説明

改良されたインクカートリッジ

【課題】コスト低減並びに環境負荷低減を図ることのできるインクカートリッジを提供する。
【解決手段】チャンバー4を規定する一つまたはそれ以上の壁を備えるハウジング1と、ハウジング1の第1の壁から延出される流体吐出口30と、湾曲した流体の導管42を備えるサイフォン構造とを備え、導管42は、チャンバー4の内部に配置される流入端部43から流体吐出口30に配置される導管42の反対側の流出端部44まで延びてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてデジタル印刷のための流体供給装置の分野に関する。詳細には、本発明は改良されたインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
記述を簡潔にするために本願では主にプリンターと称する印刷装置は、現代社会においてほとんど偏在的存在であると言える。プリンターは、多国籍企業や政府機関から各家庭で宿題に取り組む小学生に至るまで、社会に存在するあらゆる場所で用いられている。プリンター技術の中でも、インクジェットプリンタは低価格な選択肢の一つであり、それゆえ消費者には根強い人気がある。
【0003】
しかし、ユーザーも知っての通り、交換用インクカートリッジは高額で、継続的な所有コストがかかる。各カートリッジは使用可能期間が制限されており、その期間は主にインク容量によって決まっている。インクが有効に抽出できなくなると、従来のインクカートリッジは廃棄及び交換される。インクカートリッジを定期的に廃棄及び交換することは、ユーザーだけでなく環境にも多大な代償を課す。消耗したインクカートリッジは一般的に廃棄処分され、比較的分解されにくいハウジングと化学物質を含有するインクは埋め立てられる。さらに、交換用インクカートリッジの製造にも多大な量の資源が消費される。
【0004】
ユーザーのコストと環境破壊の両方を抑えるために、消費者又は第三者によってインクカートリッジの再充填を可能にするための多くの提案がなされ、開発された。しかし、これらの努力は、自社のプリンター用の交換用カートリッジを販売することでかなりの収入を得ている相手先商標製品の製造者(OEM)によって能動的にも、受動的にも阻止された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず第一に、一般的にOEMは消費者が比較的単純且つ清潔に、信頼性のあるインク補充を行えるようにインクカートリッジを設計していないのだ。むしろ、消費者は第三者による道具を用いて、インクカートリッジの品質を破壊し、しばしば困難で汚い作業を伴う方法をとる必要があった。
【0006】
第二に、一般的にOEMは、プリンターからのインク吐出信号をカウントし、カートリッジ内のインク残量が少なくなるか空になると知らせてくれる電子式チップセットを、消費者がリセットする手段を提供しない。従って、消費者がインクカートリッジの詰め替えに成功しても、チップセットからはインクの残量が少ない又は空であるという信号が絶えず発せられる。
【0007】
消費者が上手くインクを詰め替えられたとしても、従来のインクカートリッジの内部構造によって収容可能なインクの量は制限される。例えば、一般的に従来のインクカートリッジは、比較的均等にカートリッジの内部ボディ全体にインクを分配するように設計された内部“スポンジ”を備えている。このように、インクがカートリッジの一か所から吐出されると、吐出されたインクはカートリッジ本体の別の場所からスポンジを通過して滲出するインクによって補充される。しかし、このような設計にはカートリッジの寿命を縮める2つの欠点が存在する。
【0008】
まず第一に、スポンジ自体がカートリッジ本体の中で場所を取るため、許容できるインクの量が少なくなる。第二に、カートリッジ内のインク量がスポンジの滲出容量より少なくなると、カートリッジ内にインクが残っていても内部でインクは移動しない。従って、印刷に用いることができるインクが無駄になる。
【0009】
さらに、ほとんどのインクカートリッジは一度しか使用できない。例えば、従来のインクカートリッジは一度のみ使用され、使用後は廃棄されるように設計されている。ある第三者企業によって製造された詰め替え可能なインクカートリッジは、再利用はできるが、(上記したような)スポンジを介在することに起因する問題や、その他様々な問題に苦しんでいる。また、従来のインクカートリッジも詰め替え可能なカートリッジも、インク連続供給システム(CISS)で用いられるためには設計されていない。
【0010】
従って、現存するインクカートリッジ及びOEMによるインクカートリッジ産業は、消費者に高額なコストを課し、明らかな環境負担を与えている。今日まで、増加する試みによってこれらの問題のどちらか又は両方が大幅に軽減されることはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願における例示的実施例によって説明され、広く解釈される新規のインクカートリッジは、従来のもの、詰め替え可能なもの、そしてインク連続供給システム(CISS)用のものの少なくとも3つの種類を含む。従来のインクカートリッジは通常一度きりの使用で、インクがほとんど又は完全に無くなると廃棄されるように設計されている。市販の製品及び/又は利用可能なサービスを用いることで従来のインクカートリッジを詰め替えることもできるが、本願では記述を単純にするために、本願で言及する従来のインクカートリッジとは使い捨てのカートリッジ(例えば、所定の再充填口を有さないものなど)として製造者によって設計及び製造されたものとする。詰め替え可能なインクカートリッジとは繰り返しの使用のために設計され、消耗されたインクがユーザーまたはその類の業務の請負人によって交換が可能なものである。一般的に、詰め替え可能なカートリッジは再充填する前にプリンターから取り外す必要があるが、全てに当てはまるとは限らない。
【0012】
最後に、CISSカートリッジとは、プリンターからインクカートリッジを取り外すことなくカートリッジから供給されるインクをインク源からのインクに置き替えられるように、別個のインク源(貯蔵室、ポンプなど)と比較的連続して流体連結するように結合して設計されるものである。このように、別個のインク源にすぐに利用可能なインクが保持されているため、CISSでは比較的連続した印刷が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】限定はされないが好適とされる本発明の実施例によるインク供給装置の断面図である。
【図2】限定はされないが好適とされる本発明の実施例による図1に示されるインク供給装置のサイフォン構造及び流体吐出口の詳細な断面図である。
【図3】限定はされないが好適とされる本発明の実施例によるインク供給装置の複数の連続する流体流路が備わってなるサイフォン構造の詳細な断面図である。
【図4】限定はされないが好適とされる本発明の実施例によるインク供給装置の内部が仕切られた流体流入口の各垂直縦断面の断面図を示す。
【図5】限定はされないが好適とされる本発明の実施例によるインク供給装置と着脱可能に結合されたリセット可能な電子装置の断面図である。
【図6】限定はされないが好適とされる本発明の実施例によるカートリッジ内インクレベルの監視に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願の図面及び説明に関し、本発明は代替的な実施例における様々な特徴の異なる構造及び配置を包含するものと理解されたい。本願の図面及び説明は例示的な実施例を表し、技術分野における通常の能力を有する者が考えうる代替的な形態を除外するものではない。
【0015】
例えば、記述上の単純性及び明瞭性のために本願では例示的な液体としてインクが用いられているが、本実施例はインクのみの使用に限定するものではない。むしろ、インクと言及することにより、技術分野における通常の能力を有する者には理解されるようにその他の液体を用いる実施例の適合性をも示唆している。
【0016】
本願において、記述上の単純さのためにいくつかの表現が用いられる。例えば、「〜でもよい(may)」という用語は代替的な実施例との間に生じる差異を許容する意味で用いられ、記載された特徴に関して不明確性や曖昧さを示唆するものではない。同様に、本願では「比較的(relatively)」という用語は比較する意味で用いられる(例えば、「xはyよりも比較的長い」など)ことに加え、少なくとも一つの実施例において記載された条件及び/又は特徴(寸法、形状、方向など)が、例示的な実施例に関して記載された厳密な方法や条件と異なることに対する柔軟性を示す。このように、「〜してもよい」、「比較的」やその他の用語は、記載された実施例のみが意図されるという融通性のない解釈を払拭し、付加的に考えられうる多数の代替形態へ発明の範囲を拡張する意味で用いられる。
【0017】
方向を表す用語(上方向、水平方向など)は、常にではないが通常は一つ又はそれ以上の明確化する条件(「通常の使用時」など)に関して記述上の明確さのために用いられる。しかし、特に記載のない限り記載された方向は一つ又はそれ以上の図面を参照としており、記述上の単純さのためだけに、参照図面の上端部は「上方」又は「上部」と任意に表わされる。
【0018】
図1を参照に、インク供給装置100(本願ではインクカートリッジ、又は単にカートリッジと呼ぶ)は一つ又はそれ以上の周壁2a、2bからなるハウジング1を含む。一つ又はそれ以上の周壁2a、2bは、チャンバー4(本願ではインク室4、液体室4又は単にチャンバー4などと呼ぶ)をなす外側境界構造を形成するために、一つ又はそれ以上の外装壁3に結合及び/又はその間に配置される。本願において各周壁2a、2b及び外装壁3は、チャンバー4に隣接する内側面と、その反対側には外部環境に概ね隣接する外側面を有する。
【0019】
少なくとも一つの代替的な実施例において、一つ又はそれ以上の周壁2a、2bは内側周壁構造からなり、外側周壁構造(図1の2c)は、本願でさらに詳細に記載されるように内側周壁構造をしっかりと包囲する。このように、内側及び外側の周壁はチャンバー4の少なくとも一部を包囲する二重周壁構造を形成する。従って、周壁2a、2bから延長する、始まる、終わるもしくは周壁2a、2bに配置される又は隣接する本願に記載のあらゆる構造は、少なくとも一つの実施例において同様に内側周壁構造2a、2b及び外側周壁構造2cの一方もしくは両方と構造的に関連する(例えば、内側と外側の両方の周壁構造から延長する構造)。
【0020】
カートリッジ100は、外側境界構造の壁部の内側及びチャンバー4内に主に配置される仕切り5として形成された一つ又はそれ以上の内部構造をさらに含むこともできる。この仕切り5は、以下にさらに詳細に記載されるように、チャンバー4をサブチャンバー6、7及び/又は通路に実質的にはさらに分割することもできる。上記サブチャンバーは、一つ又はそれ以上の実施例においては流路を介して流体連絡される状況にあるため、“実質的には”さらに分割されると記載する。
【0021】
