説明

改良型先端保護装置

【課題】手術中に生じた血管内組織片のろ過と塞栓形成から保護を最大にする先端保護装置を提供する。
【解決手段】人体血管内に配置可能な先端保護装置は、脈管内での好ましい軸方向位置に配置可能なフィルタバスケット12と、フィルタバスケット12の基端部に近接する前記フィルタバスケット12に連結された自己拡張径方向部材ループ28とを有する。前記フィルタバスケット12は閉じた先端部と開いた基端部を有する。同ループ28は前記フィルタバスケット12の基端部を開いた状態に維持するよう適合されている。人体脈管構造で処置中に患部血管から発生する組織片を捕らえる際、曲りくねった人体血管内でもカテーテルの先端保護装置に設けたフィルタバスケット開口部が最大限の設置面積を有する機能を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は血管内に配置可能な先端保護装置を初めとする、体内脈管に配置可能
な装置に関する。特定の態様の一つに、本発明は人体脈管構造内でのガイドワイ
ヤ又はフィルタの位置決めに関するものである。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
人体脈管構造への介入では、患部血管から組織片(凝血物質、塞栓、血栓)を
捕獲、回収する必要性が生じる。例えば、多様なタイプのフィルタが血流の中へ
流れる血液凝固や他の組織片をとらえるのに使われている。しかし、血管内のフ
ィルタ配置が完全なろ過を提供しないため、手術時又はカテーテル法処置におい
て、多くのフィルタは部分的にしか組織片を捕えることができない。つまり、フ
ィルタが血管内の血流域の最大断面積を通るろ過が行なわれていない。これはフ
ィルタが血管内壁に最適に嵌合した状態に維持されないのが原因と思われる。ま
たもう一つの原因として、フィルタバスケット使用される場所において前記バス
ケットを血管内で配置したときに、バスケットが必ずしも完全に開かないことも
考えられる。
【0003】
明確に言えば、フィルタは冠血管伏在静脈移植片でのステント移植等の処理の
間、流動物質(凝血物質、塞栓、血栓)を採集するように設計された捕獲網であ
る。そのようなフィルタ又は捕獲網は冠血管有害事象や急性合併症を引き起こす
遠心性塞栓形成からの保護作用をもたらすように機能する。そのような手術中に
放出される組織片の塞栓や、その結果生じる続発症が、重い心拍数有害事象を示
した報告において記載されている。そのような事象には、急性心筋梗塞、脈管再
生や、死亡も含まれる。
【0004】
そのような急性塞栓性合併症を処置するため、先端ろ過・保護装置が開発され
た。前記装置は既存の処置形式に合わせて設計されている。前記装置は侵襲的手
術での組織片ろ過作業の保護をし、粒子性塞栓形成の合併症を防止するように意
図されている。
【0005】
そのような先端ろ過・保護装置は通常血管内の所望位置に配置される。そのよ
うな配置は、カテーテルの先端部から外側に装置を引き伸ばすことにより行なわ
れる。配置が促進されるよう、配置される装置は形状記憶材料又は高弾性材料か
ら形成されることが多い。そのため、前記装置はカテーテル内に折り畳まれ、カ
テーテル先端部より先に外側へ付勢されると、またもとの折り畳まれてない形に
戻る事ができる。
【0006】
だが、そのようなろ過・保護装置の性能は完璧ではない。最大の欠点は装置の
剛性の欠乏である。形状記憶材料が使用され、装置が一度カテーテルから解放さ
れて折り畳まれていない形状をとる間、前記装置を設置する血管が蛇行している
ことがある。それゆえ、血管が曲りくねっているため装置が設置されているガイ
ドワイヤは血管内壁の内側に交互に密着してしまう傾向がある。この状態になる
とろ過・保護装置はガイドワイヤと血管内壁の間で少なくとも部分的にしか形状
は戻らず、装置の開口部が閉じてしまい血管の断面を完全には包囲しなくなる。
それゆえ、少なくとも一部の血流が装置を迂回する。
【0007】
少なくとも一つのその他の状況でも、ろ過・保護装置の少なくとも部分的な潰
れや、少なくとも一部の装置開口部の閉鎖を招く可能性がある。ガイドワイヤに
経皮的冠動脈形成術(PCTA)バルーン、ステント又は血管内超音波(IVU
S)カテーテルが装着されているとき、血管内でのガイドワイヤの径方向位置は
望ましい血管のほぼ中心部から変化される可能性がある。ガイドワイヤがそのよ
うに移動すると装置は部分的に潰れてしまい、上記したように装置開口部が部分
的又は完全に閉鎖することがある。この場合もまた、血管を通る血流の少なくと
も一部が装置を迂回する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術のこのような問題を本発明は解決する。そして本発明は所望のろ過・
