説明

改良マイクロニードル

検知及び/又は駆動のための電子デバイスは、生体細胞(40)が付着するデバイス表面を備え、センサ及び/又はアクチュエータ(25)と、チャネルポート(21)を持つアクセスチャネル(20)とをさらに備え、前記チャネルポートは前記表面に設置される。アクセスチャネル(20)は、生体細胞(40)がアクセスチャネル(20)に進入して、センサ(25)へのアクセスを提供できるように設計される。特に、細胞(40)は、アクセスチャネル(20)に進入することによって突起部分(41)を形成し、この部分が検知される。アクセスチャネル(20)には、センサ(25)が存在する特定のセンサポートを設けてもよい。デバイスは、例えば、エレクトロポレーション治療において、ニューロンなどの生体細胞を検知または駆動するため使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体細胞が付着するデバイス表面と、前記生体細胞を検知及び/又は駆動するための手段とを備えた、検知及び/又は駆動用の電子デバイスに関する。さらに本発明は、こうした電子デバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電極アレイを備えたセンサが、ニューロンなどの生体細胞の小型ネットワークにおける電気的活動を測定するために使用される。これらのセンサは、しばしば比較的大型であり、小型のマトリクスまたはアレイのマイクロ電極だけが製作可能である。現在の最新のマイクロ電極アレイ(MEA)が、最大で64個の電極を有し、隣接電極間の最小間隔が100μmである。電極は、しばしば最大10μmの直径を持つ平坦なTiNパッドで製作される。幾つかの用途では、より小さい間隔、例えば、<10μmで、より多数の電極、例えば、>60000個が要求されることがある。
【0003】
電界効果トランジスタを用いた電気的活動のオンチップ単一セル記録が、大きなニューロンまたは組織スライスについて実証されている(文献:P. Bergveld et al, IEEE Transactions on Biomedical Engineering, 1976. P. Fromherz et al., Science, May 1991 , A. Cohen et al, Biosensors and Electronics, January 2004)。哺乳類ニューロン、例えば、海馬ニューロンの場合、細胞はかなり小さく、チップ表面への電気結合の効率が低くなり、細胞膜と記録装置との間の信頼性のある電気コンタクトを作成する。
【0004】
Hoogerwerfらは、ニューロン検知のためのマイクロニードルアレイを開示している。マイクロニードルまたはプローブのアレイは、シリコンプラットフォームに組み立てられ、マイクロニードルがプラットフォームの孔を通過し、ある一定のフランジを用いて接続された構成を備える。バンプ、例えば、共晶金属バンプまたは、メッキされた金ビーム上のプレートコンタクトと電気接続が行われる。ビームは、基板フランジ上で延びている相互接続と連結され、そこからマイクロニードル上に延びている。こうしたニードルは、細胞を探査するのに特に適している。マイクロニードルを備えたアレイ全体は、集積回路を検査するために用いられる複数のプローブを備えたプローブカードと大きな類似性を有する。こうしたアレイの導電プローブは、集積回路上の選択テストパッドと接触し、適正な動作を検査するために適切なデジタル信号の系列を集積回路に供給する。しかしながら、こうしたプローブアレイを生体細胞に付着させた場合、細胞性状の充分な測定が困難になる。細胞膜は、硬くて固定のテストパッドプレートを有していない。従って、電気パルスによる充分な刺激およびこれ続く充分な測定が達成できない。
【0005】
Fujimotoらは、文献("Electroporation microarray for parallel transfer of small interfering RNA into mammalian cells" in Analytical and Bioanalytical Chemistry, Springer, Heidelberg, DE, Vol. 392, no. 7-8, 12-2008, pages 1309- 1316)を開示している。この文献は、化学物質を生体細胞の中に移送(transfer)すること、詳細には、エレクトロポレーション(electroporation)マイクロアレイによるsiRNAの哺乳類細胞中への移送に言及している。
【0006】
Braekenらは、文献("Local electrical stimulation of single adherent cells using three-dimensional electrode arrays with small interelectrode distances" in Engineering in Medicine and Biology Society 2009, Annual Int. Conf. IEEE, IEEE, Piscataway, NJ, USA, Vol. 1 , 3-09-2009, pages 2756-2759)を開示している。この文献は、細胞より小さなマイクロニードルによって電圧パルスを印加することによる細胞エレクトロポレーションに言及している。
【0007】
Hanらは、文献("A single cell multi-analysis system for electrophysiological studies" in Transducers '03, 12th Int. Conf. Solid State sensors, actuators and Microsystems, 2003, IEEE, Piscataway, NJ, USA, Vol. 1 , 9-06-2003, pages 674-677)を開示している。この文献は、単一細胞の多目的な電気生理学研究のためのマイクロ分析システムに言及している。それは、細胞と電極との間の結合のための側壁での電極に言及している。
【0008】
Huysらは、文献("Novel concepts for improved communication between nerve cells and silicon electronic devices" in Solid State Electronics, Elsevier Science Publishers, Barking, GB, Vol. 52, no. 4, 3-12-2007, pages 533- 539)を開示している。この文献は、CMOSチップ上での高密度マトリクスのセンサおよびアクチュエータに言及している。この文献は、細胞と電極との間の接触面積を増加させることによって、電気結合が改善できることに言及している。
