説明

改良された機械特性及び引掻抵抗を有する充填剤入りオレフィンポリマー組成物

A酸化オレフィンポリマー材料を約1.0〜約40.0質量%、
Bポリプロピレンマレイン酸を約0.5〜約40.0、及び
Cガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ウィスカー、金属繊維、アラミド、タルク、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス微小球、セラミック微小球、グラスウール、ロックウール、ステンレススチールウール、スチールウール、石膏、アルミナ、アルミナ-シリカ、シリカ、及びその混合物から選択される充填剤を約7.0〜約80.0質量%、
を含む改良された機械特性及び引掻抵抗を有する充填剤入りオレフィンポリマー濃縮物であって、成分の合計A+B+Cが、100質量%であることを特徴とする濃縮物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、改良された機械特性及び引掻抵抗を有する、充填剤入りオレフィンポリマー組成物及び充填剤入りオレフィンポリマー濃縮物に関する。
工業及び自動車産業の適用においては、充填剤入りポリマー系を頻繁に利用することによって所望の機械特性を提供する。残念なことに、充填剤入り系の滑らかさ及び引掻抵抗及び擦傷抵抗のような表面機械特性は、多くの場合、商業ニーズに不十分である。充填剤入りのポリマー系の表面特性をさらに改良するために、多量のポリエチレンワックスをポリマー配合物に含めることは当業界で一般的である。しかし、ポリエチレンワックスは、高メルトフローレート材料であるので、その配合により、典型的にポリマー系の機械特性の低下となる。日本特許第2003245967号明細書は、架橋ポリプロピレン、プロピレンのマレイン酸塩及びガラス繊維を含む組成物を開示する。国際特許出願PCT/IB03/05401は、非ハロゲン化難燃剤用の照射され、酸化されたオレフィンポリマーカップリング剤及び充填剤の使用を開示する。しかし、良好な機械特性、引掻抵抗及び表面滑らかさを有する充填剤入りポリマー組成物がいまなお必要とされている。本発明の組成物が、高められた機械特性を提供し、同時に改良された引掻抵抗及び表面滑らかさを提供することが、予想外に分かった。
【0002】
一つの態様において、本発明は、
A酸化オレフィンポリマーのキログラム当たり約1〜約200mmolの全過酸化物を含む酸化オレフィンポリマー材料を約1.0〜約40.0質量%、
Bモノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化したプロピレンポリマーを約0.5質量%〜約40.0質量%、及び
C充填剤を約7.0質量%〜80.0質量%、
を含む充填剤入りオレフィンポリマー濃縮物であって、成分の合計A+B+Cが、100であることを特徴とする濃縮物に関する。
第二の態様において、本発明は、
A酸化オレフィンポリマーのキログラム当たり約1〜約200mmolの全過酸化物を含む酸化オレフィンポリマー材料を約0.5〜約30.0質量%、
Bモノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化したプロピレンポリマーを約0.2〜約30.0質量%、及び
C充填剤を約5.0〜60.0質量%、及び
D非酸化オレフィンポリマー材料を約15.0〜約90.0質量%、
を含む充填剤入りオレフィンポリマー組成物であって、成分の合計A+B+C+Dが、100質量%であることを特徴とする組成物に関する。
本発明の充填剤入りオレフィンポリマー組成物に使用される酸化オレフィンポリマー材料及び非酸化オレフィンポリマー材料に対する出発材料として好適なオレフィンポリマーとしては、プロピレンポリマー材料、エチレンポリマー材料、ブテン-1ポリマー材料、及びその混合物が挙げられる。
【0003】
プロピレンポリマー材料が、非酸化オレフィンポリマー材料又は酸化オレフィンポリマーの出発材料として使用される場合、このプロピレンポリマー材料は、
以下、
(A)アイソタクチック指数が、約80%より大きい、好ましくは約90%〜約99.5%のプロピレンのホモポリマー、
(B)プロピレンとエチレン及びC4-C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとのランダムコポリマーであって、約1〜30質量%の、好ましくは約1〜20質量%の前記オレフィンを含み、かつアイソタクチック指数が、約60%より大きい、好ましくは約70%より大きいコポリマー、
(C)プロピレンとエチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される2種のオレフィンとのランダムターポリマーであって、約1〜約30質量%の、好ましくは約1〜20質量%の前記オレフィンを含み、かつアイソタクチック指数が、約60%より大きい、好ましくは約70%より大きいターポリマー、
