説明

改変された抗IL−13抗体、組成物、方法、及び使用

本発明は、ヒトインターロイキン−13(IL−13)タンパク質又はその断片に対して免疫特異的である改変抗体、並びに、治療指示を含むその製造及び使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、参照することにより本明細書に援用される2008年9月16日出願の米国出願第61/097,232号、及び2008年8月20日出願の米国
出願第61/090,472号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ヒトインターロイキン−13(IL−13)タンパク質又はその断片に対して免疫特異的である改変抗体、並びに治療指標(therapeutic indications)を含むその作製及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
IL−13は、IL−4、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL−2、及びマクロファージコロニー刺激因子を含む成長ホルモン様サイトカインのファミリーに属する、4つのα−へリックスを含む球状タンパク質である。IL−13は、52kDaのサブユニットであるIL−13Rα1と140kDaのサブユニットであるp140とで構成されるヘテロ二量体受容体に結合し、STAT6を活性化させる。第2のIL−13受容体であるRa2も、存在することが知られている。Ra1受容体は、IL−13と結合した際、シグナル伝達カスケードの開始に関与する。Ra2受容体は、Ra1よりも高い親和性でIL−13と結合するが、その機能は未だ決定されていない。
【0004】
喘息反応を経験する患者は、気道の炎症を引き起こす活性化CD4+Th2リンパ球が増加している。活性化Th2リンパ球は、気道の過敏性に関連する組織の損傷を引き起こす炎症を刺激するサイトカイン(IL−4、IL−5、IL−9、IL−10、及びIL−13)を分泌する。IL−13は、マウスモデルにおいて喘息の主な要因であることが示されており、ヒトIL−13の一塩基多型変異体であるR130Q(Graves,等、2000 J Allergy Clin Immunol 105:506〜13)は、喘息発現の重要な危険因子であることが示されている(Heinzmann等、2000 Hum.Mol.Genet.9:549〜559;Am.J.Respir.;Howard等、2001 Cell Mol.Biol.25:377〜384;国際公開第0123410号)。マウスモデルにおいて、抗IL−13中和Mabで処理すると、刺激された動物の喘息反応が阻害された。したがって、中和IL−13は、患者の喘息及び気道狭窄の治療において有用であり得るという証拠が示された。
【0005】
したがって、IL−13介在疾患を軽減又は除去する治療に使用するためのヒトIL−13に対して特異的なヒト抗体を提供し、また既知の抗体又はその断片に対する改良を行う必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載及び請求される主題は、喘息、及び肺線維症、心血管病変、癌、皮膚病変、及び線維病変等が挙げられるが、これらに限定されない、IL−13に関連する病態又は病状に苦しんでいる被験体を治療するのに有用である抗IL−13抗体、及び組成物に関する。本発明は、ヒトIL−13受容体アルファ1に結合するヒトIL−13の野生型又は自然変異体の阻害、ヒトIL−13受容体アルファ2に結合するヒトIL−13の野生型又は自然変異体の阻害、ヒト腫瘍細胞のヒトIL−13依存性増殖の阻止又は抑制、ヒトIL−13依存性IgE産生の阻害、組織の好酸球浸潤の低減が挙げられるが、これらに限定されない、インビトロ、インビボ、又はインサイチュにおけるIL−13の生物活性を遮断することができる抗IL−13モノクローナル抗体であって、ヒトIL−13上に特異的結合部位を有する抗体を提供する。宿主細胞において発現するための核酸をコードされ得る例示的な抗IL−13モノクローナル抗体のアミノ酸配列が提供される。
【0007】
選択された結合断片から構築される結合ドメインを有する抗体又は抗体断片、並びに配列番号27及び28に記載のアミノ酸配列を含む指定の変異体が、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、指定の組成物、及び配列番号2〜29から選択される免疫グロブリンの可変ドメインにおける抗原結合に関与する残基を含むかかる組成物の調製に関する教示を提供する。これら結合ドメインは、所望の特性を有し、且つ特定のIL−13関連病態の治療に必要な生物活性を調節できる。1つの態様では、本発明は、配列番号28に記載の重鎖可変領域、及び式(I)に係る軽鎖CDR3(L−CDR3)を含む単離抗体である:
Q−Q−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−P−Y−T(配列番号29)(I)
(式中、Xaaは、His、Gln、又はProであってもよく;
Xaaは、Asn、Asp、Ser、Leu、Pro、Ile、Phe、Glu、又はValであってもよく;
Xaaは、Glu、Asp、Gly、Ser、Ile、Tyr、Tryp、Asn、His、Val、Met、Arg、Leu、Phe、Proであってもよく、又は存在しなくてもよく;及び
Xaaは、Tyr、Gly、Ser、Ala、Val、Phe、Thr、Gluであってもよく、又は存在しなくてもよい)。
【0008】
特定の実施形態では、当該抗体は、配列番号25及び26に記載の結合ドメインを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、配列番号25及び26を含む改変抗IL−13抗体M1295、並びにC863と命名されたマウス−ヒトキメラ抗体(配列番号2及び3を含む)の結合により規定される、ヒト野生型IL−13(配列番号1)上の共通エピトープに結合する抗体に関する。これらの抗体により認識されるエピトープとしては、IL−13の8残基、へリックスAの3残基(Arg10、Ile13、Glu14)、及びへリックスDの5残基(Leu100、Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)が挙げられ、この場合原子間距離は4.0Åを超えない。接触数に基づくと、Arg10及びArg107がエピトープの重要な残基であると思われる。
【0010】
更なる実施形態では、ワクチンの成分として抗原エピトープが提供される。配列番号1の10、13、14、100、103、及び106〜108残基を含む上記エピトープは、本発明の抗体により認識され、宿主を能動免疫してIL−13に対する抗体産生を誘発するのに有用である。産生される抗体は、IL−13生物活性に関連する病態を治療又は予防することができる。
【0011】
別の実施形態は、治療的に又は予防的に有効な量の本発明の抗体又は抗体の組み合わせを、かかる治療を必要としている被験体に投与することによる、IL−13生物活性に関連する病態の治療又は予防に関する。1つの態様では、抗IL−13抗体は、喘息であると診断された患者に投与される。別の態様では、抗IL−13抗体は、アトピー性皮膚炎であると診断された患者に投与される。
【0012】
本発明は、1つの態様では、本明細書に記載される抗IL−13抗体の配列、ドメイン、一部、又は変異体をコードする単離核酸分子を提供する。更に、抗IL−13抗体をコードする核酸配列にハイブリダイズする又は前記配列に相補的である核酸配列が意図される。本発明は更に、前記抗IL−13抗体核酸分子を含む組換えベクター、かかる核酸及び/又は組換えベクターを含有する宿主細胞、並びにかかる抗体核酸、ベクター及び/又は宿主細胞の作製及び/又は使用方法をも提供する。本発明はまた、製薬上許容できる組成物として、好適な担体溶液又は剤を含む組成物中の、患者に投与することができる本IL−13結合抗体のコード配列、ドメイン、一部、又は変異体を提供する。
【0013】
本発明はまた、治療的に又は予防的に有効な量の抗体を投与することによる、IL−13生物活性に関連する病態の治療又は予防に用いるための、本明細書に記載される抗体の生成、精製、及び包装方法に関する。本発明はまた、抗IL−13抗体が検出可能且つ回収可能な量で発現する条件下で、本明細書に記載される宿主細胞を培養する工程を含む、宿主細胞中で抗IL−13抗体を発現させる方法を提供する。
【0014】
要約すると、本明細書に開示及び請求される主題は、以下の通りである。
【0015】
IL−13(配列番号1)のエピトープに結合する単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記エピトープが、配列番号1の10の位置のアルギニン及び107の位置のアルギニンを含み、且つ、配列番号1の6の位置のセリン、13の位置のイソロイシン、14の位置のグルタミン酸、100の位置のロイシン、103の位置のリジン、106の位置のフェニルアラニン、及び108の位置のグルタミン酸からなる群から選択される残基を更に含んでもよい、前記単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片;
軽鎖可変領域を含むパラトープを含み、更にa)配列番号1の10の位置のアルギニンでIL−13と相互作用し、且つb)配列番号1の14の位置のグルタミン酸と結合を形成するチロシン残基を含む単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。前記パラトープは、前記軽鎖可変領域にヒスチジン残基及びアスパラギン残基を更に含んでもよく、またチロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、バリン、及びアルギニンからなる群から選択されるパラトープ接触残基を含む重鎖可変領域を更に含んでもよい。パラトープの軽鎖可変領域は、配列番号2を含んでもよく、前記チロシンは、配列番号2の32の位置に存在し、前記重鎖可変領域は、配列番号3を含み、前記接触残基は、32の位置にチロシン、54の位置にトリプトファン、及び104の位置にチロシンを含む;
軽鎖可変領域を含むパラトープを含み、更にa)配列番号1の10の位置のアルギニンでIL−13と相互作用し、且つb)配列番号1の6の位置のセリンと結合を形成するアスパラギン酸残基を含む単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記パラトープが、前記軽鎖可変領域上にチロシン残基及びヒスチジン残基を更に含む、前記単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。前記パラトープは、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、バリン、及びアルギニンからなる群から選択されるパラトープ接触残基を含む重鎖可変領域を更に含んでもよい。パラトープの軽鎖可変領域は、配列番号25を含んでもよく、前記アスパラギン酸は、配列番号25の92の位置に存在し、前記重鎖可変領域は、配列番号26を含み、前記接触残基は、32の位置にチロシン、54の位置にトリプトファン、及び104の位置にチロシンを含んでもよい;
C863、HFAL62、及びM1295からなる群から選択されるモノクローナル抗体と、IL−13のエピトープへの結合を競合する、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。前記モノクローナル抗体は、配列番号29に記載の軽鎖CDR3(L−CDR3)を含み、配列番号29に記載のL−CDR3は、式(I)に示すように更に定義される:
式(I)−−Q−Q−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−P−Y−T(配列番号29)(式中、Xaaは、His、Gln、又はProであってもよく;Xaaは、Asn、Asp、Ser、Leu、Pro、Ile、Phe、Glu、又はValであってもよく;Xaaは、Glu、Asp、Gly、Ser、Ile、Tyr、Tryp、Asn、His、Val、Met、Arg、Leu、Phe、Proであってもよく、又は存在しなくてもよく;及びXaaは、Tyr、Gly、Ser、Ala、Val、Phe、Thr、Gluであってもよく、又は存在しなくてもよい)。モノクローナル抗体は、配列番号28に記載の重鎖可変領域及び/又は配列番号27に記載の軽鎖可変領域を含んでもよい;
配列番号9に記載の可変軽鎖及びその変異体、並びに配列番号20に記載の可変重鎖及びその変異体を含む単離モノクローナル抗体。配列番号9に記載の可変軽鎖の変異体は、91の位置のヒスチジン、92の位置のアスパラギン、93の位置グルタミン酸、及び94の位置のチロシンからなる群から選択される残基に変化を含む。前記残基は、出願時の出願の請求項18の表に反映されているように、変化してもよく、又は欠失してもよい。配列番号20に記載の可変重鎖の変異体は、31の位置のスレオニン、34の位置のメチオニン、100の位置のメチオニン、及び106の位置のバリンからなる群から選択される残基に変化を含む。前記残基は、出願時の出願の請求項20の表に反映されているように、変化又は欠失する;
配列番号25に記載の軽鎖可変領域及び配列番号26に記載の重鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片。前記抗体は、対応する軽鎖及び重鎖免疫グロブリン定常領域、並びに重鎖ヒンジ領域を更に含む。前記抗体、及び本明細書に記載される任意の他の抗体は、医薬組成物に調製され得る。前記単離抗体は、配列番号25及び26に記載の配列変異体を含んでもよく、かかる変異体は、IL−13(配列番号1)のエピトープに結合する能力を保持し、前記エピトープは、配列番号1の10の位置にアルギニン及び107の位置にアルギニンを含み、前記エピトープは、配列番号1の6の位置のセリン、13の位置のイソロイシン、14の位置のグルタミン酸、100の位置のロイシン、103の位置のリジン、106の位置のフェニルアラニン、及び108の位置のグルタミン酸からなる群から選択される残基を更に含んでもよい;
ヒト化重鎖可変領域及びヒト化軽鎖可変領域を含む単離ヒト化組換え抗体であって、前記ヒト化重鎖可変領域が、配列番号3の重鎖の3つの相補性決定領域(CDR)及びヒト受容器抗体(acceptor antibody)重鎖のヒトフレームワーク領域を含み、前記ヒト化軽鎖可変領域が、配列番号2の軽鎖の3つの相補性決定領域及びヒト受容器抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域を含み;前記ヒト化抗体が、STAT6シグナル伝達により測定したとき、THP−1細胞におけるIL−13のIL−13受容体への結合を低減する、前記単離ヒト化組換え抗体。前記抗体は、(a)野生型IL−13誘導性Stat−6リン酸化により測定したとき、ヒトIL−13受容体アルファ1又は好適な動物のIL−13受容体に対するヒト組換え野生型ヒトIL−13の結合を阻害する、(b)ヒトIL−13受容体アルファ2又は好適な動物のIL−13受容体に対するヒト組換え野生型ヒトIL−13の結合を阻害する、(c)生理食塩水処理されたオボアルブミンン感作(ova-sensitized)動物に比べて、抗体で処理されたラット群の好酸球、リンパ球、マクロファージ、及び好中球細胞数を減少させる、及び(d)非特異的対照剤と比べて、化学的にアレルギー誘発された(challenged)動物における気道抵抗性を低下させる、からなる群から選択されるIL−13ポリペプチドの活性を実質的に調節する。前記抗体は、配列番号3、20、及び26からなる群から選択される重鎖可変領域、並びに配列番号2、9、14、及び26からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDRを含んでもよい;
表面プラズモン共鳴(Biacore)により測定したとき、250pM(0.250×10−9M)未満のKを有するIL−13変異体R110Qに結合し、且つSTAT6シグナル伝達により測定したとき、THP−1細胞におけるIL−13のIL−13R2アルファ1への結合を阻止する、ヒトIL−13に免疫特異的な抗原結合抗体断片であって、前記抗体が、Arg10、Ile13、Glu14を含むへリックスAの残基、及びLys103、Phe106、Arg107、Glu108を含むへリックスDの残基において、ヒトIL−13と接触することを示され得、この場合の原子間距離が4.0Åを超えない、前記抗原結合抗体断片;
請求項1に記載のIL−13抗体又は本明細書に開示及び請求される抗体のいずれかをコードする単離核酸、並びにかかる核酸を含むベクター、宿主細胞;
請求項1に記載のIL−13抗体又は本明細書に記載される任意の他の抗体を含む医薬組成物を含む組成物;
有効量(0.001〜50mg/キログラム)の本明細書に記載される抗体を含む組成物を接触させる又は投与する工程を含む、細胞、組織、器官、又は動物において、喘息を含むIL−13関連病状を診断又は治療する方法;
へリックスA(Arg10、Ile13、Glu14)の残基、及びへリックスD(Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)の残基を含むIL−13エピトープ、又はその模倣ペプチドを用いる宿主の免疫方法;並びに
IL−13介在疾患を治療する薬剤を製造するための、出願時の請求項1〜22及び24〜30のいずれか一項に記載の抗体を含む医薬組成物、並びに出願時の請求項1〜22及び24〜30のいずれか一項に記載の抗IL−13抗体の使用。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】軽鎖(上方のアラインメント)及び重鎖(下方のアラインメント)について、移植されたマウスC836のCDR(枠内)をヒトに適応させるために用いられるヒトフレームワークライブラリから選択されるV領域のアラインメント。
【図2】L−CDR3変異体(特定の)が重鎖変異体2C02と対になり、ビオチン化IL−13−WTが500pg/mLで用いられた、C863のヒト化変異体を用いて生成された幾つかの高親和性mAbに対するIL−13R−アルファ2競合結合アッセイから得られたデータ。
【図3】好ましい抗体の構造を規定するための異なる番号付与スキームを反映した表。
【発明を実施するための形態】
【0017】

