説明

改変抗IL−23抗体

【課題】改変IL−23p19抗体、ならびに炎症性、自己免疫性および増殖性障害を処置するためのその使用を提供すること。
【解決手段】ヒトIL−23p19に対する改変抗体、ならびにその使用、例えば、炎症性、自己免疫性および増殖性障害の処置における使用が提供されている。本発明は、ヒト化またはキメラ組換え抗体を含めた抗体またはその断片などの、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物であって、配列番号81〜89からなる群から選択されるCDRを少なくとも1個、2個または3個有する、少なくとも1個の抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片を含む結合性化合物を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、全般的にインターロイキン−23p19(IL−23p19)特異的な抗体およびその使用に関する。より具体的には、本発明は、ヒトIL−23p19を認識し、特に炎症性、自己免疫性および増殖性障害においてその活性を調節するヒト化抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系は、感染体、例えば細菌、多細胞生物およびウィルス、ならびに癌から個人を防護するように機能する。この系には、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好酸球、T細胞、B細胞、好中球などのリンパ球様および骨髄性細胞が幾種も含まれる。こうしたリンパ球様および骨髄性細胞は、サイトカインの名で知られるシグナル伝達タンパク質をしばしば産生する。免疫応答には、炎症、即ち全身または特定の身体部位における免疫細胞の蓄積が含まれる。感染体または異物に応答して、免疫細胞がサイトカインを分泌し、次いでサイトカインが、免疫細胞の増殖、発生、分化または移動を調節する。免疫応答は、例えば、自己免疫障害の場合のように過剰な炎症を伴うと、病的結末を生じ得る(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照されたい)。
【0003】
インターロイキン−12(IL−12)は、p35およびp40のサブユニットからなるヘテロ二量体分子である。研究によれば、IL−12は、ナイーブT細胞が、IFNγを分泌するTヘルパー1型CD4リンパ球に分化する上で、決定的な役割を演じることが示された。IL−12は、インビボでのT細胞依存性の免疫および炎症応答に必須であることも示された(例えば、非特許文献5を参照されたい)。IL−12受容体は、IL−12β1およびIL−12β2のサブユニットからなる。
【0004】
インターロイキン−23(IL−23)は、2個のサブユニット、IL−23に特有のp19およびIL−12と共通のp40からなるヘテロ二量体サイトカインである。p19サブユニットは、IL−6、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)およびIL−12のp35サブユニットと構造的に関係がある。IL−23は、IL−23R、およびIL−12受容体と共通のIL−12β1からなるヘテロ二量体受容体と結合することにより、シグナル伝達を媒介する。p40の遺伝子欠損の結果(p40ノックアウトマウス:p40KOマウス)は、p35KOマウスで認められる結果より重症であることが、幾つもの初期の研究で実証された。こうした結果の一部は、IL−23の発見、およびp40KOが、IL−12だけでなく、IL−23の発現も妨げるという知見によって、最終的に説明された(例えば、非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10を参照されたい)。
【0005】
p40KOマウスの使用を介した最近の研究では、IL−23、IL−12双方の遮断が、多様な炎症性および自己免疫性障害に対する有効な処置であることが示された。しかし、p40を介するIL−12の遮断は、微生物の日和見感染に対する感受性の増加などの様々な全身的結果を示すようである。
【0006】
抗体を治療剤としてインビボで使用する際の最も重大な制約は、その抗体の免疫原性である。大部分のモノクローナル抗体はげっ歯類に由来するので、人間に繰り返し使用すると、該治療剤抗体に対する免疫応答が発生する。このような免疫応答は、少なくとも治療有効性を失わせ、極限的には致命的になり得るアナフィラキシー応答を起こす。げっ歯類抗体の免疫原性を低下させようとする初期の試みでは、マウス可変領域をヒト定常領域と融合させたキメラ抗体が作製された。非特許文献11。しかし、ヒト可変領域およびマウス定常領域のハイブリッドを注射したマウスは、ヒト可変領域に対して強い抗抗体応答を発現するため、このようなキメラ抗体においてげっ歯類Fv領域全体を保持すれば、患者に望ましくない免疫原性をなお生じかねないことが示唆される。
可変ドメインの相補性決定領域(CDR)ループは、抗体分子の結合部位を含むと一般に考えられている。そのため、げっ歯類配列を更に最小限とするために、げっ歯類CDRループのヒトフレームワークへのグラフト(即ちヒト化)が試みられた。非特許文献12;非特許文献13。しかし、CDRループの交換では、元の抗体と同じ結合性を有する抗体が未だ均一には生じない。抗原結合親和性を維持するには、ヒト化抗体においてCDRループ支持に関与する残基であるフレームワーク残基(FR)の変化も必要である。非特許文献14。幾つものヒト化抗体構築物において、CDRのグラフトおよびフレームワーク残基の維持の使用が報告されてきたが、特定の配列が、所望の結合性および時には生物学的性質を有する抗体を生じるか否かを予測することは困難である。例えば、非特許文献15;非特許文献16;および非特許文献17を参照されたい。その上、大部分の従来研究では、動物の重鎖および軽鎖可変配列の代わりに異なるヒト配列が使用されたため、このような研究の予測性が疑わしいものとなった。既知の抗体の配列が使用されてきたか、より典型的な場合には、X線構造が既知の抗体であるNEWおよびKOL抗体が使用されてきた。例えば、上記非特許文献12、上記非特許文献13ら、および上記非特許文献16らを参照されたい。少数のヒト化構築物については、厳密な配列情報が報告されてきた。本発明は、改変IL−23p19抗体、ならびに炎症性、自己免疫性および増殖性障害を処置するためのその使用を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Abbasら(編)(2000年)、Cellular and Molecular Immunology、W. B. Saunders Co., Philadelphia, PA
【非特許文献2】Oppenheim and Feldman(編)(2001年)、Cytokine Reference、Academic Press, San Diego, CA
【非特許文献3】von Andrian and Mackay(2000年)、New Engl. J. Med.、343巻、1020〜1034頁
【非特許文献4】Davidson and Diamond(2001年)、New Engl. J. Med.、345巻、340〜350頁
【非特許文献5】Cuaら(2003年)、Nature 421巻、744〜748頁
【非特許文献6】Oppmannら(2000年)、Immunity、13巻、715〜725頁
【非特許文献7】Wiekowskiら(2001年)、J. Immunol.、166巻、7563〜7570頁
【非特許文献8】Parhamら(2002年)、J. Immunol.、168巻、5699〜708頁
【非特許文献9】Frucht(2002年)、Sci STKE、2002、E1〜E3
【非特許文献10】Elkinsら(2002年)、Infection Immunity、70巻、1936〜1948頁
【非特許文献11】Liuら(1987年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84巻、3439〜43頁
【非特許文献12】Jonesら(1986年)、Nature、321巻、522頁
【非特許文献13】Verhoeyen等(1988年)、Science、239巻、1534頁
【非特許文献14】Kabatら(1991年)、J. Immunol.、147巻、1709頁
【非特許文献15】Queenら(1989年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86巻、10029頁
【非特許文献16】Gormanら(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻、4181頁
【非特許文献17】Hodgsonら(1991年)、Biotechnology(NY)、9巻、421〜5頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、IL−23の遮断が、炎症、自己免疫および異常増殖を抑制するという観察に基づいている。
【0009】
本発明は、ヒト化またはキメラ組換え抗体を含めた抗体またはその断片などの、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物であって、配列番号81〜89からなる群から選択されるCDRを少なくとも1個、2個または3個有する、少なくとも1個の抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片を含む結合性化合物を包含する。一実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号81〜83からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL1、および配列番号84〜86からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL2、および配列番号87〜89からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL3を含んだ軽鎖可変ドメインを含む。
【0010】
一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号78〜80からなる群から選択されるCDRを少なくとも1個、2個または3個有する、少なくとも1個の抗体重鎖可変領域またはその結合性断片を含む。
【0011】
幾つかの実施形態では、該結合性化合物は、フレームワーク領域のアミノ酸配列が、完全に、または実質的に完全に、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列であるフレームワーク領域を含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号81〜89の配列、または場合によりその改変体を有する軽鎖CDRを少なくとも1個、2個または3個含む。一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号78〜80の配列、または場合によりその改変体を有する重鎖CDRを少なくとも1個、2個または3個含む。多様な実施形態では、該改変体は、各配列番号の配列に対して保存的に改変されたアミノ酸残基を最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれより多く含む。保存的なアミノ酸置換は、表1に示されている。
【0013】
他の実施形態では、該結合性化合物は、配列番号69〜77の配列からなる群から選択されるCDRを少なくとも1個、2個または3個有する、少なくとも1個の抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片を含む。一実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号69〜71からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL1、および配列番号72〜74からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL2、および配列番号75〜77からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL3を含んだ軽鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号66〜68からなる群から選択されるCDRを少なくとも1個、2個または3個有する、少なくとも1個の抗体重鎖可変領域またはその結合性断片を含む。
【0014】
他の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号69〜77の配列、またはその改変体を有する軽鎖CDRを少なくとも1個、2個または3個含む。別の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号69〜71またはその改変体からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL1と、配列番号72〜74またはその改変体からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL2と、配列番号75〜77またはその改変体からなる群から選択される少なくとも1個のCDRL3とを含んだ軽鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号66〜68の配列またはその改変体を有する重鎖CDRを少なくとも1個、2個または3個含む。多様な実施形態では、該改変体は、各配列番号の配列に対して保存的に改変されたアミノ酸残基を最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれより多く含む。
【0015】
更に別の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号2および4の残基43〜53、69〜75および108〜116からなる群から選択される軽鎖CDRを少なくとも1個、2個または3個、ならびに配列番号1および3の残基45〜54、69〜85および118〜123からなる群から選択される重鎖CDRを少なくとも1個、2個または3個含む。
【0016】
一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号2もしくは4、またはその改変体の残基20〜129の配列を有する抗体軽鎖可変ドメインを含む。一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号1もしくは3、またはその改変体の残基20〜134の配列を有する抗体重鎖可変ドメインを含む。多様な実施形態では、該改変体は、各配列番号の配列に対して保存的に改変されたアミノ酸残基を最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個もしくは50個、またはそれより多く含む。
【0017】
一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号2または4の成熟形態(残基20〜233)の配列を含む、または本質的にその配列からなる抗体軽鎖を含む。一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号1または3の成熟形態(残基20〜464)の配列を含む、または本質的にその配列からなる抗体重鎖を含む。
【0018】
一実施形態では、本発明の結合性化合物は、残基82〜95もしくは残基133〜140またはその両方を含むエピトープでヒトIL−23p19(配列番号29)に結合する。別の実施形態では、該IL−23p19結合性化合物は、残基E82、G86、S87、D88、T91、G92、E93、P94、S95、H106、P133、S134、Q135、P136、W137、R139およびL140の幾つかまたは全部、場合によりK83、F90およびL110を含むエピトープに結合する。多様な実施形態では、対象とする抗体のためのエピトープは、抗体・抗原複合体のX線結晶構造を取得し、IL−23p19上のどの残基が、対象とする該抗体上の残基の特定した距離内に入るかを判定することにより決定されるが、特定したその距離は、例えば4Åまたは5Åである。幾つかの実施形態では、エピトープは、IL−23p19配列に沿った隣接アミノ酸残基8個以上の長さであって、該残基の少なくとも50%、70%または85%が抗体の特定した距離内に入る長さと定義される。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、ヒトIL−23に結合するもので、配列番号2または4の残基20〜129との配列相同性が少なくとも95%、85%、80%、75%または50%の軽鎖可変ドメイン(V)を有する結合性化合物を提供する。一実施形態では、本発明は、ヒトIL−23に結合するもので、配列番号1または3の残基20〜134との配列相同性が少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の重鎖可変ドメイン(V)を有する結合性化合物を提供する。
【0020】
一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号2または4の成熟形態(即ち、残基20〜233)の配列を有する軽鎖を有する抗体を含む、または本質的にその抗体からなる。一実施形態では、該結合性化合物は、配列番号1または3の成熟形態(即ち、残基20〜464)の配列を有する重鎖を有する抗体を含む、または本質的にその抗体からなる。
【0021】
一実施形態では、本発明は、交差遮断アッセイにおいて、本発明の結合性化合物のヒトIL−23への結合を遮断できる抗体に関する。別の実施形態では、本発明は、IL−23媒介活性を遮断できる結合性化合物に関するが、そのような活性には、それだけに限らないが、その受容体への結合、またはT17細胞の増殖もしくは生存の促進が含まれる。
【0022】
幾つかの実施形態では、本発明の結合性化合物は、重鎖定常領域を更に含み、該重鎖定常領域は、γ1、γ2、γ3もしくはγ4のヒト重鎖定常領域、またはその改変体を含む。多様な実施形態では、軽鎖定常領域は、λまたはκヒト軽鎖定常領域を含む。
【0023】
多様な実施形態では、本発明の結合性化合物は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化または完全ヒト型の抗体またはその断片である。本発明は、結合性断片が、Fab、Fab’、Fab’−SH、Fv、scFv、F(ab’)およびダイアボディ(diabody)からなる群から選択される抗体断片であることも想定している。
【0024】
本発明は、IL−23に特異的な抗体(またはその結合性断片)をIL−23の生物活性を遮断する有効量で、それが必要な対象に投与することを含む、人間対象において免疫応答を抑制する方法を包含する。幾つかの実施形態では、IL−23に特異的な該抗体はヒト化またはキメラ抗体である。更なる実施形態では、該免疫応答は、関節炎、乾癬および炎症性腸疾患を含む炎症応答である。他の実施形態では、該免疫応答は、多発性硬化症、ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデスおよび糖尿病を含む自己免疫応答である。別の実施形態では、該免疫応答は癌に対する応答である。
【0025】
本発明は、追加の免疫抑制剤または抗炎症剤の投与も想定する。本発明の結合性化合物は、医薬として許容可能な担体または希釈剤と組み合わせて、該結合性化合物またはその結合性断片を含む組成物中に存在することができる。更なる実施形態では、該組成物は免疫抑制剤または抗炎症剤を更に含む。
【0026】
本発明は、本発明の結合性化合物の抗体実施形態のポリペプチド配列をコードする単離核酸を包含する。該核酸は、発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞が認識する配列を制御するために、該ベクター中に作動可能に連結されて存在することができる。該ベクターを含む宿主細胞も、核酸配列を発現する条件下で宿主細胞を培養し、それによりポリペプチドを産生し、そのポリペプチドを宿主細胞または培地から回収することを含むポリペプチドを産生する方法も、包含される。
多様な実施形態では、本発明は、本発明の結合性化合物を含む医薬に関する。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
ヒトIL−23に結合する結合性化合物であって、
配列番号81〜89からなる群から選択される少なくとも1つのCDR配列を含む、少なくとも1つの抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片と、
配列番号78〜80からなる群から選択される少なくとも1つのCDR配列を含む、少なくとも1つの抗体重鎖可変領域またはその結合性断片と
を含む結合性化合物。
(項目2)
前記抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片が、配列番号81〜89からなる群から選択される少なくとも2つのCDR配列を含み、
前記抗体重鎖可変領域またはその結合性断片が、配列番号78〜80からなる群から選択される少なくとも2つのCDR配列を含む
項目1に記載の結合性化合物。
(項目3)
前記抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片が、配列番号81〜89からなる群から選択される少なくとも3つのCDR配列を有し、
前記抗体重鎖可変領域またはその結合性断片が、配列番号78〜80からなる群から選択される少なくとも3つのCDR配列を有する
項目1に記載の結合性化合物。
(項目4)
配列番号81〜83からなる群からの少なくとも1つのCDRL1と、
配列番号84〜86からなる群からの少なくとも1つのCDRL2と、
配列番号87〜89からなる群からの少なくとも1つのCDRL3と
を含む、項目3に記載の結合性化合物。
(項目5)
配列番号69〜71からなる群からの少なくとも1つのCDRL1と、
配列番号72〜74からなる群からの少なくとも1つのCDRL2と、
配列番号75〜77からなる群からの少なくとも1つのCDRL3と
を含む、項目4に記載の結合性化合物。
(項目6)
配列番号69〜71からなる群からの少なくとも1つのCDRL1、もしくはその改変体、
配列番号72〜74からなる群からの少なくとも1つのCDRL2、もしくはその改変体、
配列番号75〜77からなる群からの少なくとも1つのCDRL3、もしくはその改変体を含む、抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片と、
配列番号66〜68のCDR配列、もしくはその改変体を含む、抗体重鎖可変領域またはその断片と
を含み、該改変体が、保存的に改変されたアミノ酸置換を5個まで含む
ヒトIL−23に結合する結合性化合物。
(項目7)
CDRL1が、配列番号69の配列またはその改変体を含み、
CDRL2が、配列番号72の配列またはその改変体を含み、
CDRL1が、配列番号75の配列またはその改変体を含む
項目6に記載の結合性化合物。
(項目8)
配列番号2もしくは4の残基20〜129の配列、またはその改変体を含む、抗体軽鎖可変領域またはその結合性断片と、
配列番号1もしくは3の残基20〜134の配列、またはその改変体を含む、抗体重鎖可変領域またはその結合性断片と
を含み、該改変体が、保存的に改変されたアミノ酸置換を20個まで含む
ヒトIL−23に結合する結合性化合物。
(項目9)
前記結合性化合物が、
配列番号2もしくは4の残基20〜129を含む軽鎖可変領域と、
配列番号1もしくは3の残基20〜134を含む重鎖可変領域と
を含む抗体またはその結合性断片である、項目8に記載の結合性化合物。
(項目10)
配列番号2の成熟型(残基20〜233)から本質的になる軽鎖と、
配列番号1の成熟型(残基20〜464)から本質的になる重鎖と
を含む、項目9に記載の結合性化合物。
(項目11)
配列番号29の残基82〜95または残基133〜140を含むエピトープで、ヒトIL−23に結合する結合性化合物。
(項目12)
配列番号29の残基82〜95および残基133〜140からなるエピトープに結合する、項目11に記載の結合性化合物。
(項目13)
配列番号29の残基E82、G86、S87、D88、T91、G92、E93、P94、S95、H106、P133、S134、Q135、P136、W137、R139およびL140を含むエピトープに結合する、項目12に記載の結合性化合物。
(項目14)
配列番号2または4の残基20〜129と、少なくとも90%相同性を有する軽鎖可変領域と、
配列番号1または3の残基20〜134と、少なくとも90%相同性を有する重鎖可変領域と
を含む、ヒトIL−23に結合する結合性化合物。
(項目15)
交差遮断アッセイにおいて、項目4に記載の結合性化合物のヒトIL−23に対する結合を遮断できる抗体。
(項目16)
IL−23媒介活性を遮断する、項目4に記載の結合性化合物。
(項目17)
項目4に記載の結合性化合物の軽鎖可変領域または重鎖可変領域の少なくとも一方をコードする、単離された核酸。
