説明

改良された非水溶媒リチウム二次電池

改良された非水溶媒リチウム二次電池
【目的】 従来のリチウム二次電池に比べ電池容量が大きい非水溶媒リチウム二次電池を提供する。
【構成】 負極として、硫黄原子を0.1〜6%含有する炭素材料を用いた非水溶媒リチウム二次電池であり、この硫黄原子は炭素−硫黄原子結合あるいは硫黄−硫黄原子結合として存在する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大容量で充放電サイクル特性に優れた、改良された非水溶媒リチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来技術】負極材料として金属リチウムを用いたリチウム一次電池は、高エネルギ−密度、軽量小型および長期保存性などの利点を有しているため、既に、実用化され汎用されている。
【0003】しかし、このリチウム一次電池の負極材料として有効な金属リチウムを、二次電池の負極材料として用いると、一次電池では認められない種々の新しい問題点が生じるため、実質的にリチウム二次電池の負極として使用することが出来ない。何故ならば、金属リチウムを負極としたリチウム二次電池は、充放電サイクル寿命が短く、しかも、充放電における充放電効率が低いといった重大な欠陥、欠点を有しているからである。この欠陥、欠点は、充放電により負極にデンドライト状[樹枝状]の金属リチウムが析出するという電気化学的な化学反応によって生じる負極の劣化に起因するものである。従って、金属リチウムを負極とするリチウム二次電池において、負極の劣化を回避することはできない。
【0004】上述したように、二次電池の負極として金属リチウムを使用すると、負極の劣化という欠陥が生じるが、この欠陥を解決する方法として、リチウム−アルミニウム合金を負極材料として用いる方法が提案され、種々の小型電子機器のメモリ−バックアップ用などにひろく用いられている。しかし、リチウム金属に由来する危険性を内蔵しており、高い容量の要求される携帯機器の電源など、ニッケルカドミニウム電池が使用されている分野への適用には問題があった。
【0005】そこで、リチウム金属ではなく、リチウムイオンを吸蔵する炭素材料を負極とする種々の二次電池が提案された。例えば、グラファイトを負極材料とする方法が、米国特許4,304,825 、特開昭57-208079 、米国特許4,423,125 あるいは特開昭58-102464 に記載されている。しかしながら、グラファイトは結晶子が発達しているため、リチウムイオンのインターカレーション・デインターカレーションに際して結晶の破壊を生じ、このため可逆性に乏しく、さらには、高い反応性のため電解液の分解を生じせしめ、自己放電が大きいなどの欠点があり、実用性に欠ける物であった。一方、高表面積炭素材料である活性炭を負極材料として用いることが、米国特許4,497,883 等に記載されている。これは、活性炭の高表面積に基づく電気二重層形成を利用するものであるが、充電効率が低く、また、これを負極とした二次電池の電池電圧が低いという欠点を有している。
【0006】この様な欠点を解決するため、結晶子の発達したグラファイトや高表面積炭素材料である活性炭とは異なった炭素材料を負極材料として利用するという提案もされている。具体的には、焼成温度によって規定することが提案されており、1500℃以下の焼成温度で得られた有機物焼成体を負極材料として用いる方法が特開昭58-93176および特開昭60-235372 に記載されている。また、特開昭60-54181には2000℃前後の焼成によって得られた炭素繊維を負極として用いることが記載されており、さらに特開昭60-221973 には1000℃〜2500℃のグラファイト構造含有炭素材料を負極材料として用いることが記載されている。
