説明

改変超音波技術を使用する非侵襲性血管内血栓溶解

【課題】超音波技術を使用して患者の脈管構造中の血塊を破壊するための非侵襲性方法の提供。
【解決手段】ガスで満たされた小胞を持たない組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を、患者に血管内投与するように構成された注射用装置を活性化する工程;ならびに超音波変換器により発生し、かつ2ワット/cm2の出力と約10%のデューティサイクル(duty cycle)を有する超音波エネルギーを、超音波エネルギーがない場合に得られる血塊溶解の量に比べて少なくとも50%上回る量の血塊溶解が起きるように、血塊に方向付ける工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的には治療用超音波の分野に関し、より詳細には、血管の血塊の超音波破壊のための安定化されたガスで満たされた小胞の使用に関し、これは、任意に磁気共鳴映像法(MRI)によってモニタリングされる。
【背景技術】
【0002】
背景
ヒトにおける疾患を診断するために使用されてきた種々の映像化技術が存在している。利用された最初の映像化技術の1つはX線であった。X線においては、作成された生じた患者の身体の映像は、異なる密度の身体構造を反映する。この映像化技術の診断的有用性を改善するために、造影剤が、周りを取り囲む組織と比較して関心対象の組織の密度を増加させて、X線上で関心対象の組織をより可視化するために利用される。例えば、バリウムおよびヨウ素化された造影剤が、食道、胃、腸、および直腸を可視化するためにX線胃腸研究のために広範に使用される。同様に、これらの造影剤は、胃腸管の可視化を改善するため、および例えば、胃腸管と、血管またはリンパ節などのそれに隣接する構造との間のコントラストを提供するために、X線コンピュータ化断層撮影研究(すなわち、コンピュータ連動断層撮影またはCAT)のために使用される。このような造影剤は、食道、胃、腸、および直腸の内部の密度を増加させて、周りを取り囲む構造からの胃腸系の区別を可能にする。
【0003】
磁気共鳴映像法(MRI)は、X線とは異なり、電離放射線を利用しない比較的新しい映像化技術である。コンピュータ連動断層撮影(CAT)と同様に、MRIは、身体の横断面の映像を作成することができる;しかし、MRIは任意の走査平面(すなわち、軸方向、冠状面、矢状方向、または直交性)において映像を作成することが可能であるというさらなる利点を有する。不運にも、身体のための診断モダリティーとしてのMRIの完全な有用性は、新規なまたはより有用な造影剤についての必要性によって妨害される。適切な造影剤がない場合、隣接する組織から標的組織を区別するためにMRIを使用することはしばしば困難である。より良好な造影剤が利用可能である場合、映像化ツールとしてのMRIの全体的な有用性は改善され、このモダリティーの診断的正確さは非常に増強される。
【0004】
MRIは、身体の映像を作成するために、磁場、高周波エネルギー、および磁場勾配を利用する。組織間でのコントラスト、すなわちシグナル強度の違いは、主として、T1(縦方向)およびT2(横方向)の緩和値および組織のプロトン密度(有効には、遊離の水含量)を反映する。造影剤の使用によって患者の領域のシグナル強度を変化させる際に、いくつかの可能なアプローチが利用可能である。例えば、造影剤は、T1、T2、またはプロトン密度を変化させるように設計され得る。
【0005】
過去において、主としてMRIのための常磁性造影剤に対して注意が集中されてきた。常磁性造影剤は不対電子を含み、これは、縦方向(T1)および横方向(T2)の緩和の速度を増加させるために主磁場内の小さな局所的磁石として働く。最も常磁性の造影剤は金属イオンであり、これは多くの場合毒性である。毒性を減少させるために、これらの金属イオンは一般的にリガンドを使用してキレートされる。得られる常磁性金属イオン錯体は毒性が減少している。金属酸化物、最も顕著には酸化鉄もまた、MRI造影剤として試験されてきた。酸化鉄の小さな粒子(例えば、20nm直径より下)は、常磁性緩和特性を有する可能性があるが、それらの優勢な効果は体積磁化率を通してである。それゆえに、磁気粒子はT2緩和に対してそれらの優勢な効果を有する。窒素酸化物は、これもまた常磁性である、別のクラスのMRI造影剤である。これらは比較的低い緩和性を有し、一般的に、MRI緩和剤として常磁性イオンよりも効果的でない。これらの造影剤のすべてが使用の特定の状況における何らかの毒性効果に苦しむ可能性があり、これらのいずれも、それらだけで灌流造影剤としての使用のために理想的ではない。
【0006】
特定の既存のMRI造影剤は多数の制限という欠点を有する。例えば、ポジティブ造影剤は、固有の蠕動運動および呼吸または心臓血管の作用からの運動から生じる映像ノイズの増加を示すことが知られている。ポジティブ造影剤(例えば、Gd-DTPA)は、シグナル強度が薬剤の濃度ならびに使用されるパルス配列に依存するというさらなる複雑さに供せられる。胃腸管からの造影剤の吸収は、十分に高い濃度の常磁性種が使用されない限り、特に小腸の遠位部分において、例えば、映像の解釈を複雑にする(Kornmesser et al. Magn. Reson. Imaging 6: 124 (1988))。対照的に、ネガティブ造影剤は、パルス配列におけるバリエーションに対してより感受性が低く、かつより一貫したコントラストを提供するが、典型的には、脂肪に対して優れたコントラストを示す。しかし、T1加重映像において、ポジティブ造影剤は通常の組織に対して優れたコントラストを示す。大部分の病理学的組織は、正常組織よりも長いT1およびT2を示すので、これらはT1加重映像上で暗く、かつT2加重映像上で明るく見える。このことは、理想的な造影剤が、T1加重映像上で明るく、かつT2加重映像上で暗く見えるべきであることを示す。現在利用可能であるMRI造影剤の多くは、これらの二重の判断基準に合致し損ねている。
【0007】
毒性は、特定の存在している造影剤に伴う別の問題である。何らかの毒性が存在するいずれかの薬物を用いると、毒性は一般的には用量に関連する。フェライトを用いると、経口投与後の悪心の徴候、ならびに膨満および血清鉄の一過性の上昇がしばしば存在する。常磁性造影剤Gd-DTPAは、錯化剤ジエチレントリアミン五酢酸とカップリングしたガドリニウムイオンの有機金属錯体である。カップリングなしでは、遊離のガドリニウムイオンは高度に毒性である。さらに、例えば、胃が酸を分泌しかつ腸がアルカリを放出する胃腸管の特性は、胃腸での使用の間のpHの変化の結果として、錯体からの遊離のガドリニウムまたは他の常磁性剤のデカップリングおよび分離の可能性を上昇する。確かに、常磁性剤の用量を最小化することは、いかなる潜在的な毒性効果をも最小化するために重要である。
【0008】
1990年4月10日に出願された米国出願第07/507,125号に記載されているMRI造影剤についての研究において、MRI造影剤としてポリマー組成物および常磁性剤または超常磁性剤と組み合わせてガスが使用されている。ポリマーによって安定化されたガスは、T2加重映像上のシグナル強度を減少するための有効な敏感な造影剤として機能し、そしてこのような系は、胃腸のMRI造影剤としての使用のために特に有効である。
【0009】
Widder et al.による出願公開EP-A-0 324 938は、熱変性可能な生体適合性タンパク質、例えば、アルブミン、ヘモグロビン、およびコラーゲンから産生された、安定性超微粒気泡型超音波映像化剤を開示している。
【0010】
Moseley et al.によって、1991 Napa, Calif. meeting of the Society for Magnetic Resonance in Medicineにおいて行われたと考えられている講演もまた言及されており、これは「Microbubbles: A Novel MR Susceptibility Contrast Agent」という表題の概要に要約されている。利用される超微粒気泡は、ヒトアルブミンのシェルで覆われた空気を含む。
【0011】
しかし、血管内使用のためには、いかなるガス気泡も、しばしば壊れやすくかつ柔軟性がない気泡のシェルを回避するために、柔軟性のある非タンパク質化合物で安定化されることが有利である。なぜなら、壊れやすいコーティングは、気泡が身体内の異なる圧力の領域に遭遇するときに(例えば、心臓を通しての循環の際に静脈系から動脈に移動するときに)気泡が拡がりかつ破裂する能力を制限するからである。壊れやすいシェルは破裂しガスを喪失する可能性があり、それによって、有用なコントラストがこれらの超微粒気泡造影剤からインビボで得られ得る間の有効時間を制限する。また、このようなもろく、壊れたフラグメントは潜在的に毒性であり得る。
【0012】
Quayによる国際公開公報第93/05819号は、高い拡散係数(すなわち、Q数)を有するガスが理想的な安定なガスであることを開示する。例えば、ソルビトールが粘性を増加するために使用され、これは次には、溶液中で超微粒気泡の寿命を延長する。
【0013】
Lanza et al.による国際公開公報第93/20802号は、音響的に反射性のオリゴ層リポソームを開示している。これは、より小さなリポソームが、内部で二重層を分離するような非同心的な様式で二重層中で入れ子にされ得る、二重層間の水性空間の増加を伴う。超音波映像化を増強するため、および患者に対してそこに送達された薬物をモニタリングするために、超音波造影剤としてこのようなリポソームの使用もまた、記載されている。
【0014】
D'Arrigoによる米国特許第4,684,479号および同第5,215,680号は、それぞれ、液体中ガスエマルジョンおよび脂質コート超微粒気泡を開示している。
【0015】
超音波モダリティーに対する技術的な改善にも関わらず、得られる映像はなお、特に、血管の血液供給を用いて灌流される脈管構造および組織の映像化に関してさらに洗練される。この目的のために、造影剤が、典型的には脈管構造および脈管構造関連器官の可視化において補助するために使用される。小胞の表面において作られる界面における音響の反射が極度に有効であるため、特に、超微粒気泡または小胞が超音波のための造影剤として望ましい。これらの小胞はまた、脈管構造中で手術を実行するため(米国特許第6,576,220号)または局所的治療のために薬物もしくは核酸物質を送達することによる治療をもたらすため(米国特許第6,443,898号および同第5,770,222号)などの、超音波と組み合わせた治療方法においても有用である。最初に、好ましくは脂質またはアルブミンを含む、水性懸濁物または粉末(すなわち、気泡コーティング剤)を、バイアルまたは容器中に配置することによって、超微粒気泡を含む適切な造影剤を製造することが知られている(例えば、米国特許第6,551,576号)。次いで、ガス相を、バイアルの残りの部分、すなわちヘッドスペースにおける、水性懸濁液または粉末の相の上に導入する。次いで、バイアルを、超微粒気泡を形成させるために使用の前に振盪する。振盪の前に、バイアルは水性懸濁物または固相および気相を含むことは認識されている。広範な種々の気泡または小胞コーティング剤が水性懸濁相または乾燥粉末固相において利用されてもよく、これらには例えば、脂質から構成されるもの(例えば、Alliance Pharmaceuticalによって開発され、Bristol Meyers Squibb Medical Imaging or Imagent(登録商標)によって販売されているDefinity(登録商標))、アルブミンなどのタンパク質を含むもの(例えば、Amershamによって販売されているOptison(商標))、アルブミンおよびデキストロースを含むもの(PESDA、米国特許第5,648,098号)、またはポリマーを含むもの(米国特許第5,512,268号)が含まれる。同様に、広範な種々の異なるガスが気相において利用され得る。しかし、特に、六フッ化硫黄などのフッ化ガスまたはパーフルオロプロパン(パーフルトレン)などのパーフルオロカーボンガスが使用され得る。例えば、Unger et al. 米国特許第5,769,080号を参照されたい。Imagent(登録商標)におけるパーフルオロヘキサンおよび窒素などのガスの混合物もまた使用される。上記の特許の各々の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0016】
本発明に従って、安定化されたガスを満たした小胞が、血塊の非侵襲性超音波溶解のための、任意にMRIで同時にモニタリングされる、極度に効率的な、非毒性の造影剤であることが発見された。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、周囲の脈管構造に対する損傷または患者に対する実質的な不快症状を伴うことなく、患者の末梢脈管構造中で血塊を破壊するために、適用された非侵襲性超音波が、血管内投与されたガスを満たした小胞を破裂させることを可能にする、改変超音波パラメーターの発見に基づく。
【0018】
従って、本発明は、(a)ガスまたはガス前駆体を含む小胞の水性製剤、および脂質安定化化合物を患者に血管内投与する工程によって、患者の末梢脈管構造内で血塊を破壊するための方法を提供する。約10%〜約80%の負荷サイクルのために3.0以下の力学的指標を有する約0.1ワット/cm2〜約30ワット/cm2の出力を有する超音波が、血塊の部位に隣接する小胞の破裂を誘導するために十分な期間、血塊の部位において患者に適用され、それによって血塊を破壊する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フルオレセイン標識したフィブリノーゲンヒト血塊の溶解速度に対する本発明の方法の効果を示すグラフである(n=6)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の方法において、患者は、ガスを満たした小胞を血管内投与され、小胞は血塊に隣接する点まで通過し、そして血塊を有する患者の領域を指向する超音波エネルギーが小胞を破裂させるために使用され、それによって血栓溶解を実行する。任意に、磁気共鳴映像法(MRI)などの映像化モダリティーが、破裂のために、ガスで満たされた小胞の血塊の血管内部位への通過をモニタリングするために同時に使用され得る。超音波血栓溶解の成功を決定するための第2のMRIスキャニングが、超音波の適用を追跡し得る。超音波のスキャニングおよび適用は、所望の効果が達成されるまで、反復して使用され得る。
【0021】
本発明の方法において使用される小胞は、ガスまたはガス前駆体、例えば、10個を超えない炭素原子を有するパーフルオロカーボンを含み、かつ超音波エネルギーによる小胞の破裂の際に血栓溶解を増強するように働き、ならびにMRIを使用するプロセスをモニタリングするための優秀な造影剤である。ガスを満たした小胞は、生体適合性脂質を含むことによって安定化され、任意に、超音波による小胞の破裂の際に患者の局在化された領域に放出される治療剤をさらに含んでもよい。例えば、この治療剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、天然または組換えのいずれかのウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、レテプラーゼ、ワファリン、テネクテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジンなどの血栓溶解剤、またはヘパリン(例えばヘパリン硫酸および低分子ヘパリン)などの抗凝固剤または亜酸化窒素であり得る。本発明の方法に従う小胞によって有利に送達され得るさらなる治療剤は、米国特許第5,770,222号および同第6,443,898号において開示されており、これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0022】
小胞の循環半減期が十分に長いならば、この小胞は、一般的に身体を通過するにつれて標的脈管構造を通過する。処理される選択された組織に対して、破裂を誘導する音波の焦点を合わせることによって、この小胞は標的脈管構造中で局所的に破裂する。アルキル化、アシル化を介して表面に取り込まれ得る抗体、炭水化物、ペプチド、糖ペプチド、グリコリピド、レクチン、糖結合体、ならびに合成および天然のポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールであるがこれらに限定されない)を標的とするためのさらなる補助として、リン脂質(例えば、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、またはジステロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)など)のステロール基または誘導体化頭部基もまた、小胞の表面に組み込まれてもよい。
【0023】
