説明

改良されたシトラール及びシトロネラール誘導体

シトラール及びシトロネラール、並びに/またはシトラール及びシトロネラールを含む芳香剤及び香味剤より有用な貯蔵寿命が長い、改良されたシトラール及びシトロネラール誘導体、並びに前記誘導体を含む芳香剤及び香味剤を開示する。特に、シトラール及びシトロネラールの芳香特性を保持し、一方でアレルギー特性を低下させ、シトラール及びシトロネラールより長い貯蔵寿命のレモン系の香味及び芳香を備える誘導体を開示する。また、前記誘導体の作製方法、及び前記誘導体を含む製造品を開示する。前記誘導体は、シトラールまたはシトロネラール中のアルデヒド基をヒドロキシ基で置換する。ある実施態様において、前記誘導体はまた、シトラール中の1つ以上の二重結合またはシトロネラール中の二重結合を、1つ若しくは2つのアルキル基、好ましくはメチル基、またはオキシラン若しくはチイラン環、あるいはこれらの組合せで置換されていなくても置換されていても良いシクロプロピル基で置換する。シクロプロピル基中のアルキル基は、例えば、電子供与基、電子吸引基、親水性または疎水性を増加させる基等で任意的に置換されていても良い。適切な製造品の例としては、ろうそく、消臭スプレー、香水、消毒剤組成物、次亜塩素酸塩(漂白剤)組成物、ビール及びソーダ等の飲料、入れ歯洗浄錠剤、並びにトローチ剤、キャンディー等の香味付き経口送達製品等が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年12月22日に出願した仮出願第60/638,964号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に香味剤及び芳香剤の分野に関する。とりわけ本発明は、香水及び他の芳香物品だけでなく飲料及び他の食料品に、レモン系または新鮮なバラ系の香りを提供すると同時に、一方で天然シトラールまたはシトロネラール化合物の安定性の限界を克服するシトラール及びシトロネラール誘導体に関する。
【背景技術】
【0003】
シトロネラールの香りプロファイルは、甘く、フローラル系、バラ系、ワックス系、柑橘系、及びグリーン系である。シトラール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール)は、レモンの香りの主成分であり、天然レモンの甘酸っぱい特徴を有する。主に歴史的理由から、レモンの香りは一般に、飲料及び家庭用品、並びに芳香剤及び香味剤の両方において、新鮮さと清潔さを連想させるようになった。レモン飲料は、天然であれ合成であれ、当然酸であり、シトラールの急速な分解を引き起こし、クレゾールのような不快な臭気の生成物をもたらす。このことはレモネードの貯蔵寿命がそれに応じて短いことを意味し、経費を要する物流問題を引き起こしている。家庭用品では、問題は異なった性質のものである。細菌学的な清潔さとレモンの香りとを連想させるために、これらの製品はレモンの香りを付けた漂白剤(次亜塩素酸塩)をよく使用する。シトラールは漂白剤中で不安定であり、従って使用できない。それに代わって、あまり満足されない油状金属臭のレモンの特徴を備える、そのニトリル類似体であるゲラニルニトリルを使用しなければならない。
【特許文献1】米国特許第5,571,519号
【特許文献2】国際特許出願第9,206,154号
【特許文献3】米国特許第3,664,961号
【特許文献4】米国特許第3,308,067号
【特許文献5】米国特許第4,144,226号
【特許文献6】米国特許第4,246,495号
【特許文献7】米国特許第4,968,451号
【特許文献8】米国特許第4,711,730号
【特許文献9】米国特許第4,721,580号
【特許文献10】米国特許第4,702,857号
【特許文献11】米国特許第4,877,896号
【特許文献12】米国特許第5,415,807号
【特許文献13】米国特許第5,084,440号
【特許文献14】米国特許第5,332,725号
【特許文献15】米国特許第5,264,615号
【特許文献16】米国特許第4,055,634号
【特許文献17】米国特許第3,947,574号
【特許文献18】米国特許第3,779,932号
【特許文献19】米国特許第4,587,129号
【非特許文献1】S. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, N. J., USA
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シトラールの化学的不安定性は、主として2つの二重結合及びアルデヒド基によるものであり、特にレモンの香りを付けた漂白剤等の過酷な環境下で使用した場合、これらはすべて潜在的に反応しやすい。改良された有用な寿命、及び好ましくは改良された香りの強さを備え、一方でシトラールのレモンの特徴またはシトロネラールのバラ系の特徴を維持したシトラール及びシトロネラール誘導体を開発することが所望されるであろう。本発明は、そのようなシトラール及びシトロネラール誘導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シトラール及びシトロネラールよりも有用な貯蔵寿命が長い、改良された芳香剤及び香味剤を開示する。特に、一方でアレルギー特性を低下させ、且つシトラールまたはシトロネラールより長い貯蔵寿命を提供し、並びに/あるいはシトラール及び/またはシトロネラールと比較して香りの強さを増大させる、シトラールの芳香特性及びレモン系の香味を保持するシトラール誘導体、並びにシトロネラールの芳香特性及びバラ系の香味を保持するシトロネラール誘導体を開示する。また、前記誘導体の作製方法、及び前記誘導体を含む製造品を開示する。
【0006】
