説明

改変ワクシニアウイルスアンカラにおける発現用プロモーター

【課題】
MVAにおける発現のために最適化されたプロモーターを提供すること
【解決手段】
本発明は、特に改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)のようなワクシニアウイルスにおける遺伝子および/またはコード配列の発現のためのプロモーターに関する。本発明はさらに、前記プロモーター、発現カセットを含むベクターならびに医薬調合物およびワクチンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に改変ワクシニアウイルスアンカラ(Modified vaccinia virus Ankara:MVA)のようなワクシニアウイルスにおける遺伝子および/またはコード配列の発現用プロモーターに関する。本発明はさらに、前記プロモーターを含む発現カセット、前記発現カセットを含むベクター、ならびに医薬調合物およびワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
組換えポックスウイルスは、感染細胞において外来抗原を発現させるために広く使用される。さらに、組換えポックスウイルスは現在、ポックスウイルスベクターから発現する外来抗原に対する免疫応答を誘導するための非常に有望なワクチンとして試験されている。最もよく知られているのは一方ではアビポックスウイルスであり、一方ではワクシニアウイルス、特に改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である。MVAは、ポックスウイルス科のオルトポックスウイルス属の一員であるワクシニアウイルスに関連する。MVAはワクシニアウイルスのアンカラ株(CVA)をニワトリ胚線維芽細胞で516代にわたって連続継代することによって作出された(概要については非特許文献1を参照されたい)。これらの長期の継代の結果として、得られたMVAウイルスはそのゲノム配列の約31キロ塩基分を欠失しており、従って宿主細胞がトリ細胞に大きく制限される(非特許文献2)。得られたMVAが有意に無毒性であることが種々の動物モデルにおいて示された(非特許文献3)。さらにこのMVA株は、ヒト天然痘疾患に対する予防接種のためのワクチンとして、臨床試験において試験されている(非特許文献4、非特許文献5)。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、HIV抗原およびタンパク質を発現する組換えワクシニアウイルス株ワイス(Wyeth)が開示されている。特許文献3には、レンチウイルス遺伝子を発現する組換えワクシニアウイルス株NYCBHが開示されている。特許文献4には、ヒトレトロウイルス遺伝子を発現する組換えワクシニアウイルス株ウエスタンリザーブ(Western Reserve)が開示されている。特許文献5には、特に安全で弱毒化されたMVA株が開示されている。組換えMVAはとりわけ特許文献6および特許文献7に開示されている。
【0004】
ポックスウイルスにおける異種遺伝子の発現に関しては、30Kおよび40Kプロモーター(例えば特許文献3参照)、強力な合成初期/後期プロモーター(例えば非特許文献6参照)、P7.5プロモーター(例えば非特許文献7参照)および牛痘ウイルスA型封入体(ATI:A−type inclusion)遺伝子由来のプロモーター(非特許文献8参照)のような、わずかなプロモーターのみが当業者に公知である。これらのプロモーターは全て、異種遺伝子を発現させるために組換えワクシニアウイルスにおいて使用されており、前記遺伝子を発現させた結果該異種遺伝子によりコードされるタンパク質が産出されることが示されてきた。わずかなプロモーターのみがワクシニアウイルス発現系における遺伝子の発現に利用することができるので、ワクシニアウイルスにおける代替的なプロモータが必要とされている。さらに、これまでに公知のプロモーターはすべて、むしろ強力な後期プロモーターであり、すなわちワクシニアウイルスベクターの複製が起こった後に遺伝子を発現させるのに有用である。いくつかの用途に関しては、細胞の感染後に直ちに遺伝子を発現させるプロモーターを有することが望ましく、すなわちワクシニアウイルス初期プロモーターが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許(US)第5,736,368号明細書
【特許文献2】米国特許(US)第6,051,410号明細書
【特許文献3】米国特許(US)第5,747,324号明細書
【特許文献4】欧州特許(EP)第0 243 029号明細書
【特許文献5】国際公開(WO)第02/42480号パンフレット
【特許文献6】国際公開(WO)第98/13500号パンフレット
【特許文献7】国際公開(WO)第03/048184号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mayr, A., et al. Infection 3, 6−14 [1975]
【非特許文献2】Meyer, H. et al., J. Gen. Virol. 72, 1031−1038 [1991]
【非特許文献3】Mayr, A. & Danner, K. [1978] Dev. Biol. Stand. 41: 225−34
【非特許文献4】Mayr et al., Zbl. Bakt. Hyg. I, Abt. Org. B 167, 375−390 [1987]
【非特許文献5】Stickl et al., Dtsch. med. Wschr. 99, 2386−2392 [1974]
【非特許文献6】Sutter et al., Vaccine (1994) 12, 1032−40)
【非特許文献7】Endo et al., J. Gen. Virol. (1991) 72, 699−703
【非特許文献8】Li et al., J. Gen. Virol. (1998) 79, 613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに上述のように、MVAはその改良された安全プロファイルのために、異種遺伝子の発現に非常に有望なウイルスである。しかし、MVAにおける異種遺伝子の発現のためのこれまでに公知のプロモーターはすべて、その他のワクシニアウイルス由来であるか、またはその他のワクシニアウイルスにおける発現のための合成されたプロモーターである。従って、MVAにおける発現のために最適化されたプロモーターもまた必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)のゲノムに由来するプロモーターに関する。MVAプロモーターは本技術分野においてまだ公知ではなかった。
【0009】
特に本発明は、以下:
(i) 以下のSEQ ID NO:1〜6のいずれか1つのヌクレオチド配列:
5’TCTGCAATATTGTTATCGTAATTGGAAAAATAGTGTTCGAGTGAGTTGGATTATGTGAGTATTGGATTGTATATTTTATTTTATATTTTATATTTTGTAGTAAGAATAGAATGCTAATGTCAAGTTTATTCCAATAGATGTCTTATTAAAAAACATATATAATAAATAACA 3’(SEQ ID NO:1)
5’GATAAAAATTTAAAGTGTAAATATAACTATTATTTTATAGTTGTAATAAAAAGGGAAATTTGATTGTATACTTTCGGTTCTTTAAAAGAAACTGACTTGATAAAA 3’(SEQ ID NO:2)
5’GCATTTCATCTTTCTCCAATACTAATTCAAATTGTTAAATAAATAATGGATAGTATAAATAGTTATTAGTGATAAAATAGTAAAAATAATTATTAGAATAAGAGTGTAGTATCATAGATAACTCTCTTCTATAAAA 3’(SEQ ID NO:3)
5’GATCTATAAAGGTAGACCTAATCGTCTCGGATGACCATATATTTATTTTCAGTTTTATTATACGCATAAATAGTAAAAAATATGTTAGGTTTACAAAA 3’(SEQ ID NO:4)
