説明

改変された量の塩化物およびカリウムを使用した微細藻類における高レベルのDHAの産生法

【課題】低レベルの塩化物イオンを使用した、従属栄養性海産渦鞭毛虫クリプテコジニウムを含む海産微生物による高度不飽和脂肪酸の産生方法を提供する。
【解決手段】特に、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンのレベルを操作することにより、低塩化物培地において増殖中の海産微生物クリプテコジニウム属による高度不飽和脂肪酸の産生を増加させる方法。また、低pH耐性株の作製の方法を含む、低pHレベルにおける海産生物による高度不飽和脂肪酸の産生。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、培養培地における改変された量の塩化物イオンおよびカリウムイオンを使用した、海産微生物による高度不飽和脂肪酸の産生の方法に関する。より具体的には、本発明は、低い塩化物イオンおよび高いカリウムイオンの環境において培養することを含む非腐食性条件下で、発酵槽において、従属栄養性海産渦鞭毛虫クリプテコジニウム(Crypthecodinium)を含む海産微細藻類を培養することにより、高レベルのドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する方法に関する。本発明は、低いpHレベルにおける、海産微生物による、DHAを含む高度不飽和脂肪酸の産生の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
心血管性および炎症性の疾患(即ち、関節炎およびアテローム性動脈硬化症)の減少、抑うつの減少、妊娠の最後の三半期の延長、並びに腫瘍増殖の阻害を含む、ヒトにおける長鎖オメガ-3脂肪酸の増加した食事からの摂取の有益な効果は、よく立証されている。クリプテコジニウム属のものを含む、いくつかの従属栄養性海産微生物は、これらの重要な必須脂肪酸を高レベルに産生することが見出されている(Jiang and Chen,Process Biochemistry 35(2000)1205-1209;Jiang and Chen,Journal of Industrial Microbiology&Biotechnology,(1999)Vol.23,508-513;Vazhappilly and Chen,Journal of the American Oil Chemists Society,(1998)Vol.75,No.3 p393-397;Kyle,米国特許第5,407,957号;米国特許第5,397,591号;米国特許第5,492,938号;および米国特許第5,711,983号)。
【0003】
クリプテコジニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)は、最も重要な長鎖オメガ-3脂肪酸のうちの一つであるDHA(C22:6n-3)の産生のために利用される最も望ましい生物のうちの一つである。C.コーニーが有利であるのは、この生物によって認め得る程度の量で産生される多価不飽和脂肪酸(PUFA)がDHAのみであるためである。その他の生物は、脂質中に二種以上の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を産生し、脂質プロファイルが複雑であるために、食物および薬学的適用におけるそれらの油の使用は制限される場合がある(例えば、油中の他の望ましくないPUFAの存在のため、または特定の適用にとって望ましい範囲から逸脱している種々のPUFAの比率のため)。海洋環境において、クリプテコジニウム・コーニーは、通常、高塩分海水中に見出され、従って、高い塩化物濃度を有する環境における増殖に適応している。実際、C.コーニーに関する公開された研究における大部分の培養物が、増殖およびDHA産生が、海水の約20%を超える塩分で最適となることを示している(Jiang and Chen)。20%海水と等価な塩化物イオン濃度は、約3870ppmの塩化物イオンまたは3.87g/lの塩化物イオンである(Horne 1969)。
【0004】
TuttleおよびLoeblich(1975)は、C.コーニーのための至適増殖培地を開発した。開示された培地は、342ミリモル濃度(mM)の塩化ナトリウム濃度を含有していた。342mM塩化ナトリウム溶液中のナトリウムイオンおよび塩化物イオンの等価な1リットル当たりのグラム数は、7.86g/Lのナトリウムイオンおよび12.12g/Lの塩化物イオンである。
【0005】
Beach&Holz(1973)は、ある範囲のNaCl濃度(0.3%、1.8%、および5.0%(それぞれ、1.82g/l、10.9g/l、および30.3g/lの塩化物イオン))でC.コーニーを培養した場合、NaCl濃度が減少するにつれ、(細胞109個当たりのmg数として表された)脂質収率が低下することを報告した。0.3%NaClにおける脂質収率は、5.0%NaClにおける収率のおよそ三分の一であった。さらに最近、JiangおよびChen(1999)は、クリプテコジニウム・コーニーの三つの株を用いて細胞増殖およびDHA含有量に対する塩分の効果を決定し、全ての場合に、それぞれ3.0〜5.5g/L塩化物イオンに相当する5g/L〜9g/Lの間の塩化ナトリウムにおいて、細胞の増殖速度およびDHA収率が至適となることを見出した。
【0006】
天然の海水の塩化物濃度(19,353ppmまたは19.35g/lの塩化物イオン)(Horne 1969、151頁)は、ステンレス発酵槽における腐食を促進する。例えば、発酵槽の製造に使用されている二つの一般的な等級のステンレスのうち、304-ステンレスは、塩化物レベルが300ppm(0.3g/l塩化物イオン)を越えると腐食感受性となり、316-ステンレスは、塩化物レベルが1000ppm(1g/l塩化物イオン)を越えると腐食感受性となる。塩化物腐食に対してより抵抗性のその他の等級のステンレスも存在するが、それらは、極端に高価であり、極めて高価な化合物の産生のために利用される発酵装置においてのみ一般に使用されている。
【0007】
培養培地中の塩化物濃度を低下させることにより、ステンレス発酵槽の腐食の最小化が達成されるかもしれないことが予測され得るが、実際、これは容易な課題ではない。海に由来する海産微細藻類は、一般に、培養物中で培養される場合、増殖および脂質産生を維持するために、好ましくは塩化ナトリウムとしての塩化物イオンを、ある程度の量、必要とする。
【0008】
しかしながら、DHAのようなオメガ-3多価不飽和脂肪酸の産生のレベルを維持しつつ、低い塩化物濃度で海産微細藻類を培養する試みは、現在のところ、未成功である。JiangおよびChen(1999)は、約3033ppmまたは3g/Lの塩化物レベルに相当する5g/l未満のNaClレベルにおいては、有意なDHA収率を証明することができなかった。
【0009】
2002年6月25日発行のBarclayの米国特許第6,410,281号は、塩化ナトリウムレベルを低下させた場合に失われるナトリウムを補充するため、非塩化物ナトリウム塩を代用することにより、低塩化物培地中でトラウストキトリウム(Thraustochytrium)種およびスキゾキトリウム(Schizochytrium)種のような広塩性生物を培養する方法を提供している。
【0010】
商業的に最も望ましい生産容器であるステンレス培養発酵槽における腐食を阻害または防止しつつ、クリプテコジニウム・コーニーからの高収率のDHAの産生を可能にするであろう方法が必要とされている。この方法は、好ましくは300ppm未満の塩化物を含有している培地における、微生物の効率的な増殖を可能にしなければならないであろう。300ppm塩化物とは、クリプテコジニウムの株の産生にとって最適であることがJiang&Chen(1999)により証明された最低塩化物レベルより10〜18倍低いレベルを表す。
【0011】
微生物発酵の別の望ましい特徴は、真菌発酵中の細菌の増殖を阻害するために低いpH(約pH=5.0以下)で細胞を培養する能力である。しかしながら、文献は、クリプテコジニウムが中性pH(約pH7)で最適に増殖することを示している。TuttleおよびLoeblichは、Phycologia Vol.14(1)1-8(1975)において、クリプテコジニウム増殖のための至適pHが6.6であり、pH5.5未満での増殖は「極めて遅い」ことを開示している。正常な増殖およびDHAの産生を保持しつつ、低いpHでクリプテコジニウムを培養するための株および/または方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
