改良地盤および地盤改良工法
【課題】低コストで液状化可能層の改良ができる地盤改良工法、すなわち、砂地盤の液状化可能層を全て改良するのではなく、地震による液状化後の地盤沈下に応じた液状化可能層の改良、すなわち部分的に改良する改良地盤および地盤改良工法を提供することである。
【解決手段】地盤改良工法は、舗装部3下側の改良対象地盤4において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部7を所望の厚さ分残す設定をし、この設定に基づいて未改良部7以外の改良対象地盤4に薬液16を注入して改良することである。
【解決手段】地盤改良工法は、舗装部3下側の改良対象地盤4において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部7を所望の厚さ分残す設定をし、この設定に基づいて未改良部7以外の改良対象地盤4に薬液16を注入して改良することである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は改良地盤および地盤改良工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液状化可能層に薬液を注入する地盤改良工法は、図15の(1)に示すように、未改良時において液状化の可能性のある全ての領域、すなわち液状化可能層21に薬液22を注入することにより、これらの層21における砂の間隙を薬液22で置き換えていた。すなわち液状化可能層21を100%改良することにより地震による液状化を防いでいた。これは液状化可能層21を全て改良するという工法であった。また、この他の地盤改良工法としては、特開2004−346636号公報の発明がある。
【特許文献1】特開2004−346636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の地盤改良工法は液状化可能層を全て改良し、この液状化可能層における全ての砂の間隙量と、同じ量の薬液を液状化可能層に注入していたためコスト高になるという問題があった。
【0004】
本願発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで液状化可能層の改良ができる地盤改良工法、すなわち、液状化可能層を全て改良するのではなく、図15の(2)に示すように、液状化可能層21を所望の厚さ分残した部分改良を行うことにより地震による液状化後の地盤沈下があったとしても、この地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるような改良地盤および地盤改良工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための改良地盤は、舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残し、これ以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良したことを特徴とする。
また地盤改良工法は舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残す設定をし、この設定に基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを特徴とする。また改良対象地盤において未改良部を所望の厚さ分残したシミュレーション用の地盤改良モデルケースを複数用意し、この各地盤改良モデルケースにおける想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形をモンテカルロシミュレーションによって算定し、この結果に基づいて上記の地盤改良モデルケースの中から最適の地盤改良モデルケースを1以上選定し、これに基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
液状化可能層の全てを改良するのではなく、液状化可能層を所望の厚さ分残した部分的な改良をしたとしても地震時における液状化による不同沈下を対象施設の機能維持のために設定される基準値内に収まるように抑えることができる。例えば、既存滑走路などにおいて不同沈下が発生したとしても、この不同沈下は滑走路について設定される基準値を超えて生じることなく平坦性の機能が充分に維持されるものとなる。また液状化可能層の全てを改良するのではなく、未改良部を所望の厚さ分残し、これ以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良したことにより、地盤改良に使用する材料の低減、工期の短縮およびコストの削減を図ることができる。また地盤改良の一地点あたりに要する改良時間が短くなるため、使用中の施設を24時間にわたって閉鎖することなく、例えば夜間のみの改良工事により必要な地盤改良を行うことができる。また地盤沈下を一様にする改良ができるので、舗装部の段差や亀裂などの発生を防ぐことができる。また改良コストが全面改良に比べると縮減されるため、同じ費用で、従来の工法と比べて大幅な長さの地盤が改良できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明の改良地盤および地盤改良工法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本願発明の対象は既存滑走路および既存道路における舗装部下側の地盤であるが、本実施の形態においては既存滑走路を対象として説明する。はじめに改良地盤について説明し、次に地盤改良工法について説明するが、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1は既存滑走路1における改良地盤2を示し、これは舗装部3の下側における改良対象地盤である液状化可能層4と、その下側の非液状化可能層5とから構成されている。この液状化可能層4を全く改良しなければ地震時の液状化による不同沈下によって舗装部3に段差や亀裂が発生して滑走路としての平坦性を確保できなくなる。