説明

改良された前立腺癌診断学のための質量顕微鏡法

本発明は、前立腺癌と正常組織とを識別することができるバイオマーカー、および関連する転移性疾患の同定を提供する。一つのバイオマーカーは、MEKK2のペプチド断片であることが同定された。一つまたは複数のバイオマーカーの差次的な発現を検出することにより、転移性癌を含む前立腺癌を診断する方法も、提供される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府により後援された研究に関する記述
本明細書に記載された研究は、NIH/NCI Early Detection Research Networkにより授与されたグラント2 U0 CA085067の下で政府による援助を受けて実施された。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本願は、参照により完全に本明細書に組み入れられる2008年3月14日出願の米国仮出願第61/036,837号の35U.S.C.§119(e)による恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
前立腺癌(PCa)は、米国で最も一般的な悪性腫瘍のうちの一つである(1)。それは、臨床的に不均一であり、高度に可変性の自然経過を有する(2)。早期検出のための血清前立腺特異抗原(PSA)モニタリングの発見および広範な利用によって、前立腺癌が診断され処置される方式は大きく変化した。しかしながら、PSAは、前立腺癌のためのスクリーニングツールとしての特異性を欠き、癌を完全に排除するPSAの下限値は、実際、存在しない(3)。従って、PCaにおける臨床的判定は、生検の結果に大きく依存している。超音波ガイド下針生検が診断のための標準であるが、陰性結果は、癌の存在を排除しない。試料採取および分析の両方の変数が、偽陰性結果の原因となる。実際、偽陰性結果は、診断および処置を遅延させるかもしれない反復生検の必要を発生させるか、または癌のない者に、反復生検ならびにそれに付随する不安およびリスクを不必要に負わせることになる(4、5)。前立腺癌による死亡率は、肺、膵臓、および結腸のようなその他の主要な癌によるものと比較して比較的低いため、前立腺癌の不均一性も有意な問題である。PCaのために広く採用されているグリーソン(Gleason)分類は、予後の強力な予測法である(6)。しかしながら、この分類の主要な限界、および侵襲的なスクリーニング手技の結果は、新たに診断される前立腺癌例の大多数が、グリーソン悪性度6または7の腫瘍であるという点である。これらの中分化腫瘍は、緩徐進行性または侵襲性のいずれかであり得る(7)。診断および予後判定の両方において病理学者を支援する新たな方法が、前立腺癌の検出および処置を補助するために必要とされている。
【0004】
組織のマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量顕微鏡法(imaging mass spectrometry)(MALDI-IMS)は、定性的かつ定量的に、タンパク質レベルで、インサイチューで、疾患特異的な変化をモニタリングするために使用され得る(8)。この技術は、組織内の発現を調査し、組織内の起始点に出力を登録することにより、新たな分子マーカーの発見のためにも、既知のマーカーの分析のためにも、有望である。MALDI-IMSは、質量分析の分子的詳細を、形態学と結び付け、組織切片内の直交的に特徴決定された位置に相関した質量スペクトルを作成する力を有している(9〜11)。いくつかの最近の研究は、臨床的な組織病理学適用のためのMALDI-IMSの可能性を強調している。組織から入手されたタンパク質発現プロファイルは、肺癌亜型を識別することができた(12)。腫瘍組織学、治療応答、および患者生存率が、乳房腫瘍における直接組織分析から入手されたタンパク質発現パターンと相関することが示された(13、14)。タンパク質発現パターンおよび画像は、脳腫瘍組織学および患者生存率とも相関することが見出された(15)。MALDI-IMSを使用した同様の発見の試みは、卵巣癌、結腸癌、および前立腺癌における可能性のある候補を与えた(16、18)。
【0005】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語が、この開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものに類似しているかまたは等価である方法および材料が、本開示の実施または試行において使用され得るが、適当な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及された全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照が、参照により完全に組み入れられる。さらに、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定するためのものではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、プロテオミクスプロファイリングによる前立腺の健康の検出および決定に関する。本発明は、前立腺組織のような臨床試料からプロファイリングされ特徴決定されたバイオマーカーを提供する。これらのバイオマーカーは、前立腺疾患の検出および診断のためのプロテオミクスプロファイリング系を開発するために使用され得る。陰性診断(例えば、正常または無疾患)と比較して、マーカーは、様々に、より高頻度に検出されるか、より低頻度に検出されるか、または差次的に検出される。患者の試料における、単独の、または組み合わせられた、これらのマーカーの測定は、診断医が転移性前立腺癌の推定的診断を含む前立腺癌の推定的診断と相関させることができる情報を提供する。いくつかの態様において、バイオマーカーには、表1および2にリストされたものが含まれる。その他の態様において、バイオマーカーには、MEKK2またはその断片もしくはバリアントが含まれる。
【0007】
本発明は、これらの新規バイオマーカーを検出することにより前立腺癌の診断において補助として使用され得る方法も提供する。試験試料における、単独の、または組み合わせられた、これらのバイオマーカーの検出および測定は、個体の前立腺の健康の予後と相関させられ得る情報を提供する。バイオマーカーは、分子量により特徴決定され得る。バイオマーカーは、例えば、質量分析により、試料中のその他のタンパク質から分解され得る。いくつかの態様において、分解の方法はMALDI-IMSを含む。
【0008】
いくつかの態様において、本発明は、以下の工程を含む、対象における前立腺癌を診断する方法を提供する:(a)対象から一つまたは複数の試験試料を入手する工程;(b)M3373、M3443、M3488、M4027、M4274、M4355、M4430、M4635、M4747、M4972、M8205、およびM10111より選択される少なくとも一つのタンパク質マーカーの一つまたは複数の試験試料における差次的な発現を検出する工程;ならびに(c)少なくとも一つのタンパク質マーカーの対照量と比較された、一つまたは複数の試験試料における少なくとも一つのタンパク質マーカーの量を考慮に入れて、少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現の検出を前立腺癌の診断と相関させる工程。
【0009】
いくつかの態様において、本発明は、以下の工程を含む、対象における転移性前立腺癌を診断する方法を提供する:(a)該対象の前立腺腫瘍組織から一つまたは複数の試験試料を入手する工程;(b)M4030、M5364、M9533、M6186、M3230、M3817、M3245、M9767、M8963、M9091、M9021、およびM6344より選択される少なくとも一つのタンパク質マーカーの一つまたは複数の試験試料における差次的な発現を検出する工程;ならびに(c)少なくとも一つのタンパク質マーカーの対照量と比較された、一つまたは複数の試験試料における少なくとも一つのタンパク質マーカーの量を考慮に入れて、少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現の検出を転移性前立腺癌の診断と相関させる工程。
【0010】
試験試料は、精漿、血液、血清、尿、前立腺液、精液(seminal fluid)、精液(semen)、および前立腺組織に由来し得、生検時または術後を含む任意の時点で対象から入手され得る。
【0011】
いくつかの態様において、試験試料は第1および第2の連続前立腺組織切片である。他の態様において、方法は、第1の連続前立腺組織切片を染色し、染色された第1の連続組織切片を、第2の連続前立腺組織切片において検出された少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現と比較する工程(d)をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
(図1)ヒト前立腺組織の直接組織質量分析が、細胞特異的なプロファイルを明らかにすることを示す。凍結前立腺組織を、MALDIイメージングのために加工し、SPAマトリックスによりコーティングした後、リニアモードでスペクトルを取得した。A)前立腺癌(T)、良性前立腺(B)、および良性間質(S)の区域を示すH&E染色前立腺組織の代表的な組織学画像。B)異なる細胞型に関する特徴的なプロファイルを示す、示された各領域から取得された、結果として得られた平均スペクトル。挿入図は、各細胞型に関するプロファイルの差を示す、質量範囲m/z3000〜5300の拡大ビューである。C)腫瘍領域および未関与領域を含有している単一前立腺組織のMALDI-IMS。a)PCa腺および良性腺の画定された区域を含有している組織標本のH&E画像。各細胞型の拡大ビュー(10倍)が、挿入図に示される。b)PCa区域におけるm/z4355のピークの高発現を示す、結果として得られた組織の2Dイオン密度マップ(挿入図はマトリックス沈着後の組織のスキャンである)。c)m/z4355のイオンの差次的な発現を示す、PCa領域において入手された単一スポット(T)および良性隣接腺区域(B)からの代表的なスペクトル。D)PCa含有組織および良性前立腺組織のMALDI 2Dイオン密度マップ。(円で囲まれた)病理によって画定されたPCaの領域が示される。結果として得られたMALDI-IMSからの赤色の区域は、m/z4355の高発現を示す。各組織の代表的な領域からエクスポートされたスペクトルが、4000〜4600のm/z範囲で示され、m/z4355ピークプロファイルを示している(上パネル)。
