説明

改良された高温度オーバーモールディング特性を有する水素化スチレン系ブロックコポリマー組成物

a)100pbwの、少なくとも2個の重合したモノビニルアレーンの樹脂性末端ブロック及び重合し、続いて水素化した、共役ジエン又はジエン群のエラストマー性中間ブロックを有する、水素化スチレン系ブロックコポリマー、b)25から60pbwの官能化ポリオレフィン並びに場合によりc)0から100pbwの可塑剤、d)0から200pbwの1種又は2種以上の充填材及び充填材失活剤、e)0から2pbwの酸化防止剤、f)0から100pbwの極性エンジニアリングサーモプラストを含む、極性支持体の上にオーバーモールディングするための水素化スチレン系ブロックコポリマー組成物であって、成分(a)が、200,000から500,000の範囲内の見掛け分子量を有する線状水素化スチレン系ブロックコポリマー又はn倍(nは、ポリマーアームの数に等しい)の100,000から250,000の範囲内の見掛け分子量を有する放射状水素化スチレン系ブロックコポリマーであり、及び成分(a)が、40%よりも大きい水素化1,2−重合共役ジエンの含有量(ビニル含有量)及び20から50%の範囲内のポリ(モノビニルアレーン)の含有量を有し、及び成分(b)が、0.5から5重量%のグラフト化レベル及び20g/10分以上のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238−95:条件L)を有する、酸、酸無水物又はエステル官能化ポリオレフィンである組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性支持体の上に適用したとき、改良された高温度オーバーモールディング(overmolding)特性を有する水素化スチレン系ブロックコポリマー組成物に関する。更に特に、本発明は、改良された圧縮永久歪みと組み合わせて改良された凝集破壊特性を組み合わせるスチレン系ブロックコポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化スチレン系ブロックコポリマー組成物及び官能化ポリオレフィンを含む組成物は公知である。例えば、欧州特許第1365180号明細書には、ガスケット用の組成物であって、ブロックコポリマーがセプトン(SEPTON)(商標)4077(SEPSポリマー)であり、及び官能化ポリオレフィンが、枝分かれしたランダムエチレンメタクリル酸コポリマー(ヌクレル(NUCREL)(商標))又は無水マレイン酸変性低分子量ポリプロピレン(両方とも比較的高い官能性)である組成物が記載されている。この文献に記載されている組成物には、150重量部の可塑剤が含有されており、従って、良好な高温度特性が要求される自動車分野に於けるオーバーモールディングのためには興味のあるものではないであろう。
【0003】
同じ発明者は、米国特許第2001018490号明細書に於いて、ゴム弾性、油保持性及び金属に対する接着性に於いて優れており、及び(a1)ビニル芳香族化合物から基本的に構成されたポリマーブロック及び共役ジエン化合物から基本的に構成されたポリマーブロックから本質的になるブロックコポリマーを水素化することによって得られ、少なくとも200,000の重量平均分子量を有する水素化ブロックコポリマー(但し、ビニル芳香族化合物から基本的に構成されたポリマーブロックがポリスチレンであり、及び水素化ブロックコポリマー中に含有されるポリスチレン単位の重量含有量が20から40%である)、(b1)少なくとも300mm2s−1の40℃での動粘度を有する非芳香族ゴム軟化剤並びに(c1)変性ポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性エラストマー組成物を含む樹脂組成物であって、最大50度のJIS K6253に従った硬度及び最大50%のJIS K6262に従った圧縮永久歪みを有する樹脂組成物、金属及び熱可塑性エラストマー組成物のコンポジット成形体、例えば金属シートと一体化したガスケット並びに上記の生成物の製造方法を記載した。ポリオレフィン樹脂(c1)のMFRは、実施例には特定されていないが、明細書[0061]には、0.5g/10分に近いMFRを有するコポリマーの使用が示唆されている。
【0004】