(項目18)
宿主細胞にトランスフェクトした際に、該宿主細胞により認識される制御配列に作動可能に連結された項目17に記載の核酸を含む、発現ベクター。
(項目19)
項目18に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(項目20)
前記核酸配列を発現する条件下で、項目19に記載の宿主細胞を培地中で培養し、それにより、軽鎖および重鎖可変領域を含むポリペプチドを作製するステップ、および
該宿主細胞または培地から該ポリペプチドを回収するステップ
を含む、ポリペプチドを作製する方法。
(項目21)
γ1ヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む重鎖定常領域を更に含み、該改変体が、保存的に改変されたアミノ酸置換を20個まで含む、項目4に記載の結合性化合物。
(項目22)
γ4ヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む重鎖定常領域を更に含み、該改変体が、保存的に改変されたアミノ酸置換を20個まで含む、項目4に記載の結合性化合物。
(項目23)
Fab、Fab’、Fab’−SH、Fv、scFv、F(ab’)およびダイアボディからなる群から選択される抗体断片である、項目4に記載の結合性化合物。
(項目24)
人間対象における免疫応答を抑制する方法であって、それが必要な対象にIL−23に特異的な抗体またはその結合性断片を、IL−23の生物活性を遮断するのに有効な量で投与することを含み、該抗体が項目4に記載の抗体である方法。
(項目25)
前記免疫応答が炎症性応答である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記対象が、関節炎、乾癬および炎症性腸疾患からなる群から選択される障害を有する、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記免疫応答が自己免疫性応答である、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記対象が、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスおよび糖尿病からなる群から選択される障害を有する、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記対象が癌を有する、項目24に記載の方法。
(項目30)
免疫抑制剤または抗炎症剤を投与することを更に含む、項目24に記載の方法。
(項目31)
医薬として許容可能な担体または希釈剤と組み合わせて、項目4に記載の結合性化合物を含む組成物。
(項目32)
免疫抑制剤または抗炎症剤を更に含む、項目31に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】図1A〜1Cは、マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの重鎖可変ドメイン配列の比較を示す。7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、1E10、30F11、34E4、5B12、6H4、9C9、11B10、30E1、33D2、20A9、22E9、29D5、21A10、33B12、10H11、19E9、10G8、3D7、39G2、35F12、49A10、34F9、および7D7の各クローンに対するCDRが、CDRコンセンサス配列同様に示されている。
【図1B】図1A〜1Cは、マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの重鎖可変ドメイン配列の比較を示す。7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、1E10、30F11、34E4、5B12、6H4、9C9、11B10、30E1、33D2、20A9、22E9、29D5、21A10、33B12、10H11、19E9、10G8、3D7、39G2、35F12、49A10、34F9、および7D7の各クローンに対するCDRが、CDRコンセンサス配列同様に示されている。
【図1C】図1A〜1Cは、マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの重鎖可変ドメイン配列の比較を示す。7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、1E10、30F11、34E4、5B12、6H4、9C9、11B10、30E1、33D2、20A9、22E9、29D5、21A10、33B12、10H11、19E9、10G8、3D7、39G2、35F12、49A10、34F9、および7D7の各クローンに対するCDRが、CDRコンセンサス配列同様に示されている。
【図2A】図2A〜2Cは、マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの軽鎖可変ドメイン配列の比較を示す。7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、1E10、30F11、34E4、5B12、6H4、9C9、11B10、33D2、20A9、22E9、29D5、21A10、33B12、10H11、19E9、10G8、3D7、39G2、35F12、49A10、34F9、および7D7の各クローンに対するCDRが示されている。クローン30E1に対しては、軽鎖可変ドメイン配列が示されていない。コンセンサス配列は、本明細書において軽鎖サブファミリー(a)、(b)および(c)と称する、軽鎖CDR配列のサブファミリー3種のそれぞれに対して示されている。これらの配列サブファミリーは、図2A〜2Cにおいて上端から下端まで表示されている。
【図2B】図2A〜2Cは、マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの軽鎖可変ドメイン配列の比較を示す。7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、1E10、30F11、34E4、5B12、6H4、9C9、11B10、33D2、20A9、22E9、29D5、21A10、33B12、10H11、19E9、10G8、3D7、39G2、35F12、49A10、34F9、および7D7の各クローンに対するCDRが示されている。クローン30E1に対しては、軽鎖可変ドメイン配列が示されていない。コンセンサス配列は、本明細書において軽鎖サブファミリー(a)、(b)および(c)と称する、軽鎖CDR配列のサブファミリー3種のそれぞれに対して示されている。これらの配列サブファミリーは、図2A〜2Cにおいて上端から下端まで表示されている。
【図2C】図2A〜2Cは、マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの軽鎖可変ドメイン配列の比較を示す。7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、1E10、30F11、34E4、5B12、6H4、9C9、11B10、33D2、20A9、22E9、29D5、21A10、33B12、10H11、19E9、10G8、3D7、39G2、35F12、49A10、34F9、および7D7の各クローンに対するCDRが示されている。クローン30E1に対しては、軽鎖可変ドメイン配列が示されていない。コンセンサス配列は、本明細書において軽鎖サブファミリー(a)、(b)および(c)と称する、軽鎖CDR配列のサブファミリー3種のそれぞれに対して示されている。これらの配列サブファミリーは、図2A〜2Cにおいて上端から下端まで表示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(詳細な説明)
付随する特許請求の範囲を含め、本明細書で使用する場合、「a」、「an」、「the」などの単語の単数形は、文脈上明らかにそうでないことを示していない限り、相当する複数への言及も包含する。下記の表7には、本願で使用される配列識別子の一覧が示されている。本明細書で引用した全ての参考文献は、個々の各刊行物、特許出願または特許が、参照により組み込まれることを明確かつ個別に示した場合と同程度に、参照により組み込まれる。
【0029】
I.定義
細胞または受容体に適用した場合の「活性化」、「刺激」および「処理」は、文脈上または明確にそうでないと示されない限り、同一の意味、例えば、リガンドによる細胞または受容体の活性化、刺激または処理の意味を有し得る。「リガンド」は、天然および合成のリガンド、例えば、サイトカイン、サイトカインの改変体、類縁体、ムテイン、および抗体由来の結合性組成物を包含する。「リガンド」は、小分子、例えば、サイトカインのペプチド模倣物質、および抗体のペプチド模倣物質も包含する。「活性化」とは、内部機構、ならびに外的因子または環境因子により調節される場合の細胞活性化を指すことができる。例えば細胞、組織、器官または生物の「応答」は、生化学的もしくは生理的挙動、例えば生物学的区画内での濃度、密度、接着性もしくは移動、遺伝子発現の割合、または分化の状態の変化を包含するが、その変化は、活性化、刺激もしくは処理、または遺伝的プログラミングなどの内部機構と相関している。
【0030】
ある分子の「活性」は、該分子のリガンドまたは受容体への結合と、触媒活性と、遺伝子発現または細胞のシグナル伝達、分化もしくは成熟化の刺激能と、抗原活性と、他分子の活性調節などを表現または示し得る。ある分子の「活性」は、細胞間相互作用、例えば接着を調節もしくは維持する上での活性、または細胞構造、例えば細胞膜もしくは細胞骨格を維持する上での活性も示し得る。「活性」は、比活性、例えば[触媒活性]/[mgタンパク質]もしくは[免疫活性]/[mgタンパク質]、生物学的区画内での濃度、またはそれに類することを意味することもできる。「増殖活性」は、例えば、正常な細胞分裂、ならびに癌、腫瘍、異形成、細胞の形質転換、転移および血管新生を促進する、またはそれに必要である、またはそれに特異的に関連する活性を包含する。
【0031】
動物、人間、実験対象、細胞、組織、器官または生体液に適用する場合の「投与」および「処置」とは、外来の医薬、治療、診断用の作用剤または組成物のその動物、人間、対象、細胞、組織、器官または生体液との接触を指す。「投与」および「処置」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究および実験の各方法を指すことができる。細胞の処置は、試薬の細胞との接触、ならびに細胞と接触している液との試薬の接触を包含する。「投与」および「処置」は、例えば、試薬、診断薬、結合性組成物、または別の細胞による、ある細胞のインビトロおよびエクスビボでの処置も意味する。人間、動物または研究対象に適用する場合の「処置」は、治療的処置、予防的または防止的手段、研究および診断への応用を指す。人間、動物もしくは研究対象、または細胞、組織もしくは器官に適用する場合の「処置」は、IL−23作動薬またはIL−23拮抗薬の人間もしくは動物対象、細胞、組織、生理的区画、または生理液との接触を包含する。「細胞の処置」は、IL−23作動薬またはIL−23拮抗薬が、例えば液相中またはコロイド相中でIL−23受容体(IL−23R/IL−12Rβ1ヘテロ二量体)と接触する状況だけでなく、作動薬または拮抗薬が細胞または受容体と接触しない状況も包含する。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」とは、所望の生物活性を示す任意形態の抗体またはその断片を指す。したがって、この用語は、できる限り広い意味で使用され、具体的には、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を包括する。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「IL−23p19結合性断片」または「その結合性断片」は、IL−23p19活性を阻害する生物活性をなお実質的に保持している、抗体の断片または誘導体を包含する。したがって、用語「抗体断片」またはIL−23p19結合性断片は、全長抗体の一部、一般にはその抗原結合領域または可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体;1本鎖抗体分子、例えばscFv;および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。通常、結合性の断片または誘導体は、IL−23p19阻害活性の少なくとも10%を保持している。好ましくは、結合性の断片または誘導体は、IL−23p19阻害活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%(またはそれより高い比率)を保持しているが、所望の生物効果を発揮するのに十分な親和性のある結合性断片は、いずれも有用となろう。IL−23p19結合性断片は、生物活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を含むことができることも意図している。
【0034】
本明細書で使用する場合の用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団、即ちその集団を構成する個々の抗体が、少量存在し得る自然発生の可能性がある突然変異を別とすれば、同一である集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原エピトープに対する。対照的に、従来型(ポリクローナル)抗体調製物は、様々なエピトープに対する(すなわち、これらに特異的な)多種の抗体を通常含む。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均質な抗体集団から得られたものとしての当該抗体の特徴を示すものであり、特定の任意の方法による該抗体の作製を要すると見なすべきではない。例えば、本発明に従って使用すべきモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975年)、Nature、256巻、495頁により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製してもよいし、または組換えDNA法によって作製してもよい(例えば、米国特許第4816567号を参照されたい)。該「モノクローナル抗体」は、例えばClacksonら(1991年)、Nature、352巻、624〜628頁、およびMarksら(1991年)、J. Mol. Biol.、222巻、581〜597頁に記載の技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーからも単離し得る。
【0035】
本発明におけるモノクローナル抗体は、具体的には「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を包含するが、その抗体では、所望の生物活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部分は、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一または相同である一方、該鎖(単数もしくは複数)の他部分は、別の種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにこのような抗体の断片における対応配列と同一または相同である(米国特許第4816567号、およびMorrisonら(1984年)、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA、81巻、6851〜6855頁)。
【0036】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域だけを含有する免疫機能的な免疫グロブリン断片である。幾つかの例では、2個以上のV領域がペプチドリンカーで共有結合で結合されることにより、2価ドメイン抗体を創製する。2価ドメイン抗体の2個のV領域は、同じまたは異なる抗原を標的にし得る。
【0037】
「2価抗体」は、抗原結合部位を2個含む。幾つかの例では、2個の結合部位は同じ抗原特異性を有する。しかし、2価抗体は二重特異性の場合もある(下記を参照されたい)。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「1本鎖Fv」または「scFv」抗体とは、抗体のVおよびVドメインを含み、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖に存在する抗体断片を指す。一般に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを、VおよびVドメインの間に更に含む。sFvの総説については、Pluckthun(1994年)、「THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES」、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag, New York、269〜315頁を参照されたい。
【0039】
本発明におけるモノクローナル抗体は、ラクダ型(camelized)単一ドメイン抗体も包含する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Muyldermansら(2001年)、Trends Biochem. Sci.、26巻、230頁;Reichmannら(1999年)、J. Immunol. Methods、231巻、25頁;国際公開第94/04678号、国際公開第94/25591号、米国特許第6005079号を参照されたい。一実施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるような改変部を有するVドメインを2個含む、単一ドメイン抗体を提供する。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「ダイアボディ」とは、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体断片であって、同一ポリペプチド鎖(V−VまたはV−V)中に軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む該断片を指す。短過ぎるために、同一連鎖上の2個の該ドメイン間で対合ができないリンカーの使用により、該ドメインは、別の連鎖の相補ドメインと対合せざるを得ず、2個の抗原結合部位を創出する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号、国際公開第93/11161号およびHolligerら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻、6444〜6448頁により詳細に記載されている。改変された抗体改変体の総説については、一般的にはHolliger and Hudson(2005年)、Nat. Biotechnol.、23巻、1126〜1136頁を参照されたい。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト化抗体」とは、ヒト抗体だけでなく非ヒト抗体(例えば、マウス)からの配列も含有する形態の抗体を指す。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の配列を最小限含有する。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全体または実質的に全体が、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全体または実質的に全体が、ヒト免疫グロブリン配列のものである、可変ドメインの少なくとも1個、通常は2個の実質的に全体を含んでいよう。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)も、通常はヒト免疫グロブリンのものを少なくとも一部分、場合により含んでいよう。接頭語「hum」は、ヒト化抗体(例えば、hum6H12)をげっ歯類親抗体(例えば、マウス6H12または「m6H12」)から区別するのに必要な場合、抗体クローンの名称に付加される。げっ歯類抗体のヒト化形態は、げっ歯類親抗体と同じCDR配列を一般に含んでいるが、該ヒト化抗体の親和性増加または安定性増加のために、一定のアミノ酸置換を含み得る。
【0042】
本発明の抗体は、エフェクター機能を変化させるために、改変(または遮断)されたFc領域を有する抗体も包含する。例えば、米国特許第5624821号、国際公開第2003/086310号、国際公開第2005/120571号、国際公開第2006/0057702号、Presta(2006年)、Adv. Drug Delivery
Rev.、58巻、640〜656号を参照されたい。このような改変を用いて、免疫系の多様な反応を促進または抑制することができ、診断および治療において有益な効果をもたらし得る。Fc領域の変更には、アミノ酸変化(置換、欠失および挿入)、糖鎖付加または糖鎖脱離、およびFcの多重付加が挙げられる。Fcに対する変化は、治療抗体における抗体半減期も変更することができ、半減期が延びると、投与頻度が減少し、利便の増大、使用量の減少が同時に得られよう。Presta(2005年)、J. Allergy Clin. Immunol.、116巻、731頁および734〜35頁を参照されたい。
【0043】
用語「完全ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンのタンパク質配列だけを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、またはマウス細胞由来のハイブリドーマ中で産生される場合、マウス糖鎖を含有し得る。同様に、「マウス抗体」とは、マウス免疫グロブリンの配列だけを含む抗体を指す。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」とは、抗原結合を担当する、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」もしくは「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)および89〜97(CDRL3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)および95〜102(CDRH3);Kabatら(1991年)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.」、Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, Md.)、および/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基(即ち、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);Chothia and Lesk(1987年)、J. Mol. Biol.、196巻、901〜917頁)を含む。本明細書で使用する場合、用語「フレームワーク」または「FR」残基とは、CDR残基として本明細書に定義した超可変領域以外の可変ドメイン残基を指す。残基の上記付番は、Kabat付番方式に関するものであり、付随する配列一覧表における配列付番と詳細には必ずしも一致しない。配列一覧表に関する配列付番をしている表2および3を参照されたい。
【0045】
「結合性化合物」とは、標的に結合できる分子、小分子、高分子、ポリペプチド、抗体またはその断片もしくは類縁体、あるいは可溶性受容体を指す。「結合性化合物」とは、標的に結合できる、分子複合体、例えば非共有結合複合体と、イオン化分子と、共有結合的または非共有結合的修飾分子、例えばリン酸化、アシル化、架橋、環化または制限切断で修飾された該分子とをまた示し得る。抗体に関して使用する場合、用語「結合性化合物」は抗体もその結合性断片も指す。「結合」とは、結合性組成物の標的との会合を指し、結合性組成物が溶液に溶解または懸濁できる場合には、その会合の結果、結合性組成物の通常のブラウン運動は減少する。「結合性組成物」とは、安定剤、賦形剤、塩、緩衝剤、溶媒または添加剤と組み合わせた、標的に結合できる分子、例えば結合性化合物を指す。
【0046】
「保存的な改変改変体」または「保存的置換」とは、当業者に公知であり、一般に産生分子の生物活性を変えずになし得る、アミノ酸の置換を指す。当業者は、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は、生物活性を実質的に変化させないことを認識している(例えば、Watsonら、「Molecular Biology of the Gene」、The Benjamin/Cummings Pub. Co.、224頁(第4版、1987年)を参照されたい)。このような例示的置換は、以下の通り表1に示した置換に従って行うのが好ましい。
【0047】
【化1】

