説明

改良された成形加工性を有する結晶化可能な熱可塑性樹脂およびデンドリマー

結晶化可能なポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂の歪み硬化特性および溶融レオロジーは、デンドリマー調整剤とのブレンドによって調節される。PET樹脂および約2wt.%以下のデンドリマーを含むブレンドは、溶融強度が増加し、歪み硬化パラメータにおける減少を示し、歪み硬化開始時により低い歪みレベルを反映する。ブレンドは、PET樹脂と、精製テレフタル酸に対して所定比率のデンドリマー調整剤を含む成分とをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して熱可塑性樹脂に関し、特に改良された成形加工性を有するポリエステル樹脂などの結晶化可能な熱可塑性樹脂に関し、さらに結晶化可能なポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂の歪み硬化特性、溶融強度および溶融レオロジーを調節する方法に関する。本発明は、さらに、調節された歪み硬化特性および改良された溶融強度を示す組成物、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂およびデンドリマー調整剤を含む組成物に関するものとして特徴付けることもできる。
【0002】
結晶化度のレベルは、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)などの結晶化可能な熱可塑性樹脂の機械特性に実質的に影響する。非晶質PETは、一般的に、低い強度特性および粗悪なバリア特性を有する。実質的に非晶質の樹脂物品を単軸または二軸、好ましくは二軸すなわち直交軸に沿って延伸および配向することは、そこから典型的な結晶領域が規則正しい態様で広がる核形成部位を提供する。物質が配向および/または結晶化されるにつれ、強度特性および弾性特性は増加する。高度に配向された樹脂は、実質的に改良されたガスバリア特性をも有する。
【0003】
プラスチック材料のガスおよび蒸気バリア特性は、包装産業において重要な考慮事項である。二酸化炭素CO2が炭酸飲料を包含するボトルから逃げ出す速度は、飲料が販売され消費者によって使用される前に、棚上で飲料ボトルがペチャンコになるか否かで決定される。周囲環境から製品容器内への酸素の進入速度もまた、飲料瓶詰め業者やクッキー、肉類、キャンディおよび類似の製品などの他の食品を包装する業者にとって重要である。包装壁を通過する水蒸気透過速度は、種々包装された食品の鮮度に影響するかもしれない。現時点では、瓶詰めおよび包装市場で用いることができるPET樹脂があるが、更なる改良が望ましい。
【0004】
より最近では、種々の包装用途用のPETコポリマー樹脂が開示されている。エチレンナフタレートユニットを含むPETNコポリマーと同様に、エチレンテレフタレートおよび約20%以下のエチレンイソフタレートを含むPETIコポリマー樹脂が改良されたバリア特性を有するものとして当該分野で開示されている。このような樹脂およびこれらの製造および成形加工方法は、広く知られており、たとえば米国特許5,646,208号明細書、同6,485,804号明細書、同6,335,422号明細書および同6,150,454号明細書(これらの教示内容は本明細書に参照として組み込まれる)に十分に開示されている。
【0005】
PET樹脂のバリア特性はコモノマーを組み込むことにより改良され得るが、他の特性は改質によって有害な影響を受けるかもしれない。たとえば、10mol%のエチレンイソフタレートを含むPETI樹脂の熱結晶化速度は、より低レベル、たとえば2.5mol%のエチレンイソフタレートを含むPET包装樹脂又はPETI包装樹脂よりも遅い。遅い結晶化速度は、所要処理サイクルを長時間化し、生産量を減少させ、製造コストを上昇させる。加えて、これらのコポリマー樹脂から成形加工されたブロー成形ボトルは、たとえばボトルの首部および基部での強度が低い領域で低い結晶化度を有することがある。したがって、強度が低い領域でのバリア特性は減少し、含まれているガス、たとえばCO2の逃げ速度を上昇させる。
【0006】
包装樹脂は、許容可能な物理特性およびバリア性能の包装壁を与えるために必要とされる歪み硬化の程度を達成するために、本来の延伸比まで延伸されなければならない。高い本来の延伸比を有する樹脂を含む物品は、樹脂を的確に配向し結晶化させるために、より大きな引っ張り−より高い歪み−を必要とする。効果は、材料の引っ張り試験で得られた応力対歪みデータをプロットすることにより定量化され得る。PETに対して、応力−歪み曲線は、典型的には、複数の切片を含む。最初に、応力−歪み線は、降伏が始まる応力レベルである降伏点まで略線形に伸びる。降伏点を越えると、歪みが増加するにつれ、応力レベルは略一定のまま維持され、鎖の展開および整列による鎖の配向を通して供試体または物品は延伸され、歪みがさらに増加すると、配向された鎖は結晶化するようになり、歪み硬化領域を識別する応力レベルにおける迅速な増加を引き起こす。歪み硬化が現れるポイント、すなわち応力レベルにおける鋭敏な上昇が生じるポイントは、歪み硬化点(SHP)と取ることができる。
【0007】
典型的には、PETツーリング(治工具)は、11〜13の面積歪み(軸方向延伸比×半径方向延伸比)となるように設計される。PETをPIAもしくはNDCなどのコモノマーで改質すると、PETに対する本来の延伸比(NDR)を増加させ、コモノマーのレベルが高いほどNDRは大幅に増加する。テレフタル酸の10%をPIAもしくはNDCで置換することによってPETを改質すると、約18〜約20の面積歪みをもたらし、一方、20%改質すると約33〜約36の範囲にある面積歪みをもたらす。これらの高い値を達成するために、より短くより厚いプレフォームが用いられ、よって、より長い熱移動時間(冷却または加熱)が必要となる。これは、サイクル時間の増加および現存するPETツーリングの再設計を必要とし、より高い費用へと変え、取引によるコポリエステルの受容を制限する。