【0009】
Jaberらは、文献("Action potential recording from dielectrophoretically positioned neurons inside micro-wells of a planar microelectrode array"" in J. Neuroscience Methods, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, Nl., Vol. 182, no. 2, 15-09-2009, pages 225-235)を開示している。この文献は、細胞段階での体外ニューラルネットワークを研究し組織化するための4×4プレーナ型マイクロ電極アレイに言及している。この文献は、生体細胞のチャネルへの成長、および細胞の一部を検知し駆動することに言及している。
【0010】
欧州特許EP−A 1967581は、CMOS適合のマイクロニードルを開示する。その図式的な断面図を図9に示す。マイクロニードル6は、基板1の上に存在する。CMOSとの適合性が可能であり、一実施形態では、典型的には、集積回路の相互接続構造の製造のために使用されるような製造プロセスを用いている。Hoogerwerfらは、マイクロニードルの外側にコンタクトを設けているが、欧州特許EP1967581は、マイクロニードル6の内側に導体3及び/又はマイクロ流体チャネルを規定している。そこに、導体3を相互接続2の上部に備えた誘電体マトリクスが規定される。そして、誘電体マトリクスは、導体の周りに絶縁シャフトを備えたマイクロニードル6を規定するようにパターン化される。
【0011】
製造のためのこうしたCMOS適合技術の使用により、ここではマイクロニードルの上部表面が平坦でもよいことになる。これは、特に、マイクロニードル周りの誘電体マトリクスの部分除去前の、マイクロニードルのプロセス中のある段階の場合である。その結果、センサまたはアクチュエータのデバイス4がマイクロニードル6の上部に規定してもよい。そして、相互接続3及び/又はマイクロ流体チャネルは、マイクロニードル6の上部にあるセンサまたはアクチュエータのデバイス4に向かって走行している。生体細胞40の応用では、マイクロニードル6の飲み込み(engulfment)が判明した。この飲み込みは、生体細胞の駆動のための刺激電流の振幅の減少をもたらすことから有利である。
【0012】
しかしながら、マイクロニードル6の上部にあるセンサまたはアクチュエータのデバイスの面積は制限されることが判る。マイクロニードルの直径を増加させることによる該面積の増加は、生体細胞40によるマイクロニードル6の飲み込みが失われるため(望ましいことではない)、制限されることが判る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、検知及び/又は駆動のための代替の電子デバイスを提供することであり、該デバイスは、生体細胞が付着するデバイス表面と、前記生体細胞を検知及び/又は駆動するための手段とを備える。
【0014】
こうした電子デバイスの利点は、生体細胞の改善された検知及び/又は駆動を可能にすることである。更なる目的は、検知目的のこうしたデバイスを使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1態様によれば、検知及び/又は駆動用の電子デバイスを提供することであり、該デバイスは、生体細胞が付着できるデバイス表面を持つ基板と、チャネルポートを持つアクセスチャネルとを備え、前記アクセスチャネルは前記デバイス表面に配置される。このアクセスチャネルは、前記基板を通る面に対してほぼ垂直な方向に延びる長手方向軸を有する。このアクセスチャネルは、制限された体積と、チャネルポートを除いてほぼ閉じた内部表面とを有する。このアクセスチャネルは、生体細胞を検知及び/又は駆動するための手段をさらに備え、生体細胞の突起部分がアクセスチャネルに進入でき、これにより、検知及び/又は駆動するための手段へのアクセスを提供する。
【0016】
該デバイスは、生体細胞が付着できるデバイス表面を備える。該デバイスは、チャネルポートを持つアクセスチャネルをさらに備え、前記チャネルポートは前記表面に配置される。アクセスチャネルは、一実施形態では、前記チャネルポートを通る面に対してほぼ垂直な方向に延びる長手方向軸を有する。該アクセスチャネルは、一実施形態では、制限された体積と、チャネルポートを除いてほぼ閉じた内部表面とを有する。ここでアクセスチャネルは、生体細胞を検知または駆動するためのセンサ及び/又はアクチュエータを備え、その結果、生体細胞には、例えば、アクセスチャネルに進入することによって、センサ及び/又はアクチュエータへのアクセスが提供される。
【0017】
本発明の発明者により、生体細胞が、その細胞膜を持つ表面にいったん付着すると、成長を開始して突起部分を形成し、こうした突起部分に適合した形状内になることが見出された。
【0018】
この成果は、前記形状がセンサまたはアクチュエータへのアクセスチャネルとして使用される点で本発明で活用した。換言すると、センサまたはアクチュエータは、マイクロニードルの上部表面には配置せず、チャネルポートを除いて閉じた内部表面を持つアクセスチャネルの内部に配置した。
【0019】
センサへのアクセスは、生体細胞がデバイス表面に対して充分に付着して、アクセスチャネル内部で突起部分を形成し始めた後に得られる。それは、検知が実行される突起部分でもある。しかしながら、突起部分は、中間障害物なしで生体細胞の残部と直接接触しているため、こうした測定が細胞全体を表現するものと考えられ、及び/又は、ある較正結果に基づいて細胞全体を表現する結果に変換できる。
【0020】
重要な一実施形態では、デバイス表面は、拡張した表面エリアを持つ非平坦な形状を有する。より好都合には、デバイス表面は、基板から延びる部分を備え、前記拡張した表面エリアは、基板上の垂直突起によって規定される基準表面積の少なくとも2倍である。本発明を導いた実験では、表面エリアを非平坦形状に拡張することによって、適切な付着が改善されることを見出した。1つの適切な非平坦形状は、例えば、基板から延びる1つ又はそれ以上の壁状部分によって囲まれた空洞の設置であり、その空洞内ではアクセスチャネルのチャネルポートが規定される。ここで使用する用語「デバイス表面」は、詳細には、付着またはより具体的には飲み込み(engulfment)が生ずるエリア内の表面を参照している。
【0021】
マイクロニードルを用いて、特に良好な結果が得られた。生体細胞が、欧州特許EP−A 1967581のマイクロニードルを飲み込むようになることが観察された。こうした飲み込みは、細胞膜とマイクロニードルの表面との間の特に堅固な結合を生じさせる。飲み込みは、センサまたはアクチュエータと細胞膜との間の電気結合をさらに改善する。
