説明

改良されたグルココルチコイド療法

本発明は、改良されたグルココルチコイド療法と、内因性グルココルチコイド分泌パターンの減弱もしくは破壊によるいくつかの障害の治療または予防に関する。本発明は、健常対象者のコルチゾールの概日リズムを模倣する特定の血清コルチゾール時間プロファイルを、減弱または破壊されたグルココルチコイド分泌パターンに苦しむ対象者において生じさせることにより、副作用の低減に関する利点が得られるという知見に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたグルココルチコイド療法と、内因性グルココルチコイド分泌パターンの減弱もしくは破壊によるいくつかの障害の治療または予防に関する。本発明は、健常対象者のコルチゾールの概日リズムを模倣する特定の血清コルチゾール時間プロファイルを、減弱または破壊されたグルココルチコイド分泌パターンに苦しむ対象者において生じさせることにより、副作用の低減に関する利点が得られるという知見に基づく。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイド(GC)は、中間代謝、免疫機能、筋骨格機能、結合組織および脳機能のための重要なステロイドである。GC欠乏症は、下垂体機能低下症による、原発性(アジソン病)、続発性(中枢)であり得る副腎不全(AI)において発生する。
【0003】
GC補充療法(replacement therapy)の転帰は、最近まで十分であると考えられていた(1)。下垂体機能低下症の患者は、2倍の標準化死亡比率(SMR)を有し(2、3)、下垂体機能低下症と随伴するAIとを有する若年成人は、予想されるものの7倍を超える死亡比率を有する(4)。さらに、アジソン病の患者は、2倍を超えるSMRを有することも示されている(5、6)。この死亡比率の増加についての可能性のある説明は、不適切なGC補充療法、すなわち、ストレスと同時発生の疾病とに応答した高すぎる維持用量と不適切なグルココルチコイドへの曝露との両方である。GC補充療法を受けた患者の綿密な再評価により、用量が高すぎ、患者の大多数において低減できることが明らかになった(7)。多くの患者が、非生理的血漿濃度-時間プロファイルで送達された過度に高い経口用量を受容しているとみられる。
【0004】
従来のヒドロコルチゾン錠剤の送達パターンは、幸福感(well-being)に影響することが示され、また、生理的概日コルチゾールプロファイルを模倣するためにヒドロコルチゾンが注入ポンプで送達される場合に、幸福感は改善される(10、11)。
【0005】
正常な対象者における推定日周コルチゾール生成速度は、最近の研究において、1日あたり9〜11 mg/m2で変動する(平均的な成人対象者における1日あたりおよそ15.5〜19 mgに相当する) (14、15)。これは、現在用いられているヒドロコルチゾンの補充用量よりかなり低い(16、17)。よって、ヒドロコルチゾンの1日用量を低減するが、従来のヒドロコルチゾン錠剤と同じパターンで送達することの代謝への影響を観察することを目的とした研究が行われている。ヒドロコルチゾンの用量を最適化するために行われた研究において、32名のうち24名の患者が、29.5±1.2 mg (SEM)から20.8±1.0 mgへの平均用量の用量低減を必要とし、32名のうち18名が、投与計画の変更を必要とした(BIDからTID) (18)。2.3〜6.8ヶ月後の再評価により、骨形成マーカーであるオステオカルシンの血清濃度の増加が示された(16.7から19.9μg/L、p<0.01)。別の綿密に行われた試験において、1日のヒドロコルチゾンの30 mgから15 mgへの用量低減による心血管機能への影響が研究された(19)。用量低減前およびヒドロコルチゾン用量の低減の3ヶ月後に、24時間携帯式血圧測定、立位および仰臥位血圧、心エコー検査、傾斜に応答した前腕プレスチモグラフィーおよび心血管反射、バルサルバならびに等尺性握力を調べた。用量低減は良好に許容されたが、体重または調べた心血管機能の変数のいずれにも変化はなかった。別の小さい研究において、続発性副腎不全の11名の患者においてヒドロコルチゾン用量を平均で50%低減した(20)。この試験におけるある問題点は、11名の患者のうち4名でヒドロコルチゾンを1日あたり10まで用量低減することは、低すぎる可能性があることであった。また、参加した患者は、平均BMIが30 kg/m2より高い肥満であった。6〜12ヶ月後のフォローアップ中に、体重は平均で7.1 kg低減し、BMIは31.5±1.1から29.4±1.0 kg/m2に低減した。空腹時血糖およびインスリンレベルは、1日ヒドロコルチゾン補充用量のこの大きい低減により影響を受けなかった。送達パターンを変更することなくヒドロコルチゾンの1日用量を30〜50%の範囲で低減させた研究は、体重および骨代謝に影響し得るが、血圧または糖代謝に明らかに影響しない(12、13)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
副作用パターンが改善されたグルココルチコイド投与計画を開発する必要性がまだ存在する。本発明は、本明細書に参照により組み込まれるWO 2005/102271に記載される本出願人の専有する技術のさらなる発展である。WO 2005/102271は、i)速放のためのグルココルチコイドの一部分と、ii)徐放のためのグルココルチコイドの一部分とを含有する医薬組成物について記載する。組成物は、午前に経口経路により投与され、血漿中のコルチゾールの概日リズムを模倣することを意図する。特に、組成物は、組成物の速放部分にグルココルチコイド含量の15〜50重量%と、徐放部分に残りの部分とを含有することが記載されている。このような組成物を用いた臨床試験は、コルチゾールの概日リズムを模倣する投与計画を用いた場合に、副作用が実質的に低減されることを、驚くべきことに示している。よって、よりよく遵守される投与計画の他に、さらなる利点が得られる。以下を参照されたい。さらに、結果は、コルチゾールの概日リズムの混乱(例えば一過性の混乱)、例えばストレス状態などが、正常な健常対象者のものを模倣する血漿コルチゾール濃度-時間プロファイルを導く組成物を対象者に投与することによって対象者の正常な概日リズムを再確立することにより緩和されるかまたは排除できることを強く示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内因性グルココルチコイド分泌パターンが減弱または破壊された対象者に1つ以上のグルココルチコイドの有効量を投与するステップを含む、グルココルチコイド療法の1つ以上の副作用を低減する方法を提供する。より具体的には、グルココルチコイドの投与と用いる送達系とは、1つ以上のグルココルチコイドの投与後のコルチゾールの概日血漿濃度-時間プロファイルが、健常対象者のものを模倣することを確実にしなければならない。本明細書中の実施例および以下の定義からわかるように、「模倣する」との用語は、以下のコルチゾールプロファイル目標基準が、試験した対象者の少なくとも40%以上、好ましくは試験した集団の50%以上で充足されることを意味する。
基準1:投与後30分以内(すなわち、用量の投与が午前6時である場合、午前6時30分まで)での臨床的に著しい血漿コルチゾール濃度(>200 nmol/L)
基準2:投与後4時間以内(すなわち午前10時まで)での500〜800 nmol/Lの範囲の最大血漿濃度
基準3:投与後12〜18時間(すなわち午後6時〜午後12時)での50〜200 nmol/Lの血漿濃度。
基準4:投与後18〜24時間(すなわち午前0時〜午前6時)での50 nmol/L未満の血漿濃度
【0008】
一般的に、基準1は、試験した対象者の80%以上、例えば試験した対象者の90%以上、95%以上または全てで充足される。基準2は、通常、試験した対象者の65%以上、例えば試験した対象者の75%以上、80%以上または85%以上で充足される。基準3は、一般的に、試験した対象者の75%以上、例えば試験した対象者の85%以上、90%以上または95%以上で充足される。基準4は、充足するのがより困難であり、本研究では、慢性副腎不全患者の1/6〜1/7で、残存コルチゾール生成のレベルが低いことが示されている。一般的に、基準4は、試験した対象者の40%以上、例えば45%以上、50%以上、55%以上または60%以上で充足される。
【0009】
本発明は、コルチゾールの正常な概日リズムの再確立と、グルココルチコイド療法で通常見られる副作用の低減との間に観察された関連に基づく。よって、本明細書で報告する臨床試験は、1日1回の経口投与用の特定の医薬製剤に基づくが、コルチゾールの正常な概日リズムを再確立することが可能ないずれのグルココルチコイド製剤も、請求する利点を有することが認識される。よって、投与経路は経口経路とは異なってよく、製剤は、1日1回以外(例えば1日2回)で投与するように設計でき、投与のための時計時間も、時計時間に関して上記の基準が充足されることを条件として、午前6時とは異なることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
さらに、本明細書において以下の定義を用いる。
定義
「副作用の低減」との用語は、最良の標準療法との比較と関連することを意図する。副作用の低減は、特定の副作用の重篤度の低減として観察され、かつ/またはこれは、副作用の発生率および有病率の低減として観察されることがある。より具体的には、過剰グルココルチコイドに関連する副作用は、腹部に主に分布する体脂肪量の増加を伴う体重増進を含む。よって、この特定の副作用の低減は、体重増進の増加がより少ないこと、または体脂肪量の増加がより少ないこととして表すことができる。さらに、血圧の増加および糖代謝の減退は、過剰グルココルチコイドへの曝露と関連する。骨塩量および骨密度の低減も、過剰グルココルチコイドと関連し、これは、血清骨形成マーカーの低減とともに観察される。
【0011】
「標準療法」との用語は、本明細書の文脈において用いる場合、グルココルチコイド含有組成物の1日3回の経口投与を伴う療法のことをいうことを意図し、該組成物は、グルココルチコイドを速放する従来の錠剤組成物である。よって、「標準療法」との用語は、例えば制御放出組成物での処置または例えば制御放出組成物と速放組成物との組み合わせでの処置を含まない。ヒドロコルチゾンを例として、標準療法は、Cortef (登録商標) (Pfizer)、Hydrocorton (登録商標) (Merck)、ヒドロコルチゾン(ジェネリック、例えばMSD、Nycomed、Teva、Auden McKenzie)を用いて適切に行われる。
【0012】
「グルココルチコイド分泌パターンの減弱または破壊」との用語は、ピークの午前中血漿コルチゾールレベルが正常範囲未満である原発性、続発性および三次性副腎不全の状況においてよく規定される。副腎不全の患者は、インスリン負荷試験およびショートSynacten (登録商標) (合成副腎皮質刺激ホルモン)刺激試験のような刺激試験に対してもピーク血漿コルチゾール応答が低減する。グルココルチコイド分泌パターンは、ピークの午前中血漿コルチゾールレベルが低減し、かつ/または午前0時付近の一貫レベルが上昇して、24時間をとおしての最高ピークと最低との差があまり著しくなくなり、すなわち、健常対象者で見られるものと比較して概日変動がより平坦化される場合に、破壊されている(図12を参照されたい)。
【0013】
「グルココルチコイド」との用語は、グルココルチコイド受容体と結合してゲノムおよび非ゲノム経路の両方によりそれを活性化できる任意のステロイドまたはステロイドアナログを意味する。
【0014】
「コルチゾールの概日血漿濃度」との用語は、日中および夜のコルチゾール濃度が、血清または血漿のいずれかでイムノアッセイを用いて測定した健常対象者のものに従うことを意味する。
【0015】
【表1】

