説明

改良医療デバイス

組織損傷の改善および/または組織修復の促進および/または対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した合併症(例えば、炎症や再狭窄など)の制限または抑制に役立つ医療デバイスが要望されている。損傷組織および/または炎症の防止、改善、または治療に役立つ、そして/または組織修復の促進に役立つ、ならびに腫脹、過形成または他の異常な細胞配置、成長および/または増殖、および/または組織損傷の防止、改善、または治療に役立つ医療デバイスを提供することが望ましいであろう。このようなデバイス、その製造方法および使用を本発明は提供する。具体的には、対象への導入に適した抗コネキシン剤を含む医療デバイスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、1または複数の抗コネキシン剤を、1または複数の他の治療薬および/または創傷治癒剤と共に、または単独で、使用または適用の際にこれらが接触する組織および/または流体に曝露させ、かつ/または送達する構造(composition)、表面、または特性を有するデバイスを含めた医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
以下は、本発明の理解に有用でありうる情報を含む。このことは、本明細書に記載される情報が、本明細書に記載または特許請求されている発明に対する先行技術であるか、もしくはこれに関連していることを認めるものでも、明示的にもしくは暗黙に同定される刊行物もしくは文書が先行技術であることを認めるものでもない。本特許で言及される全ての文書および他の情報は、その全体が本明細書中に参考により援用される。
【0003】
過去20年に渡って、対象哺乳動物の生体の生理学的機能を修復、維持、または促進するために多種多様な臨床設定で使用される医療デバイスおよび医療機械の開発に向けて、多大な研究努力が行われてきた。例えば、カテーテル、人工心臓弁、ペースメーカー、パルス発生器、心臓除細動器、動静脈シャント、およびステントなどのデバイスが、心疾患および他の疾患の治療に広く使用されている。例えば、ねじ、アンカー、プレート、ステープル、鋲、ジョイント、および同様のデバイスを含む医療デバイスの他の例も、整形外科手術に用いられている。これらの植え込み型医療デバイスは、例えば、金属、プラスチック、および様々なポリマー材料を含め、多種多様な材料から形成される。他の整形外科用デバイスの例として、インプラント、例えば、股関節部、肩、肘、および膝の置換および外科手術、または頭蓋顎顔面再建のためのインプラントなどのインプラント、およびインプラントコーティング、ならびにバー(burr)、縫合糸通し器具、関節鏡検査用シェーバーを含む関節鏡処置および腹腔鏡処置に用いられるデバイスが挙げられる。医療デバイスの他の例として、眼内レンズおよび緑内障シャントを含むインプラントなどの眼用デバイスが挙げられる。さらに他のデバイスの例として、胃腸インプラントが挙げられる。医療デバイスの他の例として、内視鏡検査、子宮鏡検査、細胞検査、および気管支鏡検査などのためのデバイスが挙げられる。
【0004】
医療デバイス、例えば、植え込み型医療デバイスが対象に接触すると、自然の身体のプロセスにより、炎症、腫脹、細胞過多、または他の異常な細胞配置(cellular disposition)、成長および/または増殖、および/または組織損傷が生じることがある。例えば、血小板は、医療デバイスに付着し、例えば、血栓症、白血球付着、および/または炎症および/または異常な細胞増殖につながる好中球および/またはマクロファージの遊走などの、使用部位または植え込み部位でのさらなる合併症を引き起こしうる。医療デバイスの対象との接触から起きるこのようなプロセスの例は、組織損傷および/または再狭窄につながりうるカテーテルまたはステントの使用によってもたらされる。再狭窄は、通常は、動脈の狭窄した部分または閉塞した部分を開けようとして動脈に引き起こされる外傷の後に生じる末梢動脈または冠動脈の再閉鎖であり、もたらされる外傷は、例えば、動脈のバルーン拡張、アブレーション、粥腫切除術、またはレーザー治療によって引き起こされうる。例えば、バルーンによる動脈損傷により、内皮が露出され、これに続いて機能不全の内皮が再増殖し、これが局所平滑筋細胞増殖および細胞外マトリクスの生産の一因となり、動脈内腔が再閉塞することがあると報告されている。再狭窄は、このような血管形成手術を受けた患者の50%ほどに起きると報告されている。再狭窄は、このような血管形成手術によって引き起こされる動脈壁の傷害に反応した自然の治癒過程であると考えられている。治癒過程は、傷害部位での血栓の機序で始まる。治癒過程の最終段階は、細胞外マトリクスの生産と結びついた、内膜過形成、内側平滑筋細胞の制御不能な遊走および増殖であり得、動脈が再び狭窄するかまたは閉塞する。
【0005】
ヒトおよび他の哺乳動物において、創傷は、細胞イベントおよび生化学的イベントの組織化された複雑なカスケードを誘発し、この結果、大半の場合において創傷の治癒がもたらされる。理想的に治癒した創傷とは、細胞レベル、組織レベル、器官レベル、および生物レベルにおける正常な解剖学的構造、機能、および外見が回復しているものである。外傷、微生物、または外来物質のいずれにより誘発されたものでも、創傷の治癒は、炎症、上皮形成、血管形成新脈管形成、およびマトリックス沈着を含めた多数いくつものオーバーラップした段階を包含する複雑な過程により進行する。通常、これらの過程により、創傷の成熟完成(mature wound)およびある程度の瘢痕形成がもたらされる。炎症および修復は、大抵は規定のコースに沿って起こるが、この過程の感度は、例えば、制御サイトカインおよび成長因子のネットワークを含む様々な創傷治癒調節因子のバランスに依存する。
【0006】
創傷治癒過程の基礎を成す原理の理解の進展にもかかわらず、慢性創傷などの創傷に対する遅延したかまたは弱まった創傷治癒、ならびに急性および亜急性創傷を含むこれらおよび他の創傷に関連した腫脹、炎症、上皮化速度、および瘢痕を含む創傷ケアに適した治療の選択肢において、満たされていない重大なニーズが存在する。
【0007】
ギャップジャンクションは、直接的な細胞間連絡情報伝達(cell−cell communication)を促進する細胞膜構造である。ギャップジャンクションチャネルは、各々が6つずつのコネキシンサブユニットからなる2つのコネクソン(ヘミチャネル)から形成される。各6量体コネクソンは、向い側の膜内のコネクソンとドッキングして、単一のギャップジャンクションを形成する。ギャップジャンクションチャネルは、全身において見出されることが報告されている。例えば、角膜上皮などの組織は、6〜8層の細胞層を有するが、異なる層では異なるギャップジャンクションチャネルを発現することが報告されており、基底層ではコネキシン43を有し、基底層から中翼細胞層ではコネキシン26を有する。一般に、コネキシンは1つのタンパク質ファミリーであり、通常、それらの分子量により命名されるか、または系統発生に基づき、アルファ、ベータ、およびガンマのサブクラスに分類されている。ヒトで少なくとも20種のアイソフォームが、また、マウスで同少なくとも19種のアイソフォームが同定されている。特徴的なパターンのコネキシンタンパク質発現を有する様々な組織および細胞型が報告されており、角膜などの組織は、傷害または移植後において、コネキシンタンパク質の発現パターンを変化させることが示されている(Qui, C.ら(2003年)、Current Biology、第13巻、1967〜1703頁; Brander ら(2004年)、J. Invest Dermatol.、第122巻、1310〜20頁)。
【0008】
異常なコネキシン機能は、特定の疾患状態(例えば、心疾患)と関連するし得ることが報告されている(A. C. de Carvalhoら、J Cardiovasc Electrophysiol、1994年、第5巻、686頁)。ある種のコネキシンタンパク質では、ギャップジャンクションを介した細胞間情報伝達連絡レベルに影響を及ぼしうる外因性物質の添加追加により、代謝回転特性および輸送特性の変化が誘導されうる(Darrow, B.、J. ら(1995年)、Circ Res、第76巻、381頁; Lin Rら(2001年)、J Cell Biol、第154巻、第4号、815頁)。ウイルス性疾患、真菌性疾患、および代謝性疾患に関与関係する遺伝子の発現調節について、アンチセンス法技術が報告されている。例えば、特許文献1(HIVに対するオリゴヌクレオチド阻害剤)、特許文献2(herpes simplex単純ヘルペスウイルスのVmw65 mRNAにハイブリダイズし、複製を阻害するオリゴマー)を参照されたい。また、Beckerらによる対する特許文献3(コネキシンに対するアンチセンスヌクレオチドを含む製剤)も参照されたい。また、BeckerおよびGreen、PCT/US06/04131(「Anti−connexin compounds and uses thereof」)も参照されたい。
【0009】
組織損傷の改善および/または組織修復の促進および/または対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した合併症(例えば、炎症や再狭窄など)の制限または抑制に役立つ医療デバイスが要望されている。損傷組織および/または炎症の防止、改善、または治療に役立つ、そして/または組織修復の促進に役立つ、ならびに腫脹、過形成または他の異常な細胞配置、成長および/または増殖、および/または組織損傷の防止、改善、または治療に役立つ医療デバイスを提供することが望ましいであろう。このようなデバイス、その製造方法および使用を、本明細書に提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,166,195号明細書
【特許文献2】米国特許第5,004,810号明細書
【特許文献3】米国特許第7,098,190号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書出願で記載および特許請求される発明は、この「発明の概要」において説明または記載または言及される属性および実施形態を含むがこれらに限定されない多くの属性および実施形態を有する。本明細書出願で記載および特許請求される発明は、限定ではなくて例示だけを目的として組み入れられているこの「発明の概要」に限定されるものでも、「発明の概要」において特定される特徴または実施形態により限定されるものでもない。
【0012】
本発明は、その一部が、限定するものではないが、例えば、本明細書で言及する種類、および/または組織修復過程の促進および/または組織損傷および/または炎症の改善を含め、哺乳動物における、過剰であっても過剰でなくてもよい、組織損傷および/または炎症に関連した疾患、障害、および/または状態を含めた、様々な疾患、障害、および/または状態の治療および防止に用いることができる新規な医療デバイスを対象とする。
【0013】
一態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが、1または複数の治療薬、1または複数のギャップジャンクション調節剤、および/または1または複数の創傷治癒剤と組み合わせた1または複数の抗コネキシン剤を含む、医療デバイスにも関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが抗コネキシン剤を含む、医療デバイスに関する。一実施形態では、抗コネキシン剤は、抗コネキシン43剤である。
【0015】
別の態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチドを含む医療デバイスに関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが、1または複数の抗コネキシンポリペプチドを含む、医療デバイスに関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む、医療デバイスに関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが、抗コネキシンポリペプチドおよび抗コネキシンポリヌクレオチドを含む、医療デバイスに関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチドを含有する第1のコーティングと、1または複数の抗コネキシンポリペプチドを含有する第2のコーティングとを備え、これにより前記デバイスの対象への植え込みまたは適用のときに抗コネキシンポリペプチドおよび抗コネキシンポリヌクレオチドが逐次的に投与される、医療デバイスに関する。好ましくは、抗コネキシンポリペプチドが初めに投与される。一実施形態では、医療デバイスは、抗コネキシンポリペプチドおよび抗コネキシンポリヌクレオチドが逐次的に放出される制御放出製剤を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、対象への使用または植え込みのための医療デバイスであって、前記医療デバイスが、1または複数の抗コネキシンポリヌクレオチド、1または複数の抗コネキシンポリペプチド、1または複数の治療薬、1または複数のギャップジャンクション調節剤、および/または1または複数の創傷治癒に有用な薬剤を含む、医療デバイスに関する。さらなる実施形態では、医療デバイスは、投与のための層、異なる速度で放出される異なる物質でコーティングされた医療デバイスの部分、任意の順序で前記組合せの投与を促進するための制御放出製剤もしくは構造(mechanics)、または任意の所望の順序で機械的に投与するための手段を含有する。
【0021】
一態様では、本発明は、対象にまたは対象内への医療デバイスの挿入のときに放出可能な抗コネキシン剤を含む植え込み型医療デバイスに関する。
【0022】
一態様では、対象にまたは対象内への医療デバイスの挿入のときに放出可能な抗コネキシン43化合物を含む、哺乳動物に使用または植え込みのための医療デバイスを提供する。一実施形態では、抗コネキシン43化合物は、コネキシン43タンパク質の発現を低減する。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、siRNAオリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、RNAiオリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、ペプチド化合物、例えば、ヘミチャネル(hemichannel)の開口を遮断または阻害するペプチドである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、ペプチド模倣剤、例えば、ヘミチャネルの開口を遮断または阻害するペプチド模倣剤である。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、抗コネキシン43抗体またはその抗原結合フラグメントである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、F(v)、Fab、Fab’、またはF(ab’)抗コネキシン43抗体フラグメントである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、キメラまたはヒト化抗体である。さらなる実施形態では、抗体フラグメントは、キメラまたはヒト化抗体フラグメントである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、コネキシン43mRNAに結合する。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、コネキシン43ヘミチャネルに結合する。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、ヘミチャネル細胞外ループに結合する。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、コネキシン43ヘミチャネルを遮断または阻害する。別の一つの実施形態では、抗コネキシン43化合物は、コネキシン43ヘミチャネル開口を遮断または阻害する。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、配列番号1または2から選択される配列を有するポリヌクレオチドであるかまたは薬学的に許容されるその塩である。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、配列番号15〜38から選択される配列を有するペプチドであるかまたは薬学的に許容されるその塩である。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、およびRNAiからなる群から選択される。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、配列番号18または19のペプチドである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、配列番号19のペプチドである。別の実施形態では、抗コネキシン43化合物は、配列番号1〜12からなる群から選択される配列を有するポリヌクレオチドである。別の実施形態では、医療デバイスの表面は、抗コネキシン剤または抗コネキシン43剤を含む。別の実施形態では、抗コネキシン剤または抗コネキシン43剤は、約0.0001%〜約30%の重量パーセントで存在する。
【0023】
別の実施形態では、医療デバイスの表面は、使用のときに対象の内部の標的組織に接触する。別の実施形態では、標的組織は、手術の間または後手術のでデバイスに曝露される心組織、血管組織、または他の組織である。別の実施形態では、抗コネキシン剤の放出速度が制御される。別の実施形態では、医療デバイスは、抗コネキシン剤の表面接触放出を行う。別の実施形態では、医療デバイスは、抗コネキシン剤の持続放出を行う。別の実施形態では、医療デバイスは、抗コネキシン剤の緩徐放出を行う。別の実施形態では、デバイスは、抗コネキシン剤を含むコーティングを備える。さらなる実施形態では、コーティングはポリマーを含む。別の実施形態では、コーティングは、ポリマー/抗コネキシン剤の混合物の複数の層を含む。別の実施形態では、医療デバイスは、ヒトへの植え込み用である。別の実施形態では、医療デバイスはステントを含む。別の実施形態では、ステントは薬物溶出ステントである。別の実施形態では、医療デバイスは、バルーン、人工心臓弁、弁形成リング、パルス発生器、除細動器、動静脈シャント、吻合デバイス、止血バリア、またはペースメーカーを含む。別の実施形態では、医療デバイスは、眼窩インプラント、レンズ、レンズインプラント、角膜インプラント、または緑内障シャントを含む。別の実施形態では、医療デバイスは、整形外科プレート、骨ピン、骨代用物、アンカー、ジョイント、ねじ、または椎骨板(vertebral disk)を含む。別の実施形態では、医療デバイスは、膝、肘、肩、または股関節部の全体または一部の置換ためのデバイスを含む。別の実施形態では、医療デバイスは胃腸インプラントを含む。別の実施形態では、医療デバイスは内視鏡デバイスである。別の実施形態では、医療デバイスは、移植片、シャント、血管インプラント、組織骨格、管内デバイス、または血管支持体を含む。他の実施形態では、医療デバイスは、非ヒト動物またはトリへの植え込み用である。別の実施形態では、医療デバイスは、その外面に形成された少なくとも1つのチャネルを含み、少なくとも1つのチャネルの表面および/または内部に抗コネキシン剤が含有されている。別の実施形態では、医療デバイスの少なくとも一部は、全体または一部が、抗コネキシン剤を含む物質から形成されている。別の実施形態では、デバイスは、1または複数の治療薬をさらに含む。別の実施形態では、医療デバイスは、ヒト、もしくは非ヒト動物、またはトリに用いられる。
【0024】
別の態様では、対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷の防止および/または治療の方法であって、少なくとも一部が抗コネキシン剤を含む医療デバイスを対象に導入する工程を含み、損傷が防止、改善、および/または低減される方法を提供する。一実施形態では、対象は哺乳動物である。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。一実施形態では、哺乳動物は、家畜動物、ペット動物、競技用動物、農場動物、動物園動物、およびトリからなる群から選択される。一実施形態では、哺乳動物は、ウマ、イヌ、またはネコである。
【0025】
さらに別の態様では、対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷の防止および/または治療の方法であって、それが接触する時点において放出可能な抗コネキシン剤を含む医療デバイスの使用または植え込みを含み、損傷が防止、改善、および/または低減される方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本発明を全体的に、および様々な限定目的ではない特定の実施形態に関連してさらに説明する前に、本発明を説明する文脈で使用する特定の用語を説明する。特に記載しない限り、以下の用語は、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合は以下の意味を有する。以下および本明細書のいずれにも定義しない用語は、用語の属する技術分野で認識される意味を有するものとする。
【0027】
本明細書で用いる「対象」は、ヒト、家畜動物、農場動物、および動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、およびウシなどを含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましい対象はヒトである。
【0028】
本明細書で用いる「哺乳動物」は、ヒト、家畜動物、農場動物、および動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、およびウシなどを含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。本明細書に記載する好ましい哺乳動物は、成人、子供、および老人を含むヒトである。
【0029】
本明細書で用いる「障害」は、医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷を低減する薬剤の恩恵を受ける任意の障害、疾患、または状態である。障害の例として、限定するものではないが、組織の損傷(例えば、心臓、肝臓、腎臓、中枢神経系(脳を含む)、関節、および胃腸の組織を含む)および血管損傷が挙げられる。
【0030】
本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」は、無機塩基または有機塩基および無機酸または有機酸などを含めた薬学的に許容される無毒性の塩基または無毒性の酸から調製した塩を指す。抗コネキシン剤化合物が塩基である場合、塩は、無機および有機酸を含めた薬学的に許容される無毒性酸から調製することができる。このような酸の例として、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、およびp−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0031】
本明細書で用いる「防止する」または「防止」は、全体的または部分的に防止する、全体的または部分的に改善するかまたは制御する、あるいは全体的または部分的に軽減する、低減する、少なくする、または遅らせることを意味する。
【0032】
用語「治療有効量」または「有効量」は、例えば、研究者、獣医、医師、または他の臨床家が求める、組織、系、動物、またはヒトの生物学的もしくは医学的な結果または応答などの望ましい応答を引き出す対象化合物の量を意味する。その結果は、疾患、または障害、または状態の兆候、症状、または原因の緩和、または生物学的系の任意の他の望ましい変更でありうる。本発明では、結果は、例えば、医療デバイスの使用または植え込み(一時的または永久的)に関連した、全体的または部分的な炎症を含む組織の障害または損傷の防止、低減、または逆転などを通常は伴う。結果はまた、炎症の防止、低減、または逆転も通常は伴う。
【0033】
本明細書で用いる用語「治療」または「治療する」は、治療処置および予防または防止措置の両方を指す。予防または防止は、全体的または部分的でありうる。
【0034】
用語「医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷」は、医療デバイスの挿入、存在、操作、または除去から生じる組織の損傷または傷害を指す。「医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷」は、血管形成術または医療デバイスの挿入および除去の後に起こる、炎症反応、新生内膜増殖、細胞増殖、内皮の除去、および平滑筋細胞の損傷を含む増殖反応、狭窄または再狭窄を含む1または複数の状態によって明らかにすることができ、新生内膜過形成により、狭窄または再狭窄、血小板粘着再狭窄、ならびに医療デバイスの植え込み、使用、および除去に関連した腫脹を含む他の炎症過程をもたらす。
【0035】
「ペプチド模倣剤」および「模倣剤」という用語は、それらが模倣するタンパク質領域と同じ構造的特徴および機能的特徴を実質的に有しうる天然に存在する化合物および合成化合物を含む。コネキシンの場合、これらは、例えば、コネクソン間同士のドッキングおよび細胞間のチャネル形成に関与する、向かい合うコネキシンの細胞外ループ、および/またはヘミチャネルコネキシンの細胞外ループを模倣しうる。
【0036】
本明細書中で用いる場合、「ペプチド類似体」とは、鋳型のペプチドの特性に類似する特性を有する化合物を指し、それらは非ペプチド薬剤でありうる。ペプチドベースの化合物を含む「ペプチド模倣剤(Peptidomimetics)」(また、「ペプチド模倣剤(peptide mimetics)」としても公知)はまた、ペプチド類似体などの非ペプチドベースの化合物も含む。治療的に有用なペプチドに対して構造的に類似するペプチド模倣剤を用いて、同等であるかまたは増強された治療効果または予防効果をもたらすことができる。一般に、ペプチド模倣剤は、パラダイムポリペプチドに対する構造的模倣剤または機能的模倣剤(例えば、同一または類似)であり(すなわち、生物学的または薬理学的な機能または活性を有するポリペプチド)、また、場合によって、例えば、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(cisシスおよびtransトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、および−CH2SO−からなる群から選択される結合により置換される1または複数のペプチド結合も有しうる。模倣剤は、天然のアミノ酸、合成化学化合物、非天然のアミノ酸類似体だけから構成されたものであっても、部分的に天然のペプチドアミノ酸と部分的に非天然のアミノ酸類似体とのからなるキメラ分子であってもよい。任意量の天然アミノ酸に対する保存的置換もまた実質的に模倣剤の活性を変化させない限りにおいて、模倣剤はまたこのような置換も含みうる。コネキシンの場合、例えば、これらは、コネクソン間同士のドッキングおよび細胞間のチャネル形成に関与する、向かい合うコネキシンの細胞外ループを模倣しうる。例えば、模倣剤組成物が、例えば、ギャップジャンクションを介する細胞間情報伝達連絡を形成するコネクソンのドッキングを予防すること、または細胞の細胞質を細胞外環境へ曝露スルコネクソンの開放を予防することなどの、コネクソンの生物学的な作用または活性を下方調節することができる場合、模倣組成物は、ギャップジャンクション調節剤として有用でありうる。ペプチド模倣剤には、本明細書で記載されるか、現在公知の場合であれ将来的に開発される場合であれ、当技術分野において公知でありうるペプチド模倣剤が含まれる。
【0037】
「組成物」という用語は、1つまたはそれより多い成分を含む生成物を含むことが意図される。
【0038】
一般に、本明細書においてその各形態において用いられるギャップジャンクション活性の「調節物質剤」および「調節」という用語は、ギャップジャンクションの作用または活性に対する全体的または部分的な阻害を指し、ギャップジャンクション調節剤として機能しうる。
【0039】
一般に、「タンパク質」という用語は、1つのアミノ酸(またはアミノ酸残基)のアルファ炭素に結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接するアミノ酸のアルファ炭素に結合したアミノ基のアミノ窒素原子に共有結合する場合に生じるペプチド結合により連結される、2つ以上の個々のアミノ酸(天然の場合であれ非天然の場合であれ)による任意のポリマーを指す。これらのペプチド結合、およびこれらを含む原子(すなわち、アルファ炭素原子、カルボキシルの炭素原子(およびこれらをの置換する基の酸素原子)、およびアミノの窒素原子(およびこれらをの置換基のする水素原子))は、タンパク質の「ポリペプチド骨格」を形成する。加えて、本明細書で用いられる「タンパク質」という用語は、「ポリペプチド」および「ペプチド」(本明細書では、場合によって、互換的に用いられうる)という用語を含む形で理解される。同様に、本明細書では、タンパク質のフラグメント、類似体、誘導体、および変異体も「タンパク質」と称し、別段に示されない限り、「タンパク質」であるとみなされるものとする。タンパク質の「フラグメント」という用語は、タンパク質のすべてのアミノ酸残基よりも少数のアミノ酸残基を含むポリペプチドを指す。タンパク質の「ドメイン」もまたフラグメントであり、多くの場合、活性または機能を付与することが必要と要請される、タンパク質のアミノ酸残基を含む。
【0040】
本明細書で使用する際は、特定のコネキシンの言及は、たとえ分子量が異なっていても、そのすべての種の変異体の言及である。したがって、例えば、「コネキシン43」の言及は、ヒトコネキシン43だけではなく、43Kdであろうとなかろうと、互いの種における類似コネキシンも指す。同様に、非ヒト「コネキシン43」の言及も、その種のコネキシン43類似体または変異体の言及である。したがって、例えば、「ウマコネキシン43」の言及は、たとえ43Kdの分子量を有していなくても、ウマにおけるヒトコネキシン43の関連類似体または変異体の言及である。
【0041】
抗コネキシン剤
本明細書に記載の本発明の抗コネキシン剤は、細胞内への、また細胞からの分子の輸送を調節するかまたはこれに影響を及ぼす(例えば、遮断するかまたは阻害するかまたは下方調節する)ことが可能であるできる。したがって、本明細書に記載の一部の抗コネキシン剤は、細胞連絡情報伝達(例えば、細胞間)を調節する。一部の抗コネキシン剤は、細胞の細胞質と、ペリプラズム腔または細胞外腔との間における分子の移送を調節するかまたはこれに影響を及ぼす。このような抗コネキシン剤は一般に、コネキシンおよび/またはコネキシンヘミチャネル(コネクソン)もしくはギャップジャンクション自体を標的とする。コネキシンを含むヘミチャネルおよび結果として生じるギャップジャンクションは、開放口ヘミチャネルの場合における、細胞質と細胞外腔または細胞外組織との間における低分子の放出または交換、また開口放ギャップジャンクションの場合における、隣接する細胞の細胞質間における低分子の同放出または交換に個別に独立して関与する。したがって、本明細書で提供される抗コネキシン剤は、細胞間における結合および情報伝達連絡を直接的または間接的に低下させる場合もあり、細胞と細胞外腔または細胞外組織との間における情報伝達連絡(または分子の移動伝達)を低下させるかまたは遮断する場合もあり、細胞から細胞外腔もしくは細胞外組織への(または細胞外腔もしくは細胞外組織から細胞内への)または隣接する細胞間における分子輸送の調節は、本発明の抗コネキシン剤および本発明の実施形態の範囲内にある。
【0042】
本発明の実施形態では、ギャップジャンクションまたはコネキシンヘミチャネルを介する分子の通過(例えば、輸送)に対する望ましい阻害を誘発することが可能な任意の抗コネキシン剤を用いることができる。ギャップジャンクションまたはコネキシンヘミチャネルを介する分子の通過を調節する任意の抗コネキシン剤はまた、特定の実施形態においても提供される(例えば、ある細胞の細胞質から細胞外腔または隣接する細胞の細胞質への分子の通過を調節するか、遮断するか、または低下させる抗コネキシン剤)。このような抗コネキシン剤は、ギャップジャンクションの結合解除(ギャップジャンクションを介する分子輸送の遮断)を伴う場合であれ伴わない場合であれ、ギャップジャンクションまたはコネキシンヘミチャネルを介する分子の通過を調節しうる。このような化合物は、例えば、タンパク質およびポリペプチド、ポリヌクレオチド、および他の有機化合物を含み、これらは、例えば、部分的または全体的にギャップジャンクションまたはヘミチャネルの機能または発現を遮断する場合もあり、全体的または部分的にコネキシンの生成を下方調節する場合もある。一部のギャップジャンクション阻害剤は、Evans, W.H.およびBoitano, S.、Biochem. Soc. Trans.、第29巻、606〜612頁(2001年)において列挙されている。
【0043】
一部の抗コネキシン剤は、コネキシン発現の下方調節または阻害(例えば、mRNAの転写または翻訳に対する下方調節による)をもたらすか、またはこれ以外の形で、コネキシンタンパク質、コネキシンヘミチャネル、もしくはギャップジャンクションの活性を低下させるかもしくは阻害する。下方調節の場合、これは、コネキシン発現が下方調節される部位において、ギャップジャンクションによる直接的な細胞間情報伝達連絡、またはヘミチャネルによる細胞の細胞質の細胞外腔への曝露を低下させる効果を有する。抗コネキシン43剤が好ましい。
【0044】
抗コネキシン剤の例は、コネキシンmRNAおよび/もしくはコネキシンタンパク質の発現もしくは機能を低下させるかもしくは阻害するか、またはコネキシン、コネキシンヘミチャネル、もしくはギャップジャンクションの活性、発現、もしくは形成を低下させる薬剤を含む。抗コネキシン剤は、アンチセンスポリヌクレオチドおよび他のポリヌクレオチド(siRNAまたはリボザイムの機能性を有するポリヌクレオチドなどの)などの抗コネキシポリヌクレオチドのほか、抗体およびこれらのその結合フラグメント、ならびにヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性または機能を調節するペプチド模倣剤およびペプチド類似体を含むペプチドおよびポリペプチドを含む。
【0045】
抗コネキシンポリヌクレオチド
抗コネキシンポリヌクレオチドは、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドのほか、それらによるコネキシン発現の下方調節を可能とする機能性を有するポリヌクレオチドも含む。他の適切な抗コネキシンポリヌクレオチドは、RNAiポリヌクレオチドおよびsiRNAポリヌクレオチドを含む。
【0046】
RNAi、siRNA、およびリボザイムポリヌクレオチドのほか、骨格が修飾改変および混合されたポリヌクレオチドなどの、アンチセンスポリヌクレオチドおよび他の抗コネキシンポリヌクレオチドの合成は、当業者に公知である。例えば、Stein C.A.およびKrieg A.M.(編)、「Applied Antisense Oligonucleotide Technology」、1998年、(Wiley−Liss)を参照されたい。抗体および結合フラグメントのほか、ペプチド模倣剤およびペプチド類似体を含むペプチドおよびポリペプチドを合成する方法は、当業者に公知である。例えば、Lihu Yangら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第1編、;第95巻、第18号、10836〜10841頁(1998年9月1日); HarlowおよびLane(1988年)、「Antibodies: A Laboratory Manuel」、Cold Spring Harbor Publications、New York; HarlowおよびLane(1999年)、「Using Antibodies: A Laboratory Manuel」、Cold Spring Harbor Publications、New Yorkを参照されたい。
【0047】
一態様によれば、コネキシン発現の下方調節は一般に、アンチセンスポリヌクレオチド(DNAポリヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドなど)を用いるアンチセンス法に基づき、またより具体的に、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の使用に基づきうる。これらのポリヌクレオチド(例えば、ODN)は、(1または複数の)コネキシンタンパク質を標的としてこれらを下方調節する。ポリヌクレオチドは、一本鎖であることが典型的であるが、二本鎖の場合もある。
【0048】
アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンの転写および/または翻訳を阻害しうる。ポリヌクレオチドは、コネキシン遺伝子またはコネキシンmRNAからの転写および/または翻訳の特異的な阻害剤であり、他の遺伝子またはmRNAからの転写および/または翻訳を阻害しないことが好ましい。生成物は、(i)コード配列に対する5’側、および/または(ii)コード配列に対する、および/または(iii)コード配列に対する3’側にあるコネキシン遺伝子またはコネキシンmRNAに結合しうる。
【0049】
アンチセンスポリヌクレオチドは一般に、コネキシンmRNAに対してアンチセンスである。このようなポリヌクレオチドはコネキシンmRNAにハイブリダイズすることが可能であり、したがって、転写、mRNAのプロセッシング、核からのmRNAの輸送、翻訳、またはmRNAの分解を含む、コネキシンmRNA代謝の1つまたは複数の側面に干渉することにより、コネキシン発現を阻害しうる。アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAにハイブリダイズして、mRNA翻訳の直接的な阻害および/またはmRNAの不安定化を引き起こしうる二重鎖を形成することが典型的である。このような二重鎖は、ヌクレアーゼによる分解に対して感受性でありうる。
【0050】
アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部にハイブリダイズしうる。アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAのリボソーム結合領域またはコード領域にハイブリダイズすることが典型的である。ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部の領域に対して相補的でありうる。例えば、ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部の完全な相補体でありうる。しかし、絶対的な相補性は要請必要とされず、生理学的状態条件下において約20℃、30℃、または40℃を超える融解温度を有する二重鎖を形成するのに十分な相補性を有するポリヌクレオチドが、本発明における使用に特に適する。
【0051】
したがって、ポリヌクレオチドは、mRNAに対して相補的な配列の相同体であることが典型的である。ポリヌクレオチドは、約50℃〜約60℃における0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウムなどの中程度〜高度に厳密な条件下においてコネキシンmRNAにハイブリダイズするポリヌクレオチドでありうる。
【0052】
一部の態様について述べると、適切なポリヌクレオチドは、約6〜40ヌクレオチドの長さであることが典型的である。ヌクレオチドは、好ましくは約12〜約35ヌクレオチドの長さでもあり、代替的には、約12〜約20ヌクレオチドの長さでもあり、より好ましくは、約18〜約32ヌクレオチドの長さでもありうる。代替的な態様によれば、ポリヌクレオチドは、少なくとも約40ヌクレオチド、例えば、少なくとも約60ヌクレオチドまたは少なくとも約80ヌクレオチドの長さでありえ、最長約100、約200、約300、約400、約500、約1000、約2000、または約3000ヌクレオチド以上の長さでありうる。
【0053】
ポリヌクレオチドにより標的とされる1または複数のコネキシンタンパク質は、下方調節が行われる部位に依存する。これは、コネキシンサブユニットの組成に関して、全身の異なる部位において(1または複数の)ギャップジャンクションの組成構成が一様でないことを反映する。コネキシンは、一態様における、ヒトもしくは動物の天然に存在するコネキシンであるか、またはコネキシンの発現または活性を低下させる予定の組織内の天然に存在するコネキシンである。コネキシン遺伝子(コード配列を含む)は一般に、表8に示すコネキシン43コード配列との相同性など、本明細書で言及される1または複数の特異的なコネキシンのコード配列との相同性を有する。コネキシンは、αコネキシンまたはβコネキシンであることが典型的である。コネキシンはαコネキシンであり、治療される組織において発現することが好ましい。
【0054】
しかし、組織内における分布に関して、一部のコネキシンタンパク質は、他のコネキシンタンパク質よりも遍在性である。最も広範に存在するコネキシンタンパク質の1つが、コネキシン43である。コネキシン43を標的とするポリヌクレオチドが、本発明における使用に特に適する。他の態様では、他のコネキシンが標的とされる。
【0055】
抗コネキシンポリヌクレオチドは、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドのほか、それらによるコネキシン発現の下方調節を可能とする機能性を有するポリヌクレオチドも含む。他の適切な抗コネキシンポリヌクレオチドは、RNAiポリヌクレオチドおよびsiRNAポリヌクレオチドを含む。
【0056】
好ましい一態様において、アンチセンスポリヌクレオチドは、1種のコネキシンタンパク質のmRNAだけを標的とする。このコネキシンタンパク質は、コネキシン43であることが最も好ましい。別の態様において、コネキシンタンパク質は、コネキシン26、30、31.1、32、36、37、40、または45である。他の態様において、コネキシンタンパク質は、コネキシン30.3、31、40.1、または46.6である。
【0057】
別個のコネキシンタンパク質を標的とするポリヌクレオチドを組み合わせて用いることもまた意図される(例えば、1種、2種、3種、4種以上の異なるコネキシンを標的とすることができる)。例えば、コネキシン43を標的とするポリヌクレオチドと、コネキシンファミリーの1つまたは複数の他のメンバー(コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、45、および46.6など)とを標的とするポリヌクレオチドを、組み合わせて用いることができる。
【0058】
代替的に、アンチセンスポリヌクレオチドは、複数種のコネキシンタンパク質に対するポリヌクレオチドを含みうる組成物の一部でもありうる。ポリヌクレオチドが対象とするコネキシンタンパク質の1つは、コネキシン43であることが好ましい。オリゴデオキシヌクレオチドが対象とする他のコネキシンタンパク質は、例えば、コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、45、および46.6を含みうる。各種のコネキシンを対象とするのに適する例示的なポリヌクレオチド(およびODN)を、表1に示す。
【0059】
個々のアンチセンスポリヌクレオチドは、特定のコネキシンに特異的な場合もあり、1種、2種、3種以上の異なるコネキシンを標的とする場合もある。特異的なポリヌクレオチドが一般に、コネキシン間において保存されないコネキシン遺伝子またはコネキシンmRNA内の配列を標的とする一方、非特異的なポリヌクレオチドは、各種コネキシンの保存的配列を標的とする。
【0060】
本発明で用いられるポリヌクレオチドは、非修飾改変のホスホジエステルオリゴマーでありうると適切のが好都合である。このようなオリゴデオキシヌクレオチドは、長さが変化しわりうる。30マーのポリヌクレオチドが特に適することが分かっている。
【0061】
本発明の多くの態様は、オリゴデオキシヌクレオチドに関して説明される。しかし、これらの態様では、他の適切なポリヌクレオチド(RNAポリヌクレオチドなど)も用いうることが理解される。
【0062】
アンチセンスポリヌクレオチドは、化学修飾することができる。これにより、ヌクレアーゼに対するこれらの耐性を増強することができ、これらが細胞内に入る能力を増強することができる。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いることができる。他のデオキシヌクレオチド類似体は、メチルホスホネート、ホスホラミデート、ホスホロジチオエート、N3’P5’−ホスホラミデート、ならびにオリゴリボヌクレオチドホスホロチオエートおよびそれらの2’−O−アルキル類似体、ならびに2’−O−メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートを含む。代替的に、混合骨格オリゴヌクレオチド(「MBO」)も用いることができる。MBOは、ホスホチオエートオリゴデオキシヌクレオチドのセグメントと、修飾改変されたオリゴデオキシヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチドの適切に配置されたセグメントとを含有する。MBOは、ホスホロチオエート結合のセグメントと、非イオン性で、ヌクレアーゼまたは2’−O−アルキルオリゴリボヌクレオチドに対して極めて耐性なメチルホスホネートなどの、他の修飾改変オリゴヌクレオチドの他のセグメントとを有する。修飾改変骨格オリゴヌクレオチドおよび混合骨格オリゴヌクレオチドを調製する方法は、当技術分野において公知である。
【0063】
本発明で用いられるアンチセンスポリヌクレオチドの正確な配列は、標的のコネキシンタンパク質に依存する。一実施形態において、適切なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチドは、表1に記載される以下の配列から選択されるオリゴデオキシヌクレオチドなどのポリヌクレオチドを含みうる。
【0064】
【表1−1】