本明細書および特許請求の範囲を通して使用する場合の用語、「から本質的になる(consists essentially of)」または「consist essentially of」、「consisting essentially of」などの変形は、列挙した任意の要素または要素群を含むことと、列挙した要素と性質が類似または相違し、特定した投与計画、方法または組成物の基本的または新規な性質を実質的に変化させない他の要素の適宜含むこととを示す。非限定例として、列挙アミノ酸配列から本質的になる結合性化合物は、該結合性化合物の性質に実質的に影響しない1個以上のアミノ酸残基の置換を含め、1個以上のアミノ酸も含み得る。
【0048】
「有効量」は、病状の症候または兆候を軽減または予防するのに十分な量を包含する。有効量は、診断の実現または促進に十分な量も意味する。特定の患者または動物対象にとっての有効量は、処置している病状、患者の全般的健康、投与法経路および投与量、副作用の重度などの要因に応じて変化し得る(例えば、Netti他に発行された米国特許第5888530号を参照されたい)。有効量は、有意な副作用または毒作用を回避する最大の投与量または投与処方でもよい。その効果によって、診断の指標またはパラメーターが、100%を健常対象が示す診断パラメーターと定義した場合に、少なくとも5%、普通は少なくとも10%、より普通には少なくとも20%、最も普通には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、最も理想的には少なくとも90%改善されよう(例えば、Maynardら(1996年)、「A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice」、Interpharm Press, Boca Raton, FL;Dent(2001年)、「Good Laboratory and Good Clinical Practice」、Urch Publ., London, UKを参照されたい)。
【0049】
「外因性」とは、文脈に応じて、生物、細胞または人体の外部で産生される物質を指す。「内因性」とは、文脈に応じて、細胞、生物または人体の内部で産生される物質を指す。
【0050】
「免疫病状」または「免疫障害」は、例えば、病的炎症、炎症性障害、および自己免疫性障害または疾患を包含する。「免疫病状」は、免疫系による根絶に抗する感染症、腫瘍および癌を含め、感染症、持続性感染症、および癌、腫瘍、血管新生などの増殖性病状も指す。「癌性病状」には、例えば、癌、癌細胞、腫瘍、血管新生、および異形成などの前癌性病状が含まれる。
【0051】
「炎症性障害」は、その病状が、例えば、免疫系の細胞の個数変化、移動速度の変化、または活性化変化から、全体的または部分的に生じる障害または病的状態を意味する。免疫系の細胞には、例えば、T細胞、B細胞、単球もしくはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、小グリア、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫に特異的に関連する他の任意の細胞、例えば、サイトカイン産生内皮もしくは上皮細胞が含まれる。
【0052】
「IL−17産生細胞」とは、古典的なTH1型T細胞でも古典的なTH2型T細胞でもない、T17細胞と呼称されるT細胞を意味する。T17細胞は、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cua and Kastelein(2006年)、Nat. Immunol.、7巻、557〜559頁;Tato and O’Shea(2006年)、Nature、441巻、166〜168頁;Iwakura and Ishigame(2006年)、J. Clin. Invest.、116巻、1218〜1222頁において、より詳細に考察されている。「IL−17産生細胞」は、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0219150号の表10Bの遺伝子またはポリペプチド(例えば、マイトジェン応答Pタンパク質、ケモカインリガンド2、インターロイキン−17(IL−17)、PAR関連転写因子、および/またはサイトカインシグナル伝達抑制剤3)を発現するT細胞も意味し、それによると、IL−23作動薬での処置による発現量は、IL−12作動薬での処置より大きく、その場合の「より大きい」とは以下のように定義される。IL−23作動薬による発現量は、IL−12処置による発現量より、普通少なくとも5倍大きく、典型的には少なくとも10倍大きく、より典型的には少なくとも15倍大きく、最も典型的には少なくとも20倍大きく、好ましくは少なくとも25倍大きく、最も好ましくは少なくとも30倍大きい。発現量は、例えば、実質的に純粋なIL−17産生細胞の集団の処置により測定することができる。
【0053】
その上、「IL−17産生細胞」は、細胞発生または細胞分化の経路において、前記定義したようなIL−17産生細胞への分化にひたすら向かう先駆または前駆細胞も包含する。IL−17産生細胞に対する先駆または前駆細胞は、流入領域リンパ節(DLN)中に見出すことができる。加えて、「IL−17産生細胞」は、例えばホルボールエステル、イオノフォアおよび/または発癌剤により活性化されたか、更に分化されたか、保存されたか、凍結されたか、乾燥されたか、不活性化されたか、例えばアポトーシス、タンパク質分解または脂質酸化により部分分解されたか、あるいは例えば組換え技術で改変された、前記定義したようなIL−17産生細胞も包含する。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「単離核酸分子」とは、同定され、しかも抗体核酸の天然源では普通結合している、少なくとも1種の交雑核酸分子から分離された核酸分子を指す。単離核酸分子は、自然に見出される形態または状況とは異なるものである。したがって、単離核酸分子は、天然細胞中に存在する際の核酸分子とは識別される。しかし、単離核酸分子は、細胞の中に含まれる核酸分子を包含し、ここで、例えば、その核酸分子が天然細胞の染色体部位と異なる部位にある抗体を普通に発現する。
【0055】
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物中で作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば原核細胞に適当な制御配列は、プロモーター、場合によりオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0056】
核酸は、別の核酸配列と機能的に関係するように配置された場合、「作動可能に連結」される。例えば、プレ配列または分泌リーダー用のDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、該ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結されており、またはプロモーターもしくはエンハンサーは、コード配列の転写に影響する場合、該コード配列に作動可能に連結されており、またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置取りしていれば、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結」されるとは、連結されているDNA配列が、隣接しており、分泌リーダーの場合、隣接し、かつ同読取位相内にある。しかし、エンハンサーは隣接している必要がない。連結は、都合良い制限酵素部位での連結反応によって実現する。このような部位が存在しない場合、従来方式に従って合成オリゴヌクレオチドのアダプターまたはリンカーが使用される。
【0057】
本明細書で使用する場合、「細胞」、「細胞系」および「細胞培養」の表現は、互換的に使用され、そのような名称は全て子孫を包含する。したがって、「形質転換体」および「形質転換細胞」という語句は、初代対象細胞と、植え継ぎ数に関わりなくその細胞由来の培養物とを包含する。意図的または偶発的な突然変異のために、子孫全てのDNA分が厳密に同一とは言えない場合があることも理解される。当初の形質転換細胞に対してスクリーニングしたものと同じ機能または生物活性を有する変異子孫も、包含される。個別の名称を意図している場合は、文脈からそのことが明らかとなろう。
【0058】
本明細書で使用する場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」とは、RNAおよび/またはDNAであれ、微量の核酸の特定片が、例えば米国特許第4683195号に記載のように増幅される手順または技法を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーを設計できるように、対象領域の末端からの、またはそれを超える配列情報が利用できる必要があり、こうしたプライマーは、増幅すべき鋳型と反対のストランドと、配列が同一または類似となろう。2種のプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅された物質の末端と一致させることができる。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、および全細胞RNAから転写したcDNA、バクテリオファージまたはプラスミド配列などを増幅するために、使用することができる。全般的には、Mullisら(1987年)、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol.、51巻、263頁;Erlich編(1989年)、「PCR TECHNOLOGY」(Stockton Press, N.Y.)を参照されたい。本明細書で使用する場合、PCRは、プライマーとしての既知の核酸および核酸ポリメラーゼの使用により、特定片の核酸を増幅または産生することを含む、核酸試験試料を増幅する核酸ポリメラーゼ反応法の一例であるが、唯一の例ではないと見なされる。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「生殖系列配列」とは、非再配列免疫グロブリンDNA配列中の配列を指す。適当な任意の非再配列免疫グロブリンDNA源を使用し得る。
【0060】
「阻害剤」および「拮抗薬」、または「活性化剤」および「作動薬」とは、それぞれ阻害性分子または活性化分子、例えばリガンド、受容体、補因子、遺伝子、細胞、組織または器官を、例えば活性化する分子を指す。例えば遺伝子、受容体、リガンドまたは細胞の調節剤は、その遺伝子、受容体、リガンドまたは細胞の活性を変化させる分子であり、その活性は、調節特性において活性化、抑制または変更することができる。調節剤は、単独で作用してもよいし、または補因子、例えばタンパク質、金属イオンもしくは小分子を使用してもよい。阻害剤は、活性化を減少し、遮断し、防止し、遅延させ、例えば遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体または細胞を不活性化し、減感作し、または下方調節する化合物である。活性化剤は、活性化を増加し、活性化させ、促進し、強化し、例えば遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体または細胞を感作し、または上方調節する化合物である。阻害剤は、構成的活性を低減、遮断または不活性化する組成物とも定義し得る。「作動薬」は、標的との相互作用によって、該標的の活性化の増加を惹起または促進する化合物である。「拮抗薬」は、作動薬の作用に抗する化合物である。拮抗薬は、作動薬の活性を防止、低減、抑制または中和する。拮抗薬は、作動薬が特定されていない場合でも、標的、例えば標的受容体の構成的活性を防止、抑制または低減することもできる。
【0061】
例えば、抑制の程度を調べるために、所与の、例えばタンパク質、遺伝子、細胞または生物を含む試料または分析物を、潜在的な活性化剤または阻害剤で処理し、該作用剤を含まない対照試料と比較する。対照試料、即ち作用剤で処理していない試料に、100%の相対活性値を割り当てる。対照に比した活性値が約90%以下、典型的には85%以下、より典型的には80%以下、最も典型的には75%以下、一般的には70%以下、より一般的には65%以下、最も一般的には60%以下、典型的には55%以下、普通には50%以下、より普通には45%以下、最も普通には40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更により好ましくは25%以下、最も好ましくは25%未満である場合、抑制が実現される。対照に比した活性値が約110%、一般的には少なくとも120%、より一般的には少なくとも140%、最も一般的には少なくとも160%、頻繁には少なくとも180%、より頻繁には少なくとも2倍、最も頻繁には少なくとも2.5倍、普通には少なくとも5倍、より普通には少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍、最も好ましくは40倍より高い場合、活性化が実現される。
【0062】
活性化または抑制の終点は、以下の通りにモニターすることができる。例えば細胞、生理液、組織、器官、および動物または人間対象の処置に対する活性化、抑制および応答は、終点によってモニターすることができる。該終点は、例えば、炎症兆候、発癌性、あるいは細胞の脱顆粒、またはサイトカイン、毒性酸素もしくはプロテアーゼの放出などの分泌の所定量または所定率(%)を含み得る。該終点は、例えば、イオンの流束または輸送、細胞移動、細胞接着、細胞増殖、転移能、細胞分化、および表現型の変化、例えば炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期もしくは転移に関わる遺伝子の発現変化の所定量を含み得る(例えば、Knight(2000年)、Ann. Clin. Lab. Sci.、30巻、145から158頁;Hood and Cheresh(2002年)、Nature Rev. Cancer、2巻、91〜100頁;Timmeら(2003年)、Curr. Drug Targets、4巻、251〜261頁;Robbins and Itzkowitz(2002年)、Med. Clin. North Am.、86巻、1467〜1495頁;Grady and Markowitz(2002年)、Annu. Rev. Genomics Hum. Genet.、3巻、101〜128頁;Bauerら(2001年)、Glia、36巻、235〜243頁;Stanimirovic and Satoh(2000年)、Brain
Pathol.、10巻、113〜126頁を参照されたい)。
【0063】
抑制の終点は、一般的に対照の75%以下、好ましくは対照の50%以下、より好ましくは対照の25%以下、最も好ましくは対照の10%以下である。一般的に、活性化の終点は、対照の少なくとも150%、好ましくは対照の少なくとも2倍、より好ましくは対照の少なくとも4倍、最も好ましくは対照の少なくとも10倍である。
【0064】
「リガンド」とは、受容体の作動薬または拮抗薬として作用できる、例えば、小分子、ペプチド、ポリペプチド、および膜会合もしくは膜結合分子、またはその複合体を指す。「リガンド」は、作動薬、拮抗薬のいずれでもなく、受容体に結合できる作用剤も包含する。その上、「リガンド」は、例えば、化学法または組換え法により膜結合リガンドの溶解型に変化した膜結合リガンドも包含する。慣例的に、リガンドが第1の細胞上に膜結合している場合、受容体は普通第2の細胞上に出現する。第2の細胞は、第1の細胞と同じ独自性でも、異なる独自性を有してもよい。リガンドまたは受容体は、完全に細胞内にあってもよく、即ち、サイトゾル、核、または他の何らかの細胞内区画に存在してもよい。リガンドまたは受容体は、その所在を変える、例えば、細胞内区画から形質膜の外面に変え得る。リガンドおよび受容体の複合体は、「リガンド・受容体複合体」と称する。リガンドおよび受容体がシグナル伝達経路に関与する場合、リガンドが上流位置に出現し、受容体がシグナル伝達経路の下流位置に出現する。
【0065】
「小分子」は、毛包の生理機能および障害を処置するために与えられる。「小分子」は、10kD未満、通常は2kD未満、好ましくは1kD未満の分子量を有する分子と定義される。小分子には、それだけに限らないが、無機分子、有機分子、無機成分を含有する有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物質および抗体模倣物質が含まれる。治療薬として、小分子は、大分子より細胞に透過し易く、分解し難く、免疫応答を誘発し難い。抗体およびサイトカインのペプチド模倣物質などの小分子、ならびに小分子毒素については、記載がある(例えば、Cassetら(2003年)、Biochem. Biophys. Res. Commun.、307巻、198〜205頁;Muyldermans(2001年)、J. Biotechnol.、74巻、277〜302頁;Li(2000年)、Nat. Biotechnol.、18巻、1251〜1256頁;Apostolopoulosら(2002年)、Curr. Med. Chem.、9巻、411〜420頁;Monfardiniら(2002年)、Curr. Pharm. Des.、8巻、2185〜2199頁;Dominguesら(1999年)、Nat. Struct. Biol.、6巻、652〜656頁;Sato and Sone(2003年)、Biochem. J.、371巻、603〜608頁;Stewart他に発行された米国特許第6326482号を参照されたい)。
【0066】
リガンド/受容体、抗体/抗原、または他の結合対に言及する際の「特異的に」または「選択的に」結合することは、タンパク質および他の生体由来物質の異種集団中でそのタンパク質の存在を決定付ける結合反応を示す。したがって、指定した条件下で、指定のリガンドは、特定の受容体に結合し、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で結合しない。
【0067】
想定した方法の抗体、または抗体の抗原結合部位に由来する結合性組成物は、無関係の抗原との親和性より、少なくとも2倍大きい、好ましくは少なくとも10倍大きい、より好ましくは少なくとも20倍大きい、最も好ましくは少なくとも100倍大きい親和性でその抗原に結合する。好ましい実施形態では、該抗体は、例えばスカッチャード分析(Munsenら(1980年)、Analyt. Biochem.、107巻、220〜239頁)で決定した場合、約10リットル/モルより大なる親和性を有しよう。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「免疫調節剤」とは、免疫応答を抑制または調節する天然または合成の作用剤を指す。免疫応答は、体液性、細胞性いずれの応答もあり得る。免疫調節剤は、免疫抑制剤または抗炎症剤を包含する。
【0069】
本明細書で使用する場合の「免疫抑制剤(immunosuppressive agent)」、「免疫抑制薬」、または「免疫抑制剤(immunosuppressant)」は、免疫系の活性を抑制または防止するための免疫抑制治療に使用される治療薬である。臨床的には、該免疫抑制剤は、移植した器官および組織(例えば、骨髄、心臓、腎臓、肝臓)の拒絶の予防、および/または自己免疫疾患もしくは自己免疫性の非常に高い疾患(例えば、関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症)の処置に使用される。免疫抑制薬は、以下の4群:グルココルチコイド細胞増殖抑制剤、抗体(生物学的応答調節剤またはDMARDを含む)、イムノフィリンに作用する薬物、増殖性障害の処置に使用される既知の化学療法剤を含めた他の薬物に分類することができる。特に多発性硬化症に対しては、本発明の抗体は、コパキソンの名で知られている新部類のミエリン結合性タンパク質類似治療薬と共に、投与することができる。
【0070】
「抗炎症剤」または「抗炎症薬」は、ステロイド性、非ステロイド性の両種治療薬を表わすために使用される。コルチコステロイドとしても知られているステロイドは、副腎が天然に産生するホルモンであるコルチゾールと近似した薬物である。ステロイドは、全身性血管炎(血管の炎症)、筋炎(筋肉の炎症)などの特定の炎症状態に対する主治療薬として使用される。ステロイドは、関節リウマチ(両体側の関節中に発現する慢性炎症性関節炎)、全身性エリテマトーデス(免疫系異常機能が原因の全身性疾患)、シェーグレン症候群(ドライアイおよび口渇を起こす慢性障害)などの炎症状態の処置にも選択的に使用し得るとも思われる。
【0071】
普通NSAIDと略称される非ステロイド抗炎症薬は、鎮痛、解熱および抗炎症作用を有する薬物であり、即ち痛み、熱および炎症を和らげる。用語「非ステロイド」は、こうした薬物をステロイドと区別するために使用され、該薬物は、(他の広範囲な作用がある中で)類似のエイコサノイド抑制抗炎症作用を有する。NSAIDの適応は、一般に以下の状態:関節リウマチ、骨関節炎、炎症性関節症(例えば、強直性関節炎、乾癬性関節炎、ライター症候群)、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛および偏頭痛、術後疼痛、炎症および組織傷害による軽度から中度の疼痛、発熱、および腎疝痛の症状緩和である。NSAIDには、サリチル酸類、アリールアルカン酸(arylalkanoic acid)、2−アリールプロピオン酸(プロフェン)、N−アリールアントラニル酸(フェナミン酸)、オキシカム、コキシブおよびスルホンアニリドが含まれる。
【0072】
II.概説
本発明は、改変抗IL−23抗体、ならびに炎症性、自己免疫性および増殖性傷害を処置するためのその使用を提供する。
【0073】
幾種ものサイトカインが、神経障害の病理または修復において役割を果たしている。IL−6、IL−17、インターフェロン−γ(IFNγ)、および顆粒球コロニー刺激因子(GM−CSF)は、多発性硬化症に関係してきた(Matuseviciusら(1999年)、Multiple Sclerosis、5巻、101〜104頁;Lockら(2002年)、Nature Med.、8巻、500〜508頁)。IL−1α、IL−1β、およびトランスフォーミング増殖因子−β1(TGF−β1)は、ALS、パーキンソン病およびアルツハイマー病において役割を演じている(Hoozemansら(2001年)、Exp. Gerontol.、36巻、559〜570頁;Griffin and Mrak(2002年)、J. Leukocyte Biol.、72巻、233〜238頁;Ilzeckaら(2002年)、Cytokine、20巻、239〜243頁)。TNF−α、IL−1β、IL−6、IL−8、インターフェロン−γ(IFNγ)、およびIL−17は、脳虚血に対する応答を調節するらしい(例えば、Kostulasら(1999年)、Stroke、30巻、2174〜2179頁;Liら(2001年)、J. Neuroimmunol.、116巻、5〜14頁を参照されたい)。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、ALSに関係している(Cleveland and Rothstein(2001年)、Nature、2巻、806〜819頁)。
【0074】
炎症性腸障害、例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病および過敏性腸症候群は、免疫系の細胞およびサイトカインにより媒介される。例えば、クローン病はIL−12およびIFNγの増加と関連しているのに対し、潰瘍性大腸炎は、IL−5、IL−13およびトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の増加と関連している。IL−17の発現量も、クローン病および潰瘍性大腸炎において増加し得る(例えば、Podolsky(2002年)、New Engl. J. Med.、347巻、417〜429頁;Bouma and Strober(2003年)、Nat. Rev.
Immunol.、3巻、521〜533頁;Bhanら(1999年)、Immunol. Rev.、169巻、195〜207頁;Hanauer(1996年)、New Engl. J. Med.、334、841〜848頁;Green(2003年)、The Lancet、362巻、383〜391頁;McManus(2003年)、New Engl. J. Med.、348巻、2573〜2574頁;Horwitz and Fisher(2001年)、New Engl. J. Med.、344巻、1846〜1850頁;Andohら(2002年)、Int. J. Mol. Med.、10巻、631〜634頁;Nielsenら(2003年)、Scand. J. Gastroenterol.、38巻、180〜185頁;Fujinoら(2003年)、Gut、52巻、65〜70頁を参照されたい)。