【0016】
「模倣する」との用語は、特定の投与計画が、コルチゾールの概日分泌パターンを模倣し、より具体的には、昼間のコルチゾール分泌;午前中の高い血漿濃度と、日中を通しての血漿濃度のゆっくりとした減少と、低い夜間の血漿コルチゾール濃度を置き換えることを意味する。よって、「模倣する」との用語は、類似する、シミュレートする、近似する、従うまたはまねるが、厳密にまたは正確に繰り返すのではないというその通常の意味を有する。上記の議論も参照されたい。
【0017】
「1日1回」との用語は、投与が1日の間に1回だけ行われることを意味する。投与は、1より多い組成物および1より多い投与経路を含み得る。好ましくは、1つ以上の剤形(例えば1つ以上の単回単位錠剤処方)を投与する。毎日の投与時間は、好ましくは1日の同じ時間(0.5〜1.5時間以内の変動)である。
「体重増進」との用語は、体重の増加を意味する。
【0018】
「心血管危険因子の増加」との用語は、収縮期および拡張期血圧、脂質および炭水化物恒常性などのような従来の危険因子の変化による心血管危険性の増加または悪化を意味する。
「骨分解の増加」との用語は、循環骨形成マーカーの減少および/または骨折の危険性を導く骨塩量および骨密度の損失を最終的にもたらす骨吸収マーカーの増加を意味する。
【0019】
「代謝危険因子」との用語は、メタボリックシンドロームにつながる危険性を意味する。メタボリックシンドロームは、2型糖尿病と以下の少なくとも2つとを含むいくつかの臨床症状の存在により定義される:腹部肥満、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール、高血圧もしくは医薬品の使用、高い空腹時血糖または糖尿病のための医薬品の使用。これは、これらの症状のいくつかを治療する薬剤を用いることによってのみ治療できる。
【0020】
「複合危険指標」との用語は、本明細書で用いる場合、心血管および代謝危険因子について上で述べたもの(但し、これらに限定されない)のようないくつかの異なる変数、すなわち2つ以上で構成される罹患率および/または死亡率についての予後危険指標のことを言うことを意図する。
「統計的に有意」との用語は、統計的に適切な方法を用いた場合にp<0.05の値が得られることを意味する。
【0021】
「対象者」との用語は、イヌ、ネコおよびウマを含む哺乳類を意味する。好ましい対象者は、ヒトである。
「十分な副腎能力を有する対象者」との用語は、副腎不全を有さない対象者を意味する。上記を参照されたい。
【0022】
「概日リズム睡眠障害」との用語は、ICSD-2分類(睡眠障害の国際分類)に従って用いられる。
「速放」との用語は、従来の、通常のまたは単純な(plain)錠剤についての規則上の用語に従って一般的に用いられる。全ての制御放出または調節放出錠剤についての規則上の用語は、「調節放出」である。放出を調節するいずれの特徴も有さない従来の錠剤と放出の特徴が増進されている錠剤とを区別する場合、従来の錠剤は、放出増進、放出制御または放出調節の特徴を有さない。
「コルチゾン」との用語は、「コルチゾン酢酸エステル」を含む。
【0023】
上記のように、本発明は、副作用が著しく低減された改善されたグルココルチコイド療法を提供する。本明細書で報告する臨床試験に従って、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度-時間プロファイルを導く12週間の処置を、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の12週間の処置(全1日用量は2つの処置計画において同じである)と比較することにより、副作用の低減が決定される。
【0024】
従来の剤形は、典型的に、質量変動、投与量変動、崩壊性、硬度などに関する薬局方の要件を充足する錠剤製剤である。よって、これは、胃内で崩壊し、崩壊された錠剤からグルココルチコイドを放出することにより、消化管での吸収のためにグルココルチコイドを容易に利用され得るようにする錠剤製剤である。適切な例は、Cortef (登録商標) (Pfizer)、Hydrocorton (登録商標) (Merck)、ヒドロコルチゾン(ジェネリック、例えばMSD、Nycomed、Teva、Auden McKenzie)を含む。
【0025】
本明細書における実施例において、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度-時間プロファイルを導く処置が、経口剤形を用いる1日1回の処置である例が示される。「医薬組成物」の題名の下で、投与後のコルチゾールの概日リズムを模倣することに関して所望の特性を有する組成物に関するさらなる詳細を示す。
【0026】
副作用の低減を決定するために含まれる対象者の数に関して、副作用の低減は、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度-時間プロファイルを導く上記の処置を受ける、内因性グルココルチコイド分泌パターンが減弱または破壊された12名以上の対象者の試験集団と、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の上記の処置を受ける、グルココルチコイド分泌パターンが減弱された12名以上の対象者の比較集団と(全1日用量は2つの処置計画において同じである)において決定できる。
【0027】
本明細書で報告する臨床試験からわかるように、以下の副作用に関する利益が観察された:体重増進、心血管危険因子の増加、骨分解の増加、代謝危険因子。1つ以上の副作用またはこのような因子からの複合危険指標の低減は、統計的に有意である。当業者は、ある臨床試験の設計のためにどの統計学的手法を用いるのか、そしてどのように結果を比較するのかについて認識している。本明細書の実施例から明らかなように、試験処置とベースラインとに関して比較が行われ、試験処置が従来の処置と比較される。ベースラインは、最初の無作為化のときである。
【0028】
副作用の低減は、2型糖尿病についての将来の危険性を示す代謝危険因子の低減を含み得る。代謝危険因子は、HbA1cの増加、空腹時インスリン/血糖、微量アルブミン尿、インスリン感受性の低減または食後血糖/脂質調節の混乱などのような有害な長期の予後と関連することが知られている糖代謝における変化でもあり得る。副作用の低減は、限定されないが例として眼(黄斑症)、腎臓(微量アルブミン尿症および連続する進行性糖尿病性腎症)、末梢四肢(すなわち糖尿病性潰瘍)、心臓(急性心筋梗塞、心筋症)の微小血管変性のようなインスリン処置された糖尿病(I型および/またはII型)の副作用の低減を含み得る。さらに、インスリン処置された糖尿病(I型および/またはII型)における代謝危険因子の改善は、より低い1日インスリン用量、より少ないインスリン投与回数、食前および食後のより低い血糖変動、ならびにインスリン処置された糖尿病(I型および/またはII型)の連続的により容易な管理、よって改善された遵守性、幸福感からなる。まとめると、代謝危険因子におけるこれらの改善は、直接的および間接的の両方での薬の経済的な費用の低減も導く。
【0029】
本明細書で報告する実施例において得られた結果によると、代謝危険因子は、HbA1cの低減として測定し得る。特に、この低減は、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度を導く12週間の処置の後に、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、0.1%以上、例えば0.3%以上または0.5%以上であり得る。
【0030】
さらに、副作用の低減は、体重増進の低減または体重の低減を含む。本明細書において報告する実施例において得られた結果によると、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度を導く12週間の処置の後の体重増進は、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、少なくとも0.7 kg低減する。
【0031】
副作用の低減は、収縮期血圧および拡張期血圧の1つ以上を含む心血管危険因子の低減も含み得る。本明細書で報告する実施例において得られる結果によると、12週間の処置の後の収縮期血圧は、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、5mmHg以上低減する。また、本明細書で報告する実施例において得られた結果によると、12週間の処置の後の拡張期血圧は、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、2mmHg以上低減する。
【0032】
さらに、副作用の低減は、骨分解の低減も含み得る。本明細書で報告する実施例において得られた結果によると、骨分解の低減は、骨形成マーカーについての骨マーカーを測定することにより決定し得る。マーカーPINPは、12週間の処置の後に、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、少なくとも5%以上、例えば7%以上または10%以上増加し得る。
【0033】
本明細書において報告する臨床試験の結果からわかるように、副作用の低減に関する著しい改善が、インスリン処置を受けたかもしくは受けていないI型またはII型糖尿病のような糖尿病にも罹患している患者について観察される。適切な記載を挿入し、利点などに関して述べて下さい。HbA1cの著しく大きい低減は、糖尿病患者におけるより良好な代謝制御を反映する。HbA1cは、糖尿病患者における長期の転帰の強力な予測因子である。
【0034】
対象者は、高血圧、脂質代謝異常、糖代謝の減退、腎機能不全または心筋梗塞、脳卒中もしくはうっ血性心不全による心血管標的器官のような心血管危険因子の存在により心血管の危険性が増加していてよい。このような対象者については特に、体重が低下し、収縮期および拡張期血圧がともに低下し、糖代謝の改善を反映してHbA1cが低下するので、本発明の方法は有利である。
【0035】
十分な副腎能力を有する対象者
減弱または破壊された内因性グルココルチコイド分泌パターンに苦しむ対象者についても利益が達成され得る。正常リズムからのコルチゾールリズムの偏りは、一過性であり得、すなわち、これは、障害が一旦緩和されると再確立され得る。つまり、本発明は、十分な副腎能力を有する対象者にグルココルチコイドの有効量を投与するステップを含む、該対象者における内因性グルココルチコイド分泌パターンの減弱もしくは破壊を治療または予防するための方法も提供する。内因性グルココルチコイド分泌パターンの減弱または破壊は、上記の対象者の概日血漿コルチゾール濃度-時間プロファイルの混乱と関連する。
【0036】
概日血漿コルチゾール濃度-時間プロファイルの混乱は、甲状腺機能低下症、うつ、断眠、不眠症、睡眠障害、副腎疲労症候群、慢性疲労症候群、肥満、三次性副腎不全、概日リズム睡眠障害、交代勤務、時差ぼけ、肥満、悪液質または慢性ストレスから生じ得る。
このような状態において、上記のグルココルチコイドの1日用量(ヒドロコルチゾン等価物として表される)は、約1mg/70 kg体重〜約10 mg/70 kg体重、例えば約30 mg/70 kg体重、例えば約5mg/70 kg体重または例えば2.5〜10 mg/70 kg体重である。このような用量は、健常対象者のものを模倣する1つ以上のグルココルチコイドの投与後にコルチゾールの概日血漿濃度を可能にする。
【0037】
第1の方法の態様について言及した全ての詳細および具体例は、必要な変更を加えて、本発明のこの態様およびその他の態様に当てはまる。
よって、本発明は、グルココルチコイド療法で一般的に観察される副作用の治療または低減の方法において用いるためのグルココルチコイド含有組成物に関する。さらに、本発明は、グルココルチコイド療法で一般的に観察される副作用の低減のための医薬品の製造のための1つ以上のグルココルチコイドの使用であって、組成物が1日1回投与される使用に関する。したがって、本発明は、必要とする対象者にグルココルチコイドを投与することによる、標準的なグルココルチコイド療法で見られる副作用を低減する方法も可能にする。
【0038】
活性物質
本明細書の文脈において、「グルココルチコイド」または「グルココルチコステロイド」との用語は、治療的、予防的および/もしくは診断的に活性なグルココルチコイドまたは生理的な効果を有するグルココルチコイドのことをいうことを意図する。この用語は、任意の適切な形態のグルココルチコイド、例えば結晶、非晶質もしくは多形の形態または適切であれば任意の鏡像異性体もしくはラセミ体の形態を含む任意の立体異性体の形態、あるいは上記のいずれかの組み合わせのような任意の物理的形態の、例えばその医薬的に許容され得る塩、錯体、溶媒和物、エステル、活性代謝産物もしくはプロドラッグを含むことを意図する。グルココルチコイドは、合成グルココルチコイドであり得る。
【0039】
本発明による組成物に含まれる1つ以上のグルココルチコイドは、それらの医薬的に許容され得るエステル、塩および錯体を含む、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、ブデソニド、フルチカゾン、コルチゾン酢酸エステルおよびベクロメタゾンからなる群より選択される。
【0040】
上記のように、健常対象者のものを模倣する血漿コルチゾール濃度-時間プロファイルを達成することが重要である。よって、1つ以上のグルココルチコイドは、剤形のような適切な送達系で提示され得る。さらに、グルココルチコイドの一部分(第1部分)は、血漿中にグルココルチコイドが速く出現し(第1部分に関して)、その後に維持用量(第2部分の徐放)が続くために、別の部分(第2部分)よりも速く送達系から放出されなければならない。第1部分および第2部分は、同じ製剤または別々の製剤で提示され得る。好ましい製剤において、これらは、同じ製剤、特に単回単位製剤で提示される。さらに、これらが別々の製剤で提示される場合、第1製剤と第2製剤とは、同じまたは異なる投与経路により投与されるように設計され得る。これらの態様は、以下でさらに論じる。
【0041】
第1部分および第2部分の1つ以上のグルココルチコイドは、同じグルココルチコイドまたは同じグルココルチコイドの混合物であってよい。通常、第1部分および第2部分がともに同じ剤形の部分である場合が製造の観点から容易であるので、事実はこのようになる(例えば、第1部分と第2部分とは、錠剤に含まれ、第1部分はコーティングまたは別個の層として、第2部分を含むコアの上に提供される)。しかし、第1部分および第2部分が同じ剤形の部分でない場合(例えば第1部分が発泡性錠剤であり、第2部分が徐放錠剤の形態にある)、または異なるグルココルチコイドを用いる場合に改善された治療結果が期待される場合、第1部分および第2部分の1つ以上のグルココルチコイドは、異なるグルココルチコイドまたは異なるグルココルチコイドの混合物である。
【0042】
グルココルチコイドの第1部分は、速放を意図するので、放出および/または吸収は、組成物が経口投与される場合は、口腔内で既に生じ得る。このような場合、第1部分のために選択されるグルココルチコイドは、ヒドロコルチゾン(そのまま)またはコルチゾンではないことがある。なぜなら、これらの2つの活性物質は、苦味を有するからである。しかし、これらの物質は、十分な風味隠蔽が行われることを条件として用い得る。「医薬的に許容され得る賦形剤」に関する段落において、風味隠蔽をより詳細に論じる。よって、第1部分の1つ以上のグルココルチコイドは、許容され得る風味を有し得るか、無味であり得るかまたは効果的に風味隠蔽され得る。
【0043】
第1部分の1つ以上のグルココルチコイド(上記のような)の例は、合成グルココルチコイド、例えばそれらの医薬的に許容され得るエステル、塩および錯体を含むヒドロコルチゾン21-スクシネート、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、ブデソニド、フルチカゾン、コルチゾン酢酸エステルおよびベクロメタゾンである。特に適切な例は、ヒドロコルチゾンもしくはヒドロコルチゾン21-スクシネートまたはそれらの医薬的に許容され得る塩である。
【0044】
第2部分に関して、上記のグルココルチコイドのいずれも用い得る。具体的な実施形態において、ヒドロコルチゾンが好ましい。
【0045】
医薬組成物
本発明は、作用の速い開始を可能にするためにグルココルチコイドの第1部分を比較的速く放出し、グルココルチコイドの延長された持続する効果を得るために延長された様式でグルココルチコイドの第2部分を放出するように設計されたこのようなグルココルチコイド含有医薬組成物とキットとを提供する。好ましくは、組成物およびキットは、1日1回投与用に設計される。第1部分のグルココルチコイドは、増進放出(すなわち通常より速い)または速放であり得る。
よって、医薬組成物は、1つ以上のグルココルチコイドを含み、1つ以上のグルココルチコイドの第1部分は、実質的に速放であり、1つ以上のグルココルチコイドの第2部分は、少なくとも約8時間の延長された期間にわたって放出される。
【0046】
グルココルチコイドは異なる効力を有するので、「ヒドロコルチゾン等価物」との用語が導入されている。
「ヒドロコルチゾン等価物」との用語は、本明細書において、医師により一般的に理解される全身グルココルチコイド療法の目的のためのヒドロコルチゾン1mgに相当するmgでの特定のグルココルチコイドの量を定義する。この用語は、個別のグルココルチコイドが、異なる効力を有し、所望の治療効果を達成するためには、個別のグルココルチコイドの異なる用量が必要であるという事実に基づく。グルココルチコイドの等価な用量は、以下の表に従って算出できる。
【0047】
【表2】

