説明

改良された強度及び安定性を示す多層分離膜

【課題】低い収縮値と望まれる範囲のGurley値を維持しながら、混合浸透強度の増加を示す、電池分離膜として使用される改良された多層微多孔薄膜を提供する。
【解決手段】多層微細中空電池分離膜であって、層において測定された値が1.2以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する高分子量ポリプロピレン、ポリエチレン層、層において測定された値が1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレンを含み、乾式延伸法によって微細中空電池分離膜を形成し、前記微細中空電池分離膜は、25μ以下の厚さを有する分離膜において13〜25秒のGurley値を維持しつつ37%以下の多孔度を有多層微細中空電池分離膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池分離膜及びこの分離膜の製造方法である。本発明の分離膜は、乾式延伸法又は溶媒抽出法により製造される他の分離膜と比較して、混合浸透試験における上昇及び収縮の減少を示す。驚くべきことに、本発明の分離膜はまた、多孔率が37%以下であっても13〜25秒のGurley値を有する。
【背景技術】
【0002】
電池分離膜として、微多孔性多層膜を使用することは公知である。例えば、米国特許第5,480,745号、5,691,047号、5,667,911号、5,691,077号及び5,952,120号明細書参照。
【0003】
米国特許第5,480,745号明細書は、多層前駆体の共押出しによって、又は予備形成された前駆体層の152℃での熱溶融によって多層薄膜を形成することを開示している。次いで、いずれかの技術によって形成された多層前駆体をアニール及び延伸によって微多孔性とする。乾式延伸法によって製造されたこの膜は、100%〜300%の好ましい正味の伸張量を有する。
【0004】
米国特許第5,691,047号明細書は、多層前駆体の共押出しによって、又は3層以上の前駆体層を熱(120〜140℃)及び圧力(1〜3kg/cm2)下で結合させることによって多層薄膜を形成することを開示している。0.5〜8m/分(1.6〜26.2ft/分)の速さで熱及び圧力下で形成された前駆体は3〜60g/15mm(0.2〜4g/mm)の範囲の剥離強度(peel strength)を有する。実施例において、1つの34μmの分離膜は1g/mmの剥離強度を有し、他は約0.5g/mmを有する。次いで、いずれかの技術によって形成された多層前駆体をアニール及び延伸によって微多孔性とする。これらの分離膜の多孔度は本発明より大きいが、Gurley値も相対的に高い値を示している。
【0005】
米国特許第5,667,911号明細書は、交差して積み重ねた微多孔薄膜を(熱及び圧力により又は接着剤により)結合して多層微多孔薄膜を形成することによって多層薄膜を形成することを開示している。微多孔薄膜は、15〜50ft/分(4.6〜15.2m/分)のライン速度で、熱(110℃〜140℃)及び圧力(300〜450psi)を使用して互いに積層する。この引用文献は、これらの薄膜の多孔度が高いという良い指標であるより低いGurley値を教示している。
【0006】
米国特許第5,691,077号明細書は、微多孔薄膜を熱及び圧力(圧延)により又は接着剤により又はパターン溶着により結合して多層微多孔薄膜を形成することによって多層薄膜を形成することを開示している。圧延は、レジデンス時間2〜10分間で125℃〜130℃において行われる。4層が積層された多層微多孔性前駆体が単一のニップロール間で圧延される。これらの分離膜の多孔度は本発明より大きいが、Gurley値も相対的に高い値を示している。
【0007】
米国特許第5,952,120号明細書は、非多孔性前駆体を押出し、非多孔性前駆体を互いに結合し、結合された非多孔性前駆体をアニールし、結合された非多孔性前駆体を延伸して多層微多孔薄膜を形成することによって多層薄膜を形成することを開示している。少なくとも4層の3層前駆体を、結合、アニール及び延伸工程を同時に通過させる。結合を、30ft/分(9.1m/分)のライン速度で128℃(125℃〜135℃の範囲)のニップローラー間で行うと、剥離強度5.7g/in(0.2g/mm)が得られ、40ft/分(12.2m/分)のライン速度で128℃〜130℃のニップローラー間で行うと、剥離強度30g/in(1.2g/mm)が得られた。これらの分離膜における正味の延伸率は全て、少なくとも100%以上となる傾向があり、Gurley値も高レベルである。
【0008】
