説明

改良土の供試体をキャッピングする方法、及びこの方法に用いる補助具

【課題】強度試験の測定精度を確保しつつ改良土の供試体をキャッピングする。
【解決手段】一端に開口11を有し平坦な内底面121を有する中空筒状を呈し、その側面13に開口11の端縁111から内底面121に向けてスリット21が設けられている補助具10に、その内底面121から所定高さ位置まであらかじめセメントペースト51を注入し、補助具10の内径に略等しい外径を有する柱状の改良土の供試体50を、その下側端面56をセメントペースト51に密着させるように補助具10に挿入し、補助具10の側面13を供試体50の外側面53に密着させてセメントペースト51を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良土の供試体をキャッピングする方法、及びこの方法に用いる補助具に関し、とくに強度試験の信頼性を確保するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、安定処理土等の土質強度の試験用供試体の作成に関し、供試体作製の標準化を図り測定値の信頼性を確保すべく、供試体を作製する型枠として、円筒の一端にねじを設け、このねじにより結合する平蓋状の底盤を取り付けることが記載されている。
【0003】
一軸圧縮試験などの改良土の強度試験に際しては、供試体の端面は平坦でなければならない。ここで例えばコンクリートのように供試体の強度が十分に大きい場合には、供試体の端面を研磨機により研磨したり、供試体の上面側からキャッピング(JIS A1132)することにより端面を平坦に成形することができる。また土質試料のように供試体の強度が十分に小さい場合には、供試体の端面を針金を用いて削ることにより、端面を平坦に成形することができる(JIS A1216)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−120361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に改良土の供試体はコンクリートやモルタル等の供試体等に比べて強度が小さく脆くて崩れやすい。このため、わずかな衝撃により容易に端面が破損し、研磨機により研磨しようとすると端面に凹凸が生じて平坦化が困難である。また改良土はコンクリートに比べて組織が粗く、上面側からのキャッピングではセメントペーストが供試体の隙間にしみ込んでしまいその結果供試体が補強され、強度試験の信頼性が低下する。また改良土の強度は一般に土質試料に比べて大きいため、針金による成形は困難である。
【0006】
本発明はこのような背景技術に基づいてなされたもので、改良土の供試体をキャッピングし強度試験の信頼性を確保することが可能な、改良土の供試体をキャッピングする方法、及びこの方法に用いる補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一つは、
改良土の供試体をキャッピングする方法であって、
一端が開口し平坦な内底面を有する中空筒状を呈し、その側面に前記開口の端縁から前記内底面に向けてスリットが設けられた補助具に、その内底面から所定高さ位置まであらかじめセメントペーストを注入し、
前記補助具の内径に略等しい外径を有する柱状の改良土の供試体を、その端面を前記セメントペーストに密着させるように前記補助具に前記開口から挿入し、
前記補助具の側面を前記供試体の外側面に密着させて前記セメントペーストを硬化させる。
【0008】
本発明によれば、簡素な構成からなる補助具を用い、改良土の供試体を容易にキャッピングすることができる。また補助具の側面に設けられているスリットの作用により補助具の開口の度合いを調節することができるので、例えば供試体中に含まれる水分等により供試体の外形精度に多少のばらつきがあっても、供試体を容易かつ確実に補助具に挿入(セット)することができる。
【0009】
また補助具の開口の度合いを調節することができるので、供試体を容易に上下移動させることができ、供試体の端面をセメントペーストに確実に密着させることができる。またスリットを通じて余剰のセメントペーストを補助具の外に押し出すことができるので、セメントペーストの量をキャッピングに必要十分な量に調節することができ、強度試験の信頼性を確保することができる。
【0010】
またスリットの作用により補助具の側面を供試体の側面に確実に密着させることができ、セメントペーストが硬化するまで供試体を確実に正しい位置に保持(垂直に維持)しておくことができる。
【0011】
また供試体の下面側からキャッピングするため、セメントペーストが重力により供試体の隙間にしみ込んでしまうこともなく、供試体の強度に影響を与えることがない。
【0012】
尚、補助具に注入するセメントペーストの正常は、セメントペーストが補助具の外に自然に流出してしまわない程度に硬く、かつ、作業性が損なわれない程度に軟らかいことが好ましい。このため、セメントペーストの水セメント比(W/C)は、例えば0.3〜0.4とすることが好ましい。
【0013】
スリットは、補助具の開口の度合いを容易に調節することができるように、例えば補助具の軸心に対して対称な位置関係となるように複数箇所に設ける。
【0014】
補助具は、一端が開口し平坦な内底面を有する、例えば市販の中空筒状の容器を用いて構成し、スリットは容器の側面に開口の端縁から内底面に向けて切り込むことにより設けられる。このように、本発明の補助具は市販の容器等を用いて容易に構成することができる。
【0015】
セメントペーストの硬化させる際、補助具の側面とスリット形状の部分とを束ねてスリット形状の部分によりスリットを閉塞しつつ補助具の側面の周囲にテーピングを施すことにより、スリット形状の部分を補助具の側面とともに供試体の外側面に密着させるようにする。このようにすることで、セメントペーストが硬化するまでの間、供試体を確実に正しい形状、正しい姿勢に保持しておくことができる。
【0016】