前記シトラール誘導体は、シトラール中のアルデヒド基をヒドロキシ基で置換し、前記シトロネラール誘導体は、シトロネラール中のアルデヒド基をヒドロキシ基で置換する。ある実施態様において、前記誘導体はまた、シトラール中の一方若しくは両方の二重結合、またはシトロネラール中の1つの二重結合を、1つまたは2つの低級アルキル、好ましくはメチル基で置換されていなくても置換されていても良いシクロプロピルで置換する。前記アルキル基は、例えば、電子供与基、電子吸引基、当該分子の親水性または疎水性を増加させる基等で、任意的に置換され得る。前記シクロプロピル基はまた、炭素原子の代わりに硫黄または酸素を含み得る。
【0007】
適切な製造品の例としては、ろうそく、消臭スプレー(air fresheners)、香水、消毒剤組成物、次亜塩素酸塩(漂白剤)組成物、ビール及びソーダ等の飲料、例えばその内容全体が参照により本明細書中に組み込まれている米国特許第5,571,519号に記載されているような入れ歯洗浄錠剤、並びにトローチ剤、キャンディー等の香味付き経口送達製品が含まれる。
【0008】
例えば、芳香剤及び香味剤として使用し得る、シトラールより長い有用な貯蔵寿命を有する改良されたシトラール及びシトロネラール誘導体を開示する。前記シトラール誘導体はシトラールと同様の香りを有し、前記シトロネラール誘導体はシトロネラールと同様の香りを有し、並びに前記シトラール及びシトロネラール誘導体はまた、シトラール及びシトロネラールと比較して改良された物理的及び/または化学的性質を有する。これらの改良された特性には、高pH、低pHに対する安定性の増大、半減期の改善、アレルギー反応を引き起こす可能性の減少、及び/または香りの強さの増加が含まれる。
【0009】
本明細書に記載する式2-4の化合物では、式1中のシトラールまたは前記シトラール誘導体の二重結合の一方または両方、あるいはシトロネラール中の二重結合が、適切な3員環で置換されている。当該化合物、及びそれらの混合物は、シトラール及びシトロネラール自体がその中で比較的不安定である種々の媒体中で安定であり、且つシトラール及びシトロネラールの香りの特性に非常に類似した香りの特性を有する。式2-4の化合物またはそれらの混合物の香りは、シトラールと同様の新鮮な柑橘系の印象、及び/またはシトロネラールと同様の新鮮なバラ系の印象を有する。
【0010】
1)改良されたシトラール及びシトロネラール誘導体
【化1】

【0011】
式1は、当該アルデヒド基がヒドロキシ基で置換されたシトラール誘導体を表す。この種類の誘導体は、本明細書に記載する化学反応を用いてさらに修飾でき、二重結合の一方または両方を適切な環状構造で置換してさらに修飾し、従って当該分子の種々の物理的及び/または化学的性質を改良することができる。式1において、当該ヒドロキシ基をアルデヒド基(-C(=O)H)で置換し、残りの置換基の値はR1-4がHであり、R5及びR6がメチルであるように選択される場合、シトラールが表されるであろう。しかし、R1-6は独立して、H、C1-5アルキル、置換C1-5アルキル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、アミン、カルボン酸、エステル、ニトロ、シアノ、イソシアノ、スルホン酸、尿素、及びチオ尿素であって良く、前記アルキル基上の置換基は、ハロ、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、アミン、カルボン酸、エステル、ニトロ、シアノ、イソシアノ、スルホン酸、尿素、チオ尿素等から選択される。ある実施態様において、当該ヒドロキシ基に隣接する二重結合は飽和されており(すなわち、シトロネラール誘導体を形成する)、当該誘導体はこの位置の飽和二重結合以外は同一である。
【0012】
以下の式2-4は、当該二重結合の一方または両方が適切な3員環で置換されている、本明細書に記載するシトラール及びシトロネラール誘導体を表す。
【化2】

式中:
Zは、O、S、メチル等のC(R)2、またはC1-5置換アルキルであり、R1-6は、式1に関して前述のものと同様であり;
当該点線は、当該CH2OH基が結合している炭素がR若しくはS配置にある、またはこの2種類の混合物として存在する、あるいはそれが結合している二重結合がEまたはZ配置にあること示す。
【0013】
式2-4のある実施態様において、R1-4は水素を表し、R5-6はメチルを表し、及びZはC(R)2を表す。この実施態様において、1つ以上のR基がメチルであり、他のR基が水素を表すことが好ましい。
【0014】
当該分子が2つのZ基を含む式2-4において、1つのZがO、S、またはC(R)2である限り、1つのZはそれが結合している両方の炭素での飽和状態を表し得る(すなわち、二重結合がない、またはシクロプロパン、オキシラン若しくはチイラン環)。
【0015】
それぞれの代表的な化合物は、以下:
【化3】

を含む。
【0016】
前記シトラール及びシトロネラール誘導体は、当該分子の2つの二重結合に対応する位置の一方または両方においてシクロプロパン化され得る。シトラール誘導体に関して、ヒドロキシ基への当該二重結合αのシクロプロパン化は、4つの可能性のあるジアストレオマー(R, R)、(R, S)、(S, R)及び(S, S)を提供する。イソプレン単位の当該二重結合のシクロプロパン化は、ヒドロキシ基への当該二重結合αのE及びZ異性体のそれぞれに対して2つの立体異性体を提供し、合計4つの異性体を提供する。ジシクロプロパン化は、8つの立体異性形態を提供し、イソプレン単位の当該二重結合のシクロプロパン化からR立体異性体と結合したヒドロキシ基への二重結合αのシクロプロパン化由来の4つすべてのジアストレオマー、及びS立体異性体と結合した4つすべてのジアストレオマーを含む。シトロネラールのイソプレン単位中の二重結合はまた、シクロプロパン化され、2つの立体異性体を作り出すことができる。