【0008】
さらに、サイクル時間を延長し、プレフォームを正確に加熱するために、減少させた処理量で、PET樹脂物品を製造するために一般に広く用いられている2ステージ高生産量再熱ブロー成形装置を運転することは、生産性を実質的に減少させるかもしれない。
【0009】
本分野で開示されている樹脂の本来の延伸比を調節するための方法は、一般に、樹脂分子量を増加させること、たとえば固体重合によって、またはトリオール類、テトラカルボン酸またはエステル交換される複数の官能基を有する他の化合物を組み入れることによって樹脂分子量を増加させ、枝分かれ剤を節約することを指向している。種々の樹脂における架橋剤として使用するために、低分子量ポリマー、超分岐ポリマーおよび複数の反応性末端基を有するデンドリマーもまた本分野で開示されている。たとえば米国特許6,150,454号明細書に開示されているような枝分かれ剤の使用は、分子量を増加するけれども、処理温度を上昇させて熱分解を誘発する、溶融粘度における付随的な上昇がある。さらに、多官能性添加剤はゲル形成を引き起こす傾向があり、用いられるレベルによっては、樹脂を架橋させ、熱硬化させるかもしれない。
【0010】
樹脂溶融粘度を大幅に増加させずにポリエステルの歪み硬化特性を調節する方法は、PETに近い本来の延伸比を有する成形用PETコポリマー樹脂組成物を提供するに特に有用である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、調節された歪み硬化特性を有する熱可塑性組成物および溶融粘度を大幅に上昇させずに熱可塑性樹脂の本来の延伸比を減少させる方法に関する。本発明の組成物は、熱可塑性樹脂、好ましくはポリエステルと、デンドリマー調整剤、特に超分岐ポリマーもしくはデンドリマーとを含むであろう。ポリエステル組成物は、さらに、レオロジー調整剤とポリエステルとの間で生じるエステル交換の可能性を制御するためにエステル交換阻害剤を含むこともある。
【0012】
[発明の詳細な説明]
本発明の組成物の熱可塑性樹脂成分として使用するに適切な結晶化可能なポリエステル樹脂は、広く知られており入手可能な任意のポリエステル包装樹脂を含む。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート、ブチレンテレフタレートなどを含む樹脂はこの用途に特に適するであろう。エチレンテレフタレートユニットのわずかな割合が互換性モノマーユニットで置換されているポリエチレンテレフタレートを含むコポリマー樹脂が好ましいであろう。たとえば、エチレングリコール部位は、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族もしくは脂環式グリコール類、またはヒドロキノンおよび2,2-ビス(4'-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールおよび他の芳香族ジオールで置換されていてもよい。モノマーユニットに置換され得るジカルボン酸部位の例としては、イソフタル酸(IPA)、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ビ安息香酸(bibenzoic acid)などの芳香族ジカルボン酸、並びにアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族もしくは脂環式ジカルボン酸を挙げることができる。ポリエチレンテレフタレートと共重合されたトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸およびトリメシン酸などの種々の多官能性化合物を含むコポリマーもまた適切であることが見出され得る。
【0013】
約20wt.%以下のエチレンイソフタレートユニットまたはエチレンナフタレートユニットを含むPET樹脂は、包装材料および容器の製造に有用であり得る。約20wt.%以下のエチレンイソフタレートユニットまたはエチレンテレフタレートユニットを含むポリナフタレート樹脂もまた同様の用途に有用であり得る。特定のコモノマーユニットの選択および用いられる量は、結晶化度を含む樹脂特性上の効果に部分的に依存することは理解されるであろう。殆どの用途に対して、コモノマーの量は、好ましくは約15mol%以下、より好ましくは約10mol%以下であろう。50mol%程度により多量のコモノマーを含むコポリマーもまた有用であることが見出され得るが、高レベルのコモノマーは、一般に結晶化に干渉する傾向があり、よって好ましくないであろう。
【0014】
本明細書で互換的に用いられる用語「PET」および「ポリエチレンテレフタレート」はポリエチレンテレフタレートホモポリマーを意味し、本明細書で互換的に用いられる用語「PET樹脂」および「ポリエチレンテレフタレート樹脂」は、PETコポリマーを意味する。PETホモポリマーとして記載されているが、市販されているPETホモポリマーは一般に、少量、典型的には約3mol%以下のエチレンイソフタレートを含むPET樹脂である。PETI樹脂はエチレンテレフタレート−エチレンイソフタレートコポリマー樹脂であり、PETN樹脂はエチレンテレフタレート−エチレンナフタレートコポリマー樹脂であり、PENT樹脂はエチレンナフタレート−エチレンテレフタレートコポリマー樹脂である。
【0015】
ポリエステル樹脂並びにその調製方法は、当該分野で周知である。広範囲のこのような樹脂は、シート、フィルムなどを含む数種の形態で、押出グレード、繊維グレード、成形グレード、コーティンググレードなど、特に容器を製作する際に使用することが意図されたグレードなどの種々のグレードの粉末またはペレット樹脂として、商業的に容易に入手することができる。PET樹脂は、たとえば、熱安定剤、光安定剤、染料、顔料、可塑剤、フィラー、抗酸化剤、潤滑剤、押出助剤、残留モノマースカベンジャーを含む容器分野および包装材料分野で一般に用いられている添加剤などの相溶性添加剤をさらに含むものでもよい。
