の両方から損害を与えられる。組み立て中に生ずる塗料の欠陥としては、塗料層が厚すぎること、または薄すぎること、「斑点」または窪み(crater)、および硬化不足の塗料または過硬化の塗料が挙げられ得る;そして、これらの欠陥は、コーティングの色、脆性、溶媒耐性および疵および引掻き性能に影響し得る。損害を与える環境因子としては、酸性雨、太陽からの紫外線への曝露、高相対湿度および高温が挙げられ;これらの因子はまた、性能の低下をもたらし得る。消費者製品(例えば、機器および床張り材)の通常の使用は、固い物質との接触、通常の洗浄プロセス中のブラシおよび/または研磨クレンザーとの接触などにより表面の疵、引掻きおよび/または剥離を生じさせ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、他のコーティング性能および外観特性を維持しながらも、優れた耐引掻き性および耐疵性を有する塗料に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、塗膜形成樹脂および0.1ミクロンと50ミクロンとの間の平均粒径を有し、上記樹脂中に分散する複数の粒子を含む組成物から形成される塗料に関する。これらの粒子は、粒子が存在しない塗料と比較した場合に、より大きな耐疵性および/または耐引掻き性をこれらの塗料に与えるのに十分な硬度を有しており、上記樹脂の屈折率と上記粒子の屈折率との差異は、1〜1.5の範囲である。
【0007】
本発明はまた、塗料の耐引掻き性および/または耐疵性を改善するための方法、および粉体塗料を調製するための方法に関する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
塗料であって、
塗膜形成樹脂;および
該樹脂中に分散する0.1ミクロンと50ミクロンとの間の平均粒径を有する多数の粒子であって、該粒子は、粒子が存在しない塗料と比較した場合に、該塗料に対してより大きな耐疵性および/または耐引掻き性を与えるのに十分な硬度を有する、多数の粒子
を含む組成物から形成され、
ここで、該樹脂の屈折率と該粒子の屈折率との差異が1〜1.5の範囲である
塗料。
(項目2)
項目1に記載の塗料であって、前記粒子が有機粒子を含む、塗料。
(項目3)
項目2に記載の塗料であって、前記有機粒子が、ダイヤモンド粒子を含む、塗料。
(項目4)
項目2に記載の塗料であって、前記有機粒子が、炭化ケイ素、炭化チタンおよび/または炭化ホウ素を含む、塗料。
(項目5)
項目2に記載の塗料であって、前記有機粒子が、炭化ケイ素粒子を含む、塗料。
(項目6)
項目2に記載の塗料であって、前記有機粒子が、20ミクロン以下のメジアン粒径を有する炭化ケイ素粒子を含む、塗料。
(項目7)
項目1に記載の塗料であって、前記粒子が、無機粒子を含む、塗料。
(項目8)
項目7に記載の塗料であって、前記粒子が、シリカおよび/またはアルミナを含む、塗料。
(項目9)
項目1に記載の塗料であって、粉体塗料組成物から形成される、塗料。
(項目10)
項目1に記載の塗料であって、液体組成物から形成される、塗料。
(項目11)
項目10に記載の塗料であって、前記液体組成物が、熱硬化性組成物および/または放射線硬化性組成物を含む、塗料。
(項目12)
項目1に記載の塗料であって、前記塗膜形成樹脂が、少なくとも1種の反応性官能基を含有するポリマー、および該ポリマーの官能基と反応性の官能基を有する少なくとも1種の硬化剤を含む、塗料。
(項目13)
項目1に記載の塗料であって、前記粒子が、20ミクロン以下の平均粒径を有する、塗料。
(項目14)
項目12に記載の塗料であって、前記粒子が、10ミクロン以下の平均粒径を有する、塗料。
(項目15)
項目1に記載の塗料であって、粒子の平均モース硬度が5以上である、塗料。
(項目16)
項目15に記載の塗料であって、前記粒子の平均モース硬度が8以上である、塗料。
(項目17)
基材および該基材の少なくとも一部を覆う項目1に記載の塗料を含む、コーティングされた基材。
(項目18)
項目17に記載のコーティングされた基材であって、前記基材が、金属基材、ポリマー基材および/または木材基材を含む、コーティングされた基材。
(項目19)
基材の耐引掻き性および/または耐疵性を改善するための方法であって、項目1に記載の塗料を、該基材の少なくとも一部に適用する工程を包含する、方法。
(項目20)
粉体塗料を調製するための方法であって、塗膜形成樹脂および多数の粒子を一緒に押出し成形する工程を包含し、ここで、該粒子は、粒子が存在しない塗料と比較した場合に、該塗料に対してより大きな耐疵性および/または耐引掻き性を与えるのに十分な硬度を有し、そして、該樹脂の屈折率と該粒子の屈折率との差異が、1〜1.5の範囲である、方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
実施例中以外、または他に指示がある場合以外、明細書中および特許請求の範囲中で使用される成分量、反応条件などを表す全ての数は、たとえその用語が明確に表されていなくても、用語「約」が前に置かれているものとして理解されるべきである。したがって、そうではないと示されない限り、以下の明細書および添付した特許請求の範囲に示される数値パラメーターは、本発明により得られることが求められる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。少なくとも、また、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告される有効桁数を考慮して、通常の四捨五入法を適用することにより、解釈されるべきである。
【0009】
発明の広範な範囲に対し設定された数値範囲およびパラメーターは近似値ではあるが、特定の実施例に示される数値の組みは、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、本質的に、各々の試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生ずるある程度のエラーを含有している。
【0010】
また、本明細書中に記載されるいずれの数値範囲も、そこに組み込まれる全部分範囲を含むことが意図されると理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、記載されている最小値の1と記載されている最大値の10と、その間の全ての部分範囲を含むことが意図される。すなわち、1以上の最小値を有し、10以下の最大値を有することが意図される。
【0011】
