説明

改変バクテリオシン及びその使用方法

シュードモナスエルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のR型ピオシンなどの天然バクテリオシンの改変された形態を開示する。このバクテリオシンは、細菌表面上などの同族結合パートナー(cognate binding partner)又は受容体に対しての結合特異性及び親和性をつかさどる領域中の尾部繊維の端部が改変される。毒性因子又は適応性因子(fitness factor)を含む、細菌表面上の受容体と結合させるなど、改変バクテリオシンの使用方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年5月15日に出願された、米国特許仮出願第60/747,299号と関連しており、これは、その全体が記載されているかのごとく、参照することで組み入れられる。
【0002】
開示の分野
本開示は、シュードモナスエルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のR型ピオシンなどの天然の高分子量(hmw)バクテリオシンの改変された形態を開示する。バクテリオシンは、細菌表面上などの同族結合パートナー(cognate binding partner)又は受容体に対しての結合特異性及び親和性をつかさどる領域中の尾部繊維の端部が改変される。毒性因子又は適応性因子(fitness factor)を含む、細菌表面上の受容体と結合させるなど、改変バクテリオシンの使用方法も開示する。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
現在、細菌性疾患よりも、ウイルス性病原体による脅威に対して世界的に遥かに大きな注目が集まっている。しかし、抗生物質耐性の細菌の蔓延により、病院及びその他の医療施設において、患者の治療が混乱し、抑え込みに費用がかさむという状態が続いている。同時に、慢性疾患に対する薬物及び生活習慣の改善を優先することにより、抗生物質の開発からの撤退が見られる。最近の20年の間に米国市場に投入された新しい種類の抗生物質はわずかに2種類であった(オキサゾリジン及びリポペプチド)(Wenzel,2004)。
【0004】
米国内だけで、病院での細菌感染のケースは年間200万件を超えている。そのうち、死亡するのはおよそ9万人である。最も警戒すべき統計は、これらの原因である細菌の70%超が、少なくとも1種類の抗菌剤に耐性を有するということである(Bad Bugs,No Drugs,2004)。この数値は、警戒すべき割合で増加を続けている。このような抗生物質耐性の院内感染が米国経済におよぼす年間のコストは、50億ドルを超えている。このような恐ろしい地球規模の状況という現実により、抗菌剤の開発及び使用に対する新しい取り組みを進めざるを得なくなるであろう(Talbot etal.,2006)。ヒト及び動物の医療において抗生物質の大規模な使用(及び乱用)が盛んに行われた所では、かつては「特効薬」であった多くの抗生物質が今や臨床的な効果が無いというところまで抗生物質に耐性を示す細菌性病原体の出現もまた盛んとなってきた(Microbial Threats to Health,2003)。
【0005】
一つの例として、シュードモナスエルジノーサは、植物及び動物に対するどこにでもいる病原体であり、複数の抗菌剤に対する耐性の発生率が急速に上昇している(Microbial Threats to Health,2003;Bad Bugs,No Drugs,2004)。シュードモナスエルジノーサは、好気性、運動性、グラム陰性の桿菌である。シュードモナスエルジノーサは、通常、土壌、水、及び植物中に生息する。これは、健康体の人間に疾患を発症させることはほとんどないものの、全院内感染の約10%を占める日和見病原体である(National Nosocomial Infection Survey report‐Data Summary from October 1986‐April 1996)。シュードモナスエルジノーサは、嚢胞性線維症(CF)の患者を襲う最も一般的な病原体であって、その検体培養の61%が陽性を示し(Govan,J.R.W.and V.Deretic,1996,Microbiol.Reviews,60(3):530‐574)、並びに、集中治療ユニットで見られる2種類の最も一般的な病原体の一つでもある(Jarvis,W.R.et al.,1992,J.Antimicrob.Chemother.,29(a supp.):19‐24)。
【0006】
あるシュードモナスエルジノーサの感染による死亡率は50%の高さまでの可能性がある。現在、シュードモナスエルジノーサの感染は、抗生物質、特には、薬物の組み合わせにより、依然として効果的に制御することができている。しかし、一般的な抗生物質のいくつかに対する耐性が見られており、それは、特に、集中治療ユニットにおいて問題である(Archibald,L.et al.,1997,Clin.Infectious Dis.,24(2):211‐215;Fish,D.N.,et al.,1995,Pharmacotherapy,15(3):279‐291)。さらに、シュードモナスエルジノーサは、複数の抗生物質耐性遺伝子を有するプラスミドを取り込むメカニズムをすでに示しており(Jakoby,G.A.(1986),The bacteria,Vol.X,The biology of Pseudomonas,pp.265‐294,J.R.Sokach(ed.)Academic Press,London)、そして、現時点でシュードモナスの感染に対する認定されたワクチンは存在しない。
【0007】
他の多くの細菌種と同様に、シュードモナスエルジノーサの株の変異性は非常に顕著である。変異性は多くの異なるメカニズムで発生することが示されており、メカニズムとしては、これらに限定されないが、プロファージの細菌ゲノムへの組み込み(Zierdt,C.H.and P.J.Schmidt,1964,J.Bacteriol.87:1003‐1010)、バクテリオファージからのサイトトキシン遺伝子の付加(Hayashi,T.,et al.,1994,FEMS Microbiol.Lett.122:239‐244)、及びトランスポゾン経由(Sinclair,M.I.and B.W.Holloway,1982,J.Bacteriol.151:569‐579)などが挙げられる。このような形での多様性により、新たな病原性のメカニズムがシュードモナスエルジノーサへ組み込まれてきた。CFでよく見られるムコイド表現型への転換など、これらの、及びその他のトランジションは、警戒を続ける必要があることを明らかに示している。
【0008】
これらの問題点が、薬物耐性の菌株の適切な同定及び毒性の根絶を目的とした診断ツール及び治療方法の必要性を指し示している。
【0009】
多くの細菌は、増殖の過程で、殺菌性の物質であるバクテリオシンを産生する。バクテリオシンは、ポリペプチドから成り、様々な分子量を有する。バクテリオシンは、その抗菌性のために使用されてきたが、中には、多くの臨床的に使用される抗生物質よりも殺菌性の範囲が限られたものがある。例えば、感応性のある、又は感受性の高い生物の受容体部位に結合することで、同一の、又は極めて関連性の高い種に属する細菌を認識し、従ってそれにのみ作用するバクテリオシンが報告されている。
【0010】
バクテリオシンは、大きく分けて、3種類に分類される。第一の種類は、熱安定性である小さな分子である。この第一の種類の例としては、コリシンV(ここで、コリシンは、大腸菌型に特異的である)が挙げられる。第二の種類は、シュードモナスエルジノーサによって産生されるS型ピオシンで、分子量がより大きなタンパク質分子である。第三の種類は、遺伝学的にも形態学的にもバクテリオファージの尾部と類似しているバクテリオシンが含まれる。最後の種類の例としては、シュードモナスエルジノーサのF型及びR型ピオシン、並びにエルシニア(Yersinia)のエンテロコリチシン(enterocoliticin)が挙げられる。これらのピオシンは、祖先バクテリオファージ(ancestral bacteriophage)由来のものであると報告されており、各々、ラムダファージファミリー、及びP2ファージファミリーとの類似性を有する。
【0011】
R型ピオシンは、ミオウイルス(myoviridae)ファミリーのバクテリオファージの非柔軟性で収縮性の尾部と類似しており、シュードモナスゲノムの単一の遺伝子クラスター内でコードされる(Shinomiya et al.,1983)。図1を参照のこと。標的の細菌と特異的に結合した後、これらのピオシンは、細菌細胞中にポアを形成し、その細胞質膜の完全性に損傷を与え、膜脱分極を起こす。F型ピオシンもバクテリオファージの尾部と類似しているが、こちらは、柔軟性があり非収縮性の棒状構造を有する。ピオシンは、大部分のシュードモナスエルジノーサによって産生され、2種類以上のピオシンを合成する菌株もある。
【0012】
R型ピオシンは、ある種のシュードモナスエルジノーサ菌株によって産生される複雑で高分子量のバクテリオシンであり、特定の他のシュードモナスエルジノーサ菌株に対する殺菌作用を有する(レビューは、Michel‐Briand and Baysse,2002、を参照)。現在まで、5種類のR型ピオシンが識別されており、それらの標的範囲に基づいて(下記参照)、R1からR5と称する。菌株PAO1は、R2ピオシンを産生し、これは、16個のオープンリーディングフレーム(ORF)から成る遺伝子クラスター内でコードされ、そのうちの12個は、バクテリオファージP2、PS17、ΦCTX、及びその他のP2様ファージのORFと、高い配列類似性を示す(Nakayama et al.,2000)。ピオシンの産生は、DNA損傷によって誘発され(Matsui et al.,1993)、クラスターの正の転写制御因子(positive transcription regulator)であるPrtNの抑制因子であるPrtRを分解するRecAによって制御される。ピオシン遺伝子の誘発により、細菌細胞1個あたりおよそ200個のピオシン粒子が合成される結果となり、続いてバクテリオファージ溶解と類似のメカニズムにより細胞が溶解する。ピオシンは、まずその尾部繊維でリポ多糖(LPS)と結合し、それに続く鞘部の収縮、並びに細菌の外膜、細胞壁、及び細胞質膜を通してのコアの侵入により、素早くそして特異的に、標的細胞を死滅させる。この侵入により、細胞質膜の完全性が損なわれ、膜電位の脱分極が起こる(Uratani and Hoshino,1984)。多くの観点から、ピオシンは、適合された尾部器官のみから成る、すなわち、カプシドもDNAも含まない、耐プロテアーゼ性及び耐酸性であり非伝染性の抗菌性粒子を産生するためにホストが適合させた欠陥プロファージとみなすことができる。ピオシン遺伝子の複製には、それが包埋された細菌ゲノムの複製が必要である。
【0013】
5種類の異なるピオシンの受容体特異性は、互いに直線的な関係を持ち、2種類のブランチ(branch)を有する(Ito et al,1970;Meadow and Wells,1978;Kageyama,1975)。R5ピオシンが最も広い範囲を有し、他の4種類の特異性を含む。他の4種類のR型の受容体は、R5から分岐する2種類のブランチ、又は特異性のファミリーを形成する。一つ目のブランチは、R3、R4、及びR2に対する受容体を含み、この順で、細胞表面から最も遠位の受容体に特異性を示すのがR3ピオシンである。二つ目のブランチは、R1受容体を含み、これは、R2、R3、及びR4に対する受容体とは無関係の特異性決定因子を有すると思われる。R1乃至R4ピオシンのいずれかに感受性を有するシュードモナスエルジノーサの菌株はすべてR5にも感受性を有するが、R5ピオシンにのみ感受性を有する菌株もあることから、この2種類のブランチは、R5に対する受容体に属していると考えられる。シュードモナスエルジノーサの菌株には、天然に存在する5種類のR型ピオシンすべてに対する耐性を有するものもある。
【0014】
シュードモナスエルジノーサのピオシンは、主にシュードモナスエルジノーサの菌株を特異的に死滅させるが、ヘモフィリウス(Hemophilius)、ナイセリア(Neisseria)、及びカンピロバクター(Campylobacter)種のある種類の菌株を死滅させることも示されている(Filiatrault et al.,2001;Morse et al.,1976;Morse et al.,1980;Blackwell et al.,1981,1982)。
【0015】
R型ピオシンの特異性は、prf15によってコードされるその尾部繊維によって付与される。PRF15は、ミオウイルスファミリーのファージの、特にP2様ファージの尾部繊維と極めて高い関連性を持つ(Nakayama et al.,2000)。このような尾部繊維は、図1に示すように、基板構造上に対称に配置されたホモ三量体で、粒子1個あたり6個の複製を有する。尾部繊維のN末端領域が基板と結合し、C末端部分の、恐らくは先端近辺が細菌受容体と結合し、それによって死滅の特異性が付与される。prf16(R型ピオシンの場合)によってコードされる同族のシャペロンは、prf15のすぐ下流に位置し、尾部繊維の適切な折り畳み、及び/又はピオシン構造上での尾部繊維の構築に必要である。R型ピオシン粒子は、免疫化学的、及び遺伝学的には、特定のシュードモナスエルジノーサのバクテリオファージの尾部に類似していると説明されている(Kageyama 1975,Kageyama et al.1979,Shinomiya et al.1989,及びShinomiya et al.1983b)。R型ピオシンと、PS‐17及びΦCTXなどのシュードモナスバクテリオファージとは、共通の祖先溶原バクテリオファージを通した関連性を有しており、そこから、頭部タンパク質及び複製機能をコードする遺伝子が欠損し、残ったファージ遺伝子が、防御的なR型ピオシンの成分としての機能を示すために適応したものである、という提案が成されている(Shinomiya et al.1989)。
【0016】
類似の高分子量R型バクテリオシンが、エルシニアエンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)(Strauch et al.,2001)、リステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)(Zink et al,1995)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)(Birmingham & Pattee,1981)、及びエルビニアアミロボーラ(Erwinia amylovora)(Jabrane et al.,2002)を含むその他の細菌について報告されている。バクテリオシンの分類と命名法は、特に、その由来、化学、及び作用に関する証拠が増加していくことにより、時間とともに変わってきている。通常、バクテリオシンの命名はそれを産生する種に基づいている。例えば、大腸菌(E.coli)は、コリシンと称するバクテリオシンを産生し;シュードモナスエルジノーサはピオシンを産生し;リステリアモノサイトゲネスはモノシン(monocin)を産生し;エルシニアエンテロコリチカはエンテロコリチシンを産生する;などである。歴史上、分類は約20種類のコリシンの識別から始まり、これらはA‐Vと分類された。ほとんどの場合、各々のバクテリオシンは、同一又は分類学的に関連する生物の種に対して特異的に作用すると思われる。ピオシンを産生する菌株は、通常、自身のピオシンに対する耐性を有する。バクテリオシンの濃縮に関する一般的なアッセイについては、米国特許4,142,939、に記載されている。
【0017】
上記の文献の引用は、前述の事項のいずいれについてもそれが関連する先行技術であると承認することを意図するものではない。日付の表記及びこれらの文献の内容に関する説明は、出願者が入手可能な情報に基づいており、日付及びこれらの文献の内容の正確性に関していかなる承認をも構成するものではない。
【発明の開示】
【0018】
開示の概要
本開示は、バクテリオファージの尾部と類似の、しかしそれとは異なる、バクテリオシンの種類の遺伝子操作された形態に関する。このようなバクテリオシンとしては、R型ピオシン、尾状の(tail−like)バクテリオシン、R型バクテリオシン、又はその他のバクテリオファージの尾構造と関連する高分子量(hmw)バクテリオシンが挙げられる。引用を簡便にするために、本明細書では、「hmwバクテリオシン」という用語を、R型バクテリオシン、F型及びR型ピオシン、モノシン、エンテロコリチシン、並びにメニンゴシン(meningocin)を含むがこれらに限定されない、本開示のバクテリオシンを意味するものとして用いる。
【0019】
天然のHMWバクテリオシンは、通常、熱不安定性であり、トリプシン耐性であり、SOSシステムを活性化させる薬剤によって誘発される。例えば、シュードモナス種、リゾビウムルピン(Rhizobium lupin)、バシラス(Bacillus)種、エルシニア種、及びフラボバクテリウム(Flavobacterium)種といった腸内細菌の多くでも識別されている。
【0020】
遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、多くの異なるポリペプチドサブユニットの複数の複製から成り、尾部繊維タンパク質で形成された1若しくは2個以上の尾部繊維を有する。各尾部繊維は、受容体との結合又は相互作用により結合対を形成する受容体結合ドメイン(RBD)を有する。RBDは、細菌結合特性を有する尾部繊維の一部であり、そのため結合対の第一の構成部分となる。本明細書で開示するRBDは、改変された尾部繊維を形成する尾部繊維中のタンパク質の改変部を含む。他のポリペプチドサブユニットを有する改変された尾部繊維は、遺伝子操作された(又は、改変された)hmwバクテリオシンを形成する。RBDが結合する受容体は、結合対の第二の構成部分であり、これは、尾部繊維が改変されていないバクテリオシンに対する受容体と同じであっても異なっていてもよい。本開示のある態様では、結合対の第二の構成部分は、病原性細菌の毒性因子又は適応性因子である。他の態様では、第二の構成部分は、細胞膜などの細菌細胞の最外層の成分、又は、グラム陽性細菌の場合は、細胞壁成分である。
【0021】