【0016】
約0.55〜約1.04の範囲、好ましくは約0.65〜0.95dl/gの範囲にある固有粘度(i.v.)を有するPET樹脂が本発明の実施に使用するに適するであろう。約0.8dl/gの固有粘度を有するPET樹脂は、包装産業において種々の容器用途に広く用いられている。本明細書において、「固有粘度」は、30℃のo-クロロフェノールを含む溶媒中5.0mg/mlの濃度にて、ASTM D-2857の手順に準拠して決定される。
【0017】
本発明の組成物は、ポリエステル樹脂の歪み硬化パラメータを調節するに十分な量で、少なくとも1種のデンドリマー調整剤をさらに含む。カスケードポリマーとしても知られるデンドリマーは、樹を連想させる分岐パターンを有する別個の高度に分岐した単分散オリゴマーまたはポリマーである。物理的に、デンドリマー分子は、コア、多数の分岐世代および末端基からなる外面を有する三次元球形構造として記載されている。本発明において用いるに適するデンドリマーおよび超分岐ポリマーは、十分に規定され、中心コアから放射状に広がる高度に分岐された巨大分子であり、段階的に繰り返す分岐反応シーケンスによって合成される。構造ユニットは、各々連続的な世代について同じかまたは異なっていてもよい。構造ユニットは、コアに対してまたは先行する世代の構造ユニットに対して半径方向に結合しており、外方向に延在する。繰り返し分岐シーケンスは、各世代に対する完全な殻を提供し、典型的には単分散であるポリマーをもたらす。
【0018】
デンドリマーは、分岐の程度に基づいて特徴付けられ得る。本明細書においてデンドリマーに関連して用いる用語「分岐の程度」とは、同一世代の完全に分岐したデンドリマーに存在する分岐の数と、分岐の最大可能数との間の比率を意味することを理解されたい。デンドリマーに関連して用いられている用語「官能性末端基」とは、デンドリマーの外面の部分を形成する反応性基を意味する。分岐は、より多くの規則性またはより少ない規則性を伴って生じてもよい。デンドリマーの外面での分岐は、すべてが同一世代または異なる世代であってもよい。
【0019】
用語「デンドリマー」は、分岐構造中に欠陥を有するデンドリマー、不完全な程度の分岐を有するデンドリマー、非対称分岐デンドリマー、星形高分子、高度に分岐したポリマーまたは超分岐ポリマーおよびコポリマー、および高度に分岐したポリマーと高度に分岐していないポリマーとを含むコポリマーを有するデンドリマーを含むこともまた理解されたい。特に好ましいのは、星形高分子または星形(starburst)デンドリマーポリマーである。
【0020】
デンドリマーおよびその調製方法は当該分野で周知であり、たとえば米国特許5,530,092号明細書、同5,530,092号明細書、同5,998,565号明細書、同5,418,301号明細書および同5,663,247号明細書に記載されている。本発明の実施に用いるに適切であると思われる商業的に入手可能なデンドリマーとしては、Perstorp Specialty Chemicalsから入手可能なBoltornデンドリマーとして、DSM corporationから入手可能なAstramol ポリ(ポリエチレンイミン)デンドリマーおよびHybrane超分岐ポリエステルアミド類として、Aldrich Chemical Companyから入手可能な星形(starburst)ポリアミンデンドリマーとして、ヒドロキシ官能性を有する高度に分岐した多官能性ポリエステルを挙げることができる。
【0021】
本発明の組成物に含有されるデンドリマー調整剤の量は、歪み硬化が生じる歪みレベルを減少させるに十分である。減少量は、意図された用途または用いられる成形加工方法により部分的に決定されるであろう。改質される樹脂がPETコポリエステル包装樹脂である用途において、量は、包装グレードPETホモポリマーの歪みレベルまで歪みレベルを減少させるに十分であるように選択されることが望ましい。組成物は、好ましくは約2wt.%以下、より好ましくは約1wt.%以下の少なくとも1種のデンドリマーを含む。特に、用いられる調整剤の量は、一般に、樹脂成分の総量を基準として約0.001〜約2wt.%の範囲にあるであろう。樹脂成分の総量を基準として約0.01〜約2wt.%、より好ましくは約0.01〜約1.5wt.%、さらにより好ましくは約0.01〜約1.0wt.%の調整剤の量が殆どの用途に対して十分であることが分かるであろう。多くの用途に対して、ポリエステルおよび調整剤の総量を基準として約0.01〜約0.5wt.%の調整剤の量を含む組成物が特に有用であることが分かるであろう。慣用のフィラー、強化剤、加工助剤などの使用も、歪み硬化における所望の減少を得るために必要である調整剤のレベルを決定することができることは理解されたい。
【0022】
デンドリマーは、樹脂組成物の溶融粘度を減少させるためのレオロジー調整剤としての使用について当該分野で開示されている。ポリエステルおよびデンドリマーの総量を基準として約2wt.%を越えるデンドリマーを含む本発明によるポリエステル組成物は、非常に高いメルトフローを有し、一般に慣用の押出設備または成形設備を用いては加工不能である。よって、約2wt.%よりも高いレベルは好ましくない。
【0023】
他の多官能性添加剤でのように、デンドリマーは、ポリエステルとエステル交換を通じて反応することができ、樹脂分子量を実質的に増加させ、架橋によって組成物を熱硬化可能である。よって、たとえば押出成形およびブロー成形操作を用いる熱加工中に長時間、高温に暴露することを避けることによって、エステル交換に対する可能性を最小化することが望ましいであろう。組成物中に有効量のエステル交換阻害剤をさらに含むこともまた望ましいであろう。たとえばGEによりUltranox 626として販売されているビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどの種々のジホスファイト(亜リン酸塩)はこの目的に有用であることが知られており、商業的源から容易に入手可能である。阻害剤は、エステル交換を阻害または制御するに十分な量、一般にはポリマー成分の総量を基準として約0.5〜約5 wt.%含まれるであろう。
