説明

改良型の放射線治療計画手順

改良型の放射線治療計画手順が提案される。この手順は、特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の絶対的な程度を特定及び決定するステップと、相対的な細胞変質の同様程度を有する領域の生物学ベースのセグメンテーションを確立するステップと、細胞変質の絶対的な程度を、生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立するステップとを備える。さらには、本発明は、改良型の放射線治療計画手順のためのシステム、及び癌の診断及び/又は治療管理の手順でのその使用を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療計画の改良型手順、並びに当該治療計画を確立するプロトコルを実現するためのシステム、及び、特に癌研究及び放射線治療管理におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌腫瘍の早期医療診断及び治療は、医療において極めて重要である。例えば、肺癌は、西欧諸国における新規癌症例全体で、男性と女性がそれぞれ14%と12%を占める、第2位の癌発生率である。これは、癌死亡率では第1位であり、男性と女性ともに主要癌疾患(乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌)で最低の5年生存率を有する。米国だけでも、推定172,000件の肺癌が、2004年に予想された。
【0003】
過去20年で、詳細な調査が医療撮像分野で行われた。その最先端の技術は、CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、又はUS(UltraSound)である。
【0004】
コンピュータ断層撮影(CT)及び磁気共鳴映像(MRI)は、特に組織異常に重点を置く、人体構造を可視化するための周知の技術である。
【0005】
陽電子放射断層撮影(PET)は、生理学的、生化学的及び薬理的な機能を分子レベルで研究できる撮像モダリティである。PET手法は、血流量又は受容体濃度といった生理学的パラメータの測定を可能にする。また、この方法により、生きた動物における生体分子の薬物動態及び薬力学の定量的情報を取得できる。
【0006】
18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)は、「最も標準的」なPETの癌病巣撮像用の薬剤として認識されており、腫瘍学におけるその使用が、広く文書化されている。
【0007】
頭頸部癌、悪性リンパ腫、乳癌、肺癌、肝臓癌、及び結腸癌での18F-FDGによるPET研究が、報告されている。
【0008】
この18F-FDGの幅広い使用は、グルコース代謝が正常組織でよりも腫瘍で高くなる事実に基づいている。細胞において、18F-FDGは、ヘキソキナーゼによってリン酸化されて18F-FDG-6-リン酸塩になる。グルコースに対して、18F-FDG-6-リン酸塩はあまり代謝されず、かつ基本的に細胞にトラップされる。細胞での18F-FDGの蓄積の広がりは、グルコース摂取及びリン酸化反応の度合いを反映し、かつ癌細胞でのその蓄積が、定量的及び半定量的な方法で評価できるので、悪性度についての重要な解剖学的及び機能的情報をもたらす。
【0009】
18F-FDGは、腫瘍学において好ましいPET調合薬であるが、いくつか周知の短所もある。
【0010】
これには、脳腫瘍の視覚化ができないこと(正常細胞の摂取が高いため)、及び癌細胞と慢性炎症の差別化ができないことが含まれる。癌細胞の視覚化における18F-FDGの弱点を克服するため、長年に亘り、これらの短所がない新しいPET薬剤を開発するための努力を重ねた。
【0011】
その結果、非常に多くの腫瘍造影剤が出現している。これらの造影剤のいくつかは、現在臨床調査中であるか、又は臨床に使用され、そしてグルコース代謝を除く、腫瘍生化学の他の観点を研究するための付加的なツールとして機能している。
【0012】
これらの造影剤の一欠点は、対応する撮像手順には、非常に時間がかかり、このためルーチン的な診断に必ずとも適さないことである。さらには、これらの薬剤及び対応する撮像手順は、非常に高価で、大きな患者集団に適用するのが難しい。したがって、臨床的及び経済的な観点で、特定性の高いターゲットを使用する決定については、よく考慮する必要がある。
【0013】
もう1つの問題は、患者が特定性の高い撮像手順に対して良好な候補者であるかどうかを決定するのは、多くの場合、試行錯誤のプロセスになることである。
【0014】
これらの場合、診断コストは、著しく増加し、例えば、特定性の高い造影剤の推定追加コストは、患者当たり2,000USドルである。しかし、最も重要な不都合は、時間の浪費であり、これにより、患者は、致命的結果を被る可能性がある。
【0015】
腫瘍診断及び治療のさらに別の問題は、多くの場合、広がり及び変質レベルの面で不均一かつ不均質な腫瘍細胞の分布が存在することである。つまり、多かれ少なかれ侵略性のある悪性フェノタイプが、確定した腫瘍部位内に共存する。侵略性の高い腫瘍細胞は、多くの場合、放射線及び/又は化学療法に感受性が鈍く(抵抗力が高い)、放射線治療の不成功の増加をまねく。ある場合、この侵略性は、細胞での酸素の不足又は欠乏(低酸素症)と相関する。
【0016】
最近、解剖学的及び/又は機能的撮像情報による空間分布に基づく放射線線量分布(不均一線量パターン)が、Y. Yang及びL. Xing(Med. Phys., 32 (6), 2005)で開示される数式を通じて説明されている。しかし、説明される線量は、見識及び経験に基づく相対的因子(Drel)を備え、個々の悪性度の現実的な状況及び絶対的な程度に関して、潜在的に高い不確定性を残している。
【0017】
線量決定におけるこの不確定性が、しばしば腫瘍細胞の増殖及び転移の発生を増やすとともに、悪性質の常習性をもたらす。これを克服するため、しばしば絶対的な放射線線量を増やしてしまい、患者の放射線死亡率を高めてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
腫瘍管理を改善し、かつ転移率、常習性、患者の放射線死亡率及び/又は化学療法死亡率を低減する放射線治療及び/又は化学療法といった治療プロトコルをより個別で確立、適用、及び最適化することで、効率良く患者の利益及び治療成功を高めるような、より早く、より正確で、より個別で、より費用効率の高い、早期診断及び予後のため手順を提供することが、非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、次のステップを備える改良型の放射線治療計画手順を提案する。
a)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の絶対的な程度を特定及び決定するステップ、
b)機能的撮像及び/又は解剖学的撮像中に取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立するステップ、
c)ステップa)で取得した細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立するステップ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施例では、生体外検査における細胞変質の絶対的な程度の特定及び決定に先行して、解剖学的データが、取得される。本発明の別の実施例では、患者特有の細胞変質タイプの関係及び機能的撮像の関係のそれぞれについて利用可能な、最も適した造影剤を選択するため、生体外検査を介して細胞変質の特定が、機能的撮像に先行して実行される。本発明のさらなる実施例では、機能的撮像が、生体外検査の前、途中又は後に実行される。
【0021】
本発明の有利な一実施例では、次のステップを備える改良型の放射線治療計画手順を提案する。
a)解剖学的撮像情報を取得するステップ、
b)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の絶対的な程度を特定及び決定するステップ、
c)機能的撮像情報を取得するステップ、
d)ステップa)及びc)で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立するステップ、
e)ステップb)で取得した細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立するステップ。
【0022】