改変された尾部繊維を持たないhmwバクテリオシンと比べると、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、受容体との相互作用において、その数、方法、及び結合力が異なったものとなり得る。従って、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、改変のないバクテリオシンと比べて、異なる、又は追加的な結合特性(例:結合特異性、親和性、及び/又はアビディティー)を持ち得る。遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、天然分子ではないが、天然分子を改変した形であってよい。別の選択肢として、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、別の非天然のバクテリオシンを改変した形であってもよい。ほとんどの態様において、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、バクテリオシンによって結合される受容体を発現する細菌細胞にとって、致命的な薬剤であることに変わりはない。
【0022】
第一の局面では、本開示は、改変されたRBDを持つ尾部繊維タンパク質を有するhmwバクテリオシンを含む。hmwバクテリオシンの限定されない例としては、F型及びR型ピオシンが挙げられる。ある態様では、改変されたRBDは、天然のバクテリオシンと比較して、このドメインのアミノ酸配列に変化を有する。アミノ酸配列の変化の限定されない例としては、1若しくは2個以上のアミノ酸の置換、挿入(付加)、又は欠失が挙げられる。当然、置換、挿入(付加)、及び欠失の1若しくは2個以上の組み合わせも用いることができる。
【0023】
他の態様では、尾部繊維は、単一の三量体尾部繊維を形成する3個の尾部繊維タンパク質モノマーのうちの1若しくは2個以上に、異種配列、又は非バクテリオシン配列を含む。そして、ネイティブの(native)、若しくは天然のバクテリオシンの尾部繊維が、ホモ三量体でRBDを形成し得るのに対し、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンの尾部繊維は、1若しくは2個のタンパク質モノマーが他と異なるヘテロ三量体、又は、3個のタンパク質モノマーすべてが全く同様に非ネイティブ(非天然)であるホモ三量体のどちらかである。三量体は、1若しくは2個以上のタンパク質モノマー中に異種(又は、非ネイティブ)配列が存在することにより、改変されたRBDを持つ尾部繊維を形成することができる。
【0024】
異種配列は、従って、構築された三量体中において少なくとも尾部繊維のRBDが変性されるように、そのモノマーの一部に存在する。変性されたRBDでは、その結合特性、及び尾部繊維の性質が変化し、それによって、その尾部繊維を含むhmwバクテリオシンの結合活性が変化する。ある態様では、異種RBDは、別のバクテリオシン、又は、バクテリオファージ若しくはプロファージからの尾部タンパク質に由来する。多くの場合、異種RBDは、バクテリオシンの尾部繊維タンパク質、バクテリオファージの尾部繊維タンパク質、又は推定(presumptive)尾部繊維タンパク質のC末端部の少なくとも一部を含むポリペプチドであり、その配列は、細菌のゲノム内に見られる生存、若しくは欠損溶原性バクテリオファージの遺伝子に由来する。異種RBDは、hmwバクテリオシン尾部繊維タンパク質の基板結合領域(base plate attachment region)(BPAR)を含むポリペプチドと融合する。BPARを含むポリペプチドは、hmwバクテリオシン尾部繊維のN末端部のすべて又は一部を含むことができ、ここで、このN末端部は、まさにC末端以外であれば尾部繊維のどの部分から構成されていてもよい。
【0025】
他の態様では、異種RBDは、ボルデテラ(Bordetella)バクテリオファージの主要トロピズム決定因子(major tropism determinant)(Mtd)に由来する。限定されない例としては、任意にバクテリオファージの尾部繊維のRBDの全体又は一部を有する、改変された、又は多様化された(diversified)Mtdを含む異種RBDが挙げられる。ある態様では、バクテリオファージの尾部繊維は、ビブリオハーベイ(Vibrio harveyi)ミオウイルス様(VHML)バクテリオファージ若しくはその多様化された誘導体の尾部繊維、又は多様性を生じさせるレトロエレメント(Diversity Generating Retroelement)(DGR)の構造に損傷を与える別のプロファージ若しくはバクテリオファージの尾部繊維である。
【0026】
本開示は、さらに、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンの一部分を含み、その一部分は、細菌細胞表面上で受容体と結合し、そして細胞膜の貫通を促進するというバクテリオシンの活性は維持される。従って、その一部分は、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンの結合(認識)活性及び膜貫通活性が維持されるものであればいかなる部分でもよい。ある態様では、その一部分は、切断された1若しくは2個以上のバクテリオシンポリペプチドを含む。
【0027】
関連する局面では、本開示は、本開示のhmwバクテリオシンの一部であり得る改変された尾部繊維を含む。三量体尾部繊維は、改変されたRBD又は異種RBDを持つ1若しくは2個以上の尾部繊維タンパク質を含むことができる。ある態様では、改変された単量体尾部繊維タンパク質は、R型バクテリオシン由来であり、一方、他の態様では、尾部繊維タンパク質は、バクテリオファージ尾部繊維タンパク質由来である。
【0028】
本開示は、さらに、改変された尾部繊維タンパク質をコードする核酸配列、並びにそのコード配列を含むベクター及び/又は(宿主)細胞も含む。ベクター及び/又は宿主細胞を用いて、尾部繊維を形成し、本開示の遺伝子操作されたhmwバクテリオシンに組み込まれる改変された尾部繊維タンパク質を作製するためのコード配列を発現させることができる。改変された尾部繊維をコードする配列は、改変された尾部繊維タンパク質の存在下でhmwバクテリオシンを産生する、若しくは産生する能力のある細菌細胞中へ導入することもできる。改変された尾部繊維タンパク質の発現により、改変されたhmwバクテリオシンがその細胞によって産生される結果となる。天然のバクテリオシン尾部繊維タンパク質配列が不活性化又は除去された場合、改変されたhmwバクテリオシンのみが産生されることになる。天然のバクテリオシン尾部繊維タンパク質配列が維持された場合、改変されたhmwバクテリオシンは天然バクテリオシンの尾部繊維と共に産生されることになり、産生された改変されたピオシンは、改変されたピオシンと天然のピオシンとの混合物となり得る。さらに、そのような産生宿主細菌から産生されたピオシンは、二価(多価)のピオシン、すなわち、各々が特異的な結合特性を有する2種類の尾部繊維が混合した単一のピオシン粒子を含み得る。そのような多価のピオシンは、一つのピオシン粒子若しくは分子内に複数の、すなわち、2若しくは3個以上の結合及び死滅の特異性(binding and killing specificities)を有する。トランスフェクトされた細菌は増殖して、改変されたhmwバクテリオシンによって、若しくは天然のバクテリオシンと改変されたhmwバクテリオシンとの混合物からのhmwバクテリオシンの1種類によって結合される受容体を発現するその他の細菌の増殖を予防又は阻害するhmwバクテリオシンを産生することができる。
【0029】
ある態様では、受容体は、改変されたhmwバクテリオシンへの曝露によって有毒又は病原性細菌株の増殖が予防又は阻害されるように、有毒若しくは病原性細菌株の毒性因子又は適応性因子である。遺伝子操作されたhmwバクテリオシンが標的とする毒性因子の限定されない例としては、米国特許第6,355,411号、及び公開特許出願WO99/27129号(Ausubel et al.)に開示の配列によってコードされるものが挙げられ、これらの文献は、その全体が記載されているかのごとく、参照することで本明細書に組み入れられる。
【0030】
曝露は、任意に、hmwバクテリオシンを発現するトランスフェクトされた細菌との接触、又は共培養によって行う。本開示は、対象となる動物若しくは植物上又はその内部において、トランスフェクトされた細菌のインビボでの増殖を可能とすることを含む。トランスフェクトされた細菌をインビボで適用することにより、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンの標的である表面受容体を発現する細菌から保護された状態が提供される。この保護された状態は、免疫状態と類似しており、ここで、トランスフェクトされた細菌は、動物若しくは植物の免疫システム又はその他の防御システムを実質的に増強、又は補助する。
【0031】
他の態様では、改変された単量体尾部繊維タンパク質のRBDをコードする核酸配列は、そのコード配列の識別、物理的な単離、及び/又は選別を可能とする遺伝子システムの一部である。限定されない例としては、この遺伝子システムは、識別、単離、及び/又は選別を可能とするファージ、溶原性ファージ、形質導入粒子、コスミド、又はファージゲノムの中のコード配列を含む。ある態様では、この配列は、繊維遺伝子の一部分と融合し、発現されて、改変された尾部繊維三量体を産生し、この三量体により、改変されたhmwバクテリオシンは、RBDのコード配列が識別又は単離された溶原性ファージを内部に有する宿主生物の表面に結合してこれを死滅させる。改変された尾部繊維三量体中の表現型を検出することで、この配列を選別及び/又はスクリーニングし、識別し、並びに単離することができる。ある態様では、この表現型が、所望の、そして恐らくは希少である、受容体結合特性であり得る。
【0032】
本開示は、改変された尾部繊維タンパク質を各々がコードする複数のDNA及び/又はRNA配列を有する、ファージ、形質導入粒子、コスミド、又はファージゲノムのライブラリーを含む。RBDの結合表現型(binding phenotype)とコード遺伝子型(encoding genotype)とのこの組み合わせにより、コードする配列をライブラリー内で代表するように、複数の改変されたRBDの発現が可能となる。ある態様では、ホモ三量体の尾部繊維が発現して、ライブラリー構成要素の各々の結合表現型を決定するためのスクリーニング又は選別に使用可能となるように、ライブラリーの各構成要素は、1種類の改変された尾部繊維タンパク質をコードする配列を含む。他の態様では、本明細書で開示するヘテロ三量体尾部繊維が発現し、その結合表現型のためのスクリーニング又は選別が可能となるように、ライブラリーの構成要素には、改変された尾部繊維タンパク質をコードする2種類以上の配列を有するものが含まれる。ライブラリーの構成要素の結合表現型は、従って、各々のコード配列と結びつけられている。こうして所望の又は有利なRBDをコードする遺伝子型が識別されると、それを用いて改変されたhmwバクテリオシンのための尾部繊維を作り出すことができる。VHMLなどの、自然にRBDを多様化させる尾部繊維の同族のシャペロン機能を用いることで、VHML由来の多様化されたRBDを含む尾部繊維の適切な折り畳みを確保することができる。
【0033】
本明細書で開示するベクター、宿主細胞鮪、ファージ、形質導入粒子、コスミド、ファージゲノム、及びライブラリーは、尾部繊維タンパク質をコードする核酸分子を含む組成物と見なすことができる。
【0034】
本開示のさらなる組成物は、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン、又はその抗細菌部分を含む。この組成物は、hmwバクテリオシンのために抗細菌性であり、担体又は賦形剤を含むことができる。当然、担体又は賦形剤は、hmwバクテリオシンのようなマルチサブユニット複合タンパク質と組み合わせての使用に適するものである。ある態様では、担体又は賦形剤は、組成物を臨床的に又は農業に使用することができるように、薬理学的に許容されるものである。他の態様では、担体又は賦形剤は、ヒト又は非ヒト動物などへの、局所、肺、胃腸、又は全身の投与に適するものである。追加的な態様では、担体又は賦形剤は、限定されない例として、植物又は植物からの生鮮食品などの、非動物の生物への投与に適するものである。
【0035】
本明細書で開示する組成物は、2種類以上の遺伝子操作されたhmwバクテリオシンを含有することができ、又は、これに限定されないが、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンと共に使用することが所望される天然hmwバクテリオシンを含む、1若しくは2種類以上の追加的な薬剤を含有することができる。追加的な薬剤の限定されない例としては、酵素、抗生物質、抗真菌剤、殺菌剤、鎮痛剤、及び抗炎症剤が挙げられる。
【0036】
さらなる局面では、本開示は、本明細書で述べるhmwバクテリオシン関連産物の使用方法を提供する。本開示の態様は、細菌細胞の増殖を阻害する、又は細菌細胞の死滅を誘発する方法を含む。そのような方法は、感受性の高い細菌細胞を、効果量の遺伝子操作されたhmwバクテリオシンと、又はその抗細菌部分と接触させる工程を含む。別の選択肢として、hmwバクテリオシン又はその抗細菌部分を含む組成物を使用することもできる。場合によっては、効果量は、平均して、細菌細胞1個あたりhmwバクテリオシンわずか1個と同等の量とすることができる。当然、それより多い量を用いることもできる。
【0037】
他の態様では、細菌の細胞質膜の完全性に損傷を与える方法を提供する。その損傷により、膜電位の喪失、及び/又は細胞内容物の一部の喪失という結果をもたらすことができる。そのような方法は、膜を、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン又はその抗細菌部分と接触させる工程を含む。多くの場合、膜は、有毒又は病原性細菌の膜である。
【0038】
ある態様では、本開示の方法は、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン又はその抗細菌部分を、対象内部にインビボで適用(又は、投与)することを含むことができる。別の選択肢として、その方法は、インビトロ又はエクスビボでの接触工程を含むことができる。
【0039】
さらなる追加的な局面では、本開示は、有毒の祖先細菌から無毒性の細菌を形成する方法を提供する。この方法は、有毒細菌に、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン又はその抗細菌部分を接触させ、有毒細菌の毒性因子又は適応性因子に結合させる工程を含む。この接触工程は、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン又はその抗細菌部分の用いた量によって、細菌のすべてが死滅するわけではない条件下、又は細胞の増殖が完全に阻害されるわけではない条件下で行うことができる。この接触工程では、標的である細菌が、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン若しくはその抗細菌部分に耐えて生き残り、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン若しくはその抗細菌部分に対して感受性のない(従って、耐性のある)無毒性変異体又は改変された子孫細菌となった場合にのみ繁殖することができるような、選択的な負荷をかける。ある態様では、その耐性は、毒性因子若しくは適応性因子の、又は遺伝子操作されたhmwバクテリオシン若しくはその抗細菌部分に対する受容体の発現の欠損に起因するものであり、それによって、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンの攻撃が回避される。別の態様では、その耐性は、毒性因子又は適応性因子が、改変されたピオシンのRBDに対する効果的な受容体として作用せず、そして、変化した形態ではその毒性又は適応性の機能も失うように変化することに起因する場合もある。生き残った子孫による耐性の獲得、及びその結果としての、元は有毒であった細菌の毒性又は適応性の変化は、インビボ又はインビトロで測定し、その失われた病原性を実証することができる。
【0040】
関連する局面では、本開示は、有毒の細菌の毒性因子又は適応性因子と結合してそれら因子を通しての殺菌効果を媒介する遺伝子操作されたhmwバクテリオシン又はその抗細菌部分を接触させることによる、無毒性の細菌の集団を維持する方法を提供する。hmwバクテリオシンの存在により、有毒の細菌の増殖(又は、発生、又は繁殖)が防がれ集団が、無毒性に維持される。ある態様では、この接触工程は、本明細書で述べるように、遺伝子操作されたhmwバクテリオシン又はその抗細菌部分を発現する細菌細胞を用いて行うことができる。
【0041】
本開示の1若しくは2個以上の態様に関する詳細を、以下に示す添付の図面及び説明の中で述べる。本開示のその他の特徴、目的、及び利点は、図面及び詳細な説明、並びに請求項から明らかとなるであろう。
【0042】
定義
本明細書で用いるhmwバクテリオシンには、R型ピオシン、尾状のバクテリオシン、R型バクテリオシン、F型及びR型ピオシン、モノシン、メニンゴシン、又はその他の高分子量(hmw)バクテリオシンが含まれる。hmwバクテリオシンには、改変された形態のR型及びF型ピオシン、エンテロコリチシン、モノシン、及びメニンゴシンが含まれる(Kingsbury”Bacteriocin production by strains of Neisseria meningitidis.”J.Bacteriol.91(5):1696‐9,1966、を参照)。改変された、又は遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、シュードモナスエルジノーサのR1、R2、R3、R4、又はR5ピオシンから選択される改変されたR型ピオシンであってよい。本開示のバクテリオシンは、熱不安定性、軽い耐酸性、トリプシン耐性、約65,000×gによる遠心分離で沈殿可能、及び電子顕微鏡で分割可能という性質であり得る(Jabrane et al.Appl.Environ.Microbiol.68:5704‐5710,2002;Daw et al.Micron 27:467‐479,1996;Bradley Bacteriol.Revs.31:230‐314,1967; 及びKageyama et al.Life Sciences 9:471‐476,1962、を参照)。多くの場合、本明細書で開示する遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、1若しくは2個以上のこれらの性質を、いずれの組み合わせでもよく有する。本明細書で開示するバクテリオシン及び遺伝子操作されたhmwバクテリオシンに共通の追加的な性質は、これらは核酸を有さず、従って、多くのバクテリオファージでは可能であるような、標的細菌を死滅させた後、又はその間の自身の複製ができないという、複製欠損であるということである。