保護装置を最大限に活かす血管に配置可能な改良型先端保護装置である。
【0009】
本発明の目的は血管内や他の人体脈管構造内に最適に嵌合するように配置され
る先端保護装置を提供することにある。
また、本発明の別の目的は配置後又は使用中に最大限に開口している状態を維
持させるフィルタバスケットを備えた先端保護装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的や利点は以下の詳細な開示および説明より明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、人体血管内に配置可
能な先端保護装置であって、フィルタバスケットが脈管内での好ましい軸方向位
置に配置可能なフィルタバスケットと、前記フィルタバスケットは閉じた先端部
と開いた基端部を有することと、フィルタバスケットの基端部に近接する前記フ
ィルタバスケットに連結された自己拡張径方向部材と、前記部材は前記フィルタ
バスケットの基端部を開いた状態に維持するよう適合されていることを備えたこ
とを要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の先端保護装置において、前記フィ
ルタバスケットが取り付けられるガイドワイヤをさらに備え、なお前記フィルタ
バスケットの少なくとも一つの端部が自由に動くことを要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の先端保護装置において、前記フィ
ルタバスケットの反対端部が前記ガイドワイヤに固く取り付けられることを要旨
とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の先端保護装置において、前記フィ
ルタバスケットは円錐筒の形をしており、そして前記ガイドワイヤは前記円錐筒
に沿って軸方向に延びることを要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の先端保護装置において、前記フィ
ルタバスケットは前記ガイドワイヤが内部を延びるチューブを有することを要旨
とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の先端保護装置において、前記径方
向部材はループであり、前記ループは略円形状であることを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項3に記載の先端保護装置において、前記フィ
ルタバスケットは円錐筒の形をしており、そして前記ガイドワイヤは前記円錐筒
に沿って軸方向に延びるものとすることを要旨とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項3に記載の先端保護装置において、前記フィ
ルタバスケットは前記ガイドワイヤが内部を延びるチューブを有することを要旨
とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項3に記載の先端保護装置において、前記径方
向部材はループであり、前記ループは略円形状であることを要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の先端保護装置において、前記径
方向部材はC型に形成されることを要旨とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載の先端保護装置において、前記径
方向部材はJ型に形成されることを要旨とする。
請求項12に記載の発明は、請求項1に記載の先端保護装置において、前記径
方向部材はらせん型に形成されることを要旨とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項6に記載の先端保護装置において、前記半
円形ループはニチノールワイヤから形成されることを要旨とする。
請求項14に記載の発明は、請求項6に記載の先端保護装置において、前記半
円形ループは放射線不透過性であることを要旨とする。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項6に記載の先端保護装置において、前記半
円形ループは放射線不透過性物質で覆われていることを要旨とする。
請求項16に記載の発明は、請求項6に記載の先端保護装置において、前記ル
ープは拡張状態で、前記ガイドワイヤに対し実質的に直角な平面を形成すること
を要旨とする。
【0022】
請求項17に記載の発明は、請求項6に記載の先端保護装置において、前記ル
ープは拡張状態で、前記ガイドワイヤに対し45度から90度の角度で設置され
ることを要旨とする。
【0023】