【0022】
デバイス表面の表面積の増加に加えてあるいはこれの代わりに、デバイス表面またはその一部を機能化することによって、表面と生体細胞との間の引力を改善してもよい。具体的な機能化(functionalization)は、化学的性質及び/又は電気的性質のものでもよい。化学的性質の機能化の例が、専用の官能基を含む1つ又はそれ以上の自己組織化単分子膜の付与である。典型的な単分子膜は、Au表面への連結基としてチオールを使用する。良好な結果が、シロキシル連結基を用いて得られるであろう。こうした単分子膜化合物の好都合な形成は、オリゴアルキレングリコール基などの抗タンパク質性の鎖、細胞膜との結合のための、認識または事前活性化した基などを含んでもよい。典型的には、こうした事前活性化した基が極性(polar)基である。適切なシラン化合物およびこれらの合成体が、例えば、欧州特許EP1607743 A1(IMEC参照番号2003/014)から知られており、これは参照によりここに組み込まれる。
【0023】
一実施形態では、アクセスチャネルにはセンサポートが設けられ、そこにセンサが存在する。好ましくは、このセンサポートは、アクセスチャネルの底部に配置される。しかしながら代替として、アクセスチャネルは、空洞へのアクセスを供与してもよく、その表面にセンサは存在する。こうした空洞の利点は、より大きな表面積を持つセンサが設置できることである。センサは、例えば、pHセンサなどの化学センサである。実験は典型的には等張液(isotonic fluid)を使用しているが、化学反応が細胞膜で発生し、例えば、pHの偏差を生じさせてもよい。
【0024】
他の実施形態では、アクセスチャネルは、突起した細胞部分を、例えば、容量結合によって検知及び/又は駆動するように、アクセスチャネルの側壁に電極を備える。容量結合を用いた電極の動作は、電界効果トランジスタのゲート電極の動作との類似性で理解できるであろう。即ち、電極への電圧印加が、生体細胞の突起部分内での電荷分布に影響を与えるようになる。印加電圧の変動が、細胞の突起部分をある一定の挙動に刺激できる。こうした挙動が、細胞内の挙動を模倣することが判明しており、これは、発生することは知られているが、現時点で理解されていない。その例が、細胞間の信号伝送の不良であり、及び/又は、その結果として患者による疼痛観察である。こうした挙動が、患者への治療を実施するように促進できる。電極の動作は、その表面積を拡大することによって増強される。従って、電極は、アクセスチャネルの内部表面全体をほぼ覆っていることが好都合である。
【0025】
その特定の実施例において、その表面に電極を備えたアクセスチャネルは、細胞を刺激するためにアクチュエータとして使用される。センサが、アクセスチャネルとは異なる場所に設けられる。センサは、アクセスチャネル内の駆動の結果として生ずる変化を検知するために使用される。アクセスチャネルとは異なる場所は、他のアクセスチャネル内でもよく、例えば、そのチャネルポートでもよい。しかしながら、代わりの場所も除外されない。一例は、細胞によって飲み込まれる検知マイクロニードルの中または上に存在しているセンサである。適切には、センサは、検知マイクロニードル内のアクセスチャネルのセンサポートに存在する。
【0026】
本発明の他の実施形態では、センサデバイスが設けられる。センサデバイスは、基板上に少なくとも1つのマイクロニードルを備える。そのマイクロニードルは、チャネルポートおよびセンサポートを持つアクセスチャネルを備える。そのアクセスチャネルは、マイクロニードルの上及び/又は周りに付着する生体細胞の突起部分へのアクセスを提供するように設計される。そのチャネルポートは、マイクロニードルの先端に配置される。そのアクセスチャネルは、適切には、絶縁材料のシャフトによって包囲される。センサデバイスは、センサポートに配置されたセンサをさらに備える。
【0027】
本発明の他の実施形態において、検知及び/又は駆動のための電子デバイスが提供される。電子デバイスは、基板上に少なくとも1つのマイクロニードルを備え、マイクロニードルの先端に配置されたチャネルポートを持つアクセスチャネルが設けられる。アクセスチャネルは、マイクロニードルの上及び/又は周りにデバイス表面、例えば、細胞接着エリアに付着する生体細胞の突起部分へのアクセスを提供するために設計される。アクセスチャネルは、前記基板を通る面に対してほぼ垂直な方向に延びる長手方向軸を有する。アクセスチャネルは、制限された体積と、チャネルポートを除いてほぼ閉じた内部表面とを有し、それは、突起した細胞部分を駆動するための電極を側壁に備える。
【0028】
本発明の他の態様によれば、生体細胞を検知及び/又は駆動する方法が提供される。該方法は、本発明に係る電子デバイスを用意するステップと、好ましくは、細胞が細胞接着エリアに付着するように、生体細胞をデバイス表面に設けるステップと、アクセスチャネル内への細胞の突起部分の成長を可能にするステップと、アクセスチャネル内で細胞の突起部分の検知及び/又は駆動を行うステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のデバイスの第1実施形態での図式的断面図を示す。
【図2】生体細胞がアクセスチャネル内に突起部分を形成した後、第1実施形態の図式的断面図を示す。
【図3】本発明のデバイスの第2実施形態での図式的断面図を示す。
【図4】本発明のデバイスの第3実施形態での図式的断面図を示す。
【図5】図5A〜Dは、図式的断面図において、生体細胞のエレクトロポレーションのための本発明のデバイスの使用の一連のステップを示す。
【図6】本発明のデバイスの第4実施形態での図式的断面図を示す。
【図7】本発明のデバイスの第5実施形態での図式的断面図を示す。
【図8】生体細胞のエレクトロポレーションのための本発明のデバイスの使用のフロー図を示す。
【図9】先行技術デバイスの図式的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、特定の実施形態に関して一定の図面を参照しながら説明しているが、本発明はこれによって限定されず、請求項によってのみ限定される。ここで記載した図面は、概略的に過ぎず、限定的なものでない。図面において、幾つかの要素のサイズは強調していることがあり、説明目的のため、スケールどおりに描いていない。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実施化に対応していない。異なる図面で同じ参照番号は、等しいまたは類似の要素を参照している。
【0031】