(図2)m/z4355についての規準化された強度値が、腫瘍を良性組織から識別し得ることを示す。A)異なる前立腺組織区域におけるm/z4355についての規準化された平均強度値。計23のPCa含有組織、14の良性隣接組織、および31の遠位良性組織を、MALDI-IMSにより分析した。m/z4355ピークについての結果として得られた規準化された平均強度値を、PCa領域、良性隣接領域、および良性遠位領域についてプロットした。ゼロに最も近いボックスの境界は25パーセンタイルを示し、ボックス内の線は中央値を示し、ゼロから最も遠いボックスの境界は75パーセンタイルを示す。ボックス上下の線は90パーセンタイルおよび10パーセンタイルを示す。p=3.2E-5 **p=4.0E-10。B)推定バイオマーカーのPCa組織区域を検出する予測力を、受信者動作特性(ROC)曲線下面積を使用して試験した。PCa組織についてのMALDI-IMSスペクトルから入手された規準化された平均強度値を、グリーソン悪性度C)または病理学的病期D)に従ってプロットした。病理学的病期pT3b(n=5)またはpT4(n=3)を有する高悪性度試料(n=8:悪性度4+4(n=4)、4+5(n=4)を有する組織に由来)は、プロットには含めたが、バリデーションセットには含めなかった。
(図3)m/z4355のペプチドの配列同定を示す。A)リニアモードまたはリフレクトロンモードで各パネルに示されるような組織または組織溶解物から直接取得により収集されたm/z4355のピークプロファイルを示すスペクトル。B)TOF/TOF LIFTを使用して収集されたモノアイソトピックピーク(m/z4350.4)のデコンボリュートされたMS/MSスペクトル。内部断片に起因するピークが標識され、矢印により示される。
(図4)PCa領域の組織上トリプシン消化が、MEKK2断片の予測されたペプチドを検出することを示す。A)円で囲まれた腺癌の領域を含むPCa組織のH&E染色画像(上)およびm/z4355の親イオンの空間分布を示すMALDI-IMS(下)。B)組織上でのトリプシン処理後、配列決定されたMEKK2断片(SEQ ID NO:1):(

、検出された断片は太字になっている)に対応する4個の予測された断片がPCa組織において検出された。対照は、トリプシン処理なしのPCa組織の同一切片である。前立腺組織の良性切片もトリプシン処理した。C)トリプシン処理組織にのみm/z631.3のイオンが存在することを示す、トリプシン処理されたPCa組織(上)およびトリプシン処理されていないPCa組織(下)からの代表的なスペクトル。D)示された前立腺癌細胞系および組織溶解物におけるMEKK2の発現についてのウェスタンブロット分析。PCa細胞系(30μg)および組織溶解物(100μg)のウェスタンブロットを、MEKK2のN末端領域に対する抗体を使用して実施した。アクチンをローディング対照として使用した。
(図5)前立腺組織におけるMEKK2発現を示す。A)凍結前立腺組織切片の免疫組織化学分析。円で囲まれたPCAの領域を含むH&E染色前立腺組織(左パネル)。PCa領域における染色を示すMEKK2染色連続切片、および一次抗体なしの対照切片(中央パネル)。MEKK2について染色されたPCaの領域における高発現を示す、結果として得られたm/z4355についてのMALDI-IMS 2Dイオン密度マップ。B)MEKK2が腺癌細胞において強く発現されており、良性腺においてはほとんど発現されていないことを示す、三つの良性組織(拡大率100倍)および三つのPCa組織(拡大率200倍)からのMEKK2染色の代表的な区域。C)二つの組織試料におけるm/z4355 MALDI-IMS発現に対応するMEKK2免疫染色。良性組織(上)およびPCa組織(グリーソン3+3:下)についてのH&E染色連続切片(左パネル)が、m/z4355発現を示す対応するMALDI-IMS 2Dイオン密度マップ(中央パネル)と共に示される。MEKK2免疫染色は右パネルに示される(拡大率50倍)。
(図6)MALDI-IMSのLCM MALDI-TOFとの比較を示す。上パネルは、MALDI-TOFにより分析されたマイクロダイセクトされた100個の前立腺癌細胞および抽出物から作成された代表的なスペクトルである。下パネルは、隣接スライスにおける同一組織のMALDI-IMSから作成された代表的なスペクトルである。
(図7)特定のm/z値を利用したMALDI-IMSが、前立腺と共にPCa特異的領域を同定し得ることを示す。ヒト前立腺組織の直接プロファイリングは、PCa領域において過剰発現された特異的ピークおよび過少発現された特異的ピークの両方を明らかにした。A)m/z4355およびm/z4027の二つのピークの過剰発現およびm/z4274の過少発現を示す、PCa領域および良性隣接領域についての特徴的なプロファイルを示す平均スペクトル。B)左−癌性腺の10倍ビュー(挿入図)を含む、病理学者により円で囲まれたPCaの区域を含有している代表的な組織のH&E染色組織学的画像。右−A)に示された各ピークについての発現パターンを示す対応する画像、および三つのピーク全ての組み合わせ画像。
(図8)PCa組織対良性組織のMALDI 2Dイオン密度マップを示す。前立腺全摘除術を受けた8人の患者から入手された組織を、MALDI-IMSのために加工した。2Dイオン密度マップ(中央パネル)は、連続H&E切片(下パネル)の調査により指定されたROIに特異的なm/z4355の発現(上パネル)を使用して作成された。発現レベルは、スケール挿入図に示されるような色と関係がある。腫瘍を有する四つの切片(a、b、c、d)および良性組織の四つの切片(e、f、g、h)が示される。
(図9)MEKK2の断片としてのm/z4355の配列同定を示す。マスコット(Mascot)検索は、配列が、MEKK2のPB-1ドメインにマッチし、この領域についての36%の配列包括度を示すことを同定した。
(図10)同一リスク疾患を有する患者の関与領域からの組織を使用した、微小転移性(micrometastatic)PCaのMALDI-IMS分析を示す。続いて、「Met」群(1、2、3)は、転移性疾患を保有していることが見出され、「マッチ」群(4、5、6)は保持していなかった。A)は、m/z4030(上パネル)およびm/z5364(下パネル)の強度を使用したMALDI-IMS画像を示す。B)は、同一悪性度GS 3+4の関与組織に関して描かれたROIを含むMet(3b)およびマッチ(4b)の鏡像H&E画像を示す。
(図11)UMFix加工された前立腺組織のMALDI-IMSイメージングを示す。上パネルは、PCaの区域におけるm/z4376のピークの高発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の原理の理解を促進することを目的として、ある種の態様が以下に参照され、それらを記載するために特定の言語が使用されるであろう。にも関わらず、それらは、本発明の範囲を限定するためのものではなく、本発明が関する技術分野の当業者に通常想到されるような、本明細書に例示されるような本発明の改変およびさらなる修飾、ならびに本発明の原理のさらなる応用が、企図されることが理解されるであろう。
【0014】
本発明は、前立腺癌を有する対象の診断または同定において有用であることが本明細書において示される独特のマーカーを提供する。本発明のマーカーは、前立腺癌を有しないことが既知の対象からの対照試料における発現と比較して、前立腺癌を有する対象からの試験試料において差次的に発現されている、即ち、欠如している/ダウンレギュレートされているか、またはアップレギュレートされていることが示される。本明細書において同定されたマーカーは、前立腺癌の状態を、正常または非疾患のような良性状態から区別することが示される。本明細書において同定されたマーカーは、転移性前立腺癌を非転移性前立腺癌から区別することも示される。本明細書に開示されるような転移状態の診断には、前立腺疾患を有していると推定される対象からの試験試料における特定のマーカーの存在についての調査が含まれるが、これに限定はされない。前立腺疾患の異なる病期を区別する能力は、対象の状態の処置または管理にとって重要な意義を有する。
【0015】
前立腺腫瘍またはその周辺組織における変化は、疾患状態の診断および予後判定のための利用可能性を有し得る。切除された組織における変化の観察の診断的利用可能性は、生検時または術後のいずれかになされる判定へ及ぶ。これらの時点でなされる主要な判定は、生検時の疾患の存在および重度の決定、ならびに前立腺除去後の疾患状態の再査定に焦点が置かれる。
【0016】
ある種の態様において、本発明は、対象における前立腺癌の診断を補助するバイオマーカーを提供する。そのようなバイオマーカーは、前立腺癌に存在し、癌状態と良性状態との間の高い識別を示す。前立腺癌状態および良性状態の試験試料において差次的に存在するバイオマーカーの発見は、例えば、生検時または術後に前立腺組織から得られた画像を検査し、疾患の診断および病期決定/悪性度決定を提供することが課されている病理学者に、重要な分子的情報を提供する。過剰発現または過少発現される一つまたは複数のバイオマーカーの位置を組織領域にマッピングし、分子マップを、染色された鏡像組織と比較することにより、病理学者による疾患の診断は、少なくとも二通りに改良される:原発腫瘍が類似しているように見える場合に、より侵襲性の癌および/または関連する微小転移性疾患が同定され得る;色分けされた鏡像組織を介した判定に、分子的詳細を提供することにより、専門ではない病理学者が、専門の病理学者と同等に作業し得る。
【0017】
ある種の態様において、本発明は、転移性前立腺癌と非転移性前立腺癌とを判別するバイオマーカーを提供する。そのようなバイオマーカーは、原発腫瘍組織に見出され、転移性疾患を有する個体と転移性疾患を有しない個体との識別を補助することができる。そのようなバイオマーカーは、癌患者における「微小転移性」(潜在性)疾患を同定し、従って、前立腺全摘除術からそれらを救済し、適切な全身性治療にそれらを向け直すことができる。