そのため従来は液状化可能層4の全てに薬液を注入して改良する全面改良を行っていた。しかし、図1に示す改良地盤2は、非液状化可能層5から所定の厚さ分、例えば3〜7m(この厚さは任意に選択可能)の液状化可能層(未改良部)4を残し、それ以外の液状化可能層4に薬液を注入して改良した改良部6と未改良部7とから構成されている。このように非液状化可能層5から所定の厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残した改良地盤2は全面改良ではなく部分改良となって、所定厚さ分の液状化可能層4が残るため、地震時における液状化による不同沈下が発生するが、この不同沈下は、未改良の液状化可能層4が一定厚であるので、滑走路について設定される基準値を超えて生じることなく、平坦性の機能が充分に維持されるだけでなく、コストの削減を図ることも可能になる。また、非液状化可能層5から所定の厚さ分の未改良部7は、図1においては非液状化可能層5に沿って横方向に形成されているが、これは当然に非液状化可能層5の全面に沿って広がって形成されている。
【0009】
次に、地盤改良工法を前記と同様に既存滑走路の舗装部下側の地盤を対象として説明する。この地盤改良工法は、図1のように非液状化可能層5から所定の厚さ分の液状化層(未改良部)4を残して改良した場合でも、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるような改良範囲を選定(事前にソフト解析を行って選定)し、これを基にして実際の地盤改良を行うものである。この改良範囲の選定については図2のフローに基づいて説明する。
【0010】
まず、ステップ1として、地盤の改良範囲を検討するために、既存滑走路の改良対象地盤において未改良部を所望の厚さ分残した地盤改良モデルケースを複数設定する。この既存滑走路の地盤改良モデルケースは想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析用のものである。この既存滑走路の地盤改良モデルケースとしては、例えば、図3に示すように、ケース(case)1として非液状化可能層5から3mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残す場合(液状化可能層全体の60%が改良された改良部6と未改良部7とからなる場合)、図4に示すように、ケース(case)2として非液状化可能層5から5mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残す場合(液状化可能層全体の40%が改良された改良部6と未改良部7とからなる場合)、図5に示すように、ケース(case)3として非液状化可能層5から7mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残す場合(液状化可能層全体の20%が改良された改良部6と未改良部7とからなる場合)、図6に示すように、ケース4(case)として地盤改良を全く行わない場合の4つを設定する。そして、これらの地盤改良モデルケースのすべてについての、想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析をモンテカルロシミュレーションによって行い、これに基づいて上記の地盤改良モデルケースの中から最適の地盤改良モデルケースを選定し、これによって未改良部以外の改良範囲を決定して地盤改良を行うものである。まず、図3に示す、ケース1の地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析について説明する。
【0011】
次に、ステップ2として、対象地盤のボーリング調査の結果に基づいて土質区分の設定、液状化可能層および非液状化可能層の土質定数に関する確率分布を把握した地盤モデルを作成する。この土質区分の設定は物性が同じと見なされる領域ごとに地盤全体を、例えば沖積粘土層A、沖積粘土層B、砂層A、砂層B、砂礫層A、砂礫層Bなどに区分けして行う。また土質定数に関する確率分布の把握は、図7の(1)に示すように、想定される土質定数のばらつきに関して、平均値(中央値)、標準偏差といった分布を特徴づける数学的なパラメーターを把握することにより行う。また舗装部については構成する舗装、路床、路盤の材料特性に応じて区分けを行う。また弾性係数などの変形パラメーターに関する確率分布の把握は、同様なばらつきに関して平均値、標準偏差といった分布を特徴づける数学的なパラメ−ターを把握することにより行う。
【0012】
次に、ステップ3として、図7の(2)および(3)に示すように、地盤沈下量および舗装部変形の検討対象領域となる液状化可能層および舗装部を、三次元でメッシュ状に区画した構成図9を作成する。この区画は水平方向を20〜50m間隔で、鉛直方向を1〜5m間隔で区切ったものであり、砂地盤または路盤が20〜50m×20〜50m×1〜5mの構成要素10、10aを縦横方向(水平方向X、Yおよび鉛直方向Z)に連続して重ね合わせた構成になる。この液状化可能層の構成図は改良部(改良土)と未改良部(未改良土)とから構成されている。
【0013】
次に、ステップ4として、想定地震動(その地域の発生するであろう地震動)に対する地盤沈下量の解析と舗装部変形の解析とを2つのサブモデルによるモンテカルロシミュレーションで行う。まず想定地震動に対する地盤沈下量の解析を行うために、上記構成図9における改良土の構成要素10に、事前の実験により求めた弾性係数などの変形パラメーターの入力を行い、未改良土の構成要素10aにはN値などを入力する。すなわち構成図9における構成要素10、10aに対して、1回のシミュレーションごとの入力データとして、土質定数に関する確率分布の把握結果に基づき(平均値と標準偏差の情報を基にして)各構成要素の土層の厚さ、N値、体積ひずみ等の土質定数の値を数学的に乱数を発生させて入力する。これは各構成要素10、10aに物性をばらつかせて与えることにより、想定地震動に対する地盤沈下量の解析のためのシミュレーションを繰り返して行うようにするものである。
