説明

改良型コントラスト感度を提供する高性能選択型光波長フィルタリング

本発明は、改良型コントラスト感度を提供する選択型光波長フィルタを備えたオフサルミックシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良型コントラスト感度を提供する高性能選択型光波長フィルタリングに関わる。
【背景技術】
【0002】
地球の大気は、太陽からの電磁放射を常に浴びている。光は、波の中を移動する電磁放射から構築されている。電磁スペクトルには、電波、ミリメートル波、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線(UVAおよびUVB)、x−線およびガンマ線が含まれている。可視光スペクトルには、約700nmの最も長い可視光波長および約400nmの最も短い可視光波長が含まれている(nmはナノメートルつまり10−9メートル)。青色光波長は、400nmないし500nmの近似範囲の中に含まれている。紫外線帯域の場合、UVB波長は290nmから320nmまでであり、また、UVA波長は320nmから400nmまでである。ガンマ線およびx−線は、このスペクトルのより高い周波数を構築しており、大気によって吸収される。紫外線放射(UVR)の波長スペクトルは100〜400nmである。UVR波長は、成層圏オゾン破壊領域を除き、そのほとんどが大気によって吸収される。過去20年にわたり、主として産業汚染によるオゾン層の破壊が文書で証明されてきた。UVRによる眼病患者および皮膚病患者の増加が予想されるため、UVRへの露光の増加は、広範囲にわたる公衆衛生に密接に関係している。
【0003】
オゾン層は、最大286nmまでの波長を吸収し、したがって最もエネルギーの大きい放射線への露光から生命を保護している。しかしながら、我々は、286nmより長い波長に露光されており、そのほとんどは人間の可視スペクトル(400〜700nm)の範囲内である。人間の網膜が反応するのは、電磁スペクトルの可視光部分のみである。より短い波長は、波長に反比例してより多くのエネルギーを含んでいるため、波長が短くなるほど危険が最大になる。青色光は、可視スペクトルのうち、動物の網膜色素上皮(RPE)細胞に対する光化学損傷のほとんどをもたらす部分であるとされている。これらの波長への露光は、人間の眼にはこれらの波長が青色として知覚されるため、青色光ハザードと呼ばれている。
【0004】
白内障および黄斑変性は、一般に、それぞれ眼内レンズおよび網膜に対する光化学的損傷によるものと考えられている。また、青色光露光は、ブドウ膜黒色腫細胞の増殖を加速するとされている。可視スペクトルにおける活発な光子のほとんどは、380nmと500nmの間の波長を有しており、青紫色または青色として知覚される。すべての機構にわたって総和される光毒性の波長依存性は、例えばMainster and Sparrow、「How Much Blue Light Should an IOL Transmit?」Br.J.Ophthalmol.、2003年、v.87、1523〜29頁および図6(非特許文献1)に記載されているように、作用スペクトルとしてしばしば表現されている。眼内レンズのない眼(無水晶体眼)の場合、400nmより短い波長の光は損傷の原因になることがある。有水晶体眼の場合、この光は眼内レンズによって吸収され、したがって網膜の光毒性には寄与しない。しかしながら、この光は、レンズの光学的な劣化または白内障の原因になることがある。
【0005】
眼の瞳孔は、入射束と網膜および瞳孔の投影面積の波長依存感度の積であるトロランド単位の明所視網膜照度に反応する。この感度は、Wyszecki and Stiles、Color Science:Concepts and Methods,Quantitative Data and Formulae(Wiley:New York)1982年、特に102〜107頁(非特許文献2)に記載されている。
【0006】
現在の研究は、約400nm〜500nmの波長を有する短波長可視光(青色光)は、AMD(加齢に伴う黄斑変性)の原因になり得る、という前提命題を強力にサポートしている。レベルが最も高い青色光吸収は、400nm〜460nmなどの約430nmの近辺の領域で生じるとされている。また、研究によれば、青色光は、AMDの原因となり得る、遺伝、たばこの煙および過度のアルコール消費などの他の要因をより悪化させている。
【0007】
人間の網膜には複数の層が含まれている。以下は、眼に入射するあらゆる光に最初に露光される層から最も深い層の順にこれらの層を列記したものである。
1)神経線維層
2)神経節細胞
3)内部叢状層
4)双極細胞および水平細胞
5)外部叢状層
6)光受容体(桿状体および錐状体)
7)網膜色素上皮(RPE)
8)ブルック膜
9)脈絡膜
【0008】
光が眼の光受容体細胞(桿状体および錐状体)によって吸収されると、細胞が退色し、それらが回復するまで非受容性になる。この回復過程は代謝性過程であり、「視覚サイクル」と呼ばれている。青色光の吸収は、この過程とは時期尚早の逆の過程とされている。この時期尚早の逆転によって酸化的損傷の危険が増し、網膜中における色素脂褐素の沈着を招くと考えられている。この沈着は、網膜色素上皮(RPE)層に生じる。結晶腔と呼ばれている余分の細胞物質の集合の形成は、過剰な量の脂褐素によるものと考えられている。
【0009】
現在の研究は、光と網膜の相互作用のため、乳児から始まる個人の生涯にわたって、代謝性廃棄副産物が網膜の色素上皮層内に蓄積することを示している。この代謝性廃棄生成物は、特定の蛍光団を特徴としており、最も際立っているものの1つは脂褐素成分A2Eである。Sparrowのインビトロ研究は、RPE中で見出される脂褐素発色団A2Eは、430nmの光によって最大限に励起されることを示している。この代謝性廃棄物(詳細には脂褐素蛍光団)の蓄積の組合せが特定の蓄積レベルを達成すると傾斜点に到達し、人間が特定の年齢閾値に到達すると、この廃棄物の網膜内で代謝する身体の生理的能力が衰え、適当な波長の青色光刺激によって結晶腔がRPE層中に形成されることになることは理論化されている。これらの結晶腔は、さらに、適切な栄養素を光受容体に取り込み、それにより加齢に伴う黄斑変性(AMD)に対する寄与を可能にする通常の生理学/代謝性活動度を妨害していると考えられている。AMDは、米国および西洋では、不可逆的な重大な視力低下の第1の原因になっている。AMDの患者は、人口の計画シフトおよび高齢者の数の総合的な増加のため、次の20年で劇的に増加するものと思われる。
【0010】
結晶腔は、RPE層が適切な栄養素を光受容体に提供するのを妨害または阻止しており、したがってこれらの細胞が損傷し、さらには死滅する原因になっている。この過程をさらに複雑にするために、脂褐素は、大量の青色光を吸収すると、毒性を帯びるようになり、RPE細胞をさらに損傷および/または死滅させる原因になるように思われる。脂褐素成分A2Eは、少なくとも部分的にRPE細胞の短波長感度に寄与していると考えられている。A2Eは、青色光によって最大限に励起されるようであり、このような励起によって生じる光化学的な事象によって細胞が死滅することがある。例えば、Janet R.Sparrow et al.、「Blue light−absorbing intraocular lens and retinal pigment epithelium protection in vitro」J.Cataract Refract.Surg.2004年、第30版、873〜78頁(非特許文献3)を参照されたい。
【0011】
理論的な観点から以下の事柄が生じるものと思われる。
1)乳児期から始まって生涯を通して色素上皮レベル内に廃棄物が蓄積する。
2)網膜の代謝性活動度およびこの廃棄物を処理する能力は、通常、年齢と共に衰える。
3)黄斑色素は、通常、年齢と共に減少し、したがってフィルタ除去される青色光が減少する。
4)青色光は脂褐素を毒性にする。したがってその毒性によって色素上皮細胞が損傷する。
【0012】
照明産業および視覚治療産業は、UVA放射およびUVB放射への人間の視覚露光に関する規格を有している。驚くべきことには、青色光に関するこのような規格、きちんとしたものが用意されていない。例えば、今日、広く入手することができる蛍光管の場合、ガラスエンベロープは主として紫外光を遮断しているが、青色光は、ほとんど減衰することなく透過する。場合によっては、エンベロープは、スペクトルの青色領域における透過が改善されるように設計されている。このような人工の光源ハザードも、同じく眼を損傷する原因になることがある。
【0013】
Columbia大学でのSparrowによる実験室の証拠は、430±30nmの波長範囲内の青色光の約50%が遮断されると、青色光によって死滅するRPE細胞を最大80%減少させることができることを示している。眼の健康を改善するための試行では、サングラス、めがね、ゴーグルおよびコンタクトレンズなどの青色光を遮断する外部アイウェアが、例えばPrattの米国特許第6,955,430号明細書(特許文献1)に開示されている。その目的がこの光毒性の光から網膜を保護することである他のオフサルミックデバイスには、眼内レンズおよびコンタクトレンズがある。これらのオフサルミックデバイスは、環境光と網膜の間の光路内に配置され、通常、青色光および青紫色光を選択的に吸収する染料が含まれているか、あるいはコーティングされている。
【0014】
青色光を遮断することによって色収差の減少を試行する他のレンズが知られている。色収差は、角膜、眼内レンズ、房水および硝子体液を含む接眼レンズ媒体の光分散によって生じる。この分散により、波長がより長い光とは異なる像平面に青色光が集束し、全色画像の焦点が外れる原因になっている。Patel等の米国特許第6,158,862号明細書(特許文献2)、Jinkersonの米国特許第5,662,707号明細書(特許文献3)、Johansenの米国特許第5,400,175号明細書(特許文献4)およびJohansenの米国特許第4,878,748号明細書(特許文献5)に、従来の青色遮断レンズが記載されている。
【0015】
接眼レンズ媒体の青色光露光を抑制するための従来の方法は、一般に、閾値波長未満の光を完全に遮断し、かつ、より長い波長の光露光を抑制している。例えば、Prattの米国特許第6,955,430号明細書(特許文献1)に記載されているレンズは、Prattの第’430号特許(特許文献1)の図6に示されているように、650nmの長さの波長の入射光の40%未満を透過する。同様に、JohansenおよびDiffendafferによって米国特許第5,400,175号明細書(特許文献4)に開示されている青色光遮断レンズも、第’175号特許(特許文献4)の図3に示されているように、可視スペクトル全体を通して光を60%を超えて減衰させている。
【0016】
青色光を遮断および/または禁止することは、色平衡に影響し、また、光学デバイスを通して見た場合の色視に影響し、さらには光学デバイスが知覚する色に影響するため、遮断される青色光の範囲および量のバランスを取ることは、場合によっては困難である。例えば、射撃用めがねは、明るい黄色に見え、青色光を遮断する。射撃用めがねは、青空を覗き込んだ場合にしばしば特定の色をより鮮明にし、射撃手は、より迅速に、かつ、より正確に標的を認識することができる。射撃用めがねの場合はこれでよいが、多くのオフサルミック適用にとってはこれは許容することはできない。詳細には、このようなオフサルミックシステムは、青色を遮断することによって黄色または黄褐色の色合いがレンズに生成されるため、場合によっては美容的に魅力がない。より詳細には、青色を遮断するための一般的な技法の1つには、BPI Filter Vision 450またはBPI Diamond Dye 500などの青色を遮断する色合いでレンズを着色し、あるいは染色する必要がある。この着色は、例えば、何らかの所定の時間期間の間、青色を遮断する染料溶液が入った加熱着色ポットにレンズを浸すことによって達成することができる。通常、染料溶液は、黄色または黄褐色の色を有しており、したがって黄色または黄褐色の色合いがレンズに付与される。多くの人にとって、この黄色または黄褐色の色合いの外観は、場合によっては美容的に望ましくない。さらに、この色合いは、レンズ使用者の正常な色知覚を妨害し、例えば交通信号の色または標識の正しい知覚を困難にすることがある。
【0017】
従来の青色遮断フィルタの黄色化効果を補償するための努力がなされている。例えば、黄色化効果を相殺するために、青色、赤色または緑色の染料などの追加染料を使用して青色遮断レンズが処理されている。この処理によって追加染料と元の青色遮断染料が混合されることになる。しかしながら、この技法は、青色が遮断されたレンズ内における黄色を少なくすることはできるが、これらの染料の混合によってより多くの青色光スペクトルの透過が許容され、青色遮断の有効性が損なわれることがある。さらに、これらの従来の技法は、あいにくなことには、青色光波長以外の光波長の総合的な透過率を小さくしている。透過率のこの望ましくない低減により、延いてはレンズ使用者の視力が低下することがある。
【0018】
従来の青色遮断によれば可視透過率が小さくなり、延いては瞳孔の弛緩が刺激されることが分かっている。瞳孔の弛緩により、光束が眼内レンズおよび網膜を含む内部眼構造まで広がる。これらの構造に対する放射束は、瞳孔径の二乗として増加するため、青色光の半分を遮断するが、可視透過率が小さいために瞳孔を直径2mmから3mmまで弛緩させるレンズは、網膜に対する青色光子の線量を12.5%だけ実際に増加させることになる。光毒性の光からの網膜の保護は、網膜に衝突するこの光の量で決まり、網膜に衝突するこの光の量は、接眼レンズ媒体の透過率特性および瞳孔の動的開口で決まる。従来技術は、光毒性青色光の予防に対する瞳孔の寄与に関しては沈黙している。
【0019】
従来の青色遮断が抱えているもう1つの問題は、青色を遮断することによって暗所視が低下する可能性があることである。青色光は、明るい光つまり明所視の場合より、光レベルが低い場合、つまり暗所視の場合により重要であり、その結果は、暗所視および明所視に対する視感感度スペクトルで定量的に表される。眼内レンズ組織による400nmないし450nmの光の吸収は、光化学反応および酸化的反応により、加齢に伴って自然に増加する。また、網膜上の低光視に寄与している桿状光受容体の数は加齢に伴って減少するが、眼内レンズによる吸収の増加は、暗所視を低下させるためには重要である。例えば、暗所視視覚感度は、53歳の眼内レンズでは33%低下し、また、75歳のレンズでは75%低下する。網膜の保護と暗所視感度の間のテンションは、Mainster and Sparrow、「How Much Light Should and IOL Transmit?」Br.J.Ophthalmol.、2003年、v.87、1523〜29頁(非特許文献1)にさらに記載されている。
【0020】
また、青色を遮断するための従来の手法には、場合によっては特定の青色または青紫色の波長未満の透過率をゼロに低減するための遮断フィルタまたは高域通過フィルタが含まれている。例えば、閾値波長未満のすべての光を完全またはほぼ完全に遮断することができる。例えば、Mainsterの米国特許出願公告第2005/0243272号明細書(特許文献6)およびMainster、「Intraocular Lenses Should Block UV Radiation and Violet but not Blue Light」Arch.Ophthal.、v.123、550頁(2005年)(非特許文献4)に、400nmと450nmの間の閾値波長未満のすべての光の遮断が記述されている。ロングパスフィルタの縁がより長い波長の方へシフトし、総束が増加するように瞳孔の弛緩が作用するため、このような遮断は場合によっては望ましくない。上で説明したように、これは、暗所視感度を低下させ、色ひずみを大きくすることがある。
