説明

改良されたガスバリア性質を有する物品

本発明は、スルホ変性コポリエステルブレンド組成物およびポリグリコール酸に関する。スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを用いて十分な透明性および高いガスバリア性質を有する容器を作製することができる。好ましいスルホ変性コポリエステル組成物は、テレフタル酸、イソフタル酸および5−スルホイソフタル酸を含む。スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを調製する方法、ならびにマスターバッチ方法が開示される。また、本発明は容器を製造する方法に関し、そこでスルホ変性コポリエステルは、後にビンにブローされるプリフォームを製造するために用いられる射出成形機において前記ポリグリコール酸とブレンドされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリエステル組成物とポリグリコール酸とを含むポリマーブレンドに関する。本発明によるポリエステル組成物は、スルホ変性コポリエステルを含む。このブレンドを改良されたガスバリアおよび十分な透明度を有する物品に形成することができる。また、本発明は、マスターバッチ方法など、前記ブレンドを製造する様々な方法に関する。さらに、本発明はまた、プリフォームまたは容器を前記ブレンドから製造する方法を考察する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
2005年10月7日に出願された米国仮特許出願第60/724915号明細書の優先権の利益が主張される。
【背景技術】
【0003】
近年、ポリエステルの技術分野においての多くの取り組みおよび発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から製造された物品の開発に集中している。PETから製造された容器およびフィルムは、食品、医薬品、消費製品および特に炭酸清涼飲料のパッケージングにおいて広く受け入れられている。
【0004】
より長い貯蔵期限が必要とされ、より小さな炭酸清涼飲料容器が使用されるので、PETはガスバリア性質の改良、特に二酸化炭素の透過性の改良を必要とする。
【0005】
1つの方法は、エチレン−ビニル−アルコールコポリマー(EVOH)、部分芳香族ポリアミド等の高バリアポリマーの層を含有する多層ビンの使用であった。米国特許公報(特許文献1)には、バリア層としてポリグリコール酸を用いる多層容器が開示されている。また、米国特許公報(特許文献2)には、PETの層間のバリア層としてポリグリコール酸を用いる多層パッケージング材料が開示されている。
【0006】
米国特許公報(特許文献3)には、5〜50重量%のポリグリコール酸と50〜95重量%のPETとのブレンドが開示されている。しかしながら、これらのブレンドは曇った物品を形成することが見出された。
【0007】
また、米国特許公報(特許文献4)には、少量の芳香族ポリエステル樹脂、好ましくは30%を有するポリグリコール酸コポリエステルが開示されている。
【0008】
米国特許公報(特許文献5)には、PETと40〜95モル%のエチレンイソフタレート単位および5〜60モル%のポリグリコール酸単位を含むコポリマーとのブレンドが開示されている。ビンの曇りに関する情報はない。
【0009】
米国特許公報(特許文献6)は、6〜17モル%のイソフタル酸を含有する、200グラムを超える大きな容器に関する。このコポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドまたは得られたブレンドの曇りの解決に関する開示はない。
【0010】
(特許文献7)には、ポリエステル樹脂とブレンドされる、ヒドロキシカルボン酸およびイソフタル酸の例が挙げられる芳香族ジカルボン酸のコポリエステルが開示されている。ポリエステル樹脂に比べて透明性およびガスの透過性を改良する、連続的に結合したヒドロキシカルボン酸単位の、分離されたヒドロキシカルボン酸単位に対する特定のモル比の範囲が権利請求されている。
【0011】
改良されたガスバリア性質を有する透明な単層物品をもたらす、PETコポリマーと高バリアポリマー、例えばポリグリコール酸との簡単なブレンドが必要とされている。
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,673,403号明細書
【特許文献2】米国特許第4,424,242号明細書
【特許文献3】米国特許第4,565,851号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0100392号明細書
【特許文献5】米国特許第4,729,927号明細書
【特許文献6】米国特許第6,309,718号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1582564A1号明細書
【特許文献8】国際公開第2005/063846号パンフレット
【非特許文献1】Blow Molding Handbook,Munich 1989年、552〜553ページ
【非特許文献2】シェケリック(Sekelik)ら著、Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics、1999年、37巻、847〜857ページ
【非特許文献3】クレシ(Qureshi)ら著、Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics、2000年、38巻、1679〜1686ページ
【非特許文献4】ポリアコヴァ(Polyakova)ら著、Journal of Polymer Science Part B:Polymer Physics、2001年、39巻、1889〜1899ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
最も広い意味において本発明は、スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを含む。
【0014】
また、本発明の最も広い意味は、本技術分野に公知のものよりも改良されたガスバリア性質を有する透明な物品、容器、ビンまたはフィルムを含む。
【0015】
最も広い意味において本発明はスルホ変性コポリエステルをポリグリコール酸とブレンドおよび溶融押出する方法である。
【0016】
最も広い意味において本発明はスルホ変性コポリエステルを調製する方法である。後でそれはポリグリコール酸と共に溶融押出されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
単語「a」が用いられるとき、それは1つを意味するか、またはそれは少なくとも1つを意味する場合がある。
【0018】
本発明の組成物はスルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とを含む。
【0019】
スルホ変性コポリエステルが、少なくとも75モル%のポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレートと、少なくとも2.5モル%から15モル%以下のイソフタレートもしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートもしくは1,4−シクロヘキサンジメタノールと、少なくとも0.1モル%から5.0モル%以下の式(I)
【0020】
【化1】

