説明

改良地盤の試験方法および未固化試料採取器

【課題】改良体の品質確認が早く行え、改良体の品質が基準値以下の場合に行う再工事も容易に行える改良地盤の試験方法を提供する。また、その試験方法に好適な未固化試料採取器を提供する。
【解決手段】地盤改良体の改良工事施工後、改良体gが未固化状態のときに任意の深度の未固化試料を採取し、この未固化試料を採取後に圧縮試験し、圧縮試験の結果から材齢4週間の最終強度を推定する。未固化試料を充填するための複数個のモールド缶3と、このモールド缶3を1個づつ収容する複数個のサンプラー2と、複数個のサンプラー2を、長手方向に等間隔で取り付けた長尺の主ロッド1と、モールド缶3の内部に未固化試料を押し込む押し込み手段とからなる。押し込み手段は、押し板6を操作ロッド5を介して上下動させるエアーシリンダ4からなり、押し板6を上下動させると、未固化試料をモールド缶3内に充填できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良地盤の試験方法および未固化試料採取器に関する。地盤改良は、軟弱地盤にセメント系固化材液を混入して撹拌し圧縮強度の高い地盤に作り替えることによって行う。この改良された地盤を改良体という。この改良体が必要な圧縮強度を有しているか否かは、改良体の一部を採取し圧縮試験を行うことによって確認している。
本発明は、このような改良体の品質を確認するための改良地盤の試験方法と、それに用いる未固化試料採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良の品質は、施工後4週間(材齢)経過して固化した試験体を室内で圧縮試験して得られた圧縮強度で保証することができる。
この試験体の従来の採取方法は、改良体が施工後3〜4週間経って固化した後、ボーリングして採取している。この試験体を材齢4週間経過して圧縮試験することにより強度を確認していた。
【0003】
上記のように、改良体の固化後にボーリングして試験体を取り出す技術としては、特許文献1の従来技術がある。
この従来技術に用いるボーリング用ロッドは、先端に歯が付いており、それを回転させ掘進するものであるが、このようなボーリングマシン自体が大がかりな装置であり、簡易に用いることができないものである。
【0004】
また、上記従来技術では施工上の問題もある。つまり、実際の現場ではボーリングが終わるまで次の作業が3〜4週間かかれないことになり、作業工程が延びることになる。
しかも、ボーリングで得られた試験体の品質が基準を満たさないときは、固化してしまった改良体の上に築いた建物の基礎などを改めて取り除き、その上で再度、改良工事をしなければならない。この場合、相当多大の時間と工事が無駄になる。
【0005】
【特許文献1】特開2003-74045号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、改良体の品質確認が早く行え、改良体の品質が基準値以下の場合に行う再工事も容易に行える改良地盤の試験方法を提供することを目的とする。また、その試験方法に好適な未固化試料採取器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の改良地盤の試験方法は、地盤改良体の改良工事施工後、改良体が未固化状態のときに任意の深度の未固化試料を採取し、該未固化試料を採取後に圧縮試験し、該圧縮試験の結果から材齢4週間の最終強度を推定することを特徴とする。
第2発明の未固化試料採取器は、請求項1の試験方法に用いられる試料採取器であって、未固化試料を充填するための複数個のモールド缶と、該モールド缶を1個づつ収容する複数個のサンプラーと、該複数個のサンプラーを、長手方向に等間隔で取り付けた長尺の支持体と、前記サンプラーに収容されている前記モールド缶の内部に未固化試料を押し込む押し込み手段とからなることを特徴とする。
第3発明の未固化試料採取器は、第2発明において、前記長尺の支持体が、長尺の主ロッドであり、前記押し込み手段が、前記サンプラーの上方位置に配置された押し板と、該押し板を上下動させる操作ロッドと、該操作ロッドを上下動させる駆動源とからなることを特徴とする。
第4発明の未固化試料採取器は、第2発明において、前記長尺の支持体が、長尺の外筒と、該外筒の内部に挿入された長尺の内筒とからなり、前記外筒には、長手方向に等間隔に開口が形成され、該開口に隣接して羽根板が形成されており、前記内筒には、長手方向に等間隔に開口が形成され、該開口の直下にモールド缶収容部が形成されており、前記押し込み手段が、前記外筒の前記開口の上端位置から前記内筒の前記開口内へ延びた当て板と、前記内筒を上下動させる駆動源とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、施工後3日から5日の改良体が未固化のときの未固化試料で圧縮試験を行い、その試験値から最終強度を推定する。このため、仮に改良地盤の最終強度が不足するような推定値が得られた場合は、すぐ再施工が可能であるから、現場の作業工程に支障をきたすことがない。