本発明は、しばしば顕著な付随する利点を伴って、ガスを満たした小胞のガスを形成するためのガス前駆体を使用することによって実行され得る。これらのガス前駆体は、多数の要素によって活性化され得るが、好ましくは、温度で活性化される。このようなガス前駆体は、選択された活性化または移行の温度において、液体または固体からガスに相を変化させる化合物である。従って、活性化は、化合物の温度を、活性化または移行の温度よりも下の温度から、活性化または移行の温度よりも上の温度まで増加させることによって起こる。小胞の形成において使用される脂質は、単層または二重層の形態であり得、単層または二重層の脂質が一連の同心性の単層または二重層を形成するために使用され得る。従って、脂質は、単層リポソーム(1つの単層または二重層の脂質から構成される)、オリゴ層リポソーム(2つまたは3つの単層または二重層の脂質から構成される)、または多層リポソーム(3つより多くの単層または二重層の脂質から構成される)を形成するために使用され得る。生体適合性脂質は、リン脂質を含む組み合わせであり得る。任意に、本発明の方法において使用される小胞が造影剤として働く場合、常磁性化合物または超常磁性化合物もまた、小胞によってカプセル化され得るか、または小胞に結合され得る。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の局面は、本発明の開示された態様の徹底的な理解を提供するために多数の詳細を含む、以下の詳細な説明からより明らかになる。しかし、これらの詳細な説明なしで複数の態様が実施可能であることは当業者には明らかである。他の例において、当技術分野において周知であるデバイス、方法、手順、および個々の成分は、本明細書において詳細に記載されていない。
【0025】
定義
本明細書で使用される単数形(「a」または「an」)は、1つではなく1つ以上の品目を意味し得る。
【0026】
本明細書で使用される「ガス前駆体」は、製造および保存の温度において液体または固体であるが、少なくとも使用の時点でまたは使用の間にガスになる。
【0027】
本明細書で使用される「同時に」という用語は、超音波および磁気共鳴映像法が同時発生的にまたは同調的に;連続的にまたは逐次的に適用され得;その結果、血塊の部位への小胞の通過の可視化、ならびに超音波による小胞および組織の破壊が観察されることを意味する。従って、超音波および磁気共鳴は同時に実行され得、または一方が他方によって追跡され得る。超音波を伴う磁気共鳴映像法の使用は、全体の身体が磁気共鳴映像法によってスキャンされ得るので、小胞の位置を正確に確認することによって、現在利用可能な映像化モダリティーの正確さを改善する。血塊の溶解が所望されている身体の領域に一旦配置されたならば、血塊を溶解するための破壊エネルギーを加えて、小胞は超音波によって破裂され得る。
【0028】
本明細書で使用される、「ヘパリン」という用語は、低分子量ヘパリン誘導体、ならびに抗凝固活性を有する未分画ヘパリンが含まれる。一般的に、ヘパリンは、約3,000〜約40,000までの範囲の分子量を有する。ヘパリンは、可変性の長さの硫酸化単鎖グリコアミノグリカンからなる。低分子量ヘパリンは、その分子量がE.A. Johnson et al., Carbohydr Res 51: 119-27, 1976(これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)によって十分に特徴付けられた未分画ヘパリンの誘導体の一群である。ヨーロッパにおいては広範に使用されているが、米国において現在利用可能である低分子量ヘパリンは、エノキサプリン(enoxaprin)(商標)(Lovenox, Rhone-Poulenc Rorer)およびフラグミン(登録商標)(Pfizer)のみである。ヘパリンは高度に親油性であり、非毒性であり、そして酸化LDL-コレステロールに対して親和性を有して結合することが知られている。この事実は、ヘパリン誘導されたLDL沈殿の薬物耐性高コレステロール血症に対するアプローチにおいて長年の間利用されてきた。この研究の結果として、ヘパリンの静脈内投薬は、当業者によって周知である。
【0029】
本明細書において使用される、「血栓溶解剤」という用語には、血塊を形成する身体の能力(または血小板の血塊促進効果)を妨害する薬物が含まれる。このような薬物の中には、「組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)」があり、これは、ヒトにおいて、天然に存在し、かつ血塊の溶解を引き起こす酵素、ならびに組換えDNA技術によって製造された人工のタンパク質をいう。組換え産生されたtPAは、総称的に「アルテプラーゼ」として知られており、種々の商業的な名称を有する。さらなる「血栓溶解剤」には、例えば、ワーファリン(クマディン(登録商標))、アスピリン、および非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)例えば、イブプロフェン(モトリン(Motrin)(登録商標))、ナプロキセン(ナプロシン(Naprosyn(登録商標)))、およびナブメトン(レラフェン(Relafen)(登録商標))が含まれる。特異的血小板阻害剤、例えば、クロピドグレル(プラビックス(Plavix(登録商標)))は、アルテプラーゼと相互作用し、かつ出血のリスクを増大することはないようである。当業者は、これらのどの血栓溶解剤が静脈内送達のために意図されるか、どれが動脈内送達のために意図されるか、および血塊の治療のために静脈内または動脈内のいずれで投与され得るかをいかにして区別するかを知っている。これらの薬物は、治療部位または遠位の部位のいずれかにおいて注入され得る。
【0030】
血栓溶解剤に加えて、特定の他の薬物または治療剤が、本発明の方法を使用して有利に送達され得る。例えば、スタチンおよび高密度脂質(HDL)などの抗高脂血症剤が、高脂血症剤治療の時点で同時投与され得る。
【0031】
本明細書において使用される「力学的指標(MI)」という用語は、以下のように定義される:MI=Pa/√Fc、ここでPa=Mpaにおける音圧であり、√Fc=中心周波数の平方根である。MIは国際的用語「キャビテーション指標(CI)」の対応物である。これらの指標は、強烈な超音波のパルスに曝露された組織に対する力学的損傷についての潜在能力の尺度である。これらの指標は、ピーク希薄化圧力および超音波パルスの周波数に基づく。
【0032】
本明細書において使用される、「負荷サイクル」という用語は、以下によって定義される:負荷サイクル=パルス持続時間(時間で)/パルス周期(オンおよびオフの時間)。
【0033】
「超音波映像化」は関心対象の組織上で実行され、超音波エネルギーは、一旦それらがそれらの意図された組織の目的地に達すると、小胞を活性化および破裂させるために使用され得る。集束され、または方向付けられた超音波とは、集束されていない超音波から区別される場合、身体の特定の領域に対する超音波エネルギーの適用をいい、その結果、超音波エネルギーは、選択された領域または標的域に集中される。さらに、「方向付けられた」とは、小胞および標的域を可視化することによって;ならびに超音波と同様に、それによって組織の破壊を可視化することによって超音波を導く磁気共鳴をいう。「非侵襲性」とは、皮膚における切開を伴わない内部身体組織の破壊および妨害をいう。
【0034】
超音波は、本発明に従って定義される場合、超音波エネルギーによる、脈管構造における血塊または血栓の溶解または破壊;および血管組織に隣接する小胞の活性化または破裂をいう。超音波は、核医学およびX線とは異なる診断用映像化技術である。なぜなら、これは、電離放射線の有害な効果に患者を曝露しないからである。さらに、核磁気共鳴映像化とは異なり、超音波は、比較的安価であり、卓上試験として実行され得る。超音波技術を使用する際に、音波が、変換器を介して患者または動物に伝達される。音波が身体を通して伝播するとき、これらは組織および体液からの界面に遭遇する。身体における組織および体液の音響的特性に依存して、超音波の音波は、部分的または全体的に反射または吸収される。音波が界面によって反射される場合、これらは変換器中の受信装置によって検出され、映像を形成するために処理される。身体内の組織および体液の音響特性は、得られる映像において現れるコントラストを決定する。代替的には、超音波が小胞を可視化するために使用され得、そして磁気共鳴映像法が小胞を活性化するために使用され得る。さらに、超音波エネルギーの強度が、小胞の破裂または活性化を生じるための強度にあり得る。次には、小胞の活性化が隣接する組織を破壊し、その結果、組織の壊死が生じる。
【0035】
任意の種々の型の診断用超音波映像化デバイスが本発明の実施において使用され得、特定のデバイスの型またはモデルは本発明の方法に対して決定的ではない。超音波温熱療法を投与するために設計されたデバイスもまた適切であり、このようなデバイスは、米国特許第4,620,546号、同第4,658,828号、および同第4,586,512号に記載されている(これらの各々の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる)。好ましくは、このデバイスは、共鳴周波数(RF)スペクトル分析装置を利用する。変換器プローブは外部に適用され、または移植され得る。超音波は、一般的には、より低い強度および持続時間で、好ましくはピーク共鳴周波数で開始され、次いで、微粒子が破裂するまで、強度、時間、および共鳴周波数が増加される。より詳細には、本発明の方法の実施において
【0036】
「小胞」とは、内部の空間の存在によって特徴付けられる球状の実体をいう。好ましい小胞は、本明細書に記載される種々の脂質を含む脂質から製剤化される。いかなる所定の小胞においても、脂質は単層または二重層の形態であり得、単層または二重層の脂質は、1つまたは複数の単層または二重層を形成するように使用され得る。1つより多くの単層または二重層の場合、その単層または二重層は一般的に同心性である。本明細書に記載される小胞には、一般的に、リポソーム、ミセル、気泡、超微粒気泡、エアロゲル、クラスレート結合小胞などと呼ばれるような実体が含まれる。従って、脂質は単層小胞(1つの単層または二重層から構成される)、オリゴ層小胞(約2つまたは約3つの単層または二重層から構成される)、または多層小胞(約3つより多くの単層または二重層から構成される)を形成するように使用され得る。小胞の内部空間は、所望されるように、液体(例えば、水性液体を含む)、ガス、ガス前駆体、および固体または溶質物質(例えば、標的化リガンドおよび生物活性剤を含む)で満たされ得る。
【0037】
「リポソーム」とは、一般的に、球状クラスターまたは両親媒性化合物(脂質化合物を含む)の凝集体をいい、典型的には、1つまたは複数の同心性の層の形態である。最も好ましくは、ガスで満たされたリポソームが、単一の層(すなわち、単層)または単一の脂質の単層から構築される。広範な種々の脂質が、リン脂質および非イオン性界面活性剤(例えば、ニオソーム)を含むリポソームを作り上げるために使用され得る。最も好ましくは、ガスで満たされたリポソームを含む脂質は、生理学的温度においてゲル状態にある。リポソームは、架橋または重合され得、そしてそれらの表面上にポリエチレングリコールなどのポリマーを有し得る。
【0038】
血塊に方向付けられる標的化リガンドは、ガスで満たされたリポソームの表面に結合され得る。標的化リガンドは、小胞に結合し、かつ特定の細胞型または分子(例えば、血小板またはフィブリン)に小胞を方向付ける物質である。例えば、7E3は、血小板に含まれる複合体化糖タンパク質IIb/IIIaに結合するIgG1モノクローナル抗体である。T2G1sモノクローナル抗フィブリン抗体フラグメント(Fab')は動脈の血栓に結合する。標的化リガンドは、共有結合または非共有結合によって小胞に結合され得る。リポソームはまた、本明細書において脂質小胞と呼ばれてもよい。最も好ましくは、リポソームは、それらの内部に実質的に水を欠いている。
【0039】
「ミセル」とは、ラウリル硫酸などの脂質化合物の濃度が臨界濃度より上にあるときに脂質化合物から形成するコロイド状の実体をいう。ミセルを形成する多くの化合物がまた、界面活性剤特性(すなわち、表面張力を低下させる能力、ならびに水と脂質の両方を好む親水性ドメインおよび疎水性ドメイン)を有するので、これらの同じ物質がまた、気泡を安定化させるために使用可能である。一般的に、これらのミセル物質は、単層または六方晶系H2フェーズ配置を優先的に採り、さらにまた二重層配置を採る可能性もある。ミセル物質がガスで満たされた小胞を形成するために使用される場合、化合物は一般的には、小胞に向かって配向した脂肪族性(脂質を好む)部分、および小胞表面から離れて配向される親水性ドメインを有する放射状配置を採る。内皮細胞を標的とするために、標的化リガンドは、ミセル化合物またはミセル化合物と混合された両親媒性物質に結合され得る。代替的には、標的化リガンドは、小胞を安定化するミセル物質の表面に吸収され得る。
【0040】
「エアロゲル」とは、エアロゲルの内部構造が一般的には、1つの空間ではなく複数の小さな空間から構成される以外は小胞と同様の構造をいう。さらに、エアロゲルは、好ましくは、合成物質から構築されるが(例えば、レゾルシノールおよびホルムアルデヒドをベーキングすることから調製されるフォーム)、しかし、天然の物質(例えば、ポリサッカリドまたはタンパク質)もまた、エアロゲルを調製するために使用され得る。標的化剤は、エアロゲルの表面に結合され得る。
【0041】
「クラスレート」は、一般的には、小胞の表面をコートするのではない、宿主として小胞を結合する固体物質である。固体、半多孔性、または多孔性のクラスレートが小胞を安定化させる薬剤として働くことができる;しかし、クラスレートそれ自体は、小胞の完全な表面を被覆しない。むしろ、クラスレートは、小胞がそこに適合するかもしれない空間を有する「ケージ」として公知の構造を形成する。1つまたは複数の小胞がクラスレートによって吸収され得る。小胞と同様に、1種またはそれ以上の界面活性剤がクラスレートとともに組み込まれ得、これらの界面活性剤は、小胞を安定化するために補助する。界面活性剤は、一般的に小胞を被覆し、かつクラスレートと小胞の結合を維持するように補助する。小胞を安定化するために有用なクラスレート物質は、多孔性アパタイト(例えば、ヒドロキシアパタイトカルシウム)、および金属塩を有するポリマーの沈殿物(例えば、カルシウム塩を有するアルギン酸)を含む。内皮細胞に方向付けられた標的化リガンドは、クラスレートそれ自体に、またはクラスレートとともに使用される界面活性剤物質に取り込まれ得る。
【0042】
「磁気共鳴映像法」(MRI)は、映像を作成するために(すなわち、小胞を可視化するために)、静主磁場;パルス高周波エネルギー、およびパルス磁場勾配を使用する。高周波および電気的勾配は、局所的エネルギー沈積を引き起こし、かつ小胞を活性化するために使用され得る;しかし、超音波が、小胞を活性化する目的のために好ましいエネルギーである。本発明の磁気共鳴映像法を実行する際に、造影剤が、単独で、または他の診断剤、治療剤、もしくは他の薬剤と組み合わせて使用され得る。このような他の薬剤には、香味付与物質または着色物質などの賦形剤が含まれる。利用される磁気共鳴映像技術は従来的なものであり、例えば、D.M.Kean and M.A.Smith, Magnetic Resonance Imaging: Principles and Applications, (William and Wilkins, Baltimore 1986)において記載されている。意図されるMRI技術には、核磁気共鳴(NMR)および電子スピン共鳴(ESR)、ならびに磁気共鳴血管形成術(MRA)が含まれるがこれらに限定されない。好ましい映像化モダリティーはNMRである。当然、MRIに加えて、磁気映像法が、本発明の範囲内で小胞を検出するために使用されてもよい。磁気映像法は磁場を使用し、さらにパルス勾配または高周波エネルギーを使用する必要はない。磁気映像法は磁気小胞(例えば、強磁性体小胞であるがこれに限定されない)を検出するために使用され得る。磁気映像法は、磁気探知器超電導量子インフェロメトリー素子(SQUID)によって実行され得る。SQUIDは、磁気粒子について身体組織のすべての迅速なスクリーニングを可能にする;次いで、超音波が、これらの領域に局在化され得る。この適用において、磁気共鳴映像法は磁気映像化を含むが、磁気映像化は、磁気小胞の映像化であり、その核の共鳴を含むものではないことが理解される。
【0043】
任意の特定の理論によって束縛されることを意図するものではないが、本発明は、気相、液相、および固相が異なる磁気感受性を有するという事実に、少なくとも部分的に依存すると考えられる。例えば、ガスおよび水の界面において、磁気ドメインは変化し、これは、例えば、水素核のスピンの位相の散逸を生じる。映像化において、このことは、ガス/水界面に隣接するシグナル強度の減少として見られる。この効果は、T2加重映像においてより顕著であり、勾配エコーパルス配列に対して最も顕著である。狭い帯域幅を使用すると、延長された読み取りパルス配列がこの効果を増大する。勾配エコーパルス配列上でのエコー時間を長くするほど、この効果はより大きくなる(すなわち、シグナルの損失の程度およびサイズがより大きくなる)。
【0044】
本発明の方法において有用である安定化されたガスで満たされた小胞は、高い性能レベルの磁気共鳴映像法造影剤として作用し、ならびに血塊の破壊において有効であるために、この相の磁気感受性の違い、ならびに本明細書においてより詳細に記載される他の特性に依存すると考えられる。この小胞は、ガスで満たされた小胞が確立されること、およびその後、磁気共鳴映像法において有用であるために必要とされる期間、それらのサイズおよび形状を保持することを可能にする安定化化合物のマトリックスから形成され、すなわち、それから作製される。この化合物はまた、特定の超音波エネルギーレベルにおいて小胞の破裂を可能にする。これらの安定化脂質化合物は、最も典型的には、水の存在下で、それらが単層または二重層を形成することを可能にする疎水性/親水性特性、および小胞を有するものである。従って、水、生理食塩水、または何らかの他の水ベースの媒体(以下ではしばしばキャリアと称する)が、一般的には、本発明の方法において使用される安定化されたガスで満たされた小胞の局面である。
【0045】
生体適合性安定化脂質は、実際、安定化された小胞に種々の所望される特質を与える化合物(例えば、脂質)の混合物であってもよい。例えば、基礎的な安定化化合物の溶解および分散において補助する化合物は、利点が見出されてきた。
【0046】