【0014】
次に、上記のデータを入力した地盤の想定地震動に対する地盤沈下量を、地盤の地震応答解析モデル(FEM解析モデルなど)などの数値解析モデルを用いて解析する。この数値解析モデルとしては、(a)透水方程式(圧密方程式に間隙水圧発生の項を加えた方程式やBiotらの多孔質物体変形理論に基づく透水方程式)、(b)応力〜ひずみ関係のモデル(Hardin・Drnevich型モデル、 Ramberg・Osgood型モデルまたは適切な硬化関数を用いた塑性論モデル)(c) 間隙水圧発生モデルによって構成される。この数値解析モデルとしては、例えば、DESRA、YUSAYUSA、LIQCA、FLIPなどの解析モデルが使用される。
【0015】
次に、上記の地盤沈下量の解析に基づいて、舗装部変形の解析を行う。これを実施するには、図7の(3)に示す構成図9に入力データとして、事前に舗装部の弾性係数、舗装厚などの変形定数を、上記の地盤沈下量の解析と同様の方法により確率的に割り付ける。そして、前段階で解析された地盤沈下量を舗装部下に鉛直変位の境界条件として強制的に与えて、地盤沈下量による舗装部変形を、舗装部を弾性体とみなしたFEM解析モデルなどの数値解析モデルによって解析する。この解析によって、ケース1の地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形についてのシミュレーションが1回行われたことになる。この舗装部変形の解析で行われる弾性体解析では、以下の式1〜式3で示すフックの法則の応力〜ひずみ関係に基づく解析が行われる。このような変形解析により舗装部の沈下量、水平ひずみ、せん断ひずみの発生量を予測することができる。
[式1]
[式2]
[式3]
ここでε:ひずみ、σ:応力、E:弾性係数(変形係数)、υ:ポアソン比である。
【0016】
このようなケース1の地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析のためのシミュレーションを100回(この回数は必要に応じて変更可能)行った結果の一例が、図8に示すような舗装部の沈下形状であり、図9がその平均沈下形状である。このような平均沈下形状から算定される局所的な沈下量の差(段差)、または別途出力される水平ひずみ量からクラックの発生の予測判断をする。このクラックが発生する段差量、水平ひずみ量の予測判断については、既往の調査結果(林洋介・佐藤勝久(1984):地盤の不同沈下による空港舗装の破損、第19回土質工学研究発表会、P584−585)を利用して行う。この予想した舗装部のクラックの発生結果のから、非液状化可能層5から3mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残すケース1の地盤改良は、地震による不同沈下が発生したとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがなく、平坦性の機能が充分に維持されたものとなる。すなわち、3mの厚さ分の未改良部を残した部分改良を行うことにより、地震による液状化後の不同沈下があったとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがないため、改良範囲が3mの厚さ分残した液状化可能層(未改良部)4以外の範囲だけで良いことを確認することができる。
【0017】
次に、ケース2の非液状化可能層5から5mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残した地盤改良モデルケースと、ケース3の非液状化可能層5から7mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残した地盤改良モデルケースについて、上記と同様のステップ2〜ステップ4の方法による評価を行う。この結果が図10および図11に示す平均的沈下形状であり、これからケース2の地盤改良モデルケースによる地盤改良、およびケース3の地盤改良モデルケースによる地盤改良については、地震による不同沈下が発生したとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがなく、平坦性の機能が充分に維持されるものであるとの判断をすることができる。したがって、これらのケースも5mまたは7mの厚さ分の未改良部を残した部分改良を行うことにより、地震による液状化後の不同沈下があったとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがないため、改良範囲が5mまたは7mの厚さ分残した液状化可能層(未改良部)4以外の範囲だけで良いことを確認することができる。
【0018】
次に、ケース4として地盤改良を全く行わない場合の地盤改良モデルケースについて、上記と同様のステップ2〜ステップ4の方法による評価を行う。この結果が図12に示すものであり、この平均的沈下形状から舗装部変形が大きくて、路盤に段差や亀裂が発生する予測判断ができるため、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じ、平坦性の機能を充分に維持することができないとの判断をすることができる。
【0019】
このことから、図3に示すように、液状化可能層4を非液状化可能層5から3mの厚さ分残すケース1の地盤改良、図4に示すように、液状化可能層4を非液状化可能層5から5mの厚さ分残すケース2の地盤改良、図5に示すように、液状化可能層4を非液状化可能層5から7mの厚さ分残すケース3の地盤改良が適正な改良範囲であることを確認することができた。この3〜7mは任意に選択することができ、必要に応じて選択するものである。例えば、液状化可能層4を非液状化可能層5から9mの厚さ分残す地盤改良モデルケースを設定し、この地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析をモンテカルロシミュレーションで行った結果、不同沈下が大きい場合は、不適正な改良範囲であるとの判断をすることができる。本実施の形態では一般的な施設を対象に平均沈下形状を用いて評価したが、特に重要な施設を対象にする場合は上位5%の沈下形状を用いて評価することもできる。