本発明の別の有利な実施例では、解剖学的及び/又は機能的撮像プロセスが、CT(Computed Tomography)、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、PET(Positron Emission Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、US(UltraSound)、OI(Optical Imaging)、TI(Thermal Imaging)又はX線、又はこれらの任意の組み合わせのグループから選択される。
【0023】
好ましくは、前記解剖学的撮像プロセスは、CT又はMRIである。
【0024】
解剖学的撮像で取得した情報は、変質細胞の局所化及び広がりに関する中間患者データの第1セットを与える。
【0025】
本発明の別の有利な実施例では、CT/PET、MRI/PET又はCT/MRI/PETといった集学的プロセスを使用して、より厳密な撮像情報を、例えば、変質組織内の腫瘍境界のより厳密な決定、又は増殖/転移の状況として取得する。本発明のより好ましい変形は、CT/18F-FDG-PET併用手順を介した集学的撮像プロセスである。本発明の一実施例では、解剖学的及び機能的撮像で取得したデータは、同時登録される。
【0026】
本発明の意味における表現「変質」又は「変質した」は、疾患の、腫瘍性の、癌の、悪性又は良性の腫瘍と同意語で使用される場合があり、それぞれが異常、すなわち正常又は健康の反対を意味する。
【0027】
本発明の意味における表現「細胞」は、生物学的活性を有し、かつ自然又は合成起源であるすべての物質を意味し、生体材料と同意語で使用される場合がある。これは、例えば、血液、血清、尿、髄液、リンパ液又は唾液といった体液、組織、組織培養、小器官又は臓器を備えるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明では、特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の絶対的な程度が、特定及び決定される。
【0029】
このステップは、本発明の意味において解剖学的撮像の前、途中又は後に実行される。
【0030】
本発明において、決定された細胞変質の絶対的な程度は、変質の絶対量を重み又は補正因子として相対的な変質を有するセグメント(領域、腫瘍体積)に適用することで、細胞変質の相対的な程度(機能的撮像、動的な機能的撮像、薬物動態分析、及び生物学的に関連するパラメータ、クラスタリング及び/又は補正に対応する相関、又はこれらの任意の組み合わせで取得される)を校正又は正規化する重要な利点を提供する。
【0031】
「マーカー」又は「バイオマーカー」は、同意語で使用される場合があり、本発明の意味において、特定の生物学的活性を有し、変質細胞の特殊な状況を生体内又は生体外で実証するのに適する、すべての自然に発生若しくは生成される、又は合成的に生成される材料を意味する。例えば、あらゆる種類の核酸(例えば、遺伝子、遺伝子フラグメント又は遺伝子突然変異)、タンパク質、ペプチド、抗体又は抗体フラグメント、及び生体外検査で分析可能なあらゆる材料がある。
【0032】
バイオマーカーは、疾患検出及びモニタリングの重要なツールである。これらは、所定時間における細胞の生理学的状況に対する特質として機能し、疾患のプロセス中に変化する可能性がある。例えば、遺伝子突然変異、遺伝子転写及び移行での変化、及びそれらのタンパク質生成物における変化、代謝転換したタンパク質又はペプチド、及びマルチマーカーパネルの形式でのこのようなバイオマーカーのあらゆる組み合わせが、疾患に対する特定のバイオマーカーとして潜在的に機能できる。
【0033】
本発明の意味において「生体外検査」は、細胞変質と相関する代謝産物を識別又は定量するための遺伝子及び/又はプロテオーム手法又は検査を含む。つまり、あらゆる種類の核酸を評価するか、又はアミノ酸及びそれらの変異体に依存するか、又は癌と相関する代謝産物に依存する検査である。
【0034】
生体外検査は、本発明の意味において、遺伝子又はタンパク質又は代謝産物のそれぞれの形態、機能及び相互作用を識別、定量又は解読するために利用する多数のプロセスとして理解される。
【0035】
多くの疾患は、タンパク質の機能不全又は欠乏により生じる。現在の臨床調査領域への当該生体内技術の適用は、診断にこのような技術を使用することを含み、これにより、非常に多くの遺伝子又はタンパク質における疾患発症又は進行の面での変化、又は生理学的条件でのその他変化を同時かつ総合的に検査できる。こりにより、早期診断を含む重要な臨床問題を解決するための優れたツールを提供する。
【0036】
したがって、タンパク質の機能不全又は欠乏に対応するバイオマーカーの生体外検査を使用する本発明の一利点は、疾患の早期かつ正確な診断、ステージング、及び再発(常習性)を早期に検出するための治療後のフォローアップである。
【0037】
本発明の他の有利な実施例の場合、ゲノム及び/又はプロテオーム手法、及び/又は癌特性の代謝産物を識別するための手法は、ハイスループットスクリーニング及び分析手順であり、それぞれが、例えば、バイオチップ上又はバイオセンサー装置の助けにより実現される。
【0038】
ゲノム技術の進歩によって、癌細胞でのみ発生し、健康な細胞では発生しない遺伝子発現における全体及び特定の変化に対する高速スクリーンが可能になっている。
【0039】
遺伝子発現におけるすべての変化が、タンパク質又は代謝機能のレベルで反映されるとは限らない。したがって、タンパク質ベースのアッセイ又はプロテオーム手法は、重要な補足的生体外検査である。
【0040】
本発明の他の実施例では、当該生体外検査は、例えば、遺伝子発現プロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、ゲル電気泳動、SAGE、PCR、逆転写酵素PCR、定量リアルタイムPCR、タンパク質アッセイ、ELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay)又はあらゆる種類の質量分析(MS)ベースの手法、又はこれらの任意の組み合わせを備える。
【0041】
当該手法は、クリーニング、分別、又はプローブ材料の濃縮の追加ステップのあり又はなしで使用してもよい。
【0042】
本発明のさらに有利な実施例では、この生体外検査は、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)又はSELDI(Surface Enhanced Laser Desorption Ionization)、好ましくはMALDI-ToF-MS又はSELDI-ToF-MSによるタンパク質/ペプチドの質量分析(MS)である。
【0043】
MALDI/SELDI-MSは、疾患を示すバイオマーカーを並列で分析的にアプローチする利点がある。
【0044】
これまでのところ、本発明の優れた一利点は、患者データの高速取得を可能にすることであり、その結果として、癌の早期診断のための大幅な時間短縮となる。これにより、以下に説明するように、治療手順の計画における後続ステップ、例えば、さらなる撮像手順のための特定性の高い造影剤の選択、又は放射線治療の線量又は化学療法の投与量の確立が、非常に速くかつより正確で具体的に実現できるので、患者を救うチャンスが非常に増える。
【0045】
本発明の別の有利な一変形は、低酸素症を示すCAP43タンパク質(又はこれに対応する同意語)が生体外検査によって決定される、改良型の放射線治療計画手順である。
【0046】
本発明のさらに別の有利な一変形は、低酸素症を示すCAP43タンパク質、その修飾、修飾中に生成される代謝産物、又はタンパク質及び/又は代謝産物の任意の組み合わせが生体外検査によって決定される、改良型の放射線治療計画手順である。
【0047】
本発明の意味において、次の表現が同意語で使用される場合がある。
CAP43、CMT4D、DRG1、HMSNL、Ndr1、NDRG1、NMSL、NDRG1(N-myc Downstream Regulated Gene 1)タンパク質、PROXY1、RTP、Tdd5又はTDD5
【0048】
NDRG1には少なくとも2つの変形が存在し、NDRG1_Human 42835 Da及びNDRG1_Mouse 43009 Daと呼ばれる。
【0049】
現在のところ、SELDI-MSを使用したバイオマーカーの検出が、意図する生物学的プローブ、例えば、血清のマーカー、の約30 pg/mlを超える範囲の感度で可能である。これらの列挙及び範囲は、本発明を例示するために使用されるものであり、限定するものではない。
【0050】