本発明は、塗膜形成樹脂およびこの樹脂中に分散する複数の粒子(以下に詳細に記載される)を含む組成物から形成される塗料に関する。
【0012】
これらの粒子は、0.01ミクロン〜50ミクロンの範囲にある平均粒径を有する。これらの粒子は、粒子が存在しない塗料と比較される場合に、より大きな耐疵性および/または耐引掻き性を上記塗料に与えるほどの硬度を有する。また、上記樹脂の屈折率と上記粒子の屈折率との差異は、1〜1.5の範囲である。
【0013】
塗膜を形成する樹脂はいずれも、本方法に従って使用され得、適合性の問題はない。例えば、粉体塗料組成物および液体塗料組成物の両方に適した樹脂が使用され得る。
【0014】
これらの粉体組成物および/または液体組成物は、熱可塑性組成物または熱硬化性組成物であり得る。熱硬化性組成物は、周囲温度(大気圧で22℃〜28℃)で硬化され得るか、または、高温度にて熱により硬化され得るか、または以下に検討されるように放射線硬化性であり得る硬化性組成物である。
【0015】
熱硬化性組成物は、少なくとも1種の反応性官能基を有するポリマー、およびそのポリマーの官能基と反応する官能基を有する硬化剤を含む、樹脂結合剤または樹脂結合剤系を含み得る。このポリマーは、例えば、アクリル、ポリエステル、ポリエーテルもしくはポリウレタンから選択され得、かつ/または、ポリシロキサンおよび/もしくはそれらの共重合体は、官能基(例えば、ヒドロキシル官能基、カルボン酸官能基、カルバメート官能基、イソシアネート官能基、エポキシ官能基、アミドアミノ官能基および/もしくはカルボン酸官能基)を含み得る。放射線硬化性熱硬化性組成物の場合には、樹脂結合剤は、ビニル基を含む官能基またはエチレン不飽和を含む官能基を有する物質を含み得る。
【0016】
上記塗膜形成樹脂は、一般的に、約50重量パーセントより大きく(例えば、約60重量パーセントより大きく)、90重量パーセント未満の量で粉体塗料組成物中に存在する。ここで重量パーセントは、組成物の総重量に基づいている。例えば、樹脂の重量パーセントは、60重量パーセントと70重量パーセントとの間であり得る。硬化剤が使用される場合、一般的に、約10重量パーセントと40重量パーセントとの間の量で存在する;この重量パーセントもまた、塗料組成物の総重量に基づいている。
【0017】
先に述べられるとおり、本組成物は、液体形態、すなわち水系または溶剤系の塗膜形成樹脂を含み得る。有機粒子および/または無機粒子は、本発明に従って樹脂に添加され得る。本発明の特定の実施形態において、塗料を形成する組成物は、有機粒子を含む。適切な有機粒子走査の例としては、ダイヤモンド粒子(例えば、ダイアモンドダスト粒子)および炭化物材料から形成される粒子が挙げられるが、これらに限定されない;炭化物粒子の例としては、炭化チタニウム、炭化ケイ素および炭化ホウ素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の一実施形態において、無機粒子が使用され得る。適切な無機粒子としては、シリカ;アルミナ;ケイ酸アルミナ;シリカアルミナ;アルカリアルミノシリケート;ホウケイ酸ガラス;窒化物(窒化ホウ素および窒化ケイ素を含む);酸化物(二酸化チタニウムおよび酸化亜鉛を含む);石英;霞石閃長岩;ジルコン(例えば、酸化ジルコニウムの形態のもの);ブッデリュアイト(buddeluyite);およびユージアライトが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0019】
任意の上記粒子の混合物が使用され得る。これらの混合物は、有機粒子、無機粒子またはそれらの両方の異なる組み合わせを含む。シリカは、任意の適切な形態(例えば、結晶質形態、非晶質形態または沈降形態)であり得る。結晶質シリカは、単層塗布に特に適切である。アルミナは、そのいずれの形態(例えば、α、β、γ、δ、θ、板状のアルミナなど)でも使用され得、融解されるかまたはか焼され得る。か焼された場合には、粉砕されるかまたは粉砕されない。結晶質構造を有するαアルミナは、自動車産業において使用されるクリアコートに特に適している。
【0020】
上記に列挙された粒子は、広く市販されている。例えば、結晶質シリカは、Reade Advanced Materialsから入手可能であり;非晶質シリカおよび沈殿シリカは、PPG Industiries,Inc.のもの;ZEEOSPHERES、シリカアルミナセラミック合金粒子は、3M Corporationのもの;シリカアルミナ(例えば、G200、G−400、G−600)は、3M Corporationのもの;アルカリケイ酸アルミナ(例えば、W−210、W−410、W−610)は、3M Corporationのもの;ホウケイ酸ガラスは、SUNSPHERESとしてMoSci Corporationから販売され;そして、石英および霞石閃長岩は、Unimin,Inc.のものである。アルミナは、Micro Abrasives CorporationからWCA3、WCA3SおよびWCA3TOとして、そしてAlcoaからT64−20として入手可能である。ジルコン、buddeluyiteおよびユージアライトはAran Isles Corporationより市販されており、窒化ホウ素はCarborundum Inc.からSHP−605およびHPP−325として利用可能である。多くの市販の製品は、実際には、1種以上の物質の複合物または混合物であり;そのような粒子が、等価に本発明の範囲内にあることが理解される。
【0021】
一部の実施形態において、これらの粒子を予め処理することが望まれ得る。一実施形態において、これらの粒子は、本組成物に組み込む前に加熱処理される。加熱処理は、例えば、約350℃と2000℃との間(例えば、600℃と1000℃との間)の温度にて2時間〜3時間の間、粒子を加熱することにより達成し得る。別の実施形態において、これらの粒子は、化合物(例えば、シラン)を用いて処理または改変され得る。上記粒子は、ソルゲルプロセスによって調製され得る。また、上記粒子は、か焼または採掘され得、または任意の適切な精製プロセスにより調製され得る。
【0022】
本発明で使用される粒子は、約0.1ミクロン〜50ミクロン(例えば、0.1ミクロン〜20ミクロン、または1ミクロン〜12ミクロン、または1ミクロン〜10ミクロン、または3ミクロン〜6ミクロン)の範囲にある平均粒径を有し得る。これらの粒子の平均粒径は、これらの記載されたいずれの値の間の範囲でもあり得、その範囲には記載された値が含まれる。上記に列挙された粒子はいずれも、本発明に従うこれらの範囲内の任意の大きさで使用され得る。一実施形態において、平均粒径は、10ミクロン以下または6ミクロン以下である。本発明の一実施形態において、これらの粒子は、20ミクロン以下(例えば、15ミクロン以下)の平均粒径を有する炭化ケイ素粒子を含む。種々の粒子の混合物、ならびに種々の粒径を有する粒子の組み合わせが使用され得る。例えば、本発明の実施形態において、多数の粒子は、その一部が10ミクロン以下の平均粒径を有し、一部が15ミクロン以上の平均粒径を有する粒子の混合物を含む。