塩化ナトリウムは発酵槽の腐食という問題を起こすため、クリプテコジニウムのための培養培地中の塩化ナトリウムレベルを最小化することを試みる中で、本発明者らは、驚くべきことに、約4.5g/L NaCl(2.73g/l塩化物イオンに相当)で得られる収率に類似したDHAの収率を維持しつつ、塩化物イオンの(300ppmまたは0.3g/l塩化物イオンへの)減少を補償するために、培養培地中のナトリウム塩、そして好ましくはカリウム塩を操作することによって、塩化ナトリウムレベルを低下させ得ることを発見した。
【0013】
本発明者らは、通常の「高塩化物」培地における増殖と比較して、乾燥重量での脂肪含有量またはDHA含有量に有害な影響を与えることなく、(約0.3g/l塩化物イオンへと)実質的に低下した塩化物レベルを有する培地において、クリプテコジニウムを培養することができる培養条件を同定した。比較可能なDHA収率の達成は、単なる、培地中の塩化ナトリウムの他のナトリウム塩への交換という問題ではなかった。実際、他のナトリウム塩(即ち、硫酸ナトリウム)からの等価な量のナトリウムへの塩化ナトリウムの交換は、高塩化物対照例と比較可能なDHA収率をもたらさず、実際、培養物のDHA収率のさらなる減少をもたらした。その代わりに、本発明者らは、驚くべきことに、(4.5g/lまたは17%のNaClを含む海水と比べて)カリウム濃度を有意に増加させた場合に、最適なDHA収率が得られることを見出した。ナトリウムの量の実質的な減少およびカリウム濃度の増加が、培地の塩化物含有量の減少を補償するのに効果的であろうことは予想外である。
【0014】
一つの態様において、本発明は、培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する方法を含む。その培地は、約2g/l以下の濃度の塩化物イオンおよび約0.25g/l以上の濃度のカリウムイオンを含む。この態様において、微細藻類は、7日間培養物1リットル当たり少なくとも約0.04gのDHAを産生する。7日間培養物は、一般的に、約5×106細胞/mlまたは約5×109細胞/リットルを有する。従って、7日目に約0.2g/lのDHAを有する培養物は、細胞109個当たり0.04gのDHAを含有している。好ましい態様において、微細藻類は、クリプテコジニウム属のものである。より好ましい微細藻類は、クリプテコジニウム・コーニーである。好ましくは、塩化物イオンの濃度は約1g/l以下であり、さらに好ましくは約0.3g/l以下である。好ましくは、カリウムイオンの濃度は、約0.4g/l以上であり、さらに好ましくは約0.8g/l以上である。好ましくは、カリウムイオンの供給源は硫酸カリウムである。好ましい態様において、培地は、ナトリウムイオン濃度が約1g/l〜約8g/lとなるよう、ナトリウムイオンの供給源をさらに含む。より好ましくは、ナトリウムイオンは約1.5g/l〜約5g/lである。好ましいナトリウムイオンの供給源は硫酸ナトリウムである。本発明には、この方法により産生されたバイオマスが含まれる。
【0015】
別の態様において、本発明は、培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりDHAを産生する方法を含む。その培地は、約2g/l以下の濃度の塩化物イオン、約0.25g/l以上の濃度のカリウムイオン、および約27:1のナトリウム:カリウム重量比以下の比率で存在するナトリウムイオンを含む。この態様において、微細藻類は、7日間培養物1リットル当たり約0.2gのDNA、または細胞109個当たり少なくとも約0.04gのDHAを少なくとも産生する。好ましい態様において、微細藻類はクリプテコジニウム属のものである。より好ましい微細藻類はクリプテコジニウム・コーニーである。好ましくは、塩化物イオン濃度は、約1g/l以下であり、さらに好ましくは約0.3g/l以下である。好ましくは、カリウムイオンは、約0.4g/l以上であり、さらに好ましくは約0.8g/l以上である。好ましくは、カリウムイオンの供給源は硫酸カリウムである。培地は、ナトリウムイオンが、カリウムイオンの重量の(重量で)27倍(27:1ナトリウム:カリウム重量比と表される)未満の比率で培地中に存在するよう、ナトリウムイオンの供給源をさらに含む。好ましい態様において、ナトリウム:カリウム比は約15:1未満である。さらに好ましくは、約4:1のナトリウム:カリウム比である。好ましいナトリウムイオンの供給源は硫酸ナトリウムである。本発明には、この方法により産生されたバイオマスが含まれる。
【0016】
本発明者らは、商業的に実用的な増殖の速度およびDHAを含む脂質の産生を維持しつつ、実質的に低下したpHレベルを有する培地においてクリプテコジニウムを培養することを可能にする培養培地条件および株も同定した。別の態様において、本発明は、培養培地が約6未満のpHを有しており、微細藻類が少なくとも約0.04g DHA/109細胞を産生する、培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりDHAを産生する方法を含む。培地は、約2g/l以下の濃度の塩化物イオン、約0.25g/l以上の濃度のカリウムイオン、および27:1ナトリウム:カリウム重量比未満の比率で存在するナトリウムイオンをさらに含み得る。この態様において、微細藻類は、少なくとも約0.04g DHA/109細胞を産生する。好ましい態様において、微細藻類はクリプテコジニウム属のものである。より好ましい微細藻類はクリプテコジニウム・コーニーである。好ましい態様において、pHは約5.5以下であり、より好ましくは約5.0以下であり、さらに好ましくは約4.5以下である。好ましい態様において、培地は、約2g/l以下、好ましくは約1g/l以下、さらに好ましくは約0.3g/l以下の塩化物イオン濃度をさらに含む。培地はまた、約0.25g/l以上、約0.4g/l以上の濃度でカリウムイオンも含み、さらにより好ましくは、約0.8g/l以上である。好ましくは、カリウムイオンの供給源は硫酸カリウムである。好ましい態様において、培地は、ナトリウムイオン濃度が約1g/l〜約8g/lとなるよう、ナトリウムイオンの供給源をさらに含む。より好ましくは、ナトリウムイオンは約1.5g/l〜約5g/lである。好ましいナトリウムイオンの供給源は、硫酸ナトリウムである。本発明には、この方法により産生されたバイオマスが含まれる。
【0017】
本発明は、DHAの収率が約0.04g DHA/109細胞以上になるまで、低pH培地中で微細藻類を継代培養することを含む、低pH耐性の渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を選択する方法も含む。好ましい態様において、pHは約6以下、約5以下、約4.5以下である。本発明には、この方法により産生された微細藻類およびバイオマスが含まれる。
【0018】
これらおよびその他の本発明の目的、特色、および利点は、以下の最適な態様の説明、図面、および特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】pH6.3および3g/l塩化物イオンで培養されたC.コーニーT-HF株(pH6.3 SSMと表示)、並びにpH5および1g/l塩化物イオンで培養された低pHに適応したC.コーニーT-HF株(pH5.0 LCSSIと表示)の二連実験に関するDHA収率の時間経過のグラフ表示である。
【図2】pH6.3および3g/l塩化物イオンで培養されたC.コーニーT-HF株(pH6.3 SSMと表示)、並びにpH4.5および1g/l塩化物イオンで培養された低pHに適応したC.コーニーT-HF株(pH5.0 LCSSIと表示)の二連実験に関するDHA収率の時間経過のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の説明
本発明は、渦鞭毛藻綱の海産微細藻類の増殖のために使用される高い塩化ナトリウムレベルにより引き起こされる発酵槽の腐食という前述のような問題を解決する。本発明者らは、培養培地中において改変された量の塩化物イオンおよびカリウムイオンを使用することにより、低塩化ナトリウム条件下での渦鞭毛藻綱の海産微細藻類の商業的に実行可能なレベルの増殖およびDHAの産生を可能にする培養培地成分を発見した。より具体的には、本発明者らは、塩化ナトリウムを非腐食性レベルにまで低下させることにより引き起こされるナトリウムの不足が、培養培地中のカリウムレベルを増加させることにより少なくとも部分的に相殺され得ることを発見した。
【0021】
