説明

改良された熱ショックタンパク質に基づくワクチンおよび免疫療法

抗原性ドメインと改良された熱ショックタンパク質結合性ドメインとを含むハイブリッド抗原を記載する。これは、該抗原性ドメインに対する免疫応答の誘導に有用であり、したがって、該抗原性ドメインの抗原を発現する感染症および癌の治療に使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2003年2月13日付け出願の仮出願第60/447,142号、2003年4月11日付け出願の第60/462,469号、2003年4月18日付け出願の第60/463,746号および2003年9月16日付け出願の第60/503,417号(これらの4つの出願のすべての全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に対する35 U. S. C. §119 (e)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、少なくとも1以上の定められたハイブリッド抗原の有効量を、所望により1以上の熱ショックタンパク質と組合せて対象に投与することを特徴とする、該対象において免疫応答を誘導するための方法および組成物に関する。これらの方法および組成物は感染症および癌の治療において使用することが可能である。
【背景技術】
【0003】
急激な温度上昇にさらされた哺乳類細胞においては、ほとんどの細胞タンパク質の発現は有意に低下するにもかかわらず、熱ショックタンパク質は、元来上昇した量で発現されることが当初観察された。そのようなタンパク質は、グルコース枯渇を含む種々のタイプのストレスに応答して産生されることが確認されている。本明細書中で用いる「熱ショックタンパク質」なる語は、そのようなものとして明示的に示されているタンパク質および他のストレスタンパク質(構成的に発現される、すなわち、ストレス条件の非存在下で発現されるそのようなタンパク質のホモログを含む)の両方を包含するものとして用いられる。熱ショックタンパク質の具体例には、BiP(grp78とも称される)、hsp70、hsc70、gp96(grp94)、hsp60、hsp40およびhsp90が含まれる。
【0004】
熱ショックタンパク質は、非天然状態の他のタンパク質に結合する能力、特に、リボソームから出現した又は小胞体内に突出した新生ペプチドに結合する能力を有する(HendrickおよびHartl, Ann. Rev. Biochem. 62: 349-384 (1993); Hartl, Nature 381: 571-580 (1996))。さらに、熱ショックタンパク質は、サイトゾル、小胞体およびミトコンドリア内のタンパク質の適切なフォールディングおよび集合において重要な役割を果たすことが示されている。この機能に基づき、それらは「分子シャペロン」と称される(Frydmanら, Nature 370: 111-117 (1994); HendrickおよびHartl, Ann. Rev. Biocliem. 62: 349-384 (1993); Hartl, Nature 381: 571-580 (1996))。
【0005】
例えば、hsp70ファミリーと称される熱ショックタンパク質のクラスのメンバーであるタンパク質BiPは、新たに合成された折り畳まれていないμ免疫グロブリン重鎖に、小胞体内での軽鎖との会合の前に結合することが判明している(Hendershotら, J Cell Biol. 104 : 761-767 (1987))。もう1つの熱ショックタンパク質gp96は、小胞体に局在化しているhsp90ストレスタンパク質ファミリーのメンバーである(LiおよびSrivastava, EMBO J. 12: 3143-3151 (1993); MazzarellaおよびGreen, J. Biol. Chem. 262: 8875-8883 (1987))。gp96は小胞体内でのマルチサブユニットタンパク質の集合を補助しうることが提示されている(Wiechら, Nature 358: 169-170 (1992))。
【0006】
実験動物における腫瘍から調製された熱ショックタンパク質は腫瘍特異的に免疫応答を誘導しうること、すなわち、特定の腫瘍から精製された熱ショックタンパク質は、同じ腫瘍の増殖を抑制するが他の腫瘍の増殖を抑制しない実験動物内での免疫応答を誘導しうることが観察されている(SrivastavaおよびMaki, Curr. Topics Microbiol. 167: 109-123 (1991))。熱ショックタンパク質をコードする遺伝子が腫瘍特異的DNA多型を示すことは見出されていない(SrivastavaおよびUdono, Curr. Opin. Inzmunol. 6: 728-732 (1994))。高分解能ゲル電気泳動では、gp96は分子レベルで不均一でありうることが示されている(FeldwegおよびSrivastava, Int. J. Cancer 63: 310-314 (1995))。不均一の源は、数百に達しうる、熱ショックタンパク質に対して付着性の小さなペプチドの集団でありうることが、証拠から示唆されている(同誌)。腫瘍により合成された熱ショックタンパク質に対して付着性のペプチドの広範な多様性は、多様なHLA表現型を有する対象において免疫応答を惹起する能力をそのようなタンパク質に付与することが提示されており、このことは、より古典的な免疫原がそれらの効力において幾分HLA拘束性でありうることとは対照的である(同誌)。
【0007】
最近、Nielandら(Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93: 6135-6139 (1996))は、水疱性口炎ウイルス(VSV)感染細胞により産生されたgp96に結合する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)VSVエピトープを含有する抗原性ペプチドを同定した。Neilandの方法は、同様にgp96に結合している可能性のある他のペプチドまたは他の化合物の同定を妨げるものであり、したがって、gp96に結合しており高速液体クロマトグラフィーにより検出される、より高分子量の物質を更に特徴づけることは不可能であった。
【0008】
グルタルアルデヒド固定マイコバクテリウムhsp65またはhsp70に化学的に架橋されたNANP(Asp Ala Asp Pro)マラリア抗原の複数の反復を含む合成ペプチドは添加アジュバントの非存在下でマウスにおいて抗体形成(すなわち、体液性応答)を誘導することが可能であった。大腸菌(Escherichia coli)細菌由来の熱ショックタンパク質を使用して、同様の効果が観察された(Del Guidice, Experientia 50: 1061-1066 (1994); Barriosら, Clin. Exp. Immunol 98: 224-228 (1994); Barriosら, Eur. J Immunol. 22: 1365-1372 (1992))。熱ショックタンパク質に対する合成ペプチドの架橋、そして恐らくはグルタルアルデヒド固定が、抗体誘導には必要であった(Barriosら, Clin. Exp. Immunol. 98: 229-233)。
【0009】
PCT/US96/13363は、熱ショックタンパク質との複合体として抗原に対する免疫応答を誘導し従って癌および感染症の治療に有用である、抗原性ドメインと熱ショックタンパク質結合性ドメインとを含むハイブリッド抗原を記載している。PCT/US98/22335は、類似した用途のための追加的な熱ショックタンパク質結合性ドメインを記載している。熱ショックタンパク質結合性ドメインの改良が生物活性の増強につながり、したがって、ハイブリッド抗原の抗原性部分に対する免疫応答の誘導の増強、ならびに抗原性ドメインに関連した疾患の予防および治療につながることが、本発明において見出された。本出願は、これらの改良された熱ショックタンパク質結合性ドメインに関する。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、少なくとも1つの定められたハイブリッド抗原が、場合によっては熱ショックタンパク質との複合体として、対象に投与される、該対象において免疫応答を誘導するための方法および組成物に関する。該ハイブリッド抗原は抗原性ドメインおよび熱ショックタンパク質結合性ドメインを含む。感染症または腫瘍のような疾患に関連した抗原に対する免疫応答の誘導は該疾患の治療に有用である。該ハイブリッド抗原の抗原性または免疫原性ドメインは、全タンパク質またはペプチド抗原であってもよいし、あるいは選択された抗原の一部、例えば、該抗原の選択されたエピトープのみであってもよい。本発明の特定の非限定的な実施形態においては、熱ショックタンパク質結合性ドメインは、配列:
Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、
Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)または
Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)
を有するペプチドを含む。
【0011】
他の実施形態においては、熱ショックタンパク質結合性ドメインは、配列番号295〜348および1149〜1312の配列を有するペプチドを含む。
【0012】
本発明は、そのようなハイブリッド抗原の単体、および熱ショックタンパク質/ハイブリッド抗原組成物を投与する方法を提供する。後者は、(i)熱ショックタンパク質へのハイブリッド抗原の結合が生じてハイブリッド抗原/熱ショックタンパク質複合体が形成される条件下、1以上の熱ショックタンパク質を1以上のハイブリッド抗原とin vitroで一緒にし、(ii)熱ショックタンパク質に結合したハイブリッド抗原の有効量を、そのような治療を要する対象に投与することを含む。
【0013】
あるいは、ハイブリッド抗原をコードする核酸を、所望により、熱ショックタンパク質をコードする核酸と共に、対象に投与することにより、所望により熱ショックタンパク質と組合わされたハイブリッド抗原を対象に導入することが可能である。
【0014】
したがって、第1の態様においては、本発明は、感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメイン、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とするハイブリッド抗原に関する。
【0015】
第2の態様においては、本発明は、感染性因子または腫瘍抗原の複数の抗原性ドメイン、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とするハイブリッド抗原に関する。特定の実施形態においては、前記ハイブリッド抗原内の抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。
【0016】
第3の態様においては、本発明は、感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインと、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメインとを含んでなり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とするハイブリッド抗原に関する。特定の実施形態においては、前記ハイブリッド抗原は、該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーを有する。
【0017】
第4の態様においては、本発明は、感染性因子または腫瘍抗原の複数の抗原性ドメインと、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメインとを含んでなり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とするハイブリッド抗原に関する。特定の実施形態においては、ペプチドリンカーが該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てる。もう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。
【0018】
第5の態様においては、本発明は、少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなり、該ハイブリッド抗原が感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインと、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメインとを含み、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物に関する。1つの実施形態においては、ペプチドリンカーが該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てる。もう1つの実施形態においては、該組成物は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の1つはTヘルパーエピトープを含みうる。
【0019】
第6の態様においては、本発明は、少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなり、該ハイブリッド抗原が、感染性因子または腫瘍抗原からの少なくとも1つの抗原性ドメインを含有する複数の抗原性ドメインと、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメインとを含み、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物に関する。1つの実施形態においては、ペプチドリンカーが該抗原性ドメインを該結合性ドメインから隔てる。もう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープを含む。
【0020】
第7の態様においては、本発明は、少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなり、該ハイブリッド抗原が、感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメイン、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物に関する。1つの実施形態においては、前記組成物は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの態様においては、複数のハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープを含む。
【0021】
第8の態様においては、本発明は、少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなり、該ハイブリッド抗原が、感染性因子または腫瘍抗原からの少なくとも1つの抗原性ドメインを含有する複数の抗原性ドメイン、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物に関する。1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープを含む。
