説明

改良された流動機構を用いたノンフロースルー装置及び方法

【解決手段】 ノンフロースルーデバイス内の化合物の合成を促進する方法及び装置が提示される。放射性標識化合物の合成へのノンフロースルー法及びマイクロ流体デバイスの適用が述べられる。これらの方法及び装置は、一つ以上の液体が同じ又は異なる流入ポートを通って反応室に供給されながらノンフロースルーデバイスの渦流反応器の中に接線スリットを通って加圧ガスを導入することを可能にする。加圧ガスの導入は反応器内の混合物のサイクロン運動を作り出す。そのような機構はより低い温度での反応器内の種々の液体の蒸発を促進して高温の使用に伴う望まない副生成物の生成を低減するために使用されてもよい。さらに、種々の液体の完全な混合は、化学反応を渦流反応器内で効率的に起こさせながら急速に遂行されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、これにより本明細書中にその全体が援用される、2008年10月14日に出願された米国仮出願第61/105247号を基づき、それに基づく優先権を主張する。
【0002】
前述の出願、及びその中に、あるいはその審査手続中に引用された全ての文献(「出願引用文献」)、及び出願引用文献中に引用又は参照された全ての文献、及び本願に引用又は参照された全ての文献(「本願引用文献」)、及び本願引用文献に引用又は参照された全ての文献は、本願に、あるいは本願に引用して援用された何れかの文献に言及された何れかの製品に関する何れかの製造者指示書、説明書、製品仕様書、及び製品パンフレットの全てと共に、これにより本願に援用され、本発明の実施に際して採用されてもよい。
【0003】
本発明は概ね、改良された流動機構及び関連技術を用いたマルチステップ化学プロセスのためのノンフロースルーデバイス及び方法に関する。より詳細には、本発明は改良された流動機構を用いた方法及びマイクロ流体ノンフロースルーデバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
マイクロ流体デバイスのようなデバイスは、患者の組織内のポジトロン放出同位体の分布に基づいて画像を作り出すポジトロン断層法(PET)のような医用画像形成用途に使用できる多くの化合物の調製に使用されてきた。同位体は典型的には、体内で容易に代謝又は局在化され、あるいは体内の受容体部位に化学的に結合する分子と共有結合するフッ素18のようなポジトロン放出同位体を含むプローブ分子の注入により患者に投与される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの実施形態はマルチステップ化学プロセスを遂行するために使用できるノンフロースルー装置(装置)に関連する。この装置はマルチステップ化学プロセスを遂行するノンフロースルー装置を備え、その容積が一つ以上の流入試薬/反応物質の量とは無関係である渦流反応器を含む。気体及び/又は液体、又はその混合物を反応室から除去できるように構成された一つ以上の流出口、及び反応器に気体及び/又は液体、又はその混合物を供給するように構成された一つ以上の流入口もある。これらは反応器の壁に接する方向に供給され、それにより化学プロセスステップに影響を与える反応器内で気体及び/又は液体、又はその混合物のサイクロン/渦運動を生じる。
【0006】
このノンフロースルー装置はマイクロ流体デバイスであってもよい。
【0007】
本発明のもう一つの実施形態は、化学プロセスステップが一つ以上の流入試薬の濃縮を含むことを特徴とする前述の装置に関連する。
【0008】
本発明のもう一つの実施形態は、化学プロセスステップが試薬の混合を含むことを特徴とする前述の装置に関連する。
【0009】
本発明のもう一つの実施形態は、化学プロセスステップが一つ以上の溶剤の蒸発を含むことを特徴とする前述の装置に関連する。
【0010】
本発明のもう一つの実施形態は、化学プロセスステップが一つ以上の溶剤の交換を含むことを特徴とする前述の装置に関連する。
【0011】
本発明のもう一つの実施形態は、化学プロセスステップが少なくとも一つの反応生成物の濃縮を含むことを特徴とする前述の装置に関連する。
【0012】
本発明のもう一つの実施形態は、キャリアガスの温度、圧力及び流速を制御することにより化学プロセスステップが影響されることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0013】
本発明のもう一つの実施形態は、制御された温度範囲が約−78℃から約400℃であることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0014】
本発明のもう一つの実施形態は、化学プロセスステップが周囲温度で遂行されることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0015】
本発明のもう一つの実施形態は、反応器が約−1気圧から30気圧まで加圧できることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0016】
本発明のもう一つの実施形態は、キャリアガスの流速が約0から約100scfmであることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0017】
本発明のもう一つの実施形態は、試薬が低濃度/大量に供給されることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0018】
本発明のもう一つの実施形態は、反応が高濃度かつ少量で進行することを特徴とする前述の装置に関連する。
【0019】
本発明のもう一つの実施形態は、濃縮された反応生成物が大量/低濃度に溶出されることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0020】
本発明のもう一つの実施形態は、加熱された流入キャリアガスにより移動しながら反応が加熱されることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0021】
本発明のもう一つの実施形態は、外部熱源が渦流反応器の底部に適用されて化学プロセスに影響を与えることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0022】
本発明のもう一つの実施形態は、反応器の容積が約50μLから約10,000Lまでであることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0023】
本発明のもう一つの実施形態は、高沸点溶剤の完全蒸発が影響を受けることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0024】
本発明のもう一つの実施形態は、高沸点溶剤がDMSO、DMF、スルホラン及び水を含むことを特徴とする前述の装置に関連する。
【0025】
本発明のもう一つの実施形態は、少なくとも二つの試薬が実質的に同時に供給されることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0026】
本発明のもう一つの実施形態は、渦流反応器が規模可変であることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0027】
本発明のもう一つの実施形態は、多数の渦流反応器が可変構成として接続されることを特徴とする前述の装置に関連する。この構成は直列、並列、ライブラリ又はネットワークを作るための多重経路への分割を含む。
【0028】
本発明のもう一つの実施形態は、装置がマイクロ流体装置であり、反応器の容積が約5μLから約1000μLであることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0029】
本発明のもう一つの実施形態は、装置がマイクロ流体装置であり、温度が約−78℃から約400℃であることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0030】