5’GGTAAACTTTAAGACATGTGTGTTATACTAAGATGGTTGGCTTATTCCATAGTAGCTTGTGGAATTTATAAACTTATGATAGTAAAACTAGTACCCAATATGTAAAGATGAAAAAGTAAATTACTATTAACGCCGTCGGTATTCGTTCATCCATTCAGTT 3’(SEQ ID NO:5)
5’ATTTCTCGGTAGCACATCAAATGATGTTACCACTTTTCTTAGCATGCTTAACTTGACTAAATATTCATAACTAATTTTTATTAATGATACAAAAACGAAATAAAACTGCATATTATACACTGGTTAACGCCCTTATAGGCTCTAACCATTTTCAAG 3’(SEQ ID NO:6)
(ii) SEQ ID: No.1〜6のいずれか1つに記載の配列のサブ配列
(iii) (i)または(ii)で定義される配列に対して1つまたはそれ以上のヌクレオチド置換、欠失および/または挿入を有する配列、
を含む群から選択されるヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該ヌクレオチド配列からなるプロモーターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、異なるプロモーターによる発現後のGUS活性を示す。
【図2】図2は、初期および初期/後期発現後のGUS発現を示す。
【図3】図3は、異なるプロモーターによる発現後のGUS活性を示す。
【0011】
SEQ ID NO:1〜6は、MVAゲノムの天然の部分であり、それぞれリーディングフレームA42R、J6R、F6R、I2R、C7LおよびB9Rの上流に位置する。
【0012】
本発明のプロモーターは、好ましくはワクシニアウイルスプロモーターとして活性であるか、またはワクシニアウイルス感染細胞におけるプロモーターとして活性である。前記ワクシニアウイルスは、好ましくはMVA、特に以下に記載されるようなMVA株のうちの1つである。「ワクシニアウイルスプロモーターとして活性」とは、前記プロモーターが、前記ウイルスを用いて細胞を感染させた後に、ワクシニアウイルスにおいて実施可能に連結している遺伝子の発現を誘導することができることを意味する。前記細胞は、好ましくはワクシニアウイルスの後期および/または初期発現が可能な細胞である。「ワクシニアウイルス感染細胞においてプロモーターが活性」には、プロモーターがワクシニアウイルスゲノムの一部分でなく、例えばプラスミドまたは非ワクシニアウイルスのウイルスゲノムの一部分である状態もまた包含され;そのような状態においては、本発明のプロモーターは、該プロモーターを含む細胞がワクシニアウイルスゲノムも含む場合、例えば該細胞がワクシニアウイルスに感染した場合に活性である。このような環境下で、ウイルスRNAポリメラーゼが本発明のプロモーターを認識し、そして該プロモーターに連結する遺伝子/コード配列の発現が活性化される。
【0013】
本発明においては、SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:6に記載されるプロモーターのうちのいずれか1つを使用することができる。遺伝子/コード配列の発現を誘導するために実際に使用されるプロモーターは、SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:6のいずれか1つからなることができ、または、実際に使用されるプロモーターは、SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:6のいずれか1つを含むさらに大きな構造であってもよい。また、これらのプロモーターの誘導体を使用することが本発明の範囲に包含され、これらのプロモーターの誘導体はSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:6のいずれか1つに定義される配列のサブ配列であってもよい。「SEQ ID NO:1〜6のいずれか1つに記載の配列のサブ配列」という語句は、SEQ ID NO:1〜6のいずれか1つのさらに短い断片を表し、それらはプロモーターとして、特にワクシニアウイルスにおけるまたはワクシニアウイルス感染細胞におけるプロモーターとしてなお活性である。さらに、前記ワクシニアウイルスは、好ましくは以下に記載される株のうちの1つのようなMVAである。典型的なSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:6のいずれか1つのサブ配列は、SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:6の配列のいずれか1つのうちの少なくとも15ヌクレオチドの、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの、さらに好ましくは少なくとも25ヌクレオチドの、最も好ましくは少なくとも30ヌクレオチドの長さを有する。
【0014】
SEQ ID NO:1の好ましいサブ配列はSEQ ID NO:7である。SEQ ID NO:2の好ましいサブ配列はSEQ ID NO:8である。SEQ ID NO:3の好ましいサブ配列および/または該サブ配列の誘導体は、SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10である。SEQ ID NO:4の好ましいサブ配列はSEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12である。SEQ ID NO:6〜12の配列は、実施例において記載されている。
【0015】
SEQ ID NO:1〜6またはそれらのサブ配列のいずれか1つのヌクレオチド配列を含んでなるかまたは該ヌクレオチド配列からなるプロモーターの誘導体、特にSEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:12のヌクレオチド配列の誘導体はまた、SEQ ID NO:1〜6の配列またはそれらのサブ配列、特にSEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:12のヌクレオチド配列のいずれか1つに対して1つまたはそれ以上のヌクレオチド置換、欠失および/または挿入を有する配列であってもよい。本発明による誘導体は、プロモーターとして、特にワクシニアウイルスにおけるまたはワクシニアウイルス感染細胞におけるワクシニアウイルスプロモーターとして、より好ましくは、MVAにおけるまたはMVA感染細胞におけるMVAプロモーターとしてなお活性である。1つまたはそれ以上のヌクレオチド置換を有する配列は、SEQ ID NO:1〜6またはそれらのサブ配列のいずれか1つの配列、例えばSEQ ID NO:7〜12のいずれか1つの配列の1つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なるヌクレオチドによって置換されている配列である。1つまたはそれ以上のヌクレオチド挿入を有する配列は、SEQ ID NO:1〜6またはそれらのサブ配列、特にSEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:12のヌクレオチド配列のいずれか1つの1つまたはそれ以上の位置に、1つまたはそれ以上のヌクレオチドが挿入されている配列である。1つまたはそれ以上のヌクレオチド欠失を有する配列は、SEQ ID NO:1〜6またはそれらのサブ配列、特にSEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:12のヌクレオチド配列のいずれか1つの配列の1つまたはそれ以上のヌクレオチドが欠失している配列である。本発明の誘導体においては、欠失、置換および挿入が、1つの配列中で組み合わされていてもよい。
【0016】
本発明におけるサブ配列の誘導体の例は、SEQ ID NO:3 のサブ配列であって、SEQ ID NO:3における対応するヌクレオチド配列に対してさらに1つのヌクレオチドの交換を有するSEQ ID NO:10である。
【0017】