【0017】
当該シクロプロパン化反応を、反応し尽すまで実施してジシクロプロパン化生成物を得ることができ、または段階的に実施してモノ及びジシクロプロパン化生成物の混合物を作り出すことができる。前記モノ及びジシクロプロパン化生成物は、異なる物理的及び化学的特性に基づいて分離することができる。同様に、ジアストレオマー形態は、当該技術分野で既知の、異なる沸点及び/または結晶化条件等の異なる特性に基づいて分離することができる。立体異性体は、当該技術分野において既知の、キラル固相を用いたカラムクロマトグラフィー、酵素分解、並びにジアストレオマーの可逆的生成及び前記ジアストレオマー形態の分離等の既知の技術を用いることによって単離することができる。当該アルコール官能性の存在は、キラル酸と反応しエステルを形成することによるジアストレオマーの急速且つ可逆的な生成を可能にし、当該エステルは、加水分解/鹸化され、ヒドロキシ基の官能性を改良し得る。適切なキラル酸は、当業者に既知である。従って、特定の立体異性体またはジアストレオマーの単離を所望する場合には、それは当該技術分野では日常的なことである。
【0018】
本開示は以下の化合物に限定されないが、並びにシクロプロパン化ヒドロキシ-シトロネラール誘導体の種々の立体異性体の形態とともに、モノ及びジシクロプロパン化ヒドロキシ-シトラール誘導体の16のすべての立体異性体の形態を以下に示す。他の化合物中の二重結合をシクロプロパン環で置換することは、同様に立体異性体及び/またはジアストレオマーの生成をもたらすことが多く、それぞれの立体異性体及び/またはジアストレオマーは同様に従来の分離技術を用いて単離することができる。そのような立体異性体及び/またはジアステレオマーは、本明細書に記載の本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0019】
【化4】

【化5】

【0020】
当該シクロプロパン環はCH2部分を含んで良く、または1つ若しくは2つのC1-Sアルキル(すなわちメチル)基で置換されていて良い。当該メチルまたはジメチル類似体は、当該非置換シクロプロパン誘導体よりシトラール及び/またはシトロネラールと近接したトンネル効果振動スペクトルを有し、当該非置換シクロプロピル誘導体より甘い香りを有する。
【0021】
本明細書に記載のシトラール誘導体には、シトラール中のアルデヒド基がヒドロキシ基で置換されていることに加えて、当該二重結合の一方または両方が、(非置換、モノアルキル若しくはジアルキルであって、アルキルが置換されていても置換されていなくても良く、好ましくはメチルである)シクロプロピル基で置換されている誘導体が含まれる。本明細書に記載のシトロネラール誘導体には、シトロネラール中のアルデヒド基がヒドロキシ基で置換されていることに加えて、当該二重結合が、(非置換、モノアルキルまたはジアルキルであって、アルキルが置換されていても置換されていなくても良く、好ましくはメチルである)シクロプロピル基で置換されている誘導体が含まれる。
【0022】
2)前記シトラール及びシトロネラール誘導体の調製方法
式2-4のシトラール及びシトロネラール誘導体は、当該合成経路が存在しても良いいずれかの置換基とも不適合ではない範囲で、ヒドロキシ基への二重結合αが存在しない式1における前記のいずれかのシトラール誘導体、または式1のシトロネラール版を用いることによって調製することができる。ある実施態様において、シトラール(またはシトロネラール)が開始物質として用いられ、R1-4が水素であり、R5-6がメチルであり、及び当該アルデヒド基が標準的化学反応を用いて還元されてヒドロキシ基を提供する式2-4に記載の種々のシトラール(またはシトロネラール)誘導体を調製する。あるいは、当該ヒドロキシ基がシクロプロパン化、オキシランまたはチイランの化学反応を妨害しない範囲で、当該アルデヒド基を最初に還元することができる。ある実施態様において、当該アルデヒドをまずヒドロキシ基に還元し、前記ヒドロキシ基を、シクロプロパン化、オキシランまたはチイランの化学反応と不適合ではない保護基を用いることによって保護する。この実施態様において、所望の環の形成が完成した後に、前記保護基を除去することができる。
【0023】
メチル、ジメチル、または非置換シクロプロパン誘導体の合成は、当業者に既知であり、例えば、ブロモホルム反応を用いてジブロモシクロプロパン誘導体を生成させ、続いてメチルリチウムと化学量論的に反応させる。当該ヒドロキシ基は、前記反応の間、ケタール、THFエーテル、シリルエーテル、または他のこのような保護基として保護され、及び前記反応が起こった後、所望のように脱保護されて良い。これらの単純な方法によって、不安定な特徴、すなわち当該アルデヒド基、及び場合により一方若しくは両方の二重結合が除去されているため、シトラール及び/またはシトロネラール自体に類似した香りプロファイルを備え、より大きい潜在力を備え、酸及び漂白剤に対する安定性が大幅に向上した、シトラール及び/またはシトロネラールの誘導体が得られる。
【0024】
同様のことが、前記の式(式中、ZはOまたはS)に示したエポキシド(OX)及びチイラン(TH)環に適用される。混合したC=C二重結合置換と立体異性体を数えずに、これはシトラールのみから9つの可能な分子を作り出し、当該技術分野で既知の方法、例えば:
シクロプロパニル置換:当該アルデヒドまたは対応するアルコールのSimmons-Smithシクロプロパン化(次いで、ヒドロキシ基をもたらす前者のホウ化水素還元);
オキシラニル置換:当該二重結合のm-クロロ過安息香酸エポキシ化(ホウ化水素還元剤は当該オキシラン環に逆作用を及ぼす可能性があるため、アルデヒド開始物質よりむしろ当該ヒドロキシ基を使用して進行させることが好ましい)
チイラニル置換:アンバーライト上での二重結合の臭素化、次いで硫化ナトリウム中のS'置換;