欧州特許第0955329A号明細書から、高防振軟質ポリマーゲルの形成を可能にするための方法が公知である。この方法には、ポリ(アルケニルベンゼン−共−マレイミド)ポリマーを、マレイン化ポリアルキレン及びマレイン化水素化ブロックコポリマー及びアルキルジアミングラフト剤と、水素化ブロックコポリマー−ポリアルキレングラフト化ポリ(アルケニルベンゼン−共−マレイミド)ポリマー生成物を形成するために十分な実質的に乾燥条件下で反応させること並びに水素化ブロックコポリマー−ポリアルキレングラフト化ポリ(アルケニルベンゼン−共−マレイミド)ポリマー生成物を、ゲルを生成するために十分なエキステンダー油と共に分散させることが含まれる。本発明は、また、ポリマーゲル組成物、ポリマー組成物及びこのポリマーゲル組成物から製造された物品を意図している。オーバーモールディング自体は、検討されていない。この文献に開示されている組成物の幾つかでは、比較的低いMAレベル(典型的に、0.25から0.5重量%の範囲内)を有する無水マレイン酸官能化ポリプロピレンコポリマーであるエキセロール(EXXELOR)(商標)PO1015が使用されている。
【0005】
コンポジット構造物の製造方法は、米国特許第4,486,469号明細書から公知である。従って、グラフトコポリマーとエラストマーの混合物との種々のブレンドは開示されている。
【0006】
このようなコンポジット構造物は、極性皮革層を無極性支持体に結合するために使用するための、溶媒非含有ホットメルト接着剤に関係する、欧州特許第1384768号明細書に開示されているような生成物とは異なっていることに注目されたい。接着組成物は、一般的に、オーバーモールディングのために適していない。
【0007】
ポリエステル及びポリアミドのような極性支持体の上にオーバーモールディングするための、熱可塑性エラストマー組成物は公知である。このような組成物の例は、例えば、米国特許第5,723,543号明細書、欧州特許第0832931号明細書、欧州特許第0718347号明細書、または米国特許第5,750,268号明細書に記載されている。
【0008】
更に最近、欧州特許第0771846号明細書に記載されているような、官能化水素化スチレン系ブロックコポリマーをベースにするシステムが開発された。
【0009】
クレイトン(KRATON)(登録商標)Gポリマーのような水素化スチレン系ブロックコポリマー及びクレイトン(登録商標)FGポリマーのような官能化水素化スチレン系ブロックコポリマー並びにこれらをベースにする組成物は、オーバーモールディング応用のために非常に適しており、特徴の中でも、極めて良好なグリップを与える。ポリアミド6(PA−6)は、工業的応用に於いて広範囲に使用されている。この支持体のための配合物が成功裏に開発され、機械的特性の良好なバランスを提供した。しかしながら、高温度性能は欠けている。
【0010】
自動車分野はPAポリマーのための重要な販路であり、良好な高温度特性を要求する。従って、特性の適切なバランス、即ち、40から80のショアーA硬度(ISO868)、10Nよりも高い2mm厚さプレートのための接着値(ツウィック(Zwick)機械式試験器でのルノー(Renault)D41 1916試験)、40%よりも低い永久圧縮歪み(ISO815;70℃で24時間後)及び70℃でエージングした後に未だ支持体に接着していることを有する、例えばPA−6の上へのオーバーモールディングのための組成物を有することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、これらの特性を組み合わせる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、
a)100重量部(pbw)の、少なくとも2個の重合したモノビニルアレーンの樹脂性末端ブロック及び重合し、続いて水素化した、共役ジエン又はジエン群を含むエラストマー性中間ブロックを有する、水素化スチレン系ブロックコポリマー、
b)25から60pbwの官能化ポリオレフィン並びに場合により
c)0から100pbwの可塑剤、
d)0から200pbwの1種又は2種以上の充填材及び充填材失活剤及び
e)0から2pbwの酸化防止剤、
f)0から100pbwの極性エンジニアリングサーモプラスト(thermoplast)
を含む、極性支持体の上にオーバーモールディングするために使用することができる組成物であって、成分(a)が、200,000から500,000の範囲内の見掛け分子量を有する線状水素化スチレン系ブロックコポリマー又はn倍(nは、ポリマーアームの数に等しい)の100,000から250,000の範囲内の見掛け分子量を有する放射状水素化スチレン系ブロックコポリマーであり、及び成分(a)は、40%よりも大きい水素化1,2−重合共役ジエンの含有量(ビニル含有量)及び20から50%の範囲内のポリ(モノビニルアレーン)の含有量を有し、及び成分(b)は、0.1から5重量%の官能基のレベル又は20g/10分以上のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238−95:条件L)を有する、酸、酸無水物又はエステル官能化ポリオレフィンである組成物が提供される。