【0020】
次に、ステップ5として、このような複数の改良範囲の中から、図13に示すように、各ケースにおける地震時の被災状況を予測し、事前に行う地盤改良費および被災時の補修費のトータルコストが最小となるようなケースを最適案として抽出する。しかし、これはトータルコストが最小となるようなケースであり、舗装部3が滑走路の機能である平坦性を確保することができるか否かを基準にすると、上記の地盤改良範囲で充分である。
【0021】
図14は、ケース1の改良範囲を基にした既設滑走路11における舗装部12下側の液状化可能層13の改良を行ったものである。まず既設滑走路11の舗装部12の側面から曲がり薬液注入孔14を削孔し、この曲がり薬液注入孔14に湾曲のストレーナー型注入管15を挿入して、シリカ系水溶液型の薬液16を注入する。このシリカ系水溶液型の薬液16としては、いわゆる「水ガラス」製造用の原料であるNa2O/nSiO2またはK2O/nSiO2と、その硬化剤である無機塩類、有機塩類、金属酸化物、金属水酸化物、無機酸、有機酸、酸性塩、金属酸化物、金属水酸化物、塩基性塩等を組み合わせて調整したもの、ならびに特殊シリカ溶液とその硬化剤、例えばリン酸などである。
【0022】
そして舗装部12直下の液状化可能層13を改良率100%で改良するが、この液状化可能層13に改良率が100%になる薬液16、すなわち薬液濃度を1〜8%、注入速度を10L/分に設定した薬液16を注入すると、改良体17が水平方向で密に重なり合った均質かつ一体的な全面改良層18が形成される。そして、このような全面改良層18を深度が深くなるにしたがって順次形成し、液状化可能層19を非液状化可能層20から3mの厚さ分残す箇所まで改良すると、全面改良層18と非液状化可能層20との間に層厚が3mの液状化可能層19が形成される。したがって、地震による不同沈下が発生しても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがなく、平坦性の機能を充分に維持した部分改良を行うことができる。なお、液状化可能層19を非液状化可能層20から5mの厚さ分残すケース2の地盤改良、または7mの厚さ分残すケース3の地盤改良も上記と同じ方法で行う。
【0023】
なお、上記の実施の形態においては薬液注入孔14を液状化可能層13の側面から掘削したが、この薬液注入孔14を既存滑走路11の舗装部12の上面から掘削することもできる。また上記の実施の形態においては既存滑走路を対象に説明したが、これは既存道路でも適用することができる。さらに、本発明は一般の薬液注入による地盤改良にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既存滑走路における改良地盤の断面図である。
【図2】地盤改良工法を実施するためのフロー図である。
【図3】ケース1の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図4】ケース2の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図5】ケース3の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図6】ケース4の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図7】(1)は対象地盤の物性値を示したグラフ図、(2)は液状化可能層の構成図、(3)は舗装部の構成図である。
【図8】100回のシミュレーションにより得られた舗装部の沈下形状の図である。
【図9】(1)は100回のシミュレーションにより得られた舗装部の平均沈下形状の図、(2)は同斜視図である。
【図10】(1)は既存滑走路のシミュレーション用の地盤改良モデルケースの断面図、(2)は100回のシミュレーションにより得られる舗装部の平均沈下形状を示した図である。
【図11】(1)は既存滑走路のシミュレーション用の地盤改良モデルケースの断面図、(2)は100回のシミュレーションにより得られる舗装部の平均沈下形状を示した図である。
【図12】(1)は既存滑走路のシミュレーション用の地盤改良モデルケースの断面図、(2)は100回のシミュレーションにより得られる舗装部の平均沈下形状を示した図である。
【図13】最適なトータルコストを判断する図である。
【図14】実施の形態の地盤改良工法の断面図である。
【図15】(1)は従来の地盤改良工法の断面図、(2)は本願発明の地盤改良工法の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 既存滑走路
2 改良地盤
3、12 舗装部
4、13、19、21 液状化可能層
5、20 非液状化可能層
6 改良部
7 未改良部
9 構成図
10、10a 構成要素
11 既設滑走路
14 薬液注入孔
15 ストレーナー型注入管
16、22 薬液
17 改良体
18 全面改良層
【技術分野】
【0001】
本願発明は改良地盤および地盤改良工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液状化可能層に薬液を注入する地盤改良工法は、図15の(1)に示すように、未改良時において液状化の可能性のある全ての領域、すなわち液状化可能層21に薬液22を注入することにより、これらの層21における砂の間隙を薬液22で置き換えていた。すなわち液状化可能層21を100%改良することにより地震による液状化を防いでいた。これは液状化可能層21を全て改良するという工法であった。また、この他の地盤改良工法としては、特開2004−346636号公報の発明がある。