【0021】
の単位とを含み、上式中、
【0022】
【化2】

【0023】
であり、上式中、nが3〜10の整数であり、
+が、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、固有粘度が0.6〜1.0、好ましくは0.7〜0.9、特に好ましくは0.75〜0.89である。
【0024】
好ましくは
【0025】
【化3】

【0026】
であり、特に好ましくは
【0027】
【化4】

【0028】
であり、結合は好ましくは(フェニル環については)1−、3−および5位置にあり、(ナフチル環については)2−,4−および6位置にあり、最も好ましいのは(5−スルホイソフタル酸から調製された)5−スルホイソフタロイルである。
【0029】
好ましくはM+はアルカリ金属イオンであり、特に好ましいのはLi+、Na+またはK+である。
【0030】
式(I)の単位をポリエステルに加えることによってプリフォームの自然延伸比(NSR)を減少させるが、(特許文献8)を参照のこと。NSRの定量は(非特許文献1)に記載されている。そのNSRよりもプリフォームを延伸することによって、ビン側壁の微小ボイドのために曇りの増加をもたらす。式(I)の単位の濃度が増加するときに一定のNSRを維持するために、イソフタル酸もしくは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのモノマーの付加的な濃度がベースコポリエステルに添加される必要がある。5−スルホイソフタル酸モノマーの好ましい範囲は約0.5〜約5.0モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%である。イソフタル酸もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートもしくは1,4シクロヘキサンジメタノールの相当する好ましい範囲は15.0〜2.5モル%、好ましくは10〜3モル%である。
【0031】
コポリエチレンテレフタレート−イソフタレートをベースとした、本発明によるスルホ変性コポリエステル(SPEIT)は、
少なくとも25モル%のテレフタル酸(TA)もしくはC1−C4ジアルキルテレフタレートを含む二酸またはジエステル成分を、
少なくとも2.5モル%から15モル%以下のイソフタル酸(IPA)もしくはC1−C4ジアルキルイソフタレートを含む二酸またはジエステル成分と、および
少なくとも40モルパーセントのエチレングリコール(EG)を含むジオール成分と、および
少なくとも0.1から5.0モル%以下の式(II):
【0032】
【化5】