本発明は、同時に細菌の増殖を妨害しつつ、渦鞭毛藻綱の海産微細藻類の増殖を可能にするという上記の問題も解決する。より具体的には、本発明は、低pHに対して耐性になるよう海産生物を培養する方法を提供する。本発明は、低pHに対して耐性なそのような微生物の株も提供する。本発明者らにより提供される低pH耐性株は、低いpHレベルで、より中性のpHレベルで増殖した株によって達成されるものに比較可能な細胞密度にまで増殖し、それらに比較可能なDHA産生レベルを達成することができる。以下に詳細に記載されるように、本発明の概念は、他の産生生物および他の所望のPUFAに容易に適用され得るため、これは、本発明に包含される技術の一例に過ぎない。
【0022】
本発明の一つの態様は、微細藻類が7日間培養物1リットル当たり少なくとも約0.2gのDHAを産生する、以下の成分:約2g/L未満の濃度の塩化物イオンおよび約0.25g/L以上の濃度のカリウムイオンを含む培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する方法を含む。7日間培養物は、一般的に、5×106細胞/mlを有しており、約0.04g DHA/109細胞をもたらす。好ましい態様において、従属栄養性微細藻類は、少なくとも約0.04g DHA/109細胞、少なくとも約0.06g DHA/109細胞、少なくとも約0.08g DHA/109細胞、少なくとも約0.10g DHA/109細胞、少なくとも約0.12g DHA/109細胞、少なくとも約0.14g DHA/109細胞、少なくとも約0.16g DHA/109細胞、少なくとも約0.18g DHA/109細胞、少なくとも約0.20g DHA/109細胞、少なくとも約0.22g DHA/109細胞、少なくとも約0.24g DHA/109細胞、少なくとも約0.26g DHA/109細胞、少なくとも約0.28g DHA/109細胞、または少なくとも約0.30g DHA/109細胞を産生する。本明細書において使用されるように、培養培地中の栄養素濃度の参照は、培養工程の初期における培地中の栄養素の濃度を指し、接種原の調製のような方法内の前段階から持ち越された任意の栄養素を含む。
【0023】
本発明に適している微生物には、渦鞭毛藻綱のメンバー(渦鞭毛虫)を含む従属栄養性微細藻類が含まれる。この綱の好ましいメンバーは、クリプテコジニウム属のメンバーである。クリプテコジニウム属の好ましいメンバーは、C.コーニーである。クリプテコジニウム・コーニーは、増殖のために少ない炭素源を必要とする偏性従属栄養体であり、認め得る程度の量で存在する唯一の多価不飽和脂肪酸がDHAであるような脂肪酸プロファイルを含有している。適当な生物は、多数の公に利用可能な供給源から、例えば、天然環境からの収集により、入手され得る。例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)は、現在、ATCC番号30021、30334〜30348、30541〜30543、30555〜30557、30571、30572、30772〜30775、30812、40750、50050〜50060、および50297〜50300として同定される45種のクリプテコジニウム・コーニーの利用可能な株を収載している。本明細書において使用されるように、微生物または特定の型の生物には、野生株、変異体、または組換え型が含まれる。
【0024】
本発明の対象であり、後により十分に議論されるナトリウム、塩化物、およびカリウムの濃度とは別に、本発明の培地のその他の成分は、商業的に実行可能なレベルで増殖およびDHAの産生を促進する、当技術分野において公知の任意の成分でよく、米国特許第5,130,242号、米国特許第5,407,957号、米国特許第5,397,591号;米国特許第5,492,938号;および米国特許第5,711,983号(全て参照として全体が本明細書に組み入れられる)に開示されたような成分を含む。より具体的には、グルコース、様々なデンプン、糖蜜、破砕されたトウモロコシ等のような炭素の供給源が使用され得る。同化可能な有機または無機の窒素の供給源も、培養培地に含まれる。窒素の供給源には、硝酸塩、尿素、アンモニウム塩、アミノ酸等が含まれ得る。同化可能なリンの供給源も、供給され得る。培地は、単細胞微生物の従属栄養性の増殖を増強する不特定または特定の化合物であり、酵母またはその他の抽出物、土壌抽出物等を含み得る微生物増殖因子の供給源も含有し得る。C.コーニーおよび関連生物のための増殖培地の具体例は、例えば、Jiang and Chen,Process Biochemistry 35(2000)1205-1209;Jiang and Chen,Journal of Industrial Microbiology&Biotechnology,(1999)Vol.23,508-513;Vazhappilly and Chen,Journal of the American Oil Chemists Society,(1998)Vol.75,No.3 p393-397にも見出され得る。本発明で使用される好ましい培地の具体例は、例えば、本明細書中の下記の実施例の項に見出され得る。
【0025】
本発明の培地の一つの局面において、塩化物イオン濃度は、約2000ppmまたは培養物1リットル当たり約2グラム以下、より好ましくは約1.9g/l以下、より好ましくは約1.8g/l以下、より好ましくは約1.7g/l以下、より好ましくは約1.6g/l以下、より好ましくは約1.5g/l以下、より好ましくは約1.4g/l以下、より好ましくは約1.3g/l以下、より好ましくは約1.2g/l以下、より好ましくは約1.1g/l以下、より好ましくは約1.0g/l以下、より好ましくは約0.9g/l以下、より好ましくは約0.8g/l以下、より好ましくは約0.7g/l以下、より好ましくは約0.6g/l以下、より好ましくは約0.5g/l以下、より好ましくは約0.4g/l以下、最も好ましくは約0.3g/l以下の濃度で存在する。別の態様において、最低塩化物濃度は、少なくとも約0.025g/l、少なくとも約0.05g/l、または少なくとも約0.1g/lである。培地の塩化物イオン成分は、好ましくは、塩化物塩に由来し、好ましい塩は塩化ナトリウムである。培地中の塩化物のその他の供給源には、塩化カリウムおよび塩化カルシウムが含まれる。塩化物イオンの供給源は、培地中の二種以上の塩化物含有化合物を含んでよく、培地のpHを調整するために使用され得る塩酸、並びにMnCl2およびFeCl3を含み得る。
【0026】
本発明の培地の別の局面において、カリウムイオン濃度は約0.25g/Lより高い。カリウムイオンは、一般的に、およそ海水1l当たり0.38gという低いレベルで海水中に存在する。海産微細藻類の増殖のための当技術分野において公知の培養培地は、ほぼ海水の組成に従っており、カリウムイオンのレベルは一般的に同じかまたはより少ない。例えば、TuttleおよびLoeblich(1975)は、およそ0.35g/lのカリウムイオンと等価な9mM KClを開示している。Handbook of Phycological Methods(Janet R.Stein,Ed.,Cambridge University Press,1973)において、培地中のカリウムイオンは塩化カリウムとして9.83mMであると開示されており、これはおよそ0.36g/lのカリウムイオンと等価である。一つの態様において、本発明は、約0.39g/lより高い濃度でカリウムイオンを含む。本発明者らは、カリウムイオンが閾値レベルより高くなった後は、培養物がカリウムイオンの正確な濃度に比較的非感受性となり、ある範囲のカリウムイオン濃度で、よく増殖し、商業的に実行可能なレベルのDHAを与えるようになることを見出した。好ましくは、カリウムイオン濃度の下限域は、少なくとも約0.2g/l、少なくとも約0.25g/l、少なくとも約0.3g/l、少なくとも約0.35g/l、少なくとも約0.4g/l、少なくとも約0.45g/l、少なくとも約0.5g/l、少なくとも約0.6g/l、および少なくとも約0.7g/lである。好ましくは、カリウムイオン濃度の上限域は、最高で約10g/l、最高で約6g/l、最高で約4g/l、最高で約3g/l、最高で約2.8g/l、最高で約2.6g/l、最高で約2.4g/l、最高で約2.2g/l、最高で約2g/l、最高で約1.9g/l、最高で約1.8g/l、最高で約1.7g/l、最高で約1.6g/l、最高で約1.5g/l、および最高で約1g/lである。カリウムイオンの最も好ましい濃度は、約0.75g/l、0.8g/l、0.85g/l、0.9g/l、および0.95g/lである。カリウムイオンの好ましい範囲は、約0.45g/l〜約1.5g/l;より好ましくは約0.5g/l〜約1.2g/l;より好ましくは約0.6g/l〜約1g/l;さらにより好ましくは約0.7g/l〜約0.9g/l;最も好ましくは約0.8g/lである。