安定化小胞のさらなる要素はガスであり、これは、小胞が作製された時点でガスであり得、または温度などの活性化因子に応答性であり、液相もしくは固相から気相に変形するガス前駆体であり得る。
【0047】
本発明において有用である安定化されたガスで満たされた造影剤の種々の局面がここで記載される。
【0048】
使用の方法
別の態様において、本発明は、血塊の破壊を必要とする患者にガスで満たされた小胞を投与すること、血塊の溶解を必要とする患者の領域を同定するために磁気共鳴映像法を用いて患者をスキャンすること、ならびに同時に超音波および磁気共鳴をその領域に適用することによって、非侵襲性超音波を指向する同時磁気共鳴の方法を提供する。患者の「領域」は、患者の全体の脈管構造、または患者の脈管構造の特定の領域もしくは部分を意味する。
【0049】
患者への投与後、小胞はMRIによって可視化され得る。例えば、MRIによって確かめられるように、小胞の位置が患者の所望される領域にあることが決定されるとき、本明細書に記載されるパラメーターを使用する超音波エネルギーが、その領域に適用される。小胞はそのエネルギーによって仮性化され、破裂し(すなわち、空洞を作り)、およびミクロンサイズでかつより小さな粒子に血塊を破壊することができ、従って、処理された領域において血流を改善するために血塊を物理的に溶解する。同時に、この領域はまた、望ましいならば、血栓溶解の進行をモニタリングするために、磁気共鳴映像法によって可視化され得る。
【0050】
血管組織の過度の加熱または患者に対する不快を伴わない血栓溶解のための核として小胞を使用して、安全に投与され得るエネルギーレベルは、処理される患者の脈管構造の領域に依存して、0.1ワット/cm2〜約30ワット/cm2、より好ましくは約2ワット/cm2〜約10ワット/cm2である。負荷サイクルは0〜100%の間、より好ましくは、約10%〜約90%、または約20%〜約80%である。例えば、虚血性脳卒中または出血性脳卒中の場合のように、血塊が脳にある場合、超音波は、好ましくは、骨の障害を最小化しながら、罹患した大脳動脈に超音波を適用するために一時的な窓を利用して、頭蓋骨を通して投与され得る。
【0051】
エネルギーの量に加えて、本発明の方法における血栓溶解のために使用される超音波の有効な負荷サイクルが、血塊の身体中の位置に依存して変化する。定常波とは異なり、超音波は1つまたは複数のパルスのエネルギーとして投与される。一般的に、そのエネルギーは10ワット/cm2であり、パルス持続時間は、脈管構造を過熱すること、または患者に対する実質的な不快を引き起こすことなしに、負荷サイクルの約0.1%〜約100%であり得る。代替的には、身体内の特定の領域において、2ワット/cm2〜10ワット/cm2よりも大きいエネルギー設定が、負荷サイクルの約10%〜約80%のために使用され得る。
【0052】
当業者は、血塊の細胞、含まれる組織の型(すなわち、骨または軟部組織であるか否か)などのような要因を考慮して、超音波が適用される患者の特定の領域に従って、この範囲内で有効な負荷サイクルをいかにして選択するかを知っている。しかし、一般的に、重量の多い筋肉または骨の領域は、処理される領域が皮膚などの下にある場合には、より高い負荷サイクルを必要とする。
【0053】
同様に、首尾よく血栓溶解を達成するために選択された負荷サイクルにおいて、超音波処理が継続される間の時間は変動し得る。一般的に、有効な血栓溶解は、1時間以内の処理において達成され得る。しかし、処理期間は、1分間程度に短く、または約8時間まで、例えば、約30分間から約2時間であり得る。
【0054】
本発明の方法の特定の態様において、超音波エネルギーは集束され得、その焦点域は溶解される血塊に隣接した小胞の領域を標的とするように選択され得る。他の態様において、集束されていない超音波が利用される。
【0055】
本発明の方法において小胞を使用する際に、音響エネルギーは、例えば、一度に少なくとも約8パルス、および好ましくは少なくとも約20パルスのエコートレイン長でパルスされてもよい。
【0056】
固定周波数または変調周波数のいずれかの超音波が使用されてもよい。固定周波数は、音波の周波数が時間の経過とともに一定であると定義される。変調周波数は、時間の経過とともに音波の周波数が、例えば、高周波から低周波に(PRICH)、または低周波から高周波に(CHIRP)変化するものである。例えば、10MHzの音響エネルギーの開始周波数を有するPRICHパルスが、1〜3ワットの増加出力を用いて1MHzまで進み得る。集束され、周波数変調された高エネルギー超音波は、血塊の局所的溶解を提供するために、小胞中での局所的ガス拡大、および破裂の速度を増加し得る。
【0057】
使用される音響の周波数は、約0.025メガヘルツから約100メガヘルツまで変動し得る。約0.75メガヘルツと約3メガヘルツの間の周波数範囲、例えば、約1メガヘルツ〜約2メガヘルツの間の周波数が適切である。非常に小さな小胞(例えば、0.5ミクロン直径より下)については、これらのより小さな小胞は、より高い周波数においてより有効に音響エネルギーを吸収するので、より高い音響の周波数が有効であり得る。非常に高い周波数(例えば、10メガヘルツ超)が使用される場合、音響エネルギーは、体液および組織への限られた深さの透過を有する。外部適用は、皮膚および他の表面組織の近傍の血塊のために好ましくあり得るが、深部構造については、間質性プローブまたは血管内超音波カテーテルを介した音波エネルギーの適用がより有用であり得る。
【0058】
エネルギーは、携帯用超音波変換器、例えば、MRIが超音波手順をモニタリングするために使用される場合には、磁気共鳴適合可能な変換器を使用して組織に適用される。超音波変換器は、非鉄かつ非強磁性物質から作られる。超音波変換器にエネルギーを供給するケーブルは、変換器に供給するためにケーブルを通過した電気エネルギーによって引き起こされ得るアーティファクトの潜在性を減少するためのファラデーシールドを有してもよい。
【0059】
これらのパラメータの中で、血塊の直接的かつ迅速な破壊が生じる。同時MRIは、標的域または標的領域を可視化するために使用される小胞とともに実行され得る。次いで、超音波とともに、小胞は、標的域における血塊の溶解を増強する。
【0060】
本発明の方法において使用される小胞の破裂または活性化は、示されたエネルギー範囲において起こり得る。小胞は超音波エネルギーによってパルスされるので、小胞膜は変性する。小胞破裂に付随して増加した温度の一過性微小ドメインがおそらく存在するが、このプロセスは、エネルギーおよびパルス放射が示されたエネルギー範囲において適用されるときには、周囲の組織に損傷を与えない。この小胞破裂の効果はまた、任意に、治療剤の局所的送達のために有利に使用され得る。従って、tPAなどの治療剤、天然または組換えのいずれかのウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、レテプラーゼ、ワファリン、テネクテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、またはヘパリン(例えばヘパリン硫酸および低分子ヘパリン)などの抗凝固剤または亜酸化窒素が、任意に、本発明の方法を使用して、脈管構造の領域に放出され得る。
【0061】
ガス前駆体の場合において、超音波エネルギーが前駆体に集束されるときに、この前駆体はガス状態に変換される。拡大されたガス状空間は、増加した磁気感受性を有するドメインを作り、かつ磁気共鳴映像法で容易にモニタリングされる。モニタリングは、十分に帰営された液体対ガス転換温度を有する前駆体、例えば、56℃におけるパーフルオロヘキサンを選択することによって、特に増強される。小胞がガス前駆体から形成するとき、ガス前駆体の周囲の物質(すなわち、小胞)は破裂する。さらに、小胞中に隔離された治療剤は、隣接する組織に局所的に放出され得る。ガス前駆体がガス状態に変換するとき、小胞界面によるエネルギーの吸収が増加する。
【0062】
本明細書に記載されるような処理の進行をモニタリングするための造影剤をして使用されるとき、小胞は、血塊の超音波媒介溶解の映像を提供すること、ならびにこの溶解および任意に心臓血管領域における薬物送達を可能にすることにおいて特に有用であり得るが、薬物送達、血塊の位置、小胞の注入、血塊の破壊、被験体における関心対象の領域での小胞の存在および破壊、ならびに血管裏層の状態などのような本発明の局面をモニタリングするためにもまた利用され得る。
【0063】
「心臓血管領域」は、この語句が本明細書で使用される場合、心臓にまたは心臓から直接的に導かれる心臓および脈管構造によって定義される、患者の領域を意味する。本明細書で使用される「脈管構造」という語句は、身体における、または身体の器官もしくは一部における血管(動脈、静脈など)を意味する。「患者」は任意の型の哺乳動物であり得るが、最も好ましくはヒトである。
【0064】
当業者が認識するように、本発明において使用される安定化されたガスで満たされた小胞の投与は、種々の様式で、例えば、血管内、静脈内、動脈内などで、種々の投与形態で実行され得る。さらに、小胞は、処理される領域が知られているときには、注射によって局所的に投与され得る。処理される領域が心臓血管領域である場合には、本発明の造影剤の投与は、好ましくは血管内で実行される。投与される小胞の有用かつ「有効な量」、または本発明の方法における使用のために意図される種々の薬物、および特定の投与の様式は、血塊のサイズ、年齢、体重、および治療される特定の哺乳動物、および処理されるその血管領域、ならびに利用される本発明の特定の小胞に依存して変化する。典型的には、投薬量は、より低い量で開始され、所望の効果(例えば、血塊溶解またはコントラストの増強)が達成されるまで増加される。安定化されたゲルで満たされた小胞の種々の組み合わせが、媒体の緩和挙動を改変するため、または粘性、浸透圧などの特性を変化させるために使用され得る。
【0065】
本発明の非侵襲性超音波法を実行する際に、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞は、単独で、または他の診断剤、治療剤、もしくは他の薬剤と組み合わせて使用され得る。このような他の薬剤には、香味付与物質または着色物質などの賦形剤が含まれる。磁気共鳴映像法が本明細書に記載されるように利用される場合、その技術は従来的なものであり、例えば、D.M.Kean and M.A.Smith, Magnetic Resonance Imaging: Principles and Applications, (William and Wilkins, Baltimore 1986)において十分に記載されている。意図されるMRI技術には、核磁気共鳴(NMR)および電子スピン共鳴(ESR)が含まれるがこれらに限定されない。好ましい映像化モダリティーはNMRである。
【0066】
本明細書で使用される「血塊の超音波媒介溶解」または「血栓溶解」という用語は、超音波エネルギーによる、脈管構造中での血栓または血塊の溶解または破壊、および血塊に隣接する小胞の活性化または破裂を意味する。
【0067】
ガスおよびガス前駆体
本発明の小胞は、ガスまたはガス前駆体をカプセル化する。「ガスまたはガス前駆体で満たされた」という用語は、本発明の方法において使用される小胞を説明するために使用される場合、小胞が、少なくとも約10%のガスまたはガス前駆体、好ましくは少なくとも約25%のガスまたはガス前駆体、より好ましくは少なくとも約50%のガスまたはガス前駆体、なおより好ましくは少なくとも約75%のガスまたはガス前駆体、および最も好ましくは少なくとも約90%のガスまたはガス前駆体から構成される内部体積を有することを意味する。ガスの存在が重要である使用において、内部小胞体積が少なくとも10%のガス、好ましくは少なくとも約25%、50%、75%、および最も好ましくは少なくとも90%のガスを含むことが好ましい。
【0068】
選択された生体適合性のガスまたはガス前駆体は、本発明の方法において使用される安定化されたガスまたはガス前駆体で満たされた小胞を形成するために使用され得る。「生体適合性」は、ヒト患者の血液中に導入したときに、任意の程度の受容できない毒性(アレルギー性応答および疾患状態)を生じず、好ましくは不活性であるガスまたはガス前駆体を意味する。このようなガスには、例えば、種々のフッ化ガス化合物が含まれ、例えば、種々のパーフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、および六フッ化硫黄のガスが、ガスで満たされた小胞の調製において利用され得る。さらに、常磁性ガスまたは17Oなどのガスが使用され得る;しかし、酸素ガスは血液中に溶解性であるので、酸素は安定化されるべきである。
【0069】
すべてのガスの中で、10個未満の炭素を含むパーフルオロカーボンが、水性媒体中でのそれらの低い(限られた)溶解性および拡散性に起因して好ましい。このようなガスはまた、これらの特性に起因して、水性媒体中で気泡の型に容易に安定化される。適切なパーフルオロカーボンガスには、例えば、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロペンタン、およびパーフルオロヘキサンが含まれる。異なる型のガスの混合物(例えば、パーフルオロカーボンガスおよび酸素などの別の型のガス)もまた使用され得る。確かに、ガスの組み合わせは、同時磁気共鳴指向性の非侵襲性超音波適用において特に有用であり得ると考えられている。
【0070】
ガス前駆体は液体または固体の形態であり得る。固体または液体のガス前駆体は、投与される超音波エネルギーによってガス状態に活性化される。ガス前駆体の使用は本発明の任意の態様である。特に、10個未満の炭素を含むパーフルオロカーボンは、ガス前駆体、すなわち、液体または固体の状態における使用のために適切であることが見出された。このようなパーフルオロカーボンが、ガス、液体、または固体であるか否かは、当然、その液相/気相または固相/気相の転移温度、または沸点に依存する。例えば、より好ましいパーフルオロカーボンの1つはパーフルオロペンタンであり、これは、27℃の液相/気相転移温度または沸点を有し、このことは、これが通常の室温においては液体であるが、温度がその液相/気相の転移温度または沸点よりも上であるヒト身体の環境においてはガスになることを意味する。従って、通常の環境下では、パーフルオロペンタンはガス前駆体であり、転移の間はガスまたはガス前駆体の混合物である。これらの状態のすべてが、語句「ガスまたはガス前駆体」に含まれることが意味される。さらなる例として、パーフルオロペンタンの次に密接なホモログであるパーフルオロブタンおよびパーフルオロヘキサンがある。パーフルオロブタンの液相/気相転移温度は4℃であり、パーフルオロヘキサンのそれは57℃である。このことは、前者を潜在的にガス前駆体にするが、一般的にはガスとしてより有用にするのに対して、後者は、その高い沸点のために、通常でない状況下以外は、一般的にガス前駆体である。固体および液体のガス前駆体は、多くの例において、投与される超音波エネルギーによってガス状態に活性化され得る。
【0071】
例えば、パーフルトレン(オクタフルオロプロパン)脂質微粒子(Bristol Myers Squibb;Definity(商標))は、特定の関連する診断目的における使用のために認可された超音波造影剤である。パーフルトレン脂質エマルジョンは、静脈内ボーラスまたは注入のいずれかによって投与され得る。推奨されるボーラス用量は、30〜60秒間以内での、10マイクロリットル/活性化生成物のキログラム(kg)、続いて10ミリリットル(mL)生理食塩水フラッシュである。必要である場合、第2回目の10マイクロリットル/kg用量、続いて第2回目の10mL生理食塩水フラッシュが、第1回目の注射の30分後に投与されて、コントラスト増強を延長し得る。代替的には、静脈内注入を介する推奨用量は、保存剤を含まない50mLの生理食塩水に加えられた1.4ミリリットル(mL)(または分割用量においては10mL/kg)である。注入の速度は、4mL/分で開始し、最適な映像増強を達成するために必要とされるように滴定され、10mL/分を超えないようにされ得る。
【0072】
本発明の別の局面は、小胞中に、安定化剤としてさらなるフッ化化合物、とりわけパーフルオロカーボン化合物を任意に含めることであり、これは、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞の安定性を補助または増強するために、小胞の使用の温度の液体状態においてである。このようなさらなるフッ化化合物には、DuPont Company(Wilmington, Del.)によって製造されたフッ化界面活性剤(例えば、ZONYL(登録商標))などの種々の液体フッ化化合物、ならびに液体パーフルオロカーボンが含まれる。フッ化化合物は、パーフルオロオクチルヨーダイド、パーフルオロトリプロピルアミン、およびパーフルオロブチルアミンであり得る。一般的に、長さが6個より上の炭素原子のパーフルオロカーボンは、通常のヒト身体の温度においてはガスではなく、すなわち、ガス状態にはないが、むしろ、液体であり、すなわち、液体状態にある。しかし、これらの化合物は、本発明において使用される安定化されたガスまたはガス前駆体で満たされた小胞を調製する際に、さらに利用されてもよい。例えば、さらなる安定化剤は、室温において液体状態であるパーフルオロオクチルブロミドまたはパーフルオロヘキサンであり得る。存在するガスは、例えば、窒素もしくはパーフルオロプロパンであり得るか、またはガス前駆体(これもまた、パーフルオロカーボン(例えば、パーフルオロペンタン)でもあってもよい)から誘導され得る。この場合において、本発明の小胞は、パーフルオロカーボンの混合物(これは例えば、所定の例においてはパーフルオロプロパン(ガス)またはパーフルオロペンタン(ガス前駆体)およびパーフルオロオクチルブロミド(液体)である)から調製される。いかなる理論にも束縛されることを意図しないが、液体フッ化化合物は、ガスと小胞の膜表面との間の界面に分配すると考えられている。従って、安定化化合物(例えば、小胞を形成するために使用される生体適合性脂質)の内部表面では、液体フッ化化合物のさらなる安定化層が形成され、そしてこのパーフルオロカーボン層はまた、ガスが小胞膜を通して拡散することを防ぐ目的のために働く。従って、パーフルオロカーボンガス前駆体(例えば、パーフルオロペンタン)などのガスまたはガス前駆体を、患者への投与後に液体を残すパーフルオロカーボン、すなわち、その液相から気相への転移温度が患者の体温より上であるもの、(例えば、パーフルオロオクチルブロミドまたはパーフルオロヘキサン)とともに利用することは本発明の範囲内にある。