【0013】
本発明の他の側面は、極性支持体、特にポリアミド、更に特にPA−6の上に成形された上記の組成物を含む、オーバーモールディングした物品(ときには、コンポジット材料として参照される)によって形成されることが認められるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
水素化スチレン系ブロックコポリマーは、当該技術分野で公知である。スチレン系ブロックコポリマーによって、少なくとも2個の、重合したモノビニルアレーンから製造され、こうしてガラス状(樹脂状)芳香族セグメントを与える末端ブロックA及び少なくとも50%の重合したジエンから製造され、こうして無定形エラストマー性セグメントを与える中間ブロックBを有するブロックコポリマーが意味される。このポリマーは、A−B−A及びA−B−A−Bのように線状であってよいが、(A−B)Xのように放射状又はこれらの混合物であってもよい。幾つかのA−Bジブロックポリマーが、30重量%以下の量で存在していてよい。一般的に、ブロックコポリマーの20重量パーセント以下がジブロックであり、及び本質的にジブロックを有しないことが好ましい。上記の放射状式に於いて、nは、少なくとも3、一般的に3から50、更に一般的に6から13の整数であり、及びXは、ジビニルベンゼンのようなカップリング剤又は多官能性モノマーの残部である。
【0015】
A−B−A組成物は、逐次重合又はカップリングによって製造することができる。逐次重合技術に於いて、モノビニルアレーンを最初に導入して芳香族ブロックを製造し、続いて共役ジエンを導入してゴム状中間ブロックを製造し、続いて追加のモノビニルアレーンを導入して、他の末端芳香族ブロックを製造する。これは、米国特許第5,723,543号明細書に広く開示されている。このようなポリマー及び放射状ポリマーの製造は、欧州特許第0832931号明細書に広く開示されている。有機アルカリ金属開始剤を使用する、熱可塑性エラストマーのアニオン重合を広く開示している他の特許は、欧州特許第0718347号である。
【0016】
芳香族成分は、全ての8から30個の炭素原子のモノアルケニル芳香族化合物又はこれらの混合物、例えばスチレン及び置換スチレン、例えばα−メチルスチレン及び1,1−ジフェニルエテン、であってよいが、好ましくはスチレンである。
【0017】
ジエンは、全ての4から8個の炭素原子の共役ジエン又はこれらの混合物であってよいが、好ましくは1,3−ブタジエン又はイソプレンであり、最も好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0018】
ジエンがブタジエンであるとき、この重合は、ビニルの増加したレベルを与えるための、当該技術分野で公知であるような極性化合物を使用して実施することができる。
【0019】
重合を、ブタジエンの1,2−付加の方に向かわせることは、当該技術分野で公知である。広範囲に、これは、有機極性化合物、例えば、環式エーテル、ポリエーテル及びチオエーテルを含むエーテル又は第二級アミン及び第三級アミンを含むアミンを使用することによって行うことができる。キレートエーテル及びアミンが好ましい。キレートエーテルによって、式R(OR’)(OR”)OR(式中、それぞれのRは、個々に、1から8個、好ましくは2から3個の炭素原子のアルキル基から選択され、R’及びR”は、個々に、1から6個、好ましくは2から3個の炭素原子のアルキレン基から選択され、及びm及びoは、独立に、1から3、好ましくは1から2の整数から選択される)によって例示されるような、2個以上の酸素を有するエーテルが意味される。m又はoの一方はゼロであってよい。好ましいエーテルの例には、ジエトキシプロパン、1,2−ジオキシエタン(ジオキソ)及び1,2−ジメトキシエタン(グリム)が含まれる。他の適切な物質には、CH−OCH−CH−OCH−CH−OCH(ジグリム)及びCHCH−OCH−CH−OCH−CH−OCH−CHが含まれる。キレートアミンによって、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのような、2個以上の窒素を有するアミンが意味される。モノアミンは使用可能であるが、あまり好ましくない。また、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、アニソール及びテトラヒドロフランのような、直鎖及び環式モノエーテルもあまり好ましくない(しかし、なお使用可能である)。
【0020】