【0043】
本明細書で開示するピオシン及びその他のhmwバクテリオシンは、複数のタンパク質又はポリペプチドのサブユニットを含む複雑な分子であり、ミオウイルスファミリーのバクテリオファージの尾部構造と類似している。天然のピオシンでは、サブユニット構造はシュードモナスエルジノーサのゲノムなどの細菌ゲノムによってコードされ、ピオシンを形成して他の細菌に対する自然防御として働く(Kageyama,1975)。単一のピオシン粒子により、感受性を有する標的細菌を死滅させることができる(Kageyama,1964;Shinomiya & Shiga,1979;Morse et al.,1980;Strauch et al.,2001)。
【0044】
「標的細菌」とは、本開示の遺伝子操作されたhmwバクテリオシンに結合され、及び/又はその増殖、生存、若しくは複製がそれによって阻害される細菌を意味する。「増殖の阻害」、又はその変形した形の用語は、細菌細胞の分裂速度の低下若しくは停止、又は細菌細胞の分裂の停止、又は細菌の死を意味する。
【0045】
本明細書で用いる「核酸」という用語は、通常、一本鎖又は二本鎖の形の、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマー(単独、又は混合物)を意味する。この用語は、ヌクレオチド類似体、又は改変バックボーン残基若しくは結合を含む核酸を包含することができ、これらは、合成、天然、若しくは非天然のものであり、基準となる核酸と類似の結合、構造、若しくは機能特性を有し、並びに、基準となるヌクレオチドと類似の方法で代謝される。そのような類似体の限定されない例としては、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2‐0‐メチルリボヌクレオチド、及びペプチド核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。核酸という用語は、状況によっては、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドと交換可能に用いられる場合もある。
【0046】
特定の核酸配列は、その保存的に改変されたバリアント(縮退コドン置換、など)、及び相補配列、並びに明示された配列も包含する。特に、縮退コドン置換は、1若しくは2個以上の選択された(又はすべての)コドンの第三(「ウォッブル(wobble)」)の位置が混合塩基及び/又はジデオキシイノシン残基で置換された配列を作り出すことで達成することができる。従って、本明細書で開示するタンパク質配列をコードする核酸配列は、本明細書で述べるように、その改変されたバリアントも包含する。
【0047】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、通常、本明細書において交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを意味する。アミノ酸は、本明細書では、公知の3文字記号、又はIUPAC‐IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号で表すことができる。
【0048】
毒性因子は、生物の病原性に寄与するが、その一般的な生存能には寄与しない分子である。毒性因子を失うことにより、生物の病原性は下がるが、生存能が必ずしも下がるとは限らない。毒性因子は、例えば、遺伝子発現の制御、接着性若しくは移動性の付与、抗生物質の排出、又はバイオフィルムを含む防御皮膜の形成など、多くの機能のいずれか一つを有することができる。
【0049】
適応性因子は、生物の一般的な生存能、増殖速度、又はその環境下での競合性に寄与する分子である。適応性因子を失うことにより、生物は生存能又は競合性が低下し、この欠陥により、間接的に病原性が低下する。適応性因子も、例えば、栄養素、イオン、又は水の摂取、細胞膜若しくは細胞壁の構成成分又は保護剤の形成、核酸の複製、修復、又は変異誘発、環境的な若しくは競合的な攻撃からの防御又はそれに対する攻撃など、数多くの機能のいずれか一つを有することができる。
【0050】
毒性因子及び適応性因子の中には細菌の表面に存在するものがあり、それによって本明細書で開示するhmwバクテリオシンが接触可能となる。表面の、ある毒性因子又は適応性因子と結合することにより、hmwバクテリオシンは、細胞膜に孔を開け、細胞質膜の完全性に損傷を与え、及び/又は細胞の膜電位を消失させて、死滅を媒介することができる。hmwバクテリオシンによる結合及び死滅を恐らくは補助していると思われるこれらの表面の接触可能な分子は、外膜のタンパク質、多糖、及びリポ多糖である。従って、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンの標的として考えられるのは、外膜のタンパク質、多糖、及びリポ多糖である毒性因子及び適応性因子である。遺伝子操作されたピオシンの標的である毒性因子のいくつかの限定されない例としては、膜内開裂プロテアーゼ(intramembrane cleaving protease)(iCLIP)であるメタロプロテアーゼ;IL及びIIL、ガラクトース結合及びフコース結合レクチン;接着性マトリックス分子を認識する微生物表面成分(microbial surface components recognizing adhesive matrix molecule)(MSCRAMM)タンパク質;及びACEなどのアドヘシンが挙げられる。
【0051】
特定の毒性因子の標的化への最終的な成功は、その細菌表面上でのトポグラフィー、その表面での密度、恐らくは外膜内でのその2次元的な移動性、及び病原体の臨床分離株又は野外分離株でのその広がりに依存する。例えば、OprMは、例えば、MexAB系などの複数の排出ポンプに関与するポリン様外膜タンパク質であり、多くのグラム陰性細菌で広く見られる(Wong and Hancock,2000)。OprMと同様に、TolCは、グラム陰性病原体の多くの排出ポンプに必要なアクセサリータンパク質である(Koronakis et al.,2004;Piddock,2006)。さらに、セクレチンのYcrCファミリーのいくつかの構成要素は、シュードモナスエルジノーサ及びエルシニアぺスチスなどの多くのグラム陰性病原体がその哺乳類ホストを中毒化するために依存する3型分泌系(「T3SS」)による病原性エフェクタータンパク質の転座に必要である、外膜タンパク質である(Galan and Collmer,1999;Koster et al.,1997;Cornelis,2006)。さらに、YscWファミリーの構成要素は、やはり外膜にアンカリングしてセクレチンを膜内へ挿入する補助となる、リポタンパク質である(Burghout et al.,2004)。
【0052】
毒性因子及び適応性因子のさらなる限定されない例としては、大腸菌アクアポリンZ水チャネル(Calamita,2000、参照)などのアクアポリン;RetS(Goodman et al.,2004;及びZolfaghar et al.,2005、参照);7TMR‐DISMファミリーの構成要素(Anantharaman et al.,2003、参照);OprM(Wong et al.,2000;及び配列番号11、参照);OprJ(配列番号12)、OprN(配列番号13)、AprF(配列番号14)、OpmM(配列番号15)、OpmA(配列番号16)、OpmD(配列番号17)、OpmE(配列番号18)、OpmQ(配列番号35)、OpmB(配列番号36)、OpmJ(配列番号37)、OpmG(配列番号38)、OpmI(配列番号39)、OpmH(配列番号40)、OpmK(配列番号41)、OpmN(配列番号42)、OpmF(配列番号43)、又はOpmL(配列番号44)などの細菌タンパク質;ポリンのOprDファミリー(Tamber et al.,2006、参照);ACE、又はエンテロコッカスフェカリス(E.faecalis)OG1RFがコードするACE遺伝子(Sreedhar et al.,2000;及びRich,et al.,1999、参照);ガラクトース結合及びフコース結合レクチン、PA‐IL及びPA‐IIL(Mitchell et al.,2002、参照);He et al.,2004、に記載の植物及び動物の毒性遺伝子;細胞外ピロリン酸部分(Bonev et al.,2004、参照);メタロプロテアーゼ(Rudner et al.,1999、参照);並びにトランスポゾンがコードする表面分子(Jacobs et al.,2003、参照)、が挙げられる。
【0053】
本開示のhmwバクテリオシンが標的とするその他の毒性因子の限定されない例としては、米国特許第6,355,411号及びWO99/27129号に開示のオープンリーディングフレーム(ORF)にコードされた毒性因子が挙げられ、これらの文献はその全体が記載されているかのごとく、参照することで本明細書に組み入れられる。ある態様では、本明細書で開示するバクテリオシンが標的とする因子は、以下に示す米国特許からのORFにコードされる因子である。
【0054】
【表1A】

【0055】
【表1B】

【0056】
【表1C】

【0057】
本開示を実施する形態の詳細な説明
一般事項
hmwバクテリオシンは、急速に細菌を死滅させる能力を有する。インビボでの研究に関するいくつかの初期の報告によると、それはマウスでのこの用途で有効であり得ることが示されている(Haas et al.,1974;Merrikin and Terry,1972)。発明者らは、野生型のR2型ピオシンを腹腔内、又は静脈内投与することで、抗生物質耐性のシュードモナスエルジノーサが引き起こす急性腹膜炎にかかったマウスを治療することができること、及び、R2型ピオシンが、1回の投与量中に109個のピオシン又は全タンパク質量で1μg未満などという非常に少ない投与量で作用することができる(データは示さず)ということを最近になってつきとめた。
【0058】
しかしながら、抗菌剤として臨床的に有用なhmwバクテリオシンに関して、殺菌範囲の狭さという問題には対処しなければならない。このことは、通常の細菌叢に影響を及ぼすことなく特定の種又は菌株を特異的に標的とすることができるという点で有益であると見なすことができるが、公知のバクテリオシンに感受性を有する種/菌株の種類は限らている。例えば、ピオシンは、ある種のシュードモナスエルジノーサ株によって産生されることが現在知られており、狭い範囲の他のシュードモナスエルジノーサ株及び数種類のその他のグラム陰性種に対して活性を有する。その他の種からのR型バクテリオシンも報告されているが(エルビニア、Jabrane 2002を参照、及びエルシニアエンテロコリチカ、Strauchを参照、など)、その存在は限られていると思われる。一方、ミオウイルスファージは、非常に広く分布して一般的であり、様々な種類の細菌で見られる。
【0059】
本開示は、ピオシンの標的範囲を変化させることができ、そしていかなるhmwバクテリオシンでもそのようにできることを実証するものである。ピオシン及びその関連するファージの両方において、主たるその範囲の決定因子は尾部繊維に存在し、それが細菌表面に特異的に結合し、そのC末端部分(RBD)とLPS又はその他の細胞の表面構造の成分との相互作用を起こす。LPSは、種及び細菌株間で大きく異なる場合があり、バクテリオファージの尾部繊維自体が、特に細胞表面と相互作用を起こすこのC末端領域において、大きく異なっている(Tetart, Desplats,)。この多様性は、ファージが変化するホストの表面に適応し続けていることを反映していると思われる。同じホストに感染する異なる種類のファージが(大腸菌ファージP2、Mu、及びP1)、尾部繊維のC末端部分で配列類似性を有することが確認されており(Haggard‐Ljungquist E,Halling C,Calendar R.)、このような遺伝子領域における水平移行(horizontal transfer)がホストの特異性に関与している可能性が高いことを示唆している。例えば、R2ピオシンは、大腸菌ファージP2とも非常に高い関連性を有するファージであるシュードモナスファージphiCTXと、非常に高いレベルでの配列類似性を有している。R2ピオシンとP2の尾部繊維配列を比較すると、C末端(RBD)よりもN末端(BPAR)の方が高い配列類似性が見られ、C末端がホストの特異性に関与していることが示唆される。
【0060】
本明細書で開示するように、尾部繊維遺伝子のC末端を遺伝子操作することにより、ピオシン又はその他のhmwバクテリオシンの標的範囲を変化させることが可能である。重要なことは、この範囲の変化は種のバリアを越えて起こすことができることであり、天然のR型ピオシン及びその他の天然のhmwバクテリオシンを本明細書で開示するように改変して、より広い標的範囲を有する抗菌剤を開発することができることを示している。
【0061】
改変hmwバクテリオシン
本開示は、結合特異性及び/又は親和性が変化した遺伝子操作されたhmwバクテリオシンを提供する。ある態様では、本開示のhmwバクテリオシンは、病原性細菌の毒性因子又は適応性因子として作用する表面の露出した分子と特異的に結合する。「特異的に(又は、選択的に)結合する」とは、多くの場合タンパク質及びその他の生物学的物質の不均一な集団の中で、結合したリガンドの存在によって決定される結合反応を意味する。結果として、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは特異的に結合すると、一般に、病原性細菌を死滅させることができる。さらに、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンに対する耐性を獲得するために、標的である病原性細菌は、hmwバクテリオシンの認識部位又は結合部位を欠失することが必要となる。言い換えると、改変hmwバクテリオシンが、特異的にそして限定的に毒性因子又は適応性因子をその受容体として用いる場合、その細菌は、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンによる死滅から逃れるためには、その毒性因子又は適応性因子を欠失せざるを得なくなる。
【0062】
本開示の改変hmwバクテリオシンは、バクテリオファージの尾部と類似しているが、未改変、天然、若しくはネイティブのバクテリオシンと比べて変化した結合能力、又は受容体結合ドメイン(RBD)を有する。RBDは、本明細書で述べる組換えDNA技術を用いることで、アミノ酸配列を変化させることができる。「組換え」という用語は、通常、細胞、又は核酸、タンパク質、若しくはベクターに対して用いる場合、その細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入、又はネイティブの核酸若しくはタンパク質の変化により改変されたことを意味するか、又は、その細胞がそのように改変された細胞に由来するものであることを意味する。従って、組換え細胞は、ネイティブ(非組換え)の形態の細胞内では見られない遺伝子を発現するか、又は、ネイティブの遺伝子を発現するが、それは異常発現であるか、過小発現であるか、若しくはまったく発現しない。
【0063】
多くの態様では、RBDは、改変して、別のバクテリオシン又はバクテリオファージからの尾部繊維のRBDとすることができる。本明細書で開示する限定されない例の一つとして、R2ピオシンのRBDは、ファージ(異なるホストに感染する)の尾部繊維タンパク質のC末端部分(RBD)をR2尾部繊維タンパク質のN末端部分(BPAR)と融合させることで改変される。P2尾部繊維のC末端をR2のPRF15へ融合し、P2同族シャペロンを共発現することによって、R2の標的細菌の範囲を、E.coli Cを死滅させるように変化させる。図2を参照のこと。
【0064】
追加的な態様では、hmwバクテリオシンは別の方法で遺伝子操作される。本開示は、細菌(病原性細菌など)の表面分子を認識する、又は標的とするように設計、又は選択されたhmwバクテリオシンを含む。その表面分子は、hmwバクテリオシンによって認識又は結合される細菌上の受容体と見なすことができる。
【0065】
本開示は、hmwバクテリオシンの尾部繊維が受容体と結合又は相互作用して結合対を形成する性質に基づいている。この結合又は相互作用は、結合対の第一の要素である尾部繊維のRBDにより、結合対の第二の要素である受容体との間で発生する。多くの態様では、受容体は、細菌細胞の表面分子又はその一部分である。他の態様では、受容体は、病原性細菌の毒性因子又は適応性因子としての性質を有する分子である。
【0066】
本明細書で開示する改変された、又は遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、基板結合領域(BPAR)、及び改変された若しくは異種のRBDの両方を持つ尾部繊維を含む。本明細書で述べるように、尾部繊維は、3個の尾部繊維タンパク質サブユニットからなる三量体構造であり、その各々はさらに、尾部繊維のBPARに対応してこれを形成する第一のドメイン、及び尾部繊維の改変された若しくは異種のRBDに対応する、そしてこれを形成する第二のドメインを有する。
【0067】
通常、「異種の」とは、タンパク質又は核酸配列の一部分に関して用いられる場合、その配列が、自然状態ではお互いに同じ関係では通常は見られない2若しくは3個以上のサブ配列を含むことを示す。例えば、異種タンパク質とは、そのタンパク質が、自然状態ではお互いに同じ関係では見られない2若しくは3個以上のサブ配列を含むことを示す。「異種の」とは、また、そのアミノ酸配列若しくは核酸配列が、通常は他の配列と共には見られないか、又は、通常は選択されたプラスミド、ベクター、若しくはホスト内には含まれない、ということも意味する。すなわち、これから利用されようとしているシステムにとってネイティブなものではないということである。例えば、タンパク質で、その野性源ではない生物によって産生されたタンパク質である。