【0073】
ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞のサイズは、本明細書に記載される安定化化合物が利用されるときに安定化され;次いでその小胞のサイズは、特定の意図される目的の最終的な使用のために調整され得る。例えば、血栓溶解は、約1ミクロン以下から約12ミクロン以下の平均直径、例えば、約1ミクロンから約4ミクロンまで、または約1.1ミクロンから約3.3ミクロンまで(インビトロ平均直径測定)(赤血球細胞(6〜8ミクロン)よりも小さい)小胞を必要とするかもしれない。ガスで満たされた小胞のサイズは、望ましいならば、マイクロエマルジョン化、ボルテックス、押し出し、濾過、超音波処理、均質化、反復する凍結および融解のサイクル、所定のサイズの孔を通しての圧力下での突出、および同様の方法を含む種々の手順によって調整され得る。
【0074】
上記に述べたように、本発明の態様はまた、それらの調製、製剤、および使用に加えて、温度によって活性化され得るガス前駆体を含み得る。さらに以下に、通常の体温(37℃)に比較的近いかまたはそれ以下である液相から気相への相転移を受ける一連のガス前駆体、および10ミクロンの最大サイズの微小気泡を形成するために必要とされる乳化液滴のサイズを列挙する表1を示す。
【0075】
(表1)ガス前駆体の物理的特性および10μ小胞を形成するための乳化液滴の直径*

*出典:Chemical Rubber Company Handbook of Chemistry and Physics, Robert C. Weast and David R. Lide編, CRC Press, Inc. Boca Raton, Florida (1989-1990)。
【0076】
所定のサイズの小胞を形成するために使用され得る適切な潜在的ガス前駆体から構成される表もまた以下に示される。しかし、この表は限定を意図するものではない。なぜなら、この目的のために他のガス前駆体を使用することが可能であるからである。実際、種々の異なる適用のために、実質的に任意の液体が、これが生体適合性であり、かつ適切な温度を通して気相への相転移を受けることが可能であり、その結果、少なくとも使用のある時点でこれがガスを供給する限り、ガス前駆体を作製するために使用され得る。本発明における使用のための適切なガス前駆体は以下である:ヘキサフルオロアセトン、イソプロピルアセチレン、アレン、テトラフルオロ-アレン、ボロントリフルオリド、イソブタン、1,2-ブタジエン、2,3-ブタジエン、1,3-ブタジエン、1,2,3-トリクロロ-2-フルオロ-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3--ブタジエン、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン、ブタジイン、1-フルオロブタン、2-メチルブタン、デカフルオロブタン、1-ブテン、2-ブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、パーフルオロ-1-ブテン、パーフルオロ-2-ブテン、4-フェニル-3-ブテン-2-オン、2-メチル-1-ブテン-3-イン、ブチルニトレート、1-ブチン、2-ブチン、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブチン、3-メチル-1-ブチン、パーフルオロ-2-ブチン、2-ブロモ-ブチルアルデヒド(butyraldehyde)、カルボニルスルフィド、クロトノニトリル、シクロブタン、メチル-シクロブタン、オクタフルオロ-シクロブタン、パーフルオロシクロブテン、3-クロロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテン、シクロプロパン、1,2-ジメチルシクロプロパン、1,1-ジメチルシクロプロパン、1,2-ジメチルシクロプロパン、エチルシクロプロパン、メチルシクロプロパン、ジアセチレン、3-エチル-3-メチルジアジリジン、1,1,1-トリフルオロジアゾエタン、ジメチルアミン、ヘキサフルオロジメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ビス(ジメチルホスフィン)アミン、パーフルオロヘキサン、2,3-ジメチル-2-ノルボルナン、パーフルオロジメチルアミン、ジメチルオキソニウムクロライド、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,1-ジクロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1-クロロ-1,1,2,2,2-ペンタフルオロエタン、2-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジクロロ-2-フルオロエタン、1-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、2-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、クロロエタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、フルオロエタン、ヘキサフルオロエタン、ニトロペンタフルオロエタン、ニトロソペンタフルオロエタン、パーフルオロエチレンアミン、エチルビニルエーテル、1,1-ジクロロエタン、1,1-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、メタン、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、ブロモジフルオロニトロソメタン、ブロモフルオロメタン、ブロモクロロフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロジフルオロニトロメタン、クロロジニトロメタン、クロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジブロモジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジフルオロメタン、ジフルオロヨードメタン、ジシラノメタン、フルオロメタン、ヨードメタン、ヨードトリフルオロメタン、ニトロトリフルオロメタン、ニトロソトリフルオロメタン、テトラフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、2-メチルブタン、メチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルアセテート、メチルニトライト、メチルスルフィド、メチルビニルエーテル、ネオン、ネオペンタン、窒素(N2)、亜酸化窒素、1,2,3-ノナデカン-トリカルボン酸-2-ヒドロキシトリメチルエステル、1-ノネン-3-イン、酸素(O2)、1,4-ペンタジエン、n-ペンタン、パーフルオロペンタン、4-アミノ-4-メチルペンタン-2-オン、1-ペンテン、2-ペンテン(シス)、2-ペンテン(トランス)、3-ブロモペント-1-エン、パーフルオロペント-1-エン、テトラクロロフタル酸、2,3,6-トリメチルピペリジン、プロパン、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン、1,2-エポキシプロパン、2,2-ジフルオロプロパン、2-アミノプロパン、2-クロロプロパン、ヘプタフルオロ-1-ニトロプロパン、ヘプタフルオロ-1-ニトロソプロパン、パーフルオロプロパン、プロペン、ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-2,3-ジクロロプロパン、1-クロロプロパン、クロロプロパン-(トランス)、2-クロロプロパン、3-フルオロプロパン、プロピン、3,3,3-トリフルオロプロピン、3-フルオロスチレン、六フッ化硫黄、十フッ化(二)硫黄(S2F10)、2,4-ジアミノトルエン、トリフルオロアセトニトリル、トリフルオロメチルペルオキシド、トリフルオロメチルスルフィド、六フッ化タングステン、ビニルアセチレン、ビニルエーテル、およびキセノン。
【0077】
すでに示されたように、10個未満の炭素原子を含むパーフルオロカーボンが、ガスまたはガス前駆体、ならびにさらなる安定化成分としての使用のために好ましい。このようなパーフルオロカーボン組成物には、飽和パーフルオロカーボン、不飽和パーフルオロカーボン、および環状パーフルオロカーボンが含まれる。適切な飽和パーフルオロカーボンの例は以下である:テトラフルオロメタン、壁αフルオロメタン、オクタフルオロプロパン、デカフルオロブタン、ドデカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、およびパーフルオロヘプタン。環状パーフルオロカーボンは、式CnF2nを有し、ここでnは3〜8であり、好ましくは、3〜6もまた好ましく、かつ例えば、ヘキサフルオロシクロプロパン、オクタフルオロシクロブタン、およびデカフルオロシクロペンタンを含む。これらの化合物の1水素添加バージョンおよび2-ヒドロヘプタフルオロプロパンもまた有用である。
【0078】
限られた溶解性のガスを使用することによって小胞の有用性を最適化することは本発明の一部である。限られた溶解性は、周囲の水性媒体(例えば、血液)におけるその溶解性によって小胞から拡散するガスの限られた能力を意味する。水性媒体中の溶解性が高いほど、小胞中でガスの勾配が課せられ、その結果、ガスは小胞から拡散する傾向を有する。それゆえに、1つの局面において、小胞に包括されたガスは、酸素の溶解性(すなわち、32部の水において1部の水(Matheson Gas Data Book, 1966, Matheson Company Inc.を参照されたい))よりも低い溶解性を有し、空気の溶解性よりも低い溶解性を有し、または窒素の溶解性よりも低い溶解性を有する。
【0079】
安定化化合物
1種以上の生体適合性脂質安定化化合物が、小胞を形成するために、および血塊が位置する脈管構造の領域に小胞が達するまで、ガスまたはガス前駆体の継続したカプセル化を保証するために利用される。パーフルオロプロパンまたは六フッ化硫黄などの比較的不溶性の非拡散性ガスについてさえ、1種またはそれ以上の安定化剤化合物がガスまたはガス前駆体で満たされた小胞の形成において利用される場合に、改善された小胞調製物が得られる。これらの化合物は、それらのサイズ、形状、および他の属性に関しては小胞の安定性および完全性を維持する。
【0080】
本明細書で使用される「安定な」または「安定化された」という用語は、小胞が分解に対して実質的に抵抗性であり、すなわち、有用な期間の間、小胞構造またはカプセル化されたガスまたはガス前駆体の損失に対して抵抗性であることを意味する。典型的には、本発明の小胞は、良好な有効期間を有し、通常の大気条件下では少なくとも約2週間または3週間の期間の間、そのもともとの体積の少なくとも約90%をしばしば保持するが、この有効期間は、少なくとも1ヶ月から約3年、例えば、2ヶ月、または6ヶ月、または18ヶ月であり得る。従って、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞は、時折、通常の環状条件下で経験されるものよりも上または下である温度および圧力などの有害な条件下においてでさえ、代表的には良好な有効期間を有する。しかし、製剤の容易さ、すなわち、投与の直前に小胞を産生する能力のため、これらの小胞は、その部位で便利に作製され得る。
【0081】
生体適合性脂質およびポリマー
本発明の小胞を調製する際に利用される脂質およびポリマーは生体適合性である。「生体適合性」は、ヒト患者の血液中に導入したときに、任意の程度の受容できない毒性(アレルギー性応答および疾患状態を含む)を生じない脂質またはポリマーを意味する。好ましくは、この脂質は不活性である。
【0082】
このような脂質物質は、しばしば、天然では「両親媒性」と呼ばれるものであり得、これにより、一方では親油性(すなわち、疎水性特性)を有するのに対して、他方では、同時に、疎油性(lipophobic)(すなわち、親水性特性)を有する任意の組成物が意味される。親水性基は、荷電した部分または水に対して親和性を有する他の基であり得る。天然または合成のリン脂質は、本発明の方法において使用される安定化小胞を調製する際に有用である両親媒性脂質の例である。長い炭化水素尾部に結合された荷電したリン酸「頭部」基を含むリン脂質は、単一の二重層(単層)配置を形成し得、ここで、水不溶性炭化水素の尾部のすべてが互いに接触され、高度に荷電したリン酸頭部領域が、極性の水性環境と自由に相互作用するようにする。一連の同心性二重層が可能であり(すなわち、オリゴ層小胞および多層小胞)、そしてこのような配置はまた、小胞の調製において使用される安定化剤の局面であることが意図される。このような二重層配置を形成する能力は、本発明において有用である脂質物質の1つの特徴である。
【0083】
脂質は、代替的には、単層の形態であってもよく、そしてこの単層は、単一の単層(単層)配置または一連の同心性単層、すなわち、オリゴ層小胞もしくは多層小胞を形成するために使用され得る。このような脂質配置は、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0084】
安定化化合物として使用される脂質の、ゲルから液体への結晶相転移温度より下の温度において小胞を調製することが有利であることもまた見出された。この相転移温度は、脂質二重層が、ゲル状態から液体結晶状態に変換する温度である。例えば、Chapman et al. J. Biol. Chem. (1974) 249:2512-2521を参照されたい。一般的には、ゲル/液体相転移温度が高いほど、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞が所定の温度においてより不浸透性である。(Derek Marsh, CRC Handbook of Lipid Bilayers (CRC Press, Boca Raton, Fla. 1990)、飽和ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンの主鎖融解転移について139頁を参照されたい)。種々の脂質のゲル/液体結晶状態相転移温度は、当業者には容易に明らかであり、例えば、Gregoriadis編、Liposome Technology, Vol. I, 1-18(CRC Press, 1984)において記載されている。以下の表2は、代表的な脂質およびそれらの相転移温度のいくつかを列挙する。
【0085】
(表2)飽和ジアシル-sn-グリセロ(3)ホスホコリン:
主鎖相転移温度

Derek Marsh, 「CRC Handbook of Lipid Bilayers」, CRC Press, Boca raton, Florida (1990), 139頁
【0086】
特に、負に荷電した脂質の、全体の脂質の少なくとも少量、すなわち、約1から約10モルパーセントを、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞がそこから形成される脂質に組み込むことによって、本発明において使用される小胞の安定性を増強することが可能であることが見出された。適切な負に荷電した脂質には、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、および脂肪酸が含まれる。このような負に荷電した脂質は、互いに融合することによって破裂する小胞の傾向を相殺することによって、すなわち、他の小胞上の同様に荷電した外層によって反発される小胞の外部表面上の均一に負に荷電した層を確立することによって、付加される安定性を提供する。このようにして、小胞は、膜の破裂および小胞を単一のより大きな小胞に接触させる合同をしばしばもたらす接触から防御される傾向がある。合同のこのプロセスの継続は、小胞の有意な分解をもたらす。
【0087】
小胞を形成するために使用される脂質物質または他の安定化剤はまた、好ましくは、柔軟性があり、この用語によって、ガスまたはガス前駆体た満たされた小胞の状況において、例えば、小胞よりも小さなサイズを有する開口部を通過するために、その形状を変化させる構造の能力を意味される。
【0088】
本発明において使用される安定化小胞を調製するために脂質を選択する際に、広範な種々の脂質が、それらの構築のために適切であることが見出される。特に有用なものは、リポソーム調製のために適切であるとして当業者に公知である、任意の物質またはその組み合わせである。使用される脂質は、天然、合成、または半合成の起源であり得る。
【0089】