【0018】
詳細な説明
略語
CDR=相補性決定領域;ELISA=酵素結合免疫吸着アッセイ;Fab=抗原結合断片;Hc=抗体の重鎖;HFA=ヒトフレームワーク適応;HV:超可変領域;IL−13変異体IL−13 R130Q(シグナルペプチドのメチオニン#1から番号付け)又はIL−13 R110Qの成熟鎖;Lc=抗体の軽鎖;mAb=モノクローナル抗体;Ra1又はRアルファ1=ヒトIL−13受容体アルファ1;Ra2又はRアルファ2=ヒトIL−13受容体アルファ2;SDRU特異性決定残基の使用;TBST Tweenを含むトリス緩衝生理食塩水。
【0019】

定義
抗体の「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部分」という用語は、本明細書で使用するとき、抗原(例えば、IL−13)に特異的に結合する能力を保持している抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片により行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、Fab断片、VL、VH、CL、及びCH1ドメインを有する一価断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋(1又は複数)により結合している2つのFab断片を含む二価断片;VH及びCH1ドメインを有するFd断片;抗体の単腕のVL及びVHドメインを有するFv断片;VHドメインから成るドメイン抗体又はdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544〜546);並びに単離相補性決定領域(CDR)、特に、CDR3(例えば、参照することにより本明細書に全文が援用される国際公開第03/025019号を参照)が挙げられる。
【0020】
抗原結合領域は、種々の用語を用いて定義される。用語「相補性決定領域(CDR)」は、配列の可変性に基づいている(Wu and Kabat,J.Exp.Med.132:211〜250,1970)。6つのCDRが存在し、3つは可変重鎖、即ちVHに存在し、典型的には、H−CDR1、H−CDR2、及びH−CDR3と呼ばれ、3つのCDRは可変軽鎖、即ちVLに存在し、典型的には、L−CDR1、L−CDR2、及びL−CDR3と呼ばれる(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)。「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」は、Chothia及びLeskにより定義されたように構造が可変性である抗体可変ドメインの領域を指す(Chothia and Lesk,Mol.Biol.196:901〜917,1987)。6つのHVRが存在し、3つはVH(H1、H2、H3)に、3つはVL(L1、L2、L3)に存在する。Chothia及びLeskは、構造的に保存されているHVを「カノニカル構造」と呼ぶ。抗原結合部位を形成する領域を説明する別の方法は、Lefranc(Lefranc等,Developmental & Comparative Immunology 27:55〜77,2003)により提案されており、これは免疫グロブリンのVドメインとT細胞受容体との比較に基づいている(Lefranc等,Developmental & Comparative Immunology 27:55〜77,2003)。抗原結合部位はまた、Almagroによれば「特異性決定残基の使用(SDRU)」に基づいて説明され得(Almagro,Mol.Recognit.17:132〜43,2004)、ここでSDRUとは、抗原接触に直接関与する免疫グロブリンのアミノ酸残基を指す。記載され、請求される例示的抗体の結合領域の様々な定義間の対応を図3に表す。本明細書では、Chothiaの番号付け及び挿入欠失規則を用いた(Al−lazikani et al.,J Mol.Biol.1997)及びCDRs、即ちCDR領域は、抗原結合に対するこれら残基の寄与又は潜在的寄与を考慮したVH又はVLの直鎖状配列内の特定の位置として定義される。
【0021】
更に、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、異なる遺伝子にコードされているが、それらは、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成している単一タンパク質鎖として(単鎖Fv(scFv)としても知られている;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423〜426;及びHuston et al.,1988 Proc.Nat.Acad.Sci.85:5879〜5883を参照)前記VL及びVHを作製することができる合成リンカーにより、組換え技術を用いて接合させることができる。かかる単鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来技術を用いて得られ、前記断片は、インタクトな抗体と同じ方法で利用のためにスクリーニングされる。
【0022】
本明細書で使用するとき、「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、IL−13に特異的に結合する単離抗体は、IL−13以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、IL−13に特異的に結合する単離抗体は、他の種のIL−13分子等の他の抗原に対して交差反応する場合がある。更に、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0023】
用語「モノクローナル抗体」、「Mab」、又は「モノクローナル抗体組成物」は、一般的に、抗体が1種の抗体のみを分泌することができるハイブリドーマの産生物である、又は抗体がトランスフェクトーマにより産生される、又は抗体がハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、若しくはコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから組換え方法により作製及び単離される抗体である、又は抗体がヒト免疫グロブリン遺伝子、配列の全て又は一部の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段により調製、発現、作製、又は単離されるような、抗体又は抗体の組成物であると理解される。
【0024】
用語「ヒト化抗体」、「改変抗体(engineered antibody)」、「ヒトフレームワーク適応」、及び「HFA」は、本明細書で使用するとき、ヒト起源の配列に由来する可変領域フレームワークを有する抗体を含むと意図される。更に、抗体が定常領域を含む場合、定常領域は、典型的には、ヒト配列、例えばヒト生殖系配列又はヒト生殖系配列の自然発生(naturally occurring)(例えば、アロタイプ)若しくは突然変異バージョン等に由来する。本発明のヒト化抗体は、ヒト配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダム若しくは部位特異的突然変異誘発により、又はインビボにおける体細胞突然変異により導入された突然変異)を含んでもよい。
【0025】
用語「インターロイキン−13」又は「IL−13」は、文脈的に他のことを指示している場合を除いて、配列番号1に示す成熟鎖により表されるヒトIL−13である。本発明は、ヒトIL−13上のアミノ酸残基に結合する抗体、特にヒト又はヒト化抗体であって、但し、これら残基がIL−13分子内に三次元エピトープを提示する抗体を提供し、本発明のモノクローナル抗体は、カニクイザル及びアカゲザルのIL−13又は他の種由来の他のIL−13ホモログを含む、非ヒト霊長類のIL−13と交差反応すると予測することができる。本発明の実施形態に係る抗体は、アミノ酸の130の位置のアルギニン残基がグルタミンにより置換されているIL−13の変異体に結合する。
【0026】
本明細書において使用するとき、抗体の「高親和性」という用語は、10−8M以下、より好ましくは10−9M以下、更に好ましくは10−10M以下のKを有する抗体を指す。本明細書で使用されるとき、用語「Kdis」又は「K」又は「K」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を意味すると意図する。「K」は、「オフ速度((koff)」又は「k」とも呼ばれる解離速度(k)と、結合速度の速度(k)、即ち「オン速度(kon)」又は「k」との比である。したがって、Kはk2/k1又はkoff/kon又はk/kに等しく、モル濃度(M)として表わされる。結果として、Kが小さくなるほど、結合は強くなる。したがって、10−6M(又は1μM)のKは、10−9M(又は1nM)に比べて弱い結合を表わす。
【0027】
本明細書で使用するとき、「特異的結合」又は「免疫特異的結合」又は「免疫特異的に結合する」とは、所定の抗原への抗体の結合を指す。典型的には、抗体は、解離定数(K)が10−7M以下で結合し、所定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、又は別の非特異的ポリペプチド)に結合するKに比べ、少なくとも2分の1のKで、既定の抗原に結合する。語句「IL−13を認識する抗体」及び「IL−13に特異的な抗体」は、本明細書においては、「IL−13に免疫特異的に結合する抗体」という用語と互換的に用いられる。
【0028】

抗体−特性
本明細書に開示及び請求される主題は、IL−13に結合し、好ましくは、インビボ、インビトロ、及び/又はインサイチュにおけるIL−13の活性又は結合に干渉する改変抗IL−13抗体に関する。好ましい抗IL−13抗体、その特定の部分、又は変異体はまた、IL−13受容体のシグナル伝達、IL−13受容体の上方又は下方制御、受容体のシグナル伝達、RNA、DNAもしくはタンパク質合成、IgEを含むタンパク質放出、及び主要組織適合性複合体クラスII及びCD23の誘導に関連するIL−13活性等が挙げられるが、これらに限定されないIL−13活性又は機能を調節することができる。
【0029】
改変抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む抗体の任意のクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のサブクラス(アイソタイプ)を含んでもよい。改変抗体が細胞毒性を示すことが望ましいとき、定常ドメインは、通常、補体結合性定常ドメインであり、クラスは、典型的にはIgGである。かかる細胞毒性が望ましくないとき、定常ドメインは、IgGクラスであってもよい。改変抗体は、2種以上のクラス又はアイソタイプの配列を含んでもよい。
【0030】
所望により定常領域に結合している、改変軽鎖及び重鎖可変領域をコードする核酸は、発現ベクターに挿入される。軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクターにクローニングされ得る。抗体のアミノ酸配列をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドを確実に発現させる発現ベクター(1又は複数)における制御配列に機能的に連結される。かかる制御配列としては、シグナル配列、プロモータ、エンハンサ、及び転写終結配列が挙げられる(Queen等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029(1989);国際公開第90/07861号;Co等、J.Immunol.148,1149(1992)を参照、これらは全ての目的のために、参照することにより本明細書に全文が援用される)。遺伝暗号が重複しているために、免疫グロブリン鎖、そのサブドメイン、又は断片をコードするDNAセグメントは、自然発生したヒト核酸配列、かかる配列にハイブリダイズ可能な配列、又は前記抗体のアミノ酸配列をコードする全て人工的に作製された配列の部分から選択される多様な組成であってもよい。
【0031】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、例えば標準的なELISAにより、IL−13に対する結合について試験することができる。
【0032】
1つの態様では、本発明の抗体は、インビトロ、インビボ、又はインサイチュにおけるIL−13介在生物活性を調節(好ましくは阻害)する、IL−13特異的抗体、又はそのIL−13結合断片、その特定の部分、又は変異体を含み、以下の基準のうちの1つ以上を示す:
1.固相アッセイにおいて、ヒト野生型組換え又は精製IL−13(配列番号1)、及び自然発生したIL−13変異体Q110、又はその断片に結合する;
2.(表面プラズモン共鳴により測定したとき)0.25nM未満の、ヒトIL−13野生型又は特異的変異体に対する見かけのKを有する;
3.IL−13Ra1特異的シグナル伝達事象である、野生型IL−13誘導性Stat−6リン酸化により測定したとき、ヒトIL−13受容体アルファ1又は非ヒト動物IL−13受容体に対するヒト組換え野生型ヒトIL−13の結合を阻害する;
4.ヒトIL−13受容体アルファ2又は好適な非ヒト動物IL−13受容体に対するヒト組換え野生型ヒトIL−13の結合を阻害する;
5.へリックスA(Arg10、Ile13、Glu14)の残基、及びへリックスD(Leu100、Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)の5残基でIL−13と接触し、この場合の原子間距離は4.0Åを超えない。
【0033】
6.pH 7.4においてPBSに対して少なくとも10〜100mg/mL、例えば少なくとも10、20、30、40、50、60、70、又は80mg/mL等の溶解度を有する;
7.抗体が存在しない場合のある濃度のIL−13の存在下における増殖に比べて、ヒト腫瘍THP−1細胞の野生型ヒトIL−13依存性増殖の増殖を阻止又は抑制する;
8.抗体の不在下において同濃度のIL−13で刺激された新鮮(fresh)B細胞に比べて、新鮮ヒトB細胞標品におけるヒトIL−13野生型組換えヒトIL−13依存性インビトロIgE産生を阻害する;
9.IL−13依存性バイオアッセイ又は固相結合アッセイで判定され得るように、組換えIL−13と同様の力価を有するネイティブ野生型ヒトIL−13に結合する。
【0034】
本発明の別の態様では、結合ドメインの構造的特徴を用いて、IL−13に対する結合等の本発明の抗体の機能的特性を保持する、構造的に関連したヒト抗IL−13抗体を作製する。より具体的には、本明細書に開示される抗体及び変異体の1つ以上のCDR領域を、既知のヒトフレームワーク領域及びCDRと組換え技術を用いて組み合わせて、本発明の更なる組換え技術により改変されたヒト抗IL−13抗体を作製する。
【0035】
例えば、上記特徴のうちの1つ以上を有するIL−13特異的抗体を作製するために用いられるアプローチの1つは、IL−13のヒトR130Q変異体(配列番号1)の成熟形で免役されたマウスから採取されたリンパ系組織のマウスハイブリドーマを作製することであった。免疫後、マウス抗ヒトIL−13 R130Qモノクローナル抗体が得られ、「C836」と命名された。重鎖及び軽鎖可変領域(それぞれ配列番号2及び3)のC836 CDRを、選択されたヒト重鎖及び軽鎖フレームワークにグラフトし、結合親和性を最適化した。具体的には、ヒトIL−13及び変異体IL−13 R130Qに対するこれらヒトフレームワーク適応(HFA)抗体の結合親和性は、ランダム化及びファージディスプレイFabライブラリからの選択又は部位特異的突然変異誘発による定方向突然変異により高まり、ヒトIL−13及び変異体IL−13 R130Q(「IL−13 R110Q」とも呼ばれる)に対して高い親和性で結合することができる重鎖及び軽鎖のパネルを生じさせる。本明細書に記載される親和性成熟した重鎖及び軽鎖の対合により、約50pMのオーダーであり得る改善されたK値、及びリン酸緩衝生理食塩水に100mg/mLを超す溶解度を有する完全抗体を構築できる。親和性成熟した抗体は、IL−13のIL−13アルファ1(Rα1)及びアルファ2(Rα2)受容体に対する結合をブロックする。抗体は、ヒト胚腎臓293細胞(HEK293)又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類発現系で発現するとき、これらの特性を示す。
【0036】
特に優れた特徴を受け入れる1つのmAbは、Lc6のファージ介在成熟から得られた軽鎖(配列番号9)及びHc2のCDRにおける2つのメチオニンの部位特異的突然変異誘発により得られた重鎖(配列番号20)を含む。このmAbは、M1295と命名され、それぞれLc及びHc可変領域として配列番号25及び26を含み、対応する核酸配列によりコードされ得、また転写及び/又は翻訳に必要な成分を含む宿主細胞又は他の系で発現し得る。
【0037】
本発明は、更に、IL−13介在疾患を治療するために望ましい特性及び生物活性を有する配列番号2〜28のいずれか1つから選択される可変ドメインを含む指定の組成物、及び組成物の調製方法を提供する。上述のように、1つの実施形態では、表2に示すように、C836抗体又は抗原結合断片の3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRが用いられる。組換え抗体は、好ましくは、表2に示すようなC836の重鎖及び軽鎖CDR3領域及びその変異体、及び配列番号27〜29の指定の領域の残基を含む。抗体は、C836のCDR2ドメインとその変異体を更に含み得る。更に、本発明の抗体は、C836のCDR1ドメインとその変異体を含み得る。本発明は、また、好ましいCDRドメインと共に、(1)ヒト重鎖フレームワーク領域、及び(2)ヒト軽鎖フレームワーク領域を含む抗IL−13抗体を提供し得る。ヒトフレームワーク領域は、配列番号4〜28のフレームワーク領域と実質的に同一である。しかし、好ましいCDR領域と組み合わせられた他のフレームワーク領域を用いて、対象の標的(例えば、IL−13)に望ましい特性を有する抗体を得ることもできる。
【0038】
更に、非限定的な例として、抗体若しくは抗原結合部分又は変異体は、配列番号19〜24の重鎖アミノ酸配列、及び/又は配列番号4〜18の軽鎖アミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号28に記載のアミノ酸配列を含む重鎖の一部を含む抗原結合領域を有し得る。別の実施形態では、抗体若しくは抗原結合部分又は変異体は、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖の一部を含む抗原結合領域を有し得る。かかる抗体は、組み換えDNA技術の従来技術を使用して重鎖又は軽鎖配列(1又は複数)をコードする核酸分子を調製及び発現させることによって、又は任意の他の適切な方法を使用することによって、従来技術を使用して、抗体の様々な部分(例えば、CDR、フレームワーク部分等)を化学的に連結させることにより調製し得る。
【0039】
改変抗体のCDR1、2、及び/又は3ドメインは、本明細書に開示される特定のアミノ酸配列(1又は複数)から成り得る。更に、CDR領域は、配列可変性に対して許容性を示し、且つ所望の結合及び生物学的特性を保持し得る。更に、別の実施形態では、改変抗体は、例えば、表2に示すように、C836の1つ以上のCDR、及び配列番号2〜29の特定の位置における変異体と90%、95%、98%、又は99.5%同一であるCDRを含み得る。免疫グロブリンのフレームワーク領域は、それが由来するヒト生殖系可変領域のフレームワーク領域と実質的に同一である、又は同一である。フレームワーク領域中のアミノ酸の多くは、抗体の特異性又は親和性にほとんど又は全く直接的に寄与しない。したがって、フレームワーク残基の多くの同類置換(conservative substitutions)は、得られるヒト化免疫グロブリンの特異性又は親和性を明らかに変化させることなしに、許容性を示し得る。フレームワーク領域は、免疫グロブリンの可変領域の標的(例えば、IL−13)残基に接触する能力を保持しながら、本明細書に記載されるフレームワークの1つ以上と90%、95%、98%、又は99.5%同一であり得る。上記のように産生されたヒト化抗体の可変セグメントは、典型的には、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部に連結する。抗体は、軽鎖及び重鎖定常領域の両方を含む。重鎖定常領域は、通常、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、更にCH4ドメインを含むことがある。
【0040】
IL−13抗体構造(又はその断片)はまた、IL−13又はIL−13変異体と複合体を形成している改変IL−13抗体の三次元結晶構造に従って定義することができる。IL−13抗体のアミノ酸配列が変化している場合もあるが、それでもなお改変IL−13抗体がIL−13エピトープに接触でき、IL−13特異的抗体を中和する三次元結晶構造を保持する。好ましくは、抗体のフレームワーク領域は、免疫グロブリンの可変領域が、へリックスAのIL−13の残基(Arg10、Ile13、Glu14)及びへリックスDの残基(Leu100、Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)に特異的に接触することが可能でありながら(この場合の原子間距離は4.0Åを超えない)、本明細書に記載されるフレームワークの1つ以上と90%、95%、98%、又は99.5%同一であり得る。
【0041】
本明細書に記載されるIL−13抗体は、また、IL−13への結合に関与するパラトープの点で定義することもできる。例えば、アミノ末端残基を「1」として番号付けした配列番号2のL鎖残基Tyr32、His91、Asn92の軽鎖可変領域の残基、及びアミノ末端残基を「1」として番号付けした配列番号3のH鎖Tyr32、Trp54、Trp55、Asp56、Val58、Arg60、Asp103、Tyr104、Asp105の9残基を含むパラトープ領域を有する抗体は、かかる改変抗体の特定の実施形態である。別の特定の実施形態は、L鎖Tyr32、His91、Asp92(配列番号25)の残基及び配列番号3のH鎖Tyr32、Trp54、Trp55、Asp56、Val58、Arg60、Asp103、Tyr104、Asp105の残基を含む抗体である。
【0042】
IL−13への結合に加えて、上記のような改変抗体は、IL−13のIL−13R−アルファ1への結合を阻害する能力、及びSTAT6を介したIL−13R−アルファ1シグナル伝達を阻止し、それによるインビボにおける細胞、組織、及び器官の関連性物活性をブロック又は低減する能力等の、本発明の抗体の他の機能的特性の保持について選択することもできる。
【0043】