補助具は、例えば、樹脂(硬質塩化ビニル)、紙、又は金属(鉄、アルミニウム、ブリキ)等の素材を用いて構成する。
【0017】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、改良土の供試体をキャッピングし強度試験の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】補助具10の外観斜視図である。
【図1B】補助具10の断面図である。
【図2】改良土の供試体50をキャッピングする方法を説明するフローチャートである。
【図3A】供試体50を補助具10に挿入した状態を示す補助具10の外観斜視図である。
【図3B】供試体50を補助具10に挿入した状態を示す補助具10等の断面図である。
【図4】テーピング61を施した状態を示す補助具10等の外観斜視図である。
【図5】キャッピングされた供試体50について一軸圧縮試験を行っている様子を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1Aに改良土の供試体50をキャッピングする際に用いる補助具10の外観斜視図を、また図1Bに補助具の断面図を示している。これらの図に示すように、補助具10は、一端が開口し他端に底面12を有する中空略円筒形状を呈している。補助具10の内底面121は平坦であり、補助具10をその開口11を上向きにしてその軸心が垂直になるように地面5に載置した状態において内底面121は地面5に平行となる。
【0021】
後述するように、補助具10の内側には円柱状に成形された改良土の供試体50が挿入される。また補助具10の内側形状は、挿入される供試体50の外形と略等しい(例えば直径5cm、高さ10cm)。
【0022】
図1Aに示すように、補助具10の側面13には複数(図1A,図1Bでは2つ)の矩形のスリット21が設けられている。スリット21は、いずれも開口11の端縁111から底面12に向かって形成されている。各スリット21の底(各スリット21の底面12側の端部)は、補助具10の底面12から所定の高さに位置している。尚、各スリット21は補助具10の軸心に対称な位置関係で設けられている。
【0023】
補助具10は、一端が開口し平坦な内底面を有する中空略円筒状の容器(例えば市販の容器)等を用いることで、容易に構成することができる。補助具10(容器)の素材は、樹脂(硬質塩化ビニル)、紙、又は金属(鉄、アルミニウム、ブリキ)等である。
【0024】
スリット21は、側面13を開口11の端縁111から内底面121に向けてスリット21の形状の切り込みを入れることにより設けられている。尚、切り込みにより形成されるスリット21形状の面(以下、切り出し片131と称する。)は、その付け根の部分134において補助具10の側面13に接続している(側面13から切離しない)。
【0025】
図1A,図1Bに示すように、切り出し片131の開口11側(上方側)の端部133には、側面13を裂いてスリット21を設ける際に切り出し片131の持ち手として機能するリング132が設けられている。
【0026】
図2A,図2Bは、以上の構成からなる補助具10を用いて行われる、改良土の供試体50をキャッピングする方法を説明するフローチャートである。以下、同図を参照しつつ上記キャッピング方法について説明する。
【0027】
供試体50のキャッピングに際しては、まず補助具10にその内底面121から所定の高さ位置までセメントペースト51を注入(打設)する(S211)。尚、注入するセメントペースト51の性状は、セメントペースト51が補助具10の外に自然に流出してしまわない程度に硬く、また作業性が損なわれない程度に軟らかいことが好ましい。このため、セメントペースト51の水セメント比(W/C)を例えば0.3〜0.4とする。セメントペースト51の種類はとくに限定されるわけではないが、例えば供試体50の作成後に強度試験を迅速に実施する必要があるような場合は速硬性のものを使用する。またセメントペースト51に代えて石膏等の他の素材を用いることもできる。
【0028】
次に補助具10の内径に略等しい外径を有する略円柱状に成形された改良土の供試体50を、補助具10の開口11から挿入(嵌装)する(S212)。改良土は、例えば火力発電所から排出されるフライアッシュ(石炭灰)を混ぜたものである。供試体50は、例えば特許文献1に開示される方法により略円柱状に成形する。
【0029】
次に供試体50を上下に移動させ、供試体50の下側端面56をセメントペースト51に密着させる(S213)。その際、スリット21を通じて余剰のセメントペースト51を補助具10の外に押し出して、セメントペースト51の量をキャッピングに必要十分な量に調節する。図3A又は図3Bに、供試体50が補助具10に挿入されている状態を示している。
【0030】
このとき、補助具10の開口11の度合い(側面の開き具合)は、補助具10の側面13に設けられているスリット21の作用によって容易に調節することができる。このため、例えば、供試体50中に含まれる水分等により供試体50の外形精度に多少のばらつきがあるような場合でも、供試体50を補助具10に容易かつ確実に挿入することができる。
【0031】
次に、補助具10の側面13を供試体50の外側面53に密着させ、供試体50を垂直に保持してセメントペースト51を硬化させる(養生する)(S214)。このとき、補助具10の側面13と切り出し片131とを束ね、切り出し片131によりスリット21を閉塞しつつ補助具10の側面の周囲にテーピング61を施す。図4に補助具10にテーピング61を施した後の状態を示している。
【0032】
以上のようにしてセメントペースト51を硬化させることで、スリット21の作用により補助具10の側面13を供試体50の外側面53に確実に密着させることができる。またセメントペースト51が硬化するまで供試体50を確実に正しい形状、正しい姿勢(垂直な姿勢)に保持しておくことができる。
【0033】