【0075】
皮膚、関節、CNSの炎症性疾患、ならびに増殖性障害は、類似の免疫応答を誘発し、したがって、IL−23の遮断により、全身性感染症に対する宿主の克服能を含むことなく、こうした免疫媒介炎症性障害が抑制されるはずである。IL−23に拮抗すれば、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、およびアトピー性皮膚炎に付随する炎症が緩和されるはずである。IL−23阻害剤を使用すると、増殖性障害、例えば癌、および自己免疫性障害、例えば多発性硬化症、I型糖尿病およびSLEも抑制されよう。こうした多様な障害におけるIL−23の記述は、以下のPCT出願公開、即ち、その全てが参照により本明細書に組み込まれる国際公開第04/081190号、国際公開第04/071517号、国際公開第00/53631号、および国際公開第01/18051号に見出すことができる。
【0076】
IL−23のp19サブユニットは、造血サイトカインの「長鎖」ファミリーの一員であり(Oppmannら(2000年)上記)、A、B、CおよびDと称する4個の充填α−ヘリックスを含み、上向き−上向き−下向き−下向きのトポロジーを有する。4個の該ヘリックスは3個のポリペプチドループで接続されている。A−B、C−Dのループは、平行ヘリックスを接続しているので、相対的に長くかたどられている。短いB−Cループは、BおよびCの逆平行ヘリックスを接続している。IL−23のp19サブユニットは、らせん状サイトカインのIL−6ファミリーの一員である。このファミリーのサイトカインは、3個の保存エピトープを介して対応(cognate)受容体に結合する(部位I、IIおよびIII;Bravo and Heath(2000年)、EMBO J.、19巻、2399〜2411頁)。p19サブユニットは、サイトカイン受容体サブユニット3個と相互作用し、コンピテント(competent)なシグナル伝達複合体を形成する。細胞内に発現すると、p19サブユニットは、IL−12と共通のp40サブユニットと先ず複合体を形成する。前記のように、p19p40複合体は、ヘテロ二量体タンパク質として細胞から分泌され、IL−23と呼称される(例えば、上記のOppmannらを参照されたい)。IL−23シグナルの伝達に必要な細胞性受容体複合体は、IL−6/IL−12サイトカインファミリーのtallシグナル伝達受容体サブユニットの2構成員、IL−23特異的IL−23R(例えば、上記のParhamらを参照されたい)と、IL−12と共通のIL−12Rb1とからなる。
【0077】
「長鎖」サイトカイン/受容体認識の構造的基礎を洞察することにより、サイトカイン−受容体複合体の形成時にタンパク質表面の大面積が埋め込まれているが、その相互作用の親和性は、結合界面の中心にエネルギーの「ホットスポット」を形成する少数で、しばしば密集したアミノ酸残基により支配されることが示された。大きなタンパク質間界面の結合エネルギーを支配する残基の正体は、「機能的エピトープ」と呼ばれてきた。その結果、この相互作用の親和性(したがって生物学的特異性)は、リガンドおよび受容体の機能的エピトープの構造的相補性によって規定される。詳細な変異原性研究によって、サイトカインおよび受容体の機能的エピトープを構成する最も重要な残基は、トリプトファンなどの非極性側鎖、非極性側鎖の脂肪族成分、ポリペプチド骨格のいずれかが関与する疎水性接触部であることが示された。この非極性「コア」は、結合エネルギーにとって重要性がより低い、輪状(halo)の極性残基で包囲されている。速度論的研究によれば、機能的エピトープの主要な役割は、該複合体の解離速度を減少させることにより、タンパク質間相互作用を安定化させることであることが示されている。サイトカインと受容体との最初の接触は、多数の不安定な接触部を生じるタンパク質表面のランダム拡散または「転がり」により支配されることが示唆されてきた。次いで、受容体およびリガンドの機能的エピトープが係合すると、該複合体は安定化される(例えば、上記のBravo and Heathを参照されたい)。
【0078】
III.IL−23特異抗体の産生
モノクローナル抗体を産生する適当な任意の方法が使用できる。例えば、IL−23ヘテロ二量体の連結型もしくは非連結(例えば、天然)型、またはその断片で受容者を免疫してもよい。適当な任意の免疫法が使用できる。このような方法は、アジュバント、他の免疫賦活剤、反復追加免疫、および1つ以上の免疫経路の使用を包含することができる。
【0079】
本明細書に開示する組成物および方法のp19サブユニット特異的な非ヒト抗体の産生用免疫原として、適当な任意のIL−23源を使用することができる。このような形態には、それだけに限らないが、連結型および天然ヘテロ二量体を含めた全タンパク質、ペプチド(単数もしくは複数)およびエピトープが挙げられ、こうしたものは、当技術分野で公知の組換え、合成、化学的または酵素的分解の各手段により産生される。
【0080】
生物活性な抗体の産生に十分な抗体を産生するために、任意形態の抗原を使用することができる。したがって、誘発性抗原は、単独の、または当技術分野で公知の免疫原性増強剤の1種もしくは複数と併用した、単エピトープ、多重エピトープまたは全タンパク質であってもよい。該誘発性抗原は、単離された全長タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば、抗原の少なくとも一部分をトランスフェクトした細胞を免役している)、または可溶性タンパク質(例えば、タンパク質の細胞外ドメイン部だけを免役している)であってもよい。該抗原は遺伝子改変細胞中で産生してもよい。該抗原をコードするDNAは、ゲノム性、非ゲノム性(例えばcDNA)を問わず、細胞外ドメインの少なくとも一部分をコードする。本明細書で使用する場合、用語「部分」とは、適宜に、対象とする抗原の免疫原性エピトープを構成するための最小数のアミノ酸または核酸を指す。対象とする細胞の形質転換に適切な任意の遺伝子ベクターを用いてもよく、それには、アデノウィルスベクター、プラスミド、および陽イオン脂質などの非ウィルスベクターが含まれるが、それだけに限らない。
【0081】
IL−23を阻害する所望の生物学的特性を有する抗体を誘発させるために、適切な任意の方法を使用することができる。マウス、げっ歯類、霊長類、人間などの様々な哺乳類宿主からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが、望ましい。そのようなモノクローナル抗体を調製する技法の解説は、例えば、Stitesら(編)、「BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY (4th ed.)」、Lange
Medical Publications, Los Altos, CAおよびその中に引用された参考文献;Harlow and Lane(1988年)、「ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL」、CSH Press;Goding(1986年)、「MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE (2nd ed.)」、Academic Press, New York, NYに見出し得る。したがって、モノクローナル抗体は、当業の研究者に周知の多様な技法により取得し得る。典型的には、所望の抗原で免疫した動物の脾臓細胞が、通常、骨髄細胞との融合により不死化される。Kohler and Milstein(1976年)、Eur. J. Immunol.、6巻、511〜519頁を参照されたい。不死化の代替法には、Epstein Barrウィルス、癌遺伝子もしくはレトロウィルスを用いる形質転換、または当技術分野で公知の他の方法が含まれる。例えば、Doyleら(編、1994年および定期的補遺)、「CELL AND TISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES」、John Wiley and Sons, New York, NYを参照されたい。単一の不死化細胞から生じたコロニーは、該抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体産生について、スクリーニングされ、このような細胞が産生するモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹腔内注入を含めた多様な技法により向上させ得る。あるいは、例えばHuseら(1989年)、Science、246巻、1275〜1281頁により概説された一般手順に従って、ヒトB細胞のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合性断片をコードするDNA配列を単離してもよい。
【0082】
他の適当な技法には、ファージまたは類似のベクターにおける抗体ライブラリーの選択が含まれる。例えば、Huseら、Science、246巻、1275〜1281頁(1989年)およびWardら、Nature、341巻、544〜546頁(1989年)を参照されたい。本発明のポリペプチドおよび抗体は、キメラまたはヒト化抗体を含め、改変して、または改変せずに使用してもよい。該ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルをもたらす物質を共有結合、非共有結合のいずれかで結合することにより、たびたび標識されよう。非常に多様な標識および結合技法が知られており、科学文献、特許文献の両方で広範に報告されている。適切な標識には、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光成分、化学発光成分、磁気粒子などが挙げられる。このような標識の使用を教示する特許には、米国特許第3817837号、第3850752号、第3939350号、第3996345号、第4277437号、第4275149号および第4366241号が含まれる。また、組換え免疫グロブリンを製造してもよく(Cabillyの米国特許第4816567号、およびQueenら(1989年)、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA、86巻、10029〜10033頁を参照されたい)、またはトランスジェニックマウス中で作製してもよい(Mendezら(1997年)、Nature Genetics、15巻、146〜156頁を参照されたい、またAbgenix and Medarexの技術も参照されたい)。
【0083】
IL−23の所定の断片に対する抗体または結合性組成物は、該ポリペプチド、断片、ペプチドまたはエピトープの担体タンパク質との結合体で動物を免疫することにより、増やすことができる。モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌する細胞から調製される。こうした抗体は、正常または欠損IL−23に対する結合性についてスクリーニングすることができる。こうしたモノクローナル抗体は、普通ELISAで決定した場合、普通には少なくとも約1μM、より普通には少なくとも約300nM、通常は少なくとも約30nM、好ましくは少なくとも約10nM、より好ましくは少なくとも約3nMまたはそれより良好なKで、普通は結合しよう。適当な非ヒト抗体も、下記の実施例5に記載する生物アッセイを用いて同定し得る。
IV.IL−23特異抗体のヒト化
超可変領域源として、適当な任意の非ヒト抗体を使用することができる。非ヒト抗体源には、それだけに限らないが、ネズミ類、ウサギ目(ウサギを含む)、ウシおよび霊長類が挙げられる。大抵の場合、ヒト化抗体は、受容抗体の超可変領域残基を、所望の特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類などの非ヒト種の超可変領域残基(供与抗体)で置換したヒト免疫グロブリン(受容抗体)である。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基で置換されている。更に、ヒト化抗体は、受容抗体、供与抗体のいずれにも見出されない残基を含み得る。こうした改変は、所望の生物活性の抗体性能を一層精緻にするためになされる。更なる詳細については、Jonesら(1986年)、Nature、321巻、522〜525頁;Reichmannら(1988年)、Nature、332巻、323〜329頁;およびPresta(1992年)、Curr. Op. Struct. Biol.、2巻、593〜596頁を参照されたい。
【0084】
抗体を組換え操作で作製する方法は、例えば、Boss他(米国特許第4,816,397号)、Cabilly他(米国特許第4,816,567号)、Law他(欧州特許出願公開第438310号)、およびWinter(欧州特許出願公開第239400号)により記載されている。
【0085】
ヒト化抗IL−23抗体のアミノ酸配列改変体は、適切なヌクレオチド変更をヒト化抗IL−23抗体DNAの中に導入すること、またはペプチド合成によって調製される。このような改変体は、例えば、ヒト化抗IL−23F(ab)(例えば、配列番号1および2の場合)に対して示したアミノ酸配列内にある残基の欠失、および/またはその中への挿入、および/またはその置換を含む。最終的な構築体が所望の特性を保有する限り、最終的な構築体を得るために欠失、挿入および置換の任意の組合せがなされる。アミノ酸の変更は、糖鎖結合部位の個数または位置の変更などのヒト化抗IL−23抗体の翻訳後過程も変更し得る。
【0086】
ヒト化抗IL−23p19抗体のポリペプチドの、好ましい変異誘発部位である特定の残基または領域を同定する有用な方法は、Cunningham and Wells(1989年)、Science、244巻、1081〜1085頁に記載のように、「アラニン走査変異誘発」と呼称される。この場合、標的残基中の1残基または1群を同定(例えば、Arg、Asp、His、Lys、Gluなどの荷電残基)し、中性または負荷電のアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)で置換することにより、当該アミノ酸のIL−23抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで、置換部位に、またはその部位の代わりに、更なるまたは他の変異を導入することによって、置換に機能的感受性を示すアミノ酸残基を精緻化する。したがって、アミノ酸配列の変異を導入する部位予め決定するが、その変異の特質自体を予備決定する必要はない。例えば、所与の部位における変異の性能を分析するために、アラニン走査変異誘発またはランダム変異誘発を標的のコドンまたは領域で行い、発現したヒト化抗IL−23p19抗体改変体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0087】
アミノ酸配列の挿入には、長さが1残基から100個以上の残基を含むポリペプチドに及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または多重アミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有するヒト化抗IL−23抗体またはエピトープタグを融合した該抗体が挙げられる。ヒト化抗IL−23抗体分子の他の挿入改変体は、ヒト化抗IL−23抗体のN末端またはC末端と、該抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドとの融合を含む。
【0088】
別種の改変体は、アミノ酸置換改変体である。こうした改変体では、ヒト化抗IL−23p19抗体分子中のアミノ酸残基が少なくとも1個除かれ、その代わりに異なる残基が挿入されている。置換変異誘発にとって最も関心の高い部位には、超可変ループが含まれるが、FR変更も想定されている。抗原結合に関与する超可変領域残基またはFR残基は、一般に比較的保存的に置換される。
【0089】
該抗体の別種のアミノ酸改変体は、該抗体の元来の糖鎖形成パターンを変化させる。変化とは、該抗体中に見出される1個以上の糖鎖成分の欠失、および/または該抗体中に存在しない1個以上の糖鎖形成部位の付加を意味する。抗体の糖鎖形成は、通常N連結、O連結のいずれかでなされる。N連結とは、糖鎖成分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であって、次式のXがプロリン以外のアミノ酸であるアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニンは、糖鎖成分がアスパラギン側鎖に酵素的結合をするための認識配列である。したがって、こうしたトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在すると、潜在的な糖鎖形成部位が創出される。O連結糖鎖形成とは、糖類のN−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、キシロースのいずれか1つが、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンに結合することを指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシセリンも使用し得る。
【0090】
該抗体への糖鎖形成部位の付加は、抗体が前記トリペプチド配列の1種以上を含有する(N連結糖鎖形成部位のため)ように、そのアミノ酸配列を変更することにより都合よく実現される。この変更は、元の抗体の配列に対する1個以上のセリンまたはスレオニン残基の付加、またはそれによる置換(O連結糖鎖形成部位のため)によってもなし得る。
【0091】
更に別種のアミノ酸改変体は、最終的なヒト化抗体の化学的安定性を高めるための残基の置換である。例えば、げっ歯類CDR内にある任意のNG配列でイソアスパラギン酸が形成される可能性を低下させるために、アスパラギン(N)残基を変更してもよい。一実施形態では、アスパラギンはグルタミン(Q)に変更される。イソアスパラギン酸の形成は、抗体の標的抗原への結合を弱めるか、完全に失わせる恐れがある。Presta(2005年)、J. Allergy Clin. Immunol.、116巻、731および734頁。その上、げっ歯類CDR中のメチオニン残基を変更することにより、メチオニンの硫黄が酸化されるため、抗原結合親和性が低下し、抗体の最終調製物の分子が不均一にもなる可能性を低下させ得る。同上文献。一実施形態では、該メチオニンはアラニン(A)に変更される。このような置換を受けた抗体は、その後、置換のためにIL−23p19の結合親和性が許容できない程度まで減少していないことを確認するために、スクリーニングされる。
【0092】
ヒト化IL−23特異抗体のアミノ酸配列改変体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の多様な方法により調製される。こうした方法には、それだけに限らないが、天然源からの単離(自然発生のアミノ酸配列改変体の場合)、またはヒト化抗IL−23p19抗体の調製済み改変体もしくは非改変体のオリゴヌクレオチド媒介型(もしくは部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発およびカセット変異誘発による調製が挙げられる。
【0093】
ヒト化抗IL−23抗体のアミノ酸配列改変体は、通常は、重鎖または軽鎖の元のヒト化抗体アミノ酸配列と、少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の該同一性を有するアミノ酸配列を有することになろう。この配列に関する同一性または相同性は、本明細書では、当該配列を整列し、最大の配列同一率(%)を得るために、必要であればギャップを導入した後で、配列同一性の一部として保存的置換を全く考慮せずに、ヒト化抗IL−23残基と同じ、候補配列中のアミノ酸残基の比率(%)と定義される。N末端、C末端もしくは内部の延長、欠失、または抗体配列中への挿入は、いずれも、配列の同一性または相同性に影響しないものと見なす。
【0094】
該ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含めた免疫グロブリンの任意のクラスから選択することができる。好ましくは、該抗体はIgG抗体である。IgG、IgG、IgGおよびIgGを含めたIgGの任意のイソタイプを使用することができる。IgGイソタイプの改変体も想定している。該ヒト化抗体は、複数のクラスまたはイソタイプからの配列を含んでもよい。所望の生物活性を産生するのに必要な定常ドメイン配列の最適化は、下記の生物学的アッセイで抗体をスクリーニングすることにより、容易に実現される。
【0095】
同様に、軽鎖のいずれのクラスも、本発明における組成物および方法において使用することができる。具体的には、κ、λまたはその改変体が本組成物および方法において有用である。
【0096】
非ヒト抗体のCDR配列の適切な任意の部分が、使用することができる。該CDR配列は、該CDR配列が採用されるヒトおよび非ヒト抗体配列と異なるように、少なくとも1個の残基を置換、挿入または欠失することにより、変異誘発させることができる。こうような変異は最小限にすることを想定している。通常は、ヒト化抗体残基の少なくとも75%は、非ヒトCDR残基に一致し、より頻繁には90%、最も好ましくは95%超がヒトCDR残基に一致するであろう。
【0097】
ヒト抗体のFR配列の適切な任意の部分が、使用することができる。該FR配列は、該FR配列が採用されるヒトおよび非ヒト抗体配列と異なるように、少なくとも1個の残基を置換、挿入または欠失することにより、変異誘発させることができる。こうような変異は最小限にすることを想定している。通常は、ヒト化抗体残基の少なくとも75%は、ヒトFR残基に一致し、より頻繁には90%、最も好ましくは95%超がヒトFR残基に一致するであろう。
【0098】
CDRおよびFR残基は、Kabatの標準的配列定義に従って決定される。Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health, Bethesda Md.(1987年)。配列番号5〜16および31〜48は、多様なマウス抗ヒトIL−23p19抗体の重鎖可変ドメイン配列を示し、配列番号17〜28および49〜65は、軽鎖可変ドメイン配列を表示している。配列番号66〜68は、重鎖CDR(CDRH1、CDRH2およびCDRH3)のコンセンサス配列であり、7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、1E10、30F11、34E4、5B12、6H4、9C9、11B10、30E1、33D2、20A9、22E9、29D5、21A10および33B12からなる抗体のファミリー用の重鎖CDRにおいて、各位置における最も汎用なアミノ酸残基からなる。図1A〜1Cは、本発明の多様な抗体の重鎖配列一揃いを提供する。
【0099】
図2A〜2Cに示すように、本明細書に開示した本発明の抗体の軽鎖CDRは、(a)、(b)および(c)と称する3つのサブファミリーに区分される。軽鎖サブファミリー(a)は、抗体7G10、6H12、13F11、13B5、7E2、13G1、11C10、30F11、34E4、6H4、33D2および33B12からなる。軽鎖サブファミリー(b)は、抗体1E10、20A9、22E9、29D5、5B12、9C9および11B10からなる。軽鎖サブファミリー(c)は、抗体10H11、19E9、10G8、39G2、35F12、49A10、34F9および7D7からなる。これらの軽鎖サブファミリーを用いて、各サブファミリーに対しCDRL1(a)、CDRL1(b)およびCDRL1(c)(配列番号69〜71)のコンセンサスCDR配列と、対応するコンセンサス配列のCDRL2(配列番号72〜74)およびCDRL3(配列番号75〜77)とを誘導した。軽鎖CDRのコンセンサス配列は、抗体の各サブファミリーに対し、軽鎖CDR中の各位置における最も汎用なアミノ酸残基からなる。
【0100】
表2および3は、ヒト化抗IL−23p19抗体6H12、7G10、10H11および22E9の様々なドメイン、ならびに本発明の幾種かのマウス抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインを規定する。配列番号1〜4の残基1〜19は、hum6H12およびhum7G10の軽鎖および重鎖に対するシグナル配列を表す。hum6H12およびhum7G10の軽鎖定常ドメインは、それぞれ配列番号2および4の残基130〜233にある。hum6H12およびhum7G10の重鎖定常ドメインは、それぞれ配列番号1および3の残基135〜464にあり、CH1が残基135〜242、CH2+ヒンジが残基243〜357、およびCH3が残基358〜464にある。他の抗体は全て、軽鎖および重鎖可変領域(VおよびV)として提示されており、したがってシグナル配列および定常ドメインを欠いている。
【0101】
【化2】