【0007】一方、物性値によって炭素材料を規定することも提案されており、例えば、特開昭62-122066 にはX線回折における格子面間隔(d002)が3.40Å以上で、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc002) が220 Å以下の擬黒鉛構造を有する炭素材料が記載されており、また特開昭62-90863には、比表面積A(m2/g)が0.1 <A<100 の範囲で、Lc002 と真密度ρ(g/cm3) の値が1.7 <ρ<2.18かつ10<Lc002 <120 ρ-189をみたす炭素材料を負極材料として使用する方法が記載されている。しかしながら、これらに記載の炭素材料は、上述したようなグラファイトや活性炭に比べれば性能面でかなり改善されてはいるが、電池容量特に電池電圧の高いところでの電池容量が不十分なものであった。
【0008】更に、この様な炭素材料を改質する方法として、例えばリンを含有させる方法が特開平3-137010に記載されている。しかしこの方法は容量の増加には寄与するものの、やはり電池電圧の低いところでの容量増であって、充放電効率が低いなど必ずしも満足し得るものではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来の炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池は、その特徴である大容量を実現するには充分なものではなかった。本発明は、従来のかかる問題を解決し、大容量を実現でき、かつ充放電サイクル特性が良好で、しかも、安定かつ安全性に優れた高性能なリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】我々は研究を重ねた結果、驚くべきことにナフタレンピッチなどの縮合多環式化合物をスルホン化して得られたスルホン化化合物、または芳香族化合物のスルホン化化合物をホルムアルデヒドなどで縮合させて得た重合物を焼成することによって調製された含硫黄炭素材料が、従来の炭素材料を大幅に上回る負極材料としての性能を持ち、これにより高性能なリチウム二次電池が実現できることを見出した。
【0011】本発明のリチウム二次電池において用いられる負極材料を得るための原料有機化合物として縮合多環式化合物のスルホン化化合物を用いる方法がある。縮合多環式化合物としては石油系ピッチ、コールタールピッチ及び合成ピッチあるいは類似の重質油が用いられる。特に、軟化点にして100〜170℃のピッチが好適に使用される。スルホン化剤によるスルホン化反応は通常の有機化合物をスルホン化する方法が適用できる。例えば、硫酸あるいは硫酸と発煙硫酸とを用いてスルホン化を行うことが出来る。
【0012】また、もう1つの方法としては芳香族化合物のスルホン化化合物を1つの成分とする重合物、例えばホルムアルデヒド等を加え重合させたものを原料有機化合物とするものである。芳香族化合物としてはナフタレン、メチルナフタレン等が好適に使用される。
【0013】この様にして得られた原料有機化合物に含有されている硫黄原子の炭素原子に対する比(S/C)は0.02〜0.2であり、硫黄原子の酸素原子に対する比(S/O)は0.1〜2.0である。
【0014】該原料有機化合物を不活性ガスの雰囲気下で焼成することにより、負極材料として最適な炭素材料が得られる。従来の炭素化においては、不融化処理が必要であったが、該原料有機化合物は不融化処理することなく焼成することができる。不活性ガスとしては窒素ガスが好ましく、ガスを気流として連続的に供給し、原料有機化合物の焼成によって発生するガスを同伴して排出される。この様にして得られた炭素材料は負極材料として種々の優れた特徴を持っているが、特に容量は従来の負極材料に比べて大きく、対Li電位で 0〜3(V)の間で500(mAh/g)以上の容量が可能であり、また 0〜0.5(V)の間でも400(mAh/g)以上の容量が可能である。