インクカートリッジのハウジングの形(形状、寸法及び構造など)は、各OEMの印刷装置(プリンター)の異なる構造及びその他のパラメーターに互換して係合するように実質的に異なる。プリンターは手で持ち運べる程に小さいものや(ラベルプリンタなど)、大きな部屋を概ね占領する程に大きいもの(大判新聞紙印刷に適したプリンターなど)や、その中間のサイズのものもある。従って、本願で記載されるハウジング1の実施例は、インクカートリッジを用いるように設計された現存する及び/又は合理的に考慮されたプリンターに互換するあらゆる代替的な形状をとることができ、その実施例は添付の図面で示される例示的実施例のみに限定されるものではない。例えば、プリンタカートリッジは4つの周壁と外装壁を有し、各壁部は一つ又はそれ以上の隣接する壁部と湾曲する角の接合部を介して結合されてもよい。従って、5つの側面からなる構造全体が、単一の連続する外壁をなす一つの境界構造とされてもよい。
【0022】
代替的に、プリンタカートリッジは少なくとも一つの密閉された端部を有する円柱部として形成することもできる。しかし、このような代替的なハウジング構造は、本願で示されるように一つ又はそれ以上の周壁2a、2b及び一つ又はそれ以上の外装壁3から構成されるものと考えられる。本願ではある特定の構造は、一つ又はそれ以上の周壁に配置もしくは関連すると記載されるが、実施例はそれに限定するものではない。少なくとも一つの実施例において、上記のような構造は例えば外装壁などの周壁以外の壁部に配置されてもよい。
【0023】
本実施例では、インクカートリッジ100の多くの部位及び表面が、印刷装置に使用可能なインクを構成する様々な物質(顔料、結合剤、溶剤、基剤など)による長期間の汚染にさらされることも考えられる。よって、このようなインク汚染にさらされる可能性のあるインク部位及び表面は、汚染によって劣化しない材料から概ね構成される。材料としては、例えば、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネートやその他のポリマー、プラスチックやその類似物などの、一つ又はそれ以上の印刷インクを構成する物質との使用に適すると当技術分野では認識される物質が挙げられる。従って、本実施例の材料として“適する”とされる材料は、印刷装置と使用されることを前提として液体及び/又はその他の物質の汚染による劣化に対して耐性を有する材料を包含する。
【0024】
カートリッジ100は、通常ハウジング1から外側に向かって形成され、プリンターのカートリッジ受容部に配置又は隣接して配置される対応する(相互的な)構造上の特徴部に着脱可能に係合するように形成された一つ又はそれ以上の保持機構20(ボルト、ラッチなど)を備える。保持機構20はカートリッジ100と一体的及び/又はその外表面に形成されるか、又は取り外し可能に結合されて形成されてもよい。保持機構20は単一部品として形成されても、複数の部材及び/又は構造特性を含む部品として形成されてもよい。
【0025】
例えば、図1に示される新規且つ例示的な保持機構20は、ラッチ部材22を受けると共に固定し、ラッチ部材22を比較的線上の移動経路に沿って誘導する一体的に形成された受容部21を含んでなる。受容部21内のラッチ部材22とハウジング1の周壁2の間に配置されるばね部材24(コイルばね、圧縮性を有する弾性材など)が、通常ラッチ部材22をプリンターの対応する構造特性とラッチ係合する位置に維持する。ラッチ部材22はさらに保持機構20から外側に延長するタブ23を含んでなる。ユーザーによってタブ23に移動する力が加えられると、ばね部材24は圧縮されラッチ部材22はプリンターの対応する構造特性から取り外される。
【0026】
本実施例においてラッチ部材22は付加的に及び/又は代替的に、カートリッジがプリンターに係合している間、プリンターの対応する構造に接触するよう形成された傾斜面25を含んでなる。ユーザーによってカートリッジに係合する力が加えられると、傾斜面25は対応するプリンター構造に押し付けられ、それによりラッチ部材22が線上に移動し、ばね部材24を圧縮する。通常の使用時にカートリッジがプリンターに対して係合する位置に到達すると、ラッチ部材22と対応するプリンター構造との間に隙間が生じ、ばね部材24の圧縮が緩む。これに対応して、ラッチ部材22は(例えば、ばね部材24の伸長方向に対応した)反対方向に移動し、プリンターに係合する。
【0027】
ラッチ部材22とばね部材24の一方又は両方は、カートリッジから手動で取り外すことが可能である。実施例において、ラッチ部材と受容部の一方又は両方には、本願では便宜のためだけに総じて“弾性保持機構”と称される一つ又はそれ以上の弾性的な保持表面機構(突出部、溝部など)を備えて構成される。上記弾性保持機構は、例えば通常の使用の際、ラッチ部材22と受容部21の間で固定係合を行うために形成される。しかし、十分な取り外し力がユーザーによって加えられると、弾性保持機構はその力に屈し、ラッチ部材22及び/又はばね部材24がカートリッジから取り外される。再度の装着は、通常取り外し工程を逆転して行う。代替的にラッチ部材22は、技術分野における通常の能力を有する者には本記載を考慮することで理解されうる多岐に渡るあらゆる機構、方法及び原理(摩擦、干渉、ツイストロック、固定ピンなど)を介して取り付け及び取り外しすることも可能である。
【0028】
本願では、もちろん代替的な保持機構20も意図される。例えば、少なくとも一つの実施例によると、保持機構20は市場に出ているプリンタカートリッジに既存するあらゆる形態をとることもできる。同様に、図1に示される例示的な保持機構20の上記した構成部品のそれぞれの構造及び/又は構成は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく多様化することも可能である。
【0029】
図1に示されるように、カートリッジ100はハウジングの周壁を通って延長し、使用時にカートリッジの内側と外側の間で流体連絡を行う液体吐出口(本願ではインク吐出口30又は単に吐出口30と呼ぶ)を含んでなる。通常、インク吐出口30に関して流体とは液体インクを指し、本願では同じ意味で例えばインク、プリンター用インク、インクジェット用インクなどの用語も用いられる。さらに、吐出口30を介した流体連絡は通常の使用時においては通常一方向で外向きに流動するため、特に記載のない限りは本願に渡ってそのように考慮されたい。
【0030】
少なくとも一つの実施例における例示的な吐出口30の構造の詳細は図2に示される。限定はされないが通常は、円柱状のインク管31は周壁2aを通って延長し、図示されるようにカートリッジ100のいくぶん内部まで又はその外壁をいくぶん越えて延長する。周壁2aを越えて両方向に延長する際、インク管31の一部分はハウジング1に一体的に形成された延長部及び/又は備わった管形成構造によって構成される。便宜上、本願におけるインク管31は、サイフォン構造から(又はサイフォン構造の一部から)インクを受けるように配置及び構成された流入端部と、カートリッジから外部にインクを運搬するように配置及び構成された流出端部とを通常有するものとする。
【0031】
限定はされないが通常は、インク管31の流出口又はその近位にはインク管31よりもいくぶん大きな横断面寸法(例えば直径など)を有するインクの流れを制御するチャンバー32(本願では弁チャンバーと呼ぶ)が備わってなる。弁チャンバー32はカートリッジ100の外側境界の完全に内側に配置されることもあるが、図2に示されるようにそこから外側に延長することも可能である。
【0032】
実施例において、一つ又はそれ以上の弁部材は全体的に又は少なくとも部分的に弁チャンバー32内に固定される。弁部材は単独であっても及び/又は複数で協働しても、吐出口30からインクの流れを制御するための役割を担う。図2の実施例で示されるように、限定はされないが一般的にこれら弁部材は密閉部材36(Oリング、膜状リングなど)、栓部材35(ストッパー、弁フラップ、ボールベアリングなど)及び張力部材34(ばね、弾性の圧縮及び/又は偏向材質など)から構成される。一般的に個別の部材から構成されるこれらの部材は、代替的に相互と組み合わされることも可能であり、これによってより少ない部品に複数の機能を統合することができる。また、弁チャンバー32自体の構造に組み込まれた特性によって一つ又はそれ以上の機能が果たされ、これにより一つ又はそれ以上の個別の弁部材の必要性が除去又は軽減されるか、あるいは吐出口30のインク流量制御性能に有効に影響する。
【0033】
もちろん、異なるOEMの印刷装置に互換するインクカートリッジの様々なインク吐出口は構造的にかなり違ったものでもよい。例えば実施例の一つにおいて、インク吐出口はカートリッジの壁部(周壁、外装壁など)に開けられた開口部程度の構造的複雑さを有するものであってもよい。使用前に穴からインクが漏れないように一時的なカバーが設けられてもよく、カバーは使用時にカートリッジがプリンターに装着される際にユーザーが比較的簡単に取り外せるものとする。別の実施例では、一つ又はそれ以上の力に反応する弁、電気的に作動する弁、熱に反応する弁又は空気圧で作動する弁などを含むより複雑な構造のものが備えられてもよい。
【0034】
図1の例示的な実施例には、カートリッジのハウジング1の壁部2bに配置され、流体(インクなど)のチャンバー4への運搬を可能にする再充填口70が表わされる。一般的に再充填口は壁部2bを貫通して形成される開口部72を含んでなり、その寸法及び形状は異なってもよい。例示的な実施例では、その形状は円形で約1〜10mmの範囲の直径を有するものとするが、それ以上及び以下の寸法の開口部も同様に発明範囲に含まれる。
【0035】
一般的に再充填口は、例えばプラグ、ストッパー又は同様の装置(本願では記述上の単純性のためプラグと呼ぶ)として形成された密閉部材74を含んでなる。プラグ74はカートリッジ100に大量のインクを補充するために必要な再充填口70を、ユーザーが選択的に開口及び/又は閉鎖(密閉)することを可能にする。
【0036】
上記されるように、通常プラグ24はインク物質との接触による劣化に耐性のある、例えばシリコンゴムなどの材質から形成される。プラグ74と開口部72の内縁の間で摩擦係号及び/又は圧縮係合することで有効な密閉係合が行われるため、プラグ74は比較的軟質な圧縮可能な材質から形成されることが多いが、本実施例はそれらに限定される訳ではない。
【0037】
代案的には、プラグ74は再充填口70の開口部72に多数の方法によって係合及び密閉されてもよい。プラグ74を密閉状態にねじ込むために、プラグ74は再充填口の開口部の内側及び外側の一方もしくは両方のねじ山に係合してもよい。開口部の周囲を包囲するハウジングの一部は内側及び/又は外側に雄ねじ山を備えたリム、フランジ又はリップをなすように隆起して形成されるか、もしくはリム、フランジ又は類似する特性を形成するために同様の構造がハウジングに結合されてもよい。
【0038】
プラグは再利用されるように、又は一度使用したら廃棄され(又は取り外され)交換されるように設計されてもよい。例えば、プラグ(小さな金属製のボール部品など)は開口部72を介した充填を可能にするために、チャンバー4に押し入れられるように設計され、充填が完了すると他の類似する又は異なるプラグに交換される。さらに、プラグ74にはプラグを取り除くためにタブ76(例えばタグなど)又はハウジング1の外側にその他の構造が備わってなり、ユーザーが手で又は道具を使用してプラグを掴み、プラグ74を開口部72から取り外すことが可能なように設計及び配置される。