によって、シトラール自体からの1つまたは2つの工程の合成ですべて容易に得ることができる。
【0025】
3)シトラール及びシトロネラール誘導体を含む製造品
当該シトラール及びシトロネラール誘導体は、シトラールまたはシトロネラール、あるいは実際、天然であっても合成であっても他のレモン芳香剤を含み得る、実質的にいずれかの製造品中に含まれ得る。同様に、当該シトロネラール誘導体は、シトロネラール、または実際、天然であっても合成であっても他のバラの香りの芳香剤を含み得る、実質的にいずれかの製造品中に含まれ得る。例としては、漂白剤、洗剤、香味剤と芳香剤、及びアルコール飲料を含む飲料等が含まれる。前記シトラール及びシトロネラール誘導体は、家庭用及び工業用使用の両方のための、石鹸、シャンプー、ボディデオドラント及び制汗剤、繊維処理用の固体若しくは液体洗剤、布帛柔軟剤、食器または種々の表面の洗浄用の洗剤組成物及び/または多目的洗浄剤等の用途に使用することができる。ボディデオドラント、消臭スプレー及び化粧品調合物の香り付け、またさらには高級香料中、すなわち香水及びオーデコロン中だけでなく、香料における他の現在の用途、すなわち石鹸及びシャワー用ゲル、衛生用品またはヘアーケア製品の香り付けにおいて現在使用されるように、当然ながら、当該化合物の使用は前記製品に限定されない。これらの使用をさらに詳細に以下に記載する。
【0026】
[香料組成物]
当該化合物は、香り付け成分として単一化合物でまたはその混合物として、好ましくは当該香料組成物の少なくとも約30重量%の範囲、より好ましくは当該組成物の少なくとも約60重量%の範囲で使用することができる。当該化合物はさらに、付加成分なしで、その純粋な状態で、または混合物として使用することができる。当該個々の化合物の嗅覚的特徴はそれらの混合物中にも存在し、このような化合物の混合物を香り付け成分として使用することができる。これは、化合物混合物を使用することによって分離及び/または精製工程を回避できる点で特に有利であるかもしれない。
【0027】
列挙したすべての用途において、当該シトラールまたはシトロネラール誘導体は、単独で、組み合わせて、及び/または当該技術分野で現在使用される他の香り付け成分、溶媒、または補助剤と混合して使用することができる。これらの共成分の性質及び種類をここでより詳細に説明する必要はなく、さらにそれは網羅的でなく、当業者であれば、その一般的な知見によって、また、香り付けされる製品の性質及び所望の嗅覚的効果の作用として、後者を選択することができるであろう。
【0028】
このような香り付け成分は、典型的に、天然若しくは合成由来の精油等だけでなく、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、亜硝酸化合物、テルペン系炭化水素、硫黄及び窒素含有複素環式化合物等の多様な化学物質の部類に属する。多くのこのような成分が、その内容全体が参照により本明細書中に組み込まれているS. Arctanderの本「Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, N. J., USA」、またはそれより最近の版の参考書、あるいは同種の他の出版物に記載されている。
【0029】
種々の製品中に混含することのできるシトラール誘導体の割合は、広い値の範囲内で変動する。これらの値は、当該化合物が当該技術分野で現在使用される香り付け共成分、溶媒または補助剤と混合して使用される場合に供給される組成物中の共成分の性質だけでなく、香り付けしようとする物品または製品の性質、及び追求する香りの効果に応じて決まる。
【0030】
例として、当該シトラール及びシトロネラール誘導体は、典型的に、化合物が混含されている当該香り付け組成物の重量に対してこれらの化合物の約0.1-約10重量%、またはそれ以上の濃度で存在する。当該化合物が、先に挙げた種々の消費者用製品の香り付けに直接適用される場合、前記の濃度よりはるかに低い濃度を用いることができる。
【0031】
前記化合物は、典型的に香料用の攻撃的媒体中でも比較的安定である。
【0032】
従って、これらを、例えば、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、次亜ハロゲン酸塩、特に次亜塩素酸塩、過酸化漂白剤等(例えば過ホウ酸塩等)の漂白剤と活性化剤とを含む洗剤に使用することができる。当該化合物はまた、例えばアルミニウム塩を含むもの等の、ボディデオドラント及び制汗剤に使用することができる。これらの実施態様を以下により詳細に記載する。
【0033】
[従来の洗剤成分]
本明細書に記載の前記誘導体に加えて、本明細書の組成物は、洗浄性界面活性剤、場合によって、洗浄性能の補助または向上、洗浄される基材の処理、あるいは前記洗剤組成物の美観(例えば、香料、着色剤、染料等)を改変するための材料を含む1つ以上の付加的洗剤成分を含む。以下に洗浄性界面活性剤及び他の洗剤成分を例示する。
【0034】
[洗浄性界面活性剤]