セメントペースト51が硬化した後は、供試体50を補助具10から脱型する(取り外す)(S215)。このとき、供試体50を補助具10から容易に脱型することができないようであれば、補助具10の側面13を切り裂いたり、テーピング61を解くなどして、供試体50を補助具10から脱型する。
【0034】
表1に以上の方法によりキャッピングを施した供試体50について、一軸圧縮試験を行った結果を示している。表1には比較のため同じ改良土についてキャッピングしていない供試体50について行った一軸圧縮試験の結果も併記している。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から本実施形態の方法により改良土の供試体50にキャッピングを行っても一軸圧縮試験の結果に殆ど影響を与えないことがわかる。図5にキャッピング後の供試体50について一軸圧縮試験を実施している様子を示す。同図において、符号71、72は加圧板であり、符号73は変位計である。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態のキャッピング方法によれば、強度試験の測定精度を確保しつつ改良土の供試体50をキャッピングすることができる。このため、高い精度で改良土の供試体50について強度試験を行うことができる。また簡素な構成からなる補助具10を用いて供試体50を容易にキャッピングすることができる。
【0038】
また補助具10の側面13に設けられているスリット21の作用により補助具10の開口の度合いを調節することができるので、例えば供試体50中に含まれる水分等により供試体50の外形精度に多少のばらつきがあるような場合でも、供試体50を容易かつ確実に補助具10に挿入(セット)することができる。
【0039】
また補助具10の開口の度合いを調節することができるので、供試体50を容易に上下移動させることができ、供試体50の下側端面56をセメントペースト51に確実に密着させることができる。またスリット21を通じて余剰のセメントペースト51を補助具10の外に押し出すことができるので、セメントペースト51の量をキャッピングに必要十分な量に調節することができ、一軸圧縮試験等の強度試験の信頼性を確保することができる。
【0040】
またスリット21を設けたことにより補助具10の側面13を供試体50の外側面53に確実に密着させることができるので、セメントペースト51が硬化するまで供試体50を確実に正しい形状、正しい姿勢に保持しておくことができる。
【0041】
また供試体50の下面側からキャッピングするため、セメントペースト51が重力により供試体50の隙間にしみ込んでしまうようなこともなく、供試体50の強度に影響を与えることもない。
【0042】
以上、実施の形態について説明したが、以上の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 補助具
11 開口
111 端縁
12 底面
13 側面
131 切り出し片
121 内底面
21 スリット
50 供試体
51 セメントペースト
53 外側面
55 上側端面
56 下側端面
61 テーピング
71,72 加圧板
73 変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良土の供試体をキャッピングする方法であって、
一端が開口し平坦な内底面を有する中空筒状を呈し、その側面に前記開口の端縁から前記内底面に向けてスリットが設けられた補助具に、その内底面から所定高さ位置まであらかじめセメントペーストを注入し、
前記補助具の内径に略等しい外径を有する柱状の改良土の供試体を、その端面を前記セメントペーストに密着させるように前記補助具に前記開口から挿入し、
前記補助具の側面を前記供試体の外側面に密着させて前記セメントペーストを硬化させる
ことを特徴とするキャッピング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキャッピング方法であって、
前記補助具に注入する前記セメントペーストの水セメント比(W/C)が0.3〜0.4である
ことを特徴とするキャッピング方法。
【請求項3】
請求項1に記載のキャッピング方法であって、
前記補助具の軸心に対して対称な位置関係で複数の前記スリットが設けられている
ことを特徴とするキャッピング方法。
【請求項4】
請求項1に記載のキャッピング方法であって、
前記補助具は一端が開口し平坦な内底面を有する中空筒状の容器を用いて構成され、
前記スリットは、前記容器の側面を前記開口の端縁から前記内底面に向けて前記スリットの形状に切り込むことにより設けられる
ことを特徴とするキャッピング方法。
【請求項5】
請求項4に記載のキャッピング方法であって、
前記スリット形状の部分は前記容器の前記側面から切離せずに前記容器に保持され、
前記セメントペーストの硬化させる際、前記補助具の側面と前記スリット形状の部分とを束ねて前記スリット形状の部分により前記スリットを閉塞しつつ前記補助具の側面の周囲にテーピングを施すことにより、前記スリット形状の部分を前記補助具の側面とともに前記供試体の前記外側面に密着させる
ことを特徴とするキャッピング方法。
【請求項6】
請求項1に記載のキャッピング方法であって、
前記補助具の素材が樹脂(硬質塩化ビニル)、紙、又は金属(鉄、アルミニウム、ブリキ)のうちの少なくともいずれかである
ことを特徴とするキャッピング方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャッピング方法に用いる前記補助具であって、
一端が開口し平坦な内底面を有する中空筒状を呈し、その側面に前記開口の端縁から前記内底面に向けてスリットが設けられている
ことを特徴とする補助具。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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