(D)(i)アイソタクチック指数が、少なくとも約80%、好ましくは約90〜約99.5%のプロピレンホモポリマー、又は、
(a)プロピレン及びエチレン、(b)プロピレン、エチレン及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)プロピレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶性コポリマーであって、約85質量%より大きい、好ましくは約90%〜約99%のプロピレン含有量を有し、またアイソタクチック指数が、約60%より大きいコポリマーを約10質量部〜約60質量部、好ましくは約15部〜約55部、
(ii)周囲温度でキシレンに不溶性の、エチレンとプロピレン又はC4-C8α-オレフィンとのコポリマーを約3質量部〜約25質量部、好ましくは約5部〜約20部、
(iii)(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される弾性コポリマーであって、前記コポリマーが、約0.5質量%〜約10質量%のジエンを任意に含み、約70質量%未満、好ましくは約10%〜約60%、より好ましくは約12%〜約55%のエチレンを含み、周囲温度でキシレンに可溶性でありまた固有粘度が約1.5〜約6.0dl/gであるコポリマーを約10質量部〜約85質量部、好ましくは約15部〜約65部、
を含むオレフィンポリマー組成物であって、(ii)及び(iii)の合計が、全オレフィンポリマー組成物に基づき約50%〜約90%であり、また、質量比(ii)/(iii)が、約0.4未満、好ましくは約0.1〜約0.3であり、前記組成物が好ましくは少なくとも2段階の重合により調製されることを特徴とするポリマー組成物、及び
(E)その混合物
であり得る。
【0004】
エチレンポリマー材料が、非酸化オレフィンポリマー材料又は酸化オレフィンポリマー材料の出発材料として使用される場合、このエチレンポリマー材料は、(A')エチレンのホモポリマー、(B')重合したα-オレフィン含有量が約1質量%〜約20質量%、好ましくは約1%〜約16%であるエチレンとC3-C10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダムコポリマー、(C')重合したα-オレフィン含有量が約1〜約20質量%、好ましくは約1%〜約16%であるエチレンと二種のC3-C10α-オレフィンとのランダムターポリマー、及び(D')その混合物から選択される。
ブテン-1ポリマー材料が、非酸化オレフィンポリマー材料として又は酸化オレフィンポリマー材料の出発材料として使用される場合、有用なポリブテン-1ホモポリマー又はコポリマーは、(A'')ブテン-1のホモポリマー、(B'')ブテン-1とエチレン、プロピレン又はC5-C10α-オレフィンとのコポリマー又はターポリマーであって、上記コモノマー含有量が約1モル%〜約15モル%であるもの、及び(C'')その混合物から選択される。有用なポリブテン-1ホモポリマー又はコポリマーは、アイソタクチック又はシンジオタクチックであり、また約0.1〜150dg/分、好ましくは約0.3〜100、及びより好ましくは約0.5〜75のメルトフローレート(MFR)を有し得る。
これらブテン-1ポリマー材料、その調製方法及びその特性は、当業界に既知である。好適なポリブテン-1ポリマーは、例えばWO 99/45043に開示のチーグラーナッタ触媒とブテン-1の使用により、又はWO 02/102811に開示のブテン-1のメタロセン重合により得られ得、これらの開示は、ここに参考として取り込まれる。
【0005】
好ましくは、ブテン-1ポリマー材料は、約15モル%以下のコポリマー化したエチレン又はプロピレンを含む。より好ましくは、このブテン-1ポリマー材料は、7日後広角度X線回折によって測定された少なくとも30%、より好ましくは約45%〜約70%、さらに好ましくは約55%〜約60%の結晶性を有するホモポリマーである。
本発明の組成物における酸化オレフィンポリマー材料及び非酸化オレフィンポリマー材料の出発物質は、互いに同一でも異なっていてもよい。
酸化オレフィンポリマー材料の一つの調製方法において、オレフィンポリマー出発材料は、まず、不活性ガス、好ましくは窒素のブランケットの下、高エネルギー電離線に曝される。この電離線は、所望の程度照射されるポリマー材料の塊を貫通するのに十分なエネルギーを有するべきである。電離線は、いかなる種類であり得るが、好ましくは、電子及びγ線を含む。約500〜約4000キロボルトの加速ポテンシャルを有する電子発生器からの電子ビームがより好ましい。十分な結果が、約0.1〜約15メガラド(「Mrad」)、好ましくは約0.5〜約9.0Mradの電離線の照射で得られる。
【0006】