本発明の別の有利な実施例は、細胞変質の前記検出指標に特定のターゲットの造影剤を少なくとも1つ選択するステップを備える。
【0051】
本発明の優れた一利点は、本発明の生体外検査で取得したデータが、この選択を可能にすることである。
【0052】
これには、ターゲットの薬剤及び患者の医学的指標が一致するという重要な効果があり、より具体的かつ正確な機能的撮像をもたらす。
【0053】
非常に重要な一効果は、本発明の機能的撮像手順及びその結果としての全体的な治療計画手順の費用効率が大幅に増すことである。これは、非常に高額な特定性の高いターゲットの造影剤が、対応する指標が確定された場合にのみ使用されるからである。
【0054】
いくつかの腫瘍造影剤が、公知であり、例えば、腫瘍の低酸素症を測る18F-フルオロミソニダゾル(18F-FMISO)、細胞の増殖を測る18F-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン(18F-FLT)、コリンキナーゼ活性を測る11C-コリン、及びアミノ酸運搬速度を測る18F-フルオロエチルチロシン(18F-FET)がある。IAZA(Iodinated AZomycine Arabinocide)は、別の造影剤であり、特にSPECT用である。また、18F-FAZA(Fluorinated AZomycine Arabinocide)は、PET撮像用として公知である。
【0055】
本発明の有利な実施例では、機能的撮像プロセスは、PET又はSPECT、好ましくは18F-FMISO-PETである。
【0056】
18F-FMISOは、低酸素細胞で低減され(好気性細胞では低減されない)、低酸素細胞をターゲットとする有毒な生体還元性の生成物をもたらす。
【0057】
本発明の意味において「ターゲットの造影剤」は、ターゲットの造影コントラスト剤、又はターゲットの造影コントラスト剤及びターゲットの治療剤の組み合わせを意味する。造影コントラストを増し、かつ治療効果を提供する複合機能を有するターゲットの薬剤が、すでにいくつか業界で公知であるが、本発明はこの目的に限定されない。
【0058】
本発明の意味において「ターゲット」は、造影剤が特定のターゲットにトラップするか、又は蓄積する特定の機能を備えることを意味する。また、「ターゲット」は、造影剤が、特にその造影剤をそのターゲットに仕向ける機能、例えば、キー/ホール、基質/酵素、又は抗原/抗体の相互作用の介在、を備えることを意味する場合がある。さらなる相互作用ペア及びそれらのすべての組み合わせが、本発明に含められ、そして本発明の例示を意図するが、限定的ではない。
【0059】
本発明では、機能的撮像を使用して、領域の空間分布(本発明の意味において同意語として使用される、体積、部位、小部位)に関する様々な活性値を有する情報を取得する。本発明の有利な一変形では、取得データは、薬物動態分析、クラスタリング手法、及び/又は補正ステップそれぞれによって、さらに処理される。
【0060】
本治療計画手順の一実施例では、相対的な細胞変質が同様程度の領域(体積)(例えば、kα, ks, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションが、本発明の機能的及び/又は解剖学的撮像で取得した情報に従って確立される。
【0061】
放射線感受性に関してターゲット部位及びリスク細胞/臓器をより良く特性化するため、本発明の改良型の放射線治療計画手順では、機能的撮像データ上及び/又はすでに同時登録された解剖学的及び機能的撮像データ上で実行される生物学ベースのセグメンテーションステップ(モデリング及び/又はクラスタリングの後、オプションとして補正ステップが続く)を提供し、細胞変質が同様程度の領域をもたらす。
【0062】
本発明の意味において「生物学ベースのセグメンテーション」は、例えば、次のステップを備える。
【0063】
第1ステップにおいて、解剖学的及び機能的撮像情報が、取得され、かつオプションで同時登録される。この前、途中又は後で、撮像情報(動的に連続する機能的画像)の薬物動態分析/モデリングが実行され、生物学的に関連(相関)するパラメータのパラメータマップを生み出す。機能的撮像データだけでなく、解剖学的データも、生物学的に関連するパラメータ、例えば、腫瘍輪郭及び体積、に関する情報を含むため、取得した解剖学的データ、又は機能的撮像データ及び解剖学的撮像データの組み合わせ(同時登録)が、薬物動態分析を介してさらに処理でき、本発明の意味におけるパラメータマップをもたらす。当該パラメータマップのデータは、クラスタリング手法によってさらに処理され、オプションとして、データ補正のステップが続き、細胞変質が同様程度の領域(体積)の生物学ベースのセグメンテーションを生み出して、例えば、細胞、組織、腫瘍の同様の変質の理由から、放射線感受性の同様程度と一致する。
【0064】
細胞変質の同様程度を有するこれらの領域には、例えば、それぞれが弱、中及び強の細胞変質(例えば、腫瘍の悪性度)を表すkα, ks, kγがラベルされる。本発明の意味において、細胞変質なしから、弱、中、高を介して強細胞変質まで、すべての小範囲が含まれる。
【0065】
本発明の別の有利な実施例では、改良型の放射線治療計画手順には、取得した撮像情報のモデリング、クラスタリング、及び/又は補正のステップを備える。
【0066】
本発明の意味における「補正」は、形態学的フィルタ手法/操作を使用してもよい。
【0067】
本発明の一実施例は、患者データベースとの間で取り交わされる前記中間患者データの取得、記憶、転送、分析、グルーピング、組み合わせ、モデリング、クラスタリング、補正、最適化、適用及び/又は視覚化を管理するソフトウェアインプリメントのアルゴリズム及び/又はコンピュータプログラム及び/又は経験的相関によって実現できるモデリング、クラスタリング及び/又は補正の手順/手段の提供である。
【0068】
本発明の可能な一変形では、改良型治療計画の自動(コンピュータ制御及び/又はロボット制御)手順を示す。
【0069】
機能的撮像情報は、単一の画像又は画像のセットとして同一モダリティ又は異なるモダリティから提供できる。同一モダリティでは、画像が動的モードで取得でき、つまり、一連の画像がより長い時間撮影される。
【0070】
加えて、本発明の意味において、様々なターゲットの造影剤を組み合わせてもよい。
【0071】
本発明の一実施例では、撮像情報の薬物動態分析/モデリングが実行され、これにより、単一画像又は複数の画像からの関連する生物学的パラメータに関して意図するパラメータを抽出し、より良い特定性(例えば、腫瘍侵略性)及び感受性(例えば、放射線に対する)のパラメータマップをもたらす。
【0072】
例えば、機能的画像の時系列の薬物動態分析は、所定組織における造影剤の摂取、トラップ又はウオッシュアウトといった生理学的プロセスの速度定数の正確な定量化ができる。そして、区画モデリングを利用して、これらの速度定数を非線形回帰の導入により抽出する。
【0073】
その他の実施例では、活性マップといった機能的データが、標準摂取値に変換される。標準摂取値の使用は、患者体重及びその他の疾患に依存しないパラメータにあまり依存しないモデルを提供する。しかしながら、ある造影剤は、より巧妙なモデリング手法を必要とするため、標準摂取値の使用は、使用される造影剤に依存してしまう。
【0074】
本発明の別の実施例では、撮像された部位を、機能に依存する数の細胞変質が同様程度の小部位(領域、体積、例えば、kα, kβ, kγ)にクラスタリングするため、生物学ベースのセグメンテーションのモデリングステップが、パラメータマップと解剖学的データ(又は、例えば、同時登録の機能的及び解剖学的撮像データ)を組み合わせる。
【0075】
例えば、変質細胞(腫瘍)の輪郭は、解剖学的撮像データを使用し、かつこれらのデータをパラメータマップで取得したデータとクラスタリングすることで描かれる。1つ又は複数の調査部位は、細胞変質が同様程度の小部位(領域、体積)にセグメント化される。各小部位(領域、体積)は、同様の放射線感受性を有し、このため、放射線治療中に同様の放射線線量を必要とする、又は耐え得る。
【0076】
本発明の一実施例では、変質細胞のピクセルを変質が同様程度の領域(例えば、それぞれが、弱、中及び強の細胞変質を表すkα, kβ, kγをラベルされる)にクラスタリングするため、k平均分類子クラスタリング手法が、パラメータマップで実行できる。例えば、c平均分類子、ファジーc平均分類子又は教師なしベイジアン分類子といった他のクラスタリング手法も適用でき、これらは、当業者には周知である。
【0077】
小部位(領域、体積)の総数は、パラメータマップの雑音量及びパラメータ範囲に依存する。これは、クラス代表強度の差