【0015】また、本願発明の炭素材料は硫黄原子を相当量含有するものであって、その含量は通常0.1〜6重量%好ましくは0.3〜5重量%である。硫黄原子の含量が6.0wt%を越える炭素材料を負極とすると充放電効率が低い、電池電圧が低くなるなど好ましくない。また、硫黄原子の含量が0.1wt%未満の材料を負極とすると、電池容量が小さく高率充電特性が低下し、更にはサイクル寿命の低下をもたらし好ましくない。X線光電子分光分析(XPS分析)において、硫黄原子はS-2pに基ずく164.1 ±0.2eV と165.3 ±0.2eV の近傍に現れる2つのピ−クで示され、これはチオフェン型の硫黄−炭素原子の結合に由来するもの及び単体硫黄の硫黄−硫黄結合に由来するものである。
【0016】炭素材料の結晶化度のパラメーターである格子面間隔(d002)は 3.4〜3.6 Å、および結晶子の大きさLcは50Å以下である。真密度は 1.5〜1.8 の範囲にある。またリチウムを吸蔵させた炭素材料の7Li-NMR スペクトルを測定したところ約19〜22ppm にピークが観測された。
【0017】本発明の炭素材料にリチウムイオンを吸蔵させた場合、リチウム−グラファイトインターカレーション化合物に対応するX線回折ピ−クが認められず、米国特許4,423,125 に記載されているようなLiC6化合物は形成されていないことが確認された。またLiC6化合物の理論容量である372(mAh/g)を越える500 〜600(mAh/g)の容量をもつことからも、その機構は不明であるが、本発明の炭素材料においてもリチウムイオンの吸蔵においてグラファイトとは異なった機構が主に作用していることを示唆している。また7Li-NMR ナイトシフト値からもグラファイトに比べLiをイオンとして吸蔵しやすいことが推察される。
【0018】上記の炭素材料を負極材料とする本発明の非水溶媒二次電池を組立る場合の基本構成要素としては、本発明の炭素材料を負極材料として使用した負極、更には正極、セパレーター、非水溶媒および容器が挙げられる。
【0019】本発明の炭素材料を負極として使用する方法は、特に限定されないが、例えば、粉末状の負極材料にバインダー、及び必要な場合は溶剤も加えて混練し、シート化した後、集電体と密着あるいは直接集電体に塗布することにより製作された電極体が使用される。また、バインダーとして各種ピッチを使用し、粉末状の負極材料との混練物を焼成して得られる板上の電極体も好適に使用される。正極材料としては特に限定されないが、例えば、LiCoO2、LiNiCoO2、LiMnO2およびLiMnO2O4などのリチウム含有酸化物、TiO2、V2O5、MoO3およびMnO3などの酸化物やTiS2、FeS およびMoS3などの硫化物、ならびにNbSe3 などのセレン化合物、あるいはポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロ−ル及びポリアニリン等の共役高分子化合物、活性炭等が使用される。これらの正極材料を正極として使用する方法は、特に限定されないが、例えば、粉末状の正極材料にバインダー、導電材及び必要な場合は溶剤も加えて混練し、シート化した後、集電体と密着あるいは直接集電体に塗布することにより製作された電極体が使用される。セパレーターは特に限定されないが、合成樹脂繊維、ガラス繊維または天然繊維の織布あるいは不織布、及び合成樹脂微多孔膜等が挙げられる。
【0020】本発明の非水溶媒二次電池には有機電解液または固体電解質が使用される。有機電解液としては、リチウム塩を高誘電率の有機溶媒に溶解させた溶液が使用される。リチウム塩の種類には、特に制限はなく、例えば、LiClO4、LiPF6 およびLiSbF6などが使用できる。また、2種類以上を適宜に配合して使用することもできる。ここに使用される有機溶媒は、リチウム塩を溶解し、かつ非プロトン性で高誘電率であればよく、ニトリル、カーボネート、エーテル、ニトロ化合物、含硫黄化合物、塩素化炭化水素、ケトン及びエステル等を挙げることが出きる。更に具体的には、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ニトロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン及びγ−ブチルラクトン等の単独、あるいは2種類以上を混合して混合溶媒としたものが好適に使用される。容器には通常のステンレス鋼板、ニッケルメッキ鋼板の他、合成樹脂と電気絶縁性無機質被膜からなる多層材料も使用できる。