【0024】
よりよく理解するために、下記実施例を参照しながら本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0025】
以下の実施例で用いた樹脂は以下の通りである。
PET-1:ポリエチレンテレフタレート樹脂、繊維グレード、i. v.=0.57di/g、BP製
PET-2:ポリエチレンテレフタレート樹脂、i.v.=0.75dl/g、Shell M&G製 樹脂7207
PET-3:ポリエチレンテレフタレート樹脂、i.v.=0.80dl/g、Shell M&G製 樹脂8416
PET-4:ポリエチレンテレフタレート樹脂、i.v.=0.92dl/g、Shell M&G製 樹脂1006
PETI-10:10mol%エチレンイソフタレートユニット含有ポリエチレンテレフタレート−イソフタレートコポリマー樹脂、i.v.=0.73dl/g、Kosa製 3303
PETN-10:10mol%エチレンナフタレートユニット含有ポリエチレンテレフタレート−ナフタレートコポリマー樹脂、i.v.=0.71dl/g、Shell M&G製、樹脂6017
PENT-10:10mol%エチレンテレフタレートユニット含有ポリエチレンナフタレート−テレフタレートコポリマー樹脂、i.v.=0.74dl/g、Hoechst製 FK628
Dend-2:理論的には16個の一級ヒドロキシ基、分子量1747を有する第二世代デンドリマーポリエステル、Boltorn(登録商標)H20、Perstorp製
Dend-3:理論的には32個の一級ヒドロキシ基、分子量3604g/molを有する第三世代デンドリマーポリエステル、BOLTORN(登録商標)H30、Perstorp製
Dend-4 :理論的には64個の一級ヒドロキシ末端基、分子量7316g/molを有する第四世代デンドリマーポリエステル、BOLTORN(登録商標)H40、Perstorp製
Dend-5:第五世代デンドリマーポリエステル、Perstorp製
Dend-6:超分岐ポリエステルアミド調整剤、Hybrane P1000、DSM製
【0026】
応力−歪みデータは、ASTM-D882-97の手順に実質的に準拠して、コンディショニングチャンバを具備するInstron tensile tester(インシュトロン引っ張り試験機)を用いて異なる温度で得た。本発明のために、応力−歪みデータは、好ましくは樹脂のTgよりも高温で得られる。特に、温度は、配向結晶性物品の製造において、たとえば延伸ブロー成形により樹脂を加工するために一般に用いられる温度以上である。さらに、試験温度は、好ましくは、樹脂のTgよりも20℃高い温度〜樹脂のTmよりも20℃低い温度の範囲にある。
【0027】
PET応力−歪み曲線は、典型的には複数の切片を含む。最初に、応力−歪み線は、供試体が降伏し始める応力レベルである降伏点までは殆ど線形である。降伏点以後は、歪み硬化領域に到達するまで、歪みの範囲全体で応力レベルの実質的な増加なしに、鎖が展開、配列して配向することによって供試体は延伸する。さらなる延伸は、配向された鎖内で結晶化を開始し、歪みの増加と共に応力の迅速な増加を生じさせる。
【0028】
図面を参照すれば、図1は、PET樹脂供試体の100℃での引っ張り試験で得られた応力対歪みプロットデータを示す。Aとして識別されるデータプロットの部分において、供試体が延伸する際に配向されるようになるので、供試体が延伸されても応力レベルは実質的に一定のままであるように見える。歪み硬化は、配向が実質的に完了する約340%の応力レベルで始まる。応力レベルは、供試体が破壊するポイントまで供試体がさらに延伸されるので、迅速に上昇する。これは、Bとして識別されているデータプロットの部分に対応する。
【0029】
図1に示されているPET樹脂と0.25wt.%の第三世代デンドリマーのブレンドからなる供試体の100℃での引っ張り試験で得られたデータの応力対歪みプロットを参照すれば、曲線の降伏点が劇的に短縮され、曲線の歪み硬化部分が未改質樹脂供試体について見られるよりも実質的に低い約120%の応力レベルで始まることがわかるであろう。
【0030】
歪み硬化が生じるポイント、すなわち歪み硬化パラメータ(SHP)を決定するために異なる方法が文献に示唆されている。下記実施例において、歪み硬化パラメータは、図1に表されている2本の応力−歪み曲線により示されるように、そのポイントの後では殆ど直線の応力−歪み線を引くことができるポイントにより決定される。
【0031】
しかし、図1に示されており、さらに下記実施例にも示されるように、デンドリマー調整剤の樹脂歪み硬化パラメータに対する効果は、非常に劇的であり、用いられる方法に関わりなく容易に現れる。
【0032】
PETとPETおよび少量の超分岐ポリマーを含む組成物とを2oz.(オンス)樽型容器を有し且つ汎用スクリューを具備する1.25インチBrabender twin-screw extruder(2軸押出機)内で配合した。樹脂処理特性に基づいて選択した樽型容器の運転温度は、260℃〜290℃の範囲にあった。細断した押出ストランドを250℃で一晩乾燥させ、次いで6インチシート押出ダイを具備する1.25インチKillion extruder(押出機)を用いて、押出技術分野で一般に使用されている実施に従って、樹脂IVおよび組成物に応じて選択した500゜F〜560゜Fの範囲にある樽型容器温度および495゜F〜535゜Fの範囲にあるダイ温度を用いて、20mil(ミル)厚のシートに押し出した。
【0033】
0.5インチ×6.5インチの試験片を押出シートから切り出し、23℃、50%相対湿度で少なくとも40時間にわたり、コンディショニングした。上述のようにコンディショニングチャンバを具備するInstron tensile tester(インシュトロン引っ張り試験機)を用いて、所与試験温度で応力−歪みデータを得た。
【0034】