が、最小で雑音

よりも5倍大きければ、雑音環境において2つのクラスが概ね判別できるためである。これは、雑音背景での均一オブジェクトの信頼性のある検出に対する同様の基準を提示する画像検出のモデルに基づき、つまり、信号差と雑音の比が5以上であること、すなわち、次の数式で表される。
【数1】

【0078】
結果的に、領域の数は、次の数式に従って決定できる。
【数2】

【0079】
ここで、

及び

は、それぞれがターゲット体積の最大及び最小のパラメータ値であり、

は、パラメータマップの雑音を表す標準偏差、及び

は、数1による5以上の値を有する定数である。

は、システムを最適化するため、実験的に決定できることを、理解すべきである。
【0080】
すなわち、この生物学ベースのセグメンテーションは、本発明の意味においてリスクのあるターゲット体積及びセルに亘る相対的な放射線感受性の分布を表す。
【0081】
本発明の別の変形では、改良型の放射線治療計画手順、特に生物学ベースのセグメンテーションは、オプションとして、補正ステップを含んでもよい。
【0082】
クラスタの補正は、誤ってクラスタリングされたドメインを補正するための形態学的フィルタ手法、形態学的操作及び専門家知識といった高度な画像処理ツールを通じて、事前知識を組み込む。クラスタ寸法を既定のパーセントで低減するため、補正は、自動(コンピュータ制御及び/又はロボット制御)又は反自動で行うことができるか、又はグラフィックユーザーインタフェースを介して医師により手動で行うことができる。
【0083】
本発明において、生体外検査で取得した情報による細胞変質の絶対的な程度を、生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、これにより、改良型の放射線治療計画手順を確立する。
【0084】
ここで、マーカーの生体外検査パターンプロファイリングのデータは、バイオインフォーマティクス及び撮像データと組み合わされる。これにより、フィリップスメディカルシステムズによって製造されるPINNACLETM放射線治療計画装置が使用できる。
【0085】
本発明の別の有利な実施例では、細胞変質の絶対的及び相対的な程度の集積が、次の数式によって管理される。
【数3】