このミクロ構造促進剤は、有機リチウム開始剤のような有機アルカリ金属開始剤の1モル当たり少なくとも0.1モル、好ましくは、この開始剤1モル当たり1から50、更に好ましくは2から25モルの促進剤の量で使用される。代わりに、濃度を、溶媒及びモノマーの合計重量基準の、重量で100万当たりの部(ppm)で表すことができる。この規準に基づいて、10ppmから約1重量パーセント、好ましくは100ppmから2000ppmが使用される。しかしながら、ある種の好ましい促進剤の極めて小量が、非常に有効であるので、これは非常に広範囲に変えることができる。他の極限で、特に殆ど有効でない促進剤では、促進剤自体を溶媒として使用することができる。再び、これらの技術は、当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,750,268号明細書、欧州特許第0771846号明細書、及び米国特許第5,723,543号明細書に開示されている。
【0021】
本発明に於いて有用なポリマーについて得られる1,2−ビニル含有量は、少なくとも40モルパーセント、好ましくは最大90モルパーセント、更に好ましくは少なくとも50モルパーセント、なお更に好ましくは65から90モルパーセント、最も好ましくは65から80モルパーセントである。
【0022】
本発明に於いてそれが実際に使用されるときスチレン系ブロックコポリマーは水素化されており、従ってビニル不飽和は殆ど又は全く残っていない。にもかかわらず、これは(高ビニル前駆体から)なお、高い1,2−付加ポリマーである。この由来のために、水素化された生成物でも、典型的に、「高ビニル」として参照する。
【0023】
本発明の組成物に於いて使用されるスチレン系ブロックコポリマーは、これらに脂肪族不飽和が殆ど又は全く含有されていないと言う意味で、飽和ポリマーである。一般的に、スチレン系ブロックコポリマーは、製造されたとき、脂肪族不飽和を含有し、及びポリマー主鎖中の脂肪族不飽和の大部分が除去されるように選択的に水素化される。選択的水素化によって、影響を受けない芳香族不飽和の大部分を残しながら、脂肪族不飽和が顕著に除去されることが意味される。これを達成するための適切な公知の触媒には、アルミニウムアルキルのような還元剤と組み合わせたニッケル化合物が含まれる。水素化は、欧州特許第0832931号明細書、欧州特許第0718347号明細書、米国特許第5,750,268号明細書、及び欧州特許第0771846号明細書に教示されている。
【0024】
それぞれの個々の芳香族末端ブロックは、20,000よりも少ない分子量を有していなくてはならない。好ましくは、この末端ブロックは、5,000から20,000、最も好ましくは5,000から15,000の範囲内の分子量を有する。
【0025】
このコポリマーの分子量は、一般的に、少なくとも200,000であろう。線状A−B−Aポリマーについて、分子量は、一般的に、200,000から500,000の範囲内であろう。実際に、この上限は、粘度考慮要件によって指示され、許容でき、なお加工できるように高くてよい。線状A−B−Aポリマーについての最も好ましい分子量は、250,000から350,000である。放射状ポリマーで、これらのポリマーは、与えられた全分子量について、より低い粘度を有するので、分子量は遙かに高くてよい。一般的に、上記の線状A−B−Aポリマーについて検討した分子量の半分である、アームの分子量を参照することが、より容易である。従って、約4個のアームを有する放射状ポリマーについて、分子量は、一般的に、400,000から100万、好ましくは500,000から700,000の範囲内であろう。これらのポリマーは、一般的に、高MWポリマーとして参照される。
【0026】
本発明の組成物について、モノマーの性質又は線状性は、非常に決定的な要因ではない。重要なことは、比較的高いビニル含有量(例えば、1,4−付加よりむしろ1,2−付加によりポリマー主鎖中に構築される共役ブタジエンのパーセンテージ、又はより高級の共役ジエンの場合では同様)及び20から50%の範囲内のポリ(モノビニルアレーン)の含有量と組み合わせて、比較的高い分子量を有するポリマーを使用することである。
【0027】
完全ブロックコポリマー及び中間前駆体のそれぞれの見掛け分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定され、及び標準ポリ(スチレン)に換算して表される(ASTM D5296−97に記載されている方法に類似)。
【0028】