前記誘導体は、好ましくはSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:6の配列またはそれらのサブ配列のいずれか1つ、特にSEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:12のいずれか1つの配列と比較した場合に、少なくとも40%の、より好ましくは少なくとも60%の、さらに好ましくは少なくとも80%の、最も好ましくは少なくとも90%の相同性を有する。最も好ましい実施態様においては、多くて10個のヌクレオチド、より好ましくは多くて5個のヌクレオチドが、SEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:12のいずれか1つの配列において置換、欠失および/または挿入される。
【0018】
当業者であれば本技術分野の先行文献を参照することにより、SEQ ID NO:1〜12のいずれか1つの誘導体またはサブ配列のどれが、ワクシニアウイルスプロモーターとして、特にMVAにおけるプロモーターとしてなおも生物学的活性を有するかを予測することができる。これに関しては、「Chakrarbarti et al., Biotechniques (1997) 23, 1094−1097」および「Davison and Moss, J. Mol. Biol. (1989) 210, 771−784」が参照される。さらに、断片がなおワクシニアウイルスプロモーターとして、特にMVAプロモーターとして活性であるかどうかは、当業者であれば容易に評価することができる。特に、前記配列誘導体は、プラスミドコンストラクトにおいてレポーター遺伝子の上流にクローニングすることができる。前記コンストラクトは、MVAを感染させた真核細胞または細胞株、例えばCEFまたはBHK細胞にトランスフェクトすることができる。レポーター遺伝子の発現を測定し、SEQ ID NO:1〜6のいずれか1つのプロモーターにより制御されているレポーター遺伝子の発現と比較した。本発明の誘導体は、SEQ ID NO:1〜6のいずれか1つのプロモーター配列の活性と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%の前記試験系におけるプロモーター活性を有する誘導体である。SEQ ID NO:1〜12のいずれか1つのこれらの誘導体もまた、高いプロモーター活性を有する本発明の範囲に包含される。
【0019】
本発明のプロモーターは、MVAにおけるコード配列の発現に特に適している。
【0020】
SEQ ID NO:1のプロモーターは、初期プロモーターとして使用することもできるが、特に後期プロモーターとして非常に強力な活性を有する。同一のことが対応するサブ配列、例えばSEQ ID NO:7の配列にあてはまるが、それは後期プロモーターとして特に有用である。
【0021】
SEQ ID NO:2のプロモーターもまた、特に後期プロモーターとしてさらに強力な活性を有する。これはまた初期プロモーターとしても使用することができる。同一のことが対応するサブ配列、例えばSEQ ID NO:8の配列にあてはまるが、それは後期プロモーターとして特に有用である。
【0022】
SEQ ID NO:3のプロモーターは、特に初期プロモーターとして有用であり、そして試験された全てのプロモーターの中で最も高い初期プロモーター活性を有する。 しかし、それは後期プロモーターとしても使用することができる。同一のことが対応するサブ配列、例えばそれぞれSEQ ID NO:9および10の配列にあてはまる。これらのサブ配列のうち、SEQ ID NO:9が特に初期プロモーターとして有用であり、SEQ ID NO:10が特に後期プロモーターとして有用である。
【0023】
連結したコード配列を初期および後期に発現させようとする場合に、SEQ ID NO:4のプロモーターは特に有用であり、なぜならこのプロモーターは初期ならびに後期の条件下においてより高い活性を有するからである。同一のことが対応するサブ配列、例えばそれぞれSEQ ID NO:11および12の配列にあてはまる。これらのサブ配列のうち、SEQ ID NO:11が特に初期プロモーターとして有用であり、SEQ ID NO:12が特に後期プロモーターとして有用である。
【0024】
連結したコード配列をやや低量で発現させようとする場合には、SEQ ID NO:5および6のプロモーターが特に有用である。これは、連結したコード配列が毒性の遺伝子産物をコードする場合に、および/または高い結合力の免疫応答を誘導させる場合に望ましい場合がある。
【0025】
「初期プロモーター」という語句は、ウイルスDNA複製が起こる前にワクシニアウイルスまたはワクシニアウイルス感染細胞において活性であるプロモーターを表す。プロモーターが初期プロモーターであるかを確認することができる方法は、当業者に公知である。特に、興味のプロモーターをレポーター遺伝子の上流に挿入してもよい。前記プロモーターおよび前記レポーター遺伝子を含むコンストラクトは、ワクシニアウイルスを感染させた細胞に導入される。初期プロモーターとしての活性を評価するために、細胞をAraCのようなDNA複製を阻害する物質とともにインキュベートする。DNA複製は後期プロモーター活性にとって必須条件である。従って、この試験系において測定されるプロモーター活性はいずれも、初期プロモーターとしての活性なエレメントによるものである。よって、「後期プロモーター」という語句は、DNA複製が起こった後に活性であるプロモーターを表す。該後期活性は、当業者に公知の方法によって測定することができる。簡潔にするために、本明細書に使用される場合には、「後期プロモーター」という語句は、DNA複製を遮断するいずれの物質も加えない場合に測定されるプロモーターの活性を表す。
【0026】
さらなる実施態様において、本発明は、本発明のプロモーターおよびコード配列を含む発現カセットであって、コード配列の発現が前記プロモーターにより制御されている前記発現カセットを表す。前記発現カセットは、好ましくはワクシニアウイルスゲノムに天然に存在する発現カセットではない。従って、本発明プロモーターがワクシニアウイルスのゲノムに天然に存在するプロモーターである場合に、該プロモーターが連結する配列は、好ましくは該プロモーターがワクシニアウイルスにおいて天然に連結している配列とは異なる。すなわち、本発明のプロモーターが天然に存在するプロモーターと一致する場合に、その発現が該プロモーターおよび/または該プロモーターと該コード配列との間に位置する配列に制御されるコード配列は、前記プロモーターが天然に連結している対応する配列とは異なる。本明細書において、「異なる」という語句は、前記配列において少なくとも1つのヌクレオチドの相違を示す配列を表す。好ましくは、それは少なくとも1つのヌクレオチドが相違を有するコード配列である。その他の選択肢においては、該発現カセットにおけるコード配列とプロモーターが天然に連結する配列との間の相同性は、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満または20%未満である。最も好ましくは、本発明のプロモーターにより制御されるコード配列は、上述のコード配列によりコードされる天然に存在するタンパク質と比較して、少なくとも1つのアミノ酸の相違を有するペプチド/タンパク質をコードする。一例としては、該発現カセットは、天然に存在するC7L遺伝子の発現を誘導する天然に存在するワクシニアウイルスC7Lプロモーターを含む発現カセットではなく、例えば該発現カセットは、C7LプロモーターおよびC7Lコード配列を含む国際公開(WO)第2004/015118号パンフレットに開示される発現カセットではない。
【0027】
一方、発現させるべき配列が天然に存在するワクシニアウイルス配列である場合に、該配列を発現するために使用されるプロモーターは、天然の構造(context)においてコード配列の発現を誘導するプロモーターとは異なる。この選択肢においては、プロモーターのヌクレオチド配列は、天然に存在するワクシニアウイルスプロモーターの配列と少なくとも1つのヌクレオチドにおいて相違する。その他の選択肢においては、ワクシニアウイルス配列の発現を制御する本発明のプロモーターと、ワクシニアウイルス配列に連結する天然に存在するプロモーターとの間の相同性は、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満または40%未満である。
【0028】