【0033】
の化合物[上式中、Rが水素、C1−C4−アルキルまたはC1−C4−ヒドロキシアルキルであり、M+および
【0034】
【化6】

【0035】
が上の式(I)に与えられた意味を有する]と
反応させることによって製造される。
【0036】
残りのモル量は、重合の間に形成されたジエチレングリコール(DEG)、付加的なDEGおよびその他のコモノマーおよびその他の添加剤からなる。
【0037】
他のコモノマーは、他のジカルボン酸またはエステル等価物、または他のジオールであってもよく、それらのすべてが当業者に公知である。
【0038】
通常の公知の添加剤には、染料、顔料、充填剤、分岐剤、再加熱剤、粘着防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、殺生剤、発泡剤、カップリング剤、難燃剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、紫外線および可視光線安定剤、結晶化助剤、潤滑剤、可塑剤、加工助剤、アセトアルデヒドおよびその他の捕獲剤、およびスリップ剤、またはそれらの混合物の添加剤などがあるがそれらに限定されない。すべての成分のモルパーセンテージは、コポリエステルの合計100モル%になる。
【0039】
二酸成分がTAであるか(この場合プロセスはPTAプロセスまたはPTA経路と呼ばれる)、またはテレフタル酸ジアルキル成分がテレフタル酸ジメチル(DMT)(この場合プロセスはDMTプロセスまたはDMT経路と呼ばれる)であるのが好ましく、式(II)の化合物中のRは水素、メチルまたはヒドロキシエチレンである。
【0040】
本発明によるスルホ変性コポリエステル(SPEIT)の好ましい製造は、テレフタル酸(TA)(またはテレフタル酸ジメチル−DMT)、イソフタル酸(IPA)(またはイソフタル酸ジメチル−DMI)および式(II)の化合物をエチレングリコール(EG)と約200〜290℃の温度において反応させ、モノマーおよび水を形成する工程を含む(DMTを用いるとき、100〜230℃において、モノマーおよびメタノールを形成する)。反応は可逆的であるので、水(またはメタノール)は連続的に除去され、それによって反応を促進してモノマーを製造する。モノマーは、主に、使用された酸のビスヒドロキシエチルエステル/メチルエステル、若干のモノヒドロキシエチルエステル、およびその他のオリゴマー生成物およびおそらく少量の未反応原材料を含む。TA、IPA、式−(II)−化合物およびEGの反応の間、触媒が存在することは必要ではない。DMT、DMI、式−(II)−化合物およびEGの反応の間、エステル交換触媒を用いることが推奨される。適したエステル交換触媒は、周期表のIa族(例えばLi、Na、K)、IIa族(例えばMg、Ca)、IIb族(例えばZn)、IVb族(例えばGe)、VIIa族(例えばMn)およびVIII族(例えばCo)の化合物、例えば、これらと有機酸との塩である。反応混合物中への特定の溶解度を示すそれらのエステル交換触媒が好ましい。Mn、Zn、Ca、またはMg、特にマンガンと低級脂肪族カルボン酸、特に酢酸との塩が好ましい。
【0041】
本発明において使用されたMn、Zn、Mgまたは他のエステル交換触媒の量は好ましくは、ポリマーに基づいた約15〜約150ppmの金属である。本発明に使用するための適したコバルト化合物には、酢酸コバルト、炭酸コバルト、オクタン酸コバルトおよびステアリン酸コバルトなどがある。本発明において使用されたCoの量は、ポリマーに基づいた約10〜約120ppmのCoである。この量は、ポリマーに存在しうる一切の黄色度を相殺するために十分である。
【0042】
次いで、ビスヒドロキシエチルエステルおよびモノヒドロキシエチルエステルは重縮合反応を経てポリマーを形成する。重縮合のために適した触媒は、アンチモンの化合物(例えばSb(ac)3、Sb23)、ゲルマニウムの化合物(例えばGeO2)およびTiの化合物(例えばTi(OR)4、TiO2/SiO2、チタン酸ナトリウム)である。好ましい重縮合触媒はアンチモン化合物である。
【0043】
本発明の別のスルホ変性コポリエステルは、テレフタロイル部分をナフタロイル部分で置換することによって、および/またはイソフタロイル部分をオキシメチレン1,4−シクロヘキシレン部分で置換することによって同様な方法で調製されてもよい。
【0044】
ポリグリコール酸は、文献に記載された公知のポリマー材料である。米国特許公報(特許文献1)には、調製の2つの方法、開環重合プロセスおよび重縮合プロセスが開示されている。
【0045】
本発明において用いられたポリグリコール酸(PGA)は、275℃の温度および100sec-1の剪断速度において測定されたとき、概して25〜10,000Pa.s、好ましくは50〜5,000Pa.s、より好ましくは50〜1,000Pa.sの溶融粘度ηを有する。PGAは、組成物の約1〜約10重量%の範囲において存在する。
【0046】
PGAの溶融粘度ηが25Pa.sより低い場合、PGAの溶融体が容器へのその溶融成形時に引落としを受けることがあり、溶融加工に支障をきたす可能性があるか、または樹脂ブレンドの靭性が不十分になることがある。PGAの溶融粘度ηが10,000Pa.sを超える場合、より高い温度がその溶融加工のために必要とされ、したがって、PGAが加工時に熱劣化を受けることがある可能性がある。コポリエステル中のPGAのブレンドのPGAドメインサイズを最小にするために、コポリエステルの、PGAに対する(275℃および100sec-1の剪断速度においての)溶融粘度比は1より大きいのがよく、好ましくは2より大きく、より好ましくは10より大きいのがよい。