【0102】
【化3】

【0103】
【化4】

一実施形態では、本発明の抗体またはその結合性断片は、特定の位置にある幾つかの可変アミノ酸の1個を含んだCDRを含む。一実施形態では、本発明の抗体またはその結合性断片は、配列番号78〜89に列挙した「CDR可変」ドメインを含む。こうした「CDR可変」配列は、関連抗体の各ファミリーのコンセンサス配列、ならびにそのファミリー内に認められた配列改変体全てにまたがる可変位置を含む。このような配列改変体は、図1A〜1Cおよび2A〜2Cに表示されている。
【0104】
別の実施形態では、潜在的なCDR中の可変アミノ酸が、本明細書で報告した各ファミリー中に2回以上出現するアミノ酸から選択される。こうした抗体は、前記の「CDR可変」抗体のサブセットであって、その中では、所与の配列ファミリー中のCDRの所与の位置に1回しか出現しないアミノ酸は、潜在的CDRのプール中に含まれないサブセットである。こうした「単回出現」アミノ酸置換は、図1A〜1Cおよび2A〜2Cを調べるだけで容易に決定され、したがって「CDR可変」配列から除外される。潜在的CDR配列のこの狭められた範囲は、本明細書では「多回出現可変CDR」と呼称する。この命名は、本明細書では、「CDR可変」配列のこのサブセットに言及する際、便宜上使用される。
【0105】
更に別の実施形態では、潜在的CDRは、前記の「CDR可変」配列に制限されず、表1のデータを用いて決定した場合、観察した任意のアミノ酸の保存的に改変された改変体も包含する。
【0106】
更なる実施形態では、潜在的CDRは、配列番号66〜77のコンセンサス配列を含む、本明細書に開示した任意の単一配列CDRの改変体を含み、該改変体は、表1のデータを用いて決定した場合、その開示配列に比して保存的アミノ酸置換を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれを超えて含む。
【0107】
キメラ抗体も想定されている。前記の通り、典型的なキメラ抗体は、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と、同一または相同な重鎖および/または軽鎖の一部分を含む一方、該鎖(単数もしくは複数)の残部は、別種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と、同一または相同である抗体、ならびに所望の生物活性を示す限り、そのような抗体の断片も包含する(米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら(1984年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻、6851〜6855頁)。
【0108】
本発明の方法および組成物において、二重特異性抗体も有用である。本明細書で使用する場合、用語「二重特異性抗体」とは、少なくとも2種の抗原エピトープ、例えばIL−23p19およびIL−23p40に対して結合特異性を有する抗体、通常はモノクローナル抗体を指す。一実施形態では、該エピトープは同一抗原に由来する。別の実施形態では、該エピトープは2種の抗原に由来する。二重特異性抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である。例えば、二重特異性抗体は、2種の免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現を用いて組換えにより産生することができる。例えば、Milsteinら(1983年)、Nature、305巻、537〜39頁を参照されたい。あるいは、二重特異性抗体は、化学的連結を用いて調製することができる。例えば、Brennanら(1985年)、Science、229巻、81頁を参照されたい。二重特異性抗体は、二重特異性抗体の断片を包含する。例えば、Hollingerら(1993年)、Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A.、90巻、6444〜48頁;Gruberら、J. Immunol.、152巻、5368頁(1994年)を参照されたい。
【0109】
更に他の実施形態では、本発明で提供するヒト化VおよびV領域に、異なる定常ドメインを結合させてもよい。例えば、本発明の抗体(または断片)の特定の使用を意図して、エフェクター機能の変更を求めるならば、IgG1以外の重鎖定常ドメインを使用してもよい。IgG1抗体は、長い半減期、および補体活性化、抗体依存的細胞傷害性などのエフェクター機能をもたらすが、このような活性は、該抗体の全用途に対して望ましいとは限らないこともあり得る。そのような場合には、例えばIgG4ドメインを使用してもよい。
【0110】
V.ヒト化抗IL−23の生物活性
ヒト化抗IL−23抗体において望ましいと本明細書で認めた特性を有する抗体を、インビトロでの阻害的生物活性または適当な結合親和性についてスクリーニングすることができる。対象とする抗体が結合するヒトIL−23上のエピトープ(即ちp19サブユニット)に結合する抗体(例えば、このサイトカインのその受容体への結合を遮断する抗体)を求めてスクリーニングするために、「ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL」、Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane(1988年)に記載のものなどの慣用的な交差遮断(cross−blocking)アッセイを行うことができる。同一のエピトープに結合する抗体同士は、このようなアッセイで交差遮断する可能性が高いが、交差遮断は、近在している、または重複さえしているエピトープに結合した抗体による、抗体結合の立体障害から生じることもあり得るので、交差遮断性抗体が全て、全く同一のエピトープに必ず結合することはない。
【0111】
あるいは、例えば、Champeら(1995年)、J. Biol. Chem.、270巻、1388〜1394頁に記載のようなエピトープマッピングを行って、該抗体が対象とするエピトープに結合するか否かを判定することができる。Cunningham and Wells(1989年)、Science、244巻、1081〜1085頁が記載するような「アラニン走査変異誘発」、またはヒトIL−23中のアミノ酸残基の他のある種の点変異誘発を使用することにより、本発明の抗IL−23抗体に対する機能的エピトープを決定してもよい。しかし、変異誘発試験では、IL−23の全体的三次元構造には決定的であるが、抗体−抗原接触部に直接関与していないアミノ酸残基も明らかにし得るので、この方法を用いて決定された機能的エピトープを確認するために、他の方法が必要になることもあり得る。
【0112】
特異抗体が結合するエピトープは、ヒトIL−23p19の断片(配列番号39)を含むペプチドに対する該抗体の結合性を評価することによっても、決定し得る。IL−23p19の配列を包含する一連の重複ペプチドを合成し、例えば、直接的ELISA、競合的ELISA(マイクロタイタープレートのウェルに結合したIL−23p19に対する抗体の結合を防止する能力について、そのペプチドを評価する)で、またはチップ上での結合性についてスクリーニングしてもよい。このようなペプチドスクリーニング法は、不連続な一部の機能的エピトープ、即ち、IL−23p19ポリペプチド鎖の一次配列に沿って隣接していないアミノ酸残基を含む機能的エピトープを検出できない恐れがある。
【0113】
本発明の抗体が結合するエピトープは、X線結晶構造決定(例えば、国際公開第2005/044853号)、分子モデル作製、および遊離している場合と対象とする抗体との複合体中に結合されている場合とのIL−23内の不安定アミド水素のH−D交換速度のNMR決定を含む核磁気共鳴(NMR)分光法などの構造的方法により、決定してもよい(Zinn−Justinら(1992年)、Biochemistry、31巻、11335〜11347頁;Zinn−Justinら(1993年)、Biochemistry、32巻、6884〜6891頁)。
【0114】
X線結晶解析に関しては、当技術分野における公知法(例えば、Giegeら(1994年)、Acta Crystallogr. D、50巻、339〜350頁;McPherson(1990年)、Eur. J. Biochem.、189巻、1〜23頁)、それにはミクロバッチ(例えば、Chayen(1997年)、Structure、5巻、1269〜1274頁)、懸滴蒸気拡散(例えば、McPherson(1976年)、J. Biol. Chem.、251巻、6300〜6303頁)、種結晶添加、および透析を含む方法のいずれかを用いて、結晶化を実現し得る。少なくとも約1mg/mL、好ましくは約10mg/mLから約20mg/mLの濃度を有するタンパク質調製品を使用することが、望ましい。結晶化は、ポリエチレングリコール1000〜20000(PEG:約1000〜約20000Daの範囲の平均分子量)、好ましくは約5000〜約7000Da、より好ましくは約6000Daを濃度範囲約10%〜約30%(w/v)で含有する沈殿剤溶液中で、最も良好に実現し得る。タンパク質安定化剤、例えばグリセロールを濃度範囲約0.5%〜約20%含むことも所望され得る。塩化ナトリウム、塩化リチウム、クエン酸ナトリウムなどの適当な塩も、好ましくは濃度範囲約1mM〜約1000mMで、沈殿剤溶液中で所望され得る。沈殿剤は、約3.0〜約5.0、好ましくは約4.0のpHに緩衝するのが好ましい。沈殿剤溶液中で有用な特定の緩衝剤は、変更され得るものであり、当技術分野で周知である(Scopes、「Protein Purification: Principles and Practice, Third ed.」、(1994年)Springer Verlag, New
York)。有用な緩衝剤の例には、それだけに限らないが、HEPES、Tris、MESおよび酢酸塩が挙げられる。結晶は、2℃、4℃、8℃および26℃を含む広範囲の温度で成長し得る。
【0115】
抗体・抗原結晶は、周知のX線回折法を用いて研究してもよく、X−PLOR(エール大学、1992年、Molecular Simulations, Inc.が頒布;例えば、Blundell & Johnson(1985年)、「Meth. Enzymol. 114 & 115」、H. W. Wyckoffら編、Academic Press;米国特許出願公開第2004/0014194号を参照されたい)、およびBUSTER(Bricogne(1993年)、Acta Cryst.、D49巻、37〜60頁;Bricogne(1997年)、「Meth. Enzymol.
276A」、361〜423頁、Carter & Sweet編;Roversiら(2000年)、Acta Cryst.、D56巻、1313〜1323頁)などのコンピューターソフトを用いて精緻化してもよいが、その各開示内容の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
本発明の抗体と同じエピトープに結合する追加の抗体は、例えば、該エピトープに結合するためにIL−23に対して惹起させた抗体のスクリーニング、または該エピトープ配列を含んだ、ヒトIL−23の断片を含むペプチドによる動物の免疫によって、入手してもよい。同じ機能的エピトープに結合する抗体は、受容体結合の防止などの類似の生物活性を示すと予想され得、そのような活性は、該抗体の機能アッセイにより確認することができる。
【0117】
抗体親和性(例えば、ヒトIL−23に対して)は、標準的分析を用いて決定し得る。好ましいヒト化抗体は、ヒトIL−23p19に、約1×10−7以下、好ましくは約1×10−8以下、より好ましくは約1×10−9以下、最も好ましくは約1×10−10M以下のK値で結合する抗体である。
【0118】
本組成物および本方法に有用な抗体およびその断片は、生物活性な抗体および断片である。本明細書で使用する場合、用語「生物活性な」とは、所望の抗原エピトープに結合し、直接または間接に生物作用を発揮できる抗体または抗体断片を指す。通常、こうした作用は、IL−23がその受容体に結合できないことから現れる。本明細書で使用する場合、用語「特異的な」とは、抗体の標的抗原エピトープへの選択的結合を指す。抗体は、所与の1組の条件下で、IL−23への結合を関係のない抗原または抗原混合物への結合と比較することにより、結合特異性について試験することができる。抗体が、関係のない抗原または抗原混合物に比して、IL−23に少なくとも10倍、好ましくは50倍多く結合する場合、それは特異的と見なされる。IL−23に「特異的に結合する」抗体は、IL−23誘導配列を含まないタンパク質には結合しない、即ち、本明細書で使用する場合の「特異性」は、IL−23特異性に関し、問題としているタンパク質中に存在し得る他のいずれの配列にも関するものではない。例えば、本明細書で使用する場合、IL−23に「特異的に結合する」抗体は、IL−23およびFLAG(登録商標)ペプチドタグを含む融合タンパク質であるFLAG−hIL−23に通常結合しようが、FLAG(登録商標)ペプチドタグ単独には、またはそれがIL−23以外のタンパク質に融合している場合には、結合しない。
【0119】
阻害的IL−23p19特異抗体などの本発明のIL−23特異的結合性化合物は、腹腔マクロファージによるIL−1βおよびTNFの産生、ならびにT17 T細胞によるIL−17の産生を含むが、それだけに限らないその生物活性を何らかの方法で阻害することができる(Langrishら(2004年)、Immunol. Rev.、202巻、96〜105頁を参照されたい)。抗IL−23p19抗体は、IL−17A、IL−17F、CCL7、CCL17、CCL20、CCL22、CCR1およびGM−CSFの遺伝子発現を阻害することもできよう(Langrishら(2005年)、J. Exp. Med.、201巻、233〜240頁を参照されたい)。抗IL−23p19抗体などの本発明のIL−23特異的結合性化合物は、T17細胞の増殖または生存を強化するIL−23の能力も遮断しよう。Cua and Kastelein(2006年)、Nat. Immunol.、7巻、557〜559頁。改変抗IL−23p19の阻害活性は、炎症性、自己免疫性および増殖性の障害の処置に有用となろう。このような障害は、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許出願公開の国際公開第04/081190号、国際公開第04/071517号、国際公開第00/53631号、および国際公開第01/18051号に記載されている。
【0120】
VI.医薬組成物
IL−23、そのサイトカイン類縁体またはムテインの作動薬または拮抗薬を含む医薬または滅菌組成物を調製するために、それに対する抗体またはその核酸が、医薬として許容可能な担体または賦形剤と混合される。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences and U. S. Pharmacopeia: National Formulary」、Mack Publishing Company, Easton, PA(1984年)を参照されたい。
【0121】
治療剤および診断剤の製剤は、生理的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤と共に、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水性の溶液または懸濁液の形態に混合することにより調製し得る(例えば、Hardmanら(2001年)、「Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics」、McGraw−Hill, New York, NY;Gennaro(2000年)、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」、Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, NY;Avisら(編)(1993年)、「Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications」、Marcel Dekker, NY;Liebermanら(編)(1990年)、「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets」、Marcel Dekker, NY;Liebermanら(編)(1990年)、「Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems」、Marcel Dekker, NY;Weiner and Kotkoskie(2000年)、「Excipient Toxicity and Safety」、Marcel Dekker, Inc., New York, NYを参照されたい)。
【0122】
抗体組成物の毒性および治療効果は、単独で、または免疫抑制剤と組み合わせて投与した場合、細胞培養または実験動物における標準的薬学手順、例えば、LD50(その集団の50%に致死的な用量)およびED50(その集団の50%に治療上有効な用量)を決定するための手順により、決定することができる。毒作用と治療効果との用量比が治療指数であり、LD50とED50との比として表わすことができる。高い治療指数を示す抗体が、好ましい。こうした細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータは、人間に使用する用量範囲を処方する際に用いることができる。このような化合物の用量は、ED50を含み、殆どまたは全く毒性を示さない循環濃度の範囲内に入ることが好ましい。該用量は、この範囲内で、採用する剤形および利用する投与経路に応じて変化してもよい。
【0123】
投与方式は、特別重要ではない。適切な投与経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜または腸内投与を含み、筋肉内、皮下、髄内注射、ならびにくも膜下、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射を含めた非経口的送達を含む。医薬組成物において、または本発明の方法を実施するために使用される抗体の投与は、経口摂取、吸入、局所塗布、または皮内、皮下、腹腔内、非経口、動脈内もしくは静脈内注射などの多様な従来法で実施することができる。患者に対する静脈内投与が、好ましい。
【0124】
あるいは、全身的ではなく局所的に、例えば、免疫病変を特徴とする関節炎性関節または病原体誘発性病変の中に直接、しばしばデポーまたは持続放出製剤として抗体を注入することにより、投与してもよい。更に、標的薬物送達系、例えば、組織特異抗体をコートしたリポソームとして、例えば、免疫病変を特徴とする関節炎性関節または病原体誘発性病変を標的にして抗体を投与してもよい。該リポソームは、患部組織を標的とし、そこで選択的に取り込まれよう。
【0125】
ある治療薬に対する投与計画の選択は、その薬物の血清内または組織内での代謝率、症状の程度、該薬物の免疫原性、および生体マトリックス中での標的細胞への到達難易度を含めた数種の要因に依存する。投与計画は、許容水準の副作用と相反することなく、患者に対する治療薬の送達量を最大限にするのが好ましい。したがって、生物製剤の送達量は、その特定の薬剤および治療する病状の重度に一部依存する。抗体、サイトカインおよび小分子の適正用量を選択する際の指針は、入手できる(例えば、Wawrzynczak(1996年)、「Antibody Therapy」、Bios Scientific Pub. Ltd, Oxfordshire, UK;Kresina(編)(1991年)、「Monoclonal Antibodies, Cytokines
and Arthritis」、Marcel Dekker, New York,
NY;Bach(編)(1993年)、「Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases」、Marcel Dekker, New York, NY;Baertら(2003年)、New Engl. J. Med.、348巻、601〜608頁;Milgromら(1999年)、New Engl. J. Med.、341巻、1966〜1973頁;Slamonら(2001年)、New Engl. J. Med.、344巻、783〜792頁;Beniaminovitzら(2000年)、New Engl. J. Med.、342巻、613〜619頁;Ghoshら(2003年)、New Engl. J. Med.、348巻、24〜32頁;Lipskyら(2000年)、New Engl. J. Med.、343巻、1594〜1602頁を参照されたい)。
【0126】
適正用量の決定は、例えば、処置に影響することが当技術分野で知られ、もしくは疑われており、または処置に影響することが予測されるパラメーターまたは要因を用いて、臨床医によりなされる。一般に、該用量は、最適用量より少なめの量で始め、その後、小刻みに増加して、最終的に、不都合な副作用に比して望ましいまたは最適な効果を実現する。重要な診断基準には、例えば炎症の症状、または炎症性サイトカインの産生量が挙げられる。使用すると見込まれる生物製剤は、好ましくは、処置の対象となる動物と同じ種に由来し、したがってその試薬に対する炎症性、自己免疫性または増殖性応答が最小限に抑えられる。
【0127】
抗体、抗体断片およびサイトカインは、連続的な注入により、または、例えば1日、1週間の間隔で、もしくは1週につき1〜7回の投薬により提供することができる。投薬は、静脈内、皮下、局所、経口、鼻腔内、直腸、筋肉内、脳内、髄腔内または吸入により提供し得る。好ましい投薬処方は、望ましくない相当程度の副作用を避ける最大用量または投薬頻度を伴う処方である。週間総用量は、一般には少なくとも0.05μg/kg体重、より一般には少なくとも0.2μg/kg、最も一般には少なくとも0.5μg/kg、典型的には少なくとも1μg/kg、より典型的には少なくとも10μg/kg、最も典型的には少なくとも100μg/kg、好ましくは少なくとも0.2mg/kg、より好ましくは少なくとも1.0mg/kg、最も好ましくは少なくとも2.0mg/kg、最適には少なくとも10mg/kg、より最適には少なくとも25mg/kg、最も最適には少なくとも50mg/kgである(例えば、Yangら(2003年)、New Engl. J. Med.、349巻、427〜434頁;Heroldら(2002年)、New Engl. J. Med.、346巻、1692〜1698頁;Liuら(1999年)、J. Neurol. Neurosurg. Psych.、67巻、451〜456頁;Portieljiら(2003年)、Cancer Immunol. Immunother.、52巻、133〜144頁を参照されたい)。小分子治療薬、例えばペプチド模倣物、天然物または有機薬品の所望用量は、モル/kg基準で抗体またはポリペプチドの場合とほぼ同じである。
【0128】
本明細書で使用する場合、「抑制する」または「処置する」または「処置」には、自己免疫疾患もしくは病原体誘発性免疫病変に付随する症状の発現の遅延、および/または発現すると見込まれ、もしくは予想されるそのような症状の重症度の低下が含まれる。該用語には、更に、現にある抑制不能または不都合な自己免疫関連性または病原体誘発性の免疫病変症状の改善、付加的な症状の予防、およびこのような症状の根本原因の改善または予防が含まれる。したがって、こうした用語は、自己免疫性もしくは病原体誘発性の免疫病理学的疾患もしくは症状のある、またはこのような疾患もしくは症状を発現する恐れのある脊椎動物対象に有益な結果が与えられたことを示す。
【0129】
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」または「有効量」とは、単独で、または追加の治療剤と組み合わせて、細胞、組織または対象に投与したとき、自己免疫疾患または病原体誘発性病変関連の疾患もしくは状態、あるいはその疾患の進行を予防または改善するのに有効である、IL−23p19特異的結合性化合物、例えば抗体の量を指す。更に、治療有効用量とは、症状の改善、例えば、関連する病状の治療、治癒、予防もしくは改善、またはこのような病状の治療、治癒、予防もしくは改善の速度の増加を生じるのに十分な該化合物の量を指す。単独で投与する個々の活性成分に適用する場合、治療有効用量はその成分単独に関する。組合せに適用する場合、治療有効用量とは、一緒に、連続的に、または同時に投与するかを問わず、治療効果を生じる活性成分の組合せ量を指す。有効量の治療薬は、その症状を通常、少なくとも10%、普通は少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%減少させよう。