好ましくは、コード配列は少なくとも1つの抗原エピトープまたは抗原、治療用ペプチドまたはタンパク質、アンチセンスRNAまたはリボザイムをコードすることができる。該コード配列が抗原エピトープまたは抗原をコードする場合に、発現カセットは、該発現カセットを生物、例えばヒトを含む哺乳類動物における細胞に導入した後、前記抗原を発現させるために使用することができる。前記抗原/エピトープの提示は、生物において免疫応答を誘導することができ、これは該生物における該抗原/エピトープが由来する因子に対しての予防接種となる。さらに具体的には、該エピトープ/抗原は、ポリエピトープ、ペプチドまたはタンパク質のようなより大きなアミノ酸配列の一部分であってもよい。好ましくは、前記コード配列は、ワクシニアウイルスゲノムによってコードされない、少なくとも1つの抗原エピトープまたは抗原、治療用ペプチドまたはタンパク質、アンチセンスRNAまたはリボザイムをコードする。
【0029】
前記ポリエピトープ、ペプチドまたはタンパク質の例としては、(i)ウイルス、特にHIV、HTLV、ヘルペスウイルス、デングウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、肝炎ウイルス等のようなワクシニアウイルス以外のウイルス、(ii)細菌、(iii)真菌、(iv)腫瘍関連抗原のような腫瘍関連ポリペプチド/タンパク質由来のポリエピトープ、ペプチドまたはタンパク質が挙げられる。
【0030】
あるいは、前記コード配列は、インターロイキン、インターフェロン、リボザイムまたは酵素のような治療用化合物をコードすることができる。
【0031】
さらに一般的にいうと、本発明は、本発明のプロモーターおよび/または本発明の発現カセットを含む任意の核酸配列に関する。該核酸は、例えばプロモーターがレトロウイルスゲノムの一部分である場合には、RNAでもよい。さらに好ましくは、該核酸はDNAである。該DNAは、直鎖状、環状、一本鎖または二本鎖DNAのようないずれのタイプのDNAでもよい。
【0032】
さらなる実施態様において、本発明のプロモーターおよび/または発現カセットは、ベクターの一部分でもよい。「ベクター」という語句は、当業者に公知の任意のベクターを表す。ベクターは、pBR322またはpUC系のベクターのようなプラスミドでよい。さらに好ましくは、該ベクターはウイルスベクターである。本明細書においては、「ウイルスベクター(viral vector)」または「ウイルスベクター(virus vector)」という語句は、ウイルスゲノムを含む感染性ウイルスを表す。この場合に、本発明のDNAは、それぞれのウイルスベクターのウイルスゲノムの一部分である。組換えウイルスゲノムがパッケージングされ、得られた組換えベクターは細胞および細胞株の感染、特にヒトを含む動物の生体の感染に使用することができる。本発明において使用することができる典型的なウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルス2(AAV2)を基礎とするベクターである。最も好ましいのはポックスウイルスベクターである。該ポックスウイルスは、好ましくはカナリア痘ウイルス、鶏痘ウイルスまたはワクシニアウイルスである。
【0033】
さらに好ましいのは、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)(Sutter, G. et al. [1994], Vaccine 12: 1032−40; Antoine, G. et al. [1998], Virology 244: 365−396)である。本出願において使用される場合には、「MVA」という語句は、当業者に公知のMVA株のいずれかを表す。MVA株の例としては、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture collection) (ATCC、マナサス、VA 20108、USA)に寄託番号VR−1508で寄託されているものが挙げられる。本発明に使用されるMVAウイルス株のさらなる例としては、欧州細胞カルチャーコレクション(European Collection of Animal Cell Cultures)(ECACC、ソールズベリー、UK)にそれぞれ寄託番号ECACC V94012707およびECACC V00120707で寄託されているMVA572および575株、寄託番号ECACC V00083008で寄託されいるMVA−BNが挙げられる。
【0034】
最も好ましいMVA株は、MVA−BNまたはその誘導体である。MVA−BNの特性、MVA株がMVA−BNまたはその誘導体であるかどうかを評価するための生物学的試験についての記載、およびMVA−BNまたはその誘導体を得るための方法は、国際公開(WO)02/42480号パンフレットに開示されている。この出願の記載は、参照することにより本明細書に組み込まれる。特に、国際公開(WO)02/42480号パンフレットに開示されるような本発明のワクシニアウイルスの特性の定義、例えばMVAの特性、およびMVA−BNの誘導体の特性および定義が参照される。前記の参照文献にはMVAおよびその他のワクシニアウイルスを増殖させる方法も開示されている。簡単に言うと、真核細胞にウイルスを感染させる。該真核細胞は、各ポックスウイルスによる感染を許容し、感染ウイルスの複製および産出を許容する細胞である。MVAに関するこのタイプの細胞の例はニワトリ胚線維芽細胞(CEF)およびBHK細胞である(Drexler I., Heller K., Wahren B., Erfle V. and Sutter G. “Highly attenuated modified vaccinia Ankara replicates in baby hamster kidney cells, a potential host for virus propagation, but not in various human transformed and primary cells” J. Gen. Virol. (1998), 79, 347−352)。CEF細胞は当業者に公知の条件下で培養することができる。好ましくは、CEF細胞は静置したフラスコまたはローラーボトルにおいて血清なしの培地中で培養される。インキュベーションは、好ましくは37℃±2℃で48〜96時間行う。感染のために、MVAは好ましくは0.05〜1TCID50の感染多重度(MOI)で使用され、インキュベーションは好ましくは37℃±2℃で48〜72時間行う。
【0035】
本発明の発現カセットまたはプロモーターをウイルスゲノム、特にワクシニアウイルスのゲノムに、最も好ましくはMVAのゲノムに挿入する方法は、当業者に公知である。一例として、本発明の発現カセットまたはプロモーターまたはその誘導体は、相同組換えによりMVAのゲノムに挿入することができる。この目的のためには、核酸はCEFまたはBHK細胞のような許容細胞株にトランスフェクトされ、該核酸は、本発明の発現カセットまたはプロモーターまたはその誘導体が挿入されるMVAゲノムの領域と相同であるヌクレオチドストレッチ(stretches)に隣接する、本発明の発現カセットまたはプロモーターまたはその誘導体を含む。前記細胞にMVAを感染させると、感染細胞において核酸とウイルスゲノムとの間で相同組換えが起こる。あるいは、最初に細胞にMVAを感染させ、その後核酸を感染細胞にトランスフェクトすることも可能である。この場合も細胞中で相同組換えが起こる。組換えMVAは当業者に公知の方法によりその後選択される。組換えMVAの構築はこの特定の方法に限定されない。いずれの当業者に公知の適当な方法も代わりにこの目的のために使用することができる。
【0036】
本発明の発現カセットまたはプロモーターは、ベクター、特にウイルスゲノムの適当な部分のいずれかに導入することができる。ワクシニアウイルスの場合には、ウイルスゲノムの非必須部分に、またはウイルスゲノムの遺伝子間領域に挿入される。「遺伝子間領域」という語句は、好ましくはコード配列を含まない、2つの隣接する遺伝子の間に位置するウイルスゲノムの部分を表す。ベクターがMVAの場合には、ウイルスゲノムの天然に存在する欠失部位に挿入することもできる。「天然に存在する欠失部位」という語句は、ワクシニアウイルスコペンハーゲン株のゲノムにおいて欠失しているウイルスゲノムの部分を表す。しかし、発現カセットは、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)のような少なくとも1つの細胞培養系において増幅および増殖することができる組換え体が得られる限り、ウイルスゲノム中のどこにでも挿入することができ、本発明の範囲内にあるので、挿入部位はワクシニアウイルスゲノムおよびMVAゲノムにおけるこれらの好ましい挿入部位に限定されない。