【0065】
【表1−2】

本明細書に記載の、ポリヌクレオチドの組合せ組成物の調製に適するポリヌクレオチドは、例えば、上記の表1に記載したコネキシンCx43に対するポリヌクレオチドと、コネキシン26、30、31.1、32、および37に対するポリヌクレオチドとを含む。
【0066】
本発明において用いられるアンチセンスポリヌクレオチドの正確な配列は、標的のコネキシンタンパク質に依存するが、コネキシン43の場合、以下の配列:
GTA ATT GCG GCA AGA AGA ATT GTT TCT GTC(配列番号1);
GTA ATT GCG GCA GGA GGA ATT GTT TCT GTC(配列番号2);および
GGC AAG AGA CAC CAA AGA CAC TAC CAG CAT(配列番号3)
を有するアンチセンスポリヌクレオチドが特に適することが分かっている。
【0067】
例えば、コネキシン26、31.1、および32に適するアンチセンスポリヌクレオチドは、以下の配列:
5’ TCC TGA GCA ATA CCT AAC GAA CAA ATA(コネキシン26)(配列番号4);
5’ CGT CCG AGC CCA GAA AGA TGA GGT C(コネキシン31.1)(配列番号9);および
5’ TTT CTT TTC TAT GTG CTG TTG GTG A(コネキシン32)(配列番号12)
を有する。
【0068】
本発明の方法により有用な他のコネキシンアンチセンスポリヌクレオチド配列は、
5’ CAT CTC CTT GGT GCT CAA CC 3’(コネキシン37)(配列番号5);
5’ CTG AAG TCG ACT TGG CTT GG 3’(コネキシン37)(配列番号6);
5’ CTC AGA TAG TGG CCA GAA TGC 3’(コネキシン30)(配列番号7);
5’ TTG TCC AGG TGA CTC CAA GG 3’(コネキシン30)(配列番号8);
5’ AGA GGC GCA CGT GAG ACA C 3’(コネキシン31.1)(配列番号10);および
5’ TGA AGA CAA TGA AGA TGT T 3’(コネキシン31.1)(配列番号11)
を含む。
【0069】
コネキシンタンパク質を対象とする、ODNを含むポリヌクレオチドは、任意の簡便な従来の手法により、それらのヌクレオチド配列に関して選択することができる。例えば、コンピュータプログラムであるMacVectorおよびOligoTech(Oligosなど、Eugene、Oregon、USA製など)を用いることができる。選択されると、DNA合成器を用いてODNを合成することができる。
【0070】
ポリヌクレオチドの相同体
本明細書では、相同性および相同体(例えば、ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNA中の配列に対する相補体の相同体でありうる)について論じる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、(相同配列の)少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約100以上の連続ヌクレオチドの領域にわたって、対象の配列と少なくとも約70%の相同性、好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の相同性を有することが典型的である。
【0071】
相同性は、当技術分野における任意の方法に基づいて計算することができる。例えば、UWGCGパッケージでは、相同性を計算するのに用いうるBESTFITプログラム(例えば、そのデフォルト設定で用いられる)が提供される(Devereuxら(1984年)、Nucleic Acids Research、第12巻、387〜395頁)。PILEUPアルゴリズムおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S. F.(1993年)、J Mol Evol、第36巻、290〜300頁; Altschul, S, Fら(1990年)、J Mol Biol、第215巻、403〜10頁において説明される通り、相同性を計算するか、または配列を整列するのに用いることができる(それらのデフォルト設定における場合が典型的である)。
【0072】
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により公開されているに入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中における同じ長さのワードにより整列する場合、ある正の値の閾値スコアTにマッチするかまたはこれを満たすクエリー配列中における長さWの短いワードを同定することによる、高スコアリング配列対(HSP)の同定を伴う。Tを、近傍ワードスコア閾値(Altschulら、前出)と称する。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含有するHSPを見出す検索を開始するための契機シード(seed)として作用する。ワードヒットは、累積のアライメントスコアが増大しうる限りにおいて、各配列に沿って両方向に延長される。各方向におけるワードヒットの延長は、累積アライメントスコアが、達成されたその最大値から量Xだけ低下する場合;累積スコアが、1つまたは複数の負のスコアの残基アライメントの累積により、ゼロ以下に低下する場合;またはいずれかの配列の端部に到達する場合に停止される。
【0073】
BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、およびXにより、整列アラインメントの感度および速度が決定される。BLASTプログラムでは、ワード長(W)、BLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、10915〜10919頁を参照されたい)によるアライメント(B=50)、期待値(E=10)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較が、デフォルトとして用いられる。
【0074】
BLASTアルゴリズムでは、2つの配列間における類似性に対する統計学的解析が実施される。例えば、KarlinおよびAltschul(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、5873〜5787頁を参照されたい。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間におけるマッチが偶然に生じる確率を示す、最小合計確率(P(N))である。例えば、第2の配列に対して第1の配列を比較した場合の最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、また最も好ましくは約0.001未満である場合、ある配列は別の配列に対して類似すると考えられる。
【0075】
相同配列は、少なくとも約2、5、10、15、20以上(または約2、5、10、15、20だけ以下)の変異(置換、欠失、または挿入でありうる)により対象配列と異なることが典型的である。これらの変異は、相同性の計算との関連で、上述の領域のいずれかにわたって測定することができる。
【0076】
相同配列は、バックグラウンドを有意に上回るレベルで、元の配列に選択的にハイブリダイズすることが典型的である。選択的なハイブリダイゼーションは、中程度〜高度に厳密な条件(例えば、約50℃〜約60℃における0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)を用いて達成することが典型的である。しかし、このようなハイブリダイゼーションは、当技術分野(Sambrookら(1989年)、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」を参照されたい)において公知の任意の適切な条件下で実施することができる(Sambrookら(1989年)、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」を参照されたい)。例えば、高い厳密性が要請必要とされる場合、適切な条件は60℃における0.2×SSCを含む。より低い厳密性が必要と要請される場合、適切な条件は60℃における2×SSCを含む。
【0077】
ペプチドおよびポリペプチドによる抗コネキシン剤
ペプチド、ペプチド模倣剤、抗体、抗体フラグメントなどを含む結合タンパク質もまた、ギャップジャンクションおよびヘミチャネルに適する調節物質剤である。
【0078】
結合タンパク質は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、およびFvフラグメント;単鎖抗体;単鎖Fv;また例えば、特定の抗体または他の結合分子と接触する抗原決定基(すなわち、一般にエピトープと称する分子の部分)に結合可能な結合ドメイン、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、組換え抗体、ならびに抗体フラグメントを含む単鎖結合分子などの単鎖結合分子を含む)を含む。抗体、抗体フラグメントなどを含むこれらの結合タンパク質は、キメラの場合もあり、ヒト化される場合もあり、他の形でこれらが投与される対象におけるいてより低い免疫原性を低下させるに作製する場合もあり、また、合成する場合もあり、組換えにより作製する場合もあり、発現ライブラリー内において作製する場合もある。本明細書で言及され、かつ/または当技術分野においてより詳細に説明される結合分子など、当技術分野において公知であるかまたは将来的に発見される任意の結合分子が意図想定される。例えば、結合タンパク質は、抗体などだけではなく、リガンド、受容体、ペプチド模倣剤、または標的(例えば、コネキシン、ヘミチャネル、または関連する分子)に結合する他の結合フラグメントもしくは他の結合分子(例えば、ファージディスプレイにより作製される)も含む。
【0079】
結合分子は一般に、結合特異性を含むがこれに限定されない所望の特異性、および所望の親和性を有する。親和性は、例えば、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約10−1のKaでありうる。約10−1以上、約1010−1以上、約1011−1以上、および約1012−1以上の親和性など、約10−1をさらに超える親和性が適する。本発明による結合タンパク質の親和性は、従来の技法、例えば、Scatchardら、1949年、Ann. N.Y. Acad. Sci.、第51巻、660頁により説明される技法を用いて容易に決定することができる。
【0080】
ヒドロパシープロットから得られるデータを用いることにより、コネキシンは、4つの膜貫通領域および2つの短い細胞外ループを含有すると仮定されている。コネキシンの第1および第2の細胞外領域の配置は、分離されたギャップジャンクション上における対応するエピトープの免疫学的局在決定に用いられる抗ペプチド抗体の作製報告によりさらに特徴づけられた(Goodenough D.A.、J Cell Biol、第107巻、1817〜1824頁(1988年); Meyer R.A.、J Cell Biol、第119巻、179〜189頁(1992年))。
【0081】
隣接する2つの細胞が寄与するヘミチャネルの細胞外ドメインが互いに「結合(dock)」して、完全なギャップジャンクションチャネルが形成される。これらの細胞外ドメインの相互作用に干渉する試薬は、細胞間情報伝達連絡を損なうことが可能である。ギャップジャンクションおよびヘミチャネルに対するペプチド阻害剤が報告されている。例えば、Berthoud, V.M.ら、Am J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol.、第279巻、L619〜L622頁(2000年); Evans, W.H.およびBoitano, S.、Biochem. Soc. Trans.、第29巻、606〜612頁;ならびにDe Vriese A.S.ら、Kidney Int.、第61巻、177〜185頁(2001年)を参照されたい。コネキシンの細胞外ループ内の配列に対応する短いペプチドが、細胞間情報伝達連絡を阻害すると言われた(Boitano S.およびEvans W.、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、第279巻、L623〜L630頁(2000年))。Xenopusの卵母細胞対において発現されるコネキシン(Cx)32によりもたらされる細胞間チャネル形成に対する阻害剤としてのペプチドの使用もまた報告されている(Dahl Gら、Biophys J、第67巻、1816〜1822頁(1994年))。Berthoud, V.M.およびSeul, K.H.によりこれらの結果の一部がまとめられた(Am J., Physiol. Lung Cell Mol. Physiol.、第279巻、L619〜L622頁(2000年))。
【0082】
抗コネキシン剤は、コネキシン(例えば、コネキシン45、43、26、30、31.1、および37)の膜貫通領域(例えば、第1〜第4)に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。抗コネキシン剤は、コネキシン45の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含みうる。抗コネキシン剤は、配列番号13の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号13の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号13の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の実施形態は、配列番号13の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドである抗コネキシン剤を対象とする。本明細書で提供される一部の抗コネキシン剤では、配列番号13の位置46〜75および199〜228にあるアミノ酸に対応するコネキシン45の細胞外ドメインを用いて、特定のペプチド配列を開発することができる。本明細書に記載の一部のペプチドは、配列番号13の位置46〜75および199〜228にある領域に対応するアミノ酸配列を有する。ペプチドは、配列番号13のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置46〜75および199〜228に対応しない配列番号13の部分)も標的としうる。
【0083】
また、適切な抗コネキシン剤は、コネキシン43の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドも含む。抗コネキシン剤は、配列番号14の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号14の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号14の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の抗コネキシン剤は、配列番号14の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の抗コネキシン剤は、配列番号14の位置37〜76および178〜208にあるアミノ酸に対応するコネキシン43の細胞外ドメインを含む。抗コネキシン剤は、配列番号14の位置37〜76および178〜208にある領域に対応するアミノ酸配列を有する、本明細書に記載のペプチドを含む。ペプチドは、配列番号14のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置37〜76および178〜208に対応しない配列番号14の部分)も標的としうる。
【0084】
【化1】

