説明

改良土のひずみ測定方法

【課題】 試験体の表面に簡単に貼り付けることができ、容易には剥がれず、かつ試験体の正確なひずみを測定することができる方法を提供する。
【解決手段】 本発明の改良土のひずみ測定方法は、試験体10の表面にパテ材11を塗布し、その表面上に塗膜を形成する工程と、その塗膜を乾燥させる工程と、試験体10のひずみを測定するためのひずみゲージ12を、その塗膜上に貼り付ける工程とを含む。試験体10に使用される改良土は、その含水比が85%まで対応可能で、パテ材11は、0.1mm程度の厚さに塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良施工において採取された改良土のひずみを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の跡地には、有機溶剤等の土壌汚染物質が含まれている場合があり、その跡地を再利用する際、土壌を浄化したり、また、軟弱地盤上に建物を建築する際、地盤強度を高めるために地盤改良が行われる。前者の地盤改良では、土壌の浄化剤として、鉄粉、過酸化水素等が土壌と混合され、また、後者の地盤改良では、地盤強度を高めるための固化剤として、セメントや石灰等が原位置地盤と混合される。
【0003】
粘性土地盤にセメントを混合し、強制撹拌して地盤改良されたセメント改良土を、事後調査において採取すると、この改良土は、概ね湿潤状態にある。粘性土は、粒径3.9μm未満の粒子からなる粘土分を多く含む土である。一般に、地中に存在する土は、地下水面以上であれば湿潤状態、地下水面以下では飽和状態に近い状態にあるが、改良対象地盤にセメント粉末を噴射し、水とそのセメント粉末とを強制撹拌、あるいは高圧噴射撹拌混合し、所定の深度で土壌をスラリー状にして地盤が改良される。このほかにも、改良対象地盤にセメントスラリーを地上から所定の深度まで圧送して直接注入し、所定の深度で撹拌混合、あるいは高圧噴射することで地盤を改良する方法もある。主にこれら2つの方法で改良された地盤は、ある一定の養生日数が経過すれば、所定の目標強度を発現する。地中で地盤改良された地盤は地下水面以下で造成されたものであり、固化した地盤の含水比は比較的高く、ボーリングによって採取された試料は湿潤状態にある。特に、この傾向は、砂質土と比較して粘性土の方が高い。ここで、含水比とは、乾量基準の含水比をいい、乾燥した土粒子に対する水の質量割合を百分率で表したものである。
【0004】
一軸圧縮試験や模型実験において作製した試料、あるいは試験体の変形特性を把握するために、室内試験用に作製した試料を円柱状に成形して試験体を作り、その試験体の表面にひずみゲージを貼り付け、ひずみを測定することが行われている。ひずみは、物体に外力を加えたときに生じる伸び、縮み、捩れ等の変化の割合を示すもので、ひずみ度として表される。例えば、1mの長さの棒の両端を引っ張り、0.5mm伸びた場合、ひずみ度は、0.5/1000、すなわち500×10−6で表される。このように通常の状態では、そのひずみ度は非常に小さく、10−6に対してμ(マイクロ)が用いられ、上記のひずみ度は500μで表される。
【0005】
ひずみゲージは、図1に示すように、ポリイミド等の電気絶縁物からなるベース1上に、正弦波のように繰り返し曲げられた金属抵抗体(金属箔)2を配設したセンサで、測定対象物の表面に専用の接着剤を用いて接着して測定するものである。金属抵抗体2は、銅−ニッケル合金、ニッケル−クロム合金等からなる線状のものとされ、ゲージコード3が接続され、所定の電圧で所定量の電流が流される。このひずみゲージは、金属抵抗体2に外力が加えられて金属抵抗体2が伸縮すると、その伸縮に比例して抵抗値が変化し、その抵抗値の変化からひずみを測定する。例えば、金属抵抗体2に外力が加えられて金属抵抗体2が伸びると、金属抵抗体2の長さが長くなり、金属抵抗体2の断面積が減少し、その結果、金属抵抗体2の抵抗値が増加する。この抵抗値の変化量がひずみと比例することから、ひずみゲージにより抵抗値を測定することで、ひずみを測定することができる。
【0006】
ひずみ測定を行う場合、一般に、乾燥した表面に接着剤を用いてひずみゲージを貼り付ける。すなわち、ベース1の金属抵抗体2が配設された側の裏面に接着剤を塗布し、その裏面をその乾燥した表面に押し当てて貼り付ける。しかしながら、上記の湿潤状態の改良土に対しては、その表面が濡れた状態であるため、ひずみゲージをうまく貼り付けることはできない。
【0007】
この改良土の表面に、ひずみゲージを貼り付けるために、ドライヤー等を用いてその表面を乾燥させ、専用の瞬間接着剤等で貼り付ける方法があるが、この場合、時間の経過に伴って改良土の内部から表面へ水分がしみだし、一度、せっかく貼り付けたひずみゲージが剥がれてしまう。