【0018】
前立腺癌診断薬としてのバイオマーカー
バイオマーカーとは、試料中のその存在が、対象の表現型状態を決定するために使用されるか、または生理学的予後(例えば、前立腺の健康もしくは疾患状態)を予測する有機生体分子である。いくつかの態様において、バイオマーカーは、組織または血清のような非侵襲的に採取された生物学的な試料または液体に差次的に存在する。異なる群におけるバイオマーカーの発現レベルの平均値または中央値が統計的に有意であると計算される場合、バイオマーカーは異なる表現型状態の間で差次的に存在する。統計的有意性についての一般的な試験には、とりわけ、t検定、ANOVA、クラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)、ウィルコクソン(Wilcoxon)、マン・ホイトニー(Mann-Whitney)、およびオッズ比が含まれる。単一のバイオマーカーまたは特定のバイオマーカーの組み合わせは、対象が一つの表現型状態またはもう一つの状態に属する相対リスクまたは確率の尺度を提供する。従って、それらは、疾患(診断学)、薬物の治療的有効性(テラノスティクス(theranostics))、薬物毒性、ならびに免疫応答の予測および同定のためのバイオマーカーとして有用である。
【0019】
本発明により、少なくとも一つのバイオマーカーが検出され得る。同定されたバイオマーカーのいくつかまたは全部を含む、一つまたは複数のバイオマーカーが、検出され、続いて分析され得ることが理解されるべきであり、本明細書に記載される。さらに、本発明のバイオマーカーのうちの一つまたは複数を検出し得ないこと、または前立腺の健康の特定の状態と相関し得るレベルもしくは量でのそれらの検出が、最も好ましい処置計画を選択するための手段として有用であり、望ましいこと、そしてそれらが本発明の企図された局面を形成することが理解されるべきである。
【0020】
本発明は、前立腺疾患の異なる状態を有する個体を区別するために使用され得るバイオマーカーを提供する。バイオマーカーは、質量分析により決定されるような質量電荷比、飛行時間型質量分析におけるスペクトルピークの形、および吸着性表面に対する結合特徴により特徴決定され得る。これらの特徴は、特定の検出された生体分子が本発明のバイオマーカーであるか否かを決定するための一つの方法を提供する。これらの特徴は、バイオマーカーが識別される様式における過程の限定ではなく、バイオマーカーの固有の特徴を表す。
【0021】
本発明のバイオマーカーは、質量分析により決定されるような質量電荷(m/z)比により特徴決定され得る。各バイオマーカーの質量電荷比は「M」として提供される。従って、例えば、M2454.00は、2454.00という測定された質量電荷比を有する。質量電荷比は、適切な市販の質量分析計で作成された質量スペクトルから決定される。いくつかの態様において、装置は、約+/-0.3パーセントの質量精度を有するであろう。さらに、装置は、約400〜1000m/dm(mは質量であり、dmは0.5ピーク高における質量スペクトルピーク幅である)の質量分解能を有するであろう。バイオマーカーの質量電荷比は、適切な市販のソフトウェアを使用して決定され得る。ソフトウェアは、質量分析計により決定されるような、分析された全てのスペクトルからの同一ピークの質量電荷比をクラスター化し、クラスターにおける最大および最小の質量電荷比をとり、2で割ることにより、バイオマーカーに質量電荷比を割り当てる。
【0022】
本発明に係るバイオマーカーには、タンパク質、タンパク質断片、およびペプチドが含まれる。バイオマーカーは、精漿、血液、血清、尿、前立腺液、精液(seminal fluid)、精液(semen)、または前立腺組織のような試験試料から単離され得る。バイオマーカーは、その質量および結合特徴の両方に基づき、当技術分野において公知の任意の方法により単離され得る。例えば、バイオマーカーを含む試験試料は、本明細書に記載されるようなクロマトグラフィ分画に供されてもよく、さらなる分離、例えば、アクリルアミドゲル電気泳動による分離に供されてもよい。バイオマーカーの同一性の知識は、イムノアフィニティクロマトグラフィによる単離も可能にする。本明細書において使用されるように、「検出」という用語には、バイオマーカーの存在、欠如、量、またはそれらの組み合わせの決定が含まれる。バイオマーカーの量は、例えば、質量分析により同定されるようなピーク強度、またはバイオマーカーの濃度により表されてもよい。
【0023】
バイオマーカーの検出
いくつかの態様において、本発明は、バイオマーカーを検出する方法を提供する。記載されたマーカーのうちの任意の一つまたは組み合わせが、本発明のこの局面の範囲内にあり、検出され得る。これらのマーカーを検出する方法は、多くの適用を有する。例えば、一つのマーカーまたはマーカーの組み合わせは、前立腺癌状態と良性状態との判別を補助するために検出され得、従って、患者における前立腺癌の診断における補助として有用である。もう一つの例において、一つのマーカーまたはマーカーの組み合わせは、転移性前立腺癌と非転移性前立腺癌との判別を補助するために検出されてもよい。いくつかの態様において、マーカーは、気相イオン分光分析により検出される。いくつかの態様において、マーカーは、質量分析、特に、レーザー脱離質量分析により検出される。
【0024】
エネルギー吸収分子(例えば、溶液中の)が、プローブまたは基質の上のバイオマーカーに適用され得る。噴射、ピペッティング、または浸漬が使用され得る。エネルギー吸収分子とは、気相イオン分光計においてエネルギー源からエネルギーを吸収し、それにより、プローブ表面からのマーカーまたはその他の物質の脱離を支援する分子をさす。例示的なエネルギー吸収分子には、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸、およびジヒドロキシ安息香酸が含まれる。
【0025】
いくつかの態様において、質量分析計がバイオマーカーを検出するために使用され得る。典型的な質量分析計においては、プローブまたは基質が、質量分析計の導入系へ導入される。次いで、アナライトが、レーザー、高速原子衝撃、または高エネルギープラズマのような脱離源により脱離されられる。作成される脱離した揮発種は、予め形成されたイオン、または脱離事象の直接の結果としてイオン化される中性物質からなる。作成されたイオンは、イオン光学アセンブリーにより収集され、次いで、質量分析機が、通過するイオンを分散させ、分析する。質量分析機から排出されるイオンが、検出器により検出される。次いで、検出器が、検出されたイオンの情報を質量電荷比へと翻訳する。マーカーまたはその他の物質の存在の検出は、典型的には、シグナル強度の検出を含むであろう。これが、次に、試料上のマーカーの量および特徴を反映することができる。
【0026】
いくつかの態様において、レーザー脱離飛行時間型質量分析計が、本発明のバイオマーカーを検出するために使用される。レーザー脱離質量分析においては、結合したアナライトを有するプローブが導入系へ導入される。アナライトは、イオン化源からのレーザーにより、気相へと脱離されられ、イオン化される。作成されたイオンは、イオン光学アセンブリーにより収集され、次いで、飛行時間型質量分析機において、イオンは短い高電圧場を通って加速され、高真空チャンバーへ漂着する。高真空チャンバーの末端部で、加速されたイオンは、異なる時点で高感度検出器表面に衝突する。飛行時間はイオンの質量の関数であるため、イオン形成とイオン検出器衝撃との間の経過時間が、特定の質量電荷比の分子の存在または欠如を同定するために使用され得る。当業者が認識するように、レーザー脱離飛行時間型質量分析計のこれらの成分のうちの任意のものが、脱離、加速、検出、時間測定等の様々な手段を利用する質量分析計のアセンブリにおいて、本明細書に記載されたその他の成分と組み合わせられてもよい。もう一つの態様において、イオン移動度分光計が、マーカーを検出し特徴決定するために使用されてもよい。イオン移動度分光分析の原理は、イオンの異なる移動度に基づく。特に、イオン化により作製された試料のイオンは、電場の影響下にあるチューブ内を、例えば、質量、電荷、または形状の差のため、異なる速度で移動する。イオン(典型的には、電流の形態)は、検出器に登録され、次いで、それが試料中のマーカーまたはその他の物質を同定するために使用され得る。イオン移動度分光分析の一つの利点は、大気圧で運転され得るという点である。
【0027】
マーカーの脱離および検出により作成されたデータは、プログラム可能なディジタルコンピューターの使用により分析されてもよい。コンピュータプログラムは、一般に、コードを記憶する読取り可能な媒体を含有している。プローブ上の各特色の位置、その特色における吸着剤の同一性、および吸着剤を洗浄するために使用された溶出条件を含む、ある種のコードは、メモリーに充てられてもよい。次いで、この情報を使用して、プログラムは、ある種の選択性特徴(例えば、使用された吸着剤および溶出剤の型)を画定して、プローブ上の特色のセットを同定することができる。コンピューターは、プローブ上の特定のアドレス可能な位置から受容された様々な分子量におけるシグナルの強度に関するデータを、入力として受容するコードも含有している。これらのデータは、任意で、検出された各マーカーについてのシグナルの強度および決定された分子量を含め、検出されたマーカーの数を示すことができる。
【0028】
データ分析は、検出されたマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ)を決定し、「外れ値」(予定された統計分布を逸脱するデータ)を除去する工程を含んでいてもよい。例えば、観察されたピークは、規準化され得る(何らかの参照に対して相対的な各ピークの高さが計算される過程)。例えば、参照は、スケールにおいてゼロとして設定される、装置および化学物質(例えば、エネルギー吸収分子)により作成されたバックグラウンドノイズであり得る。次いで、各マーカーまたはその他の物質について検出されたシグナル強度が、望まれたスケール(例えば、100)で、相対強度の形態で表示され得る。または、検出された各マーカーまたはその他のマーカーについて観察されたシグナルの相対強度を計算するための参照として、標準物からのピークが使用され得るよう、標準物が試料と共に送り込まれてもよい。
【0029】