【0039】
再充填口の実施例及び本願で記載したそれに関連する構造はあくまで例示的なものであって、意図される代替案及び/又は同等の実施例の全てを包含するものではない。例えば、プラグ74は漏れ防止バリアを形成するための、開口部72の外側を覆うように接着剤で固定された単なるプラスチック膜であってもよい。
【0040】
特に記載されない限り、通常本願で記載される発明の実施例の範囲は特定のインク吐出口構造又はインク再充填口に限定されるものではなく、とりわけ記載された実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
一つ又はそれ以上の実施例における本願のとりわけ新規な特性のいくつかを以下に詳細に説明する。
【0042】
(インクサイフォン)
本願の例示的な実施例における新規のサイフォン構造は、前述した従来技術よりも多大な効果を発揮すると共に、インク吐出口へのインクの安定した供給を可能にする。
【0043】
再度、図2を参照に、サイフォン構造は主にチャンバー4から吐出口30まで延長する湾曲する導管42、又はインク導管42(チューブ、パイプ、導水管など)を形成する一つ又はそれ以上の仕切り41a、41bから構成される。具体的には、湾曲する導管42はチャンバー側に液体流入口と液体吐出口側に液体流出口を含んでなり、湾曲導管42はこのようにチャンバーから液体吐出口への液体連絡に適するように設計される。本願では便宜上、チャンバー4側に面した湾曲導管42の端部は流入端部43とし、吐出口30に面した反対側の端部は流出端部44と呼ぶ。
【0044】
例えば図2における41a、41bなどの導管を形成する一つ又はそれ以上の仕切りは、通常一方の外装壁の内表面から逆側の外装壁の内表面の全体に渡って延長する。このように設計された実施例において、インク導管42は全ての面が完全に包囲され、通常その流入端部と流出端部においてのみ開口する。代案的に、湾曲導管42は下記のようなサイフォンの基本的な流体運搬性質を有する流路をなす連続的な湾曲する流管であれば、実質的にどのような構造(管部品、パイプなど)であってもよい。
【0045】
技術分野における通常の能力を有する者であれば、図2で描写され、図1に関連して説明された湾曲導管の一部は、例えばA−A’に沿って四辺形(四角形又は長方形など)の横断面を有することに気付くはずだろう。しかし、代案的な実施例によるとあらゆる形状の横断面が可能であり(例えば円形の横断面を有する円筒部など)、断面形状及び/又は寸法はインク導管42の異なる部分で異なる。
【0046】
用語「湾曲する」とはインク導管42が線形でないことを意味し、より具体的にはインク導管42の少なくとも一部分が、(通常使用時での配置において)流体の流れの方向を概ね上方向から概ね下方向に変える湾曲部4として形成される。例えば、図2に示される例示的(だが限定的ではない)実施例では、流体の流れ方向は流入端部43における概ね上方向の流れ方向に対し、流出端部44における流体の流れ方向は約180度変わっている。
【0047】
通常の使用の際、一般に湾曲部45はインク導管42の流入端部43と流出端部44それぞれの中間に、高い位置で配置される。概念的に、そして本願の便宜上、湾曲部45の頂上部46と流入端部43の間に配置されるインク導管部分を流入区域47と呼ぶ。同様に、頂上部46と流出端部44の間に配置されるインク導管部分を流出区域48と呼ぶ。限定的ではないが一般には、インク管31及び/又は流れ制御チャンバー32などの吐出口30の一部は流出区域の一部を構成する。
【0048】
技術分野における通常の能力を有する者は既に気付いているはずだが、流出区域48は流入区域47よりも比較的長く、その機能上の原理に関しては下記で説明する。
【0049】
限定的ではないが一般的には、仕切り41aと周壁2aの内表面の間に流入ギャップ49が形成される。ギャップ49は、チャンバー4内のインクがインク導管42の流入端部43に流入するための入り口を形成する。代替的に、仕切り41aは周壁2aで終わり、周壁2aと結合されてもよい。しかし、このような実施例では、仕切り41aには周壁2aと交わる箇所又は隣接する箇所に通常一つ又はそれ以上の開口部が形成されてなる。本願で説明される例示的実施例における流入ギャップ49の構造的及び機能的特徴に関する記載は、代案的な実施例における一つ又はそれ以上のギャップに関しても適用される。便宜上、本段落に記載される又は理解されうる上記のような全てのギャップ又はその他の開口部は、以下、総じて流入ギャップ49、流入口49又は単にギャップ49と呼ぶ。
【0050】
ギャップ49の寸法又は流入口49を形成する複数のギャップ又はその他の開口部の累積寸法は、代替実施例によって異なってもよい。例えば、より粘度の高い流体が用いられる場合は比較的大きな開口部が有用で耐用性がある一方で、より粘度の低い流体の場合には小さな開口部の方が有益となるが、流体の粘度は実施例において開口部の適した寸法を決める上での一要素でしかない。
【0051】
通常サイフォンは、パイプ、ホース、管状部品又は別の特定の導管なども用いて、所定/第一の位置から相対的により低い位置の目的地へ液体を移動させるために用いられる。技術分野における通常の能力を有する者には理解されるように、サイフォンは通常気圧と重力の共働原理に依存する。例えばパイプの上端部が液体の中に配置され、もう一方の端部は上端部に比べて低い位置に配置される。液体にかかる気圧によって液柱はパイプの流入区域を上昇し、その一方で流出区域内の比較的長い液柱は重力に反応し、概ね連続する液柱をパイプ内に引き寄せ、液体からさらなる液体を流入区域に誘引し続ける。このように、サイフォンによって実質的に連続的な液体の流れが達成される。
【0052】
しかし、液体の水位がパイプの流入端部よりも低くなると、サイフォンの効果は中断され、サイフォンを介した液体の連続的な流れは停止することもある。
【0053】
作動中、本願で記載された新規のプリンター用カートリッジサイフォン構造40では、チャンバー4から吐出口30へ印刷時に必要とされるインクを運搬するために同様の操作原理が用いられる。通常サイフォン構造40は、使用時に流入口49がチャンバー4内の最も低い位置又はその近辺に位置するように、主にカートリッジ100内に配置される。これにより、流入口49はカートリッジ内の全て又はほぼ全てのインクが無くなるまで、いかなる量であってもチャンバー4内に存在するインクによって覆われた状態となる。
【0054】
サイフォン構造40は、チャンバーからインク吐出口30に至るまでインクを運搬するためにスポンジやその他の吸水構造に依存していないので、チャンバー4のほぼ全体をインクで充填することができる。これに由来するインク容量の増加によって、開示した実施例の使用可能期間はスポンジを用いたカートリッジと比べて長くなる。
【0055】
「インクジェットプリンタ用インクカートリッジ」と題された米国特許第7328986(以下986と呼ぶ)に記載されるように、従来技術にはスポンジを用いないインクカートリッジが少なくとも一つ存在する。986でサイフォン装置はインクカートリッジ内に形成されているが、後半で“平衝管”と記載される986のいわゆる“サイフォン装置”が、その用途、形状又は機能のいずれにおいても本願で記載されるサイフォン構造と同等のものでないことは、技術分野における通常の能力を有する者であれば容易に認識できるであろう。用途及び機能的に見ると、986の平衝管はインクが供給される際に比較的負性の気圧がカートリッジ内に記憶するのを未然に防ぐための通気口である。しかし、平衝管はチャンバーから吐出口までインクを運搬する上で何の役割も担っておらず、上記したようなサイフォン原理に基づいて機能しておらず、このような用途のために設計されたものではない。従って、技術分野における通常の能力を有する者には本願実施例において記載されたカートリッジ及びサイフォン構造は、986のカートリッジ及び平衝管とは構造的にも機能的にも全く異なることが理解いただけるであろう。
【0056】
図2に示される単一のインク導管42を有する実施例は、便宜上、“単一サイフォン”の実施例と称される。しかし、本発明はそれのみに限定されるものではない。図3に示されるように、代案的に本発明の広い範囲に包含されるサイフォン構造の代替的実施例200におけるカートリッジは、複数(二つ又はそれ以上)の隣接する湾曲したインク流路(導管など)を備えて同様に形成されてもよい。例えば、第二湾曲導管201は流入ギャップ203、流入区域204、湾曲部205及び流出区域206を含んでなり、図2における湾曲導管42と非常に類似した構造配列を有する。しかし、図3の場合、湾曲導管201はインク導管42と連続的に隣接し、長さに沿って複数の同様にアーチ形をなす部分を備えた一つの延長する導管を形成する。
【0057】
“複数隣接型サイフォンシステム”としても称される複数の湾曲部は、サイフォン構造内を流れるインクの流れ抵抗を増加する。流れ抵抗が増加すると、例えば完全に密閉された吐出口を有さないインクカートリッジ(例えば、スポンジ及び/又は繊維構造によってインクを保持するカートリッジなど)の実施例においてインク漏れが防止される。
【0058】
代案的及び/又は付加的に、インクの流れ抵抗の増加は、一つ又はそれ以上のサイフォン湾曲部を有する実施例において、一つ又はそれ以上のサイフォン湾曲部の“高さ”を増加する(例えば、流入区域47及び流出区域206の長さを延長する)ことで達成可能となる。もちろん、本願の記載及び図面を参照として技術分野における通常の能力を有する者には理解されるように、一つ又はそれ以上のサイフォン湾曲部の数量及び/又は高さのいずれか又は両方は、(例えば、チャンバー内の許容空間に応じて)実施例において制限されてもよい。
【0059】
図2及び3には、比較的アーチ状に曲がった円形の湾曲部45、205を備えたサイフォン構造が示されているが、実施例はこれに限定されるものではない。少なくとも一つの実施例では、サイフォン構造の流入及び流出区域は、むしろ一つのアーチ状の湾曲部によってではなく、比較的線形の移行する導管部分を有する複数の湾曲部によって相互から分離されてもよい。例えば、移行する導管部分は比較的線形の横向きの導管で、そのインクの流れは流入区域及び流出区域のいずれか又は両方のインクの流れに対して約90°に配向されてもよい。このように、使用時において流入及び流出区域はそれぞれカートリッジ内において比較的垂直に配置され、移行する導管部分はその間に比較的水平に配置される。
【0060】
(流体流入口)
図1に示される例示的実施例によると、インク供給カートリッジ100はさらに内部で仕切られた流体流入口50(本願では“流入口”と呼ぶ)を含んでなり、これによって流体はカートリッジ100のチャンバー4に導入される。代替的な実施例によると、流入口50を介してカートリッジに導入可能とされる流体は気体(空気など)又は液体(インクなど)であってもよく、気体の場合には流入口50は通気口(例えば均圧弁として)として、液体の場合には流入口50はインク連続供給システム(CISS)におけるインク吐出口として機能する。