図1は、生体細胞がデバイスに付着した直後における本発明のデバイスの第1実施形態での図式的断面図を示す。図2は、細胞がアクセスチャネル20に進入した第2の状態での第1実施形態のデバイスを示す。デバイスは、デバイス表面を備える。デバイスは、チャネルポート21を持つアクセスチャネル20をさらに備える。チャネルポート21は、その表面内に配置される。アクセスチャネル20は、長手方向軸Aを有し、本例では、チャネルポート21を通る面、あるいは、基板を通る面に対してに対してほぼ垂直な方向に延びている。アクセスチャネル20は、制限された体積と、チャネルポート21を除いてほぼ閉じた内部表面とを有する。用語「ほぼ閉じた」とは、本願の状況では、追加のポート、例えば、後述する化学ポートがアクセスチャネル20内に存在することを意味すると理解される。しかしながら、こうした追加ポートはオプションである。アクセスチャネルは、チャネルポートを除いて閉じていてもよい。
【0032】
アクセスチャネル20は、検知及び/又は駆動のための手段24,25を備える。これは、アクセスチャネル20に進入して、生体細胞40は、検知及び/又は駆動のためのこれらの手段24,25へのアクセスが提供されることによって行われる。検知及び/又は駆動のための手段は、電極、例えば、導電層、センサ、アクチュエータまたはこれらの組合せを参照してもよい。検知及び/又は駆動のための手段25の配置は、前記検知及び/又は駆動が、アクセスチャネル20に進入した細胞40の当該部分に適用されることを意味する。この部分は、ここでは細胞の突起部分41とも称している。この突起部分41は、生体細胞40が付着したときは存在していないと理解される。それは、アクセスチャネル20によって提供されるテンプレート形状に基づいて形成される。
【0033】
こうして本発明の方法では異なる段階を区別し得る。最初に生体細胞40が付着する。この付着プロセスは、デバイス表面に対する個々の細胞の特異的付着とすることができるが、それは適切には、複数の生体細胞を持つ流体、例えば、自由培地(free culture medium)が付着するプロセスである。その後、個々の細胞が表面に移動する。この移動は、拡散、対流、電磁引力、例えば、電位差の印加によるもの、またはこうした効果の組合せによって生じてもよい。
【0034】
適切には、デバイス表面は、細胞がその表面を濡らすように設計または処理されている。表面の表面濡れが、表面材料と、表面に存在する液体との間の表面張力によって支配され、典型的には接触角を用いて表わされる。濡れの程度は、例えば、液体分子を表面に引き寄せる接着力と、例えば、液体分子を相互に引き寄せる凝集力との間の力のバランスによって決定される。好ましくは、表面は親水性である。最も適切には、表面積は、表面が非平坦な形状、例えば、マイクロニードルの表面または空洞表面を有する点で増加している。これは、力のバランスが接着に向かってさらにシフトするようになる。このプロセスは、幾何形状の要因によって増強できる。最も適切には、こうした要因が、生体細胞の外部非接着部分が、最適化されて理想的に最小の表面積を有することを可能にする。これは、例えば、細胞40によるマイクロニードル15の飲み込み(engulfment)によって達成される。
【0035】
表面濡れが生ずる前記接着プロセスは、適切な表面処理の適用によってさらに改善できることが観察される。こうした表面処理の1つが、デバイス表面の機能化(functionalization)である。その結果、単なる接着が、表面に結合することによって補強できる。この結合は、分子結合、あるいは水素結合、そしてダイポール/ダイポール、及び/又は、ダイポール/誘起ダイポールの相互作用を反映したファンデルワールス結合とすることができる。
【0036】
続いて、デバイス表面に存在し、即ち、接着している細胞40は、アクセスチャネル20に進入できる。この進入は、飲み込みを生じさせる前のステップでのプロセスとは適合しないことが判る。実際、本発明者は、次の仮説に束縛されることを望んでいないが、細胞40の突起部分41がアクセスチャネル20内での形成を開始するように成長が起こると考える。こうした突起部分41が、全タイプの種々の細胞20を用いて形成できる。1つの科学的で医学的に関心のある応用において、細胞40はニューロンである。突起した細胞部分41は、本例では、シナプスであってもよい。
【0037】
突起部分41の成長に寄与し得る要因は、例えば、チャネルポートで測定した場合の、アクセスチャネル20の有効直径、細胞膜40によって濡れ性になり得る、アクセスチャネル20の内側表面、細胞膜の成長または移動が何れの制約によっても妨害されないように充分に円滑な表面、好ましくは、チャネルポートに対してほぼ平行な面内で断面図で見た円形または長円形の形状などである。従って、アクセスチャネルは、細胞の突起部分が適合しない角部(corner)を有していない。他の寄与手段は、直径が増加するチャネルポートにおけるアクセスチャネルの設置である。後者の手段の意図は、アクセスチャネル内面およびデバイス表面との間の鋭いエッジを回避することである。
【0038】
検知及び/又は駆動のための手段をアクセスチャネル内部に設置する1つの利点は、検知及び/又は駆動が、アクセスチャネル20に進入した細胞40の当該部分41(だけ)に適用されることである。この突起部分は、生体細胞40の一体部分であって、限定された体積を持つ部分である。さらに、細胞40のこうした突起部分が拡散のスペースまたは機会が少ないのは、平坦な表面でのいずれの部分である。これにより、細胞40の検知及び/又は駆動がより管理された方法で実行することができ、再現性が良好になる。
【0039】
検知及び/又は駆動のための手段をアクセスチャネル内部に設置する更なる利点は、あまり生じない(ほぼ平坦な表面の場合は全く生じない)特異反応が発生可能であること、及び/又は、発生するのを刺激できることである。1つのこうした反応が細胞膜のエレクトロポレーションであり、他のこうした反応がシナプス形成である。
【0040】
図1の実施形態では、アクセスチャネル20の内面に沿って延びる電極25が、検知及び/又は駆動のための前記手段を構成している。好ましいことであるが、電極25は、アクセスチャネル20の内面全体を覆う必要はない。電極25は、酸化物または窒化物などの誘電体層で被覆してもよい。相互接続3が電極25に電圧を印加するために存在している。適切には、例えば、SiCからなる拡散バリア(不図示)が存在しており、下地の基板1をアクセスチャネル20から絶縁している。この拡散バリアは、細胞毒性(cytotoxicity)を減少させることが判明している。
【0041】