【0021】
最近、眼内レンズ(IOL)の分野で、UVおよび青色光の適切な遮断、ならびに許容可能な明所視、暗所視、色視および概日リズムの維持に関する討論がなされた。
【0022】
以上の観点から、次のうちの1つまたは複数を提供することができるオフサルミックシステムが必要である。
1)許容可能なレベルの青色光保護を備えた青色遮断。
2)許容可能なカラーコスメチクス、つまり、着用者が着用した場合に、そのオフサルミックシステムを観察している人が、ほぼ色中性として知覚するカラーコスメチクス。
3)使用者のための許容可能な色知覚。詳細には、着用者の色視を損なうことがなく、さらにはシステムの裏面から着用者の眼の中への反射が着用者にとって不愉快にならないレベルであるオフサルミックシステムが必要である。
4)青色光波長以外の波長に対する許容可能なレベルの光透過率。詳細には、青色光の波長を選択的に遮断することができ、それと同時に80%を超える可視光を透過させることができるオフサルミックシステムが必要である。
5)許容可能な明所視、暗所視、色視および/または概日リズム。
【0023】
この必要性が存在している理由は、黄斑変性の可能な寄与要因の1つ(産業化された世界における失明の第1の原因)として、また、他の網膜疾病の可能な寄与要因の1つとして、ますます多くのデータが青色光を指摘していることによるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第6,955,430号明細書
【特許文献2】米国特許第6,158,862号明細書
【特許文献3】米国特許第5,662,707号明細書
【特許文献4】米国特許第5,400,175号明細書
【特許文献5】米国特許第4,878,748号明細書
【特許文献6】米国特許出願公告第2005/0243272号明細書
【特許文献7】米国特許第6,984,038号明細書
【特許文献8】米国特許第7,066,596号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Mainster and Sparrow、「How Much Blue Light Should an IOL Transmit?」Br.J.Ophthalmol.、2003年、v.87、1523〜29頁および図6
【非特許文献2】Wyszecki and Stiles、Color Science:Concepts and Methods,Quantitative Data and Formulae(Wiley:New York)1982年、特に102〜107頁
【非特許文献3】Janet R.Sparrow et al.、「Blue light−absorbing intraocular lens and retinal pigment epithelium protection in vitro」J.Cataract Refract.Surg.2004年、第30版、873〜78頁
【非特許文献4】Mainster、「Intraocular Lenses Should Block UV Radiation and Violet but not Blue Light」Arch.Ophthal.、v.123、550頁(2005年)
【非特許文献5】Moon and Spencer、J.Opt.Soc.Am.v.33、260頁(1944年)
【非特許文献6】Michael Kalloniatis and Charles Luu、「Psychophysics of Vision」available at http://webvision.med.utah.edu/Phychl.html、last visited August 8、2007年
【非特許文献7】Angus McLeod、Thin Film Optical Filters(McGraw−Hill:NY)1989年
【非特許文献8】Mainster、「Violet and Blue Light Blocking Intraocular Lenses:Photoprotection vs.Photoreception」、Br.J.Ophthalmol、2006年、v.90、784〜92頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、改良型コントラスト感度を提供する選択型光波長フィルタを備えたオフサルミックシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】後側青色遮断コンポーネントおよび前側色平衡コンポーネントを備えたオフサルミックシステムの実施例を示す図である。
【図1B】後側青色遮断コンポーネントおよび前側色平衡コンポーネントを備えたオフサルミックシステムの実施例を示す図である。
【図2】オフサルミックシステムを形成するための染料レジストの使用の一実施例を示す図である。
【図3】透明またはほぼ透明なオフサルミックレンズに統合された青色遮断コンポーネントおよび色平衡コンポーネントを備えた一例示的システムを示す図である。
【図4】インモールドコーティングを使用して形成された一例示的オフサルミックシステムを示す図である。
【図5】2つのオフサルミックコンポーネントの結合を示す図である。
【図6】無反射コーティングを使用した例示的オフサルミックシステムを示す図である。
【図7A】青色遮断コンポーネント、色平衡コンポーネントおよびオフサルミックコンポーネントの例示的組合せを示す図である。
【図7B】青色遮断コンポーネント、色平衡コンポーネントおよびオフサルミックコンポーネントの例示的組合せを示す図である。
【図7C】青色遮断コンポーネント、色平衡コンポーネントおよびオフサルミックコンポーネントの例示的組合せを示す図である。
【図8A】多機能青色遮断コンポーネントおよび色平衡コンポーネントを備えたオフサルミックシステムの実施例を示す図である。
【図8B】多機能青色遮断コンポーネントおよび色平衡コンポーネントを備えたオフサルミックシステムの実施例を示す図である。
【図9】様々なCIE座標に対応する観察される色の基準を示すグラフである。
【図10】GENTEX E465吸収染料の透過率を示すグラフである。
【図11】GENTEX E465吸収染料の吸光度を示すグラフである。
【図12】430nm範囲における吸収に適した染料濃度を有するポリカーボネート基板の透過率を示すグラフである。
【図13】無反射コーティングが施されたポリカーボネート基板の波長を関数とした透過率を示すグラフである。
【図14】無反射コーティングが施されたポリカーボネート基板の色プロットを示すグラフである。
【図15】コーティングが施されていないポリカーボネート基板および両面に無反射コーティングが施されたポリカーボネート基板の波長を関数とした透過率を示すグラフである。
【図16】ポリカーボネート基板上の106nmのTiO2層のスペクトル透過率を示すグラフである。
【図17】ポリカーボネート基板上の106nmのTiO2層の色プロットを示すグラフである。
【図18】ポリカーボネート基板上の134nmのTiO2層のスペクトル透過率を示すグラフである。
【図19】ポリカーボネート基板上の134nmのTiO2層の色プロットを示すグラフである。
【図20】青色吸収染料を有する基板の色平衡に適した修正ARコーティングのスペクトル透過率を示すグラフである。
【図21】青色吸収染料を有する基板の色平衡に適した修正ARコーティングの色プロットを示すグラフである。
【図22】青色吸収染料を有する基板のスペクトル透過率を示すグラフである。
【図23】青色吸収染料を有する基板の色プロットを示すグラフである。
【図24】青色吸収染料および後部ARコーティングを有する基板のスペクトル透過率を示すグラフである。
【図25】青色吸収染料および後部ARコーティングを有する基板の色プロットを示すグラフである。
【図26】前面および背面に青色吸収染料およびARコーティングを有する基板のスペクトル透過率を示すグラフである。
【図27】前面および背面に青色吸収染料およびARコーティングを有する基板の色プロットを示すグラフである。
【図28】青色吸収染料および色平衡ARコーティングを有する基板のスペクトル透過率を示すグラフである。
【図29】青色吸収染料および色平衡ARコーティングを有する基板の色プロットを示すグラフである。
【図30】膜を備えた一例示的オフサルミックデバイスを示す図である。
【図31】一例示的膜の光透過率特性を示すグラフである。
【図32】膜を備えた一例示的オフサルミックシステムを示す図である。
【図33】膜を備えた一例示的システムを示す図である。
【図34A】視野照度を関数とした瞳孔径を示す図である。
【図34B】視野照度を関数とした瞳孔面積を示す図である。
【図35】ペリレン染料がドープされた膜であって、濃度と経路長の積が約437nmで約33%の透過率をもたらす膜の透過率スペクトルを示すグラフである。
【図36】本発明による膜の透過率スペクトルであって、ペリレン濃度がその前の図に示されている濃度の約2.27倍である膜の透過率スペクトルを示すグラフである。
【図37】6層スタックのSiOおよびZrOの一例示的透過率スペクトルを示すグラフである。
【図38】(L、a、b)色空間における規定発光体によって照明されたマンセルタイルに対応する基準色座標を示すグラフである。
【図39A】関連するフィルタのためのマンセル色タイルの色シフトのヒストグラムである。
【図39B】関連する青色遮断フィルタによって誘導される色シフトを示すグラフである。
【図40】本発明によるペリレン染色基板の色シフトのヒストグラムである。
【図41】本発明によるシステムの透過率スペクトルを示すグラフである。
【図42】本発明によるデバイスの昼光におけるマンセルタイルの色ひずみを要約したヒストグラムである。
【図43A】ある人種の被検体からの代表的な皮膚反射率スペクトルを示すグラフである。
【図43B】異なる人種の被検体からの代表的な皮膚反射率スペクトルを示すグラフである。
【図44】白色人種の被検体の一例示的皮膚反射率スペクトルを示すグラフである。
【図45】様々なレンズの透過率スペクトルを示すグラフである。
【図46】例示的染料を示す図である。
【図47】ハードコートを有するオフサルミックシステムを示す図である。
【図48】430nmの近辺に強力な吸収帯域を有する選択型フィルタの波長を関数とした透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態は、有効な青色遮断を実行し、かつ、美容的に魅力のある製品、使用者による正常または許容可能な色知覚、および良好な視力のための高レベルの透過光を提供するオフサルミックシステムに関している。80%またはそれより良好な平均可視光透過率を提供し、青色光の波長を選択的に禁止し(「青色遮断」)、着用者の適切な色視性能を可能にし、また、このようなレンズまたはレンズシステムを着用している着用者を見ている観察者にほぼ色中性の外観を提供することができるオフサルミックシステムが提供される。本明細書において使用されているように、システムの「平均透過率」は、可視スペクトルなどのある範囲内における波長の平均透過率を表している。また、システムは、個々の波長における眼の感度に従って重み付けされる波長範囲における平均を表すシステムの「視感透過率」を特徴とすることができる。本明細書において説明されているシステムは、所望の効果を得るために様々なオプティカルコーティング、膜、材料および吸収染料を使用することができる。
【0029】
より詳細には、本発明の実施形態は、色平衡化と相俟って有効な青色遮断を提供することができる。本明細書において使用されている「色平衡化」または「色平衡」は、黄色もしくは黄褐色の色または青色遮断による他の望ましくない効果が抑制され、相殺され、中性化され、さもなければ補償され、それにより、そのために青色遮断の有効性が損なわれることなく美容的に許容可能な結果が得られることを意味している。例えば、400nm〜460nmの波長またはその近傍の波長を遮断し、あるいはその強度を小さくすることができる。詳細には、例えば、420〜440nmの波長またはその近傍の波長を遮断し、あるいはその強度を小さくすることができる。さらに、遮断されない波長の透過率は、高いレベル、例えば少なくとも80%に維持することができる。また、外部の観察者には、オフサルミックシステムは、透明またはほぼ透明に見える。システムの使用者に対しては、その色知覚を正常な知覚または許容可能な知覚にすることができる。
【0030】
ここで使用されている「オフサルミックシステム」には、例えば透明なガラスまたは着色されたガラス(またはめがね)のために使用される処方または非処方オフサルミックレンズ、サングラス、可視性および/またはコスメチック着色が施されたコンタクトレンズおよび可視性および/またはコスメチック着色が施されていないコンタクトレンズ、眼内レンズ(IOLs)、角膜グラフト、角膜インレー、角膜アンレーおよびエレクトロ−アクティブオフサルミックデバイスが含まれており、他のコンポーネントと共に取り扱い、処理し、あるいは組み合わせて、本明細書においてさらに詳細に説明されている所望の機能を提供することができる。本発明は、処方に従って作ることができ、したがって角膜組織中に直接適用することができる。
【0031】
本明細書において使用されているように、「オフサルミック材料」は、矯正レンズなどのオフサルミックシステムを製造するために広く使用されている材料である。例示的オフサルミック材料には、ガラス、CR−39、Trivexなどのプラスチック、およびポリカーボネート材料があるが、他の材料を使用することも可能であり、様々なオフサルミックシステム用として知られている。
【0032】
オフサルミックシステムは、色平衡コンポーネントの後側に青色遮断コンポーネントを備えることができる。青色遮断コンポーネントまたは色平衡コンポーネントのうちのいずれか一方は、それ自体がレンズなどのオフサルミックコンポーネントであっても、あるいはそのようなオフサルミックコンポーネントの一部を形成していてもよい。後側の青色遮断コンポーネントおよび前側の色平衡コンポーネントは、オフサルミックレンズの1つまたは複数の表面上の、もしくは表面に隣接する、または表面の近傍のまったく別の層であってもよい。色平衡コンポーネントは、美容的に許容可能な外観を得るために、後側の青色遮断コンポーネントの黄色または黄褐色の色合いを薄くし、あるいは中性にすることができる。例えば、外部の観察者には、オフサルミックシステムは、透明またはほぼ透明に見える場合がある。システムの使用者に対しては、その色知覚を正常な知覚または許容可能な知覚にすることができる。さらに、青色遮断および色平衡のために色合いが混合されず、したがって青色光スペクトル中の波長を遮断し、あるいはその強度を小さくすることができる。また、オフサルミックシステムにおける入射光の透過強度は、遮断されない波長に対して少なくとも80%にすることができる。
【0033】