【0061】
次に図4a及び4bを参照として、例示的な内部が仕切られた流体流入口50はハウジングの第二周壁2bに配置され、周壁2aを(あれば外側周壁2cまでも)貫通延長してなる。本願において流入口50が“内部で仕切られた”と記載されるのは、一つ又はそれ以上の仕切り51a、51b(図4aにて最もよく示される)が実質的に一方向に向かう流路52を形成し、少なくとも部分的にチャンバー内に延長するからである。流路52が“実質的に一方向に向かう”と記載されるのは、通常流体は使用時において流路を一方向のみ(例えばカートリッジの外側から内側)に流れるからである。例示的な実施例(以下にさらに説明する)に含まれる一つ又はそれ以上の構造特性は、流体が反対方向(例えばカートリッジの内側から外側)に流れるのを防ぐために備えられる。
【0062】
例示的な流入口50は、カートリッジ100の外部に備わるインク源から第二周壁2b(あれば外側周壁2cも)を貫通し、一方向に向かう流路52に至るまで流体を連絡するための流体流入管53を含んでなる。一般的に、一方向に向かう流路52との合流箇所における流体流入管53の断面積は、一方向に向かう流路52の対応する断面積よりも小さい。例えば、従来の及び/又は充填可能なカートリッジのいずれかの例示的実施例における使用では、流体流入孔53は約1mmの内径に相当する断面積を有する。これとは対照的に、同じ実施例における一方向に向かう流路52の概ね長方形状の断面積は約10mm2となる。
【0063】
しかし、上記した相対的な内径及び断面積は他の実施例によって異なり、例示的な実施例における寸法に限定されるものではない。例えば、カートリッジのCISS実施例は、一方向に向かう流路52へ比較的制限のないインクの流れを促進するために、代わりとして約4mmの内径を有する流体流入管53を備えて形成されてもよい。さらに、流体流入管53及び一方向に向かう流路52の断面形状は、その他の実施例によって広く異なる(五角形状、円形状など)。
【0064】
同様に、一つ又はそれ以上の実施例において、一方向に向かう流路52は、図4aで最もよく示される流体流入管53の内側端部に隣接する小さな流体貯蔵部を形成する拡大部を有して形成されてもよい。
【0065】
流体流入管53は一方向に向かう流路52との合流箇所に隣接して、図4の例示的実施例によると例えば円錐状又は円錐台状の突出部(ニップルなど)として描かれた逆流制限構造54を通過及び貫通する。限定はされないが通常は、流体流入管53から一方向に向かう流路52への開口部は、図4bにて最もよく表わされるように各外装壁3a、3bのおおよそ中間に配置される。当然の結果として、逆流制限構造54の少なくとも位置及び形状と、流体流入管53の比較的小さな寸法によって、通常使用時において液体が一方向に向かう流路52から流体流入管53に流入することが制限される。
【0066】
図4bに関して、外装壁3aは比較的薄く軟質なシート部材として描かれているため(図1〜8にも示される)、少なくとも一つの実施例における外装壁3aは軟質なシート部材であってもよい。しかし、本記載を参照に技術分野における通常の能力を有する者であれば理解されるように、少なくとも一つの別の実施例では外装壁3aは、外装壁3bと同様に比較的分厚く比較的硬質な壁として形成されてもよい。従って、意図される実施例には薄く軟質なシート部材又は比較的分厚くより硬質なシート部材のいずれかとして形成された外装壁3aが備わる。
【0067】
インク流れの逆流を防ぐと共に制限する役割をさらに担うのは、全てではないが一つ又はそれ以上の実施例において一方向に向かう流路52内に配置される一つ又はそれ以上の隔壁パーティション56(本願では“隔壁”と呼ぶ)である。図4a、4bで最もよく表わされるように、各隔壁56は一方向に向かう流路52の全長の部分的に渡って延長し、流路52を狭め、そこを通過する流体の流れを限界レベル(0%よりもわずかに大きい)から相当レベル(100%よりもわずかに小さい)までのあらゆる範囲で妨げる。隔壁56を通過する及び/又は貫通する一つ又はそれ以上の開口した通路は、ほとんどどんな形状であってもよく、隔壁56のほとんどどの部分に隣接及び/又は貫通して配置されてもよい。
【0068】
限定はされないが一般的に、内部が仕切られた流体流入口50は第二周壁2bに隣接する第一端部57aから第一周壁2aに隣接する第二端部57bまで延長してなる。
【0069】
図1及び図4にはその長さの全て又は一部分に沿って概ね線形に形成された流体流入口50が示されるが、代案的に流体流入口50はその長さに沿って一つ又はそれ以上の湾曲部及び/又は曲線部を含んでなる非線形の構造を有してもよい。また、仕切り51a、51b及び/又は一方向に向かう流路52の一つ又はそれ以上の構造的寸法(通路の幅、仕切りの厚さなど)は、流体流入口50の少なくとも一つの部分において、少なくとも別の部分に比べて異なることは技術分野における通常の能力を有する者であれば理解できるであろう。このように、本発明の範囲は本願で記載された又は図面に示された例示的実施例に限定されず、本願に明確に且つ黙示的に本質的に開示された実施案と同等であると技術分野における通常の能力を有する者によって合理的に認められるものを含む。
【0070】
また別の実施例によると、流体流入口50は第二周壁2bから内側に延長するが、第一周壁2aまでは完全には延長しない。その代わり、異なる周壁、外装壁まで延長するか、あるいは他の周壁又は外装壁まで完全に延長することなくチャンバー4内で終了する。同様に、本発明の範囲は複数の仕切り壁を備えるものとして設計されたカートリッジを含み、本実施例はカートリッジのほとんどどの単一外壁(又は外壁のどの部分)からも内側に延長する流体流入口50を包含することを理解されたい。
【0071】
限定はされないが通常は、流体流入口50は第二端部57bに隣接して配置されるフィルター材58(例えば材質、構造あるいはその一方又は両方を組み合わせたもの)を含んでなる。フィルター材58は第一周壁2aに形成された溝部の中、第一周壁2aの内表面又は一方向に向かう流路52内にさえも配置されることができる。図1に示されるような双方の間に間隙を介して形成された二重周壁を有する実施例において、フィルター材は内側と外側の周壁の間(例えば2aと2cの間)の溝部に配置され、濾過された流体が例えばフィルター手段の外面の近く及び/又は外部に備えられた一つ又はそれ以上の入口59を通ってチャンバーに再流入する。しかし、通常フィルター材58は流体(ガス、液体又はその両方であっても)が流体流入口50からチャンバー4に流入する前にフィルター材58を必ず通過しなければならないように配置及び構成される。従って、濾過された流体は濾過されていない流体から概ね分けて保持される。
【0072】
フィルター材58は、圧縮又は織られた繊維構造、第一周壁2a(及び/又は外側周壁2c)の機械的及び/又は構造的配列、多孔質及び/又は選択的に透過性の膜、粒子トラップ、ふるい、織物、及び/又は従来技術で周知であるその他の多くの材質、構造及び/又は配列であってもよい。一般にフィルター材は、適切なレベルの効率で所定の寸法よりも大きな破片が流体流入口50からチャンバー4へ流入することを防ぐ能力を含んだ選択性に少なくとも基づいて利用される。
【0073】
フィルター材は、ある特定の大きさの一つ又はそれ以上の寸法を有する又は超える粒子の流れを防止する能力(効率性)によって特徴づけられてもよい。記述上の単純性及び明確性のために、本願における“所定の大きさ”の破片とは、一般にフィルター材が特定レベルの効率で通過を防止する一つ又はそれ以上の粒子サイズを示す。
【0074】
一例として、あるフィルター材は5μ又はそれ以上の粒子は99%の効率で通過を防止する(すなわち、5μ以上の粒子は100個のうち約1個しかフィルター材を通過しない)一方で、同様のフィルター材では1μの粒子は65%の効率でしか通過を防止できない。便宜上、フィルターはそれが所定のしきい値効率で通過を防止できる粒子の大きさに応じて単純に称されるものとする。例えば、上記されたフィルター材はしきい値効率99%の“5μフィルター”と称される。
【0075】
説明されたように、従来及び詰め替え用カートリッジの実施例において、流体流入口50の内側の幅(すなわち直径)が例えば約1mmであったとしたら、一般にCISSの実施例における流体流入口50の内側の幅はそれよりも広い。しかし、主となるカートリッジのハウジング1は成形工程から容易に形成されるため、本実施例によるCISS用、従来用又は詰め替え用のカートリッジのどれに適応して形成された成形であっても、本実施例によるその他のCISS用、従来用又は詰め替え用カートリッジに容易且つ迅速に変更することができる。このような変更は、一例としては、成形穴の内側に延長し、流体流入口50を形成する成形部品(ピン、ロッドなど)を、成形終了後に成形部品が引き抜かれた時点で単に変更するだけで達成される。このように、本発明のインクカートリッジの実施例によると、製造において記載した3種類のカートリッジの間で簡単且つ迅速な変換が可能となる。
【0076】
代案的に、CISSの用途に容易に使用できるように、カートリッジは一例として4mmの流体流入口50を備えて形成されてもよい。しかし、必要に応じて流体流入口にはその4mmの穴を通過する1mmの流体流入管を有するプラグがしっかりと、且つ取り外し可能に挿入されてもよい。上記又はそれに関連する実施例では、CISS用に製造されたカートリッジが従来及び/又は詰め替え用の一方又は両方のカートリッジとして利用可能なものに変換でき、必要に応じてまたCISS用に変換することもできる。このような設計の統一性と一つ又はそれ以上の所望の用途へ容易に変換できることによって、無駄がなくなり資源の節約につながる。
【0077】
上記実施例及び説明を参照に理解されるように、本発明にはどの3種類のインク供給装置(すなわちカートリッジ)でも製造可能に設計された及び/又は設計可能とされる鋳型組み合わせ(例えば射出成形など)も意図される。それらはそれぞれ従来用インクカートリッジ、詰め替え用インクカートリッジ及びインク連続供給システム(CISS)用インクカートリッジであり、一つ又はそれ以上のバルクインクボトルと、CISS用カートリッジとインクボトルの間で流体連絡を行うインクラインと共に用いられる。このように、本発明は消費者のコストと環境破壊の両方を抑制する容易に詰め替え可能なインク供給システムを提供する。
【0078】
(リセット可能なチップセット)
上記されるように、プリンター用カートリッジはインク吐出イベントに応じて電子信号を監視する(すなわちカウントする)電子装置を備えることがある。各インク吐出イベントにおいて、一般的にカートリッジは比較的均等な量のインクを吐出する(約3〜4ピコリッター)。従って、通常のカートリッジにおけるインク許容量に対するインク吐出信号数を監視することで、カートリッジ内のインクが完全に消耗してしまう前にカートリッジがいつ頃“インク残量が低い”及び/又は“残量がない”状態になるかのおおよその目安となる。