【特許文献1】特開2004−346636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の地盤改良工法は液状化可能層を全て改良し、この液状化可能層における全ての砂の間隙量と、同じ量の薬液を液状化可能層に注入していたためコスト高になるという問題があった。
【0004】
本願発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで液状化可能層の改良ができる地盤改良工法、すなわち、液状化可能層を全て改良するのではなく、図15の(2)に示すように、液状化可能層21を所望の厚さ分残した部分改良を行うことにより地震による液状化後の地盤沈下があったとしても、この地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるような改良地盤および地盤改良工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための改良地盤は、舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残し、これ以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良したことを特徴とする。
また地盤改良工法は舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残す設定をし、この設定に基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを特徴とする。また改良対象地盤において未改良部を所望の厚さ分残したシミュレーション用の地盤改良モデルケースを複数用意し、この各地盤改良モデルケースにおける想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形をモンテカルロシミュレーションによって算定し、この結果に基づいて上記の地盤改良モデルケースの中から最適の地盤改良モデルケースを1以上選定し、これに基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
液状化可能層の全てを改良するのではなく、液状化可能層を所望の厚さ分残した部分的な改良をしたとしても地震時における液状化による不同沈下を対象施設の機能維持のために設定される基準値内に収まるように抑えることができる。例えば、既存滑走路などにおいて不同沈下が発生したとしても、この不同沈下は滑走路について設定される基準値を超えて生じることなく平坦性の機能が充分に維持されるものとなる。また液状化可能層の全てを改良するのではなく、未改良部を所望の厚さ分残し、これ以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良したことにより、地盤改良に使用する材料の低減、工期の短縮およびコストの削減を図ることができる。また地盤改良の一地点あたりに要する改良時間が短くなるため、使用中の施設を24時間にわたって閉鎖することなく、例えば夜間のみの改良工事により必要な地盤改良を行うことができる。また地盤沈下を一様にする改良ができるので、舗装部の段差や亀裂などの発生を防ぐことができる。また改良コストが全面改良に比べると縮減されるため、同じ費用で、従来の工法と比べて大幅な長さの地盤が改良できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明の改良地盤および地盤改良工法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本願発明の対象は既存滑走路および既存道路における舗装部下側の地盤であるが、本実施の形態においては既存滑走路を対象として説明する。はじめに改良地盤について説明し、次に地盤改良工法について説明するが、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1は既存滑走路1における改良地盤2を示し、これは舗装部3の下側における改良対象地盤である液状化可能層4と、その下側の非液状化可能層5とから構成されている。この液状化可能層4を全く改良しなければ地震時の液状化による不同沈下によって舗装部3に段差や亀裂が発生して滑走路としての平坦性を確保できなくなる。そのため従来は液状化可能層4の全てに薬液を注入して改良する全面改良を行っていた。しかし、図1に示す改良地盤2は、非液状化可能層5から所定の厚さ分、例えば3〜7m(この厚さは任意に選択可能)の液状化可能層(未改良部)4を残し、それ以外の液状化可能層4に薬液を注入して改良した改良部6と未改良部7とから構成されている。このように非液状化可能層5から所定の厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残した改良地盤2は全面改良ではなく部分改良となって、所定厚さ分の液状化可能層4が残るため、地震時における液状化による不同沈下が発生するが、この不同沈下は、未改良の液状化可能層4が一定厚であるので、滑走路について設定される基準値を超えて生じることなく、平坦性の機能が充分に維持されるだけでなく、コストの削減を図ることも可能になる。また、非液状化可能層5から所定の厚さ分の未改良部7は、図1においては非液状化可能層5に沿って横方向に形成されているが、これは当然に非液状化可能層5の全面に沿って広がって形成されている。
【0009】
次に、地盤改良工法を前記と同様に既存滑走路の舗装部下側の地盤を対象として説明する。この地盤改良工法は、図1のように非液状化可能層5から所定の厚さ分の液状化層(未改良部)4を残して改良した場合でも、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるような改良範囲を選定(事前にソフト解析を行って選定)し、これを基にして実際の地盤改良を行うものである。この改良範囲の選定については図2のフローに基づいて説明する。
【0010】