【0023】
一実施形態において、これらの粒子は、炭化ケイ素、か焼アルミナおよび/またはアルミナであり、10ミクロン以下または6ミクロン以下、または5.5ミクロン以下、または3ミクロン以下のメジアン粒径を有する。一実施形態において、これらの粒子は、非粉砕か焼アルミナであり、5.5ミクロン以下(例えば、約2ミクロン)のメジアン微結晶サイズを有する。「平均粒径」は、サンプル中の約50パーセント以上の粒子の粒径をいう。「メジアン粒径」は、分布の半分がそれより大きく、半分がそれより小さい粒径をいう;「メジアン微結晶サイズ」は、同様に規定されるが、粒径よりもむしろ微結晶サイズを用いている。
【0024】
粒径は、当該技術分野において公知の任意の方法に従って(例えば、従来の粒径分析器により)決定され得る。例えば、平均粒径が1ミクロンより大きな場合は、レーザー散乱技術が使用され得、1ミクロンより小さい平均粒径については、伝達電子顕微鏡法(「TEM」)が使用され得る。
【0025】
これらの粒子の形状または形態は、選択された粒子の種類により異なり得る。例えば、一般的に球形粒子(例えば、結晶質物質、固体ビーズ、マイクロビーズまたは中空球体)が使用され得、同様に、粒子は、板状、立方晶系または針状(つまり、細長または繊維状)であり得る。これらの粒子はまた、無原則または不均一な形態を有し得る。加えて、これらの粒子は、中空、多孔性もしくは無空隙(void free)または任意の組み合わせ(例えば、中空の中心と多孔性または中実壁との組み合わせ)の内部構造を有し得る。異なる粒子形状が、ある適用に対して別の適用に対するよりも適切であり得ることが理解される。例えば、自動車用のクリアコートと共に使用される場合、板状形態を有する粒子が球形形態または他の非球形形態を有する粒子よりも優れた耐疵性を有し得る。しかしながら、粒子形状は、他の適用に対しては無関係であり得る。異なる形態を有する粒子の組み合わせを使用して、最終コーティングに所望の性質を与え得ることが理解される。本発明の一実施形態において、これらの粒子は、球形、板状、不均一、結晶質(単結晶構造または複結晶構造を含む)および/または非晶質形態を有し得る。
【0026】
これらの粒子は、粒子を含まない同じ樹脂または樹脂結合剤系から調製された塗料において達成されるよりも優れた疵および/または引掻きからの保護を与えるのに十分な硬度を有する。例えば、これらの粒子は、硬化塗料を引掻き得るまたは疵つけ得る物質(例えば、埃、砂、石、ガラス、研磨洗浄剤、洗車ブラシなど)の硬度値よりも大きな硬度値を有し得る。粒子および塗料層を引掻き得るまたは疵つけ得る物質の硬度値は、従来の硬度測定法のいずれによっても決定され得るが、典型的に、モース硬度尺度にしたがって決定される。モース尺度は、鉱物または鉱物様物質の硬度の経験的尺度であり、ある物質の表面の相対的な耐引掻き性を示す。当初のモース尺度は、1〜10の範囲に及ぶ値から成り、タルクは1の値を有し、ダイヤモンドは10の値を有した。この尺度は、近年、何らかの合成物質の添加を考慮に入れるために、最大値10から最大値15へと拡大された。しかしながら、本明細書中で検討されるモース硬度値は全て、当初の1〜10の尺度に基づく。
【0027】
本発明の範囲内にある数種の粒子のモース硬度値を、以下の表Aに示す。
【0028】
【表1】

本発明に従って使用される粒子は、典型的に、4.5以上(例えば、5以上または8以上)のモース硬度を有する。自動車用クリアコートについては、9または10のモース硬度を有する粒子が適切であり得る。一実施形態において、粒子のモース硬度は、4.5と8との間(例えば、4.5と7.5または4.5と7との間)である。
【0029】
本発明に従う多くの粒子、特に無機粒子は、その表面の硬度が粒子内部の硬度と異なり得ることが理解される。典型的に、表面の硬度が、本発明と関連する硬度である。
【0030】
上述の粒子の塗膜形成樹脂または樹脂結合剤系への組み込みが、これらの粒子を含まない同じ塗料と比較して、向上した耐疵性および/または耐引掻き性を有する塗料をもたらし得る。本発明に従って、塗料の外観または他の機械的性質に影響することなく、これらの改善した疵および/または引掻き特性を有する塗料を調合し得る。
【0031】
「疵」および「引掻き」は、本明細書中では、機械的および/または化学的摩耗から生ずる物理的変形をいう。「耐疵性」は、小規模な機械的応力により引き起こされる外観劣化に耐える物質の能力の程度である。「耐引掻き性」は、目に見える、より深いまたはより広範な溝につながり得るより深刻な被害に耐える物質の能力である。したがって、引掻きは、一般的に、当該技術分野において疵と云われるものよりも深刻であると見なされ、当該技術分野において、この2つは異なるものとして見なされる。上記のように、疵および引掻きは、通常の使用を通じて生じるばかりでなく、製造要因および環境要因からも生じ得る。疵および引掻きは、同じ事柄の多くの点で異なる程度であるが、耐疵性を改善する塗料が、耐引掻き性を改善するのに有効でなくてもよく、逆に、耐引掻き性を改善する塗料が、耐疵性を改善するのに有効でなくてもよい。したがって、単一種の粒子あるいは粒子の組み合わせが、最終塗料に所望の特性を与えるために使用され得ることが理解される。例えば、特に優れた耐疵性を提供するある粒子を、特に優れた耐引掻き性を提供する粒子と合わせ得る。
【0032】