「rad」の語は、米国特許第5,047,446号明細書に記載される方法を使用する照射源に関係なく照射材料のグラム当たり100エルグのエネルギーの吸収をもたらす電離線の量として通常定義される。電離線のエネルギー吸収は、放射線感受性ダイを含むポリマーフィルムのストリップが、エネルギー吸収感受性手段の測定装置である周知の従来の線量計によって測定される。従って、本明細書において使用されるように「rad」の語は、オレフィンポリマー材料の表面に置かれた線量計のポリマーフィルムのグラム当たり100エルグのエネルギーの吸収をもたらす電離線の量が、粒子のベッド又は層、又はフィルム又はシートの形態によらず、照射されることを意味する。
照射オレフィンポリマー材料は、その後、好ましくは一連の工程で酸化される。最初の処理工程は、約0.004体積%(% by volume)より大きく約15体積%より小さい、好ましくは約8体積%より小さく、より好ましくは約5体積%より小さく、またより好ましくは約1.3体積%〜約3.0体積%の第一制御量の活性酸素の存在下、少なくとも約25℃であるがこのポリマーの軟化点より下の温度、好ましくは、約25℃〜約140℃、より好ましくは約25℃〜約100℃、またさらに好ましくは約40℃〜約80℃の第一温度まで、照射ポリマーを加熱する工程からなる。所望の温度への加熱は、可能な限り早く、好ましくは約10分未満で達成される。その後、ポリマーを、選択された温度で、代表的には約5〜約90分維持して、酸素とポリマーのフリーラジカルとの反応範囲を増加させる。当業者によって決定され得る滞留時間は、出発材料の特性、使用される活性酸素濃度、照射線量、及び温度によって決まる。最大時間が、流動層の物理的拘束によって決定される。
【0007】
第二処理工程において、約0.004体積%より大きく約15体積%より小さい、好ましくは約8体積%より小さく、より好ましくは約5体積%より小さく、またより好ましくは約1.3体積%〜約3.0体積%の第二制御量の存在下、少なくとも約25℃であるがこのポリマーの軟化点より下の第二温度で照射ポリマーを加熱する。好ましくは、第二温度は、約100℃〜ポリマーの軟化点未満であり、また第一工程の第一温度より高い。ポリマーは、その後選択された温度及び酸素濃度条件で、約10〜約300分、好ましくは約20〜約180分維持し、鎖の分断速度を増加させまた鎖フラグメントの再結合を最小化して長鎖分岐を形成し、即ち長鎖分岐の形成を最小化する。滞留時間は、第一処理工程で議論したものと同一の因子によって決定される。
任意の第三工程において、酸化オレフィンポリマー材料を不活性ガス、好ましくは窒素のブランケットの下で少なくとも約80℃であるがこのポリマーの軟化点より下の温度で加熱し、また約10〜約120分、好ましくは約60分、上記温度で維持する。この工程を実施するとより安定した生成物を生成する。酸化オレフィンポリマーが直ぐに使用されるのでなくて保存される場合、又は使用される線量が上記範囲の上端である場合この工程を使用することが好ましい。その後、上記層に排出される前にポリマーを不活性ガス、好ましくは窒素のブランケット下、約10分の間約70℃の第四の温度に冷却する。この方法で、さらに分解せずに長時間、室温で保存され得る安定な中間体が形成される。
【0008】
この処理を実施する好ましい方法は、照射オレフィンポリマーを第一制御量の酸素の存在下第一温度で運転する流動層アセンブリを通し、このポリマーを第二制御量の酸素の存在下第二温度で運転する流動層アセンブリを通し、その後第三流動層アセンブリにおいて窒素のブランケット下第三温度でこのポリマーを維持する。商業的な運転において、最初の二つの工程では分離流動層を使用し、また第三工程ではパージした混合層を使用する連続方法が好ましい。しかし、この方法は、各処理工程で所望の温度に加熱した流動化ガスを使用して、さらに一つの流動層のバッチモードで実施され得る。溶融押出法のようないくつかの技術と異なり、流動層法は、照射ポリマーの溶融状態への変換及びそれに続く再凝固及び所望の形態への微粉砕(comminution)を要しない。流動媒体は、例えば窒素又はフリーラジカルの存在に関して不活性ないかなる他の気体、例えばアルゴン、クリプトン、及びヘリウムでよい。
ポリマーに形成される過酸化物基の濃度は、照射ポリマーの調製の間の線量及び照射後そのようなポリマーが曝される酸素の量を変化させることにより制御し得る。流動層ガス流の酸素レベルは、入り口における乾燥した、濾過した空気の流動層への添加により制御され得る。空気は、ポリマーにおける過酸化物の形成により消費される酸素を補うために絶えず添加されなければならない。
【0009】
上記とは別に、酸化オレフィンポリマー材料は、以下の手順で調製され得る。第一処理工程において、オレフィンポリマー出発物質は、制御量の酸素を添加しながら、0.1〜10質量%の有機過酸化物開始剤で処理し、それによって、オレフィンポリマー材料を0.004体積%より多いが21体積%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは8体積%未満で、またさらに好ましくは1.0〜5.0体積%で、少なくとも25℃であるがポリマーの軟化点より低い温度、好ましくは約25℃〜約140℃で暴露する。