第2発明によれば、長尺の支持体を基本構造とするものであるから未固化状態の改良体には軽い力で挿入することができ、大がかりな装置とならない。また、押し込み手段で未固化試料をモールド缶に押し込めるので、採取が容易に行える。
第3発明によれば、長尺の主ロッドを未固化の改良体に挿入した状態で、駆動源によって操作ロッドを上下動させると、押し板で周囲の未固化試料をサンプラー内のモールド缶に押し込めるので、試料の採取が容易に行える。
第4発明によれば、長尺の外筒を未固化の改良体に挿入した状態で、外筒をその軸まわりに回転させると羽根板の周囲の未固化試料を開口から内筒の内部に押し込むことができる。そして、駆動源によって内筒を上方に動かすと、当て板との間に挟まれた資料がモールド缶の内部に押し込められるので、試料の採取が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の第1実施形態の試料採取器Aを示し、(A)図は押し板を閉じた状態、(B)図は押し板を開いた状態の説明図である。図2は同実施形態における1個のサンプラーの拡大図である。図3はサンプラーとモールド缶の斜視図である。図4は第1実施形態の試料採取器Aの使用方法説明図である。
【0010】
図1において、1は主ロッドであり、4〜5m位の棒状の長尺部材である。この主ロッド1に、等間隔でサンプラー2が取付けられている。この取付間隔は、たとえば33.3cmとすると、1mの間で3ヵ所の未固化試料を採取できるので、深度方向での改良体の強度を高精度に推測できることとなる。
【0011】
前記主ロッド1の上端には、上下動駆動源であるエアーシリンダ4が取付けられており、このエアーシリンダ4のロッド4aには操作ロッド5が吊下げられている。操作ロッド5は、前記主ロッド1に近い長さの棒状部材である。そして、操作ロッド5には、押し板6が等間隔に取付けられている。この取付間隔は、サンプラー2と同じく33.3cmである。
そして、(A)図に示すように、エアーシリンダ4が伸長すると、操作ロッド5が下降して、押し板6でサンプラー2の蓋をし、(B)図に示すように、エアーシリンダ4が収縮すると操作ロッド5が上昇して、サンプラー2から押し板6を離すようになっている。この押し板6は、未固化土をサンプラー2に導入して充填する役割を担っている。
【0012】
図2に基づき、サンプラー2と押し板6の詳細を説明する。
サンプラー2は、円筒状の容器で、上面が開口し、底が付いている。このサンプラー2には、後述するモールド缶3が挿入できるようになっている。
サンプラー2は取付金具7で主ロッド1に固定されている。押し板6は、サンプラー2の上部開口を塞ぐ大きさの蓋状部材である。
この押し板6の基部にはガイドパイプ8が固定され、ガイドパイプ8は主ロッド1に沿って上下動するようになっている。また、ガイドパイプ8は取付金具10によって、操作ロッド5に固定されている。
【0013】
前記操作ロッド5には複数個のガイド金具11が前記取付金具10の上か下かで等間隔に固定されている。このガイド金具11の先端は、たとえば二又になっていて、主ロッド1の外周に左右から接した状態で上下動するようになっている。したがって、エアーシリンダ4で操作ロッド5を上下動させると、押し板6はサンプラー2の上方で上下動を繰返えし、押し板6を閉じたり開いたりすることができる。図2において、実線は押し板6を閉じた状態を示し、一点鎖線は押し板6を開いた状態を示している。
このエアーシリンダ4と押し板6とで、特許請求の範囲にいう押し込み手段を構成している。
【0014】
図3に示すように、サンプラー2にはモールド缶3の出し入れが自由にできる。このモールド缶3は有底筒状であって、サンプラー2より少し小さい紙製の容器である。このモールド缶3の内部に未固化試料を充填した後、必要日数分養生して固化させると、圧縮試験等に供することができる。
【0015】
図4に基づき、上記試料採取器Aの使用方法を説明する。
(1)試料採取器Aを未固化状態の改良体g中に挿入する。
挿入は、試料採取器Aの自重や人力程度の力で行える。
(2)試料採取器Aが改良体gの底部に着いた状態である。
(3)試料採取器Aの押し板6を上昇させサンプラー2の上面を開いた状態である。
(4)試料採取器Aの押し板6を下降させサンプラー2の上面を閉じた状態である。
この押し板6の上下動を繰返すと、押し板6の周囲の未固化土gがサンプラー2内に導入されて、モールド缶3内に充填される。
(5)試料採取器Aを引き上げる。その後、モールド缶3を取り出す。