コンピューターは、表示のため、得られたデータを様々なフォーマットに変換することができる。「スペクトルビューまたはリテンテート(retentate)マップ」と呼ばれる一つのフォーマットにおいては、各々の特定の分子量で検出器に到達するマーカーの量を描写する標準的なスペクトルビューが表示され得る。「ピークマップ」と呼ばれるもう一つのフォーマットにおいては、ピークの高さおよび質量情報のみがスペクトルビューから保持され、より簡素な画像を与え、ほぼ同一の分子量を有するマーカーをより容易に見ることを可能にする。「ゲルビュー」と呼ばれるさらにもう一つのフォーマットにおいては、ピークビューからの各質量が、各ピークの高さに基づきグレースケール画像へと変換され、電気泳動ゲル上のバンドに類似している外観をもたらすことができる。「3Dオーバーレイ」と呼ばれるさらにもう一つのフォーマットにおいては、相対的なピークの高さの微細な変化を研究するため、いくつかのスペクトルが重ね合わせられ得る。「ディファレンスマップビュー」と呼ばれるさらにもう一つのフォーマットにおいては、二つ以上のスペクトルが比較され、独特のマーカーおよび試料間でアップレギュレートまたはダウンレギュレートされているマーカーを便利に強調することができる。二つの試料からのマーカープロファイル(スペクトル)は、視覚的に比較されてもよい。
【0030】
MALDI-IMSによるバイオマーカーの同定
ある種の態様において、本発明は、MALDI-IMSまたはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析組織イメージングの使用により同定された、前立腺癌および良性状態の試料に差次的に存在するバイオマーカーを提供する。MALDI-IMSは、例えば、参照により完全に本明細書に組み入れられる米国特許第5,808,300号に記載されている。
【0031】
MALDI-IMSは、生物学的試料のイメージングを可能にし、ペプチドおよびタンパク質のような生物学的試料の分析への多くの適用において極めて多用途であることが示されている技術である。典型的には、試料は、試料中の化合物のアブレーションおよびイオン化を容易にするためのマトリックスとして作用する有機化合物と混合される。このマトリックスの存在は、生物学的材料の分析においてレーザー脱離技術を使用するために要求される感度および特異性を提供するのに必要である。特に、極めて高い感度が必要とされる場合、マトリックスの薄層の適用が特別の利点を有する。
【0032】
MALDI-IMSは、一つまたは複数のm/z図において試料の画像を作成するために使用され得、最初の生物学的試料のX、Y座標において特定の分子の濃度をマッピングする能力を提供する。MALDI-IMS「画像」が、焦点領域からの組織タンパク質/ペプチドの脱離および測定により獲得され、それが、続いて、組織領域全体を横切って合計される。各「スポット」は、スポットのグリッド配置に起因する1枚の合成写真である。このように、過剰発現または過少発現されたタンパク質/ペプチドは、組織領域に関連した関連発現を有し得る。事実、別個のペプチドを選択的に発現する組織の領域は、MSデータから見られる高発現の区域を示すであろう。ある種の態様において、そのような画像は、病理学者により検査される鏡像組織にマッチさせられ得、疾患の診断および病期決定/悪性度決定を補助するための補足的情報を病理学者に提供する。
【0033】
前立腺癌と非前立腺癌との識別を補助するバイオマーカーのセットが、MALDI-IMSを使用して同定された。これらのバイオマーカーは、表1にリストされる。
【0034】
(表1)

【0035】
分子量4355m/zのバイオマーカーは、MAPキナーゼファミリーのメンバーであるMEKK2のペプチド断片であることが同定された。実施例1に示されるように、このバイオマーカーは前立腺癌状態と良性状態とを正確に判別した。
【0036】
MEKK2およびMAPキナーゼ
いくつかの態様において、本発明は、MEKK2、MEKK2の断片、またはMEKK2のバリアントである少なくとも一つのタンパク質マーカーの対象から入手された一つまたは複数の試験試料における差次的な発現を検出する工程を含む、対象における前立腺癌を診断する方法を提供する。
【0037】
細胞調節がなされる主要な機序のうちの一つは、膜を介した細胞外シグナルの伝達を通したものであり、その伝達が、次に、細胞内の生化学的経路をモジュレートする。タンパク質リン酸化は、細胞内シグナルが分子から分子へと増幅され、最終的に細胞応答をもたらす一つの課程を表す。これらのシグナル伝達カスケードは、高度に調節されており、多くのプロテインキナーゼおよびプロテインホスファターゼの存在により証明されるように、しばしば重複している。多数の疾患状態および/または障害が、キナーゼカスケードの分子成分の異常な発現または機能的変異のいずれかの結果であると考えられている。従って、これらのタンパク質の特徴決定には多大の注目が注がれている。
【0038】
ほぼ全ての細胞表面受容体が、シグナル伝達においてマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)カスケードのうちの一つまたは複数を使用する。MAPキナーゼの三つの別個のサブグループが同定されており、これらは、各々、下流キナーゼの特定のモジュールからなる。MAPキナーゼの一つのサブグループは、Jun N末端キナーゼ/ストレス活性化プロテインキナーゼ(JNK/SAPK)カスケードである。この経路は、最初は癌遺伝子および紫外線により刺激されるキナーゼ経路として同定されたが、現在は、増殖因子、サイトカイン、およびT細胞同時刺激により活性化されることが公知である(19)。
【0039】
MEKK2(マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ2、MEKキナーゼ2、およびMAP/ERKキナーゼキナーゼ2としても公知)は、マイトジェン刺激に対する細胞応答を媒介するよう機能する二重特異的セリン/トレオニンキナーゼである。MEKK2タンパク質は、MAPキナーゼ経路の三つの分枝のうちの二つに関連したシグナリング事象を調節することが示されている。最初はマウスNIH3T3細胞から単離されクローニングされたが、MEKK2のヒト配列もクローニングされ同定されている(20)。
【0040】
MEKK2は炎症応答に関与していることが示されている。Zhaoらは、MEKK2がHeLa細胞においてNF-カッパ-B経路を活性化し得ることを示した。NF-カッパ-Bは、炎症誘発剤による細胞誘導の際に、核に移動して、いくつかの遺伝子の転写に影響を与える転写因子である。MEKK2は、細胞質においてNF-カッパ-Bを隔離している阻害分子IkBをリン酸化することにより、NF-カッパ-B活性を誘導することが示された。このリン酸化は、核への移動のためNF-カッパ-Bを放出する(21)。従って、MEKK2の活性および/または発現の薬理学的モジュレーションは、病理学的状態の適切な治療的介入点であり得る。
【0041】
生化学的研究および遺伝学的研究によって、MAP3Kは、様々な下流MAPK経路を通した別個の細胞表面シグナルの中継において重大であることが証明されている。MEKK2は、20の公知のMAP3Kの中で、マイトジェン/細胞外シグナル調節キナーゼキナーゼ5/細胞外シグナル調節キナーゼ-5(MEK5/ERK5)経路を調節する、わずか二つのうちの一つである(他方はMEKK3である)(22〜24)。増殖因子および酸化/浸透圧ストレスは、MEKK2/3、MEK5、およびERK5からなる三層ERK-5キナーゼモジュールを刺激することが示されている。MEKK2およびMEKK3は、MEK5 PB1ドメインと選択的にヘテロ二量体化して機能的なMEKK2(またはMEKK3)-MEK5-ERK5三元複合体を形成することが示されているPB1ドメインをコードする(22、24)。ERK5経路は、免疫監視の際の正常細胞間相互作用を媒介し、腫瘍転移の際の細胞侵襲の重大な調節因子である(25に概説されている)。実際、ERK5経路は、高悪性度前立腺癌に関与していることが示されている。特に、MEK5発現の増加は、転移性前立腺癌、細胞増殖、MMP-9発現、および細胞侵襲に関連していた(26)。強力なMEK5発現は、骨転移の存在およびより不利な疾患特異的生存率と相関することも見出された。付加的な報告は、ERK5細胞質内過剰発現と、グリーソン総スコアと、より不利な疾患特異的生存率との間に有意な相関を見出した(27)。ERK5核発現は、ホルモン感受性疾患からホルモン非感受性疾患への移行に有意に関連していることも見出されている。MEKK2が良性と比較して腫瘍において過剰発現されているという所見は、ERK5シグナリングの確立されている生物学的挙動と一致している。
【0042】
MEK5 PB1ドメインの相互作用を調査したある研究は、MEKK2およびERK5が、いずれも、MEK5のN末端伸長部と相互作用することを見出し、このことから、MEKK2およびERK5は、三元複合体を形成するのではなく、MEK5への結合について競合することが示唆された(28)。PB1は、アダプタータンパク質および足場タンパク質にもキナーゼにも存在する二量体化/オリゴマー化ドメインである。PB1ドメイン依存性MEKK2/3-MEK5ヘテロ二量体は、MEKK2またはMEKK3の活性化に応答してERK5の活性化を開始する空間的に組織化されたシグナリング複合体を提供する。そのような複合体を形成するMAPKカスケードは他には示されていない。興味深いことに、m/z4355は、PB1ドメイン内に位置するペプチド断片を表し、PCa発症の指標となる分子経路の変化を反映することができる。
【0043】
本発明のバイオマーカーには、MEKK2のアミノ酸配列バリアントが含まれる。これらのバリアントは、例えば、集団内の天然の変動のために発生するポリペプチドの軽微な配列バリアントであってもよいし、またはその他の種に見出されるホモログであってもよい。それらは、天然には存在しないが、天然型のポリペプチドと同様に機能し、かつ/またはそれらと交差反応する免疫応答を誘発するよう十分に類似している配列であってもよい。配列バリアントは、当技術分野において周知の標準的な部位特異的変異誘発の方法により調製されてもよい。
【0044】
ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、置換バリアント、挿入バリアント、または欠失バリアントであり得る。欠失バリアントは、膜貫通配列を欠くバリアントのような、機能または免疫原活性にとって必須でないネイティブタンパク質の一つまたは複数の残基を欠く。欠失バリアントのもう一つの一般的な型は、分泌シグナル配列、または細胞の特定の部分に結合するようタンパク質に指図するシグナル配列を欠いたものである。後者の配列の一例は、ホスホチロシン残基へのタンパク質の結合を誘導するSH2ドメインである。
【0045】
置換バリアントは、典型的には、タンパク質内の一つまたは複数の部位に別のアミノ酸を含有しており、タンパク質分解切断に対する安定性のようなポリペプチドの一つまたは複数の特性をモジュレートするために設計され得る。置換は、保存的なもの、即ち、あるアミノ酸が、類似したサイズおよび電荷のアミノ酸に交換されるものであり得る。保存的置換は当技術分野において周知であり、例えば、以下の変化を含む:アラニンからセリンへ;アルギニンからリジンへ;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへ;アスパラギン酸からグルタミン酸へ;システインからセリンへ;グルタミンからアスパラギンへ;グルタミン酸からアスパラギン酸へ;グリシンからプロリンへ;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへ;イソロイシンからロイシンまたはバリンへ;ロイシンからバリンまたはイソロイシンへ;リジンからアルギニン、グルタミン、またはグルタミン酸へ;メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへ;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニンへ;セリンからトレオニンへ;トレオニンからセリンへ;トリプトファンからチロシンへ;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへ;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへ。
【0046】
挿入バリアントには、ポリペプチドの迅速な精製を可能にするために使用されるもののような融合タンパク質が含まれ、ポリペプチドのホモログである他のタンパク質およびポリペプチドからの配列を含有しているハイブリッドタンパク質も含まれ得る。例えば、挿入バリアントは、一つの種からのポリペプチドのアミノ酸配列の部分を、もう一つの種からの相同ポリペプチドの部分と共に含んでいてもよい。その他の挿入バリアントには、付加的なアミノ酸がポリペプチドのコーディング配列内に導入されているものが含まれ得る。これらは、典型的には、上記の融合タンパク質より小さな挿入であり、例えば、プロテアーゼ切断部位を破壊するために導入される。
【0047】
転移性前立腺癌組織と非転移性前立腺癌組織との判別を補助するバイオマーカーのセットも、MALDI-IMSを使用して同定された。これらのバイオマーカーは、表2にリストされ、実施例2に記載される。
【0048】
(表2)規準化された強度

【0049】
MALDI-IMSにより同定された本発明のマーカーは、その他の方法によって検出されてもよく、それらも本発明の範囲内である。そのような方法には、液体クロマトグラフィもしくはゲルクロマトグラフィのようなクロマトグラフィ法、またはイムノアッセイが含まれ得る。
【0050】
精製されたマーカーまたはそれらの核酸配列を使用すれば、マーカーに特異的に結合する抗体が、当技術分野において公知の適当な方法を使用して調製され得る。例えば、Current Protocols in Immunology (2007);Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988);Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (3d ed. 1996);およびKohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975)を参照のこと。そのような技術には、ファージまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体調製が含まれ、ウサギまたはマウスを免疫感作することによるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製も含まれるが、これらに限定はされない(例えば、Huse et al., Science 246: t275-1281 (1989);Ward et al., Nature 341:544-546 (1989)を参照のこと)。
【0051】
抗体が提供された後、マーカーは、多数のよく認識された免疫学的結合アッセイ(例えば、米国特許第4,366,241号;第4,376,110号;第4,517,288号;および第4,837,168号を参照のこと)のうちのいずれかを使用して検出されかつ/または定量化され得る。有用なアッセイには、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロットアッセイ、またはスロットブロットアッセイのようなエンザイムイムノアッセイ(EIA)が含まれる。一般的なイムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology, volume 37 (Asai, ed. 1993);Basic and Clinical Immunology (Stites & Teff, eds., 7th ed. 1991)も参照のこと。
【0052】
上記の構築物および方法を例示する具体例が以下に参照される。例は、好ましい態様を例示するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定するためのものではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0053】
実施例1
前立腺癌腫瘍特異的バイオマーカーの同定
A. 材料および方法
患者および組織試料。患者は、Sentara Norfolk General Hospitalにて前立腺全摘除術を受ける前に同意した。研究プロトコルは、EVMSの機関審査委員会により承認された。患者の年齢範囲は46〜82歳であり、平均年齢は58.8歳であった。計75人の患者(発見セットのため21人、バリデーションセットのため54人)が、この研究のため募集された。腺除去後直ちに、各前立腺から二つのコア標本を採集した。各コアを鏡像コアを作出するために縦に分割し;一方は固定しパラフィン包埋し、他方はOCT(optimal cutting temperature化合物、Sakura Finetek USA)で包埋し、80℃で凍結させた。凍結ブロックは、腫瘍部位から遠位の前立腺組織から採集された良性組織の41の切片(発見セットのため10、バリデーションセットのため31)、およびPCa含有組織の34の切片(発見セットのため11、バリデーションセットのため23)を与えた。バリデーションセット内の23のPCa含有ブロックのうち、14の切片が、PCaに隣接した良性組織を保持していた。これらも、バリデーションセットに「良性隣接」試料として含めた。凍結切片化を、-20℃で、Microm HM 505Eクリオスタットで実施した。8μmの連続凍結切片を、ガイドとしてヘマトキシリンおよびエオシンにより染色し、組織形態学を決定するために病理学者が分析した。10μmの二つの付加的な連続切片を、伝導性の酸化インジウムスズ(ITO)によりコーティングされたガラススライド(Bruker Daltonic, Billerica, MA)にマウントし、MALDI-IMSのために使用した。
【0054】
材料
アセトニトリル、エタノール、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)等級水、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸(シナピン酸-SPA)は、Sigma Chemical Co.(St. Louis, MO)より購入された。α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(HCCA)は、Bruker Daltonicより購入された。トリフルオロ酢酸(TFA)は、Pierce Biotechnology(Rockfold, IL)より購入された。MEKK2に対するウサギモノクローナル抗体(EP626Y)は、Abcam(Cambridge, MA)より購入された。
【0055】
組織切片調製
切片化の直後に、ITOコーティングされたスライドを洗浄し、各々30秒間、70%エタノールおよび95%エタノールにより固定した(29)。残余包埋媒体を除去するために水洗浄を実施した後、70%および95%のエタノールによる洗浄を繰り返した。マトリックス沈着の前に、スライドを空気乾燥させ、1時間、デシケーター内に保管した。75%アセトニトリルおよび0.13%TFAを含有しているシナピン酸(10mg/ml)のマトリックス溶液を、マトリックス沈着およびマトリックス層の厚さを制御する自動噴射器(ImagePrep workstation Bruker Daltonics)を使用して、組織に均一に噴射した。噴射された組織切片のデジタル画像を、MALDI分析前に、フラットベッドスキャナーにより取得した。
【0056】
MALDI-IMS分析および画像加工
2,000〜45,000ダルトンの質量範囲で、リニアモードで、200Hzで作動するSmartBeamレーザーを有するUltraflex III MALDI-TOF/TOF装置(Bruker Daltonics)を使用して、組織区域全体を横切ってスペクトルを収集した。50μmのレーザースポット直径および100μmのラスター幅を利用した。FlexImagingソフトウェア(Bruker Daltonic)を使用して、スペクトル取得のためのレーザーの正確なポジショニングを確実にするため、ティーチングポイントを作成した。このソフトウェアは、分析すべき組織の特定の幾何学をエクスポートし、スポットの組織を横切ってグリッドを作成する装置特異的な自動化された方法が作出され、それらのスポットにおいてレーザーがデータを取得する。組織切片を横切ってラスター化(rastered)された各レーザースポットから計200のレーザーショットを蓄積し平均化した。700〜4500Daの質量範囲のペプチド標準物を使用して、外的に較正を実施した。取得された質量範囲全体の各シグナルの強度が、組織上の位置の関数としてプロットされ、検出された各m/zの位置の視覚化が可能となる。Flex ImagingおよびBiomapソフトウェア(www. MALDI-IMS.org.よりフリーソフトウェアとして入手可能)を使用して、これらの画像を作成し可視化した。