【0021】以下、本発明について実施例、及び、比較例を示してその効果を具体的にかつ詳細に説明するが、以下に示す例は具体的に説明するためのものであって本発明の実施態様や発明の範囲を限定するものではない。また、本実施例での負極材料の各種分析方法及び分析条件を以下に記載する。
【0022】[元素分析]炭素、水素の分析には、分析装置としてパ−キンエルマ−社製、2400CHN 型元素分析計を使用した。測定は、試料の負極材料を錫製の容器に1.5 ±0.2mg を精秤し、装置にセットした後、975 ℃の温度で5分間燃焼し、ヘリウムガスキャリヤーによりガスクロマトグラフィー(TCD)で検出し測定した。酸素の分析はレコ社製TC-436型酸素窒素同時分析装置を使用した。測定は、試料の負極材料をニッケル製の容器に10.0±0.5mg を精秤し、装置にセットした後、4800W に加熱された黒鉛るつぼ中で燃焼し、ヘリウムガスキャリヤーによる赤外線検出した。硫黄の分析は、空気中で試料の負極材料を燃焼し発生したSO2,SO3 等の酸化硫黄ガスを炭酸ナトリウムに吸収させ、水で希釈後、誘導結合高周波プラズマ発光分光分析計(ICP)により定量分析した。
【0023】[XPS分析]装置はヴィ・ジー・サイエンティフィック社製ESCALAB MK-II 型を使用した。測定は、線源としてMg-Kα線を使用し、15KV、20mAでAlスリット(2×5mm)を使用して行った。試料の前処理は、両面接着テープに試料を保持し、そのまま、あるいは場合によっては試料の表面層をアルゴンエッチングした後測定した。測定は全ピークの広域測定をした後、各ピークの狭域精密測定を行い、ピーク毎に分割を行った。なお、チャージアップ補正は、観測されるC-1sの結合エネルギーを284.4eV として、他のピークを補正した。
【0024】[X線回折]装置は理学社製RAD−III Cを使用した。X線としてCuKαを用い、高純度シリコンを基準物質とする学振法[大谷杉朗”炭素繊維”p733-742(1986)近代編集社]に基づき、格子面間隔[d002]および結晶子の厚さ[Lc002] を測定した。
【0025】[真密度測定]真密度は25℃でブロモホルム、四塩化炭素混合溶液を用いる浮沈法により測定した。
【0026】[核磁気共鳴スペクトル]装置は日本電子社製JNM-A400を用いて、測定周波数155.25MHz で測定した。基準試料として重水にLiClを1(mol/l)の濃度になるように溶解したものを使用した。試料調製は炭素材料に、対極を金属リチウムとし、プロピレンカーボネートとジメトキシエタンの等モル混合溶媒にLiClO4を溶解した物を電解液として、電流密度1.0(mA/cm2) で電気化学的にリチウムを吸蔵することで行った。溶媒で洗浄、乾燥後粉砕しφ5mmNMRサンプル管に封入した後測定した。
【0027】
【実施例】
実施例1内容積500ml の耐酸オートクレーブに、ナフタレン1 モル、フッ化水素(HF)0.5 モル、三フッ化ホウ素(BF3)0.5モルを仕込み、25kg/cm2の加圧下に200 ℃にまで昇温した後、更に2 時間、200 ℃に保持して反応させた。次いで、常法に従って、オートクレーブ内に窒素を吹込んでHFおよびBF3 を回収し、引き続いて低沸点成分を除去して軟化点115 ℃のピッチを得た。次いで、ここで得られたピッチ100 重量部に97% 濃硫酸150 重量部、30% 発煙硫酸150 重量部を加え、80℃で1時間、更に 150℃で1時間加熱し反応させた。反応生成物をろ過、水洗、乾燥してスルホン化ピッチを得た。スルホン化ピッチに含有されている硫黄原子の炭素原子に対する比( S/C)は0.052 であり、硫黄原子の酸素原子に対する比(S/O)は0.26であった。このスルホン化ピッチを電気炉に設置されたアルミナ製炉心管に入れ、窒素ガス気流中、昇温速度5 ℃/minで1000℃まで加熱し、2 時間保持した。次いで、室温まで冷却し、得られた黒色の焼成体をボールミルを用いて粉砕した。更に、窒素ガス気流中、1000℃で2 時間焼成し、粉末状の負極材料を得た。