本実施形態では、これは必須ではないが、デバイス表面は、拡張した表面エリアを持つ非平坦な形状を有する。特に、図1と図2に示すように、非平坦な形状は、生体細胞40がデバイス表面を飲み込むことが可能なように設計される。本例では、デバイス表面は、アクセスチャネル20の長手方向軸Aに対してほぼ平行に延びる部分を、即ち、ブロック形状、円筒形状または柱形状の本体の外側に有する。この本体は、最も好都合な実施形態では、マイクロニードル、即ち、基板の面に対してほぼ垂直に配向した構造で、50nm〜10μm、例えば、100nm〜6μmの幅を有し、150nm〜50μmの高さを有する。マイクロニードルは、絶縁材料からなるシャフトでもよい。最も適切には、アクセスチャネル20は、チャネルポートの面に対して平行な長円または円形の断面を持つ溝形状である。しかしながら、アクセスチャネルが化学ポートを備えることを除外していない。試薬が、化学ポートに存在してもよく、または、例えば、マイクロ流体チャネルを用いて前記化学ポートに移送してもよい。さらに、溝形状のチャネルが、その底部で幅広になった部分を備えてもよいことは、除外していない。
【0042】
適切な実施形態では、アクセスチャネルは、1より大きい深さ対直径のアスペクト比を有する。好ましくは、前記アスペクト比は5またはそれより大きく、より好ましくは、前記アスペクト比は10またはそれより大きい。アクセスチャネルは、適切には、0.1〜8ミクロン、好ましくは1〜7.5ミクロン、より好ましくは3〜7ミクロンの範囲の直径を有する。アクセスチャネルは、適切には、0.3〜15ミクロン、好ましくは1〜8ミクロンの範囲の深さを有する。アクセスチャネル20が、マイクロニードル15または基板から延びる他の本体の内部に存在する場合、アクセスチャネルは、前記マイクロニードルより大きいか、等しいか、または小さい高さを有してもよい。その高さは、特定の細胞型に合うように調整してもよい。アクセスチャネルの高さがマイクロニードル15のものより大きい場合、これは下地の基板への連続エッチングによって達成できる。
【0043】
代替として、それは、マイクロニードル外部の基板を1つ又はそれ以上の基板で覆うことによって達成できる。これによりマイクロニードルの高さを有効に低減する。こうした被覆が、ある一定の材料の堆積または成長によって達成できるが、代替として、マイクロニードルを形成しながらテンプレート層の単なる部分除去によって達成できる。
【0044】
更なる実施形態において、タンパク質またはペプチドを用いた、アクセスポート及び/又はアクセスチャネル20の内面(側壁とも称する)の機能化が提供される。前記機能化は、生体細胞40または生体細胞40の突起部分41を引き寄せる。機能化を提供する分子の適切な例が、ポリ−L−リジン、ラミニン、ペプチド、例えば、RGD、PA22−2等を含む。機能化は、例えば、化学吸着を用いて自己組織化単分子膜を介して付与してもよい。さらに発展したバージョンでは、機能化は、細胞内の特異反応を誘発する。この目的に適した分子の例が、グルタミン酸レセプタ、グルタミン酸抗体、インテグリン等を含む。誘発される反応の例が、接着斑(focal adhesion)の促進、および、細胞膜の上または中のある一定の受容発現(reception expression)等を含む。
【0045】
図3は、本発明に係る更なる実施形態の図式的断面図を示すもので、それぞれアクセスチャネル20を備えた第1および第2のマイクロニードルが設けられる。電極25は、マイクロニードル両方の内面に延びている。これにより生体細胞40の突起部分を刺激するための有効表面積は、かなり増加している。この非限定的な実施形態では、電極は、マイクロニードルの先端およびマイクロニードル両方の内面に沿って連続的である。
【0046】
図4は、本発明に係る他の実施形態の図式的断面図を示す。本実施形態は、上述した第3の方法に従って最も適切に製造される。それは、互いに平行で、基板1内部で規定された複数のアクセスチャネル20を備える。複数のアクセスチャネル20は、好ましくは5個より多いアクセスチャネルを備え、より好ましくは少なくとも10個のアクセスチャネル、さらにより好ましくは、少なくとも20個のアクセスチャネルのアレイを備える。本実施形態の利点は、電極25の表面積のかなり増加である。こうして細胞のより強い刺激が提供できる。さらに、アクセスチャネルのアレイのセクションが隔離でき、細胞の挙動の局所的な相違を研究できる。
【0047】
図6は、本発明に係る更なる実施形態の図式的断面図を示す。ここで、マイクロニードルは、アクセスチャネル20に加えて垂直導体5を備える。その利点は、分離したセンサ及び/又はアクチュエータがマイクロニードルの先端に存在できることである。特に、センサの設置は有益であると考えられる。これにより突起部分41の外側における細胞の変化を検出することが可能になる。アクチュエータとして使用した場合、細胞を刺激して、アクセスチャネル20内へ成長させるのに有益であろう。
【0048】
図7は、本発明に係るさらに他の実施形態の図式的断面図を示す。ここで、センサ24が、検知及び/又は駆動のための手段を構成する。センサ24は、センサポート(不図示)に、好ましくは、アクセスチャネル20の底部に設けられる。適切には、半導体基板1の中またはその上部に直接に製造される。センサは、容量センサ、トランジスタタイプのセンサ、例えば、chemFETとして知られたタイプのセンサ、化学センサ、例えば、pHセンサでもよい。特に、センサは、生体細胞のエレクトロポレーションの際に生ずる1つ又はそれ以上の特性を検知するように調整できる。
【0049】
図8は、エレクトロポレーションの際に生ずるステップ・シーケンス100を示す。第1ステップ101では、電圧パルスが印加される。パルスの電圧は、好ましくは200mV〜10Vの範囲である。パルスは、好ましくは数ナノ秒の間に印加され、適切には1MHz〜約1GHzの範囲の周波数である。
【0050】
電圧パルス印加の結果は、ステップ102として示しており、細胞の細胞膜に開口部が形成される。こうした開口部形成のための閾値電圧は、電極と細胞膜との間の結合の有効性に依存する。結合は、表面積を増加させることによって、さらに増強される。
【0051】
ステップ103が、好ましくは、細胞膜の前記開口部の生成と同時に起こる。ここで、試薬が、細胞との相互作用のためのアクセスチャネル20内に放出される。試薬は、分子またはイオンとして放出してもよい。試薬は、放出の前に、アクセスチャネル内の化学ポートに存在してもよい。それは、デバイスの製造の間またはその後に設置してもよい。それは、固体の形態または、流体の形態、例えば、溶液、懸濁液、分散液または(粘稠)液でもよい。流体の形態の場合、試薬は、マイクロ流体チャネルを用いて化学ポートに適切に移送される。代替として、試薬は、アクセスチャネルの内面に機能化された形態で存在してもよい。自己組織化単分子膜をこうした機能化のために使用してもよい。試薬の放出(ステップ103)および開口部の形成(ステップ102)の同時発生は、電圧パルスの印加時に放出を開始する機能化を選択することによって達成できる。しかしながら、試薬の放出は、別に開始してもよい。例えば、アクセスチャネル内への培地の設置によって開始できる。1つの特定の実施例では、試薬はアクセスチャネルの底部に存在する。続いて細胞がアクセスチャネルに進入すると、試薬が存在する。