【0027】
カリウムイオンの供給源は、特に細胞培養および渦鞭毛藻綱の微細藻類と適合性の任意のカリウム塩であり得る。カリウムイオンは、培地中の塩の混合物に由来し得る。好ましいカリウム塩には、特に、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、重炭酸カリウム、リン酸カリウムが含まれる。カリウムイオンの好ましい供給源は硫酸カリウムである。
【0028】
本発明の一つの局面において、収穫時の培養物からのDHA収量は、本発明の培地において培養されたのではない培養物からのDHA収量より多い。一つの態様において、本発明の方法を使用した低塩化物濃度を使用したDHA収率は、7日間培養物1リットル当たり少なくとも0.2グラムのDHAまたは0.04g DHA/109細胞である。
【0029】
本発明の別の局面において、培地は、塩化ナトリウム以外にさらなるナトリウムイオンの供給源を含有しているであろう。本発明者らは、ナトリウムイオンレベルが本発明にとって重要ではないことを見出した。本発明の海産生物の培養物は、ナトリウムイオンの正確な濃度に対して比較的非感受性であり、ある範囲のナトリウムイオン濃度で、よく増殖し、商業的に実行可能なレベルのDHAを与える。硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、および酢酸ナトリウムを含む様々なナトリウムイオンの供給源が、本発明と適合性である。付加的なナトリウムイオンの好ましい供給源は、硫酸ナトリウムである。好ましい態様において、培地は、少なくとも約1g/l、最大約8g/lのナトリウムイオンを含有している。範囲の下限において、好ましいナトリウムイオン濃度は、少なくとも約1g/l、少なくとも約1.5g/l、少なくとも約2g/l、少なくとも約2.5g/lである。好ましくは、ナトリウムイオン濃度の上限は、最高で約15g/l、最高で約12g/l、最高で約10g/l、最高で約9g/l、最高で約8g/l、最高で約7g/l、最高で約6g/l、最高で約5.5g/l、最高で約5g/l、最高で約4.5g/l、最高で約4g/lである。最も好ましいナトリウムイオンの濃度は、約2.75 g/l、3 g/l、3.25 g/l、3.5 g/l、および3.75 g/lである。好ましいナトリウムイオンの範囲は約1.5g/l〜約7.5g/lであり、さらに好ましいのは約2.0g/l〜約6g/lであり、さらにより好ましいのは約2.5g/l〜約5g/lである。最も好ましい態様において、ナトリウムイオンは少なくとも約3g/l〜約3.5g/lである。ナトリウムの最も好ましいレベルは約3.25g/lである。前記のように、培養物は、ナトリウムの正確なレベルに対して比較的非感受性であり、従って、さらに高いレベルが使用されてもよい。しかしながら、約8g/l超のナトリウムレベルが使用された後は、培養収率はわずかに低下し始める。
【0030】
別の態様において、本発明は、培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することにより、DHAを産生する方法を含む。培地は、約2g/l以下の濃度の塩化物イオン、約0.25g/l以上の濃度のカリウムイオン、および約27:1のナトリウム:カリウム重量比以下の比率で存在するナトリウムイオンを含む。この態様において、微細藻類は、7日間培養物1リットル当たり約0.2gのDHAまたは0.04g DHA/109細胞を少なくとも産生する。この態様において、培養培地はカリウムイオンとの比率が約27:1重量比以下のナトリウムイオンを含有している。海水中のナトリウムイオン対カリウムイオンの比率はほぼ27.3:1である。換言すると、ナトリウムイオンの量はカリウムイオンの量より約27.3倍多い。本発明において、本発明者らは、ナトリウムイオンに比べてカリウムイオンを増加させることにより、培養物からのDHAの収率が増加することを見出した。ナトリウムイオン対カリウムイオンの好ましい比率は、約27:1以下、約25:1以下、約23:1以下、約21:1以下、約19:1以下である。より好ましくは、約17:1以下、約15:1以下、約13:1以下、約11:1以下の比率である。さらにより好ましくは、約9:1以下、約7:1以下、または約5:1以下の比率である。好ましい比率は約4:1である。
【0031】
別の態様において、本発明は、培養培地が約6未満のpHを有しており、微細藻類が7日間培養物1リットル当たり少なくとも約0.2gのDHAまたは0.04g DHA/109細胞を産生する、培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりDHAを産生する方法を含む。好ましい態様において、pHは約5.5以下であり、より好ましくは約5以下である。好ましい態様において、pHは約4.5以下である。好ましい態様において、培地は、さらに、約2g/l以下、好ましくは約1g/l以下、さらに好ましくは約0.3g/l以下の塩化物イオン濃度を含む。培地は、好ましくは、約0.25g/l以上、約0.4g/l以上の濃度でカリウムイオンを含み、さらにより好ましくは約0.8g/l以上である。好ましくは、カリウムイオンの供給源は硫酸カリウムである。好ましい態様において、培地は、ナトリウムイオン濃度が約1g/l〜約8g/lとなるようナトリウムイオンの供給源をさらに含む。より好ましくは、ナトリウムイオンは約1.5g/l〜約5g/lである。ナトリウムイオンの好ましい供給源は硫酸ナトリウムである。この態様には、この方法により産生されたバイオマスが含まれる。
【0032】
別の態様において、本発明は、渦鞭毛藻綱の種の低pH耐性株を調製する方法、およびそれにより産生された株を含む。方法は、低pH培地を調製すること、および培養物が所望の量のDHAを産生するまで所望の渦鞭毛藻種を継代培養することを含む。継代培養は以下の様式で実施され得る。所望の渦鞭毛藻種の接種原を低pH培地中に置き、画定された量の時間、好ましくは7日間、増殖させる。時間の量は重大ではないが、株が増殖するための十分な時間を有し、しかし、老化に達する前であるよう選択されるべきである。培養物のDHAの収率を計算する。所望の量未満であった場合、さらなる継代培養を以下の様式で実施する。新鮮な低pH培地を調製し、低pHで培養された培養物を接種し、適切な量の時間インキュベートする。培養物のDHAの収率を計算する。DHAの収率が所望の量未満であった場合には、DHAの所望の収率が達成されるまで、継代培養を繰り返す。耐性を選択するための好ましいpHは、約6以下、より好ましくは約5.5以下、さらにより好ましくは約5以下、さらに好ましくは4.5以下である。この方法を実施するための培地は、所望のレベルに調整されたpHを有する、当技術分野において公知の任意の培養培地である。継代培養を実施するための好ましい培地は、実施例1に記載された培地である。
【0033】
本発明は、本発明の方法のうちの一つにより産生されたバイオマスも含む。
【0034】
本発明の生物および方法と一致する培養条件は、当技術分野において公知の方法により達成されることができ、米国特許第5,130,242号、米国特許第5,407,957号、米国特許第5,397,591号;米国特許第5,492,938号;および米国特許第5,711,983号に開示された方法を含み、至適条件は、当業者によって容易に決定され得る。簡単に説明すると、培養は、微生物に酸素の供給源を供給する任意の適当な発酵槽、好ましくは撹拌タンク(stirred tank)発酵槽またはエアリフト(air lift)発酵槽のいずれかにおいて達成され得る。微生物の撹拌は、溶存酸素濃度が培養物の増殖およびDHAの産生を支援するのに十分なものであり、かつ撹拌が微生物を剪断しないまたは微生物に傷害を与えないようなレベルに維持されるべきである。好ましい溶存酸素のレベルは、空気飽和レベルの少なくとも10%である。より好ましくは、溶存酸素のレベルは、空気飽和レベルの約10%〜約50%に維持される。
【0035】
培養は、生命が保持される任意の温度で実施され得る。一般的に、微生物は、約15℃〜約34℃の範囲の温度で増殖するであろう。好ましくは、温度は約20℃〜約28℃に維持される。
【0036】