【0068】
従って、多くの態様では、本開示は、hmwバクテリオシンの尾部繊維タンパク質であって、そのタンパク質のBPARと、改変された又は異種のRBDとを有するタンパク質を含む。BPARは、通常、尾部繊維タンパク質のN末端領域にあり、一方、RBDは、通常、C末端領域にある。改変された、又は異種のRBD以外は、尾部繊維タンパク質は、いかなる天然のhmwバクテリオシンのものであってもよく、ピオシン、モノシン、エンテロコリチシン、又はメニンゴシンが限定されない例として挙げられる。ある態様では、本明細書で述べるように、各々配列番号1、3、5、7、9で表されるR1‐ピオシン、R2‐ピオシン、R3‐ピオシン、R4‐ピオシン、及びR5‐ピオシンの尾部繊維タンパク質を用いることができる。追加的な態様では、尾部繊維タンパク質は、配列番号45のΦCTXファージのもの、又は配列番号19のファージPS17のもの、又は配列番号21及び22のVHMLバクテリオファージのものであってよい。
【0069】
本開示の態様は、図3に示すように、hmwバクテリオシンの尾部繊維タンパク質BPAR、及びバクテリオファージの尾部繊維タンパク質からのRBDの組み合わせを含む。ある場合では、組み合わせは、バクテリオシンの尾部繊維タンパク質の1位から約164位又は240位までのN末端アミノ酸を含むことができる。このポリペプチド断片は、RBDを有するそのC末端部分を含むバクテリオファージの尾部繊維タンパク質の領域と融合することができる。この領域は、1位から約150位まで、約170位まで、約190位まで、約290位まで、約300位まで、又は約320位までのN末端領域が欠失したポリペプチド断片であってよい。
【0070】
R2ピオシン及びP2ファージの尾部繊維を限定されない例として用いると、BPARを有する断片としては、1位から164又は240位までのN末端アミノ酸を挙げることができる。図4乃至図7を参照のこと。RBDを有する断片としては、P2又は関連ファージの尾部繊維タンパク質の、約347乃至約755のアミノ酸の長さであるC末端を挙げることができる。融合は、組換えDNA技術により、prf15などのR2尾部繊維タンパク質をコードする核酸配列、及び尾部繊維タンパク質をコードするP2ファージのH遺伝子を用いて容易に行うことができる。RBDの同族シャペロンは、改変された尾部繊維を機能性ピオシン構造へと確実に構築するために、融合尾部繊維遺伝子と共発現する必要がある。図8を参照のこと。
【0071】
他の態様では、改変されたRBDは、天然のRBDと比べて、又は尾部繊維タンパク質中に存在するBPARと比べて、RBDのアミノ酸配列の変化を含んでいる。アミノ酸配列の変化の限定されない例としては、1若しくは2個以上のアミノ酸の置換、挿入(付加)、又は欠失が挙げられる。
【0072】
RBDアミノ酸残基の置換を含む態様では、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約22%、約24%、約26%、約28%、約30%、約35%、約40%、約45%、若しくは約50%、又はそれを超える割合の尾部繊維タンパク質中のC末端が置換される。ある態様では、置換は、C末端から約245、約260、約275、若しくは約290個、又はそれを超す数の残基内に存在する。
【0073】
置換の位置は、その領域内の1若しくは2箇所以上のいずれの組み合わせであってもよい。典型的な位置としては、これらに限定されないが、配列番号1、3、5、7、又は9における、448、449、452、453、454、455、459、460、462、463、464、469、472、473、474、475、478、480、484、485、486、491、494、496、497、498、499、505、506、507、508、510、512、514、517、518、519、520、521、523、527、528、530、531、533、535、537、538、541、543、546、548、561、603、604、605、606、610、618、621、624、626、627、628、629、631、632、633、638、641、642、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、657、659、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、及び691位、並びにこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。ある態様では、置換は、本明細書で述べるように、保存的である。他の態様では、置換は、非保存的置換である。
【0074】
さらなる態様では、尾部繊維タンパク質のC末端の同じ領域内において、アミノ酸残基の挿入及び欠失を行うことができる。
【0075】
バクテリオファージからのRBD
その他のRBD源としては、これらに限定されないが、T‐4及びその他のT‐偶数若しくは偽T‐偶数ファージ(pseudo T‐even phaage)、T‐3ファージ及びT‐7ファージ、ファージのT‐7スーパーグループ(T‐7 super‐group)、Muファージ、P22ファージ、L‐413cファージ、並びにラムダファージが挙げられる。
【0076】
多様化によるRBD
さらなる態様では、尾部繊維タンパク質は、2006年6月8日公開の米国特許出願公開第2006‐0121450号(その全体が記載されているかのごとく、参照することで本明細書に組み入れられる)に記載のように、多様性を生じさせるレトロエレメント(DGR)を配置することで構造を多様化させる生物由来のRBDによる置換、又はその挿入を含む。ボルデテラバクテリオファージBPP‐1の主要トロピズム決定因子(Mtd)は、そのような構造の一つである。Mtdの配列は、本明細書で開示する配列番号24によって表される。他の態様では、置換は、Mtd配列の一部分で行われ、これらに限定されないが、例えば配列番号24の49から381までの残基、171から381までの残基、又は306から381までの残基の領域である。配列番号3の691位より後ろの部分などの尾部繊維タンパク質の末端へ、Mtd配列、又はその断片のいずれか(上記で挙げたものなど)を挿入することは、本明細書で開示する態様の範囲内である。Mtd配列、又はその断片のいずれか(上記で挙げたものなど)による置換は、尾部繊維タンパク質のいずれの非BPAR領域に対しても行うことができる。限定されない例としては、配列番号1、3、5、7、又は9の領域で、約643、625、562、448、428、231、及び163位から始まりその配列のC末端までが挙げられる(これらの置換の実例は、図4乃至図7を参照)。
【0077】
本明細書で述べるように、尾部繊維中のMtd配列は、多様化して複数の改変された又は異種のRBDを産生することができる。Mtdをコードする核酸配列は、鋳型領域(TR)に、シス又はトランスで、操作によって結合させることができる可変領域(VR)を有し、それによってTRはVRの部位特異的な変異原性を誘導する鋳型配列となる。VR領域とTR領域との間の操作による結合には、逆転写酵素(RT)活性をコードする配列との操作による結合も含み、これはVRに対してトランスに存在することができる。MtdのVRの可変部位は、おおむね相同的な鋳型領域であるTRのアデニン残基に対応しており、それ自身はインバリアントであり、VR内の配列の変化に不可欠である。従って、最初の分子はVRと同一のTRを含む場合があるが、TR内に存在するアデニン残基が、VR配列内の対応する位置に変異原性、又は多様化をもたらす結果となる。従って、TR配列がVR内の配列の完全な直接のリピートである場合、VR領域の多様化により、TR配列を変えることなく、TR内にも見られる1若しくは2箇所以上のアデニン残基が別のヌクレオチド、すなわち、シトシン、チミン、又はグアニンへと変異する結果となる。このシステムを用いて、本明細書で述べる改変された尾部繊維タンパク質のVR領域を、従ってRBDを、変化させることができる。
【0078】
多様化により、尾部繊維タンパク質は、得られるRBDが、配列番号24で表されるボルデテラバクテリオファージBPP‐1の主要トロピズム決定因子(Mtd)に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性を有するように変化させることができる。本明細書で述べるように、尾部繊維タンパク質とMtdとの結合は、Mtd配列若しくはその一部分の尾部繊維タンパク質配列への置換あっても、又は挿入であってもよい。従って、得られる尾部繊維は、上記で挙げたように、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、若しくは少なくとも95%の相同性を有する結合ドメインによる置換、又は挿入を含むものであると見なすことができる。
【0079】
多様化及び配列の変化のために、尾部繊維及びMtdをコードする核酸分子の組み合わせを用いることができる。従って、尾部繊維タンパク質の全体若しくは一部、及びMtdの全体若しくは一部をコードする配列の核酸の組み合わせは、本開示の態様の範囲内である。他の態様は、本明細書で述べる改変された、又は異種のRBDを有する尾部繊維タンパク質のいずれかをコードする核酸分子を含む。ある態様では、コードされた、改変された若しくは異種のRBDは、天然のRBDと比較して、又は上記で述べる尾部繊維タンパク質内に存在するBPARと比較して、RBDのアミノ酸配列における変化を含む。
【0080】
追加的な態様では、尾部繊維タンパク質をコードする核酸分子を多様化に利用可能とすることで、本明細書で開示する改変された尾部繊維タンパク質を形成することができる。適切なプロモーターの支配下において、核酸分子はatd‐TR‐brt領域に対して5’末端に操作によって配置される。このTR配列はTR’と称することができ、下記で述べるように、VR配列に基づいて作製することができる。得られる核酸コンストラクトは、atdの上流の転写終結構造の欠失を有することができる。
【0081】
上記で述べる尾部繊維タンパク質のC末端部をコードする核酸分子の領域は、VRとなるように選択され、そして、変化した際にVRによってコードされた配列内でのアミノ酸の変化を誘導する位置にアデニン残基を有するTR’配列と、操作によって連結させる。そのようなアデニン残基は、VR内の1番目又は2番目のコドンとなるように計画的に設計することができる。TR’配列は、最初は選択されたVRと同一であってよいが、これに続く部位特異的な変異原性、又は新規な核酸合成により、コードされる尾部繊維タンパク質内での変異原性及び多様化を誘導するための対応する位置にアデニン残基を有するTR’配列が作られる。
【0082】
hmwバクテリオシンの作製及び使用
本明細書で述べる核酸分子を用いて、改変されたタンパク質又は遺伝子操作されたタンパク質を含む尾部繊維タンパク質を、当業者に公知のいかなる方法によっても、発現させ、作製することができる。ある態様では、発現は、コードされた尾部繊維タンパク質の発現を誘導することができるプロモーターに操作によって結合させた核酸分子を有するベクターを用いて行われる。
【0083】
多くの態様では、発現は、種々のバクテリオシン及びバクテリオファージで報告されている「シャペロン」をコードする配列など、アクセサリー遺伝子の発現と共に発生させることができる。シャペロンの存在により、必ずしもバクテリオシンの一部となることなく、本開示のhmwバクテリオシンの構築が促進される。シャペロンは、図8に示すものなどの本開示のhmwバクテリオシンに用いられるRBDに対して同族、又は対応するタンパク質であってよい。シャペロンの一つの限定されない例は、R2prf16(配列番号4)によってコードされ、それは、prf15(配列番号3)によってコードされるR2ピオシン尾部繊維タンパク質に対応するもの(又は、それに対して同族のシャペロン)である。その他の例としては、P2内のG遺伝子(配列番号26)、L‐413c上のG遺伝子(配列番号29)、配列番号20のPS17尾部繊維に対する同族シャペロン、及びVHMLバクテリオファージ内のOrf38(配列番号23)が挙げられ、これらは各ファージ中の尾部繊維遺伝子に対して同族のシャペロンである。これらの遺伝子は、T4の尾部繊維(配列番号31)の三量体への適切な折り畳みをつかさどるT4ファージのgp38(配列番号32)と相同的である(Burda,Qu,Hash emolhosseni)。
【0084】
図8に示すように、非同族シャペロンでは所定の尾部繊維タンパク質の適切な折り畳み、及び/又はそのhmwバクテリオシンへの構築には不十分であり得ることから、同族シャペロンの使用は有利である。限定されない例として、R2のprf16遺伝子産物は、P2の尾部繊維のBRD部に融合したR2のBPARを含む改変された尾部繊維の折り畳みを相補するには不十分であることが観察されている。理論に束縛されるものではなく、本開示の理解を深めるために提供するものであるが、シャペロンは、同族の尾部繊維タンパク質のC末端部分に特異的に作用することができ、その尾部繊維及びそのシャペロンは共進化した(co‐evolved)ものと考えられる。しかし、Qu et al.は、同族シャペロンであるgp38を必要としないT4のgp37尾部繊維ミュータントを単離した。このミュータントは、gp37内にコイルドコイルモチーフの複製を有しており、これ自体が折り畳みに関与している可能性がある。従って、さらに、尾部繊維タンパク質は、同族シャペロンを共発現する必要なく適切に折り畳まれるように、そのような変化を含むように設計することができると考えられる。
【0085】
従って、本開示の態様は、本明細書で述べるように、改変された又は遺伝子操作された尾部繊維タンパク質をコードし、任意に、シャペロンと共発現する核酸分子でトランスフェクトされた細菌細胞を含む。その核酸分子は、任意にアクセサリー(シャペロン)タンパク質と共に発現して、本開示の改変された又は遺伝子操作された尾部繊維が産生される結果となる。本開示は、2種類以上の核酸分子を用いることで、混合ホモ三量体尾部繊維、又はヘテロ三量体尾部繊維さえも得られる、2種類以上の改変された又は遺伝子操作された尾部繊維タンパク質の発現も含む。さらに、尾部繊維タンパク質及びシャペロンをコードする配列は、プラスミド若しくはその他のベクターなどの単一の核酸分子内に含まれていてもよく、又は別々の分子であってもよい。単一の核酸分子を用いる場合は、その配列は、任意に、同一の制御配列の支配下にあってもよい。別の選択肢として、このコード配列は、別々の制御の支配下であってもよい。
【0086】
ある態様では、細菌細胞は、さらなるサブユニットを発現して、改変された又は遺伝子操作された尾部繊維を含むhmwバクテリオシンを形成する能力も有する。態様の一つのグループでは、細菌細胞の、内在性尾部繊維タンパク質をコードする配列が不活化、又は欠失している。任意に、尾部繊維タンパク質及び/又はシャペロンをコードする配列を有する核酸分子とは別である、プラスミド又はその他のベクターなどの核酸分子上の配列によって、その他のサブユニットがコードされてもよい。従って、尾部繊維タンパク質及び/又はシャペロンは、1若しくは2種類以上の核酸分子により、その他のサブユニットに対してトランスに提供することができる。
【0087】
核酸、ベクター、及び細菌細胞を、本明細書で開示する改変された又は遺伝子操作されたhmwバクテリオシンを作製する方法で用いることができる。そのような方法は、尾部繊維及びhmwバクテリオシンの発現及び産生をもたらす条件下で上述の核酸分子を有する細菌細胞を培養する工程を含む。本開示のある態様では、その条件は動物内でのインビボである。
【0088】
態様の一つのグループでは、hmwバクテリオシンを作製する方法は、改変された又は遺伝子操作された尾部繊維タンパク質を含むバクテリオシンのサブユニットを、宿主細菌内で発現する工程、及び細菌培養物からそのhmwバクテリオシンを回収する工程を含む。宿主細菌は、バクテリオシンの産生に必要なその他のサブユニットをコードし、発現する補完的な産生宿主細菌(complementary host production bacterium)である。「宿主細菌」という用語は、本明細書で開示するhmwバクテリオシンを産生するために用いる細菌を意味する。宿主細菌は、「産生宿主細菌」と称する場合もある。「細菌培養物からのhmwバクテリオシンを回収する工程」は、一般に、宿主細菌培養物からのバクテリオシンの除去を含む。
【0089】
態様の別の選択肢としてのグループでは、本明細書で述べる改変された尾部繊維を有するhmwバクテリオシンを作製する方法を提供する。この方法は、本明細書で開示するいずれかの手段による改変された尾部繊維タンパク質をコードする核酸分子を作製する工程、及びhmwバクテリオシンが産生される条件下で、その核酸分子を細胞内で発現させる工程を含む。
【0090】
本開示の態様は、本明細書で述べる尾部繊維タンパク質を有するhmwバクテリオシンを含む。態様の一つのグループでは、このバクテリオシンは、配列番号1、3、5、7、9で表されるアミノ酸配列をその一部に含む尾部繊維タンパク質を有する。他の態様では、バクテリオシンは、改変された、若しくは遺伝子操作されたピオシン、モノシン、エンテロコリチシン、又はメニンゴシンであり、これらは異種の改変されたRBDを含む尾部繊維を有する。多くの態様では、異種の改変されたRBDは、細菌の毒性因子又は適応性因子と結合する。
【0091】
さらなる態様では、多価の尾部繊維を有する遺伝子操作されたhmwバクテリオシンを開示する。X線結晶解析により、ボルデテラブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)バクテリオファージBPP‐1のMtdは、複雑に絡み合った錐体形のホモ三量体であって、その錐体の底面にややフラットな受容体結合部位を形成する12の可変アミノ酸残基のセットを3セット有しており、収束進化したC型レクチン(「CTL」)ドメイン内に位置することが明らかにされた。5個のMtdバリアントの構造を、1.5オングストロームの解像度で比較することにより、可変残基の主鎖コンフォーメーションは構造的にインバリアントであり、CTL及び集合三量体での挿入は両方共に、可変残基の組み合わせの提示のための静的な足場(static scaffold for combinatorial display of variable residues)の形成に関与しており、それによってタンパク質の誤った折り畳みの発生が最小限に抑えられる(McMahon et al.,2005)。従って、バリアントMtd繊維の構造が、相互作用を起こさない、溶媒と接触する12のアミノ酸残基以外は同一であることから、3個の適切に折り畳まれた混合モノマーを含む単一の尾部繊維を作り出すことができる。