【0037】
本発明のプロモーターは、すでにベクター、例えばMVAのゲノムの一部分である遺伝子を発現させるために使用することができる。このような遺伝子はウイルスゲノムの天然の部分である遺伝子またはすでにベクターに挿入されている外来遺伝子でよい。これらの場合に、本発明のプロモーターはベクターにおいて該遺伝子の上流に挿入され、その発現は該プロモーターにより制御される。本発明の発現カセットを含むMVAベクターは、オープンリーディングフレームA42R、J6R、F6R、I2R、C7LおよびB9R のいずれか1つを、その発現が前記オープンリーディングフレームのいずれか1つの発現を天然に制御しているプロモーターにより制御されるコード配列によって置換することにより調製することができる。従って、その一例として、A42Rコード配列またはその部分を、発現させるコード配列によって置換することができる。その結果得られるコンストラクトにおいて、前記コード配列は本発明のプロモーターにより、すなわちSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:7のプロモーター配列により制御される。これらの発現カセットもまた本発明の範囲に包含される。
【0038】
さらなる実施態様において、本発明は、ワクチンまたは薬剤としての本発明のベクターに関する。さらに総括すると、本発明は、本発明の発現カセット、DNAまたはベクターを含むワクチンまたは医薬調合物に関する。該ワクチンまたは医薬調合物を動物またはヒトの体に投与する方法は当業者に公知である。DNAおよびプラスミドベクターの場合には、該DNAおよびベクターは注射により簡単に投与することができる。該ベクターがワクシニアウイルスベクター、特にMVAベクターのようなウイルスベクターの場合には、それは当業者の知識に従って、例えば静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮内または皮下投与により動物またはヒトの体に投与することもできる。投与されるウイルスの量に関する詳細は以下に記載する。
【0039】
前記医薬調合物またはワクチンは、通常、本発明のプロモーター、発現カセットまたはベクターに加えて、1つまたはそれ以上の薬学的に許容されるおよび/または承認されるキャリアー、添加剤、抗生物質、保存剤、アジュバント、希釈剤および/または安定剤を含むことができる。補助物質は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等でよい。適当なキャリアーは、典型的にはタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー、脂質集合体等のような大きなゆっくりと代謝される分子である。
【0040】
医薬調合物またはワクチンの製造のために、本発明のDNA、発現カセットまたはベクター、特に組換えMVAのような組換えワクシニアウイルスを、生理的に許容される形態に変換する。ワクシニアウイルス、特にMVAに関しては、これは天然痘に対する予防接種に使用されるポックスウイルスワクチンの製造における実験に基づいて行うことができる(「Stickl, H. et al. [1974] Dtsch. med. Wschr. 99, 2386−2392」により記載されるように)。例えば、精製したウイルスは5×10TCID50/mlの力価で約10mMのTris、140mMのNaCl(pH7.4)中に処方(formulated)されて−80℃で保存される。ワクチン注射の製造のために、例えば10〜10個の本発明の組換えウイルス粒子を、アンプル、好ましくはガラスアンプル中で、2%のペプトンおよび1%のヒトアルブミンの存在下でリン酸緩衝食塩水(PBS)において凍結乾燥する。あるいは、該ワクチン注射は、調合物におけるウイルスの段階的な凍結−乾燥によって製造することができる。この調合物は、さらにin vivo投与に適したマンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトースまたはポリビニルピロリドンのような添加剤、または酸化防止剤または不活性ガス、安定剤または組換えタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)のようなその他の添加剤を含むことができる。凍結−乾燥に適した典型的なウイルス含有調合物は、10mMのTris−緩衝液、140mMのNaCl、18.9g/lのデキストラン(MW 36000〜40000)、45g/lのスクロース、0.108g/lのL−グルタミン酸一カリウム塩一水和物(pH7.4)を含む。その後ガラスアンプルを密封し、4℃〜室温の間で数ヶ月保存することができる。しかし、必要がない限りは、該アンプルは好ましくは−20℃以下の温度で保存される。
【0041】
予防接種または治療を行うために、前記の凍結乾燥物または凍結乾燥生成物を0.1〜0.5mlの水性溶液、好ましくは水、生理食塩水またはトリス緩衝液に溶解し、それを全身的または局所的に、すなわち非経口投与、筋肉内投与、または当業者に公知のその他の任意の投与経路によって投与することができる。当業者であれば、投与方法、投与用量および投与回数を、公知の方法で最適化することができる。従って、関連する実施態様において、本発明は、本発明の発現カセット、DNA、ベクター、医薬調合物またはワクチンを治療される動物またはヒトに投与することを含む、ヒトを含む動物の生体内における免疫応答に作用する、好ましくはそれを誘導する方法に関する。ワクチンがワクシニアウイルス、特にMVAである場合に、典型的なヒト用のワクチン注射は、少なくとも10、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも10、さらに好ましくは少なくとも10または10TCID50(組織培養感染量)のウイルスを含む。
【0042】
前記ワクチンが組換えMVA、特に組換えMVA−BNおよびその誘導体である場合には、該ウイルスはプライム−ブースト(prime−boost)投与に使用することができる。従って、本発明は、ベクターがMVA、特にMVA−BNおよびその誘導体であり、そして前記ベクター、または前記ベクターを含む調合物またはワクチンを、第一接種(「初回免疫接種(priming inoculation)」)および第二接種(「追加免疫接種(boosting inoculation)」)において、それを必要とするヒトを含む動物に治療的有効量で投与する方法に関する。
【0043】
本発明はさらに、本発明のベクター、発現カセットまたはDNAを標的細胞に導入することを含む、コード配列を標的細胞に導入する方法に関する。ベクターがワクシニアウイルス、特にMVA−BNのようなMVAの場合には、標的細胞はウイルスが複製できる細胞、例えばCEFまたはBHK細胞、またはMVAが感染できるが該ウイルスが複製しない細胞(例えばMVA−BNに関しては全てのタイプのヒト細胞)でよい。
【0044】
本発明はさらに、宿主細胞への本発明ウイルスベクターの感染、それに続く適当な条件下での感染した宿主細胞の培養、さらにそれに続く前記宿主細胞により産出されたペプチドおよび/またはタンパク質および/ウイルスの単離および/濃縮を含む、ペプチド、タンパク質および/またはウイルスを製造する方法に関する。本発明のウイルスを製造、すなわち増幅しようとする場合には、該細胞はウイルスが複製できる細胞でなければならない。ワクシニアウイルス、特にMVAに適した細胞はCEFまたはBHK細胞である。本発明のウイルスベクターによりコードされるペプチド/タンパク質を製造しようとする場合には、該細胞は、ウイルスベクターが感染でき、コードされるタンパク質/ペプチドの発現を許容するいずれの細胞でもよい。
【0045】