生物は、遠心分離、凝集、またはろ過のような当業者に公知の従来の手段により採集されることができ、直ちに処理されてもよいし、または将来の処理のために乾燥させられてもよい。いずれにせよ、脂質が抽出され得る。本明細書において使用されるように、「脂質」という用語には、リン脂質;遊離脂肪酸;脂肪酸エステル;トリアシルグリセロール;ジアシルグリセリド;モノアシルグリセリド;リゾリン脂質;セッケン;ホスファチド;ステロールおよびステロールエステル;カロテノイド;キサントフィル(例えば、オキシカロテノイド);炭化水素;並びに当業者に公知のその他の脂質が含まれる。当業者によってよく理解されるように、本発明において言及されたDHAは、これらの様々な脂質の形態で存在することができ、遊離脂肪酸に制限されない。使用される抽出技術に依って、異なる型または成分の脂質が抽出され得る。脂質は有効量の溶媒で抽出され得る。適当な溶媒は、当業者によって決定され得る。極性の脂質(例えば、リン脂質)は一般的に極性溶媒(例えば、クロロホルム/メタノール)で抽出され、中性の脂質(例えば、トリアシルグリセロール)は一般的に無極性溶媒(例えば、ヘキサン)で抽出される。好ましい溶媒は純粋なヘキサンである。バイオマスを乾燥させるためのヘキサンの適当な比率は、乾燥バイオマス1キログラム当たりヘキサン約4リットルである。ヘキサンは、好ましくは、約2時間、約50℃の温度で、撹拌された反応容器内でバイオマスと混合される。混合の後、バイオマスがろ過され、油を含有しているヘキサンから分離される。ヘキサンは、当業者に公知の蒸留技術により油から除去される。従来の脂肪種子処理装置が、濾過、分離、および蒸留を実施するのに適当である。特定の適用のため必要であるかまたは望ましい場合には、当業者に公知の付加的な処理工程が実施され得る。脂質回収のための別法は、参照として全体が本明細書に組み入れられる以下の参照文献に記載されている:「油および極性脂質を含有している原材料の分画の方法(Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials)」という名称のPCT国際公開公報第0176715号;「アルコールおよび遠心分離を使用した油および極性脂質を含有している原材料の分画の方法(Method for the Fractionation Of Oil And Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Alcohol And Centrifugation)」という名称のPCT国際公開公報第0176385号;「無溶媒抽出法(Solventless Extraction Process)」という名称のPCT国際公開公報第0153512号。
【0037】
本発明は、特定の生物および方法に関して開示されたが、本明細書に開示された教示に従って入手可能かつ有用であるような全ての方法および株を含み、当業者に利用可能な方策であるような全ての置換、改変、および至適化を含むものとする。以下の実施例および試験結果は例示を目的として提供され、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【実施例】
【0038】
実施例1
この実施例は、4.5g/l NaClを含む標準スクリーニング培地(SSM)の調製を記載する。培地を調製するための最初の工程は、表1に示されるように、以下の化合物を蒸留水に添加し、最終的な所望の容量の90%にすることを含む。化合物は、全て、Sigma Aldrich, St. Louis, MOより入手可能である。
【0039】
(表1)オートクレーブ処理前の培地の量および最終濃度

1 塩化カルシウム二水和物は244g/molであり28.7%塩化物を含む。
2 ストック溶液を別にオートクレーブ処理し、オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する;2週間ごとに新鮮に作成される。
3 ストック溶液を0.2ミクロンのフィルターで濾過滅菌し;暗所で4℃で保管する。オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する。
4 ストック溶液を別にオートクレーブ処理する。オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する。
【0040】
オートクレーブ処理された培地を滅菌水で100%の容量にする。スクリーニング実験のため、35mlのSSM培地を無菌の250ml三角フラスコに添加する。1ml当たり1×105細胞の初期細胞濃度となるように、各フラスコに1mlの接種原を添加する。接種原は5〜6日目の培養物である。培養物を、135rpmの回転式振とう機上で26.5℃で培養する。
【0041】
実施例2
この実施例は、1.41g/l NaClを含む1000ppm塩化物イオンスクリーニング培地(SSM)の調製を記載する(塩化カルシウムおよび塩化カリウムと合わせて、およそ1000ppm、1g/l塩化物イオンとなる)。培地を調製するための最初の工程は、表2に示されるように、以下の化合物を脱イオン蒸留水に添加し、最終的な所望の容量の90%にすることを含む。化合物は、全て、Sigma Aldrich, St. Louis, MOより入手可能である。
【0042】
(表2)オートクレーブ処理前の培地の量および最終濃度

1 ストック溶液を別にオートクレーブ処理し、オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する;2週間ごとに新鮮に作成される。
2 ストック溶液を0.2ミクロンのフィルターで濾過滅菌し;暗所で4℃で保管する。オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する。
3 ストック溶液を別にオートクレーブ処理する。オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する。
【0043】
オートクレーブ処理された培地を滅菌水で100%の容量にする。スクリーニング実験のため、35mlのSSM培地を無菌の250ml三角フラスコに添加する。1ml当たりの1×105細胞の初期細胞濃度となるように、各フラスコに1mlの接種原を添加する。接種原は5〜6日目の培養物である。培養物を、135rpmの回転式振とう機上で26.5℃で培養する。
【0044】
実施例3
この実施例は、0.211g/l NaClを含む300ppm塩化物イオンスクリーニング培地(SSM)の調製を記載する(塩化カルシウムおよび塩化カリウムと合わせて、0.3g/l塩化物イオンとなる)。培地を調製するための最初の工程は、表3に示されるように、以下の化合物を脱イオン蒸留水に添加し、最終的な所望の容量の90%にすることを含む。化合物は、全て、Sigma Aldrich, St. Louis, MOより入手可能である。
【0045】
(表3)オートクレーブ処理前の培地の量および最終濃度

1 ストック溶液を別にオートクレーブ処理し、オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する;2週間ごとに新鮮に作成される。
2 ストック溶液を0.2ミクロンのフィルターで濾過滅菌し;暗所で4℃で保管する。オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する。
3 ストック溶液を別にオートクレーブ処理する。オートクレーブ後の培地に無菌的に添加する。
【0046】
オートクレーブ処理された培地を滅菌水で100%の容量にする。スクリーニング実験のため、35mlのSSM培地を無菌の250ml三角フラスコに添加する。1ml当たりの1×105細胞の初期細胞濃度となるように、各フラスコに1mlの接種原を添加する。接種原は5〜6日目の培養物である。培養物を、135rpmの回転式振とう機上で26.5℃で増殖させる。
【0047】
実施例4
この実施例は、pH6.3のSSMにおけるクリプテコジニウム・コーニーの増殖および収穫のための手法を記載する。
【0048】
いずれの培地を試験するかに依って、実施例1〜3のうちの一つに記載されたようなSSM培地を調製した。付加的な培地成分を調製し、実施例1〜3に記載されたような培地に添加した。収穫前の全工程を無菌条件下で実施した。
【0049】
接種原培養物を調製するため、以下の手法を使用した。250ml三角フラスコに、49mlの(実施例1に記載された)SSMを、250ml三角フラスコに添加した。C.コーニーT-HF株(T-HF株は、反復培養された生物ATCC40750を同定する)の5日目培養物1mlを添加した。培養フラスコを、照明なしの27℃のインキュベーター内の135rpmで回転する振とう機上に置いた。3日間の増殖の後、培養物を無菌フードに移し、1mlを取り出し、コールターカウンター(Coulter Counter)(Beckman Coulter,Inc.より入手したCoulter Z2 Particle Count and Size Analyzer)を使用して計数する。細胞数は、1ml当たり1.0×105細胞という細胞密度で新たな50ml培養を開始するために使用しなければならない接種原培養物の量を計算するために使用される。