【0092】
その受容体、ボルデテラ毒性因子パータクチン、と結合した主要なMtd‐P1バリアントの構造も結晶解析で解明され、特徴が示された。Mtdの単量体の一つがパータクチンの一つの構造ドメインに結合し;同じMtdの同一の第二の単量体が、同じ(単量体である)パータクチン分子の別の非対称の構造ドメインと結合し;第三のMtd単量体は結合しない状態で残される。
【0093】
上述のバリアントMtd構造、及びMtdとその標的であるパータクチンとの結合相互作用を適用して、多価の尾部繊維の設計及び選択を行うことができる。例えば、Mtd単量体は2種類の異なる構造ドメインに対して親和性を示すことができるが、その多量体の形態では、機能的なファージとの結合及び感染を起こすのに十分なアビディティーを有することは明らかである。さらに、ファージとの結合及び感染のために適切なアビディティーを提供するために、繊維のすべての単量体が受容体に結合する必要があるわけではない。これらのデータ及び結論を、少なくともT4バクテリオファージ、さらにはミオウイルスに関しては、3個の(ホモ三量体)尾部繊維が受容体と結合するだけで、尾部の鞘の収縮、及びコアの細菌膜の貫通を誘発するという知見と合わせると、多価のhmwバクテリオシンを作り出すいくつかの手段が示唆される。そのような遺伝子操作された多価のhmwバクテリオシンは、ホストの範囲がより広く、同じ細菌生物上でさえも2種類以上の毒性因子若しくは適応性因子と結合する能力を有し、それにより、標的細菌が、標的である該当するすべての受容体の発現の変異的な欠損によって耐性を確立するということがより困難となる。R型バクテリオシンは、遺伝子操作により、3個の同一の尾部繊維の独立した2組のセットを持たせることができ、一方のセットの繊維は、同一ではない3個の単量体の同じものから成り、もう一方のセットの繊維は、同一ではない3個の単量体の異なるものから成る。各単量体は、ちょうどMtdがそうであるように、2種類の異なるエピトープ(例:2種類の異なる受容体)に対する結合親和性を有することができる。それにより、12種類の異なる標的受容体(2種類の「エピトープ」/単量体×3種類の単量体/尾部繊維×2セットの異なる尾部繊維/R型バクテリオシン=12種類の標的受容体)のうちのいずれかの1若しくは2種類以上を発現するいかなる細菌も、遺伝子操作された多価のhmwバクテリオシンと結合し、膜の貫通を誘発することになる。そのような遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、非常に広いホストの範囲を有し、さらに、2種類以上の標的受容体を発現する細菌がこの遺伝子操作されたhmwバクテリオシンに耐性を有するようになる可能性は極めて低い。
【0094】
他の局面では、本開示のhmwバクテリオシンを使用する方法を提供する。ある態様では、細菌の細胞質膜の完全性に損傷を与える方法を開示する。その方法は、標的となる細菌を本明細書で開示するhmwバクテリオシン又はその一部分と接触させる工程を含むことができる。別の選択肢として、本明細書で開示するhmwバクテリオシンを含む組成物と接触させることもできる。
【0095】
態様の一つのグループでは、接触は、対象内でインビボで行われる。従って、対象内の細菌の膜の完全性に損傷を与える方法を開示する。その方法は、本明細書で開示するhmwバクテリオシン又はその一部分を対象へ投与する工程を含むことができる。態様の別のグループでは、接触は、インビトロで行われる。
【0096】
さらなる追加的な態様では、有毒先祖細菌から、無毒性又は非適応性の子孫細菌を形成する方法を提供する。この方法は、有毒細菌を、該有毒先祖細菌の毒性因子又は適応性因子と結合する本明細書で開示するhmwバクテリオシンと接触させる工程を含むことができる。この方法は、次に、これに続いて、毒性因子又は適応性因子を発現しない無毒性の子孫細菌を選別可能とすることができる。
【0097】
別の選択肢としての態様では、無毒性の細菌の集団を維持する方法を提供する。この方法は、集団を有毒細菌の毒性因子又は適応性因子と結合するhmwバクテリオシンと接触させる工程を含むことができる。この方法では、次に、これに続いて、有毒細菌の増殖が予防される。理論に束縛されるものではなく、本開示の理解を深めるために提供するものであるが、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンに対する細菌の耐性の出現は、病原性細菌の毒性又は適応性の欠損に付随するものとなる。
【0098】
本開示の方法は、細菌の増殖が望ましくない又は有害であると考えられる環境に適用することもできる。限定されない例としては、医療環境及び手術室設備を含む環境;並びに、生の肉類又は魚類を取り扱う区域を含む食品加工区域の殺菌が挙げられる。この方法は、熱に弱い物体、医療装置、及び移植臓器を含む移植組織片の殺菌に用いることもできる。
【0099】
この方法は、独立した治療法として、又は細菌集団の処置など、付属的な治療法として用いることができる。これらの方法と組み合わせて細菌に基づく状態の治療に有用であろうと思われる数多くの抗菌剤(抗生物質、および化学療法薬を含む)が公知である。
【0100】
標的細菌
本開示の遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、改変することにより、限定されない例として院内細菌又は化膿菌などの病原性細菌を含む、様々な細菌種及び株上の受容体を標的とすることができる。本明細書で述べるように選択された細菌の毒性因子を標的とするのに加え、元々バクテリオファージに対する感受性の高い細菌も、遺伝子操作されたピオシンなどの本開示のhmwバクテリオシンによって阻害される細菌の限定されないグループの例の一つである。これらの細菌には、天然のピオシンに対して感受性の高い、並びに感受性のないグラム陰性細菌が含まれる。さらなる限定されない例としては、グループとしてのグラム陰性細菌、並びにグラム陽性細菌が挙げられる。グラム陽性細菌内のバクテリオシン様の要素に関する報告がある(Thompson & Pattee,1981;Birmingham & Pattee,1981;Zink et al.,1995)。ある態様では、標的細菌の同定又は診断を行う。そのような細菌の限定されない例としては、エシェリシア(Escherichia)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、又はストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌が挙げられる。
【0101】
毒性因子を標的化する限定されない例として、本開示は、ファージ尾部繊維タンパク質RBDの使用を含み、例えば、E.coli O157:H7に感染するがO157抗原を欠損したその変異株には感染しないAV17と称するT‐偶数様、又はRB‐69様ファージからのgp37タンパク質のRBDなどである(Yoichi et al.,2005)。このファージの結合には、病原性生物であるE.coli O157:H7の腸への接着に関与する毒性因子O157抗原の存在が必要であると思われる。従って、本開示のhmwバクテリオシンは、改変されたhmwバクテリオシンがE.coli O157:H7の毒性因子O157抗原を標的とするように、上述のファージAV17のgp37タンパク質からのRBDを有する改変された尾部繊維タンパク質(配列番号33)を含むことができる。AV17尾部繊維の同族シャペロンは、配列番号34の配列を有する。
【0102】
その他の標的細菌としては、ヒトの局所的な(topical)又は限局性の(localized)シュードモナスエルジノーサ感染の原因となる細菌が含まれる。「感染」とは、対象内、又は組織内、又は非細菌の細胞内での細菌の増殖を意味し、ここで、この細菌は、実際に若しくは潜在的に、対象内、又は組織内、又は非細菌の細胞内において疾患又は症状を引き起こし得るものである。感染に対する処置は、物体又は物質の予防的な処置を含むことができる。限定されない例としては、提供された臓器、組織、及び細胞;レスピレーター若しくは透析装置のような医療機器;又は、手術中若しくは手術後などの傷が挙げられる。その他の使用としては、さらなる増殖が問題となり得る標的細菌の除去が挙げられる。追加的な態様では、hmwバクテリオシンを用いて、細菌による感染若しくは汚染を有する植物又は植物の収穫部分の処理、又は、病院若しくは商業的な環境などの標的細菌の環境中での存在の処理が行われる。
【0103】
本開示は、細菌を標的とした本明細書で開示するhmwバクテリオシンの投与又はそれとの接触による、以下のような組織及び対象内のそのような感染の治療法を提供する。感染としては、角膜の一般的な感染(「角膜炎」、及び角膜潰瘍)が挙げられ、少なくともその3分の2はシュードモナスエルジノーサによって引き起こされる。これらの病原体のおよそ30%が、複数の抗生物質に耐性を有すると報告されている(Mah‐Sadorra et al.,2005)。角膜の細菌感染は、比較的稀であると考えられるが、感染をした目の視力の低下、又は失明さえも可能性があることから、医師による緊急の手当てを要する重症である。治療可能であり、抗生物質耐性のシュードモナスエルジノーサによって引き起こされるその他の一般的な感染としては、例えば、「外耳炎」などの耳への感染(Roland & Stroman,2002)、重度の火傷及び傷に続発する感染(Holder,1993)、及び嚢胞性線維症が挙げられる。嚢胞性線維症は、シュードモナスエルジノーサ及びその近縁種であるバークホルデリアセバシア(Burkholderia cepacia)によって引き起こされる慢性で抗生物質耐性の感染によって着実に悪化するもので(Govan & Deretic,1996)、嚢胞性線維症でのこれらの病原体は、遺伝子操作されたhmwバクテリオシンを用いることで処理することができる。ピオシンなどのバクテリオシンは凍結乾燥に対する耐性があることから(Higerd et al.,1969)、本開示は、上部及び/又は下部気道への送達が成功する確率を高めるために、凍結乾燥した投与用バクテリオシン製剤を含む。
【0104】
本明細書で述べる、対象の治療とは、通常、「治療を必要とする対象」の治療である。治療の必要性の判定又は診断は、臨床医などの当業者が、本技術分野で認知される手段を用いて行うことができる。ある態様では、対象とは、生命を脅かす可能性のある細菌感染、又はその生物の健康状態の悪化、若しくは寿命の短縮をもたらす細菌感染を有する動物、又は植物である。
【0105】
追加的な態様では、バイオフィルム内の細菌を死滅させる、又はその増殖を阻害する方法を提供する。そのような方法は、バイオフィルム内の細菌を標的とする本明細書で開示するhmwバクテリオシンをバイオフィルと接触させる工程を含むことができる。
【0106】
本明細書で述べるように、抗菌hmwバクテリオシンを用いることで、特定の細菌の増殖、生存、又は複製が阻害される。その細菌は、病原性の株、若しくは環境に有害な株であってよく、又は、予防的な方法で処理してもよい。病原性微生物は、一般に疾患を引き起こすが、特定の状況下でのみそうである場合もある。
【0107】
細菌は、院内(病院由来の)感染の細菌、環境細菌、及び(膿を形成する)化膿菌であってもよい。本開示の方法及び組成物を用いて、典型的な病院環境に棲息する細菌を含む院内細菌、又はヒトの皮膚上若しくはヒトの胃腸管内に存在する細菌、又は傷に感染して膿を形成する細菌の増殖を阻害することができる。院内感染は、入院中に発症する感染、又は病院内で行われる処置に関連する感染である。このような処置に関連する感染は、患者が病院を出た後に発症する場合が多い。最も一般的な院内細菌感染は、尿路感染、手術部位の感染、肺炎、クロストリジウムディフィシル(C.difficile)関連の下痢、及び偽膜大腸炎、並びに細菌が血液から増殖する場合のある重度の全身感染である。
【0108】
本開示の方法及び組成物を用いて、グラム陰性又はグラム陽性細菌の増殖を阻害することができる。グラム陽性細菌の限定されない例としては、スタフィロコッカス(化膿性)、エンテロコッカス(Enterococcus)(日和見性)、ストレプトコッカス、エンテロコッカス、バシラス、ミクロコッカス(Micrococcus)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、及びクロストリジウムが挙げられる。グラム陰性細菌の限定されない例としては、シュードモナス(化膿性)、大腸菌(日和見性)、サルモネラ(Salmonella)(日和見性)、カンピロバクター(Campylobacter)(日和見性)、プロテウス(Proteus)(化膿性)、クレブシエラ(Klebsiella)(日和見性)、エンテロバクター(Enterobacter)(化膿性)、シトロバクター(Citrobacter)(化膿性)、グラム陰性非発酵桿菌(アシネトバクター(Acinetobacter)など)、及びシゲラ(Shigella)が挙げられる。化膿性球菌は、球状の細菌であり、動物の様々な化膿性(膿を生成する)感染を引き起こす。これには、グラム陽性球菌であるスタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、及びストレプトコッカスニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、並びにグラム陰性球菌であるナイセリアゴノレー(Neisseria gonorrhoeae)、及びナイセリアメニンギティディス(N.meningitidis)が含まれる。
【0109】
追加的な態様では、開示された本開示の方法及び組成物を用いることで、細菌、特に抗生物質耐性の細菌の増殖が阻害される。限定されない例としては、多剤耐性(MDR)となった数多くの細菌性病原体が挙げられる。
【0110】
限定されない代表例としてのピオシンの遺伝子操作
ピオシンは、Francois Jacobによって発見され、初めて高分子量バクテリオシンであると報告された(Jacob,1954)。その他の複数のグラム陰性細菌内で(Coetzee et al.,1968)、並びに、共にグラム陽性生物であるリステリアモノサイトゲネス(Listeria moncytogenes)(Zink et al.1995)、及びスタフィロコッカスアウレウス内で(Thompson and Pattee,1981)、同様のバクテリオシン様の存在が報告されている。ピオシンは、形態的には収縮した(ミオウイルス)バクテリオファージの尾部に類似しているが、単なる欠損ファージではなく;重要な違いが存在する。例えば、ピオシンとファージの尾部との間には、物理的及び化学的な安定性の違いが存在する(Kageyama & Egami,1962;Nakayama et al.,2000)。
【0111】
ピオシンのホストの範囲は比較的狭く、通常は同じ種の株に限定されるが、例外も存在する(Morse et al.,1976; Blackwell et al.,1982)。一方、ミオウイルスバクテリオファージは、広いホストの範囲を示すことができ、そのホストの範囲は、ピオシンのそれと同様に、その尾部繊維の先端の結合特異性によって決定される(Tetart et al.,2001)。
【0112】
数多くのファージ尾部繊維において、ファージのホストの範囲、若しくは「トロピズム」、が異なるミュータント又はバリアントは、遺伝子の遠位部(3’末端)の3分の1が異なっている(Ackermann,2003)。限定されない例として、主要トロピズム決定因子(Mtd)であるボルデテラバクテリオファージBPP‐1の受容体結合タンパク質は、配列が大きく異なる(Liu et al.,2004; Doulatov et al.,2004)。Mtdの違いは、ファージにコードされたレトロエレメント(多様性を生じさせるレトロエレメント、又はDGR)に依存しており、このレトロエレメントは、種々のファージ及び細菌のゲノムでの配列の違いの発生に関係付けられているDGRのファミリーに属する。ボルデテラDGRは、1013を超える種類のMtdの配列バリアントを産生することができ、考えられる1014乃至1016種類の抗体の配列に匹敵する。Mtdバリアントは、DGRがコードする逆転写酵素(bRT)及び安定な鋳型領域(TR)が関与する、特有のアデニン特異的変異原性プロセスによって産生される。Mtdの変異性は、そのC末端可変領域(VR)全体に分散しているアデニンでコードされた12個のアミノ酸に集中している(Doulatov et al.2004)。数多くのボルデテラMtdバリアントの三次元結晶構造が解明され、以下に示すように、構造の先端部が結合特異性を、そしてそれによってファージの主要トロピズム(ホストの範囲)を決定していることが確認された(McMahon et al.,2005)。従って、以下でさらに述べるように、本開示の実施にあたっては、Mtd及びそれに関連するDGRシステムを用いることができる。
【0113】
多くのシュードモナス種は、R型ピオシンにための遺伝子を有する(Takeya et al.,1969;Kageyama,1975)。R型ピオシンの遺伝子座は、約10の構造遺伝子、並びに制御遺伝子及びシャペロン遺伝子を含む約16の相補群から成る(Shinomiya et al.,1983a;Shinomiya et al.,1983b)。形態的にも遺伝子的にも、R型ピオシンはミオウイルスバクテリオファージの尾部に類似しているいが、頭部構造を持たず、従って、核酸を含有しない(Kageyama,1964;Ishii et al.,1965;Shimizu et al.,1982)。P2関連の祖先種のファージ尾部構造から進化したものと考えられるが、単なる欠損ファージではなく、防御的な殺菌剤としての役割のためにさらに適応したものである(Nakayama et al.,2000)。しかし、バクテリオファージと同様に、ピオシンは、標的細菌上の特定の「受容体」分子と結合し、「コア」又は針様構造によってその膜を貫通する(Uratani & Hoshino,1984)。膜をコアが膜を貫通したことによる直接の結果として、その細菌は、細胞質膜の完全性の損傷と膜電位の喪失によって死滅し、それは単一のピオシンの攻撃によって発生可能な殺菌現象である(Iijima,1978;Uratani & Hoshino,1984;Strauch et al.,2001)。