上記のプロセスは、電池分離膜として使用するのに適した商業的利用可能性のある多層微多孔薄膜を製造しているが、分離膜製造業者及び電池製造業者の双方で、加工性のより良い分離膜の製造が望まれている。加工性を改良するためには、製造プロセス中に分離膜は不良により耐久性である必要がある。電池製造業者を悩ます大きな問題のうちの2つは分離膜の漏れと収縮である。収縮は、使用中に電池が置かれる加熱された環境に分離膜がさらされたときに生じる。過去の方法で漏れについての分離膜の試験は破壊強度試験であった。しかしながら、混合浸透と呼ばれる新しい試験は、分離膜が製造プロセスにおいてどのように挙動するかについて、破壊強度試験よりはるかに良い指標となることが分かった。収縮についての試験においては、分離膜を一定の期間、高温にさらさなければならない。電池の製造業者は、分離膜が望ましい範囲のGurley値を有することを依然として要求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,691,047号明細書
【特許文献2】米国特許第5,691,077号明細書
【特許文献3】米国特許第5,952,120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、低い収縮値を依然として維持し、望まれる範囲のGurley値を依然として示しつつ混合浸透強度の増加を示す、分離膜として使用される改良された多層微多孔薄膜を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスによって示される高分子量ポリプロピレン層、ポリエチレン層、及び層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレン層を有する多層微多孔性電池分離膜である。この得られる微多孔性電池分離膜は乾式延伸法によって形成される。微多孔性電池分離膜は、25μ以下の厚さを有する分離膜において、13〜25秒のGurley値を維持しつつ37%以下の多孔度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】混合浸透試験における多層分離膜の側面図である。
【図2】加圧後の電極及び分離膜を示す側面図である。
【図3】分離膜のイオン抵抗の傾きを示すグラフである。
【図4】分離膜のイオン抵抗を測定するための4プローブACインピーダンス技法の概略図である。
【図5】同じ厚さの多層乾式延伸膜の本発明の方法によって作製された多層膜の混合浸透強度の増加率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電池分離膜は、電気化学電池又はコンデンサーに使用される微多孔薄膜又は膜を意味する。電気化学電池は、リチウム化学に基づく電池などの1次(非充電型)及び2次(充電型)電池を含む。これらの薄膜は、通常、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、これらの混合物及びこれらのコポリマーからなる。ポリプロピレン(アイソタチック及びアタクチックを含む)及びポリエチレン(LDPE、LLDPE、HDPE及びUHMWPEを含む)及びこれらの混合物及びこれらのコポリマーは、これらの用途のために市販されている薄膜を作るために使用される好ましいポリオレフィンである。これらの薄膜はCELGARD(登録商標)法(乾式法、すなわち、押出し−アニール−延伸としても知られる)によって又は溶媒抽出法(湿式法又は相転換プロセス又はTIPS、熱誘引相分離プロセスとしても知られる)によって又は粒子延伸プロセスによって作製され得る。これらの薄膜の一部は、乾式法により作製されるものであり、しばしば多層薄膜である。多層薄膜は、遮断性能(すなわち、回路のショートの際、イオンの流れを遮断することができる)を有するので、好ましい。通常の多層薄膜は3層薄膜である。一般的な3層薄膜は、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)構造であり、他の構造はPE/PP/PEである。
【0014】
本発明は3層を有する多層微多孔性電池分離膜に関する。第1層は、層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレン層であり、第2層はポリエチレン層であり、第3層は、層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレン層である。この微多孔性電池分離膜は乾式延伸法によって形成される。本発明の方法は、25μ以下の厚さを有し、13〜25秒のGurley値を維持しつつ37%以下の多孔度を有する微多孔性電池分離膜を製造する。
【0015】
この多層微多孔性電池分離膜は、同じ厚さの乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜と比較して5%以上高い混合浸透強度を示す。この微多孔性電池分離膜の正味の収縮率は、105℃6時間の曝露後5%未満である。この微多孔性電池分離膜のイオン抵抗は、2.5オーム−cm2未満である。この分離膜のポリエチレン層は高密度ポリエチレンである。
【0016】
