説明

改良された層状コーティングを有する眼鏡フレーム

【課題】 従来の眼鏡フレームのコーティングの問題を解決するコーティングを提供する。
【解決手段】 複数のフレーム要素、好ましくは金属でできた複数のフレーム要素と、層状コーティングを有する眼鏡フレームであって、前記コーティングが銅の層を有することを特徴とする、眼鏡フレームとする。ここで、このコーティングが、銅層に適用された銀の層を有することは有利である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、眼鏡フレームに関する。特に本発明は、電気化学(ガルヴァニック)表面処理をされた眼鏡フレームに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】通常眼鏡フレームは、複数の要素又は部品、例えば耳づる、縁、ブリッジ、二重ブリッジ及び他の部分を有する。これらは鋼鉄、ステンレス鋼、青銅、洋銀、モネルメタル及び他の合金のような金属でできている。
【0003】そのようなフレームは、陰極様式でその下の金属を保護するようにされた層状コーティングを有し、フレームの使用寿命を長くし、また同時にフレームに所望の外観を与えている。
【0004】現在では通常、コーティングは、その下の材料を保護し同時に処理による粗さがない特に滑らかな外側表面を作るようにされたニッケルの層からなる。このニッケルの層は、パラジウム、金、クロム又はフレームに所望の外観を与える他の材料で覆われている。ワニスの層を後者の金属層に適用することもできる。
【0005】しかしながら、眼鏡フレームのこれらのコーティングは、過剰な量のニッケルを放出する不利な点を有する。これは、眼鏡の使用者に健康上の問題をもたらす危険性がある。
【0006】更に、これらの従来のフレームでは、そのようなコーティングによって得られる腐食強度は、過剰に厚いコーティングを使用する場合を除いて十分に強くない。従ってフレーム製造のための費用は高くなり過ぎる。
【0007】これらの腐食の問題は主に、ニッケルの層が非常に堅く、フレームを弾性変形させたときに、コーティングに亀裂又は割れが進行しやすく、これによって腐食剤の浸入が可能になることによる。
【0008】
【課題を解決するための手段】従って、特許請求の範囲の請求項1で示しているように、本発明は、複数のフレーム要素、例えば耳づる及びレンズを支持する手段を有する眼鏡フレームを提供する。ここでこのフレーム要素は、好ましくは金属材料でできている芯と、層状コーティングを有する。このフレームは、層状コーティングが銅の層を含むことを特徴とする。
【0009】この銅の層は、通常のフレームで使用されているニッケルの層を完全に又は部分的に置換する。この銅の層は、良好な腐食強度を提供するだけでなく、従来のフレームでのニッケルの放出によって起こる全ての有害な影響を防ぐ。
【0010】請求項2に記載の特に有利な態様では、コーティングは、銅の層に適用された銀の層も有する。
【0011】このコーティングの構成は、腐食に対する最適な保護性を提供する。
【0012】銅及び銀の層は、特に均一な弾性コーティングを得ることを可能にする。このコーティングは割れ又は剥離なしに、フレーム部分の曲げ変形に従う。従って特に小さく且つ均一な、割れ及び亀裂がないコーティングが得られる。
【0013】結果として、外部の腐食剤の浸入が不可能である。フレームの芯を作る材料のための最適な保護が得られる。
【0014】他の請求項は、本発明の他の有利な面を説明している。
【0015】特に銅層の厚さは、0.1μm〜15μm、好ましくは5μm〜10μmであり、銀層の厚さは0.1μm〜15μm、好ましくは5〜10μmである。
【0016】また、本発明のコーティングの腐食強度は、フレームの使用条件を模擬した条件(下記においてより詳細に説明)において評価した銅層と銀層との電位差が、200mV未満であるという事実によって有利である。
【0017】従って、部分的にこれによって、本発明のコーティングを有するフレームの腐食強度は特に大きい。
【0018】銅層に適用された銀層は、主に装飾を意図した1又は複数の層によって覆うことができる。
【0019】従って金の層を銀層に好ましく適用することができる。
【0020】この金層は、好ましくは0.1μm〜2μmの厚さである。
【0021】また、そのようなコーティングの腐食強度は、フレームの使用条件を模擬した条件(下記においてより詳細に説明)において評価した銀層と金層との電位差が、200mV未満であるという事実によって特に大きい。