前記のように水素化して脂肪族不飽和を除去した、本発明に於いて使用されるブロックコポリマーは、例えば、ブタジエンの場合に、S−EB−Sポリマー(Sは、モノビニルアレーン、一般的にスチレン末端ブロックを指す)として見ることができる。EBは、重合した1,3−ブタジエンの水素化から得られる構造であるエチレン/ブチレンを表す。イソプレンでは、この表示はS−EP−S(EPは、エチレン/プロピレンを表す)であろう。
【0029】
このようなコポリマーは、例えば、クレイトン(登録商標)Gポリマーとして市販されている。
【0030】
成分(b)
官能化ポリオレフィンは、α−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び4−メチル−1−ペンテンのホモポリマー並びにエチレンと1種又は2種以上のα−オレフィンとのコポリマーであってよい。ポリオレフィンの中で好ましいものは、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中−及び高密度ポリエチレン、ポリプロピレン並びにプロピレン−エチレンランダム又はブロックコポリマーである。
【0031】
官能化ポリオレフィンには、1個又は2個以上の、重合の間に含有された官能基が含有されている。しかしながら、これらは、好ましくは、この上に官能基がグラフト化されているポリマーである。このような官能基形成モノマーは、好ましくは、カルボン酸、ジカルボン酸又はこれらの誘導体、例えばこれらの酸無水物である。
【0032】
官能化ポリオレフィン中に存在していてよい不飽和カルボン酸、ジカルボン酸の例は、1分子当たり約3から約20個の炭素原子を有するもの、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸である。
【0033】
1分子当たり4から10個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸が、特に好ましいグラフト化モノマーであり、該酸の無水物も同様である。これらのグラフト化モノマーには、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、シクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクル[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アリルコハク酸無水物、4−メチルシクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸無水物及びビシクル[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物が含まれる。
【0034】
更なるグラフト化モノマーは、少なくとも約6個、好ましくは約7個の炭素原子を含有する不飽和カルボン酸のエポキシ基含有エステルである。特に好ましいものは、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルである。
【0035】
基本的ポリマーにグラフト化モノマーをグラフト化させるために、種々の公知の方法を使用することができる。例えば、これは、ポリマーとグラフト化モノマーとを、150から300℃の高温度で、溶媒の存在下又は不存在下で、ラジカル開始剤有り又は無しで、加熱することによって達成することができる。グラフト化反応の間に、他のビニルモノマーが存在してもよい。この反応で使用することができる適切な溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン及びクメンが含まれる。使用することができる適切なラジカル開始剤には、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、過酸化ジt−ブチル、過酸化t−ブチルクミル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化イソブチリル及び過酸化メチルエチルケトンが含まれる。
【0036】
このようにして得られた官能化ポリオレフィンに於いて、酸又は酸無水物の量は、官能性ポリオレフィンの重量基準で、好ましくは0.2から5重量%、更に好ましくは0.5から4重量%である。
【0037】
好ましくは、これらの官能化ポリオレフィンは、20g/10分以上のメルトフローレートを有する。更に好ましくは、これらの官能化ポリオレフィンは、35から300g/10分、最も好ましくは40から200g/10分のMFR(ASTM D1238−95:条件L)を有する。
【0038】