上で説明したように、青色を遮断するための技法は知られている。青色光波長を遮断するための知られている技法には、吸収、反射、干渉またはそれらの任意の組合せがある。既に説明したように、ある技法によれば、BPI Filter Vision 450またはBPI Diamond Dye 500などの青色を遮断するティントを使用して、適切な比率または濃度でレンズを着色し/染色することができる。この着色は、例えば、何らかの所定の時間期間の間、青色を遮断する染料溶液が入った加熱着色ポットにレンズを浸すことによって達成することができる。他の技法によれば、フィルタを使用して青色が遮断される。フィルタは、例えば、青色光波長を吸収および/または反射し、かつ/または青色光波長と干渉する有機化合物または無機化合物を含むことができる。フィルタは、有機および/または無機物質の複数の薄い層またはコーティングを備えることができる。個々の層は、個々の層が個別に、あるいは他の層と相俟って、青色光波長を有する光を吸収し、反射し、あるいはその光と干渉する特性を有することができる。ルーゲートノッチフィルタは青色遮断フィルタの一例である。ルーゲートフィルタは、大きい値と小さい値の間でその屈折率が常に発振している無機誘電体の単一薄膜である。屈折率が異なる2つの材料(例えばSiOおよびTiO)の共蒸着によって製造されるルーゲートフィルタは、波長を遮断するための極めて明瞭な阻止帯を有しており、帯域外の減衰がほとんどないことで知られている。フィルタの構造パラメータ(発振周期、屈折率変調、屈折率発振の数)によってフィルタの性能パラメータ(阻止帯域の中心、阻止帯域の幅、帯域内の透過率)が決まる。ルーゲートフィルタは、例えば、それぞれその全体が参照されている米国特許第6,984,038号明細書(特許文献7)および米国特許第7,066,596号明細書(特許文献8)により詳細に開示されている。青色を遮断するための他の技法は、多層誘電体スタックの使用である。多層誘電体スタックは、屈折率が大きい材料と屈折率が小さい材料の離散層を交互に付着させることによって製造される。ルーゲートフィルタと同様、個々の層の厚さ、個々の層の屈折率および層の繰返し数などの設計パラメータによって、多層誘電体スタックの性能パラメータが決まる。
【0034】
色平衡化には、例えば、外部観察者から見た場合に、全体としてのオフサルミックシステムが美容的に許容可能な外観を有するよう、適切な比率または濃度の青色着色/染料または赤色および緑色の着色/染料の適切な組合せを色平衡コンポーネントに付与するステップを含むことができる。例えば、全体としてのオフサルミックシステムが透明またはほぼ透明に見えるようにすることができる。
【0035】
図1Aは、後側青色遮断コンポーネント101および前側色平衡コンポーネント102を備えたオフサルミックシステムを示したものである。コンポーネントの各々は、凹状の後側側面または表面110、115および凸状の前側側面または表面120、125を有している。システム100の場合、後側青色遮断コンポーネント101は、それ自体が、単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームなどのオフサルミックコンポーネントであっても、あるいはそのようなオフサルミックコンポーネントを備えていてもよい。これらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームは、青色遮断を実行するように着色し、あるいは染色することができる。前側色平衡コンポーネント102は、知られている技法に従ってこれらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームに加えられた表面鋳造層を備えることができる。例えば、この表面鋳造層は、可視光またはUV光あるいはそれらの2つの組合せを使用して、これらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームに貼り付けるか、あるいは結合することができる。
【0036】
表面鋳造層は、これらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームの凸状をなしている側に形成することができる。これらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームは、青色遮断を実行するように着色または染色されているため、場合によっては、美容的には望ましくない黄色または黄褐色の色を有している。したがって、例えば適切な比率の青色着色/染料を使用して、あるいは赤色と緑色の着色/染料の適切な組合せを使用して表面鋳造層を着色することができる。
【0037】
表面鋳造層は、青色を遮断するように既に処理済みの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームに表面鋳造層が加えられた後に、色平衡添加剤を使用して処理することができる。例えば、その凸状表面に表面鋳造層を備えた青色遮断単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームを、適切な比率および濃度の色平衡染料を溶液中に有する加熱着色ポットに浸すことができる。表面鋳造層は、その溶液から色平衡染料を吸収する。青色遮断単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームがあらゆる色平衡染料を吸収するのを防止するために、その凹状表面を染料レジスト、例えばテープまたはワックスあるいは他のコーティングでマスクするか、あるいは密閉することができる。図2はこれを示したもので、単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォーム101の凹状表面に染料レジスト201を備えたオフサルミックシステム100が示されている。これらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームの縁は、美容的に調整された色になるようにするために非コーティングの状態で放置することができる。これは、場合によっては、分厚い縁を有する負の焦点レンズの場合に重要である。
【0038】
図1Bは、他のオフサルミックシステム150を示したもので、前側色平衡コンポーネント104は、それ自体が、単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームなどのオフサルミックコンポーネントであっても、あるいはそのようなオフサルミックコンポーネントを備えていてもよい。後側青色遮断コンポーネント103は表面鋳造層であってもよい。この組合せを構築するために、色平衡単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームの凸状表面を上で説明した染料レジストでマスクし、青色遮断染料溶液が入った加熱着色ポットにこの組合せを浸した場合に、これらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームが青色遮断染料を吸収するのを防止することができる。その一方で、露出した表面鋳造層は青色遮断染料を吸収する。
【0039】
表面鋳造層は、単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームとではなく、多焦点レンズと組み合わせて使用することができることを理解されたい。さらに、この表面鋳造層を使用して、単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームに多焦点パワーを始めとするパワーを加えることができ、したがってこれらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームを、一列に並んだタイプまたは漸進的なタイプのいずれかの追加で多焦点レンズに変換することができる。当然、これらの単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォームにパワーをほとんど加えないように、あるいはまったくパワーを加えないように表面鋳造層を設計することも可能である。
【0040】
図3は、オフサルミックコンポーネントに統合された青色遮断機能および色平衡機能を示したものである。より詳細には、オフサルミックレンズ300の場合、さもなければその後側領域が透明またはほぼ透明なオフサルミックコンポーネント301中への色合いしみ込み深さに対応する部分303を青色遮断部分にすることができる。さらに、さもなければその前面領域つまりその前側領域が透明またはほぼ透明なオフサルミックコンポーネント301中への色合いしみ込み深さに対応する部分302を色平衡部分にすることができる。図3に示されているシステムは、次のように製造することができる。オフサルミックコンポーネント301は、例えば最初は透明またはほぼ透明な単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームであってもよい。透明またはほぼ透明な単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームは、青色を遮断する色合いで着色することができ、一方、その前面の凸状表面は、例えば上で説明した染料レジストを使用してマスキングし、あるいはコーティングすることによって非吸収性にされる。したがって、透明またはほぼ透明な単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォーム301の後側凹状表面で始まって内側に向かって展開している、青色遮断機能を有する部分303は、色合いしみ込みによって生成することができる。次に、前面凸状表面の非吸収型コーティングを除去することができる。次に、色を平衡させるために、凹状表面に非吸収型コーティングを加え、かつ、単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームの前面凸状表面および周辺縁を着色することができる(例えば加熱着色ポットに浸すことによって)。色平衡染料は、先行するコーティングのために着色されずに放置された前面の凸状表面で始まって内側に向かって展開している周辺縁および部分302によって吸収されることになる。以上のプロセスの順序は逆にすることも可能である。つまり、凹状表面を最初にマスクし、色を平衡させるために残りの部分を着色することができる。次に、青色を遮断するために、コーティングを除去し、かつ、マスキングによって着色されずに放置された凹状領域の一定の深さすなわち厚さを着色することができる。
【0041】
次に図4を参照すると、インモールドコーティングを使用してオフサルミックシステム400を形成することができる。より詳細には、適切な青色遮断ティント、染料または他の添加剤を使用して染色され/着色された単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームなどのオフサルミックコンポーネント401は、着色されたインモールドコーティング403を使用した表面鋳造によって色を平衡化させることができる。適切なレベルおよび/または混合物の色平衡染料からなるインモールドコーティング403は、凸状表面モールド(つまり、図示されていない、オフサルミックコンポーネント401の凸状表面にコーティング403を加えるためのモールド)に加えることができる。コーティング403とオフサルミックコンポーネント401の間に無色の単量体402を充填し、かつ、硬化させることができる。単量体402を硬化させるプロセスにより、色平衡インモールドコーティング自体をオフサルミックコンポーネント401の凸状表面に移行させることになる。そのため、青色遮断オフサルミックシステムは色平衡表面コーティングを備えている。インモールドコーティングは、例えば無反射コーティングまたは従来のハードコーティングであってもよい。
【0042】
次に図5を参照すると、オフサルミックシステム500は、2つのオフサルミックコンポーネントを備えることができる。1つは青色遮断コンポーネントであり、もう1つは色平衡コンポーネントである。例えば、第1のオフサルミックコンポーネント501は、所望のレベルの青色遮断を達成するために適切な青色遮断色合いを使用して染色され/着色された背面単一視覚レンズまたは凹状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームであってもよい。第2のオフサルミックコンポーネント503は、例えばUV硬化性または可視光硬化性接着剤502を使用して背面単一視覚レンズまたは凹状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームに結合され、あるいは貼り付けられた前面単一視覚レンズまたは凸状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームであってもよい。前面単一視覚レンズまたは凸状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームは、背面単一視覚レンズまたは凹状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームに結合される前または結合された後のいずれかで色を平衡させることができる。結合された後の場合であれば、例えば上で説明した技法によって、前面単一視覚レンズまたは凸状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームの色を平衡させることができる。例えば、背面単一視覚レンズまたは凹状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームが色平衡染料を吸収するのを防止するために、染料レジストを使用してこれらの背面単一視覚レンズまたは凹状表面多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォームをマスキングし、あるいはコーティングすることができる。次に、結合された背面部分および前面部分を色平衡染料の適切な溶液が入った加熱着色ポットの中に一体で置き、前面部分に色平衡染料を吸収させることができる。
【0043】
上で説明した実施形態システムは、すべて、1つまたは複数の無反射(AR)コンポーネントと組み合わせることができる。図6は、一例として、これを図1Aおよび1Bに示されているオフサルミックレンズ100および150に対して示したものである。図6では、例えばコーティングである第1のARコンポーネント601は、後側の青色遮断エレメント101の凹状表面に加えられており、また、第2のARコンポーネント602は、色平衡コンポーネント102の凸状表面に加えられている。同様に、第1のARコンポーネント601は、後側の青色遮断コンポーネント103の凹状表面に加えられており、また、第2のARコンポーネント602は、色平衡コンポーネント104の凸状表面に加えられている。
【0044】
図7A〜7Cは、青色遮断コンポーネントおよび色平衡コンポーネントを備えた他の例示的システムを示したものである。図7Aでは、オフサルミックシステム700は、青色遮断コンポーネント703および色平衡コンポーネント704を備えている。これらのコンポーネントは隣接して形成されているが、透明またはほぼ透明なオフサルミックレンズ702の前側表面の、または前側表面に隣接するまったく異なるコーティングまたは層である。青色遮断コンポーネント703は、色平衡コンポーネント704の後側に位置している。透明またはほぼ透明なオフサルミックレンズの後側表面に、または後側表面に隣接して、ARコーティングまたは他の層701を形成することができる。色平衡層704の前側表面に、または前側表面に隣接して、他のAR コーティングまたは層705を形成することができる。
【0045】
図7Bでは、青色遮断コンポーネント703および色平衡コンポーネント704は、透明またはほぼ透明なオフサルミックレンズ702の後側表面に、または後側表面に隣接して配置されている。この場合も、青色遮断コンポーネント703は、色平衡コンポーネント704の後側に位置している。ARコンポーネント701は、青色遮断コンポーネント703の後側表面に、または後側表面に隣接して形成することができる。透明またはほぼ透明なオフサルミックレンズ702の前側表面に、または前側表面に隣接して、他のARコンポーネント705を形成することができる。
【0046】
図7Cでは、青色遮断コンポーネント703および色平衡コンポーネント704は、透明オフサルミックレンズ702のそれぞれ後側表面および前側表面に、またはそれぞれ後側表面および前側表面に隣接して配置されている。この場合も、青色遮断コンポーネント703は、色平衡コンポーネント704の後側に位置している。ARコンポーネント701は、青色遮断コンポーネント703の後側表面に、または後側表面に隣接して形成することができ、また、色平衡コンポーネント704の前側表面に、または前側表面に隣接して他のARコンポーネント705を形成することができる。