【0008】
ひずみゲージには、コンクリートやモルタルに埋設するタイプのひずみゲージがある。例えば、土木用シート、グリッド、不織布、ネット、メンブレン等の土木用資材に、ひずみゲージを貼り付け、長期間の正確なひずみを測定する技術が提案されている(特許文献1参照)。この技術では、土中に埋設された土木用資材が経時変化に伴って生じる剥離、防水に対し抵抗性を有するホットメルト接着剤を用いて接着することを特徴としている。ホットメルト接着剤は、加熱することにより溶融状態となり、冷却すると急速に硬化、接着するものをいう。ホットメルト接着剤の塗布に際しては、その接着剤を予め加熱して溶融状態にさせてから塗布し、土中に埋設される土木用資材に貼り付けるため、ひずみゲージが埋没するように塗布することが好ましいとされている。
【0009】
しかしながら、原位置で地盤改良された改良土に、このひずみゲージを予め埋設することは不可能であり、現地から採取した改良土から成形した試験体に埋設する場合においても、予めひずみゲージを埋設するためには手間がかかる。ここでいう手間とは、せっかく所定位置にひずみゲージを設置しても、試験体を作る型枠にセメントを投入する際、その設置位置がずれ、そのずれによって測定精度に影響を与えることがある。そのため、所定の位置に固定するための設置治具が必要で、その設置治具も一緒に埋設しなければならならないからである。その結果、試験結果の信頼性に欠けるという問題がある。
【特許文献1】特開平8−81959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、埋設するのは手間がかかることから、試験体の表面に貼り付けるほうが、簡便で、余分な設置治具等が必要ない点で好ましい。
【0011】
しかしながら、従来の技術では、試験体の表面を乾燥させ、乾燥した表面に貼り付ける以外の方法は存在しなかった。また、試験体を乾燥させた場合、試験体に含まれる水分が蒸発して試験体の強度が増加し、任意の養生日数での強度を正確に把握することができず、ひずみを測定する上でも問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討の結果、一液型のパテ材を約0.1mmという適正膜厚で塗布し、自然乾燥させ、その上にひずみゲージを貼り付けることで、湿潤状態の改良土への付着性が良好であり、その膜厚が薄いことから、簡単に貼り付けることができ、容易には剥がれず、かつ試験体の正確なひずみを測定することができることを見出した。本発明は、このことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、本発明の改良土のひずみ測定方法を提供することにより解決することができる。
【0013】
本発明によれば、地盤改良された湿潤状態の改良土を採取して成形された試験体の表面にペースト状の充填材を塗布し、その表面上に塗膜を形成する工程と、その塗膜を乾燥させる工程と、その試験体のひずみを測定するためのひずみ測定装置を、塗膜上に貼り付ける工程とを含む、改良土のひずみ測定方法が提供される。
【0014】
改良土は、湿潤状態であり、その含水比は、試験体を良好に成形することができ、その充填材が試験体へ良好に付着できる約20%〜約85%までが好ましい。
【0015】
塗膜を形成する工程では、充填材を0.05mm〜0.2mmの厚さに塗布する。これは、それより薄いと破れやすく、ひずみ測定装置が剥がれやすくなり、それより厚くすると、中うみや肉やせが生じるからである。
【0016】
また、充填材は、有機溶剤を含み、塗膜を乾燥させる工程では、有機溶剤を揮発させ、試験体の表面において塗膜を固化させることを特徴とする。充填材は、フィルム強度が高く、有機溶剤の速乾性に優れるニトロセルロースを含むことが好ましく、このニトロセルロースと有機溶剤とを含む一液型のパテ材が好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の改良土のひずみ測定方法を提供することにより、設置治具を使用することなく、また、予め試験体に埋め込むことなく、湿潤状態にある改良土を成形してなる試験体の表面に簡単にひずみゲージを貼り付け、その試験体の正確なひずみを短時間の準備で測定することができる。また、試験体の表面への付着性が良いことから、貼り付けたひずみゲージは容易には剥がれない。
【0018】
また、原位置から採取した改良土に対しても対応することができ、安価にひずみゲージを取り付けることができる。充填材が乾燥すれば、短時間でひずみ測定が可能となり、ひずみの追従性にも優れることから、測定精度が高い。