本発明の他の実施態様において、多層微多孔性電池分離膜は、外側ポリオレフィン層、内側ポリオレフィン層及び外側ポリオレフィン層を有する乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜を含む。分離膜の全体の厚さは25μ以下である。外側ポリオレフィン層は高分子量ポリプロピレンである。内側ポリオレフィン層はポリエチレンである。この乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜は、同じ厚さの乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜と比較して5%以上高い混合浸透強度を示す。この多層微多孔性電池分離膜は、13〜25秒のGurley値を維持しつつ37%以下の多孔度を有する。驚くべきことに、この微多孔性電池分離膜の正味の収縮率は、105℃6時間の測定で5%未満である。この多層微多孔性電池分離膜は2.5オーム−cm2未満のイオン抵抗を有する。
【0017】
本発明の他の実施態様は、乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜を含む多層微多孔性電池分離膜である。この分離膜は外側ポリオレフィン層、内側ポリオレフィン層及び外側ポリオレフィン層を有する。外側ポリオレフィン層は高分子量ポリプロピレンである。内側ポリオレフィン層はポリエチレンである。この乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜は25μ以下の厚さ、37%以下の多孔度及び13〜25秒のGurley値を有する。この分離膜は、同じ厚さの乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜と比較して5%高い混合浸透強度を示す。驚くべきことに、この多層微多孔性電池分離膜は、105℃6時間の測定で5%未満の正味の収縮率を示す。この多層微多孔性電池分離膜はまた、2.5オーム−cm2未満のイオン抵抗を有する。
【0018】
本発明の分離膜は、多層微多孔性電池分離膜の次の製造方法によって作製できる。加工前のペレットとして測定した数値で1.0以下のMFIを有するポリプロピレンとポリエチレンとを用意する。高分子量ポリプロピレンであるポリプロピレンを押出して、ポリプロピレン前駆体薄膜を形成する。次いで、ポリエチレンを供給し、押出して、ポリエチレン前駆体薄膜を形成する。次いで、ポリエチレン前駆体薄膜の両側にポリプロピレン前駆体薄膜を積層して非多孔性3層前駆体を形成する。次いで、この非多孔性3層前駆体をアニールする。アニーリング後、次いで、非多孔性3層前駆体を延伸して、延伸された微多孔性3層薄膜を形成する。次いで、延伸された微多孔性3層薄膜を緩和させて、微多孔性3層膜を形成する。このプロセスにおける正味の延伸率は90%未満である。正味の延伸率は緩和量を差し引いた、薄膜に付される延伸のパーセンテージで決められる。延伸は、熱間、冷間又は熱間と冷間の混合によって行うことができる。緩和も熱間、冷間又は熱間と冷間双方の混合によって行うことができる。
【0019】
本発明の他の実施態様においては、分離膜の正味の収縮率が105℃6時間の測定で5%未満であり、全体の厚さが25μ以下である微多孔性ポリオレフィンからなる電池分離膜が提供される。この電池分離膜は37%以下の多孔度を有する。さらに驚くべきことに、この電池分離膜は13〜25秒のGurley値を有する。従来は、13〜25秒の範囲のGurleyレベルを得るためには、分離膜は37%超の多孔度を必要とし、多くの場合多孔度は少なくとも40%以上であった。多孔度のわずかな変化ですら分離膜のGurley値に大きな影響を与える傾向にあることが分かっている。13〜25秒のGurley値を維持しながら、全体の厚さが25μ以下であり、分離膜の正味の収縮率が105℃6時間の測定で5%未満であり、37%以下の多孔度を有する微多孔性ポリオレフィンからなる電池分離膜は、驚くべきことに、湿式法によって作製される分離膜ならびに乾式法によって作製される分離膜である。
【0020】
本発明の他の実施態様において、多層電池分離膜は、加工後の外側層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレン層の外側層を有する微多孔性ポリオレフィンからなる。高密度と呼ばれ得る多くのポリプロピレンでは加工後にメルトフロー特性がかなり落ちるので、その層としての測定が重要である。過去においては、メルトフローインデックスが使用されたときには、加工前のメルトフローがいつも引用されていた。
【0021】
本発明を下記の実施例によってさらに説明する。次の実施例においては、Gurley値は、ASTM D−726(B)法によって測定される。本明細書で使用されるGurley値は、Gurley Densometer(例えば、Model4120)によって測定される空気流に対する抵抗値である。本明細書で定義されるGurley値は、水12.2インチ圧力下で、1平方インチの製品を10ccの空気が通過するのに必要な時間(秒)として表される。