本発明のもう一つの実施形態は、装置がマイクロ流体装置であり、圧力が約0から約50psiであることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0031】
本発明のもう一つの実施形態は、装置がマイクロ流体装置であり、キャリアガスの流速が約ゼロから約10scfmであることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0032】
本発明のもう一つの実施形態は、装置がマイクロ流体装置であり、反応生成物が約1から約60秒で得られることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0033】
本発明のもう一つの実施形態は、装置がマイクロ流体装置であり、化学プロセスが放射性標識化合物の放射性合成であることを特徴とする前述の装置に関連する。
【0034】
本発明のもう一つの実施形態は、反応器への加圧ガスの接線方向の流入により作り出された渦流反応器内の気体及び/又は液体又はその混合物のサイクロン運動により遂行されるマルチステップ化学プロセスの方法に関連し、以下のステップを含む。すなわち、
a)反応器に試薬を供給するステップ、
b)試薬を処理して所望の生成物を生成するステップ、及び
c)生成物を収集するステップ
である。
【0035】
もう一つの実施形態は、少なくとも二つの試薬が実質的に同時に供給されることを特徴とする前述の方法に関連する。
【0036】
もう一つの実施形態は、低濃度で供給された一つ以上の試薬が反応物の流入に先立ち所望量に濃縮されることを特徴とする前述の方法に関連する。
【0037】
もう一つの実施形態は、溶剤交換をさらに含む前述の方法に関連する。
【0038】
もう一つの実施形態は、溶剤の交換が残留水分の除去をもたらし、濃縮された残留物の乾燥を促進することを特徴とする前述の方法に関連する。
【0039】
もう一つの実施形態は、渦流反応器内の圧力と温度を制御することにより試薬を混合して化学反応を遂行するステップをさらに含む前述の方法に関連する。
【0040】
もう一つの実施形態は、試薬を加熱又は冷却して加熱又は冷却された流入キャリアガスの渦流供給により化学反応を遂行するステップをさらに含む前述の方法に関連する。
【0041】
もう一つの実施形態は、反応器の底部に適用された外部熱源により試薬を加熱して化学反応を遂行するステップをさらに含む前述の方法に関連する。
【0042】
もう一つの実施形態は、試薬が連続的に反応室に注入されることを特徴とする、さらに処理するために反応器から生成物を溶出する前述の方法に関連する。もう一つの実施形態は、渦流反応器がマイクロ流体反応器であることを特徴とする前述の方法に関連する。
【0043】
もう一つの実施形態は、放射性標識化合物の放射性合成のための前述の方法に関連する。
【0044】
もう一つの実施形態は、渦流反応器内の加圧ガスの流速を制御することによりさらなる分析のために進行中の化学反応をサンプル抽出する方法に関連する。
【0045】
もう一つの実施形態は、渦流反応器がマイクロ流体反応器であることを特徴とする、渦流反応器内の加圧ガスの流速を制御することによりさらなる分析のために進行中の化学反応をサンプル抽出する方法に関連する。
【0046】
もう一つの実施形態は、化学反応が放射性標識化合物の放射性合成であることを特徴とする、渦流反応器内の加圧ガスの流速を制御することによりさらなる分析のために進行中の化学反応をサンプル抽出する方法に関連する。
【0047】
本発明のこれら及び他の種々の実施形態はその動作の構成及び方法と共に、添付図面と併せて理解したときに以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。この出願全体を通じて引用された全ての特許及び参考文献の開示全体は本願にその全体が援用される。
【0048】
この開示において、特に特許請求の範囲及び/又は段落において、「comprises」、「comprised」、「comprising」等のような用語は米国特許法に起因する意味を有してもよく、例えばそれらは「includes」、「included」、「including」等を意味してもよく、また「consisting essentially of」及び「consists essentially of」のような用語は米国特許法に起因する意味を有し、例えばそれらは明示的に規定されない要素を許容するが、先行技術に見られ、あるいは発明の基本的又は新規な特性に影響を与える要素を排除することを断わっておく。
【0049】
発明の実施形態は以下の添付図面を参照して述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態によるシステムを用いた化合物を合成する例示的ステップを例示する。
【図2】本発明の実施形態によるデバイスを例示する。
【図3】本発明の実施形態によるデバイスを例示する。
【図4】本発明の実施形態によるデバイスを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の説明において、本発明の完全な理解を与えるために、限定ではなく説明を目的として詳細及び説明が記載される。しかしながら、本発明がこれらの詳細及び説明から逸脱する他の実施形態で実施されてもよいことは当業者には明らかであろう。
【0052】
本発明はノンフロースルーデバイスに関連する。このデバイスは所望量で反応を遂行するために使用される。ノンフロースルー装置は「セミバッチ」の反応に利用される装置である。このノンフロースルー装置はマイクロ流体反応においてマルチステップ化学プロセスを遂行するために使用されてもよい。ノンフロースルーデバイスは「バッチ」及び「フロー」デバイス及びプロセスの好ましい特徴を利用するプロセスの利点を有する。
【0053】
詳細には、フロープロセスと同様に、サイクロン運動で周回しながら反応器に供給された第1の液体はフロースルー試薬である第2の液体に接触する。第1と第2の液体は渦流反応器内を連続移動するフローモードで互いに接触する。このやり方により、鍵となる試薬及び中間体を、移動するがバッチシステムと同様に反応器から出ない濃縮溶液内に維持することが可能になる。
【0054】
さらに、このノンフロースルーシステムは反応物がフロースルーシステムと同様に反応器に連続供給されることを可能にする。しかしながら、それらはフロースルーシステムと違って、所望量にさらに濃縮することができる。反応は、渦流反応器内で反応器の壁を急速に周回する溶液中で生じる。生成物はバッチデバイスと同様に一連工程につき一度だけ収集できる。フローモードは進行中の反応のサンプル抽出(分割)を可能にし、これは現行のバッチ反応器では不可能である。それはまた連続周回させながら急速かつ効率的な濃縮、溶剤交換及び試薬混合(非混和性のものでも)を可能にする。このシステムはHPLCにより精製される中間体の使用を容易に可能にする(現行装置は、中間体がHPLCによって得られる大量の溶剤から生じる大きな難題なしにはこれに適応できない)。渦流反応器の特徴は二つ以上の試薬の同時導入を可能にする。今述べるノンフロースルー渦流反応器は反応器の容積とは無関係に何れの規模の同時混合をも可能にし、一方、フロースルー及びバッチ反応器の混合速度は共に反応器の容積に反比例する。前述の特徴に基づいて、バッチとフロースルーの特徴の両方を組み合わせたそのようなデバイスは種々の化学プロトコルの容易な規模可変性を可能にし、研究及び生産適用に大きい価値を有する。
【0055】
「マイクロ流体デバイス」又は「マイクロ流体チップ」又は「合成チップ」又は「チップ」はマイクロ経路とマイクロ区画を備える基板への少量(例えばマイクロリットル又はナノリットル)の液体の操作及び移送を可能にするユニット又はデバイスである。マイクロ流体デバイスは、機械的又は非機械的ポンプを使用してマイクロ経路と反応室内に移送又は搬送されるように試薬及び溶剤などの液体を操作できるように構成されてもよい。