【0052】
ステップ104,105は、後続のステップを示すもので、試薬は最初に、細胞膜に形成された開口部を通って細胞内に拡散し、その後、細胞内の反応または物理的変化を誘発する。再び、これは事実上、前ステップの方法の後続の段階および結果である。1つの適切な試薬が、例えば、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン、例えば、Ca2+である。続いて、細胞内に拡散した金属イオンの量は、電気的に測定できる。機能化に適した分子は、例えば、グルタミン酸酵素、アセチルコリン酵素である。
【0053】
ステップ106は、生じた誘導反応の変化または誘導された物理変化の検知を示す。検知は、好ましくは、アクセスチャネル内のセンサを用いて実行される。しかしながら、これは必須ではなく、代わりに別の場所にあるセンサを使用してもよい。
【0054】
図5A〜Dは、更なる説明として、一連の断面図において、エレクトロポレーションのためのデバイスの使用を示す。この使用は、特に図7に示すデバイスを用いて実行される。
【0055】
図5Aは、突起部分41の形成前における細胞40の存在を示す。アクセスチャネル20は、本実施形態では、センサポートにあるセンサ25と、試薬30とを備える。試薬30は、本実施形態では、アクセスチャネル20の内面に機能化され接着した形態で存在する。
【0056】
図5Bは、アクセスチャネル20内の突起部分41の形成後の状況を示す。この図は、図8のフロー図のスタート状況に対応している。図は、細胞と突起部分との間で鋭い角度を示しているが、これは現実を適切に表現しているとは理解していない。さらに、アクセスチャネル20内への細胞の挿入が、その内面に沿って生ずると考えられる。
【0057】
図5Cは、充分な電圧の印加(ステップ101)によって生じた、アクセスチャネル20内への試薬30の放出後の状況を示す(ステップ103)。この図では、エレクトロポレーション(ステップ102)も示している。試薬30は、ここではアクセスチャネル20内の液滴として示す。これは、親水性の頭部と疎水性の尾部を有するある一定の試薬を用いて生じ得る。こうした試薬は、外側に胴部を備え、内側に尾部を備えた小胞(vesicle)を形成できる。しかしながら、試薬が内面から細胞の突起部分41に液滴状の構成で流れることが必然であるとは考えない。代替として、試薬30は、アクセスチャネル20内の培地に溶解してもよい。
【0058】
図5Dは、細胞40内への試薬30の拡散後の続く状況を示す(ステップ104)。ここで反応が誘発され、得られた変化が例えば、センサ25を用いて測定できる。
【0059】
シナプス形成は、区別できるシナプス特殊化の形成である。それは、一連の複雑なイベント、全域のニューロン分化、シナプス前およびシナプス後の分化の局所的誘導を含む。
【0060】
(デバイスの製造)
図7に示すデバイスは、種々の製造方法によって得られる。第1の方法によれば、標準のCMOSメタライゼーション/バックエンド(back-end)プロセスを使用して、前記マイクロニードルを製造している。このバックエンドプロセスは、基板、例えば、シリコンウエハまたはシリコン・オン・インシュレータウエハの上で実行される。デバイスは、公知の方法に従って基板に適切に規定され、一実施形態では(図7に示すように)センサ24を含む。必要に応じて、金属相互接続をシリコン酸化物に埋め込んで、Cuダマシン(damascene)プロセスを用いて製造した。例えば、SiC,TiN,Siからなるエッチング停止層を金属上に堆積した。
【0061】
続いて、誘電体材料からなる比較的厚い層を堆積する。好ましくは、誘電体層は、非多孔性である。誘電体材料は、例えば、有機誘電体または酸化物、例えば、シリコン酸化物である。適切な堆積技術がPECVDであるが、例えば、スピンオン酸化物などの代替法も除外されない。誘電体層は、センサと整列したアクセスチャネル20を下部に規定するように、特に、深堀反応性イオンエッチングを用いてパターン化した。センサをセンサポートに露出させるために、エッチング停止層は、アクセスチャネルにおいて局所的に除去される。孔の直径は、一実施形態では、250nm〜1μmの範囲であるが、他の直径を選択してもよい。
【0062】
その後、導電層25をアクセスチャネル20内に堆積した。導電層25の前に、接着層を堆積してもよい。導電層は、薄い誘電体層、例えば、酸化物または窒化物によって再び覆ってもよい。アルミニウム(Al)およびタングステン(W)は、特に、追加の誘電体層で覆われない場合、導電層25にとって適切な材料である。それは低い毒性を有する。一実施形態では、センサまたはアクチュエータを共に構成する複数の層が、アクセスチャネル20内で絶縁保護(conformal)コーティングとして堆積される。イリジウム酸化物、チタニウム窒化物などの材料が、センサまたはアクチュエータとして動作するスタックに包含するのに適している。その後、アクセスチャネル20は、犠牲層で充填してもよく、これは後続のステップにおいてパターン形成のためにも用いられるレジストでもよい。
【0063】
続いて、レジスト・ドットが、誘電体層の上部において、除去されない場所に形成される。前記場所を覆うドットは、アクセスチャネル20の直径より僅かに大きい。ドットの特別なエリア、即ち、アクセスチャネル20の直径より大きいエリアは、アクセスチャネル20を取り囲む本体15の幅を規定する。ドットは、100nm〜6μm、または600nm〜1200nmの直径を有してもよい。
【0064】
その後、絶縁層は、例えば、深堀反応性イオンエッチングによってエッチングでき、アクセスチャネル20を取り囲む、50nm〜1μm、例えば、100nm〜200nmの絶縁材料からなるシャフトを残す。本体15、例えば、マイクロニードルの全体幅または直径は、100nm〜6μm、例えば、600nm〜1200nmの直径でもよい。最後にレジスト・ドットおよび犠牲層の両方を除去する。
【0065】
必要であれば、アクセスチャネルの設置の前に、ビアを誘電体層に設けてもよい。このビアは、マイクロニードルの先端との電気接続を規定して、追加のセンサ及び/又はアクチュエータの設置を可能にする。追加のセンサまたはアクチュエータは、例えば、電極である。同じマイクロニードル内に存在する代わりに、こうしたビアが隣接マイクロニードル内に存在してもよい。
【0066】
本発明に係るデバイスを製造する第2の実施例によれば、電極は、プラチナ(Pt)で規定される。製造は、シリコンウエハ上の絶縁層上に堆積した、例えば、Cuからなる相互接続の設置とともに再びスタートする。適切なパターンが、例えば、誘電体層、例えば、シリコン酸化物に埋め込まれた、200〜500nmの厚さを持つ相互接続を含む。例えば、500nm〜3μmの範囲の厚さを持つ次の誘電体層がその上に設けられる。アクセスチャネル20のプラズマエッチングを誘電体層内で行った。その後、クリーニング工程の後に、例えば、誘電体層上およびアクセスチャネル内でのスパッタリングによって、シード(seed)層、例えば、Auシード層を堆積した。シード層の不要部分、例えば、上面を、例えば、機械研磨によって除去した。