【0047】
図8Aおよび8Bはオフサルミックシステム800を示したもので、青色光波長を遮断する機能および色平衡を実行する機能の両方を単一コンポーネント803の中で結合することができる。例えば、この結合機能コンポーネントは、青色光波長を遮断し、かつ、緑色波長および赤色波長の一部を反射させることができ、したがって青色が中和され、また、レンズ中における優勢な色の出現が除去される。この結合機能コンポーネント803は、透明オフサルミックレンズ802の前側表面または後側表面のいずれかに、あるいはこれらのいずれかの表面に隣接して配置することができる。オフサルミックレンズ800は、さらに、透明オフサルミックレンズ802の前側表面または後側表面のいずれかに、あるいはこれらの表面のいずれかに隣接してARコンポーネント801を備えることができる。
【0048】
色平衡コンポーネントの有効性を定量的に表すためには、場合によってはオフサルミック材料の基板で反射する光および/または基板を透過する光を観察することが有用である。観察した光は、その光の色を表すためにそのCIE座標によって特性化することができる。つまり、これらの座標と入射光のCIE座標とを比較することにより、光の色が反射/透過によってどの程度シフトしたかを決定することができる。白色光は、(0.33、0.33)のCIE座標を有するように画定される。したがって観察された光のCIE座標が(0.33、0.33)に近いほど、観察者には「より白い色」に見えることになる。レンズによって実行される色シフトまたは色平衡を特性化するためには、(0.33、0.33)白色光をレンズに向けて導き、反射する光および透過する光のCIEを観察することができる。透過した光がほぼ(0.33、0.33)のCIEを有している場合、色シフトは存在していないことになり、また、レンズを通して観察されるアイテムは、自然外観を有することになる。つまり、レンズを通さずに観察されるアイテムに対して色がシフトしないことになる。同様に、反射した光がほぼ(0.33、0.33)のCIEを有している場合、レンズは、自然コスメチック外観を有していることになる。つまり、レンズは、レンズまたはオフサルミックシステムの使用者を見ている観察者には着色されているようには見えないことになる。したがって、透過した光および反射した光に、可能な限り(0.33、0.33)に近いCIEを持たせることが望ましい。
【0049】
図9は、様々なCIE座標に対応する観察色を示すCIEプロットを示したものである。基準点900は、座標(0.33、0.33)を示している。プロットの中心領域は、典型的には「白色」として指定されるが、この領域にCIE座標を有する光の一部は、観察者には若干着色された光に見えることがある。例えば、(0.4、0.4)のCIE座標を有する光は、観察者には黄色に見えることになる。したがって、オフサルミックシステムで色中性外観を達成するためには、システムを透過および/または反射する(0.33、0.33)光(すなわち白色光)に、透過/反射した後、可能な限り(0.33、0.33)に近いCIE座標を持たせることが望ましい。図9に示されているCIEプロットは、本明細書においては、様々なシステムを使用して観察される色シフトを示すための基準として使用することができるが、ラベルが振られている領域は、分かりやすくするために省略することも可能である。
【0050】
吸収染料を基板材料中に射出成形することによってオフサルミックレンズの基板材料に吸収染料を含め、それにより特定の光透過特性および吸収特性を有するレンズを得ることができる。これらの染料材料は、ポルフィリン材料に典型的に見られるソーレー帯域が存在するため、染料の基本ピーク波長で、あるいはもっと短い共振波長で吸収することができる。例示的オフサルミック材料には、CR−39(登録商標)、TRIVEX(登録商標)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリラート、シリコーンおよびフッ素樹脂などの様々なガラスおよび重合体があるが、他の材料を使用することも可能であり、様々なオフサルミックシステム用材料が知られている。
【0051】
単なる例にすぎないが、図10〜11では、GENTEX染料材料E465の透過率および吸光度を示している。吸光度(A)は、式A=log10(1/T)によって透過率(T)と関係している。この場合、透過率は0と1の間である(0<T<1)。透過率は、百分率つまり0%<T<100%で表されることがしばしばである。E465染料は、465未満のこれらの波長を遮断し、通常、光学濃度が高い(OD>4)これらの波長を遮断するために提供される。他の波長を遮断する同様の製品を入手することも可能である。例えばGENTEXのE420は、420nm未満の波長を遮断する。他の例示的染料には、ポルフィリン、ペリレンおよび青色波長で吸収することができる同様の染料がある。
【0052】
より短い波長における吸光度は、染料濃度を低くすることによって小さくすることができる。この染料材料および他の染料材料は、430nm領域で〜50%の透過率を達成することができる。図12は、染料濃度が430nm範囲における吸収に適した濃度であり、また、420nm〜440nmの範囲で一部を吸収するポリカーボネート基板の透過率を示したものである。これは、染料の濃度を低くし、かつ、ポリカーボネート基板の効果を含めることによって達成されたものである。裏面は、この点に関しては無反射コーティングされていない。
【0053】
また、染料の濃度は、オフサルミックシステムの外観および色シフトに影響を及ぼすこともある。濃度を低くすることにより、色シフトの度合が変化するシステムを得ることができる。本明細書において使用されている「色シフト」は、基準光のCIE座標がオフサルミックシステムを透過および/または反射した後に、そのCIE座標が変化する量を表している。また、典型的には白色(例えば太陽光、白熱光および蛍光光)として知覚される様々なタイプの光の差のためにシステムによって生じる色シフトによってシステムを特性化することも場合によっては有用である。したがって、場合によっては、入射光がシステムを透過および/または反射する際に、入射光のCIE座標がシフトする量に基づいてシステムを特性化することが有用である。例えば、CIE座標が(0.33、0.33)である光が、透過した後にCIEが(0.30、0.30)の光になるシステムは、(−.03、−.03)の色シフト、またはより一般的には(±0.03、±0.03)の色シフトをもたらす、として記述することができる。したがってシステムによって生じる色シフトは、システムの着用者には「自然」光および観察されるアイテムがどのように見えるかを表している。以下でさらに説明するように、(±0.05、±0.05)ないし(±0.02、±0.02)未満の色シフトをもたらすシステムが達成された。
【0054】
オフサルミックシステムにおける短波長透過率の低減は、場合によっては、A2Eの励起などの眼の光電効果による細胞死滅を抑制するのに有用である。430±30nmで入射する光を約50%少なくすることによって細胞の死滅を約80%少なくすることができることが分かっている。例えば、参照によりその開示全体が組み込まれている、Janet R.Sparrow et al.、「Blue light−absorbing intraocular lens and retinal pigment epithelium protection in vitro、」J.Cataract Refract.Surg.2004年、第30版、873〜78頁(非特許文献3)を参照された。さらに、430〜460nmの範囲の光などの青色光の量をほんの5%程度少なくすることにより、同様に、細胞の死滅および/または変性を抑制することができ、したがって加齢に伴う萎縮性黄斑変性などの条件の悪影響を防止し、あるいは抑制することができると考えられている。
【0055】
吸収染料を使用して光の望ましくない波長を遮断することができるが、その染料によって、副作用としてレンズに色がつくことがある。例えば、多くの青色遮断オフサルミックレンズは、望ましくなく、かつ/または美感的に不快であることがしばしばである黄色い色合いを有している。この色合いを相殺するために、中に吸収染料を含有した基板の一方の表面または両方の表面に色平衡コーティングを加えることができる。
【0056】
無反射(AR)コーティング(これらは干渉フィルタである)は、商用オフサルミックコーティング産業では定着している。これらのコーティングは、通常、10層未満であることがしばしばであるいくつかの層であり、一般的にはポリカーボネート表面での反射を1%未満に減らすために使用されている。ポリカーボネート表面のこのようなコーティングの一例を図13に示している。このコーティングの色プロットは図14に示してあり、色がまったく中性であることが分かる。総反射率は0.21%であることが分かった。反射した光は(0.234、0.075)のCIE座標を有しており、透過した光は(0.334、0.336)のCIE座標を有していることが分かった。
【0057】
ARコーティングは、より大きい透過率を達成するために、レンズの両方の表面または他のオフサルミックデバイスに加えることができる。このような構成を図15に示しており、より黒い線1510がARコーティングが施されたポリカーボネートであり、より薄い線1520がコーティングが施されていないポリカーボネート基板である。このARコーティングにより、総透過光が10%増加する。ポリカーボネート基板中における吸収のため、光の若干の自然損失が存在している。この実施例のために使用されている特定のポリカーボネート基板は、約3%の透過率損失を有している。オフサルミック産業では、ARコーティングは、通常、レンズの透過率を大きくするために両方の表面に加えられる。
【0058】
本発明によるシステムの場合、ARコーティングまたは他の色平衡膜と吸収染料とを組み合わせて、典型的には430nm領域の青色波長光を吸収し、かつ、それと同時に透過率を大きくすることができる。上で説明したように、430nm領域の光を除去するだけでは、通常、レンズが若干の残留色キャストを有することになる。光をスペクトル的に適合させて色中性透過率を達成するために、複数のARコーティングのうちの少なくとも1つを修正して光の総合透過色を調整することができる。本発明によるオフサルミックシステムの場合、次のレンズ構造を生成するためにレンズの前面でこの調整を実行することができる。
【0059】
空気(使用者の眼から最も遠い)/前面凸状レンズコーティング/吸収オフサルミックレンズ基板/後部凹状無反射コーティング/空気(使用者の眼に最も近い)
【0060】
このような構成の場合、前面コーティングは、基板中の吸収によって生じる色キャストを相殺するために、通常は従来のレンズで実行される無反射機能に加えてスペクトル適合を提供することができる。したがってレンズは、適切な色平衡を透過光および反射光の両方に提供することができる。透過光の場合、色平衡は適切な色視を可能にし、反射光の場合、色平衡は適切なレンズ美を提供することができる。
【0061】
いくつかのケースでは、他のオフサルミック材料の2つの層の間に色平衡膜を配置することができる。例えば、フィルタ、AR膜または他の膜をオフサルミック材料中に配置することができる。例えば、次の構成を使用することができる。
【0062】
空気(使用者の眼から最も遠い)/オフサルミック材料/膜/オフサルミック材料/空気(使用者の眼に最も近い)
【0063】
また、色平衡膜は、レンズの外部表面および/または内部表面に加えられるハードコートなどのコーティングであってもよい。他の構成も可能である。例えば図3を参照すると、オフサルミックシステムは、青色吸収染料がドープされたオフサルミック材料301および1つまたは複数の色平衡層302、303を備えることができる。他の構成では、内部層301は、青色吸収染料がドープされたオフサルミック材料302、303で取り囲まれた色平衡層であってもよい。システムの1つまたは複数の表面に追加層および/またはARコーティングなどのコーティングを配置することができる。例えば図4〜8Bに関連して説明したシステムでは、如何に類似した材料および構成を使用することができるかが理解されよう。
【0064】
したがって、光学膜および/またはARコーティングなどのコーティングを使用して、吸収染料を有するレンズの総合スペクトル応答を微調整することができる。可視光スペクトル全体の透過率変化はよく知られており、光学コーティングの層の厚さおよび層の数の関数として変化する。本発明において、1つまたは複数の層を使用して、スペクトル特性の必要な調整を提供することができる。
【0065】
一例示的システムでは、TiO(一般的なARコーティング材料)の単一層によって色変化が生成される。図16は、厚さが106nmのTiOの単一層のスペクトル透過率を示したものである。この同じ層の色プロットを図17に示す。図に示されている透過した光のCIE色座標(x、y)1710は(0.331、0.345)である。反射した光は(0.353、0.251)1720のCIE座標を有しており、紫色がかった桃色の色が得られた。
【0066】
それぞれ図18および19に示されている134nm層に対する透過スペクトルおよび色プロットで示しているように、TiO層の厚さを変化させると、透過光の色が変化する。このシステムの場合、透過した光は(0.362、0.368)1910のCIE座標を示し、また、反射した光は(0.209、0.229)1920のCIE座標を有していた。様々なARコーティングの透過特性およびその予測または推定は、当分野で知られている。例えば、様々なコンピュータプログラムを使用して、既知の厚さのAR材料で形成されたARコーティングの透過効果を計算し、予測することができる。例示的には、非制限のプログラムには、Thin Film Center社から入手することができるEssential Macleod Thin Films Software、Software Spectra社から入手することができるTFCa1c、およびFTG Software Associatesから入手することができるFilmStar Optical Thin Film Softwareがある。他の方法を使用してARコーティングまたは他の同様のコーティングあるいは膜の挙動を予測することも可能である。
【0067】
本発明によるシステムの場合、青色吸収染料とコーティングまたは他の膜とを組み合わせて青色遮断色平衡システムを提供することができる。コーティングは、透過および/または反射した光の色を補正するために修正された前面のARコーティングであってもよい。図20および21は、一例示的ARコーティングの透過率および色プロットをそれぞれ示したものである。図22および23は、ARコーティングが施されていない青色吸収染料を有するポリカーボネート基板の透過率および色プロットをそれぞれ示したものである。染色された基板は、420〜440nm領域における若干の吸収を含み、430nm領域で最も強力に吸収する。図20〜21に示されているように、染色された基板と適切なARコーティングとを組み合わせてシステムの総合透過率を大きくすることができる。図24および25には、後部ARコーティングを有する染色基板の透過率および色プロットのそれぞれが示されている。
【0068】