本発明の方法において使用されるガスまたはガス前駆体で満たされた小胞を調製する際に有用である脂質には以下が含まれるがこれらに限定されない:ジオレオイルホスファチジルコリン;ジミリストイルホスファチジルコリン;ジペンタデカノイルホスファチジルコリン;ジラウロイルホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジステロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)を含む、飽和および不飽和の両方の脂質を有する脂肪酸、リゾ脂質、ホスファチジルコリンなどの脂質;ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)などのホスファチジルエタノールアミン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質;ガングリオシドGM1およびGM2などのグリコリピド;グルコリピド;スルファチド;グリコスフィンゴ脂質;ジパルミトイル(dipalymitoyl)ホスファチジン酸(DPPA);パルミチン酸;ステアリン酸;アラキドン酸;オレイン酸;ポリエチレングリコールなどのポリマーを有する脂質(すなわち、PEG化脂質)、キチン、ヒアルロン酸、またはポリビニルピロリドンを有する脂質;スルホン化されたモノサッカリド、オリゴサッカリド、またはポリサッカリドを有する脂質;コレステロール、コレステロール、およびコレステロールヘミスクシネート;トコフェロールヘキスクシネート;エーテルおよびエステル結合した脂肪酸を有する脂質;重合した脂質(広範な種々のそれは当技術分野において周知である);リン酸ジアセチル;リン酸ジセチル;ステアリルアミン;カルジオリピン;6〜8個の長さの炭素の短い脂肪酸を有するリン脂質;非対称アシル鎖を有する合成リン脂質(例えば、6個の炭素原子のアシル鎖および12個の炭素原子のアシル鎖を有する);セラミド;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン化ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート、グリセロールポリエチレングリコールリシノール酸、エトキシ化ダイズステロール、エトキシ化ヒマシ油、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー、およびポリオキシエチレン脂肪酸ステアリン酸などのニオソームを含む非イオン性リポソーム;コレステロールサルフェート、コレステロールブチレート、コレステロールイソブチレート、コレステロールパルミテート、コレステロールステアレート、ラノステロールアセテート、エルゴステロールパルミテート、およびフィトステロールn-ブチレートを含むステロール脂肪族系酸エステル;コレステロールグルクロニド、ラノステロールグルクロニド、7-デヒドロコレステロールグルクロニド、エルゴステロールグルクロニド、コレステロールグルコネート、ラノステロールグルコネート、およびエルゴステロールグルコネートを含む糖酸のステロールエステル;ラウリルグルクロニド、ステアロイルグルクロニド、ミリストイルグルクロニド、ラウリルグルコネート、ミリストイルグルコネート、およびステアロイルグルコネートを含む糖酸およびアルコールのエステル;スクロースラウレート、フルクトースラウレート、スクロースパルミテート、スクロースステアレート、グルクロン酸、アカリック(accharic)酸、およびポリウロン酸を含む糖および脂肪酸のエステル;サルササポゲニン、スミラゲニン、ヘデラゲニン、オレアノール酸、およびジギトキシゲニンを含むサポニン;グリセロールジラウレート、グリセロールトリラウレート、グリセロールジパルミテート、グリセロールトリパルミテート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、グリセロールジミリステート、グリセロールトリミリステートを含むグリセロールおよびグリセロールエステル;n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、およびn-オクタデシルアルコールを含む長鎖アルコール;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;ジガラクトシルジグリセリド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-α-D-マンノピラノシド;12-(((7'-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)-オクタデカン酸;N-[12-(((7'-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチル-アミノ)オクタデカノイル]-2-アミノパルミチン酸;コレステリル)4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノエート;N-スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノール-アミン;1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール;1,2-ジパルミトイル-sn-3-スクシニルグリセロール;1,3-ジパルミトイル-2-スクリニルグリセロール;1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン、およびパルミトイルホモシステイン、ならびにこれらの組み合わせ。
【0090】
望ましいならば、DOTMA、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド;DOTAP、1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン;およびDOTB、1,2-ジオレオイル-3-(4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロールなどの種々のカチオン性脂質が使用され得る。一般的には、リポソーム中の非カチオン性脂質に対するカチオン性脂質のモル比は、例えば、1:1000、1:100、または2:1から1:10の間、例えば、約1:1から約1:2の範囲にあり得る。カチオン性脂質が小胞を構築するために使用されるときに、広範な種々の脂質が非カチオン性脂質を含んでもよい。非カチオン性脂質の例には、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノール-アミン、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンが含まれる。上記のようなカチオン性脂質の代わりに、ポリリジンまたはポリアルギニンなどのカチオン性ポリマー、ならびにホスホネート、アルキルホスフィネート、およびアルキルホスファイトを有する脂質もまた、小胞を構築するために使用されてもよい。
【0091】
最も好ましい脂質は、ジ-パルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE);ジフェニルホスホリルアジド(DPPA);およびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などのリン脂質である。
【0092】
さらに、本発明において使用される安定化小胞を調製するために使用され得る飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の例は、ガスまたはガス前駆体が満たされた混合ミセルの形態で、直鎖状または分枝状の形態のいずれかで、12個の炭素原子から22個の炭素原子を含む分子を含み得る。イソプレノイド単位およびプレニル基からなる炭化水素基が同様に使用され得る。適切である飽和脂肪酸の例には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸が含まれるがこれらに限定されない;不飽和脂肪酸の例には、ラウロレイン酸、フィセテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、およびオレイン酸が含まれるがこれらに限定されない;使用され得る分枝鎖脂肪酸には、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸が含まれるがこれらに限定されない。飽和基または不飽和基に加えて、ガスまたはガス前駆体で満たされた混合ミセルはまた、5個の炭素のイソプレノイドおよびプレニル基から構成され得る。さらに、部分的にフッ化されたリン脂質が、小胞をコートするための安定化化合物として使用され得る。
【0093】
本発明の方法の1つの態様において、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞がそこから形成される安定化化合物は、3種の生体適合性脂質:(1)中性(例えば、非イオン性)脂質、(2)負に荷電した脂質、および(3)親水性ポリマーを有する脂質を含む。通常、負に荷電した脂質の量は、存在する脂質全体の1モルパーセントより多く、親水性ポリマーを有する脂質の量は、存在する脂質全体の1モルパーセントよりも多くあり得る。例えば、負に荷電した脂質は、ホスファチジン酸であり得る。別の例において、親水性ポリマーを有する脂質は、ポリマーに共有結合された脂質であり得、このポリマーは、約400から約100,000の重量平均分子量を有する。この場合における使用のために特に適切な親水性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドン、およびこれらのコポリマーが含まれる。PEGまたは他のポリマーは、例えば、アミド結合、カルバメート結合、またはアミン結合などの共有結合を通して、DPPEまたは他の脂質に結合され得る。代替的には、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオアミド結合、またはジスルフィド(チオエステル)結合が、PEGまたは他のポリマーを用いて、例えばコレステロールまたは他のリン脂質にそのポリマーを結合するために使用され得る。親水性ポリマーがポリエチレングリコールである場合、このようなポリマーを有する脂質は「PEG化された」といわれる。親水性ポリマーを有する脂質の例は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール5000、すなわち、そこに結合された約5000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールポリマーを有するジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE-PEG5000);またはジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール5000である。
【0094】
種々の態様において、本発明によって意図される小胞は、例えば、12.5モルパーセントのジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)を伴い、および10モルパーセントのジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール5000(DPPE/PEG5000)を伴う、77.5モルパーセントのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含む。これらの組成は、それぞれ、82/10/8のモルパーセンテージの比率を有し得る。DPPC成分は、有効には中性である。なぜなら、ホスファチジル部分が負に荷電し、コリン部分が正に荷電しているからである。結果的に、負に荷電しているDPPA成分が、さらなる薬剤としての負に荷電した物質に関して上記にさらに記載されているメカニズムに従って安定化を増強するために加えられる。第3の成分、DPPE/PEGは、DPPE部分によって脂質の膜または小胞の表面に結合されたPEG化物質に、小胞膜または表面の周辺に対して遊離のPEG部分を提供し、それによって、このような外来性の物質を分解することがその機能である、身体中の種々の酵素的物質および他の内因性物質に対する物理的障壁を形成する。PEG化物質が、水に対するその構造的類似性のために、さもなくば外来性の対象物を取り囲みかつ除去する傾向があるヒト免疫系のマクロファージの作用を損なうことが可能であることもまた、理論付けされている。結果は、安定化小胞がインビボで機能し得る時間の増加である。
【0095】
本発明において使用されるガスまたはガス前駆体で満たされた小胞は、本明細書に記載される種々のさらなるまたは補助的な安定化剤の間から選択することによって、サイズ、溶解性、および熱安定性に従って制御され得ることが見出された。これらの薬剤は、脂質コーティングとのそれらの物理的相互作用によってのみならず、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞の表面の粘度および表面張力を修飾するそれらの能力によっても、小胞のこれらのパラメーターに影響を与え得る。従って、本発明において使用されるガスまたはガス前駆体で満たされた小胞は、例えば、1つまたは複数の広範な種々の以下の剤の添加により、好ましく修飾され、かつさらに安定化され得る:(a)粘度修飾剤(炭水化物およびそれらのリン酸化誘導体およびスルホン化誘導体;ならびにポリエーテル、例えば、400から100,000の分子量範囲を有するもの;ジ-およびトリヒドロキシアルカンおよびそれらのポリマー、例えば、200から50,000の分子量範囲を有するもの、ならびにプロピレングリコールが含まれるがこれらに限定されない);(b)乳化剤および可溶化剤もまた、所望の修飾およびさらなる安定化を達成するために脂質とともに使用されてもよい;このような薬剤には、コレステロール、ジエタノールアミン、グリセリルモノステアレート、ラノリンアルコール、レシチン、モノ-およびジ-グリセリド、モノ-エタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー184、およびポロキサマー181)、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ジアセテート、プロピレングリコールモノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノ-オレエート、ソルビタンモノ-パルミテート、ソルビタンモノ-ステアレート、ステアリン酸、トロラミン、および乳化ワックスが含まれるがこれらに限定されない;(c)脂質とともに使用され得る懸濁剤および粘度増加剤、カルボマー934P、カルボキシメチルセルロース、カルシウムおよびナトリウムおよびナトリウム12、セルロース、デキストラン、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、プロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポビドン、α-d-グルコノラクトン、グリセロール、およびマンニトールが含まれるがこれらに限定されない;(d)ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレングリコール、およびポリソルベートなどの合成懸濁剤もまた、利用されてもよい;ならびに(e)張力上昇剤が含められ得る;このような薬剤には、ソルビトール、プロピレングリコール、およびグリセロールが含まれるがこれらに限定されない。
【0096】
水性希釈剤
より初めの方で言及したように、小胞が天然で脂質である場合、安定化小胞の特に所望される成分は、ある種の水性環境であり、これは、その疎水性/親水性の性質のために、脂質を、このような環境において最も安定な配置である小胞を形成するように誘導する。このような水性環境を作製するために利用され得る希釈剤には、水(脱イオン水、または安定化小胞の作製および維持もしくはMRI造影剤としてのそれらの使用に干渉しない非毒性の溶解した任意の数の塩を含む水のいずれか);および通常の食塩水および生理食塩水が含まれるがこれらに限定されない。
【0097】
常磁性および超常磁性造影剤
本発明のさらなる態様において、本発明の方法において使用される安定化されたガスまたはガス前駆体で満たされた小胞は、任意に、同時磁気共鳴指向性の非侵襲性超音波のための小胞の効力を増大するように働く、従来的な造影剤などのさらなる造影剤をさらに含んでもよい。このような造影剤の億は当業者に周知であり、かつ常磁性および超常磁性造影剤を含む。
【0098】
小胞中でのカプセル化のために適切な例示的な常磁性造影剤には、安定なフリーラジカル(例えば、安定な窒素酸化物)、ならびに遷移元素、ランタニド元素、およびアクチニド元素を含む化合物が含まれ、これらは、望ましいならば、塩の形態であってもよいし、または錯化剤(その親油性誘導体を含む)もしくはタンパク質性高分子に共有結合的もしくは非共有結合的に結合され得る。
【0099】
好ましい遷移元素、ランタニド元素、およびアクチニド元素には、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)、およびDy(III)が含まれる。より好ましくは、これらの元素には、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Fe(II)、Fe(III)、Eu(III)、およびDy(III)、特にMn(II)およびGd(III)が含まれる。
【0100】