【0057】
データ加工および統計分析
スペクトルデータの自動分析を、細胞型間で差次的に発現された全てのピークを同定するために実施した。各組織における病理により画定された対象領域(ROI)から得られたスペクトルを、プロファイル分析のためFlexImagingソフトウェアを使用してエクスポートした。ベースラインサブトラクション、規準化(全イオン流に対して)、ピーク検出、およびスペクトルアラインメントを、ClinProtを使用して実施した。0.3%の質量ウィンドウおよび3のシグナルノイズ比を、ピーク検出のため選択した。k近傍法(k-nearest neighbors)(KNN)を使用した遺伝学的アルゴリズム(GA)を、正常組織とPCa含有組織との分類を入手するために使用した。GAの結果は、異なるクラスの間で最大に分離することが立証されるピークの組み合わせである。群間の有意差は、スチューデントt検定により決定した。0.01未満のP値が統計的有意性を示すと見なした。推定バイオマーカーのPCa組織区域を検出する予測力を、Windows用のSPSSを使用して受信者動作特徴(ROC)曲線下面積を使用して試験した。最適カットオフ点は、感度および特異性の両方を最大にするROC曲線上の点として定義した。
【0058】
組織および細胞培養物の溶解物
組織溶解物は、20mM Hepes、1%TritonX 100の溶液(1ml)により氷上で小さなダウンス(dounce)チューブにおいて試料をホモジナイズすることにより、バルク凍結前立腺組織(およそ0.5mm3)から調製された。次いで、溶解物を室温で15分間超音波処理し、細胞片を除去するために14,000rpmで2分間遠心沈殿させた。次いで、溶解物を、供給元の説明書に従って弱陽イオン交換体(WCX)磁気ビーズ(Bruker Daltonic)を使用した分画に供した。結合したペプチドおよびタンパク質を20μlで溶出させた。この溶出液5マイクロリットルを、凍結乾燥させ、0.1%TFAを含む50%アセトニトリル中のHCCAマトリックス5μlに再懸濁させた。前立腺癌細胞系(Du145、LnCap、およびPC-3)からの溶解物は、0.3%SDS、3%DTT、および30mM Tris pH 7.5を含有している溶解緩衝液において106個の細胞から調製された。
【0059】
MALDI-MS/MSおよびタンパク質同定
次いで、マトリックスと混合された各組織溶解物1マイクロリットルを、スチールMALDIターゲット上にスポットした。組織イメージングの場合と同一の取得パラメーターを使用して、MALDI MSにより質量プロファイルを記録した。関心対象のピークの存在を確証するため、データをリフレクトロンモードでUltraFlex IIIで収集した。次いで、ピークのMS/MS分析をLIFTモードで実施した。最適化された高質量LIFT法を使用し、700〜4500Daの質量範囲の親質量を有するペプチド標準物からの断片により外的に較正した。親質量(リフレクトロンモードで決定されるようなモノアイソトピック質量)を選択し、LIFT分析(MS/MS)をUltraflex TOF-TOFで実施した。ピークをFlexAnalysisソフトウェアを使用して標識し、BioTools 3.1(Bruker Daltonic)で開いた。MS/MSスペクトル配列分析およびデータベース検索を、20,080,125のエントリーを含むヒト配列に関するNational Center for Biotechnology Informationデータベースを使用して、以下の設定を用いて、MASCOT 2.2.03を使用して実施した:MS Tol.:70ppm、MS/MS Tol.:1.0Da、酵素指定なし、セリンアセチル化。
【0060】
50mM重炭酸アンモニウムpH 8.0中の0.769μg/ulトリプシンの溶液0.5μlをスポットすることにより、トリプシン消化を組織スライス(10μm)で実施した。次いで、組織スライスを湿潤チャンバー内で37℃で2時間インキュベートした。トリプシン処理後、組織切片にHCCA(50%アセトニトリル、0.2%TFA中の7mg/ml)をスプレーコーティングした。リフレクトロンモードで組織を横切ってデータを収集し、BioMap画像に変換した。
【0061】
免疫組織化学
凍結標本の免疫染色は、Vectastain Elite ABCキット(Vector, Burlingame, CA)を使用して、アビジン-ビオチンペルオキシダーゼ複合体法により実施した。ブロッキングを、アビジン-ビオチンブロッキングキット(Vector Laboratories、カタログ番号SP-2001)により実施した。次いで、固定された凍結組織を、内因性の過酸化物活性をブロッキングするため、0.3%過酸化水素により15分間処理した。非特異的な結合をブロックするために切片を正常ヤギ血清中でインキュベートし、室温で1時間、PBSで1:50希釈されたMEKK2に対するウサギモノクローナル抗体(EP626Y:Abcam, Cambridge, MA)と共にインキュベートした。この抗体はMEKK2のN末端部分と反応する。次いで、切片を、ビオチン化ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG)により処理し、続いてアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体により処理し、供給元のプロトコルに従ってIMPACT DABペルオキシダーゼ基質(Vector Labs)により染色した。対比染色をマイヤー(Mayer's)ヘマトキシリンにより実施した。
【0062】
ウェスタンブロット分析
計30μg(細胞溶解物)または100μg(組織溶解物)のタンパク質を4〜12%SDS-PAGEゲルで分離し、半乾燥転写法によりPVDF膜(Immobilon-P, Millipore, Billerica, MA)に転写した。次いで、膜を、室温で1時間、PBSで1:1希釈されたOdyssey(商標)ブロッキング緩衝液の中でインキュベートした。ブロッキング緩衝液で1:1000希釈されたMEKK2に対するウサギモノクローナル抗体(EP626Y)とのインキュベーションを、温和に振とうしながら、4℃で一夜実施した。次いで、ブロットを、PBSおよび0.1%Tween 20(PBST)における5分間のインキュベーションにより4回洗浄した。二次抗体であるAlexa Fluor IRDye 800cwヤギ抗ウサギIgG(#926-32211)を、ブロッキング緩衝液、0.1%Tween20、および0.01%SDSにより1:5000希釈した。膜を、遮光しながら、1時間、室温で、温和に回転混合しながら、この溶液10mlと共にインキュベートした。次いで、先と同様にPBSTで膜を洗浄し、PBSで濯ぎ、Odyssey赤外イメージングシステム(LI-COR, Lincoln, NE)によりスキャンした。
【0063】
B. 結果
PCa組織と隣接正常組織とを識別する発現プロファイルの同定。前立腺癌特異的タンパク質/ペプチド発現プロファイルの存在についての調査を、計75の前立腺組織試料で実施した。発見コホートおよびバリデーションコホートの患者および組織試料の特徴は、表3に提示される。自動噴射器を使用して、組織切片をマトリックスにより均一にコーティングし、隣接連続切片を組織病理学のためヘマトキシリンおよびエオシンにより染色した。各切片の並列染色されたスライドを泌尿生殖器系の訓練された病理学者が読み取り、対象領域(ROI)を指定した。これらのROIは、前立腺癌細胞集団、良性隣接上皮細胞、ならびに腫瘍細胞が存在しない組織標本からの間質細胞および良性上皮細胞を含有していた。
【0064】
(表3)

【0065】
初期発見実験においては、21の組織切片(11のPCaおよび10の良性)を分析した。得られたスペクトルを、各組織切片に存在するペプチドおよびタンパク質の二次元分子マップを作成するために使用し、差次的に発現されたピークを同定するため、スペクトルデータの自動分析を実施した。技術の分解力は、細胞のLCMキャプチャー後の抽出されたタンパク質のMALDI-TOF分析と比較可能であった(図6)。質量範囲m/z2,000〜20,000内の平均350〜400のピークが分解され得た。表1は、組織型間で差次的に発現された上位候補タンパク質のリストである。いくつかのペプチドイオンは、PCaを良性組織から識別することが見出された(表3)。病理学者による調査は、前立腺組織切片に存在する指定された細胞型を有する特定の領域を明らかにした(図1A)。この過程は、病理指定ROIと定義される。質量範囲m/z3000〜5000で、PCa領域と隣接良性領域とを識別するために使用され得る、差次的に発現されたイオンがいくつか検出された(図1B挿入図および表3)。4027および4355の平均m/zの二つのペプチドイオンが、良性隣接細胞スペクトルと比較された時、PCa細胞における有意な過剰発現を示した。PCaにおいて過剰発現された三つのイオン(m/z=3,372、3,443、および3,487)は、デフェンシンペプチドと質量が一致し、浸潤好中球の指標となり得る(30、31)。m/z4274のもう一つのピークは、良性隣接上皮細胞および間質において発現され、PCa細胞においてはほとんどまたは全く発現が見られなかった。調査された初期の21の組織から腫瘍または良性として指定されたROIから得られたスペクトルを使用して、PCa組織区域の85%を正確に分類することができる、三つのm/z値(m/z4027、4274、4355)を使用した分類アルゴリズムを作成した。有意な識別力を有する選択された成分イオンを、これらの初期の組織、および病理指定ROIの周辺から得られた画像において評価した。これは、ペプチドイオン発現の領域特異的な変化の視覚的な決定を可能にした。三つの識別m/zを全てマッピングすることにより得られた画像の代表例は、図7に示される。