【0067】
その後、半製品デバイス、好ましくは、ウエハなどの1つの基板上に存在する半製品デバイスのセットを、ガルバニック置換反応のための溶液中に浸漬した。一例では、溶液は、40mMの濃度を持つヘキサクロロ白金酸水和物(HPtCl)溶液を含んでいた。反応時間は、一例では、30〜180秒で変動した。強い磁気撹拌を印加した。準備したウエハは、DI水でリンスを行った後、窒素ガンを用いて乾燥した。続いて、誘電体層を、一例では、シリコン酸化物を緩衝HF溶液(BHF,7:1)中で4〜5分間エッチングを行い、Ptナノシェルチューブに露出させ、その後、DI水でリンスを行った。
【0068】
本発明の第3の実施例によれば、開始テンプレートは、例えば、シリコン製の半導体基板であった。例えば、シリコン酸化物からなるマスクをシリコンウエハ上に所望のパターンに従って設けた。深堀反応性イオンエッチングを用いて、アクセスチャネル(即ち、溝)をシリコン中にエッチングした。続いて、アクセスチャネルの表面をドーパント注入によって高い導電性にした。その後、1つ又はそれ以上の誘電体層を堆積した。コンタクトを、ドーパントが注入されたエリア内でトレンチ近傍に設置した。適切には、アクセスチャネルは犠牲層を用いて被覆した。追加の層、例えば、相互接続および、適切にはアクセスチャネル周りの突起は、デバイスレイアウトを最適化するように設けた。最後に、犠牲層を再び除去した。
【0069】
(例)
マイクロニードル形態の本体15を用意する。この本体は、6μmの高さを持つ酸化物を含む。その直径は、2.5μm〜1.8μmの範囲である。アクセスチャネル20がマイクロニードル本体15内に存在し、酸化物は、アクセスチャネル20周りのシャフトを形成する。アクセスチャネル20は、0.5〜1.5μmの直径で規定される。個々のマイクロニードル間の間隔が、3μm〜1μmの範囲である。アクセスチャネルを持つ本体は、上述したような製造プロセスの第1実施形態に従って製造した。TiN層がマイクロニードル15の上部に存在している。
【0070】
マウス海馬ニューロンを、胎生期17(E17)のマウス胎児から隔離する。播種の前に、表面をポリ−L−リジンを用いて塗布して、細胞の接着性を改善する。そして、ニューロンをマイクロニードル上に播種する。
【0071】
1〜3インビトロ日数(DIV)の後、細胞をホルムアルデヒドを用いて固定する。共焦点顕微鏡撮影を行う前に、0.5% Triton X100を用いて細胞の浸透性を高め、Phalloidin 488を用いて染色し、細胞内に存在するアクチンフィラメントを可視化する必要がある。走査電子顕微鏡画像を作成する前に、細胞をOsO処理し、臨界点乾燥によって乾燥させる。
【0072】
本発明の詳細が、走査電子顕微鏡写真(SEM)から得られる画像によって提供できる。細胞は、最初にマイクロニードル本体アレイの上部に存在する。ある一定のスポットで、ニューロンは、目で見えるほどマイクロニードルを極めてしっかり飲み込む。細胞は、アクセスチャネル20の内部で成長する。ニューロン細胞のマイクロニードルへの堅い接着が実証できる。これは、マイクロニードルの種々の寸法、個々のマイクロニードル間の種々の間隔、およびアクセスチャネルの種々の直径について観察された。アクセスチャネル20を備えたマイクロニードル上での細胞のZスタックが、共焦点顕微鏡法を用いて作成される。アクチンリングがマイクロニードルの外側部分の周りに細胞本体に存在することが観察された。アクチンドットが、マイクロニードル内のアクセスチャネルと一致することが観察された。これは、細胞骨格がアクセスチャネル内で成長し、底レベルまで降下できることを示している。それは、全体としての細胞ではなく、特に細胞骨格内のアクチンフィラメントである。さらに、アクチンドットおよびアクセスチャネル20は同じ直径を有することが画像上で観察される。これにより、アクチンフィラメント、例えば、細胞の突起部分は、アクセスチャネル20の内面に接着しているという結論が導かれる。
【0073】
(他の観察)
本発明は、生体細胞が付着するデバイス表面を備え、さらにセンサ及び/又はアクチュエータあるいは、検知及び/又は駆動のための他の手段と、チャネルポートを持つアクセスチャネルとを備え、前記チャネルポートは前記表面に配置されている、検知及び/又は駆動のための電子デバイスとして要約できる。アクセスチャネルは、アクセスチャネルに進入する生体細胞にセンサへのアクセスが提供されるように設計される。適切には、アクセスチャネルは、前記チャネルポートを通る面に対してほぼ垂直な方向に延びる長手方向軸を有する。より適切には、アクセスチャネルは、制限された体積と、チャネルポートを除いてほぼ閉じた内部表面とを有する。好ましい実施形態では、センサまたはアクチュエータは、アクセスチャネル内のセンサポートに存在する。アクセスチャネルの設計は、特に、細胞接着エリア内のデバイス表面への細胞の接着の際、突起部分が形成されて、アクセスチャネルに進入するようにしている。その後、突起部分は、アクセスチャネル内に存在する手段によって検知され及び/又は駆動される。
【0074】
さらに本発明は、このデバイスの使用に関するもので、その種々の実施形態の1つでは、特に、細胞、特にニューロンの突起部分を検知及び/又は駆動するためのものである。好都合には、それは、細胞のエレクトロポレーションを可能にするために使用される。デバイスはさらに、細胞刺激治療の一部として生体細胞の駆動のために使用できる。デバイスはさらに、人体への移植のために使用できる。それは、検知または駆動の目的に役立ち、代替として特定の薬剤の細胞への供給のために使用できる。本発明はまた、特にエレクトロポレーションプロセスにおける細胞への付着に適している薬剤調製のための方法に関係しており、能動コンポーネントが本発明のデバイスに設けられる。そして、能動コンポーネントは、例えば、内面の少なくとも一部に付与された機能化の形態でアクセスチャネル内に格納される。
【0075】
さらに、説明および請求項での用語「第1」「第2」「第3」などは、類似の要素を区別するために使用しており、必ずしも時間的、空間的、ランキングまたは他の方法での順番を記述するためではないことは明確に留意される。ここで使用した用語は、適切な状況下で交換可能であり、ここで説明した本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0076】