ただし、

が仮定され、
かつ、ここで

= 細胞変質の絶対的な程度
D = 決定された生物学的パラメータによって処方される放射線の絶対的な線量
D0 = 標準プロトコルによる放射線の線量

= 絶対的な細胞変質と相関される放射線の線量
k, kα, kγ = 相対的な細胞変質が同様程度である領域
【0086】
本発明の好ましい一実施例は、次のステップを備える改良型の放射線治療計画手順を通じて与えられる。
a)CTにおいて解剖学的撮像情報を取得するステップ、
b)低酸素症を示すCAP43タンパク質、その修飾、修飾中に生成される代謝産物、又はタンパク質及び/又は代謝産物の任意の組み合わせが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の前記絶対的な程度が、特定及び決定されるステップ、
c)ターゲットの造影剤として18F-FMISOを選択するステップ、
d)18F-FMISO-PETにおいて機能的撮像情報を取得するステップ、
e)ステップa)及びd)で取得した情報に従って相対的な低酸素症の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立するステップ、
f)ステップb)で取得した情報による低酸素症の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立するステップ。
【0087】
本発明の別の有利な実施例では、取得した情報のモデリング、クラスタリング及び/又は補正のステップが、細胞変質の絶対的及び相対的な値の生体外検査、機能的撮像、セグメンテーション及び適用のステップそれぞれ(ステップb)、c)、d)、e)及びf))の前、途中及び/又は後に実行される。
【0088】
当該モデリング、クラスタリング及び/又は補正は、患者データベースとの間で取り交わされる中間患者データの取得、記憶、転送、分析、グルーピング、組み合わせ、モデリング、クラスタリング、補正、最適化、適用及び/又は視覚化を管理するソフトウェアインプリメントのアルゴリズム及び/又はコンピュータプログラム及び/又は経験的相関の提供によって実現できる。
【0089】
本発明の可能な一変形では、改良型治療計画の自動(コンピュータ制御及び/又はロボット制御)手順を示す。
【0090】
本発明は、さらに次を備える放射線治療手順の改良型計画のためのシステムを提案する。
a)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の絶対的な程度を特定及び決定する手段、
b)機能的及び/又は解剖学的撮像で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立する手段、
c)生体外検査で取得した細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立する手段。
【0091】
本発明の別の有利な変形は、次を備える放射線治療手順の改良型計画のためのシステムを提案する。
a)解剖学的撮像情報を取得する手段、
b)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の絶対的な程度を特定及び決定する手段、
c)機能的撮像情報を取得する手段、
d)ステップa)及びc)で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立する手段、
e)ステップb)で取得した情報による細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立する手段。
【0092】
本発明の有利な一実施例では、放射線治療手順の改良型計画のためのシステムが、細胞変質の前記検出指標に特定のターゲットの造影剤を少なくとも1つ選択する手段をさらに備える。
【0093】
本発明の別の有利な実施例では、このシステムが、ステップa)〜ステップe)の何れかで取得した情報のモデリング、クラスタリング及び/又は補正の手段をさらに備える。
【0094】
当該モデリング、クラスタリング及び/又は補正は、患者データベースとの間で取り交わされる中間患者データの取得、記憶、転送、分析、グルーピング、組み合わせ、モデリング、クラスタリング、補正、最適化、適用及び/又は視覚化を管理するソフトウェアインプリメントのアルゴリズム又はコンピュータプログラム又は経験的相関によって実現できる。
【0095】
本発明の可能な一変形では、改良型治療計画の自動(コンピュータ制御及び/又はロボット制御)手順を示す。
【0096】
本発明の別の有利な実施例では、細胞変質の絶対的及び相対的な程度の集積が、次の数式によって作用する手段により管理される。
【数4】