【0114】
典型的なR型ピオシンのRBD、又はRピオシン結合の受容体結合決定因子は、細菌表面分子と結合する。R2ピオシン単離物の場合、RBDは、その尾部繊維のカルボキシ末端部分に存在する。尾部繊維は、prf15遺伝子産物のホモ三量体である(Nakayama et al.,2000)。prf15遺伝子内のRBDの改変、及びその改変されたprf15遺伝子によるR型ピオシンを産生するシステムの組換えにより、改変された結合特異性を有する遺伝子操作されたピオシンを作製することができる。
【0115】
ボルデテラバクテリオファージの主要トロピズム決定因子(Mtd)は、結合ドメインとしてのいくつかの特有の有用な性質を有している。ボルデテラバクテリオファージのMtdの機能的な形態は、ボルデテラの毒性因子タンパク質パータクチンと結合するホモ三量体である。従って、mtd遺伝子は、prf15遺伝子の遠位末端と融合してそのMtdの性質を利用することができる。従って、本明細書で述べるように、本開示の一つの局面は、シュードモナスエルジノーサのR型ピオシン尾部繊維タンパク質(Prf15)とボルデテラファージBPP‐1の主要トロピズム決定因子(Mtd)との間の融合タンパク質の構築を含む。Prf15‐Mtd融合物を用いて、シュードモナスエルジノーサPA01ピオシンのprf15欠失をトランスで相補し、パータクチンを発現するボルデテラブロンキセプチカ、又はパータクチンを発現する大腸菌と結合させてこれを死滅させることができる。
【0116】
さらに、遺伝子型と尾部繊維の結合表現型とが組み合わされるように、P2又はP4バクテリオファージを、prf15‐mtd尾部繊維融合遺伝子を内部に有するサロゲートとして用いることができる。これによって、所望のRBDをコードする尾部繊維遺伝子の効率的な形質導入、選別、及び単離が可能となる。
【0117】
投与方法
本開示の遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、適切ないかなる手段によっても投与することができる。限定されない例としては、対象への、局所、又は局在化した投与、並びに肺への投与(吸入)、カテーテル若しくは点滴チューブによる胃腸管への投与、又は全身投与が挙げられる。全身投与の代表的で限定されない例としては、腹腔内投与及び静脈内投与が挙げられる。腹腔内投与及び静脈内投与されたピオシンの防御効果は、投与したピオシンに対してインビトロで感受性を示すシュードモナスエルジノーサ株の致死量を全身感染させたマウスで実証された(Merrikin & Terry,1972; Haas et al.,1974)。ある態様では、本明細書で開示するhmwバクテリオシンと標的細菌集団とを接触させると、そのバクテリオシンが存在しないものと比較して、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、若しくは少なくとも10000倍、又はそれを超える倍率での個体数の減少が見られる。他の態様では、その接触により、そのバクテリオシンが存在しないものと比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、若しくは少なくとも50倍、又はそれを超える倍率での検出性の減少という結果を得ることができる。
【0118】
本開示の遺伝子操作されたhmwバクテリオシンは、hmwバクテリオシンに感受性を有する細菌による感染若しくは汚染を被っている、そう診断された、又はその疑いのあるいかなる対象にも投与することができる。そのような対象の限定されない例としては、動物の種(哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、魚類)、並びに昆虫、植物、及び真菌が挙げられる。哺乳類種の限定されない代表例としては、ヒト;非ヒト霊長類;ウシ、ブタ、ヤギ、及びヒツジなどの農業関連の種;マウス、及びラットなどのげっ歯類;イヌ、ネコ、モルモット、ラビット、及びウマなどのペット、ディスプレイ、又はショーのための哺乳類;並びにイヌ及びウマなどの作業用の哺乳類が挙げられる。鳥類の限定されない代表例としては、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、並びにオウム及びインコなどのペット又はショーのためのトリが挙げられる。本開示の遺伝子操作されたバクテリオシンで治療される動物の対象は、四足動物、二足動物、水生動物、脊椎動物、又は昆虫を含む無脊椎動物であってもよい。
【0119】
ある態様では、治療される対象は、ヒトの子供、又は成熟期に達していないその他の若い動物である。従って、本開示は、本開示のhmwバクテリオシンに感受性を有する細菌又はその他の微生物による感染を含む小児医学的状態の治療を含む。
【0120】
本開示は、ヒト対象又は非ヒト対象の微生物叢中に存在する細菌の望ましくない繁殖の結果であるものなどの日和見感染の治療又は予防を提供する。日和見感染は、対象の免疫抑制状態の結果、又は泌尿生殖器(GU)若しくは胃腸(GI)管の共生細菌叢を変化させる抗生物質治療の結果である場合がある。従って、本開示は、免疫抑制状態の対象、及び他の医薬品と接触した対象の治療、又は予防を提供する。抗細菌活性を有するhmwバクテリオシンは、限定されない例として抗生物質、若しくは抗真菌剤などのその他の抗細菌剤、又は抗微生物剤と組み合わせて用いることができる。「抗微生物剤」とは、単細胞生物の増殖を阻害する、若しくはこれを死滅させるために用いることができる薬剤、又は化合物である。抗微生物剤は、抗生物質、化学療法剤、抗体(補体あり、若しくはなしで)、及びDNA、RNA、タンパク質、脂質、若しくは細胞膜の合成又は機能の化学阻害剤が挙げられる。
【0121】
ある態様では、hmwバクテリオシンは、「薬理学的に許容される」賦形剤又は担体と共に製剤される。そのような成分は、過度な有害な副作用なしにヒト、動物、及び/又は植物に用いるのに適するものである。有害な副作用の限定されない例としては、毒性、刺激、及び/又はアレルギー性反応が挙げられる。賦形剤又は担体は、通常、妥当なリスク対効果比に見合ったものである。多くの態様では、担体又は賦形剤は、局所投与又は全身投与に適している。限定されない医薬担体としては、無菌の水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンが挙げられる。例としては、これらに限定されないが、リン酸緩衝食塩水、水、油/水型などのエマルジョン、及び様々な種類の湿潤剤など、標準的な医薬賦形剤が挙げられる。非水性溶液の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液が挙げられ、食塩水及び緩衝媒体が含まれる。非経口用媒体としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、又は固定油が挙げられる。静脈内用媒体としては、体液及び栄養素の補充液、及び電解質補充液(リンゲルデキストロースを主体としたものなど)などが挙げられる。
【0122】
本明細書で開示するさらなる製剤及び医薬組成物は、細菌ホストに特異的な単離されたhmwバクテリオシン;同じ細菌ホストを標的とする2、3、5、10、若しくは20種類、又はそれを超す種類のバクテリオシンの混合物;及び、異なる細菌ホスト、又は同じ細菌ホストの異なる株を標的とする2、3、5、10、若しくは20種類、又はそれを超す種類のバクテリオシンの混合物を含む。
【0123】
任意に、本開示のhmwバクテリオシンを含む組成物は、本技術分野で公知の手段を用いて凍結乾燥してもよい。本技術分野で公知のように、その後、再構築して使用することができる。
【0124】
さらに、マイクロカプセル化されたhmwバクテリオシンを含む製剤も提供される。ある態様では、これにより、徐放動態特性を提供することができるか、又は経口投与により胃を通過してより小さい若しくは長い腸への到達が可能となる。一般的に、医薬組成物は、様々な形態で作製することができ、例えば、顆粒剤、錠剤、ピル剤、坐薬、カプセル剤(例:経口送達に適合)、マイクロビーズ、マイクロスフェア、リポソーム、懸濁液、軟膏、ペースト、及びローションなどである。経口及び局所での使用に適する医薬品グレードの有機若しくは無機担体、及び/又は希釈剤を用いて、治療上有効な化合物を含む組成物を作ることができる。安定剤、湿潤剤及び乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、又は適切なpHを確保するためのバッファーを含むことができる。
【0125】
hmwバクテリオシンが使用されるのは、通常、「安全で効果的な」量又は濃度であり、それは、上述のような過度で有害な副作用を起こすことなく、所望の治療応答をもたらすのに十分な量を意味する。hmwバクテリオシンは、また、「治療効果のある」量又は濃度で使用することもでき、それは、所望の治療反応を得る効果のある量であり、例えば、これらに限定されないが、細菌細胞の分裂速度を遅延させる、又は細菌細胞の分裂を停止させる、又は細菌を死滅させる若しくは細菌の個体数の増加速度を低下させる効果のある量である。安全で効果的な量、又は治療効果量は、様々な要因で変わるが、熟練した医師であれば、過度な実験をすることなく容易に決定することができる。要因の限定されない例としては、治療を行う特定の状態、対象の身体状態、治療を受ける対象の種類、治療の期間、併用する治療(もしあれば)の性質、及び使用する具体的な製剤が挙げられる。
【0126】
さらに、そして、hmwバクテリオシンに対する細菌の耐性が発生する可能性の予見のもと、バクテリオシンが標的細菌の毒性因子又は適応性因子を標的とする場合、細菌の毒性又は適応性の損傷が伴う場合がある。細菌がhmwバクテリオシン耐性となる主たる、しかし限定されないメカニズムは、バクテリオシンに対する受容体の欠損であることから、本明細書で開示するように毒性因子又は適応性因子を標的とすることは、従来の抗生物質及びバクテリオファージと比べて多くの利点を提供する。従来の抗生物質及びバクテリオファージに対する耐性は、受容体又は抗菌剤の標的分子の欠損以外の、多くの種々のメカニズムが原因であり得る。限定されない例として、本開示のhmwバクテリオシンは、バクテリオシンを細胞環境から除去する細菌の排出ポンプに影響されることがなく、細菌の核酸不活性化メカニズムにも影響されないであろう。
【0127】
発明に関する主題事項を一般的に説明したが、以下に示す実施例を参照することで、同じ内容がより容易に理解され、その例は、特に断りのない限り、説明のために提供するのであって、本開示を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0128】
以下の例は説明のために提供するものであり、請求する主題事項を制限するものではない。
【0129】
実施例1:融合タンパク質を含む改変されたhmwバクテリオシン
a)相補システム
本明細書で述べる改変されたhmwバクテリオシンの作製を促進するために、尾部繊維をトランスに相補するためのシステムの構築を確立した。代表モデルとしてR2ピオシンを用い、シュードモナスエルジノーサPAO1ゲノム中のR2prf15コード配列を欠失させることで、改変されたprf15遺伝子産物などの相補尾部繊維タンパク質がトランスに発現されるプラットフォームを作製した。
【0130】
一般に、Hoang et al.の方法を用いて欠失を発生させ、シュードモナスエルジノーサ株PAO1Δprf15を作製した。R2シャペロンに対する、配列番号4のprf16コード領域は、R2prf15遺伝子の末端と8ヌクレオチド分オーバーラップしており、リボソーム結合部位は、配列番号3のprf15コード領域内に位置している。Prf16タンパク質は、必ずしもピオシン構造中には組み込まれるわけではないものの、最大の活性を得るためには、三量体尾部繊維の構築に必要であると報告されている(図8、及びNaykayama et al.,2000)。従って、「尾部のない」欠損ピオシンをコードする改変されたピオシンコンストラクトの誘発によりシャペロンが産生されるように、prf16の転写開始点及びそのリボソーム結合部位は共に無変性のまま維持される。
【0131】
簡単に述べると、PRF15のコドン11‐301のインフレームでの欠失を、PAO1中で以下のようにして作製した。所望の欠失の上流にある1.1kbのKpnI‐AgeI断片を、プライマーとしてAV085(5’‐GCTTCAATGTGCAGCGTTTGC)(配列番号46)及びAV088(5’‐GCCACACCGGTAGCGGAAAGGCCACCGTATTTCGGAGTAT)(配列番号47)を用いて、PA01ゲノムDNAからPCRで増幅し、2.2kbのAgeI‐EcoRI断片を、プライマーとしてAV087(5’‐ATACTCCGAAATACGGTGGCCTTTCCGCTACCGGTGTGGC)(配列番号48)及びAV086(5’‐TCCTTGAATTCCGCTTGCTGCCGAAGTTCTT)(配列番号49)を用いて増幅した。得られた制限断片を、pEX18GmのKpnI及びEcoRI部位へクローンニングし(Hoang et al.)、pEXGm‐Δprf15を作製した。出来上がったコンストラクトを、エレクトロポレーションによってPAO1株へ形質導入した(Chuanchuen et al.)。組み込み体を100μg/mlのゲンタマイシンで選別し、次に、分離固体は5μg/mlのショ糖を含みNaClとゲンタマイシンは含まない媒体中で選別した。欠失の候補は、PCR分析、ピオシン誘発、及びPCR増幅断片の配列決定によって確認した。
【0132】
PAO1Δprf15株は、その親株であるPAO1と同様に増殖し、ピオシンをコードする遺伝子はSOS応答を通して誘発可能に維持されており、これが細胞の溶解をもたらす。ピオシン遺伝子産物の産生はある程度はあったと思われるが、PAO1Δprf15から安定な「尾部のない」ピオシン粒子は産生されなかったと思われる。
【0133】
R2ピオシンPrf15は、まず、コード配列を、ホスト範囲の広いシュードモナス/大腸菌シャトルベクターpUCP30Tへクローン化することで、トランスに発現させた。図9を参照。最初のコンストラクトの中には、恒常的に、又はtacプロモーターからのlacIの支配下で転写が行われるものがあった。しかし、他のコンストラクトでは、転写は、発現がSOS応答を通して制御されるように、内在性prf15プロモーターで制御されるように改変された。これにより、改変されたprf15遺伝子の発現を、PAO1Δprf15ゲノム内に存在するその他のピオシン遺伝子の発現と同調して誘発することが可能となった。
【0134】
簡単に述べると、広いホスト範囲のベクターpUCP30T(Schweizer,H.P et al.)を、特有のBspHI部位を充填することで改変し、pUCP30TΔBspを形成した。tacプロモーターを、Mtd発現ベクター(Jeffery F. Miller氏,UCLAより寄贈)から、プライマーAV110(5’‐TTTATTAGCGGAAGAGCCGACTGCACGGTGCACCAATG)(配列番号50)及びAV114(5’‐CCCTCGAATTCATGAATACTGTTTCCTGTGTGAAATTG)(配列番号51)を用いてPCRで増幅し、pUCP30TΔBspへクローン化してpUCP‐tacを作製した。
【0135】
R2PRF15コード領域は、サブクローンから、プライマーAV118(5’‐CTTCCTTTCATGACGACCAATACTCCGAA)(配列番号52)及びAV116(5’‐ACCACGAATTCTTCATCGTCCAAATGCCTC)(配列番号53)を用いて増幅し、一方、R2prf15及びprf16は、プライマーAV118及びAV086(5’‐TCCTTGAATTCCGCTTGCTGCCGAAGTTCTT)(配列番号49)を用いて増幅した。prf15及びprf15/16の増幅した断片は、BspHI及びEcoRIで消化されたpUCPtacへクローン化し、pUCP‐tac‐prf15及びPUCP‐tac‐prf15/16を得た。
【0136】
内在性prf15プロモーターを用いた発現については、prf15及びprf16を、サブクローンからのprf15の上流の1088bpの配列と共に、プライマーAV107(5’‐CACCATCTAGACAATACGAGAGCGACAAGTC)(配列番号54)及びAV091(5’‐TCCTCAAGCTTACGTTGGTTACCGTAACGCCGTG)(配列番号55)を用いて増幅し、XbaI及びHindIIIで消化されたpUCP30Tへクローン化して、pUCP‐R2p‐prf15/16を作製した。
【0137】
浮遊増殖する対数期にあり(in log phase suspension growth)発現プラスミドを含む細菌を、3μg/mlのマイトマイシンCで処理し、ピオシンの産生を誘発した。誘発により、安定なピオシンが、野生型PAO1と同様の収量で産生された。このピオシンは、PAO1に産生されたR2ピオシンと同じ殺菌対象の範囲と活性レベルを有していた。安定なピオシン複合体の産生には、尾部繊維タンパク質の発現が、他のピオシンをコードする遺伝子の発現に加えて必要であり、その尾部繊維遺伝子のトランスでの発現で十分であると思われる。
【0138】
prf15がtacプロモーターから恒常的に発現された場合、細胞の増殖速度は、lacI又は内在性プロモーターで制御された場合に比べて著しく低下した。細胞内でのPRF15単独の産生は有害であると思われるが、両プロモーターから作られたピオシンの収量は同等である。
【0139】
プラスミドコンストラクトを作製して、そこからR2prf16をR2prf15と共に共発現させ、トランスに発現されたPRF15の折り畳みためのprf16の適切な一時的な発現を確保した。
【0140】
b)組換えhmwバクテリオシン