抗IL−13抗体の作製及び試験方法
本発明の抗IL−13抗体は、所望により、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術(ハイブリドーマ法)を含む種々の技術により作製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス又はハムスター若しくはマカクザル等の他の適切な宿主動物を本明細書に記載したように免疫して、免疫に用いられるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生する又は産生し得るリンパ球を誘発する。或いは、リンパ球をインビトロで免疫し、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成してもよい。
【0044】
抗IL−13抗体は、また、本明細書中に記載の及び/又は当該技術分野において既知であるヒト抗体レパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、非ヒト霊長類等)の免疫により作製することもできる。ヒト抗IL−13抗体を産生する細胞は、かかる動物から単離し、ハイブリドーマのような上記方法、又は当該技術分野において既知である他の方法等の好適な方法を用いて不死化させることができる。或いは、抗体をコードする配列は、クローニングし、好適なベクターに導入し、また本明細書に教示する方法及び当該技術分野において既知である方法により抗体の発現及び単離のために宿主細胞をトランスフェクトするために用いることができる。
【0045】
生殖系構造にヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を有するトランスジェニックマウスを使用することにより、正常ヒト免疫系が許容性を示すヒト自己抗原を含む種々の標的に対する高親和性完全ヒトモノクローナル抗体が単離される(例えば、Lonberg,N.等、米国特許第5,569,825号、同第6,300,129号;Kucherlapati等、米国特許第6,713,610号を参照)。このようなマウスの内因性免疫グロブリン遺伝子座を破壊又は欠失させ、内因性遺伝子によりコードされた、抗体を産生する動物の能力を除去することができる。更に、Abgenix,Inc.(Fremont,Calif.)及びMedarex(San Jose,Calif.)等の企業が、上記のような技術を用いて選択された抗原に対するヒト抗体を提供する事業を行っている場合もある。
【0046】
非ヒト起源から得られる抗体をヒト化することができる。例えば、ヒト化抗体は、従来技術を用いて(例えば、合成)化学的に接合された、又は遺伝子操作技術を用いて連続ポリペプチドとして調製された(例えば、キメラ抗体のタンパク質部分をコードするDNAを発現させて、連続ポリペプチド鎖を産生することができる)、必須特異性を有するマウス等の非ヒト起源の免疫グロブリンに由来する部分と、ヒト起源の免疫グロブリンに由来する部分とを含み得る(例えば、キメラ免疫グロブリン)。ヒト化免疫グロブリンの別の例は、非ヒト起源の抗体に由来するCDRと、ヒト起源の軽鎖及び/又は重鎖に由来するフレームワーク領域とを含む1つ以上の免疫グロブリン鎖を含むものである(例えば、フレームワークを変化させた又は変化していないCDR移植抗体)。フレームワーク適応プロセスは、国際公開第08052108A2号「Methods For Use In Human−Adapting Monoclonal Antibodies」に本質的に記載されているように、mAb C836と、ヒト生殖系データベース中の配列とのフレームワーク領域の類似性に基づいており、ここでフレームワークの長さは、親可変又はV領域の残基と一致する。全体で、16個の軽鎖(LC)及び6個の重鎖(HC)フレームワークが、C836のCDRと選択されたヒトフレームワークとを組み合わせることによりヒトフレームワーク適応であった。
【0047】
1つの実施形態では、ヒト抗体は、ファージライブラリから選択され、この場合のファージは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含み、前記ライブラリは、例えば、単鎖抗体(scFv)、Fab、又はファージコートタンパク質の1つ以上に融合する対合している又はしていない抗体可変領域を示す幾つかの他の構造等のドメインに結合するヒト抗体を発現する。ヒト抗体を単離するためのかかるファージディスプレイ法は、当該技術分野において確立されており、例えば、米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、及び同第5,571,698号(Ladner等);米国特許第5,427,908号、及び同第5,580,717号(Dower等);米国特許第5,969,108号、及び同第6,172,197号(McCafferty等);並びに米国特許第5,885,793号、同第6,521,404号、同第6,544,731号、同第6,555,313号、同第6,582,915号、及び同第6,593,081号(Griffiths等)を参照。
【0048】
本発明の単離核酸は、当該技術分野においてよく知られているように、(a)組み換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、又はそれらの組み合わせを使用して作製することができる。モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、当該技術分野において既知である方法を用いて配列決定される(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)。ハイブリドーマを作製する場合、かかる細胞は、かかるDNA源として機能し得る。或いは、例えばファージ又はリボソームディスプレイライブラリ等のコード配列及び翻訳産物が連結しているディスプレイ技術を用いると、結合剤及び核酸の選択が簡略化される。ファージ選択後、ファージから抗体をコードする領域を単離し、ヒト抗体を含む抗体全体又は任意の他の所望の抗原結合断片を作製するために用い、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主内で発現させることができる。商業的製造の場合、抗体をコードするDNAを好適な宿主細胞にトランスフェクトし、安定なクローンを単離し、細胞株をマスター細胞バンクに広げる。
【0049】

抗IL−13抗体の使用方法
本発明はまた、当該技術分野において既知のように、又は本明細書に記載されているように、本発明の抗IL−13抗体を用いて、細胞、組織、器官、動物、又は患者におけるIL−13関連疾患を調節又は治療するための方法を提供する。本発明は、線維症、新生物、代謝、免疫又は炎症関連疾患、心血管、感染、皮膚、又は神経疾患が挙げられるが、これらに限定されない、細胞、組織、器官、動物、又は患者におけるIL−13関連疾患の調節又は治療方法を提供する。本明細書に開示される主題は、また、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、及び関連呼吸器疾患、並びに本明細書に記載される他のIL−13介在疾患が挙げられるが、これらに限定されない、IL−13介在疾患の治療のための薬剤の製造における、本明細書に記載される抗IL−13抗体の使用を含む。
【0050】
インターロイキン13(IL−13)は、喘息、アトピー性皮膚炎、及びアレルギー性鼻炎のアトピー性三徴候を示すII型炎症反応に関連する。好酸球性食道炎(EE)、好酸球介在消化器疾患の発症機序におけるIL−13経路と関連づける証拠も出現している。更に、IL−13は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している非アトピー被験体、並びに全身性硬化症(SSc)及び特発性肺線維症(IPF)を含む線維症患者でみられる炎症及び組織再構築の両方に関する非アトピー性疾患の病態に関連している。IL−13を標的とする理論的根拠は、特定の疾患の部分集合におけるアトピー性及び非アトピー性反応が、IL−13により駆動されていること、及びIL−13タンパク質の拮抗作用がかかる反応を抑止することである。
【0051】

呼吸器疾患
本発明は、また、喘息、肺炎、肺膿瘍、吸気又は吸入物質により引き起こされる職業性肺疾患、並びに呼吸不全及び呼吸不全を導く病状又は原因が挙げられるが、これらに限定されない、細胞、組織、器官、動物、又は患者における気管支、肺、又は胸膜疾患を調節又は治療する方法を提供する。本発明は、また、機能亢進性気道疾患;閉塞性線維性細気管支炎;過敏性肺炎(外因性アレルギー性肺胞炎)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及び薬物反応を含む肺の過敏性疾患;成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、グッドパスチャー症候群、慢性閉塞性気道疾患(COPD)、特発性間質性肺疾患、例えば、特発性肺線維症及びサルコイドーシス;剥離性間質性肺炎;急性間質性肺炎;呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患;気質性肺炎を伴う特発性閉塞性細気管支炎;リンパ球性間質性肺炎;ランゲルハンス細胞肉芽腫症;特発性肺ヘモジデリン沈着症;急性気管支炎;肺胞タンパク症;気管支拡張症;無気肺;嚢胞性線維症;及び肺腫瘍;並びに肺栓塞症を調節又は治療する方法を提供する。
【0052】

新生物疾患
本発明はまた、白血病;急性白血病;急性リンパ芽球性白血病(ALL);B細胞、T細胞又はFAB ALL;急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML);慢性リンパ球性白血病(CLL);毛様細胞性白血病;骨髄異形成症候群(MDS);リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、非悪性リンパ腫、バーキットリンパ腫;多発性骨髄腫;原発性疾患又は転移性疾患としての固形腫瘍;カポジ肉腫;直腸結腸癌;前立腺癌;精巣癌;腎細胞癌;中皮腫を含む肺癌;炎症性乳癌を含む乳癌;鼻咽腔癌;悪性組織球増殖症、悪性の腫瘍随伴症候群/高カルシウム血症;腺癌;扁平上皮細胞癌、特に頭頸部;肉腫、悪性黒色腫、特に転移性黒色腫;血管腫;転移性疾患;癌関連骨吸収;癌関連骨痛等が挙げられるが、これらに限定されない、細胞、組織、器官、動物、又は患者における悪性及び新生物疾患を調節又は治療するための方法を提供する。更に、本発明の抗体を用いて、下垂体、甲状腺、副腎、膵臓等の内分泌器官の一次性又は二次性腫瘍を治療し、それにより、また乳汁漏出症、低身長、巨人症及び末端肥大症、尿崩症、糖尿病、アジソン病、クッシング症候群、アルドステロン症、副腎機能障害、褐色細胞腫、酸塩基平衡異常、及びポルフィリン症等の関連疾患を改善、予防、又は回復させることができる。
【0053】

免疫関連及び炎症性疾患
本発明はまた、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身発症若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、胃潰瘍、血清反応陰性関節症、変形性関節症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、虹彩毛様体炎/ぶどう膜炎/視神経炎、特発性肺線維症、全身性脈管炎/ヴェーゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、睾丸炎/精管切除逆転術、アレルギー性/アトピー疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎(湿疹)、食道炎、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、移植、器官移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、敗血症症候群、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、好中球減少熱、尿路性敗血症、髄膜炎球菌血症、外傷/出血、火傷、イオン化放射線曝露、急性膵炎、成人呼吸急迫症候群、関節リウマチ、アルコール性肝炎、慢性炎症病状、クローン病、鎌状赤血球貧血、糖尿病、ネフローゼ、他のアトピー性疾患、過敏性反応、アレルギー性鼻炎、枯草熱、多年性鼻炎、結膜炎、子宮内膜炎、喘息、蕁麻疹、全身性アナフィラキシー、皮膚炎、悪性貧血、溶血性疾患、血小板減少症、いずれかの器官又は組織の移植片拒絶反応、腎臓移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、膵臓移植拒絶反応、肺移植拒絶反応、骨髄移植(BMT)拒絶反応、皮膚同種移植拒絶反応、軟骨移植拒絶反応、骨移植拒絶反応、小腸移植拒絶反応、胎児胸腺移植拒絶反応、副甲状腺移植拒絶反応、いずれかの器官又は組織の異種移植拒絶反応、同種移植拒絶反応、抗受容体過敏反応、グレーヴズ病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、喘息、重症筋無力症、抗体媒介細胞毒症、III型過敏反応、全身性エリテマトーデス、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器巨大症、内分泌障害、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、及び皮膚変化症候群)、抗リン脂質症候群、天疱瘡、硬皮症、混合結合組織病、特発性アジソン病、真性糖尿病、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、脈管炎、MI心臓切開後症候群、IV型過敏性、接触皮膚炎、過敏性肺炎、同種移植拒絶反応、細胞内器官による肉芽腫、代謝性又は特発性薬剤過敏性、ウイルソン病、血色素症、アルファ−1−アンチトリプシン欠乏症、糖尿病網膜症、橋本甲状腺炎、骨粗鬆症、視床下部−下垂体−副腎軸評価、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺炎、脳脊髄炎、カヘキシー、嚢胞性線維症、新生児慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、家族性貧血性(hematophagocytic)リンパ組織球症、皮膚病状、乾癬、脱毛、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、急性腎不全、血液透析、尿毒症、中毒、子癇前症、抗CD3治療、サイトカイン治療、化学治療、放射線治療による炎症(例えば、無力症、貧血、カヘキシー等が挙げられるが、これらに限定されない)、慢性サリチル酸中毒等が挙げられるが、これらに限定されない、細胞、組織、器官、動物、又は患者における免疫関連疾患を調節又は治療する方法を提供する。
【0054】
更に、抗IL−13抗体、その断片又は変異体を用いて、好酸球介在炎症;好酸球介在食道炎、肺、気管支、肺胞、又は喘息関連炎症;例えば、好酸球性胃腸炎、胃又は腸の炎症等の疾患;特にSTAT6介在シグナル伝達が、STAT6介在胃腸炎及び好酸球性食道炎等において好酸球性炎症を引き起こす場合を治療することができる。
【0055】