【0056】
ノンフロースルー装置、例えばマイクロ流体ノンフロースルーデバイスはマイクロ電子機械製作法を用いて作られてもよい。あるいは、ノンフロースルーデバイスはコンピュータ数値制御(CNC)技術を用いて加工してもよい。デバイスを形成する基板の例はガラス、石英、シリコン、セラミックス又はポリマーを含む。そのようなポリマーはPMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、DCPD(ポリジシクロペンタジエン)、PEEK等を含んでもよい。そのようなデバイスはカラム、ポンプ、混合器、弁等を備えてもよい。
【0057】
一般的に、マイクロ流体経路又は管(マイクロ経路又は細管又は導管と呼ばれる場合もある)は少なくとも一つの断面寸法(例えば高さ、幅、奥行き、直径)を有し、これは限定ではなく例として、約10μmから約1,000μm(ミクロン)に及んでもよい。マイクロ経路は極めて少量の液体、例えば約1nLから約1μLのオーダーの液体の操作を可能にする。マイクロ反応器はまた、それぞれが例えば約5μLから約1,000μLの容積を有する、一つ以上のマイクロ経路と流体連通する一つ以上の容器を備えていてもよい。
【0058】
本発明のマイクロ流体ノンフロースルーデバイスは、放射性医薬品化合物のような化合物の生産に使用される巨視的反応器に勝る様々の利点を提供する。本発明のノンフロースルーデバイス又は装置の利点のいくつかの例は、少ない試薬消耗、高濃度の試薬、高表面/体積比、及び改良された質量及び熱伝達制御を含む。
【0059】
マイクロ流体ノンフロースルーデバイスが放射性合成に相応しい選択である理由は、放射性合成にはナノグラムの同位体が関係するからである。後者が何らかのかなりの量の溶剤中で操作される場合、それは低濃度、従って低反応速度を招く。一方、それが高濃度(従って少量)で取り扱われる場合、大部分の同位体はマイクロ反応器に向かう途中で消失することになる。両方の利益を求めるためにはこの同位体を希釈液として反応器に入れ、しかし反応中ではそれを高濃度で使用する必要があろう。マイクロ流体ノンフロースルーデバイスはそのような操作を可能にする。
【0060】
ノンフロースルーデバイスはまた様々のプロセスステップに適した様々の容積又は特徴を有する多数の反応器を含んでもよく、この場合、多くの反応器は直列、並列、ライブラリ又はネットワークを作るための多重経路への分割を含む(これらに限定されない)多くの方法で接続される。
【0061】
本明細書で述べられるノンフロースルーデバイスは少量の分子プローブを処理すると共に、化学処理を促進することが可能であり、それにより、総処理又はサイクル時間を低減し、化学処理手順を簡略化し、また広範囲のプローブ、バイオマーカー及び標識薬物又は薬物類似体を安価に製造する適応性を提供する。
【0062】
本明細書で述べられるノンフロースルーデバイスは研究及び開発環境で使用されてもよく、新しい化合物及びプローブの試験及び開発を促進する。そのそれぞれの内容がこれによりその全体が援用される同時係属中の米国特許出願公開第12/102822号明細書及び第12/176296号明細書はマイクロ流体デバイスに関連する記述物を提供する。
【0063】
「放射性標識化合物」は、例えば脳を含む体内のターゲット部位を標識化する化合物であり、その化合物が被検者のターゲット部位と反応できることを意味する。
【0064】
用語「反応性前駆体」又は「前駆体」は典型的には求核置換、求電子置換、又はイオン交換により別の試薬と反応して生成物を形成する有機又は無機の非放射性分子を指す。放射性合成の場合、典型的には求核置換、求電子置換、又はイオン交換により放射性同位体と反応して放射性医薬品を形成する有機又は無機の非放射性分子は、反応性前駆体の化学的性質は研究される生理学的プロセスに依存する。
【0065】
典型的には、反応性前駆体は、例えば脳を含む体内のターゲット部位を選択的に標識化する放射性標識化合物を作るために使用され、化合物が被検者のターゲット部位と反応でき、必要な場合、血液−脳障壁を通って輸送可能であることを意味する。例示的有機反応性前駆体は糖、アミノ酸、蛋白質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、低分子調合薬、及びその誘導体を含む。例えば、18F−FDGの調製に使用できる一つの前駆体は1、3、4、6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースである。
【0066】
用語「放射性同位体」は放射性崩壊を示す(例えばポジトロンを放出する)同位体を指す。そのような同位体は当該技術においてラジオアイソトープ又は放射性核種とも呼ばれる。フッ化物イオンのような放射性同位体又は対応するイオンは本明細書では種々の一般的に使用される元素名又は元素記号とその質量数との組合せを用いて指定され、同じ意味で使用される(例えば18F、[18F]、F−18、[F−18]、フッ素−18)。例示的放射性同位体は124I、18F、11C、13N及び15Oを含み、これらはそれぞれ、4.2日、110分、20分、10分及び2分の半減期を有する。用語FLT前駆体は「N−ジメトキシトリチル−5’−O−ジメトキシトリチル−3’−O−ノシル−チミジン」(「BOC−BOC−ノシル」としても知られている)を指すために使用されてもよい。
【0067】
用語「ターゲット水」は、サイクロトロンのような粒子加速器中の高エネルギー陽子による衝撃後の[18O]H2Oである。ターゲット水は[18F]フッ化物を含む。本発明の一つの実施形態において、ターゲット水の調製は本明細書に開示されるシステムとは別個に熟考される。あるいは、本発明のある実施形態において、ターゲット水はカートリッジからシステムに供給され、別の実施形態では、予め充填された個々のバイアルから供給される。
【0068】
用語「カラム」は反応物又は生成物を分離、精製又は濃縮するために使用しできる装置を意味する。そのようなカラムはイオン交換及びアフィニティークロマトグラフィーカラムを含む(しかしこれらには限定されない)。
【0069】
「流路」又は「経路」は、そこを通って流体、溶液、又は気体を流せるマイクロ流体経路を意味する。それはそこを通って真空に引ける経路でもある。例えば、そのような経路は約0.1mmから約1mmの断面を有してもよい。
【0070】
例えば、本発明の実施形態の流路もまた約0.05ミクロン(μm)から約1,000ミクロン(μm)の範囲の断面寸法をもっていてもよい。流路の詳細な形状と大きさは所望のスループットを含む反応プロセスに要求される特定の用途に依存し、所望の用途に従った構成と大きさを有してもよい。
【0071】
用語「渦流反応器」(「反応器」や「マイクロ反応器」や「反応室」と呼ばれる場合もある)は反応が起こり得る室又は中核部を指す。反応室の形状は例えば円筒形でもよい。反応室は、それに接続され、試薬及び/又は溶剤を供給し、あるいは生成物の除去用に設計された一つ以上のマイクロ経路(例えばワンチップ弁又は同等のデバイスにより制御される)を有してもよい。例えば、反応室は約0.5から約10以上の直径/高さ比を有してもよい。例として(これに限定されないが)、マイクロ渦流反応器高さは約25マイクロメータ(μm)から約20,000マイクロメータ(μm)であってもよい。
【0072】
用語「蒸発」は、液体から気体への溶剤の状態変化を指し、その後に通常はその気体が反応器から除去される。気体を除去する一つの方法は真空に引くことにより遂行される。本明細書に開示される合成過程中に例えばアセトニトリルや水のような種々の溶剤が蒸発される。アセトニトリルや水のような各溶剤は異なった蒸発時間及び/又は温度を有してもよい。
【0073】
用語「溶出」は一般的に特定の個所から化合物を除去することを指す。イオン交換カラムからの[18F]フッ化物の溶出はカラムから反応室に溶液を溶出することによる[18F]フッ化物の搬送を指す。反応室からの生成物の溶出は、ある量の溶剤、例えば水により反応室を例えば洗い流すことにより反応室から外部生成物バイアルに(又は精製システムの中に)生成物を搬送することを指す。