また、ARコーティングは、オフサルミックシステムの前面(つまりシステムの着用者の眼から最も遠い表面)に加えることも可能であり、それにより、それぞれ図26および27に示されている透過率および色プロットを得ることができる。このシステムは大きい透過率を示しており、また、透過した光は比較的中性であるが、反射した光は(0.249、0.090)のCIEを有している。したがって、青色吸収染料の効果をより完全に色平衡させるために、色中性構成を生成するために必要な色平衡が達成されるよう、前面ARコーティングを修正することができる。図28および29において、この構成の透過率および色プロットがそれぞれ示されている。この構成の場合、透過した光および反射した光の両方を最適化し、色中性性を達成することができる。場合によっては内部反射光を約6%にすることが好ましい。この反射率レベルは、必ずシステムの着用者をいら立たせることになるため、異なる波長の可視光を吸収する異なる追加吸収染料をレンズ基板に加えることによって反射をさらに小さくすることができる。しかしながら、この構成の設計によれば、著しい性能が達成され、かつ、本明細書において説明されている青色遮断色平衡オフサルミックシステムのニーズが満たされる。総透過率は90%を超え、また、透過した色および反射した色の両方が色中性白色点に極めて近接している。図27に示されているように、反射した光は(0.334、0.334)のCIEを有しており、また、透過した光は(0.341、0.345)のCIEを有しており、ほとんど色シフトしていないか、あるいはまったく色シフトしていないことを示している。
【0069】
いくつかの構成では、前面の修正された無反射コーティングは、青色光波長を100%遮断することを禁止するように設計することができる。しかしながら、これは、場合によっては約9%ないし10%が着用者に向かって後方反射することになる。このレベルの反射率は、場合によっては着用者をいら立たせることになる。したがって、前面の修正された無反射コーティングのこの反射率を有するレンズ基板に吸収染料を結合することにより、所望の効果を達成することができ、かつ、着用者によって十分に許容されるレベルまで反射率を小さくすることができる。1つまたは複数のARコーティングを備えたシステムの着用者によって観察される反射光を8%以下に低減することができ、より好ましくは3%以下に低減することができる。
【0070】
前面および背面のARコーティングの組合せは、誘電体スタックと呼ぶことができ、様々な材料および厚さを使用して、オフサルミックシステムの透過特性および反射特性をさらに変えることができる。例えば、特定の色平衡効果を達成するために、前面のARコーティングおよび/または背面のARコーティングを異なる厚さおよび/または異なる材料で構築することができる。いくつかのケースでは、誘電体スタックを生成するために使用される材料は、無反射コーティングを生成するために伝統的に使用されている材料でなくてもよい。つまり、色平衡コーティングは、無反射機能を実行することなく、基板中の青色吸収染料によって生じる色シフトを修正することができる。
【0071】
上で説明したように、フィルタは、青色を遮断するためのもう1つの技法である。したがって、上で説明した青色遮断コンポーネントは、すべて、それ自体が青色遮断フィルタであっても、青色遮断フィルタを備えることも、あるいはそれ自体が青色遮断フィルタとの組合せであってもよい。このようなフィルタには、ルーゲートフィルタ、干渉フィルタ、帯域通過フィルタ、帯域遮断フィルタ、ノッチフィルタまたは二色性フィルタを挙げることができる。
【0072】
本発明の実施形態の場合、上で開示した青色遮断技法のうちの1つまたは複数の技法を他の青色遮断技法と共に使用することができる。単なる例にすぎないが、レンズまたはレンズコンポーネントは、染料/ティントおよびルーゲートノッチフィルタの両方を利用して効果的に青色光を遮断することができる。
【0073】
上で開示した構造および技法は、すべて、本発明によるオフサルミックシステムに使用することができ、400〜460nmの青色光波長またはこの近辺の青色光波長の遮断を実行することができる。例えば、実施形態では、遮断される青色光の波長を所定の範囲内の波長にすることができる。実施形態では、この範囲を430nm±30nmにすることができる。他の実施形態では、この範囲を430nm±20nmにすることができる。さらに他の実施形態では、この範囲を430nm±10nmにすることができる。実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に90%に制限することができる。他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に80%に制限することができる。他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に70%に制限することができる。他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に60%に制限することができる。他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に50%に制限することができる。他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に40%に制限することができる。さらに他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に30%に制限することができる。さらに他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に20%に制限することができる。さらに他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に10%に制限することができる。さらに他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に5%に制限することができる。さらに他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に1%に制限することができる。さらに他の実施形態では、オフサルミックシステムは、上で画定された範囲内における青色波長の透過率を入射波長の実質的に0%に制限することができる。つまり、上で特定された範囲における波長の電磁スペクトルのオフサルミックシステムによる減衰を少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%、または実質的に100%にすることができる。
【0074】
いくつかのケースでは、場合によっては、400nm〜460nm領域などの青色スペクトルの比較的微小部分をフィルタリングすることがとりわけ望ましい。例えば、青色スペクトルを遮断しすぎると、暗所視および概日リズムを妨害することがあることが分かっている。従来の青色遮断オフサルミックレンズは、通常、着用者の「生体時計」に悪影響を及ぼす可能性があり、また、他の悪影響を及ぼす可能性のある、広範囲にわたるはるかに大量の青色スペクトルを遮断している。したがって、本明細書において説明されているように、場合によっては比較的狭い範囲の青色スペクトルを遮断することが望ましい。比較的狭い範囲の比較的微少量の光をフィルタリングすることができる例示的システムは、400nm〜460nm、410nm〜450nmおよび420nm〜440nmの波長を有する光の5〜50%、5〜20%および5〜10%を遮断または吸収するシステムを備えている。
【0075】
青色光の波長が上で説明したように選択的に遮断されるのと同時に、オフサルミックシステムによって視覚電磁スペクトルの他の部分の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%を透過させることができる。つまり、青色光スペクトルの外側の波長、例えば430nm近辺の範囲の波長以外の波長の電磁スペクトルのオフサルミックシステムによる減衰は、場合によっては20%以下、15%以下、10%以下であり、また、他の実施形態では5%以下である。
【0076】
また、本発明の実施形態は、さらに、紫外線放射であるUVAおよびUVBスペクトル帯域、ならびに波長が700nmより長い赤外線放射を遮断することができる。
【0077】
上で開示したオフサルミックシステムは、すべて、めがね、サングラス、ゴーグルまたはコンタクトレンズなどの外部着用アイウェアを始めとするアイウェア物品に組み込むことができる。このようなアイウェアの場合、システムの青色遮断コンポーネントは色平衡コンポーネントの後側に位置しているため、青色遮断コンポーネントは、アイウェアが着用されると常に色平衡コンポーネントよりも眼に近くなる。また、オフサルミックシステムは、外科的に移植可能な眼内レンズのような製造物品に使用することも可能である。
【0078】
いくつかの実施形態には、青色光を遮断するための膜が使用されている。オフサルミックシステムまたは他のシステム内の膜は、400nm〜460nmの範囲内の青色光の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%および/または少なくとも50%を選択的に禁止することができる。本明細書において使用されているように、膜は、膜が波長範囲内における少なくとも一部の透過を禁止すると、その波長範囲を「選択的に禁止し」、一方、その波長範囲外の可視波長の透過にはほとんど影響を及ぼさないか、あるいはまったく影響を及ぼさない。膜および/または膜を組み込んだシステムは、その色平衡化が可能であり、それにより観察者および/または使用者による知覚を無色にすることができる。本発明による膜を組み込んだシステムは、85%またはそれより良好な可視光の暗所視視感透過率を有することができ、したがって、さらに、膜またはシステムを通して見ている人にほぼ正常な色視を持たせることができる。
【0079】
図30は、本発明の一例示的実施形態を示したものである。膜3002は、1つまたは複数のベース材料3001、3003の2つの層または領域の間に配置することができる。本明細書においてさらに説明されているように、この膜は、特定の波長の光を選択的に禁止する染料を含有することができる。これらの1つまたは複数のベース材料は、レンズ、オフサルミックシステム、窓またはこの膜を配置することができる他のシステムに適した任意の材料であってよい。
【0080】
図31において、430nm±10nmの範囲の青色光の約50%が遮断され、一方、可視スペクトル内の他の波長には最小の損失が付与される、本発明による一例示的膜の光透過率特性が示される。図31に示されている透過率は例示的なものであり、多くの適用に対しては、場合によっては50%未満の青色光を選択的に禁止し、かつ/または禁止される特定の波長を変更することができることが望ましいことは理解されよう。多くの適用では、50%未満の青色光を遮断することによって細胞の死滅を低減し、あるいは防止することができると考えられている。例えば、場合によっては約40%を選択的に禁止することが好ましく、約30%を選択的に禁止することがより好ましく、約20%を選択的に禁止することがさらに好ましく、約10%を選択的に禁止することがさらに好ましく、また、400〜460nmの範囲の光の約5%を選択的に禁止することがより好ましい。より少ない量の光を選択的に禁止することにより、エネルギーの大きい光による損傷を防止することができ、かつ、その禁止によってシステムの使用者の暗所視および/または概日サイクルに悪影響を及ぼさないだけの最小の量にすることができる。
【0081】
図32は、本発明によるオフサルミックレンズ3200に組み込まれた膜3201を示したもので、膜3201は、オフサルミック材料3202、3203の層の間にはさまれている。オフサルミック材料の前面の層の厚さは、単なる例にすぎないが、200ミクロンないし1,000ミクロンの範囲である。
【0082】
同様に、図33は、本発明による、自動車フロントガラスなどの一例示的システム3300を示したものである。膜3301は、システム3300に組み込むことができ、ベース材料3302、3303の層の間にはさまれている。例えば、システム3300が自動車フロントガラスである場合、ベース材料3302、3303は、広く使用されている風防ガラスであってもよい。視覚システム、表示システム、オフサルミックシステムおよび他のシステムを始めとする他の様々なシステムでは、本発明の範囲を逸脱することなく異なるベース材料を使用することができることは理解されよう。
【0083】
一実施形態では、本発明によるシステムは、関連する放出可視光が極めて特殊なスペクトルを有している環境で動作させることができる。このようなレジームでは、場合によっては膜のフィルタリング効果を適合させて、透過する光、反射する光またはアイテムによって放出される光を最適化することが望ましい。これは、例えば、透過する光、反射する光または放出される光の色が基本的な重要事項である場合がそうである。例えば、本発明による膜をカメラフラッシュまたはフラッシュフィルタに使用し、あるいはそれらと共に使用する場合、場合によってはイメージまたはプリントの知覚色を可能な限り真の色に近づけることが望ましい。他の実施例として、本発明による膜は、患者の眼の後側の疾患を観察するための機器に使用することができる。このようなシステムの場合、場合によっては膜が網膜の真の観察色を妨害しないことが重要である。もう1つの実施例として、場合によっては本発明による膜を利用した波長個別化フィルタから特定の形態の人工照明を利用することも可能である。
【0084】
一実施形態では、光互変異性オフサルミックレンズ、エレクトロクロミックオフサルミックレンズもしくは可変色合いオフサルミックレンズ、窓または自動車フロントガラスに本発明による膜を利用することができる。このようなシステムは、着色が有効ではない環境におけるUV光波長、直射日光強度および青色光波長からの保護を可能にすることができる。この実施形態では、膜の青色光波長保護属性は、場合によっては着色が有効であるかどうかに無関係に有効である。
【0085】
一実施形態では、膜は、青色光を選択的に禁止することができ、かつ、その膜を色平衡することができ、また、可視光の85%以上の暗所視視感透過率を有することができる。このような膜は、場合によっては、運転めがねまたはスポーツめがねなどを使用して光の透過率を小さくするのに有用であり、また、コントラスト感度が高いため、優れた視覚性能を提供することができる。
【0086】
適用によっては、本発明によるシステムは、場合によっては、本明細書において説明されているように青色光を選択的に禁止することが望ましく、また可視スペクトル全体にわたって約85%未満、典型的には約80〜85%の視感透過率を有していることが望ましい。これは、例えば、システムに使用されているベース材料がそのより大きい屈折率のためにすべての可視波長にわたってより多くの光を禁止する場合がそうである。特定の一例として、屈折率が大きい(例えば1.7)レンズは、85%未満の視感透過率をもたらす波長全体にわたってより多くの光を反射することができる。
【0087】
従来の青色遮断システムが抱えている問題を回避し、抑制し、あるいは除去するためには、場合によっては光毒性青色光の透過率をゼロにするのではなく、小さくすることが望ましい。眼の瞳孔は、入射束と網膜および瞳孔の投影面積の波長依存感度の積であるトロランド単位の明所視網膜照度に反応する。網膜の前面に置かれたフィルタは、コンタクトレンズまたは角膜置換の場合のように眼に取り付けられた眼内レンズのような眼の中であれ、あるいはめがねレンズの場合のように眼の光路内であれ、網膜に対する光の総束を少なくして瞳孔の弛緩を刺激し、したがって視野照度の低減を補償することができる。安定した輝度の視野に露出されると、瞳孔の直径は、通常、輝度の減少に伴って増加する値の近辺で変動する。
【0088】
Moon and Spencer、J.Opt.Soc.Am.v.33、260頁(1944年)(非特許文献5)によって記述されている瞳孔面積と視野照度の間の関数関係には、瞳孔径に対する次の式が使用されている。
d=4.9−3tanh(Log(L)+1)(0.1)
dの単位はミリメートルであり、Lはcd/m単位の照度である。図34Aは、視野照度(cd/m)を関数とした瞳孔径(mm)を示したものである。図34Bは、視野照度を関数とした瞳孔面積(mm)を示したものである。
【0089】
照度は、国際CIE規格によって、波長に対する視覚感度のスペクトルで重み付けされた積分として定義されている。
【0090】
【数1】