【0085】
【化2】

【0086】
【化3】

抗コネキシンペプチドは、ペプチドが機能的に活性な抗コネキシン剤であるような保存的アミノ酸置換を伴う、コネキシンの細胞外ドメインの一部に対応する配列を含みうる。例示的な保存的アミノ酸置換は、例えば、別の非極性アミノ酸による非極性アミノ酸の置換、別の芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換、別の脂肪族アミノ酸による脂肪族アミノ酸の置換、別の極性アミノ酸による極性アミノ酸の置換、別の酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換、別の塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換、および別のイオン性アミノ酸によるイオン性アミノ酸の置換を含む。
【0087】
コネキシン43を標的とする例示的なペプチドを、以下の表2に示す。M1、M2、M3、およびM4は、それぞれ、コネキシン43タンパク質の第1〜第4の膜貫通領域を指す。E1およびE2は、それぞれ、第1および第2の細胞外ループを指す。
【0088】
【表2】

表3は、ヘミチャネル機能またはギャップジャンクション機能を阻害するのに用いられる、さらなる例示的なコネキシンペプチドについて記載する。他の実施形態では、ペプチドまたはこれらのフラグメントに対して保存的なアミノ酸変化が作製される。
【0089】
【表3】

表4は、本明細書に記載の使用に供するペプチド阻害剤を開発するのに用いられるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ループについて記載する。表4に記載されるペプチドおよびこれらのフラグメントは、一部の非限定的な実施形態においてペプチド阻害剤として用いられる。他の非限定的な実施形態では、この表4中のペプチドの約8〜約15、または約11〜約13の連続アミノ酸を含むペプチドが、ペプチド阻害剤である。ペプチドまたはこれらのフラグメントには、保存的なアミノ酸変化を作製することができる。
【0090】
【表4−1】

【0091】
【表4−2】

表5は、ペプチドによる抗コネキシン剤を開発するのに用いうるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ドメインについて記載する。表5に記載されるペプチドおよびこれらのフラグメントもまた、ペプチドによる抗コネキシン剤として用いることができる。このようなペプチドは、この表5中のペプチド配列の約8〜約15、または約11〜約13の連続アミノ酸を含みうる。ペプチドまたはこれらのフラグメントには、保存的なアミノ酸変化を作製することができる。
【0092】
【表5】

表6は、コネキシン40の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示されるコネキシン40に対するペプチド阻害剤について記載する。太字のアミノ酸は、コネキシン40の膜貫通領域を対象とする。
【0093】
【表6】

表7は、コネキシン45の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示されるコネキシン45に対するペプチド阻害剤について記載する。太字のアミノ酸は、コネキシン45の膜貫通領域を対象とする。
【0094】
【表7】

一部の実施形態では、一部のペプチド阻害剤が、既存のギャップジャンクションを破壊することなく、ヘミチャネルを遮断することが好ましい。特定の理論または機構のいかなるものにも拘束されることを望まないが、一部のペプチド模倣剤(例えば、VCYDKSFPISHVR(配列番号23))はまた、ギャップジャンクションの結合解除を引き起こすことなくヘミチャネルを遮断する(Leybeartら、Cell Commun. Adhes.、第10巻、251〜257頁(2003年)を参照されたい)か、または低用量でヘミチャネルを遮断するとも考えられている。例えば、ギャップジャンクションの結合解除を伴わずにヘミチャネルを遮断するには、ペプチドSRPTEKTIFII(配列番号19)もまた用いることができる。ペプチドSRGGEKNVFIV(配列番号107)は、対照配列として用いることができる(DeVrieseら、Kidney Internat.、第61巻、177〜185頁(2002年))。コネキシン45に対するペプチド阻害剤の例は、YVCSRLPCHP (配列番号108)、QVHPFYVCSRL (配列番号109)、FEVGFLIGQYFLY (配列番号110)、GQYFLYGFQVHP (配列番号111)、GFQVHPFYVCSR (配列番号112)、AVGGESIYYDEQ (配列番号)、YDEQSKFVCNTE (配列番号114)、NTEQPGCENVCY (配列番号115)、CYDAFAPLSHVR (配列番号116)、FAPLSHVRFWVF (配列番号117)およびLIGQY (配列番号118)、QVHPF (配列番号119)、YVCSR (配列番号120)、SRLPC (配列番号121)、LPCHP (配列番号122)およびGESIY (配列番号123)、YDEQSK (配列番号124)、SKFVCN (配列番号125)、TEQPGCEN (配列番号126)、VCYDAFAP (配列番号127)、LSHVRFWVFQ (配列番号128)である。ペプチドは、SRL、PCH、LCP、CHP、IYY、SKF、QPC、VCY、APL、HVRを含む3アミノ酸長だけの場合もあり、例えば、LIQYFLYGFQVHPF (配列番号129)、VHPFYCSRLPCHP (配列番号130)、VGGESIYYDEQSKFVCNTEQPG (配列番号131)、TEQPGCENVCYDAFAPLSHVRF (配列番号132)、AFAPLSHVRFWVFQ (配列番号133)など、より長い場合もある。
【0095】
【表8−1】