【0022】
第9の態様においては、本発明は、
(a)感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つと、熱ショックタンパク質に非共有結合するペプチドを含む結合性ドメインとを含むハイブリッド抗原、ならびに
(b)熱ショックタンパク質
の複合体を対象に投与することを含んでなり、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合しており、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含み、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープでありうる。該複合体が複数のハイブリッド抗原を含む更にもう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。本発明のこの態様の1つの実施形態においては、ペプチドリンカーが該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てる。本発明のこの態様のもう1つの実施形態においては、熱ショックタンパク質はhsp70である。
【0023】
第10の態様においては、本発明は、熱ショックタンパク質とハイブリッド抗原との複合体を対象に投与することを含んでなり、該ハイブリッド抗原が、感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つ、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含む。さらにもう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。この態様の好ましい実施形態においては、熱ショックタンパク質はhsp70である。
【0024】
第11の態様においては、本発明は、感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つと、熱ショックタンパク質に非共有結合するペプチドを含む結合性ドメインとを含む少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含む。もう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、ペプチドリンカーは該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てる。
【0025】
第12の態様においては、本発明は、少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなり、該ハイブリッド抗原が、感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つ、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含む。もう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。
【0026】
第13の態様においては、本発明は、
(a)感染症または癌に関連した感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つと、熱ショックタンパク質に非共有結合するペプチドを含む結合性ドメインとを含むハイブリッド抗原、ならびに
(b)熱ショックタンパク質
の複合体を対象に投与することを含んでなり、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合しており、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染症または癌の治療方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含む。さらにもう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。本発明のこの態様の1つの実施形態においては、ペプチドリンカーが該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てる。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、熱ショックタンパク質はhsp70である。
【0027】
第14の態様においては、本発明は、熱ショックタンパク質とハイブリッド抗原との複合体を対象に投与することを含んでなり、該ハイブリッド抗原が、感染症または癌に関連した感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つ、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染症または癌の治療方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含む。さらにもう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。もう1つの態様においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。好ましい実施形態においては、熱ショックタンパク質はhsp70である。
【0028】
第15の態様においては、本発明は、感染症または癌に関連した感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つと、熱ショックタンパク質に非共有結合するペプチドを含む結合性ドメインとを含む少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染症または癌の治療方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含む。さらにもう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。本発明のこの態様の1つの実施形態においては、ペプチドリンカーは該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てる。
【0029】
第16の態様においては、本発明は、少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなり、該ハイブリッド抗原が、感染症または癌に関連した感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つ、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含むことを特徴とする、該感染症または癌の治療方法に関する。1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含む。もう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。さらにもう1つの実施形態においては、該ハイブリッド抗原は複数の抗原性ドメインを含む。さらにもう1つの実施形態においては、該抗原性ドメインの少なくとも1つはTヘルパーエピトープである。もう1つの実施形態においては、該複合体は複数のハイブリッド抗原を含み、該ハイブリッド抗原の少なくとも1つは複数の抗原性ドメインを含む。
【0030】
第17の態様においては、本発明は、Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含んでなるペプチドに関する。
【0031】
第18の態様においては、本発明は、複数の抗原性ドメインと、Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかを含む結合性ドメインとを含んでなる免疫原性ポリペプチドに関する。
【0032】
第19の態様においては、本発明は、Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかのペプチド関する。
【0033】
第20の態様においては、本発明は、前記ハイブリッド抗原のいずれかをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0034】
第21の態様においては、本発明は、感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインと熱ショックタンパク質結合性ドメインとを含むハイブリッド抗原をコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含んでなる、感染症または癌に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0035】
第22の態様においては、本発明は、前記のハイブリッド抗原をコードするポリヌクレオチドと、熱ショックタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを対象に投与することを含んでなる、感染症または癌に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。好ましい実施形態においては、コードされる熱ショックタンパク質はhsp70である。
【0036】
第23の態様においては、本発明は、Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)または配列番号295〜348もしくは1149〜1312のいずれかをコードするポリヌクレオチドに関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、前記のハイブリッド抗原をコードするポリヌクレオチドに関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、前記のハイブリッド抗原をコードするポリヌクレオチドを、所望により、熱ショックタンパク質、好ましくはhsp70をコードするポリヌクレオチドと共に、対象に投与することを含んでなる、感染性因子または癌に対する免疫応答の誘導に関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、前記のハイブリッド抗原をコードするポリヌクレオチドを、所望により、熱ショックタンパク質、好ましくはhsp70と共に、対象に投与することを含んでなる、感染症または癌の治療に関する。
【0037】
本発明の前記態様のいずれか又はすべてにおいては、感染症抗原は、感染性因子、例えば細菌、ウイルス、原生動物、マイコプラズマ、真菌、酵母、寄生生物またはプリオン(これらに限定されるものではない)に由来しうる。癌に関連した癌または腫瘍抗原は、肉腫、リンパ腫、白血病または癌腫、黒色腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、結腸癌、肺癌、神経膠芽細胞腫または神経膠星状細胞腫(これらに限定されるものではない)に由来しうる。それぞれ感染性因子または癌抗原の抗原に対する免疫応答の誘導が、対応する感染症または癌の治療に有用となるよう、該感染性因子または癌の抗原性ドメインは該感染症または腫瘍抗原に由来するか又は関連している抗原を含む。
【0038】
本出願は、2003年2月13日付け出願の仮出願第60/447,142号、2003年4月11日付け出願の第60/462,469号、2003年4月18日付け出願の第60/463,746号および2003年9月16日付け出願の第60/503,417号(これらの4つの出願のすべての全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に対する35 U. S. C. §119 (e)に基づく優先権を主張するものである。
【0039】
図面の簡潔な説明
図1は、hsp70との複合体としての本発明のいくつかのハイブリッド抗原でのin vivo免疫応答の誘導を示す。
【0040】
図2は、hsp70との複合体としての本発明の種々のハイブリッド抗原を使用した場合のin vitro免疫応答の誘導を示す。
【0041】
図3は、hsp70に対する種々のペプチドのアフィニティを決定するためのヒルプロットを示す。
【0042】
図4aおよび4bは、本発明の種々のハイブリッド抗原を単独で又はhsp70との複合体として使用するin vitroマクロファージT細胞活性化アッセイの結果を示す。
【0043】
図5は、本発明のハイブリッド抗原の単体またはhsp70との複合体に対するin vivo応答を示す。
【0044】
図6は、熱ショックタンパク質結合性ドメインペプチドのみの添加による、1つのハイブリッド抗原-hsp70複合体に対するin vivo応答の遮断を示す。
【0045】
図7は、hsp70との複合体としての、より少量の、より高いアフィニティの熱ショックタンパク質結合性ドメイン-エピトープが、in vivoで免疫応答を惹起しうることを示す。
【0046】
発明の詳細な説明
限定的なものとしてではなく説明を明瞭にする目的で、詳細な説明を以下の小節に分ける:
(i)ハイブリッド抗原、
(ii)熱ショックタンパク質、および
(iii)投与方法。
【0047】
ハイブリッド抗原
本発明のハイブリッド抗原は免疫原性(抗原性)ドメインおよび熱ショックタンパク質結合性ドメインを含む。所望により使用しうるリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーは、これらのドメインの間に設けられうる。したがって、ハイブリッド抗原は少なくとも2つの機能を果たす。すなわち、(i)それは、所望の免疫応答を誘導しうるエピトープを含有し、(ii)それは熱ショックタンパク質に物理的に結合しうる。後記のとおり、ハイブリッド抗原のみの投与が、所望の免疫応答を誘導し、所望の治療効果をもたらすよう、そのような結合はin vivoで生じうる。
【0048】
本明細書中で用いる「抗原」なる語は、アミノ酸、炭水化物、核酸または脂質の単体または任意の組合せ体から構成される化合物を意味する。
【0049】
本明細書中で用いる「ハイブリッド」抗原なる語は、望ましい免疫応答を引き起こす免疫原を表し1以上の熱ショックタンパク質に結合する化合物を意味する。例えば、免疫原がインフルエンザウイルスである場合には、ハイブリッド抗原はインフルエンザウイルスのマトリックスタンパク質のペプチド断片を含みうる。本明細書中で用いる「免疫原」なる語は、免疫応答が惹起されるべき腫瘍細胞、感染細胞、病原体またはそれらの成分に適用され、一方、ハイブリッド抗原は、1以上の熱ショックタンパク質に結合し所望の応答を惹起しうるその免疫原の一部を含む。特に、ハイブリッド抗原の抗原性ドメインは、特定の疾患または病原体に対する免疫応答を惹起するように選択され、MHC分子から得たペプチド、突然変異DNA遺伝子産物および直接的なDNA産物、例えば、腫瘍細胞から得たDNA産物を含む。
【0050】
本発明は任意のタイプの免疫原に適用されうるが、特に関心が持たれる免疫原は、肉腫、リンパ腫、白血病または癌腫、特に黒色腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、結腸癌、肺癌、神経膠芽細胞腫、神経膠星状細胞腫などを含む(これらに限定されるものではない)腫瘍疾患に関連した又は由来する又は関連していると予想される免疫原である。本発明のハイブリッド抗原において有用な黒色腫抗原の選択は、例えばPCT/US01/12449(WO0178655)(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)において見出されうるが、それらに限定されるものではない。さらに、p53のような腫瘍抑制遺伝子産物またはrasのような癌遺伝子産物の突然変異も、本発明で使用されるハイブリッド抗原を提供しうる。