【0019】
また、充填材として、一液型で、試験体への塗布が容易で、薄く塗布することができ、かつ試験体表面とのなじみや付着性が良好である市販のラッカーパテ材を使用することができ、含水比が約85%までの改良土に対し、ひずみを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の改良土のひずみ測定方法を、図面を参照して詳細に説明する。図2(a)は、試験体の断面を例示した図である。試験体10は、地盤改良施工において粘性土地盤にセメントを混合し、強制撹拌して地盤改良を行った後、オーガーボーリングを行い、改良土を採取し、所定の形状に成形したものである。試験体10は、中空円筒の型枠に改良土を入れ、円柱状に成形される。
【0021】
この改良土には、元々存在する水分のほか、地盤改良施工時に浸透してきた地下水や、セメントを供給するためにセメントに混合された水等が含まれ、この改良土は、所定の含水比を有するものとなっている。このため、ひずみゲージを試験体10の表面に接着剤を用いて貼り付けたとしても、すぐに剥がれてしまう。
【0022】
そこで、図2(b)に示すように、充填材(パテ材)11を、試験体10の表面に薄く塗布し、その表面上に塗膜を形成する。パテ材11は、有機溶剤を含む。塗膜は、自然乾燥されるが、その際、有機溶剤は揮発し、塗膜は硬化する。また、パテ材11は、フィルム強度が高く、有機溶剤の速乾性に優れるニトロセルロースを含むことが好ましく、このニトロセルロースと有機溶剤とを含む一液型のパテ材が好ましい。
【0023】
具体的には、一般に市販されているニトロセルロース(硝化綿)、アルキド樹脂、顔料、可塑剤、溶剤からなる一液型のパテ材とすることができる。この市販のパテ材は、一般にグレージングパテ(ラッカーパテ)と称されるものである。これは、パテに含まれる溶剤が揮発して乾燥するペースト状のパテで、素穴やスクラッチ(擦り傷)を埋めるのに適した薄付け用のパテである。このグレージングパテは、トルエン溶剤が容易に蒸発して乾燥するので、乾燥が早く、試験体10の表面への吸い込み付着性等が優れている点で好ましい。
【0024】
アルキド樹脂は、多塩基酸と多価アルコールを縮合させたエステル結合を持つ樹脂である。この酸としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸等を挙げることができ、このアルコールとしては、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール等を挙げることができる。ここに挙げた酸およびアルコール類は、あくまで例示したものであり、これらに限られるものではない。顔料は、着色したり、防錆力を与えたり、粘度を高くするために加える粉末状の物質である。例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、カオリン、酸化鉄等を挙げることができる。
【0025】
可塑剤は、熱可塑性の合成樹脂に加えて柔軟性を与えるものである。例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル等を挙げることができる。溶剤は、上述したニトロセルロース、アルキド樹脂、顔料、可塑剤を溶かす液体である。本発明では、乾燥を早くする点で、容易に揮発するトルエン、キシレン、アルコール、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ナフサ、ベンゼン等が好ましい。
【0026】
パテ材11は、適正膜厚を約0.05〜0.2mmとして塗布される。正確なひずみを測定するためには、その膜厚は薄いほうが好ましいが、約0.05mmより薄いと、試験体10の表面の水と馴染んでしまい、ひずみゲージがその水と馴染んだパテ材11に貼り付けられると剥がれやすく、また、約0.05mmより薄い厚さにパテ材11を塗布することが難しいからである。その反対に、約0.2mmを超える厚さで塗布すると、ひずみの測定精度が低下し、中うみや肉やせを起こすためである。膜厚としては、約0.1mmが最も好ましい。
【0027】
ここで、中うみとは、溶剤の蒸発が遅く、塗膜の内部に残ったままで柔らかい状態である。具体的には、乾燥の早い塗料を厚塗りすると表面だけが先に乾燥し、下地がまだ乾燥されていないまま残った状態である。肉やせとは、規定の膜厚にして塗布しても、乾燥時に膜厚が薄くなる状態である。中うみや肉やせが発生しても、十分に乾燥させれば、ひずみ測定を行うことは可能であるが、乾燥するために時間を要し、乾燥させた後のパテ材11が剛性をもち、適切なひずみを測定することができなくなることから、上記範囲の膜厚が好ましい。