【0047】
スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドは、容器の形状に延伸ブロー成形されうるプリフォームを製造する射出成形機のスロートに2つの樹脂を添加することによって調製されるのが便利である。押出機の混合部は、均質なブレンドを製造する設計であるのがよい。
【0048】
あるいはマスターバッチを用いることによってブレンドを調製することができる。高量の式(I)のスルホン酸およびコモノマー(イソフタル酸または1,4−シクロヘキサンジメタノール)を含有するマスターバッチを調製することができる。このマスターバッチを、物品を製造するための、標準ポリエチレンテレフタレートポリマー(PET)、およびポリグリコール酸とブレンドする間に所望のレベルに下げることができる。また、このマスターバッチをPGAを用いて調製することができ、それを標準PET樹脂とブレンドする間に同様にレベルを下げることができる。
【0049】
これらのプロセス工程は、例えば炭酸清涼飲料、水またはビールのビン、および熱充填用途の容器を形成するためによく機能する。本発明は、容器、ビンまたはフィルムなどのポリエステル物品を製造するための通常の公知のプロセスのいずれにおいて使用されてもよい。
【0050】
(試験手順)
1.二酸化炭素の透過性
固定パーセントの相対湿度において、1気圧において、および25℃においてフィルム試料、またはビン側壁の二酸化炭素フラックスをモコン・パーマトラン(Mocon Permatran)−C4/40計測器(ミネソタ州、ミネアポリスのモコン(MOCON Minneapolis,MN))を用いて測定した。98%の窒素と2%の水素との混合物をキャリアガスとして用い、100%の二酸化炭素を試験ガスとして用いた。試験前に、試験体を最小限の24時間、装置内の窒素中で状態調節し、PET母材中に溶解された微量の大気の酸素を除去した。次いで、二酸化炭素を試験セルに導入した。試験はフラックスが定常状態に達した時に終了し、そこで二酸化炭素フラックスは30分の試験サイクルの間に1%未満変化した。二酸化炭素の透過性の計算は、適切な境界条件を用いてフィックの拡散の第二法則から、PETコポリマーの透過率のための文献に記載の方法によって行われた。文献は、(非特許文献2)である。第2の文献は、(非特許文献3)である。第3の文献は、(非特許文献4)である。
【0051】
全ての透過性の値は、(cc(STP).cm)/(m2.atm.day))の単位で記録される。
【0052】
2.固有粘度(IV)
0.2グラムの非晶質ポリマー組成物を20ミリリットルのジクロロ酢酸に25℃の温度において溶解することによっておよびウッベローデ(Ubbelhode)粘度計を用いて固有粘度(IV)を測定し、相対粘度(RV)を定量する。RVは、式:
IV=[(RV−1)×0.691]+0.063
を用いてIVに変換される。
【0053】
3.色および曇り
プリフォームおよびビン壁の曇りをハンター・ラブ・カラークエスト(Hunter Lab ColorQuest)II計測器を用いて測定した。D65光源がCIE 1964 10°標準観察者によって使用された。曇りは、CIE Y拡散透過率の、CIE Y全透過率に対するパーセントとして定義される。プリフォームおよびビン壁の色は同じ計測器で測定され、CIELABカラースケールを用いて記録され、L*は明るさの尺度であり、a*は赤色度(+)または緑色度(−)の尺度であり、b*は黄色度(+)または青色度(−)の尺度である。
【0054】
4.イソフタル酸および5−スルホイソフタル酸
非晶質ポリマー中に存在するイソフタル酸のパーセントは紫外線検出器を使用するヒューレット・パッカード液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて285ナノメートルにおいて定量された。非晶質ポリマー試料を3時間にわたり230℃のステンレス鋼ボンベ内の希硫酸(1リットルの脱イオン水中に10mlの酸)中で加水分解した。冷却後に、ボンベからの水溶液を3容積のメタノール(HPLC銘柄)および内部標準溶液と混合した。混合された溶液を分析のためにHPLCに導入した。
【0055】
非晶質ポリマー中に存在する5−スルホイソフタル酸のパーセントを硫黄の分析によって定量した。
【0056】
5.金属含有量
粉砕ポリマー試料の金属含有量を原子走査16ICP発光分光器を用いて測定した。試料をエタノールアミン中で加熱することによって溶解し、冷却した時に、蒸留水を添加してテレフタル酸を結晶化した。溶液を遠心分離機にかけ、上澄み液を分析した。分析中の試料からの原子発光と公知の金属イオン濃度の溶液の原子発光との比較を用いてポリマー試料中に保持された金属の実験値を定量した。
【0057】
6.溶融粘度
乾燥されたポリエステル樹脂およびブレンドの溶融粘度をゴウトフェルト・レオ−テスター・モデル(Goettfert Rheo−Tester Model)2000(米国、サウスカロライナ州、ロックヒル(Rock Hill,South Carolina,USA)のゴウトフェルトUSA(Goettfert USA)製)を用いて特定範囲の剪断速度について測定した。
【0058】
7.PGAドメインサイズ
プリフォームの断片を側壁に垂直に切断し、エポキシ樹脂中に埋め込んだ。ミクロトーム切断された(Microtomed)断片をマウントし、走査電子顕微鏡写真を撮った。少なくとも100の不規則に選択されたPGAドメインを測定し、平均ドメインサイズを計算した。
【0059】