【0096】
【表8−2】

治療薬
治療薬には、現在存在して公知であるかまたは後に開発される創傷の治療または創傷治癒の促進に有用な薬学的に許容される薬剤を含む。治療薬の例として、例えば、抗感染症薬、麻酔薬、鎮痛薬、抗生物質、麻薬、ならびにステロイド性および非ステロイド性の抗炎症薬が挙げられる。好ましい治療薬の例として、局所ステロイド抗炎症薬、抗菌薬、局部および局所麻酔薬、および局所オピオイドが含まれる。
【0097】
治療薬には、例えば、抗血栓薬、抗凝固薬、抗血小板薬、血栓溶解薬、抗増殖剤、抗炎症薬、スタチン、α−アドレナリン作用性受容体拮抗薬、β−選択性アドレナリン作用拮抗薬、ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、血管拡張剤、抗増殖/抗有糸分裂薬、免疫抑制剤、過形成および特に再狭窄を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、サイトカイン、成長因子、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞接着促進剤、ならびに内皮細胞および上皮細胞の再生を含む健常組織の形成を促進しうる薬物などが含まれうる。
【0098】
抗血栓薬には、例えば、ヘパリン、ワルファリン、ヒルジンおよびその類似体、アスピリン、インドメタシン、ジピリダモール、プロスタサイクリン、プロスタグランジンE、スルフィンピラゾン、アブシキシマブ(abciximab)、エプチファバチド(eptifabatide)、フェノチアジン(クロルプロマジンまたはトリフルペラジン(trifluperazine)など)RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)ペプチドまたはRGDペプチド模倣剤、血小板糖タンパク質IIb−IIIa受容体(C−7E3など)を遮断する薬剤、チクロピジン、またはクロピドグレルとして公知のチエノピリジンが含まれうる。スタチンには、例えば、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、およびフルバスタチン(fluvastatin)が含まれうる。α−アドレナリン作用性受容体拮抗薬には、例えば、プラゾシン、テラゾシン、ドキサゾシン、ケタンセリン、インドラミン(indoramin)、ウラピジル、クロニデイン(clonideine)、グアナベンズ、グァンファシン、グアナドレル、レセルピン、およびメチロシンを含むことができる。β−選択性アドレナリン作用拮抗薬の例として、例えば、メトプロロール、アテノロール、エスモロール、アセブトロール、ボピンドロール、カルテオロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、メドロキサロール(medroxalol)、ブシンドロール(bucindolol)、レボブノロール、メチプラノロール(metipranolol)、ビソプロロール、ネビボロール(nebivolol)、ベタキソロール、セリプロロール(celiprolol)、ソタロール、プロパフェノン、プロプラノロール、マレイン酸チモロール、およびナドロールが含まれうる。ACE阻害剤には、例えば、カプトプリオール(captopriol)、フェンチアプリル(fentiapril)、ピバロプリル(pivalopril)、ゾフェノプリル(zofenopril)、アラセプリル、エナラプリル、エナラプリラット(enalaprilat)、エナラプリロ(enalaprilo)、リシノプリル、ベナゼプリル(benazepril)、キナプリル、およびモエキシプリル(moexipril)が含まれうる。カルシウムチャネル遮断薬には、例えば、ニソルジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニモジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、アムロジピン、およびベプリジル(bepridil)が含まれうる。アンジオテンシンII受容体拮抗薬には、例えば、ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン(irbesartan)、バルサルタン(valsartan)、テルミサルタン(telmisartan)、エプロサルタン(eprosartan)、およびオルメサルタンメドキソミルが挙げられ得る。血管拡張剤の例として、例えば、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシドナトリウム、ジアゾキシド、ボセンタン(bosentan)、エポルプロステノール(eporprostenol)、トレプロスチニル(treprostinil)、およびイロプロストが含まれうる。抗炎症剤には、例えば、ステロイド(例えば、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6−α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン、およびデキサメタゾンを含む)、非ステロイド剤(例えば、サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン;パラ−アミノフェノール誘導体、例えば、アセトアミノフェン;インドールおよびインデン酢酸、例えば、インドメタシン、スリンダク、およびエトダラク(etodalac);ヘテロアリール酢酸、例えば、トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラク;アリールプロピオン酸、例えば、イブプロフェンおよび誘導体;アントラニル酸、例えば、メフェナム酸およびメクロフェナム酸;エノール酸(enolic acids)、例えば、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone)を含む)、およびナブメトンが含まれうる。免疫抑制剤には、例えば、シロリムス、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、およびミコフェノール酸モフェチルが含まれうる。抗増殖/抗有糸分裂剤は、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins)(例えば、エトポシドおよびテニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、およびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシンなどを含む治療薬として用いることもできる。抗血小板薬には、例えば、アセチルサリチル酸、ジピリダモール、クロピドグレル、チクロピジン、アブシキシマブ、エプチフバチド(eptifbatide)、チロフィバン(tirofiban)、可逆性COX−1阻害剤、BPIIIb/IIIa遮断薬、TP拮抗薬、およびP2Y12拮抗薬が含まれうる。
【0099】
抗炎症薬には、例えば、ステロイド(例えば、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6−α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン、およびデキサメタゾンを含む)、非ステロイド剤(例えば、サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン;パラ−アミノフェノール誘導体、例えば、アセトアミノフェン;インドールおよびインデン酢酸、例えば、インドメタシン、スリンダク、およびエトダラク;ヘテロアリール酢酸、例えば、トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラク;アリールプロピオン酸、例えば、イブプロフェンおよび誘導体;アントラニル酸、例えば、メフェナム酸およびメクロフェナム酸;エノール酸、例えば、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾンを含む)、およびナブメトンが含まれうる。
【0100】
免疫抑制剤には、例えば、シロリムス、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、およびミコフェノール酸モフェチルが含まれうる。
【0101】
このような治療薬の適切な投与量は、薬剤分野の技術者には公知である。このような治療薬は、当業者に公知の技術を用いて本発明の医療デバイスに含めるために調製および製剤することができる。
【0102】
特定の実施形態では、1、2、3、4、5、または6つの治療薬を組み合わせて用いることができる。
創傷治癒に有用な薬剤
本明細書で用いられる創傷治癒に有用な薬剤の例として、(1)自然の創傷治癒過程を促進または加速する、または(2)不適切な創傷治癒または遅延した創傷治癒に関連した影響、例えば、有害な炎症、上皮化、新脈管形成および基質の沈着、ならびに瘢痕および線維症を含む影響を低減する、創傷治癒カスケードの刺激物質、エンハンサー、または正の媒介物質が挙げられる。
【0103】
正の媒介物質、エンハンサー、および刺激物質には、例えば、創傷治癒またはアクティブな創傷治癒過程、創傷部位における創傷治癒関連成長因子またはサイトカイン、あるいは創傷治癒関連成長因子受容体またはサイトカイン受容体の活性化の量、質、または効果を刺激する、増強する、促進する、または加速することができる(すなわち、アゴナイズ)薬剤が含まれる。このような薬剤には、例えば、創傷治癒関連成長因子またはサイトカイン、あるいは部分的に改変された形態の創傷治癒関連成長因子またはサイトカインが含まれうる。部分的に改変された形態の創傷治癒関連成長因子またはサイトカインは、例えば、天然の創傷治癒関連成長因子またはサイトカインよりも長い半減期を有しうる。別法では、このような物質は、創傷治癒関連成長因子またはサイトカインの代謝の阻害剤でありうる。
【0104】
このような薬剤の部分改変は、アミノ酸残基の付加、欠失、または置換によるものでありうる。置換は、例えば、保存的置換でありうる。したがって、部分改変分子は、この分子が由来する元の分子の相同体でありうる。部分改変分子は、この分子が由来する元の分子と少なくとも約40%、例えば、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の相同性を有しうる。
【0105】
本明細書で用いられる創傷治癒に有用な薬剤には、例えば、当技術分野で現在公知であるかまたは将来開発される、創傷治療様式について創傷治癒促進剤または瘢痕低減剤が含まれ得る;例示的な因子、薬剤、または様式は、創傷治癒を促進するための天然もしくは合成の成長因子、サイトカイン、またはそのモジュレーター、創傷治癒を促進する生体工学で作られたマトリクス、包帯剤、および句帯などを含む。適した例には、限定するものではないが、(1)局所剤または包帯剤ならびに関連した治療剤および創傷清拭剤(debriding agent)(例えば、Santyl(登録商標)コラゲナーゼなど)およびIodosorb(登録商標)(カデキソマーヨウ素(cadexomer iodine));(2)抗菌剤、例えば、全身または局所クリームまたはゲル、例えば、銀含有剤、例えば、SAG(銀抗菌ゲル)(CollaGUARD(商標)、Innocoll,Inc)(精製I型コラーゲンタンパク質を用いた包帯剤)、CollaGUARD Ag(感染した創傷または感染のリスクのある創傷用の銀を含浸させたコラーゲンを主薬とした生物活性包帯剤)、DermaSIL(商標)(深くてひどく滲出性の創傷のためのコラーゲン−合成フォーム複合包帯剤);(3)細胞療法または生物工学による皮膚、皮膚代用物、および皮膚等価物、例えば、Dermograft(サイトカインおよび成長因子を分泌するヒト線維芽細胞の3次元マトリクス培養物)、Apligraf(登録商標)(ヒトのケラチノサイトおよび線維芽細胞)、Graftskin(登録商標)(組織学的に正常な皮膚に類似し、正常な皮膚によって産生される成長因子に類似の成長因子を産生する、上皮細胞および線維芽細胞からなる二重層)、TransCyte(ヒト線維芽細胞由来の一時的な皮膚代用物)、およびOasis(登録商標)(成長因子と、細胞外マトリクス成分、例えば、コラーゲン、プロテオグリカン、およびグリコサミノグリカンとの両方を含むアクティブな生体材料);(4)創傷治癒を促進するために創傷に導入されるサイトカイン、成長因子、またはホルモン(天然および合成の両方)、例えば、NGF、NT3、BDGF、インテグリン、プラスミン、セマフォリン(semaphoring)、血液由来成長因子、ケラチノサイト成長因子、組織成長因子、TGF−α、TGF−β、PDGF(3つのサブタイプ:AA、AB、およびBの1または複数を用いることができる)、PDGF−BB、TGF−β3、相対レベルのTGFβ3、TGFβ1、およびTGFβ2を調節する因子(例えば、マンノース−6−リン酸)、性ステロイド、例えば、エストロゲン、エストラジオール、またはエチニルエストラジオール(ethinyloestradiol)、ジエノエストロール(dienoestrol)、メストラノール、エストラジオール、エストリオール、結合型エストロゲン、ピペラジンエストロンスルフェート、スティルボエストロール(stilboestrol)、フォスフェステロール四ナトリウム(fosfesterol tetrasodium)、リン酸ポリエストラジオール、チボロン(tibolone)、フィトエストロゲン、17−β−エストラジオールからなる群から選択されるエストロゲン受容体作用薬を含む性ステロイド;胸腺ホルモン、例えば、サイモシンβ−4、EGF、HB−EGF、線維芽成長因子(例えば、FGF1、FGF2、FGF7)、ケラチノサイト成長因子、TNF、インターロイキンファミリーの炎症反応モジュレーター、例えば、IL−10、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、およびIL−10、ならびにこれらのモジュレーター;INF(INF−α、INF−β、およびINF−δ);アクチビンまたはインヒビンの刺激物質、およびインターフェロンγ プロスタグランジンE2(PGE2)の阻害剤、およびアデノシン3’,5’−環状一リン酸(cAMP)経路の伝達物質;アデノシンA1作用薬、アデノシンA2作用薬、または(5)創傷治癒に有用な他の薬剤、例えば、VEGF、VEGFA、IGF;IGF−1、炎症性サイトカイン、GM−CSF、およびレプチンの天然または合成の両方の相同体、作用薬、および拮抗薬、および(6)IGF−1およびKGF cDNA、自己血小板ゲル、次亜塩素酸(Sterilox(登録商標)リポ酸、一酸化窒素シンターゼ3、マトリクスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)、CCT−ETA、αまたはβ6(alphavbeta6)インテグリン、成長因子プライム化線維芽細胞およびデコリン、銀含有創傷包帯剤、Xenaderm(商標)、パパイン創傷清拭剤、ラクトフェリン、サブスタンスP、コラーゲン、および銀−ORC、胎盤アルカリホスファターゼまたは胎盤成長因子、ヘッジホッグシグナル伝達のモジュレーター、コレステロール合成経路のモジュレーター、およびAPC(活性化プロテインC)、ケラチノサイト成長因子、TNF、トロンボキサンA2、NGF、BMP骨形成タンパク質、CTGF(結合組織成長因子)、創傷治癒ケモカイン、デコリン、乳酸誘導新血管形成のモジュレーター、タラ肝油、胎盤アルカリホスファターゼ、または胎盤成長因子、およびサイモシンβ4が含まれうる。特定の実施形態では、創傷治癒に有用な1、2、3、4、5、または6つの治療薬を組み合わせて用いることができる。
【0106】
上記した創傷治癒に有用な薬剤(例えば、成長因子およびサイトカインを含む)は、すべての天然存在の多型(例えば、成長因子またはサイトカインの多型)を含むことを理解されたい。また、機能性フラグメント、創傷治癒に有用な前記薬剤またはその機能性フラグメントの1つを含むキメラタンパク質、創傷治癒剤の1または複数のアミノ酸の類似置換によって得られる相同体、および種相同体も含まれる。創傷治癒に有用な1または複数の薬剤は、組換えDNA技術の産物でありえ、創傷治癒に有用な1または複数の薬剤は、トランスジェニック技術の産物でありうることが企図される。例えば、血小板由来成長因子は、組換えPDGFの形態またはPDGFのコード配列を含む遺伝子治療ベクターで提供することができる。
【0107】
フラグメントまたはその部分的に改変された形態は、もちろん追加の機能を有してもよいが、その因子の生物学的機能または創傷治癒の機能を維持する創傷治癒剤のフラグメントまたは部分的に改変された形態を指す。部分的な改変は、例えば、アミノ酸残基の付加、欠失、または置換によるものでありうる。例えば、置換は保存的な置換でありうる。したがって、部分的に改変された分子は、創傷治癒剤の相同体でありうる。これらは、例えば、前記因子と少なくとも約40%の相同性を有しうる。これらは、例えば、前記因子と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、または95%の相同性を有しうる。例えば、特定の実施形態では、IL−10またはそのフラグメントもしくは部分的に改変された形態は、約1μM〜約10μMの濃度で投与することができる。IL−10またはそのフラグメントもしくは部分的に改変された形態は、約2.5μM〜約5μMの濃度で投与することができる。特定の他の実施形態では、IL−10またはそのフラグメントもしくは部分的に改変された形態を、創傷治癒の直前に投与することができるが、創傷の約7日以内に投与すれば有効であり得る。IL−10またはそのフラグメントもしくは部分的に改変された形態は、少なくとも2回投与することができる。
ギャップジャンクション調節剤
ギャップジャンクション調節剤は、ギャップジャンクションを閉鎖または遮断する、あるいはギャップジャンクションによる細胞間情報伝達を他の方法で防止または低減する薬剤を含む。
【0108】
本明細書で用いられる「ギャップジャンクション調節剤」とは、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性、機能、または形成を全体的または部分的に阻止防止するか、低下させるか、または調節するこれらの薬剤または化合物を広く含みうる。
【0109】
他の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの形成または活性を、全体的または部分的に阻止防止するかまたは低下させる。
【0110】
一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの全体的または部分的な閉鎖を誘導する。他の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションを、全体的または部分的に遮断する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの開放口を、全体的または部分的に低下させるかまたは防止阻止する。
【0111】
一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤によるギャップジャンクションまたはヘミチャネルの前記遮断または閉鎖は、細胞外腔またはペリプラズム腔への開口チャネルを介する低分子の流動を防止するかまたは低下させることにより、また細胞外腔またはペリプラズム腔からの開放口チャネルを介する低分子の流動を防止阻止するかまたは低下させることにより、細胞外ヘミチャネル連絡情報伝達を低下させることも可能であり、これを阻害することも可能である。
【0112】
ギャップジャンクションを閉鎖するのに用いられるギャップジャンクション調節剤(例えば、コネキシン43のチロシン残基をリン酸化する)は、Jensenらによるへの米国特許第7,153,822号、米国特許第7,250,397号、および組み合わされた特許公報において報告されている。ペプチドおよびペプチド模倣剤をまた含む例示的なギャップジャンクション調節剤は、Greenら、WO2006134494において報告されている。また、Gourdieら、WO2006069181;およびTudorら、WO2003032964も参照されたい。
【0113】
本明細書で用いられる「ギャップジャンクションリン酸化剤」は、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルの閉鎖を誘導するために、コネキシンのアミノ酸残基上においてリン酸化を誘導することが可能な薬剤または化合物を含みうる。例示的なリン酸化部位は、コネキシンタンパク質上における1つもしくは複数のチロシン残基、セリン残基、またはトレオニン残基を含む。一部の実施形態において、リン酸化の調節は、1または複数のコネキシンタンパク質上における1つまたは複数の残基上において生じうる。例示的なギャップジャンクションリン酸化剤は当技術分野において周知であり、例えば、c−Srcチロシンキナーゼまたは他のGタンパク質結合共役受容体アゴニストを含みうる。Giepmans B, J.、 Biol. Chem.、第276巻、第11号、8544〜8549頁、2001年3月16日を参照されたい。一実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ヘミチャネルの閉鎖を介してによって、ヘミチャネルの機能に影響を及ぼす。別の実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ギャップジャンクションの閉鎖によってを介して、ギャップジャンクションの機能に影響を及ぼす。コネキシン43ギャップジャンクションおよびコネキシン43ヘミチャネルの閉鎖を標的とするギャップジャンクションリン酸化剤が好ましい。
【0114】
さらに他の抗コネキシン剤は、コネキシンカルボキシ末端ポリペプチドを含む。Gourdieら、WO2006/069181を参照されたい。
【0115】
ある別の態様において、ギャップジャンクション修飾改変剤は、例えば、脂肪族アルコール;オクタノール;ヘプタノール;麻酔剤(例えば、ハロタン)、エトレン、フルオタン、プロポフォール、およびチオペンタール;アナンダミド;アリールアミノベンゾアート(FFA:親油性であるフルフェナム酸および類似の誘導体);カルベンオキソロン;カルコン(2’,5’−ジヒドロキシカルコン);CHF(クロロヒドロキシフラノン);CMCF(3−クロロ−4−(クロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン);デキサメタゾン;ドキソルビシン(および他のアントラキノン誘導体);エイコサノイドであるトロンボキサンA(2)(TXA(2))模倣剤;NO(一酸化窒素);脂肪酸(例えば、アラキドン酸、オレイン酸、およびリポキシゲナーゼ代謝物);フェナム酸(フルフェナム酸(FFA)、ニフルミン酸(NFA)、およびメクロフェナム酸(MFA));ゲニステイン;グリチルレチン酸(GA):18a−グリチルレチン酸および18−ベータβ−グリチルレチン酸、ならびにこれらの誘導体;リンデンリンダン;リゾホスファチジン酸;メフロキン;メナジオン;2−メチル−1,4−ナフトキノン、ビタミンK(3);ナフェノピン;オカダ酸;オレアミド;オレイン酸;PH、細胞間内酸性化によるゲーティング、例えば、酸性化剤;多価不飽和脂肪酸;脂肪酸GJIC阻害剤(例えば、オレイン酸およびアラキドン酸);キニジン;キニンキニーネ;all全 transトランス−レチノイン酸;およびタモキシフェンを含みうる。
医療デバイス
用語「医療デバイス」は、疾患または他の状態の診断あるいはヒトまたは他の動物(特に哺乳動物)の疾患、障害、または状態の治癒、緩和、治療、または防止に用いるための構成部品または付属品を含む、機器、装置、道具、機械、デバイス、インプラント、または他の類似または関連物品を指し;ヒトまたは他の動物の体の構造または任意の機能に影響を与えるためのものであり;または、公定書収載の国民医薬品集(official National Formulary)または米国薬局方(United States Pharmacopoeia)またはそれらの任意の追補に認められる。特に、「医療デバイス」は、疾患、障害、または状態の防止、診断、治療、緩和、および/または監視などによって疾患、障害、または状態(特に、ヒトの疾患、障害、または状態)に対処するため;傷害の診断、治療、緩和、監視、または安定化などによって傷害(特に、ヒトの傷害)を看護するため;解剖学的構造の調査、置換、変更、または支援などによって解剖学的要求(特に、ヒトの解剖学的要求)を満たすため;生理的機能の調査、置換、変更、または支援などによって生理的機能(特に、ヒトの生理的機能)を維持するため;生命(特に、ヒトの生命)を支援または維持するため;および受胎(特に、ヒトの受胎)を制御するために用いられる製品を含む。
【0116】
用語「植え込み型医療デバイス」は、対象の体(ヒトまたは他の哺乳動物の体など)またはその天然の開口部の中に部分的または全体が挿入され、長期間(例えば、約2日、5日、7日、10日、14日、または30日以上)に渡ってそこに留まることになっている医療デバイスを指す。通常は、植え込み型医療デバイスは、外科処置または内科処置によって挿入または取り付けられ、外科処置または内科処置によって取り出される。
【0117】
本明細書で提供する抗コネキシン剤、組成物、および方法は、インプラント、医療デバイスおよび手術デバイスなどを利用する様々な処置に用いることができる。一態様では、インプラント、手術デバイス、またはステントは、本明細書で提供する任意の抗コネキシン剤で被覆されるか、または任意の抗コネキシン剤を含み、かつ/または放出するように他の方法で構成されている。抗コネキシン剤を含む医療デバイスの例として、例えば、ステント、バルーン、人工心臓弁、弁形成リング、心室補助装置、例えば、左心室補助装置、右心室補助装置、および両室補助装置、移植片、シャント、縫合リング(シリコーンまたはポリウレタンのインサートを有するものを含む)、ポリエステル織物包装、医療リード、整形外科プレート、骨ピン、骨代用物、アンカー、ジョイント、ねじ、眼用インプラント(例えば、眼窩インプラント、レンズインプラント、角膜インプラント(イントラソーマル角膜リングセグメント(intrasomal corneal ring segments)(INTACS)、およびマイクロチップを含む)、カテーテル、カニューレ、パルス発生器、除細動器、動静脈シャント、ペースメーカー、縫合糸、縫合糸アンカー、ステープル、吻合デバイス、椎骨板、止血バリア、クランプ、クリップ、血管インプラント、組織接着剤およびシーラント、組織骨格、管内デバイス、血管支持体、ならびに一般的な整形外科処置、股関節置換処置、中枢神経系の処置、眼の処置、胃腸の処置、および内視鏡検査処置に関して用いられる任意のデバイスを含むことができる。
【0118】
他の例として、心血管デバイス(例えば、植え込み型静脈カテーテル、静脈ポート、トンネル静脈カテーテル、長期注入ラインまたはポート、例えば、肝動脈注入カテーテル、ペースメーカーワイヤ、植え込み型除細動器を含む);神経/神経外科デバイス(例えば、心室腹膜シャント、心室動脈シャント、神経刺激デバイス、椎弓切除術後の硬膜外線維形成を防止するための硬膜パッチおよびインプラント、連続的なクモ膜下注入のためのデバイス);胃腸デバイス(例えば、長期留置カテーテル、栄養チューブ、およびシャント)、涙嚢鼻腔吻合術(dacrocystalrhinostomy)に失敗したときのための副子、糖尿病網膜症のためのインプラント;耳鼻咽喉科デバイス(例えば、小骨インプラント、鼓膜横断(transtempanic)ドレーンの代わりとしての膠耳もしくは慢性耳炎のための耳管スプリントまたはステント);形成外科インプラント(例えば、胸筋下または腺下アプローチまたは乳腺切除術後のゲルまたは生理食塩水含有乳房インプラントまたは顎インプラントに応答した線維拘縮の予防)、および整形外科インプラント(例えば、セメント整形外科プロテーゼ)が挙げられる。
【0119】
ステントには、血管内および管内ステントが含まれ、例えば、Pepineら、「Coronary Artery Stents」、JACC、28巻、第3号、1996年9月、782〜94頁;D. Stoeckel、「A survey of stent designs」、Min Invas Ther & Allied Technol、2002年、11巻(4号)、137〜147頁を参照されたい。また、ステントには、例えば、バルーン拡張型ステントおよび自己拡張型ステントも含まれうる。バルーン拡張型ステントには、Cordis Johnson & Johnson Interventional Systems、Medi−Tech、Cook、ACS、およびMetronicを含む幾つかの供給業者から入手可能な種類のステントが含まれる。自己拡張型ステントは、通常は、例えば、形状記憶合金から形成され、Instentなどの供給業者から入手可能である。ステントは、バルーン拡張型ステントの場合、通常は、ステンレス鋼の骨組みからなり、自己拡張型ステントの場合は、ニッケル/チタン合金からなる。通常は、ステントは、強度を得るために金属材料から形成されるが、ポリマー材料またはプラスチック材料も、ステントの構造に用いることができる。ステントは、拡張された位置で被覆されるのが好ましいが、拡張していない位置でのステントの被覆も企図される。例示的な被覆バルーンには、例えば、可膨張性および自己可膨張性の被覆バルーンおよびバルーンカテーテルを含めた被覆バルーンおよび被覆バルーンカテーテルが含まれる。可膨張性被覆バルーンは、例えば、典型的にはポリエチレンテレフタレートからなる非使い捨てバルーンとしてもよいし、例えば、典型的にはラテックスゴムまたはシリコーンゴムからなる弾性バルーンとしてもよい。
デバイスの準備
インプラントおよび他の外科デバイスおよび医療デバイスは、例えば、(a)抗コネキシン剤または組成物をインプラントまたはデバイスに直接付着させることによって(例えば、インプラントまたはデバイスへのポリマー/薬物フィルムを用いたスプレーによるか、インプラントまたはデバイスをポリマー/薬物溶液中に浸漬することによるか、または他の共有結合もしくは非共有結合の手段によるかのいずれかによって);(b)抗コネキシン組成物(または上記の抗コネキシン因子)を吸収するヒドロゲルなどの物質を用いてインプラントまたはデバイスを被覆することによって;(c)抗コネキシン組成物被覆糸(またはポリマー自体が糸に形成されている)をインプラントまたはデバイスに編み込むことによって;(d)抗コネキシン組成物からなるか、または抗コネキシン組成物で被覆されたスリーブまたはメッシュにインプラントまたはデバイスを挿入することによって;(e)抗コネキシン剤または組成物でインプラントまたはデバイス自体を形成することによって;または(f)抗コネキシン剤を放出するようにインプラントまたはデバイスを他の方法で適合させることによって、例えば、異なる放出特性を有する複数の層または他の送達担体を提供することによって、または異なる化合物(異なる放出特性を持つまたは持たない)を(層または他の方法によって)含む異なる部分または領域を備えたデバイスを提供することによって本発明の薬剤(例えば、抗コネキシン剤および組成物)を様々な方法で被覆(または他の方法で放出するように適合)することができる。本発明の好ましい実施形態の範囲内で、本組成物は、保管中および挿入時にインプラントまたはデバイスにしっかりと付着させるべきである。抗コネキシン剤または組成物はまた、好ましくは、保管中、挿入の前、または体内に挿入(必要な場合)した後に体温まで温められたときに劣化すべきではない。加えて、抗コネキシン剤または組成物は、好ましくは、ステントの輪郭を変えずに、抗コネキシン剤が均一に分布するように滑らかかつ均等にインプラントまたはデバイスに被覆すべきである。本発明の好ましい実施形態の範囲内で、抗コネキシン剤または組成物は、インプラントまたはデバイスが配備されたら、インプラントまたはデバイスの周囲組織内に抗コネキシン因子を均一かつ予測可能に長期に渡って放出すべきである。血管ステントの場合、上記の特性に加えて、組成物は、ステントのトロンボゲン形成(血餅の形成を引き起こす)を生じさせるべきではなく、血流に著しい乱流(ステントが被覆されていない場合にステント自体が引き起こすと予想される乱流よりも大きな乱流)を引き起こすべきではない。
【0120】
ステントを利用する抗コネキシン剤の送達は、例えば、ステントのストラット、ステントグラフト、ステントを送達するために用いられるカテーテル、ステントカバーまたはシースからの送達を含め、様々な方法で行うことができる。ステントへの治療薬の適用およびステントによる治療薬の投与の様々な方法は、参照によりその全容が本明細書に組み入れられる米国特許第6,702,850号、同第6,585,764号、同第6,358,556号、同第6,344,028号、同第6,251,136号、同第5,697,967号、同第5,599,352号、同第5,591,227号、同第5,464,650号、同第5,304,121号、同第5,163,952号、同第5,092,877号、同第4,994,071号、および同第4,916,193号に開示されている。他のデバイスは、現在公知または将来開発される技術を含め、当分野のこれらまたは他の技術を用いて被覆または含浸させることができる。
【0121】
前述の医療デバイスの1または複数のいずれもが、繊維(fabric)の上層が体組織や血液などの流体に接触するように、例えば、シース、おおい、層、または被膜などの繊維を含め、任意の種類の上層を備えることができる。別法では、繊維の上層の代わりとして、医療デバイスは、例えば、メッシュ、コイル、ワイヤ、可膨張性バルーン、ビード、シートなどの任意の他のタイプの層、または、例えば、血管内標的部位、関節内部位、内腔内標的部位、眼窩内および眼内標的部位、固形組織内の標的部位、関節、心臓、腸、眼などを含む標的部位に用いるもしくは植え込むことができる任意の他の構造を備えることができる。
含浸された包帯剤およびマトリクス
一態様では、医療デバイスは、1または複数の抗コネキシン剤、1または複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップジャンクション調節剤を含む包帯剤またはマトリクスの形態で提供される。特定の実施形態では、本発明の1または複数の薬剤は、直接塗布するために液体、半固体、または固体の組成物の形態で提供されるか、または、この組成物は、包帯剤ガーゼやマトリクスなどの固体接触層の表面または内部に塗布される。包帯剤組成物は、例えば、流体またはゲルの形態で提供することができる。1または複数の抗コネキシン剤、1または複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップジャンクション調節剤は、局所適用のための従来の医薬賦形剤と組み合わせて提供することができる。適当な担体の例として、Pluronicゲル、Polaxamerゲル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびこれらの混合物を含むセルロース誘導体を含有するヒドロゲル;およびポリアクリル酸(Carbopols)を含有するヒドロゲルが挙げられる。また、適当な担体の例として、例えば、セトマクロゴール(cetomacrogol)乳化軟膏をベースにしたクリームなどの局所医薬調製物に用いられるクリーム/軟膏が挙げられる。上記の担体には、アルギン酸塩(増粘剤または刺激剤として)、ベンジルアルコールなどの保存剤、リン酸水素二ナトリウム/リン酸二水素ナトリウムなどのpHを調節するための緩衝剤、塩化ナトリウムなどのモル浸透圧濃度を調整するための薬剤、およびEDTAなどの安定剤が含まれうる。
【0122】
適した包帯剤またはマトリクスには、例えば、1または複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション調節剤を含む1または複数の抗コネキシン剤とともに以下に示すものが含まれうる。
【0123】