【0066】
次いで、三つの識別ピーク(m/z4027、4274、4355)を利用した、発見セットから得られた同遺伝学的アルゴリズムの分類能を、より大きいバリデーションセットで評価した。このセットは、23の腫瘍切片および31の良性切片、計54の切片からなっていた。バリデーションセットにおける3ピーク遺伝学的アルゴリズムの性能は、発見セットで見られたものと比較可能であった。特に、バリデーションセットにおけるPCa区域は、試験された組織の81%で正確に分類され得た(表3)。
【0067】
m/z4355を利用したMALDI-IMSは前立腺のPCa特異的領域を同定することができる。
21の組織の初期発見セットからの差次的に発現されたピークのリストのうち、m/z4355のイオンがPCa含有組織領域において最も有意に過剰発現されていた(p=2.76×10-16)。前立腺組織内のPCa領域の検出のための、このピーク単独の利用可能性のさらなる評価を、MALDI-IMSを介して実施した。図1Cは、PCa細胞の一つの特定の領域および明白に画定された正常前立腺の隣接領域を含む組織切片の代表的な画像である。各細胞型のより高倍率のビューは挿入図に見られる。イオン密度マップから明白に明らかであるように、m/z4355ピークは、周辺の組織と比較して、PCa領域において高発現されていた。正常間質または良性腺領域においては、ほとんど乃至全く発現が可視でない。代表的なスペクトルを特定の領域(腫瘍対良性)からエクスポートすると、PCaで得られたプロファイルにおいて、m/z4355の顕著なピークが過剰発現されていることが明白に観察された。
【0068】
m/z4355を利用したMALDI-IMSは癌と未関与前立腺組織とを識別する。
PCa領域と良性領域との間のm/z4355の差次的な発現を評価するため、前立腺組織のバリデーションセットの分析を実施した。23のPCa切片および31の良性前立腺組織切片(腫瘍部位から遠位)の分析後にm/z4355ピークのイオン密度から作製された画像を、23のPCa切片のうちの14において腫瘍に隣接して見出された14の良性前立腺組織領域に加えて調査した。PCa切片および遠位良性切片を含有している組織におけるm/z4355ピークの発現の代表的なイオン画像が図1Dに示される。m/z4000〜4600の代表的な領域における対応するスペクトルが、各画像の上の上パネルに示される。各画像においてm/z4355ピークを表示するために使用されたピーク強度閾値のための設定値は、発見セットから決定され、バリデーションセットに適用された。この閾値は、PCa領域において入手された規準化された強度値から観察された最大ピーク強度を表していた。次いで、この設定された閾値以上の強度を表示するピクセルを高発現と見なし、各画像においてバリデーションセットにおいて入手された画像に表した。強度スケールは、図1Cの右下に見られる。8つの組織対の代表的なセットが図8に提供される。良性細胞が存在せず、PCa細胞が組織全域に存在するかまたは可視である各切片において、高発現が可視であった。対照的に、良性細胞のみを含有している切片においては、ほとんど乃至全くm/z4355イオンの発現が検出されなかった。
【0069】
m/z4355の組織特異的発現を例示するため、別のバリデーション試料セットを横切る、画定された組織領域に関する強度値を調査した。全イオン流に対して規準化されたm/z4355の強度値を、各組織領域について計算し、プロットした;PCa、良性隣接、良性遠位(図2A)。PCa細胞を含む同一切片に見出された良性組織、またはPCa細胞を含有していない切片からの良性前立腺組織におけるm/z4355ピークの規準化された平均強度は、それぞれ20.8および19.6であったが、PCa領域については、PCa組織において見出された平均強度は41.1であり、これは2.1倍の増加に相当した。各ROI(遠位良性対PCa)の規準化された平均強度から計算されたROC曲線は、図2Bに示される。組織切片におけるPCaのバイオマーカーとして4355ピークを使用するための最適カットオフ点は、33という規準化された平均強度値であった。このカットオフ点は、90.3%の感度および86.4%の特異性(AUC 0.960)に関連していた。感度を最大にするため、96.8%の感度および81.8%の特異性を表す23.8というカットオフ値を選んだ。
【0070】
疾患病期/悪性度による、m/z4355の発現のより詳細な分析も実施した。m/z4355についての規準化された強度値を、グリーソン悪性度および病理学的病期によりプロットした。この分析の結果は図2Cおよび2Dに見られる。3+3のグリーソン組み合わせスコアを有する組織は、44.8というm/z4355についての規準化された平均強度値を有し、組織の89%が23.8というROCカットオフより上の値を示した。3+4のグリーソンスコアを有する組織は、41.0という規準化された平均強度値を有し、これらの組織の90%がROCカットオフより上の値を示した。4+3のグリーソンスコアを有する組織は、32.0という規準化された平均強度を有し、組織の75%がROCカットオフより上の値を示した。グリーソン悪性度が増加するにつれ観察されたm/z4355ピークの発現のこの低下は、病理学的病期でも観察された。この低下はグリーソンスコアでは有意でなかったが、病理学的病期pT2とpT3bとの間、そしてpT3a対pT3bでは有意な低下が見られた。pT2a、b、またはcと指定された前立腺からの組織は、42.7という規準化された平均強度を有し、組織試料の92.3%がカットオフより上であった。45.6というm/z4355の平均強度を有し、組織の87.5%が23.8より上の値を有していた、pT3aと指定された前立腺からの組織にも、類似の傾向が見られる。しかしながら、精嚢侵襲を示すpT3bという病理学的指定を有する前立腺から組織標本を獲得した場合には、規準化された平均強度は30.1へと降下し、組織の28.6%のみがカットオフより上の値を有していた。
【0071】
疾患の病期/悪性度が増加するにつれm/z4355の発現が減少する傾向をさらに明確化するため、より侵襲性の疾患(グリーソン8/9/10およびpT4)からの付加的な8つの切片を調査した。先の組織に関する上記と同様に分析を実施し、同一カットオフスコアを用いてm/z4355の評価を実施した。図2CおよびDに見られるように、より高い悪性度/病期の疾患において、発現減少の傾向が観察された。特に、試験された8つの高悪性度組織のうち2つ(25%)のみが、23.8というカットオフ値より上の発現を有していた。高悪性度症例のうち3例がpT4と指定され、これらのうち1例(33%)のみがカットオフより上のm/z4355の規準化された強度値を有していた。
【0072】
MEKK2の断片としてのm/z4355の配列同定
m/z4355のペプチドイオンの差次的な発現が確立されたため、ペプチドの配列を同定した。溶解物を4つの組織試料から調製した:2つのPCAおよび2つの良性前立腺。これらの組織からの切片を、初期MALDI-IMS分析において調査したところ、m/z4355のピークの高いまたは低い発現を有することが見出された。タンパク質溶解物を弱陽イオン磁気ビーズと共にインキュベートしたところ、溶出した画分は、MALDI-TOFにより測定されるように、m/z4355ピークについて濃縮されていることが示された。図3Aに見られるように、PCa組織溶解物のWCX分画からキャプチャーされたペプチドイオンは、0.26Daのエラー範囲内で組織から直接検出された質量にマッチしたが、良性組織からの濃縮溶解物においては、このm/zのペプチドイオンは検出されなかった。次いで、溶解物を凍結乾燥を介して濃縮し、記載されたようにしてMS/MS分析のために調製した。図3Bは、スペクトルがTOF/TOF分析において観察可能な多くの大きい内部断片を含有していたことが見られる、親イオン(m/z4350.4)の断片化パターンを示す。断片化系列は、67(1.0Da、70ppm)というMASCOTトップスコアを与え(63以上のスコアは広範な相同性を示す)、ペプチドのN末端にS-アセチル化を有するMEKK2(Swiss-ProtエントリーQ9Y2U5)の断片とマッチした(図7)。全ての観察されたピーク129のうち126が、MEKK2の理論上の断片に正確に割り当てられ得た。この配列は、619アミノ酸の全長配列のうちのアミノ酸残基26〜61を表し、分子のPhoX-Bem1(PB1)ドメイン内に位置する。
【0073】
組織から得られたm/z4355イオンがMEKK2の断片であることをさらに確立するため、予測されたMEKK2トリプシン断片の存在について分析するための組織内消化を実施した。PCa領域にm/z4355ピークの高発現を有することが以前に見出された組織切片を、この分析のため使用した。同組織領域の連続切片を採集し分析した。鏡像切片のうちの一方をトリプシン処理し、隣接鏡像切片は処理せずに対照として使用した。示された理論上のトリプシンペプチドを使用して、イオン密度マップも作成した。図4に見られるように、トリプシン処理後の予測されたMEKK2断片の特定の理論質量が、トリプシン処理されたPCa組織において検出され得た。理論上の消化物質量とマッチする、組織内トリプシンにより作成された断片は、同PCa組織の鏡像未処理切片には存在しなかった(図4C)。さらに、良性組織切片のトリプシン消化によって、理論上のMEKK2切断産物に相当する断片イオンは作成されなかった(図4B)。親4355m/zから得られた代表的なイオン密度マップ画像が、トリプシンペプチドから得られた画像との比較として示される(図4A)。この分析は、親ペプチドおよび予測ペプチド断片の両方が、一致した組織発現を示すことを証明している。
【0074】
前立腺癌の細胞系および組織におけるMEKK2の発現
ウェスタンブロット分析を、PCa抽出物および良性組織抽出物、ならびに三つの前立腺癌細胞系(Du145、LnCap、PC-3)で実施した。LNCaP細胞は、ヒトPCaのリンパ節転移性病巣に起因し、Du145およびPC-3は、それぞれ、脳および骨に転移性のヒト前立腺癌細胞系である。使用された抗体は、MEKK2発現についての上記の免疫組織化学分析において利用されたものと同一であった。これらの系におけるMEKK2の相対発現は図4Dに示される。三つの前立腺細胞系は、全て、全長MEKK2(70kDa)の強い発現を示した。この分析は、良性組織に見られた発現と比較して、より高いPCa組織におけるMEKK2発現を明らかにした。デンシトメトリー分析は、良性組織と比較して4.4倍増加したPCa組織におけるMEKK2の発現を示した。