さらに、説明および請求項での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、適切な状況下で交換可能であって、ここで説明した本発明の実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0077】
請求項で用いた用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に挙げた手段に限定されるものとして解釈すべきでなく、他の要素またはステップを除外していないことに留意する。記述した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。こうして表現「手段A,Bを備えるデバイス」の範囲は、構成要素A,Bのみから成るデバイスに限定すべきでない。本発明に関して、デバイスの関連する構成要素だけがA,Bであることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知及び/又は駆動のための電子デバイスであって、
生体細胞が付着できるデバイス表面を持つ基板と、
チャネルポートを持つアクセスチャネルとを備え、
前記チャネルポートは、前記デバイス表面に配置され、
該アクセスチャネルは、前記基板を通る面に対してほぼ垂直な方向に延びる長手方向軸を有し、
該アクセスチャネルは、制限された体積と、チャネルポートを除いてほぼ閉じた内部表面とを有し、
該アクセスチャネルは、生体細胞を検知及び/又は駆動するための手段をさらに備え、生体細胞の突起部分がアクセスチャネルに進入可能になり、検知及び/又は駆動するための手段へのアクセスを提供するようにした電子デバイス。
【請求項2】
デバイス表面は、拡張した表面エリアを持つ非平坦な形状を有する請求項1記載の電子デバイス。
【請求項3】
基板上に、少なくとも1つのマイクロニードルを備え、
該マイクロニードルは、マイクロニードルの先端に配置されたチャネルポートを持つアクセスチャネルを備える請求項1または2記載の電子デバイス。
【請求項4】
検知及び/又は駆動するための手段は、アクセスチャネルのセンサポートにセンサを備える請求項1〜3のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項5】
基板から延びる表面エリアの表面部分がマイクロニードルであり、
前記チャネルポートは、マイクロニードルの先端に規定されている請求項4記載の電子デバイス。
【請求項6】
アクセスチャネルは、細胞を検知及び/又は駆動するために、アクセスチャネルの内面の少なくとも一部に電極を備える請求項1〜5のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項7】
検知及び/又は駆動するための手段は、電圧パルスを印加するための電極および、細胞及び/又はその部分との相互作用に適した試薬の格納部を持つエレクトロポレーションエレメントを備える請求項1〜6のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項8】
試薬は、自己組織化単分子膜を用いて格納される請求項1〜7のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項9】
アクセスチャネルとは異なる場所に、センサをさらに備える請求項1〜8のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項10】
基板上に、少なくとも1つのマイクロニードルを備え、
該マイクロニードルは、化学ポートおよびセンサポートを持つアクセスチャネルを備え、
該アクセスチャネルは、マイクロニードル及び/又はその周りに付着した生体細胞を検知及び/又は駆動するように設計され、
該チャネルポートは、マイクロニードルの先端に配置されており、
センサポートに配置されたセンサをさらに備える請求項1〜9のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項11】
細胞を駆動するための電極を側壁に備える請求項1〜10のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項12】
センサが、マイクロニードルとは異なる場所に存在し、
該センサは、マイクロニードル内の電極を介して細胞を駆動する際、細胞の特性を検知可能である請求項11記載の電子デバイス。
【請求項13】
生体細胞を検知及び/又は駆動する方法であって、
請求項1〜12のいずれかに記載の電子デバイスを用意するステップと、
生体細胞をデバイス表面に設けるステップと、
アクセスチャネル内への細胞の突起部分の成長を可能にするステップと、
アクセスチャネル内で細胞の検知及び/又は駆動を行うステップとを含む方法。
【請求項14】
生体細胞は、アクセスチャネル内のセンサポートに配置されたセンサにおいて検知される請求項13記載の方法。
【請求項15】
生体細胞は、アクセスチャネルの側壁にある電極を用いて検知及び/又は駆動される請求項13記載の方法。
【請求項16】
生体細胞は、電極を用いて駆動され、
生体細胞は、アクセスチャネルとは別のセンサにおいて検知される請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのマイクロニードルを基板上に備えた電子デバイスであって、
マイクロニードルの先端に配置されたチャネルポートを持つアクセスチャネルを備え、
該アクセスチャネルは、マイクロニードル及び/又はその周りにあるデバイス表面に付着した生体細胞にアクセスを提供するように設計され、
該アクセスチャネルは、前記基板を通る面に対してほぼ垂直な方向に延びる長手方向軸を有し、
該アクセスチャネルは、制限された体積と、チャネルポートを除いてほぼ閉じた内部表面とを有し、
該アクセスチャネルは、細胞を駆動するための電極を側壁に備える、電子デバイス。
【請求項18】
少なくとも1つのマイクロニードルを基板上に備え、
該マイクロニードルは、チャネルポートおよびセンサポートを持つアクセスチャネルを備え、
該アクセスチャネルは、マイクロニードル及び/又はその周りに付着した生体細胞にアクセスを提供するように設計され、
該チャネルポートは、マイクロニードルの先端に配置され、
センサポートに配置されたセンサをさらに備えるセンサデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−516163(P2013−516163A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546453(P2012−546453)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070947
【国際公開番号】WO2011/080327
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】