(1)吸収剤:適した吸収剤には、例えば、セルロース、綿、またはレーヨンなどの繊維の高吸収性層と組み合わせた、例えば、半接着質の層または非接着性の層を提供できる吸収性包帯剤が含まれうる。別法では、吸収剤は、一次または二次包帯剤として用いることができる。
【0124】
(2)アルギン酸塩:適したアルギン酸塩の例として、例えば、天然多糖繊維または海藻由来キセロゲルからなる不織布である包帯剤、非接着パッド、およびリボンが挙げられる。適当なアルギン酸塩包帯剤は、例えば、浸出物との接触の際にイオン交換プロセスによって湿潤性ゲルを形成することができる。特定の実施形態では、アルギン酸塩包帯剤は、柔軟かつ快適性であり、かつ不規則な形状の部分に対する包装、詰め込み、または適用が容易なように設計されている。特定の実施形態では、アルギン酸塩包帯剤は、二次包帯剤として用いることができる。
【0125】
(3)抗菌包帯剤:適した抗菌包帯剤には、例えば、感染に対する効能が必要または望ましい場合にその効能を維持するために、例えば、銀およびポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)などの生物活性剤の送達を容易にできる包帯剤が含まれうる。特定の実施形態では、適した抗菌包帯剤は、例えば、スポンジ、含浸織物ガーゼ、フィルム包帯剤、吸収製品、島状包帯剤、ナイロン織物、非接着バリア、または材料の組合せとして利用可能でありうる。
【0126】
(4)生物剤および生合成剤:適した生物学的包帯剤または生合成包帯剤には、例えば、天然資源に由来するゲル、溶液、または半浸透性シートが含まれうる。特定の実施形態では、ゲルまたは溶液は、治療部位に適用され、バリア保護のため包帯剤で覆われる。別の実施形態では、膜として機能を果たすことができるシートをin situに配置し、1回適用したら所定の位置に残置する。
【0127】
(5)コラーゲン:適したコラーゲン包帯剤には、例えば、ウシ資源、ブタ資源、もしくはトリ資源、または他の天然資源もしくはドナーに由来するゲル、パッド、粒子、ペースト、粉末、シート、または溶液が含まれうる。特定の実施形態では、コラーゲン包帯剤は、治療部位の浸出物と相互作用してゲルを形成できる。特定の実施形態では、コラーゲン包帯剤は、二次包帯剤と組み合わせて用いることができる。
【0128】
(6)複合剤:適した複合包帯剤には、例えば、物理的に異なる成分を組み合わせて単一製品にし、例えば、細菌バリア、吸収、および接着などの複数の機能を果たす包帯剤が含まれうる。特定の実施形態では、複合包帯剤は、例えば、複数の層からなり、半接着または非接着のパッドを組み込む。特定の実施形態では、複合包帯剤には、例えば、不織布テープまたは透明フィルムの接着縁(adhesive border)も含まれうる。特定の他の実施形態では、複合包帯剤は、例えば、一次包帯剤または二次包帯剤として機能することができ、さらに別の実施形態では、複合包帯剤は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。
【0129】
(7)接触層:適した接触層包帯剤には、例えば、治療部位に適用された他の薬剤または包帯剤との直接接触から組織を保護するために所定領域に配置される薄い非接着性シートが含まれうる。特定の実施形態では、接触層は、治療部位の領域の形状に適合するように配置することができ、浸出物が通過して重ねられた二次包帯剤によって吸収されるように多孔質である。さらに別の実施形態では、接触層包帯剤は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。別の実施形態では、筋肉組織、結合組織、上皮組織、および神経組織の異常な創傷治癒を低減または防止するために内部包帯剤、接触シート、またはフィルムを用いることができる。
【0130】
(8)弾性絆創膏:適した弾性絆創膏には、例えば、伸長して体の外形に適合する包帯剤が含まれうる。特定の実施形態では、繊維(fabric)組成物には、例えば、綿、ポリエステル、レーヨン、またはナイロンが含まれうる。特定の他の実施形態では、弾性絆創膏は、例えば、所定の位置にカバーを保持するため、圧力を加えるため、または治療部位の衝撃を和らげるために二次層または包帯剤として吸収性を提供することができる。
【0131】
(9)発泡体:適した発泡体包帯剤には、例えば、流体を保持できる小さい開口したセルを備えた、発泡ポリマー溶液(ポリウレタンを含む)からなるシートおよび他の形状が含まれうる。例示的な発泡体は、例えば、他の材料と組み合わせて、含浸化する(impregnated)かまたは層状化することができる。特定の実施形態では、吸収性能は、発泡体の厚さおよび組成に基づいて調整することができる。特定の他の実施形態では、治療部位に接触する領域は、容易に剥がせるように非粘着性でありうる。さらに別の実施形態では、発泡体は、抗感染バリアとして役立ちうる接着縁および/または透明フィルム被膜と組み合わせて用いることができる。
【0132】
(10)ガーゼおよび不織布包帯剤:適したガーゼ包帯剤および織布包帯剤(woven dressing)には、例えば、吸収性が様々な程度である乾燥の織布スポンジまたは不織布スポンジおよび包装材が含まれうる。例示的な繊維組成物には、例えば、綿、ポリエステル、またはレーヨンが含まれうる。特定の実施形態では、ガーゼおよび不織布包帯剤は、接着縁を備えたまたは備えていない滅菌または非滅菌の物がバルクで入手可能でありうる。例示的なガーゼ包帯剤および織布帯剤は、様々な治療部位の洗浄、パッキング、およびカバーのために用いることができる。
【0133】
(11)親水コロイド:適した親水コロイド包帯剤には、ゼラチン、ペクチン、またはカルボキシメチルセルロースからなる、例えば、ウエハ、粉末、またはペーストが含まれうる。特定の実施形態では、ウエハは、自己接着性であり、接着縁を備えたまたは備えていない、多種多様な形状および大きさの物が入手可能である。例示的な親水コロイドは、体に形状を合わせる必要がある領域に有用である。特定の実施形態では、粉末およびペーストの親水コロイドを、二次包帯剤と組み合わせて用いることができる。
【0134】
(12)ヒドロゲル(非晶質):適した非晶質ヒドロゲル包帯剤には、例えば、水、ポリマー、および形状のない他の成分からなり、水分を供与して湿潤治癒環境を維持し、かつ/または治療部位に再水和するように設計された製剤が含まれうる。特定の実施形態では、ヒドロゲルは、二次包帯剤カバーと組み合わせて用いることができる。
【0135】
(13)ヒドロゲル:含浸包帯剤:適した含浸ヒドロゲル包帯剤には、例えば、非晶質ヒドロゲルで飽和されたガーゼ、不織布スポンジ、ロープ、および紐が含まれうる。非晶質ヒドロゲルには、例えば、水、ポリマー、および形状のない他の成分からなり、乾燥治療部位に水分を供与して湿潤治癒環境を維持するように設計された製剤が含まれうる。
【0136】
(14)ヒドロゲルシート:適したヒドロゲルシートには、例えば、水に不溶性であって、膨張することによって水溶液と相互作用する架橋親水性ポリマーの3次元ネットワークが含まれうる。例示的なヒドロゲルは、高適合性かつ高透過性であり、その組成によって様々な量のドレナージを吸収することができる。特定の実施形態では、ヒドロゲルは、治療部位に対して非粘着性、すなわち剥がしやすいように処理されている。
【0137】
(15)含浸包帯剤:適した含浸包帯剤には、溶液、乳濁液、油、ゲル、または他の薬学的に活性な化合物もしくは担体剤、例えば、食塩水、油、亜鉛塩、ワセリン、ゼロフォルム、スカーレットレッド、および本明細書に記載する化合物で飽和されたガーゼ、不織布スポンジ、ロープ、および紐が含まれうる。
【0138】
(16)シリコーンゲルシート:適したシリコーンゲルシート包帯剤には、例えば、メッシュまたは繊維(fabric)で補強された、またはメッシュまたは繊維に結合された架橋ポリマーからなる軟質カバーが含まれうる。
【0139】
(17)溶液:適した液体包帯剤には、例えば、多タンパク質材料および細胞外マトリクスで見られる他の要素の混合物が含まれうる。特定の実施形態では、例示的な溶液を、デブリドマンおよび洗浄の後に治療部位に適用し、次いで吸収性包帯剤または非接着性パッドで覆うことができる。
【0140】
(18)透明フィルム:適した透明フィルム包帯剤には、一側が接着剤で様々な厚さに被覆されたポリマー膜が含まれうる。特定の実施形態では、透明フィルムは、液体、水、および細菌に対して不透過性であるが、水蒸気および大気気体に対しては透過性である。特定の実施形態では、透明であることは、治療部位の視覚化を可能にする。
【0141】
(19)増量剤:適した増量剤包帯剤には、例えば、ビード、クリーム、発泡体、ゲル、軟膏、パッド、ペースト、ピロー(pillows)、粉末、紐、または他の製剤が含まれうる。特定の実施形態では、増量剤は、非接着性であり、徐放性抗菌剤を含むことができる。例示的な増量剤は、湿潤環境の維持、浸出物の管理、ならびに例えば、部分的および完全な厚さの創傷、感染した創傷、排液性創傷、およびパッキングを必要とする深い傷の治療に有用となりうる。
【0142】
組織は、医療デバイスの使用中に、医療処置中に、および医療デバイスの植え込みにより損傷して炎症を起こすことがある。
【0143】
説明し請求するデバイスおよび方法を用いて治療できる哺乳動物の例として、例えば、組織の損傷および/または臓器機能不全、例えば、心血管、眼、胃腸、中枢神経系、または内部の器官組織の損傷および/または機能不全、および/または炎症を患っているかまたは発症リスクのあるヒトが挙げられる。
【0144】
本発明の一態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む医療デバイスは、心室補助装置である。本発明の別の態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む医療デバイスは、左心室補助装置である。本発明のさらに別の態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む医療デバイスは、右心室補助装置である。
【0145】
本発明の一態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む医療デバイスはステントを含む。別の態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含むステントは薬物溶出ステントである。
【0146】
本発明の一態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む医療デバイスは縫合糸を含む。別の態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む縫合糸は、被覆または含浸薬物溶出の縫合糸である。
【0147】
本発明の別の態様では、医療デバイスは、少なくとも一部が抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含み、デバイスが使用されたときに対象のギャップジャンクションの形成および/またはヘミチャネルの開口を改善するのに利用可能である、対象に導入するのに適した、例えばカテーテルなどの器具またはインプラントを含む。
【0148】
一実施形態では、抗コネキシン剤の放出速度を制御する。本発明の一実施形態では、抗コネキシン剤は、徐々にまたは長期に渡って放出させることができる。一実施形態では、抗コネキシン剤は、例えば、医療デバイスの本体またはその一部の吸収または分解の期間に渡って放出される。
【0149】
本発明の一実施形態では、医療デバイスの表面は、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む。本発明の一態様では、抗コネキシン剤は、医療デバイスに直接的または間接的に結合される。本発明の別の態様では、抗コネキシン剤は、医療デバイスの表面に直接的または間接的に結合される。本発明の別の態様では、この表面は、対象内の組織に接触する。一実施形態では、標的組織は、心組織、血管組織、筋組織、または結合組織である。さらに別の実施形態では、この表面は、傷害部位または潜在的な傷害部位に接触する。別の実施形態では、医療デバイスは、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤の表面接触放出を提供する。
【0150】
一実施形態では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤は、医療デバイス表面のコーティングに存在する。このようなコーティングの例として、例えば、合成または天然マトリクス、例えば、フィブリンまたは酢酸系ポリマー、ポリマーまたはコポリマーの混合物が挙げられ、これらは、生吸収性または生分解性マトリクスとすることができ、これらのマトリクスは、抗コネキシン剤を有する、含む、または包含する。このようなマトリクスは、例えば、1または複数の抗コネキシン剤の表面接触または定量的もしくは持続的な放出を提供することができる。
【0151】
別の実施形態では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含むデバイスは、例えば、生分解性または生吸収性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成することができる。限定するものではないが、ポリマー材料には、例えば、ナイロン、ポリエチレンペルタレート(polyethylene perthalate)、ポリテトラフルオロエチレンなどが含まれうる。他のポリマーには、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン(1−hydropentafluoropropylene)、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロアセトン、およびヘキサフルオロイソブチレンも含まれうる。
【0152】
別の態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む医療デバイスの表面は、有機材料または有機材料と無機材料の複合材から構成することができる。このような材料の例として、限定するものではないが、例えば、1または複数の抗コネキシン剤を含む合成ポリマーまたはコポリマー、抗コネキシン剤を含む機能化単層が吸着しているかまたは他の方法で結合している表面、あるいは1または複数の抗コネキシン剤と混合された合成ポリマー材料またはタンパク質が挙げられる。
【0153】
別の態様では、医療デバイスのすべてまたは一部は、例えば、コーティング自体として、またはコーティングマトリクス中の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤でコーティングする;あるいは、医療デバイスのすべてまたは一部は、抗コネキシン剤を含む材料、例えば、抗コネキシン剤と混合したまたは機能化抗コネキシン剤を含むポリマーから形成することができる;あるいは、医療デバイスの組織接触表面のすべてまたは一部は、抗コネキシン剤で誘導体化することができる。
【0154】
医療デバイスは、当分野で公知の方法、例えば、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スポンジング、またはブラシングなどのいずれか1または複数の方法を用いてコーティングすることができる。コーティングは、例えば、重量パーセントで約0.0001%〜約30%の範囲の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含むことができるが、他の量も企図し、用いることができる。したがって、一選択肢によると、コーティングは、重量パーセントで約0.001%〜約25%、別法では、約0.01%〜約20%、約0.1%〜約15%、約0.5%〜約12%、約1%〜約10%、約2%〜約10%、約5%〜約10%、約0.01%〜約5%、約0.1%〜約5%、または約0.5%〜約5%の抗コネキシン剤を含むことができる。抗コネキシン剤の重量パーセントは、限定するものではないが、局所送達される抗コネキシン剤の用量、コーティングからの抗コネキシン剤の放出速度、および抗コネキシン剤の送達期間を含む考慮事項に照らして適宜調節する。コーティング中には、適当な賦形剤、例えば、コーティングの抗コネキシン剤へ(または逆)の結合を助け、かつ/または抗コネキシン剤の放出を助けるポリマーおよび/またはそれらの賦形剤をさらに含めることができる。別法では、例えば、医療デバイスの表面上または内部に抗コネキシン剤を閉じ込めるポリマーまたは他の物質などの賦形剤を、抗コネキシン剤に結合することができる。
【0155】
医療デバイスはまた、例えば、約0.1μg〜約1mg以上、約1μg〜約750μg、約5μg〜約600μg、約10μg〜約500μg、約20μg〜約400μg、約30μg〜約300μg、約50μg〜約200μg、および約50μg〜約100μgの範囲の量の抗コネキシン剤を送達するために当分野で公知の方法のいずれか1または複数を用いてコーティングすることもできるが、上記の範囲よりも単に少ない量(または多い量)、例えば、約1μg〜10μg、約1μg〜5μg、および約10μg〜50μgなどの量(および約100μg〜200μg、約500μg〜600μg、および約300μg〜400μgなどの量)を含む範囲を含んでいる他の量も企図され使用することができる。抗コネキシン剤の量は、限定するものではないが、局所送達される抗コネキシン剤の用量、コーティングからの抗コネキシン剤の放出速度、抗コネキシン剤の送達期間、障害の大きさおよび性質、予想される組織損傷の範囲、および炎症などを含む考慮事項に照らして適宜調節する。
【0156】
特定の実施形態では、本開示にしたがった有用な例示的化合物の方法またはコーティングおよび投薬/投与量の情報は、Jensenらに付与された米国特許第7,153,822号、第7,250,397号、Greenらの国際公開第2006134494号、Gourdieらの国際公開第2006069181号、およびTudorらの国際公開第2003032964号で見出すことができる。
【0157】
別の態様では、医療デバイスのすべてまたは一部もしくは複数の部分は、抗コネキシン剤自体、または被覆もしくはコーティングマトリクスとして機能する抗コネキシン剤を含む薬学的に許容される担体もしくは賦形剤でコーティングすることができる。コーティングは、例えば、固体、液体、ゲル、または半固体の硬度でありうる。
【0158】
担体またはマトリクスは、例えば、抗コネキシン剤および/または他の治療薬(複数可)の定量的な放出、緩徐な放出、または持続的な放出を提供する薬剤から形成するか、またはこのような薬剤を含むことができる。コーティングは、例えば、ヒト化ウシ血清アルブミンを含め、例えば、ヒトまたはウシのいずれかでありうるアルブミンを含むことができる。
【0159】
コーティングは、単一コーティングとして適用してもよいし、あるいは複数のコーティングまたは複数の層の中に適用してもよい。複数のコーティングまたは複数の層は、時間経過による薬物の放出速度を変更するために担体に対して様々な比率で抗コネキシン剤を含むことができる。複数のコーティングまたは複数の層は、望ましい治療計画にしたがった異なる薬物を含むこともできる。一実施形態では、コーティングは、医療デバイスに適用されている、ポリマー/抗コネキシン剤の混合物、例えば、抗コネキシン43剤の混合物の複数のコーティングまたは複数の層を含む。別の実施形態では、複数のコーティングまたは複数の層におけるポリマーに対する抗コネキシン剤の比率は様々である。
【0160】
別の態様では、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤は、医療デバイスの本体のすべてまたは一部に含浸、または他の方法で取り込ませることができる。
【0161】
加えて、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤は、任意選択で医療デバイス全体に適用した生体適合性材料のコーティングまたは膜とともに、医療デバイスに形成された1または複数のレザバーまたはチャネル内に提供することによって、レザバー/チャネルから組織への薬物の拡散を制御することができる。一実施形態では、医療デバイスは、その外面に形成された少なくとも1つのチャネルを備え、抗コネキシン剤が、少なくとも1つのチャネルの上および/または内部に含まれれている。
【0162】
別の態様では、「バースト効果(burst effect)」が望ましい場合は、抗コネキシン剤が組織と接触したときに抗コネキシン剤の初期量が迅速に放出されるように、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を医療デバイスの外層に(および/またはデバイス内にも)適用することができる。存在する場合は、内層に含められた抗コネキシン剤の残りの量は、抗コネキシン剤が材料を介して拡散して時間と共に放出される。抗コネキシン剤は、液体または固体の形態のいずれかで提供することができる。
【0163】
別の態様では、医療デバイスに設けるコーティングは、例えば、予めコーティングされた表面もしくは含浸された表面または抗コネキシン剤を含む他のデバイスに抗コネキシン剤供与体を注入できるカテーテルまたは他の配管によって、「再充填」することができる。例えば、一実施形態では、抗コネキシン剤は、機能化抗コネキシン剤−タンパク質が代謝されて非誘導体化タンパク質が残るため、in vivoで効力を失う抗コネキシン剤−タンパク質を形成するように機能化することができる。表面コーティングは、抗コネキシン剤または非誘導体化(un−derivatized)タンパク質に結合できる抗コネキシン剤供与体を注入することによって「再充填」することができる。
【0164】
本発明の別の態様では、抗コネキシン剤を備えた人工表面の誘導体化(derivatization)により、組織損傷の改善および/または組織修復の促進、ならびに炎症の防止および/または改善がもたらされる。人工表面は、有機材料または有機材料と無機材料の複合材料から構成することができる。このような材料の例として、1または複数の抗コネキシン剤を含む合成ポリマーまたはコポリマー、抗コネキシン剤を含む機能化単層が吸収された表面、または抗コネキシン剤と混合された合成ポリマー材料もしくはタンパク質が挙げられる。
【0165】
本発明の一実施形態では、生理的に有効な形態で投与される抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤の局在化および/または時間に関連した存在は、器具を用いた介入、例えば、血管形成術、カテーテル法、またはステント(例えば、Palmaz−Schatzステント)、シャント、メッシュの導入、関節置換の導入、または他の手術器具もしくは留置医療デバイスの導入の後またはその結果としての炎症を含む組織の損傷を低減、阻止、または防止するのに効果的である。安定した抗コネキシン剤の局所投与は、例えば、動脈血管バルーン傷害の後の好中球および/またはマクロファージの遊走、ならびに炎症、腫脹、および過形成(hypeplasia)を抑制する。抗コネキシン剤の局所送達のこの戦略は、血管形成術後の血管傷害の治療、および血管または組織の障害を引き起こしうる他の治療に対して特に有用である。
【0166】
さらなる実施形態では、本発明は、特に、著しいかまたはさもなければ望まれない任意の免疫応答を一切誘発しない、機能化抗コネキシン剤−ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの局所的な使用を提供する。このような機能化抗コネキシン剤−ポリペプチドまたはポリヌクレオチド、例えば、機能化抗コネキシン剤−アルブミンは、機能化抗コネキシン剤−ポリペプチドまたはポリヌクレオチドが単量体単位であるポリマー鎖または3次元凝集物として存在できる。また、単量体単位のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、例えば、局在化を助けるために用いることができる。凝集物は、例えば、ジスルフィド架橋または−O−結合によって任意選択で結合できる複数の内部接着単量体単位でありうる。加えて、1または複数の機能化抗コネキシン剤ポリペプチドまたはポリヌクレオチドで置換またはコーティングされたデバイスは、乾燥させて保管することができる。
【0167】
別の態様では、本発明は、対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した炎症を含む損傷を予防および/または治療する方法であって、少なくとも一部が抗コネキシン剤を含む医療デバイスを前記対象に導入する工程を含み、前記損傷および/または炎症が防止、軽減、改善、および/または低減される、方法に関する。
【0168】
別の態様では、本発明は、対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷および/または炎症を予防および/または治療する方法であって、それが接触する時点において放出可能な抗コネキシン剤を含む医療デバイスの使用または植え込む工程を含み、損傷および/または炎症が防止、改善、および/または低減される、方法に関する。
【0169】
さらに別の態様では、本発明は、対象への医療デバイスの使用または挿入に関連した有害反応を防止および/または治療する方法であって、抗コネキシン剤が、前記使用または挿入の前、最中、および/または後で前記医療デバイスの接触部位に局所投与され、前記有害反応が防止、改善、軽減、または低減される、方法に関する。このような有害反応の例として、炎症、腫脹、過形成、好中球の遊走、およびマクロファージの遊走、ならびに血管の障害および/または漏出が挙げられる。
【0170】
別の態様では、本発明は、損傷血管の治療を必要とする対象に対する損傷血管の治療方法であって、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含むカテーテル、バルーン、移植片、メッシュ、ステント、またはシャントを損傷部位の前記血管内に導入する工程を含む方法に関する。
【0171】
別の態様では、本発明は、必要とする組織部位に1または複数の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を局所投与することによる組織損傷の改善および/または組織修復の促進の方法を含む。このような組織は、例えば、侵襲性処置での医療デバイスの使用の結果として損傷を受けた可能性のある組織または損傷を受けた組織である。したがって、例えば、閉塞した血管の治療では、例えば、血管形成術によって、血管が損傷することがある。加えて、組織損傷は、医療デバイスが対象の内部に長期間留置されたときに起こることもある。このような損傷は、抗コネキシン剤の使用によって治療することができる。組織損傷の改善および/または損傷組織の修復の促進に加えて、このような治療は、例えば、急性閉塞や再閉塞を含む閉塞の予防および/または緩和および/または低減のために用いることもできる。治療はまた、血栓症および再狭窄の予防および/または改善および/または低減のために用いることもできる。治療はまた、炎症の予防および/または改善および/または低減のために用いることもできる。治療はまた、過形成の予防および/または改善および/または低減のために用いることもできる。治療はまた、スーパーオキシド損傷を含め、例えば、フリーラジカルによる酸化的損傷を含む酸化的損傷の予防および/または改善および/または低減のために用いることもできる。本発明の他の態様では、治療はまた、アテローム性動脈硬化症の病巣、望ましくない細胞増殖、および望ましくない細胞遊走の治療および/または予防および/または緩和および/または低減のために用いることもできる。
【0172】
一実施形態では、本発明は、組織損傷の改善および/または組織修復の促進の方法であって、対象が哺乳動物である方法を含む。別の実施形態では、本発明は、組織損傷の改善および/または組織修復の促進の方法であって、対象がヒトである方法を含む。別の実施形態では、本発明は、組織損傷の改善および/または組織修復の促進の方法であって、対象が、家畜動物およびペット動物(例えば、ウマ、イヌ、およびネコ)、競技用動物(例えば、ウマおよびイヌ)、農場動物、動物園動物、およびトリからなる群から選択される方法を含む。
【0173】
一実施形態では、抗コネキシン剤を含む医療デバイスは、1または複数の他の治療薬および/または創傷治癒剤を含むことができる。一実施形態では、治療薬は、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤とともに直接適用するかまたはそれとともに含めることができる。別の実施形態では、治療薬は、同じコーティングまたはコーティング層の中に抗コネキシン剤とともに適用するかまたは含めることができる。さらに別の実施形態では、治療薬は、前記デバイスの別個のコーティングもしくはコーティング層または前記デバイスの別個の部分に適用するかまたは含めることができる。
【0174】
一実施形態では、抗コネキシン剤は、抗コネキシン43化合物である。別の実施形態では、抗コネキシン剤は、コネキシン43mRNAを下方制御するかまたは阻害する。別の実施形態では、抗コネキシン剤は、コネキシン43ギャップジャンクションの形成を抑制する。別の実施形態では、抗コネキシン剤は、ギャップジャンクションを形成するコネキシン43ヘミチャネルの連結を抑制する。別の実施形態では、抗コネキシン剤は、コネキシン43ヘミチャネルの開口を抑制する。
【0175】
別の実施形態では、抗コネキシン剤は、コネキシン31、コネキシン31.1、またはコネキシン43を標的とする。好ましくは、抗コネキシン剤は、コネキシン43を標的とする。
【0176】
治療薬の局所送達のための当分野で公知の様々な技術が存在し、例えば、限定するものではないが、連続的または定期的な制御された用量で治療薬を投与するために設けられている機械送達システムを用いた、対象の外部から内部組織部位まで延びる細いカテーテルによる治療薬の局所送達が挙げられる。この方法は、繰返しの適用によって治療処置を必要とする対象に用いることができる。抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤は、例えば、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤でコーティングまたは含浸することができる当分野で公知のデバイスを用いて関節鏡下(arthoscopically)で送達することもできる。
【0177】
しかし、治療薬を送達するためのまたは他のカテーテルを含め、いずれのカテーテルも本発明の範囲内である。これらの例として、例えば、泌尿器用カテーテル(間欠カテーテル、外部カテーテル、およびフォーリーカテーテルを含む)、膵臓カテーテル、肝臓カテーテル、注入カテーテル、心血管カテーテル、腎臓カテーテル、血行力学監視カテーテル、および神経カテーテルなどが挙げられる。上記したようなカニューレも含まれる。
【0178】
1または複数の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を対象の内部組織部位に適用する方法は、例えば、カテーテル(それ自体が1または複数の抗コネキシン剤でコーティングまたは含浸することができる)などの細長い部材を対象の内部に前進させて、細長い部材の一部が内部組織部位を占有するようにする工程を含む。細長い部材の一部は、内部組織部位に達すると内部組織部位において側壁部位から抗コネキシン剤の放出が可能となるような様式で抗コネキシン剤を保持する側壁部分を備えている。これは、例えば、光ファイバーテレビジョンやX線などの通常の方法で決定することができる。
【0179】
内部組織部位における抗コネキシン剤の放出は、例えば、膨張すると抗コネキシン剤を内部組織部位の組織内および/またはその表面に押しつけるカテーテルバルーンの使用によって行うことができる。こうすることにより、カテーテルバルーンが収縮しても、抗コネキシン剤の少なくとも一部が組織部位に維持される。
【0180】
抗コネキシン剤は、例えば、放出制御担体と混合して上記の要領で投与することもできる。このような放出制御担体は、組織および/または流体と接触すると放出制御担体が時間をかけて分解して、組織および/または流体に対する抗コネキシン剤の比較的緩やかな制御された拡散が可能となるように、例えば、数時間から数日の期間に渡って生分解可能にすることができる。担体は、時間が経過すると、自然の体のプロセスによって排除される。
【0181】
ステントを冠動脈または他の部分に適用するために用いられるカテーテル、バルーンカテーテル、または他のデバイスは、例えば、抗コネキシン剤ののための担体または放出制御担体と組み合わせることができる1または複数の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤と組み合わせたヘパリンまたは他の抗血栓剤のコーティングを設けることもできる。したがって、抗コネキシン剤の適用と同時に、例えば、ヘパリンまたは他の抗血栓剤を、抗コネキシン剤の治療効果に加えて、ステント近傍における血栓形成作用の長期の抑制のために内部組織部位に適用する。
【0182】
加えて、例えば、カテーテルまたは他の細長い部材は、ステントを配備するために用いられ、内部組織部位まで送られるが、抗コネキシン剤を保持するカテーテル部分は、保護シース内に封入することができる。シースは、望ましい内部部位に到達する前に抗コネキシン剤の相当量がカテーテルから脱落するのを防止するために用いられる。内部部位に達したら、保護シースを引き戻して、抗コネキシン剤を保持するカテーテル部分を露出させることができる。次いで、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を、例えば、抗コネキシン剤が存在するカテーテルバルーンの膨張によって、またはカテーテルから組織内への自発的分散などの他のプロセスによって内部部位に適用することができる。望ましい場合は、保護シースを従来の導入カテーテルとしてもよいし、または、例えば、保護シースの引き戻しの後のシースのカテーテルからの離脱を容易にするスプリット型導入シースとしてもよい。
【0183】
2つ以上の表面を有するまたは処理する医療デバイスの表面の一部のみを必要とする医療デバイスのコーティングの方法の一例では、例えば、抗コネキシン剤を含む分子種から構成することができる気体プラズマで医療デバイスを処理する。ステントの場合、表面全体を処理することが特に望ましい。カテーテルに取り付けられたバルーンの場合、バルーンが膨張したときに血管または他の組織に接触するバルーンの少なくとも円柱外面にコーティングすることが望ましい。
【0184】
別法では、抗コネキシン剤は、例えば、ステント、移植片、または他のデバイスに抗コネキシン剤(複数可)を保持するためにポリマー(分解性および非分解性の両方)で混合することができ、または、抗コネキシン剤を、例えば、ステント、移植片本体、または他のデバイスの材料内に閉じ込めることもできる。
【0185】
別法では、抗コネキシン剤を、例えば、ステントまたは他のデバイスに、溶液化学技術またはドライケミカル技術(例えば、rfプラズマ重合などの蒸着法)およびこれらの組合せによって共有結合させることができる。
【0186】
医療デバイスの表面を1または複数の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤でコーティングする別の方法は、表面が特定の抗コネキシン剤でコーティングされるように表面を抗コネキシン剤(複数可)に接触させる工程を含む。人工表面のコーティングは、実施例で説明する方法または当分野で公知の他の方法を用いて行うことができる。
【0187】
例えば、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤での表面のコーティングは、人工表面自体またはデバイス内の人工表面を抗コネキシン剤を含む溶液中に浸漬することによって行うことができる。加えて、合成抗コネキシン剤を、当分野で周知の様々な化学技術によって人工表面にコーティングすることができる。このような技術は、抗コネキシン剤、例えば、機能化された化合物を連結基によって、反応基(例えば、遊離チオール)を経由して求核中心、エポキシド、ラクトン、αまたはβ飽和炭素鎖、ハロゲン化アルキル、カルボニル基、またはシッフ塩基に付着させることを含む。