【0130】
共投与する方法、または第2の治療剤、例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質または放射線を用いる処置法は、当技術分野で周知である。例えば、Hardmanら(編)(2001年)、「Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,
10th ed.」、McGraw−Hill, New York, NY;Poole and Peterson(編)(2001年)、「Pharmacothrapeutics for Advanced Practice: A Practical Approach」、Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., PA;Chabner and Longo(編)(2001年)、「Cancer Chemotherapy and Biotherapy」、Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., PAを参照されたい。本発明の医薬組成物は、他の免疫抑制剤または免疫調節剤も含んでもよい。それだけに限らないが、抗炎症剤、コルチコステロイド、シクロスポリン、タクロリムス(即ち、FK−506)、シロリムス、インターフェロン、可溶性サイトカイン受容体(例えば、sTNRFおよびsIL−1R)、サイトカイン活性中和剤(例えば、インフリックスマブ、エタネルセプト)、マイコフェノレートモフェチル、15−デオキシスペルグァリン、サリドマイド、グラチラマー、アザチオプリン、レフルノミド、シクロホスファミド、メトトレキセートを含めた適当な任意の免疫抑制剤を使用することができる。該医薬組成物は、光線療法、放射線などの他の治療様式と共に使用することもできる。
【0131】
典型的な動物、実験または研究対象には、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウマおよび人間が含まれる。
【0132】
VII.抗体産生
本発明の抗体の組換え産生のために、2本の連鎖をコードする核酸を単離し、1種以上の複製可能なベクター中に挿入して、更にクローニング(そのDNAの増幅)するか、または発現させる。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて容易に単離され、(例えば、該抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブの使用によって)配列決定される。多くのベクターが利用できる。ベクターの構成要素には、それだけに限らないが、一般に以下のもの:シグナル配列、複製起点、1種以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーターおよび転写終止配列のうち、1種以上が含まれる。一実施形態では、本発明のヒト化抗IL−23p19抗体の軽鎖、重鎖の双方が、同一のベクター、例えばプラスミドまたはアデノウィルスベクターから発現される。
【0133】
本発明の抗体は、当技術分野で公知の任意の方法により産生してもよい。一実施形態では、抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎(HEK)293細胞、マウス骨髄NSO細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)卵巣(Sf9)細胞などの培養物における哺乳動物または昆虫の細胞中に発現される。一実施形態では、CHO細胞から分泌された抗体は、プロテインA、陽イオン交換、陰イオン交換、疎水相互作用、ヒドロキシアパタイトによるクロマトグラフィーなどの標準的クロマトグラフィー法により、回収し、精製される。産生した抗体は、濃縮し、20mM酢酸ナトリウム、pH5.5の中に保存する。
【0134】
別の実施形態では、本発明の抗体は、国際公開第2005/040395号に記載の方法に従って、酵母中に産生される。手短に言えば、対象とする抗体の個々の軽鎖または重鎖をコードするベクターを、様々な酵母半数体細胞、例えば、酵母Pichia pastorisの様々な接合型中に導入するが、該酵母半数体細胞は、場合によっては相補的な栄養要求株である。次いで、形質転換された該半数体酵母細胞を接合または融合することにより、重鎖、軽鎖の双方を産生できる二倍体酵母細胞を得ることができる。次いで、二倍体株は、完全に一体化した生物活性な抗体を分泌することができる。2本の該連鎖の相対的発現量は、例えば、コピー数の異なるベクターの使用、強度の異なる転写プロモーターの使用、または一方もしくは両方の連鎖をコードする遺伝子の転写を進める誘導プロモーターからの発現の誘導により、最適化することができる。
【0135】
一実施形態では、複数種の抗IL−23p19抗体(「元の」抗体)の重鎖、軽鎖それぞれを酵母半数体細胞に導入することにより、複数の軽鎖を発現する一接合型の半数体酵母株のライブラリー、および複数の重鎖を発現する別の接合型の半数体酵母株のライブラリーを創製する。半数体株のこのライブラリー同士を接合(またはスフェロプラストとして融合)することにより、軽鎖および重鎖の考え得る多様な並べ替えからなる抗体の組換えライブラリーを発現する一連の二倍体酵母株を作製することができる。次いで、抗体の組換えライブラリーをスクリーニングすることにより、該抗体のいずれが、元の抗体より優れた(例えば、IL−23に対する親和性が増した)特性を有するか否かを決定することができる。例えば、国際公開第2005/040395号を参照されたい。
【0136】
別の実施形態では、本発明の抗体は、抗体可変ドメインのうちの部分が、分子量約13kDaのポリペプチド中に連結されているヒトドメイン抗体である。例えば、米国特許公開第2004/0110941号を参照されたい。このような単一ドメイン低分子量作用剤は、合成、安定性および投与経路から見て多数の利点を示す。
【0137】
VIII.用途
本発明は、例えば、中枢神経系、末梢神経系および消化管の炎症性の障害および状態、ならびに自己免疫性および増殖性の障害の処置および診断のために、改変抗IL−23を使用する方法を提供する。
【0138】
例えば、再発性・軽減性MSおよび原発性進行性MSを含めた多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(別名ALS:ルーゲーリッグ病)、虚血性脳損傷、プリオン病およびHIV関連認知症を処置する方法が、提供される。神経障害性疼痛、外傷後神経障害、ギラン・バレー症候群(GBS)、末梢性多発神経障害を処置し、神経再生をする方法も、提供される。
【0139】
多発性硬化症、または神経系の他の炎症性障害もしくは状態の以下の特質、症状、態様、症候または徴候:脳病変、ミエリン病変、脱髄、脱髄斑、視覚障害、平衡または協調運動性の喪失、痙縮、知覚障害、失禁、疼痛、衰弱、疲労、麻痺、認識障害、精神緩徐(bradyphrenia)、複視、視神経炎、知覚異常、歩行運動失調、疲労、Uhtoff症状、神経痛、失語、行動不能症、発作、視野喪失、認知症、錐体外路現象、うつ病、幸福感または他の感情的症状、慢性進行性脊髄症、およびガドリニウム増強病変、誘発電位記録または脳脊髄液の検査を含む、磁気共鳴画像法(MRI)により検出される症状のうち、1つ以上を治療または改善する方法が、提供される(例えば、Kenealyら(2003年)、J. Neuroimmunol.、143巻、7〜12頁;Noseworthyら(2000年)、New Engl. J. Med.、343巻、938〜952頁;Millerら(2003年)、New Engl. J. Med.、348巻、15〜23頁;Changら(2002年)、New Engl. J. Med.、346巻、165〜173頁;Bruck and Stadelmann(2003年)、Neurol. Sci.、24巻Suppl.5、S265〜S267頁を参照されたい)。
【0140】
その上、本発明は、炎症性腸障害、例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病および過敏性腸症候群を処置し、診断する方法も提供する。炎症性腸障害の以下の症状、態様、症候または徴候:食物吸収不良、腸運動変調、感染、発熱、腹痛、下痢、直腸出血、体重減少、栄養不良の徴候、肛門周囲病、腹部腫瘤および成長不全、ならびに狭窄、瘻孔、中毒性巨大結腸、穿孔および癌などの腸合併症であって、脆さ、アフター性および線状潰瘍、敷石像、疑似ポリープおよび直腸病変、加えて抗酵母抗体などの内視鏡所見を含めた腸合併症のうちで、1つ以上を治療または改善する方法が、提供される(例えば、前記Podolsky、前記Hanauer、前記Horwitz and Fischerを参照されたい)。
【0141】
乾癬、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、骨関節炎および乾癬性関節炎を含めた関節炎、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病などの自己免疫障害、ならびに癌などの増殖性障害など、炎症性障害の治療も想定している(例えば、PCT特許出願の国際公開第04/081190号、国際公開第04/071517号、国際公開第00/53631号、および国際公開第01/18051号を参照されたい)。
【0142】
本発明のIL−23p19結合性化合物は、IL−17A、IL−1β、IL−6およびTGF−βを含むが、それだけに限らない他のサイトカインの1種以上の拮抗薬(例えば、抗体)と組み合わせて、使用することもできる。例えば、Veldhoen(2006年)、Immunity、24巻、179〜189頁;Dong(2006年)、Nat. Rev. Immunol.、6巻(4号)、329〜333頁を参照されたい。多様な実施形態では、本発明のIL−23p19結合性化合物は、抗IL−17A抗体などの他の1種以上の拮抗薬を投与する前、それと同時、またはその後に投与される。一実施形態では、IL−17A結合性化合物は、有害な免疫応答(例えば、MS、クローン病)の急性早期の処置に、単独で、または本発明のIL−23拮抗抗体と組み合わせて使用される。後者の場合、該IL−17A結合性化合物を次第に減量してもよく、IL−23拮抗薬単独による処置を続けて、有害応答の抑制を維持する。あるいは、本発明のIL−23p19結合性化合物と同時、その前、またはその後に、IL−1β、IL−6および/またはTGF−βに対する拮抗薬を投与してもよい。Cua and Kastelein(2006年)、Nat. Immunol.、7巻、557〜559頁;Tato
and O’Shea(2006年)、Nature、441巻、166〜168頁;Iwakura and Ishigame(2006年)、J. Clin. Invest.、116巻、1218〜1222頁を参照されたい。
【0143】
本発明の広い範囲は、以下の実施例を参照して最良に理解されるが、該実施例は、その特定の実施形態に本発明を限定することを意図していない。
【0144】
本明細書における全ての引例は、個々の各刊行物または特許出願が、参照により組み込まれることが明確かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
本発明の多くの改変および変更は、当業者には明らかであろうが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずになすことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、例示だけのために提示しており、本発明は、添付の特許請求の範囲(特許請求の範囲が請求する範囲に対する均等物の全範囲を含む)の表現により制限すべきであって、本発明は、例示だけのために本明細書に提示した特定の実施形態により制限すべきではない。
【実施例】
【0146】
(実施例1)
全般的方法
分子生物学における標準的方法は、記載されている(Maniatisら(1982年)、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Sambrook and Russell(2001年)、「Molecular Cloning, 3rd ed.」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Wu(1993年)、「Recombinant DNA, Vol. 217」、Academic Press, San Diego, CA)。標準的方法は、Ausbelら(2001年)、「Current Protocols in Molecular Biology, Vols. 1−4」、John Wiley and Sons, Inc. New York, NYにも掲載され、そこには、細菌細胞でのクローニングおよびDNA変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞および酵母でのクローニング(第2巻)、複合糖質およびタンパク質発現(第3巻)、ならびにバイオインフォーマティクス(第4巻)が記載されている。
【0147】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を含めたタンパク質精製法は、記載されている(Coliganら(2000年)、「Current Protocols in Protein Science, Vol. 1」、John
Wiley and Sons, Inc., New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質の糖鎖形成は、記載されている(例えば、Coliganら(2000年)、「Current Protocols in Protein Science, Vol. 2」、John Wiley and Sons, Inc., New York;Ausubelら(2001年)、「Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 3」、John Wiley and Sons, Inc., NY, NY、16.0.5〜16.22.17頁;Sigma−Aldrich, Co. (2001年)、「Products for Life Science Research」、St. Louis, MO、45〜89頁;Amersham Pharmacia Biotech(2001年)、「BioDirectory」、Piscataway, N.J.、384〜391頁を参照されたい)。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の産生、精製および断片形成は、記載されている(Coliganら(2001年)、「Current Protocols in Immunology, Vol. 1」、John Wiley and Sons, Inc., New York;Harlow and Lane(1999年)、「Using Antibodies」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;前記のHarlow and Lane)。リガンド/受容体の相互作用特性を決定する標準的方法は、入手できる(例えば、Coliganら(2001年)、「Current Protocols in Immunology, Vol. 4」、John Wiley, Inc., New Yorkを参照されたい)。
【0148】
蛍光標示式細胞分取(FACS)を含むフローサイトメトリーの方法は、入手できる(例えば、Owensら(1994年)、「Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice」、John Wiley and Sons, Hoboken, NJ;Givan(2001年)、「Flow Cytometry, 2nd ed.」、Wiley−Liss, Hoboken, NJ;Shapiro(2003年)、「Practical
Flow Cytometry」、John Wiley and Sons, Hoboken, NJを参照されたい)。例えば診断試薬として使用するために、核酸のプライマーおよびプローブを含む核酸、ポリペプチドならびに抗体を修飾するのに適した蛍光試薬は、入手できる(Molecular Probes(2003年)、「Catalogue」、Molecular Probes, Inc., Eugene, OR;Sigma−Aldrich(2003年)、「Catalogue」、St. Louis, MO)。
【0149】
免疫系の標準的な組織検査法は、記載されている(例えば、Muller−Harmelink(編)(1986年)、「Human Thymus: Histopathology and Pathology」、Springer Verlag, New York, NY;Hiattら(2000年)、「Color Atlas of Histology」、Lippincott, Williams, and Wilkins, Phila, PA;Louisら(2002年)、「Basic Histology: Text and Atlas」、McGraw−Hill, New
York, NYを参照されたい)。
【0150】
例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質の折り畳み、機能的ドメイン、糖鎖形成部位、および配列の整列を決定する、ソフトウェアパッケージおよびデータベースは、入手できる(例えば、GenBank, Vector NTI(登録商標)Suite (Informax, Inc, Bethesda, MD);GCG Wisconsin Package (Accelrys, Inc, San Diego, CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp., Crystal Bay, Nevada);Menneら(2000年)、Bioinformatics、16巻、741〜742頁;Menneら(2000年)、Bioinformatics Applications Note、16巻、741〜742頁;Wrenら(2002年)、Comput. Methods Programs Biomed.、68巻、177〜181頁;von Heijne(1983年)、Eur. J. Biochem.、133巻、17〜21頁;von Heijne(1986年)、Nucleic Acids Res.、14巻、4683〜4690頁を参照されたい)。
【0151】
(実施例2)
抗ヒトIL−23p19抗体のヒト化
マウス抗ヒトIL−23p19抗体の6H12および7G10のヒト化は、参照により組み込まれるPCT特許出願公開の国際公開第2005/047324号および国際公開第2005/047326号に記載されるように、本質的にそのように行った。
【0152】
選択した抗IL−23モノクローナル抗体(6H12および7G10)の重鎖および軽鎖可変ドメインをクローニングし、ヒトκ軽鎖(CLドメイン)およびヒトIgG1重鎖(CH1−ヒンジ−CH2−CH3)にそれぞれ融合した。
【0153】
非ヒトVHドメインのアミノ酸配列を一群のヒトVH生殖系列アミノ酸配列5種:サブグループIGHV1およびIGHV4からの代表配列1種ずつ、ならびにサブグループIGHV3からの代表配列3種と比較した。VHサブグループは、M.−P. Lefranc、「Nomenclature of the Human Immunoglobulin Heavy (IGH) Genes」、Experimental and
Clinical Immunogenetics、18巻、100〜116頁、2001年に列挙されている。6H12および7G10抗体は、サブグループVH1中のヒト重鎖生殖系列DP−14に対して最高点を取った。
【0154】
全ての非ヒト抗体について、そのVL配列はκVLサブクラスに属していた。非ヒトVLドメインのアミノ酸配列を一群のヒトVLκ生殖系列アミノ酸配列4種と比較した。その一群4種は、V. Barbie & M.−P. Lefranc、「The Human Immunoglobulin Kappa Variable (IGKV)
Genes and Joining (IGKJ) Segments」、Experimental and Clinical Immunogenetics、15巻、171〜183頁、1998年、およびM.−P. Lefranc、「Nomenclature of the Human Immunoglobulin Kappa
(IGK) Genes」、Experimental and Clinical Immunogenetics、18巻、161〜174頁、2001年に列挙されたヒトVLの4樹立サブグループ各々からの1代表配列からなる。該4サブグループは、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、U. S. Department of Health and Human Services, NIH Pub. 91−3242, 5th Ed.、1991年、103〜130頁)に列挙された4サブグループとも一致する。6H12および7G10抗体は、サブグループVLkI中のヒト軽鎖生殖系列Z−012に対して最高点を取った。
【0155】
可変重鎖および軽鎖の標的アミノ酸配列が一旦決定するや、全長ヒト化抗体をコードするプラスミドを産生した。VH3 DP−46およびVLkI Z−012の生殖系列フレームワークを有するヒト化抗IL−10抗体をコードするプラスミドから始めて、Kunkel変異誘発(例えば、Kunkel T A.(1985年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、82巻、488〜492頁を参照されたい)を用いて該プラスミドを変化させることにより、標的ヒト化6H12または7G10配列に対してそのDNA配列を変化させた。同時に、コドン最適化をその変化に組み込むことにより、潜在的に最適な発現をもたらした。シグナル配列を含む、産生したヒト化重鎖および軽鎖配列は、配列番号1および2(抗体6H12)、ならびに配列番号3および4(抗体7G10に対して)にそれぞれ示す。
【0156】
類似の手順を行って、抗体10H11および22E9をヒト化するために適切なヒトフレームワークを決定した。抗体10H11は、サブグループVH3中のヒト抗体重鎖生殖系列DP−46、およびサブグループVLkIII中の軽鎖生殖系列Z−A27に対して最高点を取った。抗体22E9は、サブグループVH1中のヒト抗体重鎖生殖系列DP−14、およびサブグループVLkIV中の軽鎖生殖系列Z−B3に対して最高点を取った。産生したヒト化重鎖および軽鎖可変ドメイン配列は、配列番号90および91(抗体10H11)、ならびに配列番号92および93(抗体22E9に対して)にそれぞれ示す。
【0157】
(実施例3)
KinExA技術を用いたヒト化抗ヒトIL−23の平衡解離定数(K)の決定
抗ヒトIL−23抗体の平衡解離定数(K)を、KinExA 3000機器(Sapidyne Instruments Inc., www.sapidyne.com)を用いて決定した。KinExAは、抗体、抗原および抗体−抗原複合体の混合物中での非複合化抗体の濃度の測定に基づいた、速度排除アッセイ法の原理を使用する。遊離抗体の濃度は、その混合物を固相固定化抗原に非常に短い時間曝すことにより、測定する。実際には、これは、溶液相抗原−抗体混合物をフローセル中に捕捉された抗原被覆粒子を通過するように流すことにより、実現される。該機器が生成したデータは、特注ソフトウェアを用いて分析する。平衡定数は、以下の仮定に基づく数学理論を用いて計算する。
【0158】
1.結合は、次の可逆結合平衡式に従う。
【0159】
【化5】