【0050】
異なる培地成分を試験するため、下記のようにして適切な培地を調製し、無菌の250ml三角フラスコへ導入した。事前に計算されたような量の接種原を、三角フラスコにおいて調製された培地を含有している培養フラスコへ移した。培養フラスコを、照明なしの27℃のインキュベーター内の135rpmで回転する振とう機上に置いた。7日間の増殖の後、培養物を以下のように採集した。
【0051】
各培養物に関して(VWR Scientificより入手した)50ml遠心管を標識し、計量した。各培養物に関する、別の50ml遠心管を標識し、計量はしなかった。次いで、培養物を標識された50mlチューブへ注入した。容量を記録し、Coulter Z2 Particle Count and Size Analyzerで細胞計数を実施した。pHを測定した。
【0052】
風袋を差し引いた50mlチューブへ培養物の半分を注入し、チューブ内の全容量を50mlにするために70%イソプロピル消毒用アルコール(IPA)溶液を添加した。チューブを2〜3回反転させることにより培養物を混合した。次いで、培養物を、Sorvall General Purpose RC-3遠心分離機を使用して、5分間4000rpmで遠心分離した。上清を廃棄した。培養物の残りの半分をペレットの上に注入し、70%IPA溶液で始まる工程を繰り返した。次いで、ペレットを、以下の手法を使用して、39%IPAで2回洗浄した:細胞ペレットに、35mLの39%IPAを添加;(VWR Scientific製のVortex Genie-2を使用して)最大速度で10秒間チューブをボルテックス処理;収集の後、次いで、ペレットを少なくとも48時間凍結乾燥。
【0053】
ペレット(バイオマス)を含有しているチューブを計量し、バイオマスの乾燥重量を計算した。乾燥重量は以下のように計算した:チューブの風袋重量を差し引いた、バイオマスを含有しているチューブの重量を決定。1000で割った、収穫時の培養物の記録された容量でこの数を割る。
【0054】
脂肪酸組成(および%DHA)は、MorrisonおよびSmithの「フッ化ホウ素−メタノールによる脂質からの脂肪酸メチルエステルおよびジメチルアセタールの調製(Preparation of Fatty Acid Methyl Esters and Dimethylacetals from Lipids with Boron Fluoride-Methanol)」(Journal of Lipid Research,Vo.5,1964)、およびアメリカン・オイル・ケミスツ・ソサエティ(the American Oil Chemist's Society)の海産油中の長鎖脂肪酸およびエイコサペンタエン酸(EPA)およびDHAを定量するために使用される公式の方法(Official Methods used to quantitate long chain fatty acids and eicosapentaenoic acid(EPA)and DHA in marine oils)(Method CeIb-89)に開示された手法に従って決定され得る。簡単に説明すると、試料を標準量の油(内部標準)と混合し、0.5N水酸化ナトリウム・メタノール溶液でケン化し、三フッ化ホウ素/メタノールで誘導体化する。脂肪酸メチルエステルを抽出し、水素炎イオン化検出器を含むガスクロマトグラフ(30m×0.25mm×0.25μmのRestek FAMEWAX#12497カラムを使用したHewlett Packard 5890 Series II Plus gas chromatograph)で分析する。
【0055】
実施例5
この実施例は、先行技術の培地を使用した低いNaClレベルにおけるC.コーニーの増殖およびDHAの産生を記載する。
【0056】
NaClを含有していないSSMを1リットル作成しオートクレーブ処理した。4種の濃縮NaClストックを調製した(135g/l、90g/l、45g/l、および22.5g/l)。NaClを含まないSSM培地48.75mlを含有している各振盪フラスコに、適切なNaClストック1.25mlを添加した。二つの対照をセットアップした:実施例1に記載されたような4.5g/l NaClを使用した通常のSSM、およびNaClが添加されていないNaCl不使用のSSM。各NaClレベルの二連実験を使用した。
【0057】
実施例4に記載されたように、増殖および収穫を実施した。表4は、この実施例の結果を記載する。全ての数字が、二つの培養物の平均として与えられる。
【0058】
(表4)低下した量のNaClを含有しているSSMにおいて培養されたC.コーニーに関するバイオマス、%DHA、%脂肪、およびDHA収率

1 塩化ナトリウムからの塩化物イオンの量(0.20g/l)のみを反映している。実施例1〜3参照。
【0059】
表4は、低下した量のNaClを含有しているSSMにおいて培養されたC.コーニーに関するバイオマス、%DHA、%脂肪、およびDHA収率を示している。培養物へ添加されるNaClの量が減少するにつれ、バイオマス収率および脂肪レベルの両方が減少し、DHAの収率が低下したことが理解され得る。
【0060】
実施例6
この実施例は、実施例1に記載された培養培地において4.5g/l NaClで達成されたDHAの収率を記載する。
【0061】
実施例4に記載されたようにして、培養物を培養した。表5は、この実施例の結果を示す。
【0062】
(表5)実施例1のSSMにおいて培養されたC.コーニーに関するバイオマス、%DHA、%脂肪、およびDHA収率

1 塩化ナトリウムからの塩化物イオンの量のみを反映している。
【0063】
実施例7
この実施例は、硫酸カリウムおよび硫酸ナトリウムの形態の様々な濃度のカリウムイオンおよびナトリウムイオンを使用した低塩化物培地における増強されたC.コーニーの増殖およびDHAの産生を記載する。
【0064】
0.18g/l酢酸カルシウムを使用し、塩化カルシウムおよび塩化カリウムを省いて、実施例3に記載された様式で低塩化物SSMを調製した。二次元行列を使用して、0.16g/l、0.80g/l、1.6g/l、3.2g/l、および4.8g/lというK2SO4濃度の、4.9g/l、9.8g/l、14.7g/l、19.6g/l、および24.5g/lというNa2SO4濃度との全ての可能な組み合わせを試験した。全ての培養物を実施例4に記載されたようにして培養した。結果を表6に提示する。
【0065】
(表6)様々な濃度の硫酸カリウムおよび硫酸ナトリウムを含む培地において培養されたC.コーニーに関して得られたバイオマス、%DHA、%脂肪、およびDHA収率の比較


1 0.45g/l塩化ナトリウムにより添加されたナトリウムイオンまたは0.18g/lナトリウムイオンを含む。
【0066】
表6に示された結果は、カリウムレベルの増加によって、C.コーニーに関する増殖およびDHAの収率が、高い塩化物レベルで達成されるものと比較可能になったことを示している。この実施例における増強効果は、試験された2番めに低いレベルである0.8g/l硫酸カリウムで出現し、その後は、硫酸カリウムの量に対して比較的非感受性であった。試験された硫酸カリウムの最高レベル、4.8g/lにおいては、収率のわずかな低下が存在するようであった。増殖およびDHA収率は、使用された硫酸ナトリウムの量に対しても比較的非感受性であるようであったが、約19.6g/l硫酸ナトリウムから開始し、使用される硫酸ナトリウムの量が増加するにつれ、増殖および収率はわずかに減少した。DHAの量(g/l)に基づく最適な組み合わせは、以下を使用したものであった:(実施例3に記載された)通常の低塩化物SSMに対するカリウムの5×増加およびナトリウムの2×増加を表す0.8g/L K2SO4および9.8g/L Na2SO4;および(実施例3に記載された)通常の低塩化物SSMに対するカリウムの10×増加およびナトリウムの2×増加を表す1.6g/L K2SO4および9.8g/L Na2SO4
【0067】
実施例8
この実施例は、ある範囲(0.32g/l、0.64g/l、0.96g/l、1.28g/l、1.60g/l、および1.9g/l)の硫酸カリウム、並びに4.9g/lおよび9.8g/lの硫酸ナトリウムを含有している培地を使用した、C.コーニーの増殖およびDHAの産生の増強を証明する。