[対照実施例C1〜C7]
異なる分子量を有するPETポリマーから形成した供試体およびPETコポリマーから形成した供試体を実質的に上記したように試験した。100℃における歪みレベルを下記Table 1にまとめる。
【0035】
【表1】

【0036】
対照実施例C1〜C4のPETのi.v.値に反映されるように、樹脂分子量が増加すると、歪み硬化が生じるポイント、すなわち歪み硬化パラメータもしくはSHPにおける歪みレベルが減少することがわかる。
【0037】
コモノマーを含むことでSHPを大幅に増加させることがわかる。すなわち、10%エチレンイソフタレートユニットを含むPETコポリマー(対照実施例C5)および10%エチレンナフタレートユニットを含むコポリマー(対照実施例6)および90%エチレンナフタレートユニットを含むコポリマー(対照実施例C7)は、PETホモポリマーよりも大幅に高いSHP値を有していた。
【0038】
[実施例1〜7]
PET-4および可変量の2種のデンドリマー調整剤を含むPET樹脂組成物を実質的に対照実施例C1〜C6について記載したように配合して、実施例1〜6用の供試体を得た。PET-4を含み調整剤を含まない対照実施例C4を同様に配合して、比較のために試験した。供試体を上述のようにコンディショニングして試験した。供試体について100℃で得た歪みレベルを下記Table 2にまとめる。
【0039】
【表2】

【0040】
%歪みレベルに反映される歪み硬化パラメータは0.05wt.%程度に低い超分岐ポリマーデンドリマー調整剤を添加することにより減少することがわかる(実施例1)。実施例3と4および実施例5と6を比較すると、SHPは0.25wt.%を越えてデンドリマー調整剤のレベルをさらに増加させてもあまり影響されない。
【0041】
上記したように、歪みレベルに反映されるSHPはPETコポリマーについて非常に高い。さらに、結晶化速度が低くなりPETコポリマーは高められた温度で処理することを必要とするであろうから、歪みレベルがさらに増加し、よってSHPも増加する。
【0042】
下記実施例7において、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレートコポリマー、PETI-10および0.25wt.%デンドリマー調整剤Dend-2を含むブレンドを実施例1〜6について記載したようにシートに押し出し、100℃および110℃で試験した。データを下記Table 3にまとめる。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例7およびC5の歪みデータを比較すると、デンドリマーを添加することで、PETI-10ブレンドに対する高められた温度110℃でのSHPを、PETに対する100℃のSHPに近い値まで減少させることがわかる。Table 2に示されている対照実施例C4についての歪みレベル参照。同様に、デンドリマーをPETN-10に添加することで、両方の温度におけるSHPを実質的に低下させる。
【0045】
結晶化度レベルおよび転移温度を上述のように100℃で延伸した実施例3および4ならびに対照実施例C4の供試体について、TA Instruments model 2980示差走査熱量計(DSC)で加熱速度10℃/minを用いて決定した。データを下記Table 4にまとめる。結晶化度は120j/gの溶融熱ΔHfと仮定して得た。
【0046】
【表4】

【0047】
デンドリマー調整剤の存在はPET樹脂の結晶化度にあまり影響を与えなかったことがわかる。しかし、これらの低いレベルのデンドリマー調整剤でさえもTgを低下させた。
【0048】
[実施例8]
上述のように、2軸押出機内で3wt.%のDend-5デンドリマーを含む組成物をPET-4コポリエステルと配合することによりブレンドした。シート押出生成物は作れなかった。組成物溶融粘度は、溶融物がダイヘッドから垂れるレベルまで減少しており、撚ることができるほど十分な溶融強度は有していなかった。
【0049】
[実施例9〜12]
PETN-10および0.25wt.%の種々のデンドリマーを含む組成物を配合して、実施例1〜6について実質的に記載したような供試体を得た。比較のために、PETN-10を有するがデンドリマーを含まない対照実施例C6を同様に配合した。
【0050】
[実施例13]
PENT-10および0.25wt.%第二世代Boltornデンドリマーを含む組成物を配合して、実施例1〜6について実質的に記載したような供試体を得た。比較のために、PENT-10を含むがデンドリマーを含まない対照実施例C7を同様に配合した。
【0051】
実施例9〜12についての供試体および対照実施例C6およびC7についての供試体を上述のようにコンディショニングして試験した。供試体の組成および100℃における歪みおよび弾性特性を下記Table 5にまとめる。
【0052】
【表5】

【0053】
実施例9〜12についての歪みデータから、ポリエチレンテレフタレート−ナフタレートコポリマー中にデンドリマー調整剤を含むことで、歪みレベルにおける減少に反映されるようにSHPが実質的に減少することがわかる。デンドリマーで調節した場合にポリエチレンナフタレート−テレフタレート樹脂についての減少した歪みレベルに見られるように(実施例12)、SHPにおける効果は、より剛性のポリマーにまで及ぶ。
【0054】
実施例9〜11および13のブレンドおよび対応する対照樹脂C6〜C7についての応力−歪みデータ値は、90℃〜120℃の温度で測定し、下記Table 6にまとめる。
【0055】
【表6】

【0056】
温度の上昇はブレンドの性能に有害な影響を与えないことがわかる。ブレンドの歪みレベルは、120℃程度に高められた温度における低レベルのデンドリマーによって効果的に調節される。
【0057】