【0079】
同様に、図1及び図5を参照として、開示される本願の実施例は、印刷装置と伝導的に結合されると共に、そこからの信号を受信するように設計された、通常複数の導電性の接点61a〜61nを有するリセット可能な電子装置60を含んでなる。記述上の単純性のために、リセット可能な電子装置60の実施例は代替的に“チップセット60”と呼ぶ。
【0080】
限定はされないが一般的にチップセット60は、プリント基板(PCB)の一面に物理的に結合された一つ又はそれ以上の集積回路装置62(すなわちシリコンチップ)を有する。通常、少なくとも一つの集積回路装置62には処理回路及びその機能が備わってなり、本願では記述の単純性のため、これをプロセッサ62と呼ぶ。PCBは一つ又はそれ以上の導電性の“接点パッド”61a〜61n(又は単に“接点61”)をその第二の対向する側面に配置してなり、“n”とは代替的な実施例における複数の接点の異なる合計数を表わす。
【0081】
接点61は、PCBの“チップ側”から通常反対(逆)に位置するPCBの“接点側”へ導電経路を構成するように形成された一つ又はそれ以上のビスホール又はいわゆる“vias”64又はその他の機能的に類似する構造によってチップセットと電気通信するように結合される。限定はされないが通常、接点61はPCB63の表面上で相互と電気的に絶縁され、プリンターに正常に設置され、使用される際にプリンターの対応する電気接点とそれぞれが電気通信するように配置される。
【0082】
一般的な従来技術の接点列は、比較的幅広な非導電材質が間に配置された概ね正方形状及び/又は長方形状の接点の一つ又はそれ以上の列及び/又は段から構成される。しかし、少なくとも一つの新規な実施例において、接点列は比較的狭小な非導電領域によって隔てられた複数の接点からなる。このような実施例において、接点は印刷装置の対応する接点と接触するように配置及び形成される。しかしながら、少なくとも一つの実施例において、リセット可能なチップセットの接点は規則的な列及び又は段をなすように配置されない。むしろ、数々の実施例において接点は格子状に直交し、列、段又はその両方に沿って重なり合って形成される非対称及び対称の導電パッドのいずれか又は両方を含んでなる。通常このような接点は、従来のような列状及び/又は段状に配置された配列における対応する接点よりも、それぞれ大きな表面積を有する。新規の接点配列の一例は図5に表わされる。この実施例では、同じ配列の少なくとも一つの接点と形状、長さ及び/又は幅のいずれか又は全てにおいて異なる接点が少なくとも一つ備わってなる。
【0083】
限定的ではないが一般的な実施例には、インク量の値(インクリメント吐出信号カウントなど)及び一つ又はそれ以上のプリセット警告値(吐出信号カウント限界値など)のいずれか又は両方の情報を記憶するように設計された記憶回路が一つ又はそれ以上の集積回路装置62の内部に備わってなる。用語“インクリメント”とは、記憶回路がプリンターから受信されたインク吐出信号を、開始時のカウント(すなわちゼロ)に対する吐出信号増分の累積合計数として検知及び監視(すなわちカウント)することができることを意味する。記憶回路はプロセッサ62内に備えられても、またはPCBと結合された及び/又はプロセッサ62と電気通信された一つ又はそれ以上の個別の集積回路メモリ装置に備えられてもよい。代替的に、カウント機能を実行する記憶回路は、個別の又は一体化されたリングカウンタ、ループカウンタ、バケツリレー素子又はその類のものとされてもよい。
【0084】
記憶回路は読み取り専用メモリ(ROM)部分及びランダムアクセスメモリ(RAM)の一方又は両方、そして揮発性メモリ(電源が切れた際にデータ消失の対象となる)及び不揮発性メモリ(“フラッシュ”メモリなど)の一方又は両方を含んで設計されてもよい。本願の記載を参考に技術分野における通常の能力を有する者によって認識されるように、代案的なメモリ装置を同様に用いることも可能である。記述を単純にするために、どちらの場合においても上記のような記憶回路は本願では“メモリ”又は“メモリチップ”と選択的に称される。
【0085】
また、リセット可能なチップセット装置はプリント回路基板とそれに結合されたプロセッサ62及び/又はメモリを保持するように形成された支持構造65を含んでなる。さらに、支持構造65は通常インクカートリッジのハウジング1を形成する一つ又はそれ以上の壁部と取り外し可能に連結されてなる。一例として、ある実施例におけるハウジングの壁部は、リセット可能なチップセットの対応する保持機構68と連結し、取り外し可能に保持する保持機構66又は保持機構の配置を含んでなる。代案的には、少なくとも一つの実施例において、リセット可能なチップセットはカートリッジハウジングの構造的特徴を永久的に変える(例えば損傷する)ことなく、カートリッジと一体的又はさもなければチップセットを容易に取り外せないように連結される。
【0086】
チップセット支持構造65をインクカートリッジのハウジングと結合するための、及び/又はPCBをチップセット支持構造と結合するための保持機構66、68は、磁気吸引部品、粘着剤、相互摩擦係合部品、力に反応して変形可能なラッチ部品、熱によって変形可能な部品、ツイストロック部品、ファスナー(スクリュー、ピンなど)又は技術分野における通常の能力を有する者によって理解されるその他のあらゆる部品のうちの一つ又は複数を有してもよい。代案的に、カートリッジのハウジングの一部は、リセット可能なチップセット装置を全体的又は部分的に収容及び固定するように形成された容器を含んで構成されてもよい。
【0087】
チップセット支持構造65は周知のあらゆる製造技術(押し出し成型、射出成形など)によって形成されてもよく、カートリッジのハウジングとしっかりと持続的な(またある実施例においては取り外し可能な)結合を形成するのに適した剛性を有するあらゆる材質(プラスチック、ポリマー、金属など)から構成されることができる。使用時に導電結合を形成するために、支持構造65はPCBの電気接点をプリンターの対応する電気接点に関連した位置に固定するのに適した剛性を有するものとする。
【0088】
カートリッジにインクが充填又はほぼ充填されたことを示すために、インクカートリッジにインクを詰め替える際にチップセット記憶回路に記憶されたインクレベル表示数値をリセットできると有益である。チップセットをリセットするには、チップセットの一つ又はそれ以上の接点と電気的に結合し、一つ又はそれ以上の集積回路装置62と電気通信する個別の装置を用いて手動で行われる。本願では記述を単純にするために、手動でリセット可能なチップセットは“RAC”(resettable chipset)と称する。RACの一例は、「環境保護のためのインクカートリッジ制御」と題された米国特許7,192,109号(以下109)に記載される。
【0089】
しかしながら、本願発明のインクカートリッジの少なくとも一つの実施例では、例えば印刷装置から一つ又はそれ以上の接点61が電気的に分離された際に、他の装置を用いることなく自動でチップセットをリセットするように形成された回路を備えた自動リセットチップセットを含んでなる。本願では記述の単純さのために、自動リセットチップセットは“ARC”と呼ぶ。109においてARCについての記載又は示唆はされていないことは技術分野における通常の能力を有する者であれば認識できるであろう。
【0090】
(例示的なリセット可能なインクカートリッジの論理流れ)
RAC及びARCのそれぞれの例示的な論理流れは図6に示される例示的なブロック図を参照に説明される。
【0091】
まず図6を参照に、本願では記述を単純にするために“開始時インク容量”又は“開始時容量”とされる周知のインク容量を有するインクカートリッジは702に示される。開始時容量とはカートリッジの最大容量、カートリッジの重量に基づいて算出された容量、ユーザー、再充填を行った第三者又は再充填サービス提供者によってカートリッジに加えられた周知の容量、カートリッジの提供者(すなわち製造者)によって表示された容量、又はその他の方法で測定された容量であってもよい。
【0092】
開始時容量に基づいて、対応する潜在的インク吐出の回数が704で特定される。潜在的インク吐出の回数を特定する一つの方法では、開始時容量を一回の(例えば、プリンターによる吐出信号に応じて行われる)吐出イベントで吐出されるおおよその又は周知のインク容量で割ることで得られる。一例として、プリンターからの一回の吐出信号につき、約3〜4pL.のインクが吐出される。開始時容量に対応するインク吐出の潜在的回数の合計は、吐出イベント(チップセットがプリンターからの受信した吐出信号)の回数を示した範囲又は整数で表示される。
【0093】
以下に説明されるように、潜在的なインク吐出回数を測定する(限定的ではないが)主な理由は、使用時において吐出イベントの一つ又はそれ以上の累計回数に対して一つ又はそれ以上の警告値を特定するためである。ある実施例によると、一つ又はそれ以上の警告値は“予め特定され”(すなわちインクカートリッジを使用する前に決定され)、“予めセットされ”(すなわちインクカートリッジを使用する前にメモリに記憶され)る。同様に、一つ又はそれ以上の警告値とは、その値の時にカートリッジ内のインクレベルが低いことをユーザーに警告する一つ又はそれ以上の推定されるインク容量を表わす。
【0094】
代案的に、開始時容量に対する潜在的な吐出回数から警告値を測定するのではなく、数値は各吐出信号に応じて吐出されたおおよそのインク容量に対応して及び/又はインク容量を表わすように選択されてもよい。
【0095】
706において、開始時インク容量の値(例として“初期値”、“デフォルト値”、“所定値”など)はチップセットの記憶回路に記憶(すなわち“設定”)される。一般に初期値は開始時インク容量に対応する及び/又はインク容量を表わす。例えば、704において特定される潜在的なインク吐出回数は開始時インク容量を表わすこともある。この場合、推定されるインク残量(すなわち、その当時のインク容量)は、インク吐出イベントが行われる度に初期値をデクリメントすることによって、インクカートリッジの使用中においても特定することができる。代案として、初期値は“ゼロ”であってもよく、使用中に推定インク残量を表わすようにインク吐出イベントが行われる度にインクリメントされてもよい。
【0096】
しかし、意図される実施例の範囲及び意図から逸脱することなく、代替的又は付加的に“ゼロ”及び/又は潜在インク吐出回数以外の数値を初期値として用いることも可能であることは、技術分野における通常の能力を有する者によって認識されるであろう。同様に、少なくとも一つの実施例ではインク量の値をインクリメント及びデクリメントのいずれか又は両方を行うことをユーザーが選択することができ、またリセット可能なチップセットが実行することができる。
【0097】
初期値の記憶は、本願発明のリセット可能な電子装置の実施例に一体的、直接的又は間接的に結合されたディスプレー装置に備えられたグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を介して実行される。初期値の入力は、例えばマウス、ジョイスティック、キーボード、タッチ対応ディスプレー、テンキーボード、光(レーザーなど)及び/又は音(声など)対応のデータ入力システム、補助的なデータ入力装置(視線検出器、エアパフ入力装置など)又は現在周知の若しくは電子データ入力技術において合理的に考慮されるその他のあらゆる入力装置又はそれらの組み合わせを用いて又は代用して行うこともできる。
