説明

改良されたマウスガード

ユーザの歯に係るマウスガードの成形を改良するための突起部を含む、ボイルアンドバイトマウスガードが記載される。また、マウスガードは、マウスガードの使用及び形成中にベースが薄くなることを最小限にする役割を果たす、ベースと壁の構造を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形の性能を改善したマウスガードに関する。
【背景技術】
【0002】
マウスガードは、外力に起因する損傷から選手の顔や口の硬い及び柔らかい組織を保護するために、例えば、ホッケーやラグビー等のスポーツで一般に使われる。
【0003】
マウスガードは、口や顔への外傷が生じる可能性のある、強い衝撃のかかるスポーツにおいて特に重要である。例えば、下あごの歯が上あごの歯と接触するのを防ぐための役割を果たす。そのため、力が下顔面部に加えられるとき、歯が折れること、歯の脱落、脳震盪、顎骨骨折、又は口の柔らかい組織の損傷の可能性はあまりない。
【0004】
マウスガードの1つのタイプは、「ストックマウスガード」として知られる。マウスガードのこのタイプは、それが使える形状でユーザに供給される。しかしながら、そのため、マウスガードがユーザの口の形状に適合せず、かつ、例えば、ユーザの全ての歯を覆わないであろう。
【0005】
また、マウスガードとユーザの歯との間での嵌合不良のために、ユーザの歯によって保持されないことは、マウスガードにとってよくあることである。そのため、マウスガードはぐらつき、ユーザは適当な位置にガードを保持するために、下あご、舌、又は唇を使う必要がある。これは、ユーザにとって話すことをより難しくし、かつ、呼吸を妨げるであろう。
【0006】
これらの制限を克服するために、いわゆる「ボイルアンドバイト」マウスガードがストックマウスガードの代わりに使われる。ボイルアンドバイトマウスガードは、熱可塑性の材料から作られる。大抵熱湯中で加熱すると、マウスガードの全部又は一部は、柔らかくなり、かつ、成形しやすくなる。材料がユーザの歯に適合するように、マウスガードは、ユーザの口及び加えられる圧力の中に挿入される。
【0007】
しかしながら、ストックマウスガードのフィットと比較して、これらのマウスガードより改善されたフィットがあるとはいえ、ボイルアンドバイトマウスガードは、ユーザの歯の形状を十分に形作らない。すなわち、マウスガードは、歯と歯肉が接触する接合部のくぼみをきっちりと形作らない。この接合部にきちんとフィットすることは、マウスガードが上あごの歯によって保持されるのに役立つので、マウスガードにとって望ましい。従って、ボイルアンドバイトマウスガードは接合部を十分に形作らないので、ボイルアンドバイトマウスガードはうまく保持されない。その結果、ストックマウスガードのように、下あご、舌、又は唇は、マウスガードを適当な位置に保つのを助けるために使われる必要があるであろう。
【0008】
さらに、ユーザの口でマウスガードを形作るのに用いられる方法のために、歯の咬合面を覆うマウスガードのベースの厚さは、妥当な水準の保護を与えるのに必要とする厚さより薄くなる可能性がある。このことは、マウスガードが与えることができる保護の程度を減らす。
【0009】
最も有効なマウスガードは、それぞれのユーザのために一つ一つ作られるカスタムマウスガードである。カスタムマウスガードは、ユーザの歯の印象を取ることによって作られる。ユーザの歯の印象は、ユーザの口の硬い及び柔らかい組織のキャストを形作るために使われることができる。カスタムマウスガードは、多くの場合工場で、ユーザの口のキャストの上に作られる。キャストの使用は、マウスガードがユーザの口を覆って正確にフィットすることを確実にする。さらに、マウスガードはマウスガードの材料をユーザが噛むことによって形作られはしないので、歯の咬合面を覆って形作られるマウスガードのベースは、薄くならない。しかしながら、これらのマウスガードは高価であり、従って、それはカスタムメイドマウスガードの特性の多くを持つ「ボイルアンドバイト」マウスガードを作るのに好都合である。
【0010】
ボイルアンドバイトマウスガードのベースにおいて薄くなることを軽減しようと試みるために使われている一つの方法は、マウスガードの中に、複合プラスチックを使うことである。プラスチックは、同じ温度で異なる可塑性を有する。
【0011】
3つの異なる種類のプラスチックを含むボイルアンドバイトマウスガードの一実施形態について、図1を参照して説明する。図1において、マウスガード10はベース材料12から作られる。ベース材料12はマウスガード10の底面の部分を形成し、かつ、マウスガード10の外面壁の部分を形成する。
【0012】
第2の材料14は、ベース材料12の上面に置かれる。第2の材料14は、同じ温度においてベース材料12より可塑性がある。
【0013】
第3の材料16は、同じ温度においてベース材料12や第2の材料14のどちらよりも可塑性があり、第2の材料14の上面に置かれる。材料の構造は、ユーザがそれを形作るためにマウスガード10にかじりつくとき、第3の材料16を力に応じて変形させるであろうし、第2の材料14が第3の材料16よりわずかに変形するであろうし、歯のそしゃく面を覆う面が薄くなる可能性を減らすために、ベース材料12が少ししか変形しないであろうことを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、この材料の構造はまだ最適な成形をもたらさない。マウスガードは上あごの歯からまだ緩むかもしれず、また、そのためにマウスガードは上あご、舌又は唇によって適当な位置に保たれることが、まだ必要である。そのために、ユーザの歯に改良されたフィットを提供し、かつ、歯のそしゃく面を覆う面の厚さを保つ、ユーザが形成できるマウスガードを持つことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様に従って、ベースと、ベースの外側から伸びる内壁と、ベースの内側から伸びる外壁と、及びベース、内壁又は外壁からの突起部と、を備えるマウスガードが与えられる。