【0028】ここで得られた負極材料の元素分析値は、炭素94.10wt%、水素0.03wt% 、硫黄2.41wt% であった。また、この負極材料のXPS分析の結果、結合エネルギ−164.1eV と165.3eV に2つのS-2pに基ずくピ−クが確認された。
【0029】[負極材料の評価]上記で得られた粉末状の負極材料85重量部と、軟化点115 ℃のピッチ粉末15重量部とをミキサーに仕込み、均一に混合した後、常法に従い、ロール法により厚さ0.3mm のシートを作製した。ここで得られたシートから、直径15mmの試験片を打抜いた。ついで、この試験片を窒素ガス気流中1000℃で2 時間焼成して得られた焼結成形体を評価用試験片とした。
【0030】この評価用試験片を用いて、常法に従って、過塩素酸リチウムをプロピレンカーボネートと1,2-ジメトキシエタンとの等容量混合物に溶解した溶液[濃度1.0mol/l] を電解液とし、厚さ50μm のポリプロピレン製微孔膜をセパレーターとするハーフセルを作製した。なお対極として直径16mm、厚さ0.5mm のリチウム金属を使用した。また、参照極として対極と同様にリチウム金属の小片を使用した。ここに得られたハーフセルの初期回路電位は3.18V であった。次いで、電流密度1.0 mA/cm2で参照極に対する評価用試験片の電極電位が変化しなくなるまで充電した。続いて、電流密度1.0 mA/cm2にて放電を行なったところ、参照極に対する評価用試験片の電極電位が、0.1Vまでで269mA/g 、0.5Vまでで412mA/g 、さらに3.0Vまで放電を行ったところ、568mA/g の放電容量が確認された。この放電曲線は電極電位0.5Vまでの電位の平坦性に優れていた。
【0031】[二次電池としての評価例]上記の評価用試験片と同様にして製作した厚さ0.3mm 、直径15mm、重量90mgの試験片を負極とし、常法に従って、過塩素酸リチウムをプロピレンカ−ボネ−トと1,2-ジメトキシエタンとの等容量混合物に溶解した溶液(濃度1.0mol/l)を電解液とし、厚さ50μm のポリプロピレン製微孔膜をセパレーターとする二次電池を作製した。なお、正極としてLiCoO2 85 重量部にアセチレンブラック10重量部[導電剤]とポリテトラフルオロエチレン粉末 5重量部(バインダー)とを配合、混合して円盤状に圧縮成形した成形体(重量250mg 、直径14mm)を用いた。ここに得られた二次電池の初回回路電圧は、0.03V であった。次いで、電流密度1.0mA/cm2 にて充電電圧が4.10V になるまで定電流充電を行った後、電流密度1.0mA/cm2 で定電流放電試験を行ったところ、初期放電容量34.5mAh 、初期充放電容量の効率88.1% なる結果を得た。次いで、定電流充放電サイクル試験を、電流密度1.0mA/cm2 、下限電圧2.00V 、上限電圧4.10V の条件下に実施したところ、40サイクル目の放電容量34.0mAh 、250 サイクル目の放電容量33.8mAh 、500 サイクル目の放電容量33.6mAh なる結果を得た。なお、500 サイクル目までの二次電池の放電平均電圧は3.6V以上であった。また、同様にして作製した二次電池の5 サイクル目における60℃、20日間保存での自己放電率は8.5%であった。