【0068】
低塩化物SSMを実施例7に記載された様式で調製し、全ての培養物を実施例4に記載されたようにして培養した。結果は表7に提示される。
【0069】
(表7)変動する濃度の硫酸カリウムおよび硫酸ナトリウムを含む培地において培養されたC.コーニーに関して得られたバイオマス、%DHA、%脂肪、およびDHA収率の比較

1 0.45g/l塩化ナトリウムにより添加されたナトリウムイオンまたは0.18g/lナトリウムイオンを含む。
【0070】
表7に示された結果は、1.28g/L K2SO4および9.8g/L Na2SO4の濃度でDHA収率が至適となることを示した。表7に示された結果は、付加的なカリウムの効果が、0.32g/lという低い硫酸カリウムレベルで見られ、1.90g/lまで比較的一定であるらしいことを示している。増殖および収率は、4.9g/lまたは9.8g/lの硫酸ナトリウムレベルに対しては比較的非感受性である。
【0071】
実施例9
以下の実施例は、pH5における増殖に適応した株を得るためのC.コーニーの継代培養を記載する。
【0072】
培養開始時の培地のpHがpH5であったことを除き、実施例1に記載された培地において、実施例4に記載された様式で、C.コーニーT-HF株を振とうフラスコにおいて培養した。7日後、培養物からの接種原を使用して、同条件下でpH5で新たな培養を開始した。最初、pH5での増殖は遅かったが、数回の移行の後、DHA収率が改善し始め、時間とともに、pH6.3で培養された培養物から見られた収率に接近し、低pH株がもたらされた。図1を参照されたい。7日間の増殖期間の終了時、培養物のpHは5.4であることが注目された。クエン酸緩衝液、リンゴ酸緩衝液、酢酸緩衝液、および乳酸緩衝液を使用して株を適応させる試みは、緩衝液のT-HF株に対する毒性効果のため失敗した。
【0073】
次いで、低pH株を上記のpH5培地において培養したが、pHは5.0に維持された。低いpHに適応した株は、pH5およびpH5.4において同等によく増殖した。
【0074】
実施例10
以下の実施例は、2730ppm塩化物イオン培地においてpH6.3で培養されたC.コーニーT-HF株、および1000ppm塩化物イオン培地においてpH5で培養された低pH株からのDHA収率の比較を記載する。
【0075】
実施例1に記載されたような培地において、実施例4に記載されたようにして、C.コーニーT-HF株を培養した。硫酸カリウムおよび硫酸ナトリウムが添加された実施例2に記載されたような低塩化物培地において、C.コーニー株を培養した。各実験を二連実験で実行し、全てのフラスコをDHA収率の動力学を決定するため毎日採集した。結果は図1に示される。図1は、DHA収率の動力学が二つの異なる培地条件の下でほぼ同一であったことを示している。
【0076】
実施例11
以下の実施例は、2730ppm塩化物イオン培地においてpH4.5で増殖するようC.コーニーT-HF株を適応させる努力を記載する。
【0077】
培地をpH4.5に調整し、培地中の有機性窒素を一定レベルに維持しつつ、MSGの半分をリジンと交換したことを除き、実施例10に記載された様式で、C.コーニーT-HF株を培養した。
【0078】
反復培養の後、pH5またはpH6.3で見られた収率のおよそ三分の一のDHAの収率が得られた。
【0079】
実施例12
以下の実施例は、カリウム濃度を操作することにより、pH4.5におけるC.コーニーの増殖およびDHA収率のための条件を画定する努力を記載する。
【0080】
A. カリウムイオン(0.16g/l〜3.2g/l)の効果を査定するため、2.73g/l塩化物イオンにおいてpH4.5において要因実験を実施した。結果は、より高いカリウムイオンのレベルが、DHA収率を、実施例1に記載されたような培地を用いてpH6.3でC.コーニーに関して得られた収率のおよそ三分の二に増加させたことを示した。
【0081】
B. 塩化物イオン・レベルを1.0g/lで一定に保持したことを除き、パートAに記載されたようにして要因実験を実行した。結果は、より高いカリウムイオンのレベルが、DHA収率を、実施例1に記載されたような培地を用いてpH6.3で培養されたC.コーニーに関して得られた収率のおよそ三分の二に増加させたことを示した。(上記パートAに記載された)2.73g/l塩化物イオンおよび1.0g/l塩化物イオンで得られたDHA収率は比較可能であった。
【0082】
実施例13
この実施例は、pH6.3、1.0g/l塩化物イオンにおいて、実施例12に記載されたpH4.5株およびT-HF株を使用して得られたDHAの収率を比較する時間経過実験を記載する。
【0083】
実施例12のpH4.5株を、実施例4に記載された様式に従い、振とうフラスコにおいて、表8に明示されたような低塩化物pH4.5培地において培養した。C.コーニーT-HF株は、実施例1に記載された培地を使用して、実施例4に記載された様式で培養した。pH4.5実験のための接種原はpH4.5で調製され、接種原の量は、pH4.5における細胞の凝集のため推定された。
【0084】
(表8)低塩化物pH4.5培地

【0085】
DHA収率の動力学を決定するため、フラスコを毎日採集した。実験の結果(図2)は、pH4.5におけるDHA収率はpH6.3におけるものよりも常に低いが、時間の関数としてのDHA収率の増加速度は各pHでほぼ同じであったことを示している。これは、pH4.5における培養物は、pH6.3における培養物と同じ速度でDHAを蓄積し得るが、pH4.5で培養された培養物においては、pH6.3と比較してDHA収率のずれが存在していたことを示唆する。
【0086】
この結果は、追加の時間(即ち、およそ24時間)が与えられたなら、pH4.5におけるDHA収率がpH6.3におけるものと同一であったことを示している。そのずれがpH4.5におけるDHA蓄積の遅延により引き起こされたものであり、その結果としてpH4.5培養物が同じ日数のpH6.3培養物より常に低いDHA収率を有していたのか、または、pH4.5培養物が等価な量の接種原を受け取らなかったためにずれが引き起こされたのか、は明らかでなかった。pH4.5では、T-HF株細胞が凝集するため、培養物の正確な細胞数を得ることが不可能であり、使用する接種原の量を推定しなければならない。従って、pH4.5培養物の方が少ない接種原を受け取り、従って、DHA収率の動力学に明白なずれが引き起こされた可能性がある。
【0087】
それにもかかわらず、これらのデータは、低pH適応C.コーニー株およびpH4.5の今回の培養培地を使用することにより、培養時間を延長すれば、pH6.3の培養培地と同じDHA収率が達成され得ることを示した。
【0088】
実施例14
ずれ時間を減少させ、pH4.5における7日間DHA収率を、実施例1に記載されたような培地でpH6.3で培養されたC.コーニーに関して得られた収率と比較可能なものにするため、実施例10に記載された技術を使用して、上記実施例13に記載されたイオン濃度のさらなる最適化、およびpH5に適応したC.コーニーT-HF株のさらなる継代培養が、実施される。
【0089】
本発明の原理、好ましい態様、および実行方式が、前述の明細書に記載された。しかしながら、ここで保護されることが意図される本発明は、限定的ではなく例示的なものと見なされるべきであるため、開示された特定の形態に制限されるものと解釈されるべきではない。当業者によって、本発明の本旨から逸脱することなく、変動および変化がなされ得る。従って、本発明を実施するための前述の最適な様式は、例示的なものであり、添付の特許請求の範囲に示されるような本発明の範囲および本旨を制限するものと見なされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養培地中で渦鞭毛藻(Dinophyceae)綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する方法であって、培地が、
(a)約2g/l以下の濃度の塩化物イオン;および
(b)約0.25g/L以上の濃度のカリウムイオンを含み、
微細藻類が、細胞109個当たり少なくとも約0.04gのDHAを産生する、方法。
【請求項2】
微細藻類がクリプテコジニウム(Crypthecodinium)属のものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
微細藻類がクリプテコジニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)種のものである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