まず、ステップ1として、地盤の改良範囲を検討するために、既存滑走路の改良対象地盤において未改良部を所望の厚さ分残した地盤改良モデルケースを複数設定する。この既存滑走路の地盤改良モデルケースは想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析用のものである。この既存滑走路の地盤改良モデルケースとしては、例えば、図3に示すように、ケース(case)1として非液状化可能層5から3mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残す場合(液状化可能層全体の60%が改良された改良部6と未改良部7とからなる場合)、図4に示すように、ケース(case)2として非液状化可能層5から5mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残す場合(液状化可能層全体の40%が改良された改良部6と未改良部7とからなる場合)、図5に示すように、ケース(case)3として非液状化可能層5から7mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残す場合(液状化可能層全体の20%が改良された改良部6と未改良部7とからなる場合)、図6に示すように、ケース4(case)として地盤改良を全く行わない場合の4つを設定する。そして、これらの地盤改良モデルケースのすべてについての、想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析をモンテカルロシミュレーションによって行い、これに基づいて上記の地盤改良モデルケースの中から最適の地盤改良モデルケースを選定し、これによって未改良部以外の改良範囲を決定して地盤改良を行うものである。まず、図3に示す、ケース1の地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析について説明する。
【0011】
次に、ステップ2として、対象地盤のボーリング調査の結果に基づいて土質区分の設定、液状化可能層および非液状化可能層の土質定数に関する確率分布を把握した地盤モデルを作成する。この土質区分の設定は物性が同じと見なされる領域ごとに地盤全体を、例えば沖積粘土層A、沖積粘土層B、砂層A、砂層B、砂礫層A、砂礫層Bなどに区分けして行う。また土質定数に関する確率分布の把握は、図7の(1)に示すように、想定される土質定数のばらつきに関して、平均値(中央値)、標準偏差といった分布を特徴づける数学的なパラメーターを把握することにより行う。また舗装部については構成する舗装、路床、路盤の材料特性に応じて区分けを行う。また弾性係数などの変形パラメーターに関する確率分布の把握は、同様なばらつきに関して平均値、標準偏差といった分布を特徴づける数学的なパラメ−ターを把握することにより行う。
【0012】
次に、ステップ3として、図7の(2)および(3)に示すように、地盤沈下量および舗装部変形の検討対象領域となる液状化可能層および舗装部を、三次元でメッシュ状に区画した構成図9を作成する。この区画は水平方向を20〜50m間隔で、鉛直方向を1〜5m間隔で区切ったものであり、砂地盤または路盤が20〜50m×20〜50m×1〜5mの構成要素10、10aを縦横方向(水平方向X、Yおよび鉛直方向Z)に連続して重ね合わせた構成になる。この液状化可能層の構成図は改良部(改良土)と未改良部(未改良土)とから構成されている。
【0013】
次に、ステップ4として、想定地震動(その地域の発生するであろう地震動)に対する地盤沈下量の解析と舗装部変形の解析とを2つのサブモデルによるモンテカルロシミュレーションで行う。まず想定地震動に対する地盤沈下量の解析を行うために、上記構成図9における改良土の構成要素10に、事前の実験により求めた弾性係数などの変形パラメーターの入力を行い、未改良土の構成要素10aにはN値などを入力する。すなわち構成図9における構成要素10、10aに対して、1回のシミュレーションごとの入力データとして、土質定数に関する確率分布の把握結果に基づき(平均値と標準偏差の情報を基にして)各構成要素の土層の厚さ、N値、体積ひずみ等の土質定数の値を数学的に乱数を発生させて入力する。これは各構成要素10、10aに物性をばらつかせて与えることにより、想定地震動に対する地盤沈下量の解析のためのシミュレーションを繰り返して行うようにするものである。
【0014】
次に、上記のデータを入力した地盤の想定地震動に対する地盤沈下量を、地盤の地震応答解析モデル(FEM解析モデルなど)などの数値解析モデルを用いて解析する。この数値解析モデルとしては、(a)透水方程式(圧密方程式に間隙水圧発生の項を加えた方程式やBiotらの多孔質物体変形理論に基づく透水方程式)、(b)応力〜ひずみ関係のモデル(Hardin・Drnevich型モデル、 Ramberg・Osgood型モデルまたは適切な硬化関数を用いた塑性論モデル)(c) 間隙水圧発生モデルによって構成される。この数値解析モデルとしては、例えば、DESRA、YUSAYUSA、LIQCA、FLIPなどの解析モデルが使用される。
【0015】
次に、上記の地盤沈下量の解析に基づいて、舗装部変形の解析を行う。これを実施するには、図7の(3)に示す構成図9に入力データとして、事前に舗装部の弾性係数、舗装厚などの変形定数を、上記の地盤沈下量の解析と同様の方法により確率的に割り付ける。そして、前段階で解析された地盤沈下量を舗装部下に鉛直変位の境界条件として強制的に与えて、地盤沈下量による舗装部変形を、舗装部を弾性体とみなしたFEM解析モデルなどの数値解析モデルによって解析する。この解析によって、ケース1の地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形についてのシミュレーションが1回行われたことになる。この舗装部変形の解析で行われる弾性体解析では、以下の式1〜式3で示すフックの法則の応力〜ひずみ関係に基づく解析が行われる。このような変形解析により舗装部の沈下量、水平ひずみ、せん断ひずみの発生量を予測することができる。
[式1]
[式2]
[式3]