【0016】
突起部は内壁及び外壁と略垂直であり、かつ、内壁から外壁にかけて伸びていることが望ましい。複数の突起部があり、かつ、突起部間に約5mmの距離があることが好都合である。
【0017】
ベースは第1の材料を備えていてもよい。第1の材料と第2の材料が同じ温度のとき、第1の材料は、第2の材料より可塑性が小さい。
【0018】
第1の材料は、内壁と外壁が少なくとも部分的に第1の材料を備えるように、内壁と外壁に及ぶことが望ましい。内壁と外壁に及ぶ第1の材料は、第1の材料及び第2の材料が内壁及び外壁と連結するように、第2の材料の突起部と相補的である突起部を備えることが好都合である。
【0019】
突起部は、材料が同じ温度のとき、内壁と外壁とベースが作られる材料より可塑性が大きい第3の材料を任意に備える。
【0020】
マウスガードは、第1の材料を含むベースと、第2の材料を含む内壁及び外壁と、を備える。第1の材料は、第1の材料と第2の材料が同じ温度のとき、第2の材料より可塑性が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図2は本発明の第1の実施形態に基くマウスガードの例を示す。
【0022】
マウスガード20は、少なくとも1つの熱可塑性の材料から作られる。熱可塑性の材料は、比較的に硬く、かつ、室温又は体温では永久的に変形させられない。例えば、2、3秒から2、3分のどこかである短時間の間、水中にマウスガードを置くことによって加熱すると、材料は可塑性になり、比較的小さい力で変形させられる。材料が室温又は体温に戻るとき、そのような変形は同じ状態を保ったままである。
【0023】
マウスガード20は、ベース22を備える。内壁24と外壁26は、ベース22から伸びる。ベース22は、マウスガード20の使用時、歯の咬合面に隣接するように作られる。内壁24は、歯の口蓋面に隣接する。外壁26は、マウスガード20の使用時、歯の頬面に隣接し、かつ、目に見える。
【0024】
マウスガード20のベース22は、1又は複数の突起部28を備える。複数の突起部がある場合、それらは、ベース、内壁及び外壁によって形成される範囲の至る所に、等距離で置かれることが望ましい。
【0025】
一実施形態では、突起部28は、マウスガード20の内壁24及び外壁26と同じ方向にベース22から伸びる。突起部は、図2、3に示されるように、ベース、内壁及び外壁と一体であり、かつ、垂直である熱可塑性の材料の薄板であることが望ましい。ユーザがマウスガードにかじりつくとき、突起部の構造は、突起部が歯にぴったりと形成され、かつ、内壁と外壁が一直線により保たれ、お互いに遠ざからないことを意味するので、これは効果がある。
【0026】
あるいは、突起部は、内壁と外壁の一方又は双方から伸びる、1又は複数の薄板から形成されてもよい(図示せず)。これらの突起部は、ベースと一体であるかどうか分からない。突起部は、突起部によって妨げられていないセンタを残して、マウスガードの幅を部分的に横切って伸びる。内壁と外壁の両側に複数の突起部がある場合、突起部は、その薄板が同一平面にあるように、お互いに対向して配置されてもよい。任意にそうしないで、突起部は、例えば、外壁からの突起部が、内壁からの二つの突起部の間に置かれるように、互い違いになってもよい。
【0027】
さらなる実施形態では、突起部は、内壁から外壁にかけて伸びる棒を備えてもよい。棒は、内壁の上端から伸びてもよく、又は内壁若しくは外壁の高さに従って他の適当な位置に設置されてもよい。2又は複数の棒は、それらがベースと垂直な、棒の列を形成するように任意に置かれてもよい。配列は、上から見たとき、棒が平行線を形成するようになるであろう。
【0028】
望ましくは、突起部の横断面で切った部分は1mmであり、かつ、突起部間の距離は約5mmである。しかしながら、他の適切な横断面で切った部分、及び間隔が用いられてもよい。いろいろな、横断面で切った部分、及び間隔は、マウスガードに組み入れられてもよい。
【0029】
ユーザの口にフィットするようにマウスガードを形作るために、マウスガードは、望ましくは熱湯中で、少なくとも突起部が可塑性になるまで熱せられる。次に、マウスガードはユーザの口の中に設置され、ユーザはマウスガードを噛む。突起部にかかる歯の力は、突起部を歯の形状に基いて形作って変形させる。歯に対するマウスガードの改良されたフィットは、このように実現可能である。
【0030】
さらに、突起部の幅がベースの幅よりずっと小さいので、突起部は突起部が作られる材料の変形温度により早く達する。従って、突起部は、ベースの最小限の変形で、ユーザの歯に適合されるマウスガードを作りだすために変形させてもよい。マウスガードは、ベースが薄くなることを軽減し、その結果、マウスガードがユーザに与える保護の程度を増加させる。
【0031】
さらにまた、ベースに発生する変形の程度を減らすために、ベースは少なくとも突起部の材料に比べて高い変形温度を持つ材料を含んでもよい。高い変形温度を持つベースを有するマウスガードは図4に示される。
【0032】
図4において、マウスガード20は、壁の変形温度よりも高い変形温度を持つベース22を備え、外壁26は図4に示される。ベース22が壁及び突出物より高い温度で変形するので、ベースは突出物が口によって形作られることができる温度で、最小限の変形を受ける。従って、ベースの変形する可能性は減らされ、それ故に、ベースが薄くなることは最小限となる。