請求項18に記載の発明は、請求項6に記載の先端保護装置において、前記フ
ィルタバスケットと前記ループは折り畳まれて小直径デリバリーカテーテルの中
へ嵌合するように適用されていることを要旨とする。
【0024】
請求項19に記載の発明は、医療処置中、人体脈管構造で生じた組織片を捕獲
する方法であって、折り畳まれた形の先端保護装置が収容されたカテーテルを人
体脈管構造へと挿入する行程と、医療処置により罹患した脈管構造の先端側に先
端保護装置を設置する行程と、脈管構造内で先端保護装置を概ね前記軸上に維持
する工程と、先端保護装置内に医療処置で生じた組織片を捕獲することを要旨と
する。
【0025】
請求項20に記載の発明は、血管へ送り込まれたガイドワイヤに沿って、人体
の略管状脈管内に医療器具を適当に位置決めするのを容易にする装置であって、
医療器具をガイドワイヤのある規定側で側方に設置させて維持する要素と、医療
器具の好ましい軸方向端部付近にガイドワイヤによって運ばれ、拡張時にガイド
ワイヤの前記規定側で側方に設置させて維持される折り畳み可能な準硬性のスペ
ーサとを備え、前記スペーサは血管内壁表面の円周上の位置で嵌合するのに十分
なガイドワイヤの前記規定側と接する大きさを有すると共に、ガイドワイヤを血
管内壁表面の概ね正反対位置に対し付勢することを要旨とする。
【0026】
請求項21に記載の発明は、請求項20による器具において、前記スペーサは
ガイドワイヤの位置にある基端部分と血管内壁への接地のための先端部分装置と
を有し、前記先端部分は血管内表面を傷めないよう形成されていることを要旨と
する。
【0027】
請求項22に記載の発明は、請求項21に記載の器具において、前記スペーサ
はワイヤの形をしており、また前記スペーサの前記先端部分は前記ワイヤ形の弓
形部分を形成することを要旨とする。
【0028】
請求項23に記載の発明は、請求項22に記載の器具において、前記ワイヤ形
は閉ループを形成することを要旨とする。
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載の器具において、前記閉ループ
はガイドワイヤに対し少なくとも45度の角度を形成することを要旨とする。
【0029】
請求項25に記載の発明は、請求項22に記載の器具において、前記ワイヤ状
の外形は略C型を形成することを要旨とする。
請求項26に記載の発明は、請求項22に記載の器具において、前記ワイヤ状
の外形は略J型を形成することを要旨とする。
【0030】
請求項27に記載の発明は、請求項21に記載の器具において、前記スペーサ
は放射線不透過性物質であることを要旨とする。
請求項28に記載の発明は、血管へ送り込まれたガイドワイヤに沿って、人体
の略管状脈管内に医療器具を適当に位置決めするのを容易にする装置であって、
定義された軸方向位置に、ガイドワイヤに沿って医療器具を取り付ける要素と、
前記要素によって運ばれる折り畳み可能な準硬性のスペーサとを備え、前記器具
は前記スペーサと概ね軸方向に整列され、前記スペーサは血管内壁表面の円周上
の位置で嵌合するのに十分なガイドワイヤの一側面と接する大きさを有し、ガイ
ドワイヤを概ね血管内壁表面の正反対位置に対し付勢することを要旨とする。
【0031】
請求項29に記載の発明は、血管へ送り込まれたガイドワイヤに沿って、人体
の略管状脈管内に織物より構成された先端保護装置の適当に位置決めするのを容
易にする装置であって、ガイドワイヤに沿って好ましい軸方向位置に先端保護装
置を取り付ける要素と、先端保護装置の開口部の中に埋め込まれた折り畳み可能
な準硬性のスペーサとを備えたことを要旨とする。
【0032】
本発明の先端保護装置には、一実施形態ではループである自己拡張部材が備え
られている。同自己拡張部材は血管内壁に対する半径方向の力を生成し、フィル
タの側面位置を血管内の所望位置に制御する。その自己拡張ル−プはフィルタバ
スケット等の先端保護装置の基端開口部の開口を維持するように機能する。ルー
プは先端保護装置の基端部又はその近くで装置のガイドワイヤに半径方向の力を
加え、ガイドワイヤとガイドワイヤが有しているフィルタを血管内壁に対し押し
付ける。PCTAやステント等による基端側の処置の結果として形成されたいか
なる組織片もバスケットの基端開口部へと流れ込む。本発明以前ではフィルタバ
スケットの基端部が複雑に曲りくねった構造で十分に開けないように配置されて
いた。これは、結果的に捕獲すべき組織片をバスケットによって捕獲することが
困難になる。
【0033】
一実施形態では、フィルタバスケットをそれが配置された時にガイドワイヤの
規定側で側方に維持するように作用する要素が含まれている。また、この実施形
態にはフィルタバスケット開口部に近接したところに設置される折り畳み可能又