【0051】
他の実施形態においては、免疫原は感染症に関連していることが可能であり、そのようなものとして、細菌、ウイルス、原生動物、マイコプラズマ、真菌、酵母、寄生生物またはプリオンでありうる。例えば、免疫原はヒトパピローマウイルス(後記を参照されたい)、ヘルペスウイルス、例えば単純ヘルペスウイルスまたはヘルペス・ゾスター(herpes zoster)ウイルス、レトロウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス1または2、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、サルモネラ(Salmonella)、スタヒロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、ビブリオ(Vibrio)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属の細菌、アメーバ、マラリア原虫、クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)などでありうるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
免疫原は、腫瘍、感染細胞、感染個体からの標本、細胞培養または生物培養からの直接的な単離により得ることが可能であり、あるいは化学的または組換え技術により合成することが可能である。適当な抗原性ペプチド、特にハイブリッド抗原における使用のための又はウイルス、細菌などに対して使用するための抗原性ペプチドは、それらの配列を介して、例えば以下のHLA-A2ペプチド結合性配列(それらに限定されるものではない)のようなHLA結合性配列を含有するMHCクラスI拘束性ペプチドエピトープに関して探索(検索)することにより設計されうる:
Xaa (Leu/Met) XaaXaaXaa (Val/Ile/Leu/Thr) XaaXaa(Val/Leu) (配列番号2)、例えば、
ウイルス由来:
Ser Gly Pro Ser Asn Thr Pro Pro Glu Ile (配列番号31);
Ser Gly Val Glu Asn Pro Gly Gly Tyr Cys Leu (配列番号32);
Lys Ala Val Tyr Asn Phe Ala Thr Cys Gly (配列番号33);
Arg ProGln Ala Ser Gly Val Tyr Met (配列番号34);
PheGln Pro Gln Asn Gly Gln Phe Ile (配列番号35);
Ile Glu Gly Gly Trp Thr Gly Met Ile (配列番号36);
Thr Tyr Val Ser Val Ser Thr Ser Thr Leu (配列番号37);
Phe Glu Ala Asn Gly Asn Leu Ile (配列番号38);
Ile Tyr Ser Thr Val Ala Ser Ser Leu (配列番号39);
Thr TyrGln Arg Thr Arg Ala Leu Val (配列番号40);
Cys Thr Glu Leu Lys Leu Ser Asp Tyr (配列番号41);
Ser Asp Tyr Glu Gly Arg Leu Ile (配列番号42);
Glu Glu Gly Ala Ile Val Gly Glu Ile (配列番号43);
Val Ser Asp Gly Gly Pro Asn Leu Tyr (配列番号44);
Ala Ser Asn Glu Asn Met Glu Thr Met (配列番号45);
Ala Ser Asn Glu Asn Met Asp Ala Met (配列番号46);
Lys Leu Gly Glu Phe Tyr Asn Gln Met Met (配列番号47);
Leu Tyr Gln Asn Val Gly Thr Tyr Val (配列番号48);
Thr Tyr Val Ser Val Gly Thr Ser Thr Leu (配列番号49);
Phe Glu Ser Thr Gly Asn Leu Ile (配列番号50);
Val Tyr Gln Ile Leu Ala Ile Tyr Ala (配列番号51);
Ile Tyr Ala Thr Val Ala Gly Ser Leu (配列番号52);
Gly Ile Leu Gly Phe Val Phe Thr Leu (配列番号53);
Ile Leu Gly Phe Val Phe Thr Leu Thr Val (配列番号54);
Ile Leu Arg Gly Ser Val Ala His Lys (配列番号55);
Glu Asp Leu Arg Val Leu Ser Phe Ile (配列番号56);
Glu Leu Arg Ser Arg Tyr Trp Ala Ile (配列番号57);
Ser Arg Tyr Trp Ala Ile Arg Thr Arg (配列番号58);
Lys Thr Gly Gly Pro Ile Tyr Lys Arg (配列番号59);
Phe Ala Pro Gly Asn Tyr Pro Ala Leu (配列番号60);
Arg Arg Tyr Pro Asp Ala Val Tyr Leu (配列番号61);
Asp Pro Val Ile Asp Arg Leu Tyr Leu (配列番号62);
Ser Pro Gly Arg Ser Phe Ser Tyr Phe (配列番号63);
Tyr Pro Ala Leu Gly Leu His Glu Phe (配列番号64);
Thr Tyr Lys Asp Thr Val Gln Leu (配列番号65);
Phe Tyr Asp Gly Phe Ser Lys Val Pro Leu (配列番号66);
Phe Ile Ala Gly Asn Ser Ala Tyr Glu Tyr Val (配列番号67);
Tyr Pro His Phe Met Pro Thr Asn Leu (配列番号68);
Ala Pro Thr Ala Gly Ala Phe Phe Phe (配列番号69);
Ser Thr Leu Pro Glu Thr Thr Val Val Arg Arg (配列番号70);
Phe Leu Pro Ser Asp Phe Phe Pro Ser Val (配列番号71);
Trp Leu Ser Leu Leu Val Pro Phe Val (配列番号72);
Gly Leu Ser Pro Thr Val Trp Leu Ser Val (配列番号73);
Asp Leu Met Gly Tyr Ile Pro Leu Val (配列番号74);
Leu Met Gly Tyr Ile Pro Leu Val Gly Ala (配列番号75);
Ala Ser Arg Cys Trp Val Ala Met (配列番号76);
Lys Leu Val Ala Leu Gly Ile Asn Ala Val (配列番号77);
Phe Leu Arg Gly Arg Ala Tyr Gly Leu (配列番号78);
Arg Arg Ile Tyr Asp Leu Ile Glu Leu (配列番号79);
Ile Val Thr Asp Phe Ser Val Ile Lys (配列番号80);
Arg Arg Arg Trp Arg Arg Leu Thr Val (配列番号81);
Glu Glu Asn Leu Leu Asp Phe Val Arg Phe (配列番号82);
Cys Leu Gly Gly Leu Leu Thr Met Val (配列番号83);
Ser Ser lle Glu Phe Ala Arg Leu (配列番号84);
Leu Tyr Arg Thr Phe Ala Gly Asn Pro Arg Ala (配列番号85);
Asp Tyr Ala Thr Leu Gly Val Gly Val (配列番号86);
Leu Leu Leu Gly Thr Leu Asn 1le Val (配列番号87);
Leu Leu Met Gly Thr Leu Gly lle Val (配列番号88);
Thr Leu Gln Asp Ile Val Leu His Leu (配列番号89);
Gly Leu His Cys Tyr Glu Gln Leu Val (配列番号90);
Pro Leu Lys Gln His Phe Gln lle Val (配列番号91);
Arg Leu Val Thr Leu Lys Asp Ile Val (配列番号92);
Arg Ala His Tyr Asn lle Val Thr Phe (配列番号93);
Leu Leu Phe Gly Tyr Pro Vs1 Tyr Val (配列番号94);
Ser Ala lle Asn Asn Tyr Ala Gln Lys Leu (配列番号95);
His Gln Ala lle Ser P*o Arg Thr Leu (配列番号96);
Gln Met Val His Gln Ala lle Ser Pro Arg Thr Leu (配列番号97);
Cys Lys Gly Val Asn Lys Glu Tyr Leu (配列番号98);
Gln Gly lle Asn Asn Leu Asp Asn Leu (配列番号99);
Asn Asn Leu Asp Asn Leu Arg Asp Tyr (配列番号100);
Ser Glu Phe Leu Leu Glu Lys Arg lle (配列番号lOl);
Ser Tyr Ile Gly Ser Ile Asn Asn 1le (配列番号l02);
Ile Leu Gly Asn Lys lle Val Arg Met Tyr (配列番号l03);
Arg Leu Arg Pro Gly Gly Lys Lys Lys (配列番号104);
Glu ne Lys Asp Thr Lys Glu Ala Leu (配列番号105);
Gly Glu Ile Tyr Lys Arg Trp 1le Ile (配列番号106);
Glu lle Tyr Lys Arg Trp n* Ile Leu (配列番号107);
Arg Tyr Leu Lys Asp Gli,Gln Leu Leu (配列番号l08);
Arg Gly Pro Gly Arg Ala Phe Val Thr lle (配列番号109);
Ile Val Gly Leu Asn Lys lle Val Arg (配列番号1lO);
Thr Val Tyr Tyr Gly Val Pro Val Trp Lys (配列番号111);
Arg Leu Arg Asp Leu Leu Leu ne Val Thr Arg (配列番号112);
Lys Arg Trp Ile lle Leu Gly Leu Asn Lys (配列番号113);
Ser Phe Asn Cys Gly Gly Glu Phe Phe (配列番号114);
Gly Arg Ala Phe Val Thr Ile Gly Lys (配列番号115);
Thr Pro Gly Pro Gly Val Arg Tyr Pro Leu (配列番号116);
Gln Val Pro Leu Arg Pro Met Thr Tyr Lys (配列番号117);
Thr Glu Met Glu Lys Glu Gly Lys Ile (配列番号118);
Ile Leu Lys Glu Pro Val His Gly Val (配列番号119);
Val Glu Ala Glu Ile Ala His Gln Ile (配列番号120);
Arg Gly Tyr Val Tyr Gln Gly Leu (配列番号121);
Tyr Ser Gly Tyr Ile Phe Arg Asp Leu (配列番号122);
Val Gly Pro Val Phe Pro Pro Gly Met (配列番号123);
Ile Ile Tyr Arg Phe Leu Leu Ile (配列番号124);
細菌由来:
Lys Tyr Gly Val Ser ValGln Asp Ile (配列番号125);
Ile Gln Val Gly Asn Thr Arg Thr Ile (配列番号126);
Thr Pro His Pro Ala Arg Ile Gly Leu (配列番号127);
寄生生物由来:
Ser Tyr Ile Pro Ser Ala Glu Lys Ile (配列番号128);
Lys Pro Lys Asp Glu Leu Asp Tyr (配列番号129);
Lys Ser Lys Asp Glu Leu Asp Tyr (配列番号130);
Lys Pro Asn Asp Lys Ser Leu Tyr (配列番号131);
Lys Tyr Leu Lys Lys Ile Lys Asn Ser Leu (配列番号132);
Tyr Glu Asn Asp Ile Glu Lys Lys Ile (配列番号133);
Asn Tyr Asp Asn Ala Gly Thr Asn Leu (配列番号134);
Asp Glu Leu Asp Tyr Glu Asn Asp Ile (配列番号135);
Ser Tyr Val Pro Ser Ala Glu Gln Ile (配列番号136);
癌由来:
Phe Glu Gln Asn Thr Ala Gln Pro (配列番号137);
Phe Glu Gln Asn Thr Ala Gln Ala (配列番号138);
Glu Ala Asp Pro Thr Gly His Ser Tyr (配列番号139);
Glu Val Asp Pro Ile Gly His Leu Tyr (配列番号140);
Ala Ala Gly Ile Gly Ile Leu Thr Val (配列番号141);
Tyr Leu Glu Pro Gly Pro Val Thr Ala (配列番号142);
Ile Leu Asp Gly Thr Ala Thr Leu Arg Leu (配列番号143);
Met Leu Leu Ala Leu Leu Tyr Cys Leu (配列番号144);
Tyr Met Asn Gly Thr Met Ser Gln Val (配列番号145);
Leu Pro Tyr Leu Gly Top Leu Val Phe (配列番号146);
Phe Gly Pro Tyr Lys Leu Asn Arg Leu (配列番号147);
Lys Ser Pro Trp Phe Thr Thr Leu (配列番号148);
Gly Pro Pro His Ser Asn Asn Phe Gly Tyr (配列番号149); および
Ile Ser Thr Gln Asn His Arg Ala Leu (配列番号150)
(Rammenseeら, Immunogenetics 41: 178-223 (1995))、
Xaa(Leu/Met)XaaXaaXaaXaaXaaXaaVal (配列番号3)