第二処理工程において、その後、第一処理工程と同一の範囲内の酸素濃度で、ポリマーを少なくとも25℃からポリマーの軟化点まで、好ましくは100℃からポリマーの軟化点まで加熱する。全反応時間は、典型的に約0.5時間〜4時間である。酸素処理後、窒素のような不活性雰囲気下、少なくとも80℃でこのポリマーの軟化点以下で典型的に0.5時間〜約2時間、ポリマーを処理していかなる活性フリーラジカルを急冷する。
好適な有機過酸化物としては、アシル過酸化物、例えばベンゾイル及びジベンゾイル過酸化物、ジアルキル及びアラルキル過酸化物、例えばジ-tert-ブチル過酸化物、ジクミル過酸化物、クミルブチル過酸化物、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-1,2,5-トリ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、及びビス(α-tert-ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン)、及びペルオキシエステル例えばビス(α-tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルベンゾエート、2,5-ジメチルヘキシル-2,5-ジ(ペルベンゾエート)、tert-ブチル-ジ(ペルフタレート)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及び1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及びペルオキシカルボネート、例えばジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカルボネート、及びジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネートが挙げられる。この過酸化物は、そのままで又は稀釈媒体中で使用し得る。
【0010】
本発明の組成物に使用される酸化オレフィンポリマー材料は、好ましくは、酸化オレフィンポリマー材料のキログラム当たり約1mmolより多くの全過酸化物含む。より好ましくは、酸化オレフィンポリマー材料は、酸化オレフィンポリマー材料のキログラム当たり約1より多く約200mmolまでの全過酸化物を、さらに好ましくは酸化オレフィンポリマー材料のキログラム当たり約5〜約100mmolの全過酸化物を含む。
酸化オレフィンポリマーの数平均分子量(Mn)は、場合によればより低くてもよいが、好ましくは約10000より大きい。
好ましくは、酸化オレフィンポリマー材料及び非酸化オレフィンポリマー材料を作る出発材料は、プロピレンポリマー材料である。より好ましくは、この出発材料は、約80%より大きいアイソタクチック指数を有するプロピレンホモポリマーである。酸化オレフィンポリマー材料は、好ましくは、照射の後、先述の酸素への暴露によって調製される。
好適な充填剤としては、強化用繊維、例えばガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、ウィスカー及びアラミド、不活性充填剤、例えばタルク、ウォラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス微小球、セラミック微小球、グラスウール、ロックウール、ステンレススチールウール、スチールウール、及び石膏、セラミック繊維、例えばアルミナ、アルミナシリカ及びシリカ、及びその混合物が挙げられる。本発明の不活性充填剤は、好ましくは、約0.8〜約40μm(ミクロン)の粒径範囲で微細に分裂した固体として存在する。ガラス繊維として存在する場合、この充填剤は、代表的に補強剤として市販される商業上入手可能なガラス繊維を含み得る。このガラス繊維は、短い繊維の形態で、典型的に約1.6mm〜約7.9mmの長さ、長繊維の形態で、典型的に約12.7〜約51mmの長さで、又は連続フィラメント繊維の形態であり得る。好ましくは、充填剤は、ガラス繊維である。
【0011】
モノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化したプロピレンポリマーは、当業界で既知のいかなる方法で作られ得る。好ましくは、プロピレンポリマーは、C3-C20モノマービニル酸、エステル又は無水物で、より好ましくは、メタアクリル酸、アクリル酸、マレイン酸又はその無水物でグラフト化される。さらに好ましくはプロピレンポリマーは、無水マレイン酸でグラフト化される。モノマーのビニル酸、エステル又は無水物は、グラフト化したプロピレンポリマーの質量に基づき好ましくは約0.2質量%〜約10.0質量%である。より好ましくは、モノマービニル酸、エステル又は無水物レベルの含有量は、約0.3質量%〜約7.0質量%、より好ましくは約0.4質量%〜約5.0質量%である。