【0048】
よって、組成物の第1部分が1.5 mgのベタメタゾン(40 mgのヒドロコルチゾンに相当)を含有し、組成物の第2部分が40 mgのヒドロコルチゾンを含有する場合、組成物中のヒドロコルチゾン等価物の全量は、80 mgのヒドロコルチゾンに相当する。よって、第1部分は、組成物の全ヒドロコルチゾン等価物の50%を含有する。第1部分のグルココルチコイドの全量が、上記の溶出試験において1時間以内に放出されると仮定すると、最初の45分以内に第1部分からグルココルチコイドが放出されることに関する要件は、全ヒドロコルチゾン等価物の少なくとも25%が放出されることである。
【0049】
ヒドロコルチゾン等価物として表される第1部分の1つ以上のグルココルチコイドの量は、組成物中の全ヒドロコルチゾン等価物の約15〜約50%の範囲、特に約15%〜約35%または約20%〜約40%、例えば約25%〜約35%であり得る。この量は、USP溶出装置第2号(パドル)、50 rpmおよび溶出媒体としての酵素を含まない模擬腸管溶液と37℃の温度とを用いるUSPに従うインビトロ溶出試験における組成物の試験の開始の1時間後に放出される量として決定できる。
通常、第1部分のヒドロコルチゾン等価物の少なくとも約50%が、溶出試験の最初の45分以内に放出される。
【0050】
本発明による医薬組成物は、1日1回の経口投与を意図する単一組成物として適切に設計される。このような組成物は、患者が服用するのに簡便であり、よって、好ましい態様である。しかし、本発明の範囲内において、本発明の組成物は、2連組成物、すなわち2つの異なる医薬形態を含む組成物、例えばグルココルチコイドの速放経口医薬製剤と一緒に摂取するための徐放製剤(またはその他の適切な組み合わせ)であってもよい。このような2連組成物は、キットのような単一包装で通常提供される。よって、キットは、
i)1つ以上のグルココルチコイドを含み、該1つ以上のグルココルチコイドの実質的な速放のために設計された第1成分と、
ii)1つ以上のグルココルチコイドを含み、該1つ以上のグルココルチコイドの徐放のために設計された第2成分と
を含んでよく、ここで、第1成分の1つ以上のグルココルチコイドの少なくとも約50%が、USP溶出装置第2号(パドル)、50 rpmおよび溶出媒体としての酵素を含まない模擬腸管溶液を用いる溶出試験の最初の45分以内に放出される。
【0051】
本明細書の文脈において、「徐放」との用語は、単純な錠剤から得られる放出とは異なり、単純な錠剤から得られるものより長い期間である8時間以上の放出をもたらす全ての型の放出を含むことを意図する。よって、この用語は、いわゆる「制御放出」、「調節放出」、「持続放出」、「パルス放出」、「延長放出」、「緩慢放出」、「時間最適化放出」および「pH依存性放出」の用語を含む。
【0052】
速放用の1つ以上のグルココルチコイドと徐放用の1つ以上のグルココルチコイドとを特定の割合で用いることにより、投与後のコルチゾールの概日リズムを模倣することが可能になる。さらに、個別の患者、薬物に対するそれらの感受性およびそれらの体重における全般的な放出プロファイルの差を考慮して、適切な治療効果を得るために必要な1日投与量範囲を低くすることができることも考えられる。よって、その内因性コルチゾール分泌が非常に低いかまたはゼロレベルである平均的な成人について、15〜30 mgの範囲のヒドロコルチゾンの全1日用量またはその他のグルココルチコイドの等価用量を、内因性放出プロファイルを本質的に模倣するために1日1回投与できる。本明細書の文脈において、「本質的に模倣する」との用語は、本発明による組成物またはキットの投与の約0.5〜1から約6.5〜7時間後に相当する期間に得られる血漿プロファイルが、午前6時から正午までにおける健常対象者のコルチゾールの血漿プロファイルの形状を実質的にまねるかまたはそれに似ることをいうことを意図する。1つ以上のグルココルチコイドの第1部分および第2部分(またはキットの場合に成分)が逐次的に服用される場合、期間は、第1部分の投与から始まる。
【0053】
本発明の医薬組成物またはキットは、投与後約12〜18時間での腸での薬物吸収をもたらす。
【0054】
医薬組成物に関する本発明の詳細な記載を以下に示す。しかし、本発明のこの態様の下で開示される全ての詳細および具体例は、必要な変更を加えて、本発明のその他の態様に当てはまる。特に、本発明による組成物の第1および/または第2部分に関する開示は、本発明によるキットの第1および第2成分にも当てはまることに留意されたい。
【0055】
医薬組成物-第1部分および第2部分
上記のように、組成物の第1部分は、グルココルチコイドを比較的迅速に放出する。あるいくつかの種類の医薬組成物について、どの部分が速放部分であるかを容易に明確にできる(例えば、一方の色が速放用であり、他方の色が徐放用である異なる色のペレットを含有するカプセルの場合、または徐放層の上に速放層がある層状錠剤の場合)。組成物の製造中に、個別の部分(すなわち速放部分および徐放部分)を、例えば放出挙動を評価するためのインビトロ溶出試験に供することが比較的容易になることもある。しかし、開始点としての最終組成物を用いては、ほとんどの場合、組成物のどの部分が速放部分であり、どれが徐放部分であるかを明らかにすることは困難である。よって、本明細書の文脈において、本発明による組成物の「速放部分」は、USP溶出装置第2号(パドル)、50 rpmまたは100 rpmおよび溶出媒体としての酵素を含まない模擬腸管溶液を用いるUSPに従うインビトロ溶出試験における組成物の試験の開始の1時間後に放出される、ヒドロコルチゾン等価物として表される量として規定する。速放部分も徐放部分も含まない既知の組成物とは対照的に、i)速放部分は、組成物中に含まれる全ヒドロコルチゾン等価物の約15〜約50%を含有し、ii)第1部分のヒドロコルチゾン等価物の少なくとも約50%が、溶出試験の最初の45分以内に放出され、iii)第2部分が、少なくとも約8時間の伸長された期間にわたってグルココルチコイドを放出する。
【0056】
本発明による薬物処方からのグルココルチコイドのインビトロ溶出プロファイルは、標準化され制御されたインビトロ環境中で経時的に適切に追跡される。自動サンプリング装置およびソフトウェアと連結された米国薬局方(USP)溶出装置II (パドル)を、中性pH環境における薬物製剤の放出プロファイルを取得するために用い得る。溶出プロファイルは、37℃、50 rpmまたは100 rpmのパドルにて、合計で300 mlまたは500 mlの水の中で適切に取得する。代わりに、水を、pH=7.0のリン酸塩緩衝液に交換できる。サンプリングは、本発明による医薬組成物を溶出媒体中に入れた後の規則正しい時間間隔、例えば0、1、3、5、7、10、15、20、30、40、50および60分で行うことができ、医薬組成物を入れた後の360分以上まで追跡できる。
【0057】
しかし、本発明の組成物を、本発明に属さない組成物に対して比較する場合、溶出試験に関するこの比較は、自動サンプリング装置およびソフトウェアに連結された米国薬局方(USP)溶出装置II (パドル)を用いて行われ、中性pH環境における薬物製剤の放出プロファイルを取得するために用いられる。溶出プロファイルは、37℃、50 rpmのパドルにて、合計で300 mlの水の中で取得する。サンプリングは、医薬組成物を入れた0、1、3、5、7、10および15分後に行われる。放出プロファイルは、規則正しい間隔で360分以上まで追跡できる。
【0058】
第1部分の放出
組成物の第1部分の具体的な実施形態は、以下の表に示す1つ以上の要件を充足する。一般的に、溶出試験の開始後30分以内で述べられた要件が充足されることが好ましい。好ましい実施形態において、第1部分に含まれるヒドロコルチゾン等価物の少なくとも70%または少なくとも80%が、溶出試験の最初の30分以内に放出される。
【0059】
【表3】

【0060】
本発明の組成物の投与後比較的速くにグルココルチコイドの比較的高い血漿レベルを得ることができるために、速放部分の1つ以上のグルココルチコイドの量は、ヒドロコルチゾン等価物として表して、組成物中の全ヒドロコルチゾン等価物の約15〜約50%、例えば約20〜約40%または約25〜約35%の範囲にある。
【0061】
組成物の第2部分は、1つ以上のグルココルチコイドを伸長された様式で放出するように設計され、すなわち、放出は、少なくとも約8時間の期間で生じる。
具体的な実施形態において、1つ以上のグルココルチコイドの第2部分は、少なくとも約10時間の伸長された期間にわたって放出される。本発明による組成物を調製するために用いる特定の処方の方法に依存して、異なる放出パターンを達成でき、処方の方法ごとにインビボ-インビトロの相関関係は異なり得る。よって、インビトロ放出が、インビボ挙動を変更せずにより長期間持続する場合がある。よって、具体的な実施形態において、1つ以上のグルココルチコイドの第2部分は、少なくとも約12時間、例えば少なくとも約15時間または少なくとも約20時間の伸長された期間にわたって放出され得る。さらに、24時間ほど長期間が、本明細書の文脈において適切であり得る。
【0062】
上記の放出は、適切な方法によりインビボで測定し得る。このような方法は、現在開発中であり、多くの興味を集めている。しかし、一般的に、本明細書中に既に記載したようなインビトロ法が好ましい。
【0063】
組み合わせ放出
1つ以上のグルココルチコイドの放出に関して、組成物の具体的な実施形態は、以下の表に示す1つ以上の要件を充足する。一般的に、組成物に含まれるヒドロコルチゾン等価物の少なくとも80%または少なくとも90%が、溶出試験の最初の24時間以内に放出されることが好ましい。一般的に、以下の表に記載される要件が当てはまる。
【0064】
【表4】

【0065】
しかし、上記のように、i)第2部分の放出がより速く、ii)1つ以上のグルココルチコイドが、約15もしくは14時間以内に放出され、かつ/またはiii)組成物の第1部分中の1つ以上のグルココルチコイドの量が比較的高い場合がある。このような場合において、以下の要件の1つ以上が当てはまることがある。
【0066】
【表5】

【0067】
第2部分の放出
1つ以上のグルココルチコイドの第2部分の放出は、通常、投与により開始する。しかし、いくらかの遅延時間がある場合があり、例えば、組成物の第2部分が腸溶被覆錠剤またはペレットの形態である場合である。放出に関して、具体的な実施形態は、以下の表に示す1つ以上の要件を充足する。
【0068】
【表6】

