説明

改良されたコーティング方法

本発明は、付着促進剤のコーティングを有する基体を含むシート製品の製造方法であって、カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有するポリマーを含む付着促進剤の溶液又は懸濁液を該基体に塗工する工程を含み、該溶液又は懸濁液が、該基体への溶該液又は懸濁液の塗工条件下では無色であるが、適切な化学的手段の適用により可視的な着色を生ずるインジケータ材料を更に含む、前記製造方法を提供する。この方法は、基体への付着促進剤のコーティングの塗工のモニタリングのための品質管理方法の一部として、利用してもよい。得られるシートは、新規である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたコーティング方法、特に、紙又は類似のシートへ特定付着促進剤のコーティングを塗工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の印刷システムは、最適な性能のために、特定の性質がある紙又は他の基体の使用を必要とする。重要な印刷システムの一つに、Hewlett-Packard Indigoシステムがあり、これは、オフセット液体トナー電子写真工程を利用し、大規模で高ボリュームの印刷に利用される。該システムは、顔料、チャージディレクタ(charge director)、ポリマー及び溶媒を含む液体トナーを使用する。最適な印刷において、該システムは、付着促進剤のコーティングがある紙の使用を必要とする。市販の最初の付着促進剤で、依然としてオフマシン塗工にほぼ独占的に利用されるのは、ポリエチレンイミンであり、これは、いわゆる“サファイア”処理として、商業上利用される。しかしながら、“サファイア”処理は、ある状況では、優れたHP Indigoインク付着性を示すが、これは、コーティングされる紙、塗工量、及び“サファイア”溶液の塗工とその後のHP Indigo印刷間の時間に依存する。したがって、“サファイア”処理紙の保存期間は、可変的である。よって、そのような問題がない、別の付着促進剤の必要性がある。
【0003】
エチレンとアクリル酸の共重合体をベースとする付着促進剤は、例えば、欧州特許第789281号、米国特許第7,279,513号、及び米国特許出願公開第2007/0092695号で公知である。そのような付着促進剤は、無色で、有効である。しかしながら、それらは高価であり、それらの使用は、多くの技術的障害が生じる。本発明者らは、技術的及び商業的な理由の両方で、付着促進剤を非常に低い塗工量で塗工する必要があることを見出した。これは、コーティング工程の品質管理を非常に困難にさせている。一旦基体に選択したコーティング工程を行うと、ポリマーのコーティングが、良好に載置されているのを確認するのが非常に困難であり、それによって、該工程のパラメータを最適化し、かつ使用した装置を較正するのが不可能であることが分かった。
【0004】
タガントは、基体表面に塗工し又は基体本体に導入し、その結果として、検出することができる物質であり、発光性又はリン光性のタガントは、セキュリティ用途での使用で周知である。一般に、そのような発光性又はリン光性のタガントは、放射光の読み取りによってそれらの存在を検出することができる有機分子である(例えば、米国特許第6,402,986号参照)。国際公開公報第2005/014928号は、塗工紙に一般に使用する粘度又は澱粉コーティング材に導入するタガントとして、セキュリティ用の蛍光色素、蛍光体、又は顔料の使用について記載する。さらに、国際公開公報第2004/038390号は、固体基体に堆積した液状組成物の質量分布の特性評価及び最適化のためのリン光性のタガントの使用であって、主な意図される使用が、石炭、砂、砂利又は塩類等の固体表面への液体の塗工のモニタリングであることについて記載する。国際公開公報第2004/038390号は、該液状組成物を、紙等の固体基体の表面にコーティングすることができるが、実際、そのようなタガントを、付着促進剤と共に紙に塗工する場合、おそらく紙に含まれる蛍光増白剤の存在により、効果がないことが分かったことを明示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上述した不都合に対処する、特定の付着促進剤の十分なコーティングを提供するのに有用な品質管理方法を今般見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、シートの形態の基体へ付着促進剤のコーティングを塗工するための工程のモニタリング方法であって、(1)カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有するポリマーを含む付着促進剤の溶液又は懸濁液を該基体の少なくとも1つの表面に塗工するステップであって、該溶液又は懸濁液が、該基体への該溶液又は懸濁液の塗工条件下では無色であるインジケータ材料を更に含む、該ステップと、(2)次いで、コーティングされた基体のサンプルを取得するステップと、(3)該サンプルに化学的手段を適用して、該化学的手段と該インジケータ材料間の化学反応によって、可視的な着色を生ずるステップと、(4)生じる着色を検査するステップと、を含む、モニタリング方法を提供する。生じる着色は、不適切なコーティングを示す場合、基体表面の十分な塗工が達成されるまで、溶液又は懸濁液の塗工条件を調整することができる。本発明の方法は、定性的に利用すること(すなわち、着色の目視検査によって、広くて均一な塗工を確認すること)、又は、定量的に利用すること(すなわち、生じた着色の強度の測定によって、インジケータ材料の量を決定すること)、及び載置した外挿付着促進剤によって利用することができる。