本明細書において典型的に約0.5-約90重量%の量で有用である合成洗浄性界面活性剤の非限定的な例として、従来のC11-18アルキルベンゼンスルホン酸塩(“LAS”)、1級分岐鎖及びランダムC10-20アルキル硫酸塩(“AS”)、式CH3(CH2)x(CH(CH3)OSO3-M+)及びCH3(CH2)y(CH(CH2CH3)OSO3-M+)(式中、x及びyは整数であり、x及び(y+1)のそれぞれは少なくとも約7、好ましくは少なくとも約9であり、Mは水溶性カチオン、特にナトリウム、硫酸オレイル等の不飽和硫酸塩である)のC10-182級(2,3)アルキル硫酸塩、C10-18アルキルアルコキシ硫酸塩(“AExS”;特にEO1-7エトキシ硫酸塩)、C10-18アルキルアルコキシカルボン酸塩(特にEO1-5エトキシカルボン酸塩)、C10-18グリセロールエーテル、C10-18アルキルポリグリコシド、及びこれらの対応する硫酸化ポリグリコシド、並びにC12-18α-スルホン酸化脂肪酸エステルが含まれる。所望の場合、いわゆる狭いピークを有するアルキルエトキシレート及びC6-12アルキルフェノールアルコキシレート(特に、エトキシレート及びエトキシ/プロポキシレート混合物)を含むC12-18エトキシレート(“AE”)、C12-18ベタイン及びスルホベタイン(“サルテイン(sultaine)”)、及びC10-18アミンオキシド等の従来の非イオン性及び両性の界面活性剤も、当該組成物全体に含むことができる。また、C10-18N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドも使用できる。典型的な例としては、C12-18N-メチルグルカミドが含まれる。国際特許出願第9,206,154号を参照されたい。他の糖由来の界面活性剤としては、C10-18N-(3-メトキシプロピル)グルカミド等のN-アルコキシポリヒドロキシ脂肪酸アミドが含まれる。N-プロピルからN-ヘキシルのC12-18グルカミドは、低起泡性のために使用できる。C10-20の従来の石鹸も使用できるが、合成洗剤が好ましい。高起泡性を所望の場合には、分枝鎖C10-16石鹸を使用しても良い。陰イオン性及び非イオン性界面活性剤の混合物が特に有用である。他の従来の有用な界面活性剤は標準的な参考書に列挙されている。Norrisの米国特許第3,664,961号も
参照されたい。
【0035】
合成洗剤のみを混合した組成物は、好ましくは約0.5-50%の洗剤の量を有する。石鹸を含む組成物は、好ましくは約10-約90%の石鹸を含む。
【0036】
本明細書の洗剤組成物は、洗浄性界面活性剤及び当該シトラール誘導体のみを含み得るが、前記組成物は、好ましくは洗剤製品に一般的に使用される他の成分を含む。
【0037】
[ビルダー]
鉱物硬度の制御を補助するために、本明細書の組成物中に洗剤ビルダーを任意的に含むことができる。無機ビルダーも有機ビルダーと同様に使用できる。ビルダーは、典型的に、微粒子状の汚れの除去を補助するために、布帛洗浄組成物中に使用される。
【0038】
ビルダーの濃度は、当該組成物の最終用途及びその所望の物理的形態に応じて広い範囲に及んで良い。存在する場合、当該組成物は典型的に少なくとも約1%のビルダーを含むであろう。液体配合物は典型的には約5-約50重量%、より典型的には約5-約30重量%の洗剤ビルダーを含む。顆粒状配合物は典型的には約10-約80重量%、より典型的には約15-約50重量%の洗剤ビルダーを含む。しかし、より低いまたはより高いビルダー濃度を除外するものではない。
【0039】
無機または洗剤ビルダーには、これらに限定されないが、ポリリン酸(例としては、トリポリリン酸、ピロリン酸、及びガラス質ポリマー性メタリン酸)、ホスホン酸、及びフィチン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアラノールアンモニウム塩等のリン酸塩ビルダー、並びにケイ酸塩、炭酸塩(炭酸水素塩及びセスキ炭酸塩を含む)、硫酸塩、及びアルミノケイ酸塩等の非リン酸塩ビルダーが含まれる。ある場合には、非リン酸塩ビルダーが必要とされる。
【0040】
本明細書での使用に適した有機性ビルダーには、Diehlの米国特許第3,308,067号、Crutchfieldの米国特許第4,144,226号、及びCrutchfieldの米国特許第4,246,495号等に開示されているもの等のポリカルボン酸塩ビルダーが含まれる。
【0041】
[汚れ除去剤]
本発明の洗濯用洗剤において、汚れ除去剤が望ましくは使用される。
【0042】
適切な汚れ除去剤には、Scheibel及びGosselinkの米国特許第4,968,451号のもの(このようなエステルオリゴマーは、(a)アリルアルコールをエトキシ化し、(b)(a)の生成物と、テレフタル酸ジメチル(“DMT”)及び1,2-プロピレングリコール(“PG”)とを二段エステル交換/オリゴマー化方法で反応させ、(c)水中で(b)の生成物とメタ重亜硫酸ナトリウムとを反応させることによって調製することができる);Gosselinkらの米国特許第4,711,730号の非イオン性のエンドキャップされた1,2-プロピレン/ポリオキシエチレンテレフタレートポリエステル(例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、DMT、PG、及びポリ(エチレングリコール)(“PEG”)のエステル交換/オリゴマー化によって製造される);Gosselinkの米国特許第4,721,580号の部分的及び全体的にアニオン性のエンドキャップされたオリゴマーエステル(例えば、エチレングリコール(“EG”)、PG、DMT、及びNa-3,6-ジオキサ-8-ヒドロキシオクタンスルホン酸からのオリゴマー等);Gosselinkの米国特許第4,702,857号の非イオン性キャップされたブロックポリエステルオリゴマー化合物(例えば、DMT、MeキャップされたPEG、並びにEG及び/またはPG、あるいはDMT、EG及び/またはPGの組合せ、MeキャップされたPEG及びNa-ジメチル-5-スルホイソフタレートから製造される);並びにMaldonado、Gosselinkらの米国特許第4,877,896号の陰イオン性、特にスルホアロイル、エンドキャップされたテレフタル酸エステル(後者は洗濯用及び布帛コンディショニング用製品の両方に有用な典型的なSRA'であり、例としては、m-スルホ安息香酸モノナトリウム塩、PG、及びDMT(場合によって、しかし好ましくはPEG、例えばPEG 3400を加える)から製造されるエステル組成物である。)等が含まれる。他の好ましい汚れ除去剤は、米国特許第5,415,807号に記載のスルホン化されエンドキャップされた種類である。