【0069】
よって、本発明は、
i)第2部分に含まれるヒドロコルチゾン等価物の約3〜約15%が、本明細書で規定される溶出試験の開始後の1〜約6時間の期間中に1時間あたりに放出され、
ii)第2部分に含まれるヒドロコルチゾン等価物の約3〜約10%が、約6〜約10時間の期間中に1時間あたりに放出され、
iii)第2部分に含まれるヒドロコルチゾン等価物の約3〜約7.5%が、約10〜約12時間の期間中に1時間あたりに放出される
組成物に関する。
【0070】
徐放部分に関して、基本的に、徐放のために設計されたいずれの医薬製剤も用い得る。いくつかの徐放製剤(例えばマトリクス錠剤)からの活性物質の放出が、放出が24時間放出として設計される場合は特に非常に遅くなり得ることが公知である。このような場合、第2部分の含量を決定するために、組成物中のヒドロコルチゾン等価物の全量を推定することが必要なことがある。よって、組成物の第2部分のヒドロコルチゾン等価物の量は、適切であれば、(H全量−H第1部分) (式中、H全量は、上記で規定される試験の開始後の24時間以内に放出されるヒドロコルチゾン等価物の全量であり、H第1部分は、本明細書で規定されるようにして決定される組成物の第1部分のヒドロコルチゾン等価物の量である)として決定できる。
【0071】
本発明による医薬組成物は、1つ以上の生体/粘膜付着促進剤も含み得る。通常、このような生体/粘膜付着促進剤は、約0.1〜約25重量%、例えば約1%〜約20%、例えば約5%〜約15%、例えば5%〜約10重量%の濃度で存在する。生体/粘膜付着促進剤の例は、合成ポリマー、天然ポリマーおよびその誘導体ならびにそれらの混合物を含むポリマーを含む。ポリマーは、カルボマー、ポリエチレンオキシド、ポリコ-(メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物)およびそれらの混合物から選択し得るか、またはこれは多糖であり得る。多糖は、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、スクレログルカン、キサンタンガム、グアーガム、微結晶セルロース、クロスカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、中度架橋デンプンおよびキトサンからなる群より選択できる。
【0072】
本発明による医薬組成物は、溶解促進剤も含有し得る。
存在する場合、溶解促進剤は、組成物の全重量の約0.05〜約5重量%、例えば約0.5%〜約5%、例えば約1%〜約4%、例えば2%〜約3重量%の濃度で存在する。溶解促進剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、胆汁酸、胆汁酸塩、コール酸もしくはコラン酸の塩、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、オレイン酸、オレイルアルコール、モノオレイン酸グリセロール、ジオレイン酸グリセロール、トリオレイン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノラウリン酸グリセロール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウムおよびソルビタンエステルからなる群より選択できる。
【0073】
本発明の組成物中の1つ以上のグルココルチコイドは、マイクロ粒子またはナノ粒子として存在し得る。一般的に、このような粒子の平均粒径は、10μm以下である。さらに、マイクロ粒子またはナノ粒子は、レシチンまたはレシチンベースの化合物を含むコーティングで被覆されるようにカプセル化され得る。
【0074】
本発明の組成物は、崩壊剤も含み得る。このような崩壊剤は、速放組成物中のグルココルチコイドの分散を、例えば胃内の投与部位にわたって促進する。医薬的に許容され得る崩壊剤の例は、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプン、天然デンプン、微結晶セルロースおよびセルロースガムである。存在するならば、これは、組成物の全重量に基づいて約0.5%〜約%10重量%、例えば約1%〜約9%、例えば2%〜約8%、例えば3%〜約7%、例えば4%〜約6%、例えば約5%の濃度で通常用いられる。異なる医薬賦形剤、例えばマンニトールとラクトースは、賦形剤として特に適切であることが見出されている。
【0075】
上記のように、本発明による医薬組成物は、風味隠蔽剤をさらに含み得る。風味隠蔽剤の例は、例えば、メントール、ペパーミント、バニリン、テルペンベースの化合物または人工甘味料である。具体的な実施形態において、1つ以上のグルココルチコイドは、アルファ-、ベータ-またはガンマ-シクロデキストリン、好ましくはベータ-シクロデキストリンによる封入複合体中に組み込むことにより風味隠蔽される。
【0076】
投与経路-投与量
本発明の医薬組成物は、適切な投与経路、好ましくは経口経路により投与され得る。通常、経口経路は、患者にとって簡便であるので好ましいが、組成物の第1部分および第2部分が異なる剤形である場合、組成物の第1部分は、口腔、鼻腔、直腸、胃腸粘膜の粘膜を介してまたは肺、気管支もしくは呼吸粘膜および上皮を介して投与されるように適切に設計され得る。
異なる剤形が組成物の第1部分および第2部分に用いられる場合、最終組成物は、通常、そして有利にはキットである。
【0077】
好ましい医薬組成物は、速放部分と徐放部分とをともに含む単回単位剤形である。このような組成物は、長期間の処置において用いるために特に適する。なぜなら、組成物は、好ましくは、1日1回投与するように設計されているからである。しかし、患者が追加容量のグルココルチコイドを必要とする場合があり得る(例えば身体活動、ストレスなどにより)。そのような場合、速い開始を導く別の用量の速放部分を患者に投与できる。
【0078】
本発明による組成物は、1日1回の投与頻度を狙いとする。本明細書の文脈において、「1日1回(once daily/ once-a-day)」との用語は、適切な治療および/または予防の応答を得るために1日1回医薬組成物を投与することだけが必要であることを意味する。しかし、いずれの投与も、1より多い投与単位、例えば2〜4の投与単位または異なる投与単位(例えば錠剤)の投与を含み得る。
【0079】
上記のように、本発明の医薬組成物は、全般的に、血漿コルチゾールの概日リズムを模倣するために1日1回投与されるように設計される。インビボでのコルチゾールの完全に生理的な血漿濃度時間プロファイルを達成するために、コルチゾールの低い/検出不可能な血漿レベルからの著しい増加が、およそ午前4時に達成されなければならない。このことは、個体内および個体間で胃腸通過時間(特に結腸通過時間)に大きな変動があるので、就寝時に投与された遅延放出医薬製剤を用いる適切な精度をもってしては達成できない。よって、午前4時に吸収が開始するような目標時間を有するこのような製剤は、吸収の開始に大きい変動をもたらし、いくらかの患者は、夜早くまたは遅くに血漿中の高いピーク値を経験する。よって、本発明は、早朝にできるだけすぐに適切な生理的血漿コルチゾールレベルを得るために、迅速な吸収を患者に提供することを狙いとする。本発明は、コルチゾールの臨床上著しい血漿濃度(>200 nmol/L)を30分以内に達成する迅速吸収を提供する。このことは、速放経口調製物またはWO 2005/102271に示される非経口経頬側投与により達成できる。さらに、速放と徐放との組み合わせは、本明細書に例示されるような単一組成物の使用によっても達成できる。よって、1つ以上のグルココルチコイドを、本発明による組成物またはキットで提供する場合、グルココルチコイドの生物学的概日リズムと同時性を持つ血漿濃度-時間プロファイルが得られる。本明細書の文脈において、「同時性を持つ」または「模倣する」との用語は、本発明による組成物またはキットの投与後のグルココルチコイドの血漿レベルプロファイルが、少なくとも投与の0.5〜6時間後に相当する期間に正常な健常対象者のものと類似する形状を有する場合を表すために用いられる(すなわち、組成物またはキットが午前6時に投与される場合、患者のグルココルチコイドの血漿プロファイルは、午前6時30分から正午までに相当する期間に測定された健常対象者のものと同じ形状を本質的に有する)。
好ましい医薬組成物は、午前中に1日1回投与するために設計される。典型的には、組成物は、起床時間、すなわち午前4時〜正午、午前4時〜午前10時、午前4時〜午前9時、午前5時〜午前8時または午前6時〜午前8時、最も典型的には午前6時〜午前8時に投与される。組成物は、また、夕方遅くおよび夜にグルココルチコイドの低いかまたは検出不可能な血漿レベル(<50 nmol/lコルチゾールに相当する)を意味する6〜9時間の「グルココルチコイドフリー」間隔をもたらすように設計される。
【0080】
一般的に、本発明による組成物に存在するグルココルチコイドの投与量は、とりわけ、特定の薬物物質、患者の年齢および状態ならびに処置される疾患に依存する。
【0081】
医薬組成物の第1および第2部分のグルココルチコイドは、それぞれ、5〜50 mgのヒドロコルチゾン等価物1日用量を含む。比較の目的のために、種々のグルココルチコイドの等価ミリグラム投与量を記載する表を、本明細書中で示す。よって、等価な用量の合成グルココルチコイドのその他の形態を用いることができる。通常、本発明による医薬組成物は、約1〜約80 mgの組成物中のヒドロコルチゾンとして表されるヒドロコルチゾン等価物の全量を含有する。具体的な実施形態において、組成物中のヒドロコルチゾン等価物の全量は、約1〜約75 mg、例えば約1〜約70 mg、約5〜約60 mg、約5〜約50 mg、約5〜約40 mgまたは約10〜約30 mgである。
【0082】
より具体的には、通常の1日用量範囲は、以下のとおりである。
ヒドロコルチゾン 1〜30 mg
コルチゾン 1〜20 mg
ベタメタゾン 1〜20 mg
プレドニゾロン 1〜10 mg
デキサメタゾン 0.1〜2mg
フルドロコルチゾン 0.05〜5mg
プレドニゾン 10〜50 mg
メチルプレドニゾロン 2〜20 mg
【0083】
上記のような1日1回投与用の用量を含有する本発明による組成物は、以下の表に記載される血漿レベルを得るように設計される(狭い範囲が好ましい範囲であるが、個別の変動により、より広い範囲内の血漿レベルでも十分である)。以下に示す血漿濃度は、ヒドロコルチゾン等価物の観点で示す。ヒドロコルチゾン以外の別のグルココルチコイドを用いる場合、当業者は、血漿レベルをどのようにして決定するかを知っている(本明細書中の上記の手引きを参照されたい)。
【0084】
【表7】

【0085】
よって、グルココルチコイドが、単一投与として2つの異なる部分で与えられる場合、同時に、グルココルチコイドの生物学的概日リズムと実質的に同時性を持つ血漿濃度-時間プロファイルが得られる。グルココルチコイドが、以下に示す血漿レベルを提供する様式で放出されることが好ましい。
【0086】
【表8】