ここでε:ひずみ、σ:応力、E:弾性係数(変形係数)、υ:ポアソン比である。
【0016】
このようなケース1の地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析のためのシミュレーションを100回(この回数は必要に応じて変更可能)行った結果の一例が、図8に示すような舗装部の沈下形状であり、図9がその平均沈下形状である。このような平均沈下形状から算定される局所的な沈下量の差(段差)、または別途出力される水平ひずみ量からクラックの発生の予測判断をする。このクラックが発生する段差量、水平ひずみ量の予測判断については、既往の調査結果(林洋介・佐藤勝久(1984):地盤の不同沈下による空港舗装の破損、第19回土質工学研究発表会、P584−585)を利用して行う。この予想した舗装部のクラックの発生結果のから、非液状化可能層5から3mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残すケース1の地盤改良は、地震による不同沈下が発生したとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがなく、平坦性の機能が充分に維持されたものとなる。すなわち、3mの厚さ分の未改良部を残した部分改良を行うことにより、地震による液状化後の不同沈下があったとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがないため、改良範囲が3mの厚さ分残した液状化可能層(未改良部)4以外の範囲だけで良いことを確認することができる。
【0017】
次に、ケース2の非液状化可能層5から5mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残した地盤改良モデルケースと、ケース3の非液状化可能層5から7mの厚さ分の液状化可能層(未改良部)4を残した地盤改良モデルケースについて、上記と同様のステップ2〜ステップ4の方法による評価を行う。この結果が図10および図11に示す平均的沈下形状であり、これからケース2の地盤改良モデルケースによる地盤改良、およびケース3の地盤改良モデルケースによる地盤改良については、地震による不同沈下が発生したとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがなく、平坦性の機能が充分に維持されるものであるとの判断をすることができる。したがって、これらのケースも5mまたは7mの厚さ分の未改良部を残した部分改良を行うことにより、地震による液状化後の不同沈下があったとしても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがないため、改良範囲が5mまたは7mの厚さ分残した液状化可能層(未改良部)4以外の範囲だけで良いことを確認することができる。
【0018】
次に、ケース4として地盤改良を全く行わない場合の地盤改良モデルケースについて、上記と同様のステップ2〜ステップ4の方法による評価を行う。この結果が図12に示すものであり、この平均的沈下形状から舗装部変形が大きくて、路盤に段差や亀裂が発生する予測判断ができるため、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じ、平坦性の機能を充分に維持することができないとの判断をすることができる。
【0019】
このことから、図3に示すように、液状化可能層4を非液状化可能層5から3mの厚さ分残すケース1の地盤改良、図4に示すように、液状化可能層4を非液状化可能層5から5mの厚さ分残すケース2の地盤改良、図5に示すように、液状化可能層4を非液状化可能層5から7mの厚さ分残すケース3の地盤改良が適正な改良範囲であることを確認することができた。この3〜7mは任意に選択することができ、必要に応じて選択するものである。例えば、液状化可能層4を非液状化可能層5から9mの厚さ分残す地盤改良モデルケースを設定し、この地盤改良モデルケースの想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形の解析をモンテカルロシミュレーションで行った結果、不同沈下が大きい場合は、不適正な改良範囲であるとの判断をすることができる。本実施の形態では一般的な施設を対象に平均沈下形状を用いて評価したが、特に重要な施設を対象にする場合は上位5%の沈下形状を用いて評価することもできる。
【0020】
次に、ステップ5として、このような複数の改良範囲の中から、図13に示すように、各ケースにおける地震時の被災状況を予測し、事前に行う地盤改良費および被災時の補修費のトータルコストが最小となるようなケースを最適案として抽出する。しかし、これはトータルコストが最小となるようなケースであり、舗装部3が滑走路の機能である平坦性を確保することができるか否かを基準にすると、上記の地盤改良範囲で充分である。
【0021】
図14は、ケース1の改良範囲を基にした既設滑走路11における舗装部12下側の液状化可能層13の改良を行ったものである。まず既設滑走路11の舗装部12の側面から曲がり薬液注入孔14を削孔し、この曲がり薬液注入孔14に湾曲のストレーナー型注入管15を挿入して、シリカ系水溶液型の薬液16を注入する。このシリカ系水溶液型の薬液16としては、いわゆる「水ガラス」製造用の原料であるNa2O/nSiO2またはK2O/nSiO2と、その硬化剤である無機塩類、有機塩類、金属酸化物、金属水酸化物、無機酸、有機酸、酸性塩、金属酸化物、金属水酸化物、塩基性塩等を組み合わせて調整したもの、ならびに特殊シリカ溶液とその硬化剤、例えばリン酸などである。
【0022】