【0022】
MD及びTDに沿った引張り強さは、ASTM D−638法によって測定される。引裂抵抗は、ASTM D−1004によって測定される。
【0023】
電池分離膜の厚さは、Technical Association of the Pulp and Paper Industryの支援によって開発されたT411 om−83法によって測定される。厚さは、直径1/2インチの精密マイクロメーターを使用して、円形シューを7psiで試料と接触させて決定する。試料の幅にわたる10箇所のマイクロメーターでの読取値を平均する。
【0024】
微多孔薄膜の多孔度はASTM D−2873法によって測定される。
【0025】
破壊強度は次のように測定される。延伸した製品の幅にわたって10箇所の測定を行い、平均する。Mitech Stevens LFRA Texture Analyzerが使用される。針は、半径0.5mmを有し、直径1.65mmである。侵入速度は2mm/秒であり、たわみの量は6mmである。薄膜は、11.3mmの中心穴を有する固定装置に固く固定する。針によって貫通された薄膜の移動(mm)は試験された薄膜によってもたらされた抵抗力(g力)に対して記録した。最大抵抗力は破壊強度である。
【0026】
混合浸透強度は、混合浸透により分離膜を通過して短絡するのに要する力である。この試験においては、図1の金属板10の基板によって始まり、この板の表面上にはカソード材料のシート15が置かれ、カソードの表面上には多層分離膜20が置かれ、多層分離膜20の表面上にはアノード材料のシート25が置かれる。次いで、力ゲージ35に接続された3mmのボールチップ30が供給される。ボールチップ30は、抵抗メーター40によって金属板10に接続される。図2の圧力45がボールチップ30にかけられ、図1の力ゲージ35に記録される。力をかけると、分離膜20のいずれかの側に図2のアノード混合50及びカソード混合55が生成する。抵抗が大きく低下すると、混合浸透による分離膜を通過する短絡を示す。
【0027】
混合浸透は分離膜の強度及び混合浸透に対する抵抗を測定する。これは実際のセルの挙動のより正確なシミュレーションであることが発見された。これは、分離膜がセル中でどのように挙動するかについての破壊強度より優れた指標である。この試験は、電池の組立て中で回路を短絡させる分離膜の傾向を示すために使用される。
【0028】
メルトインデックスは、ASTM DS1238、PE:190℃/2.16kg、PP:230℃/2.16Kgによって測定される。これは、g/10分として測定される。
【0029】
収縮率は、105℃6時間で測定される。分離膜の膜の幅及び長さ双方を前記熱処理の前と後に測定する。正味の収縮率は、次の式によって計算される。
【0030】
正味の収縮率(%)=100*((L0−L1)/L0+(W0−W1)/W0)
L0は熱処理前の長さであり、L1は熱処理後の長さであり、W0は熱処理前の幅であり、W1は熱処理後の幅である。
【0031】
ある電解液に浸された分離膜の測定イオン抵抗値は、分離膜が電気的性能に与える影響のため、電池の製造技術にとっては非常に重要である。イオン抵抗値は、実際の電池用途に対する実際の電解液中で測定が行われる点においてGurley値より浸透性についてのより総合的な測定値である。多孔膜のイオン抵抗値は、本質的に分離膜の孔に浸入した電解液のイオン抵抗値である。通常、電解液に浸された微多孔性分離膜は、押しのけられた相当容積の電解液の電気抵抗値の約6〜7倍の電気抵抗値を有する。それは、膜の多孔度、ねじれ、電解液の抵抗値、膜の厚さ及び電解液が膜の孔を濡らす程度の関数である。
【0032】
分離膜抵抗値は、最終材料から分離膜の小片を切取り、次いで2つの遮断電極の間にそれらを設置することによって特性決定される。分離膜は、容積比3:7のEC/EMC溶媒中1.0MのLiPF6塩を有する電池電解液によって完全に飽和される。分離膜の抵抗値R(Ω)は4プローブACインピーダンス技法で測定する。電極/分離膜界面上の測定誤差を減らすためには、より多くの分離膜層を追加することによる多数の測定が必要となる。
【0033】
次いで、多層の測定値に基づいて、電解液で飽和された分離膜のイオン抵抗値、Rs(Ω)を次の式によって計算する。
【0034】
s=ρsl/A (1)
ρsは、分離膜のイオン抵抗率Ω−cmであり、Aは電極の面積cm2であり、lは分離膜の膜の厚さcmである。ρs/A比は次の(2)式で与えられる多層分離膜を有する分離膜抵抗値の変化について計算された傾きである。
【0035】
傾き=ρs/A=ΔR/Δδ (2)
ΔR及びΔδは図3に定義されている。図3の傾きの計算は、多層測定手法を用いて分離膜の膜のイオン抵抗値を評価するために使用する。
【0036】