【0007】
特定の付着促進剤及び特定のインジケータ材料を導入するコーティングを有した、得られるシートは、新規であるので、本発明は、そのようなシート自体を更に提供する。さらに、本発明は、付着促進剤のコーティングを有した基体を含むシート製品の製造方法であって、カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有するポリマーを含む付着促進剤の溶液又は懸濁液を該基体に塗工する工程を含み、該溶液又は懸濁液が、該基体への該溶液又は懸濁液の塗工条件下では無色であるが、適切な化学的手段の適用により可視的な着色を生ずるインジケータ材料を更に含む、前記製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有するポリマーを含む付着促進剤のコーティングを、非常に低い塗工量で、基体に塗工することができ、また、塗工工程においてモニターすることができる。インジケータ材料を含有しない場合、基体の十分な塗工が達成されているか否かを確認するのに使用することはできない。本出願人は、コーティング工程をモニタリングする多くの別の方法を試みた。比較例にある幾つかの詳細は、本明細書中に含まれるが、十分であると分かったものはなかった。本発明は、技術課題に対する唯一の解決策であると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
付着促進剤は、好ましくは、乾燥重量2 gm-2未満(例えば、1 gm-2未満、好ましくは0.25 gm-2未満)の塗工量で塗工される。一般に、実用的な理由から、該付着促進剤は、少なくとも0.01 gm-2の塗工量で塗工される。基体の一方の面又は両面に、コーティングを付与することができる。最適な塗工量は、他のものの中でも当然基体の性質に依存し、高吸収性の基体は、一般に、低吸収性の基体より幾分高い塗工量を必要とする。上述した塗工量は、低いので、一般的な紙シートに塗工する場合、塗工したコーティング材の量は、該シートの重量の統計的変動内にあり、重量法を用いて、塗工後の塗工量を正確に決定することは不可能である。
【0010】
本発明に用いる付着促進剤は、カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有するポリマーを含む。これらの基は、例えば、一般式CH2=CR1-CO2R2(式中、R1は、メチル基、又は特に、水素原子を表し、また、R2は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、特に、メチル基、又は好ましくは水素原子を表す)であるアクリル酸単量体に由来し得る。特に、適切なものは、エチレンとアクリル酸の共重合体である。そのような共重合体は、遊離酸の塩類(例えば、ナトリウム若しくはカリウム塩、又はアンモニア若しくはアミンを有する塩類)の形態で付着促進剤に最も一般的に使用されており、例えば、欧州特許第1 273 975号、米国特許第3,389,109号、及び米国特許第7,279,513号に記載されている。また、アミドの使用も一般的である。該ポリマーの遊離カルボン酸基は、公知の方法によって、塩類、アミド、又はエステル基に変換することができる。当然、適切なポリマーは、一般に無色である。
【0011】
該付着促進剤は、特定のポリマー以外の成分を含んでいてもよい。例えば、該付着促進剤は、ワックス、無機粒子(例えば、シリカ等の顔料)、界面活性剤、及び付加的なポリマー等の成分を含んでいてもよい。一般に、塗工する溶液又は懸濁液は、好ましくは水性ベースであり、該ポリマーが、アンモニア又はアミンによって中和したカルボン酸基を含む場合、わずかにアルカリのpHである。エチレンアクリル酸共重合体のコロイド水分散液の形態の付着促進剤は、市販されている。
【0012】
一般に、付着促進剤は、水性懸濁液の形態で塗工される。適切な分散液は、少なくとも1重量%で、20重量%以下の特定のポリマー(特に、エチレンアクリル酸共重合体)、好ましくは3〜15重量%、特に、6〜11重量%の特定のポリマーを含む。ポリマー粒子は、好ましくは、d0.5値(すなわち、容積による粒子分布の中央値)が、1〜200μ、好ましくは40〜150μ、特に、60〜80μである。容積による粒子分布の最大は、好ましくは30〜200μ、特に、40〜90μの粒子サイズである。
【0013】
該分散液の動粘度(DIN 53015に従って測定)は、好ましくは1〜4mPas、特に、1.5〜2.5mPasである。
【0014】
該溶液又は懸濁液の塗工の後に、得られるシートは、必要に応じて、特定の乾燥工程に供してもよい。あるいは、乾燥は、工程の条件に依存して、直接的に行ってもよい。
【0015】
