説明

改良された特性を有するセメント結合物品の押出しに好適なセルロースエーテル

【課題】クラック形成に関して改良された特性を有する押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物、およびその組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】押出可能な水硬性もしくは非水硬性バインダー及びセルロースエーテルを含み、前記セルロースエーテルが1.5を超えるメチル基置換度DS(Me)および0.02〜0.18の範囲のヒドロキシエチル基置換度MS(HE)を有するヒドロキシエチルメチルセルロースである、セルロース結合性組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラック形成に関して改良された特性を有する押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物、並びにその組成物を製造する方法に関する。本発明は、さらに、押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物のクラックの形成を低減もしくは回避する方法、並びにクラックをほとんどもしくは全く有さない押出物品を製造する方法に関する。さらに、本発明はクラック形成に関して改良された特性を有する押出し可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供するセルロースエーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
セメント異形材のような物品を製造するために、水硬性もしくは非水硬性結合性組成物、例えば、無機粒子を水および補助成分と混合することにより得られるセメントベースのペースト状材料を押出す際には、クラック形成の問題が生じ、物品が滑らかな表面を有することに悩むこととなる場合がある。
【0003】
特開平1−294555号はセメントの押出成形物品のための混和剤に関し、主たる構成成分がセメント材料である水性の混練材料を押出成形する際に、押出不能をもたらす脱水の現象および問題に取り組む。この現象の解決策として、100μm以下の粒子サイズを有し、少なくとも50重量%が50μm以下である様々なアルキルセルロースエーテルおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロースエーテルの1種以上を含むセメント混和剤が提供される。さらに、これらセルロースエーテルは200〜1500の範囲の重合度を有する。
【0004】
今日、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなセルロースエーテルおよび/または非常に小さな粒子サイズを有するセルロースエーテルが、押出可能な組成物中の補助化合物として使用されている。これらセルロースエーテルはそれ自体、または生産後のコストのかかる粉砕手順のせいで比較的高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−294555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明によって取り組まれる課題は、非常に微細な粉砕セルロースエーテルおよび/またはHPMCよりも低価格の手段を用いて、クラック形成に関して改良された特性を有する、例えば、セメント、石膏、石灰もしくは消石灰をベースにした押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供することであった。本発明によって取り組まれるさらなる課題は押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物のクラックの形成を低減もしくは回避する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に添加されるならば、特定の置換度DS(Me)およびMS(HE)を有する特定の種類のセルロースエーテル、すなわち、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)が、対応する押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物のクラックの形成を効果的に低減させるかまたはさらには回避させることを見いだした。
【0008】
本発明の第1の形態においては、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物中の化合物としてセルロースエーテルが提供され、このセルロースエーテルは1.5を超えるメチル基置換度DS(Me)および0.02〜0.18の範囲のヒドロキシエチル基置換度MS(HE)を有するヒドロキシエチルメチルセルロースである。
【0009】
本発明の第2の形態においては、本発明に従うセルロースエーテルを含む押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物が提供される。
【0010】
本発明の第3の形態においては、a)ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程、およびb)本発明に従うセルロースエーテルを前記ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を得る工程を含む、クラック形成に関して改良された特性を有する押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を製造する方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の形態においては、a)ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程、b)本発明に従うセルロースエーテルを前記ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を得る工程、およびc)前記押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を押出機を通して押出す工程を含む、押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物のクラックの形成を低減させもしくは回避させる方法が提供される。