心血管疾患
本発明は、また、不整脈及び伝導障害;動脈性高血圧;動脈硬化;心臓腫瘍;心筋症;、冠動脈疾患;大動脈炎及び大動脈分枝閉塞;心内膜炎;肺浮腫;心膜炎;及び末梢、動脈、静脈及びリンパ系疾患;並びに弁障害に関連する又はこれらから生じる、細胞、組織、器官、動物、又は患者における心血管疾患を調節又は治療する方法を提供する。本発明はまた、心臓機能停止症候群、心筋梗塞、鬱血性心不全、卒中、虚血性卒中、出血、再狭窄、糖尿病性動脈硬化性疾患(diabetic ateriosclerotic disease)、高血圧、動脈性高血圧、腎血管性高血圧、失神、ショック、心不全、肺性心、原発性肺性高血圧、心不整脈、灌流後症候群、心肺バイパス炎症反応、無秩序又は多源性心房頻拍、規則性狭QRS頻脈、特殊不整脈、心室細動、ヒス束不整脈、房室ブロック、脚ブロック、心筋貧血障害、狭心症、心筋梗塞、心筋症、拡張性鬱血性心筋病、拘束型心筋症、大動脈及び末梢動脈瘤(aneuryisms)、大動脈解離、大動脈の炎症、閉塞性血栓血管炎、機能性末梢動脈障害、レイノー現象及び疾患、先端チアノーゼ、先端紅痛症、静脈血栓症、拡張蛇行静脈、動静脈フィステル、リンパ水腫、浮腫、不安定狭心症、アンギナ、再灌流障害、ポンプ後症候群、虚血−再灌流傷害等が挙げられるが、これらに限定されない細胞、組織、器官、動物、又は患者における心血管疾患を調節又は治療する方法を提供する。
【0056】

神経系疾患
本発明はまた、脳脊髄液及びその循環;頭蓋内新生物及び腫瘍随伴症障害;神経系の感染(細菌、真菌、スピロヘータ、寄生虫、ウイルス、又はプリオン);サルコイドーシス;脳血管疾患;頭蓋脳外傷;多発性硬化症及び同類(allied)脱髄性疾患;神経系の遺伝性及び発達障害;神経系の代謝性障害;アルコール、薬物、毒物及び他の化学物質による神経系の障害;脊髄疾患;並びに末梢神経及び筋肉疾患のうちの1つ以上の障害の原因又は続発症を含む神経系疾患を調節又は治療する方法を提供する。本発明はまた、神経変性疾患;多発性硬化症;偏頭痛;AIDS痴呆合併症;急性横断脊髄炎;錐体外路性及び小脳疾患(例えば、皮質脊髄系の損傷);脳幹神経節の疾患又は小脳疾患;過剰運動性疾患(例えば、ハンチントン舞踏病及び老人性舞踏病);薬剤誘発運動障害(例えばCNSドーパミン受容体を遮断する薬剤により誘発される障害);運動低下性運動障害(例えば、パーキンソン病);進行性核上麻痺;小脳の構造損傷;脊髄小脳変性(例えば、脊髄運動失調);フリードライヒ運動失調;小脳皮質変性;多発性全身変性(メンセル、デジェリン−トーマス、シ−ドラジェ、及びマカド−ジョゼフ);全身性障害(レフサム病、無β−リポタンパク白血症(abetalipoprotemia)、運動失調毛細血管拡張症、及びミトコンドリア多系統性疾患);脱髄核障害(例えば多発性硬化症);急性横断脊髄炎;及び運動単位の障害(例えば神経原性筋肉萎縮症(前角細胞変性、例えば筋萎縮側索硬化症、乳児性脊髄性筋萎縮症及び若年性脊髄性筋萎縮症));アルツハイマー病;ダウン症関連精神障害;びまん性レヴィー体疾患;レヴィー体性老年痴呆;ヴェルニッケ−コルサコフ症候群;慢性アルコール依存症関連精神障害;クロイツフェルト−ヤコブ病等のプリオン性疾患;亜急性硬化性汎脳炎、ハレロルデン−スパッツ病;ボクサー痴呆等が挙げられるが、それらに限定されない細胞、組織、器官、動物、又は患者における神経系疾患を調節又は治療する方法を提供する。かかる方法は、所望により、抗IL−13抗体又は特定部分又は変異体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を、このような調節、治療又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物、又は患者に投与する工程を含んでもよい。
【0057】

抗IL−13抗体のその他の治療的使用
上述の症状及び疾患に加えて、本発明はまた、肝臓線維症(アルコール性肝硬変、ウイルス性肝硬変、自己免疫性肝炎が挙げられるが、これらに限定されない);肺線維症(強皮症、特発性肺線維症が挙げられるが、これらに限定されない)、腎臓線維症(強皮症、糖尿病性腎炎、糸球体腎炎、ループス腎炎を含むがこれらに限定されない);皮膚線維症(強皮症、肥厚性及びケロイド瘢痕、火傷を含むがこれらに限定されない);骨髄線維症;神経線維腫症;線維腫;腸線維症;並びに臓器移植又は移植を含む外科手術の結果としての線維性癒着といったような様々な病因の線維性症状を調節又は治療するための方法をも提供している。
【0058】
本発明は、細胞、組織、器官、動物、又は患者において感染症を調節又は治療するための方法も提供し、急性又は慢性細菌感染、細菌、ウイルス及び真菌感染を含む急性及び慢性寄生又は感染プロセス、HIV感染/HIV神経障害、髄膜炎、肝炎(A、B又はCなど)、敗血症性関節炎、腹膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、大腸菌、溶血性尿毒症症候群、マラリア、デング出血熱、リーシュマニア症、ハンセン病、中毒性ショック症候群、連鎖球菌筋炎、ガス壊疽、ヒト型結核菌、トリ型結核菌、ニューモシスティス・カリニ肺炎、骨盤感染症、精巣炎/精巣上体炎(epidydimitis)、レジオネラ、ライム病、A型インフルエンザ、エプスタイン・バーウイルス、ウイルス関連血球貪食症候群(hemaphagocytic syndrome)、ウイルス性脳炎/無菌性髄膜炎等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明はまた、結膜炎、角膜潰瘍、円錐角膜、角膜実質炎、辺縁潰瘍性角膜炎、フリクテン性結膜炎、表在点状角膜炎、眼瞼炎、ブドウ膜炎、及び加齢性黄斑変性症が挙げられるが、これらに限定されない炎症、感染、又は線維性若しくは狭窄症症状に起因する眼の疾患を調節又は治療する方法を提供する。
【0060】

抗IL−13抗体の投与、抗IL−13抗体を含む組成物、及びキット
本発明の単離モノクローナル抗体は、IL−13のエピトープに結合し、インビトロ及び/又はインビボでIL−13阻害活性を示すが、IL−13のIL−13R1アルファ及びIL−13R2アルファ受容体への結合を阻害することができる抗体又は抗原結合断片は、ヒト及び動物におけるIL−13関連病状を治療又は予防するための治療剤及び予防剤として好適である。
【0061】
一般に、使用は、治療的に又は予防的に有効な量の、本発明の1つ以上のモノクローナル抗体又は抗原結合断片を、IL−13活性が腫瘍成長、及び転移、又は強制呼気体積(FEV)の低下等の喘息症状等の病的続発症を有することが知られている病状を呈している又はこれら病状にかかりやすい被験体に投与することを含む。Fab及びF(ab’)2断片を含む、抗体の任意の活性型を投与することができる。
【0062】
好ましくは、用いられる抗体は、MAbに対する免疫反応が、許容できないほど短い循環半減期を生じさせない、又は被験体において免疫反応を誘導するように、レシピエント種と適合する。好ましくは、投与されるMAbは、被験体のFc受容体への結合、及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)機序の活性化等、幾つかの二次的機能を示す。
【0063】
個体の治療は、治療的に有効な量の本発明の抗体を投与することを含み得る。抗体は、以下に記載のようなキットで提供されてもよい。抗体は、単独で又は別の治療薬、鎮痛剤、若しくは診断薬と混合して投与または用いることができる。IL−13に結合できる抗体若しくはその断片、又はIL−13からレシピエント患者を保護することができる抗体を患者へ提供するときは、投与される剤の投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、総合的な医学的状態、過去の病歴等の要因によって変動する。
【0064】
好適な媒体並びにその製剤及び包装については、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(21 st ed.,Troy,D.ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD(2005)Chapters 40 and 41)に記載されている。更なる薬学的方法を使用して、作用の持続時間を制御することもできる。制御放出製剤は、化合物を複合体化する又は吸収するポリマーの使用を通して達成され得る。制御放出製剤により作用の持続時間を制御するための別の可能な方法は、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)、又はエチレン酢酸ビニルコポリマー等のポリマー物質の粒子に、本発明の化合物を組み込むことである。或いは、これらの剤をポリマー物質に組み込む代わりに、例えば、界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)−マイクロカプセル、又はコロイド状薬物送達系、例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル、又はマクロエマルションに、これら物質を封入することも可能である。
【0065】
一般的に、抗体の全身投与量を投与する場合、約1ng/kg〜100ng/kg、100ng/kg〜500ng/kg、500ng/kg〜1μg/kg、1μg/kg〜100μg/kg、100μg/kg〜500μg/kg、500μg/kg〜1mg/kg、1mg/kg〜50mg/kg、50mg/kg〜100mg/kg、100mg/kg〜500mg/kg(レシピエントの体重)の範囲の投与量の抗体をレシピエントに提供することが望ましいが、より少ない又はより多い投与量を投与してもよい。約1.0mg/kgもの低投与量でも、一部の効果を示すことが予測される場合もある。好ましくは、約5mg/kgが許容可能な投与量であるが、特に治療的使用では、最高約50mg/kgの投与量レベルも好ましい。或いは、1μg〜100μg、1mg〜100mg、又は1gm〜100gmの範囲の量等、患者の体重を基準としない特定の量の抗体を投与してもよい。例えば、関節内(intrarticular)、気管支内、腹腔内、関節包内(intracapsular)、軟骨内(intracartilaginous)、洞内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸膜内、前立腺内、肺臓内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、膣内、直腸、バッカル、舌下、鼻腔内、又は経皮手段等の身体部分又は腔に対して部位特異的投与を行ってもよい。
【0066】
特に液体溶液又は懸濁液の形で非経口(皮下、筋肉、又は静脈内)又はその他のあらゆる投与に使用するため;特にクリーム及び座薬等が挙げられるが、これらに限定されない半固体形態で膣内又は直腸内投与で使用するため;錠剤又はカプセル等が挙げられるが、これらに限定されない形で、バッカル又は舌下投与のため;粉末、点鼻薬、若しくはエアロゾル、又は特定の薬剤等が挙げられるが、これらに限定されない形で経鼻的に;又は皮膚構造を修飾するか若しくは経皮パッチ内の薬物濃度を増大させるため化学的エンハンサを用いる、又はタンパク質及びペプチドを含有する製剤の皮膚への塗布を可能にする剤(国際公開第98/53847号)又は電気穿孔等の一過的輸送経路を作り出すため若しくはイオントフォレシス等の皮膚を通して荷電薬物の移動性を増大させるための電界の印加、又はソノフォレシス等の超音波の適用(米国特許第4,309,989号及び同第4,767,402号)を用いる、ゲル、軟膏、ローション、懸濁液又はパッチ送達系等が挙げられるが、これらに限定されない形で経皮的に投与するために、抗IL−13抗体組成物を調製することができる(上述の刊行物及び特許は参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0067】
類似のアプローチでは、本発明のモノクローナル抗体の別の治療的使用は、本モノクローナル抗体の1つに対して増加する抗イディオタイプ抗体を用いる患者の能動免疫である。エピトープの構造に類似する抗イディオタイプによる免疫は、能動的抗IL−13反応を誘発し得る。
【0068】
同様に、能動免疫は、ワクチンの成分として、1つ以上の抗原性及び/又は免疫原性エピトープを投与することにより誘導され得る。ワクチン接種は、予防的に又は治療的に、レシピエントがこの生物学的機能領域に対して保護抗体を生成できるのに十分な量を経口又は非経口的に投与することにより実施し得る。宿主は、純粋なペプチド断片、又は改変されたペプチドの抗原性/免疫原性ペプチドで能動免疫され得る。元来のタンパク質配列に対応していない1つ以上のアミノ酸を、元来のペプチド又は切頭型のペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に添加してもよい。かかる追加のアミノ酸は、ペプチドを別のペプチド、大きな担体タンパク質、又は支持体に結合させるのに有用である。これらの目的に有用なアミノ酸としては、チロシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、及びこれらの誘導体が挙げられる。別のタンパク質改変技術は、例えば、NH2−アセチル化又はCOOH−末端アミド化を用いて、別のタンパク質又はペプチド分子又は支持体に、ペプチドを結合又は融合させる更なる手段を提供することもできる。免疫原性エピトープの実施形態は、IL−13のへリックスAの残基(Arg10、Ile13、Glu14)、及びへリックスDの残基(Leu100、Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)を包含するものである。抗原エピトープを含むペプチド又はタンパク質の特定の実施形態では、ペプチドは、X線結晶解析により示されているように、IL−13又は変異体のArg10とArg107との空間的結合に類似するミミトープを示す。
【0069】
IL−13の生物活性から保護することができる本発明の抗体は、IL−13関連症状又は病態を減少、消散、又は寛解させるのに十分な量を被験体に付与することを意図する。剤の投与量、投与経路、及び投与スケジュールが、かかる反応を引き起こすのに十分である場合、その量は、症状を減少「させる」のに十分である又は「治療的に有効な量」であると言われる。抗体投与に対する反応は、被験体の罹患組織、器官、又は細胞を分析することにより、又は画像化技術により、又は組織サンプルのエクスビボ分析により、測定され得る。剤の存在が、レシピエント患者の生理に検出可能な変化をもたらす場合、その剤は生理学的に重要である。
【0070】
本発明の抗体は、これら物質、又はその機能的誘導体が、製薬上許容できる担体媒体と混合により組み合わせられる、製薬上有用な組成物を調製するための既知の方法に従って製剤化され得る。治療は、単回投与スケジュール、又は好ましくは、治療の一次過程が、1〜10回別個に投与され、次いで反応を維持又は強化するのに必要な時間間隔で他の投与量を投与し(例えば第2の投与量を1〜4ヶ月間投与)、そして必要に応じて数ヶ月後次の投与(1又は複数)を行う、複数回投与スケジュールで行われ得る。好適な治療スケジュールの例としては、(i)0、1ヶ月及び6ヶ月、(ii)0、7日、及び1ヶ月、(iii)0及び1ヶ月、(iv)0及び6ヶ月、又は疾患症状を低減する、又は疾患の重篤度を低下させると予測される所望の反応を誘発するのに十分な他のスケジュールが挙げられる。
【0071】
本発明はまた、本発明を実施するために有用なキットを提供する。本キットは、上記抗体を収容する、又は上記抗体に関連してパッケージ化される第1の容器を含む。キットはまた、本発明を実施するために必要な又は便利な関連溶液を収容する、又はそれをパッケージ化する別の容器を含んでもよい。容器は、ガラス、プラスチック、又は箔で作製し得、またバイアル瓶、瓶、パウチ、管、袋等であり得る。キットはまた、本発明を実施する手順、第1の容器手段に収容されている試薬の量等の分析情報等の書面情報を含んでもよい。容器は、例えば、書面情報を伴う箱又は袋等の別の容器装置に入れられていてもよい。
【0072】
本発明の更に別の態様は、生体サンプル中のIL−13を検出するためのキットである。キットは、IL−13のエピトープに結合する1つ以上の抗体を保持している容器と、免疫学的複合体の存在又は不在が、サンプル中のIL−13の存在又は不在に関連するように、IL−13に結合して免疫学的複合体を形成し、その免疫学的複合体の形成を検出する目的のために抗体を使用することに関する説明書とを含む。容器の例としては、複数のサンプル中のIL−13を同時に検出できる複数ウェルプレートが挙げられる。
【0073】
本出願全体を通して引用された全ての参照文献(文献、発行済み特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む)の内容は、参照することにより本明細書に明示的に援用される。
【0074】
本発明の他の特徴は、本発明を説明するために与えられ、本発明を限定することを意図するものではない例示的実施形態に関する以下の記載において明らかになるであろう。
【実施例】
【0075】
実施例1.抗IL−13抗体産生
配列番号1のR110Q変異体である、ヒトIL−13の自然変異体R130Qに対して、マウスハイブリドーマC836を作製した。72番及び75番と命名された2匹の12〜14週齢Balb/cマウス(Charles River Laboratories)を用いた。72番のマウスに、Gerbuアジュバント(Accurate)内にて、腹腔内(IP)及び皮内(ID)注射により、ヒトIL−13R130Qを、週2回、3回、合計50mg投与した。75番のマウスは、マウスインターフェロン−a及びb(Biosource)それぞれ0.33×10ユニットずつと組み合わせて、50mgのR130Qを尾の付け根(BOT)に皮下(SQ)免疫した。2日目及び3日目に、インターフェロン−a及びb(1日目と同じ投与量)をマウスのBOTに皮下注射した。58日目及び85日目に、100mgの抗マウスCD40アゴニストMab(R&D)と組み合わせた50mgのR130Qを、SQ BOTにより2回ブースター注射した。後眼窩穿刺により採取した血液から抗体力価をスクリーニングした。R130Q固相EIAアッセイを実施して、抗R130Q IgGに対する血清力価を評価した。
【0076】
MattAと命名された融合では、72番のマウスに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で100mLに希釈したR130Q 50mgをIVブーストした。MattBと命名された融合では、75番のマウスに、抗マウスCD40アゴニスト50mgと組み合わせたR130Q 15mgをSQ BOTで最終ブーストした。最終ブースト注射の3日後、マウスを屠殺し、リンパ器官を無菌的に取り出し、小さな乳棒を用いて網目の細かい篩に通して脾臓及び/又はリンパ節をすりつぶし、温DMEMですすぐことにより免疫性リンパ球を回収した。
【0077】
固相EIAアッセイを用いて、ヤギ抗マウスIgG−Fcでコーティングされた96ウェルプレート(Costar、9018)を用いてヒトIL−13の自然発生変異体(R130Q)に対する特異的な抗体について、マウス血清をスクリーニングした。マウス血清を、1:50希釈から始めて2倍ずつPBSで段階希釈し、37℃で1時間50μL/ウェルにてインキュベートした。プレートを洗浄し、次いで300ng/mL、50mL/ウェルのビオチン化R130Qと共に、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼとコンジュゲート化しているストレプトアビジンをプローブとし、H及びOPDで呈色させた。自動プレート分光光度計を用いて、490nmで吸光度を測定した。
【0078】
非分泌Balb/cマウス骨髄腫融合パートナーであるFOは、ATCC(CRL−1646)から購入した。MattA融合は、1:2の比のFOマウス骨髄腫細胞と生脾臓細胞とを用いて実施した。MattB融合では、脾臓及び膝窩/鼠径リンパ節(LN)のリンパ球をプールして、融合を実施した。融合は、1:1の比のマウス骨髄腫細胞(FO)と生リンパ球とを用いて実施した。融合した細胞をHAT培地(100μMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、及び16μMのチミジン)に再懸濁させ、25×96ウェルプレートに200μL/ウェルでプレーティングし、7〜10日間インキュベートした。
【0079】
マウスリンパ球とマウス骨髄腫細胞との融合から生じたハイブリドーマを、成熟R130Q(配列番号1のIL−13 R110Q変異体)に結合する能力について、EIAにより評価した。陽性ウェルの細胞を24ウェルプレートに移し、細胞数を増加させた後、細胞株を確実に均一にするために限界希釈によりサブクローニングした。Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit−IsoStrip,Dipstick Format(Roche)を、製造業者の説明書に従って使用して、アイソタイプを決定した。
【0080】
R130Q反応性MAbを、EIAを介してMattA融合から12個、及びMattBから3個決定した。13個の抗体が、マウスIgG1/κであると同定され、1つがIgG2aκ、1つがIgG1/λアイソタイプであると同定された。均質なハイブリドーマ細胞株にCコード番号を割当て、それぞれのMAbにCNTO番号を割当てた(表1)。
【0081】
【表1】