該インジケータ材料は、該付着促進剤を含む溶液又は懸濁液と基体の両方に適合する材料であり得、適切な色変化インジケータ系の一部を形成する。該付着促進剤を基体に塗工する条件下では無色である(及び、得られるシートの保存及び使用における通常の条件下では、当然無色のままである)が、適切な化学的処理を行う場合に、可視的な着色を生ずる必要がある。ヨウ素酸塩/ヨウ化物インジケータ系の使用が、特に好ましい。したがって、例えば、ヨウ素酸カリウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属塩類は、インジケータ材料として使用してもよい。ヨウ素酸塩は、塗工の際、無色であり、酸性水溶液の存在下でヨウ化カリウムと接触する場合に、強い青色の着色を生ずる。あるいは、ヨウ化物は、インジケータ材料として使用してもよく、化学的手段により、酸性水溶液の存在下ではヨウ素酸塩である。また、他の塩類を使用してもよい。例えば、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩は、酸性水溶液中のヨウ素酸カリウム及びヨウ化カリウムによる処理で、茶色の着色を生ずる。
【0016】
pH指示薬は、他の分類の有用なインジケータ材料である。該pH指示薬は、最初は無色であるが、pHの適切な変化で色を生ずる。例えば、フェノールフタレインを、インジケータ材料として使用してもよく、塗工の際には無色であるが、アルカリによる処理で、ピンク色の着色を生ずる。さらに、pH指示薬系は、例えば、化学的手段として、フェノールフタレイン等のpH感受性インジケータ、及びインジケータ材料として、塩基性のpHを有する塩類(例えば、アルミン酸塩)を使用してもよい。
【0017】
別のインジケータ材料は、例えば、酸化又は還元で異なる原子価状態を生ずる金属カチオンの処理によって、色変化(例えば、硫酸マンガンにおいて、マンガンが+2原子価状態の場合に無色で、+4原子価状態の場合に茶色である)を生ずる、遷移金属塩類を含む。
【0018】
該インジケータ材料は、適切な化学的刺激を適用する場合、当然、十分に強い色変化を生ずる量で含まれるが、該付着促進剤の性能、又は完成シートの他の特性に対して悪影響を与えないことを要する。
【0019】
あらゆる適切な基体は、本発明の工程に使用することができる。また、好ましくは、シートは、紙であるが、樹脂シート材料、例えば、紙の特性をまねた樹脂材料(いわゆる“合成紙”)も使用することができる。紙が基体である場合、一般に、コーティングしていない。コーティングしていない紙とは、付着促進剤のコーティングを塗工する前に、顔料をコーティングしていない紙をいう。そのようなコーティングしていない紙は、特に、その印刷適性、ブロッティング抵抗性、水抵抗性等を改良するために、一般に、サイジング組成物等の無着色の組成物で含浸又は表面処理した紙基体を有する。しかしながら、必要に応じて、コーティングした基体(例えば、顔料/バインダ層を支持する紙基体)を使用してもよい。塗工紙は、ペーパーウェブの一方の面又は両面における表面着色コーティングによって製造される。該紙基体に塗工する該着色コーティングは、通常、少なくとも微細無機顔料(特に、カオリン及び/又は炭酸カルシウム)、及び少なくともバインダ又は接着剤(特に、澱粉又はラテックス)を含む。これらに加えて、場合により、当業者によって通常用いられる添加物、滑りのレオロジー特性を改良する及びコーティング層に特定の特性を付与する機能も含む。塗工紙は、例えば、金属紙又は虹色紙(iridescent paper)であり得る。
【0020】
該基体を形成するシート材料は、最終的な塗工に必要な特性を有し得る。例えば、該シートは、例えば約50gm-2の軽量紙から、例えば約350gm-2の堅い板紙であってもよい。紙の基本重量を変えることに加えて、必要に応じて、紙表面の性質等の他の特性を変えてもよい。該基体は、セキュリティ文書(例えば、紙幣、身分証明書、車両登録証、旅行券、及び文化イベント又はスポーツイベントのチケット)の作製に有用であり得る。そのような文書は、例えば、すき入れ紙を含む特殊なセキュリティ用紙(security paper)に使用することができる。あるいは、樹脂シートをベースにすることができる。セキュリティ用紙は、増感剤、又は、不正改変使用(例えば、漂白剤、溶媒、専用のインクリムーバ等)の企てに対する付加的な予防手段を付与するのに一般に使用される他の従来のセキュリティ用化学物質(security chemicals)を含んでいてもよい。
【0021】
上述したとおり、本発明は、Hewlett-Packard Indigo印刷システムを用いて印刷するシートを提供するのに特に有用であるが、特定の付着促進剤を支持する得られるシートは、他の多くの用途に使用することができる。具体的には、特定の付着促進剤の薄膜を支持するシートは、コーティングしていないシートよりも表面割れの傾向がないと考えられる。
【0022】
該付着促進剤とインジケータ材料とを含む溶液又は懸濁液は、コーティング(特に、非常に低い塗工量の材料)を塗工することが可能な方法によって、塗工することができる。例えば、該コーティングは、サイズプレス又はメタリングサイズプレス(metered size press)、フレキソ印刷又は輪転グラビアコーティング(rotogravure coating)を介して、サイジングプレスを介して、あるいは、通常のフォント液(fount solution)が、付着促進剤溶液に置換される場合、オフセット印刷のダンプニングシステム(dampening system)を用いて、塗工することができる。コーティングの塗工は、オフライン又はオンラインであり得、オフラインでコーティングを塗工する場合、本発明から得られる特定の利益を有する。