PET樹脂の溶融レオロジーに対するデンドリマー添加剤の効果は、30mm長さの1mmキャピラリーを具備するGalaxy 5 Kayness キャビラリーレオメータを用いて測定した。0.25wt.%のDend-4調整剤と配合したPET-4を含む組成物(実施例3)、0.5wt.%のDend-4調整剤と配合したPET-4を含む組成物(実施例4)およびPET-4のサンプル(対照実施例C4)を120℃で一晩乾燥させ、次いでキャピラリーレオメータに導入した。10〜1000sec-1の剪断レベルについて285℃で測定した溶融粘度を下記Table 7にまとめる。
【0058】
【表7】

【0059】
PET溶融レオロジーに対するデンドリマー添加剤の効果をさらに図2に示す。低い剪断レベルでは樹脂の溶融粘度に増加が見られるが、高い剪断レベルでは溶融粘度は減少することがわかる。
【0060】
低い剪断レベルでのブレンド組成物の溶融粘度の増加は、顕著である。低い剪断レベルで高い溶融粘度を示す樹脂は一般に、成形機械および押出機械で加工される際に垂れる傾向をあまり示さず、良好な溶融強度を示す。高い剪断レベルでの溶融粘度の減少は、特にプロファイル押出スクリューインジェクション設備で用いる場合に、樹脂溶融加工特性を改良し得る。たとえば無水ピロメリト酸などの反応性多官能性添加剤と配合したPET樹脂は、一般に、すべての剪断レベルにおいて実質的に増加した溶融粘度を有し、加工がより困難になることが観察される。
【0061】
溶融強度は、樹脂を加工する特定の溶融処理方法の適性を決定するために、重要なパラメータである。たとえば、低溶融強度樹脂は、押出により、特にフィルムおよび押出ブロー成形処理において、およびダイを出る押出物が支持されていないプロファイルおよびシート押出操作において、容易に加工することができない。樹脂分子量を増加させるか、または多官能性架橋添加剤を導入することによって、溶融強度は改良され得ることが知られている。これらの従来の方法は、溶融粘度を上昇させることにより、よってより高い処理温度を必要とすることによって、樹脂加工性に有害な影響を与える傾向がある。
【0062】
ダイの膨れ、押出機ダイの制約を逃れる際の溶融流のサイズの増加は、樹脂溶融レオロジーの別の問題である。ダイの膨れの増加は、溶融強度に関連するパラメータである樹脂溶融弾性率の増加に反映される。Table 8にまとめられている上記レオロジー供試体に対するダイの膨れ値は、レオメータキャピラリーから出てくる押し出された樹脂ストランドの直径を測定することによって決定した。ストランド直径(dia.)は下記Table 8にまとめ、キャピラリー直径(1mmまたは40mil)のダイ膨れ%もまた示す。
【0063】
【表8】

【0064】
未配合のPET樹脂の低い溶融強度および弾性率は、デンドリマー添加剤を含まないPET樹脂を押し出す際にストランド直径を減少させる。対照実施例C4参照。実施例3および4の押出物に観察された実質的なダイの膨れは、PETをデンドリマーとブレンドすることにより得られた溶融強度の有意な増加を反映する。
【0065】
標準的な単軸押出機または二軸押出機でPETおよび超分岐ポリマーを配合した上記に示した実施例に加えて、ポリエステル/超分岐ポリマー組成物もまた反応器ルートを用いて作った。下記実施例において、超分岐ポリマーをポリエステルの溶融重合中に添加した。添加は、反応物質の初期仕込み(すなわち、エステル化/縮合工程において)と共になされたかあるいは重縮合工程中になされた。
【0066】
すべての下記実施例において、G2はBoltorn(登録商標)H-20として市販されている第二世代超分岐ポリマーを示す。注記したパーセンテージはG2/精製テレフタル酸(PTA)の比率をいう。よって、PET w/0.16% G2は、0.0016gのG2をPTA1g当たりに添加したPET組成物を示す。これは、ポリマー単位グラムあたり0.00138gのG2ともいう。種々レベルのG2を含む組成物を合成した。下記実施例は、ほんの少量の超分岐ポリマーが樹脂の特性および樹脂から作られた物品を実質的に変化させるために十分であることを示す。
【0067】
[実施例14]
2リットルバッチ反応器を用いて、0.16%のG2を含むPET樹脂を作った。第1工程はエステル化であり、続いて重縮合工程を真空下で行った。一連のターンダウン(turn-down)が行われ、反応器のRPMは一定のトルク読みとりにより示される特定の回数で減少される。トルク読みとりは分子量に関連する粘度に翻訳(変換)される。この実施例において、典型的な「標準」PET調製に特徴的な最後のターンダウン後に、G2量が添加された。G2を添加する前に、真空を開放した。G2を数秒以内で添加した。反応器を再度密封して、パージし、30 mmHg/minで再び真空を与えた。撹拌装置トルクはわずかに低下したが、真空レベルが下がるや速やかに上昇した。撹拌速度は、通常の範囲内のトルクレベルを維持するために2回減少させた。真空が1 mmHgに達したら、終了前に反応を5分間続けた。物質は、ポリマーストランドの細断中、非常にわずかな静電気の蓄積を示した。
【0068】
[実施例15]
PET製造の標準的手順を続けた(PET対照)。実験の通常終了時点で、真空を開放して、G2添加を模したが、空気への暴露を最小にするために暴露時間は30秒に短縮した。反応器を再度密封して、パージし、45 mmHg/min (30 mmHg/minに対抗して)の真空を再度与えた。模擬添加後、撹拌トルクはわずかに低下したが、真空レベルが下がるや速やかに上昇した。トルクレベルを通常の範囲に維持するために撹拌速度を2回低下させた。真空が1mmHgに到達したら、終了する前に反応を5分間続けた。物質は、ポリマーストランドの細断中に、通常の静電気の蓄積を示した。
【0069】
[実施例16]
実施例14および15で調製した樹脂は、固体状態であり、上述のようにシートに押し出された。供試体は、非晶質シートから切り出した。応力−歪み曲線は、上述のように、100℃で測定した。さらに、異なる歪みで発達する結晶化度を得た。約100%の一定の歪みに所与のサンプルを供することによってデータを得た。次いで、サンプルを取りだし、密度を測定した。密度から、結晶化度を計算した。図3は、超分岐ポリマーを有する組成物から作ったシートの結晶化度が典型的なPET樹脂よりも遙かに早く成長することを示す。たとえば、約150%のひずみで、PETは約4%の結晶化度を有するが、PET/超分岐組成物は14%を越える結晶化度を有する。