【0012】
本発明の第5の形態においては、a)ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程、b)本発明に従うセルロースエーテルを前記ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を得る工程、c)前記押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を押出機を通して押出す工程、およびd)工程c)を終えることにより物品を得る工程を含む、水硬性もしくは非水硬性結合性組成物をベースにした、クラックをほとんどもしくは全く有しない押出物品を製造する方法が提供される。
【0013】
本発明の第6の形態においては、本発明に従うセルロースエーテルを含み、特に、本発明の方法に従って製造される場合の、押出物品が提供される。
【0014】
本発明の第7の形態においては、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の化合物としての;または、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の製造における;または、水硬性もしくは非水硬性結合性組成物をベースにした押出物品の製造における、本発明に従うセルロースエーテルの使用が提供される。
【発明の効果】
【0015】
1.5を超えるメチル基置換度DSおよび0.02〜0.18の範囲のヒドロキシエチル基置換度MSを有する特定の種類のセルロースエーテル、すなわちヒドロキシエチルメチルセルロースが、押出前の水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合される場合に、押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物のクラックの存在を低減させるかまたは回避さえさせることは驚くべきことである。この有利な効果は、前記結合性組成物に添加されるセルロースエーテルが比較的大きな粒子サイズを有する場合でも達成されうることは特に驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、本発明は、水硬性もしくは非水硬性結合性組成物中の化合物としての、特定のヒドロキシエチルメチルセルロースを提供する。このように修飾された結合性組成物は、その押出後の組成物のクラックの形成の低減もしくはクラックの形成がないことを示す。
【0017】
本発明に従うセルロースエーテルは、1.5を超えるメチル基置換度DS(Me)および0.02〜0.18の範囲のヒドロキシエチル基置換度MS(HE)を有するヒドロキシエチルメチルセルロースである。
【0018】
ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と比較して安価である。よって、本発明の利点は、上記解決されるべきクラック形成の課題が、比較的安価な、特定の範囲のDSおよびMSを有するHEMCを水硬性もしくは非水硬性結合性組成物における添加剤として使用することによって解決されうることである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態においては、ヒドロキシエチルメチルセルロースは1.5〜2.9の範囲、より好ましくは1.6〜2.8の範囲、最も好ましくは1.7〜2.7の範囲のメチル基置換度DS(Me)、並びに0.03〜0.16の範囲、より好ましくは0.04〜0.14の範囲、最も好ましくは0.05〜0.12の範囲のヒドロキシエチル基置換度MS(HE)を有する。
【0020】
水に溶解される場合には、置換度DSおよびMSに加えて、セルロースエーテルの重合度および/またはセルロースエーテルの粘度は組成物のクラック形成特性にポジティブに影響しうる。さらに、この結合性組成物の押出性はセルロースエーテルの重合度および/または粘度を調節することにより影響されうる。
【0021】
本発明に従うヒドロキシエチルメチルセルロースは、標準物質としてデキストランを使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で決定して、典型的には、1,300〜3,000の範囲の、好ましくは1,400〜2,800の範囲の、より好ましくは1,500〜2,500の範囲の、最も好ましくは1,600〜2,400の範囲の平均重合度を有する。本明細書において使用される場合、「平均重合度」を決定することは、単純にGPC分析から重量平均分子量を得て、それを置換無水グルコース単位(AGU)の質量で割って重合度を得ることであり、ただしこの置換AGUの質量は200g/molであると仮定される。
【0022】
本発明において典型的に使用されるヒドロキシエチルメチルセルロースは、Haake VT550レオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック、ドイツ国カールスルーエ)を用いて、20℃および2.55s−1の剪断速度で、2%水溶液中で決定して、20,000〜200,000mPasの範囲の、好ましくは30,000〜170,000mPasの範囲の、より好ましくは35,000〜160,000mPasの範囲の、最も好ましくは37,000〜150,000mPasの範囲の粘度を有する。
【0023】