2.抗体および抗原は1:1で結合し、全抗体は抗原−抗体複合体と遊離抗体との和に等しい。
【0160】
3.機器シグナルは、遊離抗体濃度と一次的に関係する。
【0161】
98ミクロンPMMA粒子(Sapidyne, Cat No. 440198)を、Sapidyne「Protocol for coating PMMA particles with biotinylated ligands having short or nonexistent linker arms」に従って、ビオチニル化rhIL−23で被覆した。rhIL−23のビオチニル化のために、EZ−link TFP PEO−biotin(Pierce, Cat. No. 21219)を製造業者の推奨(Pierce bulletin 0874)に従って使用した。全ての実験手順は、KinExA 3000のマニュアルに従って行った。
【0162】
ヘテロ二量体IL−23タンパク質を3形態用いた。天然または非結合型ヒトIL−23は、ジスルフィド結合により共有結合で連結されている2本の連鎖p19およびp40からなっていた。「非結合型」IL−23は、ヒトp19:FLAGタグペプチドと293T細胞中で共発現したヒトp40からなり、抗FLAGペプチドアフィニティーカラム上で精製される。非還元性SDS−PAGEにより、精製済み非連結IL−23は、二量体、三量体などに相当する分子量の多量体IL−23形の存在を示した。
【0163】
「エラスチカイン(elastikine)」IL−23は、FLAGタグペプチド:GLUタグペプチド:ヒトp40:エラスチリンカー(elasti−liker):ヒトp19からなる1本鎖ペプチドである。エラスチリンカーペプチド配列は、R & D
Systemsの市販IL−23形から誘導した。エラスチカインは、293T細胞中で発現し、抗FLAGペプチドアフィニティーカラム上で精製した。非還元性SDS−PAGEにより、精製済みエラスチカインIL−23は、二量体、三量体などに相当する分子量の多量体IL−23形の存在を示した。
【0164】
SF9細胞中に共発現した天然ヒトIL−23p19/p40の非タグ、非結合型形は、eBioscience(CAT No. 34−8239)から購入した。非還元性SDS−PAGEにより、精製済みeBioscienceヒトIL−23は、多量体IL−23形の存在を示さなかった。
【0165】
測定試験は全て、以下の条件下で2回繰り返した。試料容量:1.5mL、試料流速:0.25mL/分、標識容量:0.5mL、標識流速:0.25mL/分、mAb濃度:0.1nM、最高Ag(hIL−23)濃度:4.0nM、最低Ag(hIL−23)濃度:3.91pM。抗原の2倍連続希釈液を調製し、一定濃度の抗体と混合した。混合物は、室温で2時間インキュベートし、平衡化した。
【0166】
表4は、KinExA分析の結果を示す。
【0167】
【化6】