本明細書で述べるように、その標的範囲に基づいて、R1からR5と称する5種類の異なるR型ピオシンが確認されている。尾部繊維タンパク質をコードする遺伝子配列はR1(配列番号1)及びR2(配列番号3)に対するものしか分かっていないため、R3(配列番号5)、R4(配列番号7)、及びR5(配列番号9)のピオシンの尾部繊維遺伝子は、その産生株中に存在するこれらの同族シャペロンをコードする配列、それぞれ配列番号6、配列番号8、及び配列番号10、と共に、PCRを用いて単離し、配列決定した。ピオシンR1及びR2のシャペロン遺伝子も、クローン化し、それぞれ配列番号2及び4のように配列決定した。尾部繊維によって範囲が決定されるという仮説を確認するために、R1、R3、R4、及びR5のピオシンの尾部繊維タンパク質をコードする配列を取り出し、それらがR2ピオシン構造中へ組み入れられるように、PAO1Δprf15中でトランスに発現させた。得られた組換え株の各々は、ピオシンを産生するように誘発し、図2及び8に示すように、各々の範囲をスポットアッセイで測定した。
【0141】
c)尾部繊維タンパク質としての融合タンパク質
R2尾部繊維prf15遺伝子配列とクテリオファージP2のH遺伝子配列との融合物を作製し、発現させ、これを用いて本開示のさらなる改変されたhmwバクテリオシンを産生させた。多くの大腸菌株に感染するバクテリオファージP2は、尾部繊維をコードするH遺伝子(配列番号25)を有し、これは、R2prf15(配列番号3)、特にそのN末端コード部分との高い配列類似性を持つ。改変された尾部繊維タンパク質(配列番号27)をコードするために、標的特異性を与える推定領域(RBD)であるP2尾部繊維タンパク質のC末端の551のアミノ酸残基をコードするH遺伝子の一部分を、R2PRF15のN末端の基板結合領域(BPAR)部分である164のアミノ酸をコードするprf15の一部分と融合させた。
【0142】
バクテリオファージP2は、G遺伝子(配列番号26)によってコードされる推定尾部繊維シャペロンもコードし、これは、R2ピオシンprf16(配列番号4)によってコードされるシャペロン、及び多くの他のミオウイルスファージのシャペロンと類似している。G遺伝子にコードされるシャペロンが、融合におけるP2尾部タンパク質のC末端部分の折り畳みにとって重要であると考えられることから、P2G遺伝子を共発現するコンストラクトを作製した。
【0143】
1から164位のアミノ酸をコードするR‐2prf15の一部分を、プライマーAV118及びAV127(5’‐TTCTTTAAGCTTTTCCTTCACCCAGTCCTG)(配列番号56)を用いてサブクローンから増幅し、BspHI及びHindIIIで消化した。158位から669位のアミノ酸をコードするP2のH遺伝子の一部分は、プライマーAV124(5’‐CCTCCTGAATTCTTATTGCGGCATTTCCG)(配列番号57)及びAV126(5’‐TCCTTCGAATTCTTACACCTGCGCAACGT)(配列番号58)を用いてP2ファージストック(Richard Calendar)から増幅した。P2H遺伝子158‐669にG遺伝子をプラスしたものは、プライマーAV124及びAV125(5’‐CCTCCTGAATTCTTATTGCGGCATTTCCG)(配列番号59)を用いて増幅した。P2からの各PCR産物は、HindIII及びEcoRIで消化した。pUCP‐tac‐R2‐P2Hは、1から164位のアミノ酸断片をコードするprf15断片を、158から669位のアミノ酸断片をコードするP2H遺伝子断片と共に、BspHI及びEcoRIで消化されたpUCP‐tacへクローン化することで作製した。pUCP‐tac‐R2‐P2HGは、1から164位のアミノ酸断片をコードするprf15断片を、158から669位のアミノ酸断片をコードするP2H遺伝子にG遺伝子をプラスしたものと共に、BspHI及びEcoRIで消化されたpUCP‐tacへクローン化することで作製した。
【0144】
簡単に述べると、PA01Δprf15は、prf15‐P2H遺伝子融合コンストラクトで形質転換され、マイトマイシンCによってピオシン産生を誘発した。ピオシン粒子を精製し、スポット試験及び細菌生存率アッセイによって活性の試験を行った(図2参照)。R2‐P2融合尾部繊維を有する精製されたピオシン粒子は、E.coli C1aに対する殺菌活性を有したが、シュードモナスエルジノーサ株13sを死滅させることはできなかった。さらに、活性ピオシンを産生するには、P2G遺伝子の発現が必要であった。このことは、図8に示すように、尾部繊維のC末端部分の適切な折り畳みにシャペロンが必要であるという仮説を裏付けるものである。
【0145】
種々のR2‐P2尾部繊維タンパク質融合体の、E.coli C1aを死滅させる機能性ピオシンを形成する能力を、一連の種々のR2‐P2融合体によって調べた。このような融合体の代表例を、そのE.coli C1aに対する殺菌活性の有無と共に図4乃至図7に示す。
【0146】
d)追加的な融合体
エルシニアぺスチスを標的とする追加的な改変されたhmwバクテリオシンを作製した。L‐413cは、ほとんどのエルシニアぺスチス株に感染するエルシニオファージ(yersiniophage)である(Richard Calendar,personal communication)。ほとんどのL‐413cゲノムはP2との高い類似性を有するが、重要な例外として配列番号28の尾部繊維H遺伝子があり、これは大きく異なっている。理論に束縛されるものではなく、本開示の理解を深めるために提供するものであるが、尾部繊維H遺伝子の違い、従ってそれがコードするタンパク質の違いは、異なるホストの範囲に最も寄与していると考えられる特徴である。
【0147】
しかし、L‐413cH遺伝子(配列番号28)のN末端は、P2の対応する部分(配列番号25)との配列類似性を相当に共有しており、これは、その基板結合の機能によるものと考えられる。R2PRF15のN末端の1から164位のアミノ酸をL‐413c尾部繊維のC末端部(158位から913位)に融合した融合尾部繊維を作製して図10(配列番号30)の改変された尾部繊維とするための融合体を構築した。この融合体を、L‐413c尾部繊維同族シャペロン、G遺伝子(配列番号29)、と共にPAO1Δprf15中で発現させた。誘発の後、産生されたピオシン粒子は、エルシニアぺスチスKIM、並びにE.coli Cを死滅させ、従って、エルシニオファージL‐413cのホスト範囲と同様の死滅範囲を有する。この改変されたピオシンは、いずれのシュードモナス株も死滅させなかった。
【0148】
シュードモナスエルジノーサR型ピオシン尾部繊維BPAR(prf15によってコードされる)と尾部繊維遺伝子orf34及び/又はVHMLの尾部繊維遺伝子orf35からのRBD(それぞれ、配列番号21及び22)との間で作製した新規な融合尾部繊維を用いて、さらなる改変されたhmwピオシン粒子を作製した。このピオシン粒子を作製するために、VHML同族シャペロン遺伝子(配列番号23)を、改変された尾部繊維融合遺伝子と共発現させた。改変された尾部繊維を有するピオシンが形成され、これを分析した。得られた、VHML由来RBDを有する改変されたhmwバクテリオシンは、天然のVHMLのDGRによる多様化に供することができる。
【0149】
ボルデテラバクテリオファージBPP‐1の主要トロピズム決定因子(Mtd)は、C型レクチン(CTL)ドメインを有し、これは、多くの異なる生物学的状況における、多くの様々な種類の分子に対する結合決定因子として作用する(Drickamer,1999;McMahon et al.,2005)。BPP‐1では、Mtdは、ファージの尾部末端に位置するホモ三量体球状ドメインとして組み込まれており、そこで、ボルデテラブロンキセプチカ及びボルデテラパータシス(Bordetella pertussis)の外部表面上で発現する毒性因子、表面タンパク質パーテクチンと結合することができる(Liu et al.,2004)。これに関して、Mtdは、ファージが媒介するホーミング変異原性(homing mutagenesis)の標的でもあり、それによって、バクテリオファージが、その変化し続けるホストに感染するための新規な結合決定因子を獲得する結果となり得る。
【0150】
Mtdドメイン及びそのいくつかの多様化バリアントに関する最近の構造研究により、三量体構造の繊維の先端が、10兆個を超えるバリアント結合リガンドを有することができる固定された足場をいかにして形成するかが示された(McMahon et al.2005)。Mtdドメインをピオシン尾部繊維タンパク質上へ融合し、その後、Millerらによって報告されたDGRシステムを用いてMtdドメインを多様化することにより(Liu et al.,2004;Doulatov et al.,2004)、バリアントの非常に大きなライブラリーが作製され、そこから、結合特異性の異なるピオシン尾部をコードする遺伝子が選別され、入手される。
【0151】
実施例2:融合タンパク質のアッセイ
a)ピオシンの精製とアッセイ
PAO1及び誘導体を、プラスミドを維持するために必要な場合は50μg/mlのゲンタマイシンを添加したG培地中、200rpmで振とうしながら37℃で増殖させた。培養物のOD600が0.250に達したところで、最終濃度3μg/mlとなるようにマイトマイシンCを添加した。培養物を、溶解が発生するまでさらに2.5時間インキュベートした。5μlのDNase1を添加し、培養物をさらに30分間インキュベートした。Beckman JLA‐16.250ローターにより、12000rpmで1時間遠心分離することで細片を除去した。上清を氷上で攪拌しながら、そこへ、最終添加体積が溶菌液の上清100mlに対して65mlとなるまで飽和硫酸アンモニウムを1ml/minの割合でゆっくり添加した。これを4℃で一晩貯蔵した。12000rpmで1時間遠心分離することで硫酸アンモニウムの析出物を回収し、ペレットを10mlのTN50バッファー(10mMのtris、50mMのNaCl、pH7.5)中へ再懸濁した。再懸濁溶液中のピオシン粒子は、次に、Beckman JA‐25.50ローターにより、20000rpm(65000×g)の高速で1時間かけて沈殿させ、3乃至5mlのTN50バッファー中へ再懸濁した。ピオシン調製物は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動分析により、>90%の純度であると判断した。
【0152】
ピオシンの定量アッセイは、Kagayama et al.,1964に記載の方法を若干修正した方法により、生存細菌をカウントすることで行なった。ピオシンサンプルを、標的細菌(およそ1×109CFU/ml)と共に37℃で40分間インキュベートした。次に、サンプルを希釈し、プレーティングして生存細菌をカウントした。ピオシン粒子の数と生存細菌の画分とは、ポアソン分布、m=−lnS、の関係にあり、ここで、mは1細胞あたりの致死事象(lethal event)の平均回数であり、Sは生存細菌の画分である。1mlあたりの活性ピオシン粒子の合計数は、m×細胞数/ml、となる。このアッセイで使用したのはシュードモナスエルジノーサの13s株であり、これは、多くの抗生物質に耐性を有するが、5種類のR型ピオシンすべてに感受性を有する臨床分離株である。標的である大腸菌は、Richard Calendar氏よりご提供いただいたC1aであった。
【0153】
半定量アッセイも、スポット法で行い、ピオシンサンプルをTN50バッファーで段階希釈して、標的細菌の菌叢上にスポッティングした。37℃で一晩インキュベートした後、ピオシン活性は、菌叢上の菌の死滅によるクリア領域によって観察することができた。このアッセイフォーマットによる代表的な結果を図2に示す。
【0154】
実施例3:遺伝子操作された尾部繊維のスクリーニングのための組換えバクテリオファージ
遺伝子型と尾部繊維の結合表現型とが組み合わされるように、P4バクテリオファージを、Prf15に基づく尾部繊維融合遺伝子を内部に有するサロゲートとして用いる。これによって、所望の尾部繊維遺伝子の効率的な選別、及び形質導入が可能となる。
【0155】
バクテリオファージP2は、他の腸内の種に感染することができる溶原性大腸菌ファージであり、シュードモナスエルジノーサ中で複製することができるが、これに感染することはできない(Bertani & Six,1988;Kahn et al.,1991)。R型ピオシンは、遺伝子的にも構造的にもP2と近い関係にあり、H遺伝子にコードされるP2尾部繊維タンパク質は、基板との結合を生ずるprf15のN末端部分と相同性を示す(Haggard‐Ljungquist et al.,1992;Nakayama et al.,2000)。P2又はP4バクテリオファージを、プラスミドにコードされた尾部繊維がP2ファージにコードされた繊維の代わりに組み込まれたサロゲートファージとして用いることにより、ピオシンでの意図する機能的な関連性と極めて類似する関連性において融合繊維の提示及び選別が可能となる。
【0156】
尾部繊維遺伝子型は、遺伝子選別のために、形質導入ファージ粒子内で結合表現型と物理的に組み合わせることができ、これはファージディスプレイ技術と類似している。アンバー変異をその繊維タンパク質(H)遺伝子に有するP2ファージは、通常はバクテリオファージゲノムDNAのパッケージングに対するシグナルとして作用するcosパッケージング部位(cos packaging site)を有するプラスミドを内部に有する大腸菌に感染する場合(Ziermann & Calendar,1991;Kahn et al.,1991)、新たに合成されたP2ファージの頭部にcosを含むプラスミドをパッケージすることになる。そのプラスミドは、prf15に基づく尾部融合遺伝子をコード、及び発現し、ゲンタマイシン耐性を付与する。P2感染大腸菌内でこのプラスミドから発現された融合尾部繊維は、欠損(アンバーが切断された)H遺伝子産物(P2尾部繊維タンパク質)の代わりにP2バクテリオファージ中へ組み込まれる。この細菌の溶解により、放出されたP2に基づく形質導入粒子は、P2ゲノムではなくprf15に基づく尾部融合遺伝子を含むcos含有プラスミドを持ち、P2尾部繊維ではなくPrf15融合尾部繊維を有する。
【0157】
細胞と結合し、バクテリオファージの侵入メカニズムを誘発する能力のある形質導入ファージ粒子は、そこで、標的化に成功した細菌にゲンタマイシン耐性を付与し、そこからゲンタマイシン選別(gentamicin selection)の下での細菌の複製の後、選別された繊維融合遺伝子がプラスミドから単離される。改変尾部繊維RBDの機能の再設計及び最適化を行うために、プラスミド上の尾部繊維遺伝子を容易にさらに操作して、多くの融合接合部を作り出し、RBDの多様化を行う。
【0158】
この方法により、従来のファージディスプレイシステムを用いた場合の三量体タンパク質のC末端ディスプレイによってもたらされる多くの困難も解決される(Held & Sidhu,2004)。バクテリオファージP2は、遺伝子的にも形態的にもピオシンに類似する尾部繊維を有する(Nakayama et al.,2000)。尾部繊維は、P2及びピオシンの基板へN末端を通して結合し、P2及びR2ピオシンの尾部繊維のN末端は、著しい配列類似性を有する(Nakayama et al.,2000;Haggard‐Ljungquist et al.,1992)。さらに、P2関連ファージであるPS17の尾部繊維遺伝子は、R2ピオシン尾部繊維遺伝子であるprf15を相補することができる(Shinomiya,1984;Shinomiya & Ina,1989)。
【0159】
別の選択肢として、RBDをH遺伝子尾部繊維のN末端ドメインへ直接融合させるか、又は、ビブリオハーベイ(Vibrio harveyii)のVHMLファージ(BPP‐1のように、これも機能性DGRを含む)の尾部繊維遺伝子をP2のH遺伝子のN末端ドメインへ融合させる。
【0160】
実施例4:所望の尾部繊維遺伝子を回収する方法
遺伝子操作された尾部繊維遺伝子を持つP2、P4、又はΦCTXバクテリオファージは、ピオシン尾部繊維の遺伝子型を結合表現型と組み合わせるサロゲートとして作用する。サロゲートバクテリオファージの内部に保持される尾部繊維遺伝子の多様化された、又は変異誘発されたライブラリーから特定の結合表現型を選別又はスクリーニングすることにより、所望の結合特異性をコードする尾部繊維遺伝子を単離することができる。選別は、まず不要のバインダーを除去し、その後、残ったサロゲートの中から意図する標的分子と結合するものを単離するか、又はその逆を行うことによってサロゲートバクテリオファージ若しくは形質導入粒子を固相標的分子上へ吸着させるという濃縮サイクルを、1回若しくは複数回行うことによって実施することができる。別の選択肢として、選別は、いずれかの結合工程を単独で適用することによって行うこともできる。最終的には、所望の結合表現型を示すサロゲートを、制限酵素断片のクローン化、又は尾部繊維遺伝子の多様化部の末梢部分の特定のDNA配列と結合するオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR反応により、DNA抽出、及び保持されている尾部繊維遺伝子の単離に付すことができる。
【0161】
望ましいサロゲートバクテリオファージは、例えばサロゲートバクテリオファージがホストに感染する際に用いる毒性因子又は適応性因子などの目的とする標的分子を発現する細菌の菌叢上で精製されたプラークであってよい。この因子を発現する細菌は、例えば、シュードモナスエルジノーサなどの目的の病原体であってよく、又は、例えば、標的毒性因子若しくは適応性因子を発現するよう遺伝子操作された大腸菌などの非病原体であってもよい。レプリカ平板法又は段階的平板法(serial plating)を用いて、サロゲートバクテリオファージが、標的因子を発現しない近縁の細菌株上にプラークを形成しないことを確実にすることができる。例えば、特定の毒性因子の発現が欠損したシュードモナスエルジノーサの挿入ミュータントを用いて、その毒性因子若しくは適応性因子を発現する対応する(アイソジェニックな)細菌上でのプラーク形成又はパンニングの前若しくは後に、サロゲートバクテリオファージのスクリーニング、又は吸着による除去を行うことができる。
【0162】
サロゲートファージ又は形質導入粒子が標的を発現する細菌上でプラークを形成しない場合であっても、感染又は形質導入された細菌は、内部に保持するプラスミド若しくはファスミドと共に抗生物質耐性を獲得し、従って、選択的な増殖及びそれに続く抽出を行うことで、多コピープラスミド及びその所望の尾部繊維遺伝子を単離することができる。