官能化ポリオレフィンの適切な例には、50g/10分のMFRを有する無水マレイン酸官能化ポリプロピレンであるケストロン(QESTRON)(商標)KA805A及び35g/10分のMFRを有するケストロン KA802A(共に、約1%のマレイン酸含有量を有する)並びに200g/10分よりも大きいMFRを有する無水マレイン酸官能化ポリプロピレン(0.6から0.80%MA)であるエキセロール(商標)PO1020が含まれる(ベイセル社(Basell)は、商標ケストロンを、商標ハイファックス(HIFAX)(商標)によって置き換えている)。
【0039】
更に好ましい成分(b)はハイファックスKA805Aである。
【0040】
この組成物には、好ましくは、30から50pbwの成分(b)が含まれる。
【0041】
成分(c)
適切な可塑剤には、特性がパラフィン系又はナフテン系である低芳香族含有量炭化水素油(炭素芳香族分布が、DIN51378に従って決定したとき、<5%、好ましくは<2%、更に好ましくは0%である)のような可塑化油が含まれる。これらの製品は、ロイヤル・ダッチ/シェル・グループ社(Royal Dutch/Shell Group of companies)から、シェルフレックス(SHELLFLEX)(商標)、ケイトネックス(CATENEX)(商標)及びオンジナ(ONDINA)(商標)油のように市販されている。他の油には、ウィットコ社(Witco)からのケイドル(KAYDOL)(商標)油又はアルコ社(Arco)からのツフロ(TUFFLO)(商標)油又はエクソン−モービル社(EXXON−MOBIL)からのプリモル(PRIMOL)(商標)油が含まれる。
【0042】
オレフィンオリゴマー;低分子量ポリマー(<30,000g/モル)、例えば、液体ポリブテン、液体ポリイソプレンコポリマー、液体スチレン/イソプレンコポリマー若しくは液体水素化スチレン/共役ジエンコポリマー;植物油及びこれらの誘導体又はパラフィン及び微結晶性ワックスのような他の可塑剤を添加することもできる。
【0043】
本発明に従って組成物中に使用することができるパラフィン系油のような可塑剤は、分解することなく、組成物の他の成分と共に溶融加工することができなくてはならない。
【0044】
更に好ましくは、可塑剤は、成分(a)100pbwに対して、0から80pbwの量で、パラフィン系又はナフテン系油から選択された可塑化油を表す。
【0045】
成分(d)
オーバーモールディング物品の総経済性を管理するために、充填材のような種々の他の成分を添加できることが、当該技術分野で公知である。このような充填材の例には、オムヤ社(Omya)からの炭酸カルシウムであるヅルカル(DURCAL)(商標)5及びマグニフィン社(Magnifin)からの酸化マグネシウムであるアンケルマグ(ANKERMAG)(商標)B20が含まれる。これらの充填材は、典型的に、エポキシ化合物であるエポン(EPON)(商標)1004のような充填材失活剤と組み合わせて使用される。これらの充填材は、成分(a)100部当たり、0から200重量部、好ましくは50から150pbwの量で存在してよい。(充填材失活剤の量は、典型的に、充填材の約1から2重量%である)。
【0046】
酸化防止剤
本発明の組成物を、熱、光及び加工により又は貯蔵の間に誘導される分解から保護するために、酸化防止剤及び他の安定化成分を添加することができる。
【0047】
幾つかの種類の酸化防止剤、即ち、ヒンダードフェノールのような一次酸化防止剤若しくはホスファイト誘導体のような二次酸化防止剤又はこれらのブレンドを使用することができる。特に好ましいものは、単独での又はイルガノックス(IRGANOX)(商標)PS800と組み合わせたイルガノックス(商標)1010である。これらの酸化防止剤は、一般的に、成分(a)100部当たり、0.01から4pbw、好ましくは0.1から1pbwの範囲内の量で存在する。
【0048】
成分(f)
米国特許第5,723,543号明細書から公知のように、ブロックコポリマー組成物には、好ましくは、極性エンジニアリングサーモプラストが含有されている。成分(f)として適用することができる適切な極性エンジニアリングサーモプラストは、ポリアミド、例えばナイロン6,6(PA−6,6)、ナイロン6(PA−6)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)並びに芳香族酸から誘導されたポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)又はこれらの組合せから選択することができる。このようなエンジニアリングサーモプラストは、場合により、ポリウレタン樹脂、例えばバンダール(VANDAR)(商標)、ポリカーボネート及び変性ポリカーボネートと混合することができる。ポリカーボネートが、好ましい極性エンジニアリングサーモプラストである。
【0049】