これらの元素は、望ましいならば、マンガン塩など、例えば、塩化マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、およびグルコン酸マンガンなどのマンガンの有機塩、およびヒドロキシアパタイトマンガン;ならびに鉄塩など、例えば、硫化鉄および塩化第二鉄などの第二鉄の塩の形態であってもよい。
【0101】
これらの元素はまた、望ましいならば、錯化剤(その親油性誘導体を含む)またはタンパク質性高分子に共有結合的または非共有結合的に結合されてもよい。適切な錯化剤には、例えば、以下が含まれる:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレン-ジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)、1,4,7,10-テトラアアシクロデカン-N,N',N''-三酢酸(DO3A)、3,6,9-トリアザ-12-オキサ-3,6,9-トリカルボキシメチレン-10-カルボキシ-13-フェニル-トリデカン酸(B-19036)、ヒドロキシベンジルエチレン-ジアミン二酢酸(HBED)、N,N'-ビス(ピリドキシル-5-リン酸)エチレンジアミン,N,N'-二酢酸(DPDP)、1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N',N''-三酢酸(NOTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(TETA)、クリプタンズ(kryptands)(これは多環複合体である)、およびデスフェリオキサミン。代替的には、錯化剤は、EDTA、DTPA、DOTA、DOPA、およびクリプタンズであり得る。その親油性複合体には、錯化剤EDTA、DOTAなどのアルキル化誘導体が含まれ、例えば、EDTA-DDP(すなわち、N,N'-ビス(カルボキシ-デシルアミドメチル-N-2,3-ジヒドロオキシプロピル)-エチレンジアミン-N,N'-二酢酸);EDTA-ODP(すなわち、N,N'-ビス-(カルボキシ-オクタデシルアミド-メチル-N-2,3-ジヒドロキシプロピル)-エチレンジアミン-N,N'-二酢酸);EDTA-LDP(N,N'-ビス-(カルボキシ-ラウリルアミドメチル-N-2,3-ジヒドロキシプロピル)-エチレンジアミン-N,N'-二酢酸)など;例えば、米国特許第5,312,617号(この開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるものである。適切なタンパク質性高分子には、アルブミン、コラーゲン、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリヒスチジン、γ-グロブリン、およびβ-グロブリンが含まれる。
【0102】
従って、適切な錯体には、Mn(II)-DTPA、Mn(II)-EDTA、Mn(II)-DOTA、Mn(II)-DO3A、Mn(II)-クリプタンズ、Gd(III)-DTPA、Gd(III)-DOTA、Gd(III)-DO3A、Gd(III)-クリプタンズ、Cr(III)-EDTA、Cu(II)-EDTA、または鉄-デスフェリオキサミン、とりわけMn(II)-DTPAまたはGd(III)-DTPAが含まれる。
【0103】
米国特許第5,312,617号(この開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)において開示されるような常磁性イオンのアルキル化キレート剤などの常磁性キレート剤、ガスで満たされたリポソームおよびガスで満たされたポリマー性リポソームに結合するために有用である米国特許第5,385,719号におけるような常磁性コポリマー性キレート剤、ガスで満たされたリポソーム中の脂質、ならびに、ガスで満たされたリポソームおよび米国特許第5,407,657号において概説されるような1つまたは複数の窒素酸化物安定フリーラジカル(NSFR)と密接に近接している1つまたは複数の常磁性イオンを含むキレート部分から構成されるハイブリッド複合体の構築のためのポリマーへの結合のために有用であるNSFRが、常磁性の、ガスで満たされたリポソームを構築するために使用され得る。これらのハイブリッド複合体は、非常に増加した緩和性を有し、それゆえに、磁気共鳴に対する小胞の感度を増加する。窒素酸化物は、窒素酸化物分子中の1つの不対電子によってT1とT2の両方の緩和速度を増加する常磁性造影剤である。MRI造影剤としての所定の化合物の常磁性有効性は、常磁性核または分子における不対電子の数に少なくとも部分的に関連し、詳細には、不対電子の数の平方に関連する。例えば、ガドリニウムは、7個の不対電子を有し、窒素酸化物分子は1個のみの不対電子を有する;従って、ガドリニウムは、一般的に、窒素酸化物よりもはるかに強力なMRI造影剤である。しかし、造影剤の有効性を評価するための別の重要なパラメーターである有効相関時間は、窒素酸化物に対して潜在的に増加した緩和性を付与する。有効相関時間がプロトンLarmour周波数と非常に近接する場合、緩和速度は劇的に増加し得る。反転速度が、例えば、大きな構造に常磁性造影剤を結合させることによって遅延される場合、これはより遅く反転され、それによって、水プロトンの緩和を加速させるためにより有効にエネルギーを移動させる。しかし、ガドリニウムにおいては、電子スピン緩和時間は急速であり、かつその程度を遅い回転相関時間が緩和性を増加し得るまでに制限する。しかし、窒素酸化物については、電子スピン相関時間はより好ましく、かつこれらの分子の回転相関時間を遅延することは、緩和性の強大な相加を達成し得る。本発明において使用されるガスで満たされた小胞は、遅延された回転相関時間および得られる緩和性の改善の目標を達成するために理想的である。任意の特定の動作理論によって束縛されることを意図しないが、窒素酸化物は、例えば、そのアルカリ誘導体を作製することによって、ガスで満たされた小胞の周囲をコートするように設計され得るので、得られる相関時間が最適され得ることが意図される。さらに、得られる本発明の造影剤は、緩和性を最大化する、磁気球体の幾何学的配置として見られ得る。
【0104】
望ましいならば、窒素酸化物はアルキル化され得、またはさもなくば誘導体化され得、例えば、窒素酸化物2,2,5,5-テトラメチル-1-ピロリジニルオキシ、フリーラジカル、および2,2,6,6,-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、フリーラジカル(TMPC)である。
【0105】
本発明において使用されるガスで満たされた小胞に含ませるために適切な例示的な超常磁性造影剤には、磁気ドメインを有する金属酸化物およびスルフィド、フェロ-またはフェリ磁気化合物、例えば、純粋な鉄、酸化鉄磁性体(マグネタイトなど)、γ-Fe2O3、Fe3O4、鉄スルフィド、フェライトマンガン、コバルト、フェライト、ニッケルフェライト、およびマグネタイトで満たしたフェリチン、または他の磁気的に活性な物質(例えば、強磁性体物質および超常磁性物質)が含まれる。
【0106】
上記の常磁性および超常磁性造影剤などの造影剤は、小胞中の成分として利用され得、小胞の内部空間中に包括され得、小胞とともに溶液として投与され得、または小胞壁を形成する安定化化合物に組み込まれ得る。
【0107】
超常磁性剤は、小胞を吸収および安定化するためのクラスレートとして使用され得る。例えば、種々のパーフルオロカーボン(例えば、パーフルオロヘキサンまたはパーフルオロクロロカーボン)が、不規則な形状の酸化鉄化合物とともに混合される。酸化鉄中の疎水性の裂け目が、液体ガス前駆体のナノ液滴を、固体物質の表面に付着させる。
【0108】
例えば、望ましいならば、常磁性剤または超常磁性剤が、安定化化合物、とりわけ、小胞の脂質壁に取り込まれるアルキル化誘導体または他の誘導体として送達され得る。特に、窒素酸化物2,2,5,5-テトラメチル-1-ピロリジニルオキシ、フリーラジカルおよび2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、フリーラジカルは、メチル基によって占められていない環の位置において、多数の異なる結合、例えば、アセチルオキシ基を介して長鎖脂肪酸と付加物を形成し得る。このような付加物は、安定化化合物への取り込みに対して、とりわけ、本発明の小胞の壁を形成する、脂質の性質に対して非常に従順である。
【0109】
造影剤中の任意の1つまたは複数の常磁性剤および超常磁性剤の混合物が同様に使用され得る。
【0110】
上記の常磁性剤および超常磁性剤はまた、望ましいならば、別々に同時投与されてもよい。
【0111】
本発明の方法において使用されるガスで満たされた小胞は、超常磁性剤、例えば、酸化鉄の有効なキャリアとして働いてもよいのみならず、造影剤の感受性の効果もまた拡大するようである。超常磁性造影剤には、金属酸化物、特に酸化鉄が含まれるが、これには酸化マンガンが含まれ、そして酸化鉄として、磁気ドメインを有する様々な量のマンガン、コバルト、およびニッケルを含む。これらの剤はナノ粒子またはマイクロ粒子であり、非常に高い体積磁化率および横方向の緩和速度を有する。より大きな粒子、例えば、100nm直径は、R1緩和性よりもはるかに高いR2緩和性を有するが、より小さな粒子、例えば、10〜15nm直径は、いくぶんより低いR2緩和性を有するが、はるかによりバランスのとれたR1値およびR2値を有する。最も小さな粒子、例えば、直径3〜5nmのナノ結晶性酸化鉄粒子は、より低いR2緩和性を有するが、おそらく最もバランスのとれたR1およびR2の緩和速度を有する。フェリチンもまた、非常に高い緩和速度の超常磁性鉄のコアをカプセル化するために製剤化され得る。本発明において使用される安定化されたガスで満たされた小胞は、これらの従来的な酸化鉄ベースのMRI造影剤の効力および安全性を増大し得ることが発見された。
【0112】
酸化鉄は、小胞がそこから作られた安定化化合物に単に組み込まれてもよい。特に、酸化鉄は、脂質ベースの小胞の壁に組み込まれ得、例えば、1992年2月18日に発行された米国特許第5,088,499号において記載されるように、小胞の表面に吸収されるか、または小胞の内部に包括される。
【0113】
本発明を、その作用様式に関して任意の特定の理論に制限する意図はないが、小胞は、いくつかのメカニズムによって、超常磁性造影剤の効力を増加させると考えられている。第1に、酸化鉄粒子の見かけの磁気濃度を増加させるために、小胞は機能すると考えられている。第2に、小胞は、常磁性剤と超常磁性剤の両方のMRI造影剤の見かけの回転相関時間を増加させ、その結果、緩和速度が増加すると考えられている。最後に、小胞は、造影剤の見かけの磁気ドメインを増加させる新規なメカニズムによって作動するようであり、すぐ下に記載される様式で作動すると考えられている。
【0114】
小胞は、懸濁媒体からの異なる感受性の柔軟な球状ドメインとして、すなわち、造影剤の水性懸濁物および血管内空間における血液と考えられることが可能である。フェライトまたは酸化鉄を考慮すると、これらの剤は、粒子サイズに依存するコントラストに効果を有し、すなわち、これは酸化鉄粒子の直径に依存することが注意されるべきである。この現象は非常に一般的であり、しばしば、水分子の「長期的」緩和と呼ばれる。より物理学的な用語で説明すると、この緩和メカニズムは、分子複合体の有効サイズに依存し、ここには、常磁性原子、または常磁性分子が存在していてもよい。1つの物理学的な説明は、Solomon-Bloembergen式によって説明され得、これは、T1およびT2の緩和時間に対する常磁性の寄与を規定する。
【0115】
少数の大きな粒子は、一般的には、より大きな相関時間に起因して、多数のはるかに小さな粒子よりもはるかに大きな効果を有する。しかし、酸化鉄粒子を非常に大きくするならば、それらは、毒性でありかつ肺に塞栓形成するかもしれないし、または補体カスケード系を活性化するかもしれない。さらに、これは問題となる粒子の全体のサイズではないが、その端または外部表面において、粒子の直径が特に問題である。磁化および感受性効果のドメインは、粒子の表面から、指数関数的に減少する。一般的に言えば、双極子(空間を通して)緩和メカニズムの場合において、この指数関数減少は、r6依存性を示す。文字通りに解釈すると、常磁性表面から4オングストローム離れている水分子は、同じ常磁性表面から2オングストローム離れている水分子よりも、64倍少ない影響を受ける。コントラスト効果を最大化すること関する理想的な状況は、中空の、柔軟性のある、および可能な限り大きな酸化鉄粒子を作製することである。造影剤を用いて、小胞の内部表面および外部表面をコートすることによって、たとえ個々の造影剤、例えば、酸化鉄ナノ粒子または常磁性鉄が比較的小さな構造であるとしても、造影剤の有効性は非常に改善され得る。そうすることにおいて、造影剤は、有効にはるかに大きな球として機能し得、ここで、磁化の有効なドメインは、小胞の直径によって決定され、小胞の表面において最大である。これらの剤は、柔軟性の利点、すなわち、およびコンプライアンスを提供する。強固な小胞は肺または他の組織にどとまり、かつ毒性反応を引き起こす可能性があるのに対して、これらの柔軟性のある小胞は、毛細血管を通ってはるかにより容易に滑り動く。
【0116】
調製の方法
本発明の方法において使用される安定化されたガスで満たされた小胞は、多数の適切な方法によって調製され得る。これらは、小胞がガスで満たされる場合、およびこれらがガス前駆体で満たされる場合に分けて以下に説明されるが、ガスとガス前駆体の両方を有する小胞は本発明の一部である。
【0117】
ガスの利用
1つの例において、液体安定化化合物を含む水性溶液が、ガスを含む小胞(すなわち、ガスで満たされた小胞)を形成するために、ガスの存在下で、ゲルから液体への液体の結晶相転移温度より下の温度で攪拌される。本明細書で使用される「攪拌する」という用語およびそのバリエーションは、ガスが局所的大気環境から水溶液に導入されるように、水溶液を振盪させる任意の動きを意味する。この振盪は、小胞、特に安定化された小胞の形成を生じるために十分な力でなくてはならない。この振盪は、例えば、回旋、ボルテックス、横向きの動き、または上下の動きによってであり得る。異なる型の動きが組み合わせられ得る。また、振盪は、水性脂質溶液を保持する容器を振盪することによって、または容器それ自体を振盪させることなく、容器内の水性溶液を振盪させることによって行ってもよい。
【0118】
さらに、振盪は、手動でまたは機械によって行ってもよい。使用され得る力学的振盪装置には、例えば、優秀な結果を与えることが見出された、VWR scientific (Cerritos, Calif.)シェーカーテーブルなどのシェーカーテーブル、またはWig-L-Bug(商標)シェーカー (Crescent Dental Mfg. Ltd., Lyons, IL) などが含まれる。使用され得る他のシェーカーには、Espe Vialmix(商標)(Bristol Myers-Squibb) またはMixtura(商標)シェーカー (ImaRx, tuscon, AZ) が含まれる。特定のモードの振盪またはボルテックスが、好ましいサイズ範囲内で安定な小胞を作製するために使用され得る。例えば、Wig-L-Bug(商標)機械シェーカーを使用し、往復運動を用いて実行される振盪は、ガスで満たされた小胞を生成するために利用され得る(例えば、円弧の形状での往復運動である動作を用いて、例えば。約2°〜約20°、または約5°〜約8°、または約6°から約7°、例えば、約6.5°が使用され得る)。往復運動の速度、ならびにその円弧は、形成されるガスで満たされた小胞の量およびサイズを決定する因子である。往復運動の数、すなわち、全サイクルの振動は、1分間あたり約1000〜約20,000の範囲、例えば、約2500〜約8000の範囲内であり得る。上記に言及したWig-L-Bug(商標)は、10秒間あたり2000回の乳棒を打つ動作、すなわち、毎分6000回の振動を供給する機械シェーカーである。当然、振動の数は、攪拌される内容物のかさに依存し、そのかさが大きいと、使用される振動の数が少なくなる。振盪を発生するための別の手段は、高速または高圧下で(例えば、3000〜4000RPM)放出されるガスの作用を含む。
【0119】
より大きな体積の水溶液を用いると、合計の力の量が対応して増加することもまた理解される。激しい攪拌は、1分間あたり少なくとも約60回の振盪動作と定義される。少なくとも60回〜300回のボルテックス、例えば、1分間あたり300回〜1800回の回転もまた使用され得る。振盪の際のガスで満たされた小胞の形成は、目視で検出され得る。所望の安定化された小胞レベルを形成するために必要とされる脂質の濃度は、使用される脂質の型に依存して変化し、これは日常的な実験によって容易に決定され得る。例えば、安定化小胞を形成するために使用される1,2-ジパルミドイル-ホスファチジルコリン(DPPC)の濃度は、生理食塩水溶液の約0.1mg/ml〜約30mg/ml、より好ましくは、生理食塩水溶液の約0.5mg/ml〜約20mg/ml、例えば、生理食塩水溶液の約1mg/ml〜約10mg/mlであり得る。使用されるジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)の濃度は、生理食塩水溶液の約0.1mg/ml〜約30mg/ml、例えば、生理食塩水溶液の約0.5mg/ml〜約20mg/ml、または生理食塩水溶液の約1mg/ml〜約10mg/mlであり得る。
【0120】