【0070】
[実施例17]
超分岐樹脂を有するPETおよび超分岐樹脂を有さないPETをスケールアップして、80ポンドバッチをパイロットプラント反応器から得た。樹脂MMP-212は典型的なPET包装樹脂であり、MMP-225はH-20が0.15%のレベルで反応器に添加された組成物である。よって、これら2種の組成物は、実施例14〜16の組成物と略同じである。両方の組成物からシートを作り、歪み硬化パラメータを100℃で決定した。Table 7は結果を示す。
【0071】
【表9】

【0072】
このtableは、超分岐ポリマーを含む組成物がPETよりも早く歪み硬化されることを示す。MMP-225組成物を前述の実施例におけるように中間歪み実験に供した。150%の歪みで、PET樹脂の結晶化度成長4%に対して、結晶化度成長は13.3%であった。
【0073】
[実施例18]
G2ありおよびG2なしで作った組成物をキャピラリーレオメータを用いるレオロジー測定に供した。我々の予想どおりに、G2を含む組成物は分岐系と同様の挙動を示す。
(a)零剪断速度粘度は大幅に増加する。
(b)剪断薄膜化(thinning)挙動が観察される。
(c)ダイ膨れがより明確になる。
【0074】
代表的なデータを図4に示す。図4には、PETおよびPET/超分岐組成物についての粘度/剪断速度のプロットが与えられている。上記ポイント(a)および(b)が明らかに示されている。たとえば、約1s-1の剪断速度において、標準PET樹脂の粘度は450Pa.sであり、PET/超分岐組成物は、5倍増を越える2600Pa.sよりも大きな粘度を有する。さらに、剪断薄膜化の代理として粘度/剪断速度曲線の傾斜を考えるならば、PETについて-0.27の傾斜であり、一方、PET/超分岐組成物について-0.35の傾斜であり、より高い剪断薄膜化を示すことがわかる。換言すれば、PETおよびPET/超分岐樹脂について指数法則指数はそれぞれ0.73および0.65である。このデータは280℃で得られた。他の温度および他の組成物を実験して同様な結果を得た。組成物の弾性率に関連するダイ膨れを示すために、Table 8を示す。ここで、直径とは、キャピラリーレオメータから出る際のストランドの直径をいう。
【0075】
【表10】

【0076】
[実施例19]
実施例14の組成物を再び製造した。本実施例における相異点は、反応物質の初期仕込み中に添加した超分岐ポリマーである。溶融重合をエステル化または重縮合工程の何れかで何ら問題なく(with no issues)行った。得られた組成物は固体であり、そのレオロジー を測定した。図5は、標準PET樹脂に対するこの組成物についての粘度/剪断速度データを示す。1s-1の剪断速度での粘度を取ると、PET/超分岐組成物が950Pa.sを越える粘度を有することがわかる。同じ剪断速度でのPET粘度は450Pa.sであったことを思い起こせば、2倍増の粘度が観察されたことがわかる。さらに、PET組成物の1.13mm に対して、レオメータから出てくるポリマーストランドの直径は1.55 mmであった。よって、本実施例の組成物は、粘度挙動(零剪断速度粘度における増加)および弾性率挙動(ダイ膨れ)について、実施例17の組成物と同様に挙動する。我々は、実施例17の組成物が典型的なPET包装樹脂よりも早く歪み硬化することも示した。
【0077】
本発明を特定の実施形態により説明してきたが、これらは何ら限定するものではない。本明細書に記載されているような改良された溶融レオロジー、溶融強度および成形加工パラメータを有する本発明の組成物を特定のPET樹脂およびデンドリマー調整剤について説明した。配合および成形加工分野の当業者は、本発明のポリエステル組成物が、複数のこのようなポリエステル樹脂を含み得ること、樹脂配合分野で一般に用いられるような強化剤、フィラー、 染料、顔料、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、加工助剤などを含む追加の成分をさらに含み得ることを理解するであろう。さらに、本明細書に記載された方法は、ポリプロピレンなどのオレフィンポリマー類、並びにポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエステルアミド類などを含む広範囲の結晶化可能な熱可塑性樹脂の溶融レオロジーおよび成形加工パラメータを調節するために適切であり得ることを認識するであろう。よって、低レベルのデンドリマーおよびこのような熱可塑性物質を含むデンドリマーで調節された組成物も本発明の一部であると考えられる。
【0078】
これらおよびさらなる追加および改変は、当業者には容易に明らかとなるであろう。このような変形、追加並びに組成物、配合物およびこれらを用いる物品は、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、未改質PET樹脂、および0.25wt.%の第三世代デンドリマー調整剤とのPET樹脂ブレンドに対する100℃での応力−歪みデータを示す。
【図2】図2は、剪断速度の範囲全体での0.25wt.%および0.50wt.%のレベルでのデンドリマー調整剤を含むPET樹脂の溶融粘度を示す。
【図3】図3は、超分岐ポリマーを有する場合と有しない場合の樹脂中での結晶化度の成長を示す。
【図4】図4は、超分岐ポリマーを有する場合と有しない場合の樹脂に対する剪断速度による粘度変動を示す。
【図5】図5は、280℃におけるPET/超分岐組成物のレオロジーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化可能な熱可塑性樹脂および樹脂成分の総量を基準として約2wt.%以下のデンドリマー調整剤を含む組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は結晶化可能なポリエステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