【0023】
次の実施例は、本発明を例示する。
【実施例】
【0024】
(実施例1:タガントとしてのフェノールフタレインの使用)
5mlの水を5mlの付着促進剤(DigiPrime (登録商標) DP4450、Michelman社より入手、35%保存溶液)に加えた。また、1gのフェノールフタレインを加え、DP4450中フェノールフタレインの濃度は、10容量%となった。得られる懸濁液の単一液滴を、Conqueror(商標)リサイクルシート100 gsm(すなわち、100gm2の紙重量)に載置した後、平型スパーテルを用いて紙に塗った。濃縮水酸化ナトリウムを加え、明るいピンク色の着色を生じた。
【0025】
上述の試験を、2容量%から0.0002容量%の範囲の5つの異なる濃度のフェノールフタレインを用いて繰り返した。すべての例で、可視的なピンク色の着色を生じ、着色の強さは、フェノールフタレインの濃度の指標となった。
【0026】
(実施例2:タガントとしてのヨウ素酸カリウムの使用)
エチレンアクリル酸共重合体を含む付着促進剤(DigiPrime (登録商標) DP4450、Michelman社より入手、35%保存溶液)の10容量%の水性懸濁液を作製した、この10mlを0.1gのヨウ素酸カリウムに加え、得られる懸濁液を、実施例1で用いたものと同じ紙のシートに、Meyer laboratory社の塗工装置(1kgの重量の#6バー)を用いて、コーティングした。0.1M塩酸中100mlのヨウ化カリウム当たり0.1gの溶液を、該紙の両面の半分に塗工した。標識付着促進剤でコーティングした紙の両面の半分において、青色/黒色の着色を明確にみることができた。コーティングしていない紙の両面の半分では、着色は目に見えなかった。
【0027】
次に、商業規模の印刷装置を用いて、同様の試験を行った。11の付着促進剤DP4450の10%水性懸濁液を作製し、10gのヨウ素酸カリウムを撹拌しながら加えた。商業規模の塗工機(改良されたインキング・ダンピングシステムを有するRyobi社のB3シートオフセット枚葉機)を用いて、100枚の紙をその両面にコーティングした。サンプルシートへの100mlのヨウ化カリウム当たり0.1gの溶液の塗工によって、青色/黒色の着色を生じ、これは、付着促進剤のコーティングが成功したことを示した。処理紙をHP Indigo 3000機で印刷した。インク付着性試験では、優れた結果を示し、実際に、短時間後であっても該紙からインクが除去せず、適切なレベルの付着促進剤が塗工されていることを示した。
【0028】
(比較例)
紙における低塗工量のエチレンアクリル酸共重合体接着促進剤を検出する、種々の代替的な方法について調査した。すべての例において、エチレンアクリル酸共重合体接着促進剤MP4983(Michelman社)のコーティングを、商業的なコーティング方法を用いて、Conqueror(商標)CX22 320 gsm紙に塗工し、処理サンプルを未処理サンプルと比較した。
【0029】
(比較例1:全反射赤外分光法(ATR-FTIR)の利用)
ATR-FTIRを利用して、処理サンプルと未処理サンプル(対照)を検討した。結果は、主としてセルロース及び炭酸カルシウムフィラーによって、種々の強度の吸収の存在を示した。本方法は、サンプル表面のコーティングの存在を検出することができなかった。
【0030】
(比較例2:pH検出の利用)
サンプルの表面pHを測定した。コーティング表面とコーティングしていない対照表面との間に、差異はみられなかった。
【0031】
(比較例3:アクリル酸基の化学的スポット試験)
アクリル酸基のインジケータとして作用することが公知の種々の化学物質を、処理表面及び対照表面に塗工し、そのようなインジケータが、コーティングの存在を確実に示すことができるか否かについて確認した。用いたインジケータは、メタノール中メチルレッド;メタノール中メチルレッドと水酸化ナトリウム;硝酸コバルト;硝酸銅;硫酸鉄;硝酸鉄;硫酸ニッケル;過マンガン酸カリウム及び炭酸ナトリウム;並びに、硝酸銀とアンモニアであった。試験で、コーティングの存在を示した例はなかった。
【0032】
(比較例4:発光性のタガントの利用)
発光性又はリン光性のタガントは、偽造防止用途で頻繁に利用される。一方はクマリン染料ベース、他方は安息香酸ベースのタガント-F有機発光材料と認められる、2つの市販の有機発光性タガントを、InkSure Technologies社(Fort Lauderdale, Florida, USA)から入手した。これらは、1000ppm未満のレベルで、DP4450の懸濁液に含まれていた。試験では、コーティングに導入する場合、タガントを検出することはできなかった。
【0033】
(比較例5:表面光沢の測定)
表面光沢は、紙シートの表面コーティングの存在を検出するのによく用いられる。しかしながら、実施例2に記載の大規模方法(インジケータ材料がコーティングに含有しない場合を除く)によるシートへのコーティングの塗工では、紙の表面光沢の差異を検出することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着促進剤のコーティングを有する基体を含むシート製品の製造方法であって、
カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有するポリマーを含む付着促進剤の溶液又は懸濁液を該基体に塗工する工程を含み、
該溶液又は懸濁液が、該基体への該溶液又は懸濁液の塗工条件下では無色であるが、適切な化学的手段の適用により可視的な着色を生ずるインジケータ材料を更に含む、
前記方法。
【請求項2】
前記付着促進剤が、乾燥重量2 gm-2未満の塗工量で塗工される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記付着促進剤が、乾燥重量0.25 gm-2未満の塗工量で塗工される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーのカルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基が、一般式CH2=CR1-CO2R2(式中、R1は、メチル基又は水素原子を表し、R2は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は水素原子を表す)であるアクリル酸単量体に由来する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R1及びR2が水素原子を表す、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーが、エチレンとアクリル酸の共重合体である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記インジケータ材料がヨウ素酸塩である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記インジケータ材料がヨウ素酸カリウムである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記インジケータ材料がpH指示薬である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸化又は還元で異なる原子価状態を生ずるその金属カチオンの処理によって、色変化を生ずる場合、前記インジケータ材料が遷移金属塩類である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基体が紙である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
シートの形態の基体へ付着促進剤のコーティングを塗工するための工程のモニタリング方法であって、
(1)カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有したポリマーを含む付着促進剤の溶液又は懸濁液を該基体の少なくとも1つの表面に塗工するステップであって、該溶液又は懸濁液が、該基体への該溶液又は懸濁液の塗工条件下では無色であるインジケータ材料を更に含む、該ステップと、
(2)次いで、コーティングされた基体のサンプルを取得するステップと、
(3)該サンプルに化学的手段を適用して、該化学的手段と該インジケータ材料間の化学反応によって、可視的な着色を生ずるステップと、
(4)生じる着色を検査するステップと、を含む、
前記モニタリング方法。
【請求項13】
前記ステップ(1)が、請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
付着促進剤を含有するコーティングを有する基体を含むシートであって、
該付着促進剤が、
カルボン酸、塩類、アミド及び/又はエステル基を含有するポリマーと、
通常は無色であるが、適切な化学的手段の適用で、該化学的手段との化学反応により可視的な着色を生ずるインジケータ材料と、を含む、
前記シート。
【請求項15】
前記付着促進剤が、乾燥重量2 gm-2未満の塗工量で含有する、請求項14記載のシート。
【請求項16】
前記付着促進剤が、乾燥重量0.25 gm-2未満の塗工量で含有する、請求項15記載のシート。
【請求項17】
前記付着促進剤が、請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリマーを含有する、請求項14〜16のいずれか一項に記載のシート。
【請求項18】
前記インジケータ材料が、請求項7〜10のいずれか一項に記載のインジケータ材料である、請求項14〜17のいずれか一項に記載のシート。
【請求項19】
前記基体が紙である、請求項14〜18のいずれか一項に記載のシート。

【公表番号】特表2012−505072(P2012−505072A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530487(P2011−530487)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063084
【国際公開番号】WO2010/040798
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511087109)アルジョ ウイグギンス フイネ パペルス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】