8.プリフォームおよびビン方法
本発明のコポリエステル樹脂を典型的に、4〜6時間にわたり170〜180℃において乾燥させ、PGAとブレンドし、溶融し、アーバーグ(Arburg)単一キャビティ射出成形機を用いて24.5gのプリフォームに押出した。このプリフォームのNSRは12±1である。次に、プリフォームを約100〜120℃に加熱し、約8.5バールの予備ブロー圧でサイデル(Sidel)SB01延伸ブロー成形機を用いて約12.5の延伸比において0.50リットルのビンにブロー成形した。ビンの側壁は、0.24mmの平均厚さを有した。
【0060】
以下の実施例は本発明を説明するために示され、これらの実施例は説明目的のためであり、本発明の範囲を限定することを意図しないと理解されるべきである。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
ポリグリコール酸(PGA)は、アブソーバブル・ポリマー・インターナショナル(Absorbable Polymers International)(米国、アラバマ州、ペラム(Pelham Alabama,USA))から得られた。2.6モル%のイソフタル酸(IPA)を含有し、0.82のIVを有する商用ビン銘柄ポリエステル樹脂(米国、サウスカロライナ州、スパータンバーグ(Spartanburg South Carolina, USA)、インヴィスタ(INVISTA) 2201)を用いた。7.5モル%のイソフタル酸および1.3モル%の5−スルホイソフタル酸(SIPA)を含有するコポリエステルが、標準方法によって調製され、0.76のIVを有した。
【0062】
2つの乾燥されたコポリエステルとPGAとのブレンドをタンブルブレンダーを用いて調製し、24.5gのプリフォームに射出成形した。プリフォームを0.5リットルのビンに延伸ブロー成形した。ビンの側壁の断片を切断した。(70%のRHにおいての)曇りおよび二酸化炭素の透過性を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
試験1〜3は、米国特許公報(特許文献3)の先行技術を示す比較例である。これらは、2.5〜5重量%のPGAの低いレベルにおいても、曇ったビンが形成されることを示す。試験4〜6においてビンの曇りを低減せずにSIPAが0.6モル%までポリエステルに添加される。驚くべきことにIPAレベルを5モル%よりも増加させ(試験7および8)、SIPAレベルを1モル%よりも増加させることによって、ビンの曇りを透明なレベルまでかなり低減した。
【0065】
(実施例2)
8.7モル%のイソフタル酸と様々な濃度の5−スルホイソフタル酸とを含有する一連のコポリエステルを標準条件として調製してマスターバッチとして用いた。これらの樹脂の性質を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
PGA樹脂(プラソーブ(Purasorb)(登録商標))は、プラック・アメリカ(PURAC America)(米国、イリノイ州、リンカーンシャー(Lincolnshire,Illinois,USA))から得られ、275℃において、100sec-1において70Pa.sの溶融粘度を有した。
【0068】
2.8モル%のIPAを含有し0.82のIVを有する商用ポリエステルビン樹脂(米国、サウスカロライナ州、スパータンバーグ、インヴィスタ 1101)から乾燥ブレンドを調製し、ポリエステル樹脂A、BおよびCの異なった量をPGAポリマーと一緒に用いた。これらのブレンドによって、IPAおよびSIPA濃度の組合せの特定の範囲を調べることができた。これらの乾燥されたブレンドを、タンブルブレンドした後に24.5gのプリフォームに射出成形し、プリフォームを0.5リットルのビンにブローした。ブレンド樹脂組成物および得られたビンの側壁の曇り値を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
これらの結果は、これらのコポリエステルとPGAとのブレンドの曇りを低減するために、コモノマー含有量(例えばイソフタル酸)を増加させることに加えて、スルホ変性コポリエステルを使用することが必要とされることを裏づける。SIPAの量が増加されるとき、コモノマー含有量の相応する増加が必要とされる。
【0071】
試験10、13および16のPGAドメインサイズ範囲を測定した。8.7モル%のIPAを含有し、SIPAが添加されない試験16において、PGAドメインサイズは100〜1,500nmの範囲であった。試験13において1.6モル%のSIPAを添加することによってドメインサイズ範囲を100未満〜500nmに低減し、PGAドメインの80%超が100nm未満であった。試験10のPGAドメインサイズの範囲は100〜1000nmであった。
【0072】
本発明の特定の実施態様が詳細に記載されたが、本発明は、範囲においてそれに応じて限定されないが、添付された特許請求の範囲の精神および条件内にある全ての変更および修正を包含すると理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記スルホ変性コポリエステルが、コモノマーとしてイソフタル酸もしくは1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記スルホ変性コポリエステルの前記コモノマーが約2.5〜約15モル%の範囲のイソフタル酸であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記スルホ変性コポリエステルが、
式(I)
【化1】