【0163】
このような技術により、所望の特定の結合表現型を示すサロゲートバクテリオファージ又は形質導入粒子の同定及び単離が可能となり、そこから所望の特定の非天然のhmwバクテリオシン尾部繊維遺伝子が抽出される。さらに、サロゲートを哺乳類の分子、細胞、若しくは組織と結合させることにより、治療用hmwバクテリオシンに組み込まれた場合に有害な事象を起こす恐れのある尾部繊維をコードするいかなる遺伝子もライブラリーから除去することができる。
【0164】
挿入ミュータントであるシュードモナスエルジノーサ細菌株のライブラリーが利用可能であり、このミュータントは、病原性の強い親PA14シュードモナスエルジノーサとは、各々の重複しないアイソジェニックミュータントから一つ欠損する形で一連の特定の毒性因子の発現が欠損していることだけが異なっている(ausubellab.mgh.harvard.edu/cgi‐bin/pa14/home.cgiのホームページを参照のこと)。これらのアイソジェニックミュータント株は、他の一般的な表面分子ではなく、標的毒性因子に対するサロゲートバクテリオファージの特異性を確保するためのツールを提供する。例えば、サロゲートP4バクテリオファージの集団を、特定の標的毒性因子を欠損したシュードモナスエルジノーサのミュータントの高密度培養物と共にインキュベートすることで、アイソジェニックミュータント及び毒性の親株の両方に存在する表面分子と結合するサロゲートバクテリオファージ又は形質導入粒子を吸着させて集団から除去することができる。除去処理された集団は、所望の毒性因子と結合するサロゲートの濃縮が行われる。特定の毒性因子又は適応性因子を発現する細菌と結合してこれに感染するサロゲートバクテリオファージを単離した後は、各々を、標的因子を欠損しているアイソジェニックミュータント株に感染することができないものについて直接スクリーングすることができる。選別されたプラスミドは、サロゲート形質導入粒子に再パッケージし、吸着‐除去及び感染のプロセスを通してさらなる濃縮、及び最終的には毒性因子又は適応性因子を標的とするための所望の尾部繊維をコードするpUCに基づくプラスミドの精製を行うことで、何度でも再利用可能である。
【0165】
実施例5:遺伝子操作されたhmwバクテリオシンの作製方法
改変尾部繊維遺伝子は、プラスミドが媒介する対立遺伝子交換反応を用いて、(i)内在するprtR、prtN、prf15、及びホリン(prf9又はPA0614)遺伝子が欠失若しくは無能力化されたRピオシン遺伝子クラスター(エンドリシン遺伝子を含む)も、例えば細菌人工染色体(BAC)上で、内部に保持する産生細菌中での発現のために、制御されたプロモーターの下、プラスミド中へ組換えられるか、又は(ii)BACベクターそのものを含むピオシンクラスター中へ組換えられる。
【0166】
lac又はtacなどの遺伝子操作された制御可能なプロモーターを通してのprtNの直接の誘発など、ピオシン遺伝子及び遺伝子操作された尾部繊維遺伝子の誘発により、ホスト細胞は、栄養素が枯渇して増殖が止まるまでピオシンを合成する(Young,Ry,2006)。産生細菌は、ホリン遺伝子の不活化によって細胞の溶解に必要である細胞質エンドリシンの細菌細胞壁への到達が妨げられるため、クロロホルムの非存在下では溶解しない。使い終わった細胞は、遠心分離又はろ過で回収し、その後、細胞質を満たした溶解性ピオシンの回収を所望するまで、凍結する。解凍によって内部細胞膜が破裂し、エンドリシンが放出されて細菌が溶解し、それによって、産物である改変ピオシンが放出される。必要であれば、少量のクロロホルムを細菌ペーストが解凍される水性溶媒に添加することによって、細菌膜の破壊を加速若しくは完了させることができる。
【0167】
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【0168】
本明細書で引用した参考文献は、過去に特に組み入れられたものであっても、そうでないものであっても、すべてその全体が参照することで本明細書に組み入れられる。本明細書で用いる「1の(a)」、「1の(an)」、及び「いずれの(any)」という用語は、各々、単数形及び複数形の両方を含むことを意図している。
【0169】
ここまで、開示する主題事項をすべて説明したが、当業者であれば、本開示の意図及び範囲から逸脱することなく、また過剰な実験をすることなく、広い範囲の同等のパラメーター、濃度、及び条件で同じことを実施可能であることは正しく認識されるであろう。本開示をその具体的な態様と関連させて説明してきたが、さらなる変更が可能であることは理解されるであろう。本願は、全体として本開示の原理に従い、本主題事項に関連する本技術分野の範囲内の公知の又は従来の実践の範囲内で行われる本開示からの逸脱、及び上述の重要な特徴に適用することができる本開示からの逸脱を含む、本主題事項のいかなる変形、使用、又は改変をも含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】R型ピオシン粒子の電子顕微鏡写真であり、パネルAは、6本の尾部繊維のうち4本を示す図であり、パネルBは、R型ピオシン粒子の主な構成成分の概略図である。
【図2】野生型ピオシン(R2)、尾部繊維欠失菌株に産生されたピオシン粒子(PA01ΔPrf15)、及びR2‐P2尾部繊維融合で相補されたピオシンの、段階希釈(5×)スポットアッセイ(spot serial(5×) dilution assay)を示す図である。標的細菌はシュードモナスエルジノーサ13s及びE.coli Cである。野生型R2ピオシン粒子は、シュードモナスは死滅させることができるが、大腸菌は死滅できない。尾部繊維欠失菌株は、活性なピオシン粒子を産生しないが、R2‐P2尾部繊維融合でトランスに相補されると、E.coli Cを死滅させることができる。
【図3】R2ピオシン構造のR2‐P2尾部繊維融合体による相補を示す図である。Aに示すように、P2尾部繊維遺伝子のC末端(RBD)部分が、R2尾部繊維のN末端(BPAR)部分と融合した。 図3のBは、野生型R2ピオシンを示す概略図である(左)。R2ピオシンをR2(BPAR)‐P2(RBD)融合コンストラクトで相補して、キメラ尾部繊維が構造中に組み込まれた粒子(右)を作製する。このR2‐P2粒子は、死滅標的の範囲が変化し、特定の大腸菌株を標的とするようになる。
【図4】複数のR2‐P2融合体、及びそれらの殺菌活性を示す図である。R2のN末端、1から164位のアミノ酸(基板結合領域、「BPAR」)を、種々のP2のC末端(RBD)と融合させた。数字は、各々のタンパク質のアミノ酸の位置番号を表している。各々の構築された尾部繊維を有する改変されたピオシンの殺菌活性(E.coli Cを標的とする)について、活性を示す場合は(+)、示さない場合は(−)で表す。
【図5】P2尾部繊維のC末端158から669位の部分(RBD)と融合したR2尾部繊維のN末端の様々な部分(BPAR)を示す図である。数字は、各々のタンパク質のアミノ酸の位置番号を表している。各々の構築された尾部繊維を有する改変されたピオシンの殺菌活性(E.coli Cを標的とする)について、活性を示す場合は(+)、示さない場合は(−)で表す。
【図6】複数のR2‐P2融合体、及びそれらの殺菌活性を示す図である。R2のN末端、1から240位のアミノ酸(BPAR)を、P2のC末端部分(RBD)と融合した。数字は、各々のタンパク質のアミノ酸の位置番号を表している。各々の構築された尾部繊維を有する改変されたピオシンの殺菌活性(E.coli Cを標的とする)について、活性を示す場合は(+)、示さない場合は(−)で表す。
【図7】P2尾部繊維のC末端322から669位の部分(RBD)と融合したR2尾部繊維のN末端の様々な部分(BPAR)を示す図である。数字は、各々のタンパク質のアミノ酸の位置番号を表している。各々の構築された尾部繊維を有する改変されたピオシンの殺菌活性(E.coli Cを標的とする)について、活性を示す場合は(+)、示さない場合は(−)で表す。
【図8】種々のR型ピオシン尾部繊維、尾部繊維融合体、及びシャペロンによる、PA01Δprf15R2ピオシン構造のトランスでの相補を示す図である。R1乃至R5によって相補されたピオシンの活性は、すべての型のピオシンに感受性を有する指示菌株であるシュードモナスエルジノーサ13sへのスポッティング(spotting)によって評価した。R2‐P2で相補されたピオシンは、E.coli Cを指示菌として用いて活性の試験を行い、R2‐L‐413cで相補されたピオシンは、エルシニアぺスチス(Yersinia pestis)KIM株上で試験を行った。 R2、R3、及びR4のPrf15尾部繊維は、PA01Δprf15R2ピオシンの内在性Prf16で相補することが可能であった。R2と比較してC末端が異なるR1及びR5のPrf15尾部繊維は、最大の活性を得るためには、それら自身の同族Prf16(R2の対応物とは異なっている)が必要であった。各々、ファージP2及びL‐413cの尾部繊維のC末端(RBD)を有する、R2‐P2及びR2‐L‐413c融合体は両方ともに、ファージのG遺伝子によってコードされるそれらの同族の尾部繊維集合シャペロンが必要である。
【図9】ピオシン尾部繊維及びシャペロンの発現ベクターpUCP30Tを示す図である。遺伝子prf15及びprf16は、両種ともに、複製開始点(ori pRO1600、rep、及びoriT)を有するシュードモナス/大腸菌シャトルベクター(Schweitzer)を用いて発現する。クローン部位は、図に示す制限酵素開裂部位で表す。このプラスミドは、ゲンタマイシン耐性(GmR)を付与し、培地にゲンタマイシンを添加することで維持される。両遺伝子ともに、転写は、lacIQによって負に制御されるtacプロモーターにより誘発される。シュードモナスエルジノーサ株PAO1Δprf15へトランスフォームされた場合、例えばprf15及びprf16などのプラスミドに組み込まれた遺伝子は、PAO1Δprf15宿主産生細菌中に残っているこれらのピオシン遺伝子のマイトマイシンCによる誘発と同時に、IPTGによって誘発された後、トランスに発現する。
【図10】エルシニアぺスチスに特異的なピオシン尾部繊維の構築を示す図である。R2‐P2の構築に用いた方法と同様に、L‐413c尾部繊維遺伝子の一部分をコードするC末端(RBD)を、R2尾部繊維のN末端部分(BPAR)に融合させた。トランスに発現してR2尾部繊維欠失株PA01Δprf15を相補する場合、エルシニアぺスチスは効果的に死滅させることができるがシュードモナスは死滅させることができないキメラR2‐L-413c尾部繊維を有する改変されたピオシン粒子が産生される。
【図11A】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11B】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11C】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11D】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11E】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11F】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11G】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11H】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11I】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。
【図11J】ページ11A乃至11Jに記載の配列番号1〜59のアミノ酸配列又は核酸配列を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板結合領域(BPAR)、及び異種受容体結合ドメイン(RBD)を含む高分子量(hmw)バクテリオシン尾部繊維タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項2】
前記RBDが、尾部繊維タンパク質の天然のRBDと比較して、1若しくは2個以上のアミノ酸の置換、挿入、又は欠失を有する、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記RBDが、バクテリオファージの尾部繊維タンパク質からのものである、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
バクテリオファージ又はhmwバクテリオシンの尾部繊維タンパク質の前記RBDが、該タンパク質の、C末端を含む、長さで約347〜約755のアミノ酸を有する、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
尾部繊維タンパク質の同族シャペロンをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
発現されたRBDが、細菌細胞表面の対応する受容体と結合し、それから該細胞の細胞質膜の完全性に損傷を与える、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記バクテリオシンが、R型ピオシン、モノシン(monocin)、エンテロコリチシン(enterocoliticin)、又はメニンゴシン(meningocin)である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項8】
発現されたRBDが、細菌細胞表面の毒性因子又は適応性因子(fitness factor)と結合する、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の核酸分子によってコードされる尾部繊維タンパク質を有するhmwバクテリオシン。
【請求項10】
前記尾部繊維タンパク質が、配列番号1、3、5、7、9、27、及び/若しくは30で表されるアミノ酸配列のすべて、又は一部を含む、請求項9に記載のバクテリオシン。
【請求項11】
前記RBDが、細菌の毒性因子又は適応性因子と結合する、請求項9に記載のバクテリオシン。
【請求項12】
前記RBD部分が、細胞表面の受容体と結合し、それから該細胞の細胞質膜の完全性に損傷を与える、請求項9に記載のバクテリオシンの一部分。
【請求項13】
請求項9に記載のバクテリオシン、及び担体又は賦形剤を含む、抗細菌組成物。
【請求項14】
前記担体又は賦形剤が、薬理学的に許容されるものである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記担体又は賦形剤が、局所投与、経口投与、又は全身投与に適するものである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の核酸分子によってトランスフェクトされたか、若しくは形質転換されたか、又はその核酸分子を含有する、細菌細胞。
【請求項17】
前記尾部繊維タンパク質及び/又はその同族シャペロンの発現が、prtNに感受性を有するプロモーター、又は天然のプロモーターによって制御される、請求項16に記載の細菌細胞。
【請求項18】
前記細胞がバクテリオシン尾部繊維タンパク質をコードし、これを発現することができる、請求項17に記載の細菌細胞。
【請求項19】
前記バクテリオシンの内在性尾部繊維タンパク質をコードする配列が、不活化又は欠失される、請求項18に記載の細菌細胞。
【請求項20】
hmwバクテリオシンを作製する方法であって、該方法が、請求項16に記載の細菌細胞を、前記バクテリオシンが産生される結果となる条件下で培養する工程を含む、方法。
【請求項21】
前記条件が、インビボである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
細菌細胞の細胞質膜の完全性に損傷を与える方法であって、該方法が、該細菌を請求項9に記載のバクテリオシンと接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
前記接触工程をインビボで行う、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象の中の細菌細胞の細胞質膜の完全性に損傷を与える方法であって、該方法が、請求項9に記載のバクテリオシンを前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項25】
有毒祖先細菌から無毒性細菌の子孫を形成する方法であって、該方法が、有毒細菌を請求項11に記載のバクテリオシンと接触させる工程であって、ここで、該バクテリオシンが、前記有毒祖先細菌の毒性因子又は適応性因子と結合する、工程と、前記無毒性細菌の子孫を選別する工程と、を含む方法。
【請求項26】
無毒性細菌の集団を維持する方法であって、該方法が、該集団を請求項11に記載のバクテリオシンと接触させる工程を含み、ここで、該バクテリオシンが、有毒細菌の毒性因子又は適応性因子と結合して有毒細菌の繁殖を防ぐ、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図11I】
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【図11J】
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【公表番号】特表2009−537146(P2009−537146A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511196(P2009−511196)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/068908
【国際公開番号】WO2007/134303
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(508340019)アビッドバイオティクス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】