【0087】
医薬調製物は、起床時、典型的には午前6時〜午前8時に投与される1日1回投薬とみなされる。これらは、よって、夕方遅くおよび夜に<50 nmol/lの6〜9時間のグルココルチコイドフリー間隔血漿レベルをもたらすようにも設計され、この間隔中は、外来性のグルココルチコイドは患者に投与してはならない。
【0088】
医薬剤形
上記からわかるように、本発明による組成物は、経口投与用に設計される。本発明によるキットの場合、徐放成分は、経口投与用に適切に設計され、速放部分は、任意の適切な投与経路、好ましくは粘膜を介する経路用に設計され得る。好ましい態様において、本発明による組成物またはキットは、経口投与、すなわち経口摂取によるまたは口腔への投与用に設計される。
最も適切には、本発明による医薬組成物およびキットの少なくとも徐放成分は、固体剤形、例えば顆粒剤、ビーズ、ペレットおよび散剤の形態にある。
【0089】
本発明による組成物およびキットの個別の成分は、通常、錠剤、カプセル剤またはサシェ(sachet)を含む単位剤形にある。本発明によるキットの速放部分または成分に関して、これは、例えば経口粘膜への施用のための薄膜、例えば口腔もしくは鼻の粘膜へのスプレー、肺、気管支もしくは呼吸粘膜および上皮を介する投与のための吸入器もしくは粉末吸入器のような適切なデバイスによる投与用の溶液、直腸粘膜への投与のための坐剤もしくはその他の適切な組成物を含む異なる単位剤形であり得るか、またはこれは、咀嚼錠、吸引用(suckable)錠剤、発泡錠、融解錠剤、ロゼンジ、香錠(pastille)を含む速放錠剤であり得るか、またはこれは、よりキャンデーのような形態であり得る。
【0090】
原則として、経口制御放出組成物を製造するための任意の適切な処方技術を、組成物の徐放部分のために用いてよい。このような組成物は、例えば、拡散制御薬物送達系、浸透圧制御薬物送達系、侵食薬物送達系などを含む。よって、組成物は、そのまま用いることを意図する単回または複数回単位剤形の形態であり得る。同じ様式で、医薬組成物を製造するための任意の適切な処方技術を、本発明による組成物またはキットの速放部分を処方する場合に用いることができる。製薬処方技術の分野における当業者は、Remington's Pharmaceutical Sciencesのハンドブックおよび本明細書の実施例において手引きを見出すことができる。
【0091】
以下に、徐放部分について本明細書に記載する型の溶解プロファイルを得ることを目的とした一般的な速放および徐放処方技術についての短い概説を記載する。以下に記載する組成物において、当業者は、1つ以上のグルココルチコイドの速放を生じる部分をどのようにして組み込むかを認識している。
【0092】
本発明による組成物の速放部分またはキットの速放成分
速放部分は、活性物質としてのグルココルチコイドを、通常、1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤または担体(本明細書において「速放担体」ともいう)とともに含んで、インビトロでのグルココルチコイドの迅速な放出/溶解と、医薬組成物が患者に投与された後に、投与部位、例えば口腔または胃腸管でのグルココルチコイドの迅速な溶解と、インビボでのグルココルチコイドの迅速な吸収とを提供する。速放部分のために用いられる1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤は、固有であるか、またはこれらは速い放出に貢献し得る。しかし、これらは、いずれの様式であっても放出を遅延または遅滞させることを意図しない。
【0093】
速放担体は、適切な医薬賦形剤を含み、グルココルチコイドの迅速な溶解を提供する様式でインビトロおよびインビボにて溶解媒体にグルココルチコイドを提示する。速放部分は、それ自体公知の技術により処方され、例えば以下のようなものである。
【0094】
グルココルチコイドの微細に分割された/微小化された粒子は、水溶性の医薬的に許容され得る賦形剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルデンプン、天然デンプン、微結晶セルロースおよびセルロースガムと十分に混合される。存在するならば、これは、通常、組成物の全重量に基づいて0.5重量%〜10重量%、例えば約1%〜約9%、例えば2%〜約8%、例えば3%〜約7%、例えば4%〜約6%、例えば約5%の濃度で用いられる。マンニトールおよびラクトースのような異なる医薬賦形剤は、賦形剤として特に適切であることが見出されている。所望により適切な造粒液を用いて造粒し、乾燥し、粉砕した後に、所望により適切な結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、着色料またはその他の適切な物質と混合し、組成物の適切な速放部分を形成する。速放部分は、層状錠剤の別個の層に、または乾燥被覆錠剤の外側の層として圧縮により形成できる。
【0095】
速放部分を処方する別の方法は、まず、グルココルチコイドの溶液を、適切な医薬賦形剤、例えばラクトース、マンニトールもしくは任意のその他の適切な賦形剤上におき、上記と同様にするか、またはまず、例えばポリエチレングリコールのような適切な賦形剤、適切なポロキサマーもしくは任意のその他の適切な賦形剤中にグルココルチコイドの固溶体を作製し、上記と同様にすることである。
【0096】
速放部分は、粉末混合物または粉末造粒の形態であることもでき、徐放部分と混合して、カプセルまたはサシェ中に分配する。これは、小さいペレットに処方し、徐放ペレットと混合して、カプセル中に分配してもよい。速放部分と徐放ペレットとの混合物は、適切な医薬賦形剤と均質な混合物に混合した後に、錠剤に圧縮できる。
速放部分は、グルココルチコイドの徐放錠剤または徐放ペレットを、グルココルチコイドを含有する迅速溶解コーティングで被覆することにより処方してよい。
【0097】
上記のように、速放部分または成分は、例えば頬側投与用もしくはその他の口腔粘膜への投与用の薄膜の形態の例えば粘膜付着性組成物のような別個の投与単位であってもよい。
これは、鼻腔への投与を意図する剤形、例えば鼻スプレー組成物の形態であり得るか、または直腸投与用に、例えば坐剤のような固体直腸組成物もしくはレクチオール(rectiol)のような半固体直腸組成物もしくは直腸溶液のような流体直腸組成物に設計し得る。
肺、気管支または呼吸粘膜および上皮への投与のために、組成物は、吸入器または粉末吸入器の形態であり得る。
【0098】
本発明による組成物の徐放部分またはキットの徐放成分
徐放部分は、活性物質としてのグルココルチコイドを、医薬的に許容され得る賦形剤または担体(本明細書において「徐放担体」ともいう)中に含んで、インビトロでのグルココルチコイドの延長された放出/溶解と、医薬組成物が患者に投与された後に、胃腸管でのグルココルチコイドの延長された溶解と、インビボでのグルココルチコイドの延長された吸収とを提供する。
【0099】
徐放担体は、適切な医薬賦形剤を含み、長い期間中に適切な速度でグルココルチコイドの溶解を提供するような様式で、インビトロおよびインビボでの溶解媒体にグルココルチコイドを提示する。放出動態はゼロ次、1次または混合1次-ゼロ次に従い得る。異なる徐放技術の例は、例えば、単回単位(例えばマトリクス錠剤、被覆マトリクス錠剤、層状錠剤、多層被覆単位など)および複数回単位(例えば徐放コーティングを有する単位、徐放マトリクスを有する単位、徐放圧縮コーティングを有する単位、多層コーティングを有する単位など)である。以下に、一般的に用い得る徐放処方技術について記載する。以下に記載される組成物において、当業者は、1つ以上のグルココルチコイドの比較的速い放出を生じる速放部分をどのようにして組み込むかを認識している。例えば、このような部分は、速放のためのグルココルチコイドを含む最も外側のコーティング層に組み込むことができるか、2層もしくは多層錠剤において別個の層に組み込むことができるか、または放出遅延剤を含まずに処方されたペレットの形態で組み込むことができる。徐放部分は、例えば以下のようなそれ自体既知の方法により処方される。
【0100】
グルココルチコイドは、水不溶性多孔質マトリクスに包埋でき、そこからグルココルチコイドは、孔をとおして拡散により放出される。このような多孔質マトリクスは、不溶性プラスチック材料、例えば、孔を形成するための適切な賦形剤と所望により一緒にPVC、ステアリン酸、パラフィンまたはその他の適切な不溶性材料から作製でき、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量、または例えば約0.01%〜約10%、例えば約0.05%〜約9%、例えば約0.1%〜約8.5%、例えば約0.15%〜約8%、例えば約0.2%〜約7.5%、例えば約0.25%〜約7%、例えば約0.3%〜約6.5%、例えば約0.35%〜約6.0%、例えば約0.4%〜約5.5%、例えば約0.45%〜約5.0%の量で存在し得る。
【0101】
適切な多孔度は、例えば多くて約50%、例えば多くて約45%、例えば多くて約40%、例えば多くて約35%、例えば多くて約30%、例えば多くて約25%、例えば多くて約20%、例えば多くて約15%、例えば多くて約10%、例えば多くて約5%、例えば多くて約1%であり得る。
【0102】
グルココルチコイドは、水不溶性マトリクスに包埋されてもよく、そこからグルココルチコイドは、マトリクスの段階的侵食による溶解のために利用できるようになる。このような侵食性マトリクスは、その他の適切な医薬賦形剤と所望により一緒に混合された適切な脂質または難溶性もしくは不溶性の医薬賦形剤の成形体から作製でき、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量、または例えば約0.01%〜約10%、例えば約0.05%〜約9%、例えば約0.1%〜約8.5%、例えば約0.15%〜約8%、例えば約0.2%〜約7.5%、例えば約0.25%〜約7%、例えば約0.3%〜約6.5%、例えば約0.35%〜約6.0%、例えば約0.4%〜約5.5%、例えば約0.45%〜約5.0%の量で存在し得る。
【0103】
グルココルチコイドは、膨潤性親水性ゲルマトリクスに包埋されてもよく、そこからグルココルチコイドは、マトリクスをとおしての拡散およびマトリクスの侵食により放出される。このようなマトリクスは、通常、例えば適切な医薬賦形剤と混和され、錠剤に処方されたヒドロキシプロピルメチルセルロースのような改変セルロース材料を含む。親水性ゲルマトリクス用のその他の適切な賦形剤の例として、限定されないが、メタクリル酸コポリマー、高分子量ポリオキシエチレンおよびポロキサマーを挙げることができ、これらは、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量、または約0.01%〜約10%、例えば約0.05%〜約9%、例えば約0.1%〜約8.5%、例えば約0.15%〜約8%、例えば約0.2%〜約7.5%、例えば約0.25%〜約7%、例えば約0.3%〜約6.5%、例えば約0.35%〜約6.0%、例えば約0.4%〜約5.5%、例えば約0.45%〜約5.0%の量で存在し得る。
【0104】
グルココルチコイドは、適切な溶解特性を有する固体形状、例えば錠剤またはペレットに処方して、次いで、放出速度制御膜、例えば膜もしくは膜の孔をとおしての活性物質の拡散速度を制御する膜で被覆することもできる。このような膜は、例えば、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、糖、塩化ナトリウムもしくは任意のその他の適切な水溶性物質のような水溶性孔形成物質と、所望により可塑剤とを所望により含有するエチルセルロースまたは任意のその他の適切な膜形成賦形剤で作製できる。
【0105】
本発明による医薬組成物は、第1部分の1つ以上のグルココルチコイドがコーティングとして提供される錠剤の形態であり得る。別の具体的な実施形態において、第1および第2部分の1つ以上のグルココルチコイドは、ペレット、顆粒、ビーズまたは粉末として提供される。
【0106】
よって、投与手段は、速放のための部分と徐放のための部分とをともに経口投与するための製剤であり得る。例えば、経口投与用の組成物は、外側を第2部分(徐放)で被覆された第1部分(速放)を含む錠剤であり得る。経口投与用の組成物は、組成物の第1部分または本発明によるキットの成分を含むカプセルでもあり得る。
好ましくは、組成物は、1日1回の経口投与用の単回単位剤形である。1つ以上のグルココルチコイドは、グルココルチコイドの全量の約15〜約35重量%が投与により速放され、グルココルチコイドの残りの部分が、少なくとも約8時間、例えば少なくとも約12時間の期間中に徐放される経口投与の形態で投与され得る。1つ以上のグルココルチコイドは、グルココルチコイドの一部分を含有するコアを含む単回単位剤形の形態で投与され、該コアは、グルココルチコイドの残りの部分で被覆される。好ましくは、コアは、膨潤性マトリクスタイプのものである。
【0107】
医薬的に許容され得る賦形剤
本明細書の文脈において、「医薬的に許容され得る賦形剤」との用語は、それ自体ではいずれの治療的および/または予防的効果も実質的に有さないという意味において不活性である任意の物質のことをいうことを意図する。このような賦形剤は、許容され得る技術的特性を有する医薬、化粧および/または食品組成物を得ることを可能にする目的を持って加えることができる。
【0108】
本発明による組成物またはキットにおいて用いるための適切な賦形剤の例は、充填剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤などまたはそれらの混合物を含む。本発明による組成物またはキットの個別の部分は異なる目的(例えば速放および徐放)のために用いられるので、賦形剤の選択は、通常、このような異なる使用を考慮して行われる。当業者は、問題の具体的な剤形に依存して、適切な選択である医薬的に許容され得る賦形剤の種類を認識している。適切に用いるためのその他の医薬的に許容され得る賦形剤は、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート化剤、着色料、錯化剤、乳化剤および/または可溶化剤、矯味矯臭剤および香料、保水剤、甘味料、湿潤剤などである。
【0109】
適切な充填剤、希釈剤および/または結合剤の例は、ラクトース(例えばスプレードライラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース、Tabletose (登録商標)、種々のグレードのPharmatose (登録商標)、Microtose (登録商標)またはFast-Floc (登録商標))、微結晶セルロース(種々のグレードのAvicel (登録商標)、Elcema (登録商標)、Vivacel (登録商標)、Ming Tai (登録商標)またはSolka-Floc (登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース、L-ヒドロキシプロピルセルロース(低置換度)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC) (例えばShin-Etsu, Ltd のMethocel E、FおよびK、Metolose SH、例えば4,000 cpsグレードのMethocel EおよびMetolose 60 SH、4,000 cpsグレードのMethocel FおよびMetolose 65 SH、4,000、15,000および100,000 cpsグレードのMethocel K、ならびに4,000、15,000、39,000および100,000グレードのMetolose 90 SH)、メチルセルロースポリマー(例えばMethocel A、Methocel A4C、Methocel A15C、Methocel A4M)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよびその他のセルロース誘導体、スクロース、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプンまたは化工デンプン(バレイショデンプン、トウモロコシデンプンおよびコメデンプンを含む)、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、コラーゲンなどを含む。充填剤、希釈剤または結合剤は、例えば、リン酸カルシウム、二塩基性硫酸カルシウム二水和物、セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、ケイ化微結晶エチルセルロース、フマル酸ヒプロメロース、ラクトース、中鎖トリグリセリド、ポリメタクリレート、塩化ナトリウム、ソルビトール、二酸化チタンおよびデンプンであり、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量で存在し得る。
【0110】
本発明による医薬賦形剤は、本明細書に記載され、本明細書に記載される量で互いに独立した量での任意の混合物で存在し得る。
【0111】
希釈剤の具体的な例は、例えば炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、フラクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、スクロース、糖などであり、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量で存在し得る。
【0112】
崩壊剤の具体的な例は、例えば、アルギン酸またはアルギン酸塩、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびその他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、デンプン、α化デンプン、カルボキシメチルデンプン(例えばPrimogel (登録商標)およびExplotab (登録商標))などであり、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量、または約0.01%〜約10%、例えば約0.05%〜約9%、例えば約0.1%〜約8.5%、例えば約0.15%〜約8%、例えば約0.2%〜約7.5%、例えば約0.25%〜約7%、例えば約0.3%〜約6.5%、例えば約0.35%〜約6.0%、例えば約0.4%〜約5.5%、例えば約0.45%〜約5.0%の量で存在し得る。
【0113】
結合剤の具体的な例は、例えばアカシア、アルギン酸、寒天、カルシウムカラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液状グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG、ポビドン、α化デンプンなどである。
【0114】
流動促進剤および滑沢剤も組成物に含まれ得る。これらの例は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはその他のステアリン酸金属塩、タルク、ろうおよびグリセリド、軽油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイドシリカ、硬化植物油、トウモロコシデンプン、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、硫酸アルキル、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、タルクなどを含む。流動促進剤または滑沢剤は、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.01%〜約10%、例えば約0.05%〜約9%、例えば約0.1%〜約8.5%、例えば約0.15%〜約8%、例えば約0.2%〜約7.5%、例えば約0.25%〜約7%、例えば約0.3%〜約6.5%、例えば約0.35%〜約6.0%、例えば約0.4%〜約5.5%、例えば約0.45%〜約5.0%の量で存在できる。
【0115】
本発明の組成物または固体剤形に含まれ得るその他の賦形剤は、例えば矯味矯臭剤、着色料、風味隠蔽剤、pH調整剤、緩衝剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿度調整剤、界面活性剤、懸濁化剤、吸収増進剤、調節放出のための物質、水などであり、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量、または例えば約0.01%〜約10%、例えば約0.05%〜約9%、例えば約0.1%〜約8.5%、例えば約0.15%〜約8%、例えば約0.2%〜約7.5%、例えば約0.25%〜約7%、例えば約0.3%〜約6.5%、例えば約0.35%〜約6.0%、例えば約0.4%〜約5.5%、例えば約0.45%〜約5.0%の量で存在し得る。
【0116】
本発明による組成物またはキットの成分は、フィルムコーティング、腸溶コーティング、調節放出コーティング、保護コーティング、抗付着性コーティングで被覆されてもよい。
【0117】
本発明による組成物(またはその部分)は、例えば1つ以上のグルココルチコイドの徐放に関する適切な特性を得るために被覆されてもよい。コーティングは、速放のための1つ以上のグルココルチコイドを含有する易溶解性フィルムとして用いてもよい。コーティングは、1つ以上のグルココルチコイドのいずれの不適切な風味を隠蔽するために用いてもよい。コーティングは、単回投与剤形(例えば錠剤、カプセル剤)上に用いてもよいか、またはポリデポー(polydepot)剤形もしくはその個別の単位上に用いてもよい。
【0118】
適切なコーティング材料は、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリル酸ポリマー、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、セルロースアセテートフタレート、ゼラチン、メタクリル酸コポリマー、ポリエチレングリコール(Macrogol)、シェラック(shellac)、スクロース、二酸化チタン、カルナウバろう、ミクロクリスタリンワックス、モノステアリン酸グリセリル、ゼインであり、組成物の製造プロセスにおいて用いられる原料の全重量もしくは全コーティング組成物の重量の例えば約0.5%〜約95%、例えば約1%〜約90%、例えば約5%〜約85%、例えば約10%〜約80%、例えば約15%〜約75%、例えば約20%〜約70%、例えば約25%〜約65%、例えば約30%〜約60%、例えば約35%〜約55%、例えば約40%〜約50%、例えば約45%の量、または例えば約0.01%〜約10%、例えば約0.05%〜約9%、例えば約0.1%〜約8.5%、例えば約0.15%〜約8%、例えば約0.2%〜約7.5%、例えば約0.25%〜約7%、例えば約0.3%〜約6.5%、例えば約0.35%〜約6.0%、例えば約0.4%〜約5.5%、例えば約0.45%〜約5.0%の量で存在し得る。
【0119】
可塑剤およびその他の成分を、コーティング材料に加えてよい。同じかまたは異なる活性物質を、コーティング材料に加えてもよい。
【0120】
本発明による組成物の製造プロセスにおいて用いる溶媒は、水性溶媒、例えば所望によりアルコール、例えばメタノールまたはエタノールを補った水であり得る。溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタンなどのような有機溶媒でもあり得る。
【0121】
よって、本発明による組成物は、以下の成分を含み得る(ここで、パーセンテージは、組成物の製造において用いられる全ての原料の全重量の%として示す):
【0122】
【表9】