【0082】
マウスハイブリドーマの軽鎖及び重鎖のcDNAを、室温PCRによりクローニングし、配列を決定した。cDNAを、軽鎖及び重鎖をそれぞれ、CMVプロモータの制御下で、GS選択可能な遺伝子マーカーを含む、Lonza真核生物発現ベクターpEE12.4及びpEE6.4に挿入した。クローニングした配列のC836 mAbをHEK293細胞に一過的にトランスフェクトし、ハイブリドーマをから分泌される抗体に対してアッセイした。V領域のCDRを以下(表2)、並びに軽鎖及び重鎖V領域の配列表(それぞれ配列番号2及び3)に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
クローニングした配列から発現させた精製mAbの活性は、ハイブリドーマC836からの馴化培地で観察された活性と同じであることが検証された。150ng/mLのビオチン化IL−13のIL−13R−アルファ2に対する結合阻害を評価するアッセイを用いて活性を測定した。
【0085】

実施例2:ヒトフレームワーク適応(HFA)ライブラリの作製
mAb C836のヒト化プロセスは、2つの一般的なプロセス:1)フレームワーク適応;及び2)選択されたフレームワーク内に起因するところが大きい親和性成熟を含んでいた。更に、特定の残基を改変して、タンパク質安定性を促進した。
【0086】
フレームワーク適応プロセスは、国際公開第08052108A2号「Methods For Use In Human−Adapting Monoclonal Antibodies」に本質的に記載されているように、マウスmAb C836とヒト生殖系データベース中の配列間のフレームワーク領域の類似性に基づいており、ここでフレームワークの長さは、親可変又はV領域の残基と一致する。全体で、16個の軽鎖(LC)及び6個の重鎖(HC)フレームワークは、表3(LC)及び表4(HC)に示されているように、選択されたヒトフレームワークとC836のCDRを組み合わせることにより適応したヒトフレームワークであった。両表においては、CDRを下線により強調する。
【0087】
軽鎖フレームワークO12(配列番号5)、L6(配列番号9)、L12(配列番号11)、及びL18(配列番号6)が、マウスV領域(配列番号2)に対して最も高い類似性を有する(図1の上方のアラインメント)。重鎖のCDRでは、ヒトフレームワーク2−26(配列番号20)、及び2−05(配列番号21)が、マウスV領域(配列番号3)に対して最も高い類似性を有する(図1の下方のアラインメント)。
【0088】
【表3】

【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】
【表4】

【0095】

【0096】

【0097】
フレームワーク適応した重鎖のV領域を、当業者に既知の方法を用いてヒトIgG1のC−カッパ(軽鎖)及びCH1〜CH3(重鎖)と融合させた。マウス−ヒトIgG1キメラコンストラクトも作製し(Mab 167)、そこではマウスVH領域がCH1ドメインでヒトIgG1に融合しており、マウスVLはヒトC−カッパドメインに融合し、合計でそれぞれ16個の軽鎖及び7つの重鎖になった。
【0098】
ヒトフレームワーク適応した軽鎖及び重鎖の合成を、Evansらに教示された方法に従って完全長コード配列に組み立てたポリヌクレオチド断片全体を化学的に合成することにより実施した。例えば、米国特許第6,521,427号及び同第6,670,127号を参照。合成した遺伝子を、CMVプロモータベクター、pUNDERに挿入し、配列を確認した。次いで、これらベクターを、バッチ一過性トランスフェクションで用いた又は以下に記載のように規模を変化させた。
【0099】
<小規模トランスフェクション及び発現。> HFA変異体の発現は、HEK293細胞を用いて、小規模で、各HFA重鎖(Hc)と各HFA軽鎖(Lc)を対合させるマトリクス形式で実施し、スクリーニングに利用可能な90個のHFA mAb(15Lc×6Hc)を得た。親マウス−ヒトキメラLc及びHcを対合させ、対照と同じ方法で発現させた。要約すると、HEK293−E細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)を、0.5mLの成長培地を含む48ウェルプレートに1.5×10生細胞/ウェルでプレーティングし、各DNA(Lc+Hc)対をLipofectamine 2000(Invitrogen)と複合体化し、DNA−脂質複合体を2つ組のウェルに添加して、細胞をトランスフェクトした。24時間後、培地、4mM L−グルタミン(Invitrogen)を含有する293 SFM II(Invitrogen)を置換した。分泌された抗体を含有する上清を96時間後に回収し、アッセイのために濾過した。
【0100】
<HEK293−E又はCHO−S細胞のパイロット規模のトランスフェクション。> HEK293−E細胞を、200mLの成長培地を含むCellstack 2−層容器(Corning)に、8.0×10細胞/容器でプレーティングした。DNA−リポフェクタミン複合体を、小規模トランスフェクション法に記載したように作製した。
【0101】
CHO−Sの培養では、トランスフェクションの日に、細胞を、2Lの振盪フラスコあたり500mLの培地の1mL当たり7.5×10細胞になるように希釈した。DNAをOpti−Pro培地(Invitrogenカタログ番号12309)で希釈し、FreeStyle Maxトランスフェクション試薬(Invitrogenカタログ番号16447)と混合した。DNA Max複合体(10mL)を細胞のフラスコに添加し、37℃でインキュベートし、4日後に上清を回収した。
【0102】
<大規模(4〜5L)バイオリアクタ生成> トランスフェクションの前日、ヘッドスペースの酸素(O)がモニタされ、50%に制御されており、重炭酸ナトリウムを用いてpH7.2に制御されている、37℃に維持されたCell Culture BioBundleバイオリアクタ(Applikon,Foster City,CA)内で、2.0×10細胞/mLで細胞を播種した。トランスフェクション時に、pHを6.8に低下させた。DNA−脂質複合体では、トランスフェクション1L当たり1.25mgの全DNAを50mLのOpti−Proで希釈した。同様に、1.25mLのFreeStyle Maxトランスフェクション試薬を、トランスフェクション1L当たり50mLのOpti−Proに希釈した。希釈したDNAを希釈したFreeStyle Max試薬と混合し、室温で20分間インキュベートした。全DNA−FreeStyle Max複合体(総体積100mL)をバイオリアクタに添加した。トランスフェクション時、細胞は、典型的には、7.0×10細胞/mLであった。4日後、上清を回収した。
【0103】
パイロット規模(0.3〜3.0mg)の精製は、AKTA Xpressクロマトグラフィーシステムで行い、大規模(3mg以上)の精製は、AKTA FPLCクロマトグラフィーシステムで行った。パイロット規模及び大規模調製の精製手順は同一であった。一過性トランスフェトされたHEK293−E又はCHO−S細胞の細胞上清を、遠心分離(30分間、6000rpm)により透明にし、濾過した(0.2μmのPESメンブレン、Corning)。IgGの相対量を、Octet機器(ForteBio)で測定した。大規模(5〜20L)でトランスフェクトしたサンプルを、LV Centramate(Pall)濃縮器を用いて5倍に濃縮した。濃縮したサンプルをPBSですすぎ、再度0.2μmで濾過した。希釈した上清を、平衡化された(PBS、pH 7)HiTrap MabSelect Sure Protein Aカラム(GE Healthcare)に、樹脂1mL当たり約10mgのタンパク質という相対濃度でロードした。ロード後、カラムを洗浄し、タンパク質を0.1MのNa−酢酸(pH 3)10カラム体積で溶出させた。溶出したタンパク質画分を、Trisバッファに溶出することにより中和した。ピーク画分をプールし、濾過(0.2μm)し、pH 7のPBSで、一晩4℃にて透析した。透析したタンパク質を濾過し(0.2μm)、タンパク質の濃度を、BioTek SynergyHT(商標)分光光度計を用いて、280nm及び310nmの吸光度により測定した。必要に応じて、精製したタンパク質を、10K MWCO遠心濃縮器(Millipore)で濃縮した。精製したタンパク質の量を、SDS−PAGE及びサイズ排除HPLC(Dionex HPLC system)により評価した。必要な場合、エンドトキシン濃度を、LALアッセイ(Cape Cod Associates,Cape Cod,MA)により測定した。精製したタンパク質を4℃で保存し、次いで特異性及び活性試験に供した。
【0104】