【0043】
[他の任意的な成分]
本明細書の組成物は、酵素、漂白剤、布帛柔軟剤、移染抑制剤、泡抑制剤、及びキレート剤等の、すべて当該技術分野で既知の他の成分を含むことができる。
【0044】
本発明の洗剤組成物を定義するために、当該洗剤組成物のpHは、20℃で蒸留水中の1%濃度の当該洗剤組成物で測定される。本明細書の洗剤組成物は、約7.1-約13、より典型的には液体洗剤で約7.5-約9.5、顆粒洗剤で約8-約12のpHを有する。
【0045】
[従来の香料物質を備えるまたは備えていない洗剤を用いた配合]
本明細書に記載の誘導体は単独で使用され、必須の洗剤成分、とりわけ界面活性剤と単純に混合され得るが、それらはまた、好ましくは(a)1つ以上の合成洗剤を含む非芳香性洗剤ベースと(b)本明細書に記載の1つ以上の誘導体とを混合した3つの部分の配合物に混合されて良い。
【0046】
本発明の洗剤を配合する場合、天然または合成由来の数多くの既知の着臭剤成分を用いることによって、完全に配合された芳香剤を調製することができる。当該天然の原料物質の範囲には、易揮発性成分だけでなく、中揮発性及び弱揮発性成分も包含することができ、当該化学合成物質の範囲には、以下の例示的な集まりから明らかであろうような、実際的にすべての部類の芳香性物質の代表的なものを含むことができる。天然産物、例えば、ツリーモスアブソリュート、メボウキ油、柑橘類果実油(ベルガモット油、マンダリン油等)、マスチックアブソリュート、ミルテ油、パルマローザ油、パチョリ油、プチグレン油パラグアイ、及びアブサン油等;アルコール、例えば、ファメソール(famesol)、ゲラニオール、リナロール、ネロール、フェニルエチルアルコール、ロジノール、及び桂皮アルコール等;アルデヒド、例えば、シトラール、Heliona(登録商標)、α-ヘキシル-シンナムアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、Lilial(登録商標)(p-t-ブチル-α-メチルジヒドロシンナムアルデヒド)、及びメチルアオニルアセトアルデヒド等;ケトン、例えば、アリルイオノン、α-イオノン、β-イオノン、イソラルデイン(isoraldein)(イソメチル-α-イオノン)、及びメチルイオノン等;エステル、例えば、アリルフェノキシアセテート、サルチル酸ベンジル、プロピオン酸シンナミル、酢酸シトロネリル、シトロネリルエトキソレート、酢酸デシル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、アセト酢酸エチル、アセチル酢酸エチル、イソ酪酸ヘキセニル、酢酸リナリル、メチルジヒドロジャスモネート、酢酸スチラリル、及び酢酸ベチベリル等;ラクトン、例えば、γ-ウンデカラクトン等;並びに、香料製造でよく使用される様々な成分等、例えば、ジャコウケトン、インドール、p-メンタン-8-チオール-3-オン、及びメチル-ユージノール等である。同様に、当該技術分野で既知の従来のいずれかの芳香性アセタールまたはケタールを、従来配合される香料(c)の任意的成分として、本発明の組成物に加えることができる。そのような従来の芳香性アセタール及びケタールには、ベンズアルデヒドに基づくアセタールまたはケタール(フェニルエチル部分を含むもの)だけでなく、周知のメチル及びエチルのアセタール及びケタール、あるいは「Acetals and Ketals of Oxo- Tetralins and Oxo-Indanes」と題した米国特許(米国特許第5,084,440号を参照)に記載されているもの等のより最近開発された特殊製品が含まれる。当然ながら、他の最近の合成特殊製品を、完全に配合した洗剤のための香料組成物に含むことができる。これらには、米国特許第5,332,725号に記載のアルキル置換のオキソ-テトラリン及びオキソ-インダンのエノールエーテル、あるいは米国特許第5,264,615号に記載のシッフ塩基が含まれる。当該プロ芳香性材料を、従来の芳香剤とは別に、本発明の洗剤組成物に加えることが好ましい。
【0047】
[他の特殊な目的の芳香送達化合物を備える配合物]
本明細書に記載の誘導体を含む洗剤は、所望の場合には、任意的に芳香の実質性を向上させる能力を有する他の既知の化合物をさらに含んで良い。そのような化合物には、これだけに限らないが、米国特許第4,055,634号に記載のイソブチルアルミニウムジフェラニレート(diferanylate)等のアルミニウムアルコキシド、あるいは米国特許第3,947,574号及び米国特許第3,779,932号(それぞれの内容全体は、参照により本明細書中に組み込まれる)に記載のもの等の既知の芳香性材料のチタン酸及びジルコン酸エステルまたはオリゴエステルが含まれる。そのような有機アルミニウム、有機チタン、または有機亜鉛誘導体を使用する場合、それらは本発明の配合物中にそれらの技術分野で知られている濃度で混含して良い。
【0048】
[飲料組成物]
本明細書に記載のシトラール及びシトロネラール誘導体は、飲料に混含させて、飲料に様々な香味を付与することができる。当該飲料組成物はコーラ飲料組成物であって良く、またコーヒー、茶、乳製品飲料、果汁飲料水、オレンジ飲料水、レモン-ライム飲料水、ビール、麦芽飲料、または他の香味付き飲料であっても良い。当該飲料は液体または粉末形態であって良い。
【0049】
当該飲料組成物はまた、1つ以上の香味剤;合成着色料;ビタミン添加剤;保存剤;カフェイン添加剤;水;酸味剤;増粘剤;緩衝剤;乳化剤;及び/または果汁濃縮物を含むことができる。
【0050】