【0188】
医療デバイスは、様々な異なる技術を用いてコーティングすることができる。コーティングは、例えば、ポリマー材料の混合物、溶液、または懸濁液および有機担体中に分散された1または複数の細かく分割された抗コネキシン剤、あるいはポリマーおよび/または抗コネキシン剤(複数可)または結合化合物(複数可)の溶媒または担体中のこのような抗コネキシン剤(複数可)または結合化合物(複数可)の溶液または部分溶液として適用することができる。本特許において、用語「細かく分割された」は、懸濁液、コロイド、および粒状混合物中に溶解された分子からなるまたは他の方法で目的を果たす、任意の種類または大きさの含有材料を意味する。1または複数の抗コネキシン剤を、例えば、ポリマー、溶媒、またはこれらの両方でありうる担体材料中に分散させることができる。コーティングは、典型的には比較的薄層で、例えば、比較的間断なく順番に施される単層としてまたは複数の層として施すことができる。一部の適用例では、コーティングは、複合初期タイコート、またはアンダーコート、および複合トップコートとしてさらに特徴付けることができる。アンダーコートに対するトップコートのコーティングの厚さの比率は、望む効果および/または溶出システムによって変更することができる。典型的には、トップコートおよびアンダーコートは、異なる配合であるが、必ずしもそうする必要はない。医療デバイス上の複数の層として抗コネキシン剤(複数可)および/または結合化合物(複数可)を設けることにより、薬物溶出の初期バースト効果および制御される長期治療効果に関連した薬物放出動態プロフィールの両方が可能となる。
【0189】
例えば、ポリマーコーティング材料などのコーティング材料の様々な組合せを、本発明に従って、植え込まれるまたは挿入されるステントまたは他の医療デバイスにコーティングされたときに望ましい効果が得られるように興味の対象となる生物学的または化学的に活性な種で調整することができる。治療材料の添加および治療材料の種類も変わることがある。表面コーティング内への生物学的または化学的に活性な種の組み込みの仕組みおよび浸出の仕組みも、表面コーティングポリマーの性質および組み込まれる治療材料の両方によって決まる。放出の仕組みも、組み込みの方式によって決まる。治療材料は、内部粒子経路を介して溶出させるか、または治療剤自体を覆う材料を通る輸送または拡散によって投与することができる。
【0190】
コーティングに使用するのに適したポリマーの例として、例えば、生体適合性であって、医療デバイスが植え込まれたときに血管壁に対する刺激を最小限にするポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、高い弾性/延性、腐食耐性、弾性、および薬物放出制御を有することが望ましい。このようなポリマーは、望ましい放出速度または望ましいポリマー安定性の程度によって生物学的安定性ポリマーまたは生体吸収性ポリマーのいずれかでありうる。使用できる生体吸収性ポリマーの例として、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−コグリコリド)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コバレレート)(poly(hydroxybutyrate−co−valerate))、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(グリコール酸−コトリメチレンカーボネート)、ポリリン酸エステル、ポリリン酸エステルウレタン(polyphosphoester urethane)、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、および生体分子、例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、およびヒアルロン酸が挙げられる。
【0191】
また、ポリウレタン、シリコーン、およびポリエステルなどの比較的低い慢性的な組織応答を持つ生物学的安定性ポリマーを用いることができ、医療デバイス上で溶解および硬化すなわち重合できる他のポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、およびエチレン−αオレフィンコポリマー;アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、エチレン−コビニルアセテート、ポリブチルメタクリレート、ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリビニルエーテル、例えば、ポリビニルメチルエーテル;ハロゲン化ポリビニリデン(polyvinylidene halides)、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン;芳香族ポリビニル、例えば、ポリスチレン、ポリビニルエステル、例えば、ポリビニルアセテート;ビニルモノマー同士のコポリマーおよびビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー、例えば、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、およびエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ポリアミド、例えば、ナイロン66およびポリカプロラクタム;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;セルロース、セルロースアセテート、セルロースブチレート;セルロースアセテートブチレート;セロハン;セルロースニトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル;およびカルボキシメチルセルロースを用いることもできる。
【0192】
したがって、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含むコーティングは、例えば、生体分解性または生体吸収性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成することができる。ポリマー材料の例として、例えば、限定するものではないが、ナイロン、ポリエチレンペルタレート、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。他のポリマーの例として、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロアセトン、およびヘキサフルオロイソブチレンも挙げられる。
【0193】
望ましい放出速度プロフィールは、例えば、コーティングの厚さ、生物活性材料の径方向の分布(層から層)、層の数、混合方法、および生物活性材料(複数可)の量、異なる層における、例えば、マトリクスポリマー材料などの異なる材料の組合せ、およびポリマー材料の架橋密度を変更することによって調整することができる。架橋密度は、生じる架橋結合の量、ならびに使用される特定の架橋剤によって生成されるマトリクスの相対的な緊密性にも関連する。したがって、このようなコーティングの硬化プロセスは、典型的には、架橋結合の量およびポリマー材料の架橋密度も決定する。架橋マトリクスから放出される生物活性材料の場合、より高密度の架橋構造は、放出時間を長くし、バースト効果を低下させる。医療デバイスの外層にある少なくとも1つの治療効果のある抗コネキシン剤を適用することにより、組織に接触すると大量の抗コネキシン剤が即座にまたは迅速に放出されるバースト効果を起こすことができる。次いで、抗コネキシン剤がポリマー材料などの材料を通って拡散するため、抗コネキシン剤の放出期間が長くなる。
【0194】
抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤の溶出動態は、特定の医療デバイスの用途の要求を満たすために変更することができる。例えば、医療デバイスは、抗コネキシン剤と1つ、2つ、またはそれを超える他の薬剤との組合せでコーティングして、放出順序を速度制御することができる。例えば、1または複数の抗コネキシン剤をアンダーコート層中に組み込むことができ、抗血栓剤、例えば、ヘパリンをトップコート層に設けることができる。このように、抗血栓剤が初めに溶出し、次いで抗コネキシン剤(複数可)が溶出する。医療デバイスが植え込まれたステントである場合は、この薬物の組合せにより、植え込まれたステントのより安全な被包が可能となる。任意の望ましい薬物をこのように含めることができる。
【0195】
別法では、薬物コーティングは、医療デバイスの表面に直接施される下塗層、薬物、例えば、抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含む第2の層、およびデバイス全体を被包する連続的な膜の形態の第3の層を含むことができる。下塗層は、医療デバイスの表面への付着を容易にすることによって下塗剤として役立ち、かつこの下塗層に設けられる抗コネキシン剤(複数可)を容易に許容し保持する。下塗層は、比較的安価であって乾くと粘着コーティングを形成する、例えば、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ゼラチン、コラーゲン、および/または他の同様の材料を含むことができる。抗コネキシン剤は、例えば、粘着性の下塗層の表面に容易に付着する乾燥した微粒子の形態で施すことができる。抗コネキシン剤は、約0.005μm〜約3.0μmの粒径を有することができ、または、このような粒径は、望みに応じて変更できることが好ましい。抗コネキシン剤(複数可)が施されるデバイスおよび特定の医療用途によって決まる他の粒径も企図する。外膜または外層は、任意のむき出しのデバイスの構造、任意の露出された下塗層、または微小抗コネキシン剤(複数可)もしくは他の薬剤粒子の層を含む医療デバイスのすべての表面を覆うために医療デバイス全体を被包することができる。
【0196】
膜を形成するために選択される材料は、その膜形成特性およびその生体適合性、ならびに抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤に対するその浸透性によって決まる。例えば、膜を形成するポリマーの化学組成、抗コネキシン剤の化学組成、および設けられる外層の厚さの組合せにより、抗コネキシン剤の拡散速度が決まる。
【0197】
コーティング全体は、哺乳動物の内部に挿入する際に医療デバイスの外形を著しく増大させないように薄くすべきである。植え込み型ステントの場合、コーティングは、例えば、0.005μm〜約400μmの厚さである。しかし、他の厚さも、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく用いることができる。コーティングの接着および薬物が送達される速度は、ポリマーなどの適切な生体吸収性または生物学的安定性材料の選択、および溶液中のポリマーに対する薬物の比率によって制御することができる。医療デバイスをコーティングするために複数の層が用いられる場合は、放出速度は、例えば、複数の層の中のポリマーに対する抗コネキシン剤の比率を変更することによってさらに制御することができる。例えば、内層中よりも外層中のポリマーに対する抗コネキシン剤の比率が高ければ高いほど、初期投与量が多くなり、投与期間が短くなる。
【0198】
代替の形態では、医療デバイスは、1または複数の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤を含めることができるレザバーまたはチャネルを備えることができる。このようなレザバーは、抗コネキシン剤または抗コネキシン剤の一部がレザバーまたはチャネル内に含められるため、コーティングされたデバイスの外形を低減するのに役立ちうる。このような実施形態では、抗コネキシン剤がレザバー内に含められ、レザバーから組織への抗コネキシン剤の拡散を制御する生体適合性材料のコーティングまたは膜がレザバー上に設けられる。さらに、抗コネキシン剤および/または材料、例えば、ポリマー材料の層を、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示する教示に従ってデバイスに設けることができる。
【0199】
層(複数可)に含められる抗コネキシン剤の量は、有効な治療に必要な用量によって異なる。抗コネキシン剤の治療有効量は、典型的には、デバイス表面の1平方ミリメートル当たりまたは1平方センチメートル当たり、例えば、約1μg〜約750μgの範囲の量、約5μg〜約600μgの範囲の量、約10μg〜約500μgの範囲の量、約20μg〜約400μgの範囲の量、約30μg〜約300μgの範囲の量、約50μg〜約200μgの範囲の量、約50μg〜約100μgの範囲の量であるが、例えば、約1μg〜10μgの範囲の量、約1μg〜5μgの範囲の量、および約10μg〜50μgなどの範囲の量(および約100μg〜200μgの範囲の量、約500μg〜600μgの範囲の量、および約300μg〜400μgなどの範囲の量)の上記の範囲よりも単に低い量(または高い量)の範囲を含め、他の範囲も企図し使用でき、約0.1μg〜約1mg以上の範囲である、局所投与されるこのような化合物の用量から決定することができる。抗コネキシン剤の量は、限定するものではないが、局所送達される抗コネキシン剤の投与量、コーティングからの抗コネキシン剤の放出速度、抗コネキシン剤の送達期間、傷害の大きさおよび性質、予測される組織損傷の範囲、および炎症などの事項を考慮して適宜調整する。
【0200】
コーティングまたは層中の抗コネキシン剤の量は、望ましい用量の抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤が、望ましい速度で望ましい送達時間で送達されるように調整される。送達時間は、デバイスが対象の内部に植え込まれることになっている期間を含む因子によって決まる。
【0201】
一実施形態では、コーティングは、約0.0001%〜約30%の重量パーセントの抗コネキシン剤を含むことができる。上記したように、用量、送達速度、送達期間、および他の因子によって、他の量も企図し使用することができる。したがって、一選択肢によると、コーティングは、約0.001%〜約25%の重量パーセントの範囲、別法では、約0.01%〜約20%、約0.1%〜約15%、約0.5%〜約12%、約1%〜約10%、約2%〜約10%、約5%〜約10%、約0.01%〜約5%、約0.1%〜約5%、または約0.5%〜約5%の重量パーセントの範囲の抗コネキシン剤を含むことができる。抗コネキシン剤の重量パーセントは、限定するものではないが、局所送達される抗コネキシン剤の用量、コーティングからの抗コネキシン剤の放出速度、および抗コネキシン剤の送達期間などの事項を考慮して適宜調整する。
【0202】
他の治療有効用量の範囲も有用であろう。当業者は、例えば、適切な生体吸収性または生物学的安定性ポリマーの評価および/または選択、ならびにコーティング中のポリマーに対する抗コネキシン剤の比率によって抗コネキシン剤送達の望ましい速度および/または用量をカスタマイズすることができる。
【0203】
抗コネキシン剤が堆積される特定の表面または複数の表面により、植え込み時に抗コネキシン剤がどこに送達されるかが決まる。例えば、ステントの場合、ステントの外部外面に堆積された抗コネキシン剤により、抗コネキシン剤が内腔壁内に直接送達される一方、ステントの外部内面上の抗コネキシン剤の堆積により、抗コネキシン剤が血流に直接放出される。別法では、望ましい効果を得るためには、ステントの上流縁のみまたは下流縁のみのコーティングが望ましいであろう。ステントまたは他の医療デバイスの表面を抗コネキシン剤または他の薬剤で選択的にコーティングすることにより、抗コネキシン剤の分布を正確に制御することができる。
【0204】
人工表面は、その表面の性質、および外形、結晶化度、疎水性、親水性、水素結合能、ならびに分子骨格およびポリマーの柔軟性などの特性によって様々であることも企図する。したがって、当業者であれば、ルーチンの方法を用いて、それぞれの特定の種類の表面の最適なコーティングを提供するために、抗コネキシン剤の量、治療期間、温度、希釈剤、および保管状態などのパラメータを調整することによってコーティング技術をカスタマイズすることができる。
【0205】
デバイスまたは人工材料が1または複数の抗コネキシン剤でコーティングまたは含浸されると、デバイスまたは人工材料は、例えば、心臓弁としての植え込み、カテーテルとしての挿入、またはステントとしての挿入などの使用目的に適するであろう。コーティングされたデバイスまたは人工表面は、動物、一般的にはヒトを含む哺乳動物に使用するのに適する。
【0206】
抗コネキシン剤の別の実施形態は、機能化抗コネキシン剤、例えば、本明細書に開示したような機能化化合物などの付着による合成由来のポリマー材料の誘導体化に関する。
【0207】
剤形および製剤
治療有効量の各組合せパートナー(例えば、抗コネキシン剤および創傷治癒剤)は、同時投与、個別投与、または逐次投与が可能であり、しかも任意の順序で可能である。薬剤は、個別投与される場合もあり、固定の組合せとして投与される場合もある。固定の組合せとして投与されない場合、好ましい方法は、物理的にまたは創傷の治療の過程において、1または複数の薬剤が単独で投与される場合、すなわち、それらが組み合わせて投与されない場合に用いられる量または用量よりも少ない量または用量でそれらの一方または両方が供給される、1または複数の抗コネキシン剤、および創傷治癒のために有用な1もしくは複数の薬剤の逐次的投与を含む。投与される薬剤のこのような低量は、単独で投与される場合の該薬剤の1つの量または複数の量の約120分の1〜約10分の1であることが典型的であり、単独で投与される場合の量の約8分の1、単独で投与される場合の量の同量の約6分の1、単独で投与される場合の量の同量の約5分の1、単独で投与される場合の量の同量の約4分の1、単独で投与される場合の量の同量の約3分の1、および単独で投与される場合の量の同量の約2分の1であってよいりうる。薬剤は、互いから少なくとも約30分以内に逐次投与されることが好ましい。薬剤はまた、互いから約1時間以内に投与することもでき、互いから約1日〜約1週間以内に投与することもでき、適切であるとみなされる他の形で投与することもできる。好ましくは、抗コネキシン剤が最初に投与される。1つまたはそれより多い抗コネキシン剤が用いられ、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、例えば、ヘミチャネルの開放開口を遮断するかまたは低下させうる抗コネキシン剤は、例えば、コネキシンタンパク質発現の下方調節により、コネキシン発現またはヘミチャネルの形成もしくはギャップジャンクションの形成を遮断するかまたは低下させる抗コネキシン剤の投与よりも前に投与されることが好ましい。1または複数の抗コネキシン剤は、(1または複数の)抗コネキシン43剤であることが好ましい。
【0208】
本発明の薬剤は、本明細書で言及される疾患または状態のいずれかを有する対象など、治療を必要とする対象に、医療装置を介して投与することができる。こうして、対象の状態を改善することができる。したがって、抗コネキシン剤及び組合せのパートナーは、その装置を用いる治療による対象の身体の処置に用いることができる。これらは、本明細書で言及される医療装置の製造において用いることができる。したがって、本発明により、細胞間情報伝達連絡を一過性の様式におよび部位特異的な形様式で下方調節しうる製剤が提供される。
【0209】
抗コネキシン剤は、実質的なに単離形態で存在しうる。生成物は、生成物の意図される目的に干渉しない担体または希釈剤と混合することができ、これをなおも実質的なに単離状態にあるとみなしうることが理解される。本発明の生成物はまた、実質的なに精製形態の場合もあり、この場合、生成物は一般に、ポリヌクレオチド(または他の抗コネキシン剤)の、または調製物の乾燥質量の、約90%、例えば、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含む。
【0210】
適用の意図される経路に応じて、本発明の生成物は、例えば、溶液、懸濁液、点滴、軟膏剤(salves)、クリーム、ゲル、発泡体泡沫、軟膏(ointments)、エマルジョン、ローション、ペイント、持続放出製剤、または粉末の形態をとる可能性があり、医療装置に適用される場合、(1または複数の)有効成分の約0.1%〜95%を含有することが典型的であり、(1または複数の)有効成分の同約0.2%〜70%を含有することが好ましい。他の適切な製剤は、プロニックゲルベースの製剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの製剤、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(hyroxypropylmethylcellulose)(HPMC)ベースの製剤を含む。他の有用な製剤は、徐放調製物または遅延放出調製物を含む。
【0211】
ゲルまたはゼリーは、ゼラチン、トラガカント、またはセルロース誘導体を含むがこれらに限定されない適切なゲル化剤を用いて作製することができ、保湿剤、皮膚軟化剤、および防腐剤としてグリセロールを含みうる。軟膏は、脂肪ベース基剤、蝋ベース基剤、または合成ベース基剤中に組み込まれた有効成分からなる半固体調製物である。適切なクリームの例は、油中水エマルジョンおよび水中油エマルジョンを含むがこれらに限定されない。油中水クリームは、セチルアルコールまたはセトステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールによる乳化剤および乳化蝋と類似するがこれらに限定されない特性を有する適切な乳化剤を用いて処方調合することができる。水中油クリームは、セトマクロゴール乳化蝋などの乳化剤を用いて処方調合することができる。適切な特性は、エマルジョンの粘稠度を変化させる能力、および広範なpHにわたる物理および化学の両面における安定性を含む。水溶液性または混和性のクリームベース基剤は、防腐剤系を含有する場合があり、また、許容される生理学的なpHを維持するように緩衝化することもできる。
【0212】
発泡体泡沫調製物は、不活性の高圧ガス噴霧剤を用いる適切なアプリケーターにより、高加圧エアゾールキャニスターから送達するように処方調合することができる。発泡体泡沫ベース基剤の製剤に適する賦形剤は、プロピレングリコール、乳化蝋、セチルアルコール、およびステアリン酸グリセリルを含むがこれらに限定されない。潜在的な防腐剤は、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む。
【0213】
本発明の薬剤を薬学的に許容される担体または希釈剤と混合し組合せて、医療装置中または医療装置上での使用のために医薬組成物を作製することが好ましい。適切な担体および希釈剤は、等張性の生理食塩液、例えば、リン酸塩緩衝生理化食塩液を含む。適切な希釈剤および賦形剤はまた、例えば、水、生理食塩液、デキストロース、グリセロールなど、およびこれらの混合組合せ物も含む。加えて、所望の場合、保湿剤または乳化剤、安定化剤またはph緩衝剤などの物質もまた存在しうる。
【0214】
「薬学的に許容される担体」という用語は、組成物を投与される個体に有害な抗体の生成をそれ自体では誘導せず、不適切な毒性なしに投与しうる任意の薬学的な担体を指す。適切な担体は、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、およびアミノ酸コポリマーなどの大型でゆっくりと代謝される高分子でありうる。
【0215】
例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩など、薬学的に許容される塩もまた存在しうる。
【0216】
適切な担体物質は、局所投与用のクリーム、ローション、ゲル、エマルジョン、ローション、またはペイントのためのベース基剤として一般に用いられる任意の担体または媒体ビークルを含む。例は、乳化剤、炭化水素によるベース基剤を含む不活性担体、乳化ベース基剤、非毒性溶媒、または水溶性のベース基剤を含む。特に適切な例は、プルロニック、HPMC、CMC、および他のセルロースベース基剤の成分、ラノリン、硬質パラフィン、液体パラフィン、軟質黄色パラフィン、または軟質白色パラフィン、白色蜜蝋、黄色蜜蝋、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ジメチコーン、乳化蝋、ミリスチン酸イソプロピル、微晶質蝋、オレイルアルコール、およびステアリルアルコールを含む。
【0217】
薬学的に許容される担体または媒体ビークルは、ゲル(例えば、非イオン性ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーゲル、例えば、プルロニックゲル、好ましくはPluronic F−127(BASF Corp.))であり得る。このゲルは、低温では液体であるが、生理学的温度では急速に固まり、これにより、薬剤の放出が適応部位またはその部位にすぐの近接部位に限定される。
【0218】
カゼイン、ゼラチン、アルブミン、膠、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはポリビニルアルコールなどの補助剤もまた、本発明の製剤中に組み入れることができる。
【0219】
他の適切な製剤は、プロニックゲルベース基剤の製剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)ベース基剤の製剤、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ベース基剤の製剤を含む。組成物は、任意の所望の送達形態に応じて処方調合することができる。他の有用な製剤は、徐放調製物または遅延放出調製物を含む。
【0220】
抗コネキシン剤が、ポリヌクレオチドなどの核酸である場合、哺乳動物細胞による核酸の取込みは、複数種の公知のトランスフェクション法、例えば、トランスフェクション剤の使用を含むトランスフェクション法により増強される。このような技法は、ポリヌクレオチドを含む一部の抗コネキシン剤と共に用いることができる。用いられる製剤は、このようなトランスフェクション剤を含有しうる。これらの薬剤の例は、陽イオン剤(例えば、リン酸カルシウムおよびDEAEデキストラン)およびリポフェクション剤(例えば、lipofectam(商標)およびtransfectam(商標))、ならびに界面活性剤を含む。
【0221】
抗コネキシン剤がポリヌクレオチドを含む場合、製剤がポリヌクレオチドの細胞透過を補助する界面活性剤を含んでもよく、または製剤が任意の適切な充填剤を含有してもよい。DMSOなど、任意の適切な非無毒性界面活性剤を組み入れることができる。代替的に、尿素などの経皮透過剤も組み入れることができる。
【0222】
所与の装置に対して有効な用量は、日常的な実験または当技術分野において公知であるかもしくは将来的に開発される他の方法により決定することができる。例えば、ある範囲の用量値を処方調合するために、細胞培養アッセイおよび動物試験を用いることができる。このような化合物の用量は、集団の少なくとも50%に対して治療的に有効な用量内にあり、このレベルにおいてほとんどまたはまったく毒性を示さないことが好ましい。
【0223】
本発明の装置において用いられる各抗コネキシン剤の有効用量は、用いられる特定の抗コネキシン剤または薬剤、組合せのパートナー、投与方式、その装置の使用の頻度または移植されているかどうか、その装置で治療される状態等を含む因子の数に応じて異なりうる。
【0224】
抗コネキシン剤の適切な治療有効用量は、約0.001〜約1mg/kg体重(例えば、約0.01〜約0.4mg/kg体重)でありうる。しかし、適切な用量は、約0.001〜約0.1mg/kg体重(例えば、約0.01〜約0.050mg/kg体重)でありうる。約1μg〜100μg、100μg〜200μg、200μg〜300μg、300μg〜400μg、および400μg〜500μg、ならびに500μg〜750μgおよび750μg〜1000μgの用量も適切である。
【0225】
例えば、特定の実施形態では、抗コネキシン剤組成物は、治療部位および/または治療部位近傍で約0.01マイクロモル(μM)または0.05μM〜約200μMの最終濃度で送達することができる。アンチセンスポリヌクレオチド組成物は約0.05μM〜約100μMの最終濃度で適用されることが好ましく、抗コネキシン剤組成物は約1.0μM〜約50μMの最終濃度で適用されることがより好ましく、抗コネキシン剤組成物は約5〜10μM〜約30〜50μMの最終濃度で適用されることがより好ましい。加えて、混合され組合わされた抗コネキシン剤組成物は約8μM〜約20μMの最終濃度で適用され、また代替的に、抗コネキシン剤組成物は約10μM〜約20μMの最終濃度、または約10〜約15μMの最終濃度で適用される。他の一部の実施形態において、抗コネキシン剤は、約10μMの最終濃度で適用される。さらに別の実施形態において、抗コネキシン剤化合組成物は、約1〜15μMの最終濃度で適用される。抗コネキシン剤の投与量は、例えば、約0.1〜1、1〜2、2〜3、3〜4、または4〜5マイクログラム(μg)、約5〜約10μg、約10〜約15μg、約15〜約20μg、約20〜約30μg、約30〜約40μg、約40〜約50μg、約50〜約75μg、約75〜約100μg、約100μg〜約250μg、および250μg〜約500μgを含む。上記で言及した通り、0.5〜約1.0ミリグラム以上の投与量もまた提供される。投与容量は治療される部位のサイズに依存し、例えば、約25〜100μL〜約100〜200μL、約200〜500μL〜約500〜1000μLの範囲でありうる。より大きな治療部位には、ミリリットル用量もまた適切である。
【0226】
さらに他の用量は、本明細書に記載の各薬剤に対して、1日当たり約1ナノグラム(ng)/kg体重〜約1mg/kg体重のレベルである。一部の実施形態において、各対象化合物の用量は一般に、kg体重当たり約1ng〜約1マイクログラム、kg体重当たり約1ng〜約0.1マイクログラム、kg体重当たり約1ng〜約10ng、kg体重当たり約10ng〜約0.1マイクログラム、kg体重当たり約0.1マイクログラム〜約1マイクログラム、kg体重当たり約20ng〜約100ng、kg体重当たり約0.001mg〜約100mg、kg体重当たり約0.01mg〜約0.1mg、またはkg体重当たり約0.1mg〜約1mgの範囲である。一部の実施形態において、各対象化合物の用量は一般に、kg体重当たり約0.001mg〜約0.01mg、kg体重当たり約0.01mg〜約0.2mg、kg体重当たり約0.1mg〜約1mgの範囲である。複数種の抗コネキシン剤を用いる場合、各抗コネキシン剤の用量は、他方の用量と同じ範囲である必要はない。例えば、1種の抗コネキシン剤の用量はkg体重当たり約0.01mg〜約1mgの可能性があり、別の抗コネキシン剤の用量はkg体重当たり約0.1mg〜約0.5mgの可能性がある。
【0227】
抗コネキシン剤は、投与後少なくとも約0.5〜1時間、少なくとも約1〜2時間、少なくとも約2〜4時間、少なくとも約4〜6時間、少なくとも約6〜8時間、少なくとも約8〜10時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間にわたってコネキシンタンパク質の発現を下方調節もしくは阻害するか、またはギャップジャンクションの形成もしくはコネクソンの開放開口を調節するのに十分な量で投与されると好都合である。
【0228】
対象発明の組成物および方法における各抗コネキシン剤の用量はまた、それが適用される領域のサイズ、長さ、深さ、面積、または体積容積に対する組成物の濃度を基準として決定することもできる。例えば、医薬組成物の特定の用量は、医薬組成物の質量(例えば、マイクログラム)または適用領域の長さ、深さ、面積、もしくは体積容積当たりの医薬組成物の濃度(例えば、μg/ul)に基づいて計算することができる。
【0229】
本明細書に開示する医薬組成物の調製に適した創傷治癒に有用な薬剤は、当分野で公知の方法で調製し投与することができる(例えば、米国特許第7,098,190号、同第6,319,907号、同第6,331,298号、同第6,387,364号、同第6,455,569号、同第6,566,339号、同第6,696,433号、同第6,855,505号、同第6,900,181号、同第7,052,684号、および欧州特許第1100529 B1号を参照)。各抗コネキシン剤および創傷治癒に有用な薬剤の濃度は、他方と同じ範囲にする必要はない。他の量も当業者には公知であり、容易に決定されるであろう。例えば、本明細書に開示するように様々な態様および実施形態にしたがった用量と配合の適した組合せを、「Combination PDGF, KGF, IGF, and IGFBP for wound healing.」という名称のLewisに付与された米国特許第6,903,078号に開示されている投与計画に従って投与することができる。
【0230】
創傷治癒剤は、任意の組織に対して使用される医療デバイスと共に用いることができる。PDGFの有効な用量は、米国特許第4,861,757号に開示されているように局所投与される場合は5ng/mm以上であり、Lepistoら、Biochem Biophys Res. Comm、209巻、393〜399頁、1995年に記載されているように線維芽細胞の集団に適用されるPDGFのアイソフォーム(例えば、PDGF−AA、PDGF−BB、またはPDGF−AB)の局所濃度は、少なくとも1ng/ml〜最大約30ng/mlであることが報告されている。PDGFは、約10μg/gm〜約500μg/gmのゲル、約20μg/gm〜約200μg/gmのゲル、および約30μg/gm〜約100μg/gmのゲル、最適には約100μg/gmのゲルの濃度でカルボキシメチルセルロースゲル製剤に含めて投与することができる。PDGFの有効性は、約3μg/ml〜約300μg/mlの投与される溶液の範囲で達成された。
【0231】
Sotozonoら、Invest. Opthal. Vis. Science、36巻、1524〜29頁、1995年に記載されているように、約5μg/mlの濃度のKGF約50μlは、上皮組織への局所適用により、創傷治癒に対して有効であろう。米国特許第4,861,757号に開示されているように、PDGFと共投与した場合のIGFの有効量は、少なくとも2.5ng/mm〜約5ng/mmの範囲であり、PDGFのIGFに対する比率は、約1:10〜約25:1(重量/重量)の範囲であり、最も効果的なPDGFのIGFに対する比率は、約1:1〜約2:1(重量/重量)の範囲である。IGFと併用投与されるIGFBPは、Jyungら、Surgery、115巻、233〜239頁、1994年に記載されているように、IGF:IGFBPのモル比が約11:1、IGFが約5μgで、リン酸化IGFBPが約1.5μgの用量レベルで創傷治癒を高めることが示された。
【0232】
ポリペプチド療法、例えば、PDGF、KGF、IGF、およびIGFBPポリペプチドの投与の場合、用量は、適用される組織に対して約5μg〜約50μg/kg、また約50μg〜約5mg/kg、また約100μg〜約500μg/kg、および約200μg/kg〜約250μg/kgの範囲でありうる。ポリヌクレオチド療法の場合、例えば、遺伝子治療投与プロトコルでは、患者のポリヌクレオチドの発現強度に依存して、組織標的投与の場合、PDGF、KGF、IGF、およびIGFBPのコード配列を含む発現可能な構築物含有ベクターを、遺伝子治療プロトコルの局所投与に対して約100ng〜約200mgのDNA、また、遺伝子治療プロトコルの局所投与の際に約500ng〜約50mgのDNA、また約1μg〜約2mgのDNA、約5μg〜約500μgのDNA、および約20μg〜約100μgのDNAの範囲で投与することができ、1回の注入または投与で約250μgでありうる。したがって、処置の方法および形質転換や発現の有効性などの因子は、DNA療法の投与の最終的な有効性に必要な用量に影響を及ぼす考慮事項である。より多い発現が望ましい場合、組織のより広い面積に渡る、投与の連続プロトコルでのより多い量のDNAまたは同量の再投与、または異なる隣接または近接組織部分、例えば、創傷部位に対する何回かの投与が、前向きな治療結果を得るために必要であろう。