【0091】
’は、暗所視(夜)の場合、1700.06lm/Wに等しく、明所視(日中)の場合、K=683.2lm/Wであり、また、スペクトル視感効率関数VλおよびVλ’は、標準明所視および暗所視観察者を定義している。視感効率関数VλおよびVλ’は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Michael Kalloniatis and Charles Luu、「Psychophysics of Vision」available at http://webvision.med.utah.edu/Phychl.html、last visited August 8、2007年(非特許文献6)の図9に示されている。
【0092】
眼内レンズ、コンタクトレンズまたはめがねレンズの形態の吸収型オフサルミックエレメントを間に置くことにより、式
【0093】
【数2】

【0094】
に従って照度が小さくなる。Tλは光エレメントの波長依存透過率である。フィルタリングされていない照度値に正規化された式1.3の積分の値は、表Iに示されている従来技術による青色遮断レンズの各々に対する式1.2から計算されたものである。
【0095】
【表1】

【0096】
表Iを参照すると、Prattによるオフサルミックフィルタは、暗所視を低下させ、かつ、式1.1に従って瞳孔弛緩を刺激することになる減衰であるその非フィルタリング値の83.6%だけ暗所視感度を鈍感にしている。Mainsterによって記載されたデバイスは、22.5%だけ暗所視束を少なくしており、これは、Prattのデバイスほどには厳しくないが、依然として重大である。
【0097】
それとは対照的に、本発明による膜は、吸収型または反射型オフサルミックエレメントを使用して部分的に青紫色光および青色光を減衰させているが、暗所視照度の低下は、その非フィルタリング値のせいぜい15%にすぎない。驚くべきことには、本発明によるシステムは、青色光の所望の領域を選択的に禁止し、その一方で明所視および暗所視にはほとんど影響を及ぼさないか、あるいはまったく影響を及ぼさないことが分かった。
【0098】
一実施形態では、437nmの光の吸収を最大として約2/3の光を吸収するだけの十分な濃度および厚さのペリレン(C20H12、CAS #198−55−0)がオフサルミックデバイスに組み込まれている。図35において、このデバイスの透過率スペクトルが示される。このフィルタによって生じる照度の変化は、表Iに示されているように、暗所視観察条件で約3.2%にすぎず、また、明所視観察条件の下で0.4%にすぎない。デバイス中のペリレンの濃度を濃くし、あるいは厚さを分厚くすることにより、ベールの法則に従って個々の波長における透過率が小さくなる。図36は、ペリレンの濃度が図6の場合の2.27倍であるデバイスの透過率スペクトルを示したものである。このデバイスは、図6に示されているデバイスより多くの光毒性青色光を選択的に遮断するが、暗所視照度が6%未満だけ小さくなり、また、明所視照度が0.7%未満だけ小さくなる。染料による吸収の効果のみを示すために、図35および36には、スペクトルから反射が除去されていることに留意されたい。
【0099】
ペリレン以外の染料は、青色波長またはほぼ青色の波長範囲で強力に吸収し、また、可視スペクトルの他の領域ではほとんど吸収しないか、あるいはまったく吸収しない。図46に示されているこのような染料の例には、単独または組み合わせて使用し、小さいが400nm〜460nmで除去されない透過率を得ることができるポルフィリン、クマリンおよびアクリジン系分子がある。したがって、本明細書において説明されている方法およびシステムは、他の分子構造に基づく同様の染料を、ペリレン、ポルフィリン、クマリンおよびアクリジンの透過率スペクトルを模倣する濃度で使用することができる。
【0100】
本発明の実施形態による光路中への染料の挿入は、光製造分野の熟練者には馴染みの多種多様な方法によって達成することができる。1つまたは複数の染料を、直接基板に組み込み、重合コーティングに加え、レンズ中に吸収し、染料が注入された層を備えた積層構造中に組み込み、あるいは染料が注入された微粒子との複合材料として使用することができる。
【0101】
本発明の他の実施形態によれば、青紫色および青色のスペクトル領域でとりわけ反射性であり、かつ、より長い波長で無反射性である誘電体コーティングを加えることができる。Angus McLeod、Thin Film Optical Filters(McGraw−Hill:NY)1989年(非特許文献7)などのテキストブックに、適切な誘電体光フィルタを設計するための方法が要約されている。図37において、本発明による6層のSiOおよびZrOのスタックの一例示的透過率スペクトルが示される。もう一度表Iを参照すると、この光フィルタは、光毒性青色光および青紫色光を遮断し、その一方で、暗所視照度を5%未満だけ小さくし、かつ、明所視照度を3%未満だけ小さくしていることが分かる。
【0102】
従来の多くの青色遮断技術は、可能な限り多くの青色光の禁止を試行しているが、現在の研究は、多くの適用では、場合によっては比較的微少量の青色光を禁止することが望ましいことを提案している。例えば、暗所視に対する望ましくない影響を防止するためには、本発明によるオフサルミックシステムの場合、約30%の青色(つまり380〜500nmの)波長の光のみを禁止することが場合によっては望ましく、約20%の青色光のみを禁止することがより好ましく、約10%の青色光のみを禁止することがさらに好ましく、また、約5%の青色光のみを禁止することがより好ましい。青色光の禁止を5%程度に抑えることによって細胞の死滅を少なくすることができ、一方、この程度の青色光の減少では、システムを使用する人々の暗所視および/または概日挙動に対する影響はほとんどないか、あるいはまったくないと考えられている。
【0103】
本明細書において使用されているように、青色光を選択的に禁止する本発明による膜は、膜を組み込んだベースシステムに対して測定された光のうちの一定の量を禁止する、として記述されている。例えば、オフサルミックシステムは、ポリカーボネートまたは他の同様のベースをレンズのために使用することができる。このようなベースのために一般的に使用される材料は、様々な量の可視波長の光を禁止することができる。本発明による青色遮断膜がシステムに追加されると、膜は、膜が存在しない場合に同じ1つまたは複数の波長で透過することになる光の量に対して測定されたものとして、すべての青色波長の5%、10%、20%、30%、40%および/または50%を選択的に禁止することができる。
【0104】
本明細書において開示されている方法およびデバイスは、青色を遮断することによって生じる色知覚のシフトを最小化することができ、また、好ましくは除去することができる。人間の視覚システムによって知覚される色は、異なるスペクトル応答特性で網膜色素に入射する光信号の神経処理によって生じる。色知覚を数学的に記述するために、3つの波長依存色整合関数とスペクトルイラディアンスの積を積分することによって色空間が構築される。それにより、知覚された色を特性化する3つの数字が得られる。知覚された色は、Commission Internationale de L’eclairage(CIE)によって確立された一様な(L、a、b)色空間を使用して特性化することができるが、色科学の分野の熟練者には代替色標準に基づく同様の計算も馴染みであり、同じく使用することができる。(L、a、b)色空間は、L軸上の輝度を定義し、また、a軸およびb軸によって画定される平面内の色を定義している。空間のデカルト距離は、2つの対象の間の知覚色の差の大きさに比例するため、このCIE規格によって定義されているような一様な色空間は、計算アプリケーションおよび比較アプリケーションには場合によっては好ましい。例えばWyszecki and Stiles、Color Science:Concepts and Methods,Quantitative Data and Formulae(Wiley:New York)1982年(非特許文献2)に記載されているように、一様な色空間の使用については当分野で概ね認識されている。
【0105】
本明細書において説明されている方法およびシステムによる光学設計には、視覚環境を記述するスペクトルのパレットを使用することができる。このパレットの非制限の例は、互いに最小可知的差異になるように心理学的実験によって確立された1,269色のタイルからなるマンセルマットカラーパレットである。これらのタイルのスペクトルイラディアンスは、標準の照明条件の下で測定される。(L、a、b)色空間内のD65昼光発光体によって照明されたこれらのタイルの各々に対応する色座標のアレイは、色ひずみの基準であり、図38に示されている。次に、青色遮断フィルタによって色タイルのスペクトルイラディアンスが変調され、新しい一組の色座標が計算される。個々のタイルは、(L、a、b)座標の幾何学的変位に対応する量だけシフトした知覚色を有している。この計算は、平均色ひずみが(L、a、b)空間における41最小可知的差異(JND)ユニットであるPrattの青色遮断フィルタに適用されている。Prattフィルタによって生じる最小ひずみは19JND、最大ひずみは66JND、標準偏差は7JNDである。図39A(一番上)において、全1,269色タイルの色シフトのヒストグラムが示される。
【0106】
次に図39Bを参照すると、Mainster青色遮断フィルタによって誘導される色シフトは、最小値6JND、平均値19JND、最大値34JNDおよび標準偏差6JNDを有している。
【0107】
ペリレン染料を2つの濃度で使用した本発明の実施形態、または上で説明した反射型フィルタは、表IIに示されているように、平均ひずみとして測定されたものであれ、最小ひずみとして測定されたものであれ、あるいは最大ひずみとして測定されたものであれ、従来のデバイスより実質的に小さい色シフトを有することができる。図40は、本発明によるペリレン染色基板の色シフトのヒストグラムを示したものであり、図35において、その透過率スペクトルが示される。注目すべきことには、シフトは、すべての色タイル全体にわたって、Mainster、Pratt等々によって記述されている従来のデバイスのシフトより実質的に小さく、かつ、狭いことが分かった。例えば、シミュレーションの結果によれば、本発明による膜の(L、a、b)シフトは、12JNDおよび20JND程度の小さいシフトを示し、すべてのタイル全体の平均シフトは、7〜12JND程度を示した。
【0108】
【表2】