【0074】
用語「サイクロン運動」又は「渦運動」は気体、液体及び/又は気体と液体の混合物の円又は渦巻き運動を指す。例えば、そのような円運動は円形断面を有するマイクロ流体反応室の内部に生じ得る。
【0075】
用語「接する、接線の、接線方向の」は所定の点において曲線に接する線(あるいは単純に接線)が、その点においてその曲線に「正確に接触する」直線であることを指す。それが接点を通過する際に、接線は曲線と「同じ方向に進んでおり」、この意味で、それは、その点における曲線に対する最良の直線近似である。例えば、加圧ガスはこの壁の接線方向に壁内のスリットを通って反応器に入って接線の方向に従って曲線に沿って反応器内の溶液を旋回させ、溶液を反応器の内面に接触させる。
【0076】
図1は18F−FDGのような18Fで標識化された化合物の合成に係る一連の例示的ステップ10を描き、マイクロ流体ノンフロースルーデバイスのようなノンフロースルーデバイスを用いて18Fをサイクロトロンターゲット水から取ってイオン交換カラムを用いた反応器チップ内でのフッ素化反応に至らせる。
【0077】
図1に示されるように、開始ブロック100はプロセスが始まることを示す。ステップ102「カラム上のトラップ」において、ターゲット水は典型的にはイオン交換カラム(カートリッジ)を通過して希釈溶液からF−18をトラップする。
【0078】
ステップ104「カラムから放出」において、トラップされた18Fは、反応器に入る濃縮溶液に放出される例えばK2CO3を用いてイオン交換カラムを洗い流すことにより反応室の中に供給される。
【0079】
その供給が生じた後、ステップ106において水の蒸発が生じる。ステップ108「溶剤交換」において、K222/MeCN溶液を反応室に供給し、ステップ110「乾燥」において溶剤を蒸発させ、その後に残留物を含有する[18F]KF/K222複合体が残る。
【0080】
ステップ112「前駆体供給」において、前駆体又は反応物(マンノーストリフレートのような)が反応室に供給される。ステップ114において、フッ素化反応が生じる。このステップの後にもう一つの乾燥ステップが続いてもよい(図1に図示せず)。
【0081】
ステップ116「脱保護」において、反応室に酸が供給されて保護基を除去してもよい。このステップの後にもう一つの乾燥ステップが続いてもよい(図1に図示せず)。ステップ118において「生成物溶出」が行われる必要があるかもしれず、これは水が反応室に入ることを必要とする。ステップ120は一連のステップが終了することを示す。
【0082】
図1に示される例示的ステップは反応室への、また反応室からの気体/液体の供給、蒸発、又は除去が関係する種々の合成段階の概略を例示するが、図1に示されるステップは合成プロセスの網羅的又は排他的記述を行うことを意図していない。従って、放射性標識化合物のような種々の化合物の合成を遂行するために使用されるステップはもっと少なくても、もっと多くてもよい。
【0083】
マルチステップ化学プロセスを遂行するためのノンフロースルー装置の利用はマイクロ反応器の中へ、外へ及びそこを通っての大量の溶液の搬送又は移動を可能にし、従ってマイクロ反応器内で濃縮されるかもしれない試薬の除去を可能にする。ノンフロースルーデバイスの特徴によりデバイスから溶剤を除去することができるので、マルチステップ化学プロセスを遂行するためのマイクロ流体ノンフロースルー装置はまた高沸点溶剤の使用を容易にする。さらに、ノンフロースルー装置はより低い温度で反応を進行させ、望まない副生成物の低減をもたらす。
【0084】
本発明の一つの実施形態によれば、ノンフロースルー装置を利用することにより、一つ以上の液体化合物が例えば反応室の側部又は底部に位置する一つ以上の流入口を通って反応室に入ってもよいが、一方、窒素のようなキャリアガスは、ガスが反応室の壁に接する方向に反応室に入るように流入開口に強制的に入れられてもよい。
【0085】
そのような開口は、スリット又は接線スリットと呼ばれる場合もあるが、気体及び/又は液体が反応室の壁に沿う方向に(すなわち壁に接する方向に)反応室に入ることができるように構成又は構築されるポート、スリット、オリフィス、ベント及びその組合せのような何れかの開口を備えていてもよいことは注目すべきである。
【0086】
代わりに、あるいはさらに、流出ポートを真空に引くことにより気体や液体が反応室に引き入れられて室への気体及び/又は液体の導入に必要な負圧を生み出してもよい。開口を通って室に入る気体は、回転、サイクロン運動又は渦運動により反応室に入りながら、高速気体との液体の密接、液体との混合を生じる。液体のそのような混合は小さい液滴の形成に帰結する可能性がある。サイクロン運動により、液滴は固体粒子(もしあれば)と共に適切な温度の下に反応室の内壁に押し付けられる。温度は反応室へのその流入に先立ち加圧ガスを加熱することにより、かつ/あるいは反応室又はその底部を加熱するように構成された加熱装置により維持されてもよい。このステップはガス流を減少又は停止し、試薬を含む溶液を外部加熱素子により加熱される反応室の下部まで後退させることにより遂行される。この時点で、反応室は封止及び加圧されてもよい。
【0087】
この加熱方法はバッチ型反応器に典型的である。
【0088】
上記の液滴形成及びサイクロン運動は効率的な種々の溶液、試薬及び化合物の混合をもたらして急速な化学反応を起こさせるために使用されてもよい。さらに、混合物のサイクロン流はより低い温度での液体の急速蒸発を可能にし、結果として生じた残留物は反応室の壁に堆積する。
【0089】
本発明の実施形態によれば、DMSO、DMF、スルホランのような高沸点溶剤及び同様の性質をもつ溶剤は、著しく低下した温度で反応室から効率的かつ急速に除去することができる。堆積した溶剤又は残留物を除去するために、ガス流を少なくしてもよく、溶剤(これは同じ溶剤でも異なる溶剤でもよい)が導入されて反応室から残留物を一掃又は分解し、次いでそれは例えばバイアルに搬送されてもよい。上記のステップは自動的に遂行されてもよく、また所望に応じて何回も繰り返されてもよい。
【0090】
図2は本発明の実施形態によるノンフロースルー装置を備えるシステム例20を例示する。このノンフロースルー装置はマルチステップ化学プロセスを遂行するマイクロ流体ノンフロースルー装置であってもよい。図2に例示されるように、円筒形の反応室212が反応器ブロック214内に置かれる。生成物流出ポート218及び気体流出ポート224はそれぞれ反応室212から種々の生成物及び気体/蒸気を除去させる。図2の事例的実施形態において、流入ブロック216に接続された第1の液体流入ポート220は液体を反応室212に流入させてもよく、反応器ブロック214に接続された第2の液体流入ポート222も液体を反応室212に流入させる。図2の液体流入ポートの特定の構成は、マルチステップ化学プロセスを遂行するマイクロ流体ノンフロースルー装置の基礎となる概念を例示する適当な例を提供する。
【0091】
これらの流入ポート(220、222)が反応室212に対して異なる位置及び向きに設けられてもよいことも本発明の実施形態である。さらに、そのような流入ポートの数は異なる構成に応じて変化してもよい。例えば、一つの実施形態において、単一の流入ポートが使用されてもよいが、異なる構成においては二つ以上の流入ポートが使用されてもよい。図2はまた流入ブロック216に接続された気体流入ポート226を例示する。気体流入ポート226は適切な圧力下で気体を反応室212に供給するために使用されてもよい。
【0092】
図2は反応器ブロック214及び吸入ブロック216を示すが、反応器ブロック214と吸入ブロック216が単一ユニットとして製作されるのも本発明の実施形態である。
【0093】
図3は、接線スリット328がはっきりと見えるシステム20の異なる図を示す。接線スリット328は一つ以上の気体及び/又は一つ以上の気体及び液体の混合物を反応室212に流入させる。一つ以上の気体及び一つ以上の液体及び/又は一つ以上の気体及び一つ以上の液体の混合物の反応室212への供給も本明細書の図4に例示される。図3にも示される図2に示される要素は図3に関連してこれ以上述べない。