は準剛性のループ又は他の種類のスペーサが包含される。ループ又は他のスペー
サ部材はフィルタバスケットの開口部の位置か開口部に近接してガイドワイヤに
沿って付けられており、フィルタバスケットと同じ様にガイドワイヤの同じ側で
側方に延びるようになっている。この実施形態では、ループ又はスペーサとフィ
ルタバスケットとの軸方向整列は、ガイドワイヤの規定側でフィルタバスケット
を維持する要素にスペーサを堅く固定するか、又はフィルタバスケット固定要素
から軸方向に間隔を置いたスペーサはフィルタバスケットと同軸方向に整列した
状態でスペーサをガイドワイヤに別の固定要素でスペーサをガイドワイヤに堅く
固定することにより達成される。使用される特定のループ又は他のスペーサには
、ガイドワイヤの側面に一定の寸法が設けられて、特定のループ又は血管内壁表
面の特定の周辺位置に係合する程度に十分に配置されると共に、ガイドワイヤを
スペーサによる係合位置のほぼ逆側の位置で血管内壁表面に付勢するようになっ
ている。
【0034】
上記のように自己拡張ループは、フィルタバスケットの開口部位置か開口部付
近でガイドワイヤ上に配置されるか、又はその基端部位置かその付近でフィルタ
バスケットの網ひもに埋め込まれる。本開示の点では、自己拡張ループ又は他の
スペーサは一実施形態において、自己拡張ループ又は他のスペーサとフィルタバ
スケットとが同時に回転しててもフィルタバスケットと同様、ガイドワイヤの同
じ側方の側に自己拡張ループ又はスペーサを延びるよう、形成可能である。これ
は、フィルタバスケットを体の血管内で回転移動させた時に、スペーサがそれに
応じて動き、実質的に軸方向の整列を維持する様に、フィルタバスケットをガイ
ドワイヤに固定する要素にスペーサを取り付けるか、スペーサをフィルタバスケ
ットの開口部に埋め込むか、スペーサとフィルタバスケットとをひも状のもので
繋ぐことにより達成される。
【0035】
ループは引き伸ばされた時は相対的に強固になり、デリバリーカテーテルへの
挿入のためフィルタバスケットと共に、折り畳み可能である。挿入は前からでも
後ろからでも容易に達成される。ループは、冠状動脈処置のような医療処置中に
所望の治療位置で配置すると広がる。
【0036】
ループは略円形に設計されるが、多様なC型、J型、らせん型の形状に形成さ
れ得る。連続的なループが好まれる。
ループは引き伸ばされた時はガイドワイヤに対してほぼ直角に延ばされる。な
ぜなら、その位置だと、ループは血管内壁に対して直角に設置されて最大の半径
方向の力を発揮し、血管内での最適な装着を提供する。しかしながら、垂直な設
置が望まれはするが、ガイドワイヤの軸に対して角度45゜から90゜の任意の
角度でループを拡張させても十分な径方向の力が生じる。
【0037】
ループは一本のニチノールワイヤ、ケーブル、コイル、ストランドケーブル等
の径の小さなワイヤから作ることができる。ループは望ましくは術中に開口され
たときに先端保護装置の基端開口部が観察できるように、放射線不透過性である
か又は放射線不透過性物質で覆われてる。
本発明は先端保護フィルタバスケットの最適な機能を実現するための改良型装
置である。本発明のスペーサは、先端保護装置の基端開口部を設置中に最大限に
開かせる。スペーサは設置する時に自身で広がり、位置決めされる。そして、ス
ペーサは先端保護装置での操作の妨げにならず、組織片捕獲の妨げにもならず、
血流の妨げにもならない。
(発明の効果)
以上のように、本発明によれば、組織片のろ過と塞栓形成からの保護作用が最
大限に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】血管の内壁が仮想線で示した本発明の一実施形態を示す部分断面平面図。
【図2】フィルタバスケットがデリバリーカテーテル内にあるところを描がいた1実施形態を示す部分断面透視図。
【図3】フィルタバスケットがカテーテルから部分的に取り出されるところを描いた、図2と同様の部分断面透視図。
【図4】フィルタバスケットがカテーテルから完全に取り出されるところを描いた、図2、図3と同様の部分断面透視図。
【図5】カテーテル内でフィルタバスケットが部分的に位置を変えられたのを示す、図2、図3、図4と同様の部分断面透視図。
【図6】カテーテル内でフィルタバスケットがより遠くへ位置を変えられたのを示す、図2、図3、図4、図5と同様の部分断面透視図。
【図7】本発明のスペーサを使用せずに先端保護装置が曲りくねった進路を通る血管内に設置されているのを示した図4と同様の断面図。
【図8】本発明のスペーサを設置した有効性を示した、図7と同様の断面図。
【図9】ループスペーサの血管内での嵌着を示した断面図。
【図10】J型スペーサの設置を示した図9と同様の図。