【0109】
一実施形態では、反射型エレメントと吸収型エレメントの組合せは、有害な青色光子をフィルタ除去し、かつ、比較的大きい視感透過率を維持することができる。そのため、本発明によるシステムは、瞳孔の弛緩を回避し、あるいは抑制することができ、暗所視に対する損傷から保護し、あるいは損傷を防止することができ、また、色ひずみを小さくすることができる。この手法の一実施例は、図41に示されている透過率スペクトルが得られる、図37に示されている誘電体スタックと図35のペリレン染料との組合せである。このデバイスは、97.5%の明所視透過率、93.2%の暗所視透過率および11JNDの平均色シフトを有していることが分かった。図42において、昼光中のマンセルタイルに対するこのデバイスの色ひずみを要約したヒストグラムが示される。
【0110】
他の実施形態では、オフサルミックフィルタは、例えば眼の外部のめがねレンズ、ゴーグル、バイザー、等々である。従来のフィルタを使用すると、外部の観察者から見た着用者の顔の色がレンズによって着色されて見えることがある。つまり、他の人から見た場合、通常、顔色または皮膚の色合いが青色遮断レンズによってシフトする。青色光の吸収に伴うこの黄色の変色は、美容的に望ましくないことがしばしばである。この色シフトを最小化するための手順は、マンセルタイルに関連して上で説明した手順とまったく同じであり、着用者の皮膚の反射率がマンセル色タイルの反射率に取って代わっている。皮膚の色は、その色どり、血流および照明状態の関数である。図43A〜Bにおいて、異なる人種の被検体からの一連の代表的な皮膚反射率スペクトルが示される。図44において、白色人種の被検体の一例示的皮膚反射率スペクトルが示される。昼光(D65)照明におけるこの皮膚の(L、a、b)色座標は(67.1、18.9、13.7)である。Pratt青色遮断フィルタを間に置くことにより、これらの色座標が69JNDユニットのシフトである(38.9、17.2、44.0)に変化する。Mainster青色遮断フィルタは、色座標を17JNDユニットだけ(62.9、13.1、29.3)へシフトさせる。対照的に、本明細書において説明されているペリレンフィルタによる色シフトは、6JNDつまりMainsterフィルタによる色シフトの1/3にすぎない。表IIIにおいて、昼光照明下における様々な青色遮断フィルタを使用した一例示的白色人種の皮膚のコスメチック色シフトの要約が示される。表Iに関連して示されているデータは、ベース材料によってもたらされるあらゆる影響を除去するために正規化されている。
【0111】
【表3】

【0112】
一実施形態では、発光体をフィルタリングし、それにより、網膜に対する青色光の束を除去するのではなく、少なくすることができる。これは、本明細書において説明されている原理を使用した吸収型エレメントまたは反射型エレメントを視野と照明源の間に使用して達成することができる。例えば、ペリレンを含有した膜で建築用の窓を覆い、その窓の透過率スペクトルと図35に示されている透過率スペクトルとを整合させることができる。このようなフィルタは、通常、コーティングが施されていない窓と比較しても、瞳孔弛緩を誘導することはなく、また、外部昼光が瞳孔を透過する際に目につくほどの色シフトの原因になることもない。本発明による青色フィルタは、蛍光灯、白熱電球、アーク灯、フラッシュランプおよびダイオードランプ、ディスプレイ、等々などの人工発光体上で使用することができる。
【0113】
本発明による膜は、様々な材料を使用して構築することができる。このような例示的材料のうちの2つは、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)である。PVA膜の場合、アセテート基を除去するためにポリ酢酸ビニルの部分的または完全な加水分解によって準備することができる。膜の形成、乳化が有利であり、また、接着特性が優れているため、場合によってはPVA膜であることが望ましい。さらに、PVA膜は、高い引張り強さ、可撓性および高温安定性を有しており、優れた酸素障壁を提供する。
【0114】
PVB膜は、ブチルアルデヒド中のポリビニルアルコールの反応によって準備することができる。PVBは、場合によっては高い強度、光透明性、可撓性および靭性を必要とする適用に適している。また、PVBは、優れた膜形成特性および接着特性を有している。
【0115】
PVA、PVBおよび他の適切な膜を押し出し、溶液から鋳造し、スピン塗布した後に硬化させることができ、あるいは浸漬被覆を施した後に硬化させることができる。当分野で知られている他の製造方法を使用することも可能である。膜の所望のスペクトルプロファイルを生成するために必要な染料を組み込むためのいくつかの方法が存在している。例示的染料統合方法には、気相成長、膜内の化学交差結合、微小重合体微小球内での溶解および引き続く膜内への統合がある。Keystone、BPI & Phantomを始めとする会社から適切な染料を商用的に入手することができる。
【0116】
めがねレンズの染色は、ほとんどの場合、レンズが製造者から出荷された後に実施される。したがって、場合によってはレンズ自体を製造している間に青色吸収染料を組み込むことが望ましい。そのためには、レンズ材料へのハードコーティングの接着を促進するハードコーティングおよび/または関連するプライマーコーティングの中にフィルタリングおよび色平衡染料を組み込むことができる。例えば、最終製品の耐久性を増し、かつ、引っ掻き傷に対する耐性を増すために、製造プロセスの最後に、めがねレンズまたは他のオフサルミックシステムの一番上にプライマーコートおよび関連するハードコートが加えられることがしばしばである。ハードコートは、通常、システムの一番外側の層であり、システムの前面、背面または前面および背面の両方の表面に置くことができる。
【0117】
図47は、ハードコーティング4703およびその関連する接着促進プライマーコート4702を有する一例示的システムを示したものである。例示的ハードコーティングおよび接着促進プライマーコーティングは、Tokuyama、UltraOptics、SDC、PPGおよびLTIなどの製造者から入手することができる。
【0118】
本発明によるシステムでは、プライマーコーティング1802の中に青色遮断染料および色平衡染料の両方を含めることができる。また、青色遮断染料および色平衡染料は、いずれもハードコーティング1803の中に含めることも可能である。これらの染料を同じコーティング層の中に含める必要はない。例えば、ハードコーティング1803の中に青色遮断染料を含め、また、プライマーコーティング1802の中に色平衡染料を含めることができる。ハードコーティング1803の中に色平衡染料を含め、また、プライマーコーティング1802の中に青色遮断染料を含めることも可能である。
【0119】
本発明によるプライマーコートおよびハードコートは、スピン塗布、浸漬コーティング、スプレーコーティング、蒸着、スパッタリングおよび化学気相成長を始めとする当分野で知られている方法を使用して付着させることができる。個々の層に含めるべき青色遮断染料および/または色平衡染料は、例えば染料を液体コーティング材料の中に溶解させ、得られた混合物をシステムに加える場合のように、層の付着と同時に付着させることができる。また、例えばコートが硬化し、または乾燥する前に、あるいはコートを加える前に染料を表面に噴霧する場合のように、個別のプロセスまたはサブプロセスで染料を付着させることも可能である。
【0120】
ハードコートおよび/またはプライマーコートは、膜に関して、本明細書において説明されている機能を実行し、かつ、本明細書において説明されている利点を達成することができる。詳細には、1つまたは複数のコートは、青色光を選択的に禁止することができ、その一方で、望ましい明所視、暗所視、概日リズムおよび光毒性レベルを維持することができる。また、本明細書において説明されているハードコートおよび/またはプライマーコートは、本明細書において説明されている膜を任意の様々な組合せで組み込んだオフサルミックシステムに使用することも可能である。特定の一実施例として、オフサルミックシステムは、青色光を選択的に禁止する膜および色修正を提供するハードコートを備えることができる。
【0121】
また、本発明の選択型フィルタは、優れたコントラスト感度を提供することも可能である。このようなシステムは、眼に見えない有害な光および可視光を選択的にフィルタ除去し、かつ、明所視、暗所視、色視および/または概日リズムに対する影響を最小化し、その一方で、許容可能なコントラスト感度、さらには改善されたコントラスト感度を維持するように機能する。本発明は、特定の実施形態では、選択型フィルタが適用されるデバイスの最終残留色がほとんど無色になるように体系化することができ、また、ほぼ透明な残留色を必要としない他の実施形態の場合、残留色が黄色になるように体系化することができる。好ましいことには、この選択型フィルタの黄色性は、主観的な個々の着用者にとって当たりさわりのない色である。黄色性は、ASTM E313−05などの黄色性指標を使用して定量的に測定することができる。この選択型フィルタの黄色性指標は、最大で50、40、35、30、25、23、20、15、10、9、7または5であることが好ましい。
【0122】
本発明には、窓、自動車フロントガラス、白熱電球、フラッシュバルブ、蛍光照明、LED照明、テレビジョン、コンピュータモニタ、等々などの選択型光波長フィルタリング実施形態を含むことができる。本発明によって、網膜に影響を及ぼすあらゆる光を選択的にフィルタ除去することができる。本発明を可能にしているのは、単なる例にすぎないが、選択型フィルタリング染料または顔料を含有した膜、基板が製造された後に加えられる染料成分または顔料成分、基板材料の製造または形成に不可欠の染料成分、メラニン、ルテインまたはゼアキサンチンなどの合成色素または天然色素、コンタクトレンズの場合のように視感度ティント(1つまたは複数の色を有している)として提供される選択型フィルタリング染料または顔料、オフサルミック耐引っ掻き傷コーティング(ハードコート)の中に提供される選択型フィルタリング染料または顔料、オフサルミック無反射コートの中に提供される選択型フィルタリング染料または顔料、疎水性コーティング、干渉フィルタ、選択型光波長フィルタの中に提供される選択型光波長フィルタリング染料または顔料、フォトクロミックレンズの中に提供される選択型光波長フィルタリング染料または顔料、もしくは白熱電球または白熱管のマトリックスの中に提供される選択型光波長フィルタリング染料または顔料である。本発明には、選択型光波長フィルタは、可視スペクトル全体にわたって一様に波長をフィルタ除去することはまったくないが、1つの特定の範囲の波長または複数の特定の範囲の波長を選択的にフィルタ除去することが企図されていることに留意されたい。
【0123】
選択型光波長フィルタを基板材料に提供する方法については、当業者には容易に分かるであろう。単なる例にすぎないが、選択型フィルタは、基板の原料に吸収させ、注入し、浸み込ませ、加え、重合に先立って樹脂に加え、選択型フィルタ染料または顔料を含有した膜によって光レンズ内で層にすることができる。
【0124】
本発明には、適切な濃度の染料および/または顔料を利用することができ、例えば、単なる例にすぎないが、ペリレン、ポルフィリンまたはそれらの誘導体などを利用することができる。図48を参照して、可変濃度のペリレンおよび430nm近辺の光の波長を遮断する機能能力を観察する。透過率のレベルは、染料の濃度によって制御することができる。他の染料の化学的性質によっても吸収ピーク位置を調整することができる。
【0125】
適切な濃度レベルのペリレンは、明所視比率、暗所視比率、概日比率および光毒性比率の平衡を提供し、かつ、ほぼ無色の外観を維持する。
【0126】
【表4】