【0094】
図4は本明細書に記述及び図示されるマイクロ流体システム20の上面図である。図4の事例的実施形態において、気体は接線スリット328を通って反応室212に入る前に第1の導管430及び第2の導管432に入ってもよい。第1の流入ポート220からの液体は同様に、接線スリット328を通って反応室212に入る前に第1の導管430及び第2の導管432に入ってもよいが、第2の液体流入ポート222からの液体が接線スリット328を通って反応室212に入る前に第2の導管432に入るのも本発明の実施形態である。
【0095】
図2から4に例示される実施形態は一つ以上の気体と一つ以上の液体の混合物を同時に反応室212に供給するために使用されてもよい。あるいは、一つ以上の液体がまず反応室212に入り、次いでその後の加圧ガスの反応室212への流入によりもたらされるサイクロン運動を施されてもよい。
【0096】
あるいは、一つ以上の液体流入ポートは気体流入ポート226及び/又は反応室212に対して異なる位置又は向きに位置してもよい。例えば、液体は一つ以上の普通の液体入力ポートを通って反応室212の底部から入ってもよい。
【0097】
上記のノンフロースルー装置は、試薬を完全に混合させながら種々の溶液の反応室(要素212として図2に示される)への流れを精密に制御することにより所望の化学反応を効率的に行うためにマイクロ流体システムにおいて使用されてもよい。さらに、ノンフロースルー装置は、高温の使用に典型的に伴う所望しない副生成物の生成を避けながらより低温で溶剤の急速かつ制御された蒸発を可能にする。典型的には、マイクロ流体ノンフロースルー反応器内の反応は約−78℃から約400℃の温度と約0から50psiの圧力で1〜1000秒で進行する。窒素のようなキャリアガスの流速は約0から10scfm(標準立法フィート/分)までである。
【0098】
一つの実施形態において、気体の正圧と負圧間の切り替えはユーザが反応動作モードと蒸発動作モードを交互に行うことを可能にする。さらに、あるいは代わりに、反応室(要素212として図2に示される)への気体及び/又は液体の搬送を行うために真空(図示せず)に引かれてもよく、これは混合物のサイクロン運動及び/又は蒸発を維持及び/又は促進するために流出口を真空に引くことと組み合わされてもよい。
【0099】
ノンフロースルー装置の使用に関連するこれら及び他の利点は図1のシステムに関連する前述の例示的ステップを参照することにより示される。以下の例は本発明の種々の実施形態による放射性標識化合物の合成に関連する種々のステップへのノンフロースルー装置の適用を示す。
フッ化物の濃縮
【0100】
図1に例示されるように、ステップ102及び104において、ターゲット水(すなわち、およそ2mLの[O−18]H2O希釈溶液中の、サイクロンから供給されてもよい[F−18]F)をイオン交換カートリッジに通してフッ化物をトラップし、これが続いて少量、例えば約5μLから約100μLまでのK2CO3溶液を用いて溶出される。
【0101】
本発明の実施形態によれば、ノンフロースルー装置はずっと大量、例えばおよそ400μLから2000μLまでのK2CO3溶液がイオン交換カートリッジを通って流れるようにすることにより、トラップされたフッ化物の完全な溶出を可能にするために使用できる。この実施形態によれば、K2CO3溶液はイオン交換カートリッジを通って流れ、反応室(212)に入るが、溶剤は、完全な溶出が生じるまで反応室(212)において所望の速度で蒸発できる。蒸発速度は反応室(212)に入るガス圧や反応室温度に従って制御されてもよい。例えば、反応室の容積がおよそ100μLであり、完全な溶出におよそ400μLを要するとすれば、溶剤(すなわち水)は反応室212に入るK2CO3溶液と同じ速度で蒸発してもよい。400μL全部が反応室212に入り、溶剤が蒸発したら、残留物の皮膜が反応室(212)の壁上に堆積される。
【0102】
本発明のもう一つの実施形態によれば、蒸発は全ての溶剤が完全に蒸発する前に停止されて合成プロセスの次のステップにおいて反応室(212)に入る試薬と混合するのを促進してもよい。
【0103】
例えば温度140℃、圧力15psiにおいて、反応器の容積は100μLで一定に留まる。反応混合物の量は蒸発段階によって0から50μLに変化する。濃度は元の溶液の1mg/Lから溶剤が除去される際の無限大まで変化する。
溶剤交換
【0104】
図1のステップ108に例示されるように、[F−18]フッ化物を可溶化するために、クリプトフィックス2.2.2(K222)のような相間移動試薬が反応室(212)に供給されてもよい。本発明の一つの実施形態において、相間移動試薬は[F−18]フッ化物及びK2CO3残留物が入った反応室(212)にMeCN溶液として導入されてもよい。この課題はマイクロ流体ノンフロースルー装置を用いて直ちに遂行される。しかしながら、水とMeCNを逐次蒸発させるのではなく、水とMeCNが共沸混合物として一緒に蒸発するときに相間移動はより効率的に行うことができる。従って、本発明のもう一つの実施形態によれば、相間移動は、MeCN/H2O溶液中のK222とK2CO3の混合物を用いてイオン交換カラムから[F−18]フッ化物を放出することにより影響を受けてもよい。
【0105】
本マイクロ流体ノンフロースルー装置の利点は、本発明の実施形態によれば、溶剤は反応室(212)に供給され、そして反応室(212)に溶液が供給されるにつれて急速に蒸発することである。実質的に、上記の実施形態によれば、図1のステップ104から110までは組み合わされて一つの連続動作にできる。ノンスルーフロー機構を使用した溶剤の蒸発は効率的に行うことができ、全ての溶剤を除去するのに単一パスで十分なくらいであることは注目すべきである。
【0106】
しかしながら、必要ならばこのステップの後にノンフロースルー装置を用いた乾燥MeCN蒸発が続いてもよい。従って、水の蒸発後反応器に残留水分が残っている場合、続いて乾燥アセトニトリルの蒸発が行われ、これは典型的には共沸混合物としての水の最後の痕跡を除去する。
【0107】
残留物が反応器内に残っている一方、連続的に補給されるアセトニトリルと一緒に蒸発により水の痕跡が除去されるため、連続共沸乾燥も遂行できることも特徴である。これは例えば温度140℃、圧力15psiの条件で生じ得る。
フッ素化
【0108】
図1に例示されるように、ステップ112は、蒸発を必要としない濃縮溶液として、あるいは反応室(212)内部で濃縮される希釈溶液として、反応室(212)の中に前駆体を供給することが関係する。
【0109】
発明のもう一つの実施形態によれば、キャリアガスの温度、圧力及び流速を制御することにより反応室内部の溶液の蒸発を抑制することができ、制御された温度と圧力の下に反応を進行させることが可能になる。この課題は以下の二つのシナリオ例の一つに従って遂行することができる。一つの実施形態において、反応室(212)の壁からフッ化物/K222/K2CO3残留物を一掃するために前駆体溶液が使用されてもよい。このステップの後にガス流を止め、加熱要素をもつ反応室の下部まで溶液を後退させてもよい。この時点において、反応室(212)は封止及び加圧されてもよい。
【0110】
典型的にはノンフロースルー渦流反応器内の反応は約−78℃から約400℃の温度及び約−1から30気圧(圧力の単位はpsiでも表現でき、その場合、1気圧は14.696psiに等しい)で1〜10000秒で進行する。窒素のようなキャリアガスの流速は約0から100scfmである(標準立法フィート/分)。
【0111】
