説明

改良チェック弁

【課題】送液精度が高いチェック弁装置、及びそれを用いた高圧定容量ポンプを提供する。
【解決手段】弁室14を内蔵する本体12と、前記弁室14内に配置され、送液圧力により位置を変更する弁18と、前記弁室14を経由し、前記弁18位置により閉止、開放状態が規定される弁内流路と、前記弁内流路を外部流路に螺合接続する連結手段21と、を備え、前記連結手段21を外部流路60に螺合接続した状態で、前記外部流路60から弁室14までの弁内流路容量を一定とする容量規定手段70を備えたことを特徴とするチェック弁装置及びこれを用いた高圧定容量ポンプ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチェック弁装置及びそれを用いた高圧定容量ポンプ装置、特にその送液量精度の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフなど各種クロマトグラフには、高圧下でも高い送液量精度を維持できるプランジャーポンプが用いられる。該プランジャーポンプは、シリンダー内に配置されたプランジャーの前進、後退により、液の吸引、吐出を行うものであり、吸引流路、吐出流路には流体を一定方向のみに送液可能なチェック弁を設ける必要がある。
一般的なチェック弁は、例えば特開2006−250835などに開示されており、流体流路にボールハウス(弁室)と、該ボールハウス内に配置されたボール弁を有し、流体の移動方向により該ボール弁が流路口を閉止、開放することにより、一定方向のみの流体移動を可能とするものである。このようなボール弁型のチェック弁装置は、機構が簡単で信頼性が高く、しかも高圧下でも使用可能という利点を有する。
【0003】
通常、プランジャーポンプとチェック弁装置は別体に構成され、プランジャーポンプの吸引流路及び吐出流路に雌ネジ螺合口を、またチェック弁の流入流路ないし流出流路に雄ネジ螺合部を設け、ポンプの雌ネジ螺合口にチェック弁の雄ネジ螺合部を締め付け螺合させることにより両者を連結している。
しかしながら、両者の連結部分よりの液洩れは充分に阻止できる程度にしっかりと螺合させているにもかかわらず、送液量に数%の誤差を生じることがあった。
この送液量の誤差は、送液量に依存した保持時間により成分分析を行う液体クロマトグラフなどの場合には、分析結果の精度、再現性を低下させる要因ともなる。
【特許文献1】特開2006−250835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は送液精度が高いチェック弁装置及びそれを用いた高圧定容量ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明者等が送液精度に関し検討した結果、チェック弁装置をプランジャーポンプに螺合する際の締め付け強度により送液量に相違が出ることが明らかになった。
すなわち、チェック弁装置の連結手段先端には流体洩れを防止する為に樹脂製キャップが設けられており、ボールハウスとチェック弁本体、或いは2以上のボールハウスを持ったものについてはそれぞれのハウス間にもパッキングが配置されている。これらのパッキングはその性質上ある程度の変形が可能である。このため、チェック弁装置を螺合する際の締め付け強度によってパッキングの変形度合いが異なり、ポンプ流路出口からボールハウスへ至る弁内流路容量が変化する。
【0006】
一方、液体クロマトグラフィーなどの高圧流体を用いる場合には、前記流路容量に対して数%の圧縮が生じ、吸引時にこれが復帰するため、その分吸引量が減少することになる。
この締め付け強度とこれに伴う吸引量減少には、作業を行う者の個人差があり、特にトルクレンチなどの機具を用いずに作業を行った場合には影響が大きくなる。また、仮に同一の締め付け強度で作業を行った場合にも、ネジ部分等の加工精度によりポンプ螺合口に対するチェック弁装置の螺合位置は変化し、一定の流量を再現性良く得ることは困難であった。
【0007】
そこで、本発明は螺合時の締め付け強度にかかわらず、プランジャーからチェック弁へ至る流路容量を一定にすることとしたのである。
本発明にかかるチェック弁は、弁室を内蔵する本体と、
前記弁室内に配置され、送液圧力により位置を変更する弁と、
前記弁室を経由し、前記弁位置により閉止、開放状態が規定される弁内流路と、
前記弁内流路を外部流路に螺合接続する連結手段と、
を備えたチェック弁装置において、
前記連結手段を外部流路に螺合接続した状態で、前記外部流路から弁室までの弁内流路容量を一定とする容量規定手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記装置において、容量規定手段は、外部流路に形成された雌ネジ螺合口に対し、前記連結手段の雄ネジ螺合部をしっかりと螺合させた状態で螺合口外端部に当接する張出部であることが好適である。