分離膜の膜のイオン抵抗値は4プローブACインピーダンス技法を使用して測定される。図4は、抵抗値を測定するために使用されるセルの模式図60を示す。セルの上部65プローブ及び下部70プローブから出たリードは2つのワイヤ75,80を有し、1つは電流を感知し、他方は電圧を感知する。全ての抵抗の測定に使用する電解液は容積比3:7のEC:EMC溶媒中1.0MのLiPF6塩である。分離膜の試料を下部電極85上に置く。分離膜は、完全に下部電極を覆うべきであり、分離膜は完全に電解液で濡らされるべきである。次いで、第2電極90を下部電極85の上面にそっと置きインピーダンス値を測定する。インピーダンス値はポテンショスタットによるインピーダンスメーター95によって測定される。測定誤差を減らすためには、より多くの分離膜層を加え始め、累積抵抗値を測定する。下部プローブ70上に置かれ得るくぼんだ中心105を有するTeflon(登録商標)スペーサー100を加えることにより電解液のみの抵抗値を調べることが可能である。次いで、電解液を加えてくぼみ中心105に充填し、次いで上部プローブ65をスペーサー100上に置く。
【実施例】
【0037】
表Aにおける実施例を見ると上記の記載は明らかになる。試料A及びBは乾式延伸法によって作製された比較のための3層分離膜のためのものである。試料Aは20μ分離膜であり、試料Bは25μ分離膜である。実施例C300及びC500は本発明の方法によって作製された本発明の分離膜である。C300は20μ分離膜であり、C500は25μ分離膜である。表において、IRはイオン抵抗値を意味し、P.S.は破壊強度であり、MPは混合浸透であり、TDは機械の方向に対して逆方向である。
【表A】

【0038】
混合浸透試験においては、本発明の材料を、高分子量ポリプロピレンを使用せず、本発明の方法によって作製されていない、セルガード(登録商標)法によって作製された3層分離膜に対して比較する。図5において、混合浸透強度における改良が観察できる。また、表Aを見ると、標準20μ分離膜は、標準25μ3層分離膜と比較して混合浸透強度の10%の減少を示している。本発明の方法により作製された20μの本発明の分離膜は混合浸透強度において2%の減少しか示さない。標準25μ分離膜は混合浸透強度において変化を示さず、本発明の方法によって作製された25μ分離膜は混合浸透強度の5%の増加を示す。
以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより、これまでの説明がより容易に明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0039】
10 金属板
15 カソード材料のシート
20 多層分離膜
25 アノード材料のシート
30 ボールチップ
35 力ゲージ
45 圧力
50 アノード混合
55 カソード混合
60 セルの模式図
65 上部プローブ
70 下部プローブ
75 ワイヤ
80 ワイヤ
85 下部電極
90 第2電極
95 インピーダンスメーター
100 Teflon(登録商標)スペーサー
105 くぼみ中心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層微多孔性電池分離膜であって、
層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する高分子量ポリプロピレン層、
ポリエチレン層、
層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレン層
を含み、
乾式延伸法によって微多孔性電池分離膜を形成し、ここで、前記微多孔性電池分離膜は、13〜25秒のGurley値および25μ以下の厚さを維持しつつ、37%以下の多孔度を有する、
多層微多孔性電池分離膜。
【請求項2】
前記微多孔性電池分離膜は、同じ厚さの乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜と比較して5%以上高い混合浸透強度を示す請求項1に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項3】
前記微多孔性電池分離膜の正味の収縮率は、105℃6時間の測定で5%未満である請求項1に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項4】
前記微多孔性電池分離膜のイオン抵抗は2.5オーム−cm2未満である請求項1に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項5】
前記ポリエチレン層は高密度ポリエチレンである請求項1に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項6】
多層微多孔性電池分離膜であって、
外側ポリオレフィン層、内側ポリオレフィン層及び外側ポリオレフィン層を有し全体の厚さが25μ以下である乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜を含み、