上述のように、このセルロースエーテルは少なくとも粉砕コストを節約するために、非常に小さな粒子サイズを有している必要がないことが利点である。本発明に従うセルロースエーテルは、より大きな粒子サイズを使用する可能性を提案する。本発明によって、このセルロースエーテルの少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも20体積%は100μmを超える粒子サイズを有することができることが見いだされた。場合によっては、このセルロースエーテルの少なくとも20体積%、好ましくは少なくとも30体積%が63μmを超える粒子サイズを有することもできる。セルロースエーテルの粒子サイズおよびその分布は、ここではレーザー回折(「HELOS(H1344)」レーザー回折装置(レンズ:No.5;解像度4.5μm〜875μm))によって、分散ユニット「RODOS」(シンパテックGmbH)を用いて決定される。
【0024】
上述のセルロースエーテルを含む押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供することは本発明のさらなる形態である。
【0025】
本発明の「水硬性もしくは非水硬性結合性組成物」はベースとして、結合性材料としてのセメント、石膏、石灰など、およびさらなる無機材料としてのケイ砂もしくは他のケイ質材料のような骨材を含む。
【0026】
本明細書においては、バインダーは、セメント、石膏、消石灰、生石灰、クレイ、ケイ酸塩、フライアッシュおよびセラミックバインダーのような全ての無機バインダーを意味すると解釈される。好ましいのは、あらゆる種類のセメントもしくは石膏、およびセメントもしくは石膏をベースにした塊のような水硬性バインダーである。これら水硬性バインダーは結晶格子への水の組み込みの結果として硬化する。消石灰(Ca(OH))もしくは石灰(CaO)のような非水硬性バインダーも好ましい。
【0027】
本明細書においては、骨材は、建築材料において通常使用されるようなあらゆる種類の砂および石の粉を意味するものと解釈される。特に、砂利、粉砕砂および丸粒砂、石のチップ、灰、並びに石英、石灰(炭酸カルシウム)、ドロマイト、カオリン、大理石、ガラス、様々な種類の建築がれき、リサイクル材料、フライアッシュ、クレイ、ベントナイトおよび他のケイ酸塩をベースにした粉であり得る。原則として、ほとんどの様々な粒子サイズの骨材が押出されうる。異形材の要件に従った骨材を構成する場合には、特定の特性を最適に設定するために、特定の粒子サイズの画分を互いに組み合わせることも可能である。
【0028】
軽量骨材も骨材として理解される。それは典型的には特に低い密度を有する。これらは鉱物起源のもの、例えば、パーライト(発泡クレイ)、発泡ガラス、発泡ケイ酸カルシウム、または石英もしくは石灰をベースにした高多孔性天然砂であってよいが、それらは有機物起源のもの、例えば、発泡ポリスチレン、ポリウレタン発泡体、コルクなどであってもよい。
【0029】
本目的のために、水硬性もしくは非水硬性結合性組成物中に繊維が存在していてもよい。繊維はあらゆる種類の天然もしくは合成繊維、例えば、セルロース、竹、ココナツ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、炭素、ガラス、セラミックをベースにした繊維および他の鉱物繊維であることができる。その繊維長さおよび厚さは広範囲で変えられうる。
【0030】
水硬性もしくは非水硬性結合性組成物はさらなる添加剤、例えば、疎水化剤、再分散粉体、架橋アクリラートおよび多糖をベースにした超吸収体、滑剤(例えば、ポリエチレンオキシドホモポリマー、コポリマーおよびターポリマー)、界面活性剤、アクセラレータ、遅延剤、脂肪酸およびそのエステル、アクリル酸およびメタクリル酸の酸、塩、アミドおよびエステルをベースにしたポリマー、多糖、例えば、天然もしくは誘導体化デンプン、キサンタン、グルカン、ホエラン(welans)、グアーおよび関連する多糖、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの誘導体、並びにウレタンベースのポリマーを含むこともできる。
【0031】
典型的な使用においては、本発明のセルロースエーテル組成物は、20〜100部のバインダー、0〜70部の骨材、0〜30部の軽量骨材、0〜20部の繊維からなる無機成分と、場合によって無機成分の混合物を基準にして0.1〜3重量%の量の他の添加剤との混合物に添加される。
【0032】
水硬性もしくは非水硬性バインダーで硬化性の典型的な配合物、すなわち典型的な「押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物」は、バインダー、骨材および本発明に従うセルロースエーテル、および水を含む。場合によっては、繊維および本発明に従う以外のセルロースエーテルなどのさらなる添加剤が存在していてよい。典型的には、押出可能な組成物を得るために、全ての固体成分は均質に混合され、次いで水と混合され、さらに充分に混練される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、このセルロースエーテルは組成物中に、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の全部を基準にして、0.1〜3.0重量%の量で、好ましくは0.3〜2.5重量%の量で、より好ましくは0.5〜2.2重量%の量で、最も好ましくは0.7〜2.0重量%の量で存在する。セルロースエーテルの量が決定される場合においては、「全部」とは、組成物に混合されおよび好ましくは混練されている水が含まれることを意味する。
【0034】
本発明のさらなる対象はクラック形成に関して改良された特性を有する押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を製造する方法である。この方法は以下の工程を含む:ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程;このベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物は典型的には結合性材料として少なくともセメント、石膏、石灰など、および骨材を含む。押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物は、次いで、上述した本発明に従うセルロースエーテルを前記ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で得られる。混合されるセルロースエーテルの量は、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の全部を基準にして、好ましくは0.1〜3.0重量%、好ましくは0.3〜2.5重量%の量、より好ましくは0.5〜2.2重量%の量、最も好ましくは0.7〜2.0重量%の量である。