【0032】実施例2ナフタレン100 重量部に97% 硫酸85重量部を加え、160 ℃で2時間スルホン化した後、35% ホルマリン水溶液68重量部を加え、105 ℃で6時間反応させナフタレンスルホン酸のメチレン結合型の縮合物を得た。この縮合物をアンモニア水で中和後不溶解分をろ別した。得られた水溶液から水分を蒸発させ茶色の含硫黄原料有機化合物を得た。この化合物に含有されている硫黄原子の炭素原子に対する比(S/C)は0.064 であり、硫黄原子の酸素原子に対する比(S/O)は0.27であった。この縮合物を電気炉に設置されたアルミナ製炉心管に入れ、窒素ガス気流中、昇温速度5 ℃/minで1000℃まで加熱し、2 時間保持した。次いで、室温まで冷却し、得られた黒色の焼成体をボールミルを用いて粉砕した。更に、窒素ガス気流中、1000℃で2 時間焼成し、粉末状の負極材料を得た。
【0033】ここで得られた負極材料の元素分析値は、炭素94.01wt%、水素0.07wt% 、硫黄3.28wt% であった。また、この負極材料のXPS分析の結果、結合エネルギー164.1eV と165.3eV に2つのS-2pに基ずくピークが確認された。
【0034】実施例1と同様にハーフセルを作製し、定電流充放電試験を実施したところ初期回路電位は3.18V であり、電極電位が0.1Vまでで288mA/g 、0.5Vまでで410mA/g,さらに3.0Vまで放電を行ったところ568mA/g の放電容量が確認された。この放電曲線は電極電位0.5Vまでの電位の平坦性に優れていた。また、実施例1と同様に二次電池を作製し、定電流充放電試験を実施したところ、初回回路電圧は、0.03V であり、初期放電容量34.4mAh 、初期充放電容量の効率87.9% なる結果を得た。
【0035】比較例実施例1においてナフタレンを縮合させて得られたピッチの元素分析を行ったところ、炭素95.44wt%、水素5.15wt% 、硫黄0.30wt% であった。このピッチに含有されている硫黄原子の炭素原子に対する比(S/C)は0.001 であった。このピッチをスルホン化を行わない以外は全て実施例1と同様にして粉末状の負極材料を得た。ここに得られた負極材料の元素分析値は、炭素97.80wt%、水素0.05wt% 、硫黄0.01wt% であった。また、この負極材料のXPS分析の結果、硫黄に関わる結合エネルギーのピークは検出されなかった。
【0036】実施例1と同様に、焼結成形体を作製し評価用試験片とした。ついで、実施例1と同様にハーフセルを作製し、定電流充放電試験を実施したところ、電極電位が0.1Vまでで105mAh/g、0.5Vまでで245mAh/g、さらに0.3Vまで放電を行ったところ363mAh/gの放電容量であり、全体の放電容量は大幅に低下した。また、実施例1と同様に二次電池を作製し、定電流充放電試験を実施したところ、初期回路電圧は0.03V であり、初期放電容量21.2mAh,初期充放電容量の効率は85.3% であった。
【0037】
【効果】従来のリチウム二次電池に比べ電池容量が大きい非水溶媒リチウム二次電池が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも炭素原子と硫黄原子を含み、かつ硫黄原子の含量が0.1〜6重量%であり、更に該硫黄原子が炭素−硫黄原子結合に由来するX線光電子分光における結合エネルギー164.1 ±0.2eV および硫黄−硫黄原子結合に由来する165.3 ±0.2eV のピークを有する負極材料を用いることを特徴とする非水溶媒リチウム二次電池。
【請求項2】 縮合多環式化合物から選ばれた少なくとも1種類の化合物のスルホン化化合物を原料有機化合物として、該原料有機化合物を焼成することによって調製された負極材料を用いることを特徴とする請求項1記載の非水溶媒リチウム二次電池。
【請求項3】 芳香族化合物から選ばれた少なくとも1種類の化合物のスルホン化化合物を1つの成分とする重合物を原料有機化合物として、該原料有機化合物を焼成することによって調製された負極材料を用いることを特徴とする請求項1記載の非水溶媒リチウム二次電池。
【請求項4】 原料有機化合物を不活性ガス雰囲気下で800 〜 1800 ℃で焼成することにより調製された負極材料を用いることを特徴とする請求項2または請求項3記載の非水溶媒リチウム二次電池。