【0233】
本明細書に開示する医療デバイスの準備に適した治療薬およびギャップジャンクション調節剤は、当分野で公知の方法で調合することができる。
【0234】
本明細書に述べたように、併用投与される抗コネキシン剤または別の薬剤のいずれかの用量は、単独で投与される用量から下方調整することができる。
【0235】
複数種の薬剤を組み合わせて用いることにより、異なる薬剤の効果の発生および持続が補完的となりうるため、任意の個々の薬剤に対して必要とされる用量を低減することができる。好ましい実施形態において、1つ以上の抗コネキシン剤および1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/または1つ以上のギャップジャンクション改変剤の組み合わせて用いると、相加効果、相乗効果、または超相加効果が得られる。
【0236】
場合によって、1つ以上の抗コネキシン剤および1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/または1つ以上のギャップジャンクション改変剤の組合せは、相加効果を有する。他の場合において、組合せは、相加を超える効果を有しうる。本明細書では、このような効果を「超相加(supra−additive)」効果と称し、これは、相乗的であるかまたは強化された相互作用に起因する可能性がある。
【0237】
「創傷治癒の超相加的促進」という用語は、1つの抗コネキシン剤および1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップジャンクション改変剤の組合せの投与によりもたらされる平均創傷治癒が、いずれかの薬剤を単独で個別に投与することによりもたらされる創傷治癒の和よりも統計学的に有意に高度であることを指す。1つの抗コネキシン剤および1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤および/または1つ以上のギャップジャンクション改変剤の組合せ投与によりもたらされるものが、個々の化合物について予測される加算値よりも「統計学的に有意に高度」であるかどうかは、本明細書に記載され、かつ/または当業者により公知である各種の統計学的方法により判定することができる。「相乗的」という用語は、抗コネキシン剤と1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップジャンクション改変剤の両方が、創傷治癒を促進するかまたは線維症及び瘢痕を低減する能力を個別に有する、超相加的阻害の型を指す。「強化された」という用語は、抗コネキシン剤および1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップジャンクション改変剤抗が、創傷治癒を促進する増大した能力を個別にもつ、超相加的効果の型を指す。
【0238】
一般に、それらの治療群それぞれにおいて個々の治療によりによりもたらされる平均創傷治癒増加の合計と比較した場合、組合せ治療が、治療群において統計学的に有意に超相加的な平均創傷治癒の増大をもたらすかどうかを判定することにより強化を評価することができる。平均創傷治癒の増大は、対照群の平均創傷治癒と、治療群の平均創傷治癒との間の差として計算することができる。創傷治癒の増加率である「作用率(fraction affected)」(Fa)は、治療群における平均創傷治癒の増加を、対照群における平均創傷治癒で除することにより計算することができる。統計学的に有意な強化に対する検定は、各治療群に対するFaの計算を要請必要とする。組合せ治療に対して予測される相加Faは、組合せのいずれかのエレメントを投与される群に由来する平均Faの合計であると理解することができる。例えば、1試料による2テールの両側T検定を用いて、実験により得られる結果が偶然だけに起因する可能性はどの程度であるかを、p値による測定の形で評価することができる。0.05未満のp値は統計学的に有意である、すなわち、偶然だけに起因する可能性は低いと考えられる。したがって、組合せの結果として強化された超相加効果がもたらされるとみなすために、組合せ治療群に対するFaは、単一エレメントによる治療群に対して予測される相加Faよりも統計学的に有意に高度でなければならない。
【0239】
組合せ治療から相乗効果がもたらされるかどうかは、中央値効果/組合せ指標によるアイソボログラム法(Chou, T.およびTalalay, P.(1984年)、Ad. Enzyme Reg.、第22巻、27〜55頁)により評価することができる。この方法では、抗コネキシン剤単独に対する、創傷治癒に有用な1または複数の薬剤単独に対する、および一定の固定したモル比におけるでの2者の組合せに対する中央値効果プロットに由来するパラメータに基づき、異なる用量効果レベルに対する組合せ指数(CI)値を計算する。CI値<が&1t;1は相乗効果を示し、CI=−1は相加効果を示し、CI>1P1はアンタゴニスト効果を示す。この解析は、CalcuSyn,Windows(登録商標) Software for Dose Effect Analysis(Biosoft(D,Cambridge UK)などのコンピュータソフトウェアツールを用いて実施することができる。
【0240】
組合せ療法について、超相加効果が存在するかどうかを解析するための、当技術分野において公知であるかまたは将来的に開発される任意の方法は、1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップジャンクション改変剤と組み合わせて用いるのに適する抗コネキシン剤のスクリーニングにおける使用が意図される。
【0241】
別の好ましい実施形態では、1つ以上の抗コネキシン剤と1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤を組み合わせて用いることにより、前記薬剤が単独で投与される場合の有効用量と比較して、任意のこのような薬剤の有効用量が低下する。一部の実施形態において、1つ以上の抗コネキシン剤と組み合わせて用いられる場合の薬剤の有効用量は、単独で用いられる場合の薬剤用量の約1/15〜約1/2、約1/10〜約1/3、約1/8〜約1/6、約1/5、約1/4、約1/3、または約1/2である。
【0242】
別の好ましい実施形態では、1つ以上の抗コネキシン剤と1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤とを組み合わせて用いることにより、前記薬剤が単独で投与される場合の頻度と比較して、前記薬剤が投与される頻度が低下する。したがって、これらの組合せにより、所望の治療目標を達成するのにかつて必要とされた場合よりも低量および/または低頻度の投与で、各薬剤を用いることができる。
【0243】
本発明の一態様では、抗コネキシン剤を1種の組成物で投与し、治療剤、創傷治癒剤、および/またはギャップジャンクション改変剤を第2の組成物で投与する。一実施形態では、1もしくは複数の抗コネキシン剤を含む第1の組成物を、1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤を含む第2の組成物の前に投与する。一実施形態では、1もしくは複数の抗コネキシン剤を含む第1の組成物を、1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤を含む第2の組成物の後に投与する。一実施形態では、1もしくは複数の抗コネキシン剤を含む第1の組成物を医療装置を介して、1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤を含む第2の組成物とほぼ同時に投与する。
【0244】
1つ以上の抗コネキシン剤と1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤は、固体支持体(マトリックスなど)および本明細書中に記載されてるか当該分野で公知の医薬層またはコーティングを用いる局所投与を含むがこれらに限定されない局所投与により送達されることが好ましい。一実施形態において、固体支持体は、生体適合膜を含む。別の実施形態において、固体支持体は、マトリックスを含む。本発明の一実施形態において、固体支持体組成物は、1つ以上の抗コネキシン剤と1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤が、アルギン酸塩、コラーゲン、または合成の生体吸収性ポリマーのマトリックスなどの徐放固体マトリックス中に分散される、徐放の固体支持体組成物でありうる。固体支持体組成物は、無菌であるかまたは低バイオバーデンであることが好ましい。。
【0245】
1つ以上の抗コネキシン剤と1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変の製剤を、医療装置を介して、ある時間、場合によって、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8時間、または約24時間以上にわたり送達することは、移植された装置において特に有利でありうる。場合によって、細胞喪失は、手術部位をはるかに超えて、周囲の細胞にまで拡大しうる。このような喪失は、元の手術から24時間以内に生じる可能性があり、ギャップジャンクションによる細胞間情報伝達連絡またはヘミチャネルの開放開口を介するによって媒介される。したがって、コネキシン発現の下方調節または阻害、またはコネクソンの開口の遮断のための抗コネキシン剤の投与により、細胞間情報伝達が調節されるか、またはコネクソン調節の場合には細胞外空間への喪失が調節され、さらなる細胞の喪失もしくは傷害または傷害の帰結が最小化される。
【0246】
下方調節が誘導される部位および所望される治療効果の両方に送達時間が依存する一方で、約0.5〜1時間、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8時間または約24時間以上にわたる連続送達または徐放送達が医療装置を介してもたらされる。本発明によれば、これは、抗コネキシン剤、および/または1つ以上の治療剤、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップジャンクション改変剤を、薬学的に許容される担体、コーティング、層またはビークルと一緒に、特に、連続投与または徐放投与のための形態で組み入れることにより達成される。
【0247】
本発明の多様な局面が、以下の実施例の項に参考とともに記載される。それらは例示のみを目的として記載されるものであり、本発明の範囲に対する限定を構成するものではないと理解される。
【実施例】
【0248】
(実施例1)
動物モデルでの抗コネキシン剤で処理したデバイスの使用による効果の決定
以下の実験は、組織の損傷の改善および/または組織修復の促進および動物モデルにおけるこれらの試験のために抗コネキシン剤で人工表面をコーティングすることに関する。
【0249】
材料:炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、40%ホルムアルデヒド溶液、およびスクロースが、Fischer Scientific、Fairlawn、N.J.から入手可能である。Sephadex G25は、Pharmacia、Piscataway、N.J.から入手可能である。モノクローナルマウス抗増殖細胞核抗原は、Dako A/S、デンマークから入手可能である。すべての他の化学種は、Sigma Chemical Co.、St. Louis、Mo.から入手可能である。
【0250】
トリス緩衝生理食塩水は、10mM トリス[ヒドロキシメチル]アミノエタン、pH 7.4および150mM NaClからなっていた。リン酸緩衝生理食塩水は、10mM リン酸ナトリウムおよび150mM NaCl、pH7.4を含んでいた。
【0251】
抗コネキシン剤種:抗コネキシン剤−BSAは、次の通り合成する。脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(200mg/ml)を、PBSに溶解した1.4モル倍過剰の抗コネキシン剤に30分間、室温で曝露する。
【0252】
チオール化ウシ血清アルブミン(pS−BSA)をBeneschおよびBenesch(Benesch RおよびBenesch RE、「Preparation and properties of hemoglobin modified with derivatives of pyridoxal」、Methods Enzymol.、76巻、147〜159頁、1981年)に従って調製する。簡単に述べると、必須脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(50mg/ml)を、N−アセチル−ホモシステインチオラクトン(35mM)および0.05% ポリエチレンソルビタンモノラウレートを含む水に溶解する。等モルの硝酸銀を、室温で90分間、pH 8.5でゆっくり添加する。過剰のチオ尿素(70mM)を添加し、pHを2.5まで下げる。過剰の硝酸銀を、1M チオ尿素、pH 2.5からなる移動相を備えたDowex 50クロマトグラフィーによって除去し、過剰のチオ尿素を、Sephadex G−25クロマトグラフィーによって除去する。pS−BSAは、それに続く誘導体化および4℃の保管の2日以内に調製する。pS−BSAの誘導体化は、0.5N HClに溶解した1.4倍モル過剰のS−トリエチレンテトラミンを用いて室温で30分間行う。誘導体化の後、この溶液を、0.5N NACHでpH 4.0に調整する。タンパク質含有量を、Lowryおよび同僚達(Marcus Salier、FASEB.J.、7巻、516〜522頁、1993年)の方法を用いて測定する。
【0253】
動物の準備:すべての動物の準備は、実施機関の制度化されたガイドラインの範囲で行う。いずれかの性別のNZWウサギ(New Zealand white rabbits)(3.5kg〜4.2kg)に、麻酔導入の15分前に5mg/kg 筋肉内(IM)塩酸キシラジン(Miles Pharmaceuticals、Shawnee Mission、Kans.)および0.1mg/kg 皮下(SC)硫酸アトロピン(Lyphomed、Deerfield、Ill.)を前投与する。麻酔は、IMに40mg/kgの塩酸ケタミン(Fort Dodge Laboratories、Fort Dodge、Iowa)およびIMに5mg/kgのマレイン酸アセプロマジン(Aveco Company, Inc.、Fort Dodge、Iowa)で導入する。麻酔を持続させるのに必要な場合、追加の塩酸ケタミンを投与する。生存研究では、100,000U ペニシリンG(Apothecon of Bristol−Myers Squibb、Princeton、N.J.)を手術に際してIM投与する。大腿動脈の上の皮膚に1% リドカイン(Astra Pharmaceuticals, Inc.、Westborough、Mass.)を浸潤させ、総大腿動脈を、鼠径靭帯から浅大腿動脈まで露出させる。動脈は、結合組織を除去し、側枝を結紮し、浅大腿動脈を絹の紐で吊るす。1.5cm〜2.0cmの長さの大腿動脈を、神経外科用微細動脈瘤クリップを用いて近位側と遠位側の循環から分離する。浅大腿動脈に、大腿動脈の分離部分に挿入するS−トリエチレンテトラミン−BSA (S−triethylenetetramine−BSA)被覆2F Fogartyバルーンカテーテル(American Edwards Laboratories、Santa Ana、Calif.)をカニューレ挿入する。バルーンを十分な空気で膨張させて僅かな抵抗を生じさせ、3回引き通す。対側大腿動脈を、適切なコントロールとして同様に、すなわち非誘導体化BSAで被覆されたバルーンカテーテルを用いて準備する。バルーンカテーテルを抜去してから、浅大腿動脈を結紮し、血流を再開させる。バルーンによる傷害の領域を、近接筋膜において外科用ステープルでマークする。切開部を、表皮下吸収性縫合糸で閉じ、動物を回復させる。一部の実験では、遠位制御血管、右頸動脈を分離し、一切の他の操作を行わずに回収する。
【0254】
組織の処理および分析:術後14日目に、120mg/kg ペントバルビタールナトリウム(Anpro Pharmaceuticals、Arcadia、Calif.)を静脈内投与して動物を安楽死させ、腹部大動脈および下大静脈を絹の紐で遮断する。7Fのプラスチックカニューレを腹部大動脈に挿入し、生理食塩水を血管に灌流させて洗浄し、次いで10% 緩衝ホルマリンを用いて100mmHgの圧力で固定する。血管を10% 緩衝ホルマリン中に保管し、試料をパラフィン包埋し、ミクロトームで切片に切り分ける。血管の各傷害部分の長さに沿って6つの切片に切り、弾性組織に対してヴァーヘフ染色法で染色する。内腔、内部弾性膜、および外部弾性膜の中の領域を、コンピュータ制御デジタル面積測定デバイス(Zeiss、West Germany)を用いて盲検観察者が測定する。内腔、内部弾性膜、および外部弾性膜の中の領域を分析する。分析に支障をきたす閉塞性血栓のある切片は破棄する。
【0255】
動物の別のセットで、傷害の7日後に、血管を灌流し、10% 緩衝ホルマリンで固定し、12時間以内の細胞増殖の分析のために処理する。切片を、増殖細胞核抗原(PCNA)のために染色し、近接切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。各セグメントからの5つの代表的な切片を検査する。全核を、ヘマトキシリンおよびエオシンスライドから計数し、PCNA陽性細胞のパーセントを、PCNA陽性核の数を核の総数で除した値に100を乗じた値と定義する。
【0256】
統計:1つの大腿動脈に抗コネキシン剤−BSA被覆バルーンカテーテルを挿入し、他方の大腿動脈に非誘導体化BSA被覆バルーンカテーテルを挿入するペア方式で処理を行う。データを、適当な統計法、例えば、Kolmogorov−Smirnovアルゴリズムを用いて正常性(normality)について試験し、Levene Median試験を用いて等分散について試験する。正規分布する変数を、例えば、対応のあるt−検定を用いて比較し、非正規分布する変数を、例えば、ウィルコクソンの符号順位検定(Wilcoxon sign−ranks test)またはマンホイットニー順位和検定(Mann−Whitney rank−sum test)を用いて比較する。対応のないデータは、例えば、独立t−検定を用いて比較する。統計的有意は、帰無仮説がP<0.05で拒絶された場合は受け入れられる。
【0257】
傷害血管への血小板の結合に対する抗コネキシン剤−BSAの効果:傷害した動脈表面への血小板の粘着が、傷害に対する増殖反応において重要であることが報告されている。したがって、バルーン傷害後の血小板の沈着に対する抗コネキシン剤−BSAの効果を調査する。血小板の沈着は、抗コネキシン剤−BSA被覆バルーンカテーテルが挿入された部位で評価し、非誘導体化BSA被覆バルーンカテーテルが挿入された部位の血小板の沈着と比較する。抗コネキシン剤−BSA被覆バルーンカテーテルが挿入された部位における血小板の沈着の低減は、組織損傷の改善および/または組織修復の促進を示唆する。
【0258】
新生内膜増殖に対する抗コネキシン剤−BSAの効果:抗コネキシン剤−BSAおよび適当なコントロールの局所送達後の新生内膜増殖を、絶対新生内膜面積および新生内膜/中膜の比率を比較することによって評価する。抗コネキシン剤−BSA被覆バルーンカテーテルが挿入された部位での絶対新生内膜面積および新生内膜/中膜の比率を評価し、非誘導体化BSA被覆バルーンカテーテルが挿入された部位での新生内膜面積および新生内膜/中膜の比率と比較する。新生内膜面積の低減または新生内膜/中膜の比率の低下は、新生内膜増殖の阻害ならびに組織損傷の改善および/または組織修復の促進を示唆する。
【0259】
細胞増殖に対する抗コネキシン剤−BSAの効果:傷害の7日後に、PCNAに対するマウスモノクローナル抗体染色を用いてSl相の活性の程度をアッセイする。この時点で、増殖細胞のパーセントを、抗コネキシン剤−BSA被覆バルーンカテーテルが挿入された血管、ならびに非誘導体化BSA被覆バルーンカテーテルが挿入された血管で評価する。組織学的評価により、増殖している細胞集団を決定する。
【0260】
これらの実験は、例えば、抗コネキシン剤−BSAでのバルーンカテーテルの被覆による抗コネキシン剤の局所送達による新生内膜増殖ならびに組織損傷の改善および/または組織修復の促進に対する効果に関する。
【0261】
内皮は、血管の完全性、血栓制御(Clowesら、Lab. Invest.、49巻、327〜333頁、1983年;Reesら、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、86巻、3375〜3378頁、1989年)、および内膜成長の制御(Kubesら、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、88巻、4651〜4655頁、1991年)に必須であると報告され、血管平滑筋の成長の局所制御に重要であると提唱されている。バルーン血管形成術は、動脈平滑筋から内皮を除去することが報告されており、これらの内皮機能が、しばしば処置の際に喪失されうる。特に、内皮の除去および平滑筋細胞の損傷は、内膜増殖に関連していると報告されている(McNamaraら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、193巻、291〜296頁、1993年)。この反応の機序は、複雑であり、血小板の沈着および活性化、サイトカインの生成、平滑筋細胞の遊走および増殖、ならびに細胞外マトリクスの生産が含まれると報告されている。バルーン傷害後、内皮は、迅速に再生するが、しばしば機能障害性であることが報告されている(Saville, Analyst、83巻、670〜672頁、1958年)。
【0262】
抗コネキシン剤の1回の局所投与後の新生内膜増殖の制限は、組織損傷の改善および/または組織修復の促進を示唆する。抗血小板活性が、このような発見を説明できる。血小板結合の阻害は、傷害後の増殖反応を低減する可能性がある多くの効果を生じさせると言われている。例えば、血小板の粘着および凝集は、PDGF、塩基性線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、およびトランスフォーミング成長因子−βの放出、ならびに平滑筋細胞増殖およびマトリクス生産の強力な刺激に関連すると言われている。
【0263】
血管平滑筋遺伝子発現、遊走、増殖、または細胞外マトリクスの合成に対する追加または他の直接的な効果も存在し得る。このような効果は、例えば、正常組織幹細胞反応の改善による組織損傷の回復および/または組織修復の促進に加えてのものであり得る。
【0264】
内皮の機械的除去は、内皮依存性血管作動刺激に対する血管拡張反応を消失させるが、平滑筋に対する作用薬の血管収縮効果を阻害しないことが報告されている(Furchgott Zawadzki、Nature、288巻、373〜376頁、1980年)。このプロセスは、バルーン血管形成術、特に血小板血栓が顕著である部位で起こると報告されている(Uchidaら、Am. Heart. J.、117巻、769〜776頁、1989年;Steeleら、Circ. Res.、57巻、105〜112頁、1985年)。例えば、血管形成術後の急性血栓現象および再狭窄などの治療としての抗コネキシン剤の投与の戦略は、組織損傷の改善および/または組織修復の促進を示唆する結果によって裏付けられている。
【0265】
(実施例2)
組織損傷の改善および/または組織修復の促進のための抗コネキシン剤被覆医療デバイスの調製および使用
以下の実験は、例えば、組織損傷の改善および/または組織修復の促進に使用するための合成血管移植材料またはステントなどの被覆人工表面に対する抗コネキシン剤の適用に関する。
【0266】
まず、ダクロン移植片および心カテーテルを、例えば、抗コネキシン剤−ウシ血清アルブミン(BSA)などの機能化抗コネキシン剤で被覆する。3つの個々の実験では、長さ5cmの6mm(内径)ニットダクロン移植片の同一の対を、6匹の麻酔したイヌの切除した頚動脈に外科手術で取り付けるために調製する。各実験では、3匹のコントロールのイヌに、非誘導体化BSAで被覆した移植片を移植する一方、3匹の試験イヌそれぞれに対しては、挿入の1時間前に、一方の移植片を5%BSAに浸漬し、他方の移植片を、機能化抗コネキシン剤タンパク質の一例である抗コネキシン剤−BSAを生成する0.5mM 抗コネキシン剤と混合した5%BSAに浸漬し、次いで生理食塩水でリンスする。移植片は、連続した6〜0のプロリン縫合糸で所定の位置に縫合する。
【0267】
移植片を挿入したら、イヌを2ヶ月間観察する。
【0268】
この2ヶ月の期間の最後で、挿入部位の組織学的な検査を行う。組織損傷の改善または組織修復の促進は、例えば、移植片挿入部位の正常な血管上皮細胞の出現によって明らかになる。抗コネキシン剤−BSA被覆移植片の挿入部位における組織修復を、非誘導体化BSA被覆移植片の挿入部位の組織修復と比較する。
【0269】
非誘導体化BSA被覆移植片の挿入部位の組織損傷の改善および/または組織修復の促進と比較した抗コネキシン剤−BSA被覆移植片の挿入部位の組織損傷の改善および/または組織修復の促進の証拠が、2ヶ月間に渡る循環血液に対する移植片の曝露の際に抗コネキシン剤−BSAで処理した合成移植片の挿入部位の組織損傷の改善および/または組織修復の促進によって示される。
【0270】
(実施例3)
組織損傷の改善および/または組織修復の促進のための損傷血管表面への抗コネキシン剤の適用
以下の実験は、組織損傷の改善および/または組織修復の促進のために損傷した血管表面、例えば、動脈表面に抗コネキシン剤を適用することに関する。
【0271】
5匹の麻酔したイヌの両方の頚動脈を露出させる。動脈移植のために2つの3FR USC1カテーテルを用意する。1つのカテーテルを5% BSA溶液に12時間浸漬し、他方のカテーテルを、1mg/mlの試験抗コネキシン剤も含む5% BSA溶液に浸漬する。2つの被覆カテーテルを1つずつ、6〜0プロリン縫合糸で閉じた小さな切開部からイヌの左右の頚動脈にランダムに配置する。カテーテルを、頚動脈の内腔内を5cm前進させる。カテーテルを挿入したら、イヌを2週間観察する。
【0272】
2週間の期間の最後で挿入部位の組織学的検査を行う。組織損傷の低減および/または組織修復が、例えば、カテーテル挿入部位の正常な血管上皮細胞の出現によって明らかになる。抗コネキシン剤−BSA被覆カテーテルの挿入部位における組織を、非誘導体化BSA被覆カテーテルの挿入部位の組織と比較する。
【0273】
非誘導体化BSA被覆カテーテルの挿入部位の組織修復の促進および/または組織損傷の改善と比較した抗コネキシン剤−BSA被覆カテーテルの挿入部位の組織修復の促進および/または組織損傷の改善の証拠が、2週間に渡る循環血液に対するカテーテルの曝露の間に抗コネキシン剤−BSAで処理したカテーテルの挿入部位の組織修復の促進および/または組織損傷の改善によって示される。
【0274】
(実施例4)
ブタモデルにおける抗コネキシン剤処理医療デバイスを用いた組織損傷の決定
以下の実験は、ブタモデルにおいて処理済医療デバイスを用いて組織損傷を決定することに関する。
【0275】
ブタに、標準的な方法で冠動脈バルーン傷害を与える。バルーン傷害の前に、血管造影を行う。次いで、試験ブタでは、バルーン傷害のために、例えば、試験抗コネキシン剤−BSA被覆バルーンカテーテルを用い、コントロールのブタでは、非誘導体化BSA被覆バルーンカテーテルを用いる。カテーテルのバルーンは、15分間膨張させ、次いで収縮させてカテーテルを抜去する。傷害の30分後に、痙縮の程度を決定するために別の血管造影を行う。冠動脈カテーテルを冠動脈口(coronary ostea)に配置し、放射線造影剤(radioconstrast)を冠動脈内に注入し、血管形成術の時点で存在する、いわゆる「反跳痙縮(recoil spasm)」の程度を測定する。痙縮または反跳の程度は、バルーン傷害部位のセグメントを参照基準として傷害されていない近位セグメントと比較するコンピュータによる定量冠動脈血管造影アルゴリズムを再び用いて定量的に定義する。次いで、すべてのカテーテルを抜去し、切開部を修復する。動物を目覚めさせ、次の4週間に渡って正常な食餌を与え続ける。この期間の最後で、動物を再び麻酔し、冠動脈の血管造影を行って、血管形成術部位の冠動脈再狭窄を決定する。カテーテルを冠動脈口に配置し、放射線造影剤の流体を注入する。血管造影図を記録し、次いでこの血管造影図を、内腔の直径を決定するためにコンピュータによる定量冠動脈血管造影アルゴリズムによって処理する。再狭窄の程度は、標準的な方法を用いて狭窄の領域の近位側の基準セグメントと比較した内腔の直径の低減率を表す。動物を、過量のペントバルビタールで安楽死させる。動物の冠動脈を、100mmHgの灌流圧でホルマリンを用いて灌流固定し、内腔の直径、新生内膜の直径および断面積、ならびに新生内膜面積の定量形態学的評価のために回収し、細片に切り分ける。動脈を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。内腔の直径に対する新生内膜の比を決定し、試験動物およびコントロール動物との間で比較する。
【0276】
(実施例5)
抗コネキシン剤被覆医療デバイスを用いた組織損傷および/または組織修復に対する効果の決定
この実験は、再狭窄につながる新生内膜の過形成の程度および重症度を低下させるために抗コネキシン剤でPalmaz−Schatzステントを被覆することに関する。Palmaz−Schatzステントは、例えば、800μM〜1000μM 試験抗コネキシン剤−BSAまたは非誘導体化BSAに10分間の浸漬、これに続く10分間の空気乾燥を3回繰り返して浸漬被覆する。1つの試験抗コネキシン剤−BSA被覆ステントおよび1つの非誘導体化BSA被覆ステントを1つずつ、10匹のブタの頚動脈のそれぞれに滅菌条件下で配置する。ステントを28日間留置してから、頚動脈を取り出す。頚動脈を、新生内膜過形成の程度および組織損傷/修復について組織学的に検査する。組織修復は、例えば、ステントの挿入部位における正常な血管上皮細胞の出現によって明らかになる。試験抗コネキシン剤−BSA被覆ステントの挿入部位の組織損傷/修復を、非誘導体化BSA被覆ステントの挿入部位の組織損傷/修復と比較する。
【0277】
非誘導体化BSA被覆ステントの挿入部位の組織損傷の改善および/または組織修復の促進と比較した試験抗コネキシン剤−BSA被覆ステントの挿入部位の組織損傷の改善および/または組織修復の促進の証拠は、循環血液に対するステントの曝露の際に、抗コネキシン剤で被覆したステントの挿入部位における組織損傷の改善および/または組織修復の促進が見られ、抗コネキシン剤の送達により、組織損傷を改善し組織修復を促進できることを示している。
【0278】
(実施例6)
縫合糸に対する医薬品の被覆の方法
4〜0 VICRYL(Polyglactin 910)縫合糸(Ethicon、Somerville、N.J.)を、適した抗コネキシン剤およびゼラチンで被覆する。コーティング溶液は、ゼラチン溶液4mlおよび抗コネキシン剤溶液2mlを含む。ゼラチン成分は、医療グレードの可溶性ウシコラーゲン(Semed−S、Kensey−Nash、Exton、Pa.)10wt%溶液を10分間、80℃に加熱し、次いで37℃でインキュベーションして調製する。抗コネキシン剤、例えば、抗コネキシン43剤(例えば、コネキシン43アンチセンスODN、ヘミチャネル開口を遮断または阻害するような抗コネキシン43ペプチドまたは抗コネキシン43ペプチド模倣薬)を、例えば、10μg/ml、3μg/ml、0.6μg/ml、および0μg/mlなどの適した濃度で調製する。次いで、得られるコーティング溶液の濃度を決定することができる。コーティング溶液は、使用するまで37℃で保管する。コーティングの前に、縫合糸を、70% エタノール溶液の槽で10分間前処理し、次いで生理食塩水で洗浄する。次いで、縫合糸をコーティング溶液に入れ、軽くかき混ぜながら37℃で30分間インキュベートする。次いで、縫合糸を溶液から取り出し、一晩空気乾燥させる。
【0279】
縫合糸における抗コネキシン剤の濃度は、ELISA法によって定量する。抗コネキシン剤は、まず、6M 尿素溶液(75mM NaH2PO4、pH 2.7)2ml中の4cmの縫合糸セグメントから37℃で1時間溶出させる。溶出液を、抗コネキシン剤の存在を検出するサンドイッチELISAアッセイによって分析する。縫合糸における抗コネキシン剤の濃度をμg/cm単位で測定する。
【0280】
(実施例7)
0 ETHIBOND EXCELポリエステル縫合糸(Ethicon、Somerville、N.J.)を、実施例6で説明した同様の要領で抗コネキシン剤およびゼラチンでコーティングする。抗コネキシン剤溶液を、遠心分離フィルタデバイス(例えば、Centriplus YM−10、再生セルロース 10,000 MWCO、Amicon Bioseparations)で適切な濃度(mg/ml)まで濃縮する。コーティング溶液は、濃縮抗コネキシン溶液0.5mlおよび10wt% ゼラチン溶液1mlを含む。次いで、被覆した縫合糸における抗コネキシン溶液の濃度を、ELISAによって定量測定する。
【0281】
抗コネキシン剤被覆が一部でも使用中に削ぎ取られるか否かを評価するために、縫合糸を、ヤギACL組織の試料中を引き通す。手術後の抗コネキシン剤の濃度を測定する。適切な濃度が得られる場合は、これは、たとえ組織を通過させる際でもゼラチンが縫合糸上への抗コネキシン剤の維持に有効であることの表れである。
【0282】
縫合糸に好適な抗コネキシン剤は、抗コネキシン43剤、特にコネキシン43アンチセンス(例えば、ODN)分子、またはヘミチャネル開口を遮断または阻害するような抗コネキシン43ペプチドもしくは抗コネキシン43ペプチド模倣薬、あるいは両方である。
【0283】
(実施例8)
0 Plain Surgical Gut Suture(Ethicon、Somerville、N.J.)を、抗コネキシン剤で被覆する。コーティング溶液は、遠心分離フィルタデバイス(例えば、Centriplus YM−10、再生セルロース 10,000 MWCO、Amicon Bioseparations)で適切な濃度(mg/ml単位)まで濃縮した抗コネキシン剤溶液1mlを含む。消化管縫合糸を、200mM NaH2PO4(pH 11.2)の槽で10分間前処理し、次いで、被覆の前にPBSで洗浄する。次いで、被覆した消化管縫合糸における抗コネキシン被覆の濃度を、ELISAアッセイによって定量する。
【0284】
(実施例9)
部分的に吸収性の複合縫合糸(例えば、2 ORTHOCORD Orthopaedic Suture、DePuy Mitek、Raynham、Mass.)を、実施例6で説明した同様の要領で抗コネキシン剤およびゼラチンで被覆する。コーティング溶液は、所望の濃度(例えば、3.5mg/ml)の適切な量の抗コネキシン剤溶液および10wt% ゼラチン溶液1.4mlを含む。次いで、被覆された部分的に吸収性の複合縫合糸における抗コネキシン剤の濃度を、ELISAによって定量する(例えば、μg/cm)。
【0285】
(実施例10)
抗コネキシン剤は、好都合には、本発明の方法による投与に適する形態に処方調合される。
【0286】
適当な製剤は、以下の処方調合剤の混合物を含む。1つまたは複数の個々の抗コネキシン剤および処方調合剤の量は、予定される特定の用途に依存するはずである。
【0287】
【表9】