ただし、

が仮定され、
かつ、ここで

= 細胞変質の絶対的な程度
D = 決定された生物学的パラメータによって処方される放射線の絶対的な線量
D0 = 標準プロトコルによる放射線の線量

= 絶対的な細胞変質と相関される放射線の線量
k, kα, kγ = 相対的な細胞変質が同様程度である領域
【0097】
本発明のさらに別の有利な実施例では、機能的及び/又は解剖学的撮像の手段が、CT(Computed Tomography)、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、PET(Positron Emission Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、US(UltraSound)、OI(Optical Imaging)、TI(Thermal Imaging)又はX線、又はこれらの任意の組み合わせを実現する手段を備える。
【0098】
本発明の別の有利な実施例では、解剖学的撮像の手段は、CT又はMRIである。
【0099】
本発明の別の有利な実施例では、CT/PET、MRI/PET又はCT/MRI/PETといった集学的プロセスの手段を使用して、より厳密な解剖学的撮像情報を、例えば、変質組織内の腫瘍境界のより厳密な決定又は転移の状況として取得する。本発明のより好ましい変形は、CT/18F-FDG-PET併用手順の手段を介した解剖学的撮像である。
【0100】
本発明の有利な一実施例では、機能的撮像情報を取得する手段が、PET又はSPECTである。
【0101】
本発明のさらに別の有利な実施例では、機能的撮像情報を取得する手段が、18F-FMISO-PETである。
【0102】
本発明の有利な変形は、生体外検査、例えば、遺伝子及び/又はプロテオーム検査の手段が、遺伝子発現プロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、ゲル電気泳動、SAGE、PCR、逆転写酵素PCR、定量リアルタイムPCR、タンパク質アッセイ、ELISA又はあらゆる種類の質量分析(MS)ベースの手法、又はこれらの任意の組み合わせを備える。当該手段は、クリーニング、分別、又は生体材料若しくはバイオマーカーの濃縮の(追加)手段のあり又はなしで使用してもよい。
【0103】
本発明の別の有利な実施例では、生体外検査の手段は、タンパク質/ペプチド質量分析(MS)、例えば、MALDI又はSELDI、又は任意のその他のMS手法による。より好ましくは、MALDI-ToF-MS又はSELDI-ToF-MSの手段である。
【0104】
本発明の他の有利な実施例では、生体外検査の手段は、ハイスループットスクリーニング及び分析の手段であり、それぞれが、例えば、バイオチップ上又はバイオセンサー装置の助けにより実現される。
【0105】
本発明の有利な一変形では、生体外検査の手段が、低酸素症を示すCAP43タンパク質、その修飾、修飾中に生成される代謝産物、又はタンパク質及び/又は代謝産物の任意の組み合わせを検出する。
【0106】
本発明の別の有利な発展は、癌の診断及び/又は治療管理の自動手順に使用するシステムである。
【0107】
本発明の重要な一利点は、生体外検査を介する細胞変質のフェノタイプの特定である。
【0108】
このため、決定された医学的指標に対して特定性の高い造影剤の特定の選択が可能になり、これにより、機能的撮像の質を増すことになる。
【0109】
これは、変質の絶対的な程度及び空間分布のより正確な決定をもたらす。
【0110】
加えて、これは、治療計画の手順をより費用効率化及び時間効率化するので、極めて重要であり、かつ患者利益のために有利である。
【0111】
さらに、本発明の最も重要な一利点は、生体外検査による細胞変質の絶対的な程度の決定である。
【0112】
これについては、現在まで、患者に処方される放射線の線量又は化学療法の投与量が、見識及び経験といった相対的に曖昧な因子で推定されているため、極めて重要である。
【0113】
ここでは、変質の測定値を使用して、機能的撮像の相対的な情報を校正又は正規化する。
【0114】
言い換えれば、細胞変質の絶対的な程度を、多かれ少なかれ侵略性のある腫瘍細胞タイプの空間分布の関数として相対的な変質値のマップに適用することが、本発明の利点である。
【0115】
また、放射線の線量が、患者の個々の腫瘍状況(例えば、程度、広がり、侵略性、増殖及び転移の予後、並びに常習性のそれぞれ)に適合できることが、本発明の利点である。
【0116】
多くの場合、放射線及び化学療法は、複雑な治療プロトコルにおいて組み合わされ、かつ相関されているので、放射線治療が最適化され、好ましくは、放射線の利用が大幅に減少されると、化学療法計画手順もまた、それに応じて適合され、かつ最適化される可能性がある。
【0117】
その結果、本発明は、改良型の治療計画プロトコル及び対応する手順の確立を可能にする。本発明の多次元的なデータ取得は、改良型及び好ましくは自動での診断及び治療アプローチの計画手順を、腫瘍管理における迅速性、費用効率、感受性、特定性及び適中率の観点で実現する。
【0118】
すべてを合わせて、本発明は、腫瘍癌患者の負担を低減し、かつ利益を増やす重要な機会を提供する。
【0119】
本発明は、1つ以上の好ましい実施例を参照して説明されている。明らかではあるが、本明細書を読解した際には、変更及び変形が発生する。添付の特許請求項又はそれと等価の範囲内に由来する限りにおいて、このような変更及び変形が、本発明に含まれることを意図する。
【0120】
当業者は、以下の実施例が、本発明を限定するものでなく、本発明の原理を組み込む例を単に提供するものであることを認識すべきである。
【0121】
以下の例は、手術不可能な非小細胞肺癌に関する。
1.胸郭のCT(標準胸部プロトコル90mA及び120kVp)を使用した解剖学的撮像情報の取得:3D CTデータセット
2.血清試料でのCAP43タンパク質(人体での低酸素症タンパク質NDRG1を代表する42835 Da)濃度の定量化:G cell degeneracy.
【0122】
ステップ1:試料希釈
・96ウェルプレートに、100mMナトリウム-リン酸緩衝液(pH 7.0)を288μL加える。
・100mMナトリウム-リン酸緩衝液(pH 7.0)を含むプレートに、患者血清試料を12μL加える(1:25希釈)。
・室温にて混合及び15分間培養する。
【0123】
ステップ2:チップ前処理
・各チップスポット(例えば、Ciphergen Q10チップ(強アニオン交換)、サイファージェンバイオシステムズ社、米国)に、100mMナトリウム-リン酸緩衝液(pH 7.0)を100μL加える。
・5分間培養する。
・液体を除去する。
・前処理を一度繰り返す。
【0124】
ステップ3:チップでの試料培養
・各チップスポットに、希釈した試料を25μL加える。
・室温にて振動を加えて30分間培養する。
【0125】
ステップ4:チップ洗浄
・チップ緩衝液洗浄3回:緩衝液(100mMナトリウム-リン酸緩衝液pH 7.0)を100μL加えて、手早く混合し、除去する。
・チップ水洗浄2回:水(ミリポア又はミリQ程度の水)を150μL加えて、手早く混合し、除去する。
・チップ空気乾燥15分又は乾くまで。
【0126】
ステップ5:マトリックス添加
・各チップスポットに、MSマトリックス溶液(50%アセトニトリル/水、0.5%TFA(トリフルオロ酸)、SPA(シナピン酸)(10mg/ml))を1μL加え、そして15分間乾燥する。
・各チップスポットに、MSマトリックス溶液(50%アセトニトリル/水、0.5%TFA、SPA(10mg/ml))を1μL加え、そして15分間乾燥する。
・チップをSELDI ToF質量分析計に配置する。
【0127】
ステップ6:分析及びMSスペクトルの記録
・人体での低酸素症タンパク質NDRG1を代表する42835 Daでピークを識別する。
・ピーク高及び/又はピーク領域を、様々なレベルの低酸素症に対するNDRG1濃度を代表する校正曲線と比較して、低酸素症の存在及び程度を決定する。
【0128】
細胞変質の絶対的な程度が、その腫瘍が非低酸素であることを示す場合、標準治療プロトコルが取られ、例えば、D0 = 60Gy(2Gy/フラクション、週5日を6週間、「Clinical practice guidelines for the treatment of unresectable non-small-cell lung cancer」(米国臨床腫瘍学会)(J Clin Oncol. 1997;15:2996−3018)を腫瘍質量に亘って均一に使用する。
【0129】
細胞変質の絶対的な程度が、腫瘍における低酸素症の存在を示す場合、以下のステップを実行する。
【0130】
3.以下の取得プロトコルを使用して、4時間掛けて取得される33フレームを含む、動的に連続する18F-FMISO-PET画像を胸郭から取得する:
【0131】
トレーサー注入直後に開始されて0〜15分までに31コマの動的フレーム(12×10秒、8×15秒、11×1分のフレーム)、並びに注入後2時間及び4時間での2コマの後期静的スキャン。
【0132】
後期静的スキャンの平均集積時間は、前のものが5分、及び後のものが10分であり、個々の時間は、患者体重でわずかに変化する。合計活量350〜450MBq 18F-FMISO(患者体重に応じて)が、自動化ボーラス注入手法(「Prognostic impact of hypoxia imaging with 18F-misonidazole PET in non-small cell lung cancer and head and neck cancer before radiotherapy」(Eschmann SM、Paulsen F、Reimold M ら)(J Nucl Med. Feb;46(2):253−60, 2005))で12分以内に静脈注射される。
4a.機能的撮像で取得された情報により、18F-FMISO画像の薬物動態分析が実行されて、低酸素症のパラメータマップを確立する。
18F-FMISO画像シーケンスの薬物動態分析は、Casciariモデル(「A modeling approach for quantifying tumour hypoxia with [F-18]fluoromisonidazole PET time-activity data」(J. J. Casciari、M. M. Graham、J. S. Rasey)(Med Phys, 22(7):1127-39, July 1995))を使用して実行される。
【0133】
代謝された18F-FMISOのトラップ速度を説明するパラメータは、酸素分圧(酸素飽和度)と線形相関すると仮定される。この相関は、18F-FMISO画像の解像度に一致する個々のピクセルの酸素分圧を特定するパラメータマップを生み出す。関連するパラメータは、