【0022】また、明るい灰色のフレームを得るためには、パラジウムの層を適用する。このパラジウム層は、金層上に堆積させること、又は必要であれば銀層上に堆積させることができる。
【0023】パラジウム層は好ましくは、0.1μm〜2μmの厚さである。
【0024】比較的暗いシェードの灰色のフレームのためには、他の好ましくは0.1μm〜0.2μmの厚さのルテニウムの層を、パラジウム層に適用する。
【0025】静的電位については、本発明は、それぞれの層とその次の層との電位差を200mV未満にしている。
【0026】本発明のコーティングの様々な層を作る材料のこれらの静的電位の値は、CASS腐食試験の材料及び方法又は人工の汗を使用する腐食試験を使用して測定した。これらの試験は、当業者に既知であり、従ってここで詳細に説明する必要はない。
【0027】この様式で、コーティングの層間の電位差が小さいときには、腐食に対する保護が最適化されている。銅の層と銀の層とを比較すると電位差はかなり小さく、このことがこれらの層の組み合わせに有意の腐食強度を与えている。
【0028】他の態様では、パラジウムの層を銅の層に直接に適用する。この場合、得られるコーティングはニッケルの放出に関する問題を避けるだけでなく、従来使用されていたニッケルとパラジウムの既知のコーティングの腐食強度よりも大きい腐食強度を有する。
【0029】更に他の態様では、約0.1μm、例えば0.05〜0.15μm又は0.08〜0.12μmの厚さの薄い金の層を銅の層に適用して、コーティングの他の最終的な層を適用する前に起こることがある腐食から銅の層を保護する。現在まで、保護及び装飾コーティングの主要な層を作る銅層の使用は、この材料が容易に酸化され、コーティングの更なる装飾層を適用するために産業的な処理でもたらされることが多い有意の待ち時間を可能にしなかったという事実によって避けられてきた。
【0030】また、本発明のコーティングの表面は、ワニス又は同様な材料の層で覆うことができる。ワニスは、透明又は有色の、エポキシ又はポリエステルでよい。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の技術的な特徴及び他の有利な点は、以下の詳細な説明において、好ましい適用例を参照してより明確に説明している。これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】例1フレームを作っている金属を、厚さ10μmの銅でできた第1の層と、厚さ0.2μmのパラジウムでできた第2の層を有するコーティングで電気分解的に覆って、このコーティング上にエポキシワニスを適用した。
【0033】これらのフレームに、標準試験溶液中において150時間にわたってCASS腐食試験を行った。得られた結果は許容できるものであり、いずれの場合にも、10μmの厚さのニッケル層と2μmの厚さのパラジウム層を有する同様な標準対照試料よりも良好な結果が得られた。
【0034】例2フレームを作っている金属を、厚さ5μmの銅でできた第1の層と、厚さ10μmの銀でできた第2の層と、厚さ0.2μmの金でできた第3の層を有するコーティングで電気分解的に覆った。
【0035】標準試験溶液中において150時間にわたってCASS試験を行った後の腐食結果は良好であった。フレームが支持体及び電気分解コーティングタンク電極に接していた箇所を除いて、フレームに腐食の徴候がなかった。
【0036】例3フレームを作っている金属を、厚さ5μmの銅でできた第1の層と、厚さ5μmの銀でできた第2の層と、厚さ0.2μmのパラジウムでできた第3の層を有するコーティングで電気分解的に覆った。これを透明ポリエステルワニスでコーティングした。
【0037】標準試験溶液中において150時間にわたってCASS試験を行った後の腐食結果は良好であった。フレームが支持体及び電気分解コーティングタンク電極に接していた箇所を除いて、フレームに腐食の徴候がなかった。
【0038】例4フレームを作っている金属(ステンレス鋼)を、厚さ10μmの銅でできた第1の層と、厚さ5μmの銀でできた第2の層と、厚さ0.1μmのパラジウムでできた第3の層と、厚さ0.1μmのルテニウムの層を有するコーティングで電気分解的に覆った。
【0039】特にこのタイプの場合には、コーティングの下側層と上側層との全体の電位差が450mV(ミリボルト)である。ここで、得られたコーティングは、有意の腐食強度を有する。
【0040】例5フレームを作っている金属を、厚さ5μmの銅でできた第1の層と、厚さ5μmの銀でできた第2の層と、厚さ0.5μmの金でできた第3の層と、厚さ0.2μmのパラジウムでできた第4の層を有するコーティングで電気分解的に覆った。CASS耐性は大きかった。