【0016】
未固化土を充填したモールド缶3は、地上に引き上げ養生して、未固化土を固化させると、それが試験体となる。
本実施形態の試料採取器Aは、長尺の主ロッド1を基本構造とするものであるから、未固化状態の改良体gには軽い力で挿入することができ、大がかりな装置とならない。また、エアーシリンダ4で未固化土をモールド缶3に押し込めるので、採取が容易に行える。
また、長尺の主ロッド1を未固化の改良体g内に挿入した状態で、エアーシリンダ4によって操作ロッド5を上下動させると、押し板6で周囲の未固化土gをサンプラー2内のモールド缶3に押し込めるので、試料の採取が容易に行える。
【0017】
本実施形態の試料採取器Aを用いると、改良体の施工直後に試験体を採取でき、採取した試験体の養生に最短で3日、一般的には7日位必要とするが、その試験体の圧縮強度で、改良体の最終圧縮強度を推定できる。このため、仮に改良地盤の最終強度が不足するような推定値が得られた場合は、すぐ再施工が可能で、現場の作業工程に支障をきたすことがない。
【0018】
図5は本発明の第2実施形態の試料採取器Bを示し、(A)図は正面図、(B)図は側面図である。図6は同試料採取器Bにおける駆動部の断面図である。図7は同試料採取器Bにおける試料採取部の断面図である。図8はA図は図7の8a線矢視図、B図は図7の8b線矢視図である。
【0019】
図5において、21は外筒であり、4〜5m位の長尺のパイプ材である。この外筒21の内部には、内筒22が挿入されている。内筒22は外筒21よりも長さがやや短いパイプ材である。
そして、外筒21の上端に取付けられたエアーシリンダ23で、内筒22が上下動するようになっている。
また、外筒21および内筒22には、等間隔でサンプリング部30が取付けられている。この取付間隔も、間隔は33.3cmとすると、1mの間で3ヵ所の未固化試料を採取できるので、深度方向での改良体の強度を高精度に推測できることとなる。
【0020】
図6に示すように、前記外筒21の上端には、上下動駆動源であるエアーシリンダ23が取付けられており、このエアーシリンダ23のロッド23aには内筒22が連結されている。
そして、エアーシリンダ23が伸長、収縮すると内筒22が昇降して、後述するように未固化土の充填ができるようになっている。
【0021】
つぎに、サンプリング部30を図9および図8に基づき説明する。
前記外筒21には、モールド缶を挿入できる大きさの開口31が形成されている。具体的には、上下寸法がモールド缶3より大きく、円周方向が約1/3の開口である。
この開口31の側面には羽根板32が取付けられている。羽根板32は、開口31と同じ上下寸法の板材であって、開口31の一側縁から外側に張り出すようになっている。その機能は未固化土を掻き込むものであり、その機能を果たす限り、寸法形状等は任意に選択してよい。
【0022】
前記開口31の上端縁から外筒21および内筒22の内側に延びる当て板33が取付けられている。
この当て板33は、内側が半円形の形状をしており、内筒22の内周に対し少し隙間があけられている。すなわち、内筒22の上下動の邪魔にはならないが、後述する未固化土の充填に用いられる邪魔板として機能するものである。
【0023】
前記内筒22にも開口34が形成されている。この開口34は外筒21の開口31と同じ上下寸法、幅寸法を有している。
なお、内筒22の開口34の上縁は、前記当て板33とは接合しておらず、離間可能となっている。
【0024】
前記内筒22の開口34より下方において、内筒22の側壁には、複数本のボルト35が植設されている。このボルト35は内向きに延びモールド缶3の底を支えるモールド缶収容部36となっている。
【0025】
前記モールド缶収容部36にモールド缶3を入れ、内筒22をエアーシリンダ23で引き上げると、モールド缶3と前記当て板33との間の間隔を縮めることができる。
本実施形態では、エアーシリンダ23と当て板33とで押し込み手段が構成されている。
【0026】
図9〜図11に基づき、上記試料採取器Bの使用方法を説明する。
図には示していないが、まず、試料採取器Bを未固化状態の改良体中に挿入する。挿入は、試料採取器Bの自重や人力程度の力で行える。
図9は試料採取器Bを改良体中に挿入した状態の説明図である。この状態で未固化土gは試料採取器Bの周囲に泥濘状で存在している。羽根板32の周りにも未固化土gがまとわりついているが、未だ開口31,34からは入り込んでいない。
【0027】
図10は試料採取器Bで回転させた状態の説明図である。この図10に示すように、試料採取器Bを軸廻りに回転させる。すると、未固化土gが羽根板32に押されて開口31,34から内筒22の内部に押し込まれる。