(Casciariの命名を使用)であり、ここで値0は、低酸素症なしを意味する。
【0134】
4b.領域、

及び

の生物学ベースのセグメンテーションを確立し、ここでは、パラメータマップの情報が、クラスタリング手法に適用される。すなわち、パラメータマップの調節された機能的データは、解剖学的撮像(CT)で取得したデータと組み合わせられる。ここで、腫瘍の輪郭が、CT画像データを使用して描かれる。確立したパラメータマップの機能的データのクラスタリングを通じて、当該腫瘍部位は、低、中及び高の低酸素症を有し、それぞれが

及び

と命名されるクラスタの重心によって表される小部位(領域)にセグメンテーションされる。
・腫瘍ピクセルを、細胞変質が相対的な程度を有する小部位にクラスタリングするには、k平均分類子クラスタリング手法を使用する。
【0135】
クラスタリングは、ターゲット部位及びリスク臓器のボクセルの解剖学的位置と、機能的撮像データ(パラメータマップ)との、同様な放射線感受性のある小部位(領域)への同時登録に基づく。小部位(領域)の総数は、パラメータマップの雑音量及びパラメータ範囲に依存する。これは、小部位代表強度の差が、最小で雑音よりも5倍大きければ、雑音環境において2つの小部位が概ね判別できるためである。これは、雑音背景での均一オブジェクトの信頼性のある検出に対する同様の基準を提示する画像検出のモデルに基づき、つまり、信号差

と雑音

の比が5以上であること、すなわち、次の数式で表される。
【数5】

【0136】
結果的に、領域の数は、次に数式に従って決定できる。
【数6】

【0137】
ここで、

及び

は、それぞれがターゲット体積の最大及び最小のパラメータ値であり、

は、パラメータマップの雑音を表す標準偏差、及び

は、数1による5以上の値を有する定数である。

は、システムを最適化するため、実験的に決定できることを、理解すべきである。
・当該クラスタリングは、腫瘍に亘る腫瘍低酸素症の相対的な尺度によって、腫瘍部位のセグメンテーションを生み出し、次の線量処方をもたらす。
【数7】

ただし、

が仮定され、
かつ、ここで

= 細胞変質の絶対的な程度
D = 決定された生物学的パラメータによって処方される放射線の絶対的な線量D0 = 標準プロトコルによる放射線の線量

= 絶対的な細胞変質と相関される放射線の線量
k, kα, kγ = 相対的な細胞変質が同様程度である領域
【0138】
5.絶対的な低酸素症の程度(生体外検査、項目2)を生物学ベースのセグメンテーションデータに適用し、これにより、同様(程度)の疾患を有する患者の人口(患者データベースによる)が、ブースト線量
【数8】

を受け、かつクラスタの重心は、
【数9】

及び
【数10】

であることを相関し、領域α、β及びγに対して以下の線量記述が推奨される。
【数11】

を有する弱の低酸素症領域は、標準線量
【数12】

を受ける。
【数13】

を有する中の低酸素症領域は、わずかに高い線量
【数14】

を受ける。
【0139】
そして、γでラベルされる強の低酸素症領域については、その処方される線量は、
【数15】

である。
【0140】
6.患者の腫瘍の決定した領域α、β及びγに、標準マルチリーフコリメータを使用して、当該放射線線量を投与する。(「Intensity-modulated radiation therapy」(S. Webb)(Institute of Physics Publishing Ltd 2001))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の絶対的な程度を特定及び決定するステップと、
b)機能的撮像及び/又は解剖学的撮像で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立するステップと、
c)細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立するステップと、
を備える、改良型の放射線治療計画手順。
【請求項2】
細胞変質の絶対的及び相対的な程度の集積が、
次の数式
【数1】