【0041】例6フレームを作っている金属を、厚さ3μmのニッケルでできた特に滑らかな外側表面を作る第1の層と、厚さ5μmの銅でできた第2の層と、厚さ0.2μmのパラジウムでできた第3の層を有するコーティングで電気分解的に覆った。後者を、透明ポリエステルワニスでコーティングした。
【0042】銅の層は、良好な腐食強度と並んで、フレームからのニッケルの検知可能な放出を保持して防ぐ。
【0043】例7フレームを作っている金属を、厚さ10μmの銅でできた第1の層を含むコーティングで電気分解的に覆い、この上に、銅層を保護する層を形成する厚さ0.1μmの金の層を堆積させた。この金層は、厚さ5μmの続く銀層でコーティングし、この上に0.2μmのパラジウムの層を堆積させる前に、所定の時間にわたって待つことが可能である。
【0044】説明された本発明は、本発明の本質の範囲内で、多くの変形及び変更が可能である。更に本発明の全ての細部は、技術的に等価の要素によって置換することができる。特に、過剰ではないコーティング厚さで、有意の腐食強度を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のフレーム要素と、層状コーティングを有する眼鏡フレームであって、前記コーティングが銅の層を有することを特徴とする、眼鏡フレーム。
【請求項2】 前記フレーム要素が金属でできていることを特徴とする、請求項1に記載のフレーム。
【請求項3】 前記コーティングが、前記銅層に適用された銀の層を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のフレーム。
【請求項4】 前記銅層の厚さが0.1μm〜15μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフレーム。
【請求項5】 前記銅層の厚さが5〜10μmであることを特徴とする、請求項4に記載のフレーム。
【請求項6】 前記銀層の厚さが0.1〜15μmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフレーム。
【請求項7】 前記銀層の厚さが5〜10μmであることを特徴とする、請求項6に記載のフレーム。
【請求項8】 前記コーティングが金の層を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のフレーム。
【請求項9】 前記金層が前記銀層に適用されていることを特徴とする、請求項8に記載のフレーム。
【請求項10】 前記金層の厚さが0.1μm〜2μmであることを特徴とする、請求項9に記載のフレーム。
【請求項11】 前記金層が前記銅層に適用されていることを特徴とする、請求項8に記載のフレーム。
【請求項12】 前記金層の厚さが0.05〜0.15μmであることを特徴とする、請求項11に記載のフレーム。
【請求項13】 前記コーティングがパラジウムの層を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のフレーム。
【請求項14】 前記パラジウム層が前記金層に適用されていることを特徴とする、請求項13に記載のフレーム。
【請求項15】 前記パラジウム層が前記銀層に適用されていることを特徴とする、請求項13に記載のフレーム。
【請求項16】 前記パラジウム層が前記銅層に適用されていることを特徴とする、請求項13に記載のフレーム。
【請求項17】 前記パラジウム層の厚さが0.1μm〜2μmであることを特徴とする、請求項14〜16のいずれかに記載のフレーム。
【請求項18】 前記コーティングが、前記パラジウム層に適用されたルテニウムの層を有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載のフレーム。
【請求項19】 前記ルテニウム層の厚さが0.1μm〜2μmであることを特徴とする、請求項18に記載のフレーム。
【請求項20】 請求項1〜19のいずれかに記載のコーティングを有するフレーム要素。

【公開番号】特開2002−328339(P2002−328339A)
【公開日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−112034(P2002−112034)
【出願日】平成14年4月15日(2002.4.15)
【出願人】(502134144)ルックスオッティカ ソチエタ レスポンサビリタ リミテ (1)
【Fターム(参考)】