【0123】
本発明による組成物の製造プロセスにおいて用いられる溶媒は、全体的にまたは部分的に蒸発し得ることが理解される。上記の組成物は、20〜30%の範囲の第1速放部分と第2徐放部分との比率、例えばグルココルチコイドの全量の約25%のコーティング(第1部分)のためのグルココルチコイドと、グルココルチコイドの全量の70〜80%、例えば約75%のコア(第2部分)とを有し得る。コーティング組成物において用いられるフィルム形成物質は、ポリビニルアルコール、マクロゴール、タルクおよび酸化チタンを含み得る。
【0124】
本発明による組成物が、任意の組み合わせの賦形剤で構成され得ること、およびこれらの賦形剤の量は、本明細書に開示される任意の間隔にあり得ることも明確に理解される。
【0125】
図面がY軸上でデルタの変化を示す場合、これらの変化は、ベースラインと記載される訪問(1週間、4週間、8週間および12週間)との間のデルタの絶対値である。ベースラインは、対象者が試験の無作為化部分に入ったとき、すなわち1日3回(TID)の従来のヒドロコルチゾン補充での4週間の導入の後と定義される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】1〜12週間の範囲にわたって研究したベースラインからの体重変化と、OD (1日1回投与)とTID (1日3回投与)との間で観察された差とを示す。この図は、ODヒドロコルチゾン組成物が、ベースラインと比較して12週間後に0〜6kgの体重の減少を与えることを示す。
【図2】OD (1日1回投与)とTID (1日3回投与)との間の、第12週での体重(BW)変化における最終的な差を示す。ODヒドロコルチゾン組成物は、12週間の処置の後に0.6 kgの体重減少と関連することに注目されたい。
【図3】ベースライン値からの偏差およびOD (1日1回投与)とTID (1日3回投与)との間のSBP (収縮期血圧)としてのITT (包括解析)研究における血圧を示す。この図は、ODヒドロコルチゾン組成物が、従来のTID投与計画と比較して5.5 mmHgの収縮期血圧の低減と関連することを示す。
【図4】ベースライン値からの偏差およびOD (1日1回投与)とTID (1日3回投与)との間のDBP (拡張期血圧) としてのITT (包括解析)研究における血圧を示す。この図は、ODヒドロコルチゾン組成物が、従来のTID投与計画と比較して2.3 mmHgの拡張期血圧の低減と関連することと示す。
【図5】ODとTID期間との間の血圧の変化(Δod−Δtid)を示す。統計は、期間による効果の調整後である。
【図6】ベースライン値とOD (1日1回投与)およびTID (1日3回投与)との比較における血糖濃度およびHbA1c濃度を示す。12週間後に従来のTID投与計画と比較して、ODヒドロコルチゾン組成物についてHbA1cがより低いことに注目されたい。
【図7】12週間の処置後のTCおよびLDL-C濃度の変化を示す。12週間後に従来のTID投与計画と比較して、ODヒドロコルチゾン組成物についてLDL-Cがより低いことに注目されたい。
【図8】12週間後のベースライン値とOD (1日1回投与)およびTID (1日3回投与)との比較における、骨吸収マーカーであるオステオカルシンと、骨形成マーカーであるPINPの増加を示す。12週間後に従来のTID投与計画と比較して、ODヒドロコルチゾン組成物についてオステオカルシンがより高く、PINPがより高いことに注目されたい。
【図9】ITT (包括解析)研究において生活の質と心理的全般的幸福指数(Psychological General Well-Being;PGWB)とを評価するために用いた質問票からの結果を示し、この結果は、不安(Anxiety;Anx)、消沈した気分(Depressed mood;Depr)、正の幸福感(Positive well-being;幸福感)、自己制御(Self-Control;SelfC)、全身の健康(General Health;GH)、活力(Vitality;Vit)および最後に評価の総計(合計)からの結果を示し、od (1日1回投与)とtid (1日3回投与)との間の差を示す。12週間後に従来のTID投与計画と比較して、ODヒドロコルチゾン組成物について心理的全般的幸福指数(PGWB)が改善されていることに注目されたい。
【図10】ITT (包括解析)における疲労影響尺度(Fatigue Impact Scale;FIS)の結果を示す。FIS質問票は、認識疲労、身体疲労および心理社会的機能において示される疲労および幸福感に対するその影響を評価するためにも用い、全ての因子は、OD (1日1回投与)とtid (1日3回投与)との間で比較した。12週間後に従来のTID投与計画と比較して、ODヒドロコルチゾン調製物について認識機能、身体機能および合計のFISスコアが改善されている(負の評点がより低い)ことに注目されたい。
【図11】Bland Altmanプロットを示す。主に、患者の群のうちでより高い範囲の血圧の患者が、血圧が最も著しく低減した患者であった。
【図12】実施例において行い、報告する臨床研究についての目標プロファイル基準とその充足度を示す。結果は、フォーマットxx/yy (zz) (xxは、基準を充足するシミュレーションした患者の数であり、yyは、シミュレーションした患者の全数であり、zzは充足のパーセンテージである)に従って示す。充足度は、投与の時間と無関係である。なぜなら、全ての基準は、投与と関連するからである。
【図13】1日1回の処置と1日3回の従来の処置とについての血漿コルチゾール濃度-時間プロファイルを示す。
【図14】実施例で報告する臨床研究に従う、健常ボランティアと1日1回処置とについての血漿コルチゾール濃度-時計時間プロファイルを示す。50% PIは50%予測区間であり、10-90% CI/PIは、10〜90%信頼区間/予測区間である。
【実施例】
【0127】
本発明を、以下の限定しない実施例においてさらに説明する。
試験製品
薬物製品は、2つの強度、すなわち錠剤あたり5mg (ERコアがIRコーティングで被覆されている)および20 mg (ERコアがIRコーティングで被覆されている)のヒドロコルチゾンの白色、円形(直径8mm)で凸型の調節放出錠剤である。
ER=徐放
IR=速放
完全な組成を、以下の表に示す。
【0128】
【表10】

【0129】
製剤は、ヒプロメロースに基づく膨潤性マトリクスタイプのものである。直接圧縮法を選択した。
コア錠剤:ヒドロコルチゾン、ヒプロメロース、微結晶セルロース、α化デンプン、シリカおよびステアリン酸マグネシウムを混合し、破砕に対する耐性が高い錠剤に圧縮する。錠剤は、円形で凸型の錠剤である。
コア錠剤を、ヒドロコルチゾンおよびフィルム形成物質(Opadry (登録商標))で被覆して、速放のためのヒドロコルチゾンを得る。コーティング組成物で用いたフィルム形成物質は、よって、ポリビニルアルコール、マクロゴール、タルクおよび酸化チタンを含み得る。
各賦形剤の機能を、以下の表に示す。
【0130】
【表11】