図11は試料採取器Bで内筒を上昇させた状態の説明図である。この図11に示すように、内筒22を引き上げると、モールド缶3も引き上げられるので、未固化土gは、当て板33との間に挟まれて、モールド缶3内に充填される。このようにモールド缶3内に未固化土gが充填されると、試料採取器Bを引き上げる。その後、モールド缶3を取り出し、試験に供する。
【0028】
未固化土gを充填したモールド缶3は、地上に引き上げ養生して、未固化土gを固化させると、それが試験体となる。
本実施形態の試料採取器Bは、長尺の外筒21および内筒22を基本構造とするものであるから、未固化状態の改良体gには軽い力で挿入することができ、大がかりな装置とならない。
また、長尺の外筒21を未固化の改良体gに挿入した状態で、外筒21の軸まわりの回転と、エアーシリンダ23による内筒22を上方動により、未固化土gがモールド缶3の内部に押し込められるので、試料の採取が容易に行える。
【0029】
本実施形態の試料採取器Bを用いる場合も、改良体の施工直後に試験体を採取でき、採取した試験体の養生に最短で3日、一般的には7日位必要とするが、その試験体の圧縮強度で、改良体の最終圧縮強度を推定できる。このため、仮に改良地盤の最終強度が不足するような推定値が得られた場合は、すぐ再施工が可能で、現場の作業工程に支障をきたすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の試料採取器Aを示し、(A)図は押し板を閉じた状態、(B)図は押し板を開いた状態の説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態における1個のサンプラーの拡大図である。
【図3】サンプラーとモールド缶の斜視図である。
【図4】第1実施形態の試料採取器Aの使用方法説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態の試料採取器Bを示し、(A)図は正面図、(B)図は側面図である。
【図6】第2実施形態の試料採取器Bにおける駆動部の断面図である。
【図7】第2実施形態の試料採取器Bにおける試料採取部の断面図である。
【図8】A図は図7の8a線矢視図、B図は図7の8b線矢視図である。
【図9】試料採取器Bを改良体中に挿入した状態の説明図である。
【図10】試料採取器Bで回転させた状態の説明図である。
【図11】試料採取器Bで内筒を上昇させた状態の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 主ロッド
2 サンプラー
3 モールド缶
4 エアーシリンダ
5 操作ロッド
6 押し板
21 外筒
22 内筒
23 エアーシリンダ
32 羽根板
33 当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良体の改良工事施工後、改良体が未固化状態のときに任意の深度の未固化試料を採取し、
該未固化試料を採取後に圧縮試験し、
該圧縮試験の結果から材齢4週間の最終強度を推定する
ことを特徴とする改良地盤の試験方法。
【請求項2】
請求項1の試験方法に用いられる試料採取器であって、
未固化試料を充填するための複数個のモールド缶と、
該モールド缶を1個づつ収容する複数個のサンプラーと、
該複数個のサンプラーを、長手方向に等間隔で取り付けた長尺の支持体と、
前記サンプラーに収容されている前記モールド缶の内部に未固化試料を押し込む押し込み手段とからなる
ことを特徴とする未固化試料採取器。
【請求項3】
前記長尺の支持体が、長尺の主ロッドであり、
前記押し込み手段が、前記サンプラーの上方位置に配置された押し板と、該押し板を上下動させる操作ロッドと、該操作ロッドを上下動させる駆動源とからなる
ことを特徴とする請求項2記載の未固化試料採取器。
【請求項4】
前記長尺の支持体が、長尺の外筒と、該外筒の内部に挿入された長尺の内筒とからなり、
前記外筒には、長手方向に等間隔に開口が形成され、該開口に隣接して羽根板が形成されており、
前記内筒には、長手方向に等間隔に開口が形成され、該開口の直下にモールド缶収容部が形成されており、
前記押し込み手段が、前記外筒の前記開口の上端位置から前記内筒の前記開口内へ延びた当て板と、前記内筒を上下動させる駆動源とからなる
ことを特徴とする請求項2記載の未固化試料採取器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−48029(P2010−48029A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214796(P2008−214796)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(308018338)株式会社マシンサービス (3)
【Fターム(参考)】