追加の助剤
この組成物の必須のエラストマー特性に影響を与えない他の成分が、同様に存在していてもよい。このような成分には、顔料、芳香剤、難燃化剤、界面活性剤、ワックス、流動促進剤、例えばクリスタレックス(KRISTALLEX)(商標)3115、溶媒並びに組成物の加工性及びペレット取扱いを増強するために添加される材料が含まれる。
【0050】
組成物の調製
本発明に従った組成の調製方法には、特別の制限は課せられない。
【0051】
従って、それによって目標とする組成物の緊密な溶液を得る二軸スクリュー押出機のような全ての方法を使用することができる。
【0052】
組成物の使用
本発明に従った組成物は、硬質支持体、グリップ、医用物品、例えば医用チューブ及び他のゴム状物品の上に、特に極性支持体の上にオーバーモールディングするために使用される。この技術は公知であり、例えば、国際特許出願公開第98/01506号明細書に記載されている。
【0053】
更に特に、この組成物は、PA−6の上にオーバーモールディングしたとき高温度特性の改良されたバランス、即ち、70℃/24時間で測定した最大40%の永久圧縮歪みと組み合わさった高い結合強度を有する凝集破壊を示す。
【0054】
以下、本発明を、下記の実施例及び比較例を参照して、更に特別に説明するが、この範囲を、これらの特別の実施態様に制限するものではない。
【0055】
付帯的に、下記の実施例で使用するとき、「部」及び「%」の全ての指定は、他の方法で明白に記載しない限り、重量部及び重量%を意味する。
【実施例】
【0056】
実施例で使用した成分の詳細を、表1に記載する。
【0057】
【表1】

【0058】
使用する前に、成分(PA−6、スチレン系ブロックコポリマー)を、真空オーブン内で、70℃で一晩又は80℃で4時間乾燥させる。
【0059】
オーバーモールディングした支持体の製造のための組成物は、25mm、共回転二軸スクリュー押出機で製造した。オーバーモールディングは、アクシコン(Axxicon)金型を取り付けた、デマグ(Demag)二重バレル射出成形機で行う。2mmの厚さを有するPA−6プラックを成形し、次いで、より軟質の材料をこの上にオーバーモールディングする。
【0060】
試験方法
・メルトフローレート(MFR):ASTM D1238−95(条件L:230℃、2.16kg)
・硬質プラックと軟質プラックとの間の接着は、ツウィック機械式試験器でルノーD41 1916試験を実施することによって決定する。軟質プラックを15mmの幅に切断する。PA−6プレートを移動クランプの中に挿入し、一方、SEBS系組成物を、90℃の角度で、固定部分の中にクランプで固定する。100mm/分の試験速度を使用し、硬質プレートの上部分とクランプとの間の距離は50mmである。
・同じ2mm厚さのプラックを、組成物の硬度(ISO868)の決定のために使用する。
・圧縮永久歪みの測定のためのサンプルを、バッテンフェルド(Battenfeld)射出成形機を使用して製造する。
・圧縮永久歪みは、方法ISO815に従って、70℃で24時間測定した。
【0061】
結果及び検討
この組成物の関連する物理的特性を、表2及び3に特定した。表3に於ける結果から、組成物E1及びE2が、比較サンプルに欠けている、高温度性能をもたらすことが認められるであろう。
【0062】
PA−6のような極性支持体の上への接着のために、極性が必要である。商業的配合機によって配合することができるように配合物をシミュレートするために、多数のSEBS/F−SEBS組成物が、PA−6の上にオーバーモールディングするために開発された。この圧縮永久歪み性能は劣っていることが見出された。
【0063】
PA−6の上への最良の接着を示す、欧州特許0832931号明細書に基づく、40/60 w/w SEBS/F−SEBS系組成物を、更なる開発のための出発点として取った。この組成物をAと記号化する。
【0064】
表2からわかるように、配合物A中のSEBS−1/F−SEBSを、SEBS−2(配合物C1)によって置き換えると、硬度が減少し、及び70℃での圧縮永久歪みが96%から60から65%にまで改良される。しかしながら、PA−6上での接着は失われる。
【0065】
配合物C2には、ロタデルが含まれ、この官能性度は高すぎる。配合物C3には、アドマーが含まれ、このMFRは低すぎる。このようにして得られた組成物の結果は十分に良好ではない。
【0066】