【0131】
以下のものを含有する比較製品であるヒドロコルチゾン錠剤(Hydrocortone、Merck Sharp & Dome):
ヒドロコルチゾン10 mg、(MSD)。
191.1 mg ラクトース一水和物
ステアリン酸マグネシウム
トウモロコシデンプン
【0132】
臨床研究
方法
研究は、非盲検の対照あり無作為化2群2期12週間のクロスオーバー多施設試験として行った。
導入:導入の第1日目、例えば参加の日に、対象者は、病歴、身体検査、血圧、心拍数、ECG、通常の臨床化学および血液学的測定を含む完全な臨床検査を受けた。1日2回(b.i.d.)投与計画の患者は、全1日ヒドロコルチゾン用量を同じに維持したまま、1日3回(t.i.d.)投与計画に移行した。4週間の導入期間中に、投与計画の変更の安全性および許容度を、少なくとも1回、かつ次の訪問の1週間前までに電話による連絡により評価した。
【0133】
患者は、第I期の研究の第1日に、従来のt.i.d. (1日3回)または新規な1日1回(o.d.)療法に無作為化された。研究部門Iの患者は、次いで、24時間の間に標準化された施設内(in-house)の薬物動態(PK)サンプリングを受けて、o.d.またはt.i.d.投与計画の単一投与PKを評価し、研究部門IIの患者は、第1〜2日に単一投与PKの軽減PKサンプリングスキームを受け、第7〜8日に複数投与PKサンプリングのために戻ってきた。
患者は、指定された処置を12週間継続した。患者は、研究薬物の調剤、有害事象(AE)評価および日周疲労評点を含む患者の質問票の回収のために4週間ごとに戻ってきた。12週間の研究期間後に、患者は、完全な臨床検査、実験室サンプリングおよび日周疲労評点を含むその他の評価を受けた。研究部門Iの患者について、さらなる軽減PKサンプリングを最初の0〜10時間に施設内で行い、患者は、24時間試料(すなわち複数投与PK)のために戻ってきたが、研究部門IIの患者は、単一投与PKの軽減PKサンプリングスキームをクロスオーバー後の第1〜2日に受け、複数投与PKサンプリングのために第7〜8日に戻ってきた。他方の無作為化された処置(t.i.d.または新規なo.d.療法)へのクロスオーバーの後に、別の24時間施設内PKサンプリング(複数投与)を、研究部門Iで行ったが、研究部門IIの患者は、単一投与PKの軽減PKサンプリングスキームを第1〜2日に受け、患者は、複数投与PKサンプリングのために第7〜8日に戻ってきた。
【0134】
患者は、指定された第2の無作為化された処置をさらに12週間継続し、研究薬物の調剤、AE評価および日周疲労評点(視覚的アナログ尺度[VAS]、午前、正午、午後)を含む患者の質問票の回収のために4週間ごとに戻ってきた。12週間の研究期間後に、患者は、完全な臨床検査、実験室サンプリングおよび日周疲労評点を含むその他の評価を受けた。研究部門Iの患者は、別の軽減PKサンプリング(0〜10時間施設内および24時間試料のための再度の訪問)、すなわち複数投与PKを受けた。
【0135】
研究の流れ
【化1】

【0136】
包括解析(ITT)集団は、研究投薬の少なくとも1の投与を受け、いずれかの処置期間中に全てのPKサンプリングを含む1次的効力変数の評価を受けた全ての無作為化された患者からなる。
パー・プロトコル(PP)集団は、全ての治験計画違反者を除いたITT集団における全ての患者からなる。
【0137】
試験群における人口統計
患者の平均年齢は47歳であり、19歳〜71歳の範囲であった(ITT集団)。患者の59パーセントが男性であった。
平均体重は80 kgであり、54 kg〜121 kgの範囲であった。平均肥満度指数(BMI)は26.2 kg/m2であり、18.6 kg/m2〜37.3 kg/m2の範囲であった。
平均血圧は124/76 mm Hgであり、平均心拍数は66 bpmであった。異常なECGは、ベースラインにて7名の患者(11%)で記録された。
11名の患者(18%)がタバコ使用者であった。妊娠可能な年齢の女性はいずれも妊娠試験で陽性を示さなかった。
【0138】
ベースラインにて、患者の補充用量は、1日あたり20 mg (12.7%)、25 mg (9.5%)、30 mg (57.1%)または40 mg (20.6%)であった。導入での1日用量は、研究開始前に補充用量として分配した。補充用量は、1日あたり2(55%)または3(45%)の錠剤として服用された。
ベースラインにて、患者の11名(17.2%)が糖尿病と診断され、11名(17.5%)が高血圧と診断された。
【0139】
診断および参加のための主な基準
- 男性および女性:年齢18歳以上
- 以前(例えば6ヶ月を超えて前)に原発性副腎不全と診断され、研究に入る前に少なくとも3ヶ月間、安定な1日グルココルチコイド補充用量を受けている。
- 20、25、30または40 mgの全1日用量の経口ヒドロコルチゾン補充療法用量
- 研究に参加するために署名されたインフォームドコンセント
【0140】
処置の期間
研究の期間は、パートIで28週間、およびパートIIで30週間であった。
【0141】
試験製品、用量および投与の形態
ヒドロコルチゾン、経口錠剤(調節放出)、20および5mg。
ヒドロコルチゾン調節放出錠剤を、絶食状態で午前8時にo.d.で経口投与した。
【0142】
試験全体、すなわち導入期間と両方の12週間の期間において、患者のヒドロコルチゾンの1日用量は、以下のようにして投与した:
【表12】

【0143】
導入期間中に、対象者は、参加時に対象者が受けていたのと同じ用量を受けたが、b.i.d.のものはt.i.d.に変更した。
【0144】
参照療法、用量および投与の形態
参照薬物(ヒドロコルチゾン、10 mg)は、t.i.d. (1日3回;午前8時、午前12時および午後4時)で経口投与した。午前の用量は、絶食状態で投与した。試験全体、すなわち導入期間と両方の12週間の期間において、患者のヒドロコルチゾンの1日用量は、以下のようにして投与した:
【表13】

【0145】
評価の基準
1次効力評価
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来の1日3回補充療法との間での、全ての対象者(研究部門I+II)についての全S-コルチゾールAUC0-24hの差
【0146】
2次効力評価
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来の1日3回補充療法との間での、研究部門IおよびIIならびに組み合わせたI+IIにおける単一投与についての全S-コルチゾール Css、AUC0-∞、C6h、C7h、Tfirst、Cfirst、Tmax、T200、AUC0-4h、AUC4-12h、AUC6-12h、AUC12-24hの差。
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来の1日3回補充療法との間での、研究部門IおよびIIならびに組み合わせたI+IIにおける複数投与についての全S-コルチゾール Css、AUC0-∞、C6h、C7h、Tfirst、Cfirst、Tmax、T200、AUC0-4h、AUC4-12h、AUC6-12h、AUC12-24hの差。
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来の1日3回補充療法との間での、研究部門IおよびIIならびに組み合わせたI+IIにおける介入疾病投与計画についての全S-コルチゾールCss、AUC0-∞、Tfirst、Cfirst、Tmax、T200、AUC0-4h、AUC4-12h、AUC6-12h、AUC12-24hの差。
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来のt.i.d.補充療法との間での、許容度および安全性の差。
- 従来のt.i.d.補充療法と比較した新規な組み合わせ調節放出製剤の介入疾病投与計画の間の許容度および安全性の差。
【0147】
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来のt.i.d.補充療法との間での、SF36、疲労影響尺度、心理的全般的幸福指数(PGWB)による幸福感の差
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来のt.i.d.補充療法との間での、日周疲労評点(VAS尺度)の差
- 新規な組み合わせ調節放出製剤と、従来のt.i.d.補充療法との間での、患者の嗜好性および遵守性の差
- 従来のt.i.d.補充療法と比較した新規な組み合わせ調節放出製剤の介入疾病投与計画の間の患者の嗜好性の差
- 従来のt.i.d.補充療法と比較した新規な組み合わせ調節放出製剤の間の24時間尿中遊離コルチゾール排泄の差。
【0148】
薬物動態
この研究において、経時的なコルチゾールの血漿曝露は、新規な調節放出剤形を用いるo.d.処置と、従来の錠剤を用いるt.i.d.処置との間で異なった。特に、早期の曝露は、より迅速であり、t.i.d.投与よりもo.d.投与後の最初の4時間の間維持された。このことは、CfirstおよびT200の同様の値と、最初の時間中のより高い血漿曝露(AUC0-4h)とにより示された。剤形の制御放出部分は、1日の間にいずれの深い経由(through)値を示すことなく血漿濃度プロファイルの持続をもたらす。午後遅く、夕方および夜に、コルチゾールの血漿曝露は、OD処置よりもt.i.d.について著しくより高かった。よって、原発性副腎不全(AI)の患者において、o.d.処置と比較した従来のt.i.d.処置と比較して、これらのアジソン病(AD)患者において健常個体のコルチゾール概日日周プロファイルに著しくより類似したコルチゾールの血漿プロファイルをもたらした。3ヶ月の処置の後に既に、ヒドロコルチゾンの同じ経口用量を用いる生理的により適切なコルチゾールプロファイルへのこの変化は、効果、安全性および生活の質についての変数に対して肯定的な方向に影響した。
【0149】
許容度、嗜好性、遵守性および安全性
患者の大部分(53.4%)は、処置は同等に良好に許容されたと評価したが、12週間での患者の嗜好性についての質問票は、患者の85%が、o.d.処置の利益を大きいかまたは非常に大きいと評価したことを示した。研究期間にわたって、投与された平均通常コルチゾール用量は、o.d. (2572 mg)およびt.i.d.処置(2552 mg)中に同様であった。有害事象の頻度および重篤度は、2つの処置期間で是認され(smiling)、このことは、新しいo.d.処置が、t.i.d.で投与されるヒドロコルチゾンと等しく安全であることを示した。
【0150】
研究特異的安全性パラメータ
上記のAEの収集に加えて、以下のパラメータを収集して、従来の療法と比較した新規な組み合わせ調節放出製剤の安全性および許容度を比較した。
- 骨形成(オステオカルシン)および骨吸収マーカー(PIPC)
- グルコース恒常性(空腹時血漿グルコース、空腹時血清インスリン、HbA1c、計算されたインスリン抵抗性)
- 血圧(外来)
- 血清電解質(S-Na、S-K、S-Ca)
- 血清脂質(S-TG、S-コレステロール、S-HDL、S-LDL)
- 体重
【0151】
体重の減少
o.d.処置中に、平均体重およびBMIが減少した。この傾向は、3ヶ月以内ほど早期に観察されるとは予期されなかった。体重減少は全体的な効果ではなかったが、より高いベースライン体重を有する場合に主に観察された。このことも、この知見が、グルココルチコイド不足の影響よりもむしろ新しい投与計画のより好ましい代謝効果によるという上記の理由づけを支持する。さらに、グルココルチコイド補充の用量低減の以前の研究では、体重低下を観察できなかった。よって、o.d.処置を用いて生じる日周プロファイルは、この研究において観察された著しい体重低下の原因である可能性がある。
【0152】
【表14】

【0153】
血圧
平均収縮期血圧は、ベースラインでの123.5 mm Hgから、o.d.処置中に12週間で119.8 mm Hgに減少したが、これは、t.i.d.処置中に12週間で125.4 mm Hgに増加した。12週間にわたる処置同士での変化における差(-5.5 mm Hg)は、統計的に有意であった(p=0.0001)。同様に、平均拡張期圧は、ベースラインでの75.9 mm Hgから、o.d.処置中に12週間で74.5 mm Hgに減少したが、これは、t.i.d.処置中に12週間で77.0 mm Hgに増加した。12週間にわたる変化における処置同士の差(-2.3 mm Hg)は、統計的に有意であった(p=0.0343)。反対に、平均心拍数は、ベースラインでの65.2 bpmから、o.d.処置中に12週間で67.4 bpmに増加したが、これは、t.i.d.処置中に12週間で64.5 mm Hgに減少した。OD処置中の心拍数の増加は、おそらく、コルチゾンの交感(sympaticus)効果を原因とした。血圧の低減は、意外なことである。なぜなら、ヒドロコルチゾンの用量を1日あたり30 mgから15 mgに低減しただけの良好に行われた試験は、血圧に対するいずれの影響も示すことができなかったからである(19)。o.d.中のこれらの血液動態の変化についての唯一のもっともらしい説明は、血漿コルチゾールプロファイルの変化である。収縮期および拡張期の血圧の両方におけるこれらの大きい変化は、副腎不全の患者における長期の転帰に重要な影響を有する可能性がある。なぜなら、現在のデータは、この患者集団が、早期の心血管の死を主な原因として(3、5)余命が低減されていることを示すからである。さらに、これらの変化の大きさは、臨床的に著しい。なぜなら、これらは、1つの降圧薬を加えても等しいからである。
【0154】
血圧の改善は、この患者集団において重要である。なぜなら、グルココルチコステロイドを用いる現在の補充療法は、心血管疾患と関連するからである。血圧の改善は、糖尿病DMの13名の患者の部分集合においてもさらにより著しかった(収縮期血圧の変化の差が-3.9 mm Hg、拡張期圧の変化が-3.9 mm Hg、ともにo.d.処置が好ましい)。アジソン病およびDMの両方の患者は、アジソン病単独の患者よりも高い死亡率を有し(5)、DMの患者における高血圧は、大血管性および微小血管性の糖尿病合併症を導く最も重要な因子の1つである。重要な知見は、起立性血圧または低血圧に関連する症状が報告されなかったことであり、患者の群のうちでより高い範囲の血圧を有する患者が主に低減を有した患者であったという事実である(図11のBland Altmanプロットを参照)。これらの支持データは、血圧の低減が、グルココルチコイド不足の症状であるという可能性を排除する。
【0155】
【表15−1】