(Tarpeyら, Immunology 81: 222-227 (1994))、
Xaa(Val/Gln)XaaXaaXaaXaaXaaXaaLeu (配列番号28)、
例えば、ウイルス由来:
Tyr Gly Ile Leu Gly Lys Val Phe Thr Leu (配列番号151);
Ser Leu Tyr Asn Thr Val Ala Thr Leu (配列番号152);
(Barouchら, J. Exp. Med. 182: 1847-1856 (1995))。
【0053】
前記エピトープは、種々の感染症および癌に関連した利用可能な選択肢の典型例に過ぎず、限定的意図をもって記載されたものではない。
【0054】
望まれる免疫応答のタイプを検討することが好ましい場合もある。例えば、ある状況下では、体液性免疫応答が適当かもしれない。他の場合、および実際に、腫瘍細胞または感染細胞に対する免疫応答を惹起させたい場合には、細胞性免疫応答が特に望ましい。したがって、B細胞、Tヘルパー細胞または細胞傷害性T細胞の活性化に関連した特定のエピトープを同定し、ハイブリッド抗原内への取り込みのために選択することが可能である。
【0055】
自己免疫疾患またはアレルギーに関連したハイブリッド抗原を利用するのが好ましい場合もある。そのようなハイブリッド抗原は、免疫寛容原となるのに又は対象における該ハイブリッド抗原に対する既存免疫応答を抑制するのに十分な量の1以上の熱ショックタンパク質と共に投与してもよい。免疫応答を抑制するのに必要な熱ショックタンパク質の量は、刺激に必要な量より相当に多いと予想される。
【0056】
ハイブリッド抗原のサイズは、使用する熱ショックタンパク質に応じて様々となりうるが、本発明の非限定的な実施形態においては、ハイブリッド抗原は、10〜500アミノ酸残基を有するペプチドのサイズ、好ましくは14〜100アミノ酸残基、最も好ましくは18〜50アミノ酸残基を有するペプチドのサイズでありうる。そのようなものとして、ハイブリッド抗原として機能する免疫原の断片を製造するのが、あるいは、化学的または組換えDNA法によりハイブリッド抗原を合成するのが望ましいかもしれない。
【0057】
前記の考慮に基づき、ハイブリッド抗原を製造し、ついで熱ショックタンパク質へのその結合能に関して試験することが可能である。いくつかの場合には、特定の熱ショックタンパク質へのハイブリッド抗原の結合は、熱ショックタンパク質でありうる少なくとも1つの他のタンパク質の存在により促進されうる。
【0058】
例えば、熱ショックタンパク質へのハイブリッド抗原の結合は、放射能、蛍光、酵素または色素標識のような検出可能な標識でハイブリッド抗原を標識し、結合が生じうると予想される条件下、該ハイブリッド抗原を熱ショックタンパク質と一緒にし、いずれかの標識ハイブリッド抗原が該熱ショックタンパク質に付着したかどうかを判定することにより評価することが可能である。非限定的な1つの具体例としては、BiP熱ショックタンパク質へのハイブリッド抗原の結合能は、50mM Tris HCl(pH7.5)、200mM NaClおよび1mM Na2EDTAを含有するバッファー中、50μlの最終容量で、2μgのBiPを約1150pmolまでの放射能標識ハイブリッド抗原と37℃で30分間一緒にすることにより評価することが可能である。ついで、2分間の1ml セファデックスGカラムでの脱塩による100gでの遠心分離により、未結合ハイブリッド抗原を結合BiP-ハイブリッド抗原から除去することが可能である(Penefsky, J. Biol. Chem. 252: 2891 (1977))。該樹脂への結合を妨げるために、まず、カラムを、同じバッファー中の100μlのウシ血清アルブミンで処理し、前記のとおりに遠心分離することが可能である。ついで結合ハイブリッド抗原を液体シンチレーション計数により定量することが可能である。Flynnら, Science 245: 385-390 (1989)を参照されたい。
【0059】
ATP加水分解は多数の公知熱ショックタンパク質からのペプチドの遊離を駆動するため、しばしば、ATPアーゼ活性の量を用いて、熱ショックタンパク質に結合するハイブリッド抗原の量を定量することが可能である。そのようなアッセイを如何に実施しうるかの一例はFlynnら, Science 245: 385-390 (1989)に記載されている。
【0060】
熱ショックタンパク質結合性ドメインは、ハイブリッド抗原がin vitroまたはin vivoで熱ショックタンパク質、例えばBiP、hsp70、gp96もしくはhsp90または前記熱ショックタンパク質ファミリーのメンバーに単独で又は補助的熱ショックタンパク質(例えば、hsp40またはhsp60)と共に結合するように選択される。この基準を満たすペプチドは、まず、Blond-Elguindiら, Cell 75 : 717-728 (1993)に記載されているとおりに、1以上の熱ショックタンパク質に良く結合することが知られている抗原のライブラリーをパンニングすることにより同定することが可能である。この技術を用いて、Blond-Elguindiは、熱ショックタンパク質BiPが、配列
Hy(Trp/X)HyXHyXHy
(式中、Hyは疎水性アミノ酸残基(配列番号29)、特に、トリプトファン、ロイシンまたはフェニルアラニン(配列番号30)を表し、Xは任意のアミノ酸である)を有する七量体領域を含有するポリペプチドを認識すると結論づけている。
【0061】
他の熱ショックタンパク質結合モチーフも同定されている。例えば、Augerら, Nature Medicine 2: 306-310 (1996)は、熱ショックタンパク質に結合する慢性関節リウマチに関連したHLA-DR型における2つのペンタペプチド結合モチーフ
Gln Lys Arg Ala Ala (配列番号5)および
Arg Arg Arg Ala Ala (配列番号6)
を同定している。熱ショック結合性モチーフは、疎水性アミノ酸に富む7〜15残基の長いペプチドよりなることも同定されている(Gragerovら, J. Molec. Biol. 235: 848-854 (1994))。
【0062】
熱ショックタンパク質結合性ドメイン(例えば、前記のものが挙げられるが、それらに限定されるものではない)のC末端におけるトリプトファン残基(Trp、または1文字アミノ酸記号W)の取り込みは、熱ショックタンパク質への結合を増強することが判明している。ハイブリッド抗原が熱ショックタンパク質との複合体として投与されるか単独で投与されるかには無関係に、熱ショックタンパク質への結合の増強は、ハイブリッド抗原の抗原性ドメインに対する免疫応答をハイブリッド抗原が誘導する能力を増強することが判明している。免疫応答の増強は疾患の治療効力の増強と相関する。
【0063】
さらに、熱ショックタンパク質結合性ドメインへのトリプトファン残基の付加は、紫外線吸光度を用いて検出される又はより良好に検出される能力をそのようなペプチドに付与し、該検出能は、本明細書に記載されているような方法(それらに限定されるものではない)による、熱ショックタンパク質への該ペプチドの結合の簡便な評価を可能にする。アフィニティを測定するための方法の他の具体例はPCT/US96/13363(W09706821)(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0064】
本発明の種々の態様に有用な末端Trp残基を有するそのような熱ショックタンパク質結合性ドメインの非限定的な具体例には以下のものが含まれる。
【0065】
Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp (配列番号350);
Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp (配列番号351);
Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp (配列番号352);
Gly Lys Trp Val Tyr Ile Gly Trp (配列番号295);
Ala Lys Arg Glu Thr Lys Gly Trp (配列番号296);
Lys Trp Val His Leu Phe Gly Trp (配列番号297);
Arg Leu Val Leu Val Leu Gly Trp (配列番号298);
Trp Lys Trp Gly Ile Tyr Gly Trp (配列番号299);
Ser Ser His Ala Ser Ala Gly Trp (配列番号300);
Trp Gly Pro Trp Ser Phe Gly Trp (配列番号301);
Ala Ile Pro Gly Lys Val Gly Trp (配列番号302);
Arg Val His Asp Pro Ala Gly Trp (配列番号303);
Arg Ser Val Ser Ser Phe Gly Trp (配列番号304);
Leu Gly Thr Arg Lys Gly Gly Trp (配列番号305);
Lys Asp Pro Leu Phe Asn Gly Trp (配列番号306);
Leu Ser Gln His Thr Asn Gly Trp (配列番号307);
Asn Arg Leu Leu Leu Thr Gly Trp (配列番号308);
Tyr Pro Leu Trp Val Ile Gly Trp (配列番号309);
Leu Leu Ile Ile Asp Arg Gly Trp (配列番号310);
Arg Val Ile Ser Leu Gln Gly Trp (配列番号311);
Glu Val Ser Arg Glu Asp Gly Trp (配列番号312);
Ser Ile Leu Arg Ser Thr Gly Trp (配列番号313);
Pro Gly Leu Val Trp Leu Gly Trp (配列番号314);
Val Lys Lys Leu Tyr Ile Gly Trp (配列番号315);
Asn Asn Arg Leu Leu Asp Gly Trp (配列番号316);
Ser Lys Gly Arg Trp Gly Gly Trp (配列番号317);
Ile Arg Pro Ser Gly Ile Gly Trp (配列番号318);
Ala Ser Leu Cys Pro Thr Gly Trp (配列番号319);
Asp Val Pro Gly Leu Arg Gly Trp (配列番号320);
Arg His Arg Glu Val Gln Gly Trp (配列番号321);
Leu Ala Arg Lys Arg Ser Gly Trp (配列番号322);
Ser Val Leu Asp His Val Gly Trp (配列番号323);
Asn Leu Leu Arg Arg Ala Gly Trp (配列番号324);
Ser Gly Ile Ser Ala Trp Gly Trp (配列番号325);
Phe Tyr Phe Trp Val Arg Gly Trp (配列番号326);
Lys Leu Phe Leu Pro Leu Gly Trp (配列番号327);
Thr Pro Thr Leu Ser Asp Gly Trp (配列番号328);
Thr His Ser Leu Ile Leu Gly Trp (配列番号329);
Leu Leu Leu Leu Ser Arg Gly Trp (配列番号330);
Leu Leu Arg Val Arg Ser Gly Trp (配列番号331);
Glu Arg Arg ser Arg Gly Gly Trp (配列番号332);
Arg Met Leu Gin Leu Ala Gly Trp (配列番号333);
Age Gly Trp Ala Asn Ser Gly Trp (配列番号334);
Arg Pro Phe Tyr Ser Tyr Gly Trp (配列番号335);
Ser Ser Ser Trp Asn Ala Gly Trp (配列番号336);
Leu Gly His Leu Glu Glu Gly Trp (配列番号337);
Ser Ala Val Thr Asn Thr Gly Trp (配列番号338);
Leu Arg Arg Ala Ser Leu Trp (配列番号339);
Leu Arg Arg Trp Ser Leu Trp (配列番号340);
Lys Trp Val His Leu Phe Trp (配列番号341);
Asn Arg Leu Leu Leu Thr Trp (配列番号342);
Ala Arg Leu Leu Leu Thr Trp (配列番号343);
Asn Ala Leu Leu Leu Thr Trp (配列番号344);
Asn Arg Leu Ala Leu Thr Trp (配列番号345);
Asn Leu Leu Arg Leu Thr Trp (配列番号346);
Asn Arg Leu Trp Leu Thr Trp (配列番号347); および
Asn Arg Leu Leu Leu Ala Trp (配列番号348)。
【0066】
本発明の実施において有用な他の熱ショックタンパク質結合性ドメインには、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Thr Trp (配列番号501)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Thr Trp (配列番号502)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp (配列番号503)、Arg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp (配列番号504)、Lys Phe Glu Arg Gln Trp (配列番号505)、Asn Ile Val Arg Lys Lys Lys Trp (配列番号506) およびArg Gly Tyr Val Tyr Gln Gly Leu Trp (配列番号507) が含まれる。
【0067】
さらに、他の熱ショックタンパク質結合性ドメインは、W09922761に記載されているものを包含し、本発明の目的を達成するために付加された末端Trp残基を有しうる。Xaaは任意のアミノ酸を表す。
【0068】
Tyr Thr Leu Val Gln Pro Leu Trp (配列番号1149));
Thr Pro Asp Ile Thr Pro Lys Trp (配列番号1150);
Thr Tyr Pro Asp Leu Arg Tyr Trp (配列番号1151);
Asp Arg Thr His Ala Thr Ser Trp (配列番号1152);
Met Ser Thr Thr Phe Tyr Ser Trp (配列番号1153);
Tyr Gln His Ala Val Gln Thr Trp (配列番号1154);
Phe Pro Phe Ser Ala Ser Thr Trp (配列番号1155);
Ser Ser Phe Pro Pro Leu Asp Trp (配列番号1156);
Met Ala Pro Ser Pro Pro His Trp (配列番号1157);
Ser Ser Phe Pro Asp Leu Leu Trp (配列番号1158);
His Ser Tyr Asn Arg Leu Pro Trp (配列番号1159);
His Leu Thr His Ser Gln Arg Trp (配列番号1160);