塩化物イオンの濃度が約1.0g/l以下である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
塩化物イオンの濃度が約0.3g/l以下である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
カリウムイオンの濃度が約0.4g/L以上である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
カリウムイオンの濃度が約0.8g/L以上である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
カリウムイオンの供給源が硫酸カリウムである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
培地が約1g/L〜約8g/lの濃度のナトリウムイオンをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ナトリウムイオンの濃度が約1.5g/l〜約5g/Lである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ナトリウムイオンの供給源が硫酸ナトリウムである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
カリウムイオンの濃度が約0.8g/Lであり、かつナトリウムイオンの濃度が約3.2g/Lである、請求項9記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法により産生されたバイオマス。
【請求項14】
微細藻類が細胞109個当たり少なくとも約0.10gのDHAを産生する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
微細藻類が細胞109個当たり少なくとも約0.20gのDHAを産生する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
微細藻類からDHA含有脂質を回収することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する方法であって、培地が、
(a)約2g/l以下の濃度の塩化物イオン;
(b)約0.25g/L以上の濃度のカリウムイオン;および
(c)約27:1のナトリウム:カリウムの重量比以下の比のナトリウムイオンを含み、
微細藻類が、細胞109個当たり少なくとも約0.04gのDHAを産生する、方法。
【請求項18】
微細藻類がクリプテコジニウム属のものである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
微細藻類がクリプテコジニウム・コーニー種のものである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
カリウムイオンの供給源が硫酸カリウムである、請求項17記載の方法。
【請求項21】
ナトリウムイオンの供給源が硫酸ナトリウムである、請求項17記載の方法。
【請求項22】
塩化物イオンの濃度が約1.0g/l以下である、請求項17記載の方法。
【請求項23】
塩化物イオンの濃度が約0.3g/l以下である、請求項17記載の方法。
【請求項24】
カリウムイオンの濃度が約0.4g/L以上である、請求項17記載の方法。
【請求項25】
カリウムイオンの濃度が約0.8g/L以上である、請求項17記載の方法。
【請求項26】
ナトリウム:カリウム比が約15:1重量比以下である、請求項17記載の方法。
【請求項27】
カリウムイオンの濃度が約0.8g/Lであり、かつナトリウム:カリウム比が約4:1重量比である、請求項17記載の方法。
【請求項28】
請求項17記載の方法により産生されたバイオマス。
【請求項29】
微細藻類が細胞109個当たり少なくとも約0.10gのDHAを産生する、請求項17記載の方法。
【請求項30】
微細藻類が細胞109個当たり少なくとも約0.20gのDHAを産生する、請求項17記載の方法。
【請求項31】
微細藻類からDHA含有脂質を回収することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項32】
培養培地中で渦鞭毛藻綱の従属栄養性微細藻類を培養することによりドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する方法であって、培養培地が約6.0未満のpHを有しており、かつ微細藻類が7日間培養物1リットル当たり少なくとも約0.04gのDHAを産生する、方法。
【請求項33】
微細藻類がクリプテコジニウム属のものである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
微細藻類がクリプテコジニウム・コーニー種のものである、請求項32記載の方法。
【請求項35】
pHが約5.5以下である、請求項32記載の方法。
【請求項36】
pHが約5.0以下である、請求項32記載の方法。
【請求項37】
pHが約4.5である、請求項32記載の方法。
【請求項38】
培地が、
(a)約2g/l以下の濃度の塩化物イオン;および
(b)約0.25g/L以上の濃度のカリウムイオンをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項39】
塩化物イオンの濃度が約1.0g/l以下である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
塩化物イオンの濃度が約0.3g/l以下である、請求項38記載の方法。
【請求項41】
カリウムイオンの濃度が約0.4g/L以上である、請求項38記載の方法。
【請求項42】
カリウムイオンの濃度が約0.8g/L以上である、請求項38記載の方法。
【請求項43】
カリウムイオンの供給源が硫酸カリウムである、請求項38記載の方法。
【請求項44】
培地が約1g/L〜約8g/lの濃度のナトリウムイオンをさらに含む、請求項38記載の方法。
【請求項45】
ナトリウムイオンの濃度が約1.5g/l〜約5g/Lである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ナトリウムイオンの供給源が硫酸ナトリウムである、請求項44記載の方法。
【請求項47】
カリウムイオンの濃度が約0.8g/Lであり、ナトリウムイオンの濃度が約3.2g/Lであり、かつpHが約5.0である、請求項44記載の方法。
【請求項48】
カリウムイオンの濃度が約0.8g/Lであり、ナトリウムイオンの濃度が約3.2g/Lであり、かつpHが約4.5である、請求項44記載の方法。
【請求項49】
請求項32記載の方法により産生されたバイオマス。
【請求項50】
微細藻類が細胞109個当たり少なくとも約0.10gのDHAを産生する、請求項32記載の方法。
【請求項51】
微細藻類が細胞109個当たり少なくとも約0.20gのDHAを産生する、請求項32記載の方法。
【請求項52】
微細藻類からDHA含有脂質を回収することをさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項53】
渦鞭毛藻綱の低pH耐性の従属栄養性微細藻類を選択する方法であって、DHAの収率が細胞109個当たり約0.04g DHA以上になるまで、低pH培地中で該微細藻類を継代培養する段階を含む、方法。
【請求項54】
pHが約6以下である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
pHが約5以下である、請求項53記載の方法。
【請求項56】
pHが約4.5以下である、請求項53記載の方法。
【請求項57】
請求項53記載の方法により産生されたバイオマス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−36261(P2011−36261A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211893(P2010−211893)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【分割の表示】特願2006−534148(P2006−534148)の分割
【原出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】