代わりの実施形態において、一つ以上の前駆体は反応室(212)に供給され、一方、それと同時に溶剤は反応室内部の原子化された混合物から蒸発してもよい。溶液がガスにより渦流の中に搬送されて反応器に入ると、それは原子化された均一な状態に直ちに変化する。第2の溶液が入ると、それも原子化された状態に変化し、原子化された状態では二つの相(液体と気体の微細混合)はあり得ないので二つの溶液は直ちに均一化される。このシナリオにおいて、反応が急速に生じて前駆体が反応室(212)に付加されるまでに完了することが予測される。さらに、キャリアガスの加熱及び/又は反応室の加熱により温度が維持されてもよい。この段階で、溶剤は完全に蒸発してもよく、あるいは、次の合成段階が始まる際に溶液中に維持されてもよい。
【0112】
例えば、前駆体(2mg)は、最後には100℃の温度と3psiの圧力で完全に蒸発する1mLのMeCN中に供給される。
加水分解
【0113】
次のステップは酸も導入して保護基を除去し、放射性標識化合物、例えば[F−18]FDGを生じさせることに関係する。フッ素化に関連する上記の実施形態と同様に、二つの例示的方法の少なくとも一方において加水分解が行われてもよい。
【0114】
一つの実施形態において、反応室(212)の中に酸が供給されてもよく、また反応室(212)の下部にある加熱された凹部内の溶液中で反応が進行してもよい。
【0115】
代わりの実施形態において、酸は反応室(212)内部のガスにより加熱される移動溶液の中に導入されてもよい。反応の後に、溶剤蒸発が行われても行われなくてもよい。
【0116】
このための条件は例えば以下であってもよい。すなわち、50μLの3NHCLが反応器に供給され、120℃の温度と5psiの圧力のガスにより循環させられる。
【0117】
生成物溶出は水で行うことができ、その量は通常は最小限である。一方、生成物が希釈されることが望ましければ(例えば生成物の放射線分解を防止するために)、上限のない溶出量により特徴付けられる、水の供給と蒸発を伴うマイクロ流体ノンフロースルー装置を利用することにより本発明のもう一つの実施形態に従って溶出が行われてもよい。
【0118】
これに対する条件は例えば以下であってもよい。すなわち、気体流出ポートが閉じられた状態で200mLの水が15psiで反応器の中を勢いよく流される。
【0119】
本発明の種々の実施形態によるノンフロースルー装置を使用することにより、急速な化学反応及び/又は溶剤の蒸発を起こさせながら試薬を連続的に反応室の中に注入することが可能となる。これらの特徴はマイクロ反応器における放射性標識化合物の合成に関係する種々のステップ間の溶剤交換を容易にする。
【0120】
本発明の種々の実施形態によれば、ノンフロースルー装置は、試薬劣化をよく招く高温を適用することなく溶剤、特に水の完全な除去を可能にする。さらに、大量の試薬が反応室に供給されてもよく、大量の溶剤を必要とする低溶解性をもつ前駆体に対して特に好都合な特徴。
【0121】
ノンフロースルー装置は全ての溶剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルホルムアミド(DMF)のような高沸点を有するものでさえ、その蒸発を可能にする。これら及び他の同様の溶剤の高沸点により、それらの溶液は従来システムにおいては一般的に蒸発しない。
【0122】
しかしながら本発明の実施形態によれば、これら及び同様の高沸点溶剤は加圧ガス及び/又は反応室の適切なガス圧及び所望の温度を利用することによりノンフロースルー装置を用いて蒸発させることができる。詳細には、反応室に入る高圧、高速ガスは、反応室の内容物がガス流入口の前を通過するたびに非常に細かい液滴形成と共に非常に効率的な混合及び蒸発をもたらす。この手順は非常に効率的であるのでDMSOのような高沸点溶剤でさえ熱を何ら加えることなく迅速に蒸発させることができる。
【0123】
本発明のもう一つの実施形態によれば、マイクロ流体システムにノンフロースルー装置を使用することにより、分子レベルでの試薬の急速かつ効率的な混合が可能となる。混合しない試薬に対してさえ混合をもたらすことができる。バッチ反応器では利用できないノンフロースルー装置のもう一つの特徴は進行中の反応のサンプル抽出(又は分割)ができる能力が関係する。従って、ガス流を制御することにより、液体が反応器内を循環する液位の制御が可能となる。例えば、液位が流出ポートに到達し始める程度に移動し、ほんのわずかの液体が制御されたやり方で反応器を出るようにしてもよい。一つの実施形態において、この課題はガス流を一時的に減らすことにより遂行されてもよく、これはより遅いサイクロン運動をもたらし、次いで出力ポートを通って反応室の内容物の所望の部分を除去することを可能にする。
【0124】
代わりに、連続反応及び濃縮動作において、間欠的又は連続的サンプル抽出及び分析のために連続的に退出する生成物流から後流が取られてもよい。
【0125】
このノンフロースルー装置のもう一つの特徴はHPLCによる中間体精製を可能にする。従って、HPLCを出る精製された中間体は連続的に反応器の中に直ちに戻すことができ、これはHPLC溶剤混合物とは無関係である。現存のシステムは、HPLCから中間体が出てくる大量の溶剤のためにこの特徴への適応が不可能であるが、マイクロ流体ノンフロースルー装置は溶剤の継続的な流れを可能にする。
【0126】
本発明のもう一つの実施形態によるノンフロースルー装置は高歩留まり反応を低温度で起こさせ、結果的に副生成物又は生成物分解がより少なくなる。さらに、それは二つ以上の試薬を同時に導入する能力を与える。これらの試薬はそれぞれ反応室に別個に入ってもよく、次いで加圧ガスにより作り出されたサイクロン運動及び原子化が施されてもよい。さらに、あるいは代わりに、二つ以上の試薬が同じ流入口を通っても、あるいはガスと同じ接線流入口を通って反応室に入ってもよい。このノンフロースルー装置のこれら及び他の特徴はマイクロ流体システムを用いたより広範囲の放射性標識化合物の合成を可能にする。
【0127】
一つの実施形態において、本明細書に開示される合成システムは、例えば試薬が濃縮、混合及び加熱され、溶剤が蒸発及び交換されて所望の化学プロセスを遂行する、マイクロ流体反応室を備える。
【0128】
一つの実施形態において、蒸発は、反応室からの蒸気の除去を遂行するために反応混合物の上に不活性ガスを流しながら反応室を加熱することにより起こる。
【0129】
もう一つの実施形態において、ノンフロースルーシステムは多くの方法で接続された一つ以上の反応器を備え、これらの方法は、直列、並列、ライブラリ(この場合、経路が分岐し、再接続される)又はネットワークを作るための多重経路への分割を含み(これらに限定されないが)、流速、圧力、温度及び供給組成を含む(これらに限定されないが)一つ以上のプロセス条件を同時に変更する能力を有する。
【0130】
もう一つの実施形態において、ノンフロースルー装置は規模可変である。ノンフロースルー装置は約5μLから約10,000Lまでの容積範囲で同様に機能できる。
【0131】
より詳細には、ノンフロースルー装置を用いて行われる反応量は初期の量から増加されてもよいが、より多い量を用いた反応の結果は初期の量の結果に比例する。従って、少量、例えば約5μLから約500μLまでの反応の結果は、より多い量、例えば5mLから10,000Lまでのより多い量を用いて行われた反応に適用される。
【0132】
概ね本発明の実施形態は、放射性標識化合物を合成し、マイクロ流体デバイスを用いた放射合成の効率を改善するシステム、方法及び装置に関連する。
【0133】
本発明の一つ以上の実施形態により生成可能な放射性標識化合物のいくつかの例は、2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース([18F]FDG)、6−[18F]フルオロ−L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン ([18F]FDOPA)、6−[18F]フルオロ−L−メタ−チロシン([18F]FMT)、9−[4−[18F]フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン([18F]FHBG)、9−[(3−[18F]フルオロ−1−ヒドロキシ−2−プロポキシ)メチル]グアニン([18F]FHPG)、3−(2’−[18F]フルオロエチル)スピペロン([18F]FESP)、3’−デオキシ−3−[18F]フルオロチミジン([18F]FLT)、4−[18F]フルオロ−N−[2−[1−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニル−ベンズアミド([18F]p−MPPF)、2−(l−{6−[(2−[18F]フルオロエチル)(メチル)アミノ]−2−ナフチル}エチリジン)マロノニトリル([18F]FDDNP)、2−[18F]フルオロ−α−メチルチロシン、[18F](フルオロミソニダゾール([18F]FMISO)及び5−[18F]フルオロ−2’−デオキシウリジン([18F]FdUrd)のグループから選択される化合物を含む。