本発明はさらに、本発明の発現カセット、DNAまたはプラスミドベクターを用いる細胞のトランスフェクション、それに続く該細胞へのワクシニアウイルスの感染を含む、ペプチド、タンパク質および/またはウイルスを製造する方法に関する。該感染した宿主細胞は適当な条件下で培養される。さらなる段階は、前記宿主細胞により産出されるペプチドおよび/またはタンパク質および/またはウイルスの単離および/または濃縮を含む。細胞へのワクシニアウイルスの感染段階は、該細胞のトランスフェクション段階の前または後に行われる。
【0046】
本発明はさらに、本発明のプロモーター、DNA、発現カセットまたはベクターを含む細胞に関する。特に、本発明は、本発明のウイルスベクターを感染させた細胞に関する。
【0047】
<図面の簡単な説明>
図1:異なるプロモーターによる発現後のGUS活性
細胞にMVA−BNを感染させ、適当なプラスミドでトランスフェクトした。48時間後に細胞を抽出し、黄色を発色する酵素反応後の415nmにおける吸光度を測定することによりGUS活性を間接的に測定した。Zex=ネガティブコントロール(MVA−BN感染細胞)。
【0048】
図2:初期および初期/後期発現後のGUS発現
細胞にMVA−BNを感染させ、適当なプラスミドでトランスフェクトした。24時間後に細胞を抽出し、黄色を発色する酵素反応後の415nmにおける吸光度を測定することによりGUS活性を間接的に測定した。Zex=ネガティブコントロール(MVA−BN感染細胞)。酵素反応に関して、呈色反応を得るために、AraCなしのサンプル(初期+後期発現)は5時間インキュベートしなければならず、AraCを添加したサンプル(初期発現)は一晩インキュベートしなければならない。
【0049】
図3:異なるプロモーターによる発現後のGUS活性
細胞にMVA−BNを感染させ、適当なプラスミドでトランスフェクトした。24時間後に細胞を抽出し、黄色を発色する酵素反応後の415nmにおける吸光度を測定することによりGUS活性を間接的に測定した。コントロール=ネガティブコントロール(MVA−BN感染細胞)。
【実施例】
【0050】
以下の実施例により本発明をさらに例証する。当業者には、本発明により提供される技術の適用がこの実施例に限定されることがないことは理解される。
【0051】
<実施例1:MVA−BNゲノムにおいてコード配列を発現するためのプロモーターの解析>
1.1 実験の目的
この解析の目的は、MVAゲノムにおけるコード配列、好ましくは天然のMVAゲノムとは異種のコード配列を発現するのに適したプロモーターを同定することである。特に、1つの挿入部位に2つまたはそれ以上の遺伝子を挿入するためには、外来遺伝子の1つの欠失を生じる組換えイベント(recombination events)のリスクを減少するために、各遺伝子の発現のために異なるプロモーターを使用することが有利である。さらに、組換えMVA−BNに挿入された外来遺伝子をプロモーターの強さに依存する可変の量で発現する可能性を有するためには、異なる強さのプロモーターを有することが望ましい。全体で11個の推定プロモーターが単離された。これらの推定プロモーター配列をプラスミド骨格(pBSKS+)にクローニングした。これらの潜在的な活性を解析するために、該プロモーターをGUS(大腸菌β−グルクロニダーゼ)レポーター遺伝子と融合させた。BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞にMVA−BNを感染させ、GUS遺伝子と融合させた推定プロモーターを含むプラスミドでトランスフェクションを行った。プロモーターが機能する場合にはGUSが発現し、GUSの酵素反応により定量化することができる。ポジティブコントロールとしておよび標準として、よく特性が明らかにされているワクシニアウイルスプロモーターp7.5およびPsをGUSと融合させ同時に解析した。GUS発現の測定により、推定プロモーターについて活性、強さおよび初期/後期発現に関してスクリーニングを行った。該初期/後期発現はAraC(シトシンアラビノシド)を培地に添加することにより確認した。機能することが示されているプロモーター、すなわち当業者に公知のPs、p7.5、7.5LおよびATIプロモーター、ならびにMVA ORF’sの発現制御に天然において関与する新しく同定されたプロモーター配列、A42L、B9R、C7L、F6R、I2R、J6Rは、好ましくは組換えMVAコンストラクト(recMVA−BN)中の外来遺伝子の発現に使用することができる。
【0052】
1.2 材料
細胞:BHK細胞
ウイルス:MVA−BNの標準的な粗製ストック(7.5×10TCID50
DNA:pAB−GUS(Psプロモーター+GUS)
pBNX71(pBluescript+ワクシニアウイルスpr7.5+GUS)
pBNX73(pBluescript+牛痘ウイルスATIプロモーター+GUS)
pBN81(pBluescript+改変H5Rプロモーター+GUS1)
pBN61(pBluescript+MVA B1Rプロモーター+GUS)
pBN62(pBluescript+MVA B2Rプロモーター+GUS)
pBN63(pBluescript+MVA B3Rプロモーター+GUS)
pBN60(pBluescript+MVA A30Rプロモーター+GUS)
pBN82(pBluescript+ワクシニアウイルス7.5Lプロモーター+GUS)
pBN83(pBluescript+MVA C7Lプロモーター(SEQ ID NO:5+GUS)
pBNX49(pBluescript+MVA A42Rプロモーター(SEQ ID NO:1)+GUS)
pBNX69(pBluescript+MVA I2Rプロモーター(SEQ ID NO:4)+GUS)
pBNX72(pBluescript+MVA K5Lプロモーター+GUS)
pBNX83(pBluescript+MVA F6Rプロモーター(SEQ ID NO:3)+GUS)
pBNX84(pBluescript+MVA B9Rプロモーター(SEQ ID NO:6+GUS)
pBNX85(pBluescript+MVA J6Rプロモーター(SEQ ID NO:2)+GUS)
トランスフェクションキット:Effecteneトランスフェクションキット(Qiagen社)
培地および添加物質:10%FCS(Gibco BRL社)を添加したDMEM(Gibco BRL社)
試薬および緩衝液:溶解緩衝液(PBS+0.1%Triton+1mMのプロテアーゼ阻害剤)AraC(Sigma社、カタログ番号C1768)
GUS基質1mM(p−ニトロフェニル−ベータ−(D)−グルクロニド; Sigma社、カタログ番号N1627)
停止溶液2.5M(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール; Sigma社、カタログ番号A 9754)。
【0053】
1.3 方法
細胞の播種
6ウェルプレートのウェルにおけるトランスフェクション反応あたり5×10個のBHK細胞を播種し、37℃および5%COにおけるDMEM/10%FCS中で一晩維持した。
【0054】
感染/[トランスフェクション]
1ウェルあたり0.5mlのDMEM/10%FCSにおいて、細胞にMVA−BN(moi 0.1)を感染させ、室温下、振とう器において1時間インキュベートした。トランスフェクションを製造者のプロトコールに記載されるとおりに実施した。2μgのプラスミドを緩衝液EB(100μlの全容量)に希釈した。3.2μlのエンハンサー溶液の添加後、該溶液を混合し室温で5分間インキュベートした。その後、10μlのEffectene試薬を添加し、懸濁液を混合して室温で10分間インキュベートした。ウイルス懸濁液を細胞から除去し、1.6mlのDMEM/10%FCSを添加した。0.6mlのDMEM/10%FCSをDNA Effectene混合物に添加し、培養プレートを回転させながら細胞に滴下した。その後、細胞を解析によって7、24または48時間インキュベートした。初期/後期発現の解析のために、感染およびトランスフェクションの間にAraCを培地に添加した(40μg/ml)。
【0055】
細胞の回収
培地を細胞から除去し、0.5mlの溶解緩衝液を添加した。室温で15分間振とうした後、細胞を溶解緩衝液中で破砕し、1.5mlの反応チューブに移して、激しく撹拌した。溶解した細胞につき4℃、500rcfで1分間遠心分離を行い、透明な上清を新しいバイアルに移して使用するまで−20℃で保存した。
【0056】
GUS活性の測定