上記の単純な振盪方法に加えて、より手の込んだ方法、例えば、液体結晶振盪ガス滴下注入プロセス、および真空乾燥ガス滴下注入プロセス(例えば、米国特許第5,580,575号(これは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるもの)もまた利用され得る。このようなプロセスが使用される場合、ガスが満たされる安定化小胞は、ガス滴下注入の前に、当業者には明白である種々の従来的なリポソーム調製技術のいずれか1つを使用して調製され得る。これらの技術には、凍結-融解、ならびに超音波処理、キレート透析、均質化、溶媒注入、マイクロエマルジョン化、自発的形成、溶媒蒸発、フレンチプレス細胞技術、制御界面活性剤透析、および他の技術が含まれ、各々が、所望の活性成分を含む溶液中で、種々の様式で、小胞を調製する工程を含み、その結果、治療剤、化粧剤、または他の薬剤が、得られる極性脂質ベースの小胞に、カプセル化され、網目に入れられ、または結合される。例えば、Madden et al., Chemistry and Physics of Lipids, (1990) 53:37-46(この開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0121】
上記の方法に従って調製されるガスで満たされた小胞は、1ミクロンから12ミクロンを超えるサイズの範囲である。さらに、押し出しおよび滅菌の手順の後、攪拌および振盪の工程が、溶液中の残りの部分に存在する、無水脂質相をほとんど有しないか、または全く有しないガスで満たされた小胞を生じる(Bamgham, A. D., Standish, M. M. & Watkins, J. C. (1965) J. Mol. Biol. 13, 238-252)。得られるガスで満たされた小胞は、室温において、1年間またはさらに長くの間の保存に対して安定なままである。
【0122】
ガスで満たされた小胞のサイズは、望ましいならば、マイクロエマルジョン化、ボルテックス、押し出し、濾過、超音波処理、均質化、反復する凍結および融解のサイクル、所定のサイズの孔を通しての圧力下での突出、および同様の方法を含む種々の手順によって調整され得る。そのサイズのさらなる修飾においていかなる試みも伴わずに、それらが形成されたままでホスファチジルの小胞を使用することもまた、所望され得る。
【0123】
サイズ分画または濾過の工程は、懸濁物が使用前に滅菌バイアルから移されるとき、またはさらにより好ましくは、フィルターアセンブリーが使用の間にシリンジそれ自体に組み込まれ得るときに、フィルターアセンブリーの使用によって達成され得る。次いで、小胞をサイズ分画する方法は、バレル、少なくとも1つのフィルター、および針を備えるシリンジを使用する工程を含み;そしてバレルと針との間でシリンジに装着されたフィルターを通して、バレルから押し出す工程を含む抽出の工程によって実行され、それによって、本明細書に記載される本発明の方法において小胞を使用する過程の間、患者にこれらを投与する前に小胞をサイズ分画する。この抽出工程はまた、シリンジに小胞を引き込む工程もまた含んでもよく、ここでは、フィルターは、同じやり方で、シリンジに入るときに小胞をサイズ分画するように機能する。別の代替方法は、ある他の手段によってすでにサイズ分画された小胞でこのようなシリンジを満たすことであり、この場合において、フィルターは、ここでは、所望のサイズ範囲内にある小胞のみ、または所望の最大サイズの小胞のみが、引き続いてシリンジからの押し出しによって投与されることを保証するように機能する。
【0124】
好ましい態様において、安定化化合物の溶液または懸濁物はフィルターを通して押し出され、その溶液または懸濁物は振盪の前に熱滅菌される。一旦、ガスで満たされた小胞が形成されると、これらは、上記のようにサイズ分画のために濾過され得る。ガスで満たされた小胞の形成前のこれらの手順は、例えば、水和していない安定化化合物の量を減少させるという利点を提供し、従って、ガスで満たされた小胞の有意に高い収量を提供し、ならびに患者への投与のために準備できた滅菌済みのガスで満たされた小胞を提供する。例えば、バイアルまたはシリンジなどの混合容器は、濾過された安定化化合物、とりわけ、脂質懸濁物で満たされ得、次いで、その懸濁物は、例えば、オートクレーブによって混合容器中で滅菌され得る。ガスは、滅菌容器を振盪することによって、ガスで満たされた小胞を形成するために脂質懸濁物に滴下注入され得る。好ましくは、滅菌容器は、ガスで満たされた小胞が、患者と接触する前にフィルターを通過するように配置されたフィルターを装着される。
【0125】
安定化溶液をフィルターを通して押し出すことは、乾燥した化合物を破壊すること、および水和のためにより大きな表面積を露出することによって、水和していない化合物の量を減少する。好ましくは、この目的のために使用されるフィルターは、約0.1〜約5ミクロン、例えば、約0.1〜約4ミクロン、または約0.1〜約1もしくは2ミクロンのポアサイズを有する。水和していない化合物、とりわけ、脂質は、均一でないサイズのアモルファスクランプとして見られ、これは望ましくない。
【0126】
滅菌は、患者に容易に投与され得る組成物を提供し、かつ熱滅菌によって、例えば、少なくとも100℃〜約130℃の温度で、少なくとも1分間〜約20分間、例えば、15分間、溶液をオートクレーブすることによって達成され得る。
【0127】
ガスで満たされた小胞の破裂を回避するために熱滅菌以外のプロセスによて滅菌が行われる場合、滅菌は、ガスで満たされた小胞の形成に続いて行われてもよい。例えば、γ線放射が、ガスで満たされた小胞が形成される前およびその後で使用され得る。
【0128】
ガス前駆体の使用
上述の態様に加えて、温度、光、またはpH、またはそれが投与される宿主の組織の他の特性による活性化の際に、脂質ベースの小胞からガス状態への相転移を受け、本発明において使用される安定化されたガスで満たされた小胞を作製するように拡大し得る、脂質ベースの小胞中のガス前駆体もまた、使用し得る。この技術は当技術分野において周知であり、かつ米国特許第5,542,935号および同第5,585,112号(これらの両方はそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる)に詳細に記載されている。ガス前駆体で満たされた小胞を調製するための方法は、一般的には、ガス前駆体がガスの代わりに置き換わっている以外は、本明細書において、ガスで満たされた小胞について記載されたものと同様である。
【0129】
ガス前駆体を活性化する好ましい方法は温度による。「活性化」または「転移温度」および同様の用語は、ガス前駆体の沸点、ガス前駆体の液相から気相への相転移が起こる温度をいう。有用なガス前駆体は、約-100℃〜70℃の範囲の沸点を有するガスである。活性化温度は、各々のガス前駆体に特定である。約37℃の活性化温度、すなわちヒト身体の温度が、本発明のガス前駆体のために好ましい。本発明の方法において使用される小胞を調製する方法は、ガス前駆体の沸点以下で実行され得、または低温の沸点を有するガス前駆体については、液体前駆体が、低温まで冷却されたマイクロフルーダイザーデバイスを使用して乳化され得る。沸点はまた、液体形態の前駆体を使用するために液体媒体中で溶媒を使用して低下させてもよい。温度がプロセスの全体を通して増加され、それによってプロセスが、液体としてのガス前駆体を用いて開始し、ガスを用いて終了する方法が実行され得る。
【0130】
ガス前駆体は、標的化された組織もしくは体液中でインサイチューで、患者もしくは動物に入る際にインビボで、使用の前に、保存の間に、または製造の間に、ガスを形成するために選択され得る。相転移の活性化は、温度が前駆体の沸点を超えることが可能になる任意の時点で行われてもよい。また、液体ガス前駆体の液滴中の液体の量を知ることにより、ガス状態を達成する際に小胞のサイズが決定され得る。
【0131】
代替的には、ガス前駆体は、使用の前にあらかじめ形成される、安定なガスで満たされた小胞を作製するために利用され得る。この態様において、ガス前駆体は、それぞれのガス前駆体の液相-気相転移温度より下の温度で懸濁および安定化媒体を含む容器に加えられる。その温度が超えられるにつれて、ガス前駆体と液体溶液との間にエマルジョンが形成され、ガス前駆体は液体からガス状態への転移を受ける。この加熱およびガス形成の結果として、ガス前駆体のガス、大気ガス(例えば、空気)を包括するか、またはガス状態のガス前駆体および大気空気を同時包括する、ガスで満たされた脂質球体を形成するために、ガスが、液体懸濁物の上のヘッドスペースにおいて空気に置き換わる。この相転移は、ガスまたはガス前駆体で満たされた小胞の最適な混合および安定化のために使用され得る。例えば、ガス前駆体、パーフルオロブタンが生体適合可能な脂質または他の安定化化合物中に包括され得、そして温度が4℃(パーフルオロブタンの沸点)を超えて上昇するにつれて、安定化化合物が包括されたフルオロブタンが生じる。さらなる例として、ガス前駆体フルオロブタンが、グリセロールまたはプロピレングリコールなどの乳化剤および安定化剤を含む水性懸濁物中に懸濁され得、そして市販のボルテックス装置上でボルテックスされる。ボルテックスは、ガス前駆体が液体であるのに十分に低い温度で開始され、試料の温度が、液体からガス状態までの相転移温度を過ぎて上昇するように継続される。そうすることにおいて、前駆体は、マイクロエマルジョン化プロセスの間にガス状態に転換する。適切な安定化剤の存在下において、驚くべき安定なガスで満たされた小胞が生じる。
【0132】
従って、ガス前駆体は、インビボでガスで満たされた小胞を形成するために選択され得、またはインサイチューで、製造プロセスの間、保存中に、または使用前のある時点で、ガスで満たされた小胞を産生するように設計され得る。
【0133】
本発明のさらなる態様として、液体状態のガス前駆体を水性エマルジョンに事前に形成すること、および既知のサイズを維持することによって、最大サイズの微小気泡が、理想気体の法則を使用することによって見積もられ得る。
【0134】
理想気体の法則における原理、および液相から気相への小胞のサイズの拡大を利用して、インラインフィルターを通して注入されるために十分に小さく、かつインビボで必要なコントラストの増強を提供する安定な小胞が作製され得る。確かに、液相から気相への転移の際に、ミクロスフェア直径の拡大を知ることによって、フィルター系は、注入/濾過のプロセスを介して、粒子またはエマルジョンがサイズ分画されるように設計され得る。液相から気相への転移の際に、適切なサイズのガスで満たされた小胞が形成する。ガス前駆体の必要な体積および有効な液滴直径に対する安定化物質の寄与を知り、次いで理想気体の法則を利用することによって、前駆体液滴をサイズ分画するための最適なフィルター直径が計算され得る。これは、次には、所望の直径の小胞を産生する。ガス前駆体で満たされた小胞もまた、フィルターを通した押し出しの単純なプロセスによってサイズ分画されてもよい。
【0135】
本発明の方法において使用されるガスで満たされた小胞を調製するためのこの態様は、温度によって活性化されるすべてのガス前駆体に適用され得る。実際、溶媒系の凝固点の低下は、0℃よりも下の温度で液相から気相への転移を受けるガス前駆体の使用を可能にする。溶媒系は、ガス前駆体の懸濁物のための媒体を提供するために選択され得る。例えば、緩衝化生理食塩水中に混和可能な20%プロピレングリコールは、水単独の凝固点よりも十分に下である凝固点降下を示す。プロピレングリコールの量を増加させること、または塩化ナトリウムなどの物質を加えることによって、凝固点は、なおさらに低下され得る。適切な溶媒系の選択は、同様に物理的方法によって説明可能である。固体または液体である、本明細書では溶質と呼ばれる物質が、例えば、水ベースの緩衝液などの溶媒に溶解される場合、凝固点は、溶液の組成に依存する量によって低下される。従って、Wallによって規定されるように、以下の式によって溶媒の凝固点降下を表現することが可能である:
ln xa=ln(1-xb)=ΔHfus/R(1/T0-1/T)
ここで、xa=溶媒のモル画分;=xb溶質のモル画分;ΔHfus=溶媒の融解熱;およびT0=溶媒の通常の凝固点。
【0136】
溶媒の通常の凝固点は、この式を解くことから生じる。上記の式は、本発明において使用されるガス前駆体で満たされた小胞溶液の通常の凝固点を正確に決定するために使用され得る。従って、上記の式は、凝固点降下を見積もるために、および適切な値まで溶媒の凝固温度を低下させるために必要である液体または固体の溶質の適切な濃度を決定するために適用され得る。
【0137】
温度で活性化されたガス前駆体で満たされた小胞を調製するための方法は以下を含む:
(a)本発明において使用されるガス前駆体で満たされた小胞の水性懸濁物をボルテックスすること;この方法のバリエーションは、振盪前に任意にオートクレーブすること、ガス前駆体および脂質の水性懸濁物を任意に加熱すること、懸濁物を含む容器を任意に中身を出すこと、ガス前駆体小胞を任意に振盪し、またはこれを自発的に形成させること、およびガス前駆体で満たされた小胞懸濁物を冷却すること、および任意に、ガス前駆体および脂質の水性懸濁物を、約0.22ミクロンのフィルターを通して押し出すこと、代替的には、濾過することは、約0.22ミクロンのフィルターが利用されるように、得られる小胞のインビボ投与の間に実行され得る;
(b)マイクロエマルジョン化法、それによって、本発明のガス前駆体で満たされた小胞の水性懸濁物が攪拌によってエマルジョン化され、そして患者への投与の前に小胞を血栓症伊勢得するために加熱される;ならびに
(c)加熱および攪拌によって脂質懸濁物中のガス前駆体を形成すること、それによって、低密度のガス前駆体で満たされた小胞は、容器中の他の小胞を拡大および置き換えることによって、ならびに容器に空気を放出させることによって、溶液の上端に浮上する;ならびに
(d)上記の方法のいずれかにおいて、ガス前駆体の水性懸濁物、および生体適合性脂質などの安定化化合物を保持するためにシールされた容器を利用すること、この懸濁物をガス前駆体の相転移温度より下に維持し、続いて、相転移温度よりも上の温度まで移動させるためにオートクレーブを行い、任意に、振盪を伴い、またはガス前駆体小胞が自発的に形成することを可能にし、それによって、シールされた容器中での拡大されたガス前駆体が容器中で圧力を増大し、そしてガスで満たされた小胞懸濁物を冷却する。
【0138】
凍結乾燥は、振盪ガス滴下注入法の前に安定化化合物から水および有機物質を除去するために有用である。乾燥ガス滴下注入法は、小胞から水を除去するために使用され得る。温めた後で、乾燥小胞中にガス前駆体を前包括する(すなわち、乾燥の前に)ことによって、ガス前駆体が小胞を満たすように拡大し得る。ガス前駆体はまた、それらが真空に供された後で乾燥小胞を満たすように使用され得る。肝臓小胞は、それらのゲル/液体結晶転移温度より下の温度に保持されているので、乾燥チャンバーには、ガス前駆体がそのガス状態でゆっくりと満たされ得、例えば、パーフルオロブタンが、4℃(パーフルオロブタンの沸点)と40℃(生体適合性脂質の相転移温度)より下との間の温度で、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から構成される乾燥小胞を満たすために使用され得る。この場合において、小胞は、約4℃〜約5℃の温度で満たされ得る。
【0139】
温度で活性化されるガス前駆体で満たされた小胞を調製するための好ましい方法は、ゲル状態から液体結晶状態までの脂質の相転移温度より下の温度において、ガス前駆体の存在下で、生体適合性脂質などの安定化脂質化合物を有する水溶液を振盪すること、またはガス前駆体の存在下で、生体適合性脂質などの安定化化合物を有する水溶液を振盪すること、および得られるガス前駆体で満たされた小胞を分離することを含む。前述の方法によって調製された小胞は、ゲル状態振盪ガス前駆体滴下注入法によって調製されるガス前駆体で満たされた小胞として、本明細書で言及される。
【0140】
従来的な、水で満たされた先行技術のリポソームは、それらを作製するために使用される脂質の相転移温度よりも上にある温度で日常的に形成される。なぜなら、それらはより柔軟性があり、従って、液体結晶性状態にある生物学的系において有用であるからである。例えば、Szoka and Papahadjopoulos, Proc. Natl. Acad. Sci. (1978), 75d:4194-4198を参照されたい。対照的に、ガス前駆体で満たされた小胞はより大きな受難性を有する。なぜなら、ガス形成後のガス前駆体は、水性溶液よりもより圧縮性かつ従順であるからである。従って、ガス前駆体で満たされた小胞は、ゲル相がより強固である場合でさえ、脂質の相転移温度よりも下の温度で形成された場合に、生物学的系において利用され得る。
【0141】
本発明によって意図される方法は、温度活性化ガス前駆体の存在下で、生体適合性脂質などの安定化化合物を含む水溶液を振盪することを提供する。振盪は、本明細書で使用される場合、ガス前駆体が、局所的大気環境から水溶液に導入されるように、水溶液を攪拌する動作として定義される。水溶液を攪拌し、かつガス前駆体の導入を生じる任意の型の動作が振盪することのために使用され得る。振盪は、一定の期間の後、適切な数の小胞の形成を可能にするために十分な力でなくてはならない。好ましくは、振盪は、短い時間内(例えば、約10〜30分間)で小胞が形成するような、十分な力のものである。振盪は、マイクロエマルジョン化によって、マイクロ流動化によって、例えば、回旋(例えば、ボルテックスによって)、横向きの動き、または上下の動きを用いてであり得る。液体状態にあるガス前駆体の添加の場合において、上記に示される振盪方法に加えて、超音波処理が使用され得る。さらに、異なる型の動きが組み合わせられ得る。また、振盪は、水性脂質溶液を保持する容器を振盪することによって、または容器それ自体を振盪させることなく、容器内の水性溶液を振盪させることによって行ってもよい。さらに、振盪は、手動でまたは機械によって行ってもよい。使用され得る力学的振盪装置には、例えば、優秀な結果を与えることが見出された、VWR Scientific (Cerritos, Calif.)シェーカーテーブルなどのシェーカーテーブル、またはマイクロフルーダイザーWig-L-Bug(商標)(Crescent Dental Manufacturing, Inc., Lyons, Ill)、および力学的ペイントミキサー、ならびに他の公知の機械が含まれる。振盪を産生するための別の手段は、高い速度または圧力の下で放出されるガス前駆体の作用を含む。より大きな体積の水溶液を用いると、合計の力の量が対応して増加することもまた理解される。激しい攪拌は、1分間あたり少なくとも約60回の振盪動作と定義される。1分間あたり1000回〜1800回の回転でのボルテックスが、激しい攪拌の例である。