実施例3:抗IL−13抗体を評価するためのアッセイ
IL−13 R110Q又はIL−13 R130Q(配列番号1)と呼ばれる単一アミノ酸突然変異を有するIL−13の自然発生変異体を、候補のスクリーニングに用いた。IL−13変異体及び野生型タンパク質は、Peprotech,Rocky Hill,NJから購入した。
【0105】
<抗原のビオチン化> IL−13タンパク質を、Pierce,EZ−link NHS−LC−Biotin(#21336)を用いて、4:1のモル比でビオチン化した。これを達成するために、ビオチン試薬を適切な体積のミリポア水に溶解させ、10mMの原液を得た。適切な体積のビオチン原液を、室温で2時間にわたってPBS(0.1M NaHCO3、pH8.5)中のIL−13変異体R130Q、Peprotech,Rocky Hill,NJ)200−13A)に添加し、モル比を4:1にした。ビオチン化反応を1Mのエタノールアミン1mLで室温にて2時間クエンチし、過剰の未反応ビオチンを、PBSを用いて4℃で一晩透析により除去した。アリコートを瞬間凍結させ、−80℃で保存した。ビオチン化IL−13wt及び変異体をOD260により再定量した。ビオチン化IL−13形態(「b−」と記される)を、(a)IL−13 Rα1に対する結合のための、THP−1細胞におけるSTAT6の活性化、及び(b)以下に記載のようなELISAを介してRα2(R&D Systems,Minneapolis,MN)におけるIL−13Rα2に対する結合により評価した。
【0106】
<参照抗体>
幾つかの抗体を、参照抗体として用い、前記抗体としては、1)配列番号2及び3のV領域を含むmAb 167、C836マウス/ヒトキメラ;2)mAb 62又はFab 62(HFA62又はHFAL62);3)配列番号9及び20のV領域を含むC836ヒトフレームワークLC6HC2;並びに4)mAb 442、ヒトIgG1アイソタイプ対照が挙げられる。複数の生物活性アッセイを用いて、抗IL−13 mAbの結合特性についてスクリーニング及び定義し、それを以下に記載する。
【0107】
<IL−13直接結合ELISA>
黒色96ウェルMaxisorpプレートを、0.1Mの炭酸塩−重炭酸塩コーティングバッファ中8μg/mLのヤギ抗ヒトFc捕捉抗体100μLと共に4℃で一晩インキュベートし、0.05%のTween−20含有PBSで洗浄し、1% BSA含有PBSでブロッキングした。抗体(100μL)試験サンプルを、アッセイバッファ(1% BSA及び0.05% Tween−20を含むPBS)で1ウェル当たり7ng/mLに希釈し、2時間振盪させながら室温でインキュベートした。洗浄後(5回)、アッセイバッファで9ng/mLに希釈した100μLのビオチン化IL−13 R130Q抗原を、1時間にわたって振盪させながら室温で添加し、洗浄を繰り返した。ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼとコンジュゲート化した二次抗体(100μL)を添加し、TBS−Tバッファで1μg/mLに希釈し、30分間にわたって振盪させながら室温でインキュベートした。洗浄後(5回)、室温に平衡化し、10μLのAP基質:100μLのエンハンサ:890μLのアッセイバッファの比で希釈した100μLのBM化学発光基質を添加し、10分間振盪させながらインキュベートした。蛍光を、特注「BM化学発光」プログラムを用いてEnvision Readerで読み取った。データを検出限界及び陽性対照mAbに正規化し、抗原結合率を得た。
【0108】
<Rアルファ2結合阻害アッセイ>
Rアルファ2結合阻害アッセイでは、購入した可溶性IL−13R−アルファ2をプレートに吸着させ、試験抗体がビオチン化IL−13−R130Qの結合を阻止する能力について測定した。アッセイでは、IL−13Rα2(R&D systems)をNunc Maxisorbプレートに、100μL×300ng/mL(DPBS(30ng)で希釈)で吸着させ、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後(5X、TBST+0.05% Tween−20)、総体積100μLのサンプル又は標準物質を200ng/mLの抗体50μL、次いでアッセイバッファ(PBS+0.5% BSA)中8ng/mLのb−R130Q50μLを、振盪させながら室温で1時間にわたって各ウェルに添加した。洗浄後、TBST中1μg/mLのストレプトアビジン−アルカリホスファターゼにコンジュゲート化した二次抗体100μLを添加し、振盪させながら0.5時間インキュベートした。洗浄後、室温に平衡化し、1部の基質A対4部の基質Bの比で希釈した100μLのBM AttoPhos基質を、30分間振盪させながら室温でインキュベートした。更に45分間色を呈色させ、Envision Readerを用いて蛍光を測定した。生データを、バックグラウンドウェル値を減じ、抗体を含まないビオチン化IL−13−R130Q(bR130Qで標識されたウェル)を0%阻害と設定することにより阻害率を算出することにより分析した。阻害率は、以下のように算出される:(1−((抗体を含むサンプルの値)/(ビオチン化IL−13−R130Qのみ))×100%)。
【0109】
<Perkin Elmer AlphaScreen(登録商標)を用いたIgG定量>
Perkin Elmer AlphaScreen(3−AS−0004 v1)は、改変mAb及びFabの定量で用いられるアッセイに基づく384ウェルの均質ビーズである。タンパク質サンプルをプロテインAでコーティングされたアクセプタビーズ、抗カッパ軽鎖抗体、及びストレプトアビジンでコーティングされたドナービーズに添加した。4つ全ての成分が複合体を形成するとき、アクセプタビーズ及びドナービーズは、ドナービーズが1つの酸素イオンをアクセプタビーズに移動させるのに十分近い距離に存在し、これによりアクセプタビーズにおいてシグナルが生じる。シグナルは、Perkin−Elmer Envisionプレートリーダーで測定する。サンプルは、プレート上の既知の抗体の標準曲線を用いて定量した。用いた材料:384−ウェル、White Opaque、OptiPlate(Perkin Elmer)、プロテインAでコーティングされたアクセプタビーズ(Perkin Elmer)、ストレプトアビジンでコーティングされたドナービーズ(Perkin Elmer)、ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖−ビオチン(Pierce)、及びTween−20(Teknova)又はウシ血清アルブミン、Probumin Diagnostic Grade K(Millipore)を含むトリス緩衝生理食塩水。バックグラウンドを減じた。そして、全ての希釈液を各プレートの標準曲線にあてはめることにより濃度を決定する。
【0110】
<ホスホ−STAT6アッセイを用いるIL−13R1アルファシグナル伝達>
THP−1細胞におけるIL−13誘導性Stat 6リン酸化のフローサイトメトリー測定は、フローサイトメトリー(FC)によるIL−13誘導性Stat 6リン酸化(P−Stat 6)の検出に基づいて抗体によるIL−13の中和活性を評価するための感受性アッセイである。このアッセイは、一次ヒトB細胞に基づくP−Stat 6アッセイ(EC50、5000pg/ml)よりも高い感受性(EC50、332pg/ml)を有する、rhIL−13に対するTHP−1細胞の反応の迅速且つ定量的測定を可能にする。
【0111】
THP−1細胞は、ATCC(TIB−202(商標))から得、4〜6日に1回継代し、完全RPMI−1640培地で維持した。他の試薬としては、Alexa Fluor 488−マウス抗−P−Stat 6 mAb(BD Transduction Laboratories(商標)、San Diego,CA)、Cytofix/Cytoperm(商標)(BD Pharmingen,San Diego,CA)、ヒト組換えIL−13(R&D System,Minneapolis,MN)が挙げられる。アッセイのために、細胞を回収し、5×10〜1×10細胞/mL(新鮮完全培地)に再懸濁させた。試験試薬を、10%FBS:抗体を含むRPMI−1640で、2mg/mLから始めて2又は3倍ずつ8回希釈して段階希釈し、又は以下に示すように段階希釈した。培地のみ及び25μLの各抗体希釈液を96ウェルプレートに移し、次いで25μL/ウェル×20ng/mL(0.5ng)のrIL−13を移し、室温で10分間放置した。IL−13又は変異体の活性は、2ng/mLから始めてIL−13を2又は3倍ずつ段階希釈することにより、又は指示するように、同様に試験することができる。
【0112】
典型的なアッセイでは、THP−1細胞を、抗体及び/又はIL−13を収容しているウェルに添加し、37℃で15分間インキュベートする。その後、細胞を、3分間遠心分離(450×g)することによりペレット化し、上清を廃棄する。再懸濁させた細胞を、37℃で10分間にわたってCytofix/Cytopermバッファを添加することにより固定し、続いて洗浄し、冷90%メタノールを用いて氷上で30分間透過処理し(又は細胞を最高1ヶ月間−20℃で保存してもよい)、再度ペレット化させた。細胞を、20μLのAlexa Furo−anti−P−Stat 6を含有する染色バッファ(1×PBS、1% FBS、0.09% NaN)に再懸濁させることにより染色し、暗条件下で室温で1時間インキュベートする。次いで細胞を洗浄し、データを取得し分析するために、FACSCalibur又はCellQuestPro(BD,San Diego,CA)のいずれかを用いてフローサイトメトリー(FC)分析用の染色バッファに再懸濁させる。P−Stat6陽性THP−1細胞=(P−Stat 6の数+THP−1細胞/THP−1細胞の総数)×100。
【0113】
<Biacoreアッセイ>
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて親和性測定を、Biacore 3000光バイオセンサ(Biacore)を用いて実施した。バイオセンサ表面は、アミンカップリング化学反応のための製造業者の説明書を用いて、抗ヒトIgG Fc断片特異的抗体(Jackson)を、CM−5 chip(Biacore)のカルボキシメチル化デキストラン表面にカップリングさせることにより調製した。約20,000RU(反応単位)の抗−ヒトIgG Fc抗体を、4つのフローセルそれぞれに固定化した。25℃にて、PBSランニングバッファ(0.005%の界面活性剤P20及び3mMのEDTAを含有)中で速度実験を実施した。このバッファを濾過し、使用前に少なくとも30分間脱気した。IL−13の33nMから0.046nMへの段階希釈をランニングバッファ中で調製した。約250RUの試験したmAbを、センサチップのフローセル2、3、及び4で捕捉した。フローセル1は、参照表面として用いた。
【0114】
mAbの捕捉に続いて、IL−13を50μL/分で3分間注入(結合相)し、次いでバッファーフロー(解離相)を10分間注入した。チップ表面を、50μL/分で100mMのHPO(Sigma、カタログ番号7961)を12秒間注入する2パルスにより再生した。回収したデータを、BIAevaluationソフトウェア、バージョン3.2(Biacore)を用いて加工した。先ず、アナライト注入の参照サブストラクション曲線からバッファ注入により生じたカーブを減じることにより、データのダブルリファレンスサブトラクション(double reference subtraction)を実施した。そして、データの速度分析を、1:1の結合モデルと全体的適合(global fit)を用いて実施した。各mAbの結果を、Ka(オン速度)、Kd(オフ速度)、及びK(親和性定数)の形で報告した。
【0115】

<遠心限外濾過によるPBSに対する抗体の溶解度の決定>
室温における種々の抗体の溶解度を決定するために、限外濾過スピンカラムを用いて実験を行った。要約すると、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)バッファ中の抗体製剤を、室温でVivaspin−15(15mL)限外濾過スピンカラム(30,000 MWCO、Sartorius,Goettingen,Germany)に添加した。スウィング型バケツロータを用いて、Eppendorf 5804R遠心分離器で、カラムを3000×gで20分間隔で回転させた。一旦体積が約2mLにまで減少したら、上清をVivaspin−4(4mL)カラム(30,000 MWCO)に移し、20分間隔で4,000×gで遠心分離した。サンプル体積が500μLまで減少した後、サンプルをVivaspin−500カラムに移し、15分間Eppendorf 5415R遠心分離器で15,000×gにて遠心分離した。これを、沈殿が見られるまで繰り返した。この時点で、遠心分離を停止させ、サンプルを一晩室温で保持して、平衡に達した。次の朝、サンプルを回転させて沈殿を除去し、適切に希釈しながらNanodrop(Thermo−Fisher,Wilmington,DE)を用いてA280でタンパク質濃度を測定した。濃度が100mg/mL超であった場合、プロセスを停止させた。沈殿が生じなかった場合、タンパク質濃度を、回転1回おきに測定した。タンパク質濃度が100mg/mL超であることが見出された場合、遠心分離を停止させた。更に、本明細書に記載される抗体を更にスクリーニングして、特定の抗体を更なる開発のための理想的な候補にする特徴を同定した。これら抗体のスクリーニングに使用される方法は、米国特許出願第61/022,385号に記載されている。
【0116】

実施例4:抗IL−13抗体のHFA変異体
各HFA重鎖変異体と対合した各HFA軽鎖変異体(実施例2、それぞれ、表4及び3)のマトリクストランスフェクションから生成された90個の初期スクリーニングを行った。前記スクリーニングは、溶液中のビオチン化IL−13 R130Qに対する直接結合を測定し、1.1nMのMab及び2nMのb−IL−13 R130Qを用いてIL−13 R130QのIL−13Rα2への結合を阻害する能力を測定することにより行った。
【0117】
組換えMabサンプルの結合又は阻害活性を、配列番号2及び配列番号3を含むキメラmAb、Lc16Hc7(mAb 167)の結合又は阻害活性と比較した。小規模トランスフェクションの未精製組織培養上清を用いてこれらのスクリーニングから得られたデータにより、どの変異体を発現、精製、及び更なる評価のためにスケールアップするべきかを決定した(表5)。選択したHFA mAbを、大規模にHEK293細胞で発現させ、精製した。それらを、Biacoreにより評価して、IL−13変異体R130Qに対する結合親和性を決定した。
【0118】
【表5】

【0119】
【表6】

【0120】
これらのデータに基づいて、親和性成熟についてHFA変異体Lc6Hc2及びLc14Hc2を選択した。
【0121】

実施例5:抗IL−13抗体の変異体の親和性成熟及び産生
既知の三次元構造の抗体−抗体複合体の研究により、特異性決定残基(SDR)と呼ばれるCDR内の抗原接触残基が明らかになった(Padlan,et al.,1995,FASEB J 9:133〜9;Almagro 2004,J Mol Recognit.17:132〜143)。リードHFA変異体の親和性を改善するために、タンパク質の抗原認識のために高頻度で用いられる4つのSDR、L−CDR3の残基H91、N92、E93、及びY94のランダムライブラリを用いた。
【0122】
ライブラリ構築用スカフォールドとしてファージミドIL−13−62と命名されたCDR移植Lc6−VB_Lc6(配列番号9)及び第2にファージミドIL−13−142と命名されたLc14 VB_L12(配列番号17)を用いて、L−CDR3変異体の2つのファージライブラリを作製した。両方のライブラリをHc2(配列番号20)と組み合わせ、Fab断片としてクローニングした。配列番号9(Lc6)及び配列番号17(Lc14)におけるL−CDR3の4つの残基(H91、N92、E93、及びY94)を、「NNK」コドンを用いて最大限の多様性を導入してランダム化し、1.9×10個の変異体の理論上の多様性を得た。親マウスMab、C836のV領域を有するファージミドも構築し、IL−13−167と命名した。
【0123】
Fabライブラリを、米国特許第6,472,147号(Scripps)及び国際公開第2009/085462号として公開された出願人の同時係属中の出願に記載されている通り、pIXファージディスプレイ系で構築した。ファージミドIL−13−62は、IL−13Lc6及びIL−13Hc2の可変領域を含むジシストロニック単位として発現した。ライブラリの構築は、既に記載されている方法(Almagro et al.,2006.J Mol Recognit 19:413〜422)と同様の方法を用いて行われた。親分子から個々のN末端及びC末端断片を捕捉するために、N末端領域(断片1)及びC末端領域(断片3)から構成されるネステッドPCRにより3つの断片からライブラリを組み立てた。一旦作製されると、外側の断片を、それぞれのSDRと標的とする内側断片(断片2)と混合した。断片2は、縮重オリゴから作製され、断片1と3とを橋渡しして完全長ライブラリ配列を作製するために用いられた。完全長配列をそれぞれ軽鎖ファージベクターにクローニングした。
【0124】
ライブラリをビオチン化IL−13 R130Qに対してパニングした。要約すると、パニング前に、ストレプトアビジンでコーティングされた常磁性ビーズ(Invitrogen,Carlsbad,CA)を、Chemiblocker(Chemicon,Temecula,CA)でブロッキングした。同様に、L−CDR3ファージライブラリを、0.05%のTween−20(T)を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)で1:1に希釈したChemiblockerで、室温にて30分間予備ブロッキングし、続いて予備吸着工程で、L−CDR3ライブラリをブロッキングされた磁性ビーズと共にインキュベートして、非特異的結合剤を除去した。次いで、ビオチン化IL−13変異体R130Q(Peprotech,Rocky Hill,NJ)を、パニングの3回連続するラウンド用に、異なる濃度(10nM〜0.01nM)のファージライブラリに添加した。抗原結合ファージを、磁性ビーズを用いて捕捉し、指数関数的に増殖する大腸菌TG−1細胞、OD(600nm)=0.5を1mL添加することによりレスキューし、37℃で30分間インキュベートした。次いで、ファージを産生し、パニングの次のラウンドのために準備した。Fab−pIXをTG−1コロニーの粗細菌細胞溶解物から産生した。
【0125】
ハイスループット一点(10nM)ELISAを用いて、ファージパニングの試みから、変異体をランク付けした。ビオチン化IL−13 R130Q曲線に対する、ファージpIXタンパク質上に提示した特定のSDRU変異体Fabの結合を明らかにした。IL−13−167より高いシグナルを有するクローン(マウス−ヒトキメラFabより高い親和性の結合剤)を、FabをMabに変換するために選択した。配列番号9及び20に基づいてIL−13−62ライブラリをランク付けしたデータを表7Aに示し、ここでは少なくとも40個のクローンが、マウス親配列Fab(ファージ−Lc16H7)よりIL−13に対する親和性が高かった。表7Bは、配列番号17及び20に基づいて、IL−13−142ライブラリに相当するデータを示し、ここでは53個のクローンがマウス親配列(Lc16H7)よりも親和性が高かった。数個のクローンが、フレームワークに突然変異を含んでいた(上述の通り)。
【0126】
【表7A】

【0127】

【0128】

【0129】
【表7B】

【0130】

【0131】
<FabのMAbへの変換>
制限的消化及びスクリーニング用pUNDERベクターへの挿入により、IL−13−62ライブラリから選択されたFab(表7A)を完全長mAbに変換した。これらLc6に基づく変異体を、ヒトIgG1重鎖を含むHc2(配列番号20)と対にし、粗上清及びIL−13を用いてHEK293細胞に小規模トランスフェクトすることにより再スクリーニングした(表8)。
【0132】
【表8】

【0133】

【0134】
IL−13−62ライブラリ(表7A)及びIL−13−142ライブラリ(表7B)から得られた絶対IL12Ra2結合の結果は、アッセイが僅かに異なる条件で行われたため、シグナルの大きさの観点で直接比較することができない。142個のライブラリから得られた変異体は、Mab形式で試験しなかった。
【0135】