10μlの細胞抽出液(=2×10個の細胞からのタンパク質)を1mlの予め温めた基質溶液(37℃)に添加し、黄色が呈色するまで37℃でインキュベートした。サンプルをその後直ちに氷上に置き、0.4mlの停止溶液を添加した。415nmの吸光度を測定し、GUS活性を直線範囲にある0.05〜2.0の吸光度の値として扱った。基質溶液を基準として使用し、MVA−BN感染細胞の細胞抽出液をネガティブコントロールとして使用した。
【0057】
1.4 実施例および結果
実施例1:推定プロモーターの機能の測定
第一の実験において、GUS遺伝子と融合した推定MVAプロモーター、またはよく特性が確認されているプロモーターを含む全てのプラスミドを解析した。細胞にMVA−BN(moi 0.1)を感染させ、対応するプラスミドでトランスフェクションを行った。48時間後に細胞を回収し、溶解させてGUS活性を測定した。この実施例は、各プロモーターが機能的であるかどうかを測定するために実施した。結果を図1に示す。
【0058】
ネガティブコントロール(MVA−BN感染細胞からの抽出物)は、明確なGUS活性を示さなかった(Zex;吸光度0.001)。特性がよく確認されている強力な合成Psプロモーターは、発現の48時間後に高量のGUSが検出されたので、非常に効率的であることが示された(Ps;吸光度0.87)。また、公知の天然に存在するワクシニアウイルスpr7.5プロモーターもまた非常に高い活性を示した(p7.5;吸光度0.41)。pr7.5の後期部分もまた明確に検出可能な活性を示す(7.5L;吸光度0.25)。牛痘ATIプロモーターは、MVA−BNによる外来遺伝子の発現に非常に効率的であることが明確に示される(ATI;吸光度0.76)。MVA−BNゲノムの推定プロモーター領域に関して、A42R(A42;吸光度0.48)、B9R(B9;吸光度0.06)、C7L(C7;吸光度0.055)、F6R(F6;吸光度0.208)、I2R(I2;吸光度0.130)およびJ6R(J6;吸光度0.290)が機能的なプロモーターであることが示された。第一の予備実験において活性(吸光度>0.05)であることが明確に示されたプロモーターについて、さらに詳
細に特性を明らかにした(実施例2)。
【0059】
実施例2:プロモーターの発現特性
実施例1において活性を示したプロモーターを、それらの発現パターンに関して特性を明らかにした。前記の目的のために、MVA−BNを感染させ、対応するプラスミドでトランスフェクションを行った細胞をAraCとともにインキュベートした。AraCは、MVAの複製サイクル間での遺伝子の後期発現のために必須な必要条件であるDNA複製を阻害する。同時に、同一の実験をAraCの添加なしで実施した。感染させた、およびトランスフェクションを行った細胞を24時間後に回収し、GUS活性の測定を三重に行った。図2は、各サンプルの平均吸光度を示す。
【0060】
AraCなし(−AraC)で24時間インキュベーションした後に、全体のGUS発現(初期+後期)がすべてのプロモーターについて明確に検出された(図2:右列)。新しく同定したプロモーターの強さは、I2R(I2)>A42R(A42)>F6R(F6)>J6R(J6)>B9R(B9)=C7L(C7)の順に減少していく。
【0061】
後期発現を阻害するAraCを添加してのインキュベーション(+AraC)の結果、ネガティブコントロール(Zex)の発現レベルに匹敵するGUSの発現レベルが得られたので、プロモーターB9、C7およびJ6は、MVAのライフサイクルの間において主に後期発現に関連することが示された。C7Lプロモーターはある程度弱いことが明らかになったが、それは初期発現の間において重要な役割を果たすことが示唆される。
【0062】
プロモーターA42R、I2RおよびF6Rは非常に効率的な初期発現を明確に示した。初期発現の測定に関しては、検出可能な呈色反応を得るためにサンプルを一晩インキュベートしなければならなかった。これらの結果は、初期+後期発現(図2:−AraC)が5時間しかインキュベートされていないため、これらの値と直接比較することはできない。初期発現を示さなかったプロモーターを発現の7時間後に再び解析し、24時間後の結果を確認することができた(データは示さず)。
【0063】
1.5 結論
異なる強さのプロモーターを得ることができ、インキュベーション時間およびMVA−BNの複製可能性に依存して異なる発現パターンを示す多種多様な異なるプロモーターを利用できることが明確に示された。初期+後期発現が好ましい場合には、プロモーターA42R、I2RおよびF6Rを使用するのが好ましい。初期発現を避けなければならない場合(例えば、初期発現に対する終結シグナルTTTTTNTを含む外来遺伝子)には、プロモーターB9R、J6RまたはC7Lを使用するのが好ましい。
【0064】
<実施例2:SEQ ID NO:1〜4に由来する最小プロモーターエレメントの解析>
実施例1では、MVAゲノムにおいて外来遺伝子を発現するのに特に適している配列がいくつか同定された。さらに短い断片が同一の目的を満たすかどうかを確認するために、さらに実験を実施した。SEQ ID NO:1〜4のさらに短い断片をPCRにより単離し、プラスミド骨格(pBSKS+)にクローニングした。全部で6個の推定最小プロモーターについて試験を行った。これらの活性の可能性を解析するために、該プロモーターをGUSレポーター遺伝子に融合させた。BHK細胞にMVA−BNを感染させ、GUS遺伝子に融合させた推定最小プロモーターを含むプラスミドでトランスフェクションを行った。GUSの発現を測定することにより、活性および発現の強さに関して、推定プロモーターのスクリーニングを行った(実施例1参照)。ポジティブコントロールとしておよび参照として、よく特性が明らかにされているワクシニアウイルスプロモーターPsをGUSと融合させ同時に解析した。約30bpの最小プロモーターエレメントは、元々の相同的な配列と追加的にクローニングしたプロモーターとの間の相同組換えの危険性なしに、組換えMVAコンストラクト(recMVA−BN)中の外来遺伝子の発現に使用することができる。
【0065】
2.1 材料および方法
特に言及しない限り、実施例2において用いる材料および方法は実施例1における方法と一致する。PCRは標準的方法により実施した。
【0066】
2.2 実験および結果
PCRによるプロモーターのGUSへの融合
PCR反応により以下の最小プロモーター配列をGUS遺伝子へ融合させた:
SEQ ID NO:7(「A42ショートレート(A42 short late)」)TCTTATTAAAAAACATATATAATAAATAACA
SEQ ID NO:8(「J6Rショートレート」)GATAAAAATTTAAAGTGTAAATATAACTAT
SEQ ID NO:9(「F6Rショートアーリー(F6R short early)」)AGAGTGTAGTATCATAGATAACTCTCTTCTATAAAAT
SEQ ID NO:10(「F6Rショートレート」)ATTGTTAAATAAATAATGGATAGTATAAAT
SEQ ID NO:11(「I2Rショートアーリー」)AGTAAAAAATATGTTAGGTTTACAAAA
SEQ ID NO:12(「I2Rショートレート」) ATTTATTTTCAGTTTTATTATACGCATAAAT。
【0067】
GUS遺伝子と融合させた推定最小プロモーターを全て、pBSKS+にクローニングし、塩基配列の決定を行った。
【0068】
推定最小プロモーターの機能の測定
推定最小プロモーターエレメントの機能性を解析するために、BHK細胞にMVA−BN(moi 1.0)を感染させ、対応するプラスミドでトランスフェクションを行った。24時間後に細胞を回収し、溶解して、GUS活性を測定した(図3)。
【0069】
ネガティブコントロール(MVA−BN感染細胞から抽出)は明らかにGUS活性を示さなかった(コントロール;平均吸光度0.00167)。よく特性が明らかにされている強力な合成Psプロモーターは、発現の24時間後に高量のGUSが検出可能であったので、非常に効率的(Ps;平均吸光度2.05267)であることが示された。MVA−BNゲノムの推定最小プロモーターエレメントに関して、F6Rショートアーリー、F6Rショートレート、I2Rショートアーリー、I2Rショートレート、A42RショートレートおよびJ6Rショートレートの全てが機能的なプロモーターであることが示された。