の単位を含有し、上式中、
【化2】

であり、上式中、nが3〜10の整数であり、
+が、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
【化3】

であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
+がLi+、Na+またはK+であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の前記単位が、少なくとも約0.5モル%の量において存在することを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記スルホ変性コポリエステルが、約0.6〜1.0の範囲の固有粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリグリコール酸が、組成物の重量に基づいて約1〜約10重量%の範囲において存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
275℃および100sec-1において測定された、前記スルホ変性コポリエステルと前記ポリグリコール酸との溶融粘度比が1.0より大きいことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
a)スルホ変性コポリエステルを調製する工程と、
b)前記スルホ変性コポリエステルを前記ポリグリコール酸と射出成形機内で混合してプリフォームを製造する工程と、
c)前記プリフォームを容器に延伸ブロー成形する工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物から容器を製造する方法。
【請求項12】
前記プリフォーム中の平均ポリグリコール酸ドメインサイズが100nm未満であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
a)テレフタル酸(TA)もしくはC1−C4−ジアルキルテレフタレートと、エチレングリコール(EG)と、少なくとも2.0から15モル%以下のイソフタル酸(IPA)もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートと、少なくとも0.5から5.0モル%以下の式(II):
【化4】

の化合物[上式中、Rが水素、C1−C4−アルキルまたはC1−C4−ヒドロキシアルキルであり、Mが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンであり、
【化5】