本発明の充填オレフィンポリマー濃縮物において、充填材料は、約7.0質量%〜約80.0質量%の質量で存在し、好ましくは充填剤は、約10.0質量%〜約75.0質量%の量で存在し、より好ましくは充填剤は、約20.0質量%〜約70.0質量%の量で存在する。
酸化オレフィンポリマー材料は、約1.0質量%〜約40.0質量%、好ましくは約5.0質量%〜約35.0質量%、より好ましくは約10.0質量%〜約30.0質量%の量で存在する。
モノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化したプロピレンポリマーは、約0.5質量%〜約40.0質量%、好ましくは約1.0質量%〜約20.0質量%、より好ましくは約2.0質量%〜約10.0質量%である。
本発明の充填剤入りオレフィンポリマー組成物において、充填剤材料は、約5.0質量%〜約60.0質量%の量であり、好ましくは、充填剤は、約10.0質量%〜約50.0質量%であり、より好ましくは、充填剤は、約20.0質量%〜約40.0質量%の量で存在する。
酸化オレフィンポリマー材料は、約0.50質量%〜約30.0質量%、好ましくは約1.0質量%〜約25.0質量%、より好ましくは約5.0〜約20.0質量%の量で存在する。
モノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化したプロピレンポリマーは、約0.2質量%〜約30.0質量%、好ましくは約0.3質量%〜約10.0質量%、より好ましくは約0.5質量%〜約3.0質量%で存在する。
存在する場合、非酸化オレフィンポリマー材料は、約15.0質量%〜約90.0質量%、好ましくは約20.0質量%〜約80.0質量%、より好ましくは約30.0質量%〜約75.0質量%の量で存在する。
【0012】
酸化オレフィンポリマー材料、充填剤、モノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化されたプロピレンポリマーまた任意に非酸化オレフィンポリマー材料は、周囲温度で、当業界で周知な従来の操作、例えばドラムタンブリング、又は低又は高速ミキサーで併用され得る。その後得られる組成物は、当業界で周知のいかなる従来の方法、バッチ又は連続モード例えばバンバリーミキサー、こね混ぜ機、又は単一又はツインスクリュー押出機で溶融状態に混合される。次いでこの材料をペレット化し得る。
メルトフローレート(「MFR」)を230℃で、2.16kgでASTM D1238によって決定し、またdg/分の単位で記録する。アイソタクチック指数(「I.I.」)をキシレンに不溶性のプロピレンポリマーの割合として定義する。室温でキシレンに可溶性のプロピレンポリマーの質量パーセントは、攪拌機を備える容器に室温で250mlのキシレンに2.5gのポリマーを溶解させることによって、また20分間135℃で攪拌しながら加熱することによって決定される。この溶液を攪拌を続けながら25℃に冷却し、その後固体が沈降するように30分間攪拌せずに静置したままにする。固体を濾紙で濾過し、残った液を窒素流で処理することによって蒸発させ、また固体残渣を一定値に達するまで80℃で真空乾燥する。これらの値は、n-ヘプタンを沸騰させながら抽出することによって決定されるアイソタクチック指数に実質的に対応し、定義によってポリプロピレンのアイソタクチック指数に同等である。プロピレン酸化オレフィンポリマーの過酸化物含有量は、Quantitative Organic Analysis via Functional Groups, by S. Siggia et al., 4th Ed., NY, Wiley 1979, pp. 334-42に記載される。引張降伏強さをASTM D638-89に従って測定した。曲げ弾性率(Flexural Modulus)及び曲げ降伏強さ(Flex Strength at yield)をASTM D790-92に従って測定した。加熱撓み温度は、ASTM D648-01Bに従って測定した。降伏点伸びをASTM D638-89に従って測定した。
【0013】
走査型電子顕微鏡写真画像診断を日立社から商業的に入手可能なHitachi S3500走査型電子顕微鏡で行った。試験したサンプルをSEM分析前に金でスパッターコートした。
引掻抵抗をFord Laboratory Test Method BN 108-13(引掻抵抗)を使用して測定した。この装置は、試験片の表面にのるいくつかの重さのピンを含んだ。引掻硬度試験に使用されるピンは、1.0mmの非常に磨かれたスチールボールであり、また擦傷試験で使用されるピンは、7.0mmボールであった。ピンに試験材料の表面上で以下の標準的な力:20.0ニュートン(N)、15.0N、10.0N、7.0N、5.0Nを及ぼす異なる重さを積んだ。その後ピンをパネルに沿って引っ張った。全ての引掻き線を、1が引掻き線が全くなく、5が激しい引掻き線である1〜5の評定尺度に従って試験及びランク付けした。引掻抵抗試験を5回実施し、また5回の試験の結果を合計した。
【0014】
調製1