【図11】C型スペーサの設置を示した図9と同様の図。
【図12】らせん型スペーサの設置を示した図8と同様の図。
【図13】フィルタバスケットの開口部に埋め込まれた連続的なループスペーサを示した、図8、図12と同様の図。
【図14】フィルタバスケットの開口部と繋げた連続的なループスペーサを示した図8、図12、図13と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図面を参照すると、本発明の好ましい先端保護装置10が多様な使用段落で示
されている。図1、図4は、装置10が完全に設置された状態を示す。一実施形
態では、バスケット12は設置装置(すなわちカテーテル18の管腔)を通るガ
イドワイヤ20に要素14により取り付けられている。要素14はバスケット1
2をガイドワイヤ20に取り付けており、バスケット12がガイドワイヤ20に
対し軸方向又は回転方向に動かないよう保持している。ガイドワイヤ20は矢印
24の先端方向と矢印32の基端方向の動きに適応している。バスケット12の
基端部に取り付けられたフェルール16はガイドワイヤ20に沿ってバスケット
12の基端部を矢印30に示されるように先端方向と基端方向、両方に動かすこ
とができる。しかし、フェルール16はガイドワイヤ20に軸方向に固定できる
ものとする。
【0040】
デリバリーカテーテル22はガイドワイヤ20がカテーテル22の管腔を通っ
た状態で、バスケット12から基端部方向に延びている。図4は、フェルール16
によってバスケット12の基端部に取り付けられたスペーサ又はループ28も示
す。そのような形態では、ループ28はバスケット12と共にガイドワイヤ20
に対して共働的に移動し得る。フェルール16がバスケット12の開口部に関し
てループ28をロックする要素として働くとき、ループ28はバスケット12の
開口部と概ね軸方向に整列されるように配置される。ループ28の準剛性により
、ループ28は血管38の内壁36に対してフェルール16とガイドワイヤ20
を付勢する。ループ28の径方向の拡張により、最大に開いたバスケット12の
開口部が維持される。
【0041】
ある一定の実施形態で、別個の要素(図には示されていない)がループ28を
バスケット12の基端部付近に維持し、ループ28をバスケット12とほぼ軸方
向の整列状態にロックするために使われることもあると理解される。しかし、そ
のような別の要素が使われるとき、その別個の要素は、ループ28がバスケット
12とほぼ軸方向に整列して並べられるように、ループ28をガイドワイヤ20
の位置に留める働きをする。そのような実施形態はフェルール16から基端側に
離間したループ28を配置する位置にすることを可能にする。もしループ28が
拡張を引き起こしても、そのように離間されているためバスケット12が設置さ
れた身体の血管を通常の直径に細くすることができる。
【0042】
また、本発明により想到されるのは、図13と図14の実施形態である。図1
3はバスケット開口部がループ28によって実際に形成されているフィルタバス
ケット12を描いている。この実施形態では、バスケット網52の糸がループ2
8の周囲に編み込まれ、ループ28とバスケット12を効果的に一体化している
。ループ28が血管38の内壁36に嵌合すると、バスケット開口部が血管38
の断面積全体を実質的に占める。
【0043】
図14は、前に示されたような手段によりガイドワイヤ20に固定されたバス
ケット12を描いたものである。ループ28が、バスケット12の基端部又は開
口部からガイドワイヤ20に沿って軸方向に間隔を置いた要素56によってガイ
ドワイヤ20に固定されたものとして示されている。この実施形態では、要素5
6はループ28をバスケット12から独立してガイドワイヤ20の周囲で回転さ
せることも可能である。しかしながら、ループ28とフィルタバスケット12の
開口部を概ね同軸上に維持するために繋ぎ糸54が設けられる。
【0044】
理解されるように、本発明はスペーサとフィルタバスケット12の好ましい関
係を維持する多くの方法を意図するものである。当然ながら、重要なのはその二
つをほぼ同軸上に整列させることにある。
【0045】
図2を参照すると、バスケット12は完全にカテーテル22に収納されている
。図3において、ガイドワイヤ20の先端方向へ移動(矢印24に示される)さ
せることにより、矢印26で示されるようにバスケット12はカテーテル22か
ら部分的に取り出される。図5と図6では、ガイドワイヤ20の基端方向の動き
(矢印32)による矢印34が、バスケット12とループ28のカテーテル22
への部分的引戻しを表している。
【0046】
図7は、ガイドワイヤ20に付けられた先端保護装置バスケット12が血管の