ただし、

が仮定され、
かつ、ここで

= 細胞変質の絶対的な程度
D = 決定された生物学的パラメータによって処方される放射線の絶対的な線量
D0 = 標準プロトコルによる放射線の線量

= 絶対的な細胞変質と相関される放射線の線量
k, kα, kγ = 相対的な細胞変質が同様程度である領域
によって管理される、請求項1に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項3】
細胞変質の前記検出指標に特定のターゲットの造影剤を少なくとも1つ選択するステップを備える、
請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項4】
患者データベースとの間で取り交わされる前記中間患者データの取得、記憶、転送、分析、グルーピング、組み合わせ、モデリング、クラスタリング、補正、最適化、適用及び/又は視覚化を管理するソフトウェアインプリメントのアルゴリズム及び/又はコンピュータプログラム及び/又は経験的相関によって実現できるモデリング、クラスタリング及び/又は補正の手順の提供を備える、
請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項5】
改良型治療計画の自動(コンピュータ制御及び/又はロボット制御)手順の提供を備える、
請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項6】
d)解剖学的撮像情報を取得するステップと、
e)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の前記絶対的な程度を特定及び決定するステップと、
f)示された細胞変質の空間分布及び相対的な程度に関する機能的撮像情報を取得するステップと、
g)ステップa)及びc)で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立するステップと、
h)ステップb)で取得した情報による細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立するステップと、
を備える、請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項7】
前記解剖学的撮像プロセスが、
CT又はMRIである、
請求項6に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項8】
ステップb)の前記生体外検査が、
遺伝子発現プロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、ゲル電気泳動、SAGE、PCR、逆転写酵素PCR、定量リアルタイムPCR、タンパク質アッセイ、ELISA又はあらゆる種類の質量分析(MS)ベースの手法、又はこれらの任意の組み合わせを備える、遺伝子及び/又はプロテオーム検査、並びに/又は癌に対応する代謝産物を識別及び/又は定量化するための手法である、
請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項9】
前記生体外検査が、
MALDI-ToF又はSELDI-ToFによるタンパク質/ペプチドの質量分析(MS)である、
請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項10】
低酸素症を示すCAP43タンパク質、その修飾、修飾中に生成される代謝産物、又はタンパク質及び/又は代謝産物の任意の組み合わせが、生体外検査によって決定される、
請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項11】
前記機能的撮像プロセスが、
18F-FMISO-PETである、
請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項12】
i)CTにおいて解剖学的撮像情報を取得するステップと、
i.低酸素症を示すCAP43タンパク質、その修飾、修飾中に生成される代謝産物、又はタンパク質及び/又は代謝産物の任意の組み合わせが検出及び定量化される生体外検査によって、細胞変質の前記絶対的な程度が、特定及び決定されるステップと、
j)ターゲットの造影剤として18F-FMISOを選択するステップと、
k)18F-FMISO-PETにおいて、示された細胞変質の空間分布及び相対的な程度に関する機能的撮像情報を取得するステップと、
l)ステップa)及びd)で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立するステップと、
m)ステップb)で取得した情報による細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立するステップと、
を備える、請求項1又は請求項2に記載の改良型の放射線治療計画手順。
【請求項13】
n)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査において、細胞変質の前記絶対的な程度を特定及び決定する手段と、
o)機能的及び/又は解剖学的撮像で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立する手段と、
p)細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立する手段と、
を備える、放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項14】
細胞変質の絶対的及び相対的な程度の集積が、
次の数式
【数2】

ただし、

が仮定され、
かつ、ここで

= 細胞変質の絶対的な程度
D = 決定された生物学的パラメータによって処方される放射線の絶対的な線量
D0 = 標準プロトコルによる放射線の線量

= 絶対的な細胞変質と相関される放射線の線量
k, kα, kγ = 相対的な細胞変質が同様程度である領域
によって作用する手段により管理される、
請求項13に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項15】
細胞変質の前記検出指標に特定のターゲットの造影剤を少なくとも1つ選択する手段をさらに備える、
請求項13に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項16】
患者データベースとの間で取り交わされる前記中間患者データの取得、記憶、転送、分析、グルーピング、組み合わせ、モデリング、クラスタリング、補正、最適化、適用及び/又は視覚化を管理するソフトウェアインプリメントのアルゴリズム及び/又はコンピュータプログラム及び/又は経験的相関によって実現できるモデリング、クラスタリング及び/又は補正の手順を備える、
請求項13又は請求項14に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項17】
自動(コンピュータ制御及び/又はロボット制御)治療計画の手段を備える、
請求項13又は請求項14に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項18】
q)解剖学的撮像情報を取得する手段と、
r)特定の細胞変質を示すマーカーが検出及び定量化される生体外検査において、細胞変質の前記絶対的な程度を特定及び決定する手段と、
s)機能的撮像情報を取得する手段と、
t)ステップa)及びc)で取得した情報に従って相対的な細胞変質の同様程度を有する領域(kα, kβ, kγ)の生物学ベースのセグメンテーションを確立する手段と、
u)ステップb)で取得した情報による細胞変質の前記絶対的な程度を、前記生物学ベースのセグメンテーションデータに適用して、改良型の放射線治療計画手順を確立する手段と、
を備える、請求項13又は請求項14に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項19】
解剖学的撮像の手段が、
CT又はMRIである、
請求項18に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項20】
生体外検査の手段が、
遺伝子発現プロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、ゲル電気泳動、SAGE、PCR、逆転写酵素PCR、定量リアルタイムPCR、タンパク質アッセイ、ELISA又はあらゆる種類の質量分析(MS)ベースの手法、又はこれらの任意の組み合わせを備える、遺伝子及び/又はプロテオーム手法、並びに/又は癌に対応する代謝産物を識別及び/又は定量化するための手法である、
請求項13又は請求項14に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項21】
生体外検査の手段が、
MALDI-ToF又はSELDI-ToFによるタンパク質/ペプチドの質量分析(MS)である、
請求項13又は請求項14に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項22】
生体外検査の手段が、
低酸素症を示すCAP43タンパク質、その修飾、修飾中に生成される代謝産物、又はタンパク質及び/又は代謝産物の任意の組み合わせを検出する、
請求項13又は請求項14に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項23】
機能的撮像情報の取得手段が、
18F-FMISO-PETである、
請求項13又は請求項14に記載の放射線治療手順の改良型計画のためのシステム。
【請求項24】
癌の診断及び/又は治療管理の手順で使用するための、請求項13又は請求項14に記載のシステム。

【公表番号】特表2009−525114(P2009−525114A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552925(P2008−552925)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050204
【国際公開番号】WO2007/088492
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】