SEBS−2/PC/充填材をベースにする配合物について、ケストロン及びエキセロールPO1020グレードは、PA−6への接着と組み合わさって、30から35%の圧縮永久歪み値を有する組成物をもたらしている。ケストロンKA805Aを含有する組成物E2は、PA−6上でのルノー試験を実施するとき、高い剥離力(約20N/2mm)で凝集破壊をもたらしている。これは、本研究に於いて開発された最良の組成物である。このケストロングレードは、極性と優れた流れとを組み合わせている。このグレードを20pbwで使用する比較例C4は、適切な接着をもたらさないことに注目されたい。
【0067】
要約及び結論
PA−6の上へのオーバーモールディングについて評価した組成物から、下記のことが結論される。
【0068】
官能化した水素化ブロックコポリマーを含む組成物は、自動車工業の圧縮永久歪み必要条件に適合していない。
【0069】
F−SEBSを、官能化していない高MW SEBS−2によって置き換えることによって、圧縮永久歪みが改良されるが、PA−6上の接着を欠く組成物が得られる。
【0070】
SEBS−2と組み合わせて、エキセロールPO1020(官能化PPホモポリマー)を使用すると、適切な圧縮永久歪み及び或るレベルのPA−6への接着を有する配合物に至る。この組成物E1は、圧縮永久歪みが重要である応用のために有用であろう。
【0071】
高い結合強度(約20N)での凝集破壊モードは、SEBS−2及びケストロンKA805A(官能化PPコポリマー)を含有する配合物で得られる。35%の圧縮永久歪みが、70℃/24時間で測定される。従って、この配合物は、このプロジェクトのために設定された必要条件に適合する。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)100pbwの、少なくとも2個の重合したモノビニルアレーンの樹脂性末端ブロック及び重合し、続いて水素化した、共役ジエン又はジエン群のエラストマー性中間ブロックを有する、水素化スチレン系ブロックコポリマー、
b)25から60pbwの官能化ポリオレフィン、並びに場合により
c)0から100pbwの可塑剤、
d)0から200pbwの1種又は2種以上の充填材及び充填材失活剤、
e)0から2pbwの酸化防止剤、
f)0から100pbwの極性エンジニアリングサーモプラスト
を含む、極性支持体の上にオーバーモールディングするための水素化スチレン系ブロックコポリマー組成物であって、成分(a)が、200,000から500,000の範囲内の見掛け分子量を有する線状水素化スチレン系ブロックコポリマー又はn倍(nは、ポリマーアームの数に等しい)の100,000から250,000の範囲内の見掛け分子量を有する放射状水素化スチレン系ブロックコポリマーであり、及び成分(a)が、40%よりも大きい水素化1,2−重合共役ジエンの含有量(ビニル含有量)及び20から50%の範囲内のポリ(モノビニルアレーン)の含有量を有し、及び成分(b)が、0.5から5重量%のグラフト化レベル及び20g/10分以上のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238−95:条件L)を有する、酸、酸無水物又はエステル官能化ポリオレフィンである、前記組成物。
【請求項2】
成分(b)が、35から300g/10分のMFRを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(b)が、40から200g/10分のMFRを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマーを、極性支持体の上にオーバーモールディングすることを含む、コンポジット材料の調製方法。
【請求項5】
極性支持体がポリアミドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
極性支持体の上にオーバーモールディングされた、請求項1から3の何れか1項に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマーを含むプラスチック物品。
【請求項7】
極性支持体がポリアミドである、請求項6に記載のプラスチック物品。

【公表番号】特表2006−528255(P2006−528255A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520842(P2006−520842)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051300
【国際公開番号】WO2005/095511
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(501140348)クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー (44)
【Fターム(参考)】