Gln Ala Ala Gln Ser Arg Ser Trp (配列番号1161);
Phe Ala Thr His His His Gly Trp (配列番号1162);
Ser Met Pro Glu Pro Leu Ile Trp (配列番号1163);
Ile Pro Arg Tyr His Leu Ile Trp (配列番号1164);
Ser Ala Pro His Met Thr Ser Trp (配列番号1165);
Lys Ala Pro Val Trp Ala Ser Trp (配列番号1166);
Leu Pro His Trp Leu Leu Ile Trp (配列番号1167);
Ala Ser Ala Gly Tyr Gln Ile Trp (配列番号1168);
Val Thr Pro Lys Thr Gly Ser Trp (配列番号1169);
Glu His Pro Met Pro Val Leu Trp (配列番号1170);
Val Ser Ser Phe Val Thr Ser Trp (配列番号1171);
Ser Thr His Phe Thr Trp Pro Trp (配列番号1172);
Gly Gln Trp Trp Ser Pro Asp Trp (配列番号1173);
Gly Pro Pro His Gln Asp Ser Trp (配列番号1174);
Asn Thr Leu Pro Ser Thr Ile Trp (配列番号1175);
His Gln Pro Ser Arg Trp Val Trp (配列番号1176);
Tyr Gly Asn Pro Leu Gln Pro Trp (配列番号1177);
Phe His Trp Trp Trp Gln Pro Trp (配列番号1178);
Ile Thr Leu Lys Tyr Pro Leu Trp (配列番号1179);
Phe His Trp Pro Trp Leu Phe Trp (配列番号1180);
Thr Ala Gln Asp Ser Thr Gly Trp (配列番号1181);
Phe His Trp Trp Trp Gln Pro Trp (配列番号1182);
Phe His Trp Trp Asp Trp Trp Trp (配列番号1183);
Glu Pro Phe Phe Arg Met Gln Trp (配列番号1184);
Thr Trp Trp Leu Asn Tyr Arg Trp (配列番号1185);
Phe His Trp Trp Trp Gln Pro Trp (配列番号1186);
Gln Pro Ser His Leu Arg Trp Trp (配列番号1187);
Ser Pro Ala Ser Pro Val Tyr Trp (配列番号1188);
Phe His Trp Trp Trp Gln Pro Trp (配列番号1189);
His Pro Ser Asn Gln Ala Ser Trp (配列番号1190);
Asn Ser Ala Pro Arg Pro Val Trp (配列番号1191);
Gln Leu Trp Ser Ile Tyr Pro Trp (配列番号1192);
Ser Trp Pro Phe Phe Asp Leu Trp (配列番号1193);
Asp Thr Thr Leu Pro Leu His Trp (配列番号1194);
Trp His Trp Gln Met Leu Trp Trp (配列番号1195);
Asp Ser Phe Arg Thr Pro Val Trp (配列番号1196);
Thr Ser Pro Leu Ser Leu Leu Trp (配列番号1197);
Ala Tyr Asn Tyr Val Ser Asp Trp (配列番号1198);
Arg Pro Leu His Asp Pro Met Trp (配列番号1199);
Trp Pro Ser Thr Thr Leu Phe Trp (配列番号1200);
Ala Thr Leu Glu Pro Val Arg Trp (配列番号1201);
Ser Met Thr Val Leu Arg Pro Trp (配列番号1202);
Gln Ile Gly Ala Pro Ser Trp Trp (配列番号1203);
Ala Pro Asp Leu Tyr Val Pro Trp (配列番号1204);
Arg Met Pro Pro Leu Leu Pro Trp (配列番号1205);
Ala Lys Ala Thr Pro Glu His Trp (配列番号1206);
Thr Pro Pro Leu Arg Ile Asn Trp (配列番号1207);
Leu Pro Ile His Ala Pro His Trp (配列番号1208);
Asp Leu Asn Ala Tyr Thr His Trp (配列番号1209);
Val Thr Leu Pro Asn Phe His Trp (配列番号1210);
Asn Ser Arg Leu Pro Thr Leu Trp (配列番号1211);
Tyr Pro His Pro Ser Arg Ser Trp (配列番号1212);
Gly Thr Ala His Phe Met Tyr Trp (配列番号1213);
Tyr Ser Leu Leu Pro Thr Arg Trp (配列番号1214);
Leu Pro Arg Arg Thr Leu Leu Trp (配列番号1215);
Thr Ser Thr Leu Leu Trp Lys Trp (配列番号1216);
Thr Ser Asp Met Lys Pro His Trp (配列番号1217);
Thr Ser Ser Tyr Leu Ala Leu Trp (配列番号1218);
Asn Leu Tyr Gly Pro His Asp Trp (配列番号1219);
Leu Glu Thr Tyr Thr Ala Ser Trp (配列番号1220);
Ala Tyr Lys Ser Leu Thr Gln Trp (配列番号1221);
Ser Thr Ser Val Tyr Ser Ser Trp (配列番号1222);
Glu Gly Pro Leu Arg Ser Pro Trp (配列番号1223);
Thr Thr Tyr His Ala Leu Gly Trp (配列番号1224);
Val Ser Ile Gly His Pro Ser Trp (配列番号1225);
Thr His Ser His Arg Pro Ser Trp (配列番号1226);
Ile Thr Asn Pro Leu Thr Thr Trp (配列番号1227);
Ser Ile Gln Ala His His Ser Trp (配列番号1228);
Leu Asn Trp Pro Arg Val Leu Trp (配列番号1229);
Tyr Tyr Tyr Ala Pro Pro Pro Trp (配列番号1230);
Ser Leu Trp Thr Arg Leu Pro Trp (配列番号1231);
Asn Val Tyr His Ser Ser Leu Trp (配列番号1232);
Asn Ser Pro His Pro Pro Thr Trp (配列番号1233);
Val Pro Ala Lys Pro Arg His Trp (配列番号1234);
His Asn Leu His Pro Asn Arg Trp (配列番号1235);
Tyr Thr Thr His Arg Trp Leu Trp (配列番号1236);
Ala Val Thr Ala Ala Ile Val Trp (配列番号1237);
Thr Leu Met His Asp Arg Val Trp (配列番号1238);
Thr Pro Leu Lys Val Pro Tyr Trp (配列番号1239);
Phe Thr Asn Gln Gln Tyr His Trp (配列番号1240);
Ser His Val Pro Ser Met Ala Trp (配列番号1241);
His Thr Thr Val Tyr Gly Ala Trp (配列番号1242);
Thr Glu Thr Pro Tyr Pro Thr Trp (配列番号1243);
Leu Thr Thr Pro Phe Ser Ser Trp (配列番号1244);
Gly Val Pro Leu Thr Met Asp Trp (配列番号1245);
Lys Leu Pro Thr Val Leu Arg Trp (配列番号1246);
Cys Arg Phe His Gly Asn Arg Trp (配列番号1247);
Tyr Thr Arg Asp Phe Glu Ala Trp (配列番号1248);
Ser Ser Ala Ala Gly Pro Arg Trp (配列番号1249);
Ser Leu Ile Gln Tyr Ser Arg Trp (配列番号1250);
Asp Ala Leu Met Trp Pro XAA Trp (配列番号1251);
Ser Ser XAA Ser Leu Tyr Ile Trp (配列番号1252);
Phe Asn Thr Ser Thr Arg Thr Trp (配列番号1253);
Thr Val Gln His Val Ala Phe Trp (配列番号1254);
Asp Tyr Ser Phe Pro Pro Leu Trp (配列番号1255);
Val Gly Ser Met Glu Ser Leu Trp (配列番号1256);
Phe XAA Pro Met Ile XAA Ser Trp (配列番号1257);
Ala Pro Pro Arg Val Thr Met Trp (配列番号1258);
Ile Ala Thr Lys Thr Pro Lys Trp (配列番号1259);
Lys Pro Pro Leu Phe Gln Ile Trp (配列番号1260);
Tyr His Thr Ala His Asn Met Trp (配列番号1261);
Ser Tyr Ile Gln Ala Thr His Trp (配列番号1262);
Ser Ser Phe Ala Thr Phe Leu Trp (配列番号1263);
Thr Thr Pro Pro Asn Phe Ala Trp (配列番号1264);
Ile Ser Leu Asp Pro Arg Met Trp (配列番号1265);
Ser Leu Pro Leu Phe Gly Ala Trp (配列番号1266);
Asn Leu Leu Lys Thr Thr Leu Trp (配列番号1267);
Asp Gln Asn Leu Pro Arg Arg Trp (配列番号1268);
Ser His Phe Glu Gln Leu Leu Trp (配列番号1269);
Thr Pro Gln Leu His His Gly Trp (配列番号1270);
Ala Pro Leu Asp Arg Ile Thr Trp (配列番号1271);
Phe Ala Pro Leu Ile Ala His Trp (配列番号1272);
Ser Trp Ile Gln Thr Phe Met Trp (配列番号1273);
Asn Thr Trp Pro His Met Tyr Trp (配列番号1274);
Glu Pro Leu Pro Thr Thr Leu Trp (配列番号1275);
His Gly Pro His Leu Phe Asn Trp (配列番号1276);
Tyr Leu Asn Ser Thr Leu Ala Trp (配列番号1277);
His Leu His Ser Pro Ser Gly Trp (配列番号1278);
Thr Leu Pro His Arg Leu Asn Trp (配列番号1279);
Ser Ser Pro Arg Glu Val His Trp (配列番号1280);
Asn Gln Val Asp Thr Ala Arg Trp (配列番号1281);
Tyr Pro Thr Pro Leu Leu Thr Trp (配列番号1282);
His Pro Ala Ala Phe Pro Trp Trp (配列番号1283);
Leu Leu Pro His Ser Ser Ala Trp (配列番号1284);
Leu Glu Thr Tyr Thr Ala Ser Trp (配列番号1285);
Lys Tyr Val Pro Leu Pro Pro Trp (配列番号1286);
Ala Pro Leu Ala Leu His Ala Trp (配列番号1287);
Tyr Glu Ser Leu Leu Thr Lys Trp (配列番号1288);
Ser His Ala Ala Ser Gly Thr Trp (配列番号1289);
Gly Leu Ala Thr Val Lys Ser Trp (配列番号1290);
Gly Ala Thr Ser Phe Gly Leu Trp (配列番号1291);
Lys Pro Pro Gly Pro Val Ser Trp (配列番号1292);
Thr Leu Tyr Val Ser Gly Asn Trp (配列番号1293);
His Ala Pro Phe Lys Ser Gln Trp (配列番号1294);
Val Ala Phe Thr Arg Leu Pro Trp (配列番号1295);
Leu Pro Thr Arg Thr Pro Ala Trp (配列番号1296);
Ala Ser Phe Asp Leu Leu Ile Trp (配列番号1297);
Arg Met Asn Thr Glu Pro Pro Trp (配列番号1298);
Lys Met Thr Pro Leu Thr Thr Trp (配列番号1299);
Ala Asn Ala Thr Pro Leu Leu Trp (配列番号1300);
Thr Ile Trp Pro Pro Pro Val Trp (配列番号1301);
Gln Thr Lys Val Met Thr Thr Trp (配列番号1302);
Asn His Ala Val Phe Ala Ser Trp (配列番号1303);
Leu His Ala Ala Xaa Thr Ser Trp (配列番号1304);
Thr Trp Gln Pro Tyr Phe His Trp (配列番号1305);
Ala Pro Leu Ala Leu His Ala Trp (配列番号1306);
Thr Ala His Asp Leu Thr Val Trp (配列番号1307);
Asn Met Thr Asn Met Leu Thr Trp (配列番号1308);
Gly Ser Gly Leu Ser Gln Asp Trp (配列番号1309);
Thr Pro Ile Lys Thr Ile Tyr Trp (配列番号1310);
Ser His Leu Tyr Arg Ser Ser Trp (配列番号1311); および
His Gly Gln Ala Trp Gln Phe Trp (配列番号1312)。
【0069】
前記熱ショックタンパク質結合性ドメインは、本発明の実施において使用しうる、ペプチドおよび非ペプチド熱ショックタンパク質結合性分子のなかの種々のペプチドの典型例に過ぎない。
【0070】