また、本発明にかかる高圧定容量ポンプ装置は、高圧定容量ポンプの吸引流路、ないし吐出流路に、前記チェック弁装置の連結手段が螺合接続されることを特徴とする。
また、前記ポンプ装置において、高圧定容量ポンプはプランジャーポンプであることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるチェック弁装置は、前述したように弁内容量規定手段により、チェック弁装置を外部流路に螺合した状態で、弁室から連結手段先端までの距離を一定にすることとしたので、締め付け強度にかかわりなく、常に弁内流路容量を一定に維持することが可能となり、流量精度を再現性良く向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるチェック弁装置が示されている。
本実施形態にかかるチェック弁装置10は、本体12と、該本体12内に設置されたボールハウス(弁室)14,16と、該ボールハウス内に配置されるボール弁18,20と、外部流路に連結される連結手段21と、該連結手段21外周に形成された雄ネジ螺合部22とを備える。そして、本体12のボールハウス設置用開口24には硬質樹脂製キャップ26がはめ込まれている。本体12、ボールハウス14,16、キャップ26には貫通孔28,30,32,34,36,38が設けられ、これらが連通することにより、貫通孔38から貫通孔28に至る流体流路が確保される。なお、ボールハウス14,16の貫通孔34,30には迂回溝40,42が設けられており、吐出時に液流によりボール18,20が貫通孔30,34に密着した場合にも流体の流れは維持される。
そして、ボールハウス14上面と本体12内壁の間、ボールハウス14,16の間隙、ボールハウス16とキャップ26の間にはそれぞれリング状パッキング44,46,48が設置されている。
【0011】
一方、チェック弁装置10が設置されるプランジャーポンプ50は、シリンダ52と、該シリンダ52内を図中左右方向へ前進、後退可能なプランジャー54と、前記シリンダ52へ流体を供給する流入孔56と、流体を吐出する吐出孔58と、前記チェック弁装置10の雄ネジ螺合部22が螺合固定される螺合口60を備える。
図2には本実施形態にかかるチェック弁装置10がプランジャーポンプ50に螺合固定された状態が示されている。
本発明において特徴的なことは、チェック弁装置に、そのキャップ26先端からボールハウス16下端に至る弁内流路容量を、締め付け強度の如何にかかわらず一定にする容量規定手段が設けられたことであり、このために本実施形態においてはプランジャーポンプ50の図中上壁面に当接する張出部70を設けている。
【0012】
この結果、連結手段21に設けられた螺合部22の、螺合口60に対する位置は、締め付け強度にかかわらず、張出部70がポンプ上壁面に当接するまでであり、連結手段21先端よりボールハウス16下端に至るまでの距離、すなわち弁内容量は常に一定となる。
次に図3に示す従来のチェック弁装置10Aと対比しつつ、本実施形態にかかる装置の作用について説明する。
【0013】
図3に示す従来のチェック弁装置10Aでは、螺合状態の自由度を高めるように、雄ネジ螺合部22Aを螺合孔60Aへの実螺合長よりもかなり大きく形成している。このため、締め付け強度によりリング状パッキング44A〜48A及び締め付け圧によってはキャップ26Aも圧縮変形し、この変形度は締め付け圧に依存して変化する。この結果、貫通孔38Aからボールハウス16Aに至るまでの距離、すなわち流路容量が変化する。
一方、プランジャーポンプ50Aによる吐出圧は、例えば15MPaなどという高圧であり、この高圧下では液体も数%程度の圧縮を生じ、吸引時には減圧により復帰するため、圧縮流体の容量の変化はプランジャーポンプの吸引量の変化に直結する。
【0014】
次の表1に、図3に示す従来装置による、チェック弁装置をポンプに螺合固定する際の締付トルクと吸引側流速、吐出側流速の実測値(単位はml/min)を示す(流速設定 1.0ml/min 負荷圧15MPa)。これは、吐出側のチェック弁を締め付けトルク50kg・cmで固定して、吸引側のチェック弁を表中の締め付けトルクで固定したときの流速の変化(表上段)と、吸引側のチェック弁を締め付けトルク50kg・cmで固定して、吐出側のチェック弁を表中の締め付けトルクで固定したときの流速の変化(表下段)を示したものである。
【0015】
表1
トルク(Kg.cm) 10 20 30 40 50
吸引側 0.983 0.993 0.996 0.998 0.998