【0028】
図2(c)は、試験体10の表面にパテ材11を塗布し、乾燥させた後、接着剤を用いてひずみゲージ12を貼り付けたところを示した図である。ひずみゲージ12は、図1に示した構造のものである。約0.1mmという薄く形成したパテ材11を乾燥させると、有機溶媒が揮発して試験体10の表面で固化した状態となる。
【0029】
試験体10の表面には、その表面が平坦となるようにパテ材11が塗布されるが、パテ材11が塗布された表面は、湿潤状態ではないため、接着剤を用いてひずみゲージ12を容易に貼り付けることができる。パテ材11が試験体10の表面とのなじみが良く、付着性が良好であるため、このひずみゲージ12も、試験体10の表面から容易に剥がれることはなく、パテ材11が薄く塗布されていることから、試験体10のひずみを正確に測定することができる。
【0030】
ひずみゲージ12を貼り付けるために使用する接着剤としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、シアノアクリレートを主成分とした接着剤を用いることができる。
【0031】
ここで、改良土は、湿潤状態であるが、その含水比は、上記のパテ材11が試験体10へ良好に付着する約85%以下であることが好ましい。これは、約85%を超えると、試験体10自体に所定の強度がなくなることから、パテ材11を薄く塗布することが困難となり、また、塗布できたとしても、水分が極めて多いことから、試験体10への付着性が低下し、ひずみゲージ12がパテ材11ごと剥がれるおそれがあるからである。実際、含水比が約100%の試験体10の表面にパテ材11を塗布しようとしたところ、表面が水濡れの状態であるため、パテ材11を塗布できる状況ではなかった。一方、改良土は、ある程度の水分を含まなければ所定の形状に成形することはできない。加えて、本発明の方法は、湿潤状態の改良土に対して有用な方法である。この点から、水分を含む必要があるが、改良土にパテ材11を塗布する場合には、乾燥状態に近ければ近いほど、すなわち含水比が低いほど、試験体10にパテ材11を塗布しやすく、ひずみゲージ12による測定の信頼性は向上する。これらを考慮すると、含水比は、約20〜約85%が好ましい。
【0032】
本発明の改良土のひずみ測定方法の実施例として、ひずみ測定に関する検証試験とその試験結果について以下に説明する。図3は、検証試験の概要図を示す。粘性土地盤にセメントを混合撹拌して地盤改良を行い、地盤改良した改良土の一部を採取し、径50mm、高さ100mmの円柱形になるように試験体を成形した。
【0033】
この成形には、トリマー、試験体の径よりわずかに大きく二つ割りにできるマイターボックス、直径約0.2〜0.3mmの銅線からなるワイヤーソー、鋼製で片刃が付いた長さ25cm以上の直ナイフを用いた。試験体の端面は、両端面が平行で、かつ軸方向と垂直になるように整形した。試験体の径、高さは、複数箇所ノギスを用いて測定し、平均値とした。試験体の含水比は、試験体の作成時に、削り取った土の中からサンプルをとり、その土の含水比を採用した。
【0034】
試験体の1つの側面には、直接ひずみゲージを貼り付け、別の側面には、ラッカーパテを約0.1mmの厚さで塗布し、自然乾燥させた後、そのラッカーパテ上にひずみゲージを貼り付けた。
【0035】
この試験体を用い、JIS A 1216に準拠して一軸圧縮試験を行った。一軸圧縮試験は、ひずみ制御式圧縮装置、荷重計および変位計から構成される一軸圧縮試験機を用い、矢線で示す方向に荷重をかけ、圧縮を行うことにより行った。この一軸圧縮試験機は、試験体の高さ15%までの圧縮ひずみを連続的に与えるように一定速度で作動し、荷重計、上部加圧板、試験体、下部加圧板、圧縮装置のそれぞれの中心軸が同一線上にあるものとし、試験体の最大圧縮力の±1%の許容差で圧縮力が測定でき、試験体の高さの±0.1%の許容差で圧縮量が測定できるものとされる。荷重計は、プルービングリングまたは電気的に荷重を指示できるものとされる。変位計は、測定範囲が20mm以上で、最小目盛りが0.01mmの変位計又はこれと同等以上の性能をもつ電気式変位計とされる。
【0036】
一軸圧縮試験は、上記のJIS A 1216に準拠し、まず、試験体を一軸圧縮試験機の下部加圧板の中央に置き、試験体に圧縮が加わらないように上部加圧板を密着させ、毎分1%の圧縮ひずみが生じる割合を標準として連続的に試験体を圧縮して行った。圧縮中は、圧縮変位量と圧縮力を測定し、圧縮力が最大となってから、引き続きひずみが2%以上生じるか、圧縮力が最大値の2/3程度に減少するか、圧縮ひずみが15%に達したところで圧縮を終了した。