【0070】
全部で6個の機能的な最小プロモーターエレメントを単離した。2つは弱い初期転写に適しており(I2Rショートアーリー:平均吸光度0.06933;F6Rショートアーリー:平均吸光度0.189)、4つは異なるレベルの後期発現に適している(F6Rショートレート:平均吸光度:0.09833;I2Rショートレート:平均吸光度0.391;J6Rショートレート:平均吸光度:0.80167およびA42Rショートレート:平均吸光度2.07)。
【0071】
2.3 結論
異なる強さのプロモーターを単離することができ、多種多様な異なるプロモーターを利用できることが明確に示された。初期発現が好ましい場合には、最小プロモーターF6RショートアーリーまたはI2Rショートアーリーを使用するのが好ましい。後期発現が好ましい場合および初期発現を避けなければならない場合(例えば、初期発現に対する終結シグナルTTTTTNTを含む外来遺伝子)には、最小プロモーターエレメントF6Rショートレート、I2Rショートレート、J6RショートレートおよびA42Rショートレートを使用するのが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) SEQ ID NO:1〜6のいずれか1つのヌクレオチド配列、
(ii) SEQ ID:No.1〜6のいずれか1つに記載の配列のサブ配列、および
(iii) (i)または(ii)で定義される配列に対して1つまたはそれ以上のヌクレオチド置換、欠失および/または挿入を有する配列、
を含む群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたは該ヌクレオチド配列からなるプロモーターであって、ワクシニアウイルスプロモーターとして活性であり、および/またはワクシニアウイルス感染細胞において活性である、前記プロモーター。
【請求項2】
サブ配列がSEQ ID:7〜12を含む群から選択される、請求項1記載のプロモーター。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1つに記載のプロモーターおよびコード配列を含む発現カセットであって、コード配列の発現が前記プロモーターにより制御され、そしてこの発現カセットがワクシニアウイルスのゲノム中に天然に存在する発現カセットではない、前記発現カセット。
【請求項4】
コード配列が治療用タンパク質またはペプチド、抗原、抗原エピトープ、アンチセンスRNAまたはリボザイムをコードする、請求項3記載の発現カセット。
【請求項5】
請求項1または2のいずれか1つに記載のプロモーターまたは請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセットを含むDNA。
【請求項6】
請求項1または2のいずれか1つに記載のプロモーターまたは請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項7】
プラスミドベクターおよびウイルスベクターから選択される、請求項6記載のベクター。
【請求項8】
ウイルスベクターがワクシニアウイルスである、請求項7記載のベクター。
【請求項9】
ワクシニアウイルスが改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、好ましくは欧州細胞カルチャーコレクション(European Collection of Cell Cultures)(ECACC)に寄託番号V00083008で寄託されているMVA−BN株またはその誘導体、ECACCに寄託番号VA94012707で寄託されているMVA572株または寄託番号V00120707で寄託されているMVA 575株である、請求項8記載のベクター。
【請求項10】
請求項1または2のいずれか1つに記載のプロモーター、または請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセットがMVAゲノムの天然に存在する欠失部位に挿入される、請求項9記載のベクター。
【請求項11】
請求項1または2のいずれか1つに記載のプロモーター、または請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセットが、ウイルスゲノムの非必須部分またはウイルスゲノムの遺伝子間領域に挿入される、請求項9記載のベクター。
【請求項12】
ワクチンまたは薬剤としての請求項6〜11のいずれか1つに記載のベクター。
【請求項13】
請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセット、請求項5記載のDNAまたは請求項6〜11のいずれか1つに記載のベクターを含むワクチンまたは医薬調合物。
【請求項14】
少なくとも10TCID50(組織培養感染量)の請求項8〜11のいずれか1つに記載のウイルスベクターを含む、請求項13記載のワクチンまたは医薬調合物。
【請求項15】
第一接種(「初回免疫接種」)および第二接種(「追加免疫接種」)において、ウイルスベクターが治療的有効量で投与される、請求項14記載のワクチンまたは医薬調合物。
【請求項16】
ワクチンまたは薬剤の製造のために、請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセット、請求項5記載のDNAまたは請求項6〜11のいずれか1つに記載のベクターを使用する方法。
【請求項17】
請求項6〜11のいずれか1つに記載のベクター、請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセット、または請求項5記載のDNAを標的細胞へ導入することを含む、標的細胞へコード配列を導入する方法。
【請求項18】
請求項7〜11のいずれか1つに記載のウイルスベクターを宿主細胞へ感染させること、感染した宿主細胞を適当な条件下において培養すること、および前記宿主細胞により産出されるペプチドおよび/またはタンパク質および/またはウイルスを単離および/または濃縮することを含む、ペプチド、タンパク質および/またはウイルスを製造する方法。
【請求項19】
請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセット、請求項5記載のDNAまたは請求項7記載のプラスミドベクターを用いる細胞のトランスフェクション、ワクシニアウイルスの細胞への感染、適当な条件下での感染した宿主細胞の培養、および前記宿主細胞により産出されるペプチドおよび/またはタンパク質および/またはウイルスの単離および/または濃縮を含むペプチド、タンパク質および/またはウイルスの製造方法であって、細胞にワクシニアウイルスを感染させる段階が細胞のトランスフェクションの段階の前または後に行われる、前記製造方法。
【請求項20】
請求項1または2のいずれか1つに記載のプロモーター、請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセット、請求項5記載のDNAまたは請求項7〜11のいずれか1つに記載のウイルスベクターを含む細胞。
【請求項21】
コード配列の発現のために請求項1または2のいずれか1つに記載のプロモーターを使用する方法であって、コード配列がワクシニアウイルスにおいて天然にプロモーターと連結している配列ではない、前記使用方法。
【請求項22】
請求項3または4のいずれか1つに記載の発現カセットをベクターゲノムに挿入する段階を含む、請求項6〜11のいずれか1つに記載のベクターを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−67219(P2011−67219A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−285881(P2010−285881)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2006−540219(P2006−540219)の分割
【原出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(502240076)バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ (18)
【Fターム(参考)】