そして舗装部12直下の液状化可能層13を改良率100%で改良するが、この液状化可能層13に改良率が100%になる薬液16、すなわち薬液濃度を1〜8%、注入速度を10L/分に設定した薬液16を注入すると、改良体17が水平方向で密に重なり合った均質かつ一体的な全面改良層18が形成される。そして、このような全面改良層18を深度が深くなるにしたがって順次形成し、液状化可能層19を非液状化可能層20から3mの厚さ分残す箇所まで改良すると、全面改良層18と非液状化可能層20との間に層厚が3mの液状化可能層19が形成される。したがって、地震による不同沈下が発生しても、この不同沈下が滑走路について設定される基準値を超えて生じることがなく、平坦性の機能を充分に維持した部分改良を行うことができる。なお、液状化可能層19を非液状化可能層20から5mの厚さ分残すケース2の地盤改良、または7mの厚さ分残すケース3の地盤改良も上記と同じ方法で行う。
【0023】
なお、上記の実施の形態においては薬液注入孔14を液状化可能層13の側面から掘削したが、この薬液注入孔14を既存滑走路11の舗装部12の上面から掘削することもできる。また上記の実施の形態においては既存滑走路を対象に説明したが、これは既存道路でも適用することができる。さらに、本発明は一般の薬液注入による地盤改良にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既存滑走路における改良地盤の断面図である。
【図2】地盤改良工法を実施するためのフロー図である。
【図3】ケース1の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図4】ケース2の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図5】ケース3の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図6】ケース4の既存滑走路の地盤改良モデルケースの断面図である。
【図7】(1)は対象地盤の物性値を示したグラフ図、(2)は液状化可能層の構成図、(3)は舗装部の構成図である。
【図8】100回のシミュレーションにより得られた舗装部の沈下形状の図である。
【図9】(1)は100回のシミュレーションにより得られた舗装部の平均沈下形状の図、(2)は同斜視図である。
【図10】(1)は既存滑走路のシミュレーション用の地盤改良モデルケースの断面図、(2)は100回のシミュレーションにより得られる舗装部の平均沈下形状を示した図である。
【図11】(1)は既存滑走路のシミュレーション用の地盤改良モデルケースの断面図、(2)は100回のシミュレーションにより得られる舗装部の平均沈下形状を示した図である。
【図12】(1)は既存滑走路のシミュレーション用の地盤改良モデルケースの断面図、(2)は100回のシミュレーションにより得られる舗装部の平均沈下形状を示した図である。
【図13】最適なトータルコストを判断する図である。
【図14】実施の形態の地盤改良工法の断面図である。
【図15】(1)は従来の地盤改良工法の断面図、(2)は本願発明の地盤改良工法の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 既存滑走路
2 改良地盤
3、12 舗装部
4、13、19、21 液状化可能層
5、20 非液状化可能層
6 改良部
7 未改良部
9 構成図
10、10a 構成要素
11 既設滑走路
14 薬液注入孔
15 ストレーナー型注入管
16、22 薬液
17 改良体
18 全面改良層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残し、これ以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良したことを特徴とする改良地盤。
【請求項2】
舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残す設定をし、この設定に基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
改良対象地盤において未改良部を所望の厚さ分残したシミュレーション用の地盤改良モデルケースを複数用意し、この各地盤改良モデルケースにおける想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形をモンテカルロシミュレーションによって算定し、この結果に基づいて上記の地盤改良モデルケースの中から最適の地盤改良モデルケースを1以上選定し、これに基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項1】
舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残し、これ以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良したことを特徴とする改良地盤。
【請求項2】
舗装部下側の改良対象地盤において、地震による液状化後の地盤沈下が改良対象地盤全体で一様になるように、未改良部を所望の厚さ分残す設定をし、この設定に基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
改良対象地盤において未改良部を所望の厚さ分残したシミュレーション用の地盤改良モデルケースを複数用意し、この各地盤改良モデルケースにおける想定地震動に対する液状化による地盤沈下量および舗装部変形をモンテカルロシミュレーションによって算定し、この結果に基づいて上記の地盤改良モデルケースの中から最適の地盤改良モデルケースを1以上選定し、これに基づいて未改良部以外の改良対象地盤に薬液を注入して改良することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−62794(P2009−62794A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233934(P2007−233934)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
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