【0142】
振盪の際のガス前駆体で満たされた小胞の形成は、水溶液の体積の減少と共役した水溶液の上端での泡の存在によって検出され得る。泡の最終体積は、一般的には、水性脂質溶液の初期体積の少なくとも約2倍であり、ある条件下では、水性脂質溶液のすべてが泡に転換する。
【0143】
必要とされる振盪の持続時間は、泡の形成の検出によって決定され得る。例えば、50ml遠心チューブ中の10mlの脂質溶液は、約15〜20分間、またはガス前駆体で満たされた小胞の粘度が十分に高くなり、その結果、回旋されたときにそれがもはや側壁に付着しなくなるまで、ボルテックスされ得る。この時点で、泡は、ガス前駆体で満たされた小胞を含む溶液に、30〜35mlのレベルまで生じさせ得る。
【0144】
適切な泡レベルを形成するために必要とされる脂質安定化化合物の濃度は、使用される安定化生体適合性脂質の型に依存して変化し、かつ一旦本発明の開示が与えられると、当業者によって容易に決定され得る。例えば、本発明によって意図される方法に従って、ガス前駆体で満たされた小胞を形成するために使用される1,2-ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)の濃度は、生理食塩水溶液の約20mg/ml〜約30mg/mlであるのに対して、使用されるジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)の濃度は、生理食塩水溶液の約5mg/ml〜約10mg/mlである。詳細には、振盪の際に、20mg/ml〜30mg/mlの濃度のDPPCは、単独の懸濁液体積よりも4倍多い、全体の懸濁物および包括されたガス前駆体体積を生じる。振盪の際に、10mg/mlの濃度のDSPCは、いかなる液体懸濁物体積も完全に欠き、完全な泡を含む全体の体積を生じる。
【0145】
一旦本発明の開示が与えられると、出発物質として使用される脂質および他の安定化化合物、または小胞最終生成物が、本明細書に記載される方法に供せされる前およびその後で、操作され得ることが当業者によって理解される。例えば、安定化生体適合性脂質は水和され、次いで凍結乾燥され、凍結および融解のサイクルを通して処理され、または単に水和されることが可能である。代替的には、ガス前駆体で満たされた小胞の形成の前に、脂質は水和されかつ次いで凍結乾燥され、または水和され、次いで凍結および融解のサイクルを通して処理され、かつ次いで凍結乾燥される。
【0146】
ガスは、空気以外のガスを提供するために、水性脂質溶液を有する容器に、または水性脂質溶液それ自体に、注入される得るかまたはさもなくば加えられ得る。空気よりも重くないガスは、シールされた容器に加えられ得るのに対して、空気よりも重たいガスは、シールされた容器またはシールされていない容器に加えられ得る。従って、本発明は、ガス前駆体とともに、空気および他のガスの同時包括を含む。
【0147】
安定化化合物を扱った節において上記にすでに記載されたように、本発明によって意図される好ましい方法は、利用される脂質のゲル/液体結晶転移温度よりも下の温度で実行される。従って、上記の安定化小胞前駆体は、一旦宿主の組織への適用によって活性化されたならば、本発明において使用される他の安定化小胞と同じ様式で使用され得、ここで、体温またはpHのような因子がガスの生成を引き起こすために使用され得る。宿主組織が約37℃の通常の温度を有するヒト組織である場合、ガス前駆体は、37℃近傍での液体からガス状態への相転移を有利に受ける。
【0148】
本発明の方法において使用される安定化されたガスで満たされた小胞の調製物を含む上記の態様のすべてが、これらのプロセスがガス滴下注入段階の前または懸濁物中の温度感受性ガス前駆体の温度媒介ガス転換の前のいずれか実行される場合、オートクレーブまたは滅菌濾過によって滅菌され得る。代替的には、1種またはそれ以上の生体適合性抗微生物剤および保存剤が、小胞の製剤に含められ得る。他の従来的な手段によって(例えば、照射によって)もまた達成されてもよいこのような滅菌は必要である。安定化小胞が血管内投与のために使用されるからである。滅菌の適切な手段は、安定化されたガスで満たされた小胞およびそれらの使用の本明細書の記載によって指示される当業者には明らかである。小胞は、一般的には、水性懸濁物として保存されるが、乾燥小胞または乾燥脂質球の場合、使用前に構築されるために準備された乾燥粉末として保存され得る。
【0149】
本発明はさらに、以下の実施例において実証され、これは、例示を意図しているが、いかなる場合においても本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0150】
実施例1
A. MI=O.8での臨床的映像において広範に使用されるパーフルトレン脂質ミクロスフェアは、超音波の適用に起因するいかなる局所的組織の損傷の証拠も示していない。それゆえに、超音波エネルギーレベルは、力学的指標(MI)が0.8未満であるように試験のために選択された。この超音波エネルギーレベルはまた、発生する熱を最小化するように、および従って、超音波の適用の際にヒトによって経験される不快を最小化するように選択された。使用された小胞サイズ(約1〜2ミクロンの範囲)において、1.0MHzが、気泡のためのピーク共鳴周波数に密接しているとして選択された。
【0151】
血塊を溶解するための種々の超音波パラメーターの有効性を試験するために、試料について、1.0MHz、および0.75ワット/cm2(100%負荷サイクル)〜10.0ワット/cm2(10%負荷サイクル)の範囲の異なる出力強度でインビトロ実験を実行した。首尾よいパラメーターのいくつかが以下のように見出された:
a) 1MHz、0.75ワット/cm2、100%負荷サイクル
b) 1MHz、0.75ワット/cm2、10%負荷サイクル
c) 1MHz、1.5ワット/cm2、100%負荷サイクル
d) 1MHz、2.0ワット/cm2、10%負荷サイクル
e) 1MHz、2.0ワット/cm2、20%負荷サイクル
f) 1MHz、10ワット/cm2、10%負荷サイクル
【0152】
B. 健常ヒトボランティアからの血液を、蛍光プローブで標識した痕跡量のフィブリノーゲンでドープした。血塊溶解の程度を、血塊溶解の際の蛍光標識されたフィブリノーゲンの放出から生じる、血漿のオーバーレイの蛍光の増加によって測定した。
【0153】
血塊は、Suchkova, et al. (Circulation (1998) 98:1030-1035)において記載される手順の改変によって形成した。手短に述べると、各血塊を、10μgのAlexafluor(登録商標)-594標識フィブリノーゲン(F-13193 Molecular Probes, OR)でドープした160μLの血液、8μLの1×トロンビン(100×トロンビン;Sigma Chemicalsから調製)、および3.2μLの1M CaCl2(Fluka)を、37℃で1時間インキュベートすることによって、プラスチックチューブ(Beckman)中のスレッド上に形成した。血塊を、820μLのヘパリン処理血漿(U.S. Biological, Swampscott, MA)中に懸濁した。超音波を用いる血塊溶解実験を、5cm2プローブを装着した1MHz Rich-Mar AutoSound Model No. 5.6デバイスを使用して、2W/cm2の出力レベルで、10%負荷サイクルで実行し(Rich-Mar, Inola, OK)、その後、溶解しなかった血塊を廃棄し、血漿溶液を遠心分離して残渣の赤血球をペレット化した。上清血漿の蛍光を、F-Maxプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を使用して、96ウェルプレート中で測定した。励起波長は584nmであり、発光波長は612nmであった。報告するデータは、以下の実験の6回の試行の平均である(n=6)。
オーバーレイに100ng tPA添加。
オーバーレイに100ng tPAおよび2μLのMRX-133添加。3回のこのような添加を、20分毎に行い、合計6μLのMRX-133である。
2つの超音波対照を同時に行った。
tPAの非存在下で、2μLのMRX-133を3回添加した。
tPAの非存在下で、MRX-133を3回添加もなし。
2つの対照実験もまた、超音波なしで行った:
血漿に100ng tPAを添加した。
血漿にMRX-133またはtPAを添加していない。
【0154】
実験設計を概略する表を以下に提示する。
【0155】
(表3)

【0156】
超音波またはガスで満たされた小胞を使用しないtPA単独と比較して、血塊熔解の顕著な2.4倍の増加が、6μLのMRX-133ガスで満たされた小胞の存在下での血塊の超音波処理に際して観察された(図1)。tPAプラス超音波と比較して、MRX-133ガスで満たされた小胞の添加は、50%を上回る血塊溶解を生じた。すべての試料は100ngのtPAを含んだ。これは、外科手術の間に漿膜において見出される遊離のtPAのレベルに近似する。
【0157】
本明細書において引用または記載された各々の特許、特許出願、および刊行物の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0158】
本明細書に記載されたものに加えて、本発明の種々の改変が、前述の記載から当業者には明らかである。このような改変もまた、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脈管構造内で血塊を破壊するための非侵襲性方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)脂質およびガスまたはガス前駆体を水性キャリア中に含む小胞組成物を患者に血管内投与する工程;ならびに
(b)約10%〜約80%の負荷サイクルのために約0.5ワット/cm2〜約20ワット/cm2を上回る出力を有する超音波が、血塊の部位に隣接する小胞の破裂を誘導するために十分な期間、患者に適用され、それによって血塊を破壊する工程

【請求項2】
血塊の破壊をモニタリングするために診断的映像法を用いて患者をスキャンする工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
スキャンする工程が、超音波の適用の前に、それと同時に、またはその後に実行される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
診断的映像法が磁気共鳴映像法(MRI)を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
期間が約1分間〜約8時間である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
期間が約5分間〜約2時間である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
期間が約1時間である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
超音波が集束される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
超音波が集束されない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
超音波の力学的指標が約8.0以下である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
出力が、50%の負荷サイクルで送達される10ワット/cm2である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
超音波が約0.1%〜80%未満の負荷サイクルで送達される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
血塊が脳の脈管構造中にある、請求項1記載の方法。
【請求項14】
血塊が、脈管構造中の脆弱なプラークの破裂と関連する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
血塊が虚血性脳卒中または出血性脳卒中と関連する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
血塊がアテローム硬化性プラークと関連する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
血塊が介入性の医学的手段から生じる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
血塊が急性四肢虚血から生じる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
血塊が心筋梗塞と関連する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
血塊が透析移植片と関連する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
血塊が深静脈血栓症と関連する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
投与が静脈内である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
投与が動脈内である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
小胞が標的化リガンドをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
血塊が静脈内にありかつ標的化リガンドがフィブリンを標的化する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
血塊が動脈内にありかつ標的化リガンドが血小板を標的とする、請求項24記載の方法。
【請求項27】
小胞が、超音波の適用の際に放出される治療剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
治療剤が血栓溶解性である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
治療剤が組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
組成物が薬物をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
組成物が抗凝固剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
抗凝固剤がヘパリンである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
抗高脂血症剤の同時投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
ガスまたはガス前駆体が、10個未満の炭素原子を含むパーフルオロカーボンである、請求項1記載の方法。
【請求項35】
パーフルオロカーボンが、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロヘキサン、およびパーフルオロペンタンからなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
パーフルオロカーボン化合物がパーフルオロプロパンである、請求項34記載の方法。
【請求項37】
パーフルオロカーボン化合物がパーフルオロブタンである、請求項34記載の方法。
【請求項38】
小胞がリポソームを含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
組成物が常磁性剤をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項40】
常磁性剤が遷移元素、ランタニド元素、およびアクチニド元素からなる群より選択される常磁性イオンを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
小胞が約1ミクロン〜約5ミクロンの平均直径を有する、請求項4記載の方法。
【請求項42】
小胞が約1ミクロン〜約3ミクロンの平均直径を有する、請求項41記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−256172(P2011−256172A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141473(P2011−141473)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2006−533767(P2006−533767)の分割
【原出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(510011709)セレバスト セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】