上述のように、本発明で使用される粒子または粒子の組み合わせは、一般的に、粒子が存在しない場合と比較して、疵および/引掻きに対する改善した保護を与えるのに十分な硬度を有するべきである。したがって、本発明の組成物は、硬化される場合、粒子を含まない同じ組成物よりもすぐれた耐疵性および/または耐引掻き性を有する。20パーセントからほぼ100パーセントまでの範囲に及ぶ光沢保持率(例えば、20パーセント以上の保持率、50パーセント以上の保持率、または70パーセント以上の保持率、または90パーセント以上の保持率)が、疵および/または引掻き試験の後に達成される。特定の粒子または粒子の組み合わせを用い、改善された耐疵性および耐引掻き性が得られたか否かを決定するために、一方は本粒子を含有し、他方は含有しないという点でのみ異なる2種の塗料組成物が調合され得る。これらの塗料は、当該技術分野において一般的に知られている任意の手段(例えば、以下の実施例の項で記載される手段)により耐疵性および/または耐引掻き性について試験され得る(すなわち、「疵および/または引掻き試験」)。使用される疵および/または引掻き試験がコーティングされた基材の最終用途にとって適切である(例えば、自動車用上塗り塗料は、床張り材(ビニル床材および木製床材を含む)用の塗料と異なる方法により試験され得る)ことは、当業者に理解される。粒子含有組成物および粒子非含有組成物についての結果が、選択した粒子を加える場合に改善した耐性が得られるかを決定するために比較され得る。これらの試験のいずれにおける改善も、たとえ僅かであっても、本発明に従う改善を構成する。耐疵性および耐引掻き性、およびこれらを試験するための方法は、例えば、Taber摩擦試験機を使用して試験される「摩耗(wear−through)」特性、損耗特性またはバルク−塗膜(bulk−film)特性とは全く異なることが理解され、また、そのような試験が、主として本発明の生産物以外の生産物と関連することが理解される。
【0033】
これらの粒子は、本発明の塗料組成物中に、0.01重量パーセント〜25.0重量パーセント(例えば、0.01〜20重量パーセント、または0.01重量パーセント〜10重量パーセント、または0.05重量パーセント〜8重量パーセント、または1重量パーセント〜3重量パーセント)の範囲の量で存在し得る。重量パーセントは、塗料組成物の総重量に基づく。一実施形態において、これらの粒子は、5重量パーセントより大きな濃度(例えば、5重量パーセントより大きく、20重量パーセントまで)で存在する。典型的に、20重量パーセント以下の量が適切であるが、20重量パーセントを超える量であっても使用され得る。
【0034】
典型的に、粒子濃度が増大するにつれて耐疵性および耐引掻き性の改善が増大することが理解される。以下の実施例の項に記載される試験結果は、どのような重量パーセントまたは「分量(load)」の粒子が所望のレベルの保護を与えるかを決定するために、当業者により使用され得る。これらの粒子は、硬化塗料中にかなり均等に分散する。つまり、典型的に、硬化塗料の一部分における粒子濃度は、別の部分と比較した場合の上昇は見られない。
【0035】
使用される粒径ならびに粒子分量は、共に、耐疵性および/または耐引掻き性のレベルだけでなく、硬化塗料の外観にも影響し得る。したがって、粒径および分量は、例えば、受容可能な濁りのレベル、耐疵性および/または耐引掻き性のレベル、塗料層の厚みなどを考慮して、特定の適用に基づき利用者により最適化されるべきである。外観が特に関連する場合(例えば、自動車用クリアコート)は、比較的低分量および小粒径が使用され得る。例えば、5重量パーセント以下、または1重量パーセント以下、または0.1重量パーセント以下の分量、および8ミクロン以下の粒径(例えば、6ミクロン以下の粒径)が、特に適切であり得る。濁りがそれほど関連しない、または他の顔料が存在する工業用の単層塗装系については、10ミクロンの粒径、またはそれより大きな粒径(例えば、15ミクロン以上)で、約10パーセントまで(例えば、1パーセント〜5パーセント)の分量またはそれより大きな分量が使用され得る。当業者は、硬化塗料の外観または他の機械的性質を妥協することなく、所望のレベルの耐疵性および/または耐引掻き性を達成するために、粒径および分量を最適化し得る。異なる粒径を有する粒子の混合物が、所与の適用に特に適する場合があり得る。
【0036】
本発明の実施形態において、これらの粒子は、0.01重量パーセント〜0.1重量パーセントの量で組成物中に存在し、これらの粒子は、0.1ミクロン〜15ミクロンの範囲にある平均粒径を有する。濁りもまた、類似した屈折率(「RI」)を有する樹脂および粒子を選択することにより、少なくともある程度まで最小にし得る。すなわち、樹脂RIと粒子RIとの差異(「ΔRI」)を最小にし得る。一部の適用(例えば、クリアコート)において、ΔRIは、1〜1.5(例えば、1〜1.4、または1〜1.2)の範囲である。異なるRIを有する粒子の組み合わせを使用することもまた、濁りを低減するのに役立ち得る。ΔRIを最小にすることは、粒径がより大きい場合(すなわち、約6ミクロンより大きい場合)および/または粒子分量が約8重量パーセントより大きい場合に特に関連する。典型的に、粒子のRIが樹脂のRIに近い場合、これらの粒子は、本組成物のより大きな重量パーセントを構成し得る。場合により、特に高いRI値を有する一部の物質について、実際に小粒径が、中点値付近の粒径における同じ物質よりも濁った外観を生じさせ得る。そのような物質の粒径がさらに拡大するにつれ、濁りもまた増大する。
【0037】
本発明の別の実施形態において、上記の粒子に加えて、ナノ粒子もまた、本組成物に組み込まれる。「ナノ粒子」は、本明細書中で使用される場合、0.8ナノメートル〜500ナノメートル(例えば、10ナノメートルと100ナノメートルとの間)の平均粒径を有する粒子を言う。そのようなナノ粒子は、有機微粒子物質および無機微粒子物質(例えば、ポリマー有機物質およびポリマー無機物質ならびに非ポリマー有機物質および非ポリマー無機物質から形成される微粒子物質)の両方、複合物質およびそれらの混合物を含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー無機物質」は、炭素以外の元素または複数の元素(例えば、ケイ素)に基づく主鎖反復単位を有するポリマー物質を意味する;「ポリマー有機物質」は、合成ポリマー物質、半合成ポリマー物質および天然のポリマー物質を意味し、これらは全て、炭素に基づく主鎖反復単位を有する。「複合物質」は、混合された2種以上の異なる物質の組み合わせをいう。複合物質から形成されるナノ粒子は、粒子の内部の硬度と異なる表面硬度を有し得る。ナノ粒子の表面は、当該技術分野において公知の技術を使用して、その表面特性を化学的にまたは物理的に変化させることによるなどして改変され得る。例えば、これらのナノ粒子は、シロキサン(例えば、酸性官能基が加えられたシロキサン)中に分散され得る。加えて、ある種の物質から形成されるナノ粒子は、異なる物質もしくは同じ物質の異なる形態と共に、コーティングされ、クラッディングされまたは被包されて、所望の表面特性を有する粒子を生じ得る。
【0038】