【0035】
本発明の方法は全ての原料を所望の順序で一緒に混合することにより行われる。一般的には、全ての乾燥成分は最初にあらかじめ乾燥混合され、次いで特定の量の水と混合され、そして再び混合される。しかし、乾燥材料をセルロースエーテルの水溶液と混合する(しかしこれは一般的にゲルをもたらし、このゲルは組み込むのが困難である)か、または全ての成分および水を同時に混合することも可能である。10%未満の水分含量を有する砂/骨材の一部分もしくは全部を混合することも同様に可能である。全ての成分が一緒に混合された後で、次いで、それらは一軸もしくは二軸押出機内で圧縮され、そしてダイを通して外に押出される。真空チャンバーを有する押出機および真空チャンバーを有しない押出機、並びに冷却系を有する押出機および冷却系を有しない押出機を使用することが可能である。市販の従来のニーダーにおける混練工程が混合と押出の間に提供されてもよい。
【0036】
本発明のさらなる対象は押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物のクラックの形成を低減させるもしくは回避させる方法である。この方法は以下の工程を含む:上述のベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程。上述の本発明に従うセルロースエーテルをベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を得る工程、次いで前記押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を押出機を通して押出す工程。混合されるセルロースエーテルの量は押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の全部を基準にして0.1〜3.0重量%である。
【0037】
任意工程として、押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物が、脱ガスのための真空チャンバーを通され、次いでその脱ガスされた押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を第2の押出し機を通して押出すことができる。
【0038】
上述のことに従うように、本発明のさらなる対象は水硬性もしくは非水硬性結合性組成物をベースにしたクラックをほとんどもしくは全く有さない押出物品を製造する方法である。この方法は以下の工程を含む:上述のベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程。上述の本発明に従うセルロースエーテルを前記ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を得る工程。混合されるセルロースエーテルの量は押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の全部を基準にして0.1〜3.0重量%である。次いで、前記押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を押出機を通して押出し、それにより前記物品を得る工程。
【0039】
さらに、前記物品の表面はセルロースエーテルおよびバインダーの混合物を、混練押出機を通して、または別の押出機内の混練領域を通して押出すことによって、可塑化することにより仕上げられうる。
【0040】
上述のように、押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を脱ガスのための真空チャンバーに通し、そして脱ガスされた押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を第2の押出し機を通して押出す工程を、前記物品を得る工程の前に捕うことは任意工程である。
【0041】
本発明のさらなる対象は、上記方法に従って製造された押出物品、または上述の本発明に従うセルロースエーテルを含む押出物品である。
【0042】
本発明の別の対象は、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の化合物としての;または、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の製造における;または、水硬性もしくは非水硬性結合性組成物をベースにした押出物品の製造における;本発明に従うセルロースエーテルの使用である。
【0043】
本明細書における以下の実施例は、本発明を限定することなく、本発明の使用を説明することが意図される。
【実施例】
【0044】
押出されたセメントベースの異形材の製造手順
50重量部のポルトランドセメントCEMI 32.5R、50重量部の石英粉、4.5重量部の繊維、および0.9重量部のセルロースエーテル(表1に特定される)が流動床混合装置(ドイツ国、レーディゲにより製造)において、均質な混合物が形成されるまで、まず乾燥混合された。20℃で26.5重量部の水が次いで添加され、その塊はさらに混合されそしてニーダー(AMK、ドイツ国、アーケン)で数分間混練された。次いで、この塊は直ちに、20℃に維持された水冷式一軸押出機(Handleからの、Handle 8D、スクリュー直径8cm、ドイツ国、ミューラッカー)のフィードトラフに導入された。この塊は穴あきプレートを通して押出され、そして脱ガスのために真空チャンバー(約300mbar)を通過させられた。次いで、ダイ(平坦異形、4cm×1cm)を通して押出され、コンベアベルト上に排出された。水の量はそれぞれのバッチについて一定に保持された。
【0045】
破断点伸びの測定
押出されたペーストの破断点伸びは、クラック形成と表面特性を相関させる良好な測定方法である。破断点伸びは、フルプロファイルの3点曲げ強度測定を用いて測定される。