結晶化可能なポリエステル樹脂および樹脂成分の総量を基準として約0.001〜約2wt.%のデンドリマー調整剤を含む組成物。
【請求項4】
約0.01〜約1wt.%の前記デンドリマー調整剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
約0.01〜約0.5wt.%の前記デンドリマー調整剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートを含むコポリマー、およびエチレンナフタレートおよびエチレンテレフタレートを含むコポリマーから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルは、エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレートコポリマーである、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルは、約10mol%以下のエチレンイソフタレートユニットを含むエチレンテレフタレート−エチレンイソフタレートコポリマーである、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
熱可塑性ポリエステルと、樹脂成分の総量を基準として約2wt.%以下のデンドリマー調整剤とを配合することを含む、熱可塑性ポリエステルの歪み硬化パラメータを低下させる方法。
【請求項10】
前記ポリエステルは、前記デンドリマー調整剤の約0.01〜約2wt.%と配合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリエステルは、前記デンドリマー調整剤の約0.01〜約1wt.%と配合される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリエステルは、前記デンドリマー調整剤の約0.01〜約0.5wt.%と配合される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートを含むコポリマー、およびエチレンナフタレートおよびエチレンテレフタレートを含むコポリマーから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ポリエステルと、樹脂成分の総量を基準として約2wt.%以下のデンドリマー調整剤とを配合することを含む、結晶化可能な熱可塑性樹脂の溶融強度を改良する方法。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂は約0.01〜約2wt.%の前記デンドリマー調整剤と配合される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
結晶化可能なポリエステルと、樹脂成分の総量を基準として約2wt.%以下のデンドリマー調整剤とを配合することを含む、結晶化可能なポリエステルの溶融強度を改良する方法。
【請求項17】
前記ポリエステルは、約0.01〜約2wt.%の前記デンドリマー調整剤と配合される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリエステルは、約0.01〜約1wt.%の前記デンドリマー調整剤と配合される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリエステルは、約0.01〜約0.5wt.%の前記デンドリマー調整剤と配合される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートを含むコポリマー、およびエチレンナフタレートおよびエチレンテレフタレートを含むコポリマーから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
熱可塑性ポリエステルをポリエステルの溶融重合中に添加されたデンドリマー調整剤と反応させることを含む、熱可塑性ポリエステルの歪み硬化パラメータを低下させる方法。
【請求項22】
デンドリマー調整剤の添加は、エステル化工程においてなされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
デンドリマー調整剤の添加は、重縮合工程においてなされる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートを含むコポリマー、およびエチレンナフタレートおよびエチレンテレフタレートを含むコポリマーから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
結晶化可能なポリエステル樹脂と、精製テレフタル酸に対する所定比率のデンドリマー調整剤を含む成分と、を含む組成物。
【請求項26】
前記比率は、精製テレフタル酸約1部以下あたり約0.1部以下のデンドリマー調整剤の比率を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートを含むコポリマー、およびエチレンナフタレートおよびエチレンテレフタレートを含むコポリマーから選択される、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−501896(P2007−501896A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533785(P2006−533785)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018870
【国際公開番号】WO2004/111126
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】