本発明の組成物における使用に適したナノ粒子は、セラミック材料、金属材料またはそれらの混合物から形成され得、あるいは、例えば、本質的に単一の無機酸化物(例えば、コロイド形態、乾燥形態もしくは非晶質形態のシリカ、アルミナもしくはコロイドアルミナ、二酸化チタン、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイドイットリウム、ジルコニア(例えば、コロイドジルコニアもしくは非晶質ジルコニアまたはそれらの混合物))または、別の種類の有機酸化物を付着させる種類の無機酸化物のコアを含み得る。本ナノ粒子を形成するのに有用な物質としては、黒鉛、金属、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、シリケート、カーボネート、サルフェートおよび水酸化物が挙げられる。
【0039】
上記のように、多くの適用において、本粒子およびナノ粒子(使用される場合)の使用は、特に、その硬化塗料がクリアコートとして供給される場合、または、カラープラスクリア系におけるクリアコートとして供給される場合、硬化塗料組成物の光学的性質を著しく妨げるべきではない。光学的性質および塗料の「透明度」は、硬化塗料の濁りを測定することにより評価され得る。本発明の目的のために、濁りは、BYK/Haze Gloss測定器を使用し、製造業者の使用説明書に従って測定される。
【0040】
約10未満またはそれよりも小さいこれらの粒子を含む硬化塗料の濁り値とこれらの粒子を含まない硬化塗料の濁り値との差異(「Δ濁り値」)が、典型的に、ほとんどの適用に対して望ましい。本組成物を透明上塗り塗料として使用する場合には、典型的に、5以下のΔ濁り値が望ましい。
【0041】
前述したように、本発明の組成物は、液体塗料組成物または固体微粒子形態の塗料組成物(すなわち、粉体塗料組成物)を含み得る。
【0042】
本発明の粉体塗料組成物は、必要に応じて、添加剤(例えば、流動および湿潤のための蝋、流動調整剤(例えば、ポリ(2−エチルヘキシル)アクリレート)、脱気剤(例えば、ベンゾインおよびMicroWax C)、塗料特製を改変かつ最適化するための助剤樹脂、抗酸化剤、紫外(UV)線吸収剤および触媒)を含み得る。有用な抗酸化剤およびUV線吸収剤の例としては、Ciba−Geigyから商標IRGANOX(登録商標)および商標TINUVIN(登録商標)により市販されているものが挙げられる。これらの任意の添加剤は、使用される場合、塗料組成物の総重量に基づき、典型的に、20重量パーセントまでの量で存在する。
【0043】
本発明の液体組成物は、同様に、最適な添加剤(例えば、可塑剤、抗酸化剤、光安定剤、UV吸収剤、チキソトロープ剤、抗ガス発生剤、有機共溶媒、殺生物剤、界面活性剤、流動調整添加剤、触媒、光開始剤(photoinitiator)および/または光増感剤)を、必要に応じて含み得る。当該技術分野において公知のそのような添加剤はいずれも、適合性の問題を生じることなく使用され得る。
【0044】
本発明の組成物において使用される粒子は、粉体塗料または液体塗料の調合の間のいかなる時点においても添加され得る。例えば、本発明の硬化性粉体塗料組成物は、最初に塗膜形成樹脂、多数の粒子および上記の任意の添加剤を、混合機(例えば、Henschelブレード混合機)で乾式混合すること(dry blending)により調製され得る。混合機は、物質の均質な乾燥混合をもたらすのに十分な時間の間、作動させる。次いで、この混合は、成分を溶融するのに十分ではあるがゲル化させない温度内で作動される、押し出し成形機(例えば、二軸スクリュー共回転押出機)で溶融混合される。溶融混合された硬化性粉体塗料組成物は、典型的に、例えば、15ミクロン〜80ミクロンの平均粒径に粉砕される。当該技術分野において公知の他の方法もまた、使用され得る。
【0045】
あるいは、本粒子を含まない本粉体組成物を、上記の成分を混合し、押し出し成形することにより調製し得る。次いで、これらの粒子を調合物に後添加剤(post−additive)として、例えば、第二押し出し成型プロセスを通じて、または単に粒子を混合組成物に混合することにより(例えば、それらを密閉容器中で一緒に振盪することにより、またはHenschel混合機を使用することにより)添加し得る。後添加粒子を含む組成物は、意外にも、より良い耐疵性および/または耐引掻き性を与えることが見出されたが、これらの粒子は、他の乾燥成分と共に調合物へと組み込まれ得る。したがって、本組成物を調合する様式は、適用および使用者の所望のパラメーターにより当業者によって決定され得る。
【0046】
本発明の塗料組成物は、種々の基材(金属基材、ポリマー基材、木材基材(木材組成物を含む)およびガラス基材を含むが、これらに限定されない)のいずれにも適用され得る。例えば、これらの組成物は、自動車用基材(例えば、フェンダー、ボンネット、ドア、ホイールおよびバンパー)および工業用基材(例えば、家庭用品(洗濯機および乾燥機のパネルおよび蓋、冷蔵庫のドアおよび側板、照明器具、金属製事務用什器を含む)および木材基材(例えば、木製床張り材およびキャビネット)に適用され得る。
【0047】
粉体塗料組成物は、噴霧することにより適用され、金属基材の場合には、静電噴霧することによりまたは流動床の使用により、適用されることが多い。粉体塗料は、一度にまたは数回のパスで適用されて、約1ミル〜10ミル(25マイクロメートル〜250マイクロメートル)、通常は、約2ミル〜4ミル(50マイクロメートル〜100マイクロメートル)の硬化後の厚みを有する塗膜を提供し得る。塗料適用のための他の一般的な方法(例えば、ブラッシング、ディッピングまたはフローイング)もまた、適用され得る。
【0048】
本発明の液体組成物もまた、任意の従来的な方法(例えば、ブラッシング、ディッピング、フローコーティング、ロールコーティング、従来的な噴霧および静電噴霧)により適用され得る。典型的に、液体塗料の塗膜厚は、0.1ミルと5ミルとの間(例えば、0.1ミルと1ミルとの間、または約0.4ミル)の範囲にあり得る。
【0049】
塗料組成物の適用後、コーティングされた基材は、塗料が硬化するのに十分な温度に十分な時間の間、加熱され得る。粉体塗料でコーティングされた金属基材は、典型的に、250°F〜500°F(121.1℃〜260.0℃)の範囲の温度で1分〜60分の間、または300°F〜400°F(148.9℃〜204.4℃)で15分〜30分の間、硬化される。
【0050】
液体調合物(例えば、ポリイソシアネート硬化剤またはポリ無水物硬化剤を用いた液体調合物)は、周囲温度にて硬化され得、硬化を促進するために高温で硬化され得る。一例としては、下向き通風ブースにおける約40℃〜60℃での強制空気乾燥が挙げられ、これは、自動車再仕上げ工業において一般的である。周囲温度硬化性組成物は、通常、反応性官能基を含むポリシロキサンから硬化剤を分離させておく2液系(two package system)として調製される。これらのパッケージは、適用直前に合わされる。