【0037】
この試験において測定された結果を図4に示す。この図4は、パテ材を施さず、ひずみゲージを直貼りした場合のひずみの測定結果と、パテ材を下塗りした上で、ひずみゲージを貼り付けた場合のひずみの測定結果との関係を示した図である。
【0038】
図4を参照すると、ひずみが500μまでは、パテ材を下塗りするか否かに限らず、ひずみが両者でほぼ一致している。しかしながら、500μを超えると、両者のひずみに差が生じ、パテ材を下塗りした上で貼り付けられたひずみゲージにより測定されたひずみは、著しく増加し、ピーク強度が2000μを超えた。これに対し、試験体の表面に直貼りされたひずみゲージにより測定されたひずみは、なだらかに増加し、約1250μでピークを迎えた。
【0039】
一般に、粘性土地盤を地盤改良し、改良土を採取して試験体を作り、その試験体の一軸圧縮試験を行うと、図5に示すように、ピーク強度に至るまで、荷重の増加に伴い、ひずみが著しく増加する。ピーク強度を超えると、試験体のひずみは、大変形・破壊して増加するが、試験体にかかる荷重は低下する。
【0040】
試験体に直貼りしたひずみゲージによる測定では、ひずみがなだらかに増加し、約1250μでピークを迎えることから、ひずみの追従性は良好とは言えない。これに対し、パテ材を下塗りし、その上に貼り付けたひずみゲージによる測定では、2000μを超えるピーク強度を測定することができ、そのひずみも、荷重の増加に伴い著しく増加しており、図5に示す関係を良好に示すことから、本発明の方法の妥当性を検証することができた。
【0041】
また、この検証試験では、試験体に直貼りしたひずみゲージは、途中で剥がれ落ちたが、パテ材を下塗りし、その上に貼り付けたひずみゲージは、ピーク強度を超えてもそのひずみゲージが試験体から剥がれ落ちることはなかった。この点からも、本発明の方法が、有用であることが見出された。
【0042】
図1に示すひずみゲージは、一軸方向のひずみを測定するための単軸ゲージであるが、ひずみゲージには、2軸方向のひずみを測定するための2軸ゲージ、3軸方向のひずみを測定するための3軸ゲージ、ロゼッタ法による3方向のひずみを測定するためのロゼットゲージ等がある。ロゼットゲージは、単軸ゲージを3つ組み合わせたものである。これらのゲージも、パテ材を下塗りし、その上にゲージを貼り付けることで、2方向あるいは3方向の正確なひずみを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ひずみゲージを例示した図。
【図2】試験体のひずみ測定を行う際の各工程を示した図。
【図3】検証試験の概要を示した図。
【図4】ひずみゲージを直貼りした場合の測定結果と、パテ材を下塗りした上でひずみゲージを貼り付けた場合の測定結果との関係を示した図。
【図5】粘性土セメント改良地盤の荷重−ひずみ曲線を示した図。
【符号の説明】
【0044】
1…ベース、2…金属抵抗体、3…ゲージコード、10…試験体、11…パテ材、12…ひずみゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良された湿潤状態の改良土を採取して成形された試験体の表面にペースト状の充填材を塗布し、前記表面上に塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥させる工程と、
前記試験体のひずみを測定するためのひずみ測定装置を、前記塗膜上に貼り付ける工程とを含む、前記改良土のひずみ測定方法。
【請求項2】
前記改良土は、含水比が20%〜85%である、請求項1に記載のひずみ測定方法。
【請求項3】
前記塗膜を形成する工程では、前記充填材を0.05mm〜0.2mmの厚さに塗布する、請求項1または2に記載のひずみ測定方法。
【請求項4】
前記充填材は、ニトロセルロースと有機溶剤とを含み、前記塗膜を乾燥させる工程では、前記有機溶剤を揮発させ、前記表面において前記ニトロセルロースを含む塗膜を固化させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のひずみ測定方法。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−209601(P2009−209601A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54701(P2008−54701)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】