【0134】
本発明の一つの実施形態は放射性標識化合物の放射性合成の方法に関する。この方法はノンフロースルーデバイスに一つ以上の試薬を導入するステップを含む。ノンフロースルーデバイスは渦流反応室と、反応室から気体及び/又は液体を除去できるように反応室に接続された一つ以上の流出口と、反応室に接続されて反応室の壁に接する方向に反応室に気体及び/又は液体、又はその混合物を供給させる一つ以上の流入口とを備える。この方法はさらに試薬を処理して放射性標識化合物を生成するステップと、放射性標識化合物を収集するステップとを含む。
【0135】
さらに、一つ以上の流入口は例えばポート、スリット、オリフィス、ベント及びその組合せでもよい。
【0136】
本発明のもう一つの実施形態において、反応室への加圧ガスと液体の混合物の流入は反応室内にサイクロン運動を作り出す。本明細書で使用されるように、「液体」は反応室中に導入される溶剤であってもよく、あるいは「液体」は溶剤及び基質又は試薬を含む溶液であってもよい。
【0137】
本発明のなおもう一つの実施形態において、二つ以上の液体がサイクロン運動の結果として反応室内で混合される。
【0138】
本発明のなおもう一つの実施形態において、化学反応は反応室内でもたらされる。
【0139】
本発明のなおもう一つの実施形態において、反応室内の液体は蒸発される。
【0140】
本発明のなおもう一つの実施形態において、液体の実質的に完全な蒸発後に反応室の壁に残留物が堆積される。残留物は反応に使用される試薬を含んでもよく、あるいは残留物は所望の反応の完了時に反応から得られた生成物を含んでもよい。
【0141】
本発明のなおもう一つの実施形態において、気体と液体の少なくとも一方は反応室への流入に先立ち加熱されて反応室内部の液体の蒸発をもたらす。
【0142】
本発明のなおもう一つの実施形態において、加圧ガスと液体の混合物は反応室に連続的に供給される。
【0143】
本発明のなおもう一つの実施形態において、加圧ガスの連続供給は渦流反応器内のサイクロン運動を促進するために必要である。
【0144】
本発明のなおもう一つの実施形態において、加圧ガスの連続供給は流入液体の供給とは無関係である。
【0145】
本発明のなおもう一つの実施形態において、方法は反応室を加熱するヒータをさらに含む。
【0146】
本発明のなおもう一つの実施形態において、ノンフロースルーデバイスは、反応室に液体を流入させる一つ以上の液体流入口をさらに備えるマイクロ流体デバイスであってもよい。
【0147】
本発明のなおもう一つの実施形態において、第1の液体流入口を通る液体の流入、及び反応室の壁に接する方向に第2の流入口を通る加圧ガスの流入は反応室内の気体と液体の混合物のサイクロン運動を作り出す。そのような条件の下で、サイクロン運動の結果として二つ以上の液体が反応室内で混合されてもよい。
【0148】
本発明のなおもう一つの実施形態において、化学反応は反応室内でもたらされる。
【0149】
本発明のなおもう一つの実施形態において、反応室内の液体は蒸発される。
【0150】
本発明のなおもう一つの実施形態において、一つ以上の液体は反応室に連続的に供給される。
【0151】
本発明のなおもう一つの実施形態において、マイクロ流体デバイスは反応室の内容物の分割をもたらすために使用される。
【0152】
本発明のなおもう一つの実施形態において、反応室は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により所望の生成物の中間体精製を可能にする分離又はクロマトグラフィーシステムで構成されてもよい。
【0153】
本発明のなおもう一つの実施形態は、マイクロ流体反応室と、反応室から気体及び/又は液体を除去できるように構成された一つ以上の流出口と、反応室の壁に接する方向に反応室に気体及び/又は液体、又はその混合物を供給するように構成された一つ以上の流入口とを備えるマイクロ流体装置に関する。
【0154】
流入口及び流出口は例えば、反応室内の液体を搬送して反応室から除去されるように反応室内に構成されてもよい。
【0155】
前述の説明は気体の供給のための一つの流入スリット(本明細書では328として示される)を利用する実施形態を用いて主として述べられてきたが、当然のことながら、本発明のもう一つの実施形態により、ノンフロースルー装置は二つ以上の流入スリットを用いて実施されてもよい。一つ以上のスリットは気体及び/又は一つ以上の液体を反応室(212)に供給するために使用されてもよい。
【0156】
さらなる実施形態によれば、一つ以上の溶液は同じスリットを通って気体と同時に導入されてもよい。
【0157】
なおもう一つの実施形態によれば、一つ以上の液体は一つ以上のスリットを通って反応室に供給され、一方、気体は異なるスリットを用いて反応室に導入されてもよい。
【0158】
なおもう一つの実施形態において、反応室(212)に気体を供給するために二つ以上のスリットが使用されてもよい。
【0159】
実施形態の前述の記述は例示及び説明のために提示された。前述の記述は網羅的であることも、開示された通りの形式に本発明を限定することも意図されず、多くの変形と変更が上記の教示に照らして可能であり、あるいは種々の実施形態の実施から獲得できる。
【0160】
本明細書に議論された実施形態は、種々の実施形態において、また考えられる特定の用途に適する種々の変形を用いて、当業者が本発明を利用できるように種々の実施形態の原理と性質及びその実用的応用を説明するために選択及び記述された。本明細書に述べられる実施形態の特徴は方法、装置、モジュール、システム及びコンピュータプログラム製品の全ての可能な組合せとして組み合わされてもよい。
【0161】
本発明の好ましい実施形態をこのように詳細に述べたが、当然のことながら、上の段落により定義された発明は、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなくその多くの明らかな変更が可能であるので、上の説明に記載された特定の詳細に限定されない。
【符号の説明】
【0162】
10 例示的ステップ
20 マイクロ流体システム
212 反応室
214 反応器ブロック
216 流入ブロック
218 生成物流出ポート
220 第1の液体流入ポート
222 第2の液体流入ポート
224 気体流出ポート
226 気体流入ポート
328 接線スリット
430 第1の導管
432 第2の導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチステップ化学プロセスを遂行するノンフロースルー装置であって、
その容積が一つ以上の流入試薬/反応物の量とは無関係である渦流反応器と、
前記反応室から気体及び/又は液体、又はその混合物を除去できるように構成された一つ以上の流出口と、
前記反応器の壁に接する方向に前記反応器に気体及び/又は液体、又はその混合物を供給し、それにより、前記反応器内に前記気体及び/又は前記液体、又は前記その混合物のサイクロン/渦運動を作り出して一つ以上の化学プロセスステップを遂行するように構成された一つ以上の流入口と
を備えるノンフロースルー装置。
【請求項2】