【0051】
熱硬化性液体組成物(例えば、ブロック化イソシアネート、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ポリエポキシドまたはポリ酸硬化剤を使用した熱硬化性液体組成物)が、1液系として調製され得る。典型的に、これらの組成物は、1分間〜30分間、250°F〜450°F(121℃〜232℃)の範囲の温度にて高温で硬化され得、この温度は、主として、塗料組成物成分の硬化機構ならびに使用される基材の種類に依存する。滞留時間(すなわち、コーティングされた基材が硬化のために高温に曝露される時間)は、使用される硬化温度ならびに適用される塗料組成物の未乾燥塗膜厚に依存する。例えば、コーティングされた自動車用のエラストマー部品は、低い硬化温度で長い滞留時間(例えば、250°F(121℃)で30分)を必要とし、他方で、コーティングされたアルミニウム飲料容器は、非常に高い硬化温度で非常に短い滞留時間(例えば、375°F(191℃)で1分)を必要とする。
【0052】
前述したように、本発明の液体塗料組成物は、放射線硬化性塗料組成物、すなわち、電離放射線および/または化学線により硬化し得る組成物を含み得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「電離放射線」は、高エネルギー放射線および/またはこの電子または他の粒子エネルギーの中性子またはγ線への転換から生じる二次エネルギーを意味し、上記エネルギーは、少なくとも30,000電子ボルトであり、50,000電子ボルト〜300,000電子ボルトになり得る。様々な種類の電離放射線(例えば、X線、γ線およびβ線)がこの目的に適しているが、高エネルギー電子を加速させることにより、または電子ビームデバイスにより生成される放射線もまた使用され得る。本発明に従う硬化組成物のラドで表される電離放射線の量は、塗料調合物の成分、基材上の塗料の厚み、塗料組成物の温度などといった要因に基づき変化し得る。
【0054】
「化学線」は、紫外(「UV」)線範囲から可視光線範囲を通じて赤外線範囲に至る範囲の電磁波の波長を有する光線である。本発明の硬化塗料組成物に使用され得る化学線は、一般的に、例えば、150ナノメートル〜2,000ナノメートルの範囲にある電磁波の波長を有する。紫外線源の適切な非限定的な例としては、水銀アーク、炭素アーク、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、旋回流(swirl−flow)プラズマアークおよび紫外線発光ダイオードが挙げられ得る。
【0055】
本発明の放射線硬化性組成物は、上記で検討された多数の粒子に加え、当該技術分野で認識されている放射線硬化性反応性官能基を有するあらゆる種々の物質を含み得る。そのような放射線硬化性官能基としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリレート(すなわち、メタクリレートまたはアクリレート)エポキシ基、マレイミド基および/またはフマレート基が挙げられ得る。そのような放射線硬化性官能基含有物質としては、ウレタン、アクリル、メラミン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどが挙げられ得る。本発明の一実施形態において、放射線硬化性組成物は、アクリル化ウレタン(acrylated urethane)を含む。
【0056】
そのような組成物はまた、当該技術分野において一般的に知られているような、光重合開始剤および/または増感剤が挙げられ得る。光開始剤の例としては、イソブチルベンゾインエーテル、ブチルベンゾインエーテルのブチル異性体の混合物、∝,∝−ジエトキシアセトフェノン、および∝,∝−ジメトキシ−∝−フェニルアセトフェノンが挙げられる。光増感剤の例としては、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサントンおよびホスフィンオキシドが挙げられる。UV安定剤(ベンゾトリアゾール、ヒドロフェニルトリアジン(hydrophenyl triazine)およびヒンダードアミン(hindered amine)光安定剤(例えば、Ciba Specialty ChemicalsよりTINUVINの系統で市販されているこれらのUV安定剤を含む)もまた加えられ得る。
【0057】
当該技術分野において一般的に用いられている他の添加剤もまた、そのような組成物に含まれ得る。そのような添加剤としては、有機溶媒(例えば、エステル(例えば、n−ブチルアセテート、エチルアセテートおよびイソブチルアセテート);エーテルアルコール(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート);ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルn−ブチルケトンおよびメチルイソブチルケトン);2個〜4個の炭素原子を含む低級アルカノール(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール);および芳香族炭化水素(例えば、キシレン、トルエンおよびナフサ)が挙げられ得る。他の添加剤(レオロジー改質剤、流動添加剤、脱気剤(deaerator)、光沢調整添加剤、希釈剤などを含む)もまた、望ましい場合に使用され得る。
【0058】
本発明の塗料組成物において使用される樹脂結合剤は、熱硬化性結合剤または放射線硬化性結合剤が存在する樹脂結合剤に限定されないことが理解される。例えば、湿気硬化ウレタン、自然乾燥アルキド、触媒アルキド、周囲温度硬化エポキシ−アミンおよびヒドロキシ−イソシアネート、熱硬化性エポキシ−酸、ヒドロキシル−アミノプラストならびに他のアミノプラスト硬化化学的物質、ラッカー(例えば、アクリルまたはポリエステルラッカー)または分散剤(dispersion)は全て、本発明に従って使用され得る。これらの結合剤は、有機溶媒ベースまたは水性ベースであり得る。
【0059】
本発明の塗料組成物は、透明単一塗料(monocoat)またはカラー−クリア混合塗料(例えば、自動車への適用のためのカラー−クリア混合塗料)中のクリアコートとして特に有用である。また、着色形態の本発明の組成物を基材に直接適用し、着色塗料層を形成し得る。着色塗料は、後の上塗り塗料の適用のための下塗り剤の形態であり得、または有色の上塗り塗料であり得る。下塗り塗料として使用される場合、0.4ミル〜4.0ミルの塗膜厚が典型的である。着色上塗り塗料として使用される場合、約0.5ミル〜4.0ミルの塗料厚が普通であり、クリアコートとして使用される場合、約1.5ミル〜4.0ミルの塗料厚が使用され得る。