<CDRの特定の残基を標的とする部位特異的突然変異誘発>
pIXファージディスプレイ及びパニングがフレームワーク適応C836軽鎖の親和性成熟の方法として選択されたが、部位特異的突然変異誘発(SDM)もLc6及びHc2に対して用いた。SDMを用いて、SDRの特定の残基を、メチオニン及びシステインを除く全ての可能なアミノ酸にランダム化した。逆に、SDR中の任意のメチオニン又はシステインを除去して、酸化を受けやすい残基の存在を避けた。したがって、Hc2(配列番号20)のM34及びM100はSDMにより変更され、これらの一点変異体を、更なる突然変異を含む配列と共に結合活性の増加についてスクリーニングした。
【0136】
要約すると、Lc6−Hc2の約200個の軽鎖変異体及び400個の重鎖変異体が、ハイスループット部位特異的突然変異誘発により生じた。アッセイでは、各軽鎖変異体をHc2配列と対にし、活性についてスクリーニングした(データは示さない)。同様に、IL−13直接結合のスクリーニング、及びIL−13を用いたRa2結合競合アッセイのために各重鎖変異体をLc6と対にした。このアプローチを用いて、軽鎖及び重鎖変異体の両方を有する幾つかの改善された抗体を同定した。多くの変異体が、元来のマウス抗体に対して改善を示し、他のものは、HFAのV領域L6(配列番号9)及びH2(配列番号20)と比べて改善されていた。強化した軽鎖突然変異の一部は、ファージ変異体ライブラリ法から同定された陽性突然変異と同じ位置に存在した。更に、改善された活性を有する選択された重鎖変異体を、ファージ由来の軽鎖と組み合わせて、完全MAbを形成し、再試験した。これらの組み合わせの幾つかは、IL−13 R130Qに対する結合親和性が追加増強した。つまり、結合親和性は、元来のマウスMab(C836)で測定されたものよりも高く、HFAのV領域Lc6及びHc2に比べて数倍高かった。これらMAbを精製し、プラズモン共鳴(Biacore)を用いて結合親和性測定に供したところ、試験した(100超を試験した)Mabのうち50超が、約50pMであった元来のマウスMab(C836)より高いIL−13に対する親和性を有していた。
【0137】
Lc+Hcマトリックススクリーニングデータに基づいて、選択されたHc変異体(SDMから得られた)を配列番号9に記載のL6変異体N92−、E93D(配列番号25として表される)と対にし、精製及び更なる分析のために産生をスケールアップした。これらmAbを、Biacore分析によりIL−13 R130Qに対する直接結合について、ホスホ−STAT6アッセイにおいてIL−13のそのRα1に対する結合を阻害する能力により中和活性について、及びIL−13 R130QのそのRα2に対する結合を阻害する能力のLuminexに基づくバージョンにより厳格に試験した。IL−13Ra2に対する結合阻害は、500pg/mLのb−wt IL−13を用い、IC50値は、図2に示すような曲線に基づいて算出した。P−STAT6アッセイのEC50値及びRα2阻害LuminexアッセイのIC50値を表9に表す。
【0138】
【表9】

【0139】
したがって、フレームワーク突然変異を有する、表7AのmAb候補に見出されたLc6(配列番号9)の置換としては、配列番号27について以下に記載される変異体が挙げられる。
【0140】
【表10】

【0141】
部位特異的突然変異誘発を用いて、Hc2(配列番号20)CDR1(26GFSLSTYGMGVG37)及びCDR3(100MGSDYDVWFDY110)に変化を有する更なる変異体を作製した。IL−13と高い親和性で結合する重鎖可変ドメインの変異体は、(配列番号28)のものを含み得る。
【0142】
【表11】

【0143】
したがって、配列番号28に記載の重鎖可変領域、及び上記変異体を用いて、式Iに示すようなL−CDR3の変異を含む第2の抗原結合ドメインと組み合わせて抗体を改変することができる。
【0144】
Q−Q−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−P−Y−T(配列番号29)
式中、Xaaは、His、Gln、又はProであってもよく;
Xaaは、Asn、Asp、Ser、Leu、Pro、Ile、Phe、Glu、又はValであってもよく;
Xaaは、Glu、Asp、Gly、Ser、Ile、Tyr、Tryp、Asn、His、Val、Met、Arg、Leu、Phe、Proであってもよく、又は存在しなくてもよく;および
Xaaは、Tyr、Gly、Ser、Ala、Val、Phe、Thr、Gluであってもよく、又は存在しなくてもよい。
【0145】
マウスモノクローナル抗体C836の相補性決定領域(CDR)を、15個のヒト軽鎖及び6個の重鎖抗体フレームワークに適応させ、IL−13 R130Q及び野生型ヒトIL−13に高い親和性で結合する抗体を得た。HFA軽鎖2、3、6、8、14(配列番号5、6、9、及び17)及び重鎖2(配列番号20)は、非常に望ましい生物活性及び高親和性を有するMAbを生成した。得られたヒトフレームワーク適応抗体は、ヒト患者に投与された場合低い免疫原性を有すると予測されるため、完全マウス又はキメラ対応物よりも長い血漿半減期をもたらす。
【0146】
野生型、完全長マウスmAb C836の親和性(K)は、Biacoreにより測定したとき、約50pMであり、マウスV領域−ヒトC領域キメラ(Lc16Hc7)と同程度であったことが見出された。C836 mAbのCDRをヒト抗体フレームワークに適応させたことにより、抗原に対する結合Kが、約5分の1に低下して、約250pMになり(表6)、これは単純なCDR移植キメラに典型的である。ファージFabライブラリのハイスループットマトリックススクリーニング及び新規抗体鎖のデノボ合成、及び一過性トランスフェクションのためのベクター構築により、重鎖及び軽鎖V領域の組み合わせを含む、多数のFab、及び完全長MAbを、相対結合についてスクリーニングすることができた。
【0147】
第2の工程では、選択されたヒトフレームワーク適応mAbの結合親和性が、ファージFabライブラリ及び部位特異的突然変異誘発の両方を用いてSDRと呼ばれる選択的残基への斑入り(variegation)に集中させることにより成熟した。これらの効果から、Hc2(配列番号20)配列の11の変異体と対合した単一軽鎖配列を有するmAbは、CHO及びHEK293細胞で発現し、Biacore分析により、IL−13 R130Q及び野生型IL−13に対して50pM未満の結合親和性を示した(表9)。これらの抗体は、1)IL−13 R130Q及び野生型IL−13がIL−13受容体Rα1に結合するのを阻害することによりIL−13の機能を中和した;IL−13 Ra1/IL−4受容体複合体を介したシグナル伝達により活性化されることが知られているSTAT−6転写因子のリン酸化を阻害した;及び3)IL−13受容体Rα2に対するIL−13 R130Q及び野生型IL−13の結合を阻害した。
【0148】
生物物理学的特徴は、幾つかの種がPBSに対して100mg/mL超の溶解度、ヒト血清に対して50mg/mL超の溶解度を示すことを示した。したがって、これらの活性改変mAbは、IL−13介在疾患の治療に用いるための治療分子で典型的に見られる所望の特性と一致する特性を有する。
【0149】
2B03と命名された軽鎖(配列番号25)と配列番号26等のHc2 CR変異体とを組み合わせることにより作製されたmAbに加えて、表9に示すような配列番号20に記載の重鎖変異体と組み合わせられた配列番号9及び17の他の軽鎖変異体を調製することもできる。したがって、多数の高親和性IL−13免疫特異的変異体mAbは、本明細書におけるこれらの発見及び教示に基づくことが可能である。例えば、これらとしては、配列番号25及び26に記載の変異体が挙げられる。
【0150】
可変領域配列番号26及び26を含むMab M1295により表されるHc及びLcの組み合わせは、治療的に開発しやすい重鎖フレームワークを有するものとして特に注目される。重鎖CDR1及びCDR3におけるメチオニン(残基34及び100)の除去により、酸化の機会が減少し、これら配列は、治療的開発のために理想的になる。メチオニン含量の低下した抗体は、酸化に対する安定性の改善を示すため望ましい。
【0151】

実施例6:抗IL−13結合ドメインのエピトープ及びパラトープ分析
IL−13(配列番号1)に結合している、C836(配列番号2及び3を含む)に関連するFab、CDR移植ヒトフレームワーク適応変異体HFAL62(配列番号9及び20を含む)、及びV領域が親和性成熟した変異体M1295(配列番号25及び26を含む)のX線結晶解析を用いるエピトープマッピングを実施し、結果を比較した。
【0152】
Hisタグを付けた、C836 FabのキメラバージョンをCHO細胞内で発現させ、親和性及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。HFAL62及びM1295のFab断片を、対応するmAbのパパイン切断により調製し、親和性及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。組換えヒトIL−13は、R&D Systems(カタログ番号213−IL/CF)から購入した。IL−13−Fab複合体は、Fabと過剰なIL−13を1:1.2のモル比で混合することにより調製した。混合物を20分間室温でインキュベートし、濃縮し、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて非複合体化種から分離した。
【0153】
結晶化は、20℃で蒸気拡散懸滴法を用いて実施した。C836:IL−13の結晶は、20%のPEG 3350、0.2Mの酒石酸ナトリウム、0.1MのHEPES(pH 7.5)から得た。HFAL62:IL−13結晶は、14%のPEG 3350、0.2Mの酒石酸アンモニウム、0.1MのMES(pH 6.5)から得た。M1295:IL−13結晶は、25%のPEG 8K、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH 4.5)から得た。X線データの収集のために、各複合体の1つの結晶を数秒間、20%グリセロールを添加した対応する母液に浸漬した。回折データを収集し、Saturn 944 CCD検出器を備えるRigaku MicroMax(商標)−007HF X−線発生器、及びX−Stream(商標)2000クライオシステム(Rigaku,Woodlands,TX)を用いて加工した。
【0154】
3つの複合体C836:IL−13、HFAL62:IL−13、及びM1295:IL−13の結晶構造は、それぞれ2.0Å、1.9Å、及び2.8Åの解像度で決定され、それぞれ22.4%、18.6%、及び19.7%の結晶学的R係数に変換された。3つ全ての構造では、抗体−抗原界面は、電子密度で明確に定義される。
【0155】
3つのFab(C836、HFAL62、及びM1295)はそれぞれ、IL−13ポリペプチド鎖のN−末端及びC−末端に近接するへリックスA及びDの表面でIL−13に結合する。抗体−抗原界面は、相互作用分子それぞれの約600Åを被覆する。接触している残基は、4Åカットオフ原子間距離を用いて定義される。この定義を用いて、これらの抗体により認識されるエピトープは、IL−13の8残基、へリックスAの3残基(Arg10、Ile13、Glu14)及びへリックスDの5残基(Leu100、Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)を含む。接触数に基づくと、Arg10及びArg107がエピトープの重要な残基であると思われる。
【0156】
C836のパラトープは、L−CDR2を除く6つのCDRそれぞれ内に存在するIL−13と相互作用する(4Åカットオフ原子間距離に基づく)12残基を含む。パラトープは、L鎖3残基(配列番号2のTyr32、His91、Asn92)及びH鎖9残基(配列番号3のTyr32、Trp54、Trp55、Asp56、Val58、Arg60、Asp103、Tyr104、Asp105)を含む。接触数に基づくと、主な認識CDRはH2及びH3である。軽鎖におけるアンカー残基は、Tyr32であり、これはArg10に積み重ねられ、IL−13のGlu14と水素結合を形成する。L−CDR3との唯一の接触が、Arg10(IL−13)と主鎖カルボニル基のHis91との水素結合である。L−CDR3における側鎖の残基は、IL−13と直接相互作用しないように思われる。
【0157】
HFAL62エピトープ及びパラトープ残基は、C836と同一である。
【0158】
M1295は、HFAL62と比べてL−CDR3(配列番号25)に異なる残基を含み、ここでは残基Asn92−Glu93がAsp92により置換されている、即ち、1つの残基が欠失し、1つが突然変異している。IL−13との複合体においてM1295とHFAL62と結晶構造の比較は、他のCDRで生じる重大な構造変化を示さない。L−CDR3における欠失により、ループが短くなり、その結果導入されたAsp92残基が、以前はAsn−Glu対によって保持されていた空間を占め、一方隣接残基His91及びTyr94は、ほとんど同じ位置に存在する。これらの変化により、IL−13との更なる接触が可能になる。配列番号25のLC Asp92は、重要なエピトープ残基Arg10(配列番号1)と塩橋を形成する。この塩橋は、HFAL62には存在しない、なぜなら、潜在的パートナー(Glu93)がArg10から離れた方向に向いているためである。別の新規接触は、LCのAsp92とIL−13のN末端のSer6との間の水素結合である。この相互作用は、エピトープを伸長させる、その理由は、Ser6がHFAL62又はC836のいずれかと接触していないためである。全体で、M1295が結合しているIL−13エピトープは、IL−13の9残基(Ser6、Arg10、Ile13、Glu14、Leu100、Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)を含む。M1295のパラトープは、L鎖3残基(Tyr32、His91、Asp92)及びH鎖9残基(Tyr32、Trp54、Trp55、Asp56、Val58、Arg60、Asp103、Tyr104、Asp105)を含む。
【0159】

実施例7:アラニンスキャニング
結晶解析に加えて、IL−13に対する結合に重要な可変ドメイン(1又は複数)の残基を決定するための、C836の重鎖及び軽鎖可変領域のアラニンスキャニング突然変異誘発試験を本明細書に記載する。
【0160】
59個の複合体で調べられ、特異性決定残基(SDR)として記載される抗原と接触している抗体可変ドメインの残基を、突然変異誘発のために選択した。残基は、C836軽鎖(配列番号2)の27〜36、46〜56、及び89〜97、及び重鎖(配列番号3)の27〜39、49〜60、及び100〜111であった。変異体は、1μg/mLから始めて3倍ずつ段階希釈した6種の濃度で、実施例2に記載のようにIL−13R−アルファ2固相アッセイで試験した。活性を、野生型Mabに対して正規化した。
【0161】
IL−13R−アルファ2の結合が、野生型抗体に対して低ナノモル濃度の抗体でどれ程変化するかに基づいて、又は結合がアラニン置換により影響を受けないか若しくは実際に強化されるかに基づいて、残基をIL−13への結合に対して「極めて重要」、「重要」、又は「重要ではない」に(重要度の順に)分類した。
【0162】
結合に極めて重要:軽鎖:Y32、Q89、Q90、及びH91。重鎖:G33、H52、V58、R60、M100、G101、S102、D103、Y104、D105、及びW107。
【0163】
結合に重要:軽鎖:K31、Y49、N92、E93、及びY96。重鎖:F27、L29、Y32、M34、G35、L50、I53、W54、D56、及びV106。
【0164】
結合に重要ではない:軽鎖:K27、S28、I29、S30、L33、S50、G51、S52、T53、L54、Q55、S56、Y94、及びP95。重鎖:S28、S30、T31、W49、D57、及びK59。
【0165】
全体に、重鎖は、軽鎖残基に比べて結合に関与している(即ち、結合に対して極めて重要又は重要のいずれかに分類される)残基が多かった。これは、幾つかの異なる軽鎖フレームワークが、IL−13に効率よく結合するIL−13抗体を産生し得るという観察結果を支持する。例えば、H2(配列番号20)と組み合わせられたL3(配列番号6)、L6(配列番号9)、及びL14(配列番号17)の組み合わせは、約250pMという類似のK値を有する。対照的に、32及び31における重鎖(配列番号3)のフレームワーク領域における3つの突然変異のみが、それぞれ250pMから500pMにKを2倍低下させた。
【0166】
アラニンに突然変異した51残基のうち20残基が、結合に関与する残基のコアを形成し、極めて重要な残基に近接する他の15残基が結合に重要であることが見出された。
【0167】
結晶解析研究(実施例6)から得られた証拠と合わせて、結合に関与していると決定された残基は、本発明の抗体のパラトープの残基、及び活性変異体を生じさせるフレームワークに対する改変の可能性を更に定義するのを助ける。
【0168】