曲りくねった通路の中を延びている所を描いたものである。図7に描かれた装置
12は、図1から図6に関して説明したのと同様に要素14とフェルール16に
よってガイドワイヤ20に固定される。しかし図7では、血管の曲りくねった通
路を通過した結果を描いたものである。ここで示されるように、ガイドワイヤ2
0はその血管内の最短ルートをたどる傾向があり、血管38での内壁36のほぼ
正反対の両側に交互に係合する。図7で見ることができるように、フィルタバス
ケット12はガイドワイヤ20の走路と血管38の内壁36との間で部分的に潰
れてしまう可能性がある。これにより血流中の組織片がフィルタバスケット12
を迂回してしまう可能性が存在する。
【0047】
図8は、本発明によるループスペーサ28の使用によってどのようにこの問題
が解決されるかを描いたものである。ガイドワイヤ20のフィルタバスケット1
2が設置されているのと同じ側にループ28が維持されるように、ループ28は
フェルール16又は要素に固定される。ループ28の準剛性のため、そのループ
28がカテーテル22から開いて設置されたとき、ループ28はフェルール16
の接続部のほぼ正反対側の血管38の内壁36の円周点に接地する。ループ28
の剛性は、フェルール16に対して先端側のループ28の接地点による内壁36
の係合位置と反対側で内壁36の円周点に対しガイドワイヤ20を効果的に付勢
する。その結果、フィルタバスケット12は完全に拡張され最大限の保護が与え
られる。
【0048】
図9の断面図では、血管38での内壁36に対するループスペーサ28の機能
が描かれている。図10と図11は、スペーサの別の実施形態を示したものであ
る。図10は略J型のスペーサ40が描かれており、図11では略C型のスペー
サ42が描かれている。この開示に関して見られるように、これらの替わりの実
施形態では、フェルール16とガイドワイヤ20は、スペーサ先端が内壁36に
先端側で接合する位置と概ね反対の円周上の位置で、血管38の内壁36に押し
やられる。結果として、フィルタバスケット12の作用が最大限に活かされる。
【0049】
図12は、らせん状スペーサ44の機能を描いたものである。らせん状スペー
サ44はスペーサ44の先端部でフェルール16に繋げられているのがわかる。
そのような接続は実質的に十分に強固なため、スペーサ44はバスケット12の
開口部と概ね同軸方向に整列する位置に配置される。フェルール16が軸方向に
動ける実施形態では、なおスペーサ44も軸方向に同程度にそれに応じて動ける
が、それと同時にスペーサ44はガイドワイヤ20に対し回転方向的に維持され
、またバスケット12との好ましい軸方向の整列が得られる。
【0050】
図12は、スペーサ44の基端部をガイドワイヤに維持するもう一つのフェル
ール48も描かれている。このフェルール48は軸方向に動くことが可能であっ
ても、またはガイドワイヤ20に固定できるものであってもよいと推測できる。
【0051】
他の実施形態の場合でも、図12にあるらせん状スペーサ44はフェルール1
6とは別の要素によりガイドワイヤ20に強固に維持することができると推測さ
れる。その場合、これは、ガイドワイヤ20に独立した要素を堅く固定するか、
又はスペーサ44をフィルタバスケット28の開口部に繋ぎ止める方法で達成さ
れる。
【0052】
また、スペーサの他の実施形態は細かく意図されており、例えば、自身で折り
返す、J型又はC型の連続的ループもまた本発明中に包含されるよう意図されて
いる。これらの特殊な形態は図面の中では描かれてはいない。
【0053】
ここまで好ましい形態を説明してきたが、本明細書の記述と開示は例示であっ
て、制限的なものではなく、そして多様な修正と変更を本発明の精神及び範囲か
ら逸脱することなしに行なうことが可能であることが理解される。他の実施形態
が本発明の目的を果たすために使用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…先端保護装置、12…フィルタバスケット、14,56…要素、20…
ガイドワイヤ、22…カテーテル、28…ループ、40,42,44…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−236043(P2012−236043A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159588(P2012−159588)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2001−141567(P2001−141567)の分割
【原出願日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】