使用して良い人工着色剤には、カラメル色素、黄色6号、及び黄色5号が含まれる。有用なビタミン添加剤には、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC(アスコルビン酸)、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、及び葉酸が含まれる。適切な保存剤には、安息香酸ナトリウムまたは安息香酸カリウムが含まれる。使用して良い塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムが含まれる。乳化剤の例はアラビアゴム及び高純度ゴムであり、有用な増粘剤はペクチンである。適切な酸味剤にはクエン酸、リン酸、及びリンゴ酸が含まれ、可能性のある緩衝剤にはクエン酸ナトリウム及びクエン酸カリウムが含まれる。
【0051】
ある実施態様において、当該飲料は炭酸コーラ飲料である。pHは一般的に約2.8であり、これらの組成物用のシロップを作製するために以下の成分を使用することができる。
【0052】
本明細書に記載の1つ以上の誘導体を含む香味剤濃縮物(22.22mL)、80%リン酸(5.55g)、クエン酸(0.267g)、カフェイン(1.24g)、人工甘味料、糖またはコーンシロップ(味付けのためで、実際の甘味料に応じて)、及びクエン酸カリウム(4.07g)。当該飲料組成物は、例えば前記のシロップを、炭酸水250mLに対してシロップ50mLの割合で、炭酸水と混合することによって調製されることができる。
【0053】
他の実施態様において、当該飲料はビールまたは麦芽飲料である。ビール及び麦芽飲料のための好ましい香味剤には、レモン、ライム、及びレモン-ライムが含まれる。都合の良いことに、当該香味剤は、二重結合の一方若しくは両方がシクロプロパン基で置換されたシトラール誘導体を含み、前記シクロプロパン基は、独立して、置換されていない、または1つ若しくは2つのアルキル若しくは置換アルキル基、好ましくはメチル基であって良い。香味剤の量は味に応じて調節することができる。
【0054】
[経口送達製品]
また、本明細書に記載の1つ以上の誘導体を含む、香味付き食品及び医薬組成物を調製することができる。当業者に既知の技術を用いることによって、当該誘導体を従来の食料品に混含することができる。あるいは、当該誘導体をポリマー粒子中に混含させ、次いでこれを、通常固体または半固体の基材である経口送達可能なマトリックス材料中及び/または表面上に分散させることができる。咀嚼可能な組成物に使用する場合、当該組成物が咀嚼され口の中に保持されたときに、経口送達可能なポリマー性マトリックス材料中に誘導体が放出され、よって組成物の香味を長引かせることができる。乾燥した粉末及び混合物の場合、当該製品が消費されたときに香味がもたらされ、あるいは当該組成物がさらに処理されたときに香味がマトリックス材料中に放出され得る。2つの香味剤を当該ポリマー粒子と組み合わせる場合、当該添加剤の相対的な量は、当該化合物の放出と使い尽くしを同時に提供するように選択されて良い。
【0055】
ある実施態様において、当該香味付き組成物には、経口送達可能なマトリックス材料、すなわち経口送達可能なマトリックス材料中に分散された複数の水不溶性ポリマー粒子(前記ポリマー粒子は、内部細孔ネットワークを個々に画定し、かつ消化管中で非分解性である);及び、前記内部細孔ネットワーク中に捕捉された本明細書に記載の1つ以上の誘導体が含まれる。当該マトリックスが咀嚼され口中で溶解し、あるいは液体添加、ドライブレンド、撹拌、混合、加熱、焙り焼き、及び料理からなる群から選択されるさらなる処理を受けたとき、当該誘導体が放出される。前記経口送達可能なマトリックス材料は、ガム、ラテックス材料、結晶化した砂糖、アモルファス糖、フォンダン、ヌガー、ジャム、ジェリー、ペースト、パウダー、ドライブレンド、脱水食品ミックス、焼いた食品、バター、パン生地、錠剤、及びトローチ剤からなる群から選択されて良い。
【0056】
[チューインガム]
香味のないガムベースを、本明細書に記載のシトラールまたは他の適切な誘導体と混合し、所望の香味濃度にすることができる。典型的に、ブレードミキサーを約110Fに加熱し、軟化させるためにガムベースを予備加熱し、次いで前記ガムベースをミキサーに加え、約30秒間混合する。次いで、当該香味付き誘導体を前記ミキサーに加え、適度の時間混合する。次いで、当該ガムを前記ミキサーから取り出し、暖かい間にワックス紙の上でロールしてスティックの厚さにする。
【0057】
[徐放性配合物]
ある実施態様において、本明細書に記載の誘導体を、制御された方法で芳香を放出し得る系に混含する。これらには、消臭スプレー、洗濯用洗剤、布帛柔軟剤、脱臭剤、ローション、及び他の家庭用品等の基材が含まれる。当該芳香剤は、一般的に、本明細書に記載の1つ以上の精油の誘導体であり、それぞれは異なる量で存在する。当該内容全体が参照により本明細書中に組み込まれている米国特許第4,587,129号には、最大で90重量%の芳香剤または香油を含有するゲル物品の調製方法が記載されている。前記ゲルは、ヒドロキシ(低級アルコキシ)2-アルケノエート、ヒドロキシ(低級アルコキシ)低級アルキル2-アルケノエートまたはヒドロキシポリ(低級アルコキシ)低級アルキル2-アルケノエート、及びポリエチレン系不飽和架橋剤を有するポリマーから調製される。これらの材料は継続的な徐放特性を有し、すなわち、それらは芳香成分を長期間にわたり継続的に放出する。ここで、本発明を以下の非限定的な実施例を参照して説明することとする。
【実施例】
【0058】
<実施例1:シクロプロパン化シトラールまたはシトロネラール誘導体の調製及び香味特性>
[シトラール-6,7-シクロプロパンを製造するためのシトラールのシクロプロパン化]