Basell USA社から商業的に入手可能な、0.3dg/分のMFR及び96.8のI.I.を有するポリプロピレンホモポリマーを窒素ブランケット下0.5Mradで照射した。その後照射ポリマーを65℃で1時間2.2体積%の酸素で処理し、またその後130℃でさらに1時間2.2体積%の酸素で処理した。その後酸素を除去した。次いで窒素ブランケット下、1時間、130℃で加熱し冷却しまた回収した。押出ポリマーのMFRは1300dg/分であった。酸化プロピレンポリマーの過酸化物含有量は、酸化プロピレンポリマーのキログラム当たり35mmolの全過酸化物であった。
調製2
Basell USA社から商業的に入手可能な0.7dg/分及び95.6%のキシレン不溶性留分を有するポリプロピレンホモポリマーを窒素ブランケット下0.5Mradで照射した。その後照射ポリマーを55℃で5分間2.5体積%の酸素で、その後140℃でさらに60分間2.5体積%の酸素で処理した。その後酸素を除去した。その後ポリマーを窒素のブランケット下140℃で60分間加熱し、冷却しまた回収した。この押出ポリマーのMFRは、1800dg/分である。酸化プロピレンポリマーの酸化物含有量は、酸化プロピレンポリマーキログラム当たり26mmolの過酸化物である。
【0015】
実施例1-4及び比較例5-8
上記に記載されるように調製1及び2で調製されるサンプルをAlbermaleから商業的に入手可能な抗酸化剤であるAO330及びステアリン酸カルシウムと乾式ブレンドした。PPG Industries社から商業的に入手可能なPPG-3793ガラス繊維、及び0.32のMFR及び95.6のI.I.を有するBasell USA社から商業的に入手可能な非酸化プロピレンホモポリマーをCoperion社から商業的に入手可能なZSK 40mmツインスクリュー押出機に別々に供給し、また210-230℃で配合した。次いですべての材料をBatenfeld社から商業的に入手可能なBatenfeld射出成形機で155グラムを70℃の成形温度で成形した。すべてのサンプルは、1%のPolybond3200、即ち1.0質量%の無水マレイン酸レベルを有するCrompton 社から商業的に入手可能なポリプロピレンマレイン酸(maleated polypropylene)を含んだ。比較例7及び8の組成物は、Honeywell International Inc.から商業的に入手可能なポリエチレンワックスAC-6をさらに含んだ。組成物、実施例1-4及び比較例5-8の機械特性及び引掻抵抗を表1に示す。





































【0016】
【表1】

表1のデータから明らかなように、酸化オレフィンポリマー材料及びポリプロピレンマレイン酸を含むガラス充填されたブレンドの機械特性は、さらにポリエチレンワックスを含む比較例に比較して機械特性の改良されたバランスを提供する。さらに、酸化オレフィンポリマー材料及びポリプロピレンマレイン酸を含むサンプルは、改良された引掻抵抗を提供する。
図2及び3のSEM画像は、本発明の実施例1及び2の組成物が、酸化オレフィンポリマー材料及びポリプロピレンマレイン酸を含み、比較例6のものと比較して改良された表面滑らかさを有する。
ここに開示される本発明の他の特徴、利点及び態様は、先述の開示を読んだ後、当業者にとって容易に明らかであるだろう。これに関して、本発明の具体的な態様が、十分に詳細に記載されるが、これらの態様の変異体及び変更は、記載及び請求されている本発明の意図及び範囲から離れずに達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】比較例6の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2の走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A酸化オレフィンポリマーのキログラム当たり約1〜約200mmolの全過酸化物を含む酸化オレフィンポリマー材料を約1.0〜約40.0質量%、
Bモノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化したプロピレンポリマーを約0.5〜約40.0、及び
Cガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ウィスカー、金属繊維、アラミド、タルク、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス微小球、セラミック微小球、グラスウール、ロックウール、ステンレススチールウール、スチールウール、石膏、アルミナ、アルミナ-シリカ、シリカ、及びその混合物から選択される充填剤を約7.0〜80.0質量%、
を含む充填剤入りオレフィンポリマー濃縮物であって、成分の合計A+B+Cが、100質量%であることを特徴とする濃縮物。
【請求項2】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、プロピレン、エチレン、ブテン-1又はその混合物のポリマーを含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、以下、