吐出側 0.978 0.988 0.994 0.994 0.998
上記表1より明らかなように、螺合固定する際の締付トルクによって流速が変化しており、トルクが小さい場合には弁内流路容量が大きいため流量が小さく、またトルクが大きい場合には弁内流路容量が小さい為、流量が大きくなる。このため、同一のチェック弁装置及びポンプ装置を用いた場合にも、作業する者の個人差などにより締め付けトルクが異なれば流量が変化することとなり、チェック弁装置を交換した場合などには、ネジ部の微妙な成形誤差により、仮に締め付けトルクを同一として組み立てた場合にも流量が異なることとなる。
【0016】
これに対し、本実施形態においては、張出部70がポンプ50の図中上壁面に当接するまで締めつけるが、当接以降の締め付けは不可能である。この結果、締め付けトルクの如何にかかわらず、貫通孔38からボールハウス16に至るまでの距離、すなわち流路容量が常に一定となる。
なお、前記表1に準じ、本実施形態にかかるチェック弁を5回にわたり、取り付け、取り外しを行った際の吸引側流速、吐出側流速(単位はml/min)の実測値を表2に示す。これは、吐出側のチェック弁をその張出部がポンプ壁面に当接するまで締め付け固定し、吸引側のチェック弁をその張出部がポンプ壁面に当接するまで締め付け固定、取り外しを繰り返したときの流速の変化(表上段)と、吸引側のチェック弁をその張出部がポンプ壁面に当接するまで締め付け固定して、吐出側のチェック弁をその張出部がポンプ壁面に当接するまで締め付け固定、取り外しを繰り返したときの流速の変化(表下段)を示したものである。
【0017】
表2
取付回数 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
吸引側 0.999 1.000 1.001 1.002 1.005
吐出側 1.003 1.000 1.000 1.005 1.005
上記表2より明らかなように、複数回の取り付け、取り外しにかかわらず、きわめて安定した流速を得ることができる。
なお、本発明において容量規定手段は前記張出部に限られることはなく、例えば図3に示すようにチェック弁本体12Aの連結手段下端とチェック弁螺合孔底部の間に設けられた高剛性のリング状部材72などを用いてもよい。
また、前記実施形態においてはポンプの吐出側チェック弁装置を例に取り説明したが、同様のことはポンプの吸引側チェック弁装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるチェック弁の説明図である。
【図2】図1に示したチェック弁のポンプへの螺合固定状態の説明図である。
【図3】従来のチェック弁のポンプへの螺合固定状態の説明図である。
【符号の説明】
【0019】
10 チェック弁
12 本体
14,16 ボールハウス
18,20 ボール弁
21 連結手段
22 雄ネジ螺合部
44〜48 リング状パッキング
50 プランジャーポンプ
60 雌ネジ螺合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を内蔵する本体と、
前記弁室内に配置され、送液圧力により位置を変更する弁と、
前記弁室を経由し、前記弁位置により閉止、開放状態が規定される弁内流路と、
前記弁内流路を外部流路に螺合接続する連結手段と、
を備えたチェック弁装置において、
前記連結手段を外部流路に螺合接続した状態で、前記外部流路から弁室までの弁内流路容量を一定とする容量規定手段を備えたことを特徴とするチェック弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、容量規定手段は、外部流路に形成された雌ネジ螺合口に対し、前記連結手段の雄ネジ螺合部を螺合させた状態で螺合口外端部に当接する張出部であることを特徴とするチェック弁装置。
【請求項3】
高圧定容量ポンプの吸引流路、ないし吐出流路に、前記請求項1または2記載のチェック弁装置の連結手段が螺合接続されることを特徴とする高圧定容量ポンプ装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、高圧定容量ポンプはプランジャーポンプであることを特徴とする高圧定容量ポンプ装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−208873(P2008−208873A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44378(P2007−44378)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】