【0098】
ある実施例では、初期値は所定値、又は計算装置及び/又は印刷装置の記憶回路に備わる指示として既存し、リセット可能なチップセットと作動的に結合されると、チップセットに通信及び記憶される。代案的に、チップセットがプリンターと結合していない場合、インク量の値の記憶は、リセット可能な電子装置の一つ又はそれ以上の実施例におけるメモリチップと結合し、データ及び又は指示を交換するように設定された別の装置又はシステムを介して行われてもよい。
【0099】
限定的ではないが一般的なARCチップセットの実施例において、初期値はチップセット記憶回路においてデフォルト値として永久的に記憶(設定)されており、ユーザーによる初期値のリセット(再設定)は不要か不可能のいずれか又は両方である。初期値の最初の設定はチップセットの製造者、インクカートリッジの製造者又はエンドユーザーによって行われる。しかし、インクの再充填作業の度に手動でチップセットをリセットするよりも、例えばチップセットを印刷装置から電気的に分離すると初期値が自動的にリセットされてもよい。従って、ARCチップセットを備えたカートリッジの実施例に関しては、インク再充填工程から704と706の工程は省略される。
【0100】
初期値に加え、一つ又はそれ以上のインク容量警告値(“警告値”)もまた708で特定されてもよい。警告値もまた、初期値の記憶に関して上記されたあらゆる同様の方法で、710においてメモリチップに記憶(すなわち設定)されてもよい。警告値は、ユーザーがインクカートリッジ内のインク容量が低い又は空なのでインクカートリッジの交換及び/又は再充填が今又はもうすぐ必要であるとの警告を受ける一つ又はそれ以上のインクレベルを表わすように選択される。少なくとも一つの実施例において警告値の使用は任意的であり、その具体的な詳細は以下に説明される。
【0101】
上記で説明されたような、ARCの一つ又はそれ以上の実施例において初期値がデフォルト値として永久的に記憶されるのとほぼ同様の方法で、一つ又はそれ以上の警告値もまたARCの一つ又はそれ以上のチップセット記憶回路に永久的に記憶される。従って、ARCチップセットを備えたカートリッジの実施例に関しては、インク再充填工程から708と710の工程は省略される。
【0102】
712の工程で初期値及び/又は一つ又はそれ以上の警告値が特定及び設定されると、リセット可能なチップセットを備えたカートリッジは、カートリッジを受容及び固定するように対応して形成された印刷装置に作動的に結合される。カートリッジから取り外せるリセット可能なチップセットの実施例において、通常リセット可能なチップセットはカートリッジのチップセット保持部分に、カートリッジをプリンターと結合する前に結合される。
【0103】
リセット可能なチップセットをプリンターと作動的に結合するには、チップセットの電気接点をプリンターにおけるプリンター/カートリッジインターフェースバスの対応する電気接点に電気通信するように配置する。通常は、プリンター/カートリッジインターフェースバスは、少なくとも部分的にインクカートリッジ内に配置されるインクレベルセンサ72と使用時に電気的に結合される二つ又はそれ以上のインクの存在を感知する信号線(ワイヤー、導電トレースなど)を備える。一般にインクは導電性なので、ある信号線によってインクセンサに伝達された電気信号はカートリッジ内のインクを介して導電され、少なくとも第二のインクの存在を感知する信号線を介して帰還される。従って、インクの存在を感知する信号回路全体の電気的導通により帰還信号が検出されると、カートリッジ内にはインクが存在すると判断される。インクレベルがインクセンサのレベルよりも低くなると、インクの存在を感知する信号回路中の導通は失われ、カートリッジ内のインクレベルは低い又は空であると判断される。
【0104】
しかしながら、本願発明のチップセット及びカートリッジの実施例において、RAC又はARCは、カートリッジがプリンターと作動的に結合している際、プリンターにおけるインクの存在を感知する複数の信号線と閉回路を形成するように構成された導電性回線経路を備える。限定はされないが、通常インクの存在を感知する信号線はPCBにおいて電気的にショートされるが、PCBと作動的に結合された集積回路(IC)又は個別のデジタル又はアナログ装置においてもショートされてもよい。よって、低インクレベルの状態はインクレベルセンサ及び関連する回路によって示されるよりも、カートリッジのチップセットの操作によって示される。
【0105】
従って、インク存在センサ回路を有するプリンターについては、714の工程で「インク存在センサはカートリッジ内にインクが存在すると報告していますか?」との質問が決定ブロックに含まれる。この質問はプリンターによる論理的な操作であっても、本質的に単に概念的なものであってもよい。プリンターの対応する接点と電気的に結合される場合、カートリッジのショートされたインク存在センサ信号は714の問いに対して常に“Yes”を返すので、“No”を返すことはカートリッジがプリンターに正常に結合されていないことを意味する。
【0106】
しかし、714において判定が“Yes”の場合、716でカートリッジのチップセットに記憶されたインク量の値は一つ又はそれ以上の所定警告値と比較される。718の決定ブロックにおいて記憶されたインク量の値が所定警告値に達していると表示されなければ、次に720においてインクカートリッジがプリンターによる使用が可能であると表示され、印刷が可能となる。
【0107】
しかし、718における判定が、インク容量が一つ又はそれ以上の所定警告値に達していることを示した場合、論理流れは「所定警告値は印刷終了値であるか?」の質問が含まれる722の決定ブロックに進む。722の質問に対する判定が“No”の場合、724において低インクレベル信号が発信され、720においてインクカートリッジはプリンターによる使用が可能であると表示され、印刷が可能となる。低インクレベル信号を受信すると、プリンターはカートリッジ内のインクレベルが低いことをユーザーが検知可能な(音声、視覚、触覚などによる)表示で示す。消耗したインクレベルで継続して印刷するとインクカートリッジ及びプリンターのいずれか又は両方が損傷を受けることがあるため、低インクレベル信号はユーザーにとって有益な情報となる。
【0108】
実施例において、発信された低インクレベル信号は所定警告値と一致することもある。例えば、第一所定警告値は開始時インク量の値の約15%の推定インクレベルに相当してもよく、対応する発信された低インクレベル信号によって、接続されたプリンターはインク容量の約15%が残存することを認識する。別の所定警告値は約10%の推定インクレベルに相当することも可能で、対応する発生された低インクレベル信号によって、同様に接続されたプリンターはインク容量の約10%が残存することを認識する。もちろん、本願では一つ又はそれ以上の警告値はほとんどどんな残存容量を表示するようにも設定することができ、数値に達すると対応する低インクレベル信号を同様に発生する。
【0109】
しかし、722において“Yes”の判定が返されると、726において“印刷終了”の信号が発せられ、印刷不可能となる。通常、ユーザーは継続して印刷を行うべくインクカートリッジを交換又は再充填するために、728においてインクカートリッジをプリンターから取り外す。アクティブな印刷工程(すなわち“印刷ジョブ”)を中断することは破壊的で無駄が生じることが多い。よって、印刷終了値に達したことが検知されると、プリンターはアクティブな印刷ジョブが完了するまで印刷を継続し、完了後に印刷終了の信号を発信及び/又は信号に対して応答することも可能である。一般的に、応答工程にはユーザーが適切な是正措置(インクカートリッジを交換する、又はインクカートリッジにインクを充填するなど)を行うまでさらなる印刷が行われるのを防止することが含まれる。
【0110】
上記したように、完全に消耗した(すなわちインクが全く残っていない)カートリッジにインク吐出信号を送り続けることは、時としてカートリッジ及び/又はプリンターのプリンタヘッドに損傷を与えることがある。従って、印刷終了値は通常カートリッジ内にまだ少量のインクが残存しているレベルに概ね設定される。一例として、印刷終了値は開始時インク量の値の約1〜5%に相当するように設定されてもよい。もちろん、印刷終了値は本願における初期値に対してほとんどどのようなレベルでも設定することが可能で、カートリッジの総インク容量、プリンターによって処理される印刷ジョブの平均サイズ、各吐出信号で吐出されるインク量、印刷ジョブを処理するその他のプリンターの利用可能性、又はプリンター及び/又はカートリッジ機能に本来備わったその他のあらゆる要素及び/又はユーザーの自己裁量の範囲内のその他のあらゆる要素に基づいて異なることも考えられる。
【0111】
720で示されるように、インクカートリッジの使用準備が整ったことが示されると印刷が可能となる。印刷ジョブが実行中は、通常プリンターはインクがカートリッジから排出されるようにインク吐出信号を発信する。図6に表わされる例示的実施例では、吐出信号はプリンター/カートリッジインターフェースバスを通じても伝達され、730でチップセットによって検知される。
【0112】
検知された吐出信号に対して、チップセットの論理回路は706で記憶された初期値にアクセスし、732で検知された吐出信号を計上するために初期値を調整(インクリメント又はデクリメント)する。例えば、初期値が“10,000”であった場合、“9,999”にデクリメントされる。代案的に、初期値が例えば“0”であった場合には“1”にインクリメントされる。吐出信号はカートリッジから排出されるインクの量に対応するので、各吐出信号(“イベント”)に応じて記憶されたインク量の値を調整することでカートリッジ内の代表される(すなわち正確な)推定インク残量を把握することが可能となる。
【0113】
初期値を調整したら、734で新しく調整されたインク量の値(調整値)はメモリに記憶される。調整値は初期値に代わって(置き換えられて)記憶されても、メモリ内に別々に記憶されてもどちらでもよい。どちらの場合にも、記述上の単純さ及び明確さのためにこれより以下、調整値は“最新インク量の値”(“最新値”)と称される。
【0114】
その後、いくつかの決定ブロックで示されるように上記で説明された716〜734に応じた工程が繰り返され、722において“Yes”の結果が返され、726の工程を受けるとカートリッジによるさらなる印刷は不可能となる。
【0115】
少なくとも一つの代替的実施例では、チップセットが吐出信号を受信すると、所定の間隔で(例えば1〜n回の吐出信号毎に一度)716で示される比較が実行される。所定間隔は、例えばチップセット及び/又はカートリッジの製造者、プリンターによってチップセットに通信された指示、又はユーザーによって初期値の設定に関して上記で説明されたように(GUI、入力装置などを用いて)予め設定されてもよい。