本発明のハイブリッド抗原は1つの免疫原性ドメインおよび1つの熱ショックタンパク質結合性ドメインを含み、所望により、それらはペプチドリンカーにより隔てられている。本発明のハイブリッド抗原は、化学ペプチド合成法を用いて合成することが可能であり、あるいはそれは、抗原性および熱ショックタンパク質結合性ドメインをコードする連結配列を含有する核酸構築物の発現により合成することが可能である。1つの適当な技術においては、それぞれがリンカーセグメントにより一方の末端に結合しているそれらの2つのドメインをコードする別々のDNAセグメントを産生させるために初期の別々のPCR増幅反応を用い、ついで、もう1つのP CR工程において2つの増幅産物の融合を行う。この技術はリンカーテーリング(linker tailing)と称される。また、関心のある領域内に適当な制限部位を設けることが可能であり、ついで、制限消化および連結により、所望のハイブリッド抗原コード配列を得る。
【0071】
本明細書に記載のとおり、本発明のハイブリッド抗原をコードする核酸は、免疫応答を誘導しうるハイブリッド抗原をin vivoでの発現が与える、対象への投与による治療用途にも適している。
【0072】
前記の及び後記実施例に記載の種々の熱ショックタンパク質結合性ドメインおよびそれを含有するハイブリッド抗原に関する研究に加えて、1文字アミノ酸記号を使用して記載された熱ショックタンパク質結合性ドメインHWDFAWPWおよびNLLRLTGW(配列番号350)に関する更なる比較研究を、オボアルブミンからのモデルエピトープSIINFEKLを使用して、in vitroおよびin vivoで行った。前記のとおり、熱ショックタンパク質(HSP)と複合体形成した抗原性ペプチドは内因性抗原プロセシング経路に進入し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を感作しうる。前記のとおり、クラスI MHC結合性エピトープならびにHSP70結合性配列(HWDFAWPW)および他の熱ショックタンパク質結合性配列を含有するハイブリッド抗原の同時直線的(co-linear)合成は、それによらなければ乏しい結合性のエピトープを、免疫原性にしうることが確認された。これは、より高いアフィニティのHSP70結合性配列(NLLRLTGW)が、結合したクラスIエピトープの免疫原性を更に増強しうることを示すことにより、証明され拡張されている。競合結合アッセイは、ハイブリッド抗原SIINFEKLGSGHWDFAWPWと比較して、ハイブリッド抗原SIINFEKLGSGNLLRLTGWにおいては、H2-KdオボアルブミンSIINFEKLエピトープに関しては、15倍低い解離定数を示し、このことは、HSP70に対する、NLLRLTGWの、より高いアフィニティーを示している。HSP70結合SIINFEKLGSGNLLRLTGWペプチドがin vitroでマウスマクロファージによりプロセシングされ提示されうることを確認した後、in vivo免疫原性を評価した。正常C57BL/6マウスを免疫することによりHSP70:SIINFEKLGSGNLLRLTGW複合体とHSP70:SIINFEKLGSGHWDFAWPW複合体とのin vivo比較評価を行ったところ、該SIINFEKLGSGNLLRLTGW複合体が、より良好なCD+8T細胞応答を誘導することが判明した。関連した実験において、NLLRLTGWは単独で、本来免疫原性であるHSP70:SIINFEKLGSGHWDFAWPW混合物による免疫応答の誘導を妨げることが判明した。このことは、NLLRLTGWが、HSP70上の同一結合部位と相互作用することにより複合性形成を遮断することを示している。本出願人には開示の義務は無いしそれによって束縛されるものではないが、NLLRLTGWを含有するエピトープに対する、より低い解離定数は、HSP70と共に生じた複合体を、免疫化剤として、より効率的なものとするであろうと仮定した。実際、低用量のHSP70:SIINFEKLGSGNLLRLTGW複合体で1回免疫された動物は、ex vivo ELISPOTアッセイにおいて、相当なレベルのIFNγを分泌するよう、ペプチド特異的CD8+T細胞を誘導することが判明した。総合すると、これらのデータは、該熱ショックタンパク質結合性ドメイン-エピトープハイブリッド抗原のHSP70結合アフィニティと免疫応答との間の正の相関性を確立するものであり、より少量の所定エピトープを、より高いアフィニティの熱ショックタンパク質結合性ドメイン(例えば、NLLRLTGWが挙げられるが、これに限定されるものではない)と共に使用してin vivoでの免疫化を成功させうることを示している。Trp残基で終結する他の熱ショックタンパク質結合性ドメインも結合特性の改善を示すことが判明した。
【0073】
熱ショックタンパク質
本明細書中で用いる「熱ショックタンパク質」なる語は、ストレスにさらされた細胞において発現の増強を示す任意のタンパク質を意味する。好ましい非限定的な実施形態においては、熱ショックタンパク質は元来は真核細胞に由来し、より好ましい実施形態においては、熱ショックタンパク質は元来は哺乳類細胞に由来する。例えば、本発明で使用しうる熱ショックタンパク質には、BiP(grp78とも称される)、hsp70、hsc70、gp96(grp94)、hsp60、hsp40およびhsp90ならびにそれらのファミリーのメンバーが含まれるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい熱ショックタンパク質は、後記で例示されているとおり、BiP、gp96およびhsp70である。最も好ましいのはhsp70ファミリーのメンバーである。熱ショックタンパク質の天然に存在する又は組換え由来の突然変異体も本発明で使用することが可能である。例えば、本発明は、細胞からの分泌を促進するよう突然変異した(例えば、KDELまたはそのホモログのような、小胞体再捕捉を促進する要素の突然変異または欠失を有するもの;そのような突然変異体は、参照により本明細書に組み入れるPCT出願番号PCT/US96/13233(WO 97/06685)に記載されている)熱ショックタンパク質の使用を提供する(それに限定されるものではない)。
【0074】
熱ショックタンパク質およびハイブリッド抗原をタンパク質/ペプチド複合体の形態で対象に直接投与する本発明の実施形態では、熱ショックタンパク質は、例えばFlynnら, Science 245 : 385-390 (1989)に記載されているとおりに標準的な技術を用いて天然源から、あるいは細菌、酵母または哺乳類細胞のような適当な宿主細胞内での熱ショックコードベクターの発現のような組換え技術を用いて製造することが可能である。宿主由来のペプチドでの熱ショックタンパク質のプレローディング(pre-loading)に関心がある場合には、熱ショックタンパク質をATPと共にインキュベートし、ついで再精製することが可能である。組換え熱ショックタンパク質の製造方法の非限定的な具体例を以下に説明する。
【0075】
熱ショックタンパク質をコードする核酸を、発現に必要な又は望ましい要素に機能しうる形で連結させ、ついで、タンパク質ワクチンまたは核酸ワクチンにおいて使用する熱ショックタンパク質を製造するための手段として、所望の熱ショックタンパク質を発現させるために、それを使用することが可能である。発現に必要な又は望ましい要素には、プロモーター/エンハンサー要素、転写開始および終結配列、ポリアデニル化シグナル、翻訳開始および終結配列、リボソーム結合部位、シグナル配列などが含まれるが、これらに限定されるものではない。限定的なものではないが例えば、gp96(ヒト: Genebankアクセッション番号X15187; Makiら, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 87: 5658-5562(1990);マウス: Genebankアクセッション番号M16370; Srivastavaら, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 84: 3807-3811 (1987))、BiP(マウス: Genebankアクセッション番号U16277; Haasら, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 85:2250-2254(1988); ヒト: Genebankアクセッション番号M19645; Tingら, DNA 7: 275-286 (1988))、hsp70(マウス: Genebankアクセッション番号M35021; Huntら, Gene 87: 199-204 (1990); ヒト: Genebankアクセッション番号M24743; Huntら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:6455-6489(1995))およびhsp40(ヒト: Genebankアクセッション番号D49547; Ohtsuka K., Biochem. Biophys. Res. Commun. 197: 235-240 (1993))を含む(これらに限定されるものではない)種々の熱ショックタンパク質の遺伝子がクローニングされ、配列決定されている。
【0076】
投与方法
本発明のハイブリッド抗原またはハイブリッド抗原と熱ショックタンパク質との複合体を、ペプチドに基づく又はタンパク質に基づく又は核酸ワクチンを使用して対象に投与することにより、該対象において治療用免疫応答を誘導するのに有効な量の複合体を該対象において産生させることが可能である。
該対象はヒトまたは非ヒト対象でありうる。
【0077】
本明細書中で用いる「治療用免疫応答」なる語は、標準的な技術により測定される、該ハイブリッド抗原に対する体液性および/または細胞性免疫の増強を意味する。限定するものではないが、好ましくは、ハイブリッド抗原に対する体液性免疫の誘導レベルは、対象への本発明の組成物の投与前の該抗原に対する体液性免疫のレベルより少なくとも4倍、好ましくは少なくとも16倍大きい。対象における腫瘍疾患または感染症の進行の停止または寛解が治療用免疫応答の誘導を示すとみなされる適当なin vitroまたはin vivoアッセイにより、免疫応答を定量的に測定することも可能である。
【0078】
熱ショックタンパク質/ハイブリッド抗原の具体的な投与量は、個々のワクチン組成物の免疫原性、対象の免疫適格性、対象のサイズおよび投与経路を含む多数の要因に左右されうる。投与のための任意の与えられた組成物の適当な量の決定は、通常の選択の問題である。
【0079】
さらに、ハイブリッド抗原を単独で(すなわち、熱ショックタンパク質を伴うことなく)投与した研究において、有意な免疫学的効力が確認された。本出願人には、本発明が機能する理論を開示する義務は無く、また、それに拘束されるものでもないが、これらの研究の結果は、ハイブリッド抗原が、対象への注射後に、内因性熱ショックタンパク質に結合し、したがって、効果を得るためには熱ショックタンパク質の共投与を要さないことを示唆している。本発明は、本発明のハイブリッド抗原のそのような有用性に拡張適応され、そして更には、全身的に、または本発明のハイブリッド抗原の、意図される投与部位において、内因性熱ショックタンパク質レベルを増加させる併用療法または治療に拡張適応される。そのような併用療法または治療には、局所組織における熱ショックタンパク質の発現を増加させる局所用もしくは全身用医薬物質または熱の局所適用が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような物質および方法は当技術分野で公知である。
【0080】
少なくとも1つの抗原性ドメインと少なくとも1つの熱ショックタンパク質結合性ドメインとを含む、熱ショックタンパク質の共投与の非存在下で投与される(すなわち、熱ショックタンパク質との複合体としては投与されない)ハイブリッド抗原は、好ましくは、本明細書に記載の熱ショックタンパク質結合性ドメインの1つを含み、より好ましくは、熱ショックタンパク質結合性ドメインAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)またはArg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)を含むハイブリッド抗原である。他の選択肢には、前記のものが含まれる。
【0081】
本発明の特定の非限定的な実施形態においては、免疫応答を最適化するために、2以上の種の熱ショックタンパク質および/または2以上のハイブリッド抗原を含めることが望ましいかもしれない。そのようなアプローチは、癌の治療において、または免疫応答の回避を引き起こす突然変異の急速な発生により特徴づけられる感染症の治療において、特に好都合でありうる。さらに、本発明のハイブリッド抗原は2以上の免疫原性ドメインまたは2以上のエピトープを含みうる。
【0082】
前記のハイブリッド抗原/熱ショックタンパク質またはハイブリッド抗原のみを含む組成物は本明細書中では「ワクチン」と称される。ワクチンなる語は、治療用免疫応答を誘導するために本発明の組成物を使用しうることを示すために用いられる。本発明のワクチンは、単一の抗原性ドメインもしくはエピトープを含有するハイブリッド抗原、または複数の抗原性ドメインまたはエピトープを含有するハイブリッド抗原を含みうる。さらに、ワクチンは、単一または複数の抗原性ドメインまたはエピトープを含有するハイブリッド抗原の混合物、あるいは前記の任意の組合せを含みうる。前記のとおり、ハイブリッド抗原またはその混合物は、投与の前に1以上の熱ショックタンパク質と複合体を形成させることが可能であり、あるいは熱ショックタンパク質を伴うことなく投与することが可能である。
【0083】
本発明の1以上の熱ショックタンパク質と所望により複合体を形成しうる1以上のハイブリッド抗原を含むワクチン組成物は、皮膚、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、非経口的、肺内、膣内、直腸内、鼻腔内または局所的に投与することが可能である。該ワクチン組成物は、注射、パーティクルガンにより、または経口的に、またはエアゾールにより運搬することが可能である。
【0084】
ほとんどの場合、ハイブリッド抗原との、溶液中の熱ショックタンパク質のインキュベーションは、熱ショックタンパク質に対する該抗原のローディングを達成するのに十分なものである。しかし、場合によっては、該抗原のローディングを補助しうる物質を加えることが望ましいかもしれない。
【0085】
ハイブリッド抗原との、熱ショックタンパク質の、加熱下のインキュベーションは、一般には、熱ショックタンパク質への該抗原のローディングを引き起こすであろう。しかし、場合によっては、該ローディングを補助するための追加的な物質を加えることが望ましいかもしれない。例えば、hsp40は、hsp70に対するペプチドのローディングを促進しうる(Minamiら, J. Biol. Chem. 271: 19617-19624 (1996))。ペプチド結合性ポケットを、該抗原に、より接近し易くするために、熱ショックタンパク質を部分的および可逆的に不安定化させるために、グアニジウムHClまたは尿素のような変性剤を使用することが可能である。
【0086】
本発明のワクチン組成物は更に、製薬上許容される担体のような種々の追加的な物質を含みうる。適当な担体には、任意の標準的な製薬上許容される担体、例えばリン酸緩衝食塩水、水、エマルション、例えば油/水エマルションまたはトリグリセリドエマルション、種々のタイプの湿潤剤、錠剤、コーティング錠およびカプセル剤が含まれる。該化合物の静脈内および腹腔内投与において有用な許容されるトリグリセリドエマルションの一例としては、Intralipid(登録商標)として商業的に公知のトリグリセリドエマルションが挙げられる。典型的には、そのような担体は、賦形剤、例えばデンプン、乳、糖、あるタイプの粘土、ゼラチン、ステアリン酸、タルク、植物性油脂、グリコールまたは他の公知賦形剤を含有する。そのような担体は、香味用および着色用添加剤をも含みうる。