以下の実験は、オレフィンをシクロプロパン化するための既知の方法に基づき、シクロプロパン化試薬の種々の化学量論的同等物を用いて多数回実施した。以下に示す量を用いて、前記に特定したモノシクロプロパン化シトラール誘導体を合成するための最適の結果を得た。試薬の相対的な量を増加させることを試みは、著しい量の副生物を生成させる結果となった。しかし、この反応は最適化されていなかった。シトラール及びシトラール-6,7-シクロプロパンの分離が最適化された場合、化学量論量より少ないジエチル亜鉛及びジヨードメタン反応物の使用が望ましい。しかし、前記分離が最適化されなかったので、完結するまで当該シクロプロパン化反応を進行させた。これらの反応について爆発性がある可能性が報告されているため、前記反応は爆風遮蔽板を隔てて実施された。前記ジヨードメタンを当該反応混合物にあまり早く加えると、これらの反応条件を用いたシクロプロパン化は問題があるかもしれないと考えられる。
【0059】
[シトラール-6,7-シクロプロパン]
オーブンで乾燥した500mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下で1,2-ジクロロエタン(85mL)を加えた。ジエチル亜鉛(30mL、ヘキサン中に1M)を加え、次いでジヨードメタン(15g)を1時間かけて滴下した。続いて30分間撹拌した(白色の沈澱物が生成した)後、シトラール(1.1g)を加え、当該反応物を室温でオーバーナイトで撹拌した。
【0060】
前記反応混合物を炭酸カリウム溶液(100mL、20%)中に注ぎ、次いでCelite(登録商標)を詰めた焼結漏斗でろ過した。当該有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して濃縮し、溶離液としてジクロロメタンを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、標題の化合物を得た。
【0061】
[シトラール-6,7-シクロプロパン中のアルデヒドの還元]
当該シトラール-6,7-シクロプロパンは、水酸化ホウ素ナトリウム及び水素化リチウム等のアルデヒド基を、第一級アルコールに還元すると知られているいずれかの試薬と事実上反応させることができる。特に少量でも過剰の還元剤が使用される場合、これらの反応は完結する傾向がある。処理は、典型的に、過剰の還元剤を抑制するために水を加え、存在するかもしれないいずれかのアルコキシドをプロトン化するために溶液のpHを調節し、得られた還元生成物を適切な有機溶媒中に抽出する工程を含む。当該抽出物は、硫酸ナトリウム等の適切な乾燥剤によって乾燥することができ、所望の化合物を得るために溶媒を除去する。所望の場合には、当該化合物を当業者に既知の技術を用いることによって、蒸留及び/またはクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0062】
[シトロネラールを用いた比較化学反応]
上述と同様の化学反応は、1つの二重結合があるだけなので、1つのシクロプロパン化生成物のみであることを除けば、シトロネラールに関しても繰り返すことができる(異なる立体異性体が存在することになるが)。シトロネラールのシクロプロパン化は、シトラールのシクロプロパン化に用いられた条件と実質的に同様の条件下で起こすことができる。同じ(水素化物または他の)還元剤を用いてアルデヒドが第一級アルコールに還元される前に、当該生成物は未精製でまたは精製して使用されて良い。
【0063】
[シトロネラール誘導体の香りプロファイル]
シトロネラール中の二重結合をシクロプロパン環、及びまたチイラン環に変換した場所でシトロネラール誘導体を調製し、いずれの場合にも、当該アルデヒド基は第一級アルコール基に還元された。両方の場合において、当該化合物ははっきりと新鮮なバラ系の印象を有した。
【0064】
これによって本発明の主題を開示してきたが、本発明の多くの変更形態、置換形態、及び変異形態がそれに照らして可能であることは明らかなはずである。具体的に記載した形以外で本発明を実行できることを理解されたい。そのような変更形態、置換形態、及び変異形態は本出願の範囲内であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトラールまたはシトロネラール誘導体であって、式:
【化1】

[式中、
Zは、O、S、またはC(R)2であり、
R1-R6は、独立して、H、C1-5アルキル、置換C1-5アルキル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、アミン、カルボン酸、エステル、ニトロ、シアノ、イソシアノ、スルホン酸、尿素、及びチオ尿素であり;
(式中、前記アルキル基上の置換基は、ハロ、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、アミン、カルボン酸、エステル、ニトロ、シアノ、イソシアノ、スルホン酸、尿素、及びチオ尿素から選択され);並びに、
点線は、当該CH2OH基が結合している炭素がR若しくはS配置にある、または前記2つの混合物として存在する、あるいはそれが結合している二重結合がEまたはZ配置にあること示す]
の1つを有するシトラールまたはシトロネラール誘導体。

【公表番号】特表2008−525474(P2008−525474A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548465(P2007−548465)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046550
【国際公開番号】WO2006/069224
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(506426328)フレクシトラル・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】