前記化学プロセスステップは、一つ以上の流入試薬の濃縮を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記化学プロセスステップは、前記試薬の混合を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記化学プロセスステップは、一つ以上の溶剤の蒸発を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記化学プロセスステップは、一つ以上の溶剤の交換を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記化学プロセスステップは、少なくとも一つの反応生成物の濃縮を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記化学プロセスステップは、キャリアガスの温度、圧力及び流速を制御することにより遂行されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御された温度範囲は、約−78℃から約400℃であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記化学プロセスステップは、周囲温度で遂行されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記反応器は、約−1気圧から30気圧まで加圧できることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項11】
キャリアガスの前記流速は、約0から約100scfmであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記試薬は、低濃度/大量で供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
反応は、高濃度かつ少量で進行することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
濃縮された反応生成物は、大量/低濃度で溶出されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記反応は、加熱された流入キャリアガスにより移動しながら加熱されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
外部熱源が、前記渦流反応器の底部に適用されて化学プロセスを遂行することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記反応器の内部容積は約50μLから約10,000Lまでであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項18】
高沸点溶剤の完全な蒸発が遂行されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記高沸点溶剤は、DMSO、DMF、スルホラン、及び水を含むことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも二つの試薬が、実質的に同時に供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記渦流反応器は、規模可変であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項22】
多数の渦流反応器が可変構成で接続され、前記構成は、直列、並列、ライブリ又はネットワークを作るための多重経路への分割を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は、マイクロ流体装置であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記反応器の容積は、約5μLから約1000μLであることを特徴とする請求項23に記載のマイクロ流体装置。
【請求項25】
前記温度は、約−78℃から約400℃であることを特徴とする請求項23に記載のマイクロ流体装置。
【請求項26】
前記圧力は、約0から約50psiであることを特徴とする請求項23に記載のマイクロ流体装置。
【請求項27】
キャリアガスの前記流速は、約0から約10scfmであることを特徴とする請求項23に記載のマイクロ流体装置。
【請求項28】
前記反応生成物は、約1から約60秒で得られることを特徴とする請求項23に記載のマイクロ流体装置。
【請求項29】
前記化学プロセスは、放射性標識化合物の放射性合成であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項30】
反応器への加圧ガスの接線方向の流入により作り出された渦流反応器内の気体及び/又は液体又はその混合物のサイクロン運動により遂行されるマルチステップ化学プロセスの方法であって、以下のステップ、
a)前記反応器に前記試薬を供給するステップと、
b)前記試薬を処理して所望の生成物を生成するステップと、
c)前記生成物を収集するステップと
を含む方法。
【請求項31】
少なくとも二つの試薬が、実質的に同時に供給されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
低濃度で供給された一つ以上の試薬が、反応物の流入に先立ち所望量に濃縮されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
溶剤交換をさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項34】
溶剤の交換が残留水分の除去をもたらし、濃縮残留物の乾燥を促進することを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記試薬を混合して前記渦流反応器内の圧力及び温度を制御することにより、化学反応を遂行するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記試薬を加熱又は冷却して、加熱又は冷却された流入キャリアガスの渦流供給により化学反応を遂行するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記反応器の底部に適用された外部熱源により、前記試薬を加熱して化学反応を遂行するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項38】
さらなる処理のために前記反応器から前記生成物を溶出するステップをさらに含み、前記試薬が前記反応室中に連続的に注入されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記渦流反応器は、マイクロ流体渦流反応器であることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項40】
放射性標識化合物の放射性合成のための請求項39に記載の方法。
【請求項41】
渦流反応器内の加圧ガスの流速を制御することにより、さらなる分析のために進行中の化学反応をサンプル抽出する方法。
【請求項42】
前記渦流反応器は、マイクロ流体渦流反応器であることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記化学反応は、放射性標識化合物の放射性合成であることを特徴とする請求項41に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510353(P2012−510353A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531262(P2011−531262)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/060583
【国際公開番号】WO2010/045283
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【Fターム(参考)】