(A)アイソタクチック指数が、約80%より大きいプロピレンのホモポリマー、
(B)プロピレンとエチレン及びC4-C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとのランダムコポリマーであって、約1〜30質量%の前記オレフィンを含み、またアイソタクチック指数が、約60%より大きいコポリマー、
(C)プロピレンとエチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される2種のオレフィンとのランダムターポリマーであって、約1〜約30質量%の前記オレフィンを含み、またアイソタクチック指数が、約60%より大きいターポリマー、
(D)(i)アイソタクチック指数が、少なくとも約80%のプロピレンホモポリマー、又は、
(a)プロピレン及びエチレン、(b)プロピレン、エチレン及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)プロピレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶性コポリマーであって、約85質量%より大きいプロピレン含有量を有し、またアイソタクチック指数が、約60%より大きいコポリマーを約10質量部〜約60質量部、
(ii)周囲温度でキシレンに不溶性の、エチレンとプロピレン又はC4-C8α-オレフィンとのコポリマーを約3質量部〜約25質量部、
(iii)(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される弾性コポリマーであって、前記コポリマーが、約0.5質量%〜約10質量%のジエンを任意に含み、約70質量%未満のエチレンを含み、周囲温度でキシレンに可溶性でありまた固有粘度が約1.5〜約6.0dl/gであるコポリマーを約10質量部〜約85質量部、
を含むオレフィンポリマー組成物であって、(ii)及び(iii)の合計が、全オレフィンポリマー組成物に基づき約50%〜約90%であり、また、質量比(ii)/(iii)が、約0.4未満であることを特徴とするポリマー組成物、及び
(E)その混合物
から選択されるプロピレンのポリマーを含む請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、アイソタクチック指数が約80%より大きいプロピレンのホモポリマーである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、(A')エチレンのホモポリマー、(B')重合したα-オレフィン含有量が約1質量%〜約20質量%である、エチレンとC3-C10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダムコポリマー、(C')重合したα-オレフィン含有量が1〜20質量%である、エチレンとC3-C10α-オレフィンとのランダムターポリマー、及び(D')その混合物から選択されるエチレンのポリマーを含む請求項2記載の組成物。
【請求項6】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、(A'')ブテン-1のホモポリマー、(B'')ブテン-1とエチレン、プロピレン又はC5-C10α-オレフィンとのコポリマー又はターポリマーであって、コモノマー含有量が約1質量%〜約20質量%であるもの、及び(C'')その混合物から選択されるブテン-1のポリマーを含む請求項2記載の組成物。
【請求項7】
成分Bが、約1.0質量%〜約20.0質量%の量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項8】
成分Aが、約5.0質量%〜約35.0質量%の量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項9】
成分Cが、約10.0質量%〜約75.0質量%の量で存在する請求項1記載の組成物。
【請求項10】
成分Cが、ガラス繊維である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
成分Bが、無水マレイン酸でグラフト化したプロピレンポリマーである請求項1記載の組成物。
【請求項12】
A酸化オレフィンポリマーのキログラム当たり約1〜約200mmolの全過酸化物を含む酸化オレフィンポリマー材料を約0.5質量%〜約30.0質量%、
Bモノマーのビニル酸、エステル又は無水物でグラフト化したプロピレンポリマーを約0.2質量%〜約30.0質量%、及び
Cガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、ウィスカー、アラミド、タルク、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス微小球、セラミック微小球、グラスウール、ロックウール、ステンレススチールウール、スチールウール、石膏、アルミナ、アルミナ-シリカ、シリカ、及びその混合物から選択される充填剤を約5.0質量%〜約60.0質量%、及び