【0127】
適切な濃度のペリレンによってコントラスト感度が高くなることが分かる。表VI、例2を参照されたい。単なる例にすぎないが、ペリレン系染料または顔料のファミリを使用して本発明を可能にしていることに留意されたい。このような染料を使用する場合、実施形態または適用に応じて、染料がこし取ることがないよう、基板または基板に加えられるコーティングに分子的または化学的に結合されるように染料を形成することができる。単なる例にすぎないが、この適用は、場合によっては、コンタクトレンズ、IOL、角膜インレー、角膜アンレー、等々と共に使用するための適用である。
【0128】
選択型フィルタは、科学が他の可視光波長を危険な波長と見なすと、他のターゲット波長を妨害するように組み合わせることができる。
【0129】
本発明の一実施形態では、コンタクトレンズは、コンタクトレンズ材料をこし取ることがないように形成されたペリレン染料からなっている。染料は、さらに、黄色いキャストを有する色合いを提供するように形成される。この黄色いキャストにより、いわゆる着用者のためのハンドリングティントをコンタクトレンズに持たせることができる。ペリレン染料または顔料は、さらに、図48に示されている選択型フィルタリングを提供する。このフィルタリングにより、人の明所視、暗所視、色視または概日リズムに大きな犠牲を何ら伴うことなく網膜保護が提供され、また、優れたコントラスト感度が提供される。
【0130】
本発明によるコンタクトレンズの実施形態の場合、単なる例にすぎないが、吸収によってコンタクトレンズの中に染料または顔料を付与することができ、したがってコンタクトレンズの中心の直径10mm以内の円内、好ましくは着用者の瞳孔と一致するコンタクトレンズの中心の直径6〜8mm以内に染料または顔料を配置することができる。この実施形態では、選択型光波長フィルタリングを提供する染料または顔料の濃度が、着用者の明所視、暗所視、色視または概日リズム(のうちの1つまたは複数、あるいはそれらのすべて)に大きな犠牲を何ら伴うことなく、高いコントラスト感度(コンタクトレンズを着用しない場合とは異なり)を着用者に提供するレベルまで高くなっている。
【0131】
コントラスト感度の向上は、使用者の機能明瞭度コントラスト検査(Functional Acuity Contrast Test(FACT))スコアの少なくとも約0.1、0.25、0.3、0.5、0.7、1、1.25、1.4または1.5の向上によって立証されることが好ましい。着用者の明所視、暗所視、色視および/または概日リズムに関しては、オフサルミックシステムは、これらの特性のうちの1つまたはすべてがオフサルミックシステムがない場合の特性レベルの15%以内、10%以内、5%以内または1%以内を維持することが好ましい。
【0132】
コンタクトレンズを利用した本発明の他の実施形態では、コンタクトレンズの中心の直径5〜7mmの部分に黄色がかった色合いをもたらす染料または顔料が提供され、その中央部分の色合いの色の周囲に第2の色の色合いが加えられる。この実施形態では、選択型光波長フィルタリングを提供する染料の濃度が、この場合も同じく着用者の明所視、暗所視、色視または概日リズム(のうちの1つまたは複数、あるいはそれらのすべて)に大きな犠牲を何ら伴うことなく、極めて良好なコントラスト感度を着用者に提供するレベルまで高くなっている。
【0133】
コンタクトレンズを利用した本発明のさらに他の実施形態では、染料または顔料は、それらがほぼ1つの縁から他の縁までコンタクトレンズの直径全体にわたって位置するように提供される。この実施形態では、選択型光波長フィルタリングを提供する染料の濃度が、この場合も同じく着用者の明所視、暗所視、色視または概日リズム(のうちの1つまたは複数、あるいはそれらのすべて)に大きな犠牲を何ら伴うことなく、極めて良好なコントラスト感度を着用者に提供するレベルまで高くなっている。
【0134】
本発明による様々な実施形態を人間または動物の組織内または組織上で使用する場合、染料は、インレー基板材料に化学的に結合する方法で形成され、したがって染料が周囲の角膜組織中でこし取ることがないことが保証される。この結合を可能にする化学フックを提供するための方法は、化学および重合体産業でよく知られている。
【0135】
本発明のさらに他の実施形態では、眼内レンズは、黄色がかった色合いを有する選択型光波長フィルタであって、着用者の明所視、暗所視、色視または概日リズム(のうちの1つまたは複数、あるいはそれらのすべて)に大きな犠牲を何ら伴うことなく、改良型コントラスト感度を着用者にさらに提供する選択型光波長フィルタを備えている。選択型フィルタを眼内レンズ上または眼内レンズ内で利用する場合、眼内レンズのコスメチクスが着用者を見ている人の眼には見えないため、染料または顔料のレベルをめがねレンズのレベルより高くすることができる。これは、染料または顔料の濃度を高くする能力を可能にし、また、着用者の明所視、暗所視、色視または概日リズム(のうちの1つまたは複数、あるいはそれらのすべて)に大きな犠牲を何ら伴うことなく、さらに高いレベルの改良型コントラスト感度を提供する能力を可能にしている。
【0136】
本発明のさらに他の実施形態では、めがねレンズは、ペリレンを有する染料を含有した選択型光波長フィルタを備えており、染料の体系化により、ほぼ無色の外観を有するめがねレンズが提供される。さらにまた、着用者の明所視、暗所視、色視または概日リズム(のうちの1つまたは複数、あるいはそれらのすべて)に大きな犠牲を何ら伴うことなく、改良型コントラスト感度が着用者に提供される。本発明のこの特定の実施形態では、染料または顔料は、めがねレンズ内またはめがねレンズの表面に配置された膜の中に付与されている。
【0137】
(実施例)
(実施例1)
青色遮断染料の濃度が可変の統合膜を有するポリカーボネートレンズが製造され、図45に示されているように個々のレンズの透過率スペクトルが測定された。使用されたペリレン濃度は、2.2mmのレンズ厚さでそれぞれ35、15、7.6および3.8ppm(重量ベースで)であった。表IVにおいて、レンズ毎に計算された様々なメトリクスが示され、図45の参照番号に対応する番号が参照されている。光の選択吸光度は、ベールの法則によれば、主として染料濃度とコーティング厚さの積で決まるため、ハードコートおよび/またはプライマーコートを膜と共に使用し、あるいは膜の代わりに使用して、匹敵する結果を達成することができると考えられている。
【0138】
【表5】

【0139】
35ppm染色レンズを除き、表IVおよび図45で説明されているすべてのレンズには、380nm未満のUV波長を禁止するために通常はオフサルミックレンズシステムに使用されるUV染料が含まれている。明所視比率は正常視覚を表しており、フィルタ透過率スペクトルおよびVλ(明所視視覚感度)の積分をフィルタリングされていない光およびこれと同じ感度曲線の積分で割った値として計算されている。暗所視比率は、薄暗い照明状態における視覚を表しており、フィルタ透過率スペクトルおよびV’λ(暗所視視覚感度)の積分をフィルタリングされていない光およびこれと同じ感度曲線の積分で割った値として計算されている。概日比率は、概日リズムに対する光の影響を表しており、フィルタ透過率スペクトルおよびM’λ(メラトニン抑制感度)の積分をフィルタリングされていない光およびこれと同じ感度曲線の積分で割った値として計算されている。光毒性比率は、エネルギーの大きい光への露光によって眼に生じる損傷を表しており、フィルタ透過率およびBλ(有水晶体UV青色光毒性)の積分をフィルタリングされていない光およびこれと同じ感度曲線の積分で割った値として計算されている。これらの値を計算するために使用される応答関数は、Mainster and Sparrow、「How Much Blue Light Should an IOL Transmit?」Br.J.Ophthalmol.、2003年、v.87、1523−29頁(非特許文献1)、Mainster、「Intraocular Lenses Should Block UV Radiation and Violet but not Blue Light」Arch.Ophthal.、v.123、550頁(2005年)(非特許文献4)、およびMainster、「Violet and Blue Light Blocking Intraocular Lenses:Photoprotection vs.Photoreception」、Br.J.Ophthalmol、2006年、v.90、784〜92頁(非特許文献8)に開示されている応答関数に対応している。適用によっては異なる光毒性曲線が適切であるが、計算方法は同じである。例えば、眼内レンズ(IOL)適用の場合、無水晶体光毒性曲線を使用しなければならない。さらに、光毒性光機構についての理解の進展に応じて新しい光毒性曲線を適用することも可能である。
【0140】
上で説明した例示的データが示しているように、本発明によるシステムは、青色光、とりわけ400nm〜460nmの領域の光を選択的に禁止することができ、その一方で依然として少なくとも約85%の明所視視感透過率を提供することができ、また、約80%未満、より好ましくは約70%未満、さらに好ましくは約60%未満、より好ましくは約50%未満の光毒性量を提供することができる。上で説明したように、本明細書において説明されている技法を使用して、最大95%以上の明所視視感透過率を達成することも可能である。
【0141】
本明細書において説明されている原理は、光毒性青色光の一部をフィルタリングし、その一方で、オフサルミックデバイスによる瞳孔弛緩、暗所視感度、色ひずみを抑制し、かつ、オフサルミックデバイスを顔に着用している人を見ている観察者の視点から外部のオフサルミックデバイスのコスメチックカラーを抑制する目的で、様々な発光体、フィルタおよび皮膚の色合いに適用することができる。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態について、本明細書において明確に図に示し、かつ/または説明した。しかしながら、本発明の変更態様および変形形態は、上記の教示に包含されており、本発明の精神および意図する範囲から逸脱することなく、以下の特許請求の範囲内であることは理解されよう。例えば、本明細書において説明されている方法およびシステムは、特定の染料、誘電体光フィルタ、皮膚の色合いおよび発光体の例を使用して説明されているが、代替の染料、フィルタ、皮膚の色および発光体を使用することができることは理解されよう。
【0143】
(実施例2)
透明フィルタに対して1倍および2倍の染料濃度をコントロールとして使用して9人の患者のコントラスト感度が検査された。機能明瞭度コントラスト検査(FACT)によれば、9人の患者のうちの7人がコントラスト感度が総合的に改善されたことを示した。表VIを参照されたい。
【0144】
【表6】

【符号の説明】
【0145】
100、150、300、400、500、700、702、800、3200 オフサルミックシステム(オフサルミックレンズ)
101、103 後側青色遮断コンポーネント(単一視覚レンズ、ウェハまたは光プリフォーム、後側青色遮断エレメント)
102、104 前側色平衡コンポーネント
110 後側青色遮断コンポーネントの後側側面または表面
115 前側色平衡コンポーネントの後側側面または表面
120 後側青色遮断コンポーネントの前側側面または表面
125 前側色平衡コンポーネントの前側側面または表面
201 染料レジスト
301 オフサルミックコンポーネント(透明またはほぼ透明な単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォーム、オフサルミック材料、内部層)
302、303 オフサルミックコンポーネント中への色合いしみ込み深さに対応する部分(色平衡層、オフサルミック材料)
401 オフサルミックコンポーネント(透明またはほぼ透明な単一視覚レンズまたは多焦点レンズ、ウェハあるいは光プリフォーム、オフサルミック材料)
402 無色の単量体
403 インモールドコーティング
501 第1のオフサルミックコンポーネント
502 UV硬化性または可視光硬化性接着剤
503 第2のオフサルミックコンポーネント
601 第1のARコンポーネント
602 第2のARコンポーネント
701 ARコーティングまたは他の層(ARコンポーネント)
703 青色遮断コンポーネント
704 色平衡コンポーネント(色平衡層)
705 他のARコーティングまたは層(他のARコンポーネント)
801 ARコンポーネント
802 透明オフサルミックレンズ
803 単一コンポーネント(結合機能コンポーネント)
900 座標(0.33、0.33)を示す基準点
1510 ARコーティングが施されたポリカーボネートを示すより黒い線
1520 コーティングが施されていないポリカーボネート基板を示すより薄い線
1710 透過した光のCIE色座標(x、y)
1720 反射した光のCIE座標(0.353、0.251)
1802 プライマーコーティング
1803、4703 ハードコーティング
1910 透過した光のCIE座標(0.362、0.368)
1920 反射した光のCIE座標(0.209、0.229)
3002、3201、3301 膜
3001、3003、3302、3303 ベース材料
3202、3203 オフサルミック材料
3300 本発明による一例示的システム
4702 接着促進プライマーコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めがねレンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、角膜インレー、角膜アンレー、角膜移植および角膜組織のグループから選択されるオフサルミックレンズを備えたオフサルミックシステムであって、前記オフサルミックレンズが選択型光波長フィルタを備え、前記選択型フィルタによってコントラスト感度が改善されるオフサルミックシステム。
【請求項2】
前記選択型フィルタがないシステムと比較した場合に、明所視、暗所視、色視および概日リズムのうちの1つまたは複数が最大15%だけ変化する、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項3】
前記選択型フィルタが、染料および顔料のうちの少なくとも1つを含有した、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項4】
前記選択型フィルタが、ペリレン、ポルフィリン、クマリン、アクリジンおよびそれらの誘導体のうちの1つまたは複数を含有した、請求項3に記載のオフサルミックシステム。
【請求項5】
前記選択型フィルタがペリレンまたはその誘導体を含有した、請求項4に記載のオフサルミックシステム。
【請求項6】
前記選択型フィルタがポルフィリンを含有した、請求項4に記載のオフサルミックシステム。
【請求項7】
前記選択型フィルタが、合成顔料または天然顔料を含有した、請求項3に記載のオフサルミックシステム。
【請求項8】
前記選択型フィルタが、メラニン、ルテインおよびゼアキサンチンのうちの少なくとも1つを含有した、請求項7に記載のオフサルミックシステム。
【請求項9】
前記選択型フィルタが膜である、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項10】
前記選択型フィルタが耐引っ掻き傷コーティングである、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項11】
前記選択型フィルタがコンタクトレンズ内の視感度ティントである、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項12】
前記視感度ティントが複数の色を有する、請求項11に記載のオフサルミックシステム。
【請求項13】
前記選択型フィルタが無反射コーティングである、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項14】
前記選択型フィルタが疎水性コーティングである、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項15】
前記選択型フィルタが光互変異性材料を含有した、請求項1に記載のオフサルミックシステム。
【請求項16】
中央に配置された選択型光波長フィルタを備えた、コントラスト感度を改善することができるレンズ。
【請求項17】
前記レンズが、コンタクトレンズ、眼内レンズ、角膜インレー、角膜アンレーおよび角膜移植からなるグループから選択される、請求項16に記載のレンズ。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34A】
image rotate

【図34B】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図41】
image rotate

【図43A】
image rotate

【図43B】
image rotate

【図44】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図30】
image rotate

【図39A】
image rotate

【図39B】
image rotate

【図40】
image rotate

【図42】
image rotate

【図45】
image rotate

【図48】
image rotate


【公表番号】特表2010−511205(P2010−511205A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539390(P2009−539390)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/083236
【国際公開番号】WO2008/067109
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508282890)ハイ・パフォーマンス・オプティクス・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】