(実施例4)
BIAcore技術を用いたヒト化抗ヒトIL−23p19抗体の平衡解離定数(K)の決定
全てのリガンド(抗IL−23 mAb)は、アミンカップリング標準手順を用いてBIAcore CM5センサーチップ上に固定化した。全ての実験は、PBS中25℃、10μL/分の流速で行った。全てのIL−23形は、PBS中で希釈して様々な濃度にした。様々な相互作用に対する速度定数は、BIAevaluationソフトウェア3.1を用いて決定した。Kは、解離および会合速度定数の計算値を用いて決定した。各タンパク質は、以下の濃度で使用した:抗IL−23 mAb hu7G10はPBS中0.33mg/mL、抗IL−23 mAb hu6H12はPBS中0.2mg/mL、bac−wtヒトIL−23はPBS中0.30mg/mL、eBioscienceヒトIL−23はPBS中0.10mg/mL、N222QヒトIL−23はPBS中0.33mg/mL。
【0168】
上記のタンパク質以外に、他の形態も使用した。「bac−wt」ヒトIL−23は、配列が「エラスチカイン」ヒトIL−23と同じである。このIL−23は、SF9細胞中で発現し、抗FLAGペプチドアフィニティーカラム上で精製した。非還元性SDS−PAGEにより、この精製済みIL−23は、多量体IL−23形の存在を示さなかった。「N222Q」ヒトIL−23は、p40サブユニット中でAsn222がGlnに変化したことを別とすれば、配列が「エラスチカイン」ヒトIL−23と同じである(GenBank受入番号P29460)。このIL−23は、SF9細胞中で発現し、抗FLAGペプチドアフィニティーカラム上で精製した。非還元性SDS−PAGEにより、この精製済みN222Q IL−23は、多量体IL−23形の存在を示さなかった。
【0169】
以下の固定化および再生条件は、全ての実験に使用された。流速:5μL/分、NHS/EDC:10μL、タンパク質:10mM酢酸Na、pH5.0の10μL中5μg/mL、エタノールアミン:40μL、再生液:50mM NaOH5μL。
【0170】
表5は、BIAcoreにより決定した場合のK値を示す。
【0171】
【化7】

【0172】
【化8】

(実施例5)
中和用抗IL−23抗体を評価するための増殖バイオアッセイ
モノクローナル抗体の生物学的IL−23中和能は、組換えIL−23受容体を発現する細胞を用いた短期増殖バイオアッセイの適用により、評価した。トランスフェクタントのBa/F3−2.2lo細胞は、ヒトIL−23に応答して増殖し、その応答は、中和用抗IL−23抗体により抑制することができる。抗体の滴定は、用量・応答曲線の直線領域、平坦域近傍、およびEC50超に選んだIL−23の濃度に対して行う。増殖またはその欠如は、代謝活性の検出に基づく増殖指示色素であるアラマーブルーを用いる比色手段により測定する。抗体のIL−23中和能は、そのIC50値、即ちIL−23増殖の半量抑制を誘発する抗体濃度により評価する。
【0173】
IL−23Rトランスフェクタント細胞系および細胞培養
【0174】
【化9】

Ba/F3トランスフェクタントは、RPMI−1640培地、10%ウシ胎児血清、50μM 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、50μg/mL ペニシリン−ストレプトマイシンおよび10ng/mLマウスIL−3の中で維持される。「Cyno」とは、カニクイザルIL−23を指す。
【0175】
増殖バイオアッセイ培地
Ba/F3増殖バイオアッセイは、RPMI−1640培地、10%ウシ胎児血清、50μM 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、および50μg/mL ペニシリン−ストレプトマイシンの中で行った。
【0176】
手順
アッセイは、96穴平底プレート(Falcon3072または類似品)中で行った。試薬および細胞懸濁液の調製には、全て適当な培地を利用した。アッセイ容量は、150μL/穴であった。抗IL−23抗体の滴定液は、室温で30〜60分間IL−23と予備インキュベートし、その間に細胞を調製した。抗体−サイトカインの予備インキュベーション後、細胞をプレートに添加した。バイオアッセイプレートは、加湿した組織培養チャンバー(37℃、5%CO)中、40〜48時間インキュベートした。培養期間の終了時に、アラマーブルー(Biosource Cat #DAL1100)を16.5μL/穴で添加し、5〜12時間発色させた。次いで、吸光度を570nmおよび600nmで読み取り(VERSAmax Microplate Reader、Molecular Probes)、OD570〜600を得た。各試料に対して測定を2回行った。
【0177】
細胞調製
細胞は、健常な増殖状態、一般に3〜8×10個/mLの濃度で使用した。細胞を計数し、ペレット化し、バイオアッセイ培地中で2度洗浄し、適当な濃度に懸濁した後、播種した。
【0178】
IL−23の用量−応答
IL−23は、使用濃度(3ng/mL)に調製し、第1の穴に75μLを添加した。各穴ともバイオアッセイ培地中で25:50μLで滴定し、50μL/穴を残すことにより、1:3の連続希釈液を作製した。細胞は、100μL/穴で播種するために、適当な濃度に懸濁した。
【0179】
中和用抗体の用量−応答
抗体は、使用濃度(30μg/mL)に調製し、第1の穴に75μLを添加した。各穴ともバイオアッセイ培地中で25:50μLで滴定し、50μL/穴を残すことにより、1:3の連続希釈液を作製した。滴定済み抗体を含有する各穴に、適当な濃度のIL−23を50μL/穴で添加した。細胞は、50μL/穴で播種するために、適当な濃度に懸濁し、抗体−サイトカインの予備インキュベーション後に添加した。
IC50の決定
GraphPad Prism 3.0ソフトウェアを用いて、吸光度をサイトカインまたは抗体の濃度に対してプロットし、S字形曲線の用量−応答に対して非線形回帰(曲線の当てはめ)を用いてIC50値を決定する。
【0180】
表6は、抗IL−23p19抗体によりBa/F3細胞の増殖を遮断するためのIC50値を示す。
【0181】
【化10】

【0182】
【化11】

(実施例6)
抗IL−23p19抗体7G10に対するエピトープ
抗体7G10がヒトIL−23p19(配列番号29)に結合するためのエピトープをX線結晶解析で決定した。抗体7G10のキメラ型のFab断片と、p19およびp40サブユニットからなる非結合型ヒトIL−23との複合体に対して、座標を決定した。ヒトIL−23p19の配列は配列番号29に見出され、ヒトIL−12/IL−23 p40の成熟型の配列は、GenBank受入番号P29460の残基23〜328に見出される。抗体7G10のキメラ型は、i)ヒト重鎖定常領域(配列番号3の残基135〜464)に融合したマウス7G10 Vドメイン(配列番号6)を含む重鎖、およびii)ヒト軽鎖定常領域(配列番号4の残基130〜233)に融合したマウス7G10 Vドメイン(配列番号18)を含む軽鎖を含んでいる。
【0183】
抗体7G10上の残基から4.0Å以内にあるIL−23アミノ酸残基は、E82、G86、S87、D88、T91、G92、E93、P94、S95、H106、P133、S134、Q135、P136、W137、R139、L140を含む。追加の残基K83、F90およびL110は、5.0Å以内にあった。IL−23p19上のあるアミノ酸残基は、その残基の任意の原子の座標が、該抗体の任意の原子の座標から所与の距離以内にある場合、該抗体から所与の距離以内にあると見なされる(例えば、4.0Åまたは5.0Å)。
【0184】
これらの接触残基は大部分、IL−23p19の一次構造に沿った2個の主要クラスター内に入り、第1のクラスターは、残基82〜95を含み(その14残基中11個は該抗体から5.0Å以内にあり、14残基中9個は4.0Å以内にある)、第2のクラスターは、残基133〜140を含む(その8残基中7個は該抗体から4.0Å以内にある)。これらのクラスターは、IL−23p19の8個以上の隣接アミノ酸残基の長さを含むエピトープを規定し、その残基の50%、70%および85%以上が該抗体から5.0Å以内にある。
【0185】
これらのクラスターの一方または両方に結合する抗体は、抗体7G10の結合を遮断すると予想されよう。6個のCDR配列全て(図1A〜1Cおよび2A〜2Cを参照されたい)の間に強い配列相同性があるとすれば、「(a)軽鎖サブファミリー」(6H12、33B12、13F11、13B5、13G1、11C10、7E2、30F11、34E4、6H4、33D2)も、抗体7G10と実質的に同じIL−23p19内エピトープに結合すると思われる。「(a)軽鎖サブファミリー」の可変ドメイン配列の抗体用のコンセンサスCDR配列は、配列番号69、72および75に示されている。対応する重鎖可変ドメインのコンセンサス配列は、配列番号66〜68に示されている。抗体7G10と同じエピトープに結合する抗体は、親和性およびIC50が恐らくやや変動し得るものの、実施例5および表6に記載のアッセイにおけるBa/F3細胞増殖の遮断などの類似した生物活性を示すと予想されよう。
【0186】
表7に、配列一覧表における各配列の簡単な説明を示す。
【0187】
【化12】

【0188】
【化13】

【0189】
【化14】

【0190】
【化15】

本発明の多くの改変および変更は、当業者には明らかであろうが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずになすことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、例示だけのために提示しており、本発明は、添付の特許請求の範囲(特許請求の範囲が請求する範囲に対する均等物の全範囲を含む)の表現により制限すべきであって、本発明は、例示だけのために本明細書に提示した特定の実施形態により制限すべきではない。
【0191】
前記の刊行物または文書の引用は、前記したそのようなもののいずれであれ、適正な従来技術であることを認めることを意図するものではないし、こうした刊行物または文書の内容または日付を認めるものでもない。本明細書に引用した米国特許および他の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

【数17】

【数18】

【数19】

【数20】

【数21】

【数22】

【数23】

【数24】

【数25】

【数26】

【数27】

【数28】

【数29】

【数30】

【数31】

【数32】

【数33】

【数34】

【数35】

【数36】

【数37】

【数38】

【数39】

【数40】

【数41】

【数42】

【数43】

【数44】

【数45】

【数46】

【数47】

【数48】

【数49】

【数50】

【数51】

【数52】

【数53】

【数54】

【数55】

【数56】

【数57】

【数58】

【数59】

【数60】

【数61】

【数62】

【数63】

【数64】

【数65】

【数66】

【数67】

【数68】

【数69】

【数70】

【数71】

【数72】

【数73】

【数74】

【数75】

【数76】

【数77】

【数78】

【数79】

【数80】

【数81】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate


【公開番号】特開2011−130771(P2011−130771A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−66727(P2011−66727)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【分割の表示】特願2008−529203(P2008−529203)の分割
【原出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】