【0075】
MEKK2は前立腺のPCa特異的領域において過剰発現される。
いくつかの例において、タンパク質の断片の過剰発現は、完全タンパク質の過剰発現と同時に起こり得る。PCa組織におけるMEKK2の発現を、MEKK2の発現に特異的な免疫組織化学を使用して調査した。PCA含有凍結組織および隣接未関与凍結組織を、MEKK2発現について染色した。使用された抗体は、PB1ドメインが位置するMEKK2タンパク質のN末端部分に特異的である(32)。図5Aに見られるように、MEKK2染色は、組織切片におけるPCaの存在と相関する。H&Eパネルにおいて指定されたROIは、GU専門の病理学者によって、腫瘍を含有していると指摘された。付加的な前立腺組織も染色した。染色されたPCa腺および良性組織の拡大ビューは図5Bに見られる。図5Cに、全て腫瘍または全て良性と指定された切片の分析が示される。調査された前立腺組織は、主として細胞質発現パターンで、関与組織内に高レベルのMEKK2を示した。対照的に、良性腺は、MEKK2発現をほとんど乃至全く示さなかった。
【0076】
実施例2
転移性疾患の検出のためのMALDI-IMSを使用した差次的なタンパク質発現
類似病期疾患の凍結前立腺切片を、加工した。ここで、症例対照設計は、症例群における術後転移性疾患の発見である。この研究においては、症例と対照との間の腫瘍組織領域の差次的な発現パターンに注目した。8対の症例/対照試料の調査から、上位の識別スペクトルピークのリストを作成し、表2に提示した。マーカーのうちのいくつかを画像作成のためにプロットし、続いて、画像を、組織学的に染色され病理により読み取りされた鏡像切片と比較した。図10は、選択されたマーカーの発現を使用して、遠位転移性疾患に関連した腫瘍における癌を検出し得ることを示している。
【0077】
実施例3
MALDI-IMSのためのUMFix処理組織の利用
本発明のバイオマーカーの利用可能性は、生検段階において明らかである。凍結切片は生検により駆動される診断学のためには適していないため、臨床組織学に受け入れられ、タンパク質を維持することもできる、UMFixとして公知の、病理に適合性の固定法が組み入れられる。UMFixアプローチはUniversity of Miamiで開発され、適所での組織調製のための商業的に実現可能な系であり、病理学者に入手可能である。UMFix法は、IMSの詳細、および鏡像組織学についての固定組織における情報の両方を維持する。図11は、UMFixで維持された組織を利用した4360m/zピークの領域内のプロファイルの画像である。
【0078】
図面および上記の説明において本発明を例示し、記載したが、それらは、限定的ではなく例示的なものと見なされるべきであり、好ましい態様のみが示され記載されたこと、そして本発明の本旨内に含まれる全ての変化および修飾が、保護されることが望まれることが、理解される。さらに、本明細書中に引用された全ての参照および特許は、当技術分野における技術のレベルの指標であり、参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【0079】
参照


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、対象における前立腺癌を診断する方法:
(a)該対象から一つまたは複数の試験試料を入手する工程;
(b)M3373、M3443、M3488、M4027、M4274、M4355、M4430、M4635、M4747、M4972、M8205、およびM10111より選択される少なくとも一つのタンパク質マーカーの一つまたは複数の試験試料における差次的な発現を検出する工程;ならびに
(c)少なくとも一つのタンパク質マーカーの対照量と比較された、一つまたは複数の試験試料における少なくとも一つのタンパク質マーカーの量を考慮に入れて、少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現の検出を前立腺癌の診断と相関させる工程。
【請求項2】
一つの試験試料が精漿である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
一つの試験試料が血液、血清、尿、前立腺液、精液(seminal fluid)、精液(semen)、および前立腺組織からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
一つまたは複数の試験試料が第1および第2の連続前立腺組織切片である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
気相イオン分光分析により少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現を検出する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
気相イオン分光分析がレーザー脱離質量分析である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
レーザー脱離質量分析がMALDI-IMSである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
イムノアッセイにより少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現を検出する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
複数のマーカーを検出する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第1の連続前立腺組織切片を染色し、かつ染色された第1の連続組織切片を、第2の連続前立腺組織切片において検出された少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現と比較する工程(d)をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つのタンパク質マーカーがMEKK2またはその断片もしくバリアントである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
一つまたは複数の試験試料が生検時または術後に入手される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
以下の工程を含む、対象における前立腺癌を診断する方法:
(a)該対象から一つまたは複数の試験試料を入手する工程;
(b)一つまたは複数の試験試料におけるMEKK2、MEKK2の断片、またはMEKK2のバリアントの差次的な発現を検出する工程;ならびに
(c)MEKK2、MEKK2の断片、またはMEKK2のバリアントの対照量と比較された、一つまたは複数の試験試料におけるMEKK2、MEKK2の断片、またはMEKK2のバリアントの量を考慮に入れて、MEKK2、MEKK2の断片、またはMEKK2のバリアントの差次的な発現の検出を前立腺癌の診断と相関させる工程。
【請求項14】
以下の工程を含む、対象における転移性前立腺癌を診断する方法:
(a)該対象の前立腺腫瘍組織から一つまたは複数の試験試料を入手する工程;
(b)M4030、M5364、M9533、M6186、M3230、M3817、M3245、M9767、M8963、M9091、M9021、およびM6344より選択される少なくとも一つのタンパク質マーカーの一つまたは複数の試験試料における差次的な発現を検出する工程;ならびに
(c)少なくとも一つのタンパク質マーカーの対照量と比較された、一つまたは複数の試験試料における少なくとも一つのタンパク質マーカーの量を考慮に入れて、少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現の検出を転移性前立腺癌の診断と相関させる工程。
【請求項15】
一つまたは複数の試験試料が第1および第2の連続前立腺腫瘍組織切片である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
気相イオン分光分析により少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現を検出する工程を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
気相イオン分光分析がレーザー脱離質量分析である、請求項14記載の方法。
【請求項18】
レーザー脱離質量分析がMALDI-IMSである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
複数のマーカーを検出する工程を含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
第1の連続前立腺腫瘍組織切片を染色し、かつ染色された第1の連続腫瘍組織切片を、第2の連続前立腺腫瘍組織切片において検出された少なくとも一つのタンパク質マーカーの差次的な発現と比較する工程(d)をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
一つまたは複数の試験試料が生検時または術後に入手される、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2011−519413(P2011−519413A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550890(P2010−550890)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/037110
【国際公開番号】WO2009/151693
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(507136648)イースタン バージニア メディカル スクール (4)
【Fターム(参考)】