【0033】
ベース材料と壁材料の間の連結を良くするために、壁は任意に、部分的にベース材料を備えてもよい。ベース材料と壁材料は、図4に示される突出部30と32のような相補的な突出部が、さらに有利に形成されてもよい。
【0034】
突出部30と32は、加熱中に、ベースと壁の間の付着力が維持されるように連結する。突出部はベースと内壁の間にも同様に存在してもよい(図示せず)。突出部は、壁の全長の全部周辺に伸びてもよい。あるいは、それらは壁の一部周辺にのみ伸びてもよい。
【0035】
マウスガードのベースは、高い変形温度を持つ材料を部分的にだけ含んでもよいことが理解されるであろう。マウスガードのベースは、一方が他方よりも高い変形温度を有する2つの材料を備えるようなベースである。また、2つの材料は、上述のような相補的な突出部が与えられてもよい。
【0036】
ベースから、かつ、内壁と外壁の間から伸びる突起部の材料は、壁の変形温度と同じ変形温度を持ってもよい。あるいは、それは壁の変形温度よりも低い変形温度を持ってもよい。突起部は、マウスガードの壁の形状の大きな変形なしで、歯を形作るように改良される壁よりもずっと低い温度で変形するであろうことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来技術に基くマウスガードを示す。
【図2】本発明に基くマウスガードの概観図を示す。
【図3】マウスガードの一端の投影図を示す。
【図4】壁よりも高い変形温度のベースを持つマウスガードの側面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスガードであって、
(a)ベースと、
(b)前記ベースの外側から伸びる内壁と、
(c)前記ベースの内側から伸びる外壁と、
(d)前記内壁から外壁へと伸びる突起部と、を備え、
前記ベースは第1の材料を備え、前記突起部は第2の材料を備え、
前記第1の材料と第2の材料が同じ温度のとき、前記第1の材料が第2の材料より可塑性が小さいことを特徴とする。
【請求項2】
変形温度を超えて熱せられるとき、前記突起部は可塑性になることを特徴とする請求項1に記載のマウスガード。
【請求項3】
使用時に、前記突起部は、変形温度を超えて熱せられるとき歯によって変形させられ、いったんマウスガードが変形温度以下まで冷却されると変形した状態を保持することを特徴とする請求項2に記載のマウスガード。
【請求項4】
前記突起部は、前記ベースから内壁と外壁の間を伸びることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のマウスガード。
【請求項5】
前記突起部は、前記内壁及び外壁と略垂直であることを特徴とする請求項4に記載のマウスガード。
【請求項6】
前記突起部は、薄く、平らな突起部であることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のマウスガード。
【請求項7】
前記突起部は、前記内壁から外壁にかけて伸びる棒を備えることを特徴とする請求項1に記載のマウスガード。
【請求項8】
前記棒は、前記内壁の上端から伸びることを特徴とする請求項7に記載のマウスガード。
【請求項9】
前記ベースに垂直な線上に置かれる複数の前記棒を備えることを特徴とする請求項7に記載のマウスガード。
【請求項10】
前記マウスガードのベース、内壁及び外壁によって形成される範囲の至る所に、等距離で置かれる複数の前記突起部があることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のマウスガード。
【請求項11】
前記マウスガードは、複数の前記突起部を含み、該突起部間に約5mmの距離があることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のマウスガード。
【請求項12】
前記内壁と外壁は、第3の材料を備え、
前記第1の材料は、前記内壁と外壁が少なくとも部分的に第1の材料を備えるように、前記内壁と外壁の第3の材料に及ぶことを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のマウスガード。
【請求項13】
前記内壁と外壁に及ぶ第1の材料は、前記第1の材料と第2の材料が内壁及び外壁と連結するように、前記第3の材料の突起部と相補的である突起部を備えることを特徴とする請求項12に記載のマウスガード。
【請求項14】
前記第2の材料は、材料が同じ温度であるとき、前記内壁と外壁とベースが作られる材料より可塑性があることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載のマウスガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−533119(P2009−533119A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504807(P2009−504807)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001300
【国際公開番号】WO2007/116213
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508307676)オプロ インターナショナル リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】OPRO INTERNATIONAL LIMITED