【0046】
この測定のために、テクスチャアナライザ(Texture Analyzer)XTプラス(製造者:テクスチャテクノロジーズ、米国、ニューヨーク州、スカースデール)が使用された。試験の詳細:サンプルサイズ:ダイ40mm×40mm、断面約17cm。圧縮ダイ旋回可能(pivotable)、ベアリングロール前方回転(forward−turned)旋回可能、穿通速度10mm/分、長さ/高さ=2.5、試験プレ負荷5g(0.04903N、予想破断力の約0.2%)、力センサ500N、ベアリングロール間の距離:100mm。
【0047】
様々な事項
全てのセルロースエーテルは2%水溶液中で37,400〜53,400mPasの粘度範囲であり(Haake Rotoviscoレオメータ;温度=20℃、剪断速度=2.55s−1)、これは1600〜1800の重合度と相関する。
【0048】
この塊の剛性は新たに緊張させられたサンプルについて試験され、ショア硬度で表された。この方法で押出されたすべての塊は慣習的なコンシステンシーに設定された(クレイ(CHT/1、製造者、セラミックインスツルメンツ、イタリア国、サッソーロ)についてジュロメーターを用いて測定されたショアA硬度は一定に保たれた)。
【0049】
押出された異形材の得られた温度は全て室温(20℃)であった。
【0050】
結果が表1にまとめられる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出可能な水硬性もしくは非水硬性バインダーおよびセルロースエーテルを含み、前記セルロースエーテルが1.5を超えるメチル基置換度DS(Me)および0.02〜0.18の範囲のヒドロキシエチル基置換度MS(HE)を有するヒドロキシエチルメチルセルロースである、セルロースエーテル結合性組成物。
【請求項2】
前記セルロースエーテルが1,600〜3,000の範囲の平均重合度を有する請求項1に記載のセルロースエーテル。
【請求項3】
Haake VT550レオメーターを用いて、20℃で、2.55s−1の剪断速度で、2%水溶液中で決定して、前記セルロースエーテルが20,000〜200,000mPasの範囲の粘度を有する請求項1に記載のセルロースエーテル。
【請求項4】
前記セルロースエーテルの少なくとも10体積%が100μmを超える粒子サイズを有する請求項1に記載のセルロースエーテル。
【請求項5】
前記組成物がセメントもしくは石膏を含む水硬性結合性組成物であるか、または石灰もしくは消石灰を含む非水硬性結合性組成物である、請求項1に記載の押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物。
【請求項6】
前記セルロースエーテルが、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の全部を基準にして0.1〜3.0重量%の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
a)ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程、および
b)押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の全部を基準にして0.1〜3.0重量%の量の請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエーテルを、前記ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を得る工程を含む、
クラック形成に関して改良された特性を有する押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を製造する方法。
【請求項8】
a)ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を提供する工程、
b)押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物の全部を基準にして0.1〜3.0重量%の量の請求項1に記載のセルロースエーテルを、前記ベースの水硬性もしくは非水硬性結合性組成物に混合した後で、押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を得る工程、および
c)前記押出可能な水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を押出機を通して押出す工程
を含む、押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物のクラックの形成を低減もしくは回避させる方法。
【請求項9】
混練押出機を通して、または別の押出機内の混練領域を通して押出すことによって、水硬性もしくは非水硬性結合性組成物をベースにした、クラックをほとんどもしくは全く有しない押出物品を製造することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を脱ガスのための真空チャンバーに通し、そして脱ガスされた押出された水硬性もしくは非水硬性結合性組成物を第2の押出機を通して押出すことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
押出可能な水硬性もしくは非水硬性バインダーの製造に使用するためのセルロースエーテルであって、
1.5を超えるメチル基置換度DS(Me)および0.02〜0.18の範囲のヒドロキシエチル基置換度MS(HE)、並びに1,600〜3,000の範囲の平均重合度を有するヒドロキシエチルメチルセルロースであるセルロースエーテル。

【公開番号】特開2012−148956(P2012−148956A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−247058(P2011−247058)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】