【0060】
したがって、本発明はさらに、1種以上の本組成物でコーティングした基材に関する。これらの基材および組成物、ならびにこれらを適用する様式は、上記の通りである。
【0061】
木製床張り材の場合には、設置前または設置後のいずれかに、多数の異なる層がこの床張り材に適用され得ることが理解される;これらの層としては、例えば、ステイン塗料、耐摩耗性シーラー、接着促進剤および上塗り塗料が挙げられ得る。本発明の塗料組成物(特に液体組成物)はいずれも、これらの層のいずれをも含み得る。したがって、本発明はさらに、少なくとも1種の塗料層を含む木材床張り材に関し、この塗料層は、前記した本発明のいずれの塗料組成物からも形成される。典型的に、そのような木製床張り材は、2層以上の塗料層を有する。
【0062】
本発明はさらに、複層混合塗料組成物に関し、この塗料組成物は、塗膜形成組成物から堆積される下塗り塗料層と少なくとも一部の下塗り塗料層の上に適用される上塗り塗料層とを含み、この上塗り塗料は、本発明のいずれの塗料組成物からも堆積される。この下塗り塗料層は、0.5ミル〜4ミル(12.5マイクロメートル〜100マイクロメートル)の範囲にある硬化塗膜厚を有し得、一方、上塗り硬化塗膜厚は、10ミル(250マイクロメートル)までであり得る。この下塗り塗料層は、上塗り塗料の適用の前に硬化され得、または2層が一緒に硬化され得る。一例を挙げると、この下塗り塗料層は、着色塗膜形成組成物から堆積され得るが、本組成物から形成される上塗り塗料層は、実質的に透明である。これが、上記のカラープラスクリア系であり、自動車への適用において頻繁に使用される。
【0063】
さらに別の実施形態において、本発明は、コーティングされた基材の耐疵性および/または耐引掻き性を改善するための方法に関し、この方法は、本発明の任意の本組成物を、少なくとも基材の一部分に適用する工程を包含する。上記の厚みへの適用は、当該技術分野において公知の任意の手段により得る。
【0064】
本発明に従って形成される塗料は、粒子が存在しない組成物と比較して、優れた外観特性、耐摩耗特性および/または耐引掻き特性および耐疵特性を有する。本発明の組成物はまた、UV劣化に対する格別な抵抗性を有する塗料を形成するために使用され得る。したがって、本発明はさらに、粒子を分散させた硬化塗料に関し、この塗料は、例えば、上記の任意の粉体塗料組成物または液体塗料組成物から形成され、500、1000および1500時間のQUV曝露後、10パーセント未満(例えば、5パーセント未満または4パーセント未満)の光沢を減少させる。
【実施例】
【0065】
(実施例)
以下に示す実施例1〜8の各々は、エポキシ−酸粉体クリアコート組成物の調製を記載している。実施例2〜8の各々は、多数の本発明に従う粒子を含む組成物の調製を記載しており、一方、比較例1は、粒子を含まない類似の組成物の調製を記載している。列挙されている量は、重量による割合を示している。
【0066】
【表2】

グリシダルメタクリレート(glycidal methacrylate)50%/ブチルメタクリレート10%/スチレン5%/メチルメタクリレート35%を含むアクリル共重合体。
ドデカン二酸。
WAX C MICRO POWDER、脂肪酸アミド(エチレンビス−ステアロイルアミド)、Hoechst−Celaneseより市販されている。
TINUVIN 144(2−tert−ブチル−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)[ビス(メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)]ジプロピオネート)、Ciba−Geigy Corp.から入手可能な紫外線安定剤。
TINUVIN 405(2−[4((2−ヒドロキシ−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル)−オキシ]−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン)、Ciba−Geigy Corp.から入手可能な紫外線安定剤。
HCA−1、Sanko Chemical Corp.より市販されている抗黄変剤。
Akzo−Nobel Corp.から入手可能なメチルジココアミン(methyl dicocoamine)。
アクリル流動剤、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(100%固体)の存在下で、キシレンおよびトルエン中の2−エチルヘキシルアクリレート81.2%、ヒドロキシエチルアクリレート11.8%、およびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート7%の溶液重合により調製される。
アルミニウム酸化物プレートリット(platelet)、平均粒径 3ミクロン、MicroAbrasives Corporationから入手可能。
10緑色炭化ケイ素粉砕材、平均粒径6.5ミクロン、MicroAbrasives Corporationから入手可能。
11緑色炭化ケイ素粉砕材、平均粒径4ミクロン、MicroAbrasives Corporationから入手可能。
12ダイヤモンド粉体、平均粒径12ミクロン、Lands Superabrasivesから入手可能。
【0067】
これらの成分を、60秒間〜90秒間、Henschel Blenderで混合した。次いで、これらの混合物を、スクリュー回転数450RPM、押出し温度100℃〜125℃にて、Werner & Pfleider 共回転二軸スクリュー押出機を通して押し出し成型した。次いで、この押し出し成形された物質を、ACM Grinder(Micron Powder Systems,Summit,New JerseyによるAir Classifying Mill)を用いて、粒径17ミクロン〜27ミクロンへと粉砕して最終粉体組成物を生成した。次いで、粒子を、それぞれの最終粉体組成物に後添加した。完成品の粉体を、下記のように、試験板上に静電噴霧し、塗料特性について評価した。
【0068】
(試験板の調製)
試験板をPPG Industries,Inc.よりED6061として市販されている電着可能下塗り剤でコーティングした。実施例1〜8の各粉体塗料組成物を、塗料を硬化させるために293°F(145℃)の温度にて30分間加熱し、塗膜厚2.3ミル〜2.8ミル(58ミクロン〜71ミクロン)にて適用した。次いで、下記のように、これらの試験板を耐疵性について試験した。