D非酸化オレフィンポリマー材料を約15.0〜約90.0質量%、
を含む充填剤入りオレフィンポリマー組成物であって、成分の合計A+B+C+Dが、100質量%であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、以下、
(A)アイソタクチック指数が、約80%より大きいプロピレンのホモポリマー、
(B)プロピレンとエチレン及びC4-C10α-オレフィンから選択されるオレフィンとのランダムコポリマーであって、約1〜30質量%の前記オレフィンを含み、またアイソタクチック指数が、約60%より大きいコポリマー、
(C)プロピレンとエチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される2種のオレフィンとのランダムターポリマーであって、約1〜約30質量%の前記オレフィンを含み、またアイソタクチック指数が、約60%より大きいターポリマー、
(D)(i)アイソタクチック指数が、少なくとも約80%のプロピレンホモポリマー、又は、
(a)プロピレン及びエチレン、(b)プロピレン、エチレン及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)プロピレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される結晶性コポリマーであって、約85質量%より大きいプロピレン含有量を有し、またアイソタクチック指数が、約60%より大きいコポリマーを約10質量部〜約60質量部、
(ii)周囲温度でキシレンに不溶性の、エチレンとプロピレン又はC4-C8α-オレフィンとのコポリマーを約3質量部〜約25質量部、
(iii)(a)エチレン及びプロピレン、(b)エチレン、プロピレン、及びC4-C8α-オレフィン、及び(c)エチレン及びC4-C8α-オレフィンから選択される弾性コポリマーであって、約0.5質量%〜約10質量%のジエンを任意に含み、約70質量%未満のエチレンを含み、周囲温度でキシレンに可溶性でありまた固有粘度が約1.5〜約6.0dl/gであるコポリマーを約10質量部〜約85質量部、
を含むオレフィンポリマー組成物であって、(ii)及び(iii)の合計が、全オレフィンポリマー組成物に基づき約50%〜約90%であり、また、質量比(ii)/(iii)が、約0.4未満であることを特徴とするポリマー組成物、及び
(E)その混合物
から選択されるプロピレンのポリマーを含む請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、約80%より大きいアイソタクチック指数を有する、プロピレンのホモポリマーである請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、(A')エチレンのホモポリマー、(B')重合したα-オレフィン含有量が約1質量%〜約20質量%である、エチレンとC3-C10α-オレフィンから選択されるα-オレフィンとのランダムコポリマー、(C')重合したα-オレフィン含有量が1〜20質量%である、エチレンとC3-C10α-オレフィンとのランダムターポリマー、及び(D')その混合物から選択される請求項12記載の組成物。
【請求項16】
前記酸化オレフィンポリマー材料が、(A'')ブテン-1のホモポリマー、(B'')ブテン-1とエチレン、プロピレン又はC5-C10α-オレフィンとのコポリマー又はターポリマーであって、コモノマー含有量が約1モル%〜約15モル%であるもの、及び(C'')その混合物から選択される請求項12記載の組成物。
【請求項17】
成分Aが、約1.0〜約25.0質量%の量で存在する請求項12記載の組成物。
【請求項18】
成分Bが、約0.3〜約10.0質量%の量で存在する請求項12記載の組成物。
【請求項19】
成分Cが、約10.0〜約50.0質量%の量で存在する請求項12記載の組成物。
【請求項20】
成分Cが、ガラス繊維である請求項12記載の組成物。
【請求項21】
成分Bが、無水マレイン酸でグラフト化したプロピレンポリマーである請求項12記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−517104(P2007−517104A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546351(P2006−546351)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003734
【国際公開番号】WO2005/066265
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】