【0116】
従来のカートリッジの場合、継続して印刷を行うにはインクレベルが不十分であることを知らせる吐出カウント値が検知されると、ユーザーは通常プリンターからカートリッジを分離し(すなわち取り外し)、交換用のカートリッジを設置して印刷を再開する。しかし、本願発明の実施例ではRAC及び/又はARCチップセットはカートリッジから取り外して別のカートリッジに取り付けることが可能であるので、消耗した従来のカートリッジと共にチップセットを廃棄しなくてもすむ。むしろ、チップセットの数値は上記で説明したようにリセットできるため、同等の又は別のインクカートリッジと使用可能な状態になる。
【0117】
詰め替え可能なカートリッジの場合、継続して印刷を行うにはインクレベルが不十分であることを知らせる吐出カウント値が検知されると、ユーザーは通常プリンターからカートリッジを分離する(すなわち取り外す)。そしてユーザーはカートリッジをインクで充填し、再充填されたカートリッジを再び取り付ける。詰め替え可能なカートリッジがRACチップセットを備える場合、カートリッジを再び取り付ける前にユーザーは一つ又はそれ以上のインク量の値及び/又は警告値を手動でリセットする。代案的に、ARCチップセットの場合には、例えばプリンターからチップセットを電気的に分離する及び/又はプリンターとチップセットを再度結合することで一つ又はそれ以上の上記数値は自動的にリセットされる。
【0118】
上記された所定の数値、信号の指定及び検知された信号カウント値に対する応答は例示的なものに過ぎず、意図される実施例の思想及び範囲から逸脱することなく、その他の実施例において大きく異なってもよい。
【0119】
(別の実施例)
上述のカートリッジ及び特徴に関し、実施例には、一つのインク室、チップセット、サイフォン構造、及び/または吐出口を有するインクカートリッジに限られず、これらをそれぞれ複数有するものも含まれる。例えば、2種類あるいはそれ以上の種類の色(またはタイプ)のインクを吐出するように構成された実施例では、複数のカートリッジ部材を含むことができる。各部材は、それぞれ固有のインク室を含み、各カートリッジ部材のインク室は、一つまたはそれ以上の色(またはタイプ)のインクのために設けられる。それぞれの専用室に関することは、一般的には専用の吐出口や、流体流入口、及び/またはチップセットにも適用されるが、単一のチップセットは、同様に、一つ以上のインク室を有するインクカートリッジのインクレベルを独立して追跡するように構成されることができる。
【0120】
複数室を有するインクカートリッジを利用するように構成されたプリンターは、一般的には同様に、複数色の各インクに対応した吐出信号を送信するように構成され、吐出信号は、チップセットの論理回路によって検出可能かつ識別可能とされる。加えて、独立した開始値及び/または警告レベルを、複数の各インク室の固有値(例えば、収容量、インク粘度、使用頻度等)に対応して記憶させることができる。したがって、インクレベルを各インク色毎に独立して、かつ同時に監視することができる。一つのインク色、例えば黒について、黒インクの消費量が他の色よりも早いなどして、カートリッジの他のインク色よりも多く使用されていたとき、黒インクに対応した警告信号が、他のインク色のインクレベルが警告レベルに達していなかったとしても、発生されうる。
【0121】
さらにまた、いくつかのインク色(またはタイプ)のうち一つが、他よりもより早く使用されることにより、複数のインク室のうち一つは、少なくともカートリッジの他のインク室よりも大きいインク収容量となるように構成されていてもよい。大きい収容量のインク室についてのインク量の開始値及び/または警告値は、相対的に大きい収容量であることを反映し、それに応じて設定されうる。
【0122】
同様に、複数室を有するインクカートリッジの各部は、詰め替え可能なカートリッジ及び/またはCISSカートリッジのような、一つまたはそれ以上の従来のカートリッジとして構成されうる。例えば、二重用途のカートリッジは、一つまたはそれ以上のCISS部と、一つまたはそれ以上の詰め替え可能部とを有しうる。二重用途のカートリッジは、主として一色または一つのタイプのインクについて大量に使用され、他のインク色またはタイプのインクもまた、使用される場合であって、ユーザーが使用済みインクカートリッジの廃棄を避けたい場合に有効である。
【0123】
代替的には、意図された実施例の範囲は、二つまたはそれ以上の詰め替え可能及び/またはCISSカートリッジのような従来のように構成された単一カートリッジからなるカートリッジ部材の全ての可能な組み合わせを含むものであるが、一つまたはそれ以上のカートリッジ部材は、この中に記載された一つまたはそれ以上の新しい特徴を含むものである。
【0124】
実施例は、記述されているように構成されたサイフォン構造とリセット可能なチップセットの両方、またはサイフォン構造と流体注入口の両方を有するものとして記載されているが、それらの組み合わせは必須のものではない。例えば、自動的にリセット可能なチップセットは、この中に記述されているようなサイフォン構造及び/または新規な流体注入口を含まないカートリッジの実施例に使用されうる。同様に、サイフォン構造は、リセット不可なチップセット及び/または新規な流体注入口を有するカートリッジに使用されうる。新規な流体注入口は、同様に、分離して使用されうる。一般的に、新規な特徴は、本発明の想定される実施例の範囲によれば、どのような組み合わせにおいても使用されることができ、同様に互いに独立して使用されることができる。例えば、リセット可能な(自動的、または手動でリセット可能な)チップセットは、インク室内でインクを保持するのにスポンジを使用するカートリッジにおいても、それが従来構成または詰め替え可能であるかにかかわらず、使用可能である。
【0125】
少なくとも一つの実施例は、インクカートリッジの壁(例えば、外装壁)が比較的薄く(例えば、少なくともカートリッジの他の壁と比べて)、典型的には軟質シート8は、高分子材料からなる(例えば、高分子であるメンブレン)。比較的薄い外装壁は、典型的には、少なくともその周囲を囲む一つまたはそれ以上の周辺壁と対になって密封をなしており、インク室4からのインク漏れや、空気の侵入、またはその他の物質の意図しない侵入から密封をなすようにしている。適応する高分子材料の例としては、これらには限られないが、ナイロン/ポリプロピレン混合物または、ポリビニールクロライド(PVC)がある。このようなシート8は、透明、あるいは半透明、ないし不透明(またはこれらの組み合わせ)でありうると共に、代替的な実施例としては、軟質あるいは硬質であってもよい。
【0126】
同様に、代替的な実施例によれば、カートリッジを構成するいかなる材質も、特に、しかし限定されないが、一つまたはそれ以上の周辺壁及び/または外装壁について、非透明、または透明あるいは半透明、ないしこれらの組み合わせからなっている。加えて、いかなる構造、部材、またはカートリッジの材質は、これら実施例において、黒、白、及び/または無色透明あるいは半無色透明を含むほぼいかなる色及び色の組み合わせにより形成されうる。そのような彩色は、どのような方法、材料、または当該分野で知られた技術の組み合わせにより、実行されてもよい。
【0127】
実施例において、カートリッジは、周囲壁の内面及び外面の間に配置され、またこれらによって規定されるギャップ(例えば空隙、空間、凹部など)と共に、周囲壁の内面の配置関係及び外面の配置関係を含んでいる。一般的に、そのように構成された際には、周囲壁の内面の配置は、カートリッジのインク室を規定する。加えて、少なくともカートリッジの一つの部材には、内側外装壁(例えば、上述の軟質シート8)が提供され、周囲壁の内面配置と対になって密封をなし、インク室を追加的に形成する。カートリッジには、さらに比較的硬質なカバー9(例えばカバープレートや着脱カバー)であって、カートリッジハウジングに着脱自在なものが提供され、それが装着されたときには、軟質シート8を外装壁(上述のような)とした場合よりも、一般的には外側に位置し、保護の機能も果たす。
【0128】
この実施例において比較的硬質のカバー9は、さらに、カートリッジハウジングから上述したチップセットと同様の構成により取り外し自在に構成されたアタッチメント部10を備える。例えば、硬質の取り外し自在なカバー9は、垂直方向に伸びる一つまたはそれ以上のアタッチメント部10(例えばつまみ等)を備えることができ、アタッチメント部10は、カバー9の周囲において、その周り及び/または隣接した位置に配置される。少なくとも一つの実施例において、一つまたはそれ以上のアタッチメント部10は、カートリッジハウジングの周囲壁の内外面の間に形成されるギャップに適合し、また挿入されるように構成される。そして、カートリッジハウジングの反対側に面する壁に対してほぼ平行な面において、確実にしかし取り外し自在にカバー9を保持する。比較的硬質であることによって、カバー9は、一般的に通常の使用状態(例えば構造的なダメージのない状態)において、構造的な形状を保つことができる。
【0129】
上記記載から、技術分野における通常の能力を有する者は、本発明の実施例は、現在のスポンジを有するカートリッジに比べて、より環境に優しいインクカートリッジ装置、方法及びシステムを提供することが理解できるであろう。上記実施例は、それぞれ独立した、あるいは集合的な、または改良インクカートリッジにおけるほぼいかなる組み合わせにおいても利用される数々の新規な特徴を有している。加えて、上記実施例は、基本的構成、または詰め替え可能なインクカートリッジ、あるいは、製造工程で僅かな、あるいは代替不能な、連続的なインク供給システムの一部を構成するインクカートリッジにも適用できる。さらに、上述の自動的にリセット可能なチップセットは、カートリッジのリユースを非常に簡易にし、補助的なチップセットのリセット装置の必要性をなくすことができる。そして、この実施例においては、インクカートリッジそれ自体から、取り外すこともできる。これらの効果は、上述の実施例によってもたらされる利点の一部を表していて、技術分野における通常の能力を有する者は、より多くの効果及び利点を、ここに記載された事項から認識することができるであろう。
【0130】
本発明の方法や詳細な構造、製法、材質、適用または使用は、ここでの記載及び図面には限定されない。実際、いかなる適用可能な製法、使用、または適用も、代替的な実施例として想定される。そして、それは発明の思想及び範囲に含まれる。
【0131】
さらに、本発明において利用や使用法あるいは操作方法、構造、製造方法、形状、寸法、あるいは材質におけるいかなる実施例も含まれるのであって、本発明の範囲は、ここでの詳細な記述及び図面について、技術分野の技能を有する者に理解される範囲内に特定されない。
【0132】
最後に、技術分野の技能を有する者は、ここに記載された本発明の方法、システム、そして装置が、ソフトウェアやファームウェア、あるいはハードウェア、ないし、いかなる適合可能な組み合わせにおいて、実施及び/または利用されうることを理解できる。好ましくは、少なくとも方法、システム、及び装置についての少なくとも一つの実施例は、低コスト化及び柔軟性のため、3つの組み合わせで実施される。