【0156】
【表15−2】

【0157】
グルコースおよびHbA1c
HbA1cの変化の差について、o.d.とt.i.d.処置との間で統計的に有意な差があり、このことは、o.d.処置について経時的なグルコースの平均レベルがより低いことを示した。処置群の間でのわずかな差だけが、糖代謝に関するその他のパラメータ(空腹時血漿グルコース、インスリンおよびHOMA指標)について観察された。研究における患者の著しい割合、例えば11名が1型DMを有し、2名の患者が2型DMであった。よって、糖尿病DMの患者の事後分析を行い、これは、空腹時血漿グルコースおよびHbA1cの値のレベルがともに、t.i.d.と比較して、12週間にてo.d.処置で統計的に有意により低かったことを示した。このことは、3ヶ月以内ほど早期に観察されると予期されず、アジソン病とともに1日に複数回のインスリン注射を受ける患者のこの集団における主な知見とみなすことができる。さらに、HbA1c低減の大きさは、将来の心血管罹患率および死亡率を低減する点で臨床的に重要である。糖尿病における影響はさらにより大きく、ここでは、臨床効果は即時に、すなわち研究期間中に既に見られ、患者は、糖尿病のよりよい管理、より低いインスリン用量、より少ない副作用などを報告した。
【0158】
【表16】

【0159】
以下の表は、糖尿病部分集団についてである(11名の1型および2名の2型)。
【表17】

【0160】
脂質
平均S-コレステロールおよびS-LDLの値は、o.d.およびt.i.d.処置の両方の間にベースラインとほぼ同じレベルのままであった。平均S-HDLは、o.d.処置中にベースラインおよび12週間の両方にて1.4 mmol/lであったが、1.5 mmol/lへの増加がt.i.d処置中に12週間で観察された。S-トリグリセリドの平均値は、ベースラインにて1.5 mmol/lであり、o.d.処置中に12週間で1.6 mmol/lまで増加したが、1.4 mmol/lへの減少がt.i.d処置中に12週間で観察された。これらの小さいが著しい変化の背景にある機構は明確でなく、予期できない。糖代謝はo.d.処置中に改善を示したので、予期された変化は、この処置群におけるHDL-コレステロールおよびトリグリセリドについて逆であったと考えられる。しかし、これらの知見は、脂質効果の研究について比較的小さい研究集団による傾向効果の開始である可能性もある。しかし、トリグリセリドの増加は、脂肪分解の増加によるインスリン感受性の増加(例えばより低いHbA1c)により説明でき、よって、糖代謝について観察された効果と調和する。
【0161】
糖尿病の13名の患者の部分集合におけるこれらの脂質の事後分析は、変化の差(o.d.対t.i.d.)が、測定した4つ全ての脂質代謝変数(S-コレステロール、S-LDL、S-HDLおよびトリグリセリド)について小さいことを示した(-0.1、すなわちo.d.群におけるより小さい増加またはより大きい減少)。このことは、3ヶ月以内ほど早期に、かつ13名の対象者だけについて観察されるとは予期されず、患者のこの集団における主な知見とみなすことができる。このことは、これらの患者において観察されるグルコース恒常性に対する大きい有益な効果とも調和する。よって、o.d.処置を用いて生じる日周プロファイルは、この研究において観察された著しい脂質効果の原因であり得る、
【0162】
【表18】

【0163】
脂質−糖尿病のみ−ITT
糖尿病の13名の患者の部分集合におけるこれらの脂質の事後分析は、変化の差(o.d.対t.i.d.)が小さいことを示した。LDL-コレステロールの小さい低減が、全研究群でなく糖尿病集団でのみ、観察された。
【0164】
【表19】

【0165】
骨形成および吸収マーカー
2つの血清骨形成マーカーであるPINPおよびオステオカルシンは増加し、このことは、骨代謝に対する好ましい効果を示した。なぜなら、特に、グルココルチコイド補充療法を受ける患者は、骨量および骨塩量が低減していることが示されているからである。ある可能性のある機構は、血漿コルチゾールレベルの減少であり、別の可能性は、o.d.投与を用いて生じる日周プロファイルである。吸収マーカーが、通常、骨リモデリングの増加において形成マーカーよりも先行することが公知である。
【0166】
【表20】

【0167】
目標プロファイル
図12は、試験した処置が、目標プロファイルとして設定した基準を充足することを示す。図13は、従来の療法と比較した1日1回処置についての平均PKプロファイルを示し、図14は、通常のコルチゾールプロファイルと比較した1日1回処置の比較を示す。
【0168】
【表21−1】

【0169】
【表21−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性グルココルチコイド分泌パターンが減弱または破壊された対象者に1つ以上のグルココルチコイドの有効量を投与するステップを含む、グルココルチコイド療法の1つ以上の副作用を低減する方法。
【請求項2】
1つ以上のグルココルチコイドの投与後のコルチゾールの概日血漿濃度-時間プロファイルが、健常対象者のものを模倣する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与が、1日1回である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
副作用の低減が、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度-時間プロファイルを導く12週間の処置を、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の12週間の処置(全1日用量は2つの処置計画において同じである)と比較することにより決定される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度-時間プロファイルを導く処置が、経口剤形での1日1回の処置である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上のグルココルチコイドが、経口投与の形態で投与され、グルココルチコイドの全量の約15〜約35重量%が、投与により速放され、グルココルチコイドの残りの部分が、少なくとも約8時間、例えば少なくとも約12時間の期間中に調節放出される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上のグルココルチコイドが、グルココルチコイドの一部分を含有するコアを含み、前記コアがグルココルチコイドの残りの部分で被覆されている単回単位剤形の形態で投与される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
コアが、膨潤性マトリクスタイプのものである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
副作用の低減が、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度-時間プロファイルを導く前記処置を受けた内因性グルココルチコイド分泌パターンが減弱または破壊された12名以上の対象者の試験群と、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置計画において同じである)を受けたグルココルチコイド分泌パターンが減弱された12名以上の対象者の比較集団とにおいて決定される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の副作用が、体重増進、心血管危険因子の増加、骨分解の増加、代謝危険因子からなる群より選択される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の副作用またはこのような因子からの複合危険指標の低減が、統計的に有意である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
副作用の低減が、2型糖尿病についての将来の危険性を示す代謝危険因子の低減を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
代謝危険因子が、糖代謝である請求項9に記載の方法。
【請求項14】
代謝危険因子が、HbA1cの低減として測定され、前記低減が、健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度を導く12週間の処置の後に、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、0.1%以上、例えば0.3%以上または0.5%以上である請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
副作用の低減が、体重増進の低減または体重の低減を含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
健常対象者のものを模倣するコルチゾール血漿濃度を導く12週間の処置の後の体重増進が、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、少なくとも0.7 kg低減する請求項12に記載の方法。
【請求項17】
副作用の低減が、収縮期血圧および拡張期血圧の1つ以上を含む心血管危険因子の低減を含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
12週間の処置の後の収縮期血圧が、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、5mmHg以上低減する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
12週間の処置の後の拡張期血圧が、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、2mmHg以上低減する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
副作用の低減が、骨分解の低減を含む請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
骨分解の低減が、骨形成マーカーについての骨マーカーを測定することにより決定され、マーカーであるPINPが、12週間の処置の後に、従来の剤形の同じグルココルチコイドでの1日3回の処置(全1日用量は2つの処置において同じである)と比較して、少なくとも5%以上、例えば7%以上または10%以上増加する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象者が、糖尿病にも罹患している請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
対象者が、インスリン処置を受けたかもしくは受けていないI型またはII型糖尿病に罹患している請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象者が、高血圧、脂質代謝異常、糖代謝、腎機能不全または心筋梗塞、脳卒中もしくはうっ血性心不全による心血管標的器官のような心血管危険因子の存在により心血管の危険性が増加している請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
グルココルチコイド療法で一般的に観察される副作用を低減するための、1日1回投与されるグルココルチコイド組成物。
【請求項26】
速放および徐放組成物である請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
1つ以上のグルココルチコイドが、グルココルチコイドの一部分を含有するコアを含む単回単位剤形の形態で投与され、前記コアが、グルココルチコイドの残りの部分で被覆されている、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
グルココルチコイド療法で一般的に観察される副作用が、グルココルチコイド組成物を1日3回投与した場合に観察される副作用である請求項25〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
1日1回午前中に投与される請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
組成物が1つ以上のグルココルチコイドを含み、グルココルチコイドの全量の約15〜約35重量%が、投与により速放され、グルココルチコイドの残りの部分が、少なくとも約8時間、例えば少なくとも約12時間の期間中に調節放出される請求項25〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
ヒドロコルチゾン等価物として表されるグルココルチコイドの全1日用量が、約1mg/70 kg体重〜約10 mg/70 kg体重、例えば約30 mg/70 kg体重、例えば約5mg/70 kg体重または例えば2.5〜10 mg/70 kg体重である請求項25〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
1つ以上の医薬賦形剤をさらに含む請求項25〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
医薬賦形剤が、例えば充填剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤などまたはそれらの混合物である請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
例えば錠剤の形態にある請求項25〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
投与が、経口経路による請求項25〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
投与が、1つ以上のグルココルチコイドの投与の後に健常対象者のものを模倣するコルチゾールの概日血漿濃度-時間プロファイルを導く請求項25〜35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
副作用の低減が、請求項2〜21のいずれか1項で定義されるとおりであり、かつ/または処置される対象者が、請求項22〜24のいずれか1項で定義されるとおりである請求項25〜36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
十分な副腎能力を有する対象者にグルココルチコイドの有効量を投与するステップを含む、前記対象者における内因性グルココルチコイド分泌パターンの減弱または破壊を治療または予防する方法。
【請求項39】
内因性グルココルチコイド分泌パターンの減弱または破壊が、対象者の概日血漿コルチゾール濃度-時間プロファイルの混乱と関連する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
概日血漿コルチゾール濃度-時間プロファイルの混乱が、甲状腺機能低下症、うつ、断眠、不眠症、睡眠障害、副腎疲労症候群、慢性疲労症候群、肥満、三次性副腎不全、概日リズム睡眠障害、交代勤務、時差ぼけ、肥満、悪液質または慢性ストレスから生じる請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
グルココルチコイドの1日用量(ヒドロコルチゾン等価物として表される)が、約1mg/70 kg体重〜約10 mg/70 kg体重、例えば約30 mg/70 kg体重、例えば約5mg/70 kg体重または例えば2.5〜10 mg/70 kg体重である請求項38〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
1つ以上のグルココルチコイドの投与後のコルチゾールの概日血漿濃度が、健常対象者のものを模倣する請求項38〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
投与が、1日1回である請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
投与が、請求項6〜8のいずれか1項で定義されるとおりである請求項38〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
十分な副腎能力を有する対象者における内因性グルココルチコイド分泌パターンの減弱もしくは破壊を治療または予防するための、24時間サイクル中に1回投与されるグルココルチコイド組成物。
【請求項46】
詳細が請求項38〜44のいずれか1項で定義されるとおりである請求項45に記載の使用のためのグルココルチコイド組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−522816(P2012−522816A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503920(P2012−503920)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002178
【国際公開番号】WO2010/115615
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508078617)デュオコート ファーマ エービー (2)
【Fターム(参考)】