(実施例11)
本発明の方法による使用のための製剤を、下記の割合で化合物を混合することによって調製する。好ましい一実施形態において、抗コネキシン剤は、抗コネキシンポリヌクレオチドである。別の実施形態において、そのポリヌクレオチドは、アンチセンスポリヌクレオチド、例えば、配列番号1のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0288】
製剤A
以下の材料で構成されている(%w/w)−リン酸塩緩衝化生理食塩水中抗のコネキシン剤(0.47%);メチルパラベン(0.17%);プロピルパラベン(0.03%);プロピレングリコール(1.5%);HPMC(1.5%);および10mMリン酸緩衝液(96.33%)。製剤は、pH約6.74およびオスモル浸透圧モル濃度244の透明なゲルである。
【0289】
製剤B
以下の材料で構成されている(%w/w)−リン酸塩緩衝化生理食塩水中の抗コネキシン剤(0.47%);メチルパラベン(0.17%);プロピルパラベン(0.03%);プロピレングリコール(1.5%);HPMC(1.5%);0.5%BAC(0.1%);および10mMリン酸緩衝液(96.23%)。製剤は、pH約6.65およびオスモル浸透圧モル濃度230の透明なゲルである。
【0290】
製剤C
以下の材料で構成されている(%w/w)−リン酸塩緩衝化生理食塩水中の抗コネキシン剤(0.47%);メチルパラベン(0.17%);プロピルパラベン(0.03%);プロピレングリコール(1.5%);HPMC(1.5%);ポリクオタニウム10(0.5%);ポロキサマー188(0.1%);および10mMリン酸緩衝液(95.73%)。製剤は、pH約6.59およびオスモル浸透圧モル濃度233のやや濁ったゲルである。
【0291】
製剤D
以下の材料で構成されている(%w/w)−リン酸塩緩衝化生理食塩水中の抗コネキシン剤(0.47%);メチルパラベン(0.17%);プロピルパラベン(0.03%);プロピレングリコール(1.5%);HPMC(1.5%);SLES(0.5%);および10mMリン酸緩衝液(95.83%)。製剤は、pH約6.8およびオスモル浸透圧モル濃度246の透明なゲルである。
【0292】
製剤E
以下の材料で構成されている(%w/w)−リン酸塩緩衝化生理食塩水中の抗コネキシン剤(0.47%);メチルパラベン(0.17%);プロピルパラベン(0.03%);プロピレングリコール(1.5%);HPMC(1.5%);ポロキサマー188(0.1%);25Kポリエチレンイミン(0.075%);および10mMリン酸緩衝液(96.155%)。製剤は、pH約7.8およびオスモル浸透圧モル濃度249の濁ったゲルである。
【0293】
製剤F
以下の材料で構成されている(%w/w)−リン酸塩緩衝化生理食塩水中の抗コネキシン剤(0.47%);メチルパラベン(0.17%);プロピルパラベン(0.03%);プロピレングリコール(1.5%);HPMC(1.5%);ヒアルロン酸ナトリウム(0.1%);および10mMリン酸緩衝液(96.23%)。製剤は、pH約6.88およびオスモル浸透圧モル濃度289の透明なゲルである。
【0294】
製剤G
以下の材料で構成されている(%w/w)−リン酸塩緩衝化生理食塩水中の抗コネキシン剤(0.47%);メチルパラベン(0.17%);プロピルパラベン(0.03%);プロピレングリコール(1.5%);ヒアルロン酸ナトリウム(1.0%);および10mMリン酸緩衝液(96.83%)。製剤は、pH約6.81およびオスモル浸透圧モル濃度248の透明なゲルである。
【0295】
本明細書において参照されたかまたは言及されたすべての特許、出版物、科学論文、ウェブサイトならびに他の文書および資料は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示すものであり、これらの参照文書および資料はそれぞれ、個別にその全体が参照により組み込まれたか、またはその全体が本明細書に記載された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。出願者人は、任意の上記の特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、および別の参照資料または文書の、任意のおよびすべての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を保有する。
【0296】
本特許の記載部分は、すべての特許請求の範囲を含む。さらに、すべての特許請求の範囲は、すべての当初の特許請求の範囲ならびに任意およびすべての優先権書類からのすべての特許請求の範囲を含め、参照することにより、本明細書の記載部分にその全容が組み入れられ、出願人らは任意およびすべてのそのような特許請求の範囲を本出願の記載部分または任意の他の部分に物理的に組み入れる権利を保有する。したがって、例えば、いかなる場合であっても、請求項の正確な表現が本特許の記載部分中に厳密にその通りの言葉で記載されていないという主張に基づいて、根拠なく、本特許はその請求項に対する記載をしていないとは解釈されるものではない。
【0297】
特許請求の範囲は法律に従って解釈される。しかし、任意の特許請求の範囲またはその一部の解釈が容易または難解であるという主張または認識にもかかわらず、いかなる場合であっても、特許につながる1または複数の出願の手続の間に特許請求の範囲またはその任意の一部の任意の修正または補正は、先行技術の一部を構成しない本特許の任意およびすべての等価物に対する任意の権利が放棄されたと解釈されるものではない。
【0298】
本明細書に開示された特徴のすべては、任意の組合せで組み合わされてもよい。したがって、特に明記しない限り、開示された特徴はそれぞれ、包括的な一連の等価物または同様の特徴の単なる例である。
【0299】
本発明はその詳細な説明に関連して記載しているが、前述の詳細な説明は例示を意図するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されることを理解されたい。したがって、前述から、本発明の特定の実施形態は、例示を目的として本明細書に記載しているが、様々な変更形態が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく可能であることは理解できよう。他の態様、利点、および変更は、下記の特許請求の範囲に含まれ、本発明は、添付の特許請求の範囲以外によっては限定されるものではない。
【0300】
本明細書に記載されている具体的な方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、それらは例示的であって本発明の範囲を限定するものではない。別の目的、態様、および実施形態が、本明細書を考慮すれば当業者には思いつくはずであり、本特許請求の範囲によって定義されている通り本発明の精神に包含される。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な置換および変更を本明細書に開示されている本発明に対して行ってもよいことが、当業者には容易に明らかとなるはずである。例示的に本明細書に適当に記載されている本発明は、本明細書において不可欠であると特に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、あるいは1つまたは複数の限定の不在下で実施されてもよい。したがって、例えば、本発明の実施形態または実施例において、本明細書におけるそれぞれの場合において、「含む(comprising)」、「含んでいる(including)」、「含有している」などの用語は、包括的であって限定ではないと読み取るべきである。特に、句「例えば」は、「例えば、そして含むが限定されない」を意味すると解釈される。例示的に本明細書に記載されている方法およびプロセスは、異なる順序のステップ工程で適当に実施されてもよく、必ずしも本明細書または本特許請求の範囲に示されたステップ工程の順序に制限されない。
【0301】
使用した用語および表現は、説明の用語として用いたものであって限定するものではなく、このような用語および表現の使用には、図示および説明した特徴の任意の等価物またはその一部を除外するものではないが、様々な変更形態が、請求される本発明の範囲内で可能であることを認識されたい。したがって、本発明は、様々な実施形態および/または好ましい実施形態ならびに任意選択の特徴によって具体的に開示しているが、当業者がなしうる本明細書に開示する概念の任意およびすべての変更形態および変形形態は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0302】
他の実施形態も、以下の特許請求の範囲内である。いかなる場合においても、本特許は、そのような陳述が、出願者人による答弁書において明確に認められた限定または制限がなければ、特許商標庁のいかなる審査官またはいかなる別の当局者もしくは関係者によってなされたいかなる陳述によっても限定されると解釈されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物への使用または植え込みのための医療デバイスであって、
対象に前記医療デバイスの挿入のときにまたは前記対象の内部への前記医療デバイスの挿入のときに放出できる抗コネキシン43化合物を含む医療デバイス。
【請求項2】
前記抗コネキシン43化合物が、コネキシン43タンパク質の発現を低減する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記抗コネキシン43化合物が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記抗コネキシン43化合物が、siRNAオリゴヌクレオチドであるかまたはRNAiオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記抗コネキシン43化合物が、ペプチド化合物である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記ペプチド化合物が、ペプチド模倣剤である、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記抗コネキシン43化合物が、抗コネキシン43抗体、F(v)フラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、またはF(ab’)フラグメントである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記抗体または抗体フラグメントが、キメラ抗体であるかまたはヒト化抗体である、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記抗コネキシン43剤が、コネキシン43mRNAに結合する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記抗コネキシン43剤が、コネキシン43ヘミチャネルに結合する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記抗コネキシン剤が、ヘミチャネル細胞外ループに結合する、請求項10に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記抗コネキシン剤が、配列番号1または配列番号2から選択される配列を有するポリヌクレオチドまたは薬学的に許容されるその塩に存在する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記抗コネキシン剤が、配列番号15〜38から選択される配列を有するペプチドまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記抗コネキシン剤が、配列番号18または配列番号19のペプチドである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記抗コネキシン剤が、配列番号19のペプチドである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記抗コネキシン剤が、配列番号1〜12からなる群から選択される配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記医療デバイスの表面が、抗コネキシン剤を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記抗コネキシン剤が、約0.0001%〜約30%の重量パーセントで存在する、請求項17に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記医療デバイスの表面が、使用のときに前記対象の内部の標的組織に接触する、請求項17に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記標的組織が、心組織または血管組織である、請求項19に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記抗コネキシン剤の放出速度が制御される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項22】
前記抗コネキシン剤の表面接触放出を行う、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記抗コネキシン剤の持続放出を行う、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記抗コネキシン剤の緩徐放出を行う、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項25】
抗コネキシン剤を含むコーティングを備える、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項26】
前記コーティングがポリマーを含む、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項27】
前記コーティングが、ポリマー/抗コネキシン剤の混合物の複数の層を含む、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項28】
ヒトへの植え込み用である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項29】
ステントを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項30】
縫合糸を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項31】
バルーン、人工心臓弁、弁形成リング、パルス発生器、心除細動器、動静脈シャント、吻合デバイス、止血バリア、またはペースメーカーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項32】
眼窩インプラント、レンズ、レンズインプラント、または角膜インプラントを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項33】
整形外科プレート、骨ピン、骨代用物、アンカー、ジョイント、ねじ、または椎骨板を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項34】
移植片、シャント、血管インプラント、組織骨格、管内デバイス、または血管支持体を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項35】
ヒトへの植え込み用である、請求項29から33または34のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項36】
前記医療デバイスの外面に形成された少なくとも1つのチャネルを含み、前記抗コネキシン剤が、前記少なくとも1つのチャネル表面および/または前記少なくとも1つのチャネル内部に含有されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項37】
前記医療デバイスの少なくとも一部が、前記抗コネキシン剤を含む物質から全体または一部が形成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項38】
1または複数の治療薬をさらに含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項39】
対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷の防止および/または治療の方法であって、
医療デバイスの少なくとも一部が抗コネキシン43剤を含む医療デバイスを前記対象の内部に導入する工程を含み、前記損傷が、防止、改善、および/または低減される方法。
【請求項40】
前記対象が哺乳動物である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物がヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記哺乳動物が、家畜動物、ペット動物、競技用動物、農場動物、および動物園動物からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物が、ウマ、イヌ、またはネコである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記表面が、傷害の部位または潜在的傷害の部位に接触する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
対象への医療デバイスの使用または植え込みに関連した損傷の防止および/または治療の方法であって、
接触のときに放出できる抗コネキシン43剤を含む医療デバイスの使用または植え込みを含み、前記損傷が、防止、改善、および/または低減される方法。
【請求項46】
哺乳動物への使用または植え込みのための医療デバイスであって、
対象への前記医療デバイスの挿入のときにまたは対象の内部への前記医療デバイスの挿入のときに放出できる抗コネキシン43ポリヌクレオチドを含む第1のコーティングおよび、対象への前記医療デバイスの挿入のときにまたは対象の内部への前記医療デバイスの挿入のときに放出できる抗コネキシン43ポリペプチドを含む第2のコーティング、とを含む医療デバイス。
【請求項47】
医療デバイスの製造方法であって、
その改良が、前記医療デバイスを1または複数の抗コネキシン43剤でコーティングするかまたは浸漬する工程を含む方法。

【公表番号】特表2011−507599(P2011−507599A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539515(P2010−539515)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/014023
【国際公開番号】WO2009/085272
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509135588)コーダ セラピューティクス, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】