【0087】
特に、熱ショックタンパク質を含む本発明のワクチンは、好ましくは、該複合体がその目的部位に達する前の熱ショックタンパク質と熱ショックタンパク質結合性ドメインとの会合を促進するためのアデノシン二リン酸(ADP)をも含む。同様の能力を有する他の化合物を、単独で又はADPと組合せて使用することが可能である。
【0088】
本発明のワクチン組成物は、適当な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体をも含みうる。そのような組成物は液体または凍結乾燥もしくは乾燥製剤の形態であることが可能であり、種々のバッファー含有物(例えば、Tris-HCl、アセタート、ホスファート)、pHおよびイオン強度の希釈剤、表面への吸収を妨げるためのアルブミンまたはゼラチンのような添加剤、界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量物質または等張性修飾剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコールのような重合体の、該タンパク質への共有結合、金属イオンとの錯体形成、あるいはポリ硫酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどのような高分子化合物の粒子状製剤中もしくは上への又はリポソーム、ミクロエマルション、ミセル、単層もしくは多重ラメラ小胞、赤血球ゴーストまたはセファロプラスト上への該物質の取り込みを含みうる。そのような組成物は物理的状態、溶解度、安定性、in vivo放出速度およびin vivoクリアランス速度に影響を及ぼす。組成物の選択はワクチンの物理的および化学的特性に左右される。例えば、タンパク質の膜結合形態に由来する産物は、界面活性剤を含有する製剤を要しうる。コントロールリリースまたは徐放性組成物は、親油性デポ剤(例えば、脂肪酸、ロウ、油)中の製剤を含む。また、重合体(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングされた及び組織特異的受容体、リガンドまたは抗原に対する抗体に共役させた又は組織特異的受容体のリガンドに共役させた粒子状組成物も本発明に含まれる。本発明の組成物の他の実施形態は、粒子状形態、保護コーティング、プロテアーゼインヒビター、または筋肉内、非経口、肺、鼻および経口を含む種々の投与経路用の透過性促進剤を含む。
【0089】
熱ショックタンパク質と所望により複合体を形成しうるハイブリッド抗原の直接投与の代替法として、発現可能な形態でハイブリッド抗原を所望により熱ショックタンパク質と共にコードする1以上のポリヌクレオチド構築物を投与することが可能である。発現可能なポリヌクレオチド構築物は、ex vivoまたはin vivo法を用いて対象の細胞内に導入される。適当な方法には、組織および腫瘍内への直接的な注射、リポソーム(Fraleyら, Nature 370: 111-117 (1980))、受容体媒介エンドサイトーシス(Zatloukalら, Ann. NY Acad. Sci. 660: 136-153 (1992))、パーティクルガン媒介遺伝子導入(Eisenbraunら, DNA & Cell Biol. 12: 792- 797 (1993))を使用するトランスフェクション、およびペプチド提示バクテリオファージを使用するトランスフェクション(Barryら, Nature Medicine 2: 299-305 (1996))が含まれる。また、該ポリヌクレオチドワクチンをin vitroで適当な細胞内に導入し、ついでそれを対象内に導入することも可能である。
【0090】
発現可能なポリヌクレオチドを構築するためには、熱ショックタンパク質および/またはハイブリッド抗原をコードする領域を、前記のとおりに調製し、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターのような適当なプロモーターに機能しうる形で連結された哺乳類発現ベクター内に挿入する。ついで、得られた構築物を遺伝子免疫のためのワクチンとして使用することが可能である。また、該核酸重合体をウイルスベクター内にクローニングすることも可能であろう。適当なベクターには、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ポックスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明での使用に適した具体的なベクターとしては、pCDNA3(InVitrogen)、プラスミドAH5(これはSV40起点およびアデノウイルス主要後期プロモーターを含有する)、pRC/CMV(InVitrogen)、pCMU II(Paaboら, EMBO J. 5: 1921-1927 (1986))、pZip-Neo SV(Cepkoら, Cell 37 :1053-1062 (1984))およびpSRα(DNAX, Palo Alto, CA)が挙げられる。
【0091】
以下の実施例においては、アミノ酸は、以下のとおり、それらの1文字記号を使用して表される。
A アラニン
C システイン
D アスパラギン酸
E グルタミン酸
F フェニルアラニン
G グリシン
H ヒスチジン
I イソロイシン
K リシン
L ロイシン
M メチオニン
N アスパラギン
P プロリン
Q グルタミン
R アルギニン
S セリン
T トレオニン
V バリン
W トリプトファン
Y チロシン。
【実施例1】
【0092】
熱ショックタンパク質結合性ドメインと癌抗原エピトープまたはオブアルブミン由来のモデルエピトープSIINFEKLとをそれぞれが含む種々のハイブリッド抗原を固相ペプチド合成により製造した。これらの実験において使用した熱ショックタンパク質結合性ドメインは以下のものであった:HWDFAWPW、NLLRLTGW、FYQLALTWおよびRKLFFNLRW。
【0093】
該癌およびモデルエピトープは以下のものであった。
【表1】

【0094】
F-moc化学を利用する標準的な固相ペプチド合成を用いて、種々の配向で熱ショックタンパク質結合性ドメイン、癌エピトープおよびそれらの間のgly-ser-glyリンカーを含むハイブリッド抗原を合成した。例えば、以下のハイブリッド抗原を製造した。
【表2】

【実施例2】
【0095】
組換えヒトまたはマウス熱ショックタンパク質70(hsp70)と前記の種々の熱ショックタンパク質結合性ドメインおよび抗原性ペプチドとの間、ならびに抗原性ペプチドを含むハイブリッド抗原と前記の熱ショックタンパク質結合性ドメインとの間の結合アフィニティを、スキャッチャード分析により測定されたhsp70に対する参照体標識ハイブリッド抗原(トリチウム化ALFDIESKVGSGHWDFAWPW)の結合アフィニティに対する結合抑制アッセイ(ヒルプロット)により測定した。結合研究は、39% PBS、20 mM THAM, pH 8、37 mM NaCl、5 mM MgCl2および1 mM ADP中で行った。
【0096】
GSGリンカーにより隔てられた、N末端(特に示さない限り)の前記腫瘍抗原ペプチドと、C末端の、示されている熱ショックタンパク質結合性ドメインとを含むハイブリッド抗原のアフィニティを、以下の表に示す。値はKdとして表されている。
【表3】

【実施例3】
【0097】
組換えヒト熱ショックタンパク質70と本発明のハイブリッド抗原との非共有結合性複合体を、in vivoの生物活性に関して評価した。抗原特異的免疫応答の誘導を評価するために、第0日に、以下のうちの1つでマウスを免疫した:(1)100μgのヒトhsp70、(2)100μgのhsp70および15μgのSIINFEKL(OVAペプチド)との非共有結合性複合体、(3)100μgのhsp70と15μgのSIINFEKLGSGHWDFAWPW(N末端OVAペプチド、C末端熱ショックタンパク質結合性ドメインHWDFAWPW、それらの間のGSGリンカー)との非共有結合性複合体、および(4)15μgのhsp70と15μgのSIINFEKLGSGNLLRLTGW(N末端OVAペプチド、C末端熱ショックタンパク質結合性ドメインNLLRLTGW、それらの間のGSGリンカー)との非共有結合性複合体。
【0098】
第7日に、脾細胞を該免疫動物から得、in vitroでペプチド(SIINFEKL)で5日間にわたり再刺激し、ついでγインターフェロン分泌CD8+細胞の比率を求めた。結果を図1に示す。
【0099】
Hsp70の単体は低レベルの応答を示し、これはOVAペプチドの単体の添加(hsp70とSIINFEKLとの複合体)によっては増加しなかった。しかし、hsp70とハイブリッド抗原SIINFEKLGSGHWDFAWPWとの複合体は、増強した応答を惹起した。OVAペプチドおよびより高いアフィニティの熱ショックタンパク質結合性ドメインNLLRLTGWを含むハイブリッド抗原とhsp70との複合体は、ほぼ同レベルの免疫応答を与えたが、これは、6.7倍低い量のhsp70(15μg)を使用して達成された。
【実施例4】
【0100】
組換えヒト熱ショックタンパク質70と本発明のハイブリッド抗原との非共有結合性複合体を、in vitroモデルにおいて生物活性に関して評価した。マウス腹腔滲出細胞がB3Z細胞(すなわち、MHCクラスIの環境においてOVAペプチドが提示されるとIL2を分泌するT細胞ハイブリドーマ)の存在下でOVAペプチドの試験化合物にさらされるin vitroモデル系を確立した。チオグリコラートの腹腔内注射によりマウス腹膜マクロファージを誘導した。5日後、マウスを犠死させ、腹腔滲出細胞を腹膜潅流により回収した。非付着細胞を除去し、ついでB3Z細胞および試験化合物を加えた。以下のものを試験した:1- ハイブリッド抗原「A」(10pmol)(SIINFEKL-GSG-HWDFAWPW)、2-Hsp70(75pmol)とハイブリッド抗原A(10pmol)との非共有結合性複合体、3-ハイブリッド抗原「B」(10pmol)(SIINFEKL-GSG-NLLRLTGW)、および4-Hsp70(75pmol)とハイブリッド抗原B(10pmol)との非共有結合性複合体。
【0101】
無細胞上清を18時間後に回収し、IL2のレベルに関して捕捉ELISAにおいて試験した。hsp70と複合体を形成したハイブリッド抗原は共に、OVA特異的T細胞ハイブリドーマに抗原を提示した。その結果を図2に示す。
【実施例5】
【0102】
IIIおよびIV期黒色腫患者におけるI/IIa相の臨床研究を行った。27人のIII/IV期黒色腫患者を3群に分け、19週間の期間中に該患者に3つの製剤(低、中および高用量)のうちの1つを5回投与した。9人の患者に低用量を投与し、9人の患者に中用量を投与し、そして9人の患者に高用量を投与した。該製剤の成分は、以下のとおり、組換えヒトhsp70と複合体を形成した、腫瘍抗原ドメイン(エピトープ)とhsp70結合性ドメインとをそれぞれが含有する前記の2つのハイブリッド抗原を含む。
【0103】
ハイブリッド抗原「I」
YMDGTMSQV-GSG-HWDFAWPW(黒色腫腫瘍関連抗原チロシナーゼのアミノ酸368-378(YMDGTMSQV)、GSGリンカー、Hsp70結合性ドメインHWDFAWPW)。
【0104】
ハイブリッド抗原「II」
IMDQVPFSV-GSG-HWDFAWPW(黒色腫腫瘍関連抗原gp100のアミノ酸209-217(IMDQVPFSV)、GSGリンカー、Hsp70結合性ドメインHWDFAWPW)。
【0105】
低、中および高用量群において、前記ハイブリッド抗原の両方のそれぞれ1、10または100μgを200μgを組換えヒトhsp70と共に製剤化し、第0、1、2、6および18週に患者に投与した。免疫前ならびに第8、19および30週に、免疫学的アッセイのために採血した。15人の患者(各用量群で5人の患者)のサンプルがT細胞免疫に関して評価可能であった。陽性応答は、四量体染色により測定される、ペプチド特異的CD8+ T細胞における2倍以上の増加として定義された。
【0106】
総合すると、該患者の74%(27人中20人)において、20ヶ月の中間追跡時に、疾患は進行していなかった。評価可能な血液サンプルを有するそれらの15人の患者のうち、60%(15人中9人)がペプチド特異的CD8+ T細胞における増加を示し、高用量群においては、より多数の陽性T細胞応答者が認められた。これらの患者のうちの1人(1/9)が疾患の進行を示した。これとは対照的に、陽性T細胞応答を示さなかった6人の患者のうちの3人において疾患が進行した。
【実施例6】
【0107】
図3は、一定量のHSP70とHSP70に対する既知アフィニティの標識レポーターペプチドとを含有する結合反応内へ滴定した種々の濃度のSIINFEKL(Ova)、SIINFEKLGSGHWDFAWPWまたはSIINFEKLGSGNLLRLTGWハイブリッド抗原を示す。該レポーターの結合に対してこれらのペプチドが競合する能力を、ヒルプロットを用いて分析し、該プロットがy軸と交差する点としてそれぞれのIC50を求めた。ついで各ペプチドのKdを、その実験的に求めたIC50から計算した。SIINFEKLGSGHWDFAWPWに比べてSIINFEKLGSGNLLRLTGWのアフィニティにおける15倍の増加が認められた。
【実施例7】
【0108】
チオグリコール酸誘導マウスからの付着性腹腔浸出細胞にペプチドを単独で又はHSP70との複合体として加えた。ついでこれらの細胞をB3Z T細胞ハイブリドーマ(これは、H-2Kbの環境中でのSIINFEKLの認識に際してIL2を産生する)と共に共存培養した。無血清培地内での18時間のインキュベーションの後、上清を回収し、ELISAにより試験した。データを平均+/-S.D.として図4aおよび4bに示す。図4aは上清IL2量を示し、図4bは、ハイブリッド抗原単独と比較した場合のIL2の誘導倍率を示す。
【実施例8】
【0109】
HSPと複合体を形成している2mgのハイブリッド抗原または適当な対照で、C57BL/6マウスを尾の基部において皮下免疫した。7日後、マウスを安楽死させ、CD8+ T細胞を脾臓から富化させ、ex vivo ELISPOTに投入してIFNγの産生を測定した。実験当たりの観察当たり少なくとも3匹のマウスを含有する4以上の実験の平均+/-SEとして、データを図5に示す。
【実施例9】
【0110】
前記複合体で、マウスを尾の基部において皮下免疫した(NLLRLTGWの単体をSIINFEKLGSGHWDFAWPW用量の5倍モル過剰で加えた)。7日後、脾臓を回収し、SIINFEKLペプチドでin vitroで刺激した。5日後、51Cr遊離アッセイにおいてペプチド特異的エフェクター応答を測定し、結果を図6に示す。棒線内の値は、運搬されたエピトープの量を表す。100:1 E:T比が示されている。
【実施例10】
【0111】
HSP70を伴う若しくは伴わない示されている用量のハイブリッド抗原またはHSP70の単体で、マウスを尾の基部において皮下免疫した。7日後、脾臓を回収し、CD8+ T細胞を富化させ、それをex vivo IFNγELISPOTアッセイに投入した。群当たり少なくとも3匹のマウスでの4以上の実験の平均+/-標準誤差として、データを図7に示す。
【0112】