【0133】
したがって、本発明が前述した改良装置の実施例を参照して示され、そして記述されているとはいえ、技術分野の技能を有する者にとっては、添付されたクレームで規定された本発明の思想及び範囲から離れることなく、形状及び詳細の変更をなし得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0134】
1 ハウジング
2 周壁
3 外装壁
4 チャンバー
20 保持機構
30 インク吐出口
40 サイフォン構造
42 インク導管
43 流入端部
44 流出端部
45 湾曲部
50 流体流入口
60 チップセット
70 再充填口
100 インクカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーを規定する一つまたはそれ以上の壁を備えるハウジングと、
ハウジングの第1の壁から延出される流体吐出口と、
湾曲した流体の導管を備えるサイフォン構造とを備え、前記導管は、チャンバーの内部に配置される流入端部から流体吐出口に配置される導管の反対側の流出端部まで延びることを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
前記サイフォン構造は、さらに少なくとも第1の長さを有する流入区域と、第1の長さに比べて長い第2の長さを有する流出区域とを備えることを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記液体吐出口は、前記流出区域の一部を構成することを特徴とする請求項2記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記サイフォン構造は、さらに複数の近接する湾曲した流体の導管を備えることを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項5】
ハウジングの第2の壁に配置されて延出される流体流入口と、実質的に一方向に向かう流体流路をチャンバー内で規定する一つまたはそれ以上の仕切りを備えることを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項6】
前記流体流入口は、前記第2の壁と一方向に向かう流体流路との間に配置される液体流入路を有し、前記液体流入路と前記一方向に向かう流体流路とが交差する位置における断面積は、前記一方向に向かう流体流路の断面積より実質的に小さいことを特徴とする請求項5記載のインク供給装置。
【請求項7】
前記流体流入口は、前記第2の壁に隣接する第1の端部からフィルター材の位置に配置される第2の端部まで延びることを特徴とする請求項6記載のインク供給装置。
【請求項8】
電気通信をなすと共にプリンター装置からの電気的な信号を受信する電気的に導通可能な接点を有するリセット可能な電子装置を備え、さらにインク量の値と一つまたはそれ以上の所定の警告値との一方または両方を記憶するように構成された記憶回路を備えることを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項9】
前記リセット可能な電子装置は、前記電気的に導通可能な接点が前記プリンター装置から電気的に分離されると、記憶されたインク量の値を自動的にリセットするように構成された回路を有することを特徴とする請求項8記載のインク供給装置。
【請求項10】
前記リセット可能な電子装置は、前記インク供給装置がプリンター装置と作動的に結合している際、プリンターからのインクの存在を感知する複数の信号線の間で閉回路を形成する導電性回線経路を有することを特徴とする請求項8記載のインク供給装置。
【請求項11】
前記ハウジングの壁は、前記リセット可能な電子装置を脱着自在な保持機構を有することを特徴とする請求項8記載のインク供給装置。
【請求項12】
選択的に閉鎖可能な流体再充填口をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項13】
ユーザーによって加えられる力に対し、長軸方向に沿って直線的に変位するように構成されたばね駆動のラッチ部材を備え、該ラッチ部材は、さらにプリンターの対応する構造と取り外し可能に係合することを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項14】
一つまたはそれ以上の壁を備え、該壁は、内側周壁を備え、さらにカートリッジは外側周壁を有し、前記内側周壁と外側周壁の間には、空間部が形成されることを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項15】
取り外し可能で自動的にリセット可能な電子的にインク量を測定する装置と、取り外し可能なカバープレートと、カートリッジをプリンターと作動状態となるように結合するように構成された取り外し可能なばね駆動のラッチ機構とを、一つまたはそれ以上有することを特徴とする請求項1記載のインク供給装置。
【請求項16】
内部チャンバーを規定する複数の壁を有するハウジングと、
複数の壁のうち一つの壁を貫通するように配置される選択的に閉鎖可能な再充填口と、
複数の壁のうち一つの壁を貫通するように配置される流体流入口と、
複数の壁のうちの一つに取付けられる自動的にリセット可能な電子装置と、
を有することを特徴とする再利用可能インクカートリッジ。
【請求項17】
前記自動的にリセット可能な電子装置は、プリント回路基板と電気通信するように接続された集積回路を備え、プリント回路基板は、外見上、ハウジングからチャンバーに渡って存在する一つまたはそれ以上の電気的な接点を有することを特徴とする請求項16記載のインクカートリッジ。
【請求項18】
前記自動的にリセット可能な電子装置は、一つ又はそれ以上の電気的な接点がプリンター装置から分離されるとインク量の値をリセットするように形成されることを特徴とする請求項16記載のインクカートリッジ。
【請求項19】
前記自動的にリセット可能な電子装置は、前記インク供給装置がプリンター装置と作動的に結合している際、プリンターからのインクの存在を感知する複数の信号線の間で閉回路を形成する導電性回線経路を有することを特徴とする請求項16記載のインクカートリッジ。
【請求項20】
前記チャンバーから流体吐出口へ延びる湾曲した流体誘導管を備えるサイフォン構造をさらに有することを特徴とする請求項16記載のインクカートリッジ。
【請求項21】
前記サイフォン構造は、少なくとも第一の長さを有する流入区域と、流入区域よりも長い第二の長さを有する流出区域とをさらに備えることを特徴とする請求項20記載のインクカートリッジ。
【請求項22】
前記サイフォン構造は、複数の連続的に配置された湾曲した導管を備えることを特徴とする請求項20記載のインクカートリッジ。
【請求項23】
前記流体流入口は、流体流入口が配置された壁に近接する第一端部から、フィルター材が配置された第二端部まで延長してなることを特徴とする請求項16記載のインクカートリッジ。
【請求項24】
取り外し可能かつ自動的にリセット可能な電子式にインク量を測定する装置、取り外し可能なカバープレートと、カートリッジをプリンターと作動的状態となるように結合するように形成された取り外し可能なラッチ機構とを、一つ又はそれ以上備えることを特徴とする請求項16記載のインクカートリッジ。
【請求項25】
印刷装置と共に使用されるスポンジを有さないインクカートリッジの製造方法であって、
印刷装置と取り外し可能かつ作動的に結合するように形成され、
一つ又はそれ以上の周囲壁と、その壁によって規定されるチャンバーと、
前記一つ又はそれ以上の周囲壁の一つを通って形成された流体流出口と、
流体流出口からチャンバーまで延びる流体流路に沿って延長すると共に規定し、チャンバーに近接する流入区域よりも長い流体流出口に近接する流出区域を有する湾曲した流体誘導管を備え、前記一つ又はそれ以上の周囲壁の一つに配置されたサイフォン構造とから構成されたインクカートリッジを提供し、
前記チャンバー内に液体インクを配備する工程から構成されることを特徴とする製造方法。
【請求項26】
前記カートリッジは、さらに前記一つ又はそれ以上の周囲壁のうちの別の壁を通って形成され、流体流入口が配置された壁に近接する第一端部からフィルター材が配置される第二端部まで延長する流体流入口を備えることを特徴とする請求項25記載の製造方法。
【請求項27】
前記一つ又はそれ以上の周囲壁の一つに結合されたリセット可能な電子装置を提供する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25記載の製造方法。
【請求項28】
前記リセット可能な電子装置は、配置された周囲壁から取り外し可能であることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
自動的にリセット可能な電子装置であって、
一つ又はそれ以上の所定のインク量の値を記憶するよう構成された揮発性記憶回路と、
処理回路と、
記憶回路及び処理回路のいずれか又は両方を備えた集積回路装置が表面に電気的に結合されたプリント回路基板と、
前記プリント回路基板の表面に配置され、プリンターの一つ又はそれ以上の対応する第二の電気的接点と導電的に結合するように形成及び配置された一つ又はそれ以上の第一の電気的接点と、
前記プリント回路基板を固定し、さらにインクカートリッジのハウジングと着脱可能に結合するように形成された支持構造とから構成され、前記一つ又はそれ以上の第一の電気的接点はプリンターと作動的に結合すると一つ又はそれ以上の対応する第二の電気的接点と電気的に結合するように形成されることを特徴とする電子装置。
【請求項30】
プリンターの印刷操作に対応した電気信号を検知し、検知された電気信号に応じて、記憶回路に記憶された一つ又はそれ以上の所定のインク量の値をインクリメント及びデクリメントのいずれか又は両方を行って調整し、一つ又はそれ以上の調整された所定のインク量の値を記憶回路に記憶するように形成されることを特徴とする請求項29記載の電子装置。
【請求項31】
前記電子装置の一つ又はそれ以上の第一の電気的接点を一つ又はそれ以上の対応する第二の電気的接点と結合又は分離することで、記憶回路に記憶された調整された値を一つ又はそれ以上の所定のインク量の値に自動的にリセットするように形成されることを特徴とする請求項29記載の電子装置。
【請求項32】
前記第一の電気的接点は、格子状に直交して重なり合う対称又は非対称のいずれか又は両方の形状に形成された複数の接点から構成されることを特徴とする請求項29記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−168044(P2011−168044A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149032(P2010−149032)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(510181921)
【Fターム(参考)】