前記外側ポリオレフィン層は層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレンであり、
前記内側ポリオレフィン層はポリエチレンであり、
前記乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜は、同じ厚さの乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜と比較して5%以上高い混合浸透強度を示す、
多層微多孔性電池分離膜。
【請求項7】
前記微多孔性電池分離膜は、13〜25秒のGurley値を維持しつつ37%以下の多孔度を示す請求項6に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項8】
前記微多孔性電池分離膜の正味の収縮率は、105℃6時間の測定で5%未満である請求項6に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項9】
前記微多孔性電池分離膜のイオン抵抗は2.5オーム−cm2未満である請求項6に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項10】
多層微多孔性電池分離膜であって、
外側ポリオレフィン層、内側ポリオレフィン層及び外側ポリオレフィン層を有する乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜を含み、
前記外側ポリオレフィン層は高分子量ポリプロピレンであり、
前記内側ポリオレフィン層はポリエチレンであり、
ここで、前記乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜は、13〜25秒のGurley値を維持しつつ、25μ以下の厚さおよび37%以下の多孔度を有し、そして、同じ厚さの乾式延伸された3層の微多孔性電池分離膜と比較して5%高い混合浸透強度を示す
多層微多孔性電池分離膜。
【請求項11】
前記微多孔性電池分離膜の正味の収縮率は、105℃6時間の測定で5%未満である請求項10に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項12】
前記微多孔性電池分離膜のイオン抵抗は2.5オーム−cm2未満である請求項10に記載の多層微多孔性電池分離膜。
【請求項13】
多層微多孔性電池分離膜の製造方法であって、
加工前のペレットとして測定した数値で1.0以下のMFIを有するポリプロピレンとポリエチレンとを用意する工程、
前記高分子量ポリプロピレンを押出してポリプロピレン前駆体薄膜を形成する工程、
前記ポリエチレンを押出して、ポリエチレン前駆体薄膜を形成する工程、
前記ポリエチレン前駆体薄膜の両側に前記ポリプロピレン前駆体薄膜を積層して非多孔性3層前駆体を形成する工程、
前記非多孔性3層前駆体をアニールする工程、
前記非多孔性3層前駆体を延伸して延伸された微多孔性3層薄膜を形成する工程、
前記延伸された微多孔性3層薄膜を緩和させて微多孔性3層薄膜を形成する工程
を含み、
前記微多孔性3層薄膜の正味の延伸率は90%未満である
多層微多孔性電池分離膜の製造方法。
【請求項14】
25μ以下の全体の厚さを有する微多孔性ポリオレフィンからなる電池分離膜であって、前記分離膜の正味の収縮率が105℃6時間の測定で5%未満である電池分離膜。
【請求項15】
37%以下の多孔度を有する請求項14に記載の電池分離膜。
【請求項16】
13〜25秒のGurley値を有する請求項15に記載の電池分離膜。
【請求項17】
13〜25秒のGurley値を維持しつつ37%以下の多孔度を有する請求項14に記載の電池分離膜。
【請求項18】
加工後の外側層として測定した数値で1.2以下のメルトフローインデックスを有する高分子量ポリプロピレン層の前記外側層を有する微多孔性ポリオレフィンからなる多層電池分離膜。
【請求項19】
13〜25秒のGurley値を維持しつつ37%以下の多孔度を有する請求項18に記載の多層電池分離膜。
【請求項20】
前記微多孔性電池分離膜のイオン抵抗は2.5オーム−cm2未満である請求項19に記載の多層微多孔性電池分離膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12484(P2013−12484A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−176903(P2012−176903)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2007−99015(P2007−99015)の分割
【原出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(598064680)セルガード エルエルシー (17)
【Fターム(参考)】