【0069】
最初の20°光沢/濁り測定を、Byk Gardner Gloss Haze Meterを用いて行った。耐疵性試験を、Atlas Mar Testerを使用して、以下のとおりに実施した。フェルト布により裏打ちされている3Mから入手可能な2μ研磨紙の2”×2”片を、測定器のアーム上のアクリルフィンガーに固定し、10往復の摩擦を2セットずつ、各試験板に対して実施した。次いで、各試験板を冷たい水道水で洗浄し、乾燥させた。耐疵性は、この表面を疵試験機により疵つけた後に保持されている20°光沢の百分比として表される。耐疵性を次のとおり測定した:耐疵性=(疵つけ後の光沢÷元の光沢)×100。結果を以下の表1に示す。
【0070】
【表3】

(実施例9)
この実施例は、3種の放射線硬化性液体塗料組成物の調製について記載する。実施例9Aは、アルミナを含有する放射線硬化性塗料組成物の調製について記載している。実施例9Bおよび9Cは、それぞれシリカおよび炭化ケイ素をさらに含有する類似の組成物の調製について記載している。放射線硬化性組成物を、以下に列挙された成分を混合することにより調製した。列挙されている量は、重量による割合を示している。
【0071】
【表4】

脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー樹脂。
イソデシルアクリレート、Sartomer CompanyからのSR395。
ヘキサンジオールジアクリレート、Sartomer CompanyからのSR238。
n−ビニル−2−ピロリドン、ISP Technologies Inc.からのV−ピロール/RC。
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、Sartomer CompanyからのSR355。
トリプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer CompanyからのSR306。
Eastman Chemicalからのヒドロキノンモノメチルエーテル。
Micro Abrasives CorporationからのWCA3Sアルミナプレートリットで、平均粒径は4ミクロン、モース硬度は9。
Clariant AdditivesからのCERIDUST 5091 wax。10Cognisから入手可能なPERENOL F−60界面活性剤。
11Byk−Chemie USAからのDISPERBYK 110分散添加剤。
12Cognis Coatings and Inksからのベンゾフェノン。
13Ciba Specialty Chemicals AdditivesからのDAROCUR 1173。
14Tego Chemie Service GMBHからのAIREX 920添加剤。
【0072】
示された成分および量(重量による割合)を用い、これらの成分をコールズブレード攪拌(cowles blade agitation)を使用して均一に分散させ、上記実施例9Aとして特定される放射線硬化性液体クリアコート組成物を調製した。以下の実施例9Bおよび9Cを、100gの実施例9Aに、示された量の粒子を加え、そこでこれらの粒子を分散させることにより調製した。
【0073】
各々の塗料組成物を、以下の通りに調製したカエデ材のベニヤ板に適用した。C836E35ガンストックUVステイン(gunstock UV stain)(PPG Industries,Inc.より市販されている)を、このベニヤ板上に塗り広げ;過剰なステインを除去した。このステインを、50℃〜60℃の温度にて約5分間、急速に気化させて溶媒を除去し、Western Quartz Products,Inc.から入手可能な80W/cm中圧水銀UV硬化灯(製品番号25−20008−E)を使用して、300mJ/cmへの曝露により硬化させた。次いで、約15ミクロンのR667Z74UV塗料(PPG Industries,Inc.より市販されている)を、Duboisロールコーターを使用して適用した。この塗料を、上記の灯を使用して、325mJ/cmへの曝露により硬化させた。この塗料表面を3Mの赤色Scotchbriteパッドを用いて研磨(scuff sanded)した。約20ミクロンの実施例の塗料を、Duboisロールコーターを使用して適用し、これらの塗料を、上記の灯を使用して、850mJ/cmへの曝露により硬化させた。
【0074】
各コーティングされた基材に対し、初めの60°の光沢を、Byk−GardenerInstrument Company,Inc.から入手可能なマイクロTrigloss計器を使用して測定した。耐引掻き性を、錘分量が1ポンドであり、3Mから入手可能な80グリットの黒色乾湿両用研磨紙をスクラブ面として取り付けた、Gardner研磨試験機を使用して実施した。耐引掻き性を、100サイクル実施した。次いで、最終光沢測定を実施した。光沢保持率を、最初の光沢により最終光沢を除し、100を乗じたものとして決定した。結果を、以下の表2に示す。
【0075】
【表5】

OK412、Degussaからの蝋で処理したシリカ。平均粒径は4ミクロンで、モース硬度は6.0。
Micro Abrasives CorporationからのSIC400緑色炭化ケイ素粉砕材。平均粒径は17ミクロンで、モース硬度は9.3。
【0076】
表2に示されたデータは、シリカ(モース硬度6.0)などの粒子を添加した、アルミナ(モース硬度9.0)を含有する液体放射線硬化性塗料の耐疵性について何らかの改善を示しており、非常に硬い粒子(例えば、緑色炭化ケイ素粉砕材(モース硬度9.3))を添加したものは、耐疵性について顕著な改善を示した。
【0077】
本発明の特定の実施形態の例示を目的として上記したが、本発明の詳細の数多くの変更が、添付された特許請求の範囲に規定されるとおりの発明から逸脱することなく成され得ることが当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2011−174086(P2011−174086A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−102447(P2011−102447)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2008−509037(P2008−509037)の分割
【原出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】