前記実施例は、より高いアフィニティのHSP70結合性配列(これらの非限定的な実施例においては、NLLRLTGW)が、この配列と公知クラスI MHC抗原エピトープSIINFEKLとを含有するハイブリッド抗原の解離定数を減少させうることを示している。該熱ショックタンパク質結合性ドメイン-エピトープハイブリッド抗原の、より高いアフィニティは、MHCクラスI分子による提示およびプロセシングを該免疫原性エピトープが受けうることに悪影響を及ぼさない。熱ショックタンパク質結合性ドメイン-エピトープハイブリッド抗原のHSP70結合アフィニティと、惹起されるCD8+ T細胞免疫応答との間には、正の相関性が認められる。したがって、より高いアフィニティの熱ショックタンパク質結合性ドメイン(例えば、NLLRLTGWが挙げられるが、これに限定されるものではない)と共に、より少量の定められたエピトープを使用して、in vivoでの免疫を成功させることが可能である。
【実施例11】
【0113】
N末端におけるヒト黒色腫癌エピトープ、Gly-Ser-Glyリンカーおよび熱ショックタンパク質結合性ドメインAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trpを含む追加的なハイブリッド抗原を固相ペプチド合成により製造し、前記のとおりにhsp70に対するそれらのアフィニティを測定し、黒色腫エピトープ単独の場合と比較した。以下の表は、種々の黒色腫エピトープ(タンパク質の略称、およびそれに続いて、該エピトープ中のアミノ酸、およびそれに続いて、該天然配列に対するいずれかの変化(括弧内に示されている))、および、エピトープが単独で又は前記のとおりハイブリッド中に存在する場合のhsp70に対するそれらのアフィニティ(μM単位で表されている)を示す。
【表4】

【実施例12】
【0114】
前実施例における黒色腫抗原と同様にして、種々のHLA A2 HIVエピトープを使用してハイブリッド抗原を合成した。該エピトープが単独で又はハイブリッド抗原中に存在する場合のhsp70に対する該エピトープのアフィニティを以下の表に示す。
【表5】

【実施例13】
【0115】
マウスにおける免疫学的研究のために、オボアルブミンからのマウスMHC H2-K(b)エピトープSIINFEKL(アミノ酸257-264)および水疱性口炎ウイルス(VSV)の核タンパク質からのH2-K(b)ペプチドRGYVYQGL(アミノ酸52-59)を使用してハイブリッド抗原を製造した。該エピトープが単独で又はハイブリッド抗原中に存在する場合のそれらの配列およびhsp70に対するアフィニティを、以下の表に示す。
【表6】

【実施例14】
【0116】
hsp70の単体、SIINFEKLと複合体を形成したhsp70、およびHSP70を伴う又は伴わないハイブリッドSIINFEKLペプチドで、マウスを尾の基部において皮下免疫した。hsp70単体の場合を除いて各免疫化が同一量のSIINFEKLを含むよう、用量を調節した。7日後、脾臓を回収し、CD8+ T細胞を富化させ、それをex vivo IFNγELISPOTアッセイに投入した。SIINFEKL(「SIINFEKL」)でのパルス後の応答を以下の表に示す。これは、群当たり少なくとも3匹のマウスでの4以上の実験の、4×105 CD8 T細胞当たりの用量およびスポット数(平均±標準誤差)を含む。対照は、媒体のみ(「媒体対照」)、未パルス化T細胞(「未パルス化対照」)、VSV由来の非免疫化ペプチドRGYVYQGLでパルスされたT細胞(「VSV対照」)、および陽性対照としてのコンカナバリンAへの暴露(「Con A陽性対照」)を含むものであった。
【0117】
同じ実験において、SIINFEKLパルス化標的細胞を使用して、前記の51Cr遊離アッセイを行った。200:1のエフェクター:標的細胞比において得られた殺細胞率(%)の結果を、以下の表の一番右の欄に示す。
【表7】

【実施例15】
【0118】
hsp70を伴わないハイブリッド抗原を同様に使用して、前記と同様の実験を行った。
【表8】

【実施例16】
【0119】
前記と同様にして、もう1つの実験を行った。
【表9】

【0120】
本発明の範囲は、本明細書に記載されている特定の実施形態により限定されるものではない。実際、前記の説明および添付図面から、本明細書に記載されているものに加えて本発明の種々の修飾が当業者に明らかとなるであろう。そのような修飾も添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。
【0121】
本明細書中には種々の刊行物が引用されているが、それらの内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、hsp70との複合体としての本発明のいくつかのハイブリッド抗原でのin vivo免疫応答の誘導を示す。
【図2】図2は、hsp70との複合体としての本発明の種々のハイブリッド抗原を使用した場合のin vitro免疫応答の誘導を示す。
【図3】図3は、hsp70に対する種々のペプチドのアフィニティを決定するためのヒルプロットを示す。
【図4】図4aおよび4bは、本発明の種々のハイブリッド抗原を単独で又はhsp70との複合体として使用するin vitroマクロファージT細胞活性化アッセイの結果を示す。
【図5】図5は、本発明のハイブリッド抗原の単体またはhsp70との複合体に対するin vivo応答を示す。
【図6】図6は、熱ショックタンパク質結合性ドメインペプチドのみの添加による、1つのハイブリッド抗原-hsp70複合体に対するin vivo応答の遮断を示す。
【図7】図7は、hsp70との複合体としての、より少量の、より高いアフィニティの熱ショックタンパク質結合性ドメイン-エピトープが、in vivoで免疫応答を惹起しうることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つと、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメインとを含んでなり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)またはArg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)を含むことを特徴とするハイブリッド抗原。
【請求項2】
ペプチドリンカーが該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てている、請求項1記載のハイブリッド抗原。
【請求項3】
該抗原性ドメインの少なくとも1つがTヘルパーエピトープである、請求項1記載のハイブリッド抗原。
【請求項4】
請求項1記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物。
【請求項5】
請求項1記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項6】
(a)請求項1記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項7】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原であって、該少なくとも1つの抗原性ドメインが感染症または癌に由来するハイブリッド抗原を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項9】
(a)少なくとも1つの抗原性ドメインが感染症または癌に由来する、請求項1記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項10】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つ、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)またはArg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)を含むことを特徴とするハイブリッド抗原。
【請求項12】
該抗原性ドメインの少なくとも1つがTヘルパーエピトープである、請求項11記載のハイブリッド抗原。
【請求項13】
請求項11記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物。
【請求項14】
請求項11記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項15】
(a)請求項11記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項16】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項11記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原であって、少なくとも1つの抗原性ドメインが感染症または癌に由来するハイブリッド抗原を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項18】
(a)抗原性ドメインが感染症または癌に由来する、請求項1記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項19】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号350)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号351)またはArg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号352)であるペプチド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つと、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメインとを含んでなり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号417)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号418)またはArg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号419)を含むことを特徴とするハイブリッド抗原。
【請求項2】
ペプチドリンカーが該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てている、請求項1記載のハイブリッド抗原。
【請求項3】
該抗原性ドメインの少なくとも1つがTヘルパーエピトープである、請求項1記載のハイブリッド抗原。
【請求項4】
請求項1記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物。
【請求項5】
請求項1記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項6】
(a)請求項1記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項7】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原であって、該少なくとも1つの抗原性ドメインが感染症または癌に由来するハイブリッド抗原を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項9】
(a)少なくとも1つの抗原性ドメインが感染症または癌に由来する、請求項1記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項10】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
感染性因子または腫瘍抗原の抗原性ドメインの少なくとも1つ、熱ショックタンパク質に非共有結合する結合性ドメイン、および該抗原性ドメインと該結合性ドメインとを隔てるペプチドリンカーより実質的になり、該結合性ドメインがAsn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号417)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号418)またはArg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号419)を含むことを特徴とするハイブリッド抗原。
【請求項12】
該抗原性ドメインの少なくとも1つがTヘルパーエピトープである、請求項11記載のハイブリッド抗原。
【請求項13】
請求項11記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための組成物。
【請求項14】
請求項11記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原を対象に投与することを含んでなる、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項15】
(a)請求項11記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、感染性因子または腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導するための方法。
【請求項16】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項11記載の少なくとも1つのハイブリッド抗原であって、少なくとも1つの抗原性ドメインが感染症または癌に由来するハイブリッド抗原を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項18】
(a)抗原性ドメインが感染症または癌に由来する、請求項1記載のハイブリッド抗原、および
(b)熱ショックタンパク質
の複合体であって、該ハイブリッド抗原と該熱ショックタンパク質とが非共有結合している複合体を対象に投与することを含む、該感染症または癌の治療方法。
【請求項19】
熱ショックタンパク質がhsp70である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
Asn Leu Leu Arg Leu Thr Gly Trp(配列番号417)、Phe Tyr Gln Leu Ala Leu Tyr Trp(配列番号418)またはArg Lys Leu Phe Phe Asn Leu Arg Trp(配列番号419)であるペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−523185(P2006−523185A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503571(P2006−503571)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/004340
【国際公開番号】WO2004/071457
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(503125237)アンティジェニクス インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】