であり、nが3〜10の整数である]とを反応させる工程を含むことを特徴とする、スルホ変性コポリエステルを製造する方法。
【請求項14】
a)請求項13に記載のスルホ変性コポリエステルをポリグリコール酸と射出成形機内で溶融ブレンドしてプリフォームを製造する工程と、
b)前記プリフォームを容器に延伸ブロー成形する工程と
を含むことを特徴とする、容器を製造する方法。
【請求項15】
前記プリフォーム中の平均ポリグリコール酸ドメインサイズが100nm未満であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリグリコール酸が、組成物の重量に基づいて約1〜約10重量%の範囲において存在することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
a)イソフタル酸もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートもしくは1,4−シクロヘキサンジメタノールと、式(II):
【化6】

の化合物[上式中、Rが水素、C1−C4−アルキルまたはC1−C4−ヒドロキシアルキルであり、
【化7】

であり、上式中、nが3〜10の整数であり、
Mが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンである]とを反応させることによってスルホ変性コポリエステルのマスターバッチを調製する工程と、
b)工程a)のマスターバッチにポリグリコール酸およびポリエステル樹脂を溶融ブレンドし、それによって、スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドの重量に基づいて、少なくとも2.0から15モル%以下のイソフタル酸(IPA)もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートもしくは1,4シクロヘキサンジメタノールと、少なくとも0.5から5.0モル%以下の式(II)の化合物と、約1〜約10重量%のポリグリコール酸とを有するスルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを形成する工程と
を含むことを特徴とする、スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを製造する方法。
【請求項18】
【化8】

であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項17に従ってスルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを調製する工程と、前記ブレンドをプリフォームに射出成形する工程とを含むことを特徴とするプリフォームを製造する方法。
【請求項20】
前記プリフォーム中の平均ポリグリコール酸ドメインサイズが100nm未満であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19に記載のプリフォームが容器に射出ブロー成形される、容器を製造する方法。
【請求項22】
a)イソフタル酸もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートもしくは1,4シクロヘキサンジメタノールと、式(II):
【化9】

の化合物[上式中、Rが水素、C1−C4−アルキルまたはC1−C4−ヒドロキシアルキルであり、
【化10】

であり、上式中、nが3〜10の整数であり、
Mが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンである]とを反応させることによってスルホ変性コポリエステルのマスターバッチを調製する工程と、
b)工程a)のマスターバッチにポリグリコール酸を溶融ブレンドしてマスターバッチ樹脂を形成する工程と、
c)工程b)のマスターバッチ樹脂にポリエステル樹脂を溶融ブレンドし、それによって、スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸との重量に基づいて、少なくとも2.0から15モル%以下のイソフタル酸もしくは1,4シクロヘキサンジメタノール、もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートと、少なくとも0.5から5.0モル%以下の式(II)の化合物と、約1〜約10重量%のポリグリコール酸とを有するスルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを形成する工程と
を含むことを特徴とする、スルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを製造する方法。
【請求項23】
【化11】

であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22に従ってスルホ変性コポリエステルとポリグリコール酸とのブレンドを調製する工程と、前記ブレンドをプリフォームに溶融押出する工程とを含むことを特徴とする、プリフォームを製造する方法。
【請求項25】
前記プリフォーム中の平均ポリグリコール酸ドメインサイズが100nm未満であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項25に記載のプリフォームが容器に射出ブロー成形されることを特徴とする、容器を製造する方法。
【請求項27】
イソフタル酸もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートもしくは1,4−シクロヘキサンジメタノールと、式(II):
【化12】

の化合物[上式中、Rが水素、C1−C4−アルキルまたはC1−C4−ヒドロキシアルキルであり、
【化13】

であり、上式中、nが3〜10の整数であり、
Mが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンである]との反応生成物を含むことを特徴とする、マスターバッチ樹脂。
【請求項28】
イソフタル酸もしくはC1−C4−ジアルキルイソフタレートもしくは1,4シクロヘキサンジメタノールと、式(II):
【化14】

の化合物[上式中、Rが水素、C1−C4−アルキルまたはC1−C4−ヒドロキシアルキルであり、
【化15】

であり、上式中、nが3〜10の整数であり、
Mが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ホスホニウムイオンまたはアンモニウムイオンである]との反応生成物と、マスターバッチ樹脂を形成するためのポリグリコール酸とを含むことを特徴とする、マスターバッチ樹脂。

【公表番号】特表2009−511677(P2009−511677A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534749(P2008−534749)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/039316
【国際公開番号】WO2007/044623
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】