実施例8:ヒト化抗IL−13抗体の生物活性
M1295を完全ヒトIgG1抗体に変換し、アレルギー性気道炎症のラットモデルにおける生物活性について評価した。ノルウェーブラウンラットを感作し、次いでオボアルブミン(ova)タンパク質でアレルギーを誘発させたところ、肺への好酸球性動員の増加により特徴付けられる気道のアレルギー反応が生じ、また、非選択性ムスカリン性受容体アゴニストであるメタコリン(MCh)によるアレルギー誘発に対する反応の肺の抵抗性の変化により判定されるように、気道過敏性(AHR)が増加した。M1295 IgG1で処理したラットは、アレルギー反応の誘発相中、オボアルブミンへの全身感作後、気管支肺胞洗浄(BAL)液が全細胞中において用量依存的に減少した。0、14、及び21日目、48匹のラットを、一連のOVA及びミョウバン注射を用いてOVAに感作し、炎症反応を延長させた。具体的には、ラットを、滅菌溶液(0.9% NaCl)中で水酸化アルミニウム(4.28mg/mL)と混合したOVA(100mg/mL)溶液0.5mLを皮下注射することにより感作したが、但し群1は、同じプロトコルを用いて滅菌0.9% NaCl0.5mLで処理した偽の非感作対照とした。次いで、対照である群1を除く全ての動物を、実験の23、25、及び28日目に、気管内(IT)注入により、OVA(1mg/kg)でアレルギーを誘発させ、気道においてova特異的アレルギー反応を誘発した。
【0169】
研究のために、48匹のラットを8個体ずつ6群に分けた。群1は、偽感作し、PBSでアレルギー誘発し、媒体で処理した。群2は、ovaで感作し、媒体のみで処理した。群3は、ovaで感作し、OVAによるアレルギー誘発(1mg/kg/投与、IT)前日及び誘発日にブデソニドで処理した。群4〜6は、感作相後、誘発相中、実験21日目(最後のOVA−ミョウバン注射後の午後)から開始して、及び実験27日目に、静脈内注射により、漸増用量のM1295 IgG1(1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kg)で処理した。
【0170】
29日目に、動物をメタコリンによるアレルギー誘発に反応する肺機能試験に供した。抵抗性及びコンプライアンスの基準測定後、漸増用量のメタコリン(Mch;ネブライザ中6、12、25、50、及び100mg/mL)をエアロゾルを介して送達し、肺の抵抗性及びコンプライアンスを測定した。気道の抵抗性を、メタコリンの各濃度について算出し、平均+SEMを全ての処理群についてプロットした。
【0171】
動物を安楽死させ、浸潤性細胞、具体的にはBALへの好酸球動員を決定するためにBAL液を回収した。AHRの一次エンドポイント及びBALへの好酸球動員に加えて、肺組織サンプルをH&E染色を含む通常の組織学的分析及び粘液産生の評価のために回収した。
【0172】
MCh誘導性気道抵抗性の変化は、試験後にBonferonni多重比較を行う2元配置分散分析(ANOVA)を用いて評価した。BAL細胞数、抗体量、サイトカイン量、及び病態スコアの変化を、適切な多重比較試験と共にANOVAを用いて行った。p<0.05の値を有意であるとみなした。
【0173】
M1295 IgG1で処理したラット群における好酸球、リンパ球、マクロファージ、及び好中球細胞数は、生理食塩水処理されたova感作動物に比べて、著しく用量依存的に減少した。好酸球の相対百分率は著しく減少し、生理食塩水処理されたova感作動物に比べて、M1295 IgG1の全ての用量で処理した動物で、数が約50%減少した。肺への細胞動員の減少、及び好酸球の相対百分率の低下は、統計的に有意ではなかったが、全体の傾向は、ラットにおけるM1295 IgG1の生物活性を示す。
【0174】
気道過敏性について、10mg/kgのM1295 IgG1で処理された動物は、生理食塩水処理されたova感作動物に対して、最後の肺OVAアレルギー誘発の24時間後に繰り返しMChでアレルギー誘発した後の最大気道抵抗性(p<0.01)、及び、Mchによる漸増誘発直前の基準気道抵抗性(p<0.05)において統計的に有意な低下を示した。
【0175】
この研究により、アレルギー反応及び炎症に関連するパラメータにおける用量依存的影響により決定したときM1295 IgG1が生物的に活性であることが確認された。
【0176】

実施例9:ヒト疾患を治療するためのヒト化抗IL−13抗体の使用
前臨床試験は、喘息、アトピー性皮膚炎、及び好酸球介在疾患の病態に関連する機構的に明らかなエンドポイントを用いる、ヒト細胞に基づくインビトロアッセイにおいて、ヒトIL−13のM1295介在中和の機能的効果を明らかにする。結果は、IL−13介在STAT6リン酸化の阻害、細胞ホーミングケモカインCCL2及びCCL26のIL−13介在誘導の阻害、及びIL−13介在CD23調節の阻害により測定したとき、M1295及び関連結合領域を含む抗体断片の機能的効果を確認する。
【0177】
このデータは、アトピー性及び非アトピー性疾患において、IL−13経路の役割を評価する広い範囲の既に公開されているデータに加えて、IL−13が、重要な免疫調節因子であり、喘息、アトピー性皮膚炎、及び好酸球介在疾患において中枢となる役割を果たしていることを示す。前臨床試験のデータは、IL−13の拮抗作用が、II型炎症反応に関連する下流のシグナル伝達事象を減少させるという仮説を支持し、抗IL−13療法介入が、これら疾患に関連する臨床所見を有する患者において有益であり得るという証拠を提供する。
【0178】
M1295及び関連結合領域を含む抗体断片の試験は、喘息の被験体において、潜在的に有用であり得る用量を含む、広範な用量(0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kg、3.0mg/kg、及び10.0mg/kg)について調べる。このフェイズ1研究で評価される用量範囲は、ラット及びカニクイザルにおけるヒトIL−13生物活性のインビトロ中和、毒性、及び薬物動態データ、並びに高親和性でヒトIL−13に結合する抗IL−13 mAbであるIMA−638を用いた臨床試験に基づく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−13(配列番号1)のエピトープに結合する単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記エピトープが配列番号1の10の位置のアルギニン、及び107の位置のアルギニンを含む、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記エピトープが、配列番号1の6の位置のセリン、13の位置のイソロイシン、14の位置のグルタミン酸、100の位置のロイシン、103の位置のリジン、106の位置のフェニルアラニン、及び108の位置のグルタミン酸からなる群から選択される残基を更に含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
軽鎖可変領域を含むパラトープを含み、更にa)配列番号1の10の位置のアルギニンでIL−13と相互作用し、且つb)配列番号1の14の位置のグルタミン酸と結合を形成するチロシン残基を含む単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記パラトープが、前記軽鎖可変領域にヒスチジン残基及びアスパラギン残基を更に含む、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記パラトープが、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、バリン、及びアルギニンからなる群から選択されるパラトープ接触残基を含む重鎖可変領域を更に含む、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域が、配列番号2を含み、前記チロシンが、配列番号2の32の位置に存在し、前記重鎖可変領域が、配列番号3を含み、及び前記接触残基が、32の位置のチロシン、54の位置のトリプトファン、及び104の位置のチロシンを含む、請求項5に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
軽鎖可変領域を含むパラトープを含み、更にa)配列番号1の10の位置のアルギニンでIL−13と相互作用し、且つb)配列番号1の6の位置のセリンと結合を形成するアスパラギン酸残基を含む単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記パラトープが、前記軽鎖可変領域にチロシン残基及びヒスチジン残基を更に含む、請求項7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記パラトープが、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、バリン、及びアルギニンから成る群から選択されるパラトープ接触残基を含む重鎖可変領域を更に含む、請求項7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記軽鎖可変領域が、配列番号25を含み、前記アスパラギン酸が、配列番号25の92の位置に存在し、前記重鎖可変領域が、配列番号26を含み、及び前記接触残基が、32の位置のチロシン、54の位置のトリプトファン、及び104の位置のチロシンを含む、請求項9に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
C863、HFAL62、及びM1295からなる群から選択されるモノクローナル抗体と、IL−13のエピトープに対する結合を競合する、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
IL−13のエピトープに対する結合を競合する前記抗体が、配列番号29に記載の軽鎖CDR3(L−CDR3)を含む、請求項11に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項13】
前記配列番号29に記載のL−CDR3が、以下の式(I)により更に定義される、請求項12に記載の単離モノクローナル抗体:
式(I)−−Q−Q−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−P−Y−T(配列番号29)
(式中、Xaaは、His、Gln、又はProであってもよく;
Xaaは、Asn、Asp、Ser、Leu、Pro、Ile、Phe、Glu、又はValであってもよく;
Xaaは、Glu、Asp、Gly、Ser、Ile、Tyr、Tryp、Asn、His、Val、Met、Arg、Leu、Phe、Proであってもよく、又は存在しなくてもよく;及び
Xaaは、Tyr、Gly、Ser、Ala、Val、Phe、Thr、Gluであってもよく、又は存在しなくてもよい)。
【請求項14】
IL−13のエピトープに対する結合を競合する前記抗体が、配列番号28に記載の重鎖可変領域を含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項15】
IL−13のエピトープに対する結合を競合する前記抗体が、配列番号27に記載の軽鎖可変領域を更に含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項16】
配列番号9に記載の可変軽鎖及びその変異体、並びに配列番号20に記載の可変重鎖及びその変異体を含む単離モノクローナル抗体。
【請求項17】
前記配列番号9に記載の可変軽鎖の変異体が、91の位置のヒスチジン、92の位置のアスパラギン、93の位置のグルタミン酸、及び94の位置のチロシンからなる群から選択される残基における変化を含む、請求項16に記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
91の位置のヒスチジン、92の位置のアスパラギン、93の位置のグルタミン酸、及び94の位置のチロシンからなる群から選択される前記残基が、以下のように異なるアミノ酸に変化している又は欠失している、請求項17に記載のモノクローナル抗体:
【表12】





【請求項19】
前記配列番号20に記載の可変重鎖の変異体が、31の位置のスレオニン、34の位置のメチオニン、100の位置のメチオニン、及び106の位置のバリンからなる群から選択される残基における変化を含む、請求項16に記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
31の位置のスレオニン、34の位置のメチオニン、100の位置のメチオニン、及び106の位置のバリンからなる群から選択される前記残基が、以下のように異なるアミノ酸に変化している又は欠失している、請求項19に記載のモノクローナル抗体:
【表13】


【請求項21】
配列番号25に記載の軽鎖可変領域及び配列番号26に記載の重鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項22】
前記軽鎖可変及び重鎖領域が、対応する軽鎖及び重鎖免疫グロブリン定常領域、並びに重鎖ヒンジ領域に融合する、請求項21に記載の単離抗体。
【請求項23】
請求項21に記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項24】
配列番号25及び配列番号26に記載の変異体を更に含み、かかる変異体が、IL−13(配列番号1)のエピトープに結合する能力を保持し、前記エピトープが、配列番号1の10の位置のアルギニン及び107の位置のアルギニンを含む、請求項22に記載の単離抗体。
【請求項25】
前記エピトープが、配列番号1の6の位置のセリン、13の位置のイソロイシン、14の位置のグルタミン酸、100の位置のロイシン、103の位置のリジン、106の位置のフェニルアラニン、及び108の位置のグルタミン酸からなる群から選択される残基を更に含む、請求項24に記載の単離抗体。
【請求項26】
ヒト化重鎖可変領域及びヒト化軽鎖可変領域を含む単離ヒト化組換え抗体であって、前記ヒト化重鎖可変領域が、重鎖配列番号3の3つの相補性決定領域(CDR)及びヒト受容器抗体重鎖のヒトフレームワーク領域を含み、前記ヒト化軽鎖可変領域が、軽鎖配列番号2の3つの相補性決定領域及びヒト受容器抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域を含み、前記ヒト化抗体が、STAT6シグナル伝達により測定したとき、THP−1細胞におけるIL−13のIL−13受容体への結合を低減する、前記単離ヒト化組換え抗体。
【請求項27】
前記抗体が、(a)野生型IL−13誘導性Stat−6リン酸化により測定したとき、ヒトIL−13受容体アルファ1又は好適な動物のIL−13受容体に対するヒト組換え野生型ヒトIL−13の結合を阻害する、(b)ヒトIL−13受容体アルファ2又は好適な動物のIL−13受容体に対するヒト組換え野生型ヒトIL−13の結合を阻害する、(c)生理食塩水処理されたオボアルブミン感作動物に比べて、抗体で処理されたラット群の好酸球、リンパ球、マクロファージ、及び好中球細胞数を減少させる、及び(d)非特異的対照剤と比べて、化学的にアレルギー誘発された動物における気道抵抗性を低下させる、からなる群から選択されるIL−13ポリペプチドの少なくとも1つの活性を実質的に調節する、請求項26に記載の抗体。
【請求項28】
配列番号3、20、及び26からなる群から選択される重鎖可変領域のCDRを含む、請求項26に記載の抗体。
【請求項29】
配列番号2、9、14、及び26からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDRを含む、請求項26に記載の抗体。
【請求項30】
表面プラズモン共鳴(Biacore)により測定したとき、250pM(0.250×10−9M)未満のKでIL−13変異体R110Qに結合し、且つSTAT6シグナル伝達により測定したとき、THP−1細胞におけるIL−13のIL−13R2アルファ1への結合を阻止する、ヒトIL−13に免疫特異的な抗原結合抗体断片であって、前記抗体が、Arg10、Ile13、Glu14を含むへリックスAの残基、及びLys103、Phe106、Arg107、Glu108を含むへリックスDの残基において、ヒトIL−13と接触することを示され得、この場合の原子間距離が4.0Åを超えない、前記抗原結合抗体断片。
【請求項31】
請求項1に記載のIL−13抗体をコードする単離核酸。
【請求項32】
請求項31に記載の単離核酸を含む、核酸ベクター。
【請求項33】
請求項31に記載の単離核酸を含む、原核又は真核宿主細胞。
【請求項34】
請求項1に記載のIL−13抗体と、製薬上許容できる担体又は希釈剤とを含む組成物。
【請求項35】
有効量の請求項1に記載の抗体を含む組成物を接触させる又は投与する工程を含む、細胞、組織、器官、又は動物におけるIL−13関連病状を診断又は治療する方法。
【請求項36】
前記IL−13関連病状が喘息である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記有効量が、前記細胞、組織、器官又は動物1キログラム当たり0.001〜50mgである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記接触又は前記投与が、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺臓内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、バッカル、舌下、鼻腔内、又は経皮から選択される少なくとも1つの方式による、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
検出可能な標識又はリポーター、抗感染薬、循環器(CV)系薬、中枢神経系(CNS)薬、自律神経系(ANS)薬、呼吸器薬、胃腸(GI)管薬、ホルモン又はホルモン刺激薬、体液又は電解質平衡薬、血液製剤、抗新生物薬、免疫調節薬、栄養製品、サイトカイン、又はサイトカイン拮抗薬から選択される、少なくとも1つの化合物又はポリペプチドの有効量を含む少なくとも1つの組成物を、前記(a)接触又は投与の、前、同時、又は後に投与することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
それを必要としている患者の細胞、組織、又は器官と、請求項1に記載のIL−13抗体との接触を促進するのに好適である医療機器。
【請求項41】
請求項1に記載の少なくとも1つのIL−13抗体の、溶液又は凍結乾燥形態を含む、容器及び包装材を含む、ヒトの製薬又は診断用途向けの製造品(article of manufacture)。
【請求項42】
前記容器が、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺臓内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、バッカル、舌下、鼻腔内、又は経皮的送達デバイス又は系の構成要素である、請求項41に記載の製造品。
【請求項43】
請求項1に記載の少なくとも1つの単離された哺乳動物IL−13抗体を産生する方法であって、前記抗体を回収可能な量で発現し得る宿主細胞、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は植物細胞を提供すること、を含む前記方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法により生成される、IL−13抗体。
【請求項45】
へリックスA(Arg10、Ile13、Glu14)の残基、及びへリックスD(Lys103、Phe106、Arg107、Glu108)の残基を含むIL−13エピトープ、又はその模倣ペプチドを用いる宿主の免疫方法。
【請求項46】
請求項1〜22及び24〜30のいずれか一項に記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項47】
IL−13介在疾患を治療する薬剤を製造するための、請求項1〜22及び24〜30のいずれか一項に記載の抗IL−13抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【公表番号】特表2012−506695(P2012−506695A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523864(P2011−523